JP6534269B2 - 管状構造物、細胞構造体の製造方法、及び管状構造物の製造方法 - Google Patents

管状構造物、細胞構造体の製造方法、及び管状構造物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生体親和性高分子ブロックと所定の細胞とを含む細胞構造体により構成されている管状構造物に関する。本発明はさらに、細胞構造体の製造方法、及び管状構造物の製造方法に関する。
生体内においては、血管、消化管、尿管及びリンパ管などの管状(チューブ状)構造の組織が重要な組織として機能している。特に重要な管状構造としては血管が挙げられ、疾病や手術における代替の必要性から多くの人工血管が開発されてきた。臨床応用が進んでいる人工血管としては、延伸ポリテロラフルオロエチレン(ePTFE)等の非生分解性合成高分子を用いた人工血管が挙げられる。
また、合成高分子から成る人工血管を細胞により内皮化させたハイブリッド人工血管の開発も古くから試みられている。人工血管を細胞により内皮化することにより、非血栓形成性を付与できることが示されており、開存維持の効果が期待できる。
しかし、血管移植物と生体動脈との吻合部分におけるコンプライアンスミスマッチが報告されている(非特許文献1)。また、人工血管と生体動脈との吻合部分で、血流分離・血流停滞部が発生し、吻合部における応力集中が吻合部閉塞を引き起こすことが知られている(非特許文献2及び非特許文献3)。
特許文献1には、細胞塊を任意の空間に配置するための支持体であって、基板と、細胞塊を貫通させるための糸状体または針状体とを備える支持体が記載されている。特許文献1には、上記支持体を用いて、細胞塊を任意の空間に配置し、細胞構築物を製造することが記載されている。また、非特許文献4には、細胞のみからなるスフェロイドを用いた心筋細胞による立体構造物及び平滑筋細胞による血管構造体が記載されている。
一方、特許文献2には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が記載されている。特許文献2に記載の細胞構造体においては、外部から細胞構造体の内部への栄養送達が可能であり、十分な厚みを有するとともに、構造体中で細胞が均一に存在している。特許文献2の実施例においては、リコンビナントゼラチンや天然ゼラチン素材からなる高分子ブロックを用いて高い細胞生存活性が実証されている。
特許4517125号公報 国際公開WO2011/108517号
Abbot,W.M.; Megerman, J.; Hasson, J. E.; L'Italien, G.; Warnock, O.F., J. Vasc.Surg. 5 (2):376-382; 1987 Weston, M.W.; Rhee, K., Tarbell, J.M., J. Biomech. 29(2): 187-198; 1996 Rhee, K.; Tarbell, J.M., J. Biomech. 27(3):329-338; 1994 森口茂樹 他、人工臓器41巻3号168−171頁、2012年
合成高分子から成る人工血管は、特に小口径にした際、材料表面に形成される血栓による閉塞及び狭窄等により詰まりやすいことが知られている。また、対象者が小児等の成長過程にある場合には、自己成長しない血管は不適である。上記問題を解決するための試みとして、合成高分子素材から成る人工血管を細胞により内皮化させたハイブリッド人工血管も報告されているが、人工血管と生体動脈との吻合部における吻合部閉塞の問題がある。この観点から、小児等の成長過程にある対象者に対するサイズ変化の必要性とともに、非生体吸収性材料を含まずに生体組織に置換されやすい、細胞含有バイオ人工血管が求められている。
一方、通常の動脈及び大動脈の壁厚は1〜2mm程度であることが知られている。細胞だけで1〜2mmの壁厚を有する管状構造物を形成した場合、壁内部を液が拡散通過できない(透水性がない)ことに起因する種々の問題が生じてくる。例えば、透水性がなく液交換ができないことから壁内部の新陳代謝ができないという問題、並びに壁内部で産生したサイトカインやホルモンを壁外部へ放出することができないという問題がある。また、細胞だけで作製した構造体では、構造体の強い強度が得られないことから、使用できる部位が限定されてしまう。特に、血管や胆管等の管構造では管内部を早い流速で液体が流れるため、特に壁の強度が必要であることが知られている。この観点から、細胞だけで作製した構造体は、生体内での使用には不適であった。さらに、通常組織は単一細胞から構成されることはほとんどなく、複数種の細胞が任意に配置されることで組織としての機能を有することが知られている。
特許文献1及び非特許文献4においては、細胞のみからなるスフェロイドを用いて人工血管などの立体構造体を作製することが記載されているが、上記の通り透水性が十分ではなく、また強度も十分ではないという問題があった。特許文献2においては、生体親和性高分子ブロックと細胞とを含む細胞構造体が記載されているが、人工血管などの管状構造物を形成することについては言及がない。
本発明は、細胞だけの構造物の場合よりも高い透水性と高い強度とを有する、細胞含有管状構造物を提供することを解決すべき課題とする。本発明はさらに、細胞構造体の製造方法、並びに上記管状構造物の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生体親和性高分子ブロックと、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体により、細胞だけで作製した構造物よりも、管状構造物の内壁からの透水性が高く、更なる培養によって強度を向上できる管状構造物を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)生体親和性高分子ブロックと、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体により構成されている管状構造物。
(2)人工血管である(1)に記載の管状構造物。
(3)上記細胞構造体が、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞の合計細胞数について細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、(1)又は(2)に記載の管状構造物。
(4)線維芽細胞が皮膚線維芽細胞であり、血管内皮細胞が臍帯静脈血管内皮細胞であり、平滑筋細胞が膀胱平滑筋細胞である、(1)から(3)の何れか一に記載の管状構造物。
(5)上記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが10μm以上300μm以下である、(1)から(4)の何れか一項に記載の管状構造物。
(6)上記管状構造物が、内径1mm以上6mm未満、外径3mm以上10mm以下、及び長さ3mm以上300mm以下を有する、(1)から(5)の何れか一に記載の管状構造物。
(7)上記生体親和性高分子ブロックがリコンビナントペプチド又は化学合成ペプチドからなる、(1)から(6)の何れか一に記載の管状構造物。
(8)上記リコンビナントペプチドがリコンビナントゼラチン又は化学合成ゼラチンである、(1)から(7)の何れか一に記載の管状構造物。
(9)上記リコンビナントゼラチン又は化学合成ゼラチンが、下記式1で示されるものである、(8)に記載の管状構造物。
式1:A−[(Gly−X−Y)nm−B
式1において、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、mは2〜10の整数を示し、nは3〜100の整数を示し、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示す。
(10)上記リコンビナントペプチド又は化学合成ゼラチンが、
配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
の何れかである、(7)から(9)の何れか一に記載の管状構造物。
(11)上記生体親和性高分子ブロックにおいて、上記生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されている、(1)から(10)の何れか一に記載の管状構造物。
(12)上記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる顆粒の形態にある、(1)から(11)の何れか一に記載の管状構造物。
(13)生体親和性高分子ブロックと細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されており、かつ任意の形状を有する細胞構造体の製造方法であって、
基板と糸状体または針状体とを備える支持体の上記糸状体または針状体に、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を貫通させ、上記複数個の細胞構造体により上記任意の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A、および
工程Aにおいて配置された細胞構造体を培養し、近接する細胞構造体同士を融合させる工程B、
を含む、細胞構造体の製造方法。
(14)更に、工程Bにおいて任意の形状を形成した細胞構造体を、糸状体または針状体から引き抜く工程Cを含む、(13)に記載の細胞構造体の製造方法。
(15)(1)から(12)の何れか一に記載の管状構造物の製造方法であって、
基板と糸状体または針状体とを備える支持体の上記糸状体または針状体に、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を貫通させ、上記複数個の細胞構造体により管状構造物の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A1、ここで上記細胞は、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、および
工程A1において配置された細胞構造体を培養し、近接する細胞構造体同士を融合させる工程B1、
を含む、管状構造物の製造方法。
(16)更に、工程B1において管状構造物の形状を形成した細胞構造体を、糸状体または針状体から引き抜く工程C1、及び工程C1で得た細胞構造体を培養する工程D1を含む、(15)に記載の管状構造物の製造方法。
本発明の管状構造物は、壁の透水性が高く、強度が高い。本発明の細胞構造体の製造方法によれば、所望の形状を有する細胞構造体を効率的に製造することができる。本発明の管状構造物の製造方法によれば、上記の通り壁の透水性が高く、強度が高い本発明の管状構造物を製造することができる。
図1は、管状構造物の一例の模式図を示す。 図2は、支持体の一例の模式図を示す。 図3は、実施例における溶媒を凍結する際の温度プロファイルを示す。 図4は、実施例における針状体を備える支持体と細胞構造体との配置を示す。 図5は、総細胞数とCBE3ブロック量を変化させた条件でモザイク細胞塊を作製した結果を示す。 図6は、透水性試験に使用した装置を示す。 図7は、比較例1で作製した細胞のみスフェロイド由来の管状構造物を使用して透水性を試験した結果を示す。 図8は、実施例5で作製したモザイク細胞塊由来の管状構造物を使用して透水性を試験した結果を示す。 図9は、モザイク細胞塊由来の管状構造物の培養日数と強度の関係を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[管状構造物]
本発明の管状構造物は、生体親和性高分子ブロックと、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体により構成されている。なお、本発明で用いる細胞構造体は、本明細書中において、モザイク細胞塊(モザイク状になっている細胞塊)と称する場合もある。
本発明の管状構造物は、高い透水性と高い強度(物理的強度)とを有する構造物であり、例えば、人工血管として使用することができる。生体親和性高分子ブロックと、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が、上記した性能、即ち、高い透水性と高い物理的強度とを有することは、全く予想外な顕著な効果である。特許文献1及び非特許文献4においては、生体親和性を有する高分子ブロックを使用することについては記載がなく、また線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞という細胞の組み合わせについても記載がない。また、特許文献2においては、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が記載されているが、管状構造物を形成することについては記載がなく、高い透水性及び高い物理的強度についても記載がなく、更に線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞という細胞の組み合わせについても記載がない。
(1)生体親和性高分子ブロック
本発明で用いる細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックを含む。生体親和性高分子ブロックについて以下に説明する。
(1−1)生体親和性高分子
生体親和性とは、生体に接触した際に、長期的かつ慢性的な炎症反応などのような顕著な有害反応を惹起しないことを意味する。本発明で用いる生体親和性高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性高分子であることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン及びMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などが挙げられる。生分解性材料としては、具体的にはリコンビナントペプチド又は化学合成ペプチドなどのポリペプチド(例えば、以下に説明するゼラチン等)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンなどが挙げられる。上記の中でも、リコンビナントペプチドが特に好ましい。これら生体親和性高分子には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよい。具体的には、「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で表される、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、「基材表面のアミノ化、カチオン化」、又は「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法を使用できる。
リコンビナントペプチド又は化学合成ペプチドを含むポリペプチドの種類は生体親和性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチンが好ましく、最も好ましくはゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲンである。本発明で用いるためのゼラチンとしては、好ましくは、天然ゼラチン、リコンビナントゼラチン又は化学合成ゼラチンであり、さらに好ましくはリコンビナントゼラチンである。ここでいう天然ゼラチンとは天然由来のコラーゲンより作られたゼラチンを意味する。
化学合成ペプチド又は化学合成ゼラチンとは、人工的に合成したペプチド又はゼラチンを意味する。ゼラチン等のペプチドの合成は、固相合成でも液相合成でもよいが、好ましくは固相合成である。ペプチドの固相合成は当業者に公知であり、例えば、アミノ基の保護としてFmoc基(Fluorenyl-Methoxy-Carbonyl基)を使用するFmoc基合成法、並びにアミノ基の保護としてBoc基(tert-Butyl Oxy Carbonyl基)を使用するBoc基合成法などが挙げられる。なお、化学合成ゼラチンの好ましい態様は、本明細書中後記の(1−3)リコンビナントゼラチンに記載した内容を当てはめることができる。
リコンビナントゼラチンについては、本明細書中後記する。
本発明で用いる生体親和性高分子の親水性値「1/IOB」値は、0から1.0が好ましい。より好ましくは、0から0.6であり、さらに好ましくは0から0.4である。IOBとは、藤田穆により提案された有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基づく、親疎水性の指標であり、その詳細は、例えば、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。簡潔に言えば、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)、無機性値(IV)を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」を意味する。有機概念図の詳細については、「新版有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生等著、三共出版、2008)を参照されたい。本明細書中では、IOBの逆数をとった「1/IOB」値で親疎水性を表している。「1/IOB」値が小さい(0に近づく)程、親水性であることを表す表記である。
本発明で用いる高分子の「1/IOB」値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる生体親和性高分子がポリペプチドである場合は、Grand average of hydropathicity(GRAVY)値で表される親疎水性指標において、0.3以下、マイナス9.0以上であることが好ましく、0.0以下、マイナス7.0以上であることがさらに好ましい。Grand average of hydropathicity(GRAVY)値は、『Gasteiger E., Hoogland C., Gattiker A., Duvaud S., Wilkins M.R., Appel R.D., Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In) John M. Walker (ed): The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005). pp. 571-607』及び『Gasteiger E., Gattiker A., Hoogland C., Ivanyi I., Appel R.D., Bairoch A.; ExPASy: the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis.; Nucleic Acids Res. 31:3784-3788(2003).』の方法により得ることができる。
本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
(1−2)架橋
本発明で用いる生体親和性高分子は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋されている生体親和性高分子を使用することにより、培地中で培養する際及び生体に移植した際に瞬時に分解してしまうことを防ぐという効果が得られる。一般的な架橋方法としては、熱架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、紫外線架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用などが知られている。本発明ではグルタルアルデヒドを使用しない架橋方法を使用することが好ましい。本発明では、アルデヒド類又は縮合剤を使用しない架橋方法を使用することがより好ましい。即ち、本発明における生体親和性高分子ブロックは、好ましくは、グルタルアルデヒドを含まない生体親和性高分子ブロックであり、より好ましくは、アルデヒド類又は縮合剤を含まない生体親和性高分子ブロックである。本発明で使用する架橋方法としては、さらに好ましくは熱架橋、紫外線架橋、又は酵素架橋であり、特に好ましくは熱架橋である。
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、高分子材料間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼ及びラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基及びグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。
架橋(例えば、熱架橋)を行う際の反応温度は、架橋ができる限り特に限定されないが、好ましくは、−100℃〜500℃であり、より好ましくは0℃〜300℃であり、更に好ましくは50℃〜300℃であり、更に好ましくは100℃〜250℃であり、更に好ましくは120℃〜200℃である。
(1−3)リコンビナントゼラチン
本発明で言うリコンビナントゼラチンとは、遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができるリコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくは、細胞接着シグナルが一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを用いることができる。例えばEP1014176、US特許6992172号、国際公開WO2004/85473、国際公開WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントゼラチンである。
リコンビナントゼラチンは、天然のゼラチン本来の性能から、生体親和性に優れ、且つ天然由来ではないことで牛海綿状脳症(BSE)などの懸念がなく、非感染性に優れている。また、リコンビナントゼラチンは天然セラチンと比べて均一であり、配列が決定されているので、強度及び分解性においても架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
リコンビナントゼラチンの分子量は、特に限定されないが、好ましくは2000以上100000以下(2kDa以上100kDa以下)であり、より好ましくは2500以上95000以下(2.5kDa以上95kDa以下)であり、さらに好ましくは5000以上90000以下(5kDa以上90kDa以下)であり、最も好ましくは10000以上90000以下(10kDa以上90kDa以下)である。
リコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有することが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly−X−Y において、Glyはグリシンを表し、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成及び配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X及びYで表されるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。好ましくは、リコンビナントゼラチンの配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸が、Gly−X−Yの繰り返し構造である。
一般的なゼラチンは、極性アミノ酸のうち電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びアルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを指す。本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ上記極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましい。さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。細胞接着シグナルを有するリコンビナントゼラチンを用いることにより、細胞の基質産生量を向上させることができる。例えば、細胞として、間葉系幹細胞を用いた軟骨分化の場合には、グリコサミノグリカン(GAG)の産生を向上させることができる。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおけるRGD配列の配置としては、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましい。リコンビナントゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。リコンビナントペプチド内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明のリコンビナントゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明のリコンビナントゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
リコンビナントゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、式:A−[(Gly−X−Y)nm−Bで示されるものである。n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。mとして好ましくは2〜10、好ましくは3〜5である。nは3〜100が好ましく、15〜70がさらに好ましく、50〜65が最も好ましい。Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示す。
より好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、 式:Gly−Ala−Pro−[(Gly−X−Y)633−Gly(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるものである。
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれでも構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、又はV型コラーゲンである。より好ましくは、I型、II型、又はIII型コラーゲンである。別の形態によると、上記コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス又はラットであり、より好ましくはヒトである。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。
好ましくは、リコンビナントゼラチンは脱アミン化されていない。
好ましくは、リコンビナントゼラチンはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、リコンビナントゼラチンは、アミノ酸配列をコードする核酸により調製された実質的に純粋なポリペプチドである。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
である。
「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」における「1若しくは数個」とは、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2号公報、米国特許第6992172号公報、国際公開WO2004/85473号、国際公開WO2008/103041号等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定のリコンビナントゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、リコンビナントゼラチンが産生されるので、培養物から産生されたリコンビナントゼラチンを回収することにより、本発明で用いるリコンビナントゼラチンを調製することができる。
(1−4)生体親和性高分子ブロック
本発明では、上記した生体親和性高分子からなるブロック(塊)を使用する。
本発明における生体親和性高分子ブロックの形状は特に限定されるものではない。例えば、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘状、扁平状及びシート状であり、好ましくは、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状及び多孔質状である。不定形とは、表面形状が均一でないもののことを示し、例えば、岩のような凹凸を有する物を示す。なお、上記の形状の例示はそれぞれ別個のものではなく、例えば、粒子状(顆粒)の下位概念の一例として不定形となる場合もある。
本発明における生体親和性高分子ブロック一つの大きさは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上1000μm以下であり、より好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上110μm以下である。生体親和性高分子ブロック一つの大きさを上記の範囲内にすることは、管状構造物がより高い分子透過能力を有するという観点から好ましい。なお、生体親和性高分子ブロック一つの大きさとは、複数個の生体親和性高分子ブロックの大きさの平均値が上記範囲にあることを意味するものではなく、複数個の生体親和性高分子ブロックを篩にかけて得られる、一つ一つの生体親和性高分子ブロックのサイズを意味するものである。
ブロック一つの大きさは、ブロックを分ける際に用いたふるいの大きさで定義することができる。例えば、180μmのふるいにかけ、通過したブロックを106μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、106〜180μmの大きさのブロックとすることができる。次に、106μmのふるいにかけ、通過したブロックを53μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、53〜106μmの大きさのブロックとすることができる。次に、53μmのふるいにかけ、通過したブロックを25μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、25〜53μmの大きさのブロックとすることができる。
(1−5)生体親和性高分子ブロックの製造方法
生体親和性高分子ブロックの製造方法は、特に限定されないが、例えば、生体親和性高分子の多孔質体を、粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕することにより、顆粒形態の一例である不定形の生体親和性高分子ブロックを得ることができる。
生体親和性高分子の多孔質体を製造する際に、溶液内で最も液温の高い部分の液温(内部最高液温)が、未凍結状態で「溶媒融点−3℃」以下となる凍結工程を含めることによって、形成される氷は球状となる。この工程を経て、氷が乾燥されることで、球状の等方的な空孔(球孔)を持つ多孔質体が得られる。溶液内で最も液温の高い部分の液温(内部最高液温)が、未凍結状態で「溶媒融点−3℃」以上となる凍結工程を含まずに、凍結されることで、形成される氷は柱/平板状となる。この工程を経て、氷が乾燥されると、一軸あるいは二軸上に長い、柱状あるいは平板状の空孔(柱/平板孔)を持つ多孔質体が得られる。
本発明においては好ましくは、
生体親和性高分子の溶液を、溶液内で最も液温の高い部分の液温である内部最高液温が、未凍結状態で、溶媒融点より3℃低い温度(“溶媒融点−3℃”)以下となる、凍結処理により凍結する工程a;及び
上記工程aで得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する工程b:
を含む方法により、生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
本発明ではさらに好ましくは、上記工程bで得られた多孔質体を粉砕することによって、顆粒の形態の生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
より好ましくは、上記工程aにおいて、生体親和性高分子の溶液を、溶液内で最も液温の高い部分の液温である内部最高液温が、未凍結状態で、溶媒融点より7℃低い温度(“溶媒融点−7℃”)以下となる凍結処理により凍結することができる。
(2)細胞
本発明で用いる細胞は、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞であり、より好ましくは、皮膚線維芽細胞、臍帯静脈血管内皮細胞および膀胱平滑筋細胞である。本発明においては、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞を使用する限り、上記3種以外の細胞を使用してもよいし、上記3種類の細胞のみを使用してもよい。使用する細胞として、好ましくは脊椎動物由来細胞であり、特に好ましくはヒト由来細胞である。細胞の由来は、自家細胞又は他家細胞の何れでも構わない。
また、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞としては、正常ヒト由来(成人又は小児)の初代細胞でもよいし、株化細胞でもよい。
皮膚線維芽細胞などの線維芽細胞は、例えば、線維芽細胞に特異的な表面抗原であるCD90陽性により検出することができる。なお、CD はCluster Designationの略号である。
臍帯静脈血管内皮細胞などの血管内皮細胞は、例えば、フォンビルブランド因子(vWF)陽性、CD31陽性、Dil-Ac-LDL取り込み陽性、または平滑筋αアクチン陰性により検出することができる。Dil-Ac-LDLは、Dil標識アセチル低密度リポタンパク質を示す。Dilは、蛍光プローブ1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメトル-インドカルボシアニンパークロレートを示す。
膀胱平滑筋細胞などの血管内皮細胞は、例えば、平滑筋αアクチン陽性、またはCD90陰性により検出することができる。
(3)細胞構造体
本発明においては、生体親和性高分子ブロックと上記の所定の細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって細胞構造体を作製する。生体親和性高分子ブロックと細胞とがモザイク状に3次元に配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞構造体が形成され、外部から細胞構造体の内部への、培地成分などの栄養の送達が可能となる。
本発明で用いる細胞構造体においては、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されているが、ここで、「細胞間の隙間」とは、構成される細胞により、閉じられた空間である必要はなく、細胞により挟まれていればよい。なお、すべての細胞間に隙間がある必要はなく、細胞同士が接触している箇所があってもよい。生体親和性高分子ブロックを介した細胞間の隙間の距離、即ち、ある細胞とその細胞から最短距離に存在する細胞を選択した際の隙間距離は特に制限されるものではないが、生体親和性高分子ブロックの大きさであることが好ましく、好適な距離も生体親和性高分子ブロックの好適な大きさの範囲である。
また、生体親和性高分子ブロックは、細胞により挟まれた構成となるが、すべての生体親和性高分子ブロック間に細胞がある必要はなく、生体親和性高分子ブロック同士が接触している箇所があってもよい。細胞を介した生体親和性高分子ブロック間の距離、即ち、生体親和性高分子ブロックとその生体親和性高分子ブロックから最短距離に存在する生体親和性高分子ブロックを選択した際の距離は特に制限されるものではないが、使用される細胞が1〜数個集まった際の細胞の塊の大きさであることが好ましく、例えば、10μm以上1000μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
なお、本明細書中、「構造体中で細胞が均一に存在する細胞構造体」等、「均一に存在する」との表現を使用しているが、完全な均一を意味するものではなく、外部から細胞構造体の内部への培地成分などの栄養の送達を可能とすることを意味するものである。
細胞構造体の厚さ又は直径は、所望の厚さとすることができるが、下限としては、215μm以上であることが好ましく、400μm以上がさらに好ましく、500μm以上であることが最も好ましい。厚さ又は直径の上限は特に限定されないが、使用上の一般的な範囲としては3cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。また、細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは500μm以上1cm以下である。細胞構造体の厚さ又は直径を上記の範囲内とすることにより、上記細胞構造体を用いた管状構造物の作製が容易になる。
細胞構造体においては、好ましくは、生体親和性高分子ブロックからなる領域と細胞からなる領域とがモザイク状に配置されている。尚、本明細書中における「細胞構造体の厚さ又は直径」とは、以下のことを示すものとする。細胞構造体中のある一点Aを選択した際に、その点Aを通る直線の内で、細胞構造体外界からの距離が最短になるように細胞構造体を分断する線分の長さを線分Aとする。細胞構造体中でその線分Aが最長となる点Aを選択し、その際の線分Aの長さのことを「細胞構造体の厚さ又は直径」とする。
細胞構造体における細胞と生体親和性高分子ブロックの比率は特に限定されないが、好ましくは細胞1個当りの生体親和性高分子ブロックの比率が0.0000001μg以上1μg以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.000001μg以上0.1μg以下、より好ましくは0.00001μg以上0.01μg以下、最も好ましくは0.00002μg以上0.006μg以下である。細胞と生体親和性高分子ブロックの比率を上記範囲とすることより、細胞をより均一に存在させることができ、また細胞構造体の体積に対する生体親和性高分子ブロックの体積の割合及び細胞構造体の体積に対する細胞の体積の割合を、本発明において規定した範囲内とすることができる。下限を上記範囲とすることにより、上記用途に使用した際に細胞の効果を発揮することができ、上限を上記範囲とすることにより、任意で存在する生体親和性高分子ブロック中の成分を細胞に供給できる。ここで、生体親和性高分子ブロック中の成分は特に制限されないが、後述する培地に含まれる成分が挙げられる。
細胞構造体は、血管新生因子を含んでいてもよい。ここで、血管新生因子としては、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)などを好適に挙げることができる。血管新生因子を含む細胞構造体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、血管新生因子を含浸させた生体親和性高分子ブロックを使用することにより、製造することができる。血管新生を促進する観点からは、本発明の細胞構造体は、血管新生因子を含むことが好ましい。
(4)細胞構造体の製造方法
細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、細胞(線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞)とを混合することによって製造することができる。より具体的には、細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは生体親和性高分子ブロックを形成したのち、細胞を播種する方法である。具体的には、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、細胞構造体を製造することができる。例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性高分子ブロックとをモザイク状に配置する。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性基材からなるモザイク状の配列形成を促進又は制御することが好ましい。
用いられる容器としては、細胞低接着性材料又は細胞非接着性材料からなる容器が好ましく、より好ましくはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートからなる容器である。容器底面の形状は平底型、U字型、V字型であることが好ましい。
(5)管状構造物
本発明の管状構造物の製造方法については後記する。
本発明の管状構造物の一例の模式図を図1に示す。図1においては、管状構造物の内径21、外径22、及び長さ23を示す。本発明の管状構造物は、略円柱状の形状の構造体の内部に略円柱状の空洞を有する構造を有している。但し、断面の形状は厳密な円に限定されるわけではなく、楕円など円に類似する形状であればよい。
本発明の管状構造物の大きさは特に限定されず、用途に応じて所望の大きさの管状構造物を設計することができる。
本発明の管状構造物の内径は、人工血管としての用途を考慮した場合には、1mm以上6mm未満が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。
本発明の管状構造物の外径は、人工血管としての用途を考慮した場合には、3mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、3mm以上5mm以下がさらに好ましい。
内径と外径の差は、管状構造物の強度などの観点から、1mm以上9mm以下が好ましく、2mm以上5mm以下がより好ましい。
本発明の管状構造物の長さは、人工血管としての用途を考慮した場合には、3mm以上300mm以下が好ましく、3mm以上150mm以下がより好ましい。
ここで、内径及び外径とは、本発明の管状構造物の断面を円に近似した場合の内径及び外径を意味する。
(6)管状構造物の用途
本発明の管状構造物は、人工血管、人工尿管、又は人工消化管などとして使用することができ、好ましくは人工血管として使用することができる。具体的には、本発明の細胞構造体は、例えば、人工血管、人工尿管、又は人工消化管の移植が必要な部位に移植の目的で使用できる。
移植方法としては、切開、内視鏡といったものが使用可能である。
本発明によれば、管状構造物を、人工血管の移植を必要とする患者に移植する工程を含む移植方法が提供される。本発明の移植方法においては、上記した本発明の管状構造物を用いる。細胞構造体及び管状構造物の好適な範囲は前述と同様である。
更に本発明によれば、人工血管の製造のための、本発明の管状構造物の使用が提供される。細胞構造体及び管状構造物の好適な範囲は前述と同様である。
[細胞構造体の製造方法]
本発明はさらに、生体親和性高分子ブロックと細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されており、かつ任意の形状を有する細胞構造体の製造方法に関する。本発明による細胞構造体の製造方法は、基板と糸状体または針状体とを備える支持体の上記糸状体または針状体に、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を貫通させ、上記複数個の細胞構造体により上記任意の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A、および工程Aにおいて配置された細胞構造体を培養し、近接する細胞構造体同士を融合させる工程Bを含む。本発明による細胞構造体の製造方法はさらに、工程Bにおいて任意の形状を形成した細胞構造体を、糸状体または針状体から引き抜く工程Cを含んでいてもよい。
本発明による細胞構造体の製造方法は、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体を用いること以外は特許第4517125号に記載の方法に準じて実施することができる。
本発明で用いる支持体の一例の模式図を図2に示す。図2において、支持体10は、任意の形状の基板11と、基板11上に糸状体または針状体12とを有する。図2は、糸状体または針状体が、基板の基底面のほぼ法線方向に配置している態様の一例を示す。基板11と糸状体または針状体12とは、その全体が、別々の部品から構成されて固定されていてもよいし、例えば熱可塑性樹脂などから一体化して作製されていてもよい。支持体が有する糸状体または針状体の数は、1以上であり、所望の任意の数の糸状体または針状体を用いることができる。本明細書において、「ほぼ法線方向」とは、糸状体または針状体の長手方向の角度が、基板11の基底面に対して約90度(例えば、80度から100度)である任意の角度方向を意味し、好ましくは90度を意味する。他の実施形態において、基板11は、基板の糸状体または針状体が存在する側の表面を覆うシートをさらに備えていてもよい(特許第4517125号公報の図1Bを参照)。シートの表面積は、基板11の基底面の表面積よりも小さい場合、同じ場合、または大きい場合の何れでもよく、糸状体または針状体が存在する領域の基底面を覆っていることが好ましい。
別の態様としては、糸状体または針状体を法線方向ではなく、非法線方向(例えば、法線方向から角度を有する方向)に配置することもできる。「非法線方向」の糸状体または針状体の角度は、支持体10に対して1度〜79度の範囲で適宜選択することができ、例えば、10度、20度、30度、40度、50度、60度、70度などを挙げることができる。また、「非法線方向」の糸状体または針状体は、支持体から一定方向に直線状に伸びている場合もあるし、円もしくは楕円の弧の一部などのように非直線的に伸びている場合もある(特許第4517125号公報の図1C)。1つの支持体上に存在する糸状体または針状体の形状は、1つの型で統一させている必要はなく、種々の型の糸状体または針状体を組み合わせて用いることもできる(特許第4517125号公報の図1C)。これらの態様としては、法線方向の糸状体または針状態と非法線方向に一定角度を有する糸状体または針状体とを組み合わせた支持体、法線方向の糸状体または針状体と円弧の一部に対応する軌跡を有する糸状体または針状体とを組み合わせた支持体、および法線方向の糸状体または針状態と非法線方向に一定角度を有する糸状体または針状体と円弧の一部に対応する軌跡を有する糸状体または針状体とを組み合わせた支持体などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、糸状体または針状体を曲線状とし、これを円周上に配置してアーチを形成し、そのアーチに沿って細胞構造体を貫通させて融合させることができる。また、糸状体または針状体を直線状とすれば、配置の仕方によって円錐形、中空状、あるいはピラミッド状の形状にすることができる。複数の型の糸状体または針状体を組み合わせて用いることによって、複雑な形状の細胞構造体を形成することが可能である。
針状体または針状体およびシートは、いずれも細胞非接着性の材質のものであることが好ましい。基板も細胞非接着性であることが好ましいが、支持体にシートを用いる場合は、細胞構造体は基板に直接接触しないので、その材質は特に限定されない。細胞非接着性とは、細胞が、細胞外接着因子を介して壁面に付着することを阻止できる性質を意味し、細胞非接着性の機能を付与する物質(例えば、フッ素)をコーティングした素材などが上記性質を有する。好ましい実施形態において、糸状体または針状体は、ポリプロピレン製、ナイロン製、またはステンレス製である。別の好ましい実施形態において、シートは、フッ素加工またはPolyhydroxyethylmethacrylate polymer(ポリヒドロキシエチルメタクリレートポリマー)加工されたものである(ポリヘマ(poly−HEMA)加工)。
糸状体または針状体およびシートは、テフロン(登録商標)、poly−HEMA、アクリル板、塩化ビニル板、ポリエステル系樹脂板、ポリカーボネート板等の樹脂、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、POM(ポリアセタール)、PC(ポリカーボネート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、MCN(モノマーキャステイングナイロン)、6N(6ナイロン)、66N(66ナイロン)等のエンジニアリングプラスティックでもよい。これらの素材以外にも、細胞接着性を低下させた素材が使用され得るが、これらに限定されるものではない。上記支持体は、生体吸収性材料のものを使用することも考えられるが、生体吸収性材料を使用すると、分解産物や、溶け切れない残留物が残って毒性を発する可能性があるため、生体吸収性材料ではなく上記素材のものが好ましい。
上記糸状体または針状体は、細胞構造体をいわゆる串刺し状に貫通させるための棒状体であり、各糸状体または針状体は、貫通させた細胞構造体がその隣接する糸状体または針状体に貫通させた細胞構造体と接触して融合できるような間隔をあけて互いに位置決めされている。糸状体または針状体は、例えば格子状に規則正しく配置されてもよいし、ランダムに配置されてもよい。糸状体または針状体同士の間隔は、そこを貫通させる細胞構造体の大きさによって変動し得るが、好ましくは、細胞構造体の直径のほぼ100%〜110%の長さで規定される。例えば、細胞構造体の直径が1mmである場合、糸状体または針状体同士の間隔は、約1mm〜1.1mmであることが好ましい。
糸状体または針状体の断面の直径は、細胞構造体を破壊せず、そして細胞構造体の融合を妨げない限り、任意の値をとり得る。また、1つの実施形態において、針状体は、錐体の底面を基板の基底面に接する円錐体である(特許第4517125号公報の図1D)。シートは、基板の基底面のほぼ法線方向に配置される糸状体または針状体がこのシートを貫通できるように、孔を有するか、またはメッシュ状となっており、基板および糸状体または針状体から取り外すことが可能である。針状体が円錐形である特定の実施形態(特許第4517125号公報の図1D)は、針状体からのシートの取り外しが容易になり得るという点で好ましい。支持体は、主として、所望の形状の細胞構造体を得るために、細胞構造体同士が融合するまでの仮固定のために使用される。いくつかの態様においては、支持体に細胞構造体を維持したまま、臓器シミュレーターなどとして用いることもできる。この場合は、支持体を細胞構造体から引き抜いてもよく、引き抜かなくてもよい。
また、他の実施形態において、糸状体は、例えば、縫合糸などであってもよい。好ましくは、この糸状体として針付きの縫合糸を使用することができる。例えば、糸の一端を基板上に固定し、他端を、鋭利な形状(例えば、針)とすることによって、糸状体に細胞構造体を貫通させるのをより容易にすることができる(特許第4517125号公報の図1E)。また、細胞構造体を糸に通し、糸を緊張させた状態で固定して細胞構造体を配列させることも可能である(特許第4517125号公報の図1F)。第1の基板上に一端を固定した糸に、所定の複数個の細胞構造体を順番に貫通させて串刺しの状態にした後、細胞構造体を貫通させるのに用いた糸の先端を第2の基板上に固定することもできる。また、第1の基板と第2の基板との間の距離に対して十分に長い糸を使用し、細胞構造体を貫通させた糸を第1の基板と第2の基板の間で数回往復させて、隣り合う細胞構造体と接触可能であるような間隔になるように固定することも可能である。
本発明によれば、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を、上記の支持体上の任意の位置空間に配置する。複数個の細胞構造体を、支持体上の任意の位置空間に配置する際には、複数個の細胞構造体を、支持体上の糸状体または針状体に貫通させる。この工程は、例えば、細胞構造体を含むピペットの先端を針状体の先端に向け、ピペットの先端とは反対側から圧力をかけて細胞構造体を押し出すことによって実施することができる(特許第4517125号公報の図2A)。押し出された細胞構造体は、針状体に突き刺さり、所定の位置に固定される。あるいは、他の実施形態において、この工程は、細胞構造体を乗せた小型のロボットアームを用い、針状体の上から細胞構造体を貫通させることによって行うこともできる(特許第4517125号公報の図2B)。また、ピンセットなどで細胞構造体を固定して、糸状体(好ましくは、針付きの糸)を細胞構造体に貫通させることも可能である。但し、本発明の方法は、このような工程に限定されるものではない。細胞構造体は、1本の糸状体または針状体上に複数の細胞構造体が接触するように貫通させることができる(特許第4517125号公報の図2C)。細胞構造体同士の接触によって、細胞構造体は縦方向(垂直方向(例えば、z方向))に融合し得る。また、各糸状体または針状体は、細胞構造体を貫通させたときに隣り合う細胞構造体と接触可能であるような間隔で位置決めされているので、横方向(水平方向および奥行き方向(例えば、x方向およびy方向))にも接触して融合し得る。従って、これらの細胞構造体の融合を通して、支持体上に、任意の形状を有する細胞構造体を構築することができる。
上記によって接触し融合した細胞構造体を回収することによって、任意の形状を有する細胞構造体を取得することができる。細胞構造体の回収は、融合させた細胞構造体を糸状体または針状体から引き抜く工程によって達成することができる。細胞構造体の引き抜きは、細胞構造体をピンセットなどで直接固定して融合した細胞構造体から糸状体または針状体を引き抜いて達成される場合もあるし、あるいは支持体からシートを取り外す工程によって達成される場合もある。シートの取り外しは、固定されたシートから支持体を引き抜くことによって行われてもよいし、固定された支持体からシートを離すことによって行われてもよい。これら一連の工程を包含する方法によって、所望のとおりに空間的に配置された任意の形状を有する細胞構造体が提供される。
[管状構造物の製造方法]
上記の(4)細胞構造体の製造方法により得られた細胞構造体(モザイク細胞塊)は、例えば、
(a)細胞構造体(モザイク細胞塊)同士を融合させる、又は
(b)分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる、
などの方法により、本発明の管状構造物を製造することができる。融合の方法、およびボリュームアップの方法は特に限定されない。細胞構造体を融合させる場合には、例えば、複数個の生体親和性高分子ブロックと複数個の細胞とを含み、上記複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の上記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体を複数個融合させることができる。
本発明の管状構造物の製造方法にかかる「生体親和性高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と生体親和性高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、本明細書中上記と同様である。
上記融合前の各細胞構造体の厚さ又は直径は好ましくは10μm以上1cm以下であり、より好ましくは10μm以上2000μm以下、更に好ましくは15μm以上1500μm以下、最も好ましくは、20μm以上1300μm以下である。融合後の厚さ又は直径は好ましくは400μm以上3cm以下であり、より好ましくは500μm以上2cm以下であり、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
複数個の細胞構造体の融合は、本明細書中の[細胞構造体の製造方法]において記載した方法で行うことが好ましい。
即ち、融合は、基板と糸状体または針状体とを備える支持体の上記糸状体または針状体に、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の上記細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を貫通させ、記複数個の細胞構造体により管状構造物の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A1、および工程A1において配置された細胞構造体を培養し、近接する細胞構造体同士を融合させる工程B1を含む方法により行うことが好ましい。ここで用いる細胞は、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞を含む。
複数個の細胞構造体により管状構造物の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A1は、基板と糸状体または針状体とを備える支持体を用いて、細胞構造体を、ほぼ円周上の位置に配置することによって、細胞構造体の管状構造物を形成することができる。細胞構造体を、ほぼ円周状に配置する方法の第一の例としては、例えば、図4に示す配置で針状体(縦9本×横9本)を有する支持体を使用し、上記支持体上の針状体のうちの一部の針状体(即ち、ほぼ円周上の位置に対応する針状体)に対して、細胞構造体を貫通させることが挙げられる。図4においては、上から1段目及び9段目においてはそれぞれ左から3〜7番目までの5本の針状体32に細胞構造体を貫通させ、上から2段目及び8段目においてはそれぞれ左から2〜8番目までの7本の針状体32に細胞構造体を貫通させ、上から3段目及び7段目においてはそれぞれ左から1〜3番目及び左から7〜9番目までの6本の針状体32に細胞構造体を貫通させ、上から4段目〜6段目においてはそれぞれ左から1番目、2番目、7番目及び9番目の4本の針状体32に細胞構造体を貫通させている。一方、針状体31は、細胞構造体を貫通させていない針状体である。
細胞構造体を、ほぼ円周状に配置する方法の第二の例としては、基板上に、糸状体または針状体を、ほぼ円周上に配置させておき、これらの糸状体または針状体に細胞構造体を貫通させることが挙げられる。
糸状体または針状体に貫通させた複数個の細胞構造体は、培養することにより、近接する細胞構造体同士を融合させることができ、これにより、細胞構造体の管状構造物が形成される。
更に、本発明においては、工程B1において管状構造物の形状を形成した細胞構造体を、糸状体または針状体から引き抜く工程C1、及び工程C1で得た細胞構造体を培養する工程D1を含めることができる。細胞構造体を所定の期間培養することによって、管状構造物の強度を高めることができる。
細胞構造体の培養は、当業者に公知の常法で行うことができる。例えば、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)専用培地、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)専用培地、およびヒト膀胱平滑筋細胞(HBdSMC)専用培地を混合することにより作製した培地中において、37℃で5%CO2の条件下において培養を行うことができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)
リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)として以下のCBE3を用意した(国際公開WO2008/103041号公報に記載)。
CBE3:
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)633
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
GRAVY値:−0.682
1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(国際公開WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
[実施例2] リコンビナントペプチド多孔質体の作製
[PTFE厚・円筒形容器]
底面厚さ3mm、直径51mm、側面厚さ8mm、高さ25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製円筒カップ状容器を用意した。PTFE製円筒カップ状容器は、曲面を側面としたとき、側面は8mmのPTFEで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も3mmのPTFEで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。よって、円筒カップ状容器の内径は43mmになっている。以後、この容器のことをPTFE厚・円筒形容器と呼称する。
PTFE厚・円筒形容器にCBE3水溶液を流し込み、真空凍結乾燥機(TF5−85ATNNN:宝製作所社製)内で冷却棚板を用いて底面からCBE3水溶液を冷却した。CBE3水溶液の最終濃度は4質量%であり、水溶液量8mLである。棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。得られた凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。上記により多孔質体を得た。
多孔質体を作製する際、それぞれの水溶液は、底面から冷却されるため、円中心部の水表面温度が最も冷却されにくい。従って、円中心部の水表面部分が、溶液内で最も温度の高い液温となるため、円中心部の水表面部分の液温を測定した。以下、円中心部の水表面部分の液温のことを内部最高液温と称する。
[実施例3]凍結工程での内部最高液温の測定
溶媒を凍結する際の温度プロファイルを図3に示す。融点以下で未凍結状態を経た後、凝固熱が発生し温度上昇が始まり、この段階で実際に氷形成が始まる。その後、温度は0℃付近を一定時間経過していき、この段階では、水と氷の混合物が存在する状態となっていた。最後0℃から再び温度降下が始まるが、この段階では、液体部分はなくなり氷となる。測定している温度は氷内部の固体温度となり、液温ではなくなる。上記の通り、凝固熱が発生する瞬間の内部最高液温を見れば、内部最高液温が未凍結状態で「溶媒融点−3℃」を経た後に凍結したかどうかが分かる。
凝固熱が発生する瞬間の未凍結状態での内部最高液温は、−8.8℃であった。凝固熱が発生する瞬間の内部最高液温を見れば、内部最高液温が未凍結状態で「溶媒融点−3℃」以下であることが分かる。
[実施例4] リコンビナントペプチドブロックの作製(多孔質体の粉砕と架橋)
実施例2で得られたCBE3多孔質体をニューパワーミル(大阪ケミカル社製、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm、53〜106μm、106μm〜180μmの顆粒形態のCBE3ブロックを得た。その後、窒素下で160℃で熱架橋(架橋時間は8〜48時間)を施して、リコンビナントペプチドブロックを得た。以下、すべて53〜106μmのブロックを用いた。
[比較例1] スフェロイドの作製
細胞のみのスフェロイドの作製は、以下の様にして行った。下記の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)(10000cells/well)、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)(8000 cells/well)およびヒト膀胱平滑筋細胞(HBdSMC)(2000 cells/well)を各細胞の専用培地(下記)を等量ずつ含む培地200μl/wellに懸濁したものを調製し、PrimeSurface 96-well plate (住友ベークライト)の各ウェルに撒いた。培養はCO2インキュベータ中にて37℃で3日間行った。
各細胞及びその専用培地は、TAKARA BIO INC.から入手した。
NHDFは、http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007858を参照。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(成人):Normal Human Dermal Fibroblasts (NHDF), adult donor、Takara、C-12302
専用培地は、線維芽細胞増殖培地キット:Fibroblast Growth Medium Kit、Takara、C-23110
HUVECは、http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007840を参照。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells:HUVEC)、Takara、C-12200
専用培地は、内皮細胞増殖培地2キット:Endothelial Cell Growth Medium 2 Kit、Takara、C-22111
HBdSMCは、http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007871を参照。
ヒト膀胱平滑筋細胞(Human Bladder Smooth Muscle Cells:HBdSMC)、Takara、C-12571
専用培地は、平滑筋細胞増殖培地2キット:Smooth Muscle Cell Growth Medium 2 Kit、Takara、C-22062
上記の方法で調製したスフェロイドを、図2及び図4に示す配置を有する支持体に、バイオ3Dプリンター「レジェノバ」(登録商標)(株式会社サイフユーズ)を用いて積層した後、スフェロイド作製と同じ組成の培地を用いて3日間培養した。図4において、針状体1本の直径は180μmであり、針状体の間隔は400μmである。
引張り強度試験用の管状構造物では、1個の管状構造物の作製について、9×9に配置された針状体のうちリング状の48か所の針状体(図4の符号32)にスフェロイドを貫通させた。また、各針状体1本について、スフェロイドは8個(即ち、8層)貫通させた。即ち、管状構造物1個について、1層につきスフェロイド48個からなる層を8層設けたので、スフェロイドの総数は384個である。製造された管状構造物は、外径3.6mm、内径2mm、及び長さ3.2mmであった。
透水性試験用の管状構造物では、1個の管状構造物の作製について、9×9に配置された針状体のうちリング状の48か所の針状体(図4の符号32)にスフェロイドを貫通させた。また、各針状体1本について、スフェロイドは18個(即ち、18層)貫通させた。即ち、管状構造物1個について、1層につきスフェロイド48個からなる層を18層設けたので、スフェロイドの総数は864個である。製造された管状構造物は、外径3.6mm、内径2mm、及び長さ7.2mmであった。
[実施例5] リコンビナントペプチドブロックを用いた細胞構造体(モザイク細胞塊)の作製
NHDF(5000 cells/well)、HUVEC(4000 cells/well)およびHBdSMC(1000 cells/well)(比較例1に記載したもの)に実施例4で作製したCBE3ブロック(53〜106μm) (7.5μg/well)を加えたものを各細胞の専用培地(比較例1に記載したもの)を等量ずつ混合した培地200μl/wellに懸濁してPrimeSurface 96-well plate(住友ベークライト)の各ウェルに撒いた。次にプレート遠心機で600g、5分間遠心することにより細胞とCBE3ブロックとの混合物をウェルの底に集めた後、CO2インキュベータ中にて37℃で3日間培養した。
また、モザイク細胞塊を積層可能なサイズで調製するための条件の検討を行った。総細胞数(1×104、1.5×104、又は2×104 cells/well)とCBE3ブロック量(3.75、5.25、7.5μg/well)の計9通りの条件でモザイク細胞塊を作製したときの結果を図5に示す。これらはいずれも積層可能なサイズであった。本実施例では構造体の強度をより高くなることを意図して、総細胞数1×104cells/well、CBE3ブロック量7.5μg/wellの条件を採用した。
上記の方法で調製したモザイク細胞塊を、図2及び図4に示す配置を有する支持体に、バイオ3Dプリンター「レジェノバ」(登録商標)(株式会社サイフユーズ)を用いて積層した後、モザイク細胞塊と同じ組成の培地を用いて3日間培養した。図4において、針状体1本の直径は180μmであり、針状体の間隔は400μmである。
引張り強度試験用の管状構造物では、1個の管状構造物の作製について、9×9に配置された針状体のうちリング状の48か所の針状体(図4の符号32)にモザイク細胞塊を貫通させた。また、各針状体1本について、モザイク細胞塊は8個(即ち、8層)貫通させた。即ち、管状構造物1個について、1層につきモザイク細胞塊48個からなる層を8層設けたので、モザイク細胞塊の総数は384個である。製造された管状構造物は、外径3.6mm、内径2mm、及び長さ3.2mmであった。
透水性試験用の管状構造物では、1個の管状構造物の作製について、9×9に配置された針状体のうちリング状の48か所の針状体(図4の符号32)にモザイク細胞塊を貫通させた。また、各針状体1本について、モザイク細胞塊は18個(即ち、18層)貫通させた。即ち、管状構造物1個について、1層につきモザイク細胞塊48個からなる層を18層設けたので、モザイク細胞塊の総数は864個である。製造された管状構造物は、外径3.6mm、内径2mm、及び長さ7.2mmであった。
その後、細胞構造体の融合体である管状構造物を、各針状体から抜去した後、3、7、14、21および28日間培養を行った。
[実施例6] 透水性試験
透水性試験は、ISO7198の8.2.3" Determination of integralwater permeability/leakage"を参考にして実施した。透水性試験では流路内圧を30秒間隔で段階的に4、8、12、16kPaの順に上げていく方法を用いた。この過程で構造体の側壁からの液の漏出または構造体の亀裂による液漏れの有無を観察した。なお、生体組織を扱っているため、流路内の溶媒は水でなくPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用いた。装置の全体図を図6に示す。減圧器2により4、8、12、16kPaとし、ポンプは0.1MPa以上である。
比較例1で作製した細胞のみスフェロイド由来の管状構造物、及び実施例5で作製したモザイク細胞塊由来の管状構造物を使用して、上記した透水性試験を行った。
その結果、図7及び図8に示すように、細胞のみのスフェロイド由来の管状構造物では、水圧を上げても透水性を示すことはなく、破断強度となった16kPaの水圧の際にスフェロイド由来構造体は壊れ、水が勢いよく漏れた。このことから、3日間培養した細胞のみスフェロイド由来構造体は、破断強度が16kPaであること、そして破断しない限り透水性を有さないことが示された。
実施例5で作製した3日間培養したモザイク細胞塊由来の管状構造物の場合では、水圧が4kPaの時点でも透水性を示した。その後、水圧を上げても透水性は確認され、16kPaの水圧の際にモザイク細胞塊由来の管状構造物は壊れ、水が勢いよく漏れた。このことから、3日間培養したモザイク細胞塊由来の管状構造物の破断強度は、細胞のみスフェロイド由来の管状構造物と同様に16kPaであること、そして、細胞のみスフェロイド由来の管状さ構造物とは異なり、破断しない場合でも高い透水性を示すことが分かった。
[実施例7] モザイク細胞塊由来の管状構造物の引張り強度試験
引張り強度試験は、ISO 7198の8.3.1"Determination of circumferential tensile strength"に準じて実施した。装置はTissue Puller-560TP(DMT社)を用いた。本装置に管状構造物を取り付け、一定速度で管状構造物の円周方向に引っ張ったときの最大引張り荷重(mN)を測定した。さらにこの値を管状構造物片の長さで割った値を管状構造物の長さ当りの引張り強度(mN/mm)として示した。
実施例5で作製した、支持体上に積層及び融合した管状構造物を支持体から抜去した後に3日、7日、14日、21日、及び28日培養した後の管状構造物を用いて、上記の通り引張り強度試験を行った。
3日、7日、14日、21日、及び28日培養した後の管状構造物の最大引張り荷重(mN)及び長さ当りの引張り強度(mN/mm)を表1に示す。長さ当りの引張り強度(mN/mm)は図9にも示す。
上記の結果から、3日培養した管状構造物でも実用上十分な強度を有しているが、更に長期間培養することにより、モザイク細胞塊由来の管状構造物は、強度が向上することが分かった。3日培養した管状構造物に比べて、28日培養した管状構造物では8倍以上の強度を有することが分かった。
21 内径
22 外径
23 長さ
10 支持体
11 基板
12 糸状体または針状体
1 重量計
2 減圧器
3 ポンプ
4 圧力計
5 注入チューブ
6 検体
7 栓
8 気圧式送液用ボトル
9 1%ヒト血清含有PBS(リン酸緩衝生理食塩水)

Claims (3)

  1. 生体親和性高分子ブロックと、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、前記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが1μm以上1000μm以下であり、複数個の前記細胞間の隙間に複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体により構成されており、生体親和性高分子がリコンビナントゼラチン又は化学合成ゼラチンであり、内径が1mm以上である人工血管の製造方法であって、
    基板と糸状体または針状体とを備える支持体の前記糸状体または針状体に、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の前記細胞間の隙間に複数個の前記高分子ブロックが配置されている、複数個の細胞構造体を貫通させ、前記複数個の細胞構造体により管状構造物の形状が形成されるように細胞構造体を配置する工程A1、ここで前記細胞は、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞とを含み、および
    工程A1において配置された細胞構造体を培養し、近接する細胞構造体同士を融合させる工程B1、を含み、
    更に、工程B1において管状構造物の形状を形成した細胞構造体を、糸状体または針状体から引き抜く工程C1、及び工程C1で得た細胞構造体を7日間以上培養する工程D1を含む、人工血管の製造方法
  2. 前記細胞構造体が、線維芽細胞、血管内皮細胞および平滑筋細胞の合計細胞数について細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含み、
    線維芽細胞が皮膚線維芽細胞であり、血管内皮細胞が臍帯静脈血管内皮細胞であり、平滑筋細胞が膀胱平滑筋細胞であり、
    前記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが10μm以上300μm以下であり、
    前記管状構造物が、内径1mm以上6mm未満、外径3mm以上10mm以下、及び長さ3mm以上300mm以下を有する、
    請求項1に記載の人工血管の製造方法。
  3. 前記リコンビナントペプチド又は化学合成ゼラチンが、
    配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
    配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
    配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
    の何れかであり、
    前記生体親和性高分子ブロックにおいて、前記生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されており、
    前記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる顆粒の形態にある、
    請求項1又は2に記載の人工血管の製造方法。
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