JP5493264B2 - コラーゲン基材 - Google Patents

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本発明は、コラーゲン基材、コラーゲン基材の製造方法及びコラーゲン基材を用いた細胞培養方法に関する。
再生医療の分野では、全身のあらゆる組織や臓器を対象として、自己の細胞が増殖できる足場となる環境を与えることによって、組織や臓器が本来の構造及び機能を再生復元することが行われている。このような再生医療において、欠損した組織や臓器が再生する足場となる基材としてコラーゲン等の生分解性物質からなるものが着目されている。特に、コラーゲンは、生体を構成する主要なタンパクであり、生体適合性、組織再生及び細胞増殖に適している。その一方で、コラーゲンは、加工することが難しいという問題がある。
コラーゲンで構成される基材としては、コラーゲン糸から形成された織物であることを特徴とする生体再形成コラーゲン立体織物が公知である(特許文献1)。また、コラーゲン超微細線維性不織布状多層体を非線維化コラーゲン層で挟んだ積層体からなるコラーゲン材も公知である(特許文献2)。
しかしながら、再生すべき臓器、組織及び器官の形状が複雑な形状である場合は、前者のコラーゲン基材は、基材自体の製造が煩雑となるという問題がある。また、後者のコラーゲン基材は、再生すべき臓器、組織及び器官の形状に変形させることが困難であるという問題がある。
特表平09−510639公報 国際公開98/022157号パンフレット
本発明は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とするコラーゲンのコラーゲン基材と、当該コラーゲン基材を用いた新規な細胞培養方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、コラーゲンの粉末がコラーゲン基材として利用できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1] 下記の(1)〜(3)の工程により製造されたコラーゲン基材。
(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
(2)成型物を架橋処理する工程
(3)成型物を粉末状に加工する工程
[2] 前記糸状物の直径が、10〜200μmである前記[1]に記載のコラーゲン基材、
[3] 前記成形物が単糸である前記[1]に記載のコラーゲン基材、
[4] (3)成型物を粉末状に加工する工程が、コラーゲン単糸を、糸軸方向に0.001〜5mmの間隔を空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回細断することである前記[1]に記載のコラーゲン基材、
[5] 水溶液中において、周囲に粘着部を形成する粉末を含む前記[1]に記載のコラーゲン基材、
[6] 下記の(1)〜(3)の工程を含むコラーゲン基材の製造方法。
(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
(2)成型物を架橋処理する工程
(3)成型物を粉末状に加工する工程
[7] 前記[1]〜[5]に記載のコラーゲン基材を用いた細胞培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む細胞培養方法。
(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程
(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程
(iii)前記付着性細胞を培養する工程、
[8] 前記培養容器の容器内壁の形状が、臓器、組織又は器官と同形状である前記[7]の細胞培養方法に関する。
本発明のコラーゲン基材及び当該コラーゲン基材を用いた培養方法は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする。また、本発明のコラーゲン基材は、適度な重量を有しており、非常に取り扱い易く、水溶液中における体積減少を抑制する効果もある。
本発明のコラーゲン基材は、下記の(1)〜(3)の工程により製造されたものをいう。ここで「コラーゲン基材」とは、主に付着性細胞培養における付着性細胞の足場、生体組織の欠損部に充填するための移植材及び生体組織の損傷部に適用する止血材の用途を含む概念をいう。別の観点から言えば、医療分野及び理化学分野において利用されるものをいう。
(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程、
(2)成型物を架橋処理する工程、
(3)成型物を粉末状に加工する工程。
ここで、本発明のコラーゲン基材は、(1)〜(3)と数字で書かれている工程により製造されるものの、その数字の順番通りの工程により製造されるものに限定されるものではない。後述するが、(2)と(3)の工程に関しては、逆転していても本発明のコラーゲン基材を製造することはできる。また、(2)と(3)の工程は、複数回に分割して行っても同様に本発明のコラーゲン基材を製造することはできる。但し、(3)の工程を容易に行うことができる観点から、数字の順番どおりに製造することが好ましい。
本発明の方法により製造されたコラーゲン基材は、主に円柱形状をした水難溶性コラーゲンの粉末を含むものである。これは、本発明に係るコラーゲン基材が、糸状物で構成された成形物から粉末状に加工することにより得られるからである。図1は、本発明のコラーゲン基材の外観写真であるが、本発明のコラーゲン基材は社会通念的に認識されうる粉末に属するものであることがわかる。さらに、図2は、本発明のコラーゲン基材の顕微鏡による倍率100倍の拡大写真であるが、粉末の微細構造は、円筒形状をしていることがわかる。本発明のコラーゲン基材は、いわゆる粉末として扱える程度の形状であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、円柱軸方向の長さは約0.01〜5mm、直径は約10〜200μmの形状を有する。このような粉末は、気流により粉が舞い上がることがない程度の重量を有しており、非常に取り扱い易いというメリットもある。
また、本発明の方法により製造されたコラーゲン基材は、水溶液中において、周囲に粘着部を形成する。粘着部とは、コラーゲンが水により溶解又はゲル化した部分をいい、隣接するものがコラーゲンと相溶性が高い材料からなる場合は、この隣接するものに粘着する機能を有する部分をいう。つまり、粘着部が形成することにより隣接するコラーゲン粉末同士が粘着することができ、一種の流動物として取り扱うことができる。図3は、本発明のコラーゲン基材を、水溶液中においた後、当該水溶液から取り出した際の、倍率100倍の顕微鏡による拡大写真である。図3に示すとおり、コラーゲンの粉末が互いに粘着していることがわかる。粘着部が形成される理由は、本発明に係るコラーゲン基材が、水可溶化コラーゲンを原材料とし、架橋処理により水難溶化しているものの、若干量は水に溶解するためである。
ところで、上記方法以外で水難溶化コラーゲンの粉末を製造する方法としては、例えば、ドライスプレー法及び凍結乾燥物を粉砕又は細断する方法が考えられる。しかしながら、前者はコラーゲンの溶液が粘度が高いために製造が困難であり、後者は凍結乾燥物を製造することは比較的容易であるが、当該凍結乾燥物を粉砕又は細断するのが困難である。さらに、これら2方法により製造された粉末は、気流により当該粉末が舞い上がり易い粉末である。このため当該粉末は、取り扱い性が極めて悪い。
さらに、原材料として酸可溶化コラーゲン及びアルカリ可溶化コラーゲンを用いた場合、上記の2方法により製造された粉末は、中和を行う必要がある。この際にせっかく水難溶化したとしても、当該中和によって粉末の一部が分解又は溶解する。これらの2方法により製造された粉末は、その大きさが小さいので、中和により粉末の溶解は、コラーゲン粉末の生産効率を低下させる原因となる。
水に不溶であるコラーゲンの粉末としては、動物由来の組織から直接製造されるものが公知である(例えば、特開平03−128983号公報及び特開平07−304960号公報等を参照)。当該方法により得られた水不溶性コラーゲンの粉末は、化粧品分野ではファンデーションとして、繊維分野では繊維のつや出しとして、塗料分野においては塗料の風合いを出す目的に配合されているようである。しかしながら、動物由来の組織から直接製造されるコラーゲンは、水可溶化処理をしないわけであるから、当然水溶液中において、当該粉末の周囲には上述の粘着部を形成しない。この点で本発明と相違するのである。
本発明において「コラーゲン」とは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分をいい、分子の主鎖構造が、(Gly−X−Y)、(Gly−Pro−X)及び(Gly−Pro−Hyp)で構成されるものをいう。ここで、X及びYは、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリン以外の天然及び非天然アミノ酸である。
コラーゲンのタイプについては、I型、II型及びIII型などが挙げられる。特に取り扱いが容易である観点から、I型及びIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明におけるコラーゲンは、熱変性コラーゲンであるゼラチンも含むが、付着性細胞の付着性が高い観点からコラーゲンであることが好ましい。
コラーゲンは、生体組織からの抽出、化学的ポリペプチド合成及び組み替えDNA法などにより製造される。本発明出願当時では、製造コストが安価であるの観点から、生体組織からの抽出により得られたものが好ましい。また、生体組織の由来は、例えば、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、鳥類、魚類及びヒトなどが挙げられる。また、前記生体組織としては、これらの皮膚、腱、骨、軟骨及び臓器などが挙げられる。これらの選択は当業者が適宜行うことができるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
そして、本発明における水可溶化コラーゲンとは、水に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンをいう。係るコラーゲンは、溶液として取り扱うことができるので、成形物の工業的な製造が容易となる。例えば、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン及び中性可溶化コラーゲンなどの可溶化コラーゲンが挙げられる。特に使用できる溶媒の種類が多い観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。なお、生体内埋殖時の安全性の観点から、本発明のコラーゲンは、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンであることが望ましい。
本発明のコラーゲン粉末は、まず、「(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程」工程は、圧縮成形及び押出成形(紡糸を含む)が挙げられる。特に、製造が容易である観点から、押出成形(紡糸を含む)が好ましい。
押出成形は、円筒の形状をしたノズルからコラーゲンを凝固させる溶媒に、コラーゲン溶液を吐出させる。当該方法は、いわゆるスラリー法と称する方法である。コラーゲン溶液を吐出させる装置は、例えば、ギアポンプ、ディスペンサー及び各種押し出し装置などを用いることができる。特に、脈動が少なく安定して溶液を定量吐出できる観点から、ディスペンサーが好ましいが、本発明はこれら装置に限定されるものではない。また、吐出するノズルの口径は、製造される成形物の強度が十分となる観点から、約10〜200μm、好ましくは約50〜150μmとすればよい。さらにコラーゲン水溶液の濃度は、成形物の強度が十分高い観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
また、スラリー法において用いる溶媒は、コラーゲンを凝固させるものであれば、溶媒、懸濁液及び乳濁液等を問うものではない。例えば、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類及びケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの水溶液が挙げられる。また、これらの無機塩類をアルコール類又はアセトン類に溶解若しくは分散させた液を用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、成形物の強度が高い観点から、エタノール、塩化ナトリウムのエタノール溶液及び塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましい。
さらに、押出成形の中でも紡糸により単糸を製造する方法が特に好ましい。これは、円筒状の形状の粉末の存在比率が多くなり、製品としての見栄えがよくなるからである。例えば、上述のスラリー法により得られた成形物は、ノズルから吐出された円筒状のコラーゲン同士が接着する部位が存在する。当該成形物を粉末にすると、その接着部位を構成していた箇所から得られた粉末は円筒形状ではない。一方、紡糸により単糸を製造し、当該単糸を粉末にすることにより得られた粉末は、単糸に上記の接着部位が存在しないため、ほぼ円筒形状のえ粉末を得ることができるのである。
紡糸としては、溶融紡糸、乾式紡糸及び湿式紡糸などが挙げられる。特に、原材料がコラーゲンであることを考慮すると、製造が容易であり、かつ製造コストが安価である観点から、湿式紡糸が好ましい。
湿式紡糸法は、例えば、コラーゲンの水溶液を、ギアポンプ、ディスペンサー及び各種押し出し装置などを用いて、凝固浴槽に吐出することにより実施される。湿式紡糸法においては、脈動が少なく安定して溶液を定量吐出する観点から、用いる器具はディスペンサーが好ましい。また、吐出するノズルの口径は、製造される単糸の強度が十分となる観点から、約10〜200μm、好ましくは約50〜150μmである。さらに水溶液の濃度は、単糸の強度の観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%である。
湿式紡糸で用いる凝固浴の溶媒としては、コラーゲンを凝固させる溶媒、懸濁液、乳濁液及び溶液であれば特に限定されるものではない。例えば、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類及びケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの水溶液が挙げられる。また、これらの無機塩類をアルコール類又はアセトン類に溶解若しくは分散させた液を用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトン及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、紡糸した糸の強度が高い観点から、エタノール、塩化ナトリウムのエタノール溶液及び塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましい。
凝固浴槽に吐出されたコラーゲンの単糸は、凝固浴槽から引き上げたのち、乾燥工程を経て、ボビンに巻きつけることにより成形される。ここで、乾燥工程はコラーゲンが熱変性せず、単糸の周囲に付着した凝固浴槽の液滴を除去し、かつ単糸が破断しない程度の条件で乾燥させる。その乾燥条件としては、例えば、コラーゲン水溶液をエタノールの凝固浴槽に吐出して紡糸する場合、紡糸速度(=巻き速度又は引き上げ速度)約10〜10,000m/min、湿度約50%以下、温度43℃以下の条件で、空気を送風乾燥する方法が挙げられる。
凝固浴槽から取り出された成形物(単糸)は、「(2)成型物を架橋処理する工程」によりコラーゲンを水難溶化させる。架橋処理は、1回に限らず複数回行うことができる。尚、紡糸により単糸を製造した場合は、単糸がボビンに巻き付けられた状態のまま架橋処理を行うことができて便利である。架橋処理を行うタイミングは、後述する「(3)成型物を粉末状に加工する工程」の前であっても後であってもよいが、後述する「(3)成型物を粉末状に加工する工程」を容易に行える観点から、少なくとも1回は後述する粉末にする工程の前に行うことが望ましい。
架橋方法としては、上述したように架橋剤による化学的架橋、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などが挙げられる。特に、生体内埋殖後における安全性が高い観点から、熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋の条件は、架橋温度が約110〜150度、架橋時間が6〜72時間である。特に架橋効率及び熱分解を抑える観点から、好ましくは架橋温度が約120〜140度、架橋時間が12〜48時間である。
また、原材料が酸可溶性又はアルカリ可溶性コラーゲンである場合は、その成形物を中和処理する必要がある。ここで中和処理は、少なくとも上述の架橋処理を1回行った後で行なわないと、成形物が溶解してしまうこと注意しなければならない。一方で、中和処理は、後述する成形物を粉末にする工程の前であっても後であってもよい。後述する粉末にする工程を容易に行える観点から、後述する粉末にする工程の前に行うことが望ましい。
以上に説明した方法により製造された成形物は、「(3)成型物を粉末状に加工する工程」により、粉末へと加工される。その加工方法は、主に粉砕又は細断することである。粉砕する方法としては、ジェットミルを用いる方法、ハンマーミルを用いる方法及びポールミルを用いる方法が挙げられる。一方、細断する方法としては、切断器具を用いて手作業で切断する方法、ミクロカッター及びサイレントカッターなどにより切断する方法が挙げられる。
好ましくは、粉末の見栄えが向上する観点から、コラーゲン単糸を、糸軸方向に一定間隔を空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回細断することが好ましい。一定間隔とは、0.001〜5mm程度である。
以上に説明した本発明のコラーゲン基材は、主に付着性細胞培養における付着性細胞の足場、生体組織の欠損部に充填するための移植材及び生体組織の損傷部に適用する止血材に用いることができる。特に、付着性細胞の培養においては、従来にはない特殊な培養方法を実施することができる。
本発明における培養方法とは、上述したコラーゲン基材を用いる培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む。
(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程
(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程
(iii)前記付着性細胞を培養する工程
ここで、本発明の細胞培養方法は、(i)〜(iii)と数字で書かれている工程により行われるものの、その数字の順番通りの工程により製造されるものに限定されるものではない。後述するが、(i)と(ii)の工程に関しては、逆転していても本発明の細胞培養方法を実施することはできる。
「(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程」は、主に少なくとも培養容器の底面が本発明のコラーゲン基材により埋め尽くされるように配置することにより実施される。コラーゲン基材は、容器内全てに充填してもよいが、付着性細胞を播種するためのスペース及び培養液を充填するためのスペースが確保できる観点から、容器内の容積を100%した場合、20〜60%の体積分だけ充填することが好ましい。
「(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程」は、主に培養容器に充填されたコラーゲン基材に付着性細胞を播種することにより実施される。播種の方法は、付着性細胞を培地等に懸濁した液を、培養容器に充填されたコラーゲン基材上に滴下すればよい。
付着性細胞は、特に限定されるものではないが、例えば、骨膜細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、上皮細胞及び繊維芽細胞などが挙げられる。
また、付着性細胞を懸濁する培地としては、例えば、DMEM培地、RPMI−1640培地、HamF10培地、HamF12培地、MCBD131培地、MCBD151培地、MCBD152培地、MCBD153培地、MCBD201培地、MCBD302培地、199培地等が挙げられる。この他にも、生理食塩水及びPBS等も使用できる。
また、本発明のコラーゲン基材及び培養する付着性細胞を培地等に懸濁することにより、「(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程」を実施することもできる。その後、これらを沈降させることにより、付着性細胞と本発明のコラーゲン基材の混合物ができる。沈降は、作業時間を短縮できる観点から、好ましくは遠心分離により行うことができる。この混合物は、培地等によりコラーゲン基材に粘着部が形成され、一種の流動物となる。そして、当該流動物を培養容器に流し込むことにより、「(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程」を実施する。つまり、この場合は、「(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程」が、「(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程」よりも先に行われる。この方法は、付着性細胞をコラーゲン基材に均一に播種できるというメリットがある。
「(iii)前記付着性細胞を培養する工程」は、主に培養容器に培地を添加し、一定の培養条件下におくことで実施される。添加する培地は、上述したものが利用できる。培養条件としては、特段の事情がない限りにおいては、37℃、5%CO環境下が通常である。
このようにして実施される細胞培養方法において、付着性細胞は、コラーゲン基材を足場にして増殖する。最終的に形成される付着性細胞の塊の形状は、容器内壁の形状に従う。このため、容器内壁の形状を臓器、組織又は器官と同形状にすることにより、所望の付着性細胞の塊を得ることができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順に従って本発明のコラーゲン基材を得た。
(1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
酸可溶化コラーゲンを水に溶解して5%水溶液を作製した。このコラーゲン溶液を、99.5容量%エタノール凝固浴槽中に吐出すことにより、直径約200μmのコラーゲン単糸を紡糸した。エタノール凝固浴槽から引き上げられたコラーゲン単糸を、温度約25度、湿度50%以下の条件で送風乾燥を行いながら、約150mm×150mmの長方形を有するフレームに巻き付けた。この時の紡糸速度は、約4,000mm/minとした。このようにして、水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を得た。
(2)成型物を架橋処理する工程
次に、フレームに巻き付けた状態で、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間熱脱水架橋反応を施した。次に、単糸をフレームに巻き付けた状態のまま、7.5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液により中和処理を行った。中和後、蒸留水により洗浄し、クリーンベンチ内で風乾した。その後、得られたものを、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃、24時間で再度熱架橋処理を行った。
(3)成型物を粉末状に加工する工程
上記で得られたコラーゲン単糸を、糸軸方向に0.1〜5mmを空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回メスにより粉末になるまで細断することにより、本発明のコラーゲン基材を得た(図1)。
[実験例1]
実施例1のコラーゲン基材を用いて本発明の細胞培養方法を実施した。
(i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程
24ウェルのシャーレに、実施例1のコラーゲン基材0.6gを充填した。これは、24ウェルのシャーレの内容積を100とした場合、実施例1のコラーゲン基材が約30を占めることになる。
(ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程
まず、軟骨細胞の懸濁液を調製した。懸濁液の分散媒としては、軟骨細胞増殖培地(東洋紡績(株))を用いた。軟骨細胞の濃度は、4.0×10とした。この懸濁液を、実施例1のコラーゲン基材及び比較例1のコラーゲン基材それぞれに滴下することにより、播種を行った。この時、比較例1のコラーゲン基材の一部は既に溶解し始めていた。
(iii)前記付着性細胞を培養する工程
次に、それぞれのシャーレに軟骨細胞増殖培地(東洋紡績社製)を注入した。そして、5%CO環境下で、約120日間培養を行った。
実施例1のコラーゲン基材を用いた細胞培養の結果を、図4に示す。図4の写真から明らかなように軟骨細胞は24ウェルのシャーレの形状に従って軟骨細胞が増殖していた。
本発明のコラーゲン基材及び当該コラーゲン基材を用いた培養方法は、複雑な形に従った付着性細胞の増殖を可能とする。また、コラーゲン基材は、生体組織の欠損部に充填するための移植材及び生体組織の損傷部に適用する止血材に用いることもできる。
本発明のコラーゲン基材の外観写真である。 本発明のコラーゲン基材の顕微鏡による倍率100倍の拡大写真である。 本発明のコラーゲン基材を水溶液中においた後、当該水溶液下から取り出したものの顕微鏡による倍率100倍の拡大写真である。 実施例1のコラーゲン基材を用いた細胞培養の結果の写真である。

Claims (7)

  1. 下記の(1)〜(3)の工程により製造された細胞培養用コラーゲン基材。
    (1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
    (2)成型物を架橋処理する工程
    (3)成型物を軸方向に0.001〜5mm(3mm以上は除く)の間隔を空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回細断することで粉末状に加工する工程
  2. 前記糸状物の直径が、10〜200μmである請求項1に記載の細胞培養用コラーゲン基材。
  3. 前記成形物が単糸である請求項1に記載の細胞培養用コラーゲン基材。
  4. 水溶液中において、周囲に粘着部を形成する粉末を含む請求項1に記載の細胞培養用コラーゲン基材。
  5. 下記の(1)〜(3)の工程を含む細胞培養用コラーゲン基材の製造方法。
    (1)水可溶化コラーゲンを原材料とし、糸状物で構成された成形物を製造する工程
    (2)成型物を架橋処理する工程
    (3)成型物を軸方向に0.001〜5mm(3mm以上は除く)の間隔を空けて、当該糸軸と垂直をなす面で複数回細断することで粉末状に加工する工程
  6. 請求項1〜4に記載の細胞培養用コラーゲン基材を用いた細胞培養方法であって、下記(i)〜(iii)の工程を含む細胞培養方法。
    (i)培養容器に前記コラーゲン基材を充填する工程
    (ii)前記コラーゲン基材に付着性細胞を播種する工程
    (iii)前記付着性細胞を培養する工程。
  7. 前記培養容器の容器内壁の形状が、臓器、組織又は器官と同形状である請求項6に記載の細胞培養方法。
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