JP6073690B2 - 積層用樹脂組成物、及び、硬化物 - Google Patents

積層用樹脂組成物、及び、硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、積層用樹脂組成物、及び、硬化物に関する。より詳しくは、基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物、及び、該積層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
近年、表示素子や撮像素子等の光学デバイスの分野においては、多機能化を図るため、ガラス等からなる基板上に様々な層を形成した積層構造の材料が広く用いられるようになってきている。基板上に形成する層としては、例えば、タッチパネル等に用いられるITO(インジウム・スズ複合酸化物)透明導電層、撮像素子における光学ノイズを低減させる赤外線(IR)カット層、基板表面での光の反射を低減させる反射防止(AR)層等が挙げられる。
従来の基板上にIRカット層を形成した多層構造のIRカットフィルターとしては、ガラス基板上に、ポリイミド系樹脂やポリアクリレート等の樹脂と近赤外線吸収剤とを含む樹脂層を形成したIRカットフィルターが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ガラス等の基板上に、ポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂等のバインダー樹脂、赤外線遮蔽材を含む硬化性組成物からなる層が形成されたIRカットフィルターが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2012−103340号公報 特開2012−189632号公報
ところで、基板上にIRカット層等の層を形成する際は、緻密な層を形成する観点から、高温で蒸着する方法が望まれている。そのため、基材上に形成する層の材料には、高い耐熱性が求められている。
また、例えば、デジタルカメラモジュールにおいては、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の表面に形成する層の材料には、その硬化物(成形体)がリフロー工程に耐え得る耐熱性を有することが求められる。
上記のように、特許文献1及び2では、基板上に、ポリイミド系樹脂等の樹脂と赤外線吸収剤とを含むIRカット層を形成した多層構造のIRカットフィルターが提案されている。しかしながら、従来の技術には、上述したような高温蒸着を行う際の耐熱性及びリフロー工程における耐熱性等の特性に優れた成形体を与える樹脂組成物について、更に検討する余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、基板上に層を形成する材料として優れた耐熱性を有する積層用樹脂組成物、及び、該積層用樹脂組成物を硬化して得られる、優れた耐熱性を有する硬化物を提供することを目的とするものである。
本発明者は、基板上に層を形成する材料として優れた耐熱性を有する積層用樹脂組成物について種々検討したところ、樹脂組成物が、分子内に1以上のオキシラン環を有し、更に水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物と、カチオン硬化触媒としてホウ素化合物とを含むものであると、樹脂組成物が耐熱性に優れ、基材上に高温蒸着により層を形成するための材料として好適に用いることができ、また、樹脂組成物を基材上に積層して得られた積層構造の硬化物がリフロー工程に耐え得る耐熱性を有するものとなることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を必須成分とし、上記オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、上記カチオン硬化触媒は、ホウ素化合物を含むことを特徴とする積層用樹脂組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を含有するものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
<オキシラン化合物>
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物を含み、該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含む。
すなわち、本発明の積層用樹脂組成物は、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物を含んでおり、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の他に、更に水酸基やエステル基を含まない他のオキシラン化合物を含んでいてもよい。
上記オキシラン化合物が、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物を含むことで、上記積層用樹脂組成物を基板上に層を形成する材料として用いる際、積層用樹脂組成物が耐薬品性に優れたものとなる。また、上記オキシラン化合物が、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物であることで、積層用樹脂組成物が接着性に優れたものとなる。
本発明の積層用樹脂組成物において、オキシラン化合物は、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物であり、熱又は光によって硬化(重合)する硬化性化合物(硬化性樹脂ともいう)である。
なお、本明細書においては、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」という。そして、「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
上記水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物としては、水酸基及び/又はエステル基を有するエポキシ化合物が好適である。
上記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が好適であり、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物がより好適である。
脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物は、硬化時にエポキシ化合物自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる光学部材を高生産性で得ることができる。
このように上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記エポキシ化合物に関し、上記脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基(特にオキシラン環)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、中でも、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より低吸水率、高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキシラン化合物が脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物を含む形態において、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物の含有量としては、これらの合計量が、上記オキシラン化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これによって、上述した脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物を用いることによる作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
なお、本発明の積層用樹脂組成物においては、オキシラン化合物として、従来の触媒では硬化し難かった芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した成形体が得られる。そのため、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより屈折率等の制御された成形体を得ることができる。オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、並びに芳香族エポキシ化合物と他のオキシラン化合物とを併用する形態はいずれも好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のオキシラン化合物として脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物を含む形態はより好適な形態である。
また、オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた樹脂組成物は、吸水率(低い吸水率)、屈折率(高い屈折率)、耐薬品性が要求されるレンズ、透明回路基板等の用途に好適である。
上記オキシラン化合物が、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物以外のその他のオキシラン化合物を含む場合、その他のオキシラン化合物として、ノボラック・アラルキルタイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等を用いることができる。
本発明の積層用樹脂組成物中におけるオキシラン化合物の含有量は、接着性を向上する観点より、積層用樹脂組成物の総量100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが更により好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
上記水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の含有量としては、これらの合計量が、積層用樹脂組成物が含むオキシラン化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これによって、上述した脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物を用いることによる作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
本発明の積層用樹脂組成物において、オキシラン化合物は、重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物を含んでいることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物の含有量は、該オキシラン化合物100質量%に対して、10〜100質量%であることが好ましい。これによって、上記積層用樹脂組成物は、基板上に層を形成する際の成膜性により優れたものとなる。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。
また、重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物の重量平均分子量は、2,200以上であることがより好ましい。更に好ましくは、2,500以上である。また、重量平均分子量が2,000以上のオキシラン化合物の重量平均分子量は、成膜性の観点や硬化物のガラス転移温度を高く保つという観点で、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、10,000以下が最も好ましい。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
本発明の積層用樹脂組成物は、硬化性化合物として、上記オキシラン化合物以外のカチオン硬化性化合物を含んでいてもよい。上記カチオン硬化性化合物としては、カチオン重合性基を有する化合物であることが好適である。上記カチオン重合性基としては、カチオン硬化性の官能基であればよく、上述したエポキシ基の他に、例えば、オキセタン基(オキセタン環)、ジオキソラン基、トリオキサン基、ビニル基、ビニルエーテル基、スチリル基等が挙げられる。中でも、オキセタン基が好適である。
オキセタン基を有する化合物(オキセタン化合物)としては、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。また、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好ましい。一方、硬化物の強度向上の観点から、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、多官能のオキセタン化合物としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記オキセタン化合物としては、具体的には、例えば、ETERNACOLL(R)EHO、ETERNACOLL(R)OXBP、ETERNACOLL(R)OXMA、ETERNACOLL(R)HBOX、ETERNACOLL(R)OXIPA(以上、宇部興産社製);OXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610(以上、東亜合成社製)等が好適である。
本発明の積層用樹脂組成物が、上記オキシラン化合物以外のカチオン硬化性化合物を含む場合、本発明の積層用樹脂組成物が含むカチオン硬化性化合物の含有量は、積層用樹脂組成物全体を100質量%とすると、10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、50〜100質量%である。
本発明の積層用樹脂組成物は、1分子内に2個以上の上記カチオン重合性基を有する化合物、すなわち多官能カチオン硬化性化合物を含むことが好適である。これにより、硬化性がより高められ、各種特性により優れる硬化物を得ることができる。なお、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物としては、同一のカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいが、多官能カチオン硬化性化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
<カチオン硬化触媒>
本発明の積層用樹脂組成物が含むカチオン硬化触媒としては、ホウ素化合物を含むものであれば特に限定されないが、好ましくは芳香族フッ素化合物を含むものであり、特に好ましくは、下記一般式(1):
Figure 0006073690
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる形態である。
本発明の積層用樹脂組成物は、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性により優れたものとなる。
また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時、成膜時、使用環境)による着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記一般式(1)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1または2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であってもよい。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(1)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。
なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、TPB系触媒とも称する。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子、硫黄原子が有する非共有電子対を上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN770、TINUVIN765、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN744、CHIMASSORB2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブLA52、アデカスタブLA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記一般式(1)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒において、ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。具体的には、当該カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。ここで、カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
上記カチオン硬化触媒において、これを含む樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が充分ではなくなる場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは0.99以上である。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
上記比n(b)/n(a)としてはまた、ルイス塩基が、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)である場合には、カチオン硬化特性の観点から、酸解離定数が高く、立体障害が大きいことから、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。例えばヒンダードアミンのような構造では、当該範囲が好ましい。
またルイス塩基が、アンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合、特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
上記一般式(1)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒として具体的には、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
本発明の積層用樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量としては、溶媒等を含まない有効成分量(一般式(1)で表される場合にはルイス酸とルイス塩基との合計量)として、積層用樹脂組成物中に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。0.01質量部未満であると、硬化速度をより充分に高めることができないおそれがある。より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。また、10質量部を超える量とすると、硬化時やその成形体の加熱時等に着色するおそれがある。例えば、成形体を得た後にその成形体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からは、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
<その他の成分>
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を必須成分とする限り、その他の成分を含んでいてもよく、該その他の成分は1種又は2種以上を用いることができる。該その他の成分としては、例えば、溶媒成分、色素、可撓性成分等を挙げることができる。
(溶媒)
本発明の積層用樹脂組成物は、溶媒を含むことが好適である。これによって、流動性の高い樹脂組成物とすることができる。
上記溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等が挙げられる。
上記溶媒を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましい。これにより、上記積層用樹脂組成物は、基板上に層を形成する材料として、優れた流動性を発揮することができる。より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは100質量%以上、特に好ましくは200質量%以上、最も好ましくは300質量%以上である。一方、溶媒の含有量は、好ましくは10,000質量%以下、より好ましくは5,000質量%以下、更に好ましくは1,000質量%以下である。
(色素)
本発明の積層用樹脂組成物には、以下に詳述するように、色素、特に600nm以上900nm以下の波長域に吸収極大を有する色素(本発明では近赤外線吸収色素ともいう)を含有させることができ、この形態も好ましい。
上記色素としては、近赤外線吸収色素に限定されない。紫外線、可視光、赤外線の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。
上記色素を含有する積層用樹脂組成物において、色素は積層用樹脂組成物中に分散又は溶解されてなることが好ましい。より好ましくは、積層用樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち、色素が積層用樹脂組成物を構成する樹脂成分や溶媒に溶解するものであることが好ましい。色素としては、1種又は2種以上を使用することができる。
後述するように撮像レンズモジュールにおけるセンサーの誤作動防止の目的で使用する近赤外線吸収色素としては、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素が好適である。より好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
上記近赤外線吸収色素としては、分子内にπ電子結合を有する色素が好ましい。このような分子内にπ電子結合を有する色素としては、芳香環を含む化合物であることが好適である。より好ましくは、1分子内に2個以上の芳香環を含む化合物である。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素が耐熱性、耐候性の観点で好ましく、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素が好適である。より好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。中心金属としてより好ましくは銅及び亜鉛であり、更に好ましくは銅である。銅を用いたフタロシアニンは、どのようなバインダー樹脂に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記色素を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜1質量%である。
撮像レンズモジュールにおいて、ノイズとなる入射光中の(近)赤外線を除去するため透明樹脂シートを基材としその片面もしくは両面に赤外線反射膜を設けてなる赤外線カットフィルター(反射型IRCFともいう)を、レンズへの入射光側または出射光側に備えたものが知られている。ところが反射型IRCFは、入射角により分光透過率曲線が異なる(入射角依存性がある)ため改善が必要とされている。
これに対し、本発明の積層用樹脂組成物に近赤外線吸収色素を含有させたものを基材に塗布して基材上に近赤外線吸収層が形成された積層構造の材料とすると、この積層材料が、入射角依存性が抑制されるとともに耐熱性等に優れる反射型IRCFとして好適に用いることができることを確認した。
すなわち、本発明の積層用樹脂組成物は、撮像レンズ用のIRCFに要求される優れた耐熱性や耐光性等を有するため、近赤外線吸収色素を含有する該組成物から得られた色素含有層を有する積層材料は、入射角依存性の抑制された反射型IRCFとして有用である。
すなわち、撮像レンズモジュールに用いられるIRCF用の積層材料を形成するための材料としての、近赤外線吸収色素を含有する積層用樹脂組成物の使用、及び、積層用樹脂組成物の硬化物もまた本発明の好ましい形態である。
近赤外線吸収色素を含有する積層用樹脂組成物は、上記IRCF用の積層材料を形成するための材料に限定されず、撮像レンズモジュールを構成する各種部材、例えば封止剤、接着剤、センサー上部のマイクロレンズ等の他の部材用にも好適に使用できる。さらに、撮像レンズモジュール以外のLED用封止樹脂、LED用レンズ樹脂等の各種用途にも好ましく用いられる。
(可撓性成分)
上記積層用樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、即ち、靭性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。
上記可撓性成分としては、上記硬化性樹脂とは異なる化合物であってもよいし、該硬化性樹脂の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分として具体的には、(1)−〔−(CH−O−〕−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、YL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、(2)高分子エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノール(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8040、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ化合物));(3)脂環式固形エポキシ化合物(ダイセル工業社製 EHPE−3150);(4)脂環式液状エポキシ化合物(ダイセル工業社製、セロキサイド2081);(5)液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。
これらの中でもより好ましくは、末端や側鎖や主鎖骨格等にカチオン重合性基を含むカチオン硬化性化合物である。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH−O−〕−(mは、同上。))を有する化合物である。
上記可撓性成分を含む場合、その含有量としては、上記硬化性樹脂と可撓性成分との合計量100質量%に対し、40質量%以下であることが好適である。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。
上記積層用樹脂組成物は更に、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニアを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
また、シランカップリング剤を含有することで、接着性を向上させることが可能であり、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能であり、シランカップリング剤を含有することも好ましい形態である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
本発明の積層用樹脂組成物においては、樹脂組成物1cmあたりに含まれる粒子径10μm以上の異物が1000個以下であることが好ましく、より好ましくは100個以下であり、更に好ましくは10個以下である。
積層用樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
本発明の積層用樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、硬化剤(触媒)添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記積層用樹脂組成物は、粘度が10000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性に優れ、例えば、成形体形成用途(特に金型成形体の形成用途)により優れるものとなる。より好ましくは1000Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。また、0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.1Pa・s以上であることがより好ましい。更に好ましくは1Pa・s以上、一層好ましくは5Pa・s以上であり、特に好ましくは10Pa・s以上である。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1、RC75−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
<樹脂組成物の硬化方法>
上記積層用樹脂組成物の硬化方法としては、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cmで硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cmで光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程において、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物を200℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度としては、下限は、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上、最も好ましくは350℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、200℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記第1工程を実施することによって、塗工基材に対して塗液の凝集・ハジキ等を抑制可能となる。また、上記第2工程を実施することで、リフロー工程、蒸着工程に対する耐熱性を向上させることが可能となる。
上記硬化方法は、上記第1工程及び上記第2工程を必須として含んでいれば特に限定されず、その前後、中間に硬化処理を含んでいてもよい。例えば、上記第1工程を光硬化で実施した後、熱硬化を窒素下で150℃×60分間行い、上記第2工程を熱硬化で実施する。このような処理を行うことで、より成膜性、耐熱性を向上させることが可能となる。
<硬化物>
本発明の積層用樹脂組成物は、基材上に塗布して硬化することにより硬化物を得ることができ、基板上に層を形成することができる。このような上記積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる硬化物(積層物)もまた、本発明の1つである。
上述のように、本発明の積層用樹脂組成物は、基材上に層を形成する材料として使用することができる。基材上に層を形成する方法としては、樹脂組成物を基材上に塗布して硬化することにより形成する方法、すなわち、基材上に塗膜を形成する方法が好適である。このように、本発明の積層用樹脂組成物は、コーティング用であることが好ましい。
なお、本明細書において「基材上に層を形成する」とは、基材上に層を直接形成する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して層を形成する場合も含まれることとする。「樹脂組成物を基材上に塗布する」についても同様であり、樹脂組成物を基材上に直接塗布する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する場合も含まれることとする。
基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する形態において、接着性を向上させる観点から、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制する観点から、少なくともシランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって表面処理を施した上に、本願の樹脂組成物を塗布する形態も好ましい形態である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
本発明の積層用樹脂組成物からなる塗膜を基材上に形成する方法としては、溶液塗布法、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の公知の方法を例示することができる。これらの中では、スピンコート法が容易であるため好ましい。
例えば、スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、基材を100〜800rpmで60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。また、スピンコート後、必要に応じて、光硬化、熱硬化を行うことが好ましい。
本発明の積層物は、後述する実施例に記載の方法で所定の厚みの測定用試料を作成して測定したときの、波長400nm及び550nmの透過率が80%以上であることが好ましい。波長400nmの透過率が80%以上であると、目視において無色のコーティング材料を得ることが可能である。波長550nmの透過率が80%以上であると、目視において透明性の高いコーティング材料を得ることが可能である。上記透過率としてより好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上、最も好ましくは90%以上である。
なお、透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所製)を用いて測定することができる。
本発明の積層物の一部である、本発明の積層用樹脂組成物から形成される層の厚みは特に限定されないが、成膜時やリフロー時の耐熱性(透明性の観点)、熱膨張による界面での剥離や割れを防止する観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下である。一方、本発明の積層物の厚みは、異物等をコートする観点、絶縁性や誘電性の観点、色素の会合を抑制する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上である。
本発明の積層用樹脂組成物を用いて積層物を形成する際に用いる基材としては特に限定されないが、例えば、有機材料、無機材料、有機・無機複合材料、金属材料等の1種又は2種以上の材料とすることが好ましい。
有機材料又は有機・無機複合材料としては、例えば、これらの材料からなる樹脂フィルム等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス基板、金属酸化物基板等が挙げられる。
本発明の積層物を反射型IRCFの吸収層として使用する場合、反射膜を形成する際の耐熱性の観点から、基材としては、無機材料又は金属材料が好適であり、より好適であるのはガラス基板や金属基板等である。
上記以外の場合であっても、基材の材料は、耐リフロー性を有する材料が好適である。
上記基材の厚みは特に限定されないが、例えば、ガラス基板を基材とする場合、その厚みは30〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50μmを超える厚みである。また、樹脂フィルムを基材とする場合には、30μm以上、300μm未満であることが好適である。なお、ポリイミド樹脂、カプトンを用いる場合には、100μm程度の厚みも好適に使用することができる。
基材としては、遷移金属イオンにより光吸収機能が付与されたガラスフィルムも好適に使用される。
このようなガラスフィルムは、通常のガラス形成材料に遷移金属イオンを含有させ、通常のガラスフィルム形成法にて得ることができる。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを用いればよく、例えば、Ag 、Fe、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。
本発明の積層物が、IRCFとして用いられる場合、基材上に形成された本発明の積層用樹脂組成物の層の上に、反射膜を形成することが好ましい。
反射膜としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が、耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては、基材や吸収層、他の構成部材の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜として好ましくは、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料である。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5である。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
上記反射膜はまた、上述したように多層膜であることが好ましいが、その積層数は、撮像素子が有する反射膜の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましい。より好ましくは25〜50層の範囲である。
また上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは2〜8μmである。なお、撮像素子が有する反射膜の合計の厚みとして、上記範囲にあることが好適である。
本発明の積層物を反射型IRCFの吸収層として使用し、上記積層物の表面に反射膜を形成する場合には、10層以上の多層膜を形成しないことが好ましい。あるいは、反射膜を形成した後に上記積層物を形成することが好ましい。
上記反射膜は、上述したように、基材や吸収層に直接又は他の構成部材を介して存在していればよく、例えば、これらの表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等を用いて反射膜を形成することが好適である。中でも、真空蒸着法を用いることが好ましい。より好ましくは、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、基材等に該蒸着層を転写することで、反射膜を形成する方法である。これにより、蒸着によってIRCFが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくすることができる。なお、この場合、蒸着層を転写しようとする基材等には、接着層を形成しておくことが好ましい。
また、基材が有機材料、具体的には、樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂組成物に、上記誘電体層等を蒸着した後、該樹脂組成物を硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、IRCFの変形(カール)を充分に抑制することができる。
このように反射膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える樹脂組成物及び色素を用いることは、非常に意味がある。また、このような高温での蒸着には、IRCFの基材として、線膨張係数の低いものを用いることが好適である。これにより、線膨張係数の差による無機層クラックを抑制することができる。また、線膨張係数が低い材料を用いると、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、例えば、リフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
本発明の積層物をIRCFとして使用する場合、IRCFの厚み(反射型IRCFの場合には反射膜を含む厚み)は、例えば、1mm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下であり、これにより、IRCFを充分に薄膜化することができ、撮像素子の低背化要求により応えることができる。更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm、最も好ましくは60μm以下である。また、耐リフロー特性、特に260℃以上の温度における耐熱性により優れる点で、1μm以上であることが好ましい。より好ましくは10μm以上である。
上記積層物は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用なものである。中でも特に、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に用いることができる。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。
これらの用途の中でも、光学材料が特に好適である。このように上記積層物が光学材料である形態や、上記積層用樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である形態もまた、本発明の好適な形態に含まれる。
上記光学材料としては、特に、レンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料であることが好適である。レンズとして好ましくは、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズであり、より好ましくはカメラレンズである。カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが好ましい。また、これら微小光学レンズであることが好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
本発明の積層用樹脂組成物は、上記カチオン硬化性触媒を用いることによって、アンチモン系カチオン硬化触媒を用いた場合に比べて、環境負荷の低減の観点からも有用であり、特に光学材料用途においてその有用性は高い。特に、世界需要が高く更に需要増加が見込まれるカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤において、本発明の樹脂組成物を用いる価値は高い。また、本発明の樹脂組成物から得られる積層物(硬化物)は、吸水率が低いことから、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズの各用途において好ましく用いられる。より好ましくはカメラレンズの用途であり、カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが更に好ましい用途である。積層物(硬化物)における吸水は、膨張、クラックの発生等の原因となるが、吸水によるこれらの僅かな変化が光学特性に現われ易い上述した微小光学レンズには、本発明の積層物(硬化物)を用いることは有効である。
更に、本発明の樹脂組成物から得られる積層物(硬化物)は、リフロー耐熱性が高く、可視光透過率の低減や着色が抑えられる。携帯電話、テレビ、パソコン、車載用途等の各種素子は、製造工程の簡略化、低コスト化等の理由から、半田リフロープロセスを採用する流れにある。本発明の樹脂組成物又は該組成物から得られた積層物は、半田リフロープロセスに供されても光学特性低下が抑制されることから、半田リフロープロセスを採用する各種素子の部材(例えばレンズ、フィルター、接着剤等の光学材料)として有用である。
本発明の組成物に用いるカチオン硬化触媒がTPB系触媒である場合には、該組成物から得られる積層物(硬化物)の吸水率が特に低く、耐熱性にも優れることから、TPB系触媒をカチオン硬化触媒とする積層用樹脂組成物は、上述した各光学材料用途、特に、撮像系用途に特に有用である。
本発明の積層用樹脂組成物は、上述のような構成であるので、耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れた硬化物(積層物)を与えることができるものである。このような積層物は、光学材料、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に好適に適用でき、特に光学材料として有用である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<TPB錯体の調製>
国際公開第1997/031924号に記載された合成法に従って、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%のアイソパーE溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体を18.7g得た。この錯体の水分量は9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMR分析の測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl)ppm(標準物質:CFCl 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
<カチオン硬化触媒Aの調製>
上記TPB・水錯体2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対して、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、アデカスタブLA57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)を0.778g(0.984mmol、N基のモル数は3.934mol)添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB系触媒)の均一溶液を調製した。これをカチオン硬化触媒Aとした。
<積層用樹脂組成物及び硬化物(積層物)の調製>
実施例1
オキシラン化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)15部、EHPE−3150(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製)85部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部を80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてカチオン硬化触媒Aを1部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、積層用樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
実施例2〜7
樹脂組成物を構成するオキシラン化合物及びカチオン硬化触媒の種類及び量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ積層用樹脂組成物(2)〜(7)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
実施例8
実施例1の樹脂組成物100部に対して、80℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)8部を均一に溶解させ、積層用樹脂組成物(8)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例1
硬化剤としてカチオン硬化触媒Aの代わりにSI−100L(三新化学社製、熱潜在性カチオン硬化触媒(アンチモン系スルホニウム塩(SbF塩)))1部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層用樹脂組成物(比較1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例2
比較例1の樹脂組成物100部に対して、80℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)8部を均一に溶解させ、積層用樹脂組成物(比較2)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例3
硬化剤としてカチオン硬化触媒Aの代わりにCPI−100P(サンアプロ社製、光潜在性カチオン硬化触媒(リン系スルホニウム塩))1部を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、積層用樹脂組成物(比較3)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例4
アクリル硬化性樹脂としてDPE−6A(共栄社化学社製)100部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部、色素としてTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)6部を均一に混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてパーヘキシルI(日油社製)1部を均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、積層用樹脂組成物(比較4)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例5
樹脂としてアクリル硬化性樹脂(DPE−6A)の代わりにウレタンアクリル硬化性樹脂であるUN−904(根上工業社製)を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、積層用樹脂組成物(比較5)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
上記実施例及び比較例で得られた積層用樹脂組成物を用いて、以下の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
<成膜方法>
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(松波硝子工業社製、水縁磨スライドガラス、S9213、76mm×52mm×1.2〜1.5mm)上に各積層用樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した。
具体的な成膜条件を表2に示す。
<硬化方法>
(光硬化(UV硬化))
放射線照射光源として、250W超高圧水銀ランプ(USH−250BY、ウシオ電機社製)を備えた露光装置(基本構成ユニット「ML−251B/D」、照射光学ユニット「PM25C−135」、ウシオ電機社製)を用いた。照射側の基板表面における照度を、波長365nmにおいて33mW/cmとし、積算光量が2J/cmとなるように照射した。
(熱硬化)
イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。
具体的な硬化条件を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8、比較例1〜2、4〜5で得られた積層用樹脂組成物については熱硬化を行い、比較例3で得られた積層用樹脂組成物については光硬化の後に熱硬化を行った。
最終硬化後、ダイヤモンドカッターを使用して、ガラスの外周部は均等になるように削除し、15mm×15mmの大きさの評価用サンプルを1枚のガラス基板から6枚取り出した。
上記実施例及び比較例で得られた積層用樹脂組成物又は硬化物(積層物)について、コート膜厚、成膜性、硬化物の透過率、耐熱性(成膜耐熱性及びリフロー耐熱性)、耐湿熱性、耐温度衝撃性、接着性を以下の方法にて評価した。結果を表2に示す。
<コート膜厚>
成膜前のガラス基板の厚み、及び、成膜及び硬化終了後の評価用サンプルの厚みをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差からコート膜厚を求めた。
<成膜性>
最終硬化後、評価用サンプル5枚を目視、及び、20倍の実体顕微鏡で確認し、長さ(直径)2mm以上の欠点が発生したものを×、1mm以上2mm未満の欠点が発生したものを△、0.1mm以上1mm未満の欠点が発生したものを○とした。
<硬化物の透過率(着色の有無)>
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、最終硬化後の時点で、可視光の短波長領域である波長400nm、及び、可視光の中心領域である550nmにおける硬化物の透過率を測定し、着色の有無を評価した。
<耐熱性試験(成膜耐熱性試験)>
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、300℃で10分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
<耐熱性試験(リフロー耐熱性試験)>
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、260℃で20分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
<耐湿熱性試験>
最終硬化後の硬化物を、恒温恒湿機(ESPEC製、SH−211)を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に100時間静置した後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
<耐温度衝撃性試験>
最終硬化後の硬化物を、115℃×30分間と−40℃×30分間との間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、100サイクル時の波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
<クラック及び剥がれの評価>
5枚の評価用サンプルについて、クラック及び剥がれが全く発生しなかった場合を○、1枚でもクラック又は剥がれが発生した場合を×として評価した。
<接着性の評価>
最終硬化後の硬化物を、カッター(OLFA社製、NTカッター、A300)を用いて、硬化物上に切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ1mm間隔で11本のクロスカット線を作製し、1mmの四角を100マス作製した。その硬化物上に、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M社製、メンディングテープ810)を貼り付け、30s放置した。その後、硬化物に剥離力が一定となるように、1s以内に剥離操作を行うことにより、評価用サンプルを作製した。
評価用サンプルについて、作製した100マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかったサンプルを○、1〜10マスに剥がれが発生したサンプルを△、11〜100マスに剥がれが発生したサンプルを×とした。
Figure 0006073690
Figure 0006073690
表1中の略号等は、下記のとおりである。
CELL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂『セロキサイドCELL−2021P』、エポキシ当量131、重量平均分子量120、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、重量平均分子量2900、ダイセル化学工業社製
TX−EX−609K:フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製
SI−100L:熱潜在性カチオン硬化触媒『サンエイドSI−100L』(アンチモン系スルホニウム塩(SbF塩))、三新化学工業社製、固形分50%
CPI−100P:光潜在性カチオン硬化触媒『光酸発生剤CPI−100P』(リン系スルホニウム塩)、サンアプロ社製
DPE−6A:アクリル硬化性樹脂『ライトアクリレートDPE−6A』、共栄社化学社製
UN−904:ウレタンアクリル硬化性樹脂『アートレジンUN−904』、根上工業社製
パーへキシルI:ラジカル重合開始剤、日油社製
各実施例及び比較例から、以下のことがわかった。
(成膜性及び接着性について)
オキシラン化合物を含む実施例1〜8は、オキシラン化合物を含まない比較例4〜5に比べ、成膜性及び接着性に優れることがわかった。
(最終硬化後の透過率について)
実施例1〜8では、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。
また、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例1では、アンチモン系触媒を用いた比較例1に比べ、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。また、樹脂組成物が色素を含む場合であっても、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例8では、アンチモン系触媒を用いた比較例2、リン系触媒を用いた比較例3に比べ、最終硬化後の透過率が高い値を示すことから、最終硬化時の着色を低減できることがわかった。
(成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性について)
実施例1〜8では、各試験後においてもクラック及び剥がれが全く発生しておらず、また、試験前後で透過率も変化していないため、成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れることがわかった。
また、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例1では、アンチモン系触媒を用いた比較例1に比べ、高いリフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性を実現できることがわかった。
さらに、樹脂組成物が色素を含む場合、カチオン硬化触媒としてTPB錯体を用いた実施例8では、アンチモン系触媒を用いた比較例2、リン系触媒を用いた比較例3に比べ、高い成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性を実現できることがわかった。
上記実施例においては、樹脂組成物として、特定のオキシラン化合物とカチオン硬化触媒を含むものを用いることによって、成膜性、耐熱性(成膜耐熱性及びリフロー耐熱性)、耐湿熱性、耐温度衝撃性、接着性に優れた硬化物を与えることができるものであり、このような樹脂組成物は、基材上に層を形成するための積層用材料(例えば、ITO透明導電層、IRカット層、AR層等を形成する材料)として好適に使用することができることがわかった。なお、上記実施例のような作用機序は、本発明の積層用樹脂組成物においてすべて同様に発現されるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (7)

  1. 基材上に層を形成する材料として用いられる、コーティング用の樹脂組成物であって、
    該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、カチオン硬化触媒を必須成分とし、
    該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、
    該カチオン硬化触媒は、ホウ素化合物を含むものであって、
    該オキシラン化合物は、分子内に1以上のオキシラン環と水酸基及び/又はエステル基とを有し、かつ重量平均分子量が2000以上の化合物を、オキシラン化合物の総量100質量%に対して、50〜100質量%含むことを特徴とする積層用樹脂組成物。
  2. 前記ホウ素化合物は、下記一般式(1):
    Figure 0006073690
    (式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸と、ルイス塩基とからなることを特徴とする請求項に記載の積層用樹脂組成物。
  3. 前記積層用樹脂組成物は、さらに、色素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層用樹脂組成物。
  4. 前記積層用樹脂組成物は、さらに溶媒を含み、
    該溶媒の含有量は、前記オキシラン化合物の総量100質量%に対し、100〜10000質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。
  5. 前記オキシラン化合物は、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。
  6. 前記積層用樹脂組成物は、基材上に50μm以下の厚みの層を形成する材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層用樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の積層用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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