以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
≪本実施の形態で使用する化合物の命名法等≫
まず、本実施の形態で使用する化合物の命名法等について説明する。
本明細書において、化合物名は、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則に基づく名称を用いる場合が多い。該規則とは、Recommendations on Organic & Biochemical Nomenclatureに基づくものである。以下、本願におけるIUPAC規則、およびこれ以降にも示すIUPACで定められたNomenclature規則(特別に他年度のIUPAC勧告等を引用する場合を除いて、)を指す場合は、Recommendations 1979を基にした“”1980年に“化学の領域”の別冊として刊行された有機化学と生化学の規則すべてと日本語への字訳規則を包含した版を元にしてその後のすべての改訂・勧告を加えた“”「有機化学・生化学命名法」(日本国 南江堂出版 1992年発行の改訂第2版)を引用している。“有機”とは、該書に開示されている命名法の対象とされる化合物群一般を指す。該対象は、1993年に出された勧告に記載された対象であってもよい。ただし、上記した該Nomenclatureの対象とした“有機”化合物には、有機金属化合物や、金属錯体をも含有される。本実施の形態においては、“有機”および/または“有機基”および/または“置換基”等、また本実施の形態で使用する化合物を以下に説明するが、特に説明のない場合、それらは金属原子および/または半金属を含まない原子で構成される。さらに好ましくは、H(水素原子)、C(炭素原子)、N(窒素原子)、O(酸素原子)、S(硫黄原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)から選ばれる原子から構成される“有機化合物”“有機基”“置換基”を本実施の形態では使用する。
また、以下の説明に、“脂肪族”および“芳香族”という語を多用する。上記したIUPACの規則によれば、有機化合物は、脂肪族化合物と芳香族化合物に分類されることが記載されている。脂肪族化合物とは、1995年のIUPAC勧告に基づいた脂肪族化合物に沿った基の定義である。該勧告には、脂肪族化合物を“Acyclic or cyclic,saturated or unsaturated carbon compounds,excluding aromatic compounds”と定義している。また、本実施の形態の説明で用いる脂肪族化合物は、飽和および不飽和、鎖状および環状のいずれも含有し、上記したH(水素原子);C(炭素原子);N(窒素原子);O(酸素原子);S(硫黄原子);Si(ケイ素原子);Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、およびI(ヨウ素原子)から選ばれるハロゲン原子;から選ばれる原子で構成される“有機化合物”“有機基”“置換基”を指す。
また、“アラルキル基”のように芳香族基が脂肪族基に結合している場合は、そのように“芳香族基で置換された脂肪族基”、“芳香脂肪族基”、または“芳香族基が結合した脂肪族基からなる基”としばしば表記することがある。これは、本実施の形態における反応性に基づくもので、アラルキル基のような基の反応に関する性質は、芳香族性ではなく脂肪族の反応性に極めて類似しているからである。また、アラルキル基、アルキル基等を包含した非芳香族反応性基を、しばしば“芳香族で置換されてもよい脂肪族基”“芳香族で置換された脂肪族基”“芳香族基が結合した脂肪族基”等と表記し、“脂肪族基”に含める場合がある。
本明細書で使用する化合物の一般式を説明する際は、上記したIUPACで定められたNomenclature規則に沿った定義を使用するが、具体的な基の名称、例示する化合物名称は、しばしば慣用名を使用している。また、本明細書中に、原子の数、置換基の数、個数をしばしば記載するが、それらは全て整数を表している。
また、本明細書中に例示する置換基や化合物が、構造異性体を有する場合は、特に断らない限り、これらの構造異性体を含む。
≪カルボニル化合物の製造方法≫
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、
下記式(1)で表される尿素結合を有する化合物を、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、カルボニル基(−C(=O)−)を有する炭酸誘導体と反応させてカルボニル化合物を得る工程(X)を含む。
また、該工程(X)を、ヒドロキシ化合物の共存下でおこなうことが好ましい。
本実施の形態の製造方法により得られるカルボニル化合物はN−置換カルバミン酸エステルを含むことが好ましい。
以下、本実施の形態で使用する化合物について詳細に説明する。
<炭酸誘導体>
本実施の形態で使用する炭酸誘導体は、カルボニル基(−C(=O)−)を有する化合物全般を指し、好ましい例としては、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、尿素、ホスゲンが挙げられる。該炭酸誘導体は、尿素またはN−無置換カルバミン酸エステルであることが好ましく、炭酸エステルであることが好ましい。
〈炭酸エステル〉
炭酸エステルとは、炭酸CO(OH)2の2原子の水素のうち、その1原子あるいは2原子を、脂肪族基、芳香族基等で置換した化合物を指す。本実施の形態に用いる炭酸エステルとしては、下記式(8)で表される化合物が好ましい。
(式中:
Y
1およびY
2は、各々独立に、酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、もしくは炭素数7〜20の芳香脂肪族基を表す。)
上記式(8)におけるY1およびY2は、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基であることが好ましい。
脂肪族基の好ましい例としては、脂肪族基が、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、および前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)である。また、アラルキル基の場合の例としては、鎖状および/分岐鎖状のアルキル基が、芳香族基で置換された基を挙げることができ、炭素数1〜14の該アルキル基が炭素数6〜19の該芳香族基で置換された基であることが好ましい。該芳香族基とは、上記で説明したように、好ましくは特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基であって、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、架橋環式芳香族基、環集合芳香族基、ヘテロ環式芳香族基等が挙げられ、さらに好ましくは、置換および/または無置換のフェニル基、置換および/または無置換のナフチル基、置換および/または無置換のアントリル基である。
Y1およびY2が芳香族基の場合の例としては、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、ハロゲン原子)で構成される基であって、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、架橋環式芳香族基、環集合芳香族基、ヘテロ環式芳香族基等が挙げられ、さらに好ましくは、置換および/または無置換のフェニル基、置換および/または無置換のナフチル基、置換および/または無置換のアントリル基である。置換基は、水素原子、脂肪族基(鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、および前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す))、上記した芳香族基で置換されてもよく、上記脂肪族基と芳香族基とで構成される基であってもよい。
このようなY1およびY2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の、該基を構成する炭素原子の数が1〜20のアルキル基;
フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ビフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、ジペンチルフェニル基、ジヘキシルフェニル基、ジヘプチルフェニル基、ターフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、トリプロピルフェニル基、トリブチルフェニル基等の、該基を構成する炭素原子の数が6〜20のアリール基;
フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等の、該基を構成する炭素原子の数が7〜20のアラルキル基等を例示することができる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基の、該基を構成する炭素原子の数が1〜8の整数より選ばれる数である脂肪族炭化水素基であるアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジペンチルフェニル基等の芳香族基が、より好ましく使用される。
炭酸エステルの具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジヘプチル、炭酸ジオクチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルフェニル、炭酸ジエチルフェニル、炭酸ジプロピルフェニル、炭酸ジブチルフェニル、炭酸ジペンチルフェニル、炭酸ジオクチルフェニル、炭酸ジノニルフェニル、炭酸ジクミルフェニル、炭酸ジ(ビフェニル)、炭酸ジ(ジメチルフェニル)、炭酸ジ(ジエチルフェニル)、炭酸ジ(ジプロピルフェニル)、炭酸ジ(ジペンチルフェニル)、炭酸ジ(ジクミルフェニル)等を挙げることができる。
〈N−無置換カルバミン酸エステル〉
本実施の形態に用いるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、下記式(9)で表される化合物である好ましい。
(式中;
Y
3は、酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、もしくは炭素数7〜20の芳香脂肪族基を表す。)
上記式(9)において、Y3としては上記で定義したY1と同様の基が好ましい。
N−無置換カルバミン酸エステルの具体例としては、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸ノニル、カルバミン酸デシル、カルバミン酸ウンデシル、カルバミン酸ドデシル、カルバミン酸トリデシル、カルバミン酸テトラデシル、カルバミン酸ペンタデシル、カルバミン酸ヘキサデシル、カルバミン酸ヘプタデシル、カルバミン酸オクタデシル、カルバミン酸ノナデシル、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸(メチルフェニル)、カルバミン酸(エチルフェニル)、カルバミン酸(プロピルフェニル)、カルバミン酸(ブチルフェニル)、カルバミン酸(ペンチルフェニル)、カルバミン酸(ヘキシルフェニル)、カルバミン酸(ヘプチルフェニル)、カルバミン酸(オクチルフェニル)、カルバミン酸(ノニルフェニル)、カルバミン酸(デシルフェニル)、カルバミン酸(ビフェニル)、カルバミン酸(ジメチルフェニル)、カルバミン酸(ジエチルフェニル)、カルバミン酸(ジプロピルフェニル)、カルバミン酸(ジブチルフェニル)、カルバミン酸(ジペンチルフェニル)、カルバミン酸(ジヘキシルフェニル)、カルバミン酸(ジヘプチルフェニル)、カルバミン酸(ターフェニル)、カルバミン酸(トリメチルフェニル)、カルバミン酸(トリエチルフェニル)、カルバミン酸(トリプロピルフェニル)、カルバミン酸(トリブチルフェニル)、カルバミン酸(フェニルメチル、カルバミン酸(フェニルエチル)、カルバミン酸(フェニルプロピル)、カルバミン酸(フェニルブチル)、カルバミン酸(フェニルペンチル)、カルバミン酸(フェニルヘキシル)、カルバミン酸(フェニルヘプチル)、カルバミン酸(フェニルオクチル)、カルバミン酸(フェニルノニル)、等を挙げることができる。
<有機第1アミン>
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、有機アミンを用いる場合がある。該有機アミンとしては、有機第1アミンが好ましく使用される。ここでいう有機第1アミンとは、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた Nomenclature(IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry)記載の規則C−8に定められる“第1アミン”(モノ第1アミンおよびポリ第1アミン)を指し、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
(式中;
R
3は、炭素数1から85の有機基を表し、
aは1から10の整数を表す。)
R3は、例えば、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基が挙げられ、非環式炭化水素基、環式炭化水素基(例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基、複素環基)からなる基、前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる基から1種以上結合した基、または前記基が、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素)との共有結合を介して結合している基が挙げられる。
このようなR3のなかで、本実施の形態で好ましく使用できるR3は、副反応の起こりにくさを考えれば、脂肪族基、芳香族基、および脂肪族基と芳香族基とが結合してなる基から選ばれ、1〜85の範囲で炭素原子を含む基である。流動性等を考慮すれば、好ましくは1〜70の範囲で炭素原子を含む基である。より好ましくは1〜13の範囲で炭素原子を含む基である。
該さらに好ましい脂肪族基は、炭素数6〜70であって、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、および前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)である。
該R3で構成される有機第1アミンの好ましい例としては、
1)R3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1種以上含有する炭素数6〜85の基であって、R3中の芳香族環をNH2基が置換し、aが1である、芳香族有機モノ第1アミン、
2)R3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1以上含有する炭素数6〜85の基であって、R3中の芳香族環をNH2基が置換し、aが2以上である芳香族有機ポリ第1アミン、
3)R3が、炭素数1〜85の、芳香族置換されてよい脂肪族基であって、aが2または3の脂肪族有機ポリ第1アミンである。
上記で、NH2基が結合している原子(好ましくは炭素原子)が、芳香族環に含まれるものを芳香族有機アミンと表記し、芳香族環でない原子(主に炭素)に結合している場合を脂肪族有機アミンと表記している。
以下に好ましい有機第1アミンの具体例を示す。
1)芳香族有機モノ第1アミン
本実施の形態に用いる有機第1アミンとしては、例えば、上記式(5)中、R
3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1種以上含有する炭素数6〜85の基であって、R
3中の芳香族環をNH
2基が置換し、aが1である、芳香族有機モノ第1アミンが挙げられ、好ましくはR
3が炭素数6〜70の基であって、aが1である芳香族有機モノ第1アミン、流動性等を考慮してさらに好ましくはR
3が炭素数6〜13の基であって、aが1である芳香族有機モノ第1アミンであり、下記式(10)で表される芳香族有機モノ第1アミンである。
(式中;
NH
2基のオルト位および/またはパラ位の少なくとも1箇所は非置換であり、R
5〜R
8はそれぞれ独立に環の芳香族性を保つ任意の位置に置換する基を示す。)
R5〜R8は、各々独立に芳香環を置換してもよく、また、R5〜R8同士が結合して芳香環とともに環を形成してもよい。また、R5〜R8は、各々独立に、水素原子、またはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびこれらの基からなる群から選ばれる基が飽和脂肪族結合および/またはエーテル結合で結合された基で構成される基であることが好ましく、該アリール基は、ヒドロキシ基を有していてもよい。
R5〜R8の炭素数は、好ましくは、0から7の範囲の整数個であり、式(10)で表される芳香族有機モノ第1アミンを構成する合計炭素数は、6から50の整数個であり、好ましくは、6から13の整数個である。
このような式(10)で表される芳香族有機モノ第1アミンのより好ましい例としては、式(10)中のR5〜R8が、水素原子、またはメチル基、エチル基等のアルキル基から選ばれる基である芳香族有機モノ第1アミンが挙げられる。そのような芳香族有機モノ第1アミンの例としては、アニリン、アミノトルエン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジプロピルアニリン、アミノナフタレン、アミノメチルナフタレン、ジメチルナフチルアミン、トリメチルナフチルアミン等を挙げることができる。中でもアニリンがさらに好ましく用いられる。
なお、本実施の形態において、具体例として挙げられた化合物が異性体をとり得る場合は、該各異性体も該具体例に含まれる。
2)芳香族有機ポリ第1アミン
本実施の形態に用いる有機第1アミンとしては、例えば、式(5)中、R3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1以上含有する炭素数6〜85の基であって、R3中の芳香族環をNH2基が置換し、aが2以上である芳香族有機ポリ第1アミンが挙げられ、好ましくはR3が、炭素数6〜70の基であって、aが2以上である芳香族有機ポリ第1アミン、流動性等を考慮して、より好ましくはR3が、1種以上の芳香族環を含有し、該芳香族環はさらにアルキル基、アリール基、アラルキル基で置換されてよい炭素数6〜13の基であって、R3に含まれる芳香族基にNH2基が結合した、aが2以上である芳香族有機ポリ第1アミンである。
このような芳香族有機ポリ第1アミンの例としては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、メチレンジアニリン、ジアミノメシチレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジベンジル、ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェノキシエタン)、α,α’−ジアミノキシレン、ジアミノアニソール、ジアミノフェネトール、ジアミノナフタレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジアミノメチルナフタレン、下記式(11)で表されるポリメチレンポリフェニルポリアミンを挙げることができる。
(式中;
dは0から6の整数である。)
3)脂肪族有機ポリ第1アミン
本実施の形態に用いる有機第1アミンとしては、例えば、式(5)中、R3が、炭素数1〜85の範囲の整数個の、芳香族置換されてよい脂肪族基であって、aが2または3の脂肪族有機ポリ第1アミンが挙げられる。
好ましい脂肪族有機ポリ第1アミンは、該脂肪族基が、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、または前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)である脂肪族有機ポリ第1アミンである。該脂肪族基の炭素数は、1〜70であることがより好ましく、工業的に大量に製造する際の流動性等を考慮すると、6〜13であることがさらに好ましい。
具体的には、例えば、式(5)中、R3が、直鎖および/または分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、または該アルキル基と該シクロアルキル基とから構成される基である脂肪族有機ポリ第1アミンが挙げられる。
このような脂肪族有機ポリ第1アミンの例としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン等のアルキル−ジ第1アミン類;
トリミノヘキサン、トリアミノヘプタン、トリアミノオクタン、トリアミノノナン、トリアミノデカン等のアルキル−トリ第1アミン類;
ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロペンタン、ジアミノシクロヘキサン等のシクロアルキル第1アミン類;
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(シスおよび/またはトランス体)、メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の、アルキル基で置換されたシクロヘキシルポリ第1アミン類が挙げることができる。
上記1)、2)、3)で説明した有機第1アミンが好ましく用いられ、中でも有機第1アミンが、有機第1モノアミンまたは有機第1ジアミンまたは有機第1トリアミンである(上記式(5)で、aが、1または2または3の整数)ことがより好ましい。
<尿素結合を有する化合物>
本実施の形態に用いる尿素結合を有する化合物は、下記式(1)で表される尿素結合を含む化合物(以下、単に「尿素結合を含む化合物」とも記す。)である。
このような尿素結合を含む化合物の具体例を以下に示す。
〈N−置換尿素〉
上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物の1つとして、下記式(12)で表されるN−置換尿素が挙げられる。
(式中;
R
9およびR
10は、各々独立に、炭素数1〜85の有機基である。)
上記式(12)において、R9およびR10は、各々独立に、炭素数1〜85の脂肪族基、または炭素数6〜85の芳香族基が好ましい。該炭素数1〜85の脂肪族基は、芳香族置換されていてもよい。該炭素数6〜85の芳香族基は、芳香族環を1以上含有し、該芳香族環は脂肪族置換および/または芳香族置換されていてもよい。好ましい脂肪族基としては、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基(芳香族基を含む)、および前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)である。より好ましくは、脂肪族基の場合は、炭素数1〜70の非環式炭化水素基、環式炭化水素基、および前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、非環式炭化水素基で置換された環式炭化水素基、環式炭化水素基で置換された非環式炭化水素基などを指す)である。工業的に大量に製造する際の流動性等を考慮して、さらに好ましくはR9およびR10が、炭素原子と水素原子とから構成される炭素数6〜13の非環式炭化水素基、環式炭化水素基、および前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、非環式炭化水素基で置換された環式炭化水素基、環式炭化水素基で置換された非環式炭化水素基などを指す)ある。即ち、R9およびR10が、直鎖および/または分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、および該アルキル基と該シクロアルキル基とから構成される基の場合である。また、R9およびR10が芳香族基の場合は、炭素数6〜70である芳香族基である。流動性等を考慮して、より好ましくはR9およびR10が、1種以上の芳香族環を含有し、該芳香族環は更にアルキル基、アリール基、アラルキル基で置換されてよい炭素数6〜13の芳香族基である。
このようなN−置換尿素の例としては、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素、1,3−ジブチル尿素、1,3−ジペンチル尿素、1,3−ジヘキシル尿素、1,3−ジオクチル尿素、1,3−ジデシル尿素、1,3−ジオクタデシル尿素、1,3−ジシクロペンチル尿素、1,3−ジシクロヘキシル尿素、1,3−ジシクロオクチル尿素、1,3−ジ(フェノルエチル)尿素、1,3−ジ(フェニルブチル)尿素、1,3−ジ(フェニルオクチル)尿素、1,3−ジ(フェニルドデシル)尿素、1,3−ジフェニル尿素、1,3−ジ(メチルフェニル)尿素、1,3−ジ(エチルフェニル)尿素、1,3−ジ(プロピルフェニル)尿素、1,3−ジ(ブチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ペンチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ヘキシルフェニル)尿素、1,3−ジ(ヘプチルフェニル)尿素、1,3−ジ(オクチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ノニルフェニル基、1,3−ジ(デシルフェニル)尿素、1,3−ジ(ビフェニル)尿素、1,3−ジ(ジメチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジエチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジプロピルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジブチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジペンチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジヘキシルフェニル)尿素、1,3−ジ(ジヘプチルフェニル)尿素、1,3−ジ(ターフェニル)尿素、1,3−ジ(トリメチルフェニル)尿素、1,3−ジ(トリエチルフェニル)尿素、1,3−ジ(トリプロピルフェニル)尿素、1,3−ジ(トリブチルフェニル)尿素、1,3−ジ(フェニルメチル)尿素、1,3−ジ(フェニルエチル)尿素、1,3−ジ(フェニルプロピル)尿素、1,3−ジ(フェニルブチル)尿素、1,3−ジ(フェニルペンチル)尿素、1,3−ジ(フェニルヘキシル)尿素、1,3−ジ(フェニルヘプチル)尿素、1,3−ジ(フェニルオクチル)尿素、1,3−ジ(フェニルノニル)尿素等が挙げられる。
〈尿素結合を有する化合物の製造方法〉
上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物は、例えば、有機第1アミンと炭酸誘導体と含む原料成分から製造することができる。該製造方法によって得られる尿素結合を有する化合物は、例えば、下記式(2)で表される化合物である。
(式中;
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、有機第1アミンに由来する基を含む有機基である。)
例えば、有機第1アミンが、上述の式(5)で表される有機第1アミンであって、式(5)中のaが1である有機第1モノアミンである場合、上記式(2)で表される化合物を下記式(13)のように記述することができる。
(式中;
R
3は、炭素数1〜85の有機基である。)
また、有機第1アミンが、上述の式(5)で表される有機第1アミンであって、式(5)中のaが2である有機第1アミンである場合、上記式(2)で表される尿素結合を有する化合物を下記式(14)のように記述することができる。
(式中;
R
3は、炭素数1〜85の有機基であり、
R
11およびR
12は、各々独立に、下記式(15)〜式(17)からなる群から選ばれる1つの基であり、
eは、0または正の整数である。)
(式中;
R
13は、ヒドロキシ化合物から、OH基を1つ除いた残基を表す。)
上記した尿素結合を有する化合物は、有機第1アミンと炭酸誘導体とを反応させてN−置換カルバミン酸エステルを製造する際に、該N−置換カルバミン酸エステルと共に得られる化合物であってもよい。以下、有機第1アミンと炭酸誘導体とを反応させて、N−置換カルバミン酸エステルと同時に尿素結合を有する化合物を製造する方法について説明する。
有機第1アミンと炭酸誘導体とを含む原料成分から尿素結合を有する化合物を製造する方法はいくつかあり、特に限定はされないが、次の方法が好ましく使用される。
方法(1):炭酸誘導体として尿素を使用し、有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とから尿素結合を有する化合物を製造する方法。
方法(2):炭酸誘導体として上記式(8)で表される炭酸エステルを使用し、有機第1アミンと炭酸エステルとから尿素結合を有する化合物を製造する方法。
方法(3):炭酸誘導体としてホスゲンを使用し、有機第1アミンとホスゲンとから尿素結合を有する化合物を製造する方法。
〔方法(1)〕
まず、方法(1)の方法について説明する。
方法(1)はさらに、下記の方法(i)、方法(ii)の2の方法に分類される。
方法(i):有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とを“同時に”反応させる工程(A)を含む方法。
方法(ii):有機第1アミンと尿素とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含む反応混合物を得る工程(B)、ならびに該工程(B)で得たウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる工程(C)を含む方法。
(方法(i))
まず、方法(i)の工程(A)であるが、“同時に”とは、方法(ii)とは異なり、工程が分割されていないという意であって、必ずしも、有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とが全く同時に反応するという意味ではない。
該工程(A)では、例えば、下記式(18)で表される反応によって、N−置換カルバミン酸エステルが生成すると共に、下記式(19)、式(20)で表される反応によって、尿素結合を有する化合物が生成する。
(式中;
R、R’は、各々独立に、有機基を表す。)
なお、上記式(18)〜(20)では、説明を簡単にするために、2官能の有機第1アミンを用いた場合を示しているが、本実施の形態に用いる方法は、2官能の有機第1アミンに限定されるものではない。また、N−置換カルバミン酸エステル、尿素結合を有する化合物の生成過程は、上記式に限定されるものではない。
有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とを反応させる反応条件は、反応させる化合物によっても異なるが、ヒドロキシ化合物の量は、使用される有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で0.5倍〜500倍の範囲である。ヒドロキシ化合物の使用量は、反応器の大きさや尿素誘導体の溶解性を考慮すれば、好ましくは1倍〜200倍の範囲、より好ましくは1.5倍〜100倍の範囲、さらに好ましくは、2倍〜50倍である。
尿素の量は、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で0.5倍〜50倍の範囲である。尿素の使用量が少ない場合は未反応のアミノ基が残留する場合がある。したがって、過剰量の尿素を使用することが好ましいが、反応器の大きさや、尿素の溶解性を考慮すると、好ましくは1.1倍〜10倍、より好ましくは1.5倍〜5倍の範囲である。
反応温度は、使用する有機アミンと尿素とヒドロキシ化合物との反応性にもよるが、100℃〜350℃の範囲が好ましい。反応温度が350℃以下であると、尿素が分解したり、ヒドロキシ化合物が脱水素変性したりすることを抑制でき、あるいは、生成物であるN−置換カルバミン酸エステルの分解反応や変性反応等を抑制できる。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜320℃の範囲、さらに好ましくは140℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、例えば、反応系の組成、反応温度、副生物(例えば、アンモニア)の除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧とすることができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲であることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.1kPa〜0.1MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
工程(A)をおこなう反応器は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できるが、凝縮器を具備した槽型および/または塔型の反応器が好ましく使用される。具体的には、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
また、該反応器は、好ましくは凝縮器を具備する。凝縮器の種類は特に制限がなく、公知の凝縮器が使用できる。例えば、多管円筒型凝縮器、二重管式凝縮器、単管式凝縮器、空冷式凝縮器等の従来公知の凝縮器を適宜組み合わせて使用することができる。凝縮器は、該反応器の内部に具備されていても、該反応器の外部に具備されていて、該反応器と配管で接続されていてもよく、反応器や凝縮器の形式、凝縮液の取り扱い方法等を勘案して、様々な形態を採用される。
反応器および凝縮器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。SUS304やSUS316、SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。例えば、生成するアンモニアを除去する工程、有機第1アミンを精製する工程、尿素をヒドロキシ化合物へ溶解する工程、ヒドロキシ化合物を溶解する工程、ヒドロキシ化合物を分離する工程、ヒドロキシ化合物を分離および/または精製する工程、副生成物等を焼却したり廃棄する工程など、当該分野において想定できる範囲の工程や装置を付加して構わない。
有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物との反応では、アンモニアが副生する場合が多い。好ましくは、該アンモニアを系外に除去しながら反応をおこなう。その方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などをおこなうことができる。例えば、該反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒またはヒドロキシ化合物の沸騰下でおこなうこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
該反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。このような触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート等の塩基性触媒;希土類元素、アンチモン、ビスマスの単体およびこれらの元素の酸化物、硫化物および塩類;ホウ素単体およびホウ素化合物;周期律表の銅族、亜鉛族、アルミニウム族、炭素族、チタン族の金属およびこれらの金属酸化物および硫化物;周期律表の炭素を除く炭素族、チタン族、バナジウム族、クロム族元素の炭化物および窒化物が好ましく用いられる。触媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、有機第1アミンのアミノ基に対して化学量論比で0.0001〜100倍の範囲で使用することができる。触媒を添加すれば、該触媒を除去する必要が生じる場合が多いので、好ましくは触媒を添加せずおこなう。触媒を使用した場合、反応後に触媒は除去してもよい。
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01〜100時間である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物の含有量を定量し、使用した有機第1アミンに対して所望の収率に到達していることを確認して反応を終了することができる。
当該反応において、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンまたはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を反応溶媒として好適に使用する。いうまでもなく、当該反応において過剰量使用するヒドロキシ化合物も、反応溶媒として好適に使用される。
なお、本実施の形態において、具体例として挙げられた化合物が異性体をとり得る場合は、該各異性体も該具体例に含まれる。
(方法(ii))
次に、方法(ii)について説明する。
方法(ii)は、上記工程(B)と工程(C)とを含む工程により有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物とを反応させる方法である。
以下、工程(B)について詳細に説明する。
工程(B)は、有機第1アミンと尿素とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含有する反応混合物を得る工程である(ウレイド基を有する化合物については後述する)。なお、後述するように、該工程(B)においても尿素結合を有する化合物が生成する場合があり、該工程(B)で得られる尿素結合を有する化合物を、本実施の形態における尿素結合を有する化合物として使用することもできる。
有機第1アミンと尿素との反応をおこなう反応条件は,反応させる化合物によって異なるが、該有機第1アミンのアミノ基の数に対する尿素の数は、0.5〜100倍の範囲である。
該工程(B)において、ウレイド基を有する化合物を生成する反応は、平衡が大きく生成側に偏っている反応、もしくは、不可逆反応である。該工程(B)ではアンモニアが副生するが、系中のアンモニア濃度は、ウレイド基を有する化合物を生成する反応における、ウレイド基を有する化合物の収率にほとんど依存しないことが判明した。一方で、該工程(B)における溶媒としてヒドロキシ化合物を使用する場合(詳細は後述する)、ウレイド基を有する化合物はヒドロキシ化合物と反応してアンモニアの脱離によってN−置換カルバミン酸エステルを生成する場合があるが、該N−置換カルバミン酸エステルの生成反応は、平衡が大きく原料側に偏っている反応であるため、発生するアンモニアを除去してアンモニアの濃度を低減しなければN−置換カルバミン酸エステルは生成しにくい場合が多い。そのため、工程(B)の反応液中のアンモニア濃度をある程度の水準以上に保持することによって、生成するウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物との反応によるN−置換カルバミン酸エステルの生成を抑制し、ウレイド基を有する化合物を選択的に生成させることができる。したがって、好ましいアンモニア濃度は10ppmより高く、より好ましくは100ppmより高く、さらに好ましくは300ppmより高く、特に好ましくは1000ppmより高い濃度である。
工程(B)の反応温度は、30℃〜250℃の範囲で実施することができる。反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では好ましくない反応(例えば、尿素の分解反応等)が生起して、複雑に置換した尿素誘導体等を生成する場合があるので、より好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは70℃〜180℃の範囲である。反応温度を一定にするために、工程(B)をおこなう反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。
該工程(B)では下記式(21)で表される反応によってウレイド基を有する化合物と共に、該ウレイド基を有する化合物の縮合や該ウレイド基を有する化合物と尿素結合を有する化合物も生成する(例えば下記式(22)、(23))。
(式中;
R、R’は、各々独立に、有機基を表す。)
なお、上記式(21)〜(23)では、説明を簡単にするために、2官能の有機第1アミンを用いた場合を示しているが、本実施の形態に用いる方法は、2官能の有機第1アミンに限定されるものではない。また、ウレイド基を有する化合物、N−置換カルバミン酸エステル、尿素結合を有する化合物の生成過程は、上記式に限定されるものではない。
反応圧力は、使用する化合物の種類、反応系の組成、反応温度、反応装置等によって異なるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲で実施されることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、0.1kPa〜1MPa(絶対圧)の範囲が好ましい。
反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.001〜100時間、好ましくは0.01〜80時間、より好ましくは0.1〜50時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによってウレイド基を有する化合物が所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。工程(B)は、ウレイド基を有する化合物を製造する工程であるが、該工程(B)において、未反応の有機第1アミンに由来するアミノ基が多く存在していると、工程(B)の後におこなう工程(C)において、予期しない副反応を生起する場合がある。したがって、工程(B)では、可能な限り高い収率でウレイド基を有する化合物を生成しておき、有機第1アミンに由来するアミノ基の量を低減しておくことが好ましい。具体的には、ウレイド基を有する化合物を構成するウレイド基の数に対する、有機第1アミンに由来するアミノ基の数の比が、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下となるまで反応を継続することが好ましい。
該反応において、必要に応じて触媒を使用することができ、例えば、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物や無機金属化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属のアルコラートであって、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート等の塩基性触媒等を使用することができる。
該工程(B)の反応は、反応液の粘度を低下させる、および/または、反応液を均一な系とする観点から、好ましくは溶媒の存在下において実施される。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンまたはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類、水、アルコールや芳香族ヒドロキシ化合物等のヒドロキシ化合物等を反応溶媒として好適に使用することができる。生成物であるウレイド基を有する化合物の溶解性の観点から、反応溶媒として、好ましくは、水、ヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)である。なお、これらの溶媒は、単独でも2種以上の混合物でも使用することができる。
ここに示した反応溶媒は、任意の量を使用することができるが、反応溶媒としてヒドロキシ化合物を使用する場合は、該有機第1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で1倍より多く100倍より少ない範囲で使用することができる。反応液の流動性を向上させ反応を効率よく進行させるためには、該有機第1アミンのアミノ基に対して過剰のアルコールを使用することが好ましいが、余りに多くのアルコールを使用すれば反応器が大きくなる等の弊害もあることから、より好ましくは、該有機第1アミンのアミノ基に対して、より好ましくは化学量論比で5倍より多く50倍より少ない範囲、更に好ましくは8倍より多く20倍より少ない範囲で使用することができる。
当該反応を実施する際に使用する反応装置は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できる。例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。SUS304やSUS316、SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよい。加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。例えば、生成するアンモニアを除去する工程、有機第1アミンを精製する工程、尿素を芳香族ヒドロキシ化合物へ溶解する工程、芳香族ヒドロキシ化合物を溶解する工程、アルコールを分離する工程、芳香族ヒドロキシ化合物を分離および/または精製する工程、生成した反応液からウレイド基を有する化合物を精製する工程、副生成物等を焼却したり廃棄する工程など、当該分野において想定できる範囲の工程や装置を付加して構わない。
次の工程(C)は、該工程(B)で得たウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる工程である。該工程(C)では、下記式(24)で表される反応によってN−置換カルバミン酸エステルと共に、例えば、下記式(25)、式(26)で表される反応によって尿素結合を有する化合物も生成する。
(式中;
R、R’は、各々独立に、有機基を表す。)
なお、上記式(24)〜(26)では、説明を簡単にするために、2官能の有機第1アミンを用いた場合を示しているが、本実施の形態に用いる方法は、2官能の有機第1アミンに限定されるものではない。また、N−置換カルバミン酸エステル、尿素結合を有する化合物の生成過程は、上記式に限定されるものではない。
工程(B)で反応溶媒を使用した場合、工程(C)をおこなう前に、工程(B)の反応液から該反応溶媒を除去してもよいし、除去せずにそのまま工程(C)をおこなってもよい。工程(B)の反応溶媒が、工程(C)のヒドロキシ化合物と異なる場合は、新たに、ヒドロキシ化合物を加えて工程(C)をおこなうことができる。
工程(C)における、ウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを反応させる反応条件は、反応させる化合物によっても異なるが、ヒドロキシ化合物の量は、使用するウレイド基を有する化合物のウレイド基の数に対して化学量論比で1倍〜500倍の範囲である。該ウレイド基を有する化合物や生成物の溶解性を確保するために、大過剰のヒドロキシ化合物を使用することが好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、好ましくは1倍〜100倍の範囲、さらに好ましくは2倍〜50倍の範囲、さらに好ましくは、3〜20倍の範囲である。
反応温度は、使用する化合物にもよるが、100℃〜350℃の範囲が好ましい。反応温度が100℃以上であると、ヒドロキシ化合物と、副生するアンモニアとが強く結合することを抑制できるために、所望の反応が良好に進行し、また、複雑に置換したカルボニル化合物の生成を抑制することができる。一方、反応温度が350℃以下であると、尿素が分解したり、ヒドロキシ化合物が脱水素変性したりすることを抑制することができる。このような観点から、より好ましい温度は120℃〜320℃の範囲、さらに好ましくは140℃〜300℃の範囲である。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なるが、通常、0.01Pa〜10MPa(絶対圧)の範囲であることが好ましく、工業的実施の容易性を考慮すると、0.1Pa〜5MPa(絶対圧)の範囲が好ましく、気体のアンモニアを系外に除去することを考慮すると、0.1Pa〜1.5MPa(絶対圧)がさらに好ましい。
工程(C)の反応では、アンモニアが副生する場合が多く、該副生するアンモニアを系外に除去しながら反応をおこなうことが好ましい。好ましくは、反応液中のアンモニア濃度が1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下となるようにアンモニアを除去する。アンモニアを除去する方法としては、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法などを挙げることができる。例えば、該反応蒸留法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを蒸留によって気体状で分離する方法である。アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒またはヒドロキシ化合物の沸騰下でおこなうこともできる。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独であるいは混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法が好ましい。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
該反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。このような触媒としては、例えば、上記工程(A)の項で例示したものが使用できる。触媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、ウレイド基を有する化合物のウレイド基に対して化学量論比で0.0001〜100倍の範囲で使用することができる。
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01〜100時間である。反応時間は目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、該反応液中の目的化合物の含有量を定量し、収率が所望の値となっていることを確認したのち反応を停止してもよい。
当該反応において、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒が使用できる。このような溶媒としては、上記工程(A)の項で例示したものが使用できる。
当該反応を実施する際に使用する反応装置やその材質は、特に制限がなく、工程(A)の項で例示したものを使用できる。
〔方法(2)〕
次に、方法(2)の、炭酸誘導体として上記式(8)で表される炭酸エステルを使用し、有機第1アミンと炭酸エステルとを反応させて尿素結合を有する化合物を製造する方法について示す。該方法(2)では、例えば、下記式(27)で表される反応によってN−置換カルバミン酸エステルと共に、下記式(28)に示す反応によって尿素結合を有する化合物が生成する。
(式中;
R、R’は、各々独立に、有機基を表す。)
なお、上記式(27)、(28)では、説明を簡単にするために、2官能の有機第1アミンを用いた場合を示しているが、本実施の形態に用いる方法は、2官能の有機第1アミンに限定されるものではない。また、N−置換カルバミン酸エステル、尿素結合を有する化合物の生成過程は、上記式に限定されるものではない。
反応条件は,反応させる化合物によって異なるが、有機第1アミンのアミノ基に対して炭酸エステルを化学量論比で、1.1〜1000倍の範囲であることが好ましい。反応速度を高め、反応を早期に完結させるためには、炭酸エステルは有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量が好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、より好ましくは2〜100倍の範囲、さらに好ましくは2.5〜30倍の範囲である。反応温度は、通常、常温(20℃)〜200℃の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では好ましくない反応も起こる場合があるので、好ましくは50℃〜150℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常20〜1×106 Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、より好ましくは0.1〜5時間である。また、反応液を分析し、N−置換カルバミン酸エステルの生成量および/または尿素結合を有する化合物の生成量が所望の範囲であることを確認して反応を終了することもできる。
当該反応において、必要に応じて触媒を使用することができ、例えば、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物や無機金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属のアルコラートであって、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート等の塩基性触媒等を使用することができる。
当該反応においては、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒を使用することができる。溶媒の例としては、上記した工程(A)の項で例示した溶媒が挙げられる。また、アミン化合物のアミノ基に対して過剰量使用される炭酸エステルも、該反応における溶媒として好適に使用される。
当該反応を実施する際に使用する反応装置は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できる。例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。
〔方法(3)〕
次に、方法(3)の、炭酸誘導体としてホスゲンを使用し、有機第1アミンとホスゲンとから尿素結合を有する化合物を製造する方法について説明する。該方法(3)では、下記式(29)で表される反応によってN−置換カルバミン酸クロリドが生成すると共に、例えば、下記式(30)に示す反応によって尿素結合を有する化合物が生成する。また、N−置換カルバミン酸クロリドが熱分解して生成するイソシアネートが共存する場合がある。
(式中;
R、R’は、各々独立に、有機基を表す。)
なお、上記式(29)、(30)では、説明を簡単にするために、2官能の有機第1アミンを用いた場合を示しているが、本実施の形態に用いる方法は、2官能の有機第1アミンに限定されるものではない。また、N−置換カルバミン酸エステル、尿素結合を有する化合物の生成過程は、上記式に限定されるものではない。
有機第1アミンとしては、例えば、上述の式(5)で表される有機第1アミンを使用することができる。有機第1アミンは遊離のアミンとして使用することもできるが、ホスゲンとの反応前に、有機酸、無機酸等との塩としてもよい。塩の例としては、カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。
ホスゲンは溶媒との混合物として使用する。使用する溶媒は、ホスゲン、N−置換カルバミン酸クロリド、該N−置換カルバミン酸クロリドの分解物であるイソシアネートに対して不活性であれば特に限定されないが、具体的には、ギ酸アミル、ギ酸アミル、酢酸−n−ブチル、酢酸−n−アミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸−2−エチルブチル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、ステアリン酸ブチル、サリチル酸メチル、フタル酸ジメチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ナフタレン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレン等の芳香族系溶媒、及びこれらの混合物等が挙げられる。また、溶媒回収等の手間を考えると、後述する反応溶媒と同一であることがより好ましい。
液化したホスゲンはそのままでも再ガス化しても反応に用いることができる。本実施の形態において使用されるホスゲン以外の原料中の酸素濃度も0.1wt%以下であることが好ましい。そうすることで、よりタール分の副生成が少なく、着色しにくく、且つ収率の高いイソシアナート化反応を行うことができる。有機第1アミンおよび/または該有機第1アミンの塩、反応溶媒の酸素除去については、例えば窒素等不活性ガスを吹き込み、溶解している酸素を置換する方法等が挙げられる。また、例えば、酸素濃度を0.1wt%以下に抑制したホスゲンあるいはホスゲンを溶解した溶液を、反応初期から反応系内へ過剰に供給することで、有機第1アミンおよび/または該有機第1アミンの塩や使用する原料中の溶存酸素を、ホスゲンの未反応分と一緒に反応系外へ除くこともできる。
反応温度としては、好ましくは10℃〜300℃、より好ましくは、30℃〜250℃、さらに好ましくは50℃〜200℃である。反応圧力は、減圧下、大気圧下、もしくは、加圧下でもよい。
反応溶媒は、上記したホスゲンを溶解するための溶媒と同様のものを使用することができる。より好ましくは、上記したホスゲンを溶解するための溶媒と同種のものを使用する。原料化合物や生成物の溶解性や取扱いの容易さを考慮すると、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、酢酸イソアミルが好ましく使用される。
溶媒の使用量は、使用する化合物や反応条件によっても異なるが、有機第1アミンと有機第1アミンの塩に対して、化学量論比で1〜200倍であることが好ましく、反応器の大きさや溶解性を考慮すると、より好ましくは2〜50倍、さらに好ましくは5〜30倍である。
反応相は、均一系であっても不均一系(懸濁系)であってもよく、気体または液体状態のホスゲン、および/またはホスゲンと溶媒との混合物を供給しながら、系内の反応温度を一定に保ち、イソシアナート化反応を行う方法をおこなうことができる。
反応装置は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できる。例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
〈ポリウレタンウレア共重合体〉
また、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物として、ポリウレタンウレア共重合体を用いることができる。本実施の形態において使用するポリウレタンウレア共重合体は、好ましくは、下記式(31)で表されるウレタン基を含有する反復単位を少なくとも1つと、下記式(1)で表される尿素結合を含有する反復単位を少なくとも1つとを含有するポリマー化合物である。
該ポリウレタンウレア共重合体は、全てが直鎖分子であっても、一部に分岐鎖を有する直鎖分子であってもよいが、後述する、供給口Aより該反応蒸留塔に供給する際の流動性や、ヒドロキシ化合物との相溶性等を考慮すると、分岐鎖の少ない分子が好ましい。ポリマー分子の分岐の度合いを平均官能基価で表すと、好ましくは、1.7〜2.3、より好ましくは1.8〜2.2、特に好ましくは、1.9〜2.1である。
該ポリウレタンウレア共重合体は、その構造について具体的に記述することは難しいが、少なくとも1種のポリオール成分と、少なくとも1種のイソシアネート成分と、少なくとも1種のジアミン成分および/またはアミノアルコール成分との反応によって製造されるポリマーである。
ポリオール成分としては、エチレングリコール、プロピレン−1,2−グリコール、プロピレン−1,3−グリコール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のジオール;
トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の、1分子中のOH基の数が3以上のポリオールを使用することもできる。
また、ジオール成分として、次に記すマクロポリオール成分を使用することもできる。
マクロポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のマクロポリオール成分が好ましく使用される。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、BF3または塩基触媒の存在下で、環状エーテルを重合させることによって、あるいはこれら環状化合物と反応性水素原子含有スターター成分とを適切な場合には混合物としてまたは逐次的に付加反応させることによって、調製されるヒドロキシル含有ポリエーテルを挙げることができる。
上記した環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンを挙げることができる。また、反応性水素原子含有スターター成分としては、アルコールおよびアミンまたはアミノアルコール、例えば、水、エチレングリコール、プロピレン1,2−グリコールまたはプロピレン1,3−グリコールを挙げることができる。
これらの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランまたはこれら環状エーテルの混合物に基づくポリエーテルが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、カルボン酸誘導体とポリオールとの反応によって得られる。
上記したカルボン酸誘導体としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンを挙げることができる。また、上記したポリオールとしては、ジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジ−、トリ−またはテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、およびラクトン変性ジオールを挙げることができる。
ポリエステルポリオールは、好ましくは、多価アルコール(好ましくは二価アルコール)と多塩基性(好ましくは二塩基性)ポリカルボン酸との反応生成物であるポリエステルポリオールである。
ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってよく、適切な場合は、例えばハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。中でも、脂肪族および脂環式ジカルボン酸が好ましい。具体的な例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラクロロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イタコン酸、セバシン酸、グルタル酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、2,2−ジメチルコハク酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸またはジメチルテレフタレート等が挙げられる。また、酸の無水物が存在する場合には、同様に使用することができる。例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸および無水テトラクロロフタル酸である。
使用される多価アルコールは、好ましくはジオールである。好ましい例としては、エチレングリコール、プロピレン−1,2−グリコール、プロピレン−1,3−グリコール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等が挙げられる。ラクトン、例えばε−カプロラクトンから生成されたポリエステルジオールを使用することもできる。
同様に使用できるポリオールの例としては、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。中でも、好ましくはポリエーテルポリオール、特に好ましくはポリエーテルジオールが使用される。
次に、イソシアネート成分としては、好ましくは2以上の平均NCO官能価を有する、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式イソシアネートの全てを、それらがホスゲン法またはホスゲンを使用しない方法のどちらによって製造されたかに関係なく使用することができる。また、該イソシアネートは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレア、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレアおよび/またはカルボジイミド構造を含有してもよい。
イソシアネート成分として好ましい化合物は、脂肪族的および/または脂環式的に結合したNCO基を有する上記した種類、例えば、ビス(イソシアナトアルキル)エーテル、ビス−およびトリス(イソシアナトアルキル)ベンゼン、−トルエン、および−キシレン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ドデカントリイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル−HDI(TMDI)、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)である。
該ポリウレタンウレア共重合体が製造される際の、イソシアネート成分とポリオール成分との比は、イソシアネート成分の化学量論量/ポリオール成分の化学量論量の比で表して、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.8、特に好ましくは1.5〜3.5である。
ジアミン成分としては、例えば、ヒドラジン、1,2−エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンおよび他の(C1〜C4)ジ−およびテトラアルキルジシクロヘキシルメタン、例えば4,4’−ジアミノ−3,5−ジエチル−3’,5’−ジイソプロピルジシクロヘキシルメタンを挙げることができる。
また、アミノアルコール成分としては、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノール、ネオペンタノールアミン等を挙げることができる。
該ポリウレタンウレア共重合体が製造される際の、ジアミン成分およびアミノアルコール成分とポリオール成分との比は、(ジアミン成分の化学量論量+アミノアルコール成分の化学量論量)/ポリオール成分の比で表して、好ましくは0.05〜3.0、より好ましくは0.1〜2.0、特に好ましくは0.2〜1.5である。
該ポリウレタンウレア共重合体は、着色料、添加剤や充填剤等の、一般的に、外観が物性を改良するために添加される成分を含んでいてもよい。
<ヒドロキシ化合物:アルコール>
本実施の形態で使用するヒドロキシ化合物としては、アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物が挙げられる。
〈アルコール〉
IUPACの定義(Rule C−201)によると、アルコールは「ヒドロキシ基が飽和炭素原子に結合した化合物(Compounds in which a hydroxy group, −OH, is attached to a saturated carbon atom:R
3COH)」であり、下記式(32)で表されるヒドロキシ化合物である。
(式中;
R
14は、f個のヒドロキシ基で置換された、炭素数1〜50の脂肪族基、または炭素数7〜50の、芳香族基が結合した脂肪族基からなる基を表し、
式(32)で表されるアルコールのOH基は芳香族基に結合していないOH基であり、
fは、1から5の整数を表す。)
ただし、R14は、ヒドロキシ基以外に活性水素を有しない基である。
上記説明において、「活性水素」という語を使用したが、「活性水素」とは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子などと結合している水素原子(芳香族性ヒドロキシ基は除く)、および、末端メチン基の水素原子を指す。例えば、−OH基、−C(=O)OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SO3H基、−SO2H基、−SOH基、−NH2基、−NH−基、−SiH基、−C≡CH基などの原子団に含まれている水素である。
ヒドロキシ基(−OH基)も活性水素であるが、ヒドロキシ基は、本実施の形態に用いる化合物や反応原料にも含まれており、悪影響を及ぼす基ではないので、特に記載のない場合は、活性水素を含む基には、ヒドロキシ基は除く。本実施の形態において、他の箇所に「活性水素」としばしば記載するが、上記の定義を適用する。
該R14としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、ヘキシルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、ジブチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
このようなR14を有するアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
また、該R14としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等を挙げることができる。
このようなR14を有するアルコールの具体例としては、フェニルメタノール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノール、フェニルペンタノール、フェニルヘキサノール、フェニルヘプタノール、フェニルオクタノール、フェニルノナノール等を挙げることができる。
上述のアルコールのうち、工業的な使用を考えれば、アルコール性ヒドロキシ基(該ヒドロキシ化合物を構成する、芳香族環以外の炭素原子に直接付加するヒドロキシ基)を1または2個有するアルコールが、一般に低粘度であるため好ましく、さらに好ましくは該アルコール性ヒドロキシ基が1個である、モノアルコールである。
これらの中でも、入手のし易さ、原料や生成物の溶解性等の観点から、炭素数1〜20のアルキルアルコールが好ましく使用される。
〈芳香族ヒドロキシ化合物〉
本実施の形態で使用するヒドロキシ化合物は、芳香族ヒドロキシ化合物であってもよい。
芳香族ヒドロキシ化合物とは、IUPACの定義(Rule C−202)するフェノール類(phenols)「1つもしくはそれ以上のヒドロキシ基がベンゼン環または他のアレーン環に結合した化合物(Compounds having one or more hydroxy groups attached to a benzene or other arene ring.)」であり、下記式(33)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
(式中;
環Aは、芳香族性を保つ任意の位置にg個のヒドロキシ基で置換された芳香族基を含有する、6〜50の炭素原子を含む有機基を表し、単環でも複数環でも複素環であっても、他の置換基によって置換されていてもよく、gは1〜6の整数である。)
好ましくは環Aが、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造であり、より好ましくは環Aが、ベンゼン環を1つ含有する構造である。
上記でも説明したが、「活性水素」とは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子などと結合している水素原子(芳香族性ヒドロキシ基は除く)、および、末端メチン基の水素原子を指す。例えば、−OH基、−C(=O)OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SO3H基、−SO2H基、−SOH基、−NH2基、−NH−基、−SiH基、−C≡CH基などの原子団に含まれている水素である。芳香族性ヒドロキシ基(芳香環に直接結合している−OH基)も活性水素であるが、芳香族性ヒドロキシ基は、本実施の形態の組成物や反応原料にも含まれており、悪影響を及ぼす基ではないので、活性水素を含む基には、芳香族性ヒドロキシ基は除かれる。
環Aの芳香族基に結合するヒドロキシ基は環Aの芳香族基の炭素原子に結合したヒドロキシ基であって、該ヒドロキシ基の数は1〜6の整数で、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、さらに好ましいのは1個(即ちg=1)である。
また、本実施の形態で使用するヒドロキシ化合物は、好ましくは、下記式(34)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
(式中;
環Aは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環から選ばれる芳香族環であって、R
15は、環Aの芳香族性を保つ任意の位置に置換する基を示し、gは1から6の整数を表し、hは、環Aがベンゼン環の場合;6−gの整数であり、環Aがナフタレン環の場合;8−gの整数であり、環Aがアントラセン環の場合;10−gの整数を表す。)
式(34)中、OH基は、芳香族性を保つ任意の位置に置換する。また、複数のR15が存在する場合、各R15は、各々独立に環Aを置換してもよいし、複数のR15同士が結合して環Aとともに環を形成してもよい。R15は、例えば、水素原子もしくはハロゲン原子、またはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、エーテル基(置換および/または無置換の、アルキルエーテルおよび/またはアリールエーテルおよび/またはアラルキルエーテル)からなる群から選ばれる基、および/または1種以上の該群から選ばれる基が結合した基、および/または1種以上の該群から選ばれる基が飽和脂肪族結合および/またはエーテル結合で結合された基で構成される基から選ばれる基である。また、環AとR15とにおいて、合計炭素数が6から50の範囲の整数個であることが好ましい。該アリール基は、ヒドロキシ基を有していてもよい。
上記したようにR15が、炭素−炭素結合および/またはエーテル結合して環Aに環状に結合してもよい。
このような芳香族ヒドロキシ化合物の具体例としては、具体的には、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェノキシフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール等のモノ置換フェノール類;ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ジペンチルフェノール、ジヘキシルフェノール、ジオクチルフェノール、ジノニルフェノール、ジフェノキシフェノール、ジフェニルフェノール、ジベンジルフェノール、ジクミルフェノール等のジ置換フェノール類;トリメチルフェノール、トリエチルフェノール、トリプロピルフェノール、トリブチルフェノール、トリペンチルフェノール、トリヘキシルフェノール、トリオクチルフェノール、トリノニルフェノール、トリフェノキシフェノール、トリフェニルフェノール、トリベンジルフェノール、トリクミルフェノール等のトリ置換フェノール類;ナフトール等を挙げることができる。
さらに好ましい芳香族ヒドロキシ化合物は、下記式(35)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
(式中;
環Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、単環でも複数環でもよく、
R
22およびR
23は、各々独立に、下記(i)〜(v)で定義されるいずれか1つの基であり、
該芳香族ヒドロキシ化合物を構成する炭素原子の数は、6から50の整数であり、
さらにR
22およびR
23は、環Aと結合して環構造を形成してもよい。
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)α位の原子が窒素原子である、炭素数1〜44の基であって、該窒素原子が、2級の窒素原子(すなわち、−NH−結合を形成する窒素原子を表す)であり、活性水素(ただし、該α位の窒素原子に結合している水素は除く)を含まない基、
(iv)α位の原子が炭素原子である、炭素数1〜44の基であって、該炭素原子は、1級または2級の炭素原子(すなわち、メチル基の炭素、−CH
2−結合を形成する炭素を表す)であり、活性水素を含まない基である。ただし、該R
22および/またはR
23が芳香族環Aと、飽和および/または不飽和の縮合環構造を形成していて、該縮合環が6員環以下である場合は、該α位の炭素原子は3級または4級であってもよい。例えば下記式(36)、式(37)のような場合である。また、α位の炭素がβ位(該R
22およびR
23を形成している原子のうち、環Aの芳香族環に結合している原子の隣の原子)と二重結合または三重結合を形成している場合も、該α位の炭素原子は3級または4級であってもよい。
(v)α位の原子が酸素原子である、炭素数1〜44の基であって、活性水素を含まない基。)。
なお、上記式(35)において、「α位の原子」という語を使用したが、「α位の原子」とは、該R22、R23を構成する原子のうち、該R22、R23基が結合している該芳香族炭化水素環上の炭素原子に対して隣接する原子を指す。
上記した式(35)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の芳香族基を置換する置換基(ただし、R
22およびR
23は除く)としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基から選ばれ、非環式炭化水素基、環式炭化水素基(例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基、複素環基)からなる基、前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる基から1種以上結合した基、および前記基が、特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素)との共有結合を介して結合している基を挙げることができる。また上記の特定の非金属原子(炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素)との共有結合とは、例えば下記式(38)〜(45)で表される基と上記した基が共有結合で結合している状態である。
このような置換基のなかで、上記した式(35)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の芳香族基を置換する置換基(ただし、R22およびR23は除く)として好ましく使用できる置換基は、副反応の起こりにくさを考えれば、非環式炭化水素基、環式炭化水素基(単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基)からなる群の中から選ばれる基、および該群から選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(互いに置換した基)が挙げることができる。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、芳香族ヒドロキシ化合物を用いる例として、有機第1アミンと炭酸誘導体と芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて、N−置換カルバミン酸エステルを得る場合が挙げられる。このような反応を高温で行う場合は、芳香族ヒドロキシ化合物の環Aを置換する置換基が、不活性置換基である芳香族ヒドロキシ化合物であることが好ましい。ここでいう不活性置換基とは、該不活性置換基が前記した活性水素を含まない基である(ただし、芳香族性ヒドロキシ基は有していてもよい)。
このような、環Aを置換する、R22およびR23以外の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、エーテル基(置換および/または無置換の、アルキルエーテルおよび/またはアリールエーテルおよび/またはアラルキルエーテル)からなる群から選ばれる基;1種以上の該群から選ばれる基が結合した基;1種以上の該群から選ばれる基が飽和脂肪族結合および/またはエーテル結合で結合された基で構成される基から選ばれる基;ハロゲン原子であって、環Aを構成する炭素原子の数と、該環Aを置換する全ての置換基を構成する炭素原子の数との合計が6から50の整数となる基を挙げることができる。
なお、上記の定義(iii)において、R22、R23のα位の窒素原子が、−NH−結合を形成する窒素原子である場合があると記載した。上記した「活性水素」の定義によれば、該−NH−結合の水素原子も活性水素である。しかしながら、本発明者らが検討した結果、該α位の窒素原子に結合している水素原子は反応性が低く、本実施の形態において、ほとんど悪影響を及ぼすことがないことが判明した。本発明者らは、ヒドロキシ基による立体障害のためではないかと推測している。
本発明者らは、R22、R23で定義される、ヒドロキシ基が結合している芳香環において、該ヒドロキシ基が結合している炭素に対してオルト位の炭素に結合している基が、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法における芳香族ヒドロキシ化合物の反応性に影響を及ぼしていることを見出した。このような効果を発現する理由については明らかではないが、本発明者らは、上記式(35)においてR22、R23で定義される基の立体障害の大きさが、芳香族ヒドロキシ化合物の反応性に影響を及ぼしていると推測している。
上記式(35)において、環Aとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタレン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ビフェニレン環、アセナフチレン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環等を挙げることができる。より好ましくは、ベンゼン環またはナフタレンから選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造である。
さらに、工業的な使用を考えれば、入手が容易であるベンゼン環を骨格とする芳香族ヒドロキシ化合物が好ましい。このような芳香族ヒドロキシ化合物としては、下記式(46)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が好ましい。
(式中;
R
22、R
23は、各々独立に、上記式(35)で定義した基であり、
R
24、R
25、R
26は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、エーテル基(置換および/または無置換の、アルキルエーテルおよび/またはアリールエーテルおよび/またはアラルキルエーテル)からなる群から選ばれる基;1種以上の該群から選ばれる基が結合した基;1種以上の該群から選ばれる基が飽和脂肪族結合および/またはエーテル結合で結合された基で構成される基から選ばれる基;ハロゲン原子;水素原子であって、該R
22、R
23、R
24、R
25、R
26を構成する炭素原子の数の合計は0から44の整数である。)
上記式(46)において、好ましいR24、R25、R26は、下記(vi)〜(x)に示す基から独立に選ばれる基である。
(vi)水素原子、
(vii)ハロゲン原子、
(viii)α位の原子が炭素原子である、炭素数1〜44の基であって、該α位の炭素原子に結合している3つ基が、それぞれ独立に、炭素数1〜43のアルキル基、炭素数1〜43のシクロアルキル基、炭素数1〜43のアルコキシ基、炭素数2〜43であって末端にOH基を有しないポリオキシアルキレンアルキルエーテル基、炭素数6〜43のアリール基、炭素数7〜43のアラルキル基、炭素数7〜43のアラルキルオキシ基、1種以上の前記した基が結合した基、および、水素原子、から選ばれる基である基、
(ix)炭素数1〜44のアリール基であって、該アリール基が置換基によって置換されていて、該置換基は、以下に示す置換基で1〜5の整数の範囲で置換されてよいアリール基であり、該置換基は、水素原子、炭素数1〜38のアルキル基、炭素数4〜38のシクロアルキル基、炭素数1〜38のアルコキシ基、炭素数2〜38であって末端にOH基を有しないポリオキシアルキレンアルキルエーテル基、炭素数6〜38のアリール基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数7〜38のアラルキルオキシ基、および、1種以上の前記した基が結合した基である基、から選ばれる基である。
(x)α位の原子が酸素原子である、炭素数1〜44の基であって、該α位の酸素原子に結合している基が、炭素数1〜44のアルキル基、炭素数1〜44のシクロアルキル基、炭素数1〜44のアルコキシ基、炭素数2〜44であって末端にOH基を有しないポリオキシアルキレンアルキルエーテル基、炭素数6〜44のアリール基、炭素数7〜44のアラルキル基、炭素数7〜44のアラルキルオキシ基、1種以上の前記した基が結合した基、から選ばれる基である基。
なお、上記式(46)において、「α位の原子」という語を使用したが、「α位の原子」とは、該R22、R23、R24、R25、R26を構成する原子のうち、該R22、R23、R24、R25、R26基が結合している該芳香族炭化水素環上の炭素原子に対して隣接する原子を指す。
このような芳香族ヒドロキシ化合物の具体例としては、具体的には、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール(2−tert−ブチルフェノールを除く)、フェノキシフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール(2−クミルフェノールを除く)等のモノ置換フェノール類;ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジフェノキシフェノール、ジベンジルフェノール等のジ置換フェノール類;トリメチルフェノール、トリエチルフェノール、トリプロピルフェノール、トリフェノキシフェノール、トリフェニルフェノール、トリベンジルフェノール等のトリ置換フェノール類;ナフトール等を挙げることができる。
上記したヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)は、例えば、上述したとおり、該工程(X)に共存させることにより、N−置換カルバミン酸エステルを形成することができる。該N−置換カルバミン酸エステルは、イソシアネート前駆体として使用することができる。該N−置換カルバミン酸エステルからイソシアネートの製造方法については後に詳細に説明するが、該N−置換カルバミン酸エステルを熱分解して、ヒドロキシ化合物と、イソシアネートとを得る方法である。
その際生じる該ヒドロキシ化合物は、反応式で考えれば、該N−置換カルバミン酸エステルを製造する際に使用するヒドロキシ化合物である。即ち、上記で定義したヒドロキシ化合物が、該N−置換カルバミン酸エステルの熱分解時にイソシアネートと共に副生する。熱分解工程後は、場合にもよるが、本実施の形態の一つとして、蒸留によって該ヒドロキシ化合物とイソシアネートとを分離し、該分離された該ヒドロキシ化合物を、有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物との反応におけるヒドロキシ化合物としてリサイクル使用してもよい。従って、イソシアネートの製造工程までを考慮すれば、ヒドロキシ化合物と、イソシアネートとの分離性を考慮することが好ましい。分離性を一般的に定義するのは難しいが、通常、分離される2成分の標準沸点が10℃以上離れていれば、工業的に充分蒸留分離可能であるという知見に基づき、以下定義する。従って、この定義は現状公知の分離手段に限定される値であって、本実施の形態の根幹をなす定義ではない。
<ウレイド基を有する化合物>
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、ウレイド基を有する化合物を、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物の前駆体として使用することができる。該ウレイド基を有する化合物は、好ましくは、上記式(5)で表される有機第1アミンと尿素とから製造される化合物、すなわち下記式(47)で表される化合物である。
(式中;
rは、1〜10の整数を表し、
R
3は、上記式(5)におけるR
3と同義である。)
上記式(47)で表される、ウレイド基を有する化合物とは、IUPACで定められた nomenclature規則C−971で定められる“ウレイド基”を有する化合物である。本実施の形態に用いるウレイド基を有する化合物とは、例えば、炭素数1〜85の範囲で炭素原子を含む有機基にr個のウレイド基(−NH−CONH2)が結合したウレイド基を有する化合物である。
以下に好ましいウレイド基を有する化合物の具体例を示す。ウレイド基とは置換基の名称であって、本明細書では、化合物名称として“N−置換(置換基名称)尿素”とも記載する。尿素の窒素原子(N)が置換されている(即ち、該窒素原子が−NH2基ではない)ことを明示するために、“N−置換”と明記し、置換基が芳香族基か、あるいは脂肪族基かを明記し、有機化合物という意味で、敢えて“有機”を明記している。分子内にウレイド基が単数の場合は“モノ尿素”、複数ある場合は、“ポリ尿素”と記載する場合がある。複数ある場合でも、下記で説明するウレイド基を有する化合物に含まれるウレイド基は、N−置換された尿素であることから、上記したように尿素の直前にポリ、またはジ、トリ、等の複数詞を付け、区別するように記載している。
本明細書中全般にわたって、具体的な化合物を例示する際には、“置換”“モノ”は記載せず、IUPAC命名法に沿うか、慣用名のいずれかで記載する。
本実施の形態に用いるウレイド基を有する化合物としては、例えば、N−置換芳香族有機モノ尿素、N−置換芳香族有機ポリ尿素、N−置換脂肪族有機ポリ尿素が挙げられる。
1)N−置換芳香族有機モノ尿素
N−置換芳香族有機モノ尿素とは、上記式(47)中、R
3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1種以上含有する炭素数6〜85の基であって、該R
3中の芳香族基をウレイド基が置換し、rが1であるN−置換芳香族有機モノ尿素である。好ましくはR
3が炭素数6〜70の基であって、rが1である芳香族有機モノ尿素であり、流動性等を考慮してより好ましくはR
3が炭素数6〜13の基であって、rが1であるN−置換芳香族有機モノ尿素であり、下記式(48)で表されるN−置換芳香族有機モノ尿素である。
(式中;
式(48)で表されるN−置換芳香族有機モノ尿素のウレイド基のオルト位および/またはパラ位の少なくとも1箇所は非置換であり、R
27〜R
30はそれぞれ独立に環の芳香族性を保つ任意の位置に置換する基を示す。)
また、式(48)中、R27〜R30同士が結合して芳香環とともに環を形成してもよい。R27〜R30は、例えば、水素原子、またはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基を有するアリール基からなる群から選ばれる基が飽和脂肪族結合および/またはエーテル結合で結合された基で構成される基から選ばれる基であり、炭素数0から7の整数の範囲の基であることが好ましい。式(48)で表されるN−置換芳香族有機モノ尿素において、ウレイド基(−NH−CO−NH2)を除いた部分の合計炭素数は6から13であることが好ましい。
このような式(48)で表されるN−置換芳香族有機モノ尿素の好ましい例としては、R27〜R30が、水素原子、またはメチル基、エチル基等のアルキル基から選ばれる基であるN−置換芳香族有機モノ尿素が挙げられる。そのようなN−置換芳香族有機モノ尿素の例としては、N−フェニルウレア、N−トリルウレア、N−ジメチルフェニルウレア、N−ジエチルフェニルウレア、N−ジプロピルフェニルウレア、N−ナフタレン−イルウレア、N−メチルナフタレン−イルウレア、N−ジメチルナフタレン−イルウレア、N−トリメチルナフタレン−イルウレア等が挙げることができる。中でもN−フェニルウレアがより好ましく用いられる。
2)N−置換芳香族有機ポリ尿素
N−置換芳香族有機ポリ尿素としては、上記式(47)中、R
3が、脂肪族および/または芳香族置換されてよい芳香族環を1以上含有する炭素数6〜85の基であって、該R
3中の芳香族基をウレイド基が置換し、rが2以上であるN−置換芳香族有機ポリ尿素である。好ましくはR
3が、炭素数6〜70の基であって、rが2以上であるN−置換芳香族有機ポリ尿素であり、流動性等を考慮して、より好ましくはR
3が、1種以上の芳香族環を含有し、該芳香族環は更にアルキル基、アリール基、アラルキル基で置換されてよい炭素数6〜13の芳香族基であって、R
3に含まれる芳香族基にウレイド基が結合した、rが2以上であるN−置換芳香族有機ポリ尿素である。このようなN−置換芳香族有機ポリ尿素の例としては、N,N’−フェニレンジウレア、N,N’−メチルフェニレンジウレア、N,N’−メチレンジフェニレンジウレア、N,N’−メシチレンジウレア、N,N’−ビフェニルジウレア、N,N’−ジベンジルジウレア、N,N’−プロパン−ジイルフェニレンジウレア、N,N’−オキシジフェニレンジウレア、N,N’−ジフェニル−ジイル−ジプロパン−ジイルジウレア、N,N’−フェニレンジメチレンジウレア、N,N’−メトキシフェニレンジウレア、N,N’−エトキシフェニレンジウレア、N,N’−ナフタレン−ジイルウレア、N,N’−ピリジン−ジイルジメチレンジウレア、N,N’−ナフタレン−ジイルジメチレンジウレア、下記式(49)で表されるポリメチレンポリフェニルポリ尿素を挙げることができる。
(式中;
sは0から6の整数である。)
3)N−置換脂肪族有機ポリ尿素
N−置換脂肪族有機ポリ尿素としては、上記式(47)中、R3が、炭素数1〜85の、芳香族置換されてよい脂肪族基であって、rが2または3のN−置換脂肪族有機ポリ尿素である。好ましいN−置換脂肪族有機ポリ尿素は、該脂肪族基が、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基(芳香族基を含む)、および前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)であるN−置換脂肪族有機ポリ尿素である。より好ましくはR3が脂肪族基であって、炭素数1〜70の非環式炭化水素基、環式炭化水素基、および前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、非環式炭化水素基で置換された環式炭化水素基、環式炭化水素基で置換された非環式炭化水素基などを指す)であって、rが2または3のN−置換脂肪族有機ポリ尿素である。工業的に大量に製造する際の流動性等を考慮して、さらに好ましくはR3が、炭素原子と水素原子とから構成される炭素数6〜13の非環式炭化水素基、環式炭化水素基、および前記非環式炭化水素基と前記環式炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、非環式炭化水素基で置換された環式炭化水素基、環式炭化水素基で置換された非環式炭化水素基などを指す)であるN−置換脂肪族有機ポリ尿素である。即ち、R3が、直鎖および/または分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、および該アルキル基と該シクロアルキル基から構成される基の場合である。N−置換脂肪族有機ポリ尿素の例として、メチレンジウレア、1,2−ジメチレンジウレア、1,3−トリメチレンジウレア、1,4−テトラメチレンジウレア、1,5−ペンタメチレンジウレア、1,6−ヘキサメチレンジウレア、1,8−オクタメチレンジウレア、シクロペンタン−ジウレア、シクロヘキサン−ジウレア、シクロヘプタン−ジウレア、シクロオクタン−ジウレア、メチルシクロペンタン−ジウレア、エチルシクロペンタン−ジウレア、メチルシクロヘキサン−ジウレア、エチルシクロヘキサン−ジウレア、プロピルシクロヘキサン−ジウレア、ブチルシクロヘキサン−ジウレア、ペンチルシクロヘキサン−ジウレア、ヘキシルシクロヘキサン−ジウレア、ジメチルシクロヘキサン−ジウレア、ジエチルシクロヘキサン−ジウレア、ジブチルシクロヘキサン−ジウレア、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン−ジウレア、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン−ジウレア、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン−ジウレア、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン−ジウレア、3−ウレイドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルウレア等を挙げることができる。
〈ウレイド基を有する化合物の製造方法〉
該ウレイド基を有する化合物を製造する方法は、公知の方法、例えば、有機第1アミンと、尿素、イソシアン酸およびN−無置換カルバミン酸エステル(N−無置換カルバミン酸エステルについては後述する)からなる群より選択される少なくとも1種とを反応させて得る方法を挙げることができる。
例えば、ウレイド基を有する化合物が、有機第1アミンと尿素とをヒドロキシ化合物存在下で反応させて製造されるウレイド基を有する化合物である場合、次のような製造方法をおこなうことができる。
まず、尿素の使用量は、有機第1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で0.5〜100倍の範囲で使用する。反応速度を高め、反応を早期に完結させるためには、尿素は、有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量が好ましいが、あまりに過剰な尿素を使用すると反応器が大きくなりすぎる。したがって、有機第1アミンのアミノ基に対して尿素を、化学量論比で、好ましくは1.0〜100倍の範囲、より好ましくは1.5〜80倍の範囲、さらに好ましくは2〜30倍の範囲で使用する。
反応の方法としては、液相中の尿素の総数が、該有機第1アミンを構成するアミノ基の総数よりも大きい量比となるような、尿素と有機第1アミンとの添加方法が、副生物抑制の観点から好ましい。具体的には、ヒドロキシ化合物と尿素との混合物に、有機第1アミンを添加する方法が好ましい。また、尿素にヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの混合物を添加する方法でもよい。芳香族ヒドロキシ化合物と尿素との混合物および芳香族ヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの混合物は均一溶液であっても、スラリー溶液であってもよい。
上記の、ヒドロキシ化合物と尿素との混合物(均一溶液またはスラリー溶液)を調製する温度は、好ましくは50〜150℃の範囲である。該調製温度が高いと、尿素の分解速度が大きくなり、尿素分解物に起因した副生成物の増加を招く場合が多い。
有機第1アミンは、好ましくは、液体の状態で添加される。一般的に、上で例示した有機第1アミンは、常温(例えば20℃)で固体のものが多いが、そのような場合には、有機第1アミンの融点以上に加熱して、液体の状態で供給することもできる。一方で、あまりに高温で有機第1アミンを供給すると、加熱による熱変性反応等の副反応を生じる場合があるため、上述のように芳香族ヒドロキシ化合物との混合物とし、比較的低い温度で、液体の状態で供給することが好ましい。
該反応が実施される温度は、30〜250℃の範囲、好ましくは50〜200℃の範囲である。反応温度が低い方が副生成物の生成が抑制され、収率が向上するが、あまりに反応温度が低いと反応速度が小さくなり、生産効率が低下する場合がある。一方で、反応温度が高いと、尿素の分解速度が大きくなり、尿素の分解物に起因した副生成物の増加を招く場合がある。また、該反応は、好ましくは、使用する、有機第1アミン、尿素、芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点よりも低い温度で実施する。
該反応は大気圧下でも減圧下でも加圧下でもおこなわれる。通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下でおこなわれる。
反応時間は特に制限はなく通常0.001〜100時間、好ましくは0.01〜80時間、より好ましくは0.1〜50時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによってウレイド基を有する化合物が所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。
本実施の形態においては、有機第1アミンと尿素との反応において、触媒を使用する必要はないが、反応を短時間で完結させる、反応温度を低くする等の目的で、触媒を使用することは否定されない。一般的に、芳香族アミンは脂肪族アミンに比べて反応性が低いので、有機第1アミンとして芳香族アミンを使用する場合には、触媒の使用が有効な場合がある。触媒を使用する場合には、例えば、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物や、スズ、鉛、銅、チタン等の無機金属化合物、アルカリ金属のアルコラート、アルカリ土類金属のアルコラート等を使用することができる。アルカリ金属のアルコラートまたはアルカリ土類金属のアルコラート等の塩基性触媒の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート等を挙げることができる。
該反応において、上記した芳香族ヒドロキシ化合物以外に反応溶媒を使用してもしなくてもよいが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒を使用してもよい。
このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンもしくはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;
ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;
シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;
メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;
ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;
ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;
ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。
反応装置は、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、材質については特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。
また、例えば、有機第1アミンとN−無置換カルバミン酸エステルとを反応させてウレイド基を有する化合物を製造する方法としては、下記工程(a)および工程(b)を含む工程による製造方法が示される。
工程(a):ヒドロキシ化合物と尿素とを反応させて、N−無置換カルバミン酸エステルを製造する工程、
工程(b):該N−無置換カルバミン酸エステルと有機第1アミンとを反応させてウレイド基を有する化合物を製造する工程。
工程(a)で使用するヒドロキシ化合物としては、アルコールおよび/または芳香族ヒドロキシ化合物を使用することができる。該ヒドロキシ化合物がアルコールの場合は、上記式(32)で表されるアルコールが好ましく、該ヒドロキシ化合物が芳香族ヒドロキシ化合物の場合は、上記式(33)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が好ましい。ここで使用するヒドロキシ化合物は、工程(a)における反応溶媒としての役割と、尿素と反応してカルバミン酸エステルを生成する役割とを有する。特に、芳香族ヒドロキシ化合物の場合、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの生成反応と同様に、該カルバミン酸エステルの生成反応における反応速度は芳香族ヒドロキシ化合物の構造に依存する。したがって、尿素との反応性を考慮すると、上記式(35)で表される芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、さらに好ましくは、上記式(46)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
工程(a)の反応条件は、公知の方法(例えば、日本国特開平5−310677号公報参照)を参考にすることができる。
工程(a)の反応で使用する尿素とヒドロキシ化合物との量比は、使用する化合物によって異なるが、好ましくは、尿素に対するヒドロキシ化合物の量を、化学量論比で5以上とする。尿素に対するヒドロキシ化合物の量が、化学量論比で5以上の場合には、N−無置換カルバミン酸エステルの収率が良好となり、反応時間が短くなる傾向にある。尿素に対するヒドロキシ化合物の量に上限はないが、余りに過剰のヒドロキシ化合物を使用するとN−無置換カルバミン酸エステルの製造効率の低下につながるため、通常は、上記化学 量論比で100以下とする。
ヒドロキシ化合物と尿素との反応は、平衡が原系に偏っているため、反応によって副生するアンモニアは、系外に除去することが好ましい。好ましい実施態様の一つとして反応蒸留による方法が挙げられる。アンモニアの除去効率を上げるために、ヒドロキシ化合物の沸騰下で反応をおこなうこともできる。同様の目的で、使用するヒドロキシ化合物よりも標準沸点の低い溶媒を使用して、溶媒の沸点下に実施することも可能である。沸騰したヒドロキシ化合物または溶媒は、蒸留等の公知の方法でアンモニアと分離され、アンモニアを系外に除去する。このような溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が例示できる。
反応系に副生したアンモニアを除去する好ましい態様として、不活性ガスを用いる方法も挙げられる。すなわち、反応下に逐次生成してくるアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることにより、反応系から分離する方法である。このような不活性ガスの例として、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等が挙げられる。
反応系に副生したアンモニアを除去する好ましい実施態様のその他の例として、アンモニアを吸着剤に吸着させて分離する方法がある。用いられる吸着剤としては、使用する温度、条件においてアンモニアの吸着能力を有するものであればよく、シリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土等が挙げられる。
工程(a)の反応温度は、好ましくは120℃〜250℃の範囲、より好ましくは130℃〜240℃の範囲である。上記下限値以上の温度では、反応速度が速くなり、短時間で高い収率を得ることができるため、工業的に実施するのに適している。一方、上記上限値以下の温度では、副反応を抑制することができ、収率を向上させることができる。
反応圧力は、反応系の組成、反応温度、アンモニアの除去方法、反応装置等の条件によっても異なるが、通常、0.01kPa〜5MPa(絶対圧力)の範囲でおこなわれる。
当該反応を実施する際に使用する反応装置は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できる。例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。SUS304やSUS316、SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加しても構わない。
工程(a)の反応では、触媒を用いることは必須ではないが、反応温度を低下させたり、反応速度を高める目的で、触媒を用いることもできる。このような触媒としては、希土類元素、アンチモン、ビスマスの単体、および、これらの元素の酸化物、硫化物および塩化物;ホウ素単体およびホウ素化合物;周期律表の銅族、亜鉛族、アルミニウム族、炭素族、チタン族の金属、および、これらの金属の酸化物および硫化物;周期律表の炭素を除く炭素族、チタン族、バナジウム族、クロム族元素の炭化物および窒化物等が好ましく用いられる。触媒を使用する場合、これらの触媒と尿素との量比はいくらでもとり得るが、尿素に対して重量比で通常0.0001〜0.1倍の触媒が用いられる。
該工程(a)の反応において、反応液の粘度を低下させる、および/または、反応液を均一な系とする目的で反応溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素およびアルキル置換芳香族炭化水素類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等の二トリル化合物;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンまたはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、安息香酸エチル等のエステル化合物;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を反応溶媒として好適に使用することができる。いうまでもなく、工程(a)で使用される過剰のヒドロキシ化合物も反応溶媒として好適に使用される。また、上述したアンモニアを系外に除去するための溶媒と同じであってもよい。
このようにして製造される、N−無置換カルバミン酸エステルを含む工程(a)の反応液は、そのまま、工程(b)の反応に用いることができるし、N−無置換カルバミン酸エステルを分離して該N−無置換カルバミン酸エステルを、工程(b)の反応に使用することもできる。
工程(b)は、該N−無置換カルバミン酸エステルと有機第1アミンとを反応させてウレイド基を有する化合物を製造する工程である。
N−無置換カルバミン酸エステルの使用量は、有機第1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で1〜1000倍の範囲で使用する。反応速度を高め、反応を早期に完結させるためには、N−無置換カルバミン酸エステルは、有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量が好ましいが、あまりに過剰な尿素を使用すると反応器が大きくなりすぎる。したがって、有機第1アミンのアミノ基に対してN−無置換カルバミン酸エステルを、化学量論比で、好ましくは0.5〜1000倍の範囲、より好ましくは1〜1000倍の範囲、さらに好ましくは1.5〜100倍の範囲、特に好ましくは2.0〜30倍の範囲で使用する。
反応の方法としては、液相中のN−無置換カルバミン酸エステルの総数が、該有機第1アミンを構成するアミノ基の総数よりも大きい量比となるような、N−無置換カルバミン酸エステルと有機第1アミンとの添加方法が、副生物抑制の観点から好ましい。具体的には、N−無置換カルバミン酸エステルとヒドロキシ化合物との混合物に、有機第1アミンを添加する方法が好ましい。また、工程(a)で得られる、N−無置換カルバミン酸エステルを含有する混合液に有機第1アミンを添加する方法でもよい。有機第1アミンは、単独でも、ヒドロキシ化合物との混合物としても添加することができる。
有機第1アミンは、好ましくは、液体の状態で添加される。一般的に、上で例示した有機第1アミンは、常温(例えば20℃)で固体のものが多いが、そのような場合には、有機第1アミンの融点以上に加熱して、液体の状態で供給することもできる。一方で、あまりに高温で有機第1アミンを供給すると、加熱による熱変性反応等の副反応を生じる場合があるため、上述のように芳香族ヒドロキシ化合物との混合物とし、比較的低い温度で、液体の状態で供給することが好ましい。
該反応が実施される温度は、30〜250℃の範囲、好ましくは50〜200℃の範囲である。反応温度が低い方が副生成物の生成が抑制され、収率が向上するが、あまりに反応温度が低いと反応速度が小さくなり、生産効率が低下する場合がある。一方で、反応温度が高いと、N−無置換カルバミン酸エステルの分解速度が大きくなり、N−無置換カルバミン酸エステルの分解物に起因した副生成物の増加を招く場合がある。また、好ましくは、使用する、有機第1アミン、N−無置換カルバミン酸エステル、芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点よりも低い温度で実施する。
反応は大気圧下でも減圧下でも加圧下でもおこなわれる。通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下でおこなわれる。
反応時間は特に制限はなく通常0.001〜100時間、好ましくは0.01〜80時間、より好ましくは0.1〜50時間である。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによってウレイド基を有する化合物が所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。
工程(b)では、工程(a)で使用したヒドロキシ化合物を、工程(b)の反応における溶媒として使用することができるが、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒を使用してもよい。
このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンもしくはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;
ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;
シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;
メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;
ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;
ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;
ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。
反応装置は、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、材質については特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。
上記した、ウレイド基を有する化合物の製造方法において、副生物として、尿素結合を有する化合物が生成する場合がある。そのような場合には、ウレイド基を有する化合物を分離して、得られた尿素結合を有する化合物を本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法に使用することもできるし、該尿素結合を有する化合物を含有する混合物の状態で、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法に使用することもできる。
≪尿素結合を有する化合物と炭酸誘導体との反応等≫
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、
下記式(1)で表される尿素結合を有する化合物を、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、カルボニル基(−C(=O)−)を有する炭酸誘導体と反応させてカルボニル化合物を得る工程(X)を含む。
また、該工程(X)を、ヒドロキシ化合物の共存下でおこなうことが好ましい。
上記した炭酸誘導体を使用してカルボニル化合物を製造する方法は、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物を、該化合物の尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、該炭酸誘導体と反応させる工程(X)を含む。当該反応についての反応機構は明らかではないが、本発明者らは、次のように推定している。以下、反応の記述を簡単にするため、尿素結合部分の反応のみを表し記載する。
まず、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物を、該化合物の尿素結合の熱解離温度以上に加熱することによって、上記式(1)で表される化合物の尿素結合が熱解離反応を生起し、イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物とアミノ基(−NH
2基)を有する化合物とに解離する(下記式(50))。
該アミノ基(−NH
2基)を有する化合物は、カルボニル基(−C(=O)−)を有する炭酸誘導体と反応し、下記式(1−1)で表される基を含むカルボニル化合物が得られる。
(式(1−1)中、Xは、炭酸誘導体のカルボニル基(−C(=O)−)の炭素原子に結合している基を表す。)
一方、該イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物は、上述したアミノ基(−NH2基)を有する化合物と炭酸誘導体との反応で生成した炭酸誘導体由来の化合物と反応し、上記式(1−1)で表される基を含むカルボニル化合物が得られる。
また、該工程(X)における反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合、該イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物は、ヒドロキシ化合物と反応し、下記式(1−2)で表される基を含むカルボニル化合物が得られる。
(式(1−2)中、X’は、ヒドロキシ化合物からヒドロキシ基(−OH)の水素原子を除いた残基を表す。)
以下、当該反応の具体的な反応機構について説明する。
炭酸誘導体が、例えば、下記式(51)で表される炭酸エステルである場合、該炭酸エステルとアミノ基を有する化合物とは下記式(52)で表される反応によって上記式(1−1)に相当するカルボニル化合物を生成する。
(式中:
Yは、各々独立に、酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、もしくは炭素数7〜20の芳香脂肪族基を表す。)
一方、イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物は、上記式(52)の反応によって生成するヒドロキシ化合物(上記式(52)の右辺第2項のYOH)、および/または、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合は該ヒドロキシ化合物、と下記式(53)で表される反応によって上記式(1−1)および/または上記式(1−2)に相当するカルボニル化合物を生成する。
(式中;
ROHは、上記式(52)の反応によって生成するヒドロキシ化合物(YOH)、および/または、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合は該ヒドロキシ化合物を表す。)
また、炭酸誘導体が、例えば、下記式(54)で表されるN−無置換カルバミン酸エステルである場合、該N−無置換カルバミン酸エステルとアミノ基を有する化合物とは下記式(55)および/または下記式(56)で表される反応によって上記式(1−1)に相当するカルボニル化合物を生成する。
(式中:
Yは、各々独立に、酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、もしくは炭素数7〜20の芳香脂肪族基を表す。)
一方、イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物は、上記式(55)の反応によって生成するアンモニア(NH
3)、および/または、上記式(56)の反応によって生成するヒドロキシ化合物(YOH)、および/または、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合は該ヒドロキシ化合物、と反応し上記式(1−1)および/または上記式(1−2)に相当するカルボニル化合物を生成する(下記式(57)、(58))。
(式中;
ROHは、上記式(56)の反応によって生成するヒドロキシ化合物(YOH)、および/または、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合は該ヒドロキシ化合物を表す。)
また、炭酸誘導体が尿素である場合には、下記式(59)で表される反応によって上記式(1−1)に相当するカルボニル化合物を生成する。
また、炭酸誘導体がホスゲンである場合、該尿素化合物とアミノ基を有する化合物とは下記式(60)で表される反応によって上記式(1−1)に相当するカルボニル化合物を生成する。
一方、イソシアネート基(−NCO基)を有する化合物は、上記式(60)の反応によって生成する塩化水素(HCl)、および/または、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合は該ヒドロキシ化合物、と反応し上記式(1−1)および/または上記式(1−2)に相当するカルボニル化合物を生成する(下記式(61)、(62))。
(式中;
ROHは、該反応がヒドロキシ化合物の共存下でおこなわれる場合の、該ヒドロキシ化合物を表す。)
上記したように、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、尿素結合を有する化合物1つから、上記式(1−1)で表されるカルボニル基を有する化合物を2種類製造すると考えられる。本実施の形態の製造方法によれば、該尿素結合を有する化合物を熱解離温度以上に加熱することによって尿素結合の熱解離反応を生起してアミノ基を有する化合物を生成させ、該アミノ基を有する化合物に炭酸誘導体を反応させてカルボニル基を有する化合物を得ることができると考えられる。
<熱解離温度>
本実施の形態でいう、「熱解離温度」とは、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物の熱解離が進行する温度を指す。通常、試料の温度を一定のプログラムによって変化または保持させながら、試料の重量を温度の関数として測定する方法において、当該化合物の重量減少の起こる温度として観測することができる。窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスの気流下で、毎分10℃の昇温速度で加熱し、仕込みの重量に対して、3%、より明確とするためには好ましくは5%の重量減少が起こる温度を、熱解離温度とする。
この場合、用いる化合物の種類によっては、上記した「重量減少」が、上記式(1)で表される化合物を構成する尿素結合(−NHCONH−)の熱解離に起因する重量減少である場合のみならず、該化合物を構成する尿素結合以外の官能基の熱解離に起因する重量減少である場合もあるが、本実施の形態の趣旨を勘案すると、尿素結合の熱解離に起因する重量減少を採用する方が好ましい。この場合、尿素結合、該化合物を構成する尿素結合以外の官能基の、どちらの熱解離が生じているかを判別する方法としては、例えば、熱重量測定装置からの排出ガスを質量分析装置に導入して該排出ガスに含有される成分を分析する方法を用いることができる。また、用いる化合物の種類によっては、該尿素結合の熱解離が生じたとしても、熱解離生成物の分子量が大きいために(多くの場合、熱解離生成物の沸点が高いために)、熱解離反応が重量減少として観測されない場合もある。このような場合には、示差熱分析、示差走査熱量分析等の方法により、当該熱解離反応に伴う吸熱が観測される温度を以って、熱解離温度とすることもできる。より高い正確さを確保するために、示差熱分析や示差走査熱量分析と、熱重量測定装置とを組み合わせる方法を用いることができる。また、加熱時の、該尿素結合の熱解離反応を、(近)赤外分光光度計、ラマン分光光度計等により観測して該尿素結合を定量し、仕込みの量に対して、3%、より明確とするためには好ましくは5%の減少が起こる温度を、熱解離温度とすることもできる。
<反応条件>
上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物と炭酸誘導体との反応は、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物の尿素結合の熱解離温度以上に加熱した状態でおこなう。「熱解離温度」は上記のとおり定義した温度であり、好ましくは、100℃以上350℃以下である。低い温度では熱解離反応速度が小さく反応の効率が悪い一方で、あまりに高温では、熱解離反応によって生成するイソシアネート基やアミノ基の変性反応を生起することになるため、より好ましくは、120℃以上330℃以下、さらに好ましくは、140℃以上300℃以下で実施される。
使用される炭酸誘導体の量は、該炭酸誘導体の種類や反応条件にもよるが、該尿素結合を有する化合物の尿素結合の数に対して炭酸誘導体の数が5以下であることが好ましい場合が多い。反応速度を高め反応の効率を良好なものとするためには炭酸誘導体の量は多い方が好ましいが、あまりに過剰の炭酸誘導体を使用すれば、N−アルキル化等の副反応を生起する場合がある。したがって、該尿素結合を有する化合物の尿素結合の数に対して炭酸誘導体の数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下とする。
該尿素結合を有する化合物と炭酸誘導体との反応は、好ましくは、溶媒の存在下にておこなわれる。溶媒としては、該尿素結合を有する化合物および該炭酸誘導体を溶解し、該反応温度にて安定な化合物であれば特に制限はなく、<ウレイド基を有する化合物>の段落で述べたものと同様のものや、<ヒドロキシ化合物>の段落で述べたアルコールや芳香族ヒドロキシ化合物を使用することができる。特に、芳香族ヒドロキシ化合物は、該尿素結合を有する化合物の溶解性が高い点、該尿素結合の熱解離反応によって生成するアミノ基を有する化合物を安定化させる効果が高い点から好ましく使用される。また、後述するように、有機第1アミンと炭酸誘導体との反応によってN−置換カルバミン酸エステルを製造すると同時に、副生する尿素結合を有する化合物と炭酸誘導体との反応によってN−置換カルバミン酸エステルを製造する場合には、有機第1アミンと炭酸誘導体との反応において使用される溶媒や過剰に使用されるヒドロキシ化合物を溶媒として使用することもできる。
当該反応は、加圧、常圧、減圧のいずれの条件によって実施されてもよい。また、当該反応は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガス雰囲気下で実施されることが好ましい。
反応装置は、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、材質については特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。
<蒸留塔での反応>
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、反応の効率を高める観点から、該工程(X)を蒸留塔にておこなうことが好ましい。
蒸留塔の形式としては、充填塔であっても棚段塔であってもよく、反応形式や反応条件に応じて選択することができる。
また、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該工程(X)を、供給口A、供給口Bおよび抜き出し口Cを具備する蒸留塔を用いて行うことが好ましい。
蒸留塔は、本体である塔部分に加えて、蒸留する原料等を余熱して気化させるリボイラーや留出物を冷却して凝縮させて回収する凝縮器を具備していることが好ましく、凝縮器を具備していることがより好ましい。蒸留塔に具備される凝縮器の種類は特に制限がなく、公知の凝縮器が使用できる。例えば、多管円筒型凝縮器、二重管式凝縮器、単管式凝縮器、空冷式凝縮器等の従来公知の凝縮器を適宜組み合わせて使用することができる。凝縮器は、該蒸留塔の内部に具備されていても、該蒸留塔の外部に具備されていて、該蒸留塔と配管で接続されていてもよく、蒸留塔や凝縮器の形式、凝縮液の取り扱い方法等を勘案して、様々な形態を採用される。
蒸留塔および凝縮器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。SUS304やSUS316、SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、必要に応じて工程を付加しても構わない。例えば、生成するアンモニアを除去する工程、炭酸誘導体をヒドロキシ化合物へ溶解する工程、ヒドロキシ化合物を溶融する工程など、当該分野において想定できる範囲の工程や装置を付加して構わない。
以下、蒸留塔を用いて、該尿素結合を有する化合物からカルボニル化合物を製造する方法の例を示す。
本実施の形態において、好ましく使用される反応蒸留塔は、供給口A、供給口Bおよび抜き出し口Cを具備する蒸留塔である。
ここで、供給口Aは、尿素結合を有する化合物を含有する原料成分、および/または、尿素結合を有する化合物を製造するための原料(尿素結合を有する化合物の前駆体)を含有する原料成分を供給するための供給口であることが好ましい。該尿素結合を有する化合物の前駆体としては、上述した化合物が挙げられ、中でも、有機第1アミンおよび炭酸誘導体であることが好ましく、下記式(4)で表されるウレイド基を有する化合物であることが好ましい。
該供給口Aより供給する原料成分は、さらにヒドロキシ化合物を含有することが好ましい。
該供給口Bは、該尿素結合を有する化合物と反応させるための炭酸誘導体を供給するための供給口であることが好ましい。該供給口Bより、さらにヒドロキシ化合物を、該蒸留塔に供給することが好ましい。
該抜き出し口Cは、該尿素結合を有する化合物を、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、炭酸誘導体と反応させることによって生成するカルボニル化合物を含む混合物を抜き出すための抜き出し口であることが好ましい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、
該供給口Aより供給する原料成分が、下記組み合わせ(i)または(ii)であり、
該抜き出し口Cより回収する混合物が、N−置換カルバミン酸エステルおよびヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。
・組み合わせ(i):有機第1アミン、尿素およびヒドロキシ化合物、
・組み合わせ(ii):ヒドロキシ化合物および下記式(4)で表されるウレイド基を有する化合物。
上記組み合わせ(i)の原料成分を、少なくとも1つの供給口Aより蒸留塔に供給した場合、上述した方法(1)のうちの方法(i)により尿素結合を有する化合物が生成する。
上記組み合わせ(i)の原料成分は、有機第1アミンと尿素とヒドロキシ化合物との混合物として1つの供給口Aから供給してもよいし、有機第1アミンとヒドロキシ化合物との混合物と、尿素とヒドロキシ化合物との混合物の2種類の混合物としておき、2つ以上の供給口Aから供給してもよい。
上記組み合わせ(i)の原料成分を供給口Aより蒸留塔に供給した場合、供給口Bより供給する炭酸誘導体は、上記した、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、ホスゲンのいずれを用いてもよいが、好ましくは、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステルから選ばれる少なくとも1つの化合物、工業的に実施する際の入手のしやすさや、該蒸留塔に具備する凝縮器で回収した後の再利用のしやすさを考慮すると、上記組み合わせ(i)の原料成分に含まれる尿素と同じ尿素が好ましい。また、該炭酸誘導体は好ましくはヒドロキシ化合物との混合物として供給口Bより供給する。その際に使用するヒドロキシ化合物は、該蒸留塔に具備する凝縮器で回収した後の再利用のしやすさを考慮すると、上記組み合わせ(i)の原料成分に含まれるヒドロキシ化合物と同種のヒドロキシ化合物であることが好ましい。
また、上記組み合わせ(ii)の原料成分を、少なくとも1つの供給口Aより蒸留塔に供給した場合、上述した方法(1)のうちの方法(ii)工程(C)により尿素結合を有する化合物が生成する。
上記組み合わせ(ii)の原料成分のうち、上記式(4)で表されるウレイド基を有する化合物は、上記したように、好ましくは上記式(47)で表されるウレイド基を有する化合物であり、より好ましくは、上述した方法(ii)の工程(B)を含む工程によって製造されるウレイド基を有する化合物である。上でも説明したが、上記工程(B)において、尿素結合を有する化合物が生成する場合もあるが、該尿素結合を有する化合物が原料成分に含まれることは何ら問題ない。
上記組み合わせ(ii)の原料成分を供給口Aより蒸留塔に供給した場合、供給口Bより供給する炭酸誘導体は、上記した、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、ホスゲンのいずれを用いてもよいが、好ましくは、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステルから選ばれる少なくとも1つの化合物、工業的に実施する際の入手のしやすさや、該蒸留塔に具備する凝縮器で回収した後の再利用のしやすさを考慮すると、上記組み合わせ(i)の原料成分に含まれる尿素と同じ尿素が好ましい。また、該炭酸誘導体は好ましくはヒドロキシ化合物との混合物として供給口Bより供給する。その際に使用するヒドロキシ化合物は、該蒸留塔に具備する凝縮器で回収した後の再利用のしやすさを考慮すると、上記組み合わせ(i)の原料成分に含まれるヒドロキシ化合物と同種のヒドロキシ化合物であることが好ましい。
また、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、
該供給口Aより供給する原料成分が、組み合わせ(iii):有機第1アミン、炭酸エステルおよびヒドロキシ化合物であり、
該抜き出し口Cより回収する混合物が、N−置換カルバミン酸エステルおよびヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。
上記組み合わせ(iii)の原料成分を、少なくとも1つの供給口Aより蒸留塔に供給した場合、上述の方法(2)により該尿素結合を有する化合物が生成する。
該供給口Aより供給する原料成分は、有機第1アミンと炭酸エステルとの混合物として1つの供給口Aから供給してもよいし、有機第1アミンと炭酸エステルとを別の供給口Aから供給してもよい。また、該供給口Aより供給する原料成分は、好ましくは、ヒドロキシ化合物との混合物として供給する。その際に用いるヒドロキシ化合物としては、例えば、該炭酸エステルが上記式(8)で表される炭酸エステルを使用する場合は、Y1OHおよび/またはY2OHで表されるヒドロキシ化合物が、取り扱う化合物の種類を少なくする観点から好ましい。
上記組み合わせ(iii)の原料成分を供給口Aより蒸留塔に供給した場合、供給口Bより供給する炭酸誘導体は、上記した、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、ホスゲンのいずれを用いてもよいが、好ましくは、尿素、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステルから選ばれる少なくとも1つの化合物、より好ましくは、上記組み合わせ(iii)の原料成分として用いる炭酸エステルと同種の炭酸エステルである。また、該炭酸誘導体は好ましくはヒドロキシ化合物との混合物として供給口Bより供給する。その際に使用するヒドロキシ化合物は、該蒸留塔に具備する凝縮器で回収した後の再利用のしやすさを考慮すると、上記と同様に、例えば、該炭酸エステルが上記式(8)で表される炭酸エステルを使用する場合は、Y1OHおよび/またはY2OHで表されるヒドロキシ化合物が、取り扱う化合物の種類を少なくする観点から好ましい。
さらに、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、
該供給口Aより供給する原料成分が、組み合わせ(iv):ポリウレタンウレア共重合体およびヒドロキシ化合物であり、
該抜き出し口Cより回収する混合物が、N−置換カルバミン酸エステルおよびヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。
供給口Aは、蒸留塔1塔につき、少なくとも1つ具備されていても、複数の供給口Aが具備されていてもよい。
供給口Aが具備される位置は、該蒸留塔の最下段よりも1段以上上の段(充填塔では理論段で1段以上上の段)、好ましくは、最下段よりも3段以上上の段(充填塔では理論段で3段以上上の段)、より好ましくは、最下段よりも5段以上上の段(充填塔では理論段で5段以上上の段)である。
供給口Bは、蒸留塔1塔に付き、少なくとも1つ具備されていればよい。複数の供給口Bが具備されていて、複数の供給口Bから炭酸誘導体が供給されてもよい。該複数の供給口Bより、炭酸誘導体とヒドロキシ化合物との混合物を、該蒸留塔に供給することが好ましい。
蒸留塔において、少なくとも1つの供給口Bは、供給口Aが具備される位置と同じ高さ、または、供給口Aよりも低い位置(棚段塔においては供給口Aが具備される段と同じ段、または、供給口Aが具備される段よりも低い段であり、充填塔においては供給口Aが具備される段と同じ理論段、または、供給口Aが具備される段よりも低い理論段)である。好ましくは、供給口Aよりも1段以上、下の段(充填塔では理論段で1段以上下の段)、好ましくは、供給口Aよりも3段以上、下の段(充填塔では理論段で3段以上、下の段)、より好ましくは、供給口Aよりも5段以上、下の段(充填塔では理論段で5段以上、下の段)である。
抜き出し口Cが具備される位置は、供給口Bが具備される位置と同じ高さ、または、供給口Bよりも低い位置(棚段塔においては供給口Bが具備される段と同じ段、または、供給口Bが具備される段よりも低い段であり、充填塔においては供給口Bが具備される段と同じ理論段、または、供給口Bが具備される段よりも低い理論段)である。好ましくは、供給口Bよりも1段以上下の段(充填塔では理論段で1段以上下の段)、好ましくは、供給口Bよりも3段以上下の段(充填塔では理論段で3段以上下の段)、より好ましくは、供給口Bよりも5段以上下の段(充填塔では理論段で5段以上下の段)である。
供給口Aより供給される化合物は、尿素結合を有する化合物を含む混合物であっても、尿素結合を有する化合物を製造するための原料を含む混合物であってもよい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該工程(X)を、供給口A、供給口Bおよび抜き出し口Cを具備する蒸留塔を用いて行い、
該尿素結合を有する化合物を含有する原料成分、または該尿素結合を有する化合物の前駆体を含有する原料成分を、少なくとも1つの供給口Aより該蒸留塔に供給し、
該炭酸誘導体を、少なくとも1つの供給口Bより該蒸留塔に供給し、
生成するカルボニル化合物を含む混合物を、該蒸留塔の下部に具備する少なくとも1つの抜き出し口Cより回収する工程を含み、
少なくとも1つの供給口Bが、供給口Aと同じ高さ、または、供給口Aよりも低い位置にあり、
少なくとも1つの抜き出し口Cが、供給口Bと同じ高さ、または、供給口Bよりも低い位置にあり、
該蒸留塔の供給口Bの高さの温度が、該尿素結合を有する化合物における尿素結合の熱解離温度以上であることが好ましい。
ここでは、まず、尿素結合を有する化合物を含有する混合物を供給口Aより供給する場合について説明する。
供給口Aより蒸留塔に供給される尿素結合を有する化合物は、好ましくは溶媒との混合物として供給される。尿素結合を有する化合物を溶融し、液体の状態で供給口Aより供給する方法を採用することもできる。しかしながら、多くの場合、尿素結合を有する化合物は融点が高く、そのような場合には、尿素結合を有する化合物を溶融するために、高温に保持する必要がある。このように高温で尿素結合を有する化合物を保持する場合、予期しない副反応を生起する場合がある。そのため、尿素結合を有する化合物は、溶媒との混合物として供給することが好ましい。使用する溶媒としては特に制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンもしくはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;
ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等の多環炭化水素化合物類;
シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;
メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;
ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;
ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類およびチオエーテル類;
ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができ、用いる化合物(尿素結合を有する化合物や炭酸誘導体等)や反応条件に応じて使用することができる。
また、該尿素結合を有する化合物の溶媒として、上記したヒドロキシ化合物(アルコール、芳香族ヒドロキシ化合物)が、より好ましく使用される。これらの化合物は、驚くべきことに、尿素結合を有する化合物の尿素結合を適度に安定化させる効果を奏する。この効果の発現は、芳香族ヒドロキシ化合物においてより強まる傾向にある場合が多い。このような効果を奏する理由は明らかではないが、本発明者らは、水素結合によって、ヒドロキシ化合物が該尿素結合の近傍に配位することによって、尿素結合を有する化合物どうしの接近を抑制し、尿素結合を有する化合物同士による副反応を抑制するためではないかと推測している。
溶媒の使用量は、用いる化合物や反応条件によっても異なるが、使用する化合物の溶解性を考慮すると、尿素結合を有する化合物の尿素結合の数に対して、化学量論比で、1倍以上、より好ましくは5倍以上である。一方で、反応器の大きさを考慮すると、化学量論比で、500倍以下、より好ましくは300倍以下である。
供給口Bより蒸留塔に供給される炭酸誘導体は、好ましくは溶媒との混合物として供給される。炭酸誘導体を溶融し、液体の状態で供給口Bより供給する方法を採用することもできるが、多くの場合、炭酸誘導体は融点が高く、また、融点付近で熱分解反応を生起する傾向があることから、炭酸誘導体を溶融するために高温に保持した時に熱分解反応によって炭酸誘導体が消失する場合がある。したがって、適当な溶媒を使用して炭酸誘導体を溶液として反応蒸留塔に供給することが好ましい。使用する溶媒としては特に制限はなく、上記した、供給口Aより尿素結合を有する化合物を供給する際に使用される溶媒として例示したものを同様に使用することができるが、中でも、ヒドロキシ化合物が好ましく使用される。ヒドロキシ化合物は、炭酸誘導体の溶解度が高い場合が多いだけでなく、驚くべきことに、炭酸誘導体を適度に安定化させる効果を奏する。この効果の発現は、芳香族ヒドロキシ化合物においてより強まる傾向にある場合が多い。このような効果を奏する理由は明らかではないが、本発明者らは、水素結合によって、ヒドロキシ化合物が炭酸誘導体のカルボニル基の近傍に配位することによって、炭酸誘導体どうしの接近を抑制し、炭酸誘導体どうしによる副反応を抑制するためではないかと推測している。溶媒の使用量は、用いる化合物や反応条件によっても異なるが、炭酸誘導体に対して、化学両論比で、1倍以上、より好ましくは2倍以上である。
該蒸留塔において、炭酸誘導体が供給される供給口Bが具備される高さ(棚段塔では同じ段、充填塔では同じ理論段)の温度は、好ましくは、上記式(1)で表される化合物の尿素結合の熱解離温度以上とし、より好ましくは、上記式(1)で表される化合物の尿素結合の熱解離温度よりも5℃以上高い温度、さらに好ましくは、上記式(1)で表される化合物の尿素結合の熱解離温度よりも10℃以上高い温度とする。供給口Bが具備される高さ、すなわち、炭酸誘導体が供給される高さの温度を、該尿素結合の熱解離温度よりも高い温度とすることによって、上記したように、尿素結合を有する化合物の尿素結合を熱解離させ、生成するアミノ基を有する化合物と炭酸誘導体とを反応させることができると推定される。本反応は、上記したように、尿素結合が熱解離している系に炭酸誘導体を共存させることが重要であり、反応蒸留塔において供給口Bが具備される高さの温度を、尿素結合の熱解離温度より高い温度としておき、供給口Bより炭酸誘導体を供給する方法は、このような条件を満足させるための方法の一つである。
蒸留塔における反応圧力は、反応系の組成、温度、アンモニアの除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧、加圧でとすることができるが、通常、0.01kPa〜10MPa(絶対圧)の範囲であることが好ましい。工業的実施の容易性を考慮すると、減圧、常圧が好ましく、0.01kPa〜100kPa(絶対圧)、より好ましくは、0.03kPa〜80kPa、さらに好ましくは0.05kPa〜50kPaの範囲が好ましい。
蒸留塔における反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。このような触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート等の塩基性触媒;希土類元素、アンチモン、ビスマスの単体およびこれらの元素の酸化物、硫化物および塩類、ホウ素単体およびホウ素化合物、周期律表の銅族、亜鉛族、アルミニウム族、炭素族、チタン族の金属およびこれらの金属酸化物および硫化物、周期律表の炭素を除く炭素族、チタン族、バナジウム族、クロム族元素の炭化物および窒化物が好ましく用いられる。触媒を添加すれば、該触媒を除去する必要が生じる場合が多いので、好ましくは触媒を添加せずおこなう。触媒を使用した場合、反応後に触媒は除去してもよい。除去する方法は、公知の方法を用いることができ、膜分離、蒸留分離、晶析等の方法が好ましく使用できる。
蒸留塔における反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01〜100時間である。反応時間は、目的化合物であるカルボニル化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的とするカルボニル化合物が所望の収率、例えば90%以上であることを確認したのち反応を停止してもよい。また、1ヶ所の供給口Bより炭酸誘導体を供給して反応させただけでは、目的化合物の収率が十分な水準にまで達しない場合には、該反応蒸留塔の複数箇所に供給口Bを設け、尿素結合を有する化合物の尿素結合の熱解離反応および生成するアミノ基と炭酸誘導体との反応を、該反応蒸留塔の複数箇所で生起させる方法を採用してもよい。
上記式(55)、(59)で示したように、炭酸誘導体として、N−無置換カルバミン酸エステルおよび/または尿素を使用する場合、アンモニアが生成する。該アンモニアは、目的化合物であるカルボニル化合物と反応しカルボニル化合物の収率を低下させる場合が多いことから、極力、反応蒸留塔内に滞留しないよう、速やかに系外に除去することが好ましい。上述のとおり、好ましい圧力の範囲を示したが、このような観点からも、減圧、常圧が好ましい。
アンモニアの蒸留効率を上げるために、溶媒の沸騰下で該反応をおこなうことが好ましいが、不活性ガスを該反応蒸留塔に導入し、反応下で逐次生成するアンモニアを、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法を採用することもできる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、単独で、あるいは混合して使用することができる。
吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらのアンモニアを系外に除去する方法は、単独で実施しても、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、
該蒸留塔が、凝縮器をさらに具備し、
該蒸留塔の塔頂から抜き出された気体の一部を、該凝縮器で凝縮して、凝縮液を得る工程をさらに含み、
該供給口Aおよび/または該供給口Bより、さらにヒドロキシ化合物を、該蒸留塔に供給し、
該供給口Bより供給する炭酸誘導体が、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルであり、
該蒸留塔の塔頂から抜き出された気体が、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物と、ヒドロキシ化合物と、アンモニアとを含み、
該凝縮液が、カルボニル基を有する化合物とヒドロキシ化合物とを含有することが好ましい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該蒸留塔における反応においてアンモニアが副生する場合、該反応蒸留塔が、上述した凝縮器を具備し、該反応蒸留塔の塔頂から、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物と溶媒とアンモニアとを含む気体を抜き出す工程と、該工程で抜き出された気体の一部を、該凝縮器で凝縮して、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物と溶媒とを含有する凝縮液を得る工程とをさらに含む製造方法であることが好ましい。
該蒸留塔における反応において生成する、溶媒と、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物と、反応で副生するアンモニアと、を含有する気体成分の取り扱いについて説明する。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該蒸留塔塔頂から抜き出される、溶媒と、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物と、反応で副生するアンモニアとを含有する気体を、蒸留塔に具備した凝縮器に導入し、溶媒の一部または全部と、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物の一部または全部とを凝縮し、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物と溶媒とを含有する凝縮液を得ることが好ましい。該凝縮液に含有される溶媒の量が、該凝縮液に含有される炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物に対して、化学量論比で1以上であることが好ましい。また、凝縮器より、アンモニアを含有する気体が回収される場合、該回収される気体において、カルボニル基(−C(=O)−)の数と、アンモニア分子の数との比(カルボニル基の数/アンモニア分子の数)が、1以下であることが好ましい。
該回収される気体における「カルボニル基」とは、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル化合物のカルボニル基のことをいい、上述したような不活性ガスとして導入された炭酸ガスのカルボニル基は含まれない。
該工程において、溶媒、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物と、反応で副生するアンモニアとを含有する気体とを、凝縮器に導入し、溶媒の一部または全部と、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物を凝縮することが好ましい。その際、該凝縮される溶媒の量が、該凝縮される炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物に対して化学量論比で1以上であることが好ましい。
本実施の形態において、凝縮器で凝縮される「炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物」とは、供給口Bより供給される炭酸誘導体および/供給口Aより供給される尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物であり、原料として使用した炭酸誘導体そのもの(未反応物、および/または、過剰に使用した場合の余剰分)、該尿素結合を有する化合物そのもの、溶媒がヒドロキシ化合物である場合に、該ヒドロキシ化合物と炭酸誘導体とが反応して生成する化合物、該ヒドロキシ化合物と該尿素結合を有する化合物とが反応して生成する化合物、ならびに炭酸誘導体同士の反応、尿素結合を有する化合物同士の反応によって生成した化合物が含まれる。
炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物について、具体的な化合物としては、尿素、イソシアン酸、ビウレット、イソシアヌレート、尿素の多量体等の尿素化合物、エステル基がヒドロキシ化合物に由来する基であるN−無置換カルバミン酸エステル、エステル基がヒドロキシ化合物に由来する基である炭酸エステル等が挙げられる。
炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、紫外分光法等の方法によって該化合物に含有されるカルボニル基を検出する方法によって定量することができるし、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の方法によって、生成している化合物を具体的に分析する方法によって定量することもできる。これらの、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物は、融点が高いものが多く、析出しやすい傾向がある。
該凝縮操作において、凝縮される溶媒の量を、該凝縮される炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物に対して、化学量論比で1以上とすることによって、凝縮器において、これらの混合物を均一の液体混合物とすることができる。したがって、該混合物の取り扱いが容易となるだけでなく、該凝縮器への固体成分の付着・蓄積等の問題の発生を回避できる。
また、後述するように、該凝縮器から回収されるアンモニアを含有する気体において、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物を、上述したとおり特定量以下とするためにも有効である。凝縮される溶媒の量は、該凝縮される炭酸誘導体および/尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物に対して、より好ましくは化学量論比で2以上、さらに好ましくは化学量論比で3以上である。凝縮される溶媒の量を、該凝縮される炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物に対して、上記の範囲とするために、該凝縮器は、好ましくは、該溶媒の標準沸点よりも90℃以上低い温度で、かつ、該ヒドロキシ化合物が固化しない温度で保持される。
該凝縮器より、アンモニアを含有する気体が回収される場合、該回収される気体において、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物は特定量以下とする。具体的には、該回収される気体において、カルボニル基(−C(=O)−)の数と、アンモニア分子の数との比(カルボニル基の数/アンモニア分子の数)が、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下である。さらに好ましくは0.1以下であり、特に好ましくは0.02以下である。該回収される気体において、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物の量を特定の範囲とする理由は、該凝縮器より該アンモニアを移送するためのラインにおける固体成分の付着および蓄積を回避するためである。
アンモニアを移送するラインに付着および蓄積する固体成分の全てを同定することはできないが、本発明者らが検討した結果、その多くは、カルボニル基を有する化合物であることが判明した。このような固体成分の付着および蓄積を回避する方法として、アンモニアを移送するラインを加熱し、カルボニル基を有する化合物を分解する方法も考えられるが、本発明者らの検討では、単に加熱するだけでは、分解生成物(例えばイソシアン酸)が重合したり、該分解生成物が、他のカルボニル基を有する化合物と反応したりする場合が多く、固体成分の付着および蓄積を完全に回避することは難しかった。また、単にラインを加熱した場合は、特に、アンモニアを移送するラインの出口(大気等に接触する部分)で、該アンモニア中に含有されるカルボニル基を有する化合物やそれらの分解生成物が急激に冷やされて固化し、固体成分の付着および蓄積が著しくなる場合が多いことがわかった。
本発明者らは、この課題について鋭意検討した結果、驚くべきことに、該回収される気体において、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物を、上記した特定の量以下とすることで、固体成分の付着および蓄積の問題を解決できることを見出した。このような効果を奏するメカニズムは明らかではないが、本発明者らは、ラインへの付着や蓄積は、炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物そのものや、該炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物の分解および/または重合生成物によって引き起こされると推測していて、カルボニル基を特定の濃度以下とすることで、該炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物そのものの付着や、該化合物の分解および/または重合の反応速度が著しく低下するためであると考えている。
アンモニア中の炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物を定量する方法としては、公知の様々な方法をおこなうことができ、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、(近)赤外分光法、紫外分光法等の方法を用いることができる。
具体的には、例えば、ガスクロマトグラフィーに該アンモニアを気体のまま導入して測定してもよいし(アンモニアを移送するラインをガスクロマトグラフィーに直接接続して測定してもよいし、例えばテドラーバッグ等の気体を捕集するための袋や容器に捕集したアンモニアガスを、例えばガスタイトシリンジ等でガスクロマトグラフィーに注入して測定してもよい)、例えば、該回収される気体におけるアンモニアに含有される炭酸誘導体に由来するカルボニル基を有する化合物を、水、有機溶媒等に吸収させたのち、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、(近)赤外分光法、紫外分光法等の方法によって測定することもできる。これらの方法のなかでも、質量分析装置を具備したガスクロマトグラフィーに該回収される気体をそのまま導入し、カルボニル基を有する化合物を同定し、該カルボニル基を有する化合物の量と、該カルボニル基の数との積の総和を以って、該回収される気体において、炭酸誘導体および/または尿素結合を有する化合物に由来するカルボニル基を有する化合物の量とする方法が好ましく実施される。
上記した凝縮液の一部または全部は、反応蒸留塔を運転するための還流液として該反応蒸留塔の内部に循環させてもよいし、例えば、炭酸誘導体を含む混合液として供給口Bより供給して本実施の形態のカルボニル化合物の製造のための原料として再利用してもよい。また、上記した凝縮液の一部または全部は、該尿素結合を有する化合物を製造するための原料として再利用することもできる。さらに、上記した凝縮液の一部または全部は、下記式(4)で表されるウレイド基を有する化合物を製造するための原料成分として再利用することもできる。
炭酸誘導体としてN−無置換カルバミン酸エステルおよび/または尿素を使用し、例えば、上記式(52)、式(57)の反応によってカルボニル化合物を製造する際には、アンモニアが生成し、該アンモニアが該凝縮液に含まれる場合がある。そのような場合には、別途、該アンモニアを除去する工程を設け、所望の濃度にまでアンモニア濃度を低減した上で、上記した再利用をおこなうこともできる。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該蒸留塔の塔頂から抜き出された気体に含有するアンモニアを、二酸化炭素と反応させて尿素を製造する工程をさらに含み、該尿素を再利用することが好ましい。
≪本実施の形態の方法によるN−置換カルバミン酸エステルの製造≫
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、得られるカルボニル化合物がN−置換カルバミン酸エステルを含むことが好ましい。以下、本実施の形態の方法によるN−置換カルバミン酸エステルの製造について詳細に記載する。
上記したように、供給口Aより供給される化合物は、尿素結合を有する化合物を含む混合物であっても、尿素結合を有する化合物を製造するための原料を含む混合物であってもよい。上記したように、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において使用する尿素結合を有する化合物として、有機第1アミンと炭酸誘導体との反応により得られる尿素結合を有する化合物を使用することができる。また、該尿素結合を有する化合物は、有機第1アミンと炭酸誘導体とを反応させてN−置換カルバミン酸カルバミン酸エステルを製造する際に、N−置換カルバミン酸エステルと共に得られる化合物であってもよい。したがって、本実施の形態のカルボニル化合物(ここではN−置換カルバミン酸エステル)の製造方法は、N−置換カルバミン酸エステルと共に得られる尿素結合を有する化合物を、該カルボニル化合物(ここではN−置換カルバミン酸エステル)の製造方法に用いる尿素結合を有する化合物とすることにより、良好な収率をもたらすN−置換カルバミン酸エステルの製造方法とすることができる。さらには、有機第1アミンと炭酸誘導体との反応によるN−置換カルバミン酸エステルと尿素結合を有する化合物との製造と、該尿素結合を有する化合物を用いた本実施の形態のカルボニル化合物(ここではN−置換カルバミン酸エステル)の製造とを同じ反応器にておこなうこともできる。以下、その方法について示す。なお、本実施の形態の製造方法で製造するカルボニル化合物がN−置換カルバミン酸クロリドの場合も同様である。
まず、反応器としては、蒸留塔を使用することが好ましく、上記<蒸留塔での反応>の項に記載した供給口A、供給口Bおよび抜き出し口Cを具備する蒸留塔が使用できる。供給口A、供給口B、抜き出し口Cについても上記<蒸留塔での反応>の項に記載したとおりである。
該反応蒸留塔に具備する各供給口より供給する原料成分についても上記<蒸留塔での反応>の項に記載したとおりである。
<カルボニル化合物>
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、上記式(1)で表される尿素結合を有する化合物を、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、カルボニル基(−C(=O)−)を有する炭酸誘導体と反応させてカルボニル化合物を得る工程(X)を含む。また、該工程(X)を、ヒドロキシ化合物の共存下でおこなうことが好ましい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法の方法によって製造されるカルボニル化合物は、例えば、下記式(1−1)で表される基を含む化合物である。また、該工程(X)を、ヒドロキシ化合物の共存下でおこなう場合、例えば、下記式(1−2)で表される基を含む化合物も得られる。
(式中、Xは、炭酸誘導体のカルボニル基(−C(=O)−)の炭素原子に結合している基を表す。)
(式(1−2)中、X’は、ヒドロキシ化合物からヒドロキシ基(−OH)の水素原子を除いた残基を表す。)
上記式(1−1)は、使用する炭酸誘導体に依存する。具体的には、上記式(52)の右辺第1項の基、式(53)の右辺の基、式(55)の右辺第1項の基、式(58)の右辺の基、式(60)の右辺第1項の基、式(61)の右辺の基、式(62)の右辺の基である。また、式(56)の右辺第1項の基、式(57)の右辺の基、式(59)の右辺第1項の基は、共存するヒドロキシ化合物と下記式(63)で表される反応によって、N−置換カルバミン酸エステル基を生成し得る。
また、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、該炭酸誘導体としてホスゲンを用いる場合、得られるカルボニル化合物は下記式(3)で表される基を有する化合物を含む。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法によって製造されるカルボニル化合物は、好ましくは、N−置換カルバミン酸エステル、N−置換カルバミン酸クロリドである。
<N−置換カルバミン酸エステル>
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法において、該ヒドロキシ化合物がアルコールである場合、得られるカルボニル化合物は、下記式(7)で表されるN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを含む。
具体的には、有機第1アミンとして下記式(5)で表される有機第1アミンを使用し、ヒドロキシ化合物としてアルコールを使用する場合、本実施の形態の製造方法によって、下記式(7)で表されるN−置換カルバミン酸エステルが得られる。
(式中;
R
3は、炭素数1から85の有機基であり、
R
4は、アルコールに由来する基であって、該アルコールにおける1つのヒドロキシ基を除いた残基であり、
aは、1から10の整数を表し、
cは、1から10の整数を表す(c=aである)。)
なお、上記式(7)のように、アルコールに由来するエステル基を有するN−置換カルバミン酸エステルを、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを称する場合がある。
N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルの具体例を以下に示す。
1)N−芳香族有機モノカルバミン酸エステル
N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルとしては、例えば、式(7)中、R3が1種以上の“カルバミン酸エステル基で置換された”芳香族環を含有する炭素数6〜85の基であって、cが1であるN−芳香族有機モノカルバミン酸エステルが挙げられる。該R3における炭素数は、好ましくは6〜70であり、流動性等を考慮して、より好ましくは6〜13である。
また、好ましいN−芳香族有機モノカルバミン酸エステルとしては、下記式(64)で表されるN−置換カルバミン酸モノ(−O−アルキルエステル)が挙げられる。
(式中;
R
27、R
28、R
29、R
30は、上記式(48)で定義した基を表す。)
このような式(64)で表されるN−置換カルバミン酸モノ(−O−アルキルエステル)の好ましい例としては、R27〜R30が、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基から選ばれる基である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
2)N−芳香族有機ポリカルバミン酸エステル
N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルとしては、例えば、式(7)中、R3が、1種以上の“カルバミン酸エステル基で置換された”芳香族環を含有する炭素数6〜85の基であって、cが2以上であるN−芳香族有機ポリカルバミン酸O−アルキルエステルが挙げられる。該R3における炭素数は、好ましくは6〜70であり、流動性等を考慮して、より好ましくは6〜13である。該芳香族環はさらにアルキル基、アリール基、アラルキル基で置換されていてもよい。
また、N−芳香族有機ポリカルバミン酸O−アルキルエステルとしては、下記式(65)で表されるポリメチレンポリフェニルポリカルバミン酸O−アルキルエステルを挙げることができる。
(式中;
R
4は、上記式(7)で定義した基であり、
sは、0または正の整数である。)
3)N−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アルキルエステル
N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルとしては、例えば、式(7)中、R3が、炭素数1〜85の脂肪族基であって、cが2または3のN−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アルキルエステルが挙げられる。さらに好ましいN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルは、該脂肪族基が、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、または前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)であるN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルである。該R3における炭素数は、より好ましくは1〜70であり、工業的に大量に製造する際の流動性等を考慮して、さらに好ましくは6〜13である。
具体的には、例えば、R3が、直鎖および/または分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、および該アルキル基と該シクロアルキル基とから構成される基のN−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アルキルエステルが挙げられる。
N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルの具体的な構造は、使用する有機第1アミンおよびヒドロキシ化合物を構成するアルコールの種類によって決まるため、全てを列挙することはできないが、例えば、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸メチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸エチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸プロピルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ブチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ペンチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ヘキシルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ヘプチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸オクチルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ノニルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸デシルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸ドデシルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸オクタデシルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸メチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸エチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸プロピルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ブチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ペンチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ヘキシルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ヘプチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸オクチルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ノニルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸デシルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸ドデシルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸オクタデシルエステル)、3−(メトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸メチルエステル、3−(エトキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸エチルエステル、3−(プロピルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸プロピルエステル、3−(ブチルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ブチルエステル、3−(ペンチルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ペンチルエステル、3−(ヘキシルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ヘキシルエステル、3−(ヘプチルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ヘプチルエステル、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸オクチルエステル、3−(ノニルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ノニルエステル、3−(デシルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸デシルエステル、3−(ドデシルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸ドデシルエステル、3−(オクタデシルオキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸オクタデシルエステル、トルエン−ジ(カルバミン酸メチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸エチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸プロピルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ブチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ペンチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ヘキシルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ヘプチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸オクチルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ノニルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸デシルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸ドデシルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸オクタデシルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸メチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸エチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸プロピルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ブチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ペンチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ヘキシルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ヘプチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸オクチルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ノニルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸デシルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸ドデシルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸オクタデシルエステル)、N−フェニルカルバミン酸メチルエステル、N−フェニルカルバミン酸エチルエステル、N−フェニルカルバミン酸プロピルエステル、N−フェニルカルバミン酸ブチルエステル、N−フェニルカルバミン酸ペンチルエステル、N−フェニルカルバミン酸(ヘキシルエステル、N−フェニルカルバミン酸ヘプチルエステル、N−フェニルカルバミン酸オクチルエステル、N−フェニルカルバミン酸ノニルエステル、N−フェニルカルバミン酸デシルエステル、N−フェニルカルバミン酸ドデシルエステル、N−フェニルカルバミン酸オクタデシルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸メチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸エチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸プロピルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ブチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ペンチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ヘキシルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ヘプチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸オクチルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ノニルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸デシルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸ドデシルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸オクタデシルエステルを挙げることができる。
一方、本実施の形態の製造方法は、ヒドロキシ化合物として芳香族ヒドロキシ化合物を使用する場合、該カルボニル化合物が、下記式(6)で表されるN−置換カルバミン酸エステルを含む。
(式中;
R
3は、上記式(5)で定義した基を表し、
Arは、芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基であって、該芳香族ヒドロキシ化合物の芳香環に結合している1つのヒドロキシ基を除いた残基であり、
bは、1から10の整数を表す(b=aである)。)
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、該ヒドロキシ化合物が芳香族ヒドロキシ化合物であり、該有機第1アミンが上記式(5)で表される化合物であり、製造される該N−置換カルバミン酸エステルが、上記式(6)で表されるN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルであることが好ましい。
なお、上記式(6)のように、芳香族ヒドロキシ化合物に由来するエステル基を有するN−置換カルバミン酸エステルを、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを称する場合がある。
以下に、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの具体例を示す。
1)N−芳香族有機モノカルバミン酸エステル
N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルとしては、例えば、式(6)中、R3が1種以上の芳香族環を含有する炭素数6〜85の基であって、bが1であるN−芳香族有機モノカルバミン酸エステルが挙げられる。該R3における炭素数は、好ましくは6〜70であり、流動性等を考慮して、より好ましくは6〜13である。
また、N−芳香族有機モノカルバミン酸エステルとしては、下記式(65)で表されるN−置換カルバミン酸モノ(−O−アリールエステル)であることが好ましい。
(式中;
R
27、R
28、R
29、R
30は、上記式(48)で定義した基を表す。)
このような式(65)で表されるN−置換カルバミン酸モノ(−O−アリールエステル)の好ましい例としては、R27〜R30が、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基から選ばれる基である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
2)N−芳香族有機ポリカルバミン酸エステル
N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルとしては、例えば、式(6)中、R3が、1種以上の“カルバミン酸エステル基で置換された”芳香族環を含有する炭素数6〜85の基であって、bが2以上であるN−芳香族有機ポリカルバミン酸−O−アリールエステルが挙げられる。R3における炭素数は、好ましくは6〜70であり、流動性等を考慮して、より好ましくは6〜13である。該芳香族環はさらにアルキル基、アリール基、アラルキル基で置換されていてもよい。
また、N−芳香族有機ポリカルバミン酸エステルとしては、下記式(63)で表されるポリメチレンポリフェニルポリカルバミン酸−O−アリールエステルを挙げることができる。
(式中;
Arは、上記式(6)で定義した基であり、
sは、0または正の整数である。)
3)N−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アリールエステル
N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルとしては、例えば、式(6)中、R3が、炭素数1〜85の脂肪族基であって、bが2または3のN−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アリールエステルが挙げられる。さらに好ましいN−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アリールエステルは、該脂肪族基が、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、または前記鎖状炭化水素基と前記環状炭化水素基とから選ばれる少なくとも1種の基が結合した基(例えば、鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基などを指す)であるN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルである。該R3における炭素数は、より好ましくは1〜70であり、工業的に大量に製造する際の流動性等を考慮して、さらに好ましくは6〜13である。
具体的には、例えば、R3が、直鎖および/または分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、および該アルキル基と該シクロアルキル基から構成される基のN−脂肪族有機ポリカルバミン酸−O−アリールエステルが挙げられる。
N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの具体的な構造は、使用する有機第1アミンおよびヒドロキシ化合物を構成する芳香族ヒドロキシ化合物の種類によって決まるため、全てを列挙することはできないが、例えば、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(メチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)、、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス(カルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(メチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(エチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(デシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ジ(カルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジフェニレン−ビス(カルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル、3−((メチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(メチルフェニル)エステル、3−((エチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル、3−((プロピルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル、3−((ブチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル、3−((ペンチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル、3−((ヘキシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル、3−((ヘプチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル、3−((オクチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル、3−((ノニルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル、3−((デシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(デシルフェニル)エステル、3−((ドデシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル、3−((オクタデシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル、3−((ジメチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジメチルフェノキシ)エステル、3−((ジエチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル、3−((ジプロピルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル、3−((ジブチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル、3−((ジペンチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル、3−((ジヘキシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル、3−((ジヘプチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル、3−((ジオクチルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル、3−((ジノニルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル、3−((ジデシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル、3−((ジドデシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル、3−((ジオクタデシルフェノキシ)カルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル、トルエン−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(メチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(エチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(デシルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)、トルエン−ジ(カルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)、トルエン−ビス(カルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(メチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(エチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(プロピルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ブチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(オクチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ノニルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(デシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ジ(カルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル)、N,N’−メチレンジシクロヘキシル−ビス(カルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル)、N−フェニルカルバミン酸
フェニルエステル、N−フェニルカルバミン酸(メチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(デシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸フェニルエステル、N−フェニルカルバミン酸(メチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(デシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル、N−フェニルカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸フェニルエステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(メチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ノニルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(デシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ドデシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(オクタデシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジメチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジエチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジプロピルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジブチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジペンチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジヘキシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジヘプチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジオクチルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジノニルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジデシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジドデシルフェニル)エステル、N−ジメチルフェニルカルバミン酸(ジオクタデシルフェニル)エステル等を挙げることができる。
<エステル交換反応>
本実施の形態の方法によって製造されるカルボニル化合物は、カルボニル化合物の熱分解によるイソシアネートの製造に好適に使用される。
該イソシアネートの製造においてより好ましく使用されるカルボニル化合物は、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルである。N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルは、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに比べて熱分解反応を生起しやすく、対応するイソシアネートと芳香族ヒドロキシ化合物とに容易に分解する傾向が大きいためである。
上記した製造方法で得られるカルボニル化合物は、使用するヒドロキシ化合物の種類によって、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを製造することもできるし、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを製造することもできるが、上記理由からN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを製造することが好ましい。
上記した製造方法によって、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを得た場合は、下記のエステル交換工程によって、熱分解が容易なN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルに変換することが好ましい。該エステル交換工程の後、該N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルをイソシアネートの反応に好適に使用することができる。なお、該エステル交換工程では、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールが生成する。以下、該エステル交換工程について説明する。
ここで対象とするN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルとは、上記式(7)で表されるN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルである。
反応させる芳香族ヒドロキシ化合物は、上記式(33)で表される芳香族ヒドロキシ化合物のうちのいずれを使用してもよい。また、該芳香族ヒドロキシ化合物は、単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
本実施の形態の製造方法は、上記式(7)で表されるN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルと、芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて、上記式(6)で表されるN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルとアルコールとを得る工程をさらに含むことが好ましい。本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法に用いるヒドロキシ化合物は、当該工程で得られたアルコールであることが好ましい。
該エステル交換工程は、公知の方法(例えば、WO2008/059953参照)を参考に、使用する化合物等に応じて様々な方法をおこなうことができる。
該エステル交換反応の反応条件は、反応させる化合物によって異なるが、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを構成するエステル基に対して、芳香族ヒドロキシ化合物を化学量論比で表して、2〜1000倍の範囲で使用することが好ましい。反応を早期に完結させるためには、該芳香族ヒドロキシ化合物は、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを構成するエステル基に対して過剰量が好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、より好ましくは3〜100倍の範囲、さらに好ましくは、5〜50倍の範囲である。
反応温度は、通常、100℃〜300℃の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では副反応が生じやすくなる場合があるので、好ましくは150℃〜250℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。
また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常20〜1×106 Paの範囲で行われる。
反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.001〜100時間、好ましくは0.01〜50時間、より好ましくは0.1〜30時間である。
また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによって目的のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルが所望量生成していることを確認して反応を終了することもできる。
該エステル交換工程において、触媒は必ずしも必要ではないが、反応温度を低下させたり、反応を早期に完結させるために、触媒を使用することは何ら問題ない。触媒はN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルの重量に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%で使用される。
触媒としては、例えば、ルイス酸およびルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属、亜鉛、鉄族金属の化合物、具体的には、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4(ここでXは、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基である)で表されるルイス酸およびルイス酸を生成する遷移金属化合物;
(CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等で表される有機スズ化合物;
CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等の銅族金属の化合物;
Zn(acac)2等の亜鉛の化合物;Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等の鉄族金属の化合物等が挙げられる(Buはブチル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。)。また、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンなどのアミン類が使用に適し、中でも、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸鉛、スタナオクトエートなどの有機金属触媒が好適な触媒として挙げられる。これらの化合物は単独でも二種類以上の混合物として使用してもよい。
当該反応においては、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒を用いることができる。このような反応溶媒の具体例については、<ウレイド基を有する化合物>の段落で述べたものと同様である。
一般的に上述したエステル交換の反応は平衡反応である。したがって、効率よくエステル交換をおこなうために、生成物であるアルコール(原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコール)を反応系より除去しながら、反応を進めることが好ましい。
したがって、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールの標準沸点よりも、エステル交換で使用する芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点が高くなるように芳香族ヒドロキシ化合物を選択しておくと、反応系で、最も標準沸点の低い化合物が、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールとなり、反応系からの生成物の除去が容易である。
また、エステル交換を効率よく進行させるため、好ましくは、エステル交換を連続法でおこなう。すなわち、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを、反応器に連続的に供給して、エステル交換をおこない、生成する、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールを気体成分として反応器から取り出し、生成するN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む反応液を、反応器底部から連続的に取り出すことが好ましい。
エステル交換工程をおこなう反応器およびラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、例えば、上述したN−置換カルバミン酸エステルを製造するための反応器と同様の材質を使用することができる。
反応器の形式に、特に制限はなく、公知の槽状、塔状の反応器が使用できる。例えば、攪拌槽、多段攪拌槽、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器、細流相反応器、気泡塔のいずれかを含む反応器を用いる方式、およびこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。平衡を生成系側に効率的にずらすという観点から、薄膜蒸発器、塔状の反応器を用いる方法が好ましく、また、生成する、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールを気相に速やかに移動させられる、気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が2段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能なものであるならばどのようなものであってもよい。このような多段蒸留塔としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のものなど、通常多段蒸留塔として用いられるものならばどのようなものでも使用することができる。充填塔は、塔内に上記した公知の充填剤を充填した充填塔ならばどのようなものでも使用することができる。さらに、棚段部分と充填物の充填された部分とをあわせもつ棚段−充填混合塔方式のものも好ましく用いられる。
不活性ガスおよび/または液体状の不活性溶媒を該反応器下方から供給するラインを別途取り付けてもよいし、目的のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含有する混合液が、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを含有している場合は、該混合液の一部あるいは全部を、再度、該反応器に循環させるラインを取り付けてもよい。なお、前述の不活性溶媒を用いる場合、該不活性溶媒は気体状および/または液体状であってもよい。
反応器から抜き出した、原料のN−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに由来するアルコールを含む気体成分は、好ましくは蒸留塔など公知の方法を用いて精製して、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルを製造するための原料のアルコールとして再利用することができる。
<カルボニル化合物の熱分解反応によるイソシアネートの製造工程>
本実施の形態のイソシアネートの製造方法は、上述の製造方法で得られたカルボニル化合物を熱分解反応に付してイソシアネートを製造する工程を含む。
本実施の形態のイソシアネートの製造方法においてより好ましく使用されるカルボニル化合物は、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルである。N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルは、N−置換カルバミン酸−O−アルキルエステルに比べて熱分解反応を生起しやすく、対応するイソシアネートと芳香族ヒドロキシ化合物とに容易に分解する傾向が大きいためである。したがって、本実施の形態のイソシアネートの製造方法は、上述の製造方法で得られたN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを熱分解反応に付して、イソシアネートと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む生成物を得る工程を含むことが好ましい。また、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、用いるヒドロキシ化合物または該芳香族ヒドロキシ化合物が、該工程で得られた芳香族ヒドロキシ化合物であることが好ましい。
以下、N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを熱分解反応に付して、イソシアネートを製造する工程(本明細書中ではしばしば「熱分解工程」と記述している)について説明する。
反応温度は、通常100℃〜300℃の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温ではN−置換カルバミン酸エステルおよび/または生成物であるイソシアネートによって、上述したような副反応が引き起こされる場合があるので、好ましくは150℃〜250℃の範囲である。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。
また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常20〜1×106 Paの範囲で行われる。
反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく、通常0.001〜100時間、好ましくは0.005〜50時間、より好ましくは0.01〜10時間である。
本実施の形態のイソシアネートの製造方法において、触媒は必ずしも必要ではないが、反応温度を低下させたり、反応を早期に完結させるために、触媒を使用することは何ら問題ない。触媒はN−置換カルバミン酸エステルの重量に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%で使用される。
触媒としては、上述したエステル交換工程の際に用いる触媒と同様ものを用いることができる。
また、上述したとおり、該N−置換カルバミン酸エステルを製造する際に、いずれかの工程で触媒を使用した場合、該触媒残渣等が該熱分解工程に供給される場合があるが、そのような触媒残渣等が存在していても多くの場合は差し支えない。
該熱分解工程においては、ヒドロキシ化合物以外に、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒を用いることができる。このような反応溶媒の具体例については、<ウレイド基を有する化合物>の段落で述べたものと同様である。
得られるカルボニル化合物のうち、N−置換カルバミン酸エステルは、高温下で長時間保持された場合、例えば、2分子のN−置換カルバミン酸エステルからの脱炭酸エステル反応によって尿素結合含有化合物を生成する反応や、N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によって生成するイソシアネート基との反応によってアロファネート基を生成する反応等の副反応を生起する場合がある。したがって、該N−置換カルバミン酸エステルおよび該イソシアネートが高温下に保持される時間は、可能な限り短時間であることが好ましい。
したがって、該熱分解反応は、好ましくは連続法でおこなわれる。連続法とは、該N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物を、反応器に連続的に供給して、熱分解反応に付し、生成するイソシアネートおよびヒドロキシ化合物を、該熱分解反応器から連続的に抜き出す方法である。
該連続法において、該熱分解反応によって生成する低沸点成分は、好ましくは、気相成分として該熱分解反応器の上部より回収され、残りは液相成分として該熱分解反応器の底部より回収される。熱分解反応器中に存在する全ての化合物を気相成分として回収することもできるが、液相成分を該熱分解反応器中に存在させることによって、N−置換カルバミン酸エステルおよび/またはイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状化合物を溶解して、該ポリマー状化合物の該熱分解反応器への付着・蓄積を防止する効果がある。
N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応により、イソシアネートとヒドロキシ化合物とが生成するが、これらの化合物のうち、少なくとも一方の化合物を気相成分として回収する。どの化合物を気相成分として回収するかは、熱分解反応条件等に依存する。
ここで、本実施の形態で用いる用語「N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する低沸点成分」とは、該N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によって生成する、ヒドロキシ化合物および/またはイソシアネートが相当するが、特に、当該熱分解反応が実施される条件下で、気体として存在しうる化合物を指す。
例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を回収する方法を採用することができる。当該方法において、熱分解反応器でイソシアネートとヒドロキシ化合物とを別々に回収してもよい。
回収されたイソシアネートを含有する気相成分は、好ましくは、気相で、該イソシアネートを精製分離するための蒸留装置に供給される。回収されたイソシアネートを含有する気相成分を、凝縮器等によって液相としたのち、蒸留装置に供給することもできるが、装置が煩雑となったり、使用するエネルギーが大きくなる場合が多く、好ましくない。
該液相成分が、N−置換カルバミン酸エステルを含有する場合は、好ましくは、該液相成分の一部または全部を、該熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付す。
ここでいう、熱分解反応器の上部とは、例えば、該熱分解反応器が蒸留塔の場合は、理論段数で塔底より2段目以上上の段を指し、該熱分解反応器が薄膜蒸留器の場合は、加熱されている伝面部分よりも上の部分を指す。
本実施の形態のイソシアネートの製造方法は、該熱分解反応により得られた生成物を気相成分と液相成分とに分離し、該液相成分の一部または全部を回収する工程をさらに含み、該液相成分が、尿素結合を有する化合物を含有することが好ましい。また、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、用いる尿素結合を有する化合物が、該工程で得られた液相成分に含まれる尿素結合を有する化合物であることが好ましい。
該液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、該液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
また、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物とを気相成分として回収し、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分を熱分解反応器の底部から回収する方法を採用することができる。当該方法においても、回収されたイソシアネートを含有する気体成分は、好ましくは、気相で、該イソシアネートを生成分離するための蒸留装置に供給される。
一方、N−置換カルバミン酸エステルを含有する液相成分は、その一部または全部を、該熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付す。該液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、該液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
さらに、例えば、熱分解反応によって生成するイソシアネートおよびヒドロキシ化合物のうち、芳香族ヒドロキシ化合物を気相成分として回収し、該イソシアネートを含有する混合物を液相成分として、該熱分解反応器の底部より回収する方法を採用することができる。
この場合、該液相成分を蒸留装置に供給し、イソシアネートを回収する。該液相成分に、N−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、好ましくは、該N−置換カルバミン酸エステルを含有する混合物は、その一部または全部を、該熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付す。
該液相成分の一部または全部を熱分解反応器の上部に供給する際は、該液相成分を、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、70℃〜170℃、さらに好ましくは、100℃〜150℃に保持して移送する。
先にも述べたが、該熱分解反応においては、液相成分を該熱分解反応器の底部より回収することが好ましい。それは、液相成分を該熱分解反応器中に存在させることによって、上述したような、N−置換カルバミン酸エステルおよび/またはイソシアネートによって生起される副反応によって生成するポリマー状副生物を溶解して、液相成分として熱分解反応器から排出させることができ、以って該ポリマー状化合物の該熱分解反応器への付着・蓄積を低減する効果があるためである。
液相成分にN−置換カルバミン酸エステルが含有される場合には、該液相成分の一部または全部を、該熱分解反応器の上部に供給し、該N−置換カルバミン酸エステルを、再度、熱分解反応に付すが、この工程を繰り返すと、液相成分にポリマー状副生物が蓄積される場合がある。その場合には、該液相成分の一部または全部を反応系から除去し、ポリマー状副生物の蓄積を減少させる、あるいは、一定の濃度に保持することができる。
反応系から除去された液相成分は、多くの場合、ヒドロキシ化合物が含有されているが、該液相成分より、蒸留等の方法によってヒドロキシ化合物を回収してもよい。該ヒドロキシ化合物は、本実施の形態のN−置換カルバミン酸エステルを製造方法に用いる原料や、上記したエステル交換反応のためのヒドロキシ化合物として再利用することができる。
また、該熱分解反応器の底部から回収する液相成分は、多くの場合、尿素結合を有する化合物を含有している。該尿素結合を有する化合物を、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法に用いる原料として再利用し、該尿素結合を有する化合物を、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、炭酸誘導体とを反応させる工程をさらに追加してもよい。
回収したイソシアネートは、反応条件や該イソシアネートを回収する条件、反応装置等によっては、芳香族ヒドロキシ化合物等を含有する場合がある。そのような場合は、蒸留等の操作をさらにおこなって、所望の純度のイソシアネートを得てもよい。
該熱分解反応器の形式に、特に制限はないが、気相成分を効率よく回収するために、好ましくは、公知の蒸留装置を使用する。例えば、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器のいずれかを含む反応器を用いる方式、およびこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。
低沸点成分を素早く反応系から除去する観点から、好ましくは、管状反応器、より好ましくは、管状薄膜蒸発器、管状流下膜蒸発器等の反応器を用いる方法であり、生成する低沸点成分を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
熱分解反応器およびラインの材質は、該ウレタンや生成物である芳香族ヒドロキシ化合物、イソシアネート等に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、例えば、上述したN−置換カルバミン酸エステルを製造するための反応器と同様の材質を使用することができる。
<反応器の洗浄>
本実施の形態のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの製造、および、該N−置換カルバミン酸−O−アリールエステルを使用するイソシアネートの製造において、わずかであるが、ポリマー状の副反応生成物等が生成する場合がある。このポリマー状の副反応生成物は、本実施の形態で使用する芳香族ヒドロキシ化合物に対する溶解度が高いので、芳香族ヒドロキシ化合物の溶液として、反応器より取り出される。しかしながら、反応装置の運転条件が変動したり、長時間の運転をおこなったりした場合に、ポリマー状の副反応生成物が付着する場合がある。
そのような場合には、該当する反応器の内部(特に壁面)を、ポリマー状の副反応生成物の良溶媒である酸で洗浄することにより、反応器の内部を清浄に保つことができる。
該洗浄に用いる酸としては、該ポリマー状の副生成物を溶解するものであれば、特に限定されず、有機酸、無機酸のいずれが用いられてもよいが、好ましくは、有機酸が用いられる。
有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール類、エノール類、チオフェノール類、イミド類、オキシム類、芳香族スルホンアミド類等を例示することができるが、好ましくはカルボン酸、フェノール類が使用される。
このような化合物としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、アリル酢酸、ウンデセン酸等の飽和または不飽和脂肪族モノカルボン酸化合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、ペンテン二酸、イタコン酸、アリルマロン酸等の飽和または不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−プロペントリカルボン酸、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸等の飽和または不飽和脂肪族トリカルボン酸化合物;安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸等の芳香族者カルボン酸化合物;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物;ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸化合物;フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、フェノキシフェノール、クミルフェノール等のモノ置換フェノール類;ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ジペンチルフェノール、ジヘキシルフェノール、ジヘプチルフェノール、ジオクチルフェノール、ジノニルフェノール、ジデシルフェノール、ジドデシルフェノール、ジフェニルフェノール、ジフェノキシフェノール、ジクミル−フェノール等を挙げることができる。
これらの有機酸の中でも、該熱分解反応器の洗浄操作後に該洗浄溶剤が残存した場合の影響を考慮して、より好ましくは、芳香族ヒドロキシ化合物、さらに好ましくは上述したN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの製造方法および/またはN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの熱分解反応で生成し得る芳香族ヒドロキシ化合物と同種の化合物である。
なお、洗浄の酸として芳香族ヒドロキシ化合物を用いる場合、該芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点は、洗浄効果の観点から、前述のN−置換カルバミン酸−O−アリールエステルの熱分解反応によって生成するイソシアネートの標準沸点と10℃以上の沸点差を有することが好ましい。
上記洗浄溶剤を使用して反応器を洗浄する方法としては、反応器上部より洗浄溶剤を導入して反応器を洗浄する方法、反応器の底部に洗浄溶剤を導入し、洗浄溶剤を反応器内で炊き上げて内部を洗浄する方法等、様々な方法を使用できる。
該洗浄操作は、反応を実施する度に毎回おこなう必要はなく、使用する化合物、運転レート等により任意に決定することができ、好ましくは、運転時間1時間〜20000時間に1回、より好ましくは、運転時間1日〜1年に1回、さらに好ましくは、運転時間1ヶ月〜1年に1回の頻度で洗浄操作をおこなうことができる。該反応器は、洗浄溶剤を導入するラインを具備していてもよい。
本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、カルボニル化合物が工業的に有用であること、特に、カルボニル化合物がN−置換カルバミン酸エステルの場合には、該N−置換カルバミン酸エステルの熱分解反応によってイソシアネートを製造することができるため有用であり、本実施の形態のカルボニル化合物の製造方法は、産業上、極めて重要である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
(1)NMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FT−NMRシステム
・1Hおよび13C−NMR分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(米国、アルドリッチ社製、99.8%)を約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルスズ(日本国、和光純薬工業社製、和光一級)を0.05g加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとした。
・定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(2)液体クロマトグラフィー分析方法
装置:日本国、島津製作所社製 LC−10ATシステム
カラム:日本国、GLサイエンス社製 Inertsil−ODSカラムを2本直列に接続
展開溶媒:5mmol/L酢酸アンモニウム水溶液(A液)とアセトニトリル(B液)との混合液
展開溶媒流量:2mL/min
カラム温度:35℃
検出器:R.I.検出器(屈折率計)、および、PDA検出器(フォトダイオードアレイ検出器、測定波長範囲:200nm〜300nm)
・液体クロマトグラフィー分析サンプル
サンプルを約0.1g秤量し、テトラヒドロフラン(日本国、和光純薬工業社製、脱水)を約1gと内部標準物質として1,1−ジエチル尿素(日本国、東京化成社製)を約0.02g加えて均一に混合した溶液を、液体クロマトグラフィー分析のサンプルとした。
・定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(3)熱解離温度測定方法
装置:TGDTA分析装置 日本国、リガク社製 TG8120
MS分析装置 日本国、島津社製 GCMS−QP 2010plus
雰囲気:ヘリウム
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:室温(約25℃)〜400℃
・分析方法
上記測定条件にて試料(約5mg)を加熱し、発生するガスをMS分析装置にて分析した。尿素結合の分解によって生成するNH2基を含む化合物が検出される温度を、当該化合物の熱解離温度とした。
[実施例1]
・工程(1−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,3−ジシクロヘキシル尿素6.30kg(28.1モル)と2,6−キシレノール13.2kg(59.5モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102に2,6−キシレノールを投入し、リボイラー105で2,6−キシレノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は210℃であり、1,3−ジシクロヘキシル尿素の熱解離温度(205℃)よりも高い温度であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.0kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と2,6−キシレノールとの混合液(尿素濃度約5重量%)を約6.9kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.0kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N−シクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルを含む溶液であり、該N−シクロヘキシルカルバミン酸(2,6−ジメチルフェニル)エステルの、1,3−ジシクロヘキシル尿素に対する収率は約95%であった。
[実施例2]
・工程(2−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,3−ジフェニル尿素8.20kg(37.4モル)とn−ブタノール12.0kg(162モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102にn−ブタノールを投入し、リボイラー105でn−ブタノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は12気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は220℃であり、1,3−ジフェニル尿素の熱解離温度(210℃)よりも高い温度であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.0kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素とn−ブタノールとの混合液(尿素濃度約5重量%)を約9.3kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.0kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約50℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N−フェニルカルバミン酸(n−ブチル)エステルを含む溶液であり、該N−フェニルカルバミン酸(n−ブチル)エステルの、1,3−ジフェニル尿素に対する収率は約93%であった。
[実施例3]
・工程(3−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,3−ジオクタデシル尿素7.2kg(12.8モル)とフェノール12.2kg(130モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102にフェノールを投入し、リボイラー105でフェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は2.3気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は220℃であり、1,3−ジオクタデシル尿素の熱解離温度(210℃)よりも高い温度であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.0kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、カルバミン酸フェニルとフェノールとの混合液(カルバミン酸フェニル濃度約7重量%)を約4.8kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.0kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約50℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N−オクタデシルカルバミン酸フェニルエステルを含む溶液であり、該N−オクタデシルカルバミン酸フェニルエステルの、1,3−ジオクタデシル尿素に対する収率は約94%であった。
[参考例1]
・工程(A−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,6−ヘキサメチレンジアミン1.2kg(10.3モル)と炭酸ジ(n−ブチル)3.1kg(17.8モル)とn−ブタノール10.3kgとを混合し原料溶液とした。段数40段の棚段式蒸留塔102にn−ブタノールを投入し、リボイラー105でn−ブタノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は11気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は220℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.5kg/Hrで導入した。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.5kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約74%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、ジ(n−ブチル)−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートを含有し、該ジブチル−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートの、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約21%であった。ジ(n−ブチル)−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートに含有される尿素結合の熱解離温度は205℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、炭酸ジ(n−ブチル)が検出されなかった。
[実施例4]
・工程(4−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、炭酸ジ(n−ブチル)とn−ブタノールとの混合液(炭酸ジ(n−ブチル)濃度約50重量%)を約1.3kg/Hrでフィードした以外は、参考例1の工程(A−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約92%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、ジ(n−ブチル)−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートを含有し、該ジ(n−ブチル)−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートの、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約2%であった。ジ(n−ブチル)−6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジカルバメートに含有される尿素結合の熱解離温度は205℃であった。参考例1と対比すると、当該実施例では、炭酸ジ(n−ブチル)とn−ブタノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(220℃)の加熱下で、炭酸ジ(n−ブチル)と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成し、そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例2]
・工程(B−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン3.2kg(18.8モル)と炭酸ジフェニル6.6kg(30.8モル)とフェノール8.2kg(87.2モル)とを混合し原料溶液とした。段数40段の棚段式蒸留塔102にフェノールを投入し、リボイラー105でフェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は2.6気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は230℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.8kg/Hrで導入した。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.8kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルを含有し、該3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約61%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、ジフェニル−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートを約30質量%含有していた。ジフェニル−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートに含有される尿素結合の熱解離温度は206℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、炭酸ジフェニルが検出されなかった。
[実施例5]
・工程(5−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、炭酸ジフェニルとフェノールとの混合液(炭酸ジフェニル濃度約63重量%)を約2.0kg/Hrでフィードした以外は、参考例2の工程(B−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルを含む溶液であり、該3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約93%であった。
また、上述の参考例2の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:206℃)が生成したと推定される。当該実施例では、炭酸ジフェニルとフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(230℃)の加熱下で、炭酸ジフェニルと反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成し、そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例3]
・工程(C−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)2.8kg(13.3モル)と炭酸ジフェニル5.2kg(24.3モル)とフェノール18.0kg(191モル)とを混合し原料溶液とした。段数40段の棚段式蒸留塔102にフェノールを投入し、リボイラー105でフェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は2.3気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は220℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.4kg/Hrで導入した。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.4kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)を含有し、該4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約77%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)を約19質量%含有していた。4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
[実施例6]
・工程(6−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、炭酸フェニルとフェノールとの混合液(炭酸ジフェニル濃度約58重量%)を約2.0kg/Hrでフィードした以外は、参考例3の工程(C−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)を含む溶液であり、該4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸フェニルエステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約95%であった。
また、上述の参考例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、炭酸ジフェニルとフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(220℃)の加熱下で、炭酸ジフェニルと反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成し、そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例4]
・工程(D−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
2,4−トルエンジアミン3.6kg(29.5モル)と炭酸ビス(3−メチルブチル)10.8kg(53.5モル)と3−メチル−1−ブタノール8.6kg(85.1モル)とを混合し原料溶液とした。段数40段の棚段式蒸留塔102にフェノールを投入し、リボイラー105で3−メチル−1−ブタノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂の圧力は9.6気圧であり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は220℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.8kg/Hrで導入した。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.8kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)を含有し、該4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約78%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)を約15質量%含有していた。5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は208℃であった。
[実施例7]
・工程(7−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、炭酸ビス(3−メチルブチル)と3−メチル−1−ブタノールとの混合液(炭酸ジ(3−メチルブチル)濃度約50重量%)を約2.2kg/Hrでフィードした以外は、参考例4の工程(D−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)を含む溶液であり、該4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(3−メチルブチル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約93%であった。
また、上述の参考例4の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:208℃)が生成したと推定される。当該実施例では、炭酸ビス(3−メチルブチル)とフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(220℃)の加熱下で、炭酸ジフェニルと反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成し、そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[実施例8]
・工程(8−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
ポリヘキサメチレングリコール、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレンジアミンから製造されたポリウレタンウレア共重合体4.3kgと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール10.3kgとを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102に4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを投入し、リボイラー105で4−(1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノール)を炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂部の圧力は10kPaであり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は230℃であり、別に測定したポリウレタンウレア共重合体の該尿素結合の熱解離温度(210℃)よりも高い温度であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.2kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合液(尿素濃度約5重量%)を約8.2kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、原料溶液を約2.2kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−メチレンビス(4,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む溶液であった。
[実施例9]
・工程(9−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,6−ヘキサメチレンジアミン2.3kg(19.8モル)と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール28.3kg(138モル)と尿素2.7kg(45.0モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102を加熱し、塔頂部の圧力を約10kPaとした。この時、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は、240℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約3.1kg/Hrで導入し、ライン2より尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約5重量%)を約4.8kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン1より原料溶液を約3.1kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約95%であった。
また、後述の比較例1の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:220℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(240℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
一方、貯槽104に回収した成分について1H−NMR測定をおこなったところ、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールと尿素とを含む混合物であり、尿素の濃度は、9.5質量%であった。
・工程(9−2):凝縮器で得た混合物の再利用
工程(9−1)において、貯槽104に回収した混合物を使用してN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
工程(9−1)で、貯槽104に回収した混合物中のアンモニア濃度は440ppmであった。該混合物27.2kgに、1,6−ヘキサメチレンジアミン2.3kgを添加して原料溶液とした。該原料溶液を使用して、工程(9−1)と同様の方法をおこなったところ、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)が得られた。該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約95%であった。
・工程(9−3):N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によるイソシアネートの製造
図2に示す装置を使用してイソシアネートの製造をおこなった。
伝熱面積が0.1m2の薄膜蒸留装置202を220℃に加熱し、該薄膜蒸留装置内の圧力を約1.3kPaとした。工程(9−1)で貯槽105に回収した反応液を貯槽201に投入し、ライン20を介して、約1.8kg/Hrで該薄膜蒸留装置202に供給した。該薄膜蒸留装置202の底部に具備されたライン22より液体成分を抜き出し、貯槽203に回収した。薄膜蒸留装置202の上部に具備されたライン21より、ヘキサメチレンジイソシアネートと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとを含む気体成分を抜き出した。
該気体成分を蒸留塔204に導入し、ヘキサメチレンジイソシアネートと4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとを蒸留分離した。4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを含む高沸成分の一部は、蒸留塔204の底部に具備されたライン26を経て貯槽203に戻し、一部は、リボイラー208を経て再び蒸留塔204に供給し、残りは、貯槽209に回収した。蒸留塔204の塔頂部より、ライン24を介してヘキサメチレンジイソシアネートを含有する気相成分を抜き出し、コンデンサー205で凝縮し、該凝縮液の一部は蒸留塔204に戻した。貯槽207には、ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する凝縮液が得られた。1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約90%であった。
[比較例1]
・工程(E−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合液を供給しない以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約72%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルエステル)が含まれており、該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約22%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の該尿素結合の熱解離温度は220℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。さらに、該蒸留塔において、該尿素結合の熱解離温度(220℃)未満の4段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素が検出されなかった。
[比較例2]
・工程(F−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
該蒸留塔の15段目における温度を200℃とした以外は、実施例9の工程(9−1)と同様の方法をおこなった。なお、該蒸留塔の反応が起こる段における温度は、いずれも該尿素結合の熱解離温度(220℃)未満であった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約48%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルエステル)が含まれており、該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルエステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約31%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルエステル)の該尿素結合の熱解離温度は220℃であった。
[実施例10]
・工程(10−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図3に示す装置を使用してN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,6−ヘキサメチレンジアミン2.3kg(19.8モル)と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール28.3kg(138モル)と尿素2.7kg(45.0モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔302を加熱し、塔頂部の圧力を約30kPaとした。この時、ライン31およびライン32は、蒸留塔302の最上段(1段目)に具備しており、該1段目の温度は235℃であった。該蒸留塔302の最上段(1段目)に具備したライン31より、原料溶液と同じ組成の混合液を約3.1kg/Hrで導入し、ライン32より尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約5重量%)を約4.8kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン31より原料溶液を約3.1kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔302の最底部に具備したライン36を経由して貯槽305に回収した。蒸留塔302の最上部に具備したライン33より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器303で凝縮して得られる成分を貯槽304に回収した。
貯槽305に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約82%であった。
また、上述の比較例1の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:220℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶液を供給する1段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(235℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[実施例11]
・工程(11−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図4に示すような反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,6−ヘキサメチレンジアミン3.20kg(27.6モル)と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール102.0kg(481モル)と尿素5.1kg(85.0モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数30段の棚段式蒸留塔402を加熱し、塔頂部の圧力を約2kPaとし、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの全還流運転をおこなった。この時、原料溶液を供給するライン40を具備する該蒸留塔402の最上段(1段目)の温度は200℃であった。該蒸留塔402の最上段(1段目)に具備したライン40より、原料溶液と同じ組成の混合液を約3.2kg/Hrで導入し、該蒸留塔の3段目に具備したライン41より尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約7.5重量%)を約1.34kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン40より原料溶液を約3.2kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔402の最底部に具備したライン46を経由して貯槽405に回収した。蒸留塔402の最上部に具備したライン45より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器403で凝縮して得られる成分を貯槽404に回収した。なお、ライン41を具備する3段目の温度は215℃であった。
貯槽405に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約83%であった。
後述する比較例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液を供給する3段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[比較例3]
・工程(G−1)
該蒸留塔の3段目に具備したライン41から、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合物をフィードしなかった以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約52%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニルエステル)が含まれており、該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニルエステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約30%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニルエステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔において、該尿素結合の熱解離温度(210℃)未満の2段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素が検出されなかった。
[実施例12]
・工程(12−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
該蒸留塔の3段目に具備したライン41に変えて、該蒸留塔の5段目に具備したライン42より尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約7.5重量%)を約1.34kg/Hrでフィードした以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽405に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約89%であった。
また、上述の比較例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液を供給する5段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[実施例13]
・工程(13−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
該蒸留塔の3段目に具備したライン41に変えて、該蒸留塔の7段目に具備したライン43より尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約7.5重量%)を約1.34kg/Hrでフィードした以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽405に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約96%であった。
また、上述の比較例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液を供給する7段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[実施例14]
・工程(14−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
該蒸留塔の3段目に具備したライン41に変えて、該蒸留塔の10段目に具備したライン44より尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約7.5重量%)を約1.34kg/Hrでフィードした以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽405に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約96%であった。
また、上述の比較例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液を供給する10段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
一方、貯槽404に回収した成分について1H−NMR測定をおこなったところ、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールと尿素とを含む混合物であり、尿素の濃度は、5.0重量%であった。
・工程(14−2):凝縮器で得た混合物の再利用
工程(14−1)において、貯槽404に回収した混合物を使用してN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
工程(14−1)で、貯槽404に回収した混合物中のアンモニア濃度は630ppmであった。該混合物71.7kgに、1,6−ヘキサメチレンジアミン3.2kgを添加して原料溶液とした。該原料溶液を使用して、工程(14−1)と同様の方法をおこなったところ、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)が得られた。該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約96%であった。
・工程(14−3):N−置換カルバミン酸エステルの熱分解によるイソシアネートの製造
図2に示す装置を使用してイソシアネートの製造をおこなった。
伝熱面積が0.1m2の薄膜蒸留装置202を220℃に加熱し、該薄膜蒸留装置内の圧力を約1.3kPaとした。工程(14−1)で貯槽405に回収した反応液を貯槽201に投入し、ライン20を介して、約2.0kg/Hrで該薄膜蒸留装置202に供給した以外は、実施例9の工程(9−3)と同様の方法をおこなった。貯槽207にはヘキサメチレンジイソシアネートを含有する凝縮液が得られた。
[実施例15]
・工程(15−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図5に示す反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
1,6−ヘキサメチレンジアミン3.20kg(27.6モル)と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール102.0kg(481モル)と尿素5.1kg(85.0モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数30段の棚段式蒸留塔502を加熱し、塔頂部の圧力を約8kPaとし、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの全還流運転をおこなった。この時、原料溶液を供給するライン50を具備する該蒸留塔502の最上段(1段目)の温度は240℃であり、該蒸留塔502の他の段の温度は240℃以上であった。該蒸留塔502の最上段(1段目)に具備するライン50と、20段目に具備するライン52とから、原料溶液と同じ組成の混合液を、それぞれ1.6kg/Hrで導入し、該蒸留塔502の15段目に具備するライン51と、25段目に具備するライン53とから、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約7.5重量%)を、それぞれ約0.67kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、原料溶液を、ライン50とライン52とから、それぞれ1.6kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔502の最底部に具備したライン56を経由して貯槽505に回収した。蒸留塔502の最上部に具備したライン55より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器503で凝縮して得られる成分を貯槽504に回収した。
貯槽505に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約97%であった。
また、上述の比較例3の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液を供給する15段目および25段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[実施例16]
・工程(16−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示す反応器にてN−置換カルバミン酸エステルの製造をおこなった。
原料溶液として、1,6−ヘキサメチレンジアミン1.4kg(12.1モル)とn−ブタノール38.3kg(518モル)と尿素2.7kg(45.0モル)とを混合した原料溶液を用い、塔頂部の圧力を約1.2MPaとし、原料溶液を蒸留塔の最上段(1段目)に具備するライン1より約2.8kg/Hrで供給し、尿素とn−ブタノールとの混合液(尿素濃度約5重量%)を蒸留塔の15段目に具備するライン2より約1.2kg/Hrで供給した以外は、実施例13の工程(13−1)と同様の方法をおこなった。この時、ライン2が具備する15段目の温度は220℃であった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約90%であった。
また、後述の参考例5の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素とn−ブタノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(220℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例5]
・工程(H−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
ライン2より、尿素とn−ブタノールとの混合液を供給しない以外は、実施例16の工程(16−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約65%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)が含まれていた。該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は、約32%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)における尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例17]
・工程(17−1):ウレイド基を有する化合物の製造
図6で表される装置を使用した。
ライン66を閉止した状態で、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール83.0kg(392モル)と尿素5.1kg(85.0モル)とを、120℃に加熱した貯槽601で混合し、該混合液を、120℃に加熱した攪拌槽603へ移送した。攪拌槽603において、該混合液を攪拌している状態で、1,6−ヘキサメチレンジアミン2.5kgを、貯槽602よりライン62を経て、攪拌槽603に、約2.0kg/Hrの速度で供給した。1,6−ヘキサメチレンジアミンの供給が終了したのち、約4時間攪拌し、反応液をサンプリングした。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサメチレンジウレアが、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対して収率約97%で生成していた。
ライン66を開き、該反応液を、ライン66を経て貯槽606に移送した。
・工程(17−2):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示す装置を使用した。
段数40段の棚段式蒸留塔102に4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールを投入し、リボイラー105で4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂部の圧力は2kPaであり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は240℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、工程(17−1)で得られた反応液と同じ組成の混合液を約2.0kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液(尿素濃度約7.5重量%)を約1.6kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、工程(17−1)で得られた反応液を約2.0kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約95%であった。
後述の比較例4の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(240℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
・工程(17−3)
工程(17−2)において、貯槽104に回収した凝縮液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該凝縮液は、尿素とビウレットと4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールを含有する溶液であり、尿素の含有量は、約6.3重量%、ビウレットの含有量は約0.1重量%であった。
尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液(尿素濃度約7.5重量%)の代わりに、該凝縮液をライン2より約1.9kg/Hrでフィードした以外は、工程(17−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約95%であった。
[比較例4]
・工程(I−1)
実施例17の工程(17−1)と同様の方法をおこない、1,6−ヘキサメチレンジウレアを含有する反応液を得た。
・工程(I−2)
ライン2より、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液をフィードしなかった以外は、実施例17の工程(17−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約57%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)が含まれていた。該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は、約35%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステル)における尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。さらに、該蒸留塔において、該尿素結合の熱解離温度(210℃)未満の4段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素が検出されなかった。
[実施例18]
・工程(18−1):ウレイド基を有する化合物の製造
4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの代わりにn−ブタノールを63.2kg使用し、1,6−ヘキサメチレンジアミンを2.4kg(20.7モル)、尿素を4.8kg(80.0モル)使用した以外は、実施例21の工程(21−1)と同様の方法をおこなった。反応液をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,6−ヘキサメチレンジウレアが、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対して収率約88%で生成していた。
・工程(18−2):N−置換カルバミン酸エステルの製造
4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールの代わりにn−ブタノールを使用し、蒸留塔102の塔頂部の圧力を1.2MPaとし、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度を220℃とし、工程(17−1)で得られた反応液の代わりに工程(18−2)で得られた反応液を使用した以外は、実施例17の工程(17−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約85%であった。
後述の参考例6の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素とn−ブタノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(220℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
・工程(18−3):エステル交換反応
図7に示す装置を使用した。
貯槽701に、工程(18−2)で貯槽105に回収した反応液を投入し、該反応液に含有されるN,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)に対して化学量論比で10倍の2,4−ジ−tert−アミルフェノールと、化学量論比で0.01倍のジラウリン酸ジブチルスズを添加し、均一な溶液とした。
充填材(ヘリパックNo.3)を充填した充填塔702を240℃に加熱し、内部の圧力を26kPaとした。充填塔702に具備したライン71より、貯槽701の混合液を約1.2kg/Hrでフィードした。充填塔702の最底部に具備したライン74を経由して貯槽705に回収した。充填塔702の最上部に具備したライン72より気相成分を凝縮器703に導入し、得られる液相成分を、気液分離器707を経て、貯槽704に回収した。貯槽705に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)エステル)を含有し、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)に対する収率は85%であった。
[参考例6]
・工程(J−1)
実施例18の工程(18−1)と同様の方法をおこない、1,6−ヘキサメチレンジウレアを含有する反応液を得た。
・工程(J−2)
ライン2より、尿素とn−ブタノールとの混合液をフィードしなかった以外は、実施例18の工程(18−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)を含む溶液であり、該N,N’−ヘキサンジイル−ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、ヘキサメチレンジアミンに対する収率は約68%であった。また、該反応液には、尿素結合を含む化合物である、6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)が含まれていた。該6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対する収率は、約35%であった。6,6’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン−6,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(n−ブチル)エステル)における尿素結合の熱解離温度は205℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例19]
・工程(19−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器を使用した。
3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン2.8kg(16.4モル)と4−フェニルフェノール42.8kg(252モル)と尿素3.2kg(53.3モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102を加熱し、塔頂部の圧力を約10kPaとした。この時、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は、245℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.8kg/Hrで導入し、ライン2より尿素と4−フェニルフェノールとの混合溶液(尿素濃度約6.3重量%)を約1.8kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン1より原料溶液を約2.8kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約150℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルを含み、該3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約92%であった。
後述の参考例7の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:220℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−フェニルフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(245℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例7]
・工程(K−1)
ライン2より尿素と4−フェニルフェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例19の工程(19−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルを含有し、該3−((4−フェニルフェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−フェニルフェニル)エステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約61%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、ジ(4−フェニルフェニル)−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートを約30質量%含有していた。ジ(4−フェニルフェニル)−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートに含有される尿素結合の熱解離温度は220℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例20]
・工程(20−1):ウレイド基を有する化合物の製造
図6で表される装置を使用した。
ライン66を閉止した状態で、4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノール52.8kg(249モル)と尿素4.2kg(70モル)とを、120℃に加熱した貯槽601で混合し、該混合液を、120℃に加熱した攪拌槽603へ移送した。攪拌槽603において、該混合液を攪拌している状態で、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン2.9kgを、貯槽602よりライン62を経て、攪拌槽603に、約1.8kg/Hrの速度で供給した。3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンの供給が終了したのち、約4時間攪拌し、反応液をサンプリングした。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、3−ウレイドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルウレアが、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率約97%で生成していた。
ライン66を開き、該反応液を、ライン66を経て貯槽606に移送した。
・工程(20−2):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示す装置を使用した。
段数40段の棚段式蒸留塔102に4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールを投入し、リボイラー105で4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂部の圧力は1.5kPaであり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は230℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、工程(20−1)で得られた反応液と同じ組成の混合液を約1.9kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液(尿素濃度約5重量%)を約1.6kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、工程(20−1)で得られた反応液を約1.9kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−((4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルを含む溶液であり、該3−((4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約95%であった。
後述の比較例5の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:215℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(230℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[比較例5]
・工程(L−1)
ライン2より尿素と4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例20の工程(20−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−((4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルを含有し、該3−((4−(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ)カルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約48%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートを約30質量%含有していた。ジ(4−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−5,5’−(カルボニルビス(アザンジイル)ビス(メチレン))ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−5,1−ジイル)ジカルバメートに含有される尿素結合の熱解離温度は215℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。さらに、該蒸留塔において、該尿素結合の熱解離温度(215℃)未満の3段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素が検出されなかった。
[実施例21]
・工程(21−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器を使用した。
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)3.5kg(16.6モル)と4−ヘプチルフェノール62.1kg(323モル)と尿素3.8kg(63.3モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102を加熱し、塔頂部の圧力を約3kPaとした。この時、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は、250℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約2.1kg/Hrで導入し、ライン2より尿素と4−ヘプチルフェノールとの混合溶液(尿素濃度約3.8重量%)を約1.6kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン1より原料溶液を約2.8kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約150℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)を含み、該4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約90%であった。
後述の参考例8の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−ヘプチルフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(250℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例8]
・工程(M−1)
ライン2より尿素と4−ヘプチルフェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例21の工程(21−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)を含有し、該4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約55%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)を約19質量%含有していた。4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ヘプチルフェニル)エステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例22]
・工程(22−1):ウレイド基を有する化合物の製造
図6で表される装置を使用した。
ライン66を閉止した状態で、4−ノニルフェノール60.1kg(273モル)と尿素3.5kg(58.3モル)とを、120℃に加熱した貯槽601で混合し、該混合液を、120℃に加熱した攪拌槽603へ移送した。攪拌槽603において、該混合物を攪拌している状態で、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)2.8kgを、貯槽602よりライン62を経て、攪拌槽603に、約3.0kg/Hrの速度で供給した。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の供給が終了したのち、約4時間攪拌し、反応液をサンプリングした。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルウレア)が、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対して収率約99%で生成していた。
ライン66を開き、該反応液を、ライン66を経て貯槽606に移送した。
・工程(22−2):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示す装置を使用した。
段数40段の棚段式蒸留塔102に4−ノニルフェノールを投入し、リボイラー105で4−ノニルフェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂部の圧力は2.5kPaであり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は240℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、工程(26−1)で得られた反応液と同じ組成の混合液を約1.9kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と4−ノニルフェノールとの混合液(尿素濃度約4.2重量%)を約1.2kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、工程(22−1)で得られた反応液を約1.9kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)を含む溶液であり、該4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約92%であった。
後述の参考例9の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−ヘプチルフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(240℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例9]
・工程(N−1)
ライン2より尿素と4−ノニルフェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例22の工程(22−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)を含有し、該4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)の、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に対する収率は約52%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)を約19質量%含有していた。4,4’−(4,4’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ビス(メチレン))ビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例23]
・工程(23−1):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示すような反応器を使用した。
2,4−トルエンジアミン1.6kg(13.1モル)と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール37.8kg(184モル)と尿素2.8kg(46.7モル)とを混合し原料溶液を調製した。段数40段の棚段式蒸留塔102を加熱し、塔頂部の圧力を約6kPaとした。この時、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は、250℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、原料溶液と同じ組成の混合液を約1.7kg/Hrで導入し、ライン2より尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶液(尿素濃度約5重量%)を約1.3kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、ライン1より原料溶液を約1.7kg/Hrで導入し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約150℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含み、該5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約90%であった。
後述の比較例6の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(240℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[比較例6]
・工程(P−1)
ライン2より尿素と4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例23の工程(23−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を含有し、該4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約38%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)を約15質量%含有していた。5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)エステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は210℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。さらに、該蒸留塔において、該尿素結合の熱解離温度(210℃)未満の3段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素が検出されなかった。
[実施例24]
・工程(24−1):ウレイド基を有する化合物の製造
図6で表される装置を使用した。
ライン66を閉止した状態で、4−ノニルフェノール45.2kg(205モル)と尿素3.3kg(55.0モル)とを、120℃に加熱した貯槽601で混合し、該混合液を、120℃に加熱した攪拌槽603へ移送した。攪拌槽603において、該混合物を攪拌している状態で、2,4−トルエンジアミン1.4kgを、貯槽602よりライン62を経て、攪拌槽603に、約2.5kg/Hrの速度で供給した。4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の供給が終了したのち、約4時間攪拌し、反応液をサンプリングした。該反応液を液体クロマトグラフィーで分析した結果、2,4−トルエンジウレアが、2,4−トルエンジアミンに対して収率約98%で生成していた。
ライン66を開き、該反応液を、ライン66を経て貯槽606に移送した。
・工程(24−2):N−置換カルバミン酸エステルの製造
図1に示す装置を使用した。
段数40段の棚段式蒸留塔102に4−ノニルフェノールを投入し、リボイラー105で4−ノニルフェノールを炊き上げて全還流状態とした。この時、塔頂部の圧力は2.5kPaであり、ライン2が具備する15段目(塔頂側から数える)の温度は250℃であった。該蒸留塔102の最上段(1段目)に具備したライン1より、工程(28−1)で得られた反応液と同じ組成の混合液を約2.0kg/Hrで導入し、同時に、ライン2より、尿素と4−ノニルフェノールとの混合液(尿素濃度約4.2重量%)を約1.1kg/Hrでフィードした。運転条件が安定したのち、工程(28−1)で得られた反応液を約2.0kg/Hrでライン1より供給し、反応液を、蒸留塔102の最底部に具備したライン6を経由して貯槽105に回収した。蒸留塔102の最上部に具備したライン3より気相成分を回収し、約85℃に保持された凝縮器103で凝縮して得られる成分を貯槽104に回収した。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)を含む溶液であり、該5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約89%であった。
後述の参考例10の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:210℃)が生成したと推定される。当該実施例では、上述のとおり、尿素と4−ノニルフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(250℃)の加熱下で、尿素と反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成した。そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
[参考例10]
・工程(Q−1)
ライン2より尿素と4−ノニルフェノールとの混合溶液をフィードしなかった以外は実施例24の工程(24−2)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)を含有し、該4−メチル−1,3−フェニレンジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)の、2,4−トルエンジアミンに対する収率は約38%であった。また、該反応液は、尿素結合を有する化合物として、5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニル)フェニル)エステル)を約15質量%含有していた。5,5’−カルボニルビス(アザンジイル)ビス(2−メチル−5,1−フェニレン)ジ(カルバミン酸(4−ノニルフェニル)エステル)に含有される尿素結合の熱解離温度は207℃であった。
また、定常運転時に、該蒸留塔の15段目に具備したサンプリング口から反応液を採取して分析したところ、尿素は検出されなかった。
[実施例25]
・工程(25−1)
ライン2より、カルバミン酸フェニルとフェノールとの混合液(カルバミン酸フェニル濃度約30重量%)を約2.7kg/Hrでフィードした以外は、参考例2の工程(B−1)と同様の方法をおこなった。
貯槽105に回収した反応液を、液体クロマトグラフィーおよび1H−NMRで分析したところ、該反応液は、3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルを含む溶液であり、該3−(フェノキシカルボニルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンに対する収率は約91%であった。
また、上述の参考例2の結果から、当該工程のN−置換カルバミン酸エステルの製造において、尿素結合を有する化合物(該尿素結合の熱解離温度:206℃)が生成したと推定される。当該実施例では、カルバミン酸フェニルとフェノールとの混合液を供給する15段目において、該尿素結合を有する化合物は、該尿素結合の熱解離温度以上(230℃)の加熱下で、カルバミン酸フェニルと反応してN−置換カルバミン酸エステルが生成し、そのため、収率良くN−置換カルバミン酸エステルが得られたと考えられる。
本出願は、2011年2月21日出願の日本特許出願(特願2011−035184号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。