JP6711029B2 - α−オレフィン低重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、ポリマーの存在するプロセスライン内の反応液の温度をポリマーの付着・析出が発生しない温度範囲で運転する方法が開示されている。
特許文献3には、α−オレフィン低重合反応用機器に付着したポリマーを効率よく除去するために、原料α−オレフィンの分圧を低重合反応時の分圧よりも低い圧力の雰囲気下で溶媒に溶解させることが開示されている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものである。すなわち本発明の課題は、運転停止工程において、溶媒に溶融した高濃度ポリマーの析出抑制方法を提供することであり、溶媒に溶融した高濃度ポリマーが温度低下等により析出したとしても、α−オレフィン低重合体製造装置内で、前記ポリマーによる装置の閉塞を抑制する方法を提供することである。
また、本発明の別の課題は、簡便で効率的な反応器及び/又は熱交換器の洗浄方法の提供である。
[1] 触媒及び溶媒の存在下、原料であるα−オレフィンを反応器に供給して低重合反応させ、目的生成物であるα−オレフィン低重合体を含有する反応生成物を供給液として蒸留塔に供給して精製する製造運転工程と、前記反応器への前記触媒の供給を停止し、前記溶媒を供給液として前記反応器と前記蒸留塔との間を循環させる運転停止工程とを有するα−オレフィン低重合体の製造方法であって、
前記運転停止工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置を、前記製造運転工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置より下部の位置にするα−オレフィン低重合体の製造方法。
[2] 前記運転停止工程において、前記反応器への前記触媒の供給を停止した後、前記蒸留塔への前記供給液の供給位置を、前記製造運転工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置より下部の位置に変更する前記[1]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[3] 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液において、溶媒に対する分子量10万以上のポリマー濃度が100重量ppm以上である前記[1]又は[2]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[4] 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液の供給位置における前記蒸留塔内の温度が110℃以上である前記[1]から[3]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[5] 前記運転停止工程が、前記反応器の気相部のα−オレフィン分圧を少なくとも2段階で降下させることを含む前記[1]から[4]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[6] 前記運転停止工程が、前記反応器及び反応熱を除熱するための熱交換器の少なくともいずれか一方の洗浄をすることを含む前記[1]から[5]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[7] 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液の供給位置が、前記蒸留塔の底部である前記[1]から[6]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[8] 前記蒸留塔が高沸物分離塔である前記[1]から[7]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[9] 更にα−オレフィン分離塔及び生成物分離塔を備える前記[8]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[10] 前記製造運転工程において前記高沸物分離塔の塔底部から高沸物タンクに抜き
出された高沸点成分を、前記運転停止工程における前記供給液として前記高沸物分離塔の塔底部に供給して循環させる前記[8]又は[9]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[11] 原料である前記α−オレフィンがエチレンであり、目的生成物である前記α−オレフィン低重合体が炭素数4〜10のα−オレフィンである前記[1]から[10]のいずれか1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[12] α−オレフィン低重合体、溶媒及びポリマーを含む溶液から前記α−オレフィン低重合体と前記ポリマーとを分離する装置であって、前記溶液の供給口を上下に2以上有する装置。
[13] 前記供給口のうち最上部の供給口である塔頂に近い方の供給口の位置がトレイ又は充填物の最下端より上であり、前記供給口のうち最下部の供給口である塔底に近い方の供給口の位置がトレイ又は充填物の最下端より下である前記[12]に記載の装置。
[14] 前記α−オレフィン低重合体がエチレンの重合物であり、かつ炭素数4〜10のα−オレフィンである前記[12]又は[13]に記載の装置。
本発明に係るα−オレフィン低重合体の製造方法では、製造運転工程と運転停止工程とを有する。
製造運転工程とは、触媒及び溶媒の存在下、原料であるα−オレフィンを反応器に供給して低重合反応させ、目的生成物であるα−オレフィン低重合体を含有する反応生成物を供給液として蒸留塔に供給して精製する工程である。
本発明の製造運転工程は、目的生成物であるα−オレフィン低重合体を連続的に製造する工程であり、以下に説明する化合物、装置、手段、操作、条件等を包含する。
本発明において、原料であるα−オレフィン(以下単に「α−オレフィン」、「原料α−オレフィン」又は「モノマーであるα−オレフィン」と称することがある。)は、炭素数2〜30の置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のα−オレフィンである。好ましくは、炭素数2〜6の置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のα−オレフィン、より好ましくは炭素数2〜6の非置換の直鎖のα−オレフィンである。
これらは、反応器の内部及び/又は反応熱を除熱するための熱交換器の内部に蓄積した付着物(主に反応により副生したポリマー)に対し貧溶媒となる。
エチレンを原料として用いる場合、エチレンの純品を使用してもよいが、エチレンの他にメタン、エタン、アセチレン、二酸化炭素等を含む原料混合物を使用することもできる。該原料混合物を使用する場合には、エチレン以外の成分の合計はエチレンに対して0.1mol%以下であることが好ましい。その他のα−オレフィンについても同様である。
本発明におけるα−オレフィン低重合体とは、モノマーであるα−オレフィンが数個結合したオリゴマーを意味する。具体的には、モノマーであるα−オレフィンが2個〜10個、好ましくは2個〜5個結合したオリゴマーのことである。従って、本発明におけるα−オレフィン低重合体をα−オレフィンオリゴマーと称することがある。また、同様に、α−オレフィンの低重合反応をα−オレフィンのオリゴマー化と称することがある。
エチレンを原料とした場合、目的生成物としては炭素数4〜10の置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のα−オレフィンが生成し、炭素数4〜10の無置換の直鎖のα−オレフィンが好ましい。具体的には、エチレンの二量体である1−ブテン、三量体である1−ヘキセン、四量体である1−オクテン、五量体である1−デセン等が挙げられ、1−ヘキセンがより好ましい。目的生成物が1−ヘキセンである場合、生成物の混合物中、1−ヘキセンの含有率は90重量%以上が好ましい。
1−ブテンを原料とした場合、目的生成物としては1−ブテンの二量体であるオクテン類が生成する。
本発明の触媒とは、α−オレフィンをオリゴマー化反応させ、α−オレフィンオリゴマーを生成できる触媒であれば、特に限定されず、公知の通常用いられるものを使用することができる。通常は、均一系触媒を使用することができる。均一系触媒としては、触媒成分として遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び窒素含有化合物を含むものが好ましい。
以下、本発明の触媒の好適な実施態様を詳述するがこれらに限定されることはない。
本発明の遷移金属含有化合物の遷移金属とは、周期表第3〜11族の元素をいう。これらのうち、周期表第4〜6族の遷移金属が好ましい。具体的には、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウム、タンタルがより好ましい。これらの遷移金属は1種でも2種以上組み合わせて用いてもよい。更に好ましくは、クロム又はチタンであり、最も好ましくは、クロムである。
MeZn (1)
(式中、Meは遷移金属元素を示し、Zは任意の有機基又は無機基もしくは陰性原子を示し、nは1から6の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。nは2以上が好ましく、その場合、Zは同一又は相互に異なっていてもよい。
有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の各種の基が挙げられる。具体的には、カルボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケトナート基、β−
ケトカルボキシル基、β−ケトエステル基、アミド基等が挙げられる。無機基としては、硝酸基、硫酸基等の金属塩形成基が挙げられる。陰性原子としては、酸素、ハロゲン等が挙げられる。なお、ハロゲンが含まれる遷移金属含有化合物は、後述するハロゲン含有化合物には含まれない。
これらの遷移金属含有化合物の中でも、クロム含有化合物が好ましく、クロム含有化合物の中でも、特に好ましくは、クロム(III)2−エチルヘキサノエートである。
本発明のアルミニウム含有化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルキルアルミニウム化合物、又は水素化アルキルアルミニウム化合物等などが挙げられる。
トリアルキルアルミニウム化合物としては、炭素数1〜8のアルキル基を有し、該アルキル基は同一でも異なっていてもよい。例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。
水素化アルキルアルミニウム化合物は炭素数1〜8のアルキル基及び水素を有するものであり、具体例としては、ジエチルアルミニウムヒドリド等が挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、中でもトリエチルアルミ
ニウムが更に好ましい。これらの化合物は、単一の化合物を使用しても、複数の化合物を混合して用いてもよい。
本発明の窒素含有化合物としては、アミン化合物、アミド化合物又はイミド化合物等が挙げられる。
アミン化合物としては、例えばピロール化合物が挙げられ、具体例としては、ピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2−メチル−5−エチルピロール、2,5−ジメチル−3−エチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、2−メチル−4−イソプロピルピロール、2,5−ジエチルピロール、2,5−ジベンジルピロール、2,5−ジイソプロピルピロール、2つのピロール環が置換基を介して結合したジピロール等のピロール又はこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、金属ピロライド誘導体が挙げられ、具体例としては、例えば、ジエチルアルミニウムピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、ジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)、エチルアルミニウムビス(2,5−ジメチルピロライド)、アルミニウムトリス(2,5−ジメチルピロライド)等のアルミニウムピロライド類、ナトリウムピロライド、ナトリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のナトリウムピロライド類、リチウムピロライド、リチウム(2,5−ジメチルピロライド)等のリチウムピロライド類、カリウムピロライド、カリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のカリウムピロライド類が挙げられる。なお、アルミニウムピロライド類は、上述のアルミニウム含有化合物には含まれない。又はハロゲンを含有するピロール化合物は、下述のハロゲン含有化合物には含まれない。
イミド化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、2,4,6−ピペリジントリオン、ペルヒドロアゼシン−2,10−ジオン又はこれらと周期律表の1、2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。スルホンアミド類およびスルホンイミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−メチルトリフルオロメチルスルホンアミド、又はこれらと周期律表の1〜2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。これらの化合物は単一の化合物で使用しても、複数の化合物で使用しても良い。
また、本発明で均一系触媒を使用する場合、上述の遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び窒素含有化合物の3つの成分に加えて、更にハロゲン含有化合物を含むことがより好ましい。
ンジルクロリド、4−イソプロピルベンジルクロリド、4−tert−ブチルベンジルクロリド、4−ビニルベンジルクロリド、α−エチル−4−メチルベンジルクロリド、α,α’−ジクロロ−o−キシレン、α,α’−ジクロロ−m−キシレン、α,α’−ジクロロ−p−キシレン、2,4−ジメチルベンジルクロリド、2,5−ジメチルベンジルクロリド、2,6−ジメチルベンジルクロリド、3,4−ジメチルベンジルクロリド、2,3,5,6−テトラメチルベンジルクロリド、1−(クロロメチル)ナフタレン、1−(クロロメチル)−2−メチルナフタレン、1,4−ビス−クロロメチル−2,3−ジメチルナフタレン、1,8−ビス−クロロメチル−2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルナフタレン、9−(クロロメチル)アントラセン、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、7−(クロロメチル)ベンズアントラセン、7−クロロメチル−12−メチルベンズアントラセン、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,3−トリクロロシクロプロパン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン、1,4−ビス(トリクロロメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン等が挙げられる。
本発明において、低重合(オリゴマー化)反応に用いられる触媒が、上述の遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び窒素含有化合物を含む3成分の触媒又はハロゲン含有化合物を更に含む4成分の触媒である場合、遷移金属含有化合物とアルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様で、原料α−オレフィンと触媒とを接触させるのが好ましい。このような接触態様により、選択的に原料α−オレフィンの低重合(オリゴマー化)反応を行うことができ、原料α−オレフィンのオリゴマーを高収率で得ることができる。なお、本発明において、「遷移金属含有化合物と、アルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様」とは、反応の開始時だけでなく、その後原料α−オレフィン及び各触媒成分を反応器へ追加供給する際においても上記の態様が維持されることを意味する。
例えば、遷移金属含有化合物とアルキルアルミニウム化合物とを接触させた場合、遷移金属含有化合物に配位している配位子とアルキルアルミニウム化合物中のアルキル基との間で配位子交換反応が進行し、不安定になると考えられる。そのため、アルキル−遷移金属含有化合物の分解還元反応が優先して進行し、その結果、α−オレフィンの低重合反応に不適当なメタル化が起こり、α−オレフィンの低重合反応の活性が低下する。
方法などによって行われる。そして、上記の各溶液は、通常、反応に使用される溶媒を使用して調製される。
本発明の溶媒としては、特に限定されないが、飽和炭化水素が好適に使用され、好ましくは、例えば、ブタン、ペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の炭素数4〜20の鎖状飽和炭化水素又は炭素数4〜20の脂環式飽和炭化水素である。また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素や1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィンオリゴマーを溶媒として用いてもよい。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することもできる。
本発明において、触媒として均一系触媒を使用し、且つ上述の遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び窒素含有化合物を含む3成分の触媒又はハロゲン含有化合物を更に含む4成分の触媒である場合、各構成成分の比率は、通常、遷移金属含有化合物1モルに対し、アルミニウム含有化合物は1モル以上、好ましくは10モル以上、200モル以下、好ましくは150モル以下であり、窒素含有化合物は、1モル以上、50モル以下、好ましくは30モル以下である。ハロゲン含有化合物は、1モル以上、好ましくは3モル以上、60モル以下、好ましくは40モル以下である。
また、反応圧力としては、特に限定されないが、通常は常圧(0)〜25MPaG(ゲージ圧、以下同じ。)であり、好ましくは、0.5〜15MPaG、さらに好ましくは、1〜10MPaGの範囲である。原料α−オレフィンの分圧としては、特に限定されないが、通常は常圧〜23MPaGであり、好ましくは、0.4〜14MPaG、さらに好ましくは、0.9〜9.3MPaGの範囲である。
また、反応器内での滞留時間は、特に限定されないが、通常は1分〜10時間、好ましくは5分〜3時間、更に好ましくは10分〜1時間の範囲である。
反応形式は、回分式、半回分式又は連続式のいずれであってもよい。
以下に、α−オレフィンとしてエチレンを用い、α−オレフィン低重合体としてエチレンの三量体である1−ヘキセンへの低重合を例に挙げ、α−オレフィン低重合体の製造方法について説明するが、α−オレフィンとしてはエチレンに、α−オレフィン低重合体と
しては1−ヘキセンに各々限定されず、本発明の前記α−オレフィンを用いて、前記α−オレフィン低重合体を製造する場合にも以下の製造方法が適用しうる。
エチレン供給配管12aから圧縮機17及び第1供給配管12を介して、反応器10にエチレンが連続的に供給される。ここで、圧縮機17が、例えば、2段圧縮方式の場合、循環配管31上に1段目を、循環配管21,31、エチレン供給配管12a合流後に2段目を接続することにより、電気代の低減が可能である。
遷移金属含有化合物及び窒素含有化合物は、予め触媒槽(図示せず)で調製され、触媒供給配管13aを介して第2供給配管13から反応器10に供給される。
アルミニウム含有化合物は、通常、第3供給配管14から供給されるが、遷移金属含有化合物との接触後、反応器に供給されるまでの時間が数分以内となるのであれば、第2供給配管13を介して反応器10に供給してもよい。
各触媒成分の均一混合液を反応器10に供給できること、反応器10の撹拌動力を低減することを目的に第2供給配管13と反応器10の間にスタティックミキサー等を設置してもよい。
次に、エチレン分離塔30においてエチレンを溜出した後の、目的生成物であるα−オレフィン低重合体を含有する反応生成物(反応液ともいう。)は、エチレン分離塔30の塔底部から抜き出され、配管32により高沸物分離塔40に供給され精製される。本発明の蒸留塔としては、この高沸物分離塔40が好適に例示される。
高沸物分離塔40の塔頂部からの溜出物は、配管41により1−ヘキセン分離塔50に供給される。1−ヘキセン分離塔50では塔頂部の配管51から蒸留によって1−ヘキセンが溜出される。また、1−ヘキセン分離塔50の塔底部から溶媒循環配管52を介して溶媒であるn−ヘプタンが抜き出され、溶媒ドラム60をバイパスし、さらに、第2供給配管13を介して反応溶媒として反応器10に循環供給される。
高沸物とは、α−オレフィン低重合体のうち、目的生成物よりも高沸点のものであって、このうち、分子量1万以上のものをポリマーという。例えば、α−オレフィンがエチレンで、目的生成物が1−ヘキセンである場合、炭素数が6より多いα−オレフィン低重合体が高沸物であり、この場合はデセン類が主成分となる。
本発明の運転停止工程としては、反応器への触媒の供給を停止すること、蒸留塔と反応器との間に溶媒を供給液として供給し、循環させること、及び製造運転工程における蒸留塔への供給液の供給位置よりも下部の位置から蒸留塔へ供給液を供給することを含む。
ここで、反応器への触媒の供給とは、予め反応器外で触媒を形成させて反応器へ供給してもよく、反応器内で触媒の活性種を形成させてもよい。従って、反応器への触媒の供給を停止することとは、触媒の供給を停止することであってもよく、又は前記した触媒を形
成する化合物の供給を停止することであってもよい。
また、蒸留塔と反応器との間に溶媒を供給液として供給し循環させるとは、蒸留塔で反応生成物が分離された後の溶媒が供給、循環されることを意味する。
このような蒸留塔としては、α−オレフィン低重合体、溶媒及びポリマーを含む溶液からα−オレフィン低重合体とポリマーとを分離する装置が好ましく、前記製造運転工程においては高沸物分離塔が好ましい。このような蒸留塔は、前記溶液の供給口を上下に2以上、すなわち、塔頂に近い供給口と塔底に近い供給口とを有する装置である。
また、好適には、本発明の運転停止工程としては、反応器の気相部のα−オレフィン分圧を少なくとも2段階で降下させること、反応器及び/又は反応熱を除熱するための熱交換器の洗浄をすることを含む。
本発明では、反応器への触媒の供給を停止した後でも、運転停止工程における溶媒循環は継続する。溶媒循環の循環量の増減はあってもよい。
すなわち、α−オレフィンの低重合(オリゴマー化)反応により固形物が副生する。固形物は、ポリマーや反応器に供給された触媒の残渣などが含まれたものであり、これが溶媒に溶解できなくなったことにより析出するもので、反応器、熱交換器、蒸留塔等の製造設備の内壁に付着する。また、反応器に供給された触媒またはその残渣が、反応器の内壁部の固液の相境界に存在する液側境膜部に滞留することにより、ポリマーが反応器の内壁部で生成、成長することも考えられる。なお、製造設備の内壁に付着した固形物が成長し、あるいは析出した固形物が堆積すると、製造設備を閉塞することがある。
溶媒中のポリマー濃度が高くなると、蒸留塔(特に高沸物分離塔)に供給される液流量を制御するバルブを通過後に温度降下のため析出したポリマーにより蒸留塔のトレイ、ダウンカマー又は充填物等を閉塞させることがある。
また、蒸留塔への供給液中の分子量10万以上のポリマーの濃度が100重量ppm以上である場合に、析出するポリマーが多量となり配管閉塞のおそれといった前記問題が発生する可能性が高まることを本発明者は見出した。すなわち、分子量10万以上のポリマーを100重量ppm以上含む溶液が蒸留塔に供給されると、液流量を制御するバルブを通過後の蒸留塔の供給部で溶媒が圧力低下によりフラッシュし、温度が降下する際、ポリマーが流動撹拌条件下で析出することによって、サイズの大きなポリマーが析出し、蒸留塔がフラッディングすることがある。これは、塊状のポリマー堆積物が供給段のダウンカマー部に堆積することによって、供給段のダウンカマーから液が落下しにくくなるためと考えられる。サイズの大きなポリマーが析出する理由としては明らかではないが、流動又は撹拌条件下で分子量の大きいポリマーが一定濃度以上ある場合に、析出時に各ポリマー分子が互いに複雑に絡まり合うことで、紐状や塊状の大きなサイズになると考えられる。分子量10万未満のポリマーでは、分子鎖が短いためポリマー分子鎖同士が絡まりにくいと考えられる。
の上限は特に限定されることはないが、通常、反応温度の好ましい上限と一致してよい。
蒸留塔の底部とは、これら蒸留塔内に設置された複数の充填物又はトレイのうち最下端に存在する充填物又はトレイよりも下部の位置を意味する。
本発明の運転停止工程においては、蒸留塔への供給液の供給位置を製造運転工程のそれに比して下部とするが、この蒸留塔では、目的生成物が留出され、高沸物が缶出される。製造運転工程においては、缶出物は高沸物タンクに保管することが好ましく、運転停止工程においては、缶出物を該蒸留塔と該高沸物タンクとの間を循環させることが好ましい。運転停止工程において該蒸留塔に供給される供給液のポリマー濃度は高くなるので、当該供給液よりもポリマー濃度が低く、該蒸留塔塔底部よりもはるかに容量の大きい高沸物タンクの缶出物で希釈することになり、閉塞防止に貢献するからである。
本発明の運転停止工程において、製造設備の洗浄を実施することが好ましい。洗浄とは、反応器、反応器の付帯設備、反応熱を除熱するための熱交換器等のプロセス流体が通過する箇所、例えば内壁等に付着、堆積又は成長等した固形物を溶媒で溶解又は膨潤させて除去することであり、更には当該固形物をプロセス系内より排出することを含んでもよい。
α−オレフィンとしてエチレンを用い、α−オレフィンオリゴマーとしてエチレンの三量体である1−ヘキセンへの低重合(オリゴマー化)を例に挙げ、α−オレフィンオリゴマーの製造設備の洗浄方法について説明する。α−オレフィンとしてはエチレンに、α−
オレフィンオリゴマーとしては1−ヘキセンに各々限定されず、他のα−オレフィンを原料とし、あるいは他のα−オレフィンオリゴマーを製造する場合にも以下の洗浄方法が適用されうる。
洗浄時に使用する溶媒中の原料α−オレフィンの濃度は、溶媒に溶解するα−オレフィンの重量(kg/Hr)を溶媒量(kg/Hr)で除して、百分率で表したものを意味する。この濃度として、好ましくは0〜16wt%、さらに好ましくは1〜8wt%である。
(実施例1)
<製造工程の構成>
図1に製造フローを示した。エチレンを触媒存在下で低重合させる完全混合撹拌型の反応器10と、反応器10から抜き出された反応液から未反応エチレンガスを分離する脱ガス槽20と、脱ガス槽20から抜き出された反応液中のエチレンを溜出させるエチレン分離塔30と、エチレン分離塔30から抜き出された反応液中の高沸点成分を分離する高沸物分離塔40と、高沸物分離塔40の塔頂部から抜き出された反応液を蒸留し、1−ヘキセンを溜出させる1−ヘキセン分離塔50があり、脱ガス槽20及びコンデンサー16において分離された未反応エチレンを、圧縮機17を介して反応器10に循環させるライン21(循環配管)及び12(第1供給配管)があり、1−ヘキセン分離塔50において分離された溶媒を反応器10に循環させるライン52(溶媒循環配管)及び13(第2供給配管)が設けられている。
第1供給配管12からは、エチレン供給配管12aから新たに供給されるエチレンと共に、脱ガス槽20及びエチレン分離塔30から分離される未反応エチレンを、圧縮機17を介して反応器10に連続供給する。また、第2供給配管13から、1−ヘキセン分離塔50にて分離される回収n−ヘプタン溶媒を、溶媒ドラム60(0.1MPaG窒素シール)をバイパスさせ、流量25kg/Hrで反応器10に連続供給する。
rで供給し、第2供給配管13を介して反応器10に連続供給する。また、トリエチルアルミニウム(c)のn−ヘプタン溶液を、流量0.04L/Hrで、第3供給配管14から反応器10に連続供給する。さらに、ヘキサクロロエタン(d)のn−ヘプタン溶液を、流量0.02L/Hrで、第4供給配管15から反応器10に連続供給する。
尚、触媒は、反応器内の各成分のモル比が、(a):(b):(c):(d)=1:25:80:5となるように反応器10に連続供給する。
反応器10から連続的に抜き出される反応液は、失活剤供給配管11aから2−エチルヘキサノールがトリエチルアルミニウム(c)に対して3.3モル比で添加され、その後、順次、脱ガス槽20、エチレン分離塔30、配管32、高沸物分離塔40を経て、1−ヘキセン分離塔50にて処理される。
反応温度140℃、反応圧力7.0MPaGでエチレンの連続低重合反応を30日間行った。その後、反応器の液温度140℃、反応器内の圧力を最終的に3.0MPaGにして洗浄運転を行った。
反応器の触媒供給配管13a、第3供給配管14、第4供給配管15からの触媒(a)、(b)、(c)、(d)の供給を停止し、溶媒であるn−ヘプタンはそのまま25Kg/Hrで系内循環させた。
反応停止による反応器の温度低下を防ぐため、反応器の液温度が140℃になるように溶媒を配管13上に設けた熱交換器で加熱した。このとき、反応器内の圧力は7.0MPaGであった。
温度140℃のままで、約1時間かけ圧力を7.0MPaGから5.0MPaGに降下させた。5.0MPaG達した後、約10時間経過後にエチレン分離塔30の塔底部より液サンプル(1)を採取した。その後、温度140℃のまま、約1時間かけ圧力を5.0MPaGから3.0MPaGに降下させた。3.0MPaGに達した後、約10時間経過後に、エチレン分離塔30の塔底部より液サンプル(2)を採取した。この間、高沸物分離塔40にフラッディングの傾向はなく、安定に運転できた。
その後、系内循環を停止、各機器を停止させ、高沸物分離塔40を開放し、内部点検を実施したところ、供給段及びその他の段に塊状ポリマーの付着はなく、ファウリングは観測されなかった。結果を表−1に示す。
実施例1において、高沸物分離塔40への供給段の切り替えを実施せず、洗浄時の反応器の圧力を7.0MPaGのままとし、エチレン分離塔30の塔底部の液サンプルは触媒供給停止後、約20時間経過後のみサンプル(3)を採取した以外は、全て同様の方法で行った。高沸物分離塔40は、フラッディングの傾向を示し、開放点検の結果、供給段にファウリングが観測された。結果を表−1に示す。n−ヘプタン中の分子量10万以上のポリマー濃度を測定した結果、サンプル(3)は120重量ppmであった。
実施例1と同様の条件で、エチレンの連続低重合反応を70日間行い、そのときのエチレン分離塔30の塔底部のポリマー濃度を測定するため実施例1に記載の方法でサンプル(4)を採取した。高沸物分離塔40に、フラッディングの傾向はなく、開放点検の結果、供給段にファウリングもなかった。結果を表−1に示す。n−ヘプタン中の分子量10万以上のポリマー濃度を測定した結果、サンプル(4)は50重量ppmであった。結果を表−1に示す。
また、参考例1では高沸物分離塔40に供給されたポリマー濃度が100重量ppm以
下であるため、フラッディングが発生しないことがわかる。
実施例1と同様の条件で製造運転工程及び運転停止工程を実施した。反応器の液温度140℃、圧力3.0MPaGに達した8時間後、16時間後、32時間後、40時間後、56時間後に、エチレン分離塔30の塔底部より液を金属容器へ密閉サンプリングしポリマー濃度を測定し、一方で、塔底部0.5MPaGの液をバルブを介して大気圧下へフラッシュさせながら(すなわち、急冷及び撹拌条件で)ガラス容器にサンプリングを行い、析出したポリマーの形状を観察した。結果を表−2に示す。
α−オレフィンオリゴマーの製造設備において、反応器の内壁に付着していたポリマー0.3gを、1−デセン150gが入ったガラス製丸底フラスコに加え、160℃に昇温して完全に溶解させた。その後、室温にて静置冷却したところ、直径数mm以下の顆粒状ポリマーが溶液中に分散した状態で析出した。続いて、本ポリマーの分子量分布を実施例1と同様の方法で測定したところ、分子量10万以上のポリマー濃度は1590重量ppmであった。
以上より、供給液中の分子量10万以上のポリマー濃度が100重量ppmを超えると蒸留塔の液供給部でサイズの大きなポリマーが析出、付着し、蒸留塔をフラッディングさせる原因となるが、供給段を定常運転時(製造運転工程)よりも下の位置にすることで、サイズの大きなポリマーの析出によるフラッディングを防止できることが分かる。
10a 撹拌機
11,22,32,33,41,42,51 配管
11a 失活剤供給配管
12 第1供給配管
12a エチレン供給配管
13 第2供給配管
13a 触媒供給配管
14 第3供給配管
15 第4供給配管
21,31 循環配管
16 コンデンサー
17 圧縮機
20 脱ガス槽
30 エチレン分離塔
40 高沸物分離塔
50 1−ヘキセン分離塔
52 溶媒循環配管
60 溶媒ドラム
Claims (11)
- 反応器に触媒及び溶媒を供給し、該触媒及び溶媒の存在下、原料であるα−オレフィンを反応器に供給して低重合反応させ、目的生成物であるα−オレフィン低重合体を含有する反応生成物を供給液として蒸留塔に供給して精製する製造運転工程と、前記反応器への前記触媒の供給を停止し、前記溶媒を供給液として前記反応器と前記蒸留塔との間を循環させる運転停止工程とを有するα−オレフィン低重合体の製造方法であって、
前記運転停止工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置を、前記製造運転工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置より下部の位置にするα−オレフィン低重合体の製造方法。 - 前記運転停止工程において、前記反応器への前記触媒の供給を停止した後、前記蒸留塔への前記供給液の供給位置を、前記製造運転工程における前記蒸留塔への前記供給液の供給位置より下部の位置に変更する請求項1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液において、溶媒に対する分子量10万以上のポリマー濃度が100重量ppm以上である請求項1又は2に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液の供給位置における前記蒸留塔内の温度が110℃以上である請求項1から3のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記運転停止工程が、前記反応器の気相部のα−オレフィン分圧を少なくとも2段階で降下させることを含む請求項1から4のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記運転停止工程が、前記反応器及び反応熱を除熱するための熱交換器の少なくともいずれか一方の洗浄をすることを含む請求項1から5のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記運転停止工程における前記蒸留塔への供給液の供給位置が、前記蒸留塔の底部である請求項1から6のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記蒸留塔が高沸物分離塔である請求項1から7のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 更にα−オレフィン分離塔及び生成物分離塔を備える請求項8に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記製造運転工程において前記高沸物分離塔の塔底部から高沸物タンクに抜き出された高沸点成分を前記高沸物分離塔の塔底部に供給して循環させる請求項8又は9に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 原料である前記α−オレフィンがエチレンであり、目的生成物である前記α−オレフィン低重合体が炭素数4〜10のα−オレフィンである請求項1から10のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
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