JP5737000B2 - 多軸仮締め工具 - Google Patents
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Description
例えば、ハブに対してナットを用いてホイールを固定する作業において、ナットを締め付けるときには、まず作業者がナットを一つずつ手作業でハブに植設されたスタッドボルトに数山だけ螺合させておき、その後、トルクレンチ等の工具を用いて、所定のトルクでナットを本締めするのが一般的である。
尚、以後本説明では、ナット・ボルト等の螺合部材を、本締めの前に数山だけスタッドボルト・ナット等の被螺合部材に螺合させておくことを「仮締め」と呼ぶものとする。
尚、ここで言う「多軸仮締め工具」は、複数の螺合部材(ボルト・ナット等)を同時に「仮締め」する用途に適した工具であるが、その用途は螺合部材の仮締めに限定されるものではなく、例えば、トルク管理を行う必要性が低いような場合には、複数の螺合部材を同時に本締めする用途に用いることも可能であるし、あるいは、締結してある複数の螺合部材を同時に緩めるための用途に用いること等も可能である。
前記駆動歯車は多軸仮締め工具の本体部の中央に配置され、前記複数の従動歯車およびソケットは前記本体部における前記駆動歯車の周囲に配置されている。
このような構成により、駆動歯車に回転力を入力することによって、複数のソケットを同時に回転駆動することができ、複数のボルトまたはナット等を同時に仮締めすることが可能になる。
タッドボルトが、凸状の部位の周りを囲むように配置されているような場合には、多軸仮締め工具の本体部が凸状の部位と干渉してしまうことがあり、スタッドボルトの配置状態によっては、多軸仮締め工具を使用することができないという問題があった。
また、このような場合であっても、ソケットを凸状の部位の高さよりも長くすることによって、工具の本体部と凸状の部位との干渉を避けることが可能であるが、ソケットを長くすると、多軸仮締め工具の大型化を招くとともに、当該工具の取り扱いがしにくくなるという問題があった。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具の全体構成について、図1〜図7を用いて説明をする。
本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具は、図1(a)に示すような、リアアクスルのアッシー21を組み立てる作業において、デフキャリア(以下、ワーク20と呼ぶ)を組み付ける際に、アッシー21に備えられた複数の被螺合部材たるスタッドボルト21a・21a・・・(図1(a)(b)参照)に対して、複数の螺合部材(本実施形態では複数のナット22・22・・・)を「仮締め」するために用いられる工具である。
尚、本説明では、図3中に示す矢印Aの方向が鉛直上方であり、各スタッドボルト21a・21a・・・が、鉛直上向きに突設するようにアッシー21を配置する状態において、多軸仮締め工具1の各ソケット部3・3・・・の軸心方向を鉛直方向に向けつつ、各スタッドボルト21a・21a・・・と各ソケット部3・3・・・の各軸心を略一致させて、多軸仮締め工具1を使用する場合を例示して説明をする。
そして本体部2は、多軸仮締め工具1の使用状態において、本体部2の上側に配置される略リング状の部材である支持リング4(以下、上側支持リング4と呼ぶ)と、本体部2の下側に配置される略リング状の部材である支持リング5(以下、下側支持リング5と呼ぶ)を備えており、また、各支持リング4・5の間に介装されるリング状の部材である回転リング6を備えている。
そして、各支持リング4・5は、多軸仮締め工具1の使用状態において、それぞれ略水平に保持されており、その連結された各支持リング4・5の間に回転リング6を配置する構成としている。
尚、本実施形態において、各支持リング4・5および回転リング6は樹脂製としており、多軸仮締め工具1の剛性を確保しつつ、多軸仮締め工具1の軽量化を図っている。
また、本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具1では、下側支持リング5の上面に複数のボールローラー19・19・・・を配設しており、作業者が回転リング6を回転させる際に生じる下向きの応力を、各ボールローラー19・19で確実に受けることができるため、滑らかに回転リング6を回転させることができる構成としている。
作業者は、多軸仮締め工具1の使用状態において、ハンドル9・9を把持して、所望する回転方向にハンドル9・9を回動することによって、回転リング6を水平面内で回転させることができる。
位置決めストッパー10は、多軸仮締め工具1におけるワーク20に対する当接部となる部位であり、該位置決めストッパー10の本体部2からの突設高さに応じて、本体部2とワーク20との離間距離を一定に保持する役割を果たしている。
即ち、多軸仮締め工具1では、各位置決めストッパー10・10・・・によって、多軸仮締め工具1の使用状態における各スタッドボルト21a・21a・・・と各ソケット部3・3・・・の相対的な位置関係を一定に保持する構成としている。
また、ケース11の内径寸法は、係合部14の外径に略一致する(但し、係合部14がケース11内で回転可能かつ摺動可能な程度に、若干大きい)寸法としており、該ケース11の内周面で、係合部14の外周面を包囲して、係合部14を回転可能に支持するための軸受としての機能を果たしている。
これにより、回転軸12は、ケース11を介して、上側支持リング4および下側支持リング5(即ち、本体部2)によって、回転可能に支持される構成としている。
位置決め部18には、図6に示すような傾斜面18aが形成されており、位置決め部18の頂部における直径を、ナット22に形成されたナット孔22aに比して小さくし、かつ、位置決め部18の基底部における直径を、ナット22に形成されたナット孔22aと略同一としている。このように、位置決め部18は、下方へ行くに従って縮径するテーパ面となる傾斜面18aを有した円錐台形状に形成されている。
回転ローラ13は、図7に示すように、該回転ローラ13の上下において、各ナット25・25・・・で位置決めされた略円盤状のプレート17・17で挟圧されることによって、回転軸12の上端部12dにおける所定位置に配置される構成としている。
そして、多軸仮締め工具1では、ローラ面13aの傾斜角度θ2と、傾斜面6cの傾斜角度θ1を略一致させる構成としている。
これにより、回転リング6を下方に押圧しながら回転させた際に、下方への押圧力の傾斜面6cに直交する方向への分力によって、傾斜面6cをローラ面13aに密着させる方向への力を生じさせることができるため、回転リング6に入力した回転力が、伝達ロスなく確実に回転ローラ13に伝達されるようにしている。
このような構成により、回転リング6に加えた操作力(回転力)を確実に回転ローラ13に伝達でき、簡易で操作性のよい多軸仮締め工具1を構成することができる。
このような構成により、リング形状を有する多軸仮締め工具1を、簡易な機構で構成することができる。
そして、係合部14の使用状態において下端に位置する面には、溝部14aが形成されており、該溝部14aにおいて、ナット22を係合する構成としている。
そして、ナット22が当該溝部14aに嵌りこみやすく、かつ、一旦嵌り込んだ後には係合状態を確実に保持できる寸法を選択するようにしている。
即ち、係合部14は、溝部14aにナット22が嵌り込んだ状態で、回転軸12を中心に該係合部14が回転することによって、ナット22に対して回転力を付与することができる。
そして、磁石15によって、係合部14を磁着することによって、磁性体たる係合部14を磁化させることができ、これにより、係合部14に接触するナット22を、該係合部14によって磁着することができる。尚、係合部14による磁着力は、該係合部14の厚みを変更することによって調整することが可能である。
このような構成により、ナット22を確実に保持することができる。
スプリング16は、定常長さに比して短縮された状態で、ケース11と磁石15によって区切られた空間に挿入されており、磁石15および係合部14に対して、常に多軸仮締め工具1の使用状態における下向きの弾性力を付勢することができる構成としている。
これにより、多軸仮締め工具1の使用状態において、係合部14の溝部14aに嵌り込んだナット22を、該係合部14によって常に下向きに押圧することができる。
本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具1(図2参照)は、略円形のリング状である本体部2を備えており、被螺合部材たる複数のスタッドボルト21a・21a・・・がリング形状に沿って略円形に配置されるアッシー21に対して、複数のナット22・22・・・を同時に仮締めするのに適している。
そこでここでは、本発明に係る多軸仮締め工具であって、被螺合部材たるスタッドボルトが略矩形状に配置される場合に対応可能な多軸仮締め工具の態様について、説明をする。
即ち、本発明に係る多軸仮締め工具は、多軸仮締め工具1(図2参照)のように、略円形であるリング状の本体部2を備えるものだけでなく、例えば、図8に示すように、略矩形であるリング状の本体部32を有する多軸仮締め工具31のような態様とすることも可能である。
多軸仮締め工具31では、ハンドル39・39を把持して、作業者が回転リング36を水平面内において回転させることによって、回転リング36の傾斜面36cに配設されたゴムリング38と摩擦接触している各回転ローラ43・43・・・を回転させることができる。
さらに、各回転ローラ43・43・・・を回転させることによって、各回転ローラ43・43・・・に接する従動ローラ44・44に接している各回転ローラ45・45も回転させることができる。
尚、多軸仮締め工具31では、ゴムリング38の回転をより安定させるために、各回転
ローラ43・43や各回転ローラ45・45にゴムリング38を押し付けるためのローラ
部材であるバックアップローラ46・46・・・を備える構成としている。
これにより、各ソケット部33・33・・・が備える各係合部(図示せず)が各回転軸42・42・・・の回転に伴って回転される構成としている。
このような構成とすれば、各ソケット部を略円形でない配置とした場合であっても、回転リング36の回転によって、各ソケット部33・33・・・が備える各係合部(図示せず)を回転駆動することができ、多軸仮締め工具31によって、被螺合部材たるスタッドボルトが略矩形状に配置されるようなアッシーに対応することができる。
アッシー21におけるワーク20の組み付け作業において、多軸仮締め工具1を使用してスタッドボルト21aにナット22を仮締めする場合には、まず始めに、各ソケット部3・3・・・に、ナット22・22・・・を装填しておく。
まず、各ソケット部3・3・・・の配置に対応する略円形の位置にワッシャ23・23・・・を配置しておき、その後各ソケット部3・3・・・が各ワッシャ23・23・・・の直上に位置するように多軸仮締め工具1を配置する。
このとき多軸仮締め工具1は、アッシー21に設けられた各スタッドボルト21a・21a・・・の直上に、各ソケット部3・3・・・が位置するように配置する。
またこのとき、多軸仮締め工具1は、位置決めストッパー10・10・・・の各当接部10a・10a・・・をワーク20の所定位置(例えば、部位αや部位β等)に沿わせることによって、ワーク20に対して、容易に精度良く位置決めが成される(図1および図3参照)。
このような構成により、締め付け対象部位となるスタッドボルト21a・21a・・・が、凸状の部位(凸部20a)の周囲に配置されるような場合であっても、多軸仮締め工具1を適用することができる。
このとき、ナット22は、係合部14の溝部14aに嵌り込むこともあるし、あるいは、図10(a)(b)に示すように、溝部14aに嵌り込まずに、位置決め部18に乗り上げた状態となる場合もある。
回転リング6を回転させると、図11(a)(b)に示すように、回転リング6の内側に形成された傾斜面6cに設けたゴムリング8が回転する。このとき、各回転ローラ13・13・・・は、ゴムリング8と接触しているため、ゴムリング8の回転に応じて、各回転ローラ13・13・・・が、各回転軸12・12・・・を軸心として回転される。
また、例えば、水平面内で左回り(反時計回り)となるように回転リング6(ゴムリング8)を回転させると、複数の回転ローラ13・13・・・は、同時に左回り(反時計回り)に回転される。このとき、回転軸12の下端部12eに設けられた係合部14も同時に左回りに回転される。
さらにこのとき、溝部14aに嵌り込んだナット22のナット孔22aには、溝部14aから突設された位置決め部18が嵌り込むため、ナット22と係合部14の各軸心が略一致する位置にナット22の配置が修正される。
このように、締め込み方向と逆向きの回転方向に一旦各係合部14・14・・・を回動させることによって、ナット22の姿勢および配置を、スタッドボルト21aに対して確実に螺合させることのできる姿勢および配置に修正することができる。
ここで、ナット22をスタッドボルト21aに螺合させるためには、ナット22を時計回りに回転させる必要があるため、ナット22を仮締めするときには、回転リング6を時計回りに回転させる。
これにより、図14に示すように、係合部14の溝部14aに係合しているナット22に回転力が付与され、該ナット22が時計回りに回転してスタッドボルト21aに対して螺合される。
またこのとき、ワッシャ23は、ナット22により押圧され、凹部11fから脱落し、スタッドボルト21aに供給される。
そして、さらに螺合が進行すると、やがて、ナット22は、図16に示すように、位置決め部18に係合しない位置までスタッドボルト21aに螺合される。
これにより、多軸仮締め工具1をワーク20から引き離す際には、磁石15の磁着力が及ばないため、引き離しに要する力を軽減することができる。
このような構成により、仮締め後に、ワーク20から当該多軸仮締め工具1を引き離すときに要する操作力を軽減することができる。
2 本体部
3 ソケット部
4 上側支持リング
5 下側支持リング
6 回転リング
13 回転ローラ
14 係合部
14a 溝部
15 磁石
18 位置決め部
20 ワーク
21a スタッドボルト(被螺合部材)
22 ナット(螺合部材)
Claims (5)
- 工具本体と、
前記工具本体に配置される複数のソケットと、
を備え、
前記工具本体を回転させることにより、前記複数のソケットを回転駆動して、
前記複数のソケットに係合した複数の螺合部材に対して同時に回転力を付与するための工具たる多軸仮締め工具であって、
前記工具本体を、
リング状に形成するとともに、
前記複数のソケットを、
前記工具本体に沿ってリング状に配置して、
前記複数のソケットに対して、前記工具本体から直接回転力を付与する、
ことを特徴とする多軸仮締め工具。 - 前記ソケットは、
前記工具本体から回転力が入力される部位であるローラ部と、
該ローラ部を支持するための回転軸と、
磁性体からなり、前記回転軸の一端部に支持される前記螺合部材と係合する係合部と、
該係合部に隣接して配置される磁着力を有する磁石と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の多軸仮締め工具。 - 前記ソケットは、
前記回転軸の一端部に形成され前記係合部から突出する、前記螺合部材を位置決めするための非磁性体からなる位置決め部を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の多軸仮締め工具。 - 前記工具本体は、
前記回転軸を回転可能に支持するための支持リングと、
前記支持リングによって回転可能に支持される回転リングと、
を備え、
前記ローラ部が前記回転リングに連結した状態で前記回転軸を回転可能に支持し、
前記回転リングの回転を前記ローラ部に伝達して、前記回転軸を回転させる、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の多軸仮締め工具。 - 前記回転リングの前記ローラ部と連結する面は、
前記回転リングの軸心方向に対して傾斜して形成され、
前記ローラ部の前記回転リングと連結する面は、
前記ローラ部の軸心方向に対して傾斜して形成され、
前記ローラ部の前記回転リングと連結する面の傾斜角度は、
前記回転リングの前記ローラ部と連結する面の傾斜角度と略同一の角度とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の多軸仮締め工具。
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