JP5680668B2 - カチオン硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
これらの点に関して、上述したように、特許文献1にはカチオン硬化触媒としてアンチモン系スルホニウム塩を用いる樹脂組成物が開示されている。アンチモン系スルホニウム塩を用いることにより、リフロー方式への適用が可能となる等、一定の成果が上がっている。しかし、アンチモン系スルホニウム塩を用いた場合、その成形体は熱(硬化時の熱、使用環境)により着色し、その結果、短波長可視光である400nmの透過率が低下するという問題があり、成形体の耐熱性はまだ充分なものではない。また、アンチモン系スルホニウム塩を用いて硬化させた成形体は、吸水率が比較的高くなる傾向があり、光学材料として使用する場合には、更なる低吸水化を検討する余地があった。
このように、従来の技術には、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等の特性に優れた成形体を与える樹脂組成物について更に検討する余地があった。
本発明はまた、上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時の熱、使用環境)による着色が低減され、吸湿性が低く、耐湿熱性や耐UV照射性等の耐久性に優れた硬化物が得られる。なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無、程度は通常、400nmにおける透過率の変化からも確認できる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無、程度について評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
また、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、最も好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
なお、本願明細書、実施例等において、本発明にかかるカチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものをTPB系触媒と表記することもある。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化成形体の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、成形体の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
すなわち、カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。
カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)は算定される。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が低下する場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、比n(b)/n(a)は、20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
更に、カチオン硬化特性の観点では、ルイス塩基が窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)では、酸解離定数が高く、立体障害が大きい事から、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。例えばヒンダードアミンの様な構造では、上記範囲が好ましい。
また、ルイス塩基がアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合は、特にアンモニアである場合は、比n(b)/n(a)が1より大きいことが好ましい。具体的には、好ましくは、1.001以上であり、より好ましくは1.01以上であり、更に好ましくは1.1以上であり、特に好ましくは1.5以上である。
上記カチオン重合性基としては、カチオン硬化性の官能基であればよく、例えば、エポキシ基、オキセタン基(オキセタン環)、ジオキソラン基、トリオキサン基、ビニル基、ビニルエーテル基、スチリル基等が挙げられる。中でも、エポキシ基、オキセタン基が好適である。すなわち、上記カチオン硬化性化合物が、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(「オキセタン基含有化合物」とも称す。)を含む形態は、本発明の好適な実施形態の1つである。上記カチオン重合性基の硬化特性は、基の種類のみならず、該基が結合した有機骨格にも影響されることになる。
なお、本明細書における「エポキシ基」とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等を含むものである。
上記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が好適であり、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物がより好適である。
このように上記カチオン硬化性化合物が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキセタン化合物は、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。また、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好ましい。一方、硬化物の強度向上の観点から、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
また、カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた樹脂組成物は、屈折率(高い屈折率)が要求されるレンズ等の用途に好適である。
上記可撓性成分としては、上記カチオン硬化性化合物とは異なる化合物であってもよいし、該カチオン硬化性化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH2)4−O−〕m−(mは、同上。))を有する化合物である。
しかし、上記樹脂組成物を用いてレンズ等を得る場合、つまり、硬化・成形方法として金型成形を採用する場合において、離型剤を含んでもよい。離型剤としては、カチオン硬化触媒による硬化反応を阻害することなく、むしろ促進する基を有する化合物が好ましい。離型剤として具体的には、アルコール性OH基及び/又はカルボニル基(カルボキシル基及びエステル基を含む)を有する化合物が好ましく、更にカチオン硬化性樹脂組成物への相溶性、離型効果の高い点から、炭素数が8以上の炭化水素基を有するものが好ましい。より好ましくは、炭素数8〜36のアルコール、炭素数8〜36のカルボン酸、炭素数8〜36のカルボン酸エステル、炭素数8〜36のカルボン酸無水物及び炭素数8〜36のカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物である。このような離型剤を含有することで、短時間で硬化できるとともに、金型を用いて硬化する際に容易に金型を剥がすことができ、硬化物の表面に傷をつけることなく外観を制御し、透明性を発現させることができる。よって、上記樹脂組成物を、電気・電子部品材料用途や光学部材用途等により有用なものとすることができる。
上記化合物はまた、直鎖状、分岐状、環状等のいずれの構造であってもよく、分岐しているものが好ましい。
上記化合物の炭素数としては、8〜36の整数であることが好適であるが、これによって、樹脂組成物の透明性や作業性等の機能を損なうことなく、優れた剥離性を示す硬化物となる。炭素数としてより好ましくは8〜20であり、更に好ましくは10〜18である。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸無水物とは、上記炭素数が8〜36のカルボン酸の無水物である。
上記無機微粒子としては、金属や金属化合物等の無機化合物から構成される微粒子であればよく、特に限定されるものではない。無機微粒子における無機成分としては、金属の酸化物、水酸化物、(酸)窒化物、(酸)硫化物、炭化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、(塩基性)炭酸塩、(塩基性)酢酸塩等が例示される。これらの中でも好ましくは、金属の酸化物(金属酸化物)であり、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛であることがより好ましい。用いる硬化性化合物の屈折率やアッベ数にもよるが、通常、屈折率の高い又はアッベ数の低い成形体(硬化物)を得るためには、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛が好ましく用いられる。一方、屈折率の低い又はアッベ数の高い成形体(硬化物)を得るためには、シリカを用いることが好ましい。
上記無機微粒子としては、微粒子の樹脂との親和性向上、分散性向上等の目的で、表面処理された粒子も包含される。表面処理剤としては、特に限定されず、微粒子表面に有機鎖、高分子鎖の導入又は表面電荷制御の目的で、各種の有機化合物、無機化合物、有機金属化合物等が用いられる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤;金属アルコキシド類及びこれらの(部分)加水分解・縮合物;金属石鹸;等の有機金属化合物が挙げられる。
また、無機高分子としては、ポリシロキサン化合物等が挙げられ、具体的には、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。
上記樹脂組成物は、無機材料を含有することにより、熱膨張率を低下させることができる。また、無機材料と樹脂との屈折率をあわせることにより、樹脂組成物及びその成形体(例えばレンズ等)の外観を制御し、透明性を発現させることもでき、電気・電子部品材料や光学用途における材料として特に有用なものとすることができる。更に、無機微粒子を含むことにより、離型効果をより発揮することができる。具体的には、樹脂成分として例えば熱硬化性樹脂(特に、エポキシ化合物)を含む場合、樹脂成分が接着効果を有することとなり、このような樹脂組成物は、硬化させた場合に金型に接着するおそれがある。しかし、無機微粒子を適量加えることにより、離型効果がみられ、成形体(硬化物)が金型から容易に剥がれることとなる。
上記無機材料を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜80質量%であり、更に好ましくは、0.2〜60質量%であり、特に好ましくは、0.3〜20質量%であり、最も好ましくは、0.5〜15質量%である。
上記色素としては、近赤外線吸収色素に限定されない。紫外線、可視光、赤外線の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。
後述するように撮像レンズモジュールにおけるセンサーの誤作動防止の目的で使用する近赤外線吸収色素としては、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素が好適である。より好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素が耐熱性、耐候性の観点で好ましく、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素が好適である。より好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記色素を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜1質量%である。
本出願人は、反射型IRCFにおいて、近赤外線吸収色素を樹脂組成物に含有させた組成物から得られた色素含有層を有する樹脂シートを基材とすることにより、入射角依存性の抑制された反射型IRCFを得ることができることを既に知見している。そこで、該樹脂組成物を本発明のカチオン硬化性樹脂組成物とすること、すなわち、近赤外線吸収色素をカチオン硬化性樹脂組成物に含有させた組成物から得られた色素含有層を有する樹脂シートを基材とすることにより、入射角依存性が抑制されるとともに耐熱性等に優れる反射型IRCFを得ることができることを確認した。
また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物から得られるレンズ自体に近赤外線吸収色素を含有させることによっても、該レンズを含む撮像レンズモジュールは反射型IRCFを搭載しても入射角依存性が抑制されたものとなるため、好ましい。
すなわち、撮像レンズモジュールに用いられるIRCF用の基材(樹脂シート)やレンズ用としての、近赤外線吸収色素を含有するカチオン硬化性樹脂組成物、及び、該組成物から得られる成形体(例えば樹脂シート、レンズ等)の使用もまた本発明の好ましい形態である。
また、各成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、触媒添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cm2で光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
この場合、上記樹脂組成物を硬化剤及び必要に応じて他の成分を含む1液組成物とし、目的とする成形体の形状に合わせた金型内に該1液組成物を充填(射出・塗出等)して硬化させ、その後、硬化物を金型から取り出す方法が好適に用いられる。
上記第2工程における硬化時間は、得られる成形体の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
上記成形体は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用なものである。中でも特に、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に用いることができる。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。
上記光学材料としては、特に、レンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料であることが好適である。レンズとして好ましくは、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズであり、より好ましくはカメラレンズである。カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが好ましい。また、これら微小光学レンズであることが好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
本発明の組成物に用いるカチオン硬化触媒がTPB系触媒である場合には、該組成物から得られる成形体(硬化物)の吸水率が特に低く、耐熱性にも優れることから、TPB系触媒をカチオン硬化触媒とするカチオン硬化性樹脂組成物は、上述した各光学材料用途に特に有用である。
調製例1
(TPB:THF錯体の合成)
TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)42.3gをトルエン60.5gに溶解し、室温で撹拌しながらTHF(テトラヒドロフラン)7.14gを滴下した。その後、n−ヘキサン121.1gを室温で滴下した。この溶液を氷冷し、しばらく撹拌を続けると白色結晶が析出した。白色結晶をろ別し、n−ヘキサン洗浄し、乾燥後、白色固体であるTPB:THF錯体を34.5g(TPBの含有量は液体クロマトグラフィーより85.05%であった)得た。
[NMRデータ]
1H−NMR(CDCl3)ppm
δ=1.87(4H,m)
δ=3.63(4H,m)
19F−NMR(CDCl3)ppm
δ=−87.7(6F,m)
δ=−80.5(3F,dd)
δ=−59.4(6F,d)
(TPB/ヒンダードアミン(TINUVIN770)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体81.1部(TPB成分:69.0部)と、TINUVIN770(ヒンダードアミン、BASF社製)31.1部を、γ−ブチロラクトン88部に溶解し、TPB錯体(1a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。TPB錯体(1a)におけるn(b)/n(a)=0.96/1である。
また、上記と同様にして、以下のTPB錯体(1b)〜(1e)のγ−ブチロラクトン溶液を調整した。
n(b)/n(a)
TPB錯体(1b) 2.04/1
TPB錯体(1c) 1.1/1
TPB錯体(1d) 0.95/1
TPB錯体(1e) 0.91/1
(TPB/ヒンダードアミン(アデカスタブLA57)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100.0部(TPB成分:85.1部)と、アデカスタブLA57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)32.6部を、γ−ブチロラクトン103部に溶解し、TPB錯体(2a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=0.99/1である。
また、上記と同様にして、TPB錯体(2b)〜(2c)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。
n(b)/n(a)
TPB錯体(2b) 1.06/1
TPB錯体(2c) 1.02/1
(TPB/ヒンダードアミン(TINUVIN765)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100.0部(TPB成分:85.1部)と、TINUVIN765(ヒンダードアミン、BASF社製)50.1部を、γ−ブチロラクトン120部に溶解し、TPB錯体(3)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=1.19/1である。
(TPB/アンモニア錯体の調製)
調製例1と同様にして得られたTPB:THF錯体130部(TPB成分:110.6部)と、25%NH3水溶液26部(NH3成分:6.5部)を、γ−ブチロラクトン78.2部に溶解し、ルイス塩基としてNH3が配位したTPB錯体(4a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=1.77/1である。
また、用いる25%NH3水溶液の量を以下のように変える以外は上記と同様にして、NH3が配位したTPB錯体(4b)〜(4f)のTPB・NH3成分が50%となるようにγ−ブチロラクトン溶液を調製した。
各TPB錯体におけるNH3配位量は以下のとおりである。
n(b)/n(a)
TPB錯体(4b) 0.59/1
TPB錯体(4c) 1.18/1
TPB錯体(4d) 2.94/1
TPB錯体(4e) 15/1
TPB錯体(4f) 100/1
(TPB/トリフェニルホスフィン錯体の調製)
調製例1と同様にして得られたTPB:THF錯体100部(TPB成分:85.1部)と、トリフェニルホスフィン43部を、γ−ブチロラクトン113.2部に溶解し、TPB/トリフェニルホスフィン錯体(TPB錯体(5))のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。TPB錯体(5)における、トリフェニルホスフィン配位量は以下のとおりである。n(b)/n(a)=0.99/1
(TPB/トリエチルアミン錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100部(TPB成分:85.1部)と、トリエチルアミン13.5部を、γ−ブチロラクトン99部に溶解し、TPB錯体(6a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=0.8/1である。
また、上記と同様にして、TPB錯体(6b)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=2.2/1である。
実施例1
カチオン硬化性化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)100部、及び、上記TPB錯体(1a)のγ−ブチロラクトン溶液0.2部(カチオン硬化触媒としてTPB/TINUVIN770錯体0.1部)を投入し、40℃にて減圧下で均一になるように混合して樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法(硬化工程)により硬化させ、硬化物を得た。
カチオン硬化性化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)100部、及び、上記TPB錯体(4a)のγ−ブチロラクトン溶液0.234部(カチオン硬化触媒としてTPB/アミン錯体0.117部)を投入し、40℃にて減圧下で均一になるように混合して樹脂組成物(2)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
樹脂組成物を構成するカチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒の種類及び量を表1〜2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(3)〜(7)、樹脂組成物(比較1)〜(比較3)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
カチオン硬化性化合物としてYX−8000(液状水添エポキシ樹脂、三菱化学社製)100部、及び、TPB錯体(5)のγ−ブチロラクトン溶液1部(カチオン硬化触媒としてTPB/トリフェニルホスフィン錯体0.5部)を投入し、均一になるように混合して樹脂組成物(8)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
表1〜2記載の種類及び量のカチオン硬化性化合物、無機材料、カチオン硬化触媒を用い、各樹脂組成物を得た。なお、カチオン硬化性化合物として、EHPE−3150、YX−8040、PG−100の固体エポキシ樹脂を混合する際には、樹脂を140℃に加熱して、均一組成とした。無機材料としてPMSQ−Eを用いた場合は、カチオン硬化性化合物を混合した後に、80℃にて均一混合した。触媒を混合する際は、実施例1と同様に40℃減圧下にて均一組成になるように混合した。
当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例19の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長680nm、日本触媒社製)0.008部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例19の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−720(フタロシアニン系色素、吸収極大波長715nm、日本触媒社製)0.015部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
比較例6の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長680nm、日本触媒社製)0.008部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
比較例6の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長715nm、日本触媒社製)0.015部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
<硬化工程>
(第1工程)
SUS304(日本テストパネル社製、表面800番仕上げ)の金属板を2枚用いて、1000μm間隔のギャップを形成し、各樹脂組成物の注型成形を行った。表1記載の温度/時間で1次硬化を行った後、脱型した。また、1次硬化時の成形物の接着性が強く、離型しにくい場合には、ダイフリーGA−7500(ダイキン工業社製、フッ素−シリコーン系)をSUS板上に噴霧してふき取り、このSUS板を使用した。
(第2工程(キュア))
第1工程での硬化後、N2雰囲気下(特に断りのない限り、0.2〜0.3体積%の酸素濃度で実施した)、以下の条件で硬化の処理を行った。
条件:250℃×1時間(250℃の乾燥機へ直接試料を投入)
<硬化物の透過率(着色の有無)>
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、上記第1工程後(1次硬化後)及び第2工程後(2次硬化後)の夫々の時点で、波長400nm及び500nmにおける硬化物の透過率を測定した。
<耐熱性試験(リフロー耐熱性試験)>
2次硬化後の硬化物を、大気中、260℃で10分間乾燥させた後、波長400nm及び500nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<吸水性試験(吸湿性)>
2次硬化後の硬化物を、窒素ガス(N2)雰囲気下、230℃で1時間乾燥させ、絶乾状態とした後、重量を測った。温度85℃、相対湿度85%の環境下に100時間静置した後、重量を測定した。増加した重量より吸水率を算出した。
上記吸水性試験後の硬化物の、波長400nm及び500nmにおける透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<耐候(光)性試験>
2次硬化後の硬化物を試料として、スガ試験機社製のM6T(6kW水平式メタリングウエザーメーター)を用いて、フィルター:(インナー)石英/(アウター)#275、1kW/m2(300〜400nm)の条件で耐候(光)性試験を行い、50℃で100時間経過後の硬化物の透過率(波長400nm、500nm)を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
実施例3で得た樹脂組成物(3)及び比較例1で得た樹脂組成物(比較1)を40℃の環境下で静置し、所定時間経過後の粘度を以下のようにして測定した。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行った。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用した。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価した。
樹脂組成物(3)の粘度は、0時間経過後(試験開始時)に0.12Pa・s、72時間経過後に1.3Pa・s、144時間経過後に100Pa・sとなった。
樹脂組成物(比較1)は、48時間経過後に固化した。
また、同様の測定法にて、一部の実施例、比較例で得られた樹脂組成物について(表3に示す)、40℃雰囲気中に12時間静置した後の粘度を測定し、樹脂組成物調製直後の粘度に対する変化の程度を評価した。具体的には、40℃静置後の粘度が調製直後の粘度に対して10倍以上に変化したものを×、変化が10倍未満であったものを○と評価した。
樹脂組成物を1次硬化条件にて硬化させた。1次硬化後に、硬化温度にてショア硬度Aタイプで10以上の固さのある硬化物を○、10未満の硬化物(硬化不良によるゲル物を含む)を×として評価した。
実施例19、27、28より得られた1mm厚みの硬化物(2次硬化体)とガラス製IRCF(片面に酸化チタン20層/シリカ20層の交互蒸着品)を用いて、入射光源側から、硬化物、ガラス製IRCFの順に直列に配置して、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、分光透過率測定(透過率スペクトル測定)を行った。
入射光に対して垂直になるように硬化物及びガラス製IRCFを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。硬化物及びガラス製IRCFの厚み方向(垂直方向)から光が入射するようにして測定される。)と、硬化物、IRCFの厚み方向(垂直方向)に対して25°傾いた方向から光が入射するように硬化物及びガラス製IRCFを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。)について評価した。
CELL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂『セロキサイドCELL−2021P』、エポキシ当量131、重量平均分子量260、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製
YX−8000:液状水添エポキシ樹脂、重量平均分子量409、三菱化学社製
YX−8034:水添エポキシ樹脂、三菱化学社製
YX−8040:高分子量水添エポキシ樹脂、重量平均分子量3831、三菱化学社製
PG−100:フルオレンエポキシ樹脂、大阪ガスケミカル社製
828EL:芳香族エポキシ樹脂、三菱化学社製
OXT−221:オキセタン樹脂『アロンオキセタンOXT−221』、東亜合成社製
PMSQ−E:ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ−E)『SR−13』、小西化学工業社製
SI−100L:熱潜在性カチオン硬化触媒『サンエイドSI−100L』(アンチモン系スルホニウム塩(SbF6塩))、三新化学工業社製、固形分50%
(2次硬化時の着色について)
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた例を比較すると、カチオン硬化触媒としてTPBを含む化合物(TPB系触媒ともいう。)を用いた実施例1及び3では、アンチモン系スルホニウム塩(アンチモン系触媒ともいう。)を用いた比較例1に比べ、2次硬化後の透過率が高いことがわかった。これは、TPB系触媒を用いたほうが、2次硬化時の着色をより低減できることを示している。また、TPB系触媒の中でも、ヒンダードアミンをルイス塩基に用いた場合(実施例1)のほうが、アンモニアを用いた場合(実施例3)より着色低減効果が高いことがわかった。これは、ヒンダードアミンが有する酸化防止効果に起因するものと推測される。
一方、カチオン硬化性化合物として水添エポキシ化合物を用いた例を比較すると、アンモニア含有量の少ないTPB系触媒を用いた例(実施例4)では、アンチモン系触媒を用いた例(比較例2)より着色が低減できるが、アンモニア含有量の多いTPB系触媒を用いた例(実施例5)では、着色低減効果が低いことがわかった。これは、YX−8000中の残留塩素量が影響していると考えられる。
カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた例を比較すると、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合(実施例9、10)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例4、5)よりも、着色低減効果が高い(400nmの透過率が高い)ことが明らかとなり、耐熱性(透明性)が大きく向上した。
さらに、実施例18、20の様な無機材料(シリコーン系材料)を含んだ樹脂組成物の硬化にも、本発明におけるカチオン硬化触媒(特にTPB系触媒)を好適に使用可能である。特に、無機材料(シリコーン系)とTPB系触媒を併用する事により、2次硬化時の着色を低減(400nmの透過率が向上)し、耐熱性(透明性)が大きく向上した。
また、色素を含んだ樹脂組成物の硬化においても、TPB系触媒を用いた場合(実施例27、28)はそれぞれ、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例8、9)よりも耐熱性が高い結果となり、耐熱性が高く、生産性、成形性に優れるフィルター材料になることが示唆された。
TPB系触媒を用いた場合(実施例17、19)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例6)よりも、高い耐熱性を実現できることがわかった。
(吸水性について)
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた場合、及び、水添エポキシ化合物を用いた場合のいずれも、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より吸水率を低減できることがわかった。これは、反応末端の構造の相違に起因するものと考えられる。また、TPB系触媒の中でも、アンモニアをルイス塩基に用いた場合のほうがより低吸水性を実現できることがわかった。これは、硬化時にアンモニアが揮発することによるものと考えられる。
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた例において、TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より耐湿熱性が高くなることがわかった。また、TPB系触媒の中でも、ヒンダードアミンを用いた場合(実施例1)のほうが、アンモニアを用いた場合(実施例2、3)より耐湿熱性が高いことがわかった。これは、2次硬化時の着色と同様、ヒンダードアミンが有する酸化防止効果に起因するものと推測される。
(耐候(光)性について)
TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より高い耐UV照射性を実現できることがわかった。
TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より高い保存安定性を実現できることがわかった。
(硬化性(成形性)について)
カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いても、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合(実施例26)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例7)よりも、硬化性(成形性)に優れることが明らかとなった。特に、これまでカチオン硬化では短時間硬化が困難と考えられていた芳香族エポキシ化合物を、カチオン硬化性化合物として100質量%用いた樹脂組成物の硬化にも成功した。
(入射角依存性について)
吸収色素を硬化物に添加した実施例27、28は、吸収色素を添加しない実施例19を用いた場合に比べて、反射型IRCFを用いた場合において、入射角による長波長側の透過端における透過率の差異を低減できる(0°スペクトルと25°スペクトルとの差異が小さい)ことがわかった。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (9)
- カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするカチオン硬化性樹脂組成物であって、
該カチオン硬化触媒は、下記一般式(1):
該カチオン硬化性化合物は、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とするレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。 - 前記ルイス塩基は、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 前記カチオン硬化触媒は、ルイス酸とルイス塩基との混合比n(b)/n(a)が、0.99以上5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 前記ルイス塩基は、ヒンダードアミン構造を有するアミン、沸点が120℃以下のアミンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 前記ルイス塩基は、アンモニアであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 前記カチオン硬化性樹脂組成物は、近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 前記カチオン硬化性化合物は、脂環式エポキシ化合物と水添エポキシ化合物とを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のレンズ、フィルター、光学用接着剤から選ばれる光学材料用カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体。
- 請求項8に記載の成形体は、熱硬化して得られることを特徴とする成形体。
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