JP4335508B2 - 被締結部品とソケットとの接触構造ならびに自動締結装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、六角ボルトまたは六角ナット等の被締結部品をソケットに嵌合させて締結する際に好適な被締結部品とソケットとの接触構造ならびに自動締結装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平8−229835号公報
【非特許文献1】
日本工業規格 B1180
【非特許文献2】
日本工業規格 B1181
駆動部の周縁にテーパ状の面取り部を有し、ソケットを利用して締結される被締結部品としては、従来から前掲の非特許文献1に示される六角ボルト(以下、ボルトと略記する)や非特許文献2に示される六角ナット(以下、ナットと略記する)等の多角形駆動部を有するものが知られている。これらボルトおよびナットの多角形駆動部周縁の面取り部は、一般に水平面から15°〜30°傾斜して形成される。また、駆動部の周縁にテーパ状の面取り部を有し、ソケットを用いて締結される被締結部品としては、その他にも四角ボルト、四角ナット、トルクス形状の頭部を有するボルト・ねじが知られているところである。なお、ここで用いた「トルクス」は、アメリカ合衆国ロードアイランド州法人テクストロン社が保有する登録商標である。
【0003】
一方、前記ボルトまたはナットをワークに締結する場合に用いられるソケットとしては、前掲の特許文献1に図示されるようなソケットが用いられる。図7に示すように、従来のソケット100は、前記ボルトまたはナットの六角形の駆動部に合致嵌合可能な六角穴部101を有するものであり、この六角穴部101の開口端部には面取り101aが施され、ボルトまたはナットの駆動部を六角穴部101内に導入し易くしてある。なお、上述の四角ボルト、四角ナットに対応するソケット(図示せず)については、前記六角穴部101が四角形状に構成され、またトルクス形状の頭部を有するボルト・ねじに対応するソケット(図示せず)については、トルクス形状に構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のソケット100を用いてボルト、ナット等の被締結部品をワークに締結しようとする場合、ボルトを例に挙げて説明すると、ソケット100とボルト50とを嵌め合わせる段階において、特にソケット100が自動締結装置に備え付けられている場合には、図8(a)に示すように、六角穴部101とボルト50の多角形駆動部(頭部51)との位相が合わず、図8(b)に示すように、ソケット100がボルト50の頭部に載った状態となることが多い。
【0005】
自動締結装置においては、モータの駆動をソケット100に伝達し、これを回転させながら被締結部品に到達させ、六角穴部101に被締結部品の多角形駆動部を合致嵌合させることで駆動伝達を行って被締結部品のワークへの締結を行う。しかし、前述のように両者の位相が合わずに接触した場合、図8(b)に示すように、六角穴部101開口端の面取り101a部分が丁度ボルト頭部51の面取り部51aに合致し、くさび効果を生じて固着してしまう。この結果、そのままソケット100の回転がボルト50に伝達され、六角穴部101と頭部51とが合致嵌合しない状態で共回りし、ボルト50が螺入されてしまう問題が発生していた。
【0006】
最近の自動締結装置については、ソケット100の締結動作にともなう原位置からの移動量を検出し、これに応じて被締結部品を押圧する所謂推力、あるいはソケット100の回転速度、駆動トルク等を制御することにより、被締結部品の高精度な締結を実現するものが開発され、市場に普及しつつある。しかし、前述のようにソケット100とボルト50とが正しく嵌合していない状態で共回りし、ボルト50がワークに締付けられてしまうと、ソケット100の移動量とボルト50のねじ込み量とが一致しなくなり、誤った制御が行われてしまう等の問題が発生していた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、駆動部の周縁に面取り部を有する被締結部品と、この被締結部品をワークに締結するために用いられるソケットとの接触構造であって、前記ソケットは、前記被締結部品の駆動部に合致係合可能な係合穴部を有し、この係合穴部の開口端部は段付き状に形成されるとともに、当該開口端部の底面は水平に形成され、当該係合穴部と前記被締結部品の駆動部とが位相が合致しない状態で接した場合に当該開口端部の内方の開口縁が前記駆動部の面取り部に対して全般に渡って断面視、点接触するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、回転駆動源の駆動を受けて回転しかつ駆動部を有する被締結部品に嵌合可能なソケットと、前記ソケットを昇降操作する昇降駆動源と、前記ソケットの昇降位置に応じてソケットから被締結部品に及ぼされる力を変更するよう前記回転駆動源または昇降駆動源を駆動制御する制御手段とを備えた自動締結装置であって、前記ソケットは、前記被締結部品の駆動部に合致係合可能な係合穴部を有し、この係合穴部の開口端部は段付き状に形成されるとともに、当該開口端部の底面は水平に形成され、当該係合穴部と前記被締結部品の駆動部とが位相が合致しない状態で接した場合に当該開口端部の内方の開口縁が前記駆動部の面取り部に対して全般に渡って断面視、点接触するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を二例説明する。まずは、第一の実施の形態として、被締結部品として六角形の頭部51を有する周知のボルト50を締結するための例を説明する。
【0010】
図2において、1はボルト締結用の自動締結装置であり、コラム2に配置されたACサーボモータ3(以下、単にモータ3という)と、このモータ3に連結されたボールねじ機構4と、このボールねじ機構4の作動を受けて昇降するドライバ台5と、このドライバ台5に設置されたドライバ6と、このドライバ6に伝達軸7を介して連結されたソケット8とを備える。
【0011】
前記ボールねじ機構4は、モータ3の駆動を受けて回転するねじ軸4aと、このねじ軸4aの螺旋溝に螺合し、ねじ軸4aの回転を受けて当該ねじ軸4aの軸方向に移動可能なナット部材4bとを備えて成るものであり、前記ドライバ台5はナット部材4bに一体に連結されている。なお、ドライバ台5はコラム2にはガイドシャフト2aが上下に渡されており、前記ドライバ台5を挿通案内するようになっている。これにより、ねじ軸4aの回転にともなってナット部材4bが共に回転してしまうようなロスをなくし、ねじ軸4aの回転にともなってドライバ台5の昇降動作が確実になされるようになっている。
【0012】
また、前記ドライバ6は、ACサーボモータ6a(以下、単にモータ6aという)の駆動を受けて回転する出力軸6bを有する。このドライバ6の出力軸6b、前記伝達軸7およびソケット8は直結的に連結されており、モータ3をトルク制御で駆動することにより、ソケット8からボルト50に及ぼされる押圧力を制御できるように構成されている。なお、モータ3には出力軸(図示せず)の回転にともなってパルス信号を発するエンコーダ3aが備えられており、このエンコーダ3aから発せられるパルス信号と前記ねじ軸4aのリードとに基づいて、本ボルト締結装置1の制御手段9において、ソケット8の原位置からの移動量が割り出せるように構成されている。
【0013】
前記ソケット8は、図1、図3(a)および同図(b)に示すように、ボルト50の六角形頭部51、すなわち被締結部品の駆動部に合致嵌合可能な係合穴部81を有する。この係合穴部81は、ソケット8の先端面82から僅かに入り込んだ横断面円形のガイド穴部81aと、このガイド穴部81aの奥に連続する横断面六角形の六角穴部81bとから成る。ガイド穴部81aは、ボルト頭部51の外接円よりも僅かに大きい直径で形成され、ボルト頭部51を係合穴部81内に導く役割を果たす。また、六角穴部81bは、ボルト頭部51よりも僅かに大きい形状を成し、ボルト頭部51に合致嵌合可能に構成されている。
【0014】
前記ガイド穴部81aの奥側底面と六角穴部81bの側壁開口端とは、90°の角度を成して連続するように構成されている。つまり、ガイド穴部81aの奥側底面は、六角穴部81bの側壁開口端に対して直角を成す平坦面に形成され、かつ係合穴部の開口端部に該当するガイド穴部81aの奥側底面と六角穴部81bの側壁開口端との連結部分には、テーパ様の面取り部が設けられていないのである。この構造により、ボルトの頭部51の位相と六角穴部81bの位相がずれた状態でソケット8がボルト頭部51に接した場合、ソケット8の係合穴部81の開口端部は、図1に示すように、断面視において、ボルトの頭部51周縁の面取り部51aに点接触する(係合穴部81の開口端全体として見た場合には、線接触である)。このようなボルト50とソケット8との接触構造により、従来見られたテーパ同士の喰い付き作用が生じない。
【0015】
上記ボルト締結装置により、ワークのねじ穴に僅かに螺合された状態にあるボルト50を締結する動作について紹介すると、まず、ボルト50上にソケット8が配置されるよう、ボルト締結装置をロボット等により移動・位置決めする。次に、モータ3が駆動してドライバ台5を下降させるとともに、モータ6aが駆動してソケット8を回転させる。これにより、ソケット8は回転しながらボルト50の頭部51に当接する。この時、ガイド穴部81aが存在するため、ボルト50は多少傾いていても確実にソケット8の係合穴部81内に取り込まれる。また、この時、係合穴部81の六角穴部81bとボルト頭部51との位相がずれた状態で接した場合、前述のように係合穴部81の開口端部(ガイド穴部81aと六角穴部81bとの連接部)とボルト頭部51周縁の面取り部51aとは断面視、点接触する。従って、接触部分の摩擦抵抗は極めて小さく、ソケット8の回転にともなってボルト50が共回りすることがない。つまり、係合穴部81とボルト頭部51との位相がずれて接しても、ソケット8の回転により、これらをすぐに合致嵌合させることが可能なのである。
【0016】
モータ3は、エンコーダ3aの出力信号等から得られるソケット8の移動量に応じ、制御手段により所定の出力トルクを発するようにトルク制御駆動される。これにより、ソケット8の移動量、すなわちボルト50のワークへのねじ込み量に応じてソケット8がボルト50に及ぼす押圧力が適正に変更され、高精度なボルト50の締結を実現することができる。このように押圧力を制御する場合、ボルト50のねじ込み量が押圧力変更位置を示す指標となるため、これを正確に得ることが極めて重要である。これについて、本ボルト締結装置1においては、ソケット8の係合穴部81とボルト頭51部とを確実に合致嵌合させられるので、ソケット8の移動量とボルト50のねじ込み量とを正確に一致させ、適正な押圧力制御を行うことができる。
【0017】
ボルト50の締結終期に至り、ボルト頭部51の座面がワークに接してソケット8に作用する負荷トルクが増大すると、これに比例してモータ6aの電流値が増大し、これが一定レベルに達すると、制御手段によりモータ3およびモータ6aが停止制御される。その後、モータ3が逆転駆動されることにより、ドライバ台5が上昇復帰し、ボルト50の締結を完了する。
【0018】
次に、本発明の第二の実施の形態として、被締結部品として外周形状が六角形状に形成された周知のナット60を締結するための例を紹介する。
【0019】
図4において、10はナット締結用の自動締結装置であり、伝達軸70およびソケット80以外は、上記ボルト締結装置1同様の構造で成る。このナット締結装置10において、伝達軸70の先端部には、図5に示すように、ばね71によりソケット80側に常時付勢されたガイドピン72が配置されており、このガイドピン72は、ソケット80の軸心に沿って係合穴部81に通ずるよう貫通形成されたガイド穴80aを通り、係合穴部81前方へ突出するよう構成されている。なお、ソケット80のその他の構成は、上記ソケット8と同様である。
【0020】
ナット60をワークに立設されたスタッド61に螺合する場合、キャッチャCに保持されたナット60をスタッド61上に位置決めするとともに、ナット締結装置10を移動・位置決めしてナット60およびスタッド61と同軸線上にソケット80を配置する。次に、モータ3およびモータ6aの駆動を受けてソケット80が回転しながら下降すると、ガイドピン72はキャッチャCに保持されたナット60のめねじ部を貫通してスタッド61上端部に接する。さらにソケット80が下降すると、ナット60はソケット80に押されてキャッチャCから離脱し、ガイドピン72に沿ってスタッド61上端まで落下する。この時ナット60は、スタッド61上端に傾いて載ることがほとんどである。また、ガイドピン72は、ソケット80の下降にともなって、ソケット80のガイド穴部81aないし伝達軸70内部に収容される。
【0021】
ソケット80が下降を続けて回転しながらナット60に接すると、図6に示すように、面取りが形成されていないガイド穴部81aと六角穴部81bとの連接境界部分により、スタッド61上で傾斜しているナットの姿勢を適正に矯正することができる。ちなみに、係合穴部81の開口端部に面取り部が形成されている場合には、当該面取り部がナット60の外形周縁部の面取り部60a、あるいはその他の面に合致して喰い付いてしまうことがあり、ナット60の姿勢を矯正することができない。
【0022】
係合穴部81の開口端部には面取り部が存在しないため、ナットの外形周縁部に設けられる面取り部と接した場合にテーパ同士の喰い付き作用が生じず、上述のボルト締結の場合と同様に、ソケット80とナット60との共回りを防いで係合穴部80aにナットを確実かつ容易に合致嵌合させることができる。この結果、ナット60の締結においても、ナットのスタッドへのねじ込み量に応じて、ソケット80がナット60に及ぼす押圧力の変更を正確に行うことが可能になる。
【0023】
なお、以上の説明においては、係合穴部が六角形状の六角穴部を有するソケットを紹介したが、係合穴部が四角穴、十二角穴を有するソケットに本発明の技術的思想を適用することによっても同様の効果を得ることができる。また、ガイド穴部81aをなくし、六角穴部がソケットの先端面82に直接開口するようにし、この開口端部の連接箇所を上述の通りとすることによっても、当初の目的は達成される。さらに、上記説明においては、係合穴部の開口端部に面取り部を設けない例を紹介したが、被締結部品の面取り部とは異なる角度の面取り部を設けても、当初の目的は達成される。一方、上記自動締結装置は、ソケットがボルトまたはナットに及ぼす押圧力を変更するよう構成されたものであるが、これ以外にも、例えば締付トルク、回転数等、ソケットからボルトまたはナットに及ぼされる力を変更するようモータ3あるいはモータ6aを駆動制御するように構成した自動締結装置においても得られる効果は同様である。
【0024】
【発明の効果】
本発明において、ソケットの係合穴部開口端部は、当該係合穴部と前記被締結部品の駆動部とが位相が合致しない状態で接した場合にその接触部位が前記駆動部周縁の面取り部に対して断面視、点接触するように形成されている。このため、ソケットの係合穴部と被締結部品の多角形駆動部とが位相がずれた状態で接した場合の喰い付きの発生を防止することができる。従って、ソケットを回転させながら下降させて被締結部品に到達させる自動締結装置での使用においては、係合穴部と多角形駆動部との位相関係が一致していなくても、両者を共回りさせずに速やかに合致嵌合させることができる。これにより、被締結部品締結時のねじ込み量をソケットの移動量から検出し、これに応じて押圧力制御、回転数制御あるいは締付トルク制御を行うような自動締結装置においても、ソケットの移動量と被締結部品のねじ込み量とを正確に一致させ、正しい制御を行うことが可能になる等の利点がある。また、ソケットと接する前段階で傾いてしまっている被締結部品を正しい姿勢に矯正することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る要部拡大一部切欠断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る自動締結装置の正面図である。
【図3】(a)は本発明の第一実施形態に係る自動締結装置の要部拡大一部切欠断面図であり、(b)はその底面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る自動締結装置の正面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る自動締結装置の要部拡大一部切欠断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る自動締結装置の動作説明図である。
【図7】(a)は従来のソケットの要部拡大一部切欠断面図であり、(b)は同ソケットを矢印Y方向から見た時の底面図である。
【図8】(a)および(b)ともに従来のソケットと被締結部品との接触構造の説明図である。
【符号の説明】
1 自動締結装置
2 コラム
2a ガイドシャフト
3 ACサーボモータ
3a エンコーダ
4 ボールねじ機構
4a ねじ軸
4b ナット部材
5 ドライバ台
6 ドライバ
6a ACサーボモータ
6b 出力軸
7 伝達軸
8 ソケット
81 係合穴部
81a ガイド穴部
81b 六角穴部
82 先端面
9 制御手段
10 自動締結装置
70 伝達軸
71 ばね
72 ガイドピン
80 ソケット
Claims (2)
- 駆動部の周縁に面取り部を有する被締結部品と、この被締結部品をワークに締結するために用いられるソケットとの接触構造であって、前記ソケットは、前記被締結部品の駆動部に合致係合可能な係合穴部を有し、この係合穴部の開口端部は段付き状に形成されるとともに、当該開口端部の底面は水平に形成され、当該係合穴部と前記被締結部品の駆動部とが位相が合致しない状態で接した場合に当該開口端部の内方の開口縁が前記駆動部の面取り部に対して全般に渡って断面視、点接触するように形成されていることを特徴とする被締結部品とソケットとの接触構造。
- 回転駆動源の駆動を受けて回転しかつ駆動部を有する被締結部品に嵌合可能なソケットと、
前記ソケットを昇降操作する昇降駆動源と、
前記ソケットの昇降位置に応じてソケットから被締結部品に及ぼされる力を変更するよう前記回転駆動源または昇降駆動源を駆動制御する制御手段とを備えた自動締結装置であって、
前記ソケットは、前記被締結部品の駆動部に合致係合可能な係合穴部を有し、この係合穴部の開口端部は段付き状に形成されるとともに、当該開口端部の底面は水平に形成され、当該係合穴部と前記被締結部品の駆動部とが位相が合致しない状態で接した場合に当該開口端部の内方の開口縁が前記駆動部の面取り部に対して全般に渡って断面視、点接触するように形成されていることを特徴とする自動締結装置。
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