JP5990298B2 - 細胞移植用細胞構造体および細胞移植用細胞集合体 - Google Patents

細胞移植用細胞構造体および細胞移植用細胞集合体 Download PDF

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Description

本発明は、細胞移植用細胞構造体および細胞移植用細胞集合体に関し、詳しくは、移植後、移植された細胞の壊死を抑制し、移植部位に血管形成が可能な細胞移植用細胞構造体、および、移植部位に血管形成が可能な細胞移植用細胞集合体に関する。
現在、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器の再生を計る再生医療の実用化が進められている。再生医療は、本来生体が持っている自然治癒能力だけでは回復出来なくなった生体組織を、細胞、足場、成長因子の三因子を使って元の組織と同じような形態や機能を再び作り出す新たな医療技術である。近年では、細胞を使った治療が徐々に実現されはじめてきた。例えば、自家細胞を用いた培養表皮や、自家軟骨細胞を用いた軟骨治療、間葉系幹細胞を用いた骨再生治療、筋芽細胞を用いた心筋細胞シート治療、角膜上皮シートによる角膜再生治療、神経再生治療などが挙げられる。これら新たな治療は、従来の人工物による代替医療(人工骨補填剤やヒアルロン酸注射)とは異なり、生体組織の修復・再生を図る為、高い治療効果を得られる。実際、一部、自家細胞を用いた培養表皮や培養軟骨といった製品が上市されてきた。
ここで、例えば、細胞シートを用いた心筋の再生にあっては、厚みのある組織を再生するには、細胞シートの多層構造体が必要であると考えられる。近年、岡野らは温度応答性培養皿を用いた細胞シートを開発した。細胞シートはトリプシンのような酵素処理が必要でないため、細胞と細胞との結合および接着蛋白が保持される。(非特許文献1から6)。このような細胞シート製造技術は、心筋組織の再生に有用であると期待される(非特許文献7)。また岡野らは200μm以上の厚みを実現することは不可能であると考え、細胞シートに血管網を形成すべく、血管内皮細胞を一緒に導入した細胞シートの開発を行っている(非特許文献8)。
また、骨再生においても、基材に培養細胞を付与した骨再生シートが開発されている。
間葉系幹細胞をシート状に培養した培養細胞シートと生分解性物質をシート状に形成した生分解シートとを積層してなる骨再生シート(特許文献1)が提案されている。また、多孔質シート上に間葉系細胞から分化させた間葉系組織前駆体細胞と細胞外基質とが付着している間葉系組織再生誘導用シートもある(特許文献2)。その後、特許文献3では、培養手法の開発・最適化によって、200μm以上の厚さのシートを形成できるとあるが、約210μmの皮質骨組織層が形成されていることを確認したと記載されている。
さらに細胞で構成された3次元構造体には栄養分が拡散だけでは十分に浸透していかないことを解決する手段として、ひとつにはコラーゲンを用いたゲル包埋培養が考案された(非特許文献9)。また、特許文献4では、無機セラミックスビーズで細胞を連結することにより、3次元培養が可能であると述べている。
特開2003−275294号公報 特開2006−116212号公報 特開2009−240766号公報 特開2004−267562号公報
Shimizu, T. et al., Circ. Res. 90, e40-48 (2002) Kushida, A. et al., J. Biomed. Mater. Res. 51, 216-223 (2000) Kushida, A. et al., J. Biomed. Mater. Res. 45, 355-362 (1999) Shimizu, T., Yamato, M., Kikuchi, A. & Okano, T., Tissue Eng.7, 141-151 (2001) Shimizu, T et al., J. Biomed. Mater. Res. 60,110-117(2002) Harimoto, M. et al., J. Biomed. Mater. Res. 62, 464-470 (2002) Shimizu, T., Yamato, M., Kikuchi, A. & Okano, T., Biomaterials 24, 2309-2316 (2003) Inflammation and Regeneration vol.25 No.3 2005, p158-159. 第26回 日本炎症・再生医学会 ―炎症学と再生医学の融合を目指して― 岡野光夫 Sustained growth and three-dimensional organization of primary mammary tumor epithelial cells embedded in collagen gels. J Yang, J Richards,P Bowman, R Guzman, J Enami, K McCormick, S Hamamoto, D Pitelka, and S Nandi. PNAS July 1, 1979 vol. 76 no. 7 3401-3405
再生医療に関する現在の技術では、主に、移植する細胞を薄いシート状にして移植したり、懸濁液の状態で移植したりするため、十分な厚みを有した組織を提供できない。生体組織は元来厚みを有するものであり、厚みを有するがために、心臓を拍動させるような筋力を可能としたり、関節軟骨にあって潤滑な動きを可能としたりしている。細胞を用いた組織再生の全般においては、厚みを有した組織を提供できないことが大きな課題であると考えられている。
これまでの細胞シートでは血管網の形成ができないため、十分な厚みのある組織の再生は困難であった(非特許文献5及び7)。その理由は、細胞シートに厚みを持たせることで、中心部の細胞への栄養供給が途絶えてしまい、細胞が死滅してしまうことにある。また、血管内皮細胞を一緒に導入した細胞シート(非特許文献8)が開発されているが、これは、目的の細胞のほかに、血管内皮細胞という別の細胞源を用意しなければならないことや、細胞シートに均一に血管を誘導することが困難であること、仮にこの手段で、栄養分の送達経路を提供できたとしても、この手法では作製した栄養送達経路を外部の栄養送達経路と緻密に結合させねばならないことなど、多くの問題を抱えており、現実的な解決策とはなっていない。
また、上記した特許文献1及び2に記載の発明は培養骨芽細胞の付着したシートを体内に入れ、体内での膜性骨化によって骨芽細胞から皮質骨を形成させる方法である。しかしながら、骨芽細胞様細胞は積層して培養することができないという問題があるため骨芽細胞層を用いたシートでは細胞層の厚さが100μmを超える再生シートを提供できなかった。
以上のように、従来においては、多くの組織修復において細胞を厚みのある組成物として提供することは困難な課題であった。その主たる原因は、細胞で構成された3次元構造体には、栄養分が拡散だけでは十分に浸透していかないことにある。これを解決する手段として、ひとつにはコラーゲンを用いたゲル包埋培養が考案された(非特許文献9)。しかし、ゲルに包埋した細胞では、細胞がゲル中心部から外側へと移動してしまうため、ゲル中で細胞が均一に存在せず、中心部の細胞密度が低くなることから、根本的に本課題を解決することはできていない。また、ゲル包埋で作製した細胞3次元構造体では、3次元構造体同士を結合・融合することができず、細胞播種時に作製したサイズ以上の3次元構造体を形成させることができない。従って、小さいゲルを作製してから、ゲル同士を融合させることで、均一に細胞が分布した構造体を作製する、という手段をとることもできない。
また上記の通り、特許文献4では、無機セラミックスビーズで細胞を連結することにより、3次元培養が可能であると述べている。しかし、無機セラミックスでは、水分の保持・液交換・栄養の拡散・緩衝能が悪く、現実的に厚みを有した細胞組成物を提供することはできていない。実際、特許文献4の実施例においても、150〜460μmの粒子に細胞を接着させ、その周囲にPLLAの厚い不織布(1cm)を積層させて見かけの厚みを増やしているだけであり、実際の細胞含有層は、無機セラミックスビーズ表面上のせいぜい数十μm層でしかない。仮に細胞を有さない1cmのPLLA不織布を構造体と見なしたとしても、著しく不均一な細胞分布の構造体でしかない。このように、現在までは構造体中の細胞分布が不均一な細胞3次元構造体、実質の細胞層が薄い構造体しか提供することはできていなかった。
前述したように、従来の技術では、細胞移植に適した十分な厚み、移植した細胞の壊死の抑制、血管形成に対し、十分に要求を満たした生体材料は提供されておらず、これらの要求を満たす、細胞移植用生体材料が望まれていた。
そこで、本発明は、細胞移植のために適した厚みを有することが可能であり、移植された細胞が壊死することを抑制し、移植後、移植部位に、血管を形成し得る細胞移植用細胞構造体を提供することを課題とした。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、細胞移植に利用する細胞移植用細胞構造体として、生体親和性を有する高分子ブロック(生体親和性を有した高分子材料を含有する塊)と細胞とを特定の配置としたものを用いることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の細胞移植用細胞構造体は、生体親和性を有する高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞と、を含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されていることを特徴とするものである。
本発明において、高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下であることが好ましく、10μm以上300μm以下であることがより好ましい。また、本発明の細胞移植用細胞構造体は、厚さ又は直径が400μm以上3cm以下であることが好ましく、720μm以上1cm以下であることが好ましい。更に、前記高分子ブロックと前記細胞との比率が、細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下であることが好ましい。更にまた、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって製造されることが好ましい。
好ましくは、生体親和性を有する高分子が、生分解性材料であり、ポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンであるものを例示することができ、好ましくは、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、又はレトロネクチンである。
また、好ましくは、生体親和性を有する高分子が架橋されているものであり、より好ましくは、架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施されるものである。
好ましくは、生体親和性を有する高分子が、リコンビナントペプチドであり、また、細胞接着性シグナルを一分子中に2以上有することである。好ましくは、リコンビナントペプチドが、
式:A−[(Gly−X−Y)nm−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるものであり、より好ましくは、
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)633−Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるものである。また、好ましくは、リコンビナントペプチドが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有するものである。また、本発明の細胞移植用細胞構造体は、血管新生因子を含むことが好ましい。
本発明にかかる細胞に関し、好ましくは、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞および成熟細胞からなる群から選択される細胞であり、本発明の細胞移植用細胞構造体として、非血管系の細胞を含むものも好適に用いることができ、細胞が非血管系の細胞のみである態様も好適に用いることができる。細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含むことが好ましく、この場合、細胞構造体の、中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有することがより好ましく、中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有することが更に好ましい。また、細胞構造体の、中心部の血管系の細胞密度が、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有することが好ましい。なお、本発明の細胞移植用細胞構造体には、細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む本発明の細胞移植用細胞構造体を用いて、血管形成されたものも含む。
また、本発明の細胞移植用細胞集合体は、非血管系細胞と血管系細胞で構成される細胞移植用細胞集合体であって、
(1)細胞集合体の中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有すること、および
(2)中心部の血管系の細胞密度が、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有すること、
のうち少なくとも一方の要件を満たすことを特徴とするものである。
本発明の細胞移植用細胞集合体は、前記(1)および(2)の両方の要件を満たすことが好ましく、前記中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有することも好ましい。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、細胞移植のために適した厚みを有することが可能であり、かつ、生体親和性を有する高分子ブロック(生体親和性を有した高分子材料を含有する塊)と細胞とがモザイク状に3次元配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体を形成され、外部から細胞3次元構造体の内部への栄養送達を可能となる。これにより、本発明の細胞移植用細胞構造体を用いて、細胞移植を行うと、移植された細胞の壊死を抑制し、移植が可能となる。更に、使用する細胞種として、血管系の細胞を使用しない場合であっても、移植後、移植部位に、血管を形成し得る。また、本発明の細胞移植用細胞集合体は、移植後、移植部位に、血管を形成し得る。
図1は、リコンビナントペプチドμブロックで作製したモザイク細胞塊のDay7 (軟骨分化培地)の実体顕微鏡写真を示す。 図2は、天然ゼラチンμブロックで作製したモザイク細胞塊のDay7 (軟骨分化培地)の実体顕微鏡写真を示す。 図3は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片写真(HE染色 ×5倍)を示す。 図4は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片写真(HE染色 ×10倍)を示す。 図5は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片写真(HE染色 ×40倍)を示す。 図6は、モザイク細胞塊の融合を示す。 図7は、モザイク細胞塊の融合(3つのモザイク細胞塊を融合)のHE染色切片写真(×5倍)を示す。 図8は、モザイク細胞塊の融合(3つのモザイク細胞塊を融合)のHE染色切片写真(×10倍)を示す。 図9は、モザイク細胞塊の融合(3つのモザイク細胞塊を融合)のHE染色切片写真(×20倍)を示す。 図10は、モザイク細胞塊の融合(3つのモザイク細胞塊を融合)のHE染色切片写真(×5倍)を示す。 図11は、モザイク細胞塊の融合(3つのモザイク細胞塊を融合)のHE染色切片写真(×10倍)を示す。 図12は、ボリュームアップしたモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真(経時変化)を示す。 図13は、ボリュームアップしたモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真からの直径の経時変化を示す。 図14は、ボリュームアップしたモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真からの面積の経時変化を示す。 図15は、ボリュームアップしたモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真から計算で算出した体積(4/3πr3)の経時変化を示す。 図16は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片(Day7(増殖培地下)、×5倍)を示す。 図17は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片(Day7(増殖培地下)、×10倍)を示す。 図18は、ボリュームアップしたDay21(増殖培地下でリコンビナントペプチドブロックを追加)のHE切片写真(×5倍)を示す。 図19は、ボリュームアップしたDay21(増殖培地下でリコンビナントペプチドブロックを追加)HE切片写真(×40倍) 図20は、ボリュームアップしたDay21(軟骨分化培地下でリコンビナントペプチドブロックを追加)のHE切片写真(×5倍、×20倍)を示す。 図21は、GAGスペクトルデータを示す。 図22は、モザイク細胞塊中のGAG産生量の経時変化を示す。 図23は、モザイク細胞塊(Day7)中の細胞が産生・保持しているATP量を示す。 図24は、PLGAμブロックで作製したモザイク細胞塊のDay2(増殖培地)の実体顕微鏡写真を示す。 図25は、心筋細胞とリコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊が全体で同期拍動している様子を示す。 図26は、GFP発現HUVECとリコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の蛍光顕微鏡写真、及び顕微鏡写真を示す。(5万cells+0.03mgのモザイク細胞塊と、30万cells+0.2mgのモザイク細胞塊) 図27は、巨大化させたモザイク細胞塊の融合体の実体顕微鏡写真を示す。 図28は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の切片写真(HE染色)を示す。 図29は、hMSCの細胞塊の切片写真(HE染色)を示す。 図30は、実施例20−(1)で製造した、リコンビナントペプチドを用いたモザイク細胞塊の切片写真(CD29抗体およびCD31抗体を用いて免疫染色)を示す。 図31は、実施例20−(2)Aで製造した、リコンビナントペプチドを用いたモザイク細胞塊の切片写真(CD29抗体およびCD31抗体を用いて免疫染色)を示す。 図32は、実施例20−(2)Bで製造した、リコンビナントペプチドを用いたモザイク細胞塊の切片写真(CD29抗体およびCD31抗体を用いて免疫染色)を示す。 図33は、実施例20−(3)で製造した、リコンビナントペプチドを用いたモザイク細胞塊の切片写真(CD29抗体およびCD31抗体を用いて免疫染色)を示す。 図34は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例19−(1))移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図35は、hMSCの細胞塊(比較例1)移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図36は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例20−(1))移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図37は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例20−(2))A移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図38は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例20−(3))移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図39は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例20−(2)A移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図40は、リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊(実施例20−(2)B移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。 図41は、細胞塊(比較例2のB)移植後の、移植部位の組織切片写真(HE染色)を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、生体親和性を有する高分子ブロックと少なくとも一種類の細胞とを含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されていることを特徴とするものである。実施態様として、生体親和性を有する、複数個の高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、該複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が挙げられる。
本発明にかかる高分子ブロックの形状は特に限定されるものではないが、例えば、不定形、球状、粒子状、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘状、扁平状およびシート状であり、好ましくは、不定形、球状、粒子状、粉状および多孔質状であり、より好ましくは不定形である。不定形とは、表面形状が均一でないもののことを示し、例えば、岩のような凹凸を有する物を示す。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されているが、ここで、「細胞間の隙間」とは、構成される細胞により、閉じられた空間である必要はなく、細胞により挟まれていればよい。なお、すべての細胞間に隙間がある必要はなく、細胞同士が接触している箇所があってもよい。高分子ブロックを介した細胞間の隙間の距離、即ち、ある細胞とその細胞から最短距離に存在する細胞を選択した際の隙間距離は特に制限されるものではないが、高分子ブロックの大きさであることが好ましく、好適な距離も高分子ブロックの好適な大きさの範囲である。
また、本発明にかかる高分子ブロックは、細胞により挟まれた構成となるが、すべての高分子ブロック間に細胞がある必要はなく、高分子ブロック同士が接触している箇所があってもよい。細胞を介した高分子ブロック間の距離、即ち、高分子ブロックとその高分子ブロックから最短距離に存在する高分子ブロックを選択した際の距離は特に制限されるものではないが、使用される細胞が1〜数個集まった際の細胞の塊の大きさであることが好ましく、例えば、10μm以上1000μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
なお、本明細書中、「構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体」等、「均一に存在する」との表現を使用しているが、完全な均一を意味するものではなく、本発明の作用効果である、外部から細胞3次元構造体の内部への栄養送達を可能とすること、移植された細胞の壊死を防止すること、更に、移植後、移植部位に、血管を形成し得ることが可能となる範囲で、分布していることを意味するものである。
(1)生体親和性を有する高分子材料
(1−1)高分子材料
本発明で用いる生体親和性を有する高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性材料で構成されることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、PTFE、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン、および、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)の群から選択される少なくとも1つの材料である。生分解性材料としては、具体的にはポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA(ポリ乳酸−co−グリコール酸)、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、および、キトサンの群から選択される少なくとも1つの材料である。上記の中でも、ポリペプチドが特に好ましい。尚、これら高分子材料には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよく、具体的な方法としては1.「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、2.「基材表面のアミノ化、カチオン化」、3.「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法が利用され得る。
ポリペプチドの種類は生体親和性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチンが好ましく、最も好ましくはゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲンである。本発明で用いるためのゼラチンとしては、天然ゼラチン、又はリコンビナントペプチドが好ましい。さらに好ましくは、リコンビナントペプチドである。ここでいう天然ゼラチンとは天然由来のコラーゲンより作られたゼラチンを意味する。リコンビナントペプチドについては、本明細書中後記する。
本発明で用いる生体親和性を有する高分子の親水性値「1/IOB」値は、0から1.0が好ましい。より好ましくは、0から0.6であり、さらに好ましくは0から0.4である。IOBとは、藤田穆により提案された有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基く、親疎水性の指標であり、その詳細は、例えば、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。簡潔に言えば、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)、無機性値(IV)を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図の詳細については、「新版有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生等著、三共出版、2008)を参照されたい。本明細書中では、IOBの逆数をとった「1/IOB」値で親疎水性を表している。「1/IOB」値が小さい(0に近づく)程、親水性であることを表す表記である。
本発明で用いる高分子の「1/IOB」値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる生体親和性を有する高分子がポリペプチドである場合は、Grand average of hydropathicity(GRAVY)値で表される親疎水性指標において、0.3以下、マイナス9.0以上であることが好ましく、0.0以下、マイナス7.0以上であることがさらに好ましい。Grand average of hydropathicity(GRAVY)値は、『Gasteiger E., Hoogland C., Gattiker A., Duvaud S., Wilkins M.R., Appel R.D., Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In) John M. Walker (ed): The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005). pp. 571-607』及び『Gasteiger E., Gattiker A., Hoogland C., Ivanyi I., Appel R.D., Bairoch A.; ExPASy: the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis.; Nucleic Acids Res. 31:3784-3788(2003).』の方法により得ることができる。
本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊;モザイク状になっている細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
(1−2)架橋
本発明で用いる生体親和性を有する高分子材料は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋方法としては、熱架橋、化学架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、UV架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用など公知の方法を用いることができるが、グルタルアルデヒドを用いた架橋法、熱架橋法が好ましい。
光架橋としては、光反応性基を導入した高分子への光照射、あるいは光増感剤の存在化での光照射によるものが挙げられる。光反応性基としては、例えば、シンナミル基、クマリン基、ジチオカルバミル基、キサンテン色素、カンファキノンが挙げられる。
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、高分子材料間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼおよびラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。
高分子材料の架橋には、高分子材料の溶液と架橋剤を混合する過程とそれらの溶液の反応する過程の2つの過程を有する。
本発明において高分子材料を架橋剤で処理する際の混合温度は、溶液を混合できる限り特に限定されないが、好ましくは、0℃〜100℃であり、より好ましくは0℃〜40℃であり、更に好ましくは0℃〜30℃であり、更に好ましくは3℃〜25℃であり、更に好ましくは3℃〜15℃であり、更に好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。
高分子材料と架橋剤の反応過程では、温度を上昇させることができる。反応温度としては架橋が進行する限りは特に限定はないが、高分子材料の変性や分解を考慮すると実質的には−100℃〜200℃であり、より好ましくは0℃〜60℃であり、より好ましくは0℃〜40℃であり、より好ましくは3℃〜25℃であり、より好ましくは3℃から15℃であり、さらに好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。
また、架橋剤を使用しなくても、高分子材料の架橋を行うことができる。当該架橋法は特に限定されるものではないが、具体的には熱架橋法が挙げられる。
架橋剤を使用しない架橋法する際の反応温度は、架橋ができる限り特に限定されないが、好ましくは、−100℃〜500℃であり、より好ましくは0℃〜300℃であり、更に好ましくは50℃〜300℃であり、更に好ましくは100℃〜250℃であり、更に好ましくは120℃〜200℃である。
(1−3)リコンビナントペプチド
本発明にかかるリコンビナントペプチドとは遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができるリコンビナントペプチドは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)。好ましくは、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いるリコンビナントペプチドとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントペプチドを用いることができ、例えばEP1014176、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントペプチドとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントペプチドである。
本発明で用いるリコンビナントペプチドは天然のゼラチン本来の性能から、生体適合性に優れ、且つ天然由来ではないことでBSEなどの懸念がなく、非感染性に優れている。また、本発明で用いるリコンビナントペプチドは天然のものに比して均一であり、配列が決定されているので、強度、分解性においても後述の架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
リコンビナントペプチドの分子量は2 KDa以上100 KDa以下であることが好ましい。より好ましくは2.5 KDa以上95KDa以下である。より好ましくは5 KDa以上90 KDa以下である。最も好ましくは、10 KDa以上90KDa以下である。
リコンビナントペプチドは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有する。ここで、複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly−X−Y において、Glyはグリシン、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGXY配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成および配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X,Yであらわされるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。好ましくはその配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸がGXYの繰り返し構造であることが好ましい。
一般的なゼラチンは極性アミノ酸のうち、電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、アルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンを指す。本発明で用いるリコンビナントペプチドにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ該極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、システインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いるリコンビナントペプチドは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましく、さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。細胞接着シグナルを有するリコンビナントペプチドを用いることにより、細胞の基質産生量を向上させることができる。例えば、細胞として、間葉系幹細胞を用いた軟骨分化の場合には、グリコサミノグリカン(GAG)の産生を向上させることができる。
本発明で用いるリコンビナントペプチドにおけるRGD配列の配置として、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
本発明で用いるリコンビナントペプチドにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましく、リコンビナントペプチドが350以上のアミノ酸を含む場合に、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。リコンビナントペプチド内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明のリコンビナントペプチドは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明のリコンビナントペプチドのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
また、リコンビナントペプチドは部分的に加水分解されていてもよい。
本発明で用いるリコンビナントペプチドは、A[(Gly−X−Y )n]mB の繰り返し構造を有することが好ましい。mとして好ましくは2〜10、好ましくは3〜5である。nは3〜100が好ましく、15〜70がさらに好ましく、50〜65が最も好ましい。
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれであっても構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、およびV型である。より好ましくは、I型、II型、III型である。別の形態によると、該コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラットである。より好ましくはヒトである。
本発明で用いるリコンビナントペプチドの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。
好ましくは、リコンビナントペプチドは脱アミン化されていない。
好ましくは、リコンビナントペプチドはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、リコンビナントペプチドは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。
本発明で用いるリコンビナントペプチドとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列;
を有するリコンビナントペプチドである。
本発明で用いるリコンビナントペプチドは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定のリコンビナントペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、リコンビナントペプチドが産生されるので、培養物から産生されたリコンビナントペプチドを回収することにより、本発明で用いるリコンビナントペプチドを調製することができる。
(1−4)生体親和性を有する高分子ブロック
本発明では、上記した生体親和性を有した高分子材料を含有する塊を使用する。高分子ブロックの製造方法は特に限定されないが、例えば、高分子からなる固形物を粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕した後に、ふるいでサイズ分けすることにより所望のサイズのブロックを取得することができる。
高分子ブロックの大きさは、好ましくは1μm以上700μm以下であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、特に好ましくは25μm以上106μm以下である。また、高分子ブロックは上記のサイズを太さとするような、700μm以上の長いひも状であってもよく、さらには上記のサイズを厚さとするようなシート状、ゲル状であってもよい。上記好適な範囲とすることにより、より構造体中で細胞がより均一に存在することができる。
また、本発明の細胞移植用細胞構造体が、血管新生因子を含むことが好ましい。ここで、血管新生因子としては、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)などを好適に挙げることができる。血管新生因子を含む細胞移植用細胞構造体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、血管新生因子を含浸させた高分子ブロックを使用することにより、製造することができる。
(2)細胞
本発明で用いる細胞は、本発明の細胞構造体の目的である、細胞移植を行えるものであれば、適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。また、使用する細胞は1種でも、複数種の組合せて用いてもよい。また、使用する細胞として、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)の種類は、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞、又は成熟細胞の何れでもよい。万能細胞としては、例えば、ES細胞、GS細胞、又はiPS細胞を使用することができる。体性幹細胞としては、例えば、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、心筋幹細胞、脂肪由来幹細胞、又は神経幹細胞を使用することができる。前駆細胞及び成熟細胞としては、例えば、皮膚、真皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、内皮、脳、上皮、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、口腔内、角膜、骨髄、臍帯血、羊膜、又は毛に由来する細胞を使用することができる。ヒト由来細胞としては、例えば、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間充織細胞、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞、神経細胞、肝細胞、ベータ細胞、線維芽細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、角膜上皮細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、又は造血幹細胞を使用することができる。また、細胞の由来は、自家細胞又は他家細胞の何れでも構わない。
例えば、重症心不全、重度心筋梗塞等の心臓疾患においては、自家および他家から摘出した心筋細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、骨格筋由来細胞(特にサテライト細胞)、骨髄細胞( 特に心筋様細胞に分化させた骨髄細胞)などを好適に挙げることができる。更に、他の臓器においても、適宜移植細胞を選択することができる。例えば、脳虚血・脳梗塞部位への神経前駆細胞または、神経細胞に分化可能な細胞の移植、心筋梗塞部位・骨格筋虚血部位への血管内皮細胞または血管内皮細胞に分化可能な細胞の移植などを好適に上がることができる。
また、糖尿病性の臓器障害に対する細胞移植に使用される細胞が挙げられる。例えば、腎臓、膵臓、末梢神経、眼、四肢の血行障害などの疾患に対して、種々検討されている細胞移植治療法用の細胞が挙げられる。即ち、インスリン分泌能が低下した膵臓にインスリン分泌細胞を移植する試みや、四肢の血行障害に対する骨髄由来細胞の移植などが検討されており、このような細胞を使用することができる。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、非血管系の細胞を含むものも好適に使用することができる。また、本発明の細胞移植用細胞構造体を構成する細胞が、非血管系の細胞のみであるものも好適に使用することができ、非血管系の細胞のみである、本発明の細胞移植用細胞構造体により、移植後、移植部位に、血管を形成することができる。更に、本発明の細胞移植用細胞構造体を構成する細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む場合には、非血管系の細胞のみで構成されている場合と比較して、より血管形成することが可能となり、より好ましい。
更にまた、本発明の細胞移植用細胞構造体を構成する細胞が二種類以上であり、細胞構造体の中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有する場合、更に血管形成することが可能となり、更に好ましい。なお、ここで、細胞構造体の中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有するとは、具体的には、任意の2μmの薄切標本を作製したときに、上記となる領域を有する標本が存在することを言う。ここで、細胞構造体の中心部とは、中心から、細胞構造体の表面までの距離のうち、中心から80%までの距離のエリアをいい、細胞構造体の周辺部とは、中心から80%の場所から構造体表面までのエリアをいう。なお、細胞構造体の中心部は、以下のように定める。
細胞構造体の中心を通る任意の断面において、当該断面の外延に沿って、半径Xの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分の面積が、前記断面の断面積の64%となるような半径Xを求める。当該半径Xの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分を細胞構造体の中心部とする。このとき、断面積が一番大きくなる断面が最も好ましい。なお、細胞構造体の中心とは、断面積が最大となる断面において、当該断面の外延に沿って、半径Yの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分が、一点に決まるような半径Yを求める。当該半径Yの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた一点を細胞構造体の中心とする。一点に決まらず線分になる場合、またはその線分が複数個存在する場合は、それぞれの線分について、その長さを二等分する点を中心とする。
具体的には、中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有することが好ましく、65%〜100%がより好ましく、80%〜100%が更に好ましく、90%〜100%が更に好ましい。なお、ここで、中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有するとは、具体的には、任意の2μmの薄切標本を作製したときに、当該割合の領域を有する標本が存在することを言う。当該範囲とすることにより、血管形成をより促すことができる。
なお、中心部の血管系の細胞の割合は、例えば、薄切標本を作製したときに、測定対象の血管系の細胞を染色し、画像処理ソフトImageJを用い、中心部の色の濃さ(強度)の平均値を求め、中心部の面積×強度を算出し、更に、全体の色の濃さ(強度)の平均値を求め、全体の面積×強度を算出し、全体の面積×強度に対する、中心部の面積×強度の割合を求めることによって算出することもできる。ここで、血管系の細胞を染色する方法は、適宜、公知の染色方法を使用することができ、例えば、細胞として、hECFCを使用する場合には、CD31抗体を使用することができる。
また、細胞構造体の、中心部の血管系の細胞密度が1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有することが好ましく、細胞構造体の中心部全体で前記細胞密度となることが、より好ましい。なお、ここで、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有するとは、具体的には、任意の2μmの薄切標本を作製したときに、当該密度の領域を有する標本が存在することを言う。前記細胞密度は、より好ましくは1.0×10-4〜1.0×10-3cells/μm3、更に好ましくは1.0×10-4〜2.0×10-4cells/μm3、更に好ましくは1.1×10-4〜1.8×10-4cells/μm3、更に好ましくは1.4×10-4〜1.8×10-4cells/μm3である。当該範囲とすることにより、血管形成をより促すことができる。
ここで、中心部の血管系の細胞密度は、実際に薄切標本の細胞数を数え、細胞数を体積で割って求めることができる。ここでの中心部とは、以下のように定める。前述の中心部に垂直方向に、薄切標本の厚みの分を切り取った部分とする。細胞密度の求め方は、例えば、上記の測定対象の血管系の細胞を染色した薄切標本と、細胞核を染色した薄切標本を重ね合わせ、重なった細胞核の数をカウントすることで、中心部の血管系の細胞数を算出することができ、体積は、ImageJを用いて中心部の面積を求め、その薄切標本の厚みをかけることで求められる。
なお、本明細書において、血管系の細胞とは、血管形成に関連する細胞を意味し、血管および血液を構成する細胞、およびその細胞に分化することができる前駆細胞、体性幹細胞である。ここで、血管系の細胞には、ES細胞、GS細胞、又はiPS細胞等の万能細胞や、間葉系幹細胞(MSC)のような、血管および血液を構成する細胞に、自然には分化しないものは含まれない。血管系の細胞として、好ましくは血管を構成する細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)では、血管を構成する細胞は、血管内皮細胞および血管平滑筋細胞を好適に挙げることができる。血管内皮細胞は、静脈内皮細胞および動脈内皮細胞どちらも含む。血管内皮細胞の前駆細胞としては、血管内皮前駆細胞を使用することができる。好ましくは血管内皮細胞および血管内皮前駆細胞である。血液を構成する細胞は、血球細胞が使用でき、リンパ球や好中球などの白血球細胞、単球細胞、それらの幹細胞である造血幹細胞を使用できる。また、本明細書において、非血管系の細胞とは、上記の血管系以外の細胞を意味する。例えば、ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞、心筋細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、肝細胞または神経細胞を使用することができる。好ましくは、間葉系幹細胞(MSC)、軟骨細胞、筋芽細胞、心筋幹細胞、心筋細胞、肝細胞またはiPS細胞を使用することができる。より好ましくは、間葉系幹細胞(MSC)、心筋幹細胞、心筋細胞または筋芽細胞である。
なお、本発明の細胞移植用細胞構造体には、細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む本発明の細胞移植用細胞構造体を用いて、血管形成されたものも含む。また、ここで、「細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む本発明の細胞移植用細胞構造体」の好適な範囲は上記と同様である。血管を構築する方法は、例えば、血管部分をトンネル状にくりぬいたゲル材料に、血管系細胞を混合した細胞シートを貼り付け、トンネルに培養液を流しながら培養する方法があげられる。また、細胞シートの間に血管系細胞をサンドイッチ状にはさむことでも、血管を構築できる。
(3)細胞構造体
本発明においては、上記した生体親和性を有する高分子ブロックと上記した細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって、細胞移植のために適した厚みを有することが可能であり、かつ、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とがモザイク状に3次元配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体を形成され、外部から細胞3次元構造体の内部への栄養送達を可能となる。これにより、本発明の細胞移植用細胞構造体を用いて、細胞移植を行うと、移植された細胞の壊死を抑制し、移植が可能となる。なお、ここでいう「壊死の抑制」とは、本発明の細胞構造体とせず、細胞のみを移植した場合と比較して、壊死の程度が低いことを意味する。
本発明の細胞移植用細胞構造体の厚さ又は直径は、本明細書中後記する方法により所望の厚さとすることが出来るが、下限としては、215μm以上であることが好ましく、400μm以上がさらに好ましく、730μm以上であることが最も好ましい。厚さ又は直径の上限は特に限定されないが、使用上の一般的な範囲としては3cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。また、細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。なお、実施例では720μm以上の細胞構造体(図3)を作製したのち、融合させて813μmの厚みを持つ細胞構造体を作製(図10)した。本発明の細胞移植用細胞構造体は、高分子ブロックからなる領域と細胞からなる領域がモザイク状に配置されていることを特徴とする。尚、本明細書中における「細胞構造体の厚さ又は直径」とは、以下のことを示すものとする。細胞構造体中のある一点Aを選択した際に、その点Aを通る直線の内で、細胞構造体外界からの距離が最短になるように細胞構造体を分断する線分の長さを線分Aとする。細胞構造体中でその線分Aが最長となる点Aを選択し、その際の線分Aの長さのことを「細胞構造体の厚さ又は直径」とする。
また、後述する本発明の細胞移植用細胞構造体の製造方法での融合前の細胞構造体、または第二の高分子ブロック添加前の細胞構造体として、本発明の細胞構造体を使用する場合には、細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、10μm以上1cm以下、より好ましくは10μm以上2000μm以下、更に好ましくは15μm以上1500μm以下、最も好ましくは、20μm以上1300μm以下である。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、細胞と高分子ブロックの比率は特に限定されないが、好ましくは細胞1個当りの高分子ブロックの比率が0.0000001μg以上1μg以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.000001μg以上0.1μg以下、より好ましくは0.00001μg以上0.01μg以下、最も好ましくは0.00002μg以上0.006μg以下である。前記範囲とするこのより、より細胞を均一に存在させることができる。また、下限を上記範囲とすることにより、上記用途に使用した際に細胞の効果を発揮することができ、上限を上記範囲とすることにより、任意で存在する高分子ブロック中の成分を細胞に供給できる。ここで、高分子ブロック中の成分は特に制限されないが、後述する培地に含まれる成分が挙げられる。
(4)細胞構造体の製造方法
本発明の細胞構造体は、生体親和性を有した高分子材料からなる塊(「ブロック」)と、細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは高分子ブロックを形成したのち、細胞を播種する方法である。具体的には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、本発明の細胞構造体を製造することができる。例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性を有する高分子ブロックをモザイク状に配置する。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性基材からなるモザイク状の配列形成を、促進、制御することが好ましい。
用いられる容器としては、細胞低接着性材料、細胞非接着性材料からなる容器が好ましく、より好ましくはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートからなる容器である。容器底面の形状は平底型、U字型、V字型であることが好ましい。
上記の方法で得られたモザイク状細胞構造体は、例えば、
(1)別々に調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる、又は
(2)分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる、
などの方法により所望の大きさの細胞構造体を製造することができる。融合の方法、ボリュームアップの方法は特に限定されない。
例えば、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、培地を分化培地又は増殖培地に交換することによって、細胞構造体をボリュームアップさせることができる。好ましくは、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、生体親和性を有する高分子ブロックをさらに添加することによって、所望の大きさの細胞構造体であって、細胞構造体中に細胞が均一に存在する細胞構造体を製造することができる。
前記別々に調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる方法とは、具体的には、生体親和性を有する、複数個の高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、該複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体を複数個融合させる工程を含む、細胞構造体の製造方法である。
本発明の細胞構造体の製造方法にかかる「生体親和性を有する高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、前記本発明の細胞構造体に関する好適な範囲と同様である。
また、前記融合前の各細胞構造体の厚さ又は直径が10μm以上1cm以下であり、前記融合後の厚さ又は直径が400μm以上3cm以下であることが好ましい。ここで、前記融合前の各細胞構造体の厚さ又は直径として、より好ましくは10μm以上2000μm以下、更に好ましくは15μm以上1500μm以下、最も好ましくは、20μm以上1300μm以下であり、また、記融合後の厚さ又は直径の範囲として、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
前述した生体親和性を有する高分子ブロックをさらに添加することによって、所望の大きさの細胞構造体を製造する方法とは、具体的には、生体親和性を有する、複数個の第一の高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、該複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、更に、第二の高分子ブロックを添加しインキュベートする工程を含む細胞構造体の製造方法である。ここで、「生体親和性を有する高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、前記本発明の細胞構造体に関する好適な範囲と同様である。
ここで、融合させたい細胞構造体同士は、0以上50μm以下の距離に設置することが好ましく、より好ましくは、0以上20μm以下、更に好ましくは0以上5μm以下の距離である。細胞構造体同士を融合させる際、細胞の増殖・伸展によって細胞あるいは細胞が産生する基質が接着剤の役割を果たし、接合させることが考えられ、上記範囲とすることにより、細胞構造体同士の接着が容易となる。
本発明にかかる第一の高分子ブロックの大きさは、好ましくは1μm以上700μm以下であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、特に好ましくは25μm以上106μm以下である。また、本発明にかかる第二の高分子ブロックの大きさも好ましくは1μm以上700μm以下であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、特に好ましくは25μm以上106μm以下である。
本発明の細胞構造体の製造方法により得られる細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
細胞構造体に、更に、第二の高分子ブロックを添加しインキュベートする際の、第二の高分子ブロックの添加するペースは、使用する細胞の増殖の速度に合わせて、適宜、選択することが好ましい。具体的には、第二の高分子ブロックを添加するペースが早いと細胞が細胞構造体の外側へと移動し、細胞の均一性が低くなり、添加のペースが遅いと、細胞の割合が多くなる箇所ができ、細胞の均一性が低くなるため、使用する細胞の増殖速度を考慮し、選択する。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、前述したように、血管系の細胞を含まない細胞構造体であっても、本発明の細胞移植用細胞構造体により、細胞移植を行った場合、移植後、移植部位に、血管を形成することができ、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む場合には、非血管系の細胞のみで構成されている細胞構造体と比較して、より血管形成することが可能となる。
非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む場合の細胞構造体の製造方法として、例えば、下記(1)〜(3)の製造方法を好適に挙げることができる。
(1)は非血管系の細胞を用いて前述の方法で細胞構造体を形成した後、血管系の細胞および高分子ブロックを加える工程を有する製造方法である。ここで、「血管系の細胞および高分子ブロック工程」とは、前述した、調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる方法、および、分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる方法、いずれも含むものである。この方法により、(i)細胞構造体の中心部では、血管系の細胞と比較して、非血管系の細胞の面積が多く、周辺部では、非血管系の細胞と比較して、血管系の細胞の面積が多い細胞構造体、(ii)細胞構造体の、中心部の非血管系の細胞の面積が、周辺部の非血管系の細胞の面積より多い細胞移植用細胞構造体、(iii) 細胞構造体の、中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より少ない細胞移植用細胞構造体、を製造することが可能となる。
(2)は血管系の細胞を用いて前述の方法で細胞構造体を形成した後、非血管系の細胞および高分子ブロックを加える工程を有する製造方法である。ここで、「非血管系の細胞および高分子ブロック工程」とは、前述した、調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる方法、および、分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる方法、いずれも含むものである。この方法により、(i)細胞構造体の中心部では、非血管系の細胞と比較して、管系の細胞の面積が多く、周辺部では、血管系の細胞と比較して、非血管系の細胞の面積が多い細胞構造体、(ii)細胞構造体の、中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い細胞移植用細胞構造体、(iii) 細胞構造体の、中心部の非血管系の細胞の面積が、周辺部の非血管系の細胞の面積より少ない細胞移植用細胞構造体、を製造することが可能となる。
(3)は、非血管系の細胞および血管系の細胞を実質的に同時に使用し、前述の方法で細胞構造体を形成させる製造方法である。この方法では、細胞構造体のいずれの部位も、非血管系の細胞および血管系の細胞のいずれかが、大きく偏在することのない細胞構造体を製造することが可能となる。
移植後、移植部位に血管を形成する観点では、細胞構造体の中心部では、非血管系の細胞と比較して、血管系の細胞の面積が多く、周辺部では、血管系の細胞と比較して、非血管系の細胞の面積が多い細胞構造体や、中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い、細胞移植用細胞構造体であることが好ましく、当該細胞構造体とすることにより、血管形成をより促進することができる。更に、当該細胞構造体において、中心部に存在する細胞数が多い方が、血管形成をより促進することができる。
同様の理由で、血管系の細胞により細胞構造体を形成した後、非血管系の細胞および高分子ブロックを加える工程を有する製造方法が好ましい。そして、血管系の細胞数を多くすることがさらに好ましい。
本発明の細胞移植用細胞構造体は、例えば、重症心不全、重度心筋梗塞等の心臓疾患、脳虚血・脳梗塞といった疾患部位に細胞移植の目的で使用できる。また、糖尿病性の腎臓、膵臓、末梢神経、眼、四肢の血行障害などの疾患に対しても用いることが出来る。移植方法としては、切開、注射、内視鏡といったものが使用可能である。本発明の細胞構造体は、細胞シートといった細胞移植物とは異なり、構造体のサイズを小さくすることができるため、注射による移植といった低侵襲の移植方法が可能となる。
また、本発明の細胞移植方法は、前記本発明の細胞移植用細胞構造体である生体親和性を有する高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞と、を含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されている細胞移植用細胞構造体を用いることを特徴とするものである。細胞移植用細胞構造体の好適な範囲は前述と同様である。
本発明の細胞移植用細胞集合体は、非血管系細胞と血管系細胞で構成される細胞移植用細胞集合体であって、
(1)細胞集合体の中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有すること、および
(2)中心部の血管系の細胞密度が、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有すること、
のうち少なくとも一方の要件を満たすことを特徴するものである。
ここで、本発明にかかる細胞移植用細胞集合体とは、構造成分に細胞を含む細胞移植物をいい、その他の成分を含有することを排除するものではない。本発明の細胞移植用細胞集合体は、前記本発明の細胞構造体にかかる高分子ブロックを含むものであっても、前記本発明の細胞構造体にかかる高分子ブロックを含まないものであってもよい。
細胞集合体の形状としては、特に限定されないが、シート状、球形の塊を好適に挙げることができる。具体的には、細胞シートや、細胞シートを複数枚積層化したもの、細胞塊(スフェロイド)や、その細胞塊が複数個融合したものを例示することができる。
また、非血管系細胞と血管系細胞は、前記したものと同様である。
細胞集合体の中心部とは、中心から、細胞集合体の表面までの距離のうち、中心から80%までの距離のエリアをいい、細胞集合体の周辺部とは、中心から80%の場所から構造体表面までのエリアをいう。なお、細胞集合体の中心部は、以下のように定める。
細胞構造体の中心を通る任意の断面において、当該断面の外延に沿って、半径Xの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分の面積が、前記断面の断面積の64%となるような半径Xを求める。当該半径Xの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分を細胞集合体の中心部とする。このとき、断面積が一番大きくなる断面が最も好ましい。なお、細胞構造体の中心とは、断面積が最大となる断面において、当該断面の外延に沿って、半径Yの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた部分が、一点に決まるような半径Yを求める。当該半径Yの円の中心を一周動かし、動かした円と断面の重複部分を除いた一点を細胞構造体の中心とする。一点に決まらず線分になる場合、またはその線分が複数個存在する場合は、それぞれの線分について、その長さを二等分する点を中心とする。
以上のように求めた中心部が、細胞集合体の最外郭から10μm以上の距離を有する細胞構造体を、本発明の対象の細胞集合体とする。
具体的には、中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有することが好ましく、65%〜100%がより好ましく、80%〜100%が更に好ましく、90%〜100%が更に好ましい。当該範囲とすることにより、血管形成をより促すことができる。
また、細胞集合体の、中心部の血管系の細胞密度が1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有することが好ましく、細胞集合体の中心部全体で前記細胞密度となることが、より好ましい。なお、ここで、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有するとは、具体的には、任意の2μmの薄切標本を作製したときに、当該密度の領域を有する標本が存在することを言う。前記細胞密度は、より好ましくは1.0×10-4〜1.0×10-3cells/μm3、更に好ましくは1.0×10-4〜2.0×10-4cells/μm3、更に好ましくは1.1×10-4〜1.8×10-4cells/μm3、更に好ましくは1.4×10-4〜1.8×10-4cells/μm3である。当該範囲とすることにより、血管形成をより促すことができる。なお、前記(1)および(2)の両方の要件を満たすことが好ましい。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1:リコンビナントペプチド
リコンビナントペプチド(リコンビナントペプチド)として以下記載のCBE3を用意した(WO2008-103041に記載)。
CBE3
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34、GRAVY値:-0.682、1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
実施例2:リコンビナントペプチドμブロックの作製
基材ブロックとして、リコンビナントペプチドCBE3を用いて、不定形のμブロックを作製した。1000mgのリコンビナントペプチドを9448μLの超純水に溶解し、1N HClを152μL添加後、終濃度1.0%となるように、25%グルタルアルデヒドを400μL添加し、50℃で3時間反応させ、架橋ゼラチンゲルを作製した。この架橋ゼラチンゲルを、1Lの0.2Mグリシン溶液へ浸漬し、40℃2時間振とうさせた。その後、架橋ゼラチンゲルを、5Lの超純水中で1時間振とう洗浄、超純水を新しい物へ置換し、再び洗浄1時間、を繰り返し、計6回洗浄した。洗浄後の架橋ゼラチンゲルを、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのリコンビナントペプチドμブロックを得た。
実施例3:天然ゼラチンμブロックの作製
基材ブロックとして、天然ゼラチン(Nippi、ニッピゼラチン・ハイグレードゼラチンAPAT)を用いて、不定形のμブロックを作製した。1000mgの天然ゼラチンを9448μLの超純水に溶解し、1N HClを152μL添加後、終濃度1.0%となるように、25%グルタルアルデヒドを400μL添加し、50℃で3時間反応させ、架橋ゼラチンゲルを作製した。この架橋ゼラチンゲルを、1Lの0.2Mグリシン溶液へ浸漬し、40℃2時間振とうさせた。その後、架橋ゼラチンゲルを、5Lの超純水中で1時間振とう洗浄、超純水を新しい物へ置換し、再び洗浄1時間、を繰り返し、計6回洗浄した。洗浄後の架橋ゼラチンゲルを、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmの天然ゼラチンμブロックを得た。
実施例4:リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の作製 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、18時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントペプチドμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC Differentiation BulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)(200μL)へ置換した。Day7で、直径(=厚さ)が1.54mmの球状に、モザイク細胞塊が形成された(図1)。なお、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製されている。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行った。
実施例5:天然ゼラチンμブロックを用いたモザイク細胞塊の作製
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例3で作製した天然ゼラチンμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm程度の球状の、天然ゼラチンμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC DifferentiationBulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)(200μL)へ置換した。Day7で、直径(=厚さ)1.34mmの球状に、モザイク細胞塊が形勢された(図2)。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製されている。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例3で作製した天然ゼラチンμブロックを最終濃度で0.005mg/mL、0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mLとなるように条件を振って作成した)後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm弱・球状のモザイク細胞塊が作製できた(細胞1個当たり0.00001、0.0002、0.0004、0.002、0.004μgの高分子ブロック)。
実施例6:標本解析
実施例4で作製したリコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊について、組織切片を作製した。実施例4で作製した培地中のモザイク細胞塊に対して、培地を除去後、200μLのPBSを加え洗浄し、PBSを除去した。この洗浄工程を2回繰り返した後、洗浄したモザイク細胞塊を10%ホルマリンに浸漬し、2日間ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、組織切片を作製した。切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)し、細胞とゼラチンμブロックの状態を解析した。結果を図3、図4及び図5に示す。これにより、ゼラチンμブロックと、細胞がモザイク状に配置された3次元構造体が作製されていること、さらに細胞が正常な状態でモザイク細胞塊中に存在していることが確認できた。また、この断面切片から、少なくとも厚さ720μm以上のモザイク細胞塊が作製できていることが示された。
実施例7:モザイク細胞塊の融合
実施例4で作製したモザイク細胞塊が、融合可能であるか、つまりモザイク細胞塊を並べていくことで、自然融合し、より大きな3次構造体を形成できるかについて実施した。実施例4で作製した6日目のモザイク細胞塊2個、3個、及び4個をスミロンセルタイトX96Uプレート中で並べ、5日間培養を行った。その結果、モザイク細胞塊同士の間を、外周部に配された細胞が結合させることで、モザイク細胞塊が自然に融合することが明らかになった。図6に実体顕微鏡で撮像した写真を示す。融合開始日(Day6と記載)のモザイク細胞塊では、モザイク細胞塊同士が隣り合って配置されているだけであるが、融合開始から5日目(Dya11と記載)には、モザイク細胞塊間に新たな層が形成され、融合されていっている様子がわかる。また、図7,8,9,10,11には、該融合モザイク細胞塊の断面について、組織切片を作製し、HE染色した結果を示す(固定は10%ホルマリン、包埋はパラフィン包埋)。細胞と、細胞により産生された細胞外基質で、モザイク細胞塊間に融合層が形成されており、モザイク細胞塊同士を融合、結合していることがわかる。これにより、本発明にて作製されるモザイク細胞塊は、自然に融合可能であり、融合させることで、より大きな構造体を形成できることが示された。従って、本発明を用いることで、厚さを有した細胞シート状に作製することも、より立体的な3次元構造体を作製することも可能であることが分かる。
実施例8:リコンビナントペプチドμブロックを用いた、増殖培地下のモザイク細胞塊作製
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。Day7で、直径(=厚さ)1.34mmの球状に、モザイク細胞塊が形成された(尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製される)。Day7のモザイク細胞塊の切片写真を図16、17に示す。この断面切片上で、厚さの薄い箇所でも、少なくとも624μm以上の厚みを達成していることが分かる。
実施例9:モザイク細胞塊のボリュームアップ(増殖培地下で)
実施例8で作製した3日目(Day3)のモザイク細胞塊について、培地交換の際、実施例2で作製した0.1mgのリコンビナントペプチドμブロックを、増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)に懸濁して添加した。以後、Day7,10,14,17,21の培地交換に合わせ、0.1mgずつのリコンビナントペプチドμブロックを添加していった。
このモザイク細胞塊を実体顕微鏡で観察した際の径(異なる2つの直径の平均として算出)、及び撮像したモザイク細胞塊の面積、計算上の体積(上記で求めた直径から4/3πr3で計算)、それぞれについての経時変化を図12,13,14,15に示した。その結果、最終的にDay21で平均直径(=厚さ)3.41mmの球状に形成された。これにより、少なくともサイズ3.41mmまでの大きさのモザイク細胞塊を作製可能であることが分かる。また、本手法によるボリュームアップを続けることで、そのサイズを大きくすることが可能であることが分かる。
この時の組織切片(HE染色)を図18,19に示した。細胞とリコンビナントペプチドμブロックがモザイク状に配置されていることが分かる。また、モザイク細胞塊は3mm大であり、標本として小さいため、球の中央部をうまく断面にすることは困難を極めた。従って、切片として、球の最深部分を得られていないにも関わらず、当該検体のこの切片を採取した部分でも、厚みは、少なくとも1.17mmはあることが窺える。
Day7,10,14,17,21の培地交換の際、リコンビナントペプチドμブロックを追加せず、培養したものでは、図12,13,14で示されるように直径が変わらない。リコンビナントペプチドμブロックを追加せず、培養したものでは、モザイク細胞塊の最外郭層に、増殖した細胞によって、細胞と細胞が産生した細胞外基質のみの層状構造が形成される。それにより、その細胞と産生細胞外基質の層によって、栄養の拡散が阻まれる状態を形成してしまい、それ以上に細胞が増殖(球が大きくなる)することができなくなるためである。一方で、培地交換に合せて、随時リコンビナントペプチドμブロックを追加していった場合、リコンビナントペプチドμブロックが、増殖した細胞とともに常にモザイク状にはめ込まれることで、細胞が増殖しても、細胞とリコンビナントペプチドμブロックからなるモザイク構造を維持し続けることが可能となる。それによって、リコンビナントペプチドμブロックで提供される栄養の供給経路が常に確保され、細胞と産生された細胞外基質で形成されてしまう外殻層が生成されず、モザイク細胞塊は大きくなれるのである。
実施例10:モザイク細胞塊のボリュームアップ(軟骨分化培地下で)
実施例4で作製した3日目(Day3)のモザイク細胞塊について、培地交換の際、実施例2で作製した0.1mgリコンビナントペプチドμブロック(0.1mg)を、軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC Differentiation BulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)に懸濁して添加した。以後、Day7,10,14,17,21の培地交換に合わせ、0.1mgずつのリコンビナントペプチドμブロックを添加していった。
このモザイク細胞塊を実体顕微鏡で観察した際の径(異なる2つの直径の平均として算出)、及び撮像したモザイク細胞塊の面積、計算上の体積(上記で求めた直径から4/3πr3で計算)、それぞれについての経時変化を図12,13,14,15に示した。結果、最終的にDay21で平均直径(=厚さ)2.05mmの球状に形成された。これにより、少なくともサイズ2.05mmまでの大きさのモザイク細胞塊を作製可能であることが分かる。また、本手法によるボリュームアップを続けることで、そのサイズを大きくすることが可能であることが分かる。
この時の組織切片(HE染色)を図20,21に示した。細胞とリコンビナントペプチドμブロックがモザイク状に配置されていることが分かる。また、モザイク細胞塊は2mm大であり、標本として小さいため、球の中央部をうまく断面にすることは困難を極めた。従って、切片として、球の最深部分を得られていないにも関わらず、当該検体のこの切片を採取した部分でも、厚みは、少なくとも897μmはあることが窺える。
Day7,10,14,17,21の培地交換の際、リコンビナントペプチドμブロックを追加せず、培養したものでは、図12,13,14で示されるように直径が変わらない。リコンビナントペプチドμブロックを追加せず、培養したものでは、モザイク細胞塊の最外郭層に、増殖した細胞によって、細胞と細胞が産生した細胞外基質のみの層状構造が形成される。それにより、その細胞と産生細胞外基質の層によって、栄養の拡散が阻まれる状態を形成してしまい、それ以上に細胞が増殖(球が大きくなる)することが出来なくなる為である。一方で、培地交換に合せて、随時リコンビナントペプチドμブロックを追加していった場合、リコンビナントペプチドμブロックが、増殖した細胞とともに常にモザイク状にはめ込まれることで、細胞が増殖しても、細胞とゼラチンμブロックからなるモザイク構造を維持し続けることが可能となる。それによって、リコンビナントペプチドμブロックで提供される栄養の供給経路が常に確保され、細胞と産生された細胞外基質で形成されてしまう外殻層が生成されず、モザイク細胞塊は大きくなれるのである。
実施例11:モザイク細胞塊のGAG産生量の定量 (経時変化)
実施例4及び実施例5で作製したモザイク細胞塊(hMSC細胞+リコンビナントペプチド、hMSC細胞+天然ゼラチン)、及び細胞のみで作製した細胞塊(実施例4と同様の手法で、ゼラチンブロックを入れずに作製した)、について、モザイク細胞塊中のグリコサミノグリカン量を定量した。測定は、(Farndale et al., Improved quantitation and sulphated glycosaminoglycans by use of dimethylmethylene blue. Biochimica et Biophysica Acta 883 (1986) 173-177)のDimetylmethylene blue dyeを用いる方法で行い、試薬は硫酸化GAG定量キット(生化学バイオビジネス)を用いた。530nmの吸光を測定し、定量した。図21に示すように、該手法によって、特徴的な吸収ピークが525−530nmに見られることを確認している。
経時でGAG量を定量した結果を図22のグラフに示した。結果、ゼラチンμブロックやリコンビナントペプチドμブロックを入れずに作製した細胞塊では、産生するグリコサミノグリカン(GAG)量が低いのに対して、天然ゼラチンμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊、及びリコンビナントペプチドμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊については、産生するGAG量が極めて高かった。 これによって、実施例4及び実施例5で作製したモザイク細胞塊では、軟骨分化が促進されていること、また作製したモザイク細胞塊が細胞としての機能を有していること(GAG産生能を有していること)が確認出来た。さらに、天然ゼラチンμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊よりも、リコンビナントペプチドμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊では、産生するGAG量が有意に高かった。これによって、リコンビナントペプチドμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊は、天然ゼラチンμブロックよりも高い細胞活性、基質産生活性を維持できることが分かり、天然ゼラチンでは不可能であった基質量の産生が、リコンビナントペプチドを用いることで達成出来ることが示された。
実施例12:モザイク細胞塊のATP定量
各モザイク細胞塊中の細胞が産生・保持しているATP(アデノシン三リン酸)量を定量した。ATPは生物全般のエネルギー源として知られ、ATP合成量・保持量を定量することで、細胞の代謝活性の状態、活動状態を知ることができる。測定には、CellTiter−Glo(Promega社)を用いた。比較は、実施例4及び実施例5で作製したモザイク細胞塊(hMSC細胞+リコンビナントペプチド、hMSC細胞+天然ゼラチン)、及び細胞のみで作製した細胞塊(実施例4と同様の手法で、ゼラチンブロックを入れずに作製した)、について、ともにDay7のもので、CellTiter−Gloを用いて、各モザイク細胞塊中のATP量を定量した。
結果を、図23に示した。これにより、リコンビナントペプチドμブロックやゼラチンμブロックを用いて作製したモザイク細胞塊では、細胞のみで作製された細胞塊よりも有意にATP産生・保持量が高いことが分かった(p<0.01)。これは、μブロックがモザイク状にはめ込まれることによって、μブロックによるモザイク細胞塊中への栄養供給経路が提供され、細胞のみの塊よりも、細胞の代謝活性の高い状態が維持されることを示唆している。さらに、天然ゼラチンμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊よりも、リコンビナントペプチドμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊では、ATP産生・保持量が有意に高いことが分かった。これによって、リコンビナントペプチドμブロックを入れて作製したモザイク細胞塊は、天然ゼラチンμブロックよりも高い細胞生存、内部でも細胞が生きていることが分かった。天然ゼラチンでは不可能であった細胞の生存向上が、リコンビナントペプチドを用いることで達成出来ることが示された。
実施例13:PLGAμブロックの作製
PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体: Wako、PLGA7520)0.3gをジクロロメタン(3mL)に溶解した。概PLGA溶解液を乾燥機(EYELA、FDU−1000)にて真空乾燥し、PLGAの乾燥体を得た。PLGA乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で10秒×20回の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのPLGAμブロックを得た。
PLGA:「1/IOB」値:0.0552
実施例14:PLGAを用いたモザイク細胞塊の作製
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例13で作製したPLGAμブロックを加えた(最終濃度で0.1mg/mL、0.2mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mLとなるように条件を振って作成した)後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm弱・球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.0002、0.0004、0.002、0.004μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製される。Day2のPLGAモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真を図24に示す。
実施例15:アガロースμブロックの作製
アガロース粉末5gを超純水(100mL)に加え、電子レンジを用いて加熱し溶解した。得られた5%アガロース溶解液を常温に戻すことで固形物にして、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行うことで、アガロースの凍結乾燥体を得た。アガロース凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で10秒×20回の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのアガロースμブロックを得た。
IOB値:3.18
実施例16:アガロースを用いたモザイク細胞塊の作製
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例15で作製したアガロースμブロックを加えた(最終濃度で0.1mg/mL、1.0mg/mLとなるように条件を振って作成した)後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm弱・球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.0002、0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製された。
実施例17:心筋細胞を用いたモザイク細胞塊の作製
新生児SDラット心筋細胞(rCMC)を心筋細胞用培地(Primary Cell Co., Ltd:CMCM 心筋細胞用培養メディウム)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.5、1.0、3.0mg/mLとなるように加えた後、それぞれ100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、18時間静置し、直径1〜2mm程度のリコンビナントペプチドμブロックとrCMC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001、0.002、0.006μgの高分子ブロック)。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行った。
Day1、Day3の段階で既にrCMCモザイク細胞塊は構造体全体として同期拍動していることが確認できた(図25)。明細書中では、動画を示すことが困難であるため、図25では、動画から0.2秒後の同一スポットを静止画像としてキャプチャ撮影した画像である。三角形で印を付けた部位を見ると二枚の絵で全体が動いていることが分かる。
これにより、心筋細胞を用いても本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)が形成可能であることが確認出来たとともに、心筋細胞を用いたモザイク細胞塊においては、構造体全体として同期拍動するような細胞構造体が得られることが証明された。
実施例18:GFP発現HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を用いたモザイク細胞塊の作製
GFPを発現しているヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP−HUVEC:Angio−Proteomie社)を内皮細胞用培地(クラボウ:Medium200S、LSGS、抗菌剤GA溶液)にて50万cells/mL調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.3、1.0、3.0mg/mLとなるように加えた後、それぞれ100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種した(細胞1個当たり0.0006、0.002、0.006μgの高分子ブロック)。また、同様にして、細胞を150万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μL、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種したものも作製した。全てについて、18時間静置し、直径1〜2mm程度のリコンビナントペプチドμブロックとGFP−HUVEC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行った。
図26には、5万cells+0.03mgのモザイク細胞塊と、30万cells+0.2mgのモザイク細胞塊の顕微鏡写真、及び蛍光顕微鏡写真を示している。GFP−HUVEC細胞はGFPの蛍光を発する為、蛍光顕微鏡によりモザイク細胞塊中の分布が理解しやすい。これによって、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)は血管内皮細胞を用いても作製可能であることが証明された。
また、本発明の細胞構造体(モザイク細胞塊)については、間葉系幹細胞、心筋細胞、血管内皮細胞といった多様な細胞で形成可能であることが実証された。同時に、リコンビナントペプチドブロック、動物ゼラチンブロック、PLGAブロック、アガロースブロックといった多様な高分子ブロックを用いて形成可能であることも示された。これにより、多様な細胞種と多様な高分子ブロック種において、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)が形成可能であることが証明された。
実施例19−(1):リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の作製(hMSC)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.1mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントペプチドμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001μgの高分子ブロック)。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は、球状であった。
実施例19−(2):モザイク細胞塊の融合による巨大化
実施例19−(1)で作製したモザイク細胞塊が、融合可能であるか、つまりモザイク細胞塊を並べていくことで、自然融合し、より大きな3次構造体を形成できるかについて実施した。まず、PrimeSurface 90mm dishにぴったりと合う大きさの四角のシリコンシート(3mm厚)を作成し、真ん中を1.5cm四方にくり貫いた。シリコンシートはエタノールで消毒し、PBSで洗浄して用いた。それを、PrimeSurface 90mm dishにはめ、実施例19−(1)で作製したモザイク細胞塊を1500個、1.5cm四方の中に並べるように置いた。増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)を50ml静かに入れ、2日培養した。その結果、1.5cm四方、厚さ2mmのモザイク細胞塊の融合体を作成することができた。図27に実体顕微鏡で撮像した写真を示す。また、この融合体の断面のHE染色切片から、内部の細胞が生存していることも確認できた。これにより、モザイク細胞塊は、自然に融合可能であり、融合させることで、cmオーダーの大きな構造体を形成できることが示された。従って、モザイク細胞塊を細胞移植に用いられるような厚さを有した細胞シート状に作製することも、より立体的な3次元構造体を作製することも可能であることが分かる。
実施例20:リコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊の作製(hMSC+hECFC)
実施例20−(1):ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.1mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントペプチドμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した。その後、培地を除去し、ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を増殖培地(Lonza:EGM−2+ECFC serum supplement)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.025mg/mLとなるように加えた後、hMSC細胞のモザイク細胞塊のある200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントペプチドμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊の周辺部にhECFCとリコンビナントペプチドμブロックの層ができているモザイク細胞塊を作製した。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は、球状であった。
実施例20−(2):ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を増殖培地(Lonza:EGM−2+ECFC serum supplement)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.05mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、扁平状のECFCとリコンビナントペプチドμブロックからなるモザイク細胞塊を作製した。その後、培地を除去し、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.1mg/mLとなるように加えた後、hECFCモザイク細胞塊がある200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状の、ECFCとリコンビナントペプチドμブロックからなるモザイク細胞塊を含む、リコンビナントペプチドμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は、球状であった(ここで得られたモザイク細胞塊をAとする)。さらに、ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を20万cells/mLでリコンビナントペプチドμブロックを0.1mg/mLに、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を20万cells/mLでリコンビナントペプチドμブロックを0.2mg/mLとした場合でも、厚さ1mm程度、直径1.5mm程度のモザイク細胞塊を作製できた(ここで得られたモザイク細胞塊をBとする)。
実施例20−(3):ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて10万cells/mLに調整し、ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を増殖培地(Lonza:EGM−2+ECFC serum supplement)にて10万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントペプチドμブロックを0.15mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、48時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントペプチドμブロックとhMSCとhECFCからなるモザイク細胞塊を作製した。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は、球状であった。
比較例1:細胞のみの細胞塊の作製(hMSC)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて37.5万cells/mLに調整し、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状の、hMSC細胞からなる細胞塊を作製した。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は、球状であった。
比較例2:細胞のみの細胞塊の作製(hMSC+hECFC)
ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を増殖培地(Lonza:EGM−2 +ECFC serum supplement)にて10万cells/mLに調整し、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、hECFCの細胞塊を作製した。その後、培地を除去し、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて30万cells/mLに調整し、hECFCモザイク細胞塊がある200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状のhECFCとhMSCからなる球形の細胞塊を作製した(ここで得られた細胞塊をAとする)。また、ヒト血管内皮前駆細胞(hECFC)を増殖培地(Lonza:EGM−2 +ECFC serum supplement)にて20万cells/mLに調整し、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、hECFCの細胞塊を作製した。その後、培地を除去し、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて20万cells/mLに調整し、hECFCモザイク細胞塊がある200μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm程度の球状のhECFCとhMSCからなる球形の細胞塊を作製した(ここで得られた細胞塊をBとする)。
標本解析
実施例19−(1)、20および比較例1で作製したリコンビナントペプチドμブロックを用いたモザイク細胞塊について、組織切片を作製した。切片厚は2μmとした。作製した培地中のモザイク細胞塊に対して、培地を除去後、200μLのPBSを加え洗浄し、PBSを除去した。この洗浄工程を2回繰り返した後、洗浄したモザイク細胞塊を10%ホルマリンに浸漬し、ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、組織切片を作製した。実施例19−(1)と比較例1では、切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)し、細胞とリコンビナントペプチドμブロックの状態を解析した。結果を図28と図29に示す。これにより、モザイク細胞塊ではリコンビナントペプチドμブロックと、細胞がモザイク状に配置された3次元構造体が作製されていること、さらに細胞が正常な状態でモザイク細胞塊中に存在していることが確認できた。また、この断面切片から、少なくとも厚さ500μmのモザイク細胞塊および細胞塊が作製できていることが示された。
さらに実施例20のモザイク細胞塊は、切片をhECFC染色用にCD31抗体(EPT Anti CD31/PECAM-1)、hMSCとhECFC染色用にCD29抗体(EPT Anti Integrin β-1 (CD29))とそれぞれにDAB発色を用いたキット(ダコLSAB2キット ユニバーサル K0673 ダコLSAB2キット/HRP(DAB) ウサギ・マウス一次抗体両用)による免疫染色を行った(図30、31、32、33)。前記実施例20−(1)〜(3)で作製したモザイク細胞塊について、前述した画像処理ソフトImageJ、CD31抗体による染色方法を使用し、中心部のhECFC(血管系の細胞)の面積の割合を求めた。なお、ここでいう「中心部」とは前記定義したものである。
その結果、実施例20−(1)の本モザイク細胞塊の中心部のhECFC(血管系の細胞)の面積の割合は24%、実施例20−(2)の本モザイク細胞塊の中心部のhECFCの面積の割合は、A、B共に91%、実施例20−(3)の本モザイク細胞塊の中心部のhECFCの面積の割合は、67%であった。
さらに実施例20のモザイク細胞塊について、上記のCD31抗体による染色と、HE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)を重ね合わせることで、中心部に存在するhECFCの細胞密度を算出した。中心部の血管系の細胞密度は、実際に薄切標本の細胞数を数え、細胞数を体積で割って求めることができる。まず、Photoshopを用いて、上記2枚の画像を重ね合わせ、CD31抗体による染色と重なったHE染色の細胞核の数をカウントして細胞数を算出した。一方、体積は、ImageJを用いて中心部の面積を求め、その薄切標本の厚みの2μmをかけることで求められた。
その結果、実施例20−(1)の本モザイク細胞塊の中心部のhECFC(血管系の細胞)の細胞数は1.58×10-5cells/μm3、実施例20−(2)のAの本モザイク細胞塊の中心部のhECFCの細胞数は1.12×10-4cells/μm3、実施例20−(3)の本モザイク細胞塊の中心部のhECFCの細胞数は1.06×10-4cells/μm3であった。実施例20−(2)のBで細胞数とブロック重量を2倍にした場合では、中心部のhECFCの細胞数は1.72×10-4cells/μm3であった。
実施例21:hMSCのモザイク細胞塊を用いたマウス体内での生存差異評価試験
マウスの体内において、モザイク細胞塊中心のhMSCが生存していることを確認する試験を行った。
モザイク細胞塊および細胞塊の移植
マウスはBalb/c Nude(チャールズリバー)のオス、5週齢を5週ほど飼育し、約10週齢のものを用いた。まず、麻酔下で、マウスの足先端から1つ目と2つ目の足関節の間(以後、下腿部と表記)の皮膚をはさみで切開し、皮膚をめくった。その後、下腿部筋肉をメスで5mmほど切開し、ピンセットを用いて、実施例19−(1)で作成したhMSCモザイク細胞塊および比較例1で作成したhMSC細胞塊を切開部に埋めた。筋肉の切開部を縫合糸で縫合し、さらに皮膚を縫合した。
さらに、もうひとつの手法として、下腿部に筋肉注射する移植方法についても行った。実施例19−(1)で作成したhMSCモザイク細胞塊10個または比較例1で作成したhMSC細胞塊10個をhMSCの増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)200μlと共に1mmシリンジに入れ、18Gの注射針(テルモ)で下腿部の筋肉に注射した。
モザイク細胞塊の採取
解剖は移植後2日、5日、8日、13日に行った。筋肉切開移植の場合は、マウス下腿部の皮膚をはがし、下腿部の筋肉の縫合糸を取り除き、切開部をメスで切り開いた。移植したhMSCモザイク細胞塊およびhMSC細胞塊を目視で確認後、大腿部を骨ごとはさみで切断し、さらに足首から先を切断した。
筋肉注射移植の場合は、マウス下腿部の皮膚をはがし、下腿部の筋肉をメスで切開した。移植したhMSCモザイク細胞塊およびhMSC細胞塊を目視で確認後、それぞれが付着している筋肉を切り出した。
標本解析
モザイク細胞塊または細胞塊を含む下腿部、hMSCモザイク細胞塊およびhMSC細胞塊が付着した筋肉および移植前のモザイク細胞塊と細胞塊について組織切片を作製した。大腿部を4%パラホルムアルデヒドに浸漬し、ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、hMSCモザイク細胞塊およびhMSC細胞塊を含む下腿部の組織切片を作製した。切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)およびhMSC細胞の染色用として、CD29抗体とDAB発色法の免疫染色し、細胞の分布を解析した。移植後5日目のHE染色切片図を示す(図34、35)。
図34から、モザイク細胞塊では中心のhMSC細胞でも核が明瞭であり、モザイク細胞塊全体のhMSCは100%生存していた。一方、図35から、細胞のみの塊では、中心では核の濃縮および不明瞭化が起こり、hMSC細胞が壊死し、細胞塊全体で生存している細胞は62.7%であった。生体内において、hMSC細胞塊では中心でhMSCが壊死しているのに対し、hMSCモザイク細胞塊では中心までhMSCが生存できていることが確認できた。
また、5日目のhMSCモザイク細胞塊では内部に血管が形成されていることが確認できた。血管の数は面積当たりで6本であった。一方、hMSC細胞塊では、内部に血管形成は見られず、面積当たりの血管の数は0本であった。生体内において、hMSCモザイク細胞塊では、内部に血管を形成し、細胞生存に適した環境を作っていることが窺える。
実施例22-(1):hMSCとhECFCのモザイク細胞塊を用いたマウス体内での血管形成差異評価試験
モザイク細胞塊の移植
マウスはNOD/SCID(チャールズリバー)のオス、4週齢を8週ほど飼育し、約12週齢のものを用いた。麻酔下でマウス腹部の体毛を除去し、上腹部の皮下に切れ込みを入れ、切れ込みからはさみを差し込み、皮膚を筋肉からはがした後、実施例20(1)〜(3)で作成した3種類のhMSC+hECFCのモザイク細胞塊をピンセットですくい、切れ込みから1.5cmほど下腹部寄りの皮下に移植し、皮膚の切れ込み部を縫合した。
モザイク細胞塊の採取
解剖は移植から5日、14日、28日後に行った。腹部の皮膚をはがし、モザイク細胞塊が付着した皮膚を、約1平方cmの正方形の大きさに切り取った。モザイク細胞塊が腹部の筋肉にも付着している場合は、筋肉と共に採取した。
モザイク細胞塊が付着した皮膚片および、移植前のモザイク細胞塊について組織切片を作製した。皮膚を4%パラホルムアルデヒドに浸漬し、ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、モザイク細胞塊を含む皮膚の組織切片を作製した。切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)およびhECFC染色用にCD31抗体とDAB発色法の免疫染色し、モザイク細胞塊内部の血管形成およびhMSCとhECFCの挙動状態を解析した。移植後5日目のHE染色切片図を示す。
図36は、実施例20−(1)により製造されたモザイク細胞塊を用いたいもののHE染色切片図、図37は、実施例20−(2)により製造されたモザイク細胞塊を用いたいもののHE染色切片図、図38は、実施例20−(3)により製造されたモザイク細胞塊を用いたいもののHE染色切片図である。いずれの図からも、移植後5日目のモザイク細胞塊内部で血管が形成されていることが窺える。実施例20−(2)Aにより製造されたモザイク細胞塊、実施例20−(3)により製造されたモザイク細胞塊実施例20−(1)により製造されたモザイク細胞塊の順で、血管の形成が多く見られ、モザイク細胞塊は生体内で細胞塊よりも中央部の細胞生存が明らかに良好であることが実証された。また、モザイク細胞塊内部では血管を形成できること、特にhECFCを内部に存在させることで、血管形成能が高くなることが証明された。
実施例22−(2):hMSCとhECFCのモザイク細胞塊を用いたマウス体内での血管形成差異評価試験
モザイク細胞塊の移植
マウスはNOD/SCID(チャールズリバー)のオス、4週齢を用いた。麻酔下でマウス腹部の体毛を除去し、上腹部の皮下に切れ込みを入れ、切れ込みからはさみを差し込み、皮膚を筋肉からはがした後、実施例20(2)で作成したA,Bの2パターンのhMSC+hECFCのモザイク細胞塊とおよび比較例2のA,Bの2パターンのhMSC+hECFCの細胞塊をピンセットですくい、切れ込みから1.5cmほど下腹部寄りの側腹部皮下に移植し、皮膚の切れ込み部を縫合した。
モザイク細胞塊の採取
解剖は移植から6日、14日、28日後に行った。腹部の皮膚をはがし、モザイク細胞塊が付着した皮膚を、約1平方cmの正方形の大きさに切り取った。モザイク細胞塊が腹部の筋肉にも付着している場合は、筋肉と共に採取した。
モザイク細胞塊が付着した皮膚片および、移植前のモザイク細胞塊について組織切片を作製した。皮膚を4%パラホルムアルデヒドに浸漬し、ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、モザイク細胞塊を含む皮膚の組織切片を作製した。切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)およびhECFC染色用にCD31抗体とDAB発色法の免疫染色し、モザイク細胞塊内部の血管形成およびhMSCとhECFCの挙動状態を解析した。移植後14日目のHE染色切片図を示す。
図39は、実施例20−(2)のAのモザイク細胞塊を用いたいもののHE染色切片図、図40は、実施例20−(2)のBのモザイク細胞塊を用いたいもののHE染色切片図である。いずれの図からも、移植後14日目のモザイク細胞塊内部で血管が形成されていることが窺えるが、実施例20−(2)のBのモザイク細胞塊の方が、Aのモザイク細胞塊よりも、血管の形成が多く見られた。モザイク細胞塊中では、hECFCを内部に存在させることに加え、hECFCの数が多い方が血管形成能が高くなることが証明された。一方、図41は、比較例2のBを用いたもののHE染色切片図である。比較例2のAの細胞塊では、移植後14日目では採取できなかった。一方、比較例2のBの細胞塊では、細胞塊が小さくなり、血管は見られず、細胞も死んでいるのが観察された。これにより、hECFCを同様に含んでいても、ブロックがない細胞塊では血管を形成できず、細胞が死ぬことが確認できた。

Claims (24)

  1. 生体親和性を有する高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞と、を含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されている細胞移植用細胞構造体であって、
    前記高分子ブロックの大きさが20μm以上150μm以下であり、
    前記高分子ブロックの形状が不定形であり、
    前記高分子ブロックと前記細胞との比率が、細胞1個当り0.0000001μg以上1.0μg以下であり、
    前記高分子ブロックが、高分子からなる固形物を粉砕して得られたものであり、前記固形物が凍結乾燥により得られたものである細胞移植用細胞構造体。
  2. 厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、請求項1に記載の細胞移植用細胞構造体。
  3. 厚さ又は直径が500μm以上2cm以下である、請求項1に記載の細胞移植用細胞構造体。
  4. 厚さ又は直径が720μm以上1cm以下である、請求項2又は3に記載の細胞移植用細胞構造体。
  5. 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって製造される、請求項1から4の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  6. 生体親和性を有する高分子が、生分解性材料である、請求項1から5の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  7. 生体親和性を有する高分子が、ポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、請求項1から6の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  8. 生体親和性を有する高分子が、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、又はレトロネクチンである、請求項1から7の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  9. 生体親和性を有する高分子が架橋されている、請求項1から8の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  10. 架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、請求項9に記載の細胞移植用細胞構造体。
  11. 生体親和性を有する高分子が、リコンビナントペプチドである、請求項1から10の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  12. 前記生体親和性を有する高分子が、細胞接着性シグナルを一分子中に2以上有する請求項11に記載の細胞移植用細胞構造体。
  13. リコンビナントペプチドが、
    式:A−[(Gly−X−Y)nm−B
    (式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項11に記載の細胞移植用細胞構造体。
  14. リコンビナントペプチドが、
    式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)633−Gly
    (式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項11又は13に記載の細胞移植用細胞構造体。
  15. リコンビナントペプチドが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有する、請求項11から14の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  16. 血管新生因子を含む請求項1から15の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  17. 前記細胞が、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞および成熟細胞からなる群から選択される細胞である請求項1から16の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  18. 前記細胞が、非血管系の細胞を含む請求項17に記載の細胞移植用細胞構造体。
  19. 前記細胞が、非血管系の細胞のみである請求項17に記載の細胞移植用細胞構造体。
  20. 前記細胞が二種類以上であり、非血管系の細胞および血管系の細胞の両方を含む請求項18に記載の細胞移植用細胞構造体。
  21. 細胞構造体の、中心部の血管系の細胞の面積が、周辺部の血管系の細胞の面積より多い領域を有する請求項20に記載の細胞移植用細胞構造体。
  22. 前記中心部の血管系の細胞の割合が、血管系の細胞の全面積に対し、60%〜100%である領域を有する請求項21に記載の細胞移植用細胞構造体。
  23. 細胞構造体の、中心部の血管系の細胞密度が、1.0×10-4cells/μm3以上である領域を有する、請求項20から22の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体。
  24. 請求項20から23の何れか1項に記載の細胞移植用細胞構造体を用いて、血管形成された細胞移植用細胞構造体。
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