JP4516434B2 - 多軸仮締め工具 - Google Patents
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Description
ナットを仮締めする場合は、例えば、特許文献1または特許文献2に示すような手持ち式多軸仮締め工具を用いて、複数のナットの全てを各ボルトに一度に仮締めしている。
また、このときに交換するギヤ、スプロケット、無端チェーンなどの部品は、比較的高価であり、部品交換に費用がかかるという問題点があった。
なお、特許文献2の多軸仮締め工具は、チェーン伝達手段を利用しているため、重く、仮締め作業をするのに作業者が疲れるという問題があった。
なお、「位相がずれている」とは、ナットの中心線とボルトの中心線とが不一致で、互いに傾いた状態にある関係をいう。
以下、本発明の実施形態の一例として、自動車のホイールに設置される5個のナット(ハブナット)をボルト(ハブボルト)に仮締めする場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る多軸仮締め工具の使用状態を示す一部断面を有する側面図である。
図1に示すように、自動車の車輪Wは、タイヤW1とホイールW2とからなり、そのホイールW2が車軸のハブHに、5個のボルトBと5個のナットNとによって固定される。ナットNは、最終的にナットランナを用いて一定のトルクでハブHに締め付けられるが、その前工程としてボルトBの先端にナットNを仮締めする作業が行われる。その仮締め作業に、本実施形態の5軸の多軸仮締め工具Aが使用される。
なお、ナットNは、一般に、自動車のホイールW2には袋ナットが使用されるが、通常の六角ナットでも構わない。
図2は、本発明の実施形態に係る多軸仮締め工具を示す要部拡大概略側面図である。
図2に示す多軸仮締め工具Aは、モータMの動力を利用して複数のナットNをハブH(図1参照)に仮締めする電動締付工具であり、バッテリタイプのトルクリミット機構の代役をする歯付ベルト4を備えている。この多軸仮締め工具Aは、後記するハウジング1と、モータMと、減速機構2と、駆動歯車3と、歯付ベルト4と、従動歯車5(図3参照)と、従動軸6と、ソケット7と、を主に備えて構成されている。
ハウジング1は、モータMと、減速機構2と、駆動歯車3と、歯付ベルト4と、従動歯車5と、を覆う部材である。このハウジング1は、モータMを覆うモータケース11と、減速機構2を覆うギヤケース12,13と、ギヤケース13に内設されて軸受部材25を支持する支持部材17と、歯付ベルト4および従動歯車5を覆うベルトケース14と、このベルトケース14の前面に設置されるフロントカバー15と、からなる。また、このハウジング1には、作業者が手で把持するためのグリップ(図示せず)が形成されている。
モータMは、ナットNを回転させるための動力源となるものであり、出力軸Maを備えている。その出力軸Maの回転は、減速機構2を介して駆動歯車3に伝達される。このモータMは、金属、または、合成樹脂からなるモータケース11によって覆われている。
なお、モータMは、特許請求の範囲に記載の「駆動手段」に相当する。この駆動手段は、前記モータMに限定されるものではなく、空気圧や油圧などの手段によって出力軸Maを回転させるものであってもよい。
図2に示すように、減速機構2は、モータMの回転を減速回転させるための減速歯車装置であり、例えば、遊星歯車機構からなり、モータMと駆動歯車3との間に介在されている。減速機構2は、太陽歯車21と、遊星歯車22と、キャリア23と、軸受部材24,25と、リングギヤ26と、主軸部材27と、前記ギヤケース12,13とから構成されている。
遊星歯車22は、太陽歯車21を中心として回転して、リングギヤ26内を減速回転する複数の歯車から構成され、軸支ピンによってキャリア23に軸支されている。
ギヤケース12は、減速機構2のモータM側を覆うとともに、リングギヤ26および軸受部材25を保持する部材であり、モータケース11とギヤケース13との間に介在されている。
ギヤケース13は、減速機構2のソケット7側を覆うとともに、リングギヤ26、軸受部材25および駆動軸3aを保持する部材であり、ギヤケース12とベルトケース14との間に介在されている。このギヤケース13のソケット7側の端部には、駆動軸3aを回転自在に軸支するとともに、ベルトケース14の円筒部14aをねじ止めするための軸受筒部13aが形成されている。
支持部材17は、ギヤケース13のモータM側の開口部に嵌着されて軸受部材25を固定するための部材である。
主軸部材27は、軸受部材25に回転自在に設置されている軸棒であり、モータM側がキャリア23に溶接などによって一体に固定され、ソケット7側が駆動軸3aの連結部3bにスプラインなどの手段によって固定されている。
図2に示すように、駆動歯車3は、モータMを動力源として回転する歯付ベルトプーリであり、減速機構2によって減速回転されたモータMからの回転力を歯付ベルト4に伝達するためのものである。この駆動歯車3は、軸棒状の駆動軸3aと、この駆動軸3aのモータM側の基端部に形成された連結部3bと、ソケット7側の先端部に形成された噛合部3dと、を主として備える部材である。この駆動歯車3は、モータMに配設した出力軸Maに連動する駆動軸3aに、歯付ベルト4の凹凸部4aに噛合する噛合部3dを、切削加工によって直接刻設してなる。駆動歯車3は、例えば、アルミニウム合金などの軽金属からなる円柱状の金属に、主軸部材27に固定するための連結部3bと、ギヤケース13の円筒状の軸受筒部13aに回転自在に内設される鍔部3cと、歯付ベルト4の凹凸部4bに噛合する歯形を形成する噛合部3dと、を切削加工などによって一体形成してなる。
図3および図4に示すように、駆動歯車3の噛合部3dは、歯溝が円弧状、半円状などの曲面形状に形成されている。
図3に示すように、歯付ベルト4は、駆動歯車3の回転を従動歯車5に伝達する無端ベルトであり、補強用の繊維を内設した合成ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する弾性材から成形されている。この歯付ベルト4は、少なくとも凹凸部(歯形部分)4a,4bが前記弾性材によって形成されて、歯付ベルト4に所定値以上の過大な負荷が加わったときに変形するように形成されている。歯付ベルト4は、内面側および外面側に凹凸部4a,4bがそれぞれ連続形成されて、外面側の凹凸部4aに駆動歯車3の噛合部3dが噛合され、内面側の凹凸部4bに各従動歯車5の噛合部5aがそれぞれ噛合されように巻き掛けられている。
このように巻き掛けられた歯付ベルト4は、駆動歯車3への歯付ベルト4の巻き掛け角θ1を従動歯車51、52,55の巻き掛け角θ2より大きくすることができるため、駆動歯車3の駆動力を各従動歯車5へ効率よく伝達できるようになっている。
凹凸部4a,4bは、駆動歯車3および従動歯車5の噛合部3d,5aに噛合するように同一のピッチで連続形成された円弧状の凸部と、各凸部間に形成されて底面が平らな凹部とからなる。
なお、凹凸部4a,4bは、図3および図4に示すような円弧形状に限定されるものではなく、例えば、半円形、曲面、ノビコフ歯車歯形やインボリュート歯形などのような歯形形状であってもよい。
≪従動歯車≫
従動歯車5は、図4に示すように、歯付ベルト4によって回転されて従動軸6(図5参照)を回転させるための歯付ベルトプーリであり、例えば、駆動歯車3を中心としてその周辺に、5つの従動歯車51,52,53,54,55で正五角形を描くよう配置されてなる。この従動歯車5は、歯付ベルト4の凹凸部4bが噛合する噛合部5aを外周部に一体形成し、中央部の軸孔を従動軸6に嵌着して、ともに回転する。従動歯車5の噛合部5aは、歯付ベルト4の凹凸部4bに噛合する湾曲形状をした歯溝からなる。なお、噛合部5aは、従動軸6(図5参照)と一体形成してもよい。
図5に示すように、従動軸6は、従動歯車5を固定して、従動歯車5の回転をソケット7に伝達するための軸棒であり、例えば、アルミニウム合金などの軽金属によって形成されている。従動軸6は、略中央部に、前記従動歯車5が嵌着されて、この従動歯車5の両側の部位に、従動軸6をベルトケース14およびフロントカバー15に軸支させるための軸受部材14c,15aや、この軸受部材14c,15aを従動軸6に固定するための保持部材61が嵌着されている。従動軸6には、この従動軸6を後記する第1アタッチメント71に連結するための連結部6aと、この連結部6aに第1アタッチメント71を固定するねじが螺着されるねじ穴6bとが形成されている。
ねじ穴6bは、連結部6aの第2アタッチメント73側の端面に形成されている。
保持部材61は、例えば、従動軸6に設置された従動歯車5および軸受部材14c,15aを所定間隔に保持するスペーサや、それらが軸心線方向に移動することを防止する止め輪や、それらが回転方向に移動するのを防止するためのキーなどからなる。
ベルトケース14とフロントカバー15とは、従動歯車5、歯付ベルト4および駆動歯車3を覆うためのケース体であり、例えば、ポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック、または、アルミニウム合金などの軽金属によって形成されている。このため、ベルトケース14とフロントカバー15とは、軽量で、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱性などに優れている。
なお、ベルトケース14およびフロントカバー15は、特許請求の範囲に記載の「ケース」に相当する。
ねじ孔14bは、ベルトケース14を軸受筒部13aに固定するための止めねじ18が螺合される孔であり、円筒部14aの複数箇所に形成されている。
軸受部材14cは、従動軸6を回転自在に軸支するための軸受であり、一対のベアリングなどからなる。この軸受部材14cは、ベルトケース14に正五角形を描くように5箇所に形成された軸孔の表裏にそれぞれ配設されている。
ねじ穴14dは、フロントカバー15をベルトケース14に固定するためのボルト16が螺着される穴であり、ベルトケース14のソケット7側の端面の複数箇所に形成されている。
各ソケット7は、ボルトBに仮締めされるナットNの外周部に係合させる部材であり、歯付ベルト4によって回転される各従動歯車5と同軸の従動軸6に設けられて一体に回転し、5つのナットNが一度に仮締めできるように組み付けられている。ソケット7は、駆動軸3aを中心とする同心円上に正五角形を描くように従動軸6の先端に設置されている。このソケット7は、第1アタッチメント71と、締結部材72と、第2アタッチメント73と、磁石74と、止めねじ75とを備えてなる。
締結部材72は、第1アタッチメント71を従動軸6に固定するためのねじ穴6bに螺着されるボルト、または、ねじからなる。
係合部73bは、六角ナットでなるナットNが係合する筒状の部分であり、図6に示すように、12個の円弧状の凸部73eを連続形成することで形成された凹部73fにナットNの6箇所の角が係合するように形成されている。
段差部73cは、筒部73aと係合部73bとの間に形成され、第2アタッチメント73内に挿入される磁石74およびナットNのストッパとしての役目を有する(図5参照)。
ねじ孔73dは、図6に示すように、例えば、第2アタッチメント73の外周部の上下左右の4箇所に穿設されて、止めねじ75を螺着することにより、第2アタッチメント73が第1アタッチメント71に固定されるとともに、磁石74が第1アタッチメント71内に固定される。
次に、各図を参照しながら、多軸仮締め工具Aの作用を説明する。
まず、図1に示すように、車輪WのホイールW2のボルト孔W2bに、車軸のハブHに植設した5本のボルトBを挿通するとともに、多軸仮締め工具Aの5個のソケット7にそれぞれナットNを装着しておく。
出力軸Maが回転すると、この出力軸Maの外周部に噛合していた遊星歯車22が左方向に公転して、キャリア23、主軸部材27、駆動軸3a、および駆動歯車3が左方向に減速回転する。
この場合、作業者が多軸仮締め工具Aの傾きやその位置を微調整することにより、ボルトBのねじ部がナットNのねじ部に螺合するようになり、ナットNを仮締めすることができるようになる。
そうすると、モータMなどの従動軸6側に過度の回転トルクが作用されないため、第2アタッチメント73の係合部73bやソケット7の固定箇所やモータMなどが破損することを防止することができる。
そして、作業者が多軸仮締め工具Aの傾きやその位置を微調整することにより、ボルトBのねじ部がナットNのねじ部に螺合するようになり、ナットNを仮締めすることができるようになる。また、歯付ベルト4は、弾性材からなることにより、音を吸収するため、作動時の音を小さくすることができる。
本発明の実施形態に係る多軸仮締め工具Aは、以上のような構成および作用を有することにより、次のような効果を奏する。
(1)歯付ベルト4は、チェーンや歯車などと比較して安価であるため、多軸仮締め工具Aのコストダウンを図ることができる。
(2)歯付ベルト4は、可撓性を有する弾性材からなることにより、強く引っ張れば変形するため、部品交換するときの着脱作業が行い易い。
(3)歯付ベルト4は、チェーンや歯車などと比較して軽量であるので、多軸仮締め工具Aの軽量化に寄与するとともに、多軸仮締め工具Aを手で持って仮締め作業を行い易くすることができる。
(4)多軸仮締め工具Aは、電動締付工具のトルクリミット機能を歯付ベルト4の凹凸部4a,4bで代行させているため、そのトルクリミット機能が不要になった分だけ、構造を簡素化するとともに、軽量化とコストダウンを図ることができる。
(5)多軸仮締め工具Aは、モータMによって回転された駆動歯車3の回転を、中間歯車を介さず、歯付ベルト4によって従動歯車5を回転させているため、歯車や歯車を軸支する軸の個数を削減して、構造を簡素化するとともに、軽量化を図ることができる。
(6)多軸仮締め工具Aは、ソケット7に磁石74を内設していることにより、ソケット7にナットNを磁力で吸引しているため、ナットNが脱落することがなく、仮締め作業を行い易くすることができる。
(7)歯付ベルト4に噛合している歯車は、駆動歯車3と従動歯車5のみからなることにより、従来の無端チェーン機構で使用していた中間歯車やこの中間歯車を軸支する軸や軸受が不要となるため、部品点数を削減して、多軸仮締め工具の軽量化を図ることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
そして、多軸仮締め工具Aは、従動軸6に設けたソケット7をドライバに代えることにより、プラスまたはマイナスのねじを仮締めする場合にも使用することができる。
例えば、フランジなどに正多角形や不規則な多角形を描くように配置された複数のボルトにナットを仮締めする場合にも使用することができる。この場合、ソケット7の配置位置は、ボルトBの位置に合わせて配置し、ソケット7と同軸上に配置される各従動歯車5の噛合部5aを歯付ベルト4の内面側の凹凸部4bに噛合させればよい。
図2に示す減速機構2は、出力軸Maの回転を減速回転させるものであればよく、遊星歯車機構に限定されるものはない。減速機構2は、例えば、ウォーム・ホイールや複数の歯車で減速回転するようにした減速歯車機構やベルト機構などでもよい。
3 駆動歯車
3a 駆動軸
3d 噛合部(歯形)
4 歯付ベルト
4a,4b 凹凸部(歯形部分)
5 従動歯車
5a 噛合部
7 ソケット
14 ベルトケース(ケース)
15 フロントカバー(ケース)
A 多軸仮締め工具
B ボルト(ナット)
M モータ(駆動手段)
Ma 出力軸
Claims (4)
- 駆動手段の動力を利用して複数のボルトまたはナットを仮締めする多軸仮締め工具であって、
前記駆動手段によって回転されると共に当該駆動手段の出力軸に連動する駆動軸に歯形を刻設してなる駆動歯車と、
複数の従動歯車と、
前記駆動歯車および前記複数の従動歯車に巻き掛けられて、前記駆動歯車の回転を前記複数の従動歯車に伝達するための歯付ベルトと、
前記複数の従動歯車に連結されるとともに、前記ボルトまたは前記ナットが係合されるソケットと、を備えたこと
を特徴とする多軸仮締め工具。 - 請求項1に記載の多軸仮締め工具であって、
前記歯付ベルトは、少なくとも歯形部分が弾性材からなること
を特徴とする多軸仮締め工具。 - 請求項1または請求項2に記載の多軸仮締め工具であって、
前記複数の従動歯車は、前記駆動歯車の周辺に配置され、
前記歯付ベルトは、内面側および外面側に凹凸部が形成されて、前記外面側の凹凸部に前記駆動歯車の噛合部が噛合され、前記内面側の凹凸部に前記複数の従動歯車の噛合部が噛合されるように巻き掛けられていること
を特徴とする多軸仮締め工具。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の多軸仮締め工具であって、
前記駆動歯車、前記歯付ベルトおよび前記複数の従動歯車は、ポリカーボネートによって形成されたケースによって覆われていること
を特徴とする多軸仮締め工具。
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