以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の斜視図である。図2は、図1に示される画像形成装置1の内部構造を概略的に示す図である。また、図3は、画像形成装置1の内部において、転写位置TPの周辺を拡大した図である。なお、図2には、図1の上部筐体22は現れていない。図1及び図2に示される画像形成装置1は、いわゆるモノクロプリンター機であるが、他の実施形態において、画像形成装置は、カラープリンター、ファクシミリ装置、これらの機能を備える複合機やトナー画像をシートに形成するための他の装置であってもよい。尚、以下の説明で用いられる「上」や「下」、「前」や「後」、「左」や「右」といった方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。また、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパや画像形成処理を受ける他のシート材料或いは画像形成処理以外の任意の処理を受けるシート材料を意味する。
画像形成装置1は、略直方体形状の主筐体2を含む。主筐体2は、略直方体形状の下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される略直方体形状の上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを連結する連結筐体23とを含む。連結筐体23は、主筐体2の右縁及び背面縁に沿って延びる。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23で囲まれる排出空間24に印刷処理が施与されたシートが排出される。
上部筐体22の正面方向に突出する操作部221は、例えば、LCDタッチパネル222を含む。操作部221は、画像形成処理に関する情報を入力可能に形成される。使用者は、例えば、LCDタッチパネル222を通じて、印刷されるシートの枚数等を入力したり、印刷濃度等を入力したりすることができる。上部筐体22内には、主に原稿の画像を読み取るための機器や画像形成装置1の全体の制御を司る電子回路が収容される。
上部筐体22の上に配設される押さえカバー223は、原稿を押さえるために用いられる。押さえカバー223は、上部筐体22に上下に回動可能に取り付けられる。使用者は、押さえカバー223を上方に回動させ、上部筐体22上に原稿を載置する。その後、使用者は操作部221を操作して、原稿の画像を上部筐体22内に配設された機器に読み取らせることができる。
下部筐体21の右側面には、手差トレイ240が配設される。手差トレイ240は、下端240A(図2)を支点として、上端240B側が上下に回動可能である。手差トレイ240が下方に回動され、手差トレイ240が下部筐体21の右方に突出する位置にあるとき、ユーザーは手差トレイ240上にシートを載置可能である。手差トレイ240上のシートは、操作部221を通じてユーザーによって入力された指示に基づき、下部筐体21内に引き込まれた後、画像形成処理を施与され、排出空間24へ排出される。
図2を参照して、画像形成装置1は、カセット110と、給紙部11と、第2給紙ローラー114と、中間ローラー115と、レジストローラー対116と、画像形成部120とを備える。給紙部11は、ピックアップローラー112と、第1給紙ローラー113と、を備える。給紙部11は、シート搬送路PPにシートPを送り出す。シート搬送路PPは、給紙部11から、中間ローラー対115、レジストローラー対116を介して、画像形成部120内に配設された転写位置TP(図3)を通過するように配設された搬送路である。
カセット110は、内部にシートPを収容する。カセット110は、下部筐体21から正面方向(図2の紙面手前方向)に引出可能である。カセット110内に収容されたシートPは、下部筐体21内で上方に送り出される。その後、シートPは、操作部221を通じて使用者によって入力された指示に基づき、下部筐体21内で画像形成処理を施与され、排出空間24へ排出される。カセット110は、シートPを支持するリフト板111を備える。リフト板111は、シートPの先頭縁を上方に押し上げるように傾斜する。
ピックアップローラー112は、リフト板111によって上方に押し上げられたシートPの先頭縁上に配置される。ピックアップローラー112が回転すると、シートPはカセット110から引き出される。
第1給紙ローラー113は、ピックアップローラー112のシート搬送方向下流側に配設される。第1給紙ローラー113は、シートPを更に下流側に送り出す。第2給紙ローラー114は、手差しトレイ240の内側に配設される。第2給紙ローラー114は、手差トレイ240上のシートPを下部筐体21内に引き込む。使用者は、カセット110に収容されたシートP、または手差トレイ240の上に載置されたシートPを選択的に使用することができる。
中間ローラー対115(搬送ローラー)は、第1給紙ローラー113、第2給紙ローラー114のシート搬送方向下流側に配設される。中間ローラー対115は、第1給紙ローラー113、第2給紙ローラー114によって送り出されたシートPを更に下流へ搬送する。
レジストローラー対116は、シート搬送方向と直交する方向のシートの位置を規定する。これにより、シートP上に形成される画像の位置が調整される。レジストローラー対116は、ローラー間にニップ部RP(図3)を形成する。レジストローラー対116は、画像形成部120において、シートPにトナー画像が転写されるタイミングに合わせて、シートPを画像形成部120に搬送する。また、レジストローラー対116は、シートPの斜行(スキュー)を補正する機能を備える。
図2および図3を参照して、画像形成部120は、感光体ドラム121と、帯電器122と、露光装置123と、現像装置124と、トナーコンテナ125と、転写ローラー126と、搬送ベルト180と、クリーニング装置127と、を備える。
感光体ドラム121は、略円筒体の形状を有する。感光体ドラム121は、周面に静電潜像が形成されるとともに、該静電潜像に応じたトナー画像を担持する。
帯電器122は、所定の電圧が印加され、感光体ドラム121の周面を略一様に帯電させる。露光装置123は、帯電器122によって帯電された感光体ドラム121の周面に、レーザー光を照射する。該レーザー光は、画像形成装置1に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータといった外部装置(図示せず)から出力された画像データに従って、照射される。この結果、感光体ドラム121の周面には、画像データに対応する静電潜像が形成される。
現像装置124は、静電潜像が形成された感光体ドラム121の周面にトナーを供給する。トナーコンテナ125は、現像装置124へトナーを供給する。トナーコンテナ125は、現像装置124に順次又は必要に応じてトナーを供給する。現像装置124がトナーを感光体ドラム121に供給すると、感光体ドラム121の周面に形成された静電潜像が現像(可視化)される。この結果、感光体ドラム121の周面に、トナー画像が形成されることとなる。現像装置は、周面にトナーを担持する現像ローラー124A(図3)を備える。現像ローラー124Aは、現像位置DPにおいて、感光体ドラム121に対向して配置される。現像ローラー124Aは、回転駆動され、感光体ドラム121にトナーを供給する。
転写ローラー126は、転写位置TP(図3)において、感光体ドラム121の周面に対向して配設される。転写ローラー126は、搬送ベルト180の内周面に当接して、感光体ドラム121に対向するように配設される。
搬送ベルト180は、無端状ベルトからなる。搬送ベルト180は、回転駆動され、表面にシートPを担持して、転写位置TPにシートPを搬送する。搬送ベルト180は、内周面を介して、転写ローラー126に回転駆動力を伝達する。搬送ベルト180は、転写ローラー126よりもシート搬送方向上流側および下流側において、張架ローラー182および駆動ローラー181によって張架されている。駆動ローラー181は、後記の第3駆動部513から回転駆動力が伝達され、搬送ベルト180を回転させる。転写ローラー126および張架ローラー182は、搬送ベルト180に連れ回って、搬送ベルト180と同じ速度で回転する。シートPが転写位置TPを通過するときに、感光体ドラム121の周面に形成されたトナー画像が、シートPに転写される。
クリーニング装置127は、シートPへトナー画像が転写された後に、感光体ドラム121の周面に残るトナーを除去する。クリーニング装置127によって、清浄化された感光体ドラム121の周面は、再度、帯電器122の下方を通過し、一様に帯電される。その後、上述のトナー画像の形成が新たに行われる。
画像形成装置1は、画像形成部120よりも搬送方向下流側に、シートP上のトナー画像を定着させる定着装置130(図2)を更に備える。定着装置130は、シートP上のトナーを溶融させる加熱ローラー131と、シートPを加熱ローラー131に密着させる圧力ローラー132と、を備える。シートPが加熱ローラー131と圧力ローラー132との間を通過すると、トナー画像は、シートPに定着される。
画像形成装置1は、定着装置130の下流に配設された搬送ローラー対133と、搬送ローラー対133の下流に配設された排出ローラー対134と、を更に備える。シートPは、搬送ローラー対133および排出ローラー対134によって、下部筐体21から排出される。下部筐体21から排出されたシートPは、上壁210上に積み重ねられる。
更に、画像形成装置1は、第1センサー510および第2センサー511を備える。第1センサー510および第2センサー511は、シート搬送路PPにおいて、シートPの位置を検出する。第1センサー510および第2センサー511には、公知の光センサーなどが用いられる。すなわち、シート搬送路PPにおいて、第1センサー510および第2センサー511がそれぞれ対向する位置に、シートPが存在しない場合、第1センサー510および第2センサー511は、0VのLOW信号を出力する。一方、第1センサー510および第2センサー511がそれぞれ対向する位置に、シートPが存在する場合、第1センサー510および第2センサー511は、+5VのHIGH信号を出力する。このように、シートの有無に応じて、第1センサー510および第2センサー511が、HIGH信号およびLOW信号を出力することによって、シートPの位置が検出される。
第1センサー510は、シート搬送路PPにおける中間ローラー対115の直上流の位置に配置される。第1センサー510は、中間ローラー対115が回転駆動されるタイミングが制御されるために使用される。第2センサー511は、シート搬送路PPにおいて、レジストローラー対116の直上流の位置に配設される。第2センサー511は、レジストローラー対116が回転駆動されるタイミングが制御されるために使用される。また、第2センサー511は、シートPの先端部が転写位置TPの直上流の位置に到達する時刻を予測するために使用される。
<シートPの転写位置突入時の課題について>
次に、シートPが転写位置TPに搬送される際の課題について説明する。図4は、シートPが、転写位置TPに搬送される際の模式図である。感光体ドラム121および現像ローラー124Aは、矢印A1およびA2方向に、それぞれ回転駆動される。感光体ドラム121と転写ローラー126とが対向する位置に転写位置TPが形成される。駆動ローラー181が矢印A7方向に回転駆動されることで、搬送ベルト180、転写ローラー126、張架ローラー182が、それぞれ矢印A3、A5、A6方向に回転される。シートPが、転写位置TPに搬送されるタイミングに合わせて、感光体ドラム121上には、不図示の静電潜像が形成される。そして、該静電潜像は、現像ローラー124Aによって、トナー像TIとして可視化される。
ここで、転写位置TPに向かって搬送されるシートPの先端部は、転写位置TPに到達する前に、感光体ドラム121の周面に接触する。普通紙などの比較的薄い紙がシートPとして使用される場合には、該普通紙は、感光体ドラム121の回転力によって、転写位置TPに、容易に進入する。しかし、厚さが0.10mm以上の厚紙の場合には、図4に示すように、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触することによって、感光体ドラム121の矢印A1方向の回転が、一時的に妨げられる。この際、現像位置DPでは、シートPに転写されるトナー画像TIが形成されている。そして、図4の拡大図にて示すように、感光体ドラム121の回転が一時的に妨げられると、感光体ドラム121の周面上に形成されたトナー画像TIを、現像ローラー124A上に担持されたトナー層(不図示)が掻きとってしまい、画像欠陥CTが生じてしまう。なお、現像位置DPに対向する感光体ドラム121の周面が非画像部であった場合には、感光体ドラム121の回転が一時的に妨げられた際に、現像ローラー124A上のトナー層が、通常以上に、感光体ドラム121の周面に接触する。このため、感光体ドラム121上にトナーかぶりが生じてしまう。
このように、感光体ドラム121からシートPにトナー画像が転写される構成において、転写位置TPに比較的厚いシートPが搬送された場合、転写位置TPよりもシート搬送方向上流側の位置で、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する。この際、感光体ドラム121の回転が一時的に不安定になる不具合が生じてしまう。上記のような課題を解決するために、本実施形態では、転写位置TPに進入する際のシートPの搬送速度が、好適に制御される。
次に、本実施形態に係る画像形成装置1の主要な電気的構成について説明する。画像形成装置1は、当該画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部500を備える。図5は、制御部500の機能ブロック図である。制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部500には、前述の第1センサー510、第2センサー511に加え、印加部525、ドラム駆動部520、第1駆動部521、第2駆動部522、第3駆動部523、トルクセンサー509などが電気的に接続されている。また、制御部500は、全体制御部501、速度制御部502、時間計測部503、記憶部504、シート情報取得部505を備える。
印加部525は、直流電源と交流電源とから構成され、全体制御部501からの制御信号に基づき、現像ローラー124Aに現像バイアスを印加する。
ドラム駆動部520は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、全体制御部501からの制御信号に応じて、感光体ドラム121を回転駆動させる。なお、ドラム駆動部520は、転写位置TPにおいて、感光体ドラム121の周面が、搬送ベルト180および転写ローラー126の周面よりも、僅かに遅い速度で回転するように、感光体ドラム121を回転させる。具体的には、感光体ドラム121の周面は、搬送ベルト180および転写ローラー126の周面よりも、1〜3%遅い速度で回転される。これにより、感光体ドラム121と転写ローラー126との間に、速度差が生じている状態で、シートPにトナー画像が転写される。したがって、転写位置TPでニップされるトナー画像の中央部が転写されにくい中抜け現象が、抑止される。また、感光体ドラム121に伝達された回転駆動力は、不図示のギア列によって現像ローラー124Aに伝達され、該現像ローラー124Aを回転駆動させる。
第1駆動部521は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、全体制御部501からの制御信号に応じて、中間ローラー対115を回転駆動させる。
第2駆動部522は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、全体制御部501からの制御信号に応じて、レジストローラー対116を回転駆動させる。
第3駆動部523は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、全体制御部501からの制御信号に応じて、駆動ローラー181を回転駆動させる。駆動ローラー181が回転駆動されることにより、搬送ベルト180が回転される。
トルクセンサー509は、中間ローラー対115の駆動軸(不図示)に連結される。トルクセンサー509は、シート搬送路PPを搬送されるシートPが、中間ローラー対115のニップ部に挿通されたタイミングで、中間ローラー対115のトルク変動を検知する。トルクセンサー509は、該トルク変動に応じた電気信号を、制御部500に出力する。トルクセンサー509によって検出された電気信号は、シート情報取得部505によって取得され、シートPの紙厚情報に変換される。
制御部500は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、全体制御部501、速度制御部502、時間計測部503、記憶部504、シート情報取得部505を備えるように機能する。
全体制御部501は、ドラム駆動部520、第1駆動部521、第2駆動部522、第3駆動部523を制御して、それぞれ、感光体ドラム121、現像ローラー124A、中間ローラー対115、レジストローラー対116、駆動ローラー181を回転駆動させる。全体制御部501は、また、印加部525を制御して、現像ローラー124Aに現像バイアスを印加させる。
速度制御部502は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181の回転数を制御する。速度制御部502は、時間計測部503によってカウントされた第1カウント時間TC1を参照し、搬送されるシートPの先端部が、感光体ドラム121の周面に近づいたタイミングで、駆動ローラー181の回転数を下げる。これにより、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度Vが減速される。速度制御部502は、更に、シートPの先端部が、転写位置TPに近づいたタイミングで、駆動ローラー181の回転数を上げる。これにより、シートPの搬送速度Vが増速される。
時間計測部503は、第2センサー511がシートPの先端部を検出したタイミングから、第1カウント時間TC1のカウントを開始する。時間計測部503によって、カウントされる第1カウント時間TC1は、レジストローラー対116の回転開始タイミングや、搬送ベルト180の減速および増速タイミングの判断に使用される。第1カウント時間TC1は、記憶部504に格納される。
記憶部504は、時間計測部503によってカウントされた第1カウント時間TC1を格納する。また、記憶部504には、第1カウント時間TC1と比較されるための時間閾値T0、T1、T2が、予め、格納されている。時間閾値T0は、レジストローラー対116が回転されるタイミングが制御される際に使用される。時間閾値T1は、搬送ベルト180が減速されるタイミングが制御される際に使用される。また、時間閾値T2は、搬送ベルト180が増速されるタイミングが制御される際に使用される。更に、記憶部504には、シートPの種類に応じた搬送ベルト180の減速速度V1、V2が、予め格納されている。
シート情報取得部505は、中間ローラー対115のトルク変動に応じて、トルクセンサー509から出力された電気信号を取得する。更に、シート情報取得部505は、該電気信号のレベルに応じて、シートPの紙厚情報を導出する。該紙厚情報は、速度制御部502によって参照され、紙厚情報に応じて、シートPの搬送速度が制御される。
<シートPの搬送制御>
次に、本実施形態に係るシートPの搬送動作の制御について詳述する。図6は、シートPの搬送動作におけるフローチャートである。図3、図5および図6を参照して、制御部500によって、画像形成装置1の画像形成動作が開始されると、給紙部11が、シートPを、カセット110から給紙する(ステップS001)。この際、給紙部11は、搬送速度V0(第1の速度)をもって、シートPを給紙する。
やがて、第1センサー510が、給紙部11によって給送されたシートPの先端部を、検出する(ステップS002でYES)。この際、第1センサー510の出力信号が、LOW信号からHIGH信号に切り替わる。第1センサー510から、HIGH信号が出力されると、全体制御部501は、第1駆動部521を制御して、中間ローラー対115を回転駆動させる(ステップS003)。中間ローラー対115は、搬送速度V0をもって、シートPを搬送する。これにより、シートPがレジストローラー対116に向かって、更に搬送される。
中間ローラー対115が回転駆動され、シートPが中間ローラー対115のニップ部を通過すると、トルクセンサー509が、中間ローラー対115のトルク変動を検出する(ステップS004)。トルクセンサー509は、該トルク変動量に応じた電気信号を、制御部500に出力する。該電気信号は、シート情報取得部505に取得される。
中間ローラー対115によって、シートPがシート搬送路PPを更に下流に向かって搬送されると、第2センサー511が、シートPの先端部を検出する(ステップS005でYES)。この際、第2センサー511の出力信号が、LOW信号からHIGH信号に切り替わる。第2センサー511から、HIGH信号が出力されると、時間計測部503は、第1カウント時間TC1のカウントを開始する(ステップS006)。時間計測部503は、第1カウント時間TC1が、予め記憶部504に格納された時間閾値T0となるまで、第1カウント時間TC1のカウントを行う。この時間閾値T0は、予め、T0=T+ΔTとして算出される。時間Tは、シート搬送路PPにおいて、第2センサー511が対向する位置から、レジストローラー対116のニップ部RPまでの距離を、シートPの搬送速度V0で除した値である。すなわち、時間Tは、シートPの先端部が、第2センサー511からレジストローラー対116のニップ部RPまで移動する時間に相当する。
一方、ΔTは、予め設定された遅延時間である。該遅延時間は、シートPの先端が、ニップ部RPに到達したのち、レジストローラー対116が回転駆動されるまでの時間に相当する。該遅延時間ΔTは、レジストローラー対116において、シートPの斜行(スキュー)を補正するために設定される。シートPが、シート搬送方向に対して傾斜しながらシート搬送路PPを搬送された場合、転写位置TPにおいて、シートPに対して傾斜したトナー画像が転写されてしまう。このため、レジストローラー対116において、該シートPの傾斜が矯正される。すなわち、上記の遅延時間ΔTが設定されることで、シート搬送路PPを搬送されたシートPは、回転が停止された状態のレジストローラー対116に接触する。この際、傾斜していたシートPの先端縁では、シート搬送方向と直交する方向において、先に搬送されてきた領域が、レジストローラー対116に接触し、停止した後、遅れて搬送されてきた領域がレジストローラー対116に接触する。先端縁が停止されたシートPでは、シート搬送方向の中央部に撓みが生じる。そして、レジストローラー対116が回転駆動されることによって、シートPの先端縁がシート搬送方向と直交した方向に揃った状態で、シートPが再び搬送され始める。この結果、シートPの傾斜が矯正される。
かくして、時間計測部503が、第1カウント時間TC1のカウントを継続し、該第1カウント時間TC1が時間閾値T0に達すると(ステップS007でYES)、全体制御部501は、第2駆動部522を制御して、レジストローラー対116を回転駆動させる(ステップS008)。これにより、シートPは、転写位置TPに向かって、更に、搬送される。また、全体制御部501は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181を回転駆動させる。この際、レジストローラー対116および搬送ベルト180の周面が、搬送速度V0(第1の速度)によって回転される。シートPは、レジストローラー対116から、搬送ベルト180の周面に、同じ搬送速度V0をもって、受け渡される。なお、時間計測部503による第1カウント時間TC1のカウントは継続される。
レジストローラー対116および搬送ベルト180が回転駆動されると、速度制御部502は、シート情報取得部505から、紙厚情報を取得する。この際、シート情報取得部505は、ステップS004において、トルクセンサー509から取得したトルク変動量に基づいて、シートPの紙厚情報を取得する。表1は、中間ローラー対115のトルク変動量と、シート情報取得部505において取得される紙厚情報との関係を示したものである。
シート情報取得部505は、トルクセンサー509から取得した中間ローラー対115のトルク変動量が、X(%)以上である場合(ステップS009でYES)は、紙厚が0.10mm以上であると判定する。シート情報取得部505は、更に、前記トルク変動量が、Y(%)以上である場合(ステップS010でYES)は、紙厚が0.20mm以上であると判定する。なお、トルク変動量が、Y(%)未満である場合(ステップS010でNO)は、シート情報取得部505は、紙厚が0.10mm以上0.20mm未満であると判定する。また、ステップS009において、トルク変動量がX未満である場合(ステップS009でNO)は、シート情報取得部505は、紙厚が0.10mm未満であると判定する。
以下に、シートPの紙厚が0.20mm以上の場合(ステップS010でYES)について説明する。速度制御部502は、記憶部504に予め格納された記憶情報のうち、紙厚が0.20mm以上の場合の減速速度V2(第2の速度)、時間閾値T12、T22を参照する。表2は、記憶部504に予め格納されたこれらの記憶情報を示している。
なお、表2では、減速速度V1およびV2は、搬送速度V0に対する比で表されている。また、時間閾値T1(T11、T12)、T2(T21、T22)は、レジストローラー対116のニップ部RPから転写位置TPまでの距離を、搬送速度V0で除した基準時間を100として、該基準時間に対する比で表されている。
時間計測部503によってカウントされる第1カウント時間TC1が、時間閾値T12に達すると(ステップS011でYES)、速度制御部502は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181の回転数を減速させる(ステップS012)。この際、駆動ローラー181は、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度がV2(=0.6×V0)となるように、減速される。
更に、時間計測部503によってカウントされる第1カウント時間TC1が、時間閾値T22に達すると(ステップS013でYES)、速度制御部502は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181の回転数を増速させる(ステップS014)。この際、駆動ローラー181は、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度がV0に復帰するように、増速される。
図4および図7を参照して、搬送ベルト180の搬送速度が減速および増速される際の、シートPの先端部の様子について説明する。図7は、シート搬送路PPを搬送される際の、シートPの先端部の搬送速度の推移を表している。横軸は、シート搬送路PP上でのシートPの先端部の位置を概略的に表しており、位置P1からP7は、図3にも示される。給紙部11によって搬送速度V0によって搬送されたシートPは、レジストローラー対116のニップ部RP(P4)において一旦停止された後、再度、搬送速度V0をもって搬送される。そして、時間閾値T12に対応する減速位置P51において、シートPは、搬送速度V2に減速される。該減速位置P51は、図4に示すように、シートPの先端部が、感光体ドラム121の周面に当接する位置よりも、シート搬送方向上流側に設定される。したがって、シートPは、搬送速度V2まで減速された状態で、感光体ドラム121の周面に接触しながら、転写位置TPに進入される。このため、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する際の衝撃が弱められる。この結果、感光体ドラム121の回転が安定して維持される。なお、図7において、Vprは、搬送ベルト180に対して速度差をもって回転される感光体ドラム121の周面の速度である。
シートPは、時間閾値T22に対応する増速位置P61において、再び、搬送速度V0に増速される。増速位置P61は、転写位置TPよりもシート搬送方向上流側に設定される。したがって、シートPの搬送速度がV0に復帰した状態で、シートPにトナー画像が転写される。
図6のステップS010において、シートPの紙厚が0.10mm以上、0.20mm未満と判定された場合(ステップS010でNO)も、同様に、速度制御部502は、記憶部504に予め格納された記憶情報のうち、紙厚が0.10mm以上、0.20mm未満の場合の減速速度V1(第2の速度)、時間閾値T11、T21を参照する(表2)。
そして、時間計測部503によってカウントされる第1カウント時間TC1が、時間閾値T11に達すると(ステップS015でYES)、速度制御部502は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181の回転数を減速させる(ステップS016)。この際、駆動ローラー181は、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度がV1(=0.8×V0)となるように、減速される。
更に、時間計測部503によってカウントされる第1カウント時間TC1が、時間閾値T21に達すると(ステップS017でYES)、速度制御部502は、第3駆動部523を制御して、駆動ローラー181の回転数を増速させる(ステップS018)。この際、駆動ローラー181は、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度がV0に復帰するように、増速される。
図7を参照して、シートPの紙厚が0.10mm以上、0.20mm未満の場合、時間閾値T11に対応する減速位置P52において、シートPは、搬送速度V1に減速される。該減速位置P52は、減速位置P51よりも、シート搬送方向下流側に設定される。これは、シートPの紙厚が0.20mm以上の場合と比べて、より転写位置TPに近い位置で、シートPの先端部が、感光体ドラム121の周面に接触するためである。そして、シートPは、搬送速度V1まで減速された状態で、感光体ドラム121の周面に接触しながら、転写位置TPに進入される。この場合であっても、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する際の衝撃が弱められる。この結果、感光体ドラム121の回転が安定して維持される。
搬送速度V1に減速されたシートPは、時間閾値T21に対応する増速位置P62において、再び、搬送速度V0に増速される。増速位置P62は、増速位置P61よりもシート搬送方向下流側に設定される。換言すれば、増速位置P61は、増速位置P62よりもシート搬送方向上流側に設定される。これは、より厚いシートPの方が、転写位置TPに進入する際の搬送力が必要とされるため、早い段階でシートPの搬送速度Vを搬送速度V0に近づけることが好ましいためである。かくして、シートPの紙厚が0.10mm以上、0.20mm未満の場合においても、シートPの搬送速度がV0に復帰した状態で、シートPにトナー画像が転写される。
また、シートPの紙厚が0.10mm未満の場合(ステップS009でNO)、速度制御部502は、搬送ベルト180の搬送速度Vを減速させない。したがって、シートPは、レジストローラー対116から搬送ベルト180に、搬送速度V0によって搬送されたまま、転写位置TPに進入し、トナー画像が転写される。
以上、本実施形態によれば、シートPが転写位置TPに進入するにあたり、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に当接する際のシートPの搬送速度が好適に減速される。このため、シートPの先端部が、感光体ドラム121の周面に当接する際の衝撃が弱められ、感光体ドラム121の回転が変動されることが抑止される。この結果、現像位置DPにおいて感光体ドラム121の周面に形成されるトナー画像が乱されることがない。特に、本実施形態では、転写位置TPにおける中抜け現象を抑止するために、感光体ドラム121の周面が、搬送ベルト180および転写ローラー126の周面よりも遅く回転するように、感光体ドラム121が回転駆動される。このような場合、感光体ドラム121の周面は、転写位置TPにおいて、搬送ベルト180の周面によって引きずられた状態となる。このため、感光体ドラム121の回転が不安定になりやすい。このような場合であっても、上記のように、感光体ドラム121の周面に接触する際のシートPの搬送速度が好適に減速されるため、感光体ドラム121の回転が変動されることが抑止される。
なお、シートPの搬送速度Vが減速されるにあたり、該減速速度は、転写位置TPにおいて、トナー画像が転写される際のシートPの搬送速度V0に対して、50%〜90%の速度であることが好ましい。この場合、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する際の衝撃が、効果的に弱められると共に、シートPが転写位置TPに進入する際に、シートPの搬送速度が、速やかに復帰される。
更に、本実施形態では、シートPの紙厚情報がシート情報取得部505によって取得される。そして、該シートPの紙厚情報に応じて、シートPが感光体ドラム121の周面に当接する際のシートPの搬送速度が設定される。この際、使用されるシートPの厚さが厚いほど、シートPは、より遅い搬送速度に減速される。これは、シートPの厚さが厚いほど、感光体ドラム121の周面に接触する際に、感光体ドラムの回転が妨げられやすいためである。したがって、シートPとして厚紙が使用された場合であっても、感光体ドラム121の回転が安定して維持される。
以上、本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に当接する前に、駆動ローラー181の回転数が制御され、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度が減速された。しかしながら、シートPの搬送速度を減速させる態様は、これに限定されるものではない。たとえば、第1カウント時間TC1が、時間閾値T1に達した際に、搬送ベルト180に加え、レジストローラー対116の回転速度も同時に減速されても良い。前述のように、シートPの先端部が搬送ベルト180に担持されながら、搬送ベルト180の搬送速度がV0からV2に減速される。この場合、レジストローラー対116に、未だ、シートPの後端部が挟持されていると、シートPの後端部は搬送速度V0をもって搬送される。このため、シートPのシート搬送方向の中央部において、僅かな撓みが発生する。これに対して、搬送ベルト180に加え、レジストローラー対116の回転速度が同時に減速された場合、シートPの中央部に生じる撓みを解消することができる。そして、このような場合であっても、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する際に、感光体ドラム121の回転が安定して維持される。
(2)更に、上記の実施形態では、シートPを転写位置TPに向かって搬送する搬送手段として、搬送ベルト180が配設される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レジストローラー対116Aが直接、シートPを転写位置TPに搬送する態様でもよい。図8は、搬送ベルト180を備えない場合のシート搬送路PPの周辺の概要構成図である。この場合、シートPの先端部が第2センサー511によって検出され、第2カウント時間TC2がカウントされる。そして、第2カウント時間TC2が、前述の時間閾値T0に到達すると、レジストローラー対116Aが回転駆動される。更に、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に近接すると、第2カウント時間TC2が時間閾値T1(T11、T12)に到達する。この時、レジストローラー対116Aは、シートPの搬送速度がV2(またはV1)となるように減速される。このような場合であっても、シートPの先端部が感光体ドラム121の周面に接触する際に、感光体ドラム121の回転が安定して維持される。
(3)更に、上記の実施形態では、シートPの紙厚情報を取得するために、中間ローラー対115にトルクセンサー509が配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、シート情報取得部505が、トルクセンサー509の代わりに、操作部221からシート情報を取得する態様の電気的なブロック図である。すなわち、図1において、ユーザーによって操作部221から、使用されるシートPの紙種情報が入力される。この際、シート情報取得部505は、該紙種情報から、シートPの紙厚情報を取得する。そして、速度制御部502は、該シートPの紙厚情報に基づいて、駆動ローラー181の回転数を制御し、搬送ベルト180によるシートPの搬送速度Vを減速することができる。また、搬送速度Vが制御されるためのシートPの情報は、紙厚に限られるものではない。例えば、シートPの硬さ、材質、表面性などであってもよい。これは、厚さが薄いシートであっても、樹脂材料からなる硬いシートや表面性が粗いシートの場合、感光体ドラム121の周面に接触した際に、感光体ドラムの回転が、より妨げられやすいためである。
(4)また、上記の実施形態では、シートPが、図7のP51やP52で例示される減速位置まで搬送される際、シートPは、転写位置TPにおいてトナー画像が転写される際のシートPの搬送速度V0にて搬送される態様を説明したが、これに限定されるものではない。シートPは、減速位置P51(P52)に搬送される際、転写位置における搬送速度V0よりも大きな速度で搬送されてもよい。この場合、シートPの先端部が、感光体ドラム121の周面に近づくまでの時間を短縮することができる。