JP6073690B2 - 積層用樹脂組成物、及び、硬化物 - Google Patents
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Description
また、例えば、デジタルカメラモジュールにおいては、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の表面に形成する層の材料には、その硬化物(成形体)がリフロー工程に耐え得る耐熱性を有することが求められる。
以下に、本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物を含み、該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含む。
すなわち、本発明の積層用樹脂組成物は、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物を含んでおり、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の他に、更に水酸基やエステル基を含まない他のオキシラン化合物を含んでいてもよい。
上記オキシラン化合物が、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物を含むことで、上記積層用樹脂組成物を基板上に層を形成する材料として用いる際、積層用樹脂組成物が耐薬品性に優れたものとなる。また、上記オキシラン化合物が、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物であることで、積層用樹脂組成物が接着性に優れたものとなる。
なお、本明細書においては、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」という。そして、「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
上記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が好適であり、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物がより好適である。
脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物は、硬化時にエポキシ化合物自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる光学部材を高生産性で得ることができる。
このように上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
また、オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた樹脂組成物は、吸水率(低い吸水率)、屈折率(高い屈折率)、耐薬品性が要求されるレンズ、透明回路基板等の用途に好適である。
また、重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物の重量平均分子量は、2,200以上であることがより好ましい。更に好ましくは、2,500以上である。また、重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物の重量平均分子量は、成膜性の観点や硬化物のガラス転移温度を高く保つという観点で、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、10,000以下が最も好ましい。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
本発明の積層用樹脂組成物が含むカチオン硬化触媒としては、ホウ素化合物を含むものであれば特に限定されないが、好ましくは芳香族フッ素化合物を含むものであり、特に好ましくは、下記一般式(1):
また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時、成膜時、使用環境)による着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、TPB系触媒とも称する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
またルイス塩基が、アンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合、特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を必須成分とする限り、その他の成分を含んでいてもよく、該その他の成分は1種又は2種以上を用いることができる。該その他の成分としては、例えば、溶媒成分、色素、可撓性成分等を挙げることができる。
本発明の積層用樹脂組成物は、溶媒を含むことが好適である。これによって、流動性の高い樹脂組成物とすることができる。
上記溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等が挙げられる。
本発明の積層用樹脂組成物には、以下に詳述するように、色素、特に600nm以上900nm以下の波長域に吸収極大を有する色素(本発明では近赤外線吸収色素ともいう)を含有させることができ、この形態も好ましい。
上記色素としては、近赤外線吸収色素に限定されない。紫外線、可視光、赤外線の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。
後述するように撮像レンズモジュールにおけるセンサーの誤作動防止の目的で使用する近赤外線吸収色素としては、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素が好適である。より好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素が耐熱性、耐候性の観点で好ましく、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素が好適である。より好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記色素を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜1質量%である。
これに対し、本発明の積層用樹脂組成物に近赤外線吸収色素を含有させたものを基材に塗布して基材上に近赤外線吸収層が形成された積層構造の材料とすると、この積層材料が、入射角依存性が抑制されるとともに耐熱性等に優れる反射型IRCFとして好適に用いることができることを確認した。
すなわち、撮像レンズモジュールに用いられるIRCF用の積層材料を形成するための材料としての、近赤外線吸収色素を含有する積層用樹脂組成物の使用、及び、積層用樹脂組成物の硬化物もまた本発明の好ましい形態である。
上記積層用樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、即ち、靭性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。
上記可撓性成分としては、上記硬化性樹脂とは異なる化合物であってもよいし、該硬化性樹脂の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH2)4−O−〕m−(mは、同上。))を有する化合物である。
無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニアを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
また、シランカップリング剤を含有することで、接着性を向上させることが可能であり、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能であり、シランカップリング剤を含有することも好ましい形態である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
積層用樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1、RC75−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
上記積層用樹脂組成物の硬化方法としては、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cm2で硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
本発明の積層用樹脂組成物は、基材上に塗布して硬化することにより硬化物を得ることができ、基板上に層を形成することができる。このような上記積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる硬化物(積層物)もまた、本発明の1つである。
基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する形態において、接着性を向上させる観点から、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制する観点から、少なくともシランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって表面処理を施した上に、本願の樹脂組成物を塗布する形態も好ましい形態である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
例えば、スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、基材を100〜800rpmで60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。また、スピンコート後、必要に応じて、光硬化、熱硬化を行うことが好ましい。
なお、透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所製)を用いて測定することができる。
有機材料又は有機・無機複合材料としては、例えば、これらの材料からなる樹脂フィルム等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス基板、金属酸化物基板等が挙げられる。
本発明の積層物を反射型IRCFの吸収層として使用する場合、反射膜を形成する際の耐熱性の観点から、基材としては、無機材料又は金属材料が好適であり、より好適であるのはガラス基板や金属基板等である。
上記以外の場合であっても、基材の材料は、耐リフロー性を有する材料が好適である。
このようなガラスフィルムは、通常のガラス形成材料に遷移金属イオンを含有させ、通常のガラスフィルム形成法にて得ることができる。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを用いればよく、例えば、Ag+ 、Fe+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。
反射膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が、耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材や吸収層、他の構成部材の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好適である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料である。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
また上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは2〜8μmである。なお、撮像素子が有する反射膜の合計の厚みとして、上記範囲にあることが好適である。
また、基材が有機材料、具体的には、樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂組成物に、上記誘電体層等を蒸着した後、該樹脂組成物を硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、IRCFの変形(カール)を充分に抑制することができる。
上記光学材料としては、特に、レンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料であることが好適である。レンズとして好ましくは、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズであり、より好ましくはカメラレンズである。カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが好ましい。また、これら微小光学レンズであることが好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
本発明の組成物に用いるカチオン硬化触媒がTPB系触媒である場合には、該組成物から得られる積層物(硬化物)の吸水率が特に低く、耐熱性にも優れることから、TPB系触媒をカチオン硬化触媒とする積層用樹脂組成物は、上述した各光学材料用途、特に、撮像系用途に特に有用である。
国際公開第1997/031924号に記載された合成法に従って、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%のアイソパーE溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体を18.7g得た。この錯体の水分量は9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMR分析の測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl3)ppm(標準物質:CFCl3 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
上記TPB・水錯体2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対して、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、アデカスタブLA57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)を0.778g(0.984mmol、N基のモル数は3.934mol)添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB系触媒)の均一溶液を調製した。これをカチオン硬化触媒Aとした。
実施例1
オキシラン化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)15部、EHPE−3150(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製)85部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部を80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてカチオン硬化触媒Aを1部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、積層用樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
樹脂組成物を構成するオキシラン化合物及びカチオン硬化触媒の種類及び量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ積層用樹脂組成物(2)〜(7)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
実施例1の樹脂組成物100部に対して、80℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)8部を均一に溶解させ、積層用樹脂組成物(8)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
硬化剤としてカチオン硬化触媒Aの代わりにSI−100L(三新化学社製、熱潜在性カチオン硬化触媒(アンチモン系スルホニウム塩(SbF6塩)))1部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層用樹脂組成物(比較1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例1の樹脂組成物100部に対して、80℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)8部を均一に溶解させ、積層用樹脂組成物(比較2)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
硬化剤としてカチオン硬化触媒Aの代わりにCPI−100P(サンアプロ社製、光潜在性カチオン硬化触媒(リン系スルホニウム塩))1部を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、積層用樹脂組成物(比較3)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
アクリル硬化性樹脂としてDPE−6A(共栄社化学社製)100部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部、色素としてTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)6部を均一に混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてパーヘキシルI(日油社製)1部を均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、積層用樹脂組成物(比較4)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
樹脂としてアクリル硬化性樹脂(DPE−6A)の代わりにウレタンアクリル硬化性樹脂であるUN−904(根上工業社製)を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、積層用樹脂組成物(比較5)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(松波硝子工業社製、水縁磨スライドガラス、S9213、76mm×52mm×1.2〜1.5mm)上に各積層用樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した。
具体的な成膜条件を表2に示す。
(光硬化(UV硬化))
放射線照射光源として、250W超高圧水銀ランプ(USH−250BY、ウシオ電機社製)を備えた露光装置(基本構成ユニット「ML−251B/D」、照射光学ユニット「PM25C−135」、ウシオ電機社製)を用いた。照射側の基板表面における照度を、波長365nmにおいて33mW/cm2とし、積算光量が2J/cm2となるように照射した。
(熱硬化)
イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N2雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。
具体的な硬化条件を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8、比較例1〜2、4〜5で得られた積層用樹脂組成物については熱硬化を行い、比較例3で得られた積層用樹脂組成物については光硬化の後に熱硬化を行った。
成膜前のガラス基板の厚み、及び、成膜及び硬化終了後の評価用サンプルの厚みをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差からコート膜厚を求めた。
最終硬化後、評価用サンプル5枚を目視、及び、20倍の実体顕微鏡で確認し、長さ(直径)2mm以上の欠点が発生したものを×、1mm以上2mm未満の欠点が発生したものを△、0.1mm以上1mm未満の欠点が発生したものを○とした。
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、最終硬化後の時点で、可視光の短波長領域である波長400nm、及び、可視光の中心領域である550nmにおける硬化物の透過率を測定し、着色の有無を評価した。
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、300℃で10分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、260℃で20分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
最終硬化後の硬化物を、恒温恒湿機(ESPEC製、SH−211)を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に100時間静置した後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
最終硬化後の硬化物を、115℃×30分間と−40℃×30分間との間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、100サイクル時の波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
5枚の評価用サンプルについて、クラック及び剥がれが全く発生しなかった場合を○、1枚でもクラック又は剥がれが発生した場合を×として評価した。
最終硬化後の硬化物を、カッター(OLFA社製、NTカッター、A300)を用いて、硬化物上に切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ1mm間隔で11本のクロスカット線を作製し、1mm2の四角を100マス作製した。その硬化物上に、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M社製、メンディングテープ810)を貼り付け、30s放置した。その後、硬化物に剥離力が一定となるように、1s以内に剥離操作を行うことにより、評価用サンプルを作製した。
評価用サンプルについて、作製した100マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかったサンプルを○、1〜10マスに剥がれが発生したサンプルを△、11〜100マスに剥がれが発生したサンプルを×とした。
CELL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂『セロキサイドCELL−2021P』、エポキシ当量131、重量平均分子量120、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、重量平均分子量2900、ダイセル化学工業社製
TX−EX−609K:フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製
SI−100L:熱潜在性カチオン硬化触媒『サンエイドSI−100L』(アンチモン系スルホニウム塩(SbF6塩))、三新化学工業社製、固形分50%
CPI−100P:光潜在性カチオン硬化触媒『光酸発生剤CPI−100P』(リン系スルホニウム塩)、サンアプロ社製
DPE−6A:アクリル硬化性樹脂『ライトアクリレートDPE−6A』、共栄社化学社製
UN−904:ウレタンアクリル硬化性樹脂『アートレジンUN−904』、根上工業社製
パーへキシルI:ラジカル重合開始剤、日油社製
(成膜性及び接着性について)
オキシラン化合物を含む実施例1〜8は、オキシラン化合物を含まない比較例4〜5に比べ、成膜性及び接着性に優れることがわかった。
実施例1〜8では、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。
また、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例1では、アンチモン系触媒を用いた比較例1に比べ、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。また、樹脂組成物が色素を含む場合であっても、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例8では、アンチモン系触媒を用いた比較例2、リン系触媒を用いた比較例3に比べ、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。
実施例1〜8では、各試験後においてもクラック及び剥がれが全く発生しておらず、また、試験前後で透過率も変化していないため、成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れることがわかった。
また、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例1では、アンチモン系触媒を用いた比較例1に比べ、高いリフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性を実現できることがわかった。
さらに、樹脂組成物が色素を含む場合、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例8では、アンチモン系触媒を用いた比較例2、リン系触媒を用いた比較例3に比べ、高い成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性を実現できることがわかった。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (7)
- 基材上に層を形成する材料として用いられる、コーティング用の樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を必須成分とし、
該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、
該カチオン硬化触媒は、ホウ素化合物を含むものであって、
該オキシラン化合物は、分子内に1以上のオキシラン環と水酸基及び/又はエステル基とを有し、かつ重量平均分子量が2000以上の化合物を、オキシラン化合物の総量100質量%に対して、50〜100質量%含むことを特徴とする積層用樹脂組成物。 - 前記積層用樹脂組成物は、さらに、色素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層用樹脂組成物。
- 前記積層用樹脂組成物は、さらに溶媒を含み、
該溶媒の含有量は、前記オキシラン化合物の総量100質量%に対し、100〜10000質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。 - 前記オキシラン化合物は、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。
- 前記積層用樹脂組成物は、基材上に50μm以下の厚みの層を形成する材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の積層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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