本発明者らは、塗布型赤外吸収フィルター等の各種用途に有用な樹脂組成物について検討したところ、オキシラン化合物を含む硬化性化合物(樹脂成分とも称す)と、カチオン硬化触媒と、色素と、溶媒とを含む樹脂組成物とすると、耐熱性や耐湿性等に優れ、硬化物を得ることができる一方で、上述したように、用いる溶媒によって、色素が経時的に析出する場合があることを見いだした。このような樹脂組成物における色素析出の要因は、色素の分子同士が会合し、結晶性が高まることで溶解度が低下したことに起因すると推測される。そして、更に検討を進めたところ、溶媒の誘電率及び分子量と、色素の析出抑制との間に関連性があることを新たに見いだし、分子量と誘電率との比(分子量/誘電率)が所定範囲にある溶媒Aを必須に用いると、色素の分子同士の会合が抑制され、色素の溶液中への経時的な析出が抑えられることを見いだし、この樹脂組成物を例えば基材に塗布した場合には、膜厚ムラが少なく、外観不良のない高品質の硬化物(硬化膜)が得られることを見いだした。また、この樹脂組成物を基材上に積層して得た積層構造の硬化物(積層体又は積層物とも称す)や、この積層体を含む光選択透過フィルター及び撮像素子が、光学分野やオプトデバイス分野に極めて有用なものとなること、特に塗布型の赤外吸収フィルターとして好適なものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、硬化性化合物、カチオン硬化触媒、色素及び溶媒を含む樹脂組成物であって、該硬化性化合物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物を含み、該溶媒は、分子量と誘電率との比(分子量/誘電率)が0を超えて15以下となる溶媒Aを含む樹脂組成物である。
本発明はまた、基材上に、上記樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体でもある。
本発明は更に、上記積層体を含む光選択透過フィルターでもある。
本発明はそして、上記積層体を含む撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
本明細書中、熱又は光によって硬化(重合)する化合物を総称して「硬化性化合物」(樹脂成分又は硬化性樹脂とも称す)といい、そのうちカチオン硬化性基を有する硬化性化合物を総称して「カチオン硬化性化合物」という。
また、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」と称す。「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル結合又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、硬化性化合物、カチオン硬化触媒、色素、及び、溶媒を必須成分とするが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を含有してもよく、これらの各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上用いることができる。
<硬化性化合物>
硬化性化合物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物(単にオキシラン化合物とも称す)を含む。本発明で使用される硬化性化合物の総量100質量%中に占めるオキシラン化合物の割合は、耐熱性や膜強度をより向上する観点から、5質量%以上であることが好適である。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
本発明の樹脂組成物において、硬化性化合物(固形分)の含有割合は、樹脂組成物の総量(溶媒を含む全含有成分の合計量)100質量%に対し、15〜50質量%であることが好ましい。50質量%以下であれば、過度に粘凋になることがないので、スピンコート時に膜厚がより均一となる。また、15質量%以上であれば、過度に低粘度となることがないので、スピンコート時に膜厚がより適切なものとなり、生産性がより一層向上される。より好ましくは20〜40質量%、更に好ましくは25〜35質量%である。
−オキシラン化合物−
オキシラン化合物は、オキシラン環というカチオン硬化性基を有し、熱又は光によって硬化(重合)する化合物(カチオン硬化性化合物)である。本発明の樹脂組成物がオキシラン化合物を含むことにより、硬化物の収縮量を充分に低減することができるうえ、硬化までの時間が短時間となって生産性が高まり、得られる硬化膜(樹脂層)も、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)や耐薬品性に優れたものとなる。
なお、オキシラン化合物1分子に含まれるオキシラン環の数は、1又は2以上であればよいが、より短時間で硬化物が得られる観点から、好ましくは2以上である。すなわちオキシラン化合物は、多官能オキシラン化合物であることが好適である。
上記オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物(水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物と称す)であることが好適である。このような化合物を少なくとも用いることにより、上記樹脂組成物がより接着性に優れたものとなる。なお、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物とともに、水酸基やエステル基を含まない他のオキシラン化合物(例えば、ノボラック・アラルキルタイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等)を併用してもよい。
上記水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の含有量は、樹脂組成物に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、50質量%以上であることが好適である。これにより、接着性(例えば、基材又は他の層との接着性、他の部材・材料との接着性等)をより高めることが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
上記オキシラン化合物はまた、エポキシ基(エポキシ環とも称す)を有する化合物(エポキシ化合物とも称す)であることが好適である。エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。中でも、より短時間で硬化物が得られる観点から、多官能エポキシ化合物が好適である。また、水酸基及び/又はエステル基を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
上記エポキシ化合物に関し、脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格とも称す)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、特に、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より低吸水率、高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また、離型性を高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物とも称す)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる化合物)や、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる化合物)等が挙げられる。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物;等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。中でも、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキシラン化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物又は芳香族エポキシ化合物が特に好適である。これらは、硬化時にエポキシ化合物(オキシラン化合物)自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる樹脂層及び積層体を高生産性で得ることができる。このように上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態である。更に好ましくは、上記オキシラン化合物が、少なくとも脂環式エポキシ化合物を含む形態である。
上記オキシラン化合物が脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態において、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物の含有量としては、これらの合計量が、オキシラン化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これにより、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物による作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
本発明においては、樹脂組成物中に、従来の触媒では硬化し難かった芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した硬化物(樹脂層)を得ることができる。そのため、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより屈折率等がより制御された積層体を得ることができる。オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、及び、芳香族エポキシ化合物と他のオキシラン化合物とを併用する形態、のいずれも、本発明の好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のオキシラン化合物として脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことがより好適である。
上記オキシラン化合物はまた、重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物を含むことが好ましい。重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物の含有量は、樹脂組成物に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、10〜100質量%であることが好ましい。これにより、上記樹脂組成物は、基材(基板とも称す)上に樹脂層を形成する際の成膜性により優れたものとなる。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。
上記重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物において、重量平均分子量は、2200以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上である。また、成膜性の観点や、硬化物(樹脂層)のガラス転移温度を高く保つという観点から、100万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは1万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
−他の硬化性化合物−
本発明の樹脂組成物は、上述したオキシラン化合物以外にも、硬化性の官能基を有する有機化合物(他の硬化性化合物と称す)を1種又は2種以上含んでいてもよい。
硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(すなわち樹脂組成物を硬化反応させる基を意味する)をいい、例えば、オキシラン基(オキシラン環)やエポキシ基の他、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。したがって、上記他の硬化性化合物としては、カチオン硬化性基を有する化合物(「カチオン硬化性化合物」又は「カチオン硬化性樹脂」とも称す)、及び/又は、ラジカル硬化性基を有する化合物(「ラジカル硬化性樹脂」又は「ラジカル硬化性化合物」とも称す)であることが好ましい。これにより、硬化までの時間が短時間となって生産性がより高まり、得られる硬化物も耐熱性(耐熱分解性、耐熱着色性)により優れたものとなる。中でも、硬化収縮率が低いために金型等での形状付与がし易くなるという点で、カチオン硬化性化合物を含むことがより好適である。なお、上述したオキシラン化合物は、カチオン硬化性化合物に含まれる。
上記カチオン硬化性化合物(オキシラン化合物及び他のカチオン硬化性化合物)はまた、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物、すなわち多官能カチオン硬化性化合物であることが好適である。これにより、硬化性がより高められ、各種特性により優れる硬化物を得ることができる。1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物としては、同一のカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよい。本発明では、多官能カチオン硬化性化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
上記他の硬化性化合物として具体的には、例えば、分子内に1個以上のオキセタン基(オキセタン環)を有する化合物(オキセタン化合物と称す)が挙げられる。上記樹脂組成物がオキセタン化合物を含む場合、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。
上記オキセタン化合物としては、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好適である。また、硬化物の強度向上の観点では、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物及び多官能のオキセタン化合物の具体例としては、特開2013−234231号公報〔0059〕〜〔0061〕に記載の化合物等が好適である。
<カチオン硬化触媒>
上記樹脂組成物はまた、カチオン硬化触媒を含む。
カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。例えば、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等が挙げられる。
上記樹脂組成物がカチオン硬化触媒を含むことにより、硬化物の収縮量を充分に低減することができる。また、短時間で硬化反応を好適に進めることができ、硬化物を速やかに形成することができるため、製造効率がより向上されることになる。また、耐熱性や離型性が高い硬化物を得られるうえ、上記樹脂組成物がハンドリング性に優れた1液型組成物(1液性状)として安定的に存在することができる。更に、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性により優れたものとなる。カチオン硬化触媒の中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒を少なくとも含むことが好適である。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂類等とは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことなく、また熱潜在性カチオン硬化触媒の作用として、硬化反応を充分に促進して優れた効果を発揮することができ、ハンドリング性により優れた一液性樹脂組成物(一液化材料)を提供することができる。
また熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることによって、得られる樹脂組成物から形成される硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途により好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン硬化触媒を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制されることになる。耐湿性が向上することで、樹脂組成物中への吸湿が抑制され、紫外線照射又は熱線暴露の相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、樹脂組成物の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮できる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、下記一般式(1):
(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+m(AXn)−m (1)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+mはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
上記一般式(1)の陰イオン(AXn)−mの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6−)等が挙げられる。また、一般式AXn(OH)−で表される陰イオンも用いることができる。その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
なお、熱潜在性カチオン硬化触媒の具体的な商品としては、特開2013−138158号公報〔0058〕に記載のものが挙げられる。
上記光潜在性カチオン硬化触媒は、光カチオン重合開始剤とも呼ばれ、光照射により、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。光潜在性カチオン硬化触媒を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起されて光分解反応が起こり、光硬化が進むこととなる。
上記光潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が好適である。これらの中でも、オニウム塩を使用することが好適であり、オニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩のうち少なくとも1種を使用することが好ましい。
なお、これらの具体的な商品としては、特開2013−138158号公報〔0061〕に記載のものが挙げられる。
上記カチオン硬化触媒としてより好ましくは、ホウ素化合物であり、芳香族フッ素化合物が更に好ましい。特に好ましくは、下記一般式(2):
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる化合物である。このような化合物を用いた場合、例えばアンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時、成膜時、使用環境)による着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。
なお、用いる硬化触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
上記一般式(2)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であってもよい。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(2)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、TPB系触媒とも称する。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子、硫黄原子が有する非共有電子対を上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物としては、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。また、ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとして具体的には、特開2013−138158号公報〔0076〕に記載の製品が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン;等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒において、ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。具体的には、当該カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。ここで、カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
上記カチオン硬化触媒において、これを含む樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が充分ではなくなる場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは0.99以上である。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
上記比n(b)/n(a)としてはまた、ルイス塩基が、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)である場合には、カチオン硬化特性の観点から、酸解離定数が高く、立体障害が大きいことから、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。例えばヒンダードアミンのような構造では、当該範囲が好ましい。
またルイス塩基が、アンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合、中でも特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒として具体的には、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体;TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH3錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH3錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。)として、カチオン硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記樹脂組成物を用いて得られる積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
上記カチオン硬化触媒はまた、保存安定性の観点より、pH測定機(堀場製作所、D−51)での評価で、pHが4以上であることが好ましく、より好ましくはpH7以上である。また、室温での安定性を考慮すれば、好ましくはpH8以上、より好ましくはpH8.5以上である。一方、硬化時の成膜性を考慮すれば、pH13以下が好ましく、より好ましくはpH11以下である。
上記カチオン硬化触媒を用いた樹脂組成物のpHとしては、同様にpH測定機(堀場製作所、D−51)での評価で、pH3.5以上であることが好ましい。より好ましくはpH4以上、更に好ましくはpH4.5以上である。一方、成膜性の観点では、pH13以下が好ましく、より好ましくはpH11以下である。更に、硬化速度の観点を加えれば、pH10以下が好ましく、より好ましくはpH8以下、更に好ましくはpH7以下である。
<色素>
上記樹脂組成物はまた、色素を含む。
上記色素は、樹脂組成物中に分散又は溶解されてなることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち色素は、樹脂組成物を構成する硬化性化合物や溶媒等に溶解するものであることが好適である。
上記色素は、所望の吸収特性に応じて適宜選択すればよく、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、クロリン系色素、コリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等であることが好ましい。これらの中でも、耐光性、耐熱性の観点からフタロシアニン系色素が好適である。また、フタロシアニン系色素を用いることにより、色素の析出が抑制されるという本発明の作用効果がより充分に発揮されることになる。このように上記色素がフタロシアニン系色素を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、硬化性化合物(樹脂成分とも称す)への溶解又は分散性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。中心金属としてより好ましくは銅又は亜鉛である。銅を用いたフタロシアニン系色素は、どのような樹脂成分(バインダー樹脂、硬化性化合物)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。また、亜鉛を金属元素とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れるため、好適である。
上記フタロシアニン系色素として好ましくは、下記一般式(I)で表される化合物である。このような色素を用いることにより、本発明の樹脂組成物又は積層体を撮像素子用途に適用した場合に、フレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性も充分に低減することができる。また、例えば反射膜や干渉膜と併用した場合に、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することも可能になる。更に、色素の析出が抑制されるという本発明の作用効果の発揮をより充分に確認することができる。
式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。このうち、α位の原子(Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13、Z16)、及び、β位の原子(Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14、Z15)は、同一又は異なって、下記式(i−a)、(i−b)若しくは(i−c)で表される置換基、又は、ハロゲン原子等で置換されていてもよいし、水素原子であってもよい。
式(i−a)中、X1は、酸素原子又は硫黄原子を表す。R1は、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COOR2を表す。R2は、置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m1は、0〜5の整数である。
式(i−b)中、X2は、酸素原子又は硫黄原子を表す。R3は、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COOR4を表す。R4は、置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m2は、0〜7の整数である。
式(i−c)中、X3は、酸素原子又は硫黄原子を表す。R5は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基を表す。
上記一般式(I)において、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。より好ましくは銅又は亜鉛である。
上記金属ハロゲン化物を構成するハロゲン原子、及び、上記一般式(I)中、α、β位の原子が置換されていてもよいハロゲン原子は、特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ここで、色素を透明基板に塗布し、無機蒸着した際の赤外吸収能を高めるためには、α位の原子は置換されていることが好ましい。導入される置換基は、フタロシアニン構造の平面性を保つ構造であることが好ましく、(i−a)や(i−b)のような構造で置換されていることが好ましい。中でも、R1、R3は、少なくともその1つがメタ位又はパラ位に結合していることがより好ましく、パラ位に結合していることが更に好ましい。また、残基は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換されていることが好ましいが、溶解性の高さから水素原子、フッ素原子、塩素原子で置換されていることがより好ましく、水素原子、フッ素原子で置換されていることが更に好ましく、フッ素原子で置換されていることが特に好ましい。
本発明では、上記一般式(I)で表される色素を用いると、色素の会合性がより高まり、色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を持ちやすくなり赤外吸収能を高めることができることから、上記一般式(I)で表される色素を用いることが特に好適である。このような構造の色素は、会合が過度に進み結晶性が高まると不溶化し、析出してしまうという課題を有するが、本発明の樹脂組成物であれば、すなわち溶媒Aと併用すれば、このような色素であっても析出が充分に抑制される。
上記フタロシアニン系色素はまた、下記一般式(II)で表される化合物も好ましい。このような化合物を用いることで、優れた光選択透過性とともにより高い耐熱性を発揮することが可能となる。また、耐光性がより向上される。
式中、Mは、上記一般式(I)におけるMと同じであり、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。X1〜X4及びY1〜Y4は、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいORi基を表す。ORi基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、X1及びY1のうち少なくとも1個、X2及びY2のうち少なくとも1個、X3及びY3のうち少なくとも1個、並びに、X4及びY4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいORi基を表す。
上記一般式(II)において、ORi基を構成するRiは、アルキル基、フェニル基又はナフチル基であり、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Riの中でも好ましくは、フェニル基又は置換基を有するフェニル基である。
上記ORi基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシカルボニル基(−COOR)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2)等の電子求引性基;アルキル基(−R)、アルコキシ基(−OR)等の電子供与性基;等が挙げられ、これらの1又は2以上を含んでいてもよい。また、電子求引性基として好ましくは、アルコキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)又はシアノ基であり、より好ましくは、メトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、クロル基又はシアノ基である。
なお、アルコキシカルボニル基(−COOR)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適であり、アルキル基(−R)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適である。アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル基又はメトキシエトキシカルボニル基であり、アルキル基として好ましくは、メチル基又はジメチル基である。
上記ORi基が置換基を有する場合、その置換基の数は特に限定されないが、例えば、1〜4個であることが好ましい。より好ましくは1又は2個である。
なお、1個のORi基が2個以上の置換基を有する場合、当該置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、ORi基における置換基の位置は特に限定されるものではない。
本発明では、上記一般式(II)におけるX1〜X4及びY1〜Y4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことが好適である。これにより、上記フタロシアニン系色素の会合性がより高くなることに起因して、遮断したい波長域をシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性(遮断透過特性)をより一層発揮できるとともに、反射膜による入射角依存性をより大幅に低減することが可能になる。
上記X1及びY1のうち少なくとも1個、X2及びY2のうち少なくとも1個、X3及びY3のうち少なくとも1個、並びに、X4及びY4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいORi基を表す。好ましくは、置換基を有していてもよいフェノキシ基(すなわち、フェノキシ基又は置換基を有するフェノキシ基)である。より好ましくは、X1〜X4及びY1〜Y4の全てが、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことである。中でも、置換基を有するフェノキシ基が好ましく、置換基としては電子吸引性基が好ましい。
上記一般式(I)、(II)で表される化合物は、例えば、特公平6−31239号公報等に記載の通常の方法を用いて合成することができる。例えば、上記一般式(II)で表される化合物を合成するには、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種(これらを総称して「金属化合物」ともいう)と、下記一般式(III):
(式中、Xa及びYaは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいORi基を表し、ORi基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。)で表されるフタロニトリル誘導体とを、無溶媒又は有機溶媒の存在下で、加熱して反応させることにより得ることが好適であり、中でも、有機溶媒中で反応させることが好ましい。フタロニトリル誘導体の環化反応は、特に制限されるものではなく、特公平6−31239号公報、特許第3721298号公報、特許第3226504号公報、特開2010−77408号公報等に記載された従来公知の方法を、単独で又は適宜修飾して、適用することができる。置換基及びORi基の具体的な形態は、上記一般式(II)に関して上述したとおりである。
上記一般式(III)において、Xa及びYaとして好ましくは、これらの少なくとも1個が、置換基を有していてもよいORi基を表すことである。より好ましくは、Xa及びYaのいずれもが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいORi基を表すことである。
上記反応では、上記一般式(III)で表されるフタロニトリル誘導体として、Xa及びYaのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいORi基を表す形態の化合物を少なくとも使用することが好適である。なお、上記Xa及びYaのいずれもが、置換基を有していてもよいORi基以外の基(原子)を表す形態の化合物と、Xa及びYaのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいORi基を表す形態の化合物とを併用してもよい。
上記フタロニトリル誘導体と反応させる金属化合物としては特に限定されないが、例えば、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物;当該金属の、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物;当該金属の、酢酸塩等の有機酸金属;当該金属の、アセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル;等が挙げられる。中でも、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、更に好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、塩化銅、ヨウ化銅及びヨウ化亜鉛であり、特に好ましくは塩化銅、塩化バナジウム及びヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、上記一般式(II)における中心金属は、亜鉛ということになる。
上記金属化合物と、上記一般式(III)で表されるフタロニトリル誘導体との反応を有機溶媒中で行う場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、1−クロロナフタレン、N−メチル−2−ピロリドン、1−メチルナフタレン、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、エチレングリコールを使用することが好ましい。より好ましくはトリメチルベンゼン、ベンゾニトリルである。
上記反応で溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量は、上記一般式(III)で示されるフタロニトリル誘導体の濃度が1〜50質量%となるような量とすることが好適である。より好ましくは、10〜40質量%となるような量である。
上記反応に関し、反応温度は、原料の種類、溶媒の種類、その他の条件により必ずしも一定しないが、通常、100〜300℃とすることが好適である。より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。また、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下、特に好ましくは200℃以下である。また、発熱反応を制御するために段階的に温度を上げてもよい。反応時間も特に制限はないが、通常、2〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは5〜20時間である。
上記反応はまた、大気雰囲気中で行ってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガス又は、酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は、酸素/窒素混合ガス等の流通下)で行われることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、及び/又は、乾燥を行ってもよい。
上記樹脂組成物において、色素の総含有量(全ての色素の合計濃度)は、例えば、溶媒の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好適である。これにより、色素の析出を充分に抑制しながらも、可視光透過率が高く、かつ近赤外線領域の遮断特性をより充分に発揮することが可能になる。このように色素の総含有量が、溶媒の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、より好ましくは8質量部以下である。
色素の総含有量(全ての色素の合計濃度)はまた、例えば、硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜20質量部であることも好適である。これにより、色素の析出を充分に抑制しながらも、可視光透過率が高く、かつ近赤外線領域の遮断特性をより充分に発揮することが可能になる。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、特に好ましくは3質量部以上、最も好ましくは5質量部以上であり、また、より好ましくは15質量部以下である。
また色素の総量100質量%に占める、フタロシアニン系色素の含有量は、10〜100質量%であることが好適である。より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%、最も好ましくは、色素として実質的にフタロシアニン系色素のみを用いることである。中でも、色素の総量100質量%に占める、上述した一般式(I)及び/又は(II)で表されるフタロシアニン系色素の含有量が10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%、最も好ましくは、色素として実質的に一般式(I)及び/又は(II)で表されるフタロシアニン系色素のみを用いることである。
上記樹脂組成物はまた、350nm〜400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物を含んでもよい。これにより、350nm〜400nm波長域の光(ほぼ紫光)に起因する積層体の劣化を充分に抑制することができる。
上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
なお、本発明でいう色素には、350〜400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物に代表される、400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物は含まないものとする。
<溶媒>
上記樹脂組成物はまた、溶媒を含む。これにより、流動性の高い樹脂組成物となり、塗布用、コーティング用の樹脂組成物として特に好適なものとなる。
上記溶媒としては、水や、有機溶媒が好適である。有機溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
上記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、乳酸エチル、プロピレンカーボネート等が好適である。
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ブタノール等の他、メチルセロソルブや、mアルキレングリコールnアルキルエーテル(m及びnは、同一又は異なって、モノ、ジ、トリ、テトラ等に代表される1以上の倍数接頭辞である。)等の末端に水酸基を有するエーテル類等が好適である。mアルキレングリコールnアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
なお、末端に水酸基を有するエーテル類(すなわちエーテル結合を有するアルコール類)は、その末端水酸基に起因してアルコール系溶媒としての性能を有するため、エーテル系溶媒ではなくアルコール系溶媒に該当するものとする。
上記ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、γーブチロラクトン等が好適である。
上記エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランや、mアルキレングリコールnアルキルエーテルのアセチル化物等が好適である。
上記芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が好適である。
上記樹脂組成物において、溶媒の総含有量(溶媒Aと、その他の溶媒を含む場合は該溶媒との合計量)は、硬化性化合物と色素との総量100質量部に対し、100〜400質量部であることが好ましい。これにより、上述した溶媒に求められる物性・性能をより一層発揮できることになる。より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、また、より好ましくは380質量部以下、更に好ましくは350質量部以下である。
−溶媒A−
上記溶媒は、分子量と誘電率との比(分子量/誘電率)が0を超えて15以下となる溶媒Aを必須に含む。分子量(相対原子質量)と誘電率との比がこの範囲にある溶媒Aを用いることによって初めて、色素の析出抑制効果が顕著に発揮されるが、これは以下の理由によると推測される。
誘電率が高い溶媒であれば、色素と溶媒分子との会合が形成されることで結晶性が高まらず、また、分子量が小さい溶媒であれば、色素分子間に入り込むことが容易であるため、色素分子同士の会合が抑制されて結晶性が高まらず、これらの結果、色素の析出が抑制されると推測される。本発明者らは、このような効果が、分子量と誘電率との比が0を超えて15以下となる範囲で顕著に発揮されることを見いだした。溶媒Aの分子量と誘電率との比は、より好ましくは13以下、更に好ましくは11以下、特に好ましくは10以下である。
上記溶媒Aはまた、誘電率が6以上で、かつ分子量が120以下の溶媒であることが好ましい。このような溶媒を用いることで、色素の析出抑制効果がより一層発揮される。誘電率としてより好ましくは7以上、更に好ましくは8以上である。誘電率の上限は特に限定されないが100以下であることが好ましい。より好ましくは90以下である。また、分子量の下限は特に限定されないが10以上であることが好ましい。より好ましくは18以上である。
上記溶媒Aとしてより好ましくは、誘電率が10以上で、かつ分子量が120以下の溶媒A1、又は、誘電率が6以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒A2である。これにより、色素の析出抑制効果がより一層発揮される。このように上記溶媒Aが、誘電率が10以上で、かつ分子量が120以下の溶媒A1、及び、誘電率が6以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒A2、からなる群より選択される少なくとも1種である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記溶媒A1の誘電率は10以上であればよいが、11以上であることが好ましい。より好ましくは12以上である。また、溶媒A1の分子量の下限は10以上であることが好ましく、より好ましくは18以上である。
上記溶媒A2の誘電率は6以上10未満であればよいが、7以上であることが好ましい。より好ましくは8以上である。また、分子量は100以下であればよいが、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下である。溶媒A2は、誘電率が6以上10未満と、溶媒A1よりも誘電率が低いにも関わらず、分子量が100以下と小さいため、色素分子間に入り込むことが容易になり、色素分子同士の会合が抑制されて結晶性が高まらず、その結果、色素の析出が抑制されると推測される。
本発明では、水、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種のうち、分子量と誘電率との比(分子量/誘電率)が0を超えて15以下となる溶媒を、溶媒Aとして用いることが特に好適である。より好ましくは、水、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種のうち、溶媒A1又は溶媒A2に該当する溶媒を、溶媒Aとして用いることである。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、γーブチロラクトン、乳酸エチル、水、プロピレンカーボネート、メタノール等を用いることが特に好ましい。
本明細書中、各溶媒の誘電率は、文献値を採用することが好ましいが、誘電率測定計(例えば、日本ルフト社製の「液体用誘電率計Model871」等)を用いて測定してもよい。
上記溶媒Aの含有量は、溶媒の総含有量100質量%に対し、5〜100質量%であることが好適である。5質量%以上であることで、色素の析出をより抑制することができ、保存安定性により優れるものとなる。より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、特に好ましくは16質量%以上である。また、成膜性や保存安定性をより一層向上させる観点からは、後述するように溶媒A以外の溶媒Bを併用することが好ましいため、溶媒Aの含有量は、90質量%以下であることがより好ましい。更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
−溶媒B−
上記溶媒はまた、上記溶媒Aとは異なる溶媒Bを含むことが好適である。溶媒Bは、溶媒Aには該当しない化合物、すなわち分子量と誘電率との比(分子量/誘電率)が15を超える溶媒である。これにより、膜厚ムラがより少なく、突沸による表面荒れや硬化阻害もより低減された良質の硬化物を与えることができ、また、樹脂組成物の保存安定性もより一層良好なものとなる。
本発明では、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種のうち、溶媒Aには該当しない化合物を、溶媒Bとして用いることが特に好適である。このように上記溶媒が更に溶媒Aとは異なる溶媒Bを含み、該溶媒Bが、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジエチルエーテル、酢酸ブチルが好ましい。中でも、PGMEAは、沸点が145℃と比較的高いにも関わらず、20℃での蒸気圧が3.8kPaと高いため、PGMEAを用いた場合には、膜厚ムラがより少なく、外観不良がより低減された良質な膜を得ることができる。
上述のように溶媒Bが、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である場合、溶媒Aと当該溶媒Bとの質量比は、溶媒Aと当該溶媒Bとの総量100質量%に対し、溶媒Aが5〜100質量%となるように設定することが好適である。溶媒Aが5質量%以上であることで、色素の析出がより抑制され、保存安定性により優れるものとなる。より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、特に好ましくは16質量%以上である。また、溶媒Aの上限は90質量%以下であることがより好ましい。更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
本発明ではまた、全溶媒の沸点が110℃以上であることが好ましい。これにより、例えばスピンコート時の突沸のおそれが充分に抑制され、得られる塗布膜の膜厚がより均一になる。また、このような溶媒を用いて成膜して得た硬化物は、膜表面への放射線模様(ストライエーション)の発生が充分に抑制されるため、例えば光学フィルター用途等に好適なものとなる。より好ましくは125℃以上である。一方、使用される全溶媒の沸点の上限は200℃以下であることが好ましい。これにより、例えばスピンコート後の残留溶媒が低減されるため、塗布後に溶液のハジキや不均一化が発生するおそれが充分に抑制される。それゆえ、硬化物の全面において測定した波長650nmの透過率幅をより低減することができ(具体的には、当該透過率幅を3%以内に抑えることができ)、例えば光学フィルター用途等に好適なものとなる。より好ましくは190℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
なお、全溶媒の沸点とは、本発明の樹脂組成物に含まれる溶媒全ての混合物(溶媒A+溶媒B)としての沸点を意味する。また、硬化物の全面において分光透過率計で測定した波長650nmの透過率幅が3%以内の範囲に入っている場合、成膜性が良好であるといえる。
<他の成分>
上記樹脂組成物は更に、必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、可撓性成分(可撓性を有する成分)、光増感剤、硬化促進剤、カップリング剤、無機充填剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、有機充填剤、カップリング剤以外の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等が挙げられる。
上記樹脂組成物が可撓性成分を含む場合、特開2013−138158号公報〔0096〕〜〔0099〕に記載の形態が好適であり、光増感剤を含む場合、同公報〔0085〕〜〔0087〕に記載の形態が好適であり、硬化促進剤を含む場合、同公報〔0088〕〜〔0095〕に記載の形態が好適である。
上記樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、樹脂組成物及び硬化物(積層体)の耐湿熱性が大幅に改善され、接着性がより向上する。したがって、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能である。
上記カップリング剤としては、例えば、中心金属として、ケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウム等を含むものが好適であり、中でも、ケイ素を中心金属として有するものが好ましい。より好ましくはシランカップリング剤である。シランカップリング剤を用いることにより、耐湿熱性をより一層向上することが可能になる。また、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、オキシラン基(オキシラン環)、アミノ基、メルカプト基、イソシアナート等の基を有するカップリング剤が好適である。具体的には、例えば、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等のシランカップリング剤が好適に用いられる。
上記樹脂組成物において、カップリング剤の含有量は、硬化性樹脂(硬化性化合物)の総量100質量部に対し、1〜80質量部であることが好適である。これにより、カップリング剤による効果をより一層発揮することができる。より好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜30質量部である。なお、カップリング剤の総量100質量%に占めるシランカップリング剤の含有量は、50〜100質量%であることが好適である。より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
上記樹脂組成物が無機充填剤を含む場合、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
上記樹脂組成物においては、樹脂組成物1cm3あたりに含まれる粒子径10μm以上の異物が1000個以下であることが好ましく、より好ましくは100個以下であり、更に好ましくは10個以下である。
なお、上記樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
<調製方法>
上記樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性化合物の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、硬化触媒添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
また、樹脂組成物を保存する場合は、保存温度を60℃〜−80℃とすることが好ましい。より好ましくは30℃〜−40℃、更に好ましくは−20〜5℃である。
<粘度>
上記樹脂組成物は、粘度が1000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、流動性や加工特性、成膜性により優れ、例えば、コーティングにより適したものとなる。より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下、一層好ましくは10000mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下、最も好ましくは50mPa・s以下である。また、0.01mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
本明細書中、樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製)を用いて評価することができる。上記粘度の数値は、25℃の条件下で評価した値であることが好ましい。
<硬化方法>
上記樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されず、例えば、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cm2で硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。
2段階硬化法は、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cm2で光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程において、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物を、150℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度の下限は、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは230℃以上、より更に好ましくは250℃以上、一層好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上、最も好ましくは350℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、150℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、10分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは30分間〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記第1工程を実施することによって、塗工基材に対して塗液の凝集・ハジキ等を抑制可能となる。また、上記第2工程を実施することで、リフロー工程、蒸着工程に対する耐熱性を向上させることが可能となる。
上記硬化方法は、上記第1工程及び上記第2工程を含むことが好適であるが、その前後、中間に硬化処理を含んでいてもよい。例えば、上記第1工程を光硬化で実施した後、熱硬化を窒素下で150℃×60分間行い、上記第2工程を熱硬化で実施する。このような処理を行うことで、より成膜性、耐熱性を向上させることが可能となる。
他の硬化方法として、1段階硬化によることも好適である。特に沸点120℃以下の窒素含有化合物を含む場合には、硬化性に特に優れるものとなるため、予備硬化としての光硬化工程を経なくても、すなわち本硬化としての熱硬化工程のみでも、充分に優れた外観を呈する硬化物を効率よく与えることができる。したがって、この場合には、例えば、光硬化と熱硬化との2段階硬化を行う場合に比べ、光硬化工程を省くことで工程短縮が可能なため、硬化物の生産性や作業性に優れることになる。
上記1段階硬化による硬化方法として特に好ましくは、熱硬化方法である。熱硬化は、20〜400℃程度で硬化することが好ましく、この温度範囲内で段階的に変化させてもよい。
上記1段階硬化工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、10分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは30分間〜10時間である。
上記1段階硬化工程は、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
<樹脂組成物の用途>
上記樹脂組成物は、色素の経時的な析出が抑制され、保存安定性に優れたものであるため、コーティング用の樹脂組成物であることが特に好適である。中でも、塗布用の樹脂組成物であることがより好ましい。このような樹脂組成物からなる樹脂層を基材上に形成した場合、該樹脂層は、膜厚ムラが少なく、外観不良のない高品質の硬化膜(硬化物)となることから、本発明の樹脂組成物及びそれを用いて得た積層体は、成膜を行う各種素子の部材(例えば、IRカットフィルターに代表される光選択透過フィルター等の光学材料)として有用である。また、携帯電話、テレビ、パソコン、車載用途等の各種素子は、製造工程の簡略化、低コスト化等の理由から、半田リフロープロセスを採用する流れにあるところ、本発明の樹脂組成物及びそれを用いて得た積層体は、半田リフロープロセスに供されても光学特性低下が充分に抑制されることから、半田リフロープロセスを採用する各種素子の部材(例えば、IRカットフィルターに代表される光選択透過フィルター等の光学材料)としても特に有用である。中でも、基材として透明無機材料層を用いた場合には、クラックやチッピング、反りの発生を抑制でき、耐熱性にも優れる積層体が得られるため好適である。このように基材上に上記樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体もまた、本発明の1つである。また、上記樹脂組成物は、基材上に層を形成する材料として使用することが好ましい、すなわち言い換えれば、上記樹脂組成物は積層用樹脂組成物であることが好ましい。
〔積層体〕
本発明の積層体は、基材上に、上記樹脂組成物からなる樹脂層を有する。なお、樹脂層は、基材の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、基材及び樹脂層は、それぞれ単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
上記積層体は、基材上に樹脂層を形成することにより得られるが、その形成方法としては、樹脂組成物を基材上に塗布して硬化することにより形成する方法が好適である。すなわち、基材上に塗膜を形成する方法が好ましい。
ここで、「基材上に樹脂層を有する」とは、基材に、直接、樹脂層が接している形態だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を有する形態も含むこととする。「基材上に樹脂層を形成する」についても同様であり、基材上に樹脂層を直接形成する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を形成する場合も含むこととする。「樹脂組成物を基材上に塗布する」についても同様であり、樹脂組成物を基材上に直接塗布する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する場合も含むこととする。
上記他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する形態では、接着性を向上させる観点から、例えば、シランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって当該構成部材の表面処理を施した上に、樹脂組成物を塗布することが好適である。これにより、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等をより抑制することが可能になる。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
上記基材(又は他の構成部材)上に樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等の通常使用される方法が挙げられる。これらの中では、スピンコート法が、基板上のコート層の偏差を小さくする観点で好ましい。スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、透明無機材料層(又は他の構成部材)を500〜4000rpmで10〜60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。また、インクジェット法で行うことも、スピンコートでは得にくい丸型以外のサンプルを得つつ、偏差を小さくするという観点では好ましい。また、スピンコート後やインクジェット後、必要に応じて光硬化及び/又は熱硬化を行うことが好ましい。
上記積層体の厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、撮像素子の小型化への要請に充分に応えることができる。より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、特に好ましくは150μm以下であり、最も好ましくは100μm以下である。また、30μm以上であることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
<基材>
上記積層体において、基材としては特に限定されないが、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料、金属材料等の1種又は2種以上を材料とすることが好ましい。有機材料又は有機無機複合材料としては、例えば、これらの材料からなる樹脂フィルム等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、水晶、金属酸化物等が挙げられる。
また基材の材料は、耐リフロー性を有する材料であることが好適である。
上記基材の中でも、透明無機材料を材料とするものが好適である。すなわち上記基材は、透明無機材料からなる層(透明無機材料層と称す)であることが好ましい。これにより、クラックやチッピング、反りの発生をより抑制でき、耐熱性にもより優れる積層体が得られるため好適である。このように透明無機材料層上に上記樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体は、本発明の好適な形態の1つである。
上記透明無機材料は、例えば、ガラス、水晶等が挙げられる。
上記透明無機材料はまた、ガラスや水晶等を形成する材料中に遷移金属イオンを含有させて得られるものであってもよい。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを1種又は2種以上用いればよく、例えば、Ag+、Fe+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。なお、上記基材がガラス又は水晶基板である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記透明無機材料層において、「透明」であるとは、波長550nmでの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
上記基材(好ましくは透明無機材料層)の厚みは特に限定されないが、例えば、30〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
上記基材はまた、カップリング剤により処理されたものであることが好適である。これにより、接着性がより向上され、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等をより抑制することが可能になる。
なお、カップリング剤により処理された基材とは、カップリング剤により表面処理された基材であることが好ましい。
上記カップリング剤の好適な形態等は上述したとおりであり、中心金属として、ケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウムを含むものが好適である。中でも、ケイ素を中心金属として有するものが好ましい。より好ましくはシランカップリング剤である。
このように上記基材がカップリング剤により処理されたものであり、該カップリング剤が、中心金属としてケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウムを含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
<樹脂層>
上記樹脂組成物からなる層(樹脂層)の厚みは特に限定されないが、成膜時やリフロー時の耐熱性及び透明性の観点、熱膨張による界面での剥離や割れを防止する観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは2μm以下である。また、一般的な異物サイズよりも膜厚を充分に厚くすることにより欠点を防ぐ観点、樹脂組成物へ溶解させる色素濃度を低減し、色素の会合や析出を抑制する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
<UVカット層>
上記積層体はまた、更にUV(紫外線)カット層を有することも好適である。これにより、紫外線による劣化を充分に抑制することができるため、積層体の耐候性を大幅に改善することができる。
上記UVカット層は、上記積層体中の光入射側に配置されることが好適である。また、上記積層体において、UVカット層は、1層でもよいし、2層以上であってもよい。
上記UVカット層は、例えば、樹脂成分と紫外線吸収剤とを少なくとも含む樹脂組成物により形成することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物が好ましい。具体的には、350〜400nmの波長域に吸収能を有するフタロシアニン系色素を用いることが好適である。また、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の1種又は2種以上を使用することもできる。
<積層体の用途>
本発明の積層体は、撮像素子用途に特に好適である。本発明の樹脂組成物もまた、撮像素子用途に特に好適である。中でも、上記積層体を光選択透過フィルターの構成材料として使用することが好ましい。この場合、上記樹脂組成物により形成される樹脂層は、光選択透過フィルターのうち(近)赤外線吸収層(単に吸収層ともいう)として使用されることがより好適である。このように上記積層体を含む光選択透過フィルターや、上記積層体を含む撮像素子もまた、本発明に含まれる。撮像素子は、上記積層体を含む光選択透過フィルターを備えることが特に好適である。
なお、上記樹脂組成物及び積層体は、上記の用途に限定されるものではなく、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途にも有用なものである。
以下に、光選択透過フィルター及び撮像素子について説明する。
〔光選択透過フィルター〕
本発明の光選択透過フィルターは、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の層を1又は2以上有するものであってもよい。光選択透過フィルターにおいては、上記積層体のうち透明無機材料層を基材とし、上記樹脂組成物から形成される樹脂層を吸収層として、それぞれ使用することが好適である。
上記光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外線カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外線カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外線カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このように上記光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、本発明の積層体の一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記積層体上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記積層体に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を上記積層体に塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。例えば、紫外線を遮断する層は、吸収層の光への劣化対策として、基材(例えば、ガラス基板)上に形成された吸収層の上に、紫外線吸収剤を含む液状樹脂組成物を塗布し、乾燥又は硬化して、紫外線吸収剤を含む樹脂層を製膜することも、好ましい。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜1000nmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが、中でも、750nm〜1000nmの赤外光(より好ましくは650nm〜1000nmの赤外光)と200〜350nmの紫外光とを低減し、それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち、本発明の光選択透過フィルターは、赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10000nmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2500nm、650nm〜1000nm又は800nm〜1000nmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1000nmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外線カットフィルターである形態においては、750〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。例えば、上記赤外線カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光における450〜600nmの透過率が70%以上であることが好適である。より好ましくは80%以上である。また、可視光の中でも480〜550nmの波長域の光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外線カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、波長が480〜550nmにおける光の透過率が85%以上であり、かつ750〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外線カットフィルターであることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
本発明の光選択透過フィルターが紫外線カットフィルターである形態においては、200〜350nmの紫外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜1μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
上記光選択透過フィルターとして好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜(好ましくは、(近)赤外線反射膜)が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む光選択透過フィルターであることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、光選択透過フィルターにおける反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。
上記反射膜としては、耐熱性に優れる観点から、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜が好適である。無機多層膜としては、基材や吸収層、他の構成部材の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜として好ましくは、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜である。誘電体層A、Bの好ましい形態等は、特開2013−138158号公報〔0127〕〜〔0130〕に記載のとおりである。
上記反射膜はまた、上述したように多層膜であることが好ましいが、その積層数は、撮像素子が有する反射膜の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましい。より好ましくは25〜50層の範囲である。
上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは2〜8μmである。なお、光選択透過フィルターや撮像素子が有する反射膜の合計の厚みとして、上記範囲にあることが好適である。
上記反射膜は、積層体を構成する基材又は樹脂層に、直接又は他の構成部材を介して存在することが好ましい。例えば、これらの表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等を用いて反射膜を形成することが好適である。中でも、真空蒸着法を用いることが好ましい。より好ましくは、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、透明無機材料層又は樹脂層等に該蒸着層を転写することで、反射膜を形成する方法である。これにより、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくすることができる。なお、この場合、蒸着層を転写しようとする透明無機材料層又は樹脂層等には、接着層を形成しておくことが好ましい。
このように反射膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える透明無機材料層、樹脂成分及び色素を用いることは、非常に意味がある。本発明の積層体を用いれば、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、例えば、リフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
ところで、一般に、基材の片面又は両面に反射膜を有する反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性(「視野角依存性」ともいう)を有する、すなわち入射角により分光透過率曲線が異なるため、その改善が課題とされている。
光遮断特性の入射角依存性は、例えば、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
本発明の光選択透過フィルターは、耐熱性や光選択透過性に優れ、しかも光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することもできるため、例えば、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとしても有用である。中でも、本発明の光選択透過フィルターは、デジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、撮像素子用光選択透過フィルターであることが好適である。このように上記光選択透過フィルターを備える撮像素子もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
〔撮像素子〕
本発明の撮像素子は、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の部材を1又は2以上有するものであってもよい。通常、撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを有するが、更に、光学フィルターや、部材を固定させるための接着剤等が挙げられる。
上記撮像素子として好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む撮像素子であることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、撮像素子における反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。例えば、レンズに反射膜が直接形成されることで、当該レンズと反射膜とが一体化した形態(形態(a)とも称す);撮像素子が、反射膜を含む光学フィルターを備えることで、レンズとは独立した構成部材として反射膜を有する形態(形態(b)とも称す);等が挙げられる。なお、反射膜については、上述したとおりである。
上記形態(a)において、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合、反射膜が形成されるレンズの枚数は特に限定されない。
上記形態(b)において、反射膜を含む光学フィルターは、(近)赤外線を反射する機能のみを備えたものであってもよいし、更に(近)赤外線を吸収する機能を備えたものであってもよい。
上記反射膜を含む光学フィルターは、本発明の積層体と反射膜とを備える光選択透過フィルターであってもよいし、該光選択透過フィルター以外の光学フィルターであってもよい。また、反射膜を含む光学フィルターを1又は2以上有していてもよいし、配置形態も特に限定されない。例えば、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合には、当該反射膜を有するフィルターは、レンズ間に配置されていてもよい。
なお、上記反射膜は、レンズの一方の面若しくは両面、及び/又は、基材の一方の面若しくは両面に、形成されることが好適である。