(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る電動アクチュエータ(以下、アクチュエータと略す。)100を車両用空調装置のエアミックスドアの駆動装置に適用したものである。
ここで、エアミックスドア1とは、図1に示す両用空調装置において、エンジン2の冷却水を熱源として室内に吹き出す空気を加熱するヒータコア3を迂回して流れる風量を調節することにより室内に吹き出す空気の温度を調節するものである。
なお、ヒータコア3及び蒸発器4等の熱交換器やエアミックスドア1等は樹脂製の空調ケーシング5内に収納されており、アクチュエータ100は、空調ケーシング5にネジ等の締結手段により固定されている。
次に、アクチュエータ100について述べる。
図2はアクチュエータ100の外観図であり、図3はアクチュエータ100の構成図である。そして、図3中、直流モータ110は車両に搭載されたバッテリ(図示せず)から電力を得て回転するものであり、減速機構120はモータ110から入力された回転力を減速してエアミックスドア1に向けて出力する変速機構である。なお、以下、直流モータ110及び減速機構120等の回転駆動する機構部を駆動部130と呼ぶ。
ここで、減速機構120は、モータ110の出力軸111に圧入されたウォーム121、このウォーム121と噛み合うウォームホィール122、及び複数枚の平歯車123、124からなる歯車列であり、出力側に位置する最終段歯車(出力側歯車)126には、出力軸127が設けられている。
なお、ケーシング140は駆動部130を収納するととともに、後述する接点ブラシ(電気接点)155〜157が固定されたケーシングである。
また、減速機構120のうち、直流モータ110により直接駆動される入力歯車(ウォーム121)より出力側(出力軸127)には、図3〜6(特に、図6参照)に示すように、パルスパターンプレート(以下、パターンプレートと呼ぶ。)153が設けられており、このパターンプレート153は、円周方向に交互に並んだ導電部151a、152a及び非導電部151b、152bからなる第1、2パルスパターン151、152と、導電部154a及び非導電部154bからなるコモンパターン154とが設けられたもので、出力軸127と一体的に回転する。コモンパターン154は、第1、2パルスパターン151、152により内側に設けられている。
ここで、パターンプレート153のうち、円弧状の回転検出領域300において、導電部151a、152aの円周角α1、α2及び非導電部151b、152bの円周角β1、β2を互いに等しくするとともに、第1パルスパターン151の位相を第2パルスパターン152の位相に対して円周角α1、α2(=円周角β1、β2)の略1/2ずらしている。また、領域300でのコモンパターン154は、導電部154aだけから成る。このような回転検出領域300は、後述するように、回転角度の検出に用いるパルス信号のパターンを生成するために用いられている。
また、パターンプレート153のうち領域300以外の扇子状の初期化領域301では、第1、2パルスパターン151、152は、それぞれ、導電部151a、152aだけから成り、コモンパターン154は、非導電部154bを円周方向から2つの導電部154aで挟むようになっている。このような初期化領域301は、原点位置を示すパルス信号のパターン(以下、イニシャライズパターンという)を生成するのに用いられる。
ここで、第1、2パルスパターン151、152において、互いの導電部同士は電気的に繋がっている。さらに、第1、2パルスパターン151、152の導電部151a、152aとコモンパターン154の導電部154aとは、図示しない接続部材により、電気的に繋がっている。
一方、ケーシング140側には、バッテリの正極側に接続された銅系導電材料製の第1〜3接点ブラシ(電気接点)155〜157が樹脂一体成形により固定されており、第1接点ブラシ155は第1パルスパターン151に接触し、第2接点ブラシ156は第2パルスパターン152に接触し、第3接点ブラシ157はコモンパターン154に接触するように構成されている。
なお、本実施形態では、第1〜3接点ブラシ155〜157とパターンプレート153との接点を2点以上(本実施形態では、4点)とすることにより、第1〜3接点ブラシ155〜157と導電部151a、152a、154aとの電気接続を確実なものとしている。
なお、図2に示すように、出力軸127には、エアミックスドア1を揺動させるリンクレバー160が圧入固定されているとともに、空調ケーシング5には、ストッパ5a、5bが設けられている。ストッパ5a、5bは、直流モータ110の回転の電気的な規制に失敗したときに、リンクレバー160を衝突させてモータの回転を停止させるのに用いられる。
次に、アクチュエータ100の概略作動を述べる。
図7はモータ制御手段をなすアクチュエータ100の電気制御回路200を示す模式図であり、この電気制御回路200は、バッテリから給電されて一定電圧を回路210、220、230などに出力する定電圧回路211、直流モータ110を駆動するモータ駆動回路210、並びにパターンプレート153で発生するパルス信号に基づいて出力軸127の回転角及び回転の向きを検出する回転角度検出器(回転角度検出手段)220、各種制御情報を記憶するEEPROM等の入力された情報を電力の供給を受けることなく保持することができる記憶回路230を有して構成されている。
そして、直流モータ110が回転して出力軸127(パターンプレート153)が回転して、第1、2、3接点ブラシ155、156、157が回転検出領域300に接触している状態では、第3接点ブラシ157が導電部154aに接触しつつ、第1、2接点ブラシ155、156と導電部151a、152aとが接触する通電(ON)状態、及び第1、2接点ブラシ155、156と非導電部151b、152bとが接触する非通電(OFF)状態が相互に周期的に発生する。
したがって、第1、2接点ブラシ155、156には、図8に示すように、直流モータ110が所定角度回転する毎にパルス信号が発生するので、このパルス信号を回転角度検出器220にて数えることにより出力軸127の回転角度を検出することができる。
さらに、直流モータ110が回転して出力軸127(パターンプレート153)が回転して、第1、2、3接点ブラシ155、156、157が初期化領域301に接触している状態では、図9に示すように、第1、2接点ブラシ155、156と導電部151a、152aとが接触する通電(ON)状態を保ちつつ、第3接点ブラシ157と導電部154aとは、互いに接触する通電(ON)状態から、第3接点ブラシ157と非導電部154bとが接触する非通電(OFF)状態を経て、第3接点ブラシ157と導電部154aとが接触する通電(ON)状態になる(導電部→非導電部→導電部)。
したがって、第1、2接点ブラシ155、156には、直流モータ110の角度回転に応じて、図9に示すイニシャライズパターンの2相のパルス信号(A相、B相)が発生する。このイニシャライズパターンは、図8に示すように2相のパルス信号の振幅が交互に切り替わりパターンではなく、2相のパルス信号が同時にローレベル信号(「00」)からハイレベル信号(「11」)に切り替わり、このハイレベル信号から同時にローレベル信号(「00」)に切り替わるものである。なお、「0」はローレベル信号を示し、「1」はハイレベル信号を示す。
以上のようにイニシャライズパターンは、直流モータ110の角度回転を検出するのに用いるパターンとは異なり、2相のパルス信号の振幅が同時に変化するものである。
このようなイニシャライズパターンの2相のパルス信号を回転角度検出器220にて検出すると、モータ駆動回路210により直流モータ110への給電を停止することにより直流モータ110の回転を電気的に規制するとともに、このイニシャライズパターンの2相のパルス信号を検出した位置を原点位置として記憶する。そして、その後は、バッテリが外れた場合及びパルス信号に異常が発生した場合を除き、原点位置から1パルスずれた位置を作動基準として直流モータ110を制御する。
以下、イニシャライズパターンの2相のパルス信号を回転角度検出器220にて検出すると、直流モータ110の回転を電気的に規制するとともに、イニシャライズパターンの2相のパルス信号を検出した位置を原点位置として記憶し、その原点位置からずれた作動基準を設定する行為を「初期位置設定」と呼ぶ。
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、第1、2接点ブラシ155、156、157とパターンプレート153とにより出力軸127が所定角度回転する毎にパルス信号を発するスイッチ手段158a〜158cを含むパルス発生器(パルス発生手段)158(図7参照)を構成することになる。
なお、スイッチ手段158a、158bは、接点ブラシ155、156と第1、2パルスパターン151、152とによって構成されるもので、定電圧回路(電源回路)およびグランドの間で並列的に配設され、電動モータ110の回転に基づき、個々に2相のスイッチング(すなわち、オン、オフ)してパルス信号を発生する。スイッチ手段158cは、第3接点ブラシ157(接点ブラシ157の一端部はグランドに電気的に繋がっている)とコモンパターン154とにより構成されるもので、スイッチ手段158a、158bとグランドとの間で、電動モータ110の回転に基づき、スイッチングすることになる。
また、第1パルスパターン151の位相と第2パルスパターン152の位相とがずれているため、パルス発生器158では、第1パルスパターン151と第1接点ブラシ155とにより発生するパルス信号(以下、このパルス信号をA相パルスと呼ぶ。)と、第2パルスパターン152と第2接点ブラシ156とにより発生するA相パルス対して位相のずれたパルス信号(以下、このパルス信号をB相パルスと呼ぶ。)とが発生する。
このため、本実施形態では、A相パルス及びB相パルスのうちいずれの信号が先に回転角度検出器220に入力されるかによって、直流モータ110(出力軸127)の回転方向を検出している。
次に、図10、11に基づいてアクチュエータ100、つまり直流モータ110の制御を示すフローを述べる。
車両のイグニッションスイッチ(IGスイッチ)が投入されている場合には、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが投入されたか否かを記憶回路230に記憶されたフラグに基づいて判定し(S110)、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが投入された場合には、初期位置設定を行った後(S120)、IGスイッチが投入されている場合にはエアミックスドア1の開度が目標位置(目標回転角)となるように直流モータ110を制御する(S130〜S220)。
なお、イグニッションスイッチとは、直流モータ110に電力を供給することを許可する始動許可スイッチをなすものである。
一方、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが投入された場合でないときには、記憶回路230に記憶保持されたバッテリが接続されていることを意味する情報をなすバッテリ外し判定フラグ(バッテリ外し判定ビット)が立っているか否かを判定する(S230)。
そして、バッテリ外し判定フラグが立っていない場合には、初期位置設定を行った後(S120)、エアミックスドア1の開度が目標位置となるように直流モータ110を制御し(S130〜S220)、バッテリ外し判定フラグが立っている場合には、ビットを0として記憶回路230からバッテリ外し判定フラグ消去した後(S240)、エアミックスドア1の開度が目標位置となるように直流モータ110を制御する(S130〜S220)。
また、エアミックスドア1の開度が目標位置となるように直流モータ110を制御するとき(S130〜S220)、つまり直流モータ110に駆動電流が通電されているときであって、パルス信号の変化が停止したときには、パルス信号に異常が発生している可能性が高いため、駆動電流を通電し始めてから所定時間経過後においてもパルス信号の変化が停止しているときには、パルス信号に異常が発生したものと判定して、駆動電流の通電を停止してアクチュエータ100を停止するとともに(S210)、パルス信号の変化が停止したことを意味する情報を記憶回路230に記憶保持させる(S220)。
一方、直流モータ110に駆動電流が通電されているときであって、パルス信号が変化しているときには、パルス波形(図8参照)に乱れが発生せずにパルス信号が規則正しく発生しているか否か、つまりパルス飛び等が発生していないか等を判定し(S180)、パルス飛び等が発生していないときには、S130に戻ってエアミックスドア1の開度が目標位置となるように直流モータ110を制御し、パルス飛び等が発生しているときには、パルス飛び等が発生していることを意味する情報を記憶回路230に記憶保持した後(S190)、S130に戻ってエアミックスドア1の開度が目標位置となるように直流モータ110を制御する。
なお、パルス飛び等が発生したまま直流モータ110を制御するので、実際のエアミックスドア1の開度が目標位置と異なる可能性が高い。そこで、後述するように、イグニッションスイッチが遮断された後、初期値設定を行う。
また、イグニッションスイッチが遮断されている場合であっても、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが遮断された場合には、初期位置設定を行い(S300、S310)、イグニッションスイッチが遮断された時から所定時間が経過したした時にバッテリ外し判定フラグを記憶回路230に記憶保持する(S320、S330)。
なお、この所定時間は、暗電流の消費を抑制するためにバッテリから車載電気機器への電力供給を停止する時間より短い時間である。このため、バッテリ外し判定フラグが記憶回路230に保持されている場合には、バッテリが車両に接続されていることを意味し、バッテリ外し判定フラグが記憶回路230に保持されていない場合には、バッテリが取り外されていることを意味する。
一方、イグニッションスイッチが遮断されている場合であっても、バッテリを接続した後、初めてのイグニッションスイッチの遮断でない場合には、記憶回路230に記憶された情報に基づいてパルス飛びがあった否かを判定し(S340)、直流モータ110を駆動しているときにパルス飛びがあった場合には初期位置設定を行った後(S310)、イグニッションスイッチが遮断された時から所定時間が経過したした時にバッテリ外し判定フラグを記憶回路230に記憶保持する(S320、S330)。
また、パルス飛びが発生しなかった場合には、記憶回路230に記憶された情報に基づいてパルス信号の停止があった否かを判定し(S350)、パルス信号の停止があった場合には、パルス信号の変化が停止する直前に直流モータ110が回転していた向きと反対向きに直流モータ110を回転させる駆動電流を通電した後に、初期位置設定を行う(S360、S310)。
なお、この例では、原点位置に向かう向きと反対向きに直流モータ110を回転させる駆動電流を通電した後に、初期位置設定を行っている。
次に、本実施形態の作用効果を述べる。回転角度検出器220が、イニシャライズパターンのパルス信号を検出したとき、モータ駆動回路210により直流モータ110への給電を停止することにより直流モータ110の回転を電気的に規制する。このことにより、機械的規制手段でロックさせずに初期化設定を行うことができるので、ストッパ等の撓み量のバラツキと無関係で、初期化設定を行うことができ、原点位置での停止位置精度を向上させることができる。また、電子制御装置の共通化も図ることができる。また、ロックさせずに初期化設定を行うので、大型化及び製造原価上昇を抑制できる。
また、イニシャライズパターンとしては、A相、B相のパルス信号の振幅が同時に二回以上変化するパターンを用いている。また、異物侵入によりパルス信号の振幅が乱れても、A相、B相のパルス信号が同時にローレベル信号→ハイレベル信号→ローレベル信号に切り替わることは希であると考えられる。したがって、A相、B相のパルス信号の振幅が同時に二回以上変化するイニシャライズパターンを用いていることにより、イニシャライズパターンの誤検出を行う可能性を低くすることができる。
本実施形態では、イニシャライズパターンのパルス信号を発生させるために、第3接点ブラシ157と導電部154aとが接触する通電(ON)状態から、第3接点ブラシ157と非導電部154bとが接触する非通電(OFF)状態を経て、第3接点ブラシ157と導電部154aとが接触する通電(ON)状態になるようにしてある。これに伴い、イニシャライズパターンでは、A相、B相のパルス信号の振幅が同時にローレベルからハイレベルに切り替わるとともに、このハイレベルから同時にローレベルに切り替わるようになっている。
ここで、図12(a)、(b)に示すように、第3接点ブラシ157と導電部154aとの接触状態で、A相、B相のパルス信号がローレベル信号「0」になり、第3接点ブラシ157と非導電部154b(プリント基板)との接触状態で、A相、B相のパルス信号がハイレベル信号「1」になっている。
一方、第3接点ブラシ157は、導電部154a、非導電部154bにより摩耗すると、図12(c)、(d)に示すように、接触面が広くなり、第3接点ブラシ157と非導電部154b(プリント基板)とが接触する期間が短くなる。
このため、第3接点ブラシ157の摩耗に伴い、A相、B相のパルス信号がハイレベル信号「1」になる期間が短くなる。そこで、導電部154aの面積に比べて、非導電部154b(プリント基板)の面積を大きくすることにより、第3接点ブラシ157が摩耗しても、A相、B相のパルス信号が、所定期間以上、ハイレベル信号「1」になるようにしている。したがって、回転角度検出器220が、A相、B相のハイレベル信号を確実に検出できる。
これに対して、イニシャライズパターンとして、A相、B相のパルス信号の振幅が同時にハイレベル→ローレベル→ハイレベルに切り替わるパターンを用いる場合には、ハイレベル信号を発生させるための非導電部154bを2つ設ける必要がある。ここで、本実施形態のイニシャライズパターンでは非導電部154bを1つだけ用いているので、本実施形態の方が、ハイレベル→ローレベル→ハイレベルに切り替わるイニシャライズパターンを用いる場合に比べて、パターンプレート153の初期化領域301の面積を小さくできる。また、出力軸127の作動可能範囲を大きくできる。
本実施形態では、初期位置設定を行う必要性が高いときであるパルス信号に異常が発生したとき、つまりパルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときに初期位置設定を行うので、初期位置設定を行う回数を大幅に低減することができる。延いては、アクチュエータ100の製造原価上昇を抑制できる。
また、パルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときのように、制御精度に大きく影響を与えるときに原点位置設置を行うので、制御精度を高く維持しつつ、アクチュエータ100の製造原価上昇を抑制できる。
また、バッテリ外し判定フラグによりバッテリが取り外されたか否かを判定して初期位置設定を行うので、不必要な初期値設定を大幅に削減することができる。延いては、アクチュエータ100の製造原価上昇を抑制できる。
また、パルス停止が発生したときには、パルス信号の変化が停止する直前に直流モータ110が回転していた向きと反対向きに直流モータ110を回転させる駆動電流を通電した後に、初期位置設定を行うので、異物の噛み込み等によるアクチュエータ100のロック現象を自発的に解消することができ、アクチュエータ100の信頼性及び耐久性を向上させることができる。
また、駆動電流を通電し始めてから所定時間が経過した後に、パルス信号に異常が発生したか否かの判定、つまりパルス信号の変化が停止したか否かを判定するので、駆動電流の電圧が低いために擬似的にパルス信号の変化が停止又は低下した場合や負荷が大きいために擬似的にパルス信号の変化が停止又は低下した場合であっても、パルス信号に異常が発生したか否かの判定を正しく行うことができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、パルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときには、その旨を記憶回路230に記憶し、イグニッションスイッチが遮断された後、直ぐに初期値設定を行ったが、本実施形態は、図13、14に示すように、パルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときには、発生後、直ぐに初期位置設定を行うものである。(S191、S221参照)。
これにより、早期に原点位置を再設定することができる。
なお、イグニッションスイッチが遮断された後は、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが遮断された場合に限り、初期位置設定を行う。
(第3実施形態)
第1実施形態では、パルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときには、その旨を記憶回路230に記憶し、イグニッションスイッチが遮断された後、直ぐに初期値設定を行ったが、本実施形態は、図15、16に示すように、パルスが停止したとき及びパルス飛びが発生したときには、その旨を記憶回路230に記憶し、イグニッションスイッチが遮断された後、所定時間経過後に初期値設定を行うものである。
具体的には、S300の前にイグニッションスイッチが遮断された後、所定時間が経過したか否かを判定する制御ステップS290を設けたものである。
これにより、乗員に違和感を与えることなく、原点位置を再設定することができる。
(第4実施形態)
本実施形態は、図17に示すように、複数個のアクチュエータ100及び制御装置をデータ通信によるネットワークで繋ぎ、電気配線の本数を減少させた電動アクチュエータに本発明を適用したものである。
なお、通信ラインには、所定のプロトコルで定められた手順に従って各アクチュエータ100を制御するためのデータ信号及びパルス数に関するデータ信号がCPUと各アクチュエータ100との間で授受されており、各アクチュエータ100は通信ラインを介して送信されるデータ信号に基づいて作動する。
(第5実施形態)
上述の第1実施形態では、エアミックスドア1(図1参照)の回転角度を制御するために、パルス発生器158(図7参照)から出力されるA相、B相のパルス信号(「00」、「01」、「11」、「10」)を数えて出力軸127の回転角度を検出するとともに、パルス発生器158から出力されるイニシャライズパターンの2相パルス信号(「00」→「11」→「00」)を検出したとき直流モータ110を停止してその停止位置を原点位置として記憶する例について説明した。
ここで、パターンプレート153(図4参照)においては、初期化領域301が回転検出領域300の外側に配置されており、エアミックスドア1の回転角度を制御するときには、第1〜3接点ブラシ155〜157が回転検出領域300に接触するだけで、初期化領域301に接触することはない。
すなわち、図19に示すように、アクチュエータ100の回転可能範囲(以下、モータ作動範囲ともいう)内にて、エアミックスドア1の回転角度を制御するためのドア制御範囲(これは、回転検出領域300に相当する)の外側に、初期化領域301が設定されていることになる。
これにより、エアミックスドア1の回転角度を制御する通常作動時には、パルス発生器158からイニシャライズパターンのパルス信号が発生しないようになる。
しかし、アクチュエータ100の構成によっては、ドア制御範囲内にて初期化領域301を設定せざるえない場合がある。この場合、エアミックスドア1の回転角度を制御する通常作動時でも、イニシャライズパターンのパルス信号が発生し、そのイニシャライズパターンのパルス信号を検出する毎に直流モータ110、ひいてはエアミックスドア1を停止させることになり、乗員に違和感を与えるといった問題が生じる。
そこで、本実施形態では、このようなことに対処するために、ドア制御範囲内に初期化領域301が設定されている場合にて、初期化設定(これは、イニシャライズパターンの2相のパルス信号を検出した位置を原点位置として記憶する行為である)の実施時と、通常作動時(すなわち、エアミックスドア1の回転角度を制御する作動時)とで、イニシャライズパターンの認識を区別する例について説明する。なお、「初期化設定」とは、初期位置設定手段の作動に相当する。
また、本実施形態では、アクチュエータ100を、図示しないリンク機構を介して吹出口切換ドアを駆動するための駆動装置に適用する。このアクチュエータ100がそのリンクレバー160を回転させると、そのリンクレバー160の回転がリンク機構を介して吹出口切換ドアに伝わる。
ここで、吹出口切換ドアは、図20に示すフェイスドア1a、フットドア1bおよびデフドア1cから構成されている。そして、アクチュエータ100が図20に示すフェイスドア1a、フットドア1b、およびデフドア1cを順次回転駆動させて、図21に示すように、吹出口モードを、フェイスモード(FACE)→バイレベルモード(B/L)→フットモード(フット)→フット/デフモード(F/D)→デフモード(DEF)の順で切り替えることになる。
なお、フェイスドア1aは、乗員の上半身に空調風を吹き出すためのフェイス吹出口を開閉するためのドアであり、フットドア1bは、乗員の下半身に空調風を吹き出すためのフット吹出口を開閉するためのドアであり、デフドア1cは、フロントガラスの内表面に空調風を吹き出すためのデフ吹出口を開閉するためのドアである。
以下、本実施形態のアクチュエータ100の作動について図22、図23を用いて説明する。図22は、電気制御回路200によるアクチュエータ100の制御処理を示すフローチャートである。電気制御回路200は、図22に示すフローチャートにしたがって、記憶回路230に予め記憶されるコンピュータプログラムを実行する。
例えば、車両のイグニッションスイッチが投入されている場合、バッテリを接続した後、初めてイグニッションスイッチが投入されているとき、原点位置を記憶することが必要であると判定して、記憶回路230に含まれるRAMにてイニシャライズフラグをセットする(S401:セット手段)。
これに伴い、予め決められたイニシャライズ方向に回転させるように直流モータ110を制御する(S402)。これに伴い、図23(a)に示すごとく直流モータ110がイニシャライズ方向に回転してイニシャライズパターンのパルス信号を検出したと判定したときには(S403:YES)、次のように、初期化設定を行う。
具体的には、直流モータ110への電力供給を停止して直流モータ110(すなわちアクチュエータ100)の回転を停止してイニシャライズフラグをリセットするとともに(S404、S405)、その出力軸127の停止位置を原点位置として記憶回路230に記憶させて直流モータ110の作動基準を設定する(S406)。
一方、上述のごとくイニシャライズフラグがセットされているとき、図23(b)に示すごとく、直流モータ110をイニシャライズ方向に回転させても、イニシャライズパターンのパルス信号が未検出で、A相、B相のパルス信号の出力停止(すなわち、A相、B相のパルス信号の振幅変化の停止)があったときには、ストッパ5aにリンクレバー160が衝突して直流モータ110がロックしたと判定する(S407)。
このとき、イニシャライズ方向と逆方向(以下、逆イニシャライズ方向という)に直流モータ110を回転させる(S408)。これに伴い、イニシャライズパターンのパルス信号を検出したと判定したときには、モータ停止処理(S404)、イニシャライズリセット処理(S405)、および基準設定処理(S406)を行う。
また、上述のごとく逆イニシャライズ方向に直流モータ110を回転させても、イニシャライズパターンのパルス信号を未検出で、A相、B相のパルス信号の出力停止があったときには、ストッパ5bにリンクレバー160が衝突して直流モータ110がロックしたと判定する。
この場合、イニシャライズパターンのパルス信号の検出を失敗したとして、直流モータ110をイニシャライズ方向に回転させて回転検出領域300にて一定数のパルス信号を検出したとき(S411)、直流モータ110への電力供給を停止して直流モータ110の回転を停止する(S412)。これに伴い、イニシャライズパターンのパルス信号の検出失敗を示すイニシャライズ失敗フラグをセットする(S413)。
一方、直流モータ110の回転角度を制御してフェイスドア1a、フットドア1b、およびデフドア1cを順次回転駆動する通常作動中(吹出口モードを切り替える作動中)では、イニシャライズフラグをリセット状態にしている。この場合、CPUとしては、原点位置を記憶することが不必要であると判定して、イニシャライズパターンのパルス信号を検出しても、直流モータ110の回転を停止せずにその回転を維持する。なお、このようにイニシャライズパターンのパルス信号の検出時に直流モータ110の回転を維持するものが制御手段に相当する。
以上説明したように本実施形態によれば、原点位置まで直流モータ110を回転させる初期化設定を実行中では、イニシャライズパターンのパルス信号を検出すると直流モータ110を停止させるものの、直流モータ110の通常作動中では、イニシャライズパターンのパルス信号を検出しても、直流モータ110の回転を停止せずにその回転を維持する。
すなわち、初期化設定の実行時と通常作動時とでイニシャライズパターンの認識を区別することにより、通常作動時にてイニシャライズパターンのパルス信号を検出したときに直流モータ110を停止させて、乗員に違和感を与えることを未然に防止する。
以下に、上述のようにイニシャライズパターンのパルス信号を検出するために直流モータ110を最初に回転させるイニシャライズ方向の決め方について説明する。
例えば、図23(a)に示す例では、ドア制御範囲内にて初期化領域301よりもストッパ5b側の領域の方がストッパ5a側の領域に比べて大きい。このため、直流モータ110がストッパ5b側の領域で停止する確率の方が、直流モータ110がストッパ5a側の領域で停止する確率に比べて高い。
これに伴い、ストッパ5bからストッパ5a側に向けて直流モータ110を回転させる方向をイニシャライズ方向とした方が、ストッパ5aからストッパ5b側に向けて直流モータ110を回転させる方向をイニシャライズ方向とするよりも、短期間でイニシャライズパターンのパルス信号を検出する確率(すなわち、検出確率)が高い。
すなわち、ドア制御範囲内のうち初期化領域301を境界する二つの領域のうち、大きな領域から小さい領域に向けて直流モータ110を回転させる方向をイニシャライズ方向とすると、その逆方向をイニシャライズ方向とした場合に比べて、短期間でイニシャライズパターンのパルス信号を検出する確率が高くなる。
そこで、初期化設定の実施中にてイニシャライズパターンのパルス信号を検出する際に直流モータ110を回転させるイニシャライズ方向としては、イニシャライズパターンのパルス信号を検出する確率に基づき、決定すると、短期間で、イニシャライズパターンのパルス信号を検出できるので、初期化設定が短期間で完了することができる。
一方、初期化領域301がドア制御範囲のほぼ中央部に位置する場合には、イニシャライズ方向としては、イニシャライズパターンのパルス信号を検出する確率に基づき、決定することが不可能である。
或いは、イニシャライズパターンのパルス信号を検出する確率に基づき、例えば、ストッパ5bからストッパ5aへの回転方向をイニシャライズ方向として決定しても(ストッパ5b→ストッパ5a)、空調ケーシング5においてドア制御範囲の両端部のうちイニシャライズ方向の端部に該当する部位の肉厚寸法が薄い等の原因でその該当部位の機械的強度が小さく、その該当部位にストッパ5aを設置してもその機能を果たさない場合が有る。
すなわち、空調ケーシング5においてストッパ5aをその該当部位に設置しようとしてもその空調ケーシング5の構造上その該当部位の機械的強度が小さくてリンクレバー160の衝突に耐えることができず、ストッパ5aを設置することができない場合が有る。
この場合、空調ケーシング5にてドア制御範囲の両端部のうち機械的強度によってイニシャライズ方向を決める。すなわち、空調ケーシング5にて機械的強度の小さい端部から機械的強度の大きな端部に向いた方向をイニシャライズ方向と決定する。
(第6実施形態)
本第6実施形態では、図24に示すように、電子制御装置500および複数個のアクチュエータ100をデータ通信によるネットワークで接続して、電子制御装置500が各アクチュエータ100を多重通信にてそれぞれ制御することにより、初期化設定の実行時と通常作動時とでイニシャライズパターンの認識を区別する例について説明する。
この場合、アクチュエータ100毎に電気制御回路200が設けられ、電気制御回路200には、上述の第1実施形態にて説明したモータ駆動回路210および回転角度検出器220以外に、通信回路が設けられている。この通信回路は、電子制御装置500のCPUとの間で通信ラインを介して通信する。
なお、電気制御回路200としては、アクチュエータ100に接続されているコネクタ内に内蔵されており、このコネクタは、通信ライン、電源ライン、GNDラインなどを接続するためのものである。
電子制御装置500は、CPU(中央演算装置)、記憶回路、および定電圧回路などから構成されており、CPUは、各電気制御回路200の個々に対して目標位置を指定して個々の電気制御回路200によって該当するアクチュエータ100の出力軸127を目標位置まで回転させるようにするものである。
記憶回路は、コンピュータプログラムおよびCPUの処理に伴うデータを記憶するものであり、定電圧回路は、車載バッテリから電力供給されて一定電圧をCPUおよび記憶回路などに供給するとともに、電源ラインを介して複数の電気制御回路200のそれぞれに一定電圧を供給する。
次に、本実施形態の作動として、電子制御装置500が、ある1つのアクチュエータ100に対して初期化設定を実行させる一例について図25を用いて説明する。図25は、電子制御装置500による通信制御処理を示すフローチャートである。電子制御装置500は、図25に示すフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムを実行する。なお、図25では、電気制御回路200をICと省略する。
例えば、電子制御装置500は、ある1つのアクチュエータ100に対して初期化設定を行うことが必要であると判定したとき、イニシャライズフラグをセットするとともに、そのセットされたイニシャライズフラグを示すイニシャライズフラグ信号を、ある1つのアクチュエータ100に対応する電気制御回路200(以下、対応電気制御回路200ともいう)に送信する(S501)。
これに加えて、電子制御装置500は、ある1つのアクチュエータ100に対してイニシャライズ方向に回転させる指示信号を、対応電気制御回路200に送信する(S502)。
これに伴い、対応電気制御回路200が、このようなイニシャライズフラグ信号を受信すると、イニシャライズフラグをセットするとともに、ある1つのアクチュエータ100をイニシャライズ方向に回転させる。
その後、対応電気制御回路200が、イニシャライズパターンのパルス信号を検出したと判定したときには、イニシャライズ検出フラグをセットするとともに、このセットされたイニシャライズ検出フラグを示すイニシャライズ検出フラグ信号を電子制御装置500に送信し、かつ、ある1つのアクチュエータ100に対して電力供給を停止して回転を停止させる。このことにより、初期化設定が完了することになる。
また、電子制御装置500は、このようなイニシャライズパターン検出フラグ信号を受信すると(S503:YES)、対応電気制御回路200に対してイニシャライズフラグのリセットとイニシャライズ検出フラグのクリアとを指示する指示信号を送信すると共に、ある1つのアクチュエータ100の現在位置を送信する(S504)。
これに伴い、対応電気制御回路200は、指示信号および現在位置を受信すると、イニシャライズフラグをリセットするとともに、イニシャライズ検出フラグをクリアして、かつ、この送信された現在位置を基準位置として記憶する。
一方、上述の如くイニシャライズパターンのパルス信号を検出するのではなく、リンクレバー160がストッパ5aに衝突したときには、A相、B相のパルス信号の出力が停止される。
その後、電子制御装置500が、読み出したA相、B相の状態が所定時間変化しないと、A相、B相のパルス信号の出力が停止されたと判定して(S506:YES)、対応電気制御回路200に対して、ある1つのアクチュエータ100を逆イニシャライズ方向に回転させる指示信号を送信する(S507)。
その後、対応電気制御回路200が、この指示信号を受信すると、ある1つのアクチュエータ100を逆イニシャライズ方向に回転させる。そして、対応電気制御回路200が、イニシャライズパターンのパルス信号を検出した場合、イニシャライズ検出フラグをセットするとともに、このセットされたイニシャライズ検出フラグを示すイニシャライズ検出フラグ信号を電子制御装置500に送信する。
これに伴い、電子制御装置500が、このようなイニシャライズ検出フラグ信号を受信すると、S508にてYESと判定して、S504、S505の処理を実行する。
一方、対応電気制御回路200は、上述のようにある1つのアクチュエータ100を逆イニシャライズ方向に回転させた場合において、イニシャライズパターンのパルス信号を検出せず、電子制御装置500がA相、B相のパルス信号の出力停止を検出したとき、リンクレバー160がストッパ5bに衝突してロックしたとして、ある1つのアクチュエータ100の初期化設定(イニシャライズ)を失敗したと判定するとともに(S509:YES)、対応電気制御回路200に対して、ある1つのアクチュエータ100をイニシャライズ方向に所定パルス数分だけ、回転させる指示信号を送信する(S510)。
これに伴い、対応電気制御回路200は、この指示信号を受信すると、ある1つのアクチュエータ100をイニシャライズ方向に所定パルス数分だけ回転させる。このことにより、リンクレバー160をストッパ5bの反対方向に一定角度だけ回転させることになる。
また、電子制御装置500は、イニシャライズフラグをリセットして、このリセットされたイニシャライズフラグを示すイニシャライズフラグ信号を対応電気制御回路200に送信するとともに(S511)、ある1つのアクチュエータ100の初期化設定を失敗したとして、イニシャライズ失敗フラグをセットする(S512)。
また、対応電気制御回路200としては、このようなイニシャライズフラグ信号を受信すると、このイニシャライズフラグ信号を記憶するとともに、ある1つのアクチュエータ100に対して電力供給を停止して回転を停止させる。このことにより、ある1つのアクチュエータ100としては、初期化設定の動作を中止することになる。
以上説明した本実施形態によれば、電子制御装置500としては、初期化設定(すなわち、イニシャライズ)を行う場合、セットされたイニシャライズフラグを示すイニシャライズフラグ信号を電気制御回路200に送信し、電気制御回路200としても、イニシャライズフラグをセットする。そして、電気制御回路200としては、イニシャライズフラグがセットされているときのみ、初期化設定を行うことになるので、上述の第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、ある1つのアクチュエータ100では、リンクレバー160がストッパ5bに衝突したとき、ストッパ5bの撓みが生じるため、ストッパ5bにその組成変形等により劣化が生じる場合がある。
これに対して、本実施形態では、初期化設定の動作を中止するにあたり、リンクレバー160をストッパ5bの反対方向に一定角度だけ回転させるので、ストッパ5bの撓みが解消されてストッパ5bの劣化を抑制することができる。
(第7実施形態)
上述の第6実施形態では、電子制御装置500が、イニシャライズフラグ信号を電気制御回路200に送信して対応電気制御回路200に対して初期化設定の実施/不実施を指示する例を示した。
しかし、この場合、電子制御装置500及び対応電気制御回路200の間の通信フォーマットとしても、イニシャライズフラグ信号を送受信するために、少なくとも1ビット分情報が追加する必要になる。このため、対応電気制御回路200としても、イニシャライズフラグ信号を信号処理する必要があるため、その内蔵制御ロジック部の構成が複雑になる。
そこで、本第7実施形態では、電子制御装置500及び対応電気制御回路200の間で通常行われる通常制御で扱う情報を用いて、初期化設定の実施/非実施の指示を行なう。
すなわち、対応電気制御回路200としては、その記憶している現在位置情報が所定値の場合に、イニシャライズパターン(A/B相:0/0→1/1→0/0)のパルス信号を検出すればアクチュエータ100の回転を停止し、それ以外の現在位置情報の場合にイニシャライズパターンのパルス信号を検出しても、アクチュエータ100を停止せず、無視する。
したがって、電子制御装置500としては、初期化設定の実施時/通常作動時に対応電気制御回路200の記憶する現在位置情報を操作することで、初期化設定の実施/非実施を区別する。
例えば、対応電気制御回路200は、記憶している現在位置と、電子制御装置500から送信される目標位置を比較し、両者に差がある場合は、目標位置に現在位置が一致するよう、アクチュエータ100の駆動(すなわち、直流モータ110の通電)を行なう。
そして、アクチュエータ100では、その駆動中に出力されるA/B相のパルス信号を回転角度検出器220により認識し、パルス信号のパルス数のカウントを行い、現在位置を増減して更新する。そして、現在位置が目標位置と一致すれば、アクチュエータ100を停止する。
ここで、A/B相のパルス信号としてはA/B相の2bitのパルス情報を示しているため、現在位置情報(例えば10bit)のうち下位2bitの情報を用いることで、パルス情報と現在位置の下位2bitは一対一で対応することになる。
つまり、現在位置が4d(=100b)の場合にA/B相が0/0であれば、直流モータ110を駆動して現在位置が8d(=1000b)となっても必ずA/B相は0/0となっている。
そこで、現在位置の下位2bitが「00」の場合に、イニシャライズパターン(0/0→1/1→0/0)のA/B相のパルス信号を検出すると、対応電気制御回路200としては、直流モータ110を停止し、イニシャライズ検出フラグをセット(=1)とするように制御ロジック部を構成する。
上記構成にすることで、現在位置情報の下位2bitが「00」以外、例えば「11」の場合にイニシャライズパターンのパルス信号を検出しても、直流モータ110を停止せず、イニシャライズ検出フラグもセットしないため、初期化設定の実施時と非実施時が判別可能となる。
一方、電子制御装置500は、初期化設定の開始時において、イニシャライズパターンのパルス信号の検出時にて、現在位置情報の下位2bitが「00」となるように現在位置を対応電気制御回路200に送信する。このことで、対応電気制御回路200としては、イニシャライズパターンのパルス信号の検出時で停止し、通常作動時では、イニシャライズのパルス信号の検出したときの現在位置を、その下位2bitが「00」(これは、所定値に相当する)以外、例えば「11」となるように設定することにより(例:現在位置=1Bh)、イニシャライズパターンのパルス信号を無視することになる。
次に、電子制御装置500による具体的なイニシャライズ制御処理について図27、図26を用いて説明する。
図27は、電子制御装置500によるイニシャライズ制御処理を示すフローチャート、図26は、対応電気制御回路200に送信する現在地情報/目標位置の設定例を示す特性表である。
先ず、対応電気制御回路200からA/B相のパルス信号のパルス状態を読み出し(S521)、この読み出されたパルス状態を基に図26の特性表を参照して、イニシャライズパターンのパルス信号の検出時の現在位置(以下、イニシャライズ時の現在位置という)を算出し、この算出されるイニシャライズ時の現在位置を対応電気制御回路200へ送信する(S522)。
なお、図26の特性表では、アクチュエータ100の回転方向をイニシャライズ方向とした場合には、パルス数のカウントに伴って現在位置(8bit情報)を減算して目標位置に近づける例を示している。
その後、S523でイニシャライズ時の目標位置(「00h」)を送信し、対応電気制御回路200がアクチュエータ100(直流モータ110)をイニシャライズ方向に回転駆動する。その後、対応電気制御回路200からイニシャライズ検出フラグを受信されたとき、上述の第6実施形態と同様に、イニシャライズ検出フラグをクリアする指示信号を送信すると共に、イニシャライズ検出時の現在位置を送信する(S525、S526)。
一方、対応電気制御回路200にてイニシャライズパターンのパルス信号を検出できず、ストッパ5a、5bの一方にリンクレバー160に衝突してロックした場合は、電子制御装置500としては、ロックした位置で再度、A/B相のパルス信号のパルス状態を読み出す(S528)。そして、この読み出されたパルス状態と図26の特性表とを基に、反イニシャライズ方向へ駆動時での現在位置および目標位置を算出すると、この算出される現在位置を送信するとともに(S529)、目標位置の送信を行なう(S530)。
なお、図26の特性表では、アクチュエータ100の回転方向を反イニシャライズ方向とした場合には、パルス数のカウントに伴って現在位置(8bit情報)を増加して目標位置(FFh)に近づけるようにする例を示している。
その後、電子制御装置500としては、対応電気制御回路200からイニシャライズ検出フラグを受信したときには(S531:YES)、イニシャライズ検出フラグのクリア指示処理(S525)、現在位置の送信処理(S526)を実行する。
また、電子制御装置500としては、対応電気制御回路200からイニシャライズ検出フラグを受信できず、パルス停止検出信号を受信したとき(S532:YES)、ロックした位置で再度、A/B相のパルス信号のパルス状態を読み出す(S533)。
そして、この読み出されたパルス状態と図26の特性表とを基に、イニシャライズ方向へ駆動時での現在位置を算出するとともに、この算出された現在位置を送信するとともに(S534)、ある1つのアクチュエータ100をイニシャライズ方向に所定パルス数分だけ、回転させる指示信号を送信する。さらに、イニシャライズ方向に所定パルス数分だけ回転させた場合の目標位置を送信するとともに、イニシャライズ失敗フラグをセット(イニシャライズ失敗フラグ=1)する(S536)。
これに伴い、対応電気制御回路200としては、ある1つのアクチュエータ100をイニシャライズ方向に所定パルス数分だけ、回転させるとともに、電子制御装置500から送られる現在位置、および目標位置を記憶する。
(第8実施形態)
上述の第7実施形態では、イニシャライズ開始時(つまり、初期化設定の開始時)において、まず、A/B相のパルス状態を読み出し、その値をもとに図26の特性表を参照してイニシャライズパターンのパルス信号の検出時の現在位置を決定する。この場合、この現在位置を決定するにあたっては、直流モータ110が停止していることが条件となる。
しかし、図23(b)に示すように、直流モータ110を駆動しても、イニシャライズパターンのパルス信号を検出することなく、ストッパ5aにリンクレバー160が衝突してロックしたなどの場合には、対応電気制御回路200としては、そのロック位置でA/B相のパルス状態を読み出し、その読み出されたパルス状態を基に現在位置を決定して反転することも可能であるが、ロックした状態ではストッパ5a(ロック手段)に撓みが生じ、ロックを解除(モータ通電OFF)すると反力で直流モータ110の回転軸が逆方向に戻される。
よって、対応電気制御回路200としては、直流モータ110のロック位置でイニシャライズ条件(つまり、イニシャライズパターンのパルス信号の検出時の現在位置)を決定しようとしても、直流モータ110が停止せず不安定なため、イニシャライズ条件にずれが生じ、そのまま反転させると初期化領域301まで回転させても、条件外れ(すなわち、現在位置の下位2bitが「00」以外になっている場合等)によりモータを停止、すなわちイニシャライズパターンのパルス信号を検出できない状況が考えられる。
そこで、図28に示すように、ストッパ5aにてロック後反転させる場合には、対応電気制御回路200が、イニシャライズパターンのパルス信号の検出位置(つまり、初期化領域301)を必ず跨ぐ目標位置(パルス数)を設定し、作動させてから、反対側のストッパ5bにてロックするに先立ち確実に直流モータ110が停止した後にて、初期化設定を開始する。
すなわち、電子制御装置500としては、対応電気制御回路200からA/B相のパルス信号のパルス状態を読み出して、この読み出されたパルス状態を基に図26の特性表を参照して、イニシャライズパターンのパルス信号の検出時の現在位置を決定するとともに、この決定される現在位置を対応電気制御回路200に送信する。その後、電子制御装置500及び対応電気制御回路200は、上述の第7実施形態と同様に、処理する。
(第9実施形態)
上述の第5〜8実施形態においては、イニシャライズ方向が予め決定されており、図23(b)の例では、FACE付近にて(つまり、ストッパ5aの近くにて)停止している場合にてイニシャライズ方向をストッパ5aの方向として、初期化設定(イニシャライズ)を開始すると、ストッパ5aで必ずロックすることになり、頻繁に行なわれた場合は直流モータ110やストッパ5a等の破損が心配となる。
そこで、図23(a)の例では特にフェイスモードに設定されている状況が多いと考えられる夏季に初期化設定(イニシャライズ)を開始する場合、イニシャライズ方向をDEF側にすることで、ロックを回避できる。
なお、エアミックスドア1をアクチュエータ100にて回転駆動する場合において、初期化領域301がドア制御範囲のうちCOOL側(室内に吹き出す空気温度を下げる方向)とHOT側(室内に吹き出す空気温度を上げる方向)の中間点に存在する場合、イニシャライズ方向を季節に応じて変更して、例えば夏季はHOT側に作動させる方向をイニシャライズ方向し、冬期は、COOL側へ作動させる方向をイニシャライズ方向とする。
このことにより、初期化設定を開始後にてロックすることを回避するとともに、初期化設定に要する時間を短縮することが出来る。
ここで、季節を判定するにあたっては、対応電気制御回路200のCPUが、初期化設定手段として、車室内の空気温度を検出する内気温センサの検出温度を用いてもよい。また、対応電気制御回路200のCPUが、車室外の空気温度を検出する外気温センサの検出温度を用いて季節を判定してもよく、さらに、対応電気制御回路200のCPUが、外気温センサの検出温度および内気温センサの検出温度の双方を用いて季節を判定してもよい。
(第10実施形態)
上述第5〜9実施形態では、イニシャライズパターンのパルス信号を検出、または無視する方法について述べたが、イニシャライズパターンのパルス信号としては、接点ブラシ155〜157及びパターンプレート153の間の機械的接点を基に発生するものであるため、接点ブラシ155〜157及びパターンプレート153のパターンが磨耗したり、チャタリングや異物混入により所望のパルス出力が得られない場合や、上述の第6、7実施形態に示す如く、電子制御装置500及び対応電気制御回路200間で通信を行なうため、電気ノイズにより通信情報に誤りが生じたりした場合に、イニシャライズパターンのパルス信号が検出できない状況が考えられる。
この場合、初期化設定の開始時にてイニシャライズパターンのパルス信号が検出できない原因が除去されないかぎり、イニシャライズパターンのパルス信号の未検出を繰り返すため、直流モータ100の作動回数が増加するだけでなく、ストッパ5a、5bでのロック回数の増加によるストッパ5a、5b等の破壊、また電流消費大のためバッテリ電圧低下等の悪影響が考えられる。
そこで、所定回数以上初期化領域301を通過しても、イニシャライズパターンのパルス信号を検出が出来なかった場合、不成立とみなし、直流モータ110を停止する必要がある。
そこで、電子制御装置500としては、対応電気制御回路200に対して、次のように制御処理を行う。
すなわち、対応電気制御回路200がストッパ5a、5bのいずれか一方により直流モータ110がロックする毎にイニシャライズパターンのパルス信号を未検出であるとアクチュエータ100毎に判定して、直流モータ110を反転させるように指示するものの、その反転回数が、一定回数を超えたと判定したとき、イニシャライズパターンのパルス信号の検出に失敗したと判定して、直流モータ110を停止させる。
この場合、各ドアの「フェイルセーフを行う位置」(図29参照)で停止させることで、窓曇りを除去できなかったり、温風が吹出さないといった安全に関わる不具合を回避することができる。なお、図29では、エアミックスドア、吹出口ドア、内外気吸込口ドア、冷風バイパスドアなどのフェイルセーフを行う位置を示す。
例えば、図23(c)に示すように、初期化領域301を最低2回通過するよう、反転回数を設定することが好ましい。具体的には、反転回数を「3」(一定回数)として設定して、直流モータ110がストッパ5a、5bのうち一方でロックして反転して、その後、他方のストッパによりロックして反転して(反転手段)、その後で一方のストッパでロックしたとき、直流モータ110を反転させるとともに、イニシャライズパターンのパルス信号の検出を失敗したと判定して、直流モータ110を「フェイルセーフを行う位置」にて停止させることになる(フェイルセーフ停止手段)。この場合、イニシャライズパターンのパルス信号の一時的なノイズ等による検出ミスに対して有効となる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、イニシャライズパターンとしては、2相のパルス信号が同時にローレベル信号→ハイレベル信号→ローレベル信号(「00」→「11」→「00」)というように切り替わるパターンを用いたが、これに代えて、ハイレベル信号→ローレベル信号→ハイレベルレベル信号(「11」→「00」→「11」)というように切り替わるパターンを用いてもよい。さらに、図30に示すように、イニシャライズパターンとしては、2相のパルス信号が同時にローレベル信号→ハイレベル信号(「00」→「11」)というように切り替わるパターンを用いるようにしてもよい。
この場合、第3接点ブラシ157と導電部154aとが接触する通電(ON)状態にしておき、第1、2接点ブラシ155、156と導電部151a、152aとが接触する通電(ON)状態から、同時に、非通電(OFF)状態(第1、2接点ブラシ155、156と非導電部151b、152bとが接触している状態)に切り替わるようにしておく。
さらに、イニシャライズパターンとしては、2相のパルス信号が同時にハイレベルレベル信号→ローレベル信号(「11」→「00」)に切り替わるものを用いてもよい。さらに、イニシャライズパターンとしては、直流モータ110の回転角度を検出するためのパターンと異なるパターンであるならば、「01」→「10」→「01」というように2相のパルス信号の振幅が変化するパターンを用いてもよく、「11」→「00」→「11」というように2相のパルス信号の振幅が変化するパターンを用いてもよく、或いは、「10」→「01」→「10」というように2相のパルス信号の振幅が変化するパターンを用いてもよい。
なお、「01」は、A相がローレベル信号でB相がハイレベル信号の状態、「00」は、A相、B相が双方ともローレベル信号の状態、「11」は、A相、B相が双方ともハイレベル信号の状態、「10」はA相がハイレベル信号でB相がローレベル信号の状態を示す。
上述の実施形態では、直流モータ110への給電を停止させて直流モータ110の回転を電気的に停止させた位置を原点位置として記憶し、その後は、原点位置からずれた位置を作動基準として直流モータ110を制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば原点位置を作動基準としてもよい。
また、上述の実施形態では、摺動接点方式の位置検出装置を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光学式のエンコーダ等のその他の位置検出装置にも適用することができる。
上述の実施形態では、出力軸127にパルス発生器158を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばパルス発生器158(パルスプレート153)用にさらに減速した回転部を設けパルス信号を発生させてもよい。
また、上述の実施形態では、両パルスパターン151、152より内周側に設けられたコモンパターン(共通導電部パターン)154を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、両パルスパターン151、152より外周側にコモンパターン154を設ける、又は両パルスパターン151、152間にコモンパターン154を設けるようにしてもよい。
上述の第10実施形態では、ストッパ5a、5bのいずれか一方により直流モータ110がロックする毎にイニシャライズパターンのパルス信号を未検出と判定する例について説明したが、これに限らず、直流モータ110が一定角度以上回転させても、イニシャライズパターンのパルス信号を検出できないときには、イニシャライズパターンのパルス信号を未検出と判定して、直流モータ110を反転させてもよい。
上述の第10実施形態では、電子制御装置500及び複数の電気制御回路200が通信制御する構成で、電子制御装置500は、直流モータ110の反転回数が、一定回数を超えたと判定したとき、イニシャライズパターンのパルス信号の検出に失敗したと判定して、直流モータ110を停止させるように対応電気制御回路200に指示する例について説明したが、これに限らず、電子制御装置500からの指示に関わりなく、図7に示すごとく、電気制御回路200は、アクチュエータ100を制御する場合において、直流モータ110の反転回数が、一定回数を超えたと判定したとき、イニシャライズパターンのパルス信号の検出に失敗したと判定して、直流モータ110を停止させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、車両用空調装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。