JP5814478B2 - カチオン硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、カチオン硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、カチオン硬化性の化合物を含み、熱や光等でカチオン種を発生させるカチオン硬化触媒によるカチオン硬化反応によって硬化し得る樹脂組成物に関する。
カチオン硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化性の化合物及びカチオン硬化触媒を含み、熱や光等で触媒からカチオン種を発生し、それによるカチオン硬化反応によって硬化し得る樹脂組成物である。カチオン硬化(重合)は、ラジカル重合に比べ、酸素による硬化阻害が起こらない、硬化時の収縮が小さいといった利点があり、様々な分野への適用が期待されている。具体的には、例えば、電気・電子部材や光学部材、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途への適用が種々検討されており、各用途において要求される特性に優れたカチオン硬化性樹脂組成物の開発が望まれている。
従来のカチオン硬化性樹脂組成物としては、例えば、耐熱性、透明性、離型性等に優れた成形体を得ることを目的として、カチオン硬化性化合物、1気圧下で260℃以下の沸点を持つ化合物、離型剤及びカチオン硬化触媒を含有する光学成形体用硬化性樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、カチオン硬化触媒としてアンチモン系スルホニウム塩等を用いることが開示されている。
また、樹脂組成物の硬化にホウ素含有化合物を用いることも検討されている。例えば、光カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物において、光カチオン重合開始剤として、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TEPB)を用いることにより、透湿度が低く、かつ、優れた透明性を有する硬化物が得られる旨が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、エポキシ樹脂用窒素原子含有潜硬化剤として三フッ化ホウ素のアミン錯体を用いた硬化性組成物も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
ホウ素含有化合物を含む硬化性樹脂組成物としては、更に、硬化性の樹脂と、三価のホウ素を含むルイス酸及び窒素含有分子を含んでなる硬化触媒とを含有する硬化性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。特許文献4には、このような硬化性樹脂組成物を酸無水物を用いて硬化させることが記載されている。また、酸無水物硬化剤とトリフェニルボラン等のホウ素含有触媒とを含む固体素子デバイス封入用の硬化性エポキシ樹脂組成物も開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
特開2009−299074号公報 特開2005−187636号公報 特開昭62−240316号公報 特表2008−544067号公報 特開2003−192765号公報
ところで、カチオン硬化性樹脂組成物は、種々の用途に適用可能なものが検討されているが、透明性を発現させることもできることから、レンズ等の光学用途における材料として特に有用である。例えば、デジタルカメラモジュールにおいては、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の部材を形成するためにカチオン硬化性樹脂組成物を用いる場合には、その硬化物(成形体)にはリフロー工程に耐え得る耐熱性が求められる。また、光学材料として使用する場合には、使用環境下での耐湿熱性や耐UV照射性も求められることとなる。
これらの点に関して、上述したように、特許文献1にはカチオン硬化触媒としてアンチモン系スルホニウム塩を用いる樹脂組成物が開示されている。アンチモン系スルホニウム塩を用いることにより、リフロー方式への適用が可能となる等、一定の成果が上がっている。しかし、アンチモン系スルホニウム塩を用いた場合、その成形体は熱(硬化時の熱、使用環境)により着色し、その結果、短波長可視光である400nmの透過率が低下するという問題があり、成形体の耐熱性はまだ充分なものではない。また、アンチモン系スルホニウム塩を用いて硬化させた成形体は、吸水率が比較的高くなる傾向があり、光学材料として使用する場合には、更なる低吸水化を検討する余地があった。
一方、特許文献2のようにTEPBを用いる場合には、250℃での2次硬化やリフロー工程において、熱により着色が発生する等、成形体の耐熱性が充分なものとならない。また、特許文献3に記載の三フッ化ホウ素のアミン錯体は、水分と接触することで腐食性のフッ酸を生じるため、作業時等の安全性を確保できないおそれがある。また、特許文献4や特許文献5に記載のように、酸無水物を用いて樹脂組成物を硬化させる場合には、カチオン硬化触媒を用いたカチオン硬化反応による硬化に比べて短時間で成形体を得る事が困難であり、また、成形体の耐熱性がリフロー工程に適用できるほどには高くならないという問題があった。
このように、従来の技術には、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等の特性に優れた成形体を与える樹脂組成物について更に検討する余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等に優れた成形体を得ることが可能なカチオン硬化性樹脂組成物、及び、光学部材等の各種用途に有用な成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするカチオン硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、カチオン硬化触媒として、ホウ素原子を有する特定のルイス酸とルイス塩基とからなる化合物を用いると、該樹脂組成物を硬化させて得られる成形体が、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等に優れたものとなることを見出した。特に、本発明におけるカチオン硬化触媒を用いると、従来のアンチモン系カチオン硬化触媒に比べて、得られる成形体の熱や紫外線による着色や可視光短波長域における透過率の低下を抑制できることも見出した。そして、このような成形体がレンズ等の光学用途に極めて有用であることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするカチオン硬化性樹脂組成物であって、上記カチオン硬化触媒は、下記一般式(1):
Figure 0005814478
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸と、ルイス塩基とからなることを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物(樹脂組成物とも称す。)は、カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするものであるが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を含有してもよく、これらの成分は1種又は2種以上を用いることができる。
上記カチオン硬化触媒は、上記一般式(1)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなるものである。これにより、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の、特に光学用途において求められる特性に優れたものとなる。
また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時の熱、使用環境)による着色が低減され、吸湿性が低く、耐湿熱性や耐UV照射性等の耐久性に優れた硬化物が得られる。なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無、程度は通常、400nmにおける透過率の変化からも確認できる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無、程度について評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記一般式(1)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1または2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であっても良い。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(1)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
また、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、最も好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。成形体の耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。
なお、本願明細書、実施例等において、本発明にかかるカチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものをTPB系触媒と表記することもある。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子、硫黄原子が有する非共有電子対を上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化成形体の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、成形体の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN770、TINUVIN765、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN744、CHIMASSORB2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブLA52、アデカスタブLA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
本発明におけるカチオン硬化触媒において、上記ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。
すなわち、カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。
カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)は算定される。
カチオン硬化触媒を含んだ樹脂組成物の保存安定性の観点では、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が低下する場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、上記比は0.8以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、0.95以上が一層好ましく、0.99以上が特に好ましい。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が低下する場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、比n(b)/n(a)は、20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
更に、カチオン硬化特性の観点では、ルイス塩基が窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)では、酸解離定数が高く、立体障害が大きい事から、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。例えばヒンダードアミンの様な構造では、上記範囲が好ましい。
また、ルイス塩基がアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合は、特にアンモニアである場合は、比n(b)/n(a)が1より大きいことが好ましい。具体的には、好ましくは、1.001以上であり、より好ましくは1.01以上であり、更に好ましくは1.1以上であり、特に好ましくは1.5以上である。
また、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は、特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
本発明におけるカチオン硬化触媒として、具体的には、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量としては、溶媒等を含まない有効成分量(一般式(1)で表されるルイス酸とルイス塩基との合計量)として、後述するカチオン硬化性化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。0.01質量部未満であると、硬化速度をより充分に高めることができないおそれがある。より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。また、10質量部を超える量とすると、硬化時やその成形体の加熱時等に着色するおそれがある。例えば、成形体を得た後にその成形体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からは、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化性化合物(「カチオン硬化性樹脂」とも称す。)は、カチオン硬化反応によって硬化(重合)し得る化合物であればよく、カチオン重合性基を有する化合物であることが好適である。
上記カチオン重合性基としては、カチオン硬化性の官能基であればよく、例えば、エポキシ基、オキセタン基(オキセタン環)、ジオキソラン基、トリオキサン基、ビニル基、ビニルエーテル基、スチリル基等が挙げられる。中でも、エポキシ基、オキセタン基が好適である。すなわち、上記カチオン硬化性化合物が、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(「オキセタン基含有化合物」とも称す。)を含む形態は、本発明の好適な実施形態の1つである。上記カチオン重合性基の硬化特性は、基の種類のみならず、該基が結合した有機骨格にも影響されることになる。
なお、本明細書における「エポキシ基」とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等を含むものである。
以下では、エポキシ化合物及びオキセタン化合物について、具体的に説明する。
上記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物が好適であり、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物がより好適である。
このように上記カチオン硬化性化合物が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記エポキシ化合物に関し、上記脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基(特にオキシラン環)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、中でも、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキセタン化合物とは、オキセタン基(オキセタン環)を有する化合物である。
上記オキセタン化合物は、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。また、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好ましい。一方、硬化物の強度向上の観点から、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、多官能のオキセタン化合物としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記オキセタン化合物としては、具体的には、例えば、ETERNACOLL(R)EHO、ETERNACOLL(R)OXBP、ETERNACOLL(R)OXMA、ETERNACOLL(R)HBOX、ETERNACOLL(R)OXIPA(以上、宇部興産社製);OXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610(以上、東亜合成社製)等が好適である。
上記カチオン硬化性化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物が特に好適である。これらは、硬化時にエポキシ化合物自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる光学部材を高生産性で得ることができる。このように、上記カチオン硬化性化合物が、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記カチオン硬化性化合物が脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態において、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物の含有量としては、これらの合計量が、上記カチオン硬化性化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これによって、上述した脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物を用いることによる作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
なお、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物においては、カチオン硬化性化合物として、従来の触媒では硬化し難かった芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した成形体が得られる。そのため、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより屈折率等の制御された成形体を得ることができる。カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、並びに芳香族エポキシ化合物と他のカチオン硬化性化合物とを併用する形態はいずれも好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のカチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む形態はより好適な形態である。
また、カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた樹脂組成物は、屈折率(高い屈折率)が要求されるレンズ等の用途に好適である。
上記カチオン硬化性化合物はまた、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物、すなわち多官能カチオン硬化性化合物であることが好適である。これにより、硬化性がより高められ、各種特性により優れる硬化物を得ることができる。なお、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物としては、同一のカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいが、多官能カチオン硬化性化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
上記樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、即ち、靭性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。
上記可撓性成分としては、上記カチオン硬化性化合物とは異なる化合物であってもよいし、該カチオン硬化性化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分として具体的には、(1)−〔−(CH−O−〕−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、YL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、(2)高分子エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノール(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8040、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ化合物));(3)脂環式固形エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製 EHPE−3150);(4)脂環式液状エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2081);(5)液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。
これらの中でもより好ましくは、末端や側鎖や主鎖骨格等にカチオン重合性基を含むカチオン硬化性化合物である。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH−O−〕−(mは、同上。))を有する化合物である。
上記可撓性成分を含む場合、その含有量としては、上記カチオン硬化性化合物と可撓性成分との合計量100質量%に対し、40質量%以下であることが好適である。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。
本発明における上記触媒を用いることにより、金型離型性が向上する効果や離型剤を減らせる効果が得られ、本発明の樹脂組成物は金型成形材料に好適である。よって、本発明の樹脂組成物においては、従来技術では用いていた離型剤を使用しなくても、金型からの離型が可能となる。そのため、離型剤含有による透明性低下を生じることなく、離型剤による性能への影響を抑えて、金型からの離型性に優れる硬化物が得られる。
しかし、上記樹脂組成物を用いてレンズ等を得る場合、つまり、硬化・成形方法として金型成形を採用する場合において、離型剤を含んでもよい。離型剤としては、カチオン硬化触媒による硬化反応を阻害することなく、むしろ促進する基を有する化合物が好ましい。離型剤として具体的には、アルコール性OH基及び/又はカルボニル基(カルボキシル基及びエステル基を含む)を有する化合物が好ましく、更にカチオン硬化性樹脂組成物への相溶性、離型効果の高い点から、炭素数が8以上の炭化水素基を有するものが好ましい。より好ましくは、炭素数8〜36のアルコール、炭素数8〜36のカルボン酸、炭素数8〜36のカルボン酸エステル、炭素数8〜36のカルボン酸無水物及び炭素数8〜36のカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物である。このような離型剤を含有することで、短時間で硬化できるとともに、金型を用いて硬化する際に容易に金型を剥がすことができ、硬化物の表面に傷をつけることなく外観を制御し、透明性を発現させることができる。よって、上記樹脂組成物を、電気・電子部品材料用途や光学部材用途等により有用なものとすることができる。
上記離型剤として挙げられた化合物の中でもより好ましくは、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステルであり、更に好ましくは、カルボン酸(特に高級脂肪酸)及びカルボン酸エステルである。カルボン酸及びカルボン酸エステルは、カチオン硬化反応を阻害することなく、離型効果を充分に発揮できることから好適である。なお、アミン類は、カチオン硬化反応を阻害する可能性があることから、離型剤として用いない方が好ましい。
上記化合物はまた、直鎖状、分岐状、環状等のいずれの構造であってもよく、分岐しているものが好ましい。
上記化合物の炭素数としては、8〜36の整数であることが好適であるが、これによって、樹脂組成物の透明性や作業性等の機能を損なうことなく、優れた剥離性を示す硬化物となる。炭素数としてより好ましくは8〜20であり、更に好ましくは10〜18である。
上記炭素数が8〜36のアルコールとしては、一価又は多価のアルコールであり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよい。上記アルコールとしては、具体的には、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール、マーガリルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ミリシルアルコ−ル、メチルペンチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、3,5−ジメチル−1−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−1−ペンタノール、ジペンタエリスリトール、2−フェニルエタノール等が好適に挙げられる。上記アルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましく、中でも、オクチルアルコール(オクタノール)、ラウリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール(2−エチルヘキサノール)、ステアリルアルコールがより好ましい。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸としては、1価又は多価のカルボン酸であり、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、1−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、1−ヘキサコサン酸、ベヘン酸等が好適に挙げられる。好ましくは、オクタン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸である。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸エステルとしては、(1)上記アルコールと上記カルボン酸とから得られるカルボン酸エステル、(2)メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、グリセリン、ベンジルアルコール等の炭素数1〜7のアルコールと上記カルボン酸との組み合わせで得られるカルボン酸エステル、(3)酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸等の炭素数1〜7のカルボン酸と上記アルコールとの組み合わせで得られるカルボン酸エステル、(4)炭素数1〜7のアルコールと、炭素数1〜7のカルボン酸とから得られるカルボン酸エステルであって、合計炭素数が8〜36となる化合物等が好適に挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)のカルボン酸エステルが好ましく、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸エチルエステル、酢酸オクチルエステル等がより好ましい。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸無水物とは、上記炭素数が8〜36のカルボン酸の無水物である。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸塩としては、上記カルボン酸と、アミン、Na、K、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Snとの組み合わせで得られるカルボン酸塩等が好適に挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、2−エチルヘキサン酸Zn等が好ましい。
上述の化合物の中でもより好ましくは、ステアリン酸及びステアリン酸エステル等のステアリン酸系化合物、アルコール系化合物であり、更に好ましくは、ステアリン酸系化合物である。
上記離型剤を含む場合、その含有量としては、上記樹脂組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えると樹脂組成物が硬化しにくくなる等のおそれがある。より好ましくは、0.01〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜2質量%である。
上記樹脂組成物を用いてレンズを形成する場合、特に、エポキシ系カチオン硬化性化合物を用いてレンズを形成する場合は、樹脂組成物に無機材料を含有する形態も好ましい。上記樹脂組成物が、無機材料を含むことにより、強度が高く、成形加工性に優れ、硬化して得られるレンズは、アッベ数・屈折率が制御されたものとなる(特に珪素化合物は高アッベ数となる)。
上記無機材料としては、金属酸化物粒子等の無機微粒子や、ポリシロキサン化合物等の無機高分子が好適に挙げられる。
上記無機微粒子としては、金属や金属化合物等の無機化合物から構成される微粒子であればよく、特に限定されるものではない。無機微粒子における無機成分としては、金属の酸化物、水酸化物、(酸)窒化物、(酸)硫化物、炭化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、(塩基性)炭酸塩、(塩基性)酢酸塩等が例示される。これらの中でも好ましくは、金属の酸化物(金属酸化物)であり、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛であることがより好ましい。用いる硬化性化合物の屈折率やアッベ数にもよるが、通常、屈折率の高い又はアッベ数の低い成形体(硬化物)を得るためには、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛が好ましく用いられる。一方、屈折率の低い又はアッベ数の高い成形体(硬化物)を得るためには、シリカを用いることが好ましい。
上記無機微粒子としては、微粒子の樹脂との親和性向上、分散性向上等の目的で、表面処理された粒子も包含される。表面処理剤としては、特に限定されず、微粒子表面に有機鎖、高分子鎖の導入又は表面電荷制御の目的で、各種の有機化合物、無機化合物、有機金属化合物等が用いられる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤;金属アルコキシド類及びこれらの(部分)加水分解・縮合物;金属石鹸;等の有機金属化合物が挙げられる。
また、無機高分子としては、ポリシロキサン化合物等が挙げられ、具体的には、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサン等が挙げられる。
上記樹脂組成物において、無機微粒子又はポリシロキサン化合物を含む場合、カチオン硬化性化合物としては、水添エポキシ化合物及び/又は脂環式エポキシ化合物を必須とする形態が好ましい。これにより、高いアッベ数を有するエポキシ系カチオン硬化性化合物とすることができる。
上記樹脂組成物は、無機材料を含有することにより、熱膨張率を低下させることができる。また、無機材料と樹脂との屈折率をあわせることにより、樹脂組成物及びその成形体(例えばレンズ等)の外観を制御し、透明性を発現させることもでき、電気・電子部品材料や光学用途における材料として特に有用なものとすることができる。更に、無機微粒子を含むことにより、離型効果をより発揮することができる。具体的には、樹脂成分として例えば熱硬化性樹脂(特に、エポキシ化合物)を含む場合、樹脂成分が接着効果を有することとなり、このような樹脂組成物は、硬化させた場合に金型に接着するおそれがある。しかし、無機微粒子を適量加えることにより、離型効果がみられ、成形体(硬化物)が金型から容易に剥がれることとなる。
上記無機材料を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜80質量%であり、更に好ましくは、0.2〜60質量%であり、特に好ましくは、0.3〜20質量%であり、最も好ましくは、0.5〜15質量%である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物には、以下に詳述するように、色素、特に600nm以上2000nm以下の波長域に吸収極大を有する色素(本発明では近赤外線吸収色素ともいう)を含有させることができ、この形態も好ましい。
上記色素としては、近赤外線吸収色素に限定されない。紫外線、可視光、赤外線の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。
上記色素を含有するカチオン硬化樹脂組成物において、色素はカチオン硬化性樹脂組成物中に分散又は溶解されてなることが好ましい。より好ましくは、カチオン硬化性樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち、色素がカチオン硬化樹脂組成物を構成する樹脂成分や溶媒に溶解するものであることが好ましい。色素としては、1種又は2種以上を使用することができる。
後述するように撮像レンズモジュールにおけるセンサーの誤作動防止の目的で使用する近赤外線吸収色素としては、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素が好適である。より好ましくは、650〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
上記近赤外線吸収色素としては、分子内にπ電子結合を有する色素が好ましい。このような分子内にπ電子結合を有する色素としては、芳香環を含む化合物であることが好適である。より好ましくは、1分子内に2個以上の芳香環を含む化合物である。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素が耐熱性、耐候性の観点で好ましく、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素が好適である。より好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。中心金属としてより好ましくは銅及び亜鉛であり、更に好ましくは銅である。銅を用いたフタロシアニンは、どのようなバインダー樹脂に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記色素を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜1質量%である。
撮像レンズモジュールにおいて、ノイズとなる入射光中の(近)赤外線を除去するため透明樹脂シートを基材としその片面もしくは両面に赤外線反射膜を設けてなる赤外線カットフィルター(反射型IRCFともいう)を、レンズへの入射光側または出射光側に備えたものが知られている。ところが反射型IRCFは、入射角により分光透過率曲線が異なる(入射角依存性がある)ため改善が必要とされている。
本出願人は、反射型IRCFにおいて、近赤外線吸収色素を樹脂組成物に含有させた組成物から得られた色素含有層を有する樹脂シートを基材とすることにより、入射角依存性の抑制された反射型IRCFを得ることができることを既に知見している。そこで、該樹脂組成物を本発明のカチオン硬化性樹脂組成物とすること、すなわち、近赤外線吸収色素をカチオン硬化性樹脂組成物に含有させた組成物から得られた色素含有層を有する樹脂シートを基材とすることにより、入射角依存性が抑制されるとともに耐熱性等に優れる反射型IRCFを得ることができることを確認した。
すなわち、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、撮像レンズ用のIRCFに要求される優れた耐熱性や耐光性等を有するため、近赤外線吸収色素を含有する該組成物から得られた色素含有層を有する樹脂シート(成形体)は、入射角依存性の抑制された反射型IRCFの基材として有用である。
また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物から得られるレンズ自体に近赤外線吸収色素を含有させることによっても、該レンズを含む撮像レンズモジュールは反射型IRCFを搭載しても入射角依存性が抑制されたものとなるため、好ましい。
すなわち、撮像レンズモジュールに用いられるIRCF用の基材(樹脂シート)やレンズ用としての、近赤外線吸収色素を含有するカチオン硬化性樹脂組成物、及び、該組成物から得られる成形体(例えば樹脂シート、レンズ等)の使用もまた本発明の好ましい形態である。
近赤外線吸収色素を含有するカチオン硬化性樹脂組成物は、上記IRCF用の基材(樹脂シート)、レンズへの適用に限定されず、撮像レンズモジュールを構成する各種部材、例えば封止剤、接着剤、センサー上部のマイクロレンズ等の他の部材用にも好適に使用できる。さらに、撮像レンズモジュール以外のLED用封止樹脂、LED用レンズ樹脂等の各種用途にも好ましく用いられる。
上記樹脂組成物は、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、カチオン硬化触媒以外の硬化触媒・硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)、溶媒等を含有してもよい。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上記カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化性触媒を混合し、必要に応じて上記他の成分等も混合して、調製することができる。
また、各成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、触媒添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記樹脂組成物は、粘度が10000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性に優れ、例えば、成形体形成用途(特に金型成形体の形成用途)により優れるものとなる。より好ましくは1000Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。また、0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.1Pa・s以上であることがより好ましい。更に好ましくは1Pa・s以上、一層好ましくは5Pa・s以上であり、特に好ましくは10Pa・s以上である。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
上記樹脂組成物の硬化方法としては、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cmで硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。例えば、レンズ等のように金型成形を必要とする場合においては、脱型操作を必要とするが、脱型操作の前に1次硬化を行い、脱型操作後に2次硬化を行うといった硬化・成形方法が好ましく採用される。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cmで光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程においては、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。例えば、生産性向上等の観点から、樹脂組成物を型内で所定の温度・時間で保持した後、型から取り出して空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気内に静置して熱処理することも可能である。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記第1工程としてはまた、金属、セラミック、ガラス、樹脂製等の型(「金型」と称す。)を用いた硬化工程であることが好適である。金型を用いた硬化工程とは、例えば、射出成形法、圧縮成形法、注型成形法、サンドイッチ成形法等の金型成形法で通常行われる硬化工程であればよいが、第1工程がこのような金型を用いた硬化工程であれば、耐磨耗性、低収縮性、寸法精度及び金型転写性等の各種物性に優れ、かつ着色がなく透明な成形体を容易に製造できる。
上記第1工程が金型を用いた硬化工程である場合には、第1工程の後であって、かつ第2工程の前に、脱型工程を行うことが好適である。脱型工程を含む形態、すなわち第1工程で得た硬化物を金型から取り出し、取り出した硬化物を次の第2工程に供する形態とすることによって、高価な金型を有効に回転(リサイクル)でき、かつ金型の寿命を長くすることができるため、低コストで成形体を得ることが可能になる。
この場合、上記樹脂組成物を硬化剤及び必要に応じて他の成分を含む1液組成物とし、目的とする成形体の形状に合わせた金型内に該1液組成物を充填(射出・塗出等)して硬化させ、その後、硬化物を金型から取り出す方法が好適に用いられる。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物(好ましくは、脱型工程によって金型から取り出した硬化物)を200℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度としては、下限は、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上、最も好ましくは350℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、200℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる成形体の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記硬化方法で得られる硬化物の強度としては、金型から取り出して形状を保てる程度の強度であればよく、例えば、9.8×10Pa以上の力で押し出したときの形状変化の割合が10%以下の圧縮強度であることが好ましい。形状変化の割合としては、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上述のように耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等に優れた成形体を与えることができるものである。このように、上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体(硬化物)もまた、本発明の1つである。
上記成形体は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用なものである。中でも特に、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に用いることができる。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。
これらの用途の中でも、光学材料が特に好適である。このように上記成形体が光学材料である形態や、上記カチオン硬化性樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である形態もまた、本発明の好適な形態に含まれる。
上記光学材料としては、特に、レンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料であることが好適である。レンズとして好ましくは、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズであり、より好ましくはカメラレンズである。カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが好ましい。また、これら微小光学レンズであることが好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上記カチオン硬化性触媒を用いることによって、アンチモン系カチオン硬化触媒を用いた場合に比べて、環境負荷の低減の観点からも有用であり、特に光学材料用途においてその有用性は高い。特に、世界需要が高く更に需要増加が見込まれるカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤において、本発明の樹脂組成物を用いる価値は高い。また、本発明の樹脂組成物から得られる成形体(硬化物)は、吸水率が低いことから、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズの各用途において好ましく用いられる。より好ましくはカメラレンズの用途であり、カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが更に好ましい用途である。成形体(硬化物)における吸水は、膨張、クラックの発生等の原因となるが、吸水によるこれらの僅かな変化が光学特性に現われ易い上述した微小光学レンズには、本発明の成形体(硬化物)を用いることは有効である。
更に、本発明の樹脂組成物から得られる成形体(硬化物)は、リフロー耐熱性が高く、可視光透過率の低減や着色が抑えられる。携帯電話、テレビ、パソコン、車載用途等の各種素子は、製造工程の簡略化、低コスト化等の理由から、半田リフロープロセスを採用する流れにある。本発明の樹脂組成物又は該組成物から得られた成形体は、半田リフロープロセスに供されても光学特性低下が抑制されることから、半田リフロープロセスを採用する各種素子の部材(例えばレンズ、フィルター、接着剤等の光学材料)として有用である。
本発明の組成物に用いるカチオン硬化触媒がTPB系触媒である場合には、該組成物から得られる成形体(硬化物)の吸水率が特に低く、耐熱性にも優れることから、TPB系触媒をカチオン硬化触媒とするカチオン硬化性樹脂組成物は、上述した各光学材料用途に特に有用である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等に優れた成形体を与えることができるものである。特に、本発明におけるカチオン硬化触媒を用いることにより、得られた成形体における400nmの透過率が改善され、着色が低減される。このような成形体は、光学材料、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に好適に適用でき、特に光学材料として有用である。
実施例19で得られた硬化物の分光透過率測定の結果を示すグラフである。 実施例27で得られた硬化物の分光透過率測定の結果を示すグラフである。 実施例28で得られた硬化物の分光透過率測定の結果を示すグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<TPB錯体の調製>
調製例1
(TPB:THF錯体の合成)
TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)42.3gをトルエン60.5gに溶解し、室温で撹拌しながらTHF(テトラヒドロフラン)7.14gを滴下した。その後、n−ヘキサン121.1gを室温で滴下した。この溶液を氷冷し、しばらく撹拌を続けると白色結晶が析出した。白色結晶をろ別し、n−ヘキサン洗浄し、乾燥後、白色固体であるTPB:THF錯体を34.5g(TPBの含有量は液体クロマトグラフィーより85.05%であった)得た。
[NMRデータ]
H−NMR(CDCl)ppm
δ=1.87(4H,m)
δ=3.63(4H,m)
19F−NMR(CDCl)ppm
δ=−87.7(6F,m)
δ=−80.5(3F,dd)
δ=−59.4(6F,d)
調製例2
(TPB/ヒンダードアミン(TINUVIN770)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体81.1部(TPB成分:69.0部)と、TINUVIN770(ヒンダードアミン、BASF社製)31.1部を、γ−ブチロラクトン88部に溶解し、TPB錯体(1a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。TPB錯体(1a)におけるn(b)/n(a)=0.96/1である。
また、上記と同様にして、以下のTPB錯体(1b)〜(1e)のγ−ブチロラクトン溶液を調整した。
n(b)/n(a)
TPB錯体(1b) 2.04/1
TPB錯体(1c) 1.1/1
TPB錯体(1d) 0.95/1
TPB錯体(1e) 0.91/1
調製例3
(TPB/ヒンダードアミン(アデカスタブLA57)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100.0部(TPB成分:85.1部)と、アデカスタブLA57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)32.6部を、γ−ブチロラクトン103部に溶解し、TPB錯体(2a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=0.99/1である。
また、上記と同様にして、TPB錯体(2b)〜(2c)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。
n(b)/n(a)
TPB錯体(2b) 1.06/1
TPB錯体(2c) 1.02/1
調製例4
(TPB/ヒンダードアミン(TINUVIN765)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100.0部(TPB成分:85.1部)と、TINUVIN765(ヒンダードアミン、BASF社製)50.1部を、γ−ブチロラクトン120部に溶解し、TPB錯体(3)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=1.19/1である。
調製例5
(TPB/アンモニア錯体の調製)
調製例1と同様にして得られたTPB:THF錯体130部(TPB成分:110.6部)と、25%NH水溶液26部(NH成分:6.5部)を、γ−ブチロラクトン78.2部に溶解し、ルイス塩基としてNHが配位したTPB錯体(4a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=1.77/1である。
また、用いる25%NH水溶液の量を以下のように変える以外は上記と同様にして、NHが配位したTPB錯体(4b)〜(4f)のTPB・NH成分が50%となるようにγ−ブチロラクトン溶液を調製した。
各TPB錯体におけるNH配位量は以下のとおりである。
n(b)/n(a)
TPB錯体(4b) 0.59/1
TPB錯体(4c) 1.18/1
TPB錯体(4d) 2.94/1
TPB錯体(4e) 15/1
TPB錯体(4f) 100/1
調製例6
(TPB/トリフェニルホスフィン錯体の調製)
調製例1と同様にして得られたTPB:THF錯体100部(TPB成分:85.1部)と、トリフェニルホスフィン43部を、γ−ブチロラクトン113.2部に溶解し、TPB/トリフェニルホスフィン錯体(TPB錯体(5))のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。TPB錯体(5)における、トリフェニルホスフィン配位量は以下のとおりである。n(b)/n(a)=0.99/1
調製例7
(TPB/トリエチルアミン錯体の調製)
調製例1で得られたTPB:THF錯体100部(TPB成分:85.1部)と、トリエチルアミン13.5部を、γ−ブチロラクトン99部に溶解し、TPB錯体(6a)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=0.8/1である。
また、上記と同様にして、TPB錯体(6b)のγ−ブチロラクトン溶液を調製した。なお、n(b)/n(a)=2.2/1である。
<樹脂組成物及び硬化物(成形体)の調製>
実施例1
カチオン硬化性化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)100部、及び、上記TPB錯体(1a)のγ−ブチロラクトン溶液0.2部(カチオン硬化触媒としてTPB/TINUVIN770錯体0.1部)を投入し、40℃にて減圧下で均一になるように混合して樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法(硬化工程)により硬化させ、硬化物を得た。
実施例2
カチオン硬化性化合物としてセロキサイドCELL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)100部、及び、上記TPB錯体(4a)のγ−ブチロラクトン溶液0.234部(カチオン硬化触媒としてTPB/アミン錯体0.117部)を投入し、40℃にて減圧下で均一になるように混合して樹脂組成物(2)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例3〜7、比較例1〜3
樹脂組成物を構成するカチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒の種類及び量を表1〜2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(3)〜(7)、樹脂組成物(比較1)〜(比較3)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例8
カチオン硬化性化合物としてYX−8000(液状水添エポキシ樹脂、三菱化学社製)100部、及び、TPB錯体(5)のγ−ブチロラクトン溶液1部(カチオン硬化触媒としてTPB/トリフェニルホスフィン錯体0.5部)を投入し、均一になるように混合して樹脂組成物(8)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例9〜26、比較例4〜7
表1〜2記載の種類及び量のカチオン硬化性化合物、無機材料、カチオン硬化触媒を用い、各樹脂組成物を得た。なお、カチオン硬化性化合物として、EHPE−3150、YX−8040、PG−100の固体エポキシ樹脂を混合する際には、樹脂を140℃に加熱して、均一組成とした。無機材料としてPMSQ−Eを用いた場合は、カチオン硬化性化合物を混合した後に、80℃にて均一混合した。触媒を混合する際は、実施例1と同様に40℃減圧下にて均一組成になるように混合した。
当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例27
実施例19の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長680nm、日本触媒社製)0.008部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
実施例28
実施例19の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−720(フタロシアニン系色素、吸収極大波長715nm、日本触媒社製)0.015部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
比較例8
比較例6の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長680nm、日本触媒社製)0.008部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
比較例9
比較例6の樹脂組成物100部に対して、40℃でTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収極大波長715nm、日本触媒社製)0.015部を均一に溶解させ、色素含有樹脂組成物を得た。
また、当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、以下の方法により硬化させ、硬化物(成形体)を得た。
<硬化工程>
(第1工程)
SUS304(日本テストパネル社製、表面800番仕上げ)の金属板を2枚用いて、1000μm間隔のギャップを形成し、各樹脂組成物の注型成形を行った。表1記載の温度/時間で1次硬化を行った後、脱型した。また、1次硬化時の成形物の接着性が強く、離型しにくい場合には、ダイフリーGA−7500(ダイキン工業社製、フッ素−シリコーン系)をSUS板上に噴霧してふき取り、このSUS板を使用した。
(第2工程(キュア))
第1工程での硬化後、N雰囲気下(特に断りのない限り、0.2〜0.3体積%の酸素濃度で実施した)、以下の条件で硬化の処理を行った。
条件:250℃×1時間(250℃の乾燥機へ直接試料を投入)
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物又は硬化物について、硬化物(1次硬化後及び2次硬化後)の透過率、耐熱性、吸水性、耐湿熱性、耐候(光)性、保存安定性及び硬化性(成形性)を、以下の方法にて評価した。結果を表3に示す。
<硬化物の透過率(着色の有無)>
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、上記第1工程後(1次硬化後)及び第2工程後(2次硬化後)の夫々の時点で、波長400nm及び500nmにおける硬化物の透過率を測定した。
<耐熱性試験(リフロー耐熱性試験)>
2次硬化後の硬化物を、大気中、260℃で10分間乾燥させた後、波長400nm及び500nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<吸水性試験(吸湿性)>
2次硬化後の硬化物を、窒素ガス(N)雰囲気下、230℃で1時間乾燥させ、絶乾状態とした後、重量を測った。温度85℃、相対湿度85%の環境下に100時間静置した後、重量を測定した。増加した重量より吸水率を算出した。
<耐湿熱性試験>
上記吸水性試験後の硬化物の、波長400nm及び500nmにおける透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<耐候(光)性試験>
2次硬化後の硬化物を試料として、スガ試験機社製のM6T(6kW水平式メタリングウエザーメーター)を用いて、フィルター:(インナー)石英/(アウター)#275、1kW/m(300〜400nm)の条件で耐候(光)性試験を行い、50℃で100時間経過後の硬化物の透過率(波長400nm、500nm)を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<保存安定性>
実施例3で得た樹脂組成物(3)及び比較例1で得た樹脂組成物(比較1)を40℃の環境下で静置し、所定時間経過後の粘度を以下のようにして測定した。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行った。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用した。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価した。
樹脂組成物(3)の粘度は、0時間経過後(試験開始時)に0.12Pa・s、72時間経過後に1.3Pa・s、144時間経過後に100Pa・sとなった。
樹脂組成物(比較1)は、48時間経過後に固化した。
また、同様の測定法にて、一部の実施例、比較例で得られた樹脂組成物について(表3に示す)、40℃雰囲気中に12時間静置した後の粘度を測定し、樹脂組成物調製直後の粘度に対する変化の程度を評価した。具体的には、40℃静置後の粘度が調製直後の粘度に対して10倍以上に変化したものを×、変化が10倍未満であったものを○と評価した。
<硬化性(1次硬化時の成形性)>
樹脂組成物を1次硬化条件にて硬化させた。1次硬化後に、硬化温度にてショア硬度Aタイプで10以上の固さのある硬化物を○、10未満の硬化物(硬化不良によるゲル物を含む)を×として評価した。
<入射角依存性の評価>
実施例19、27、28より得られた1mm厚みの硬化物(2次硬化体)とガラス製IRCF(片面に酸化チタン20層/シリカ20層の交互蒸着品)を用いて、入射光源側から、硬化物、ガラス製IRCFの順に直列に配置して、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、分光透過率測定(透過率スペクトル測定)を行った。
入射光に対して垂直になるように硬化物及びガラス製IRCFを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。硬化物及びガラス製IRCFの厚み方向(垂直方向)から光が入射するようにして測定される。)と、硬化物、IRCFの厚み方向(垂直方向)に対して25°傾いた方向から光が入射するように硬化物及びガラス製IRCFを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。)について評価した。
Figure 0005814478
Figure 0005814478
Figure 0005814478
表1〜2中の略号等は、下記のとおりである。
CELL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂『セロキサイドCELL−2021P』、エポキシ当量131、重量平均分子量260、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製
YX−8000:液状水添エポキシ樹脂、重量平均分子量409、三菱化学社製
YX−8034:水添エポキシ樹脂、三菱化学社製
YX−8040:高分子量水添エポキシ樹脂、重量平均分子量3831、三菱化学社製
PG−100:フルオレンエポキシ樹脂、大阪ガスケミカル社製
828EL:芳香族エポキシ樹脂、三菱化学社製
OXT−221:オキセタン樹脂『アロンオキセタンOXT−221』、東亜合成社製
PMSQ−E:ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ−E)『SR−13』、小西化学工業社製
SI−100L:熱潜在性カチオン硬化触媒『サンエイドSI−100L』(アンチモン系スルホニウム塩(SbF塩))、三新化学工業社製、固形分50%
各実施例及び比較例から、以下のことがわかった。
(2次硬化時の着色について)
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた例を比較すると、カチオン硬化触媒としてTPBを含む化合物(TPB系触媒ともいう。)を用いた実施例1及び3では、アンチモン系スルホニウム塩(アンチモン系触媒ともいう。)を用いた比較例1に比べ、2次硬化後の透過率が高いことがわかった。これは、TPB系触媒を用いたほうが、2次硬化時の着色をより低減できることを示している。また、TPB系触媒の中でも、ヒンダードアミンをルイス塩基に用いた場合(実施例1)のほうが、アンモニアを用いた場合(実施例3)より着色低減効果が高いことがわかった。これは、ヒンダードアミンが有する酸化防止効果に起因するものと推測される。
一方、カチオン硬化性化合物として水添エポキシ化合物を用いた例を比較すると、アンモニア含有量の少ないTPB系触媒を用いた例(実施例4)では、アンチモン系触媒を用いた例(比較例2)より着色が低減できるが、アンモニア含有量の多いTPB系触媒を用いた例(実施例5)では、着色低減効果が低いことがわかった。これは、YX−8000中の残留塩素量が影響していると考えられる。
カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた例を比較すると、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合(実施例9、10)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例4、5)よりも、着色低減効果が高い(400nmの透過率が高い)ことが明らかとなり、耐熱性(透明性)が大きく向上した。
さらに、実施例18、20の様な無機材料(シリコーン系材料)を含んだ樹脂組成物の硬化にも、本発明におけるカチオン硬化触媒(特にTPB系触媒)を好適に使用可能である。特に、無機材料(シリコーン系)とTPB系触媒を併用する事により、2次硬化時の着色を低減(400nmの透過率が向上)し、耐熱性(透明性)が大きく向上した。
また、色素を含んだ樹脂組成物の硬化においても、TPB系触媒を用いた場合(実施例27、28)はそれぞれ、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例8、9)よりも耐熱性が高い結果となり、耐熱性が高く、生産性、成形性に優れるフィルター材料になることが示唆された。
(耐熱性(リフロー耐熱性)について)
TPB系触媒を用いた場合(実施例17、19)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例6)よりも、高い耐熱性を実現できることがわかった。
(吸水性について)
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた場合、及び、水添エポキシ化合物を用いた場合のいずれも、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より吸水率を低減できることがわかった。これは、反応末端の構造の相違に起因するものと考えられる。また、TPB系触媒の中でも、アンモニアをルイス塩基に用いた場合のほうがより低吸水性を実現できることがわかった。これは、硬化時にアンモニアが揮発することによるものと考えられる。
(耐湿熱性について)
カチオン硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた例において、TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より耐湿熱性が高くなることがわかった。また、TPB系触媒の中でも、ヒンダードアミンを用いた場合(実施例1)のほうが、アンモニアを用いた場合(実施例2、3)より耐湿熱性が高いことがわかった。これは、2次硬化時の着色と同様、ヒンダードアミンが有する酸化防止効果に起因するものと推測される。
(耐候(光)性について)
TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より高い耐UV照射性を実現できることがわかった。
(保存安定性について)
TPB系触媒を用いた場合のほうがアンチモン系触媒を用いた場合より高い保存安定性を実現できることがわかった。
(硬化性(成形性)について)
カチオン硬化性化合物として芳香族エポキシ化合物を用いても、カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた場合(実施例26)のほうが、アンチモン系触媒を用いた場合(比較例7)よりも、硬化性(成形性)に優れることが明らかとなった。特に、これまでカチオン硬化では短時間硬化が困難と考えられていた芳香族エポキシ化合物を、カチオン硬化性化合物として100質量%用いた樹脂組成物の硬化にも成功した。
(入射角依存性について)
吸収色素を硬化物に添加した実施例27、28は、吸収色素を添加しない実施例19を用いた場合に比べて、反射型IRCFを用いた場合において、入射角による長波長側の透過端における透過率の差異を低減できる(0°スペクトルと25°スペクトルとの差異が小さい)ことがわかった。
上記実施例においては、カチオン硬化性樹脂組成物として、特定のカチオン硬化触媒を用いることによって、耐熱性、耐湿熱性、低吸水性、耐UV照射性等に優れた成形体を与えることができるものであり、そのような作用機序は、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物においてすべて同様に発現されるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (4)

  1. カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするカチオン硬化性樹脂組成物であって、
    該カチオン硬化触媒は、下記一般式(1):
    Figure 0005814478
    (式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸と、ルイス塩基とからなり、
    該カチオン硬化性化合物は、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
    該脂環式エポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物及びヘテロ環含有のエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    該ルイス塩基は、ヒンダードアミン構造を有するアミン、沸点が120℃以下のアミン及びアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物。
  2. 前記カチオン硬化触媒は、ルイス酸とルイス塩基との混合比n(b)/n(a)が、0.99以上、5以下であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のカチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体。
  4. 前記成形体は、熱硬化して得られることを特徴とする請求項3に記載の成形体。
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