JP5819772B2 - カチオン硬化触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
また、オニウムカチオンと式(II)で表される特定の構造を有するイミダゾリドアニオンとからなるオニウム塩、及び、そのオニウム塩とカチオン重合性又は架橋性の樹脂とを含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。また、50℃〜100℃の加熱によって活性化されるルイス付加物開始剤を用いてカチオンプロセスによって重合及び/又は架橋可能なシリコーン組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
更に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、カウンターアニオンにハロゲンイオンを含まないオニウム塩(C)、およびホウ素に直接ハロゲンが置換していないトリ置換ホウ素(D)を必須成分とする樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。特許文献5には、この組成物を半導体封止材料や積層板として用いることが記載されている。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
一般式(1)で表されるルイス酸とルイス塩基とから形成されるカチオン硬化触媒が触媒として作用する際には、ルイス塩基と解離したルイス酸が樹脂と結合することで樹脂にカチオンが発生し、このカチオン種の作用により硬化反応が進行する。このように、触媒活性を発揮するためには、ルイス酸に配位したルイス塩基が解離することが必要となる。カチオン硬化触媒を製造する際に所定量の水の存在下でルイス酸とルイス塩基とを混合すると、ルイス酸に水が配位することでルイス塩基の配位が阻害され、これにより得られる触媒が、触媒活性の高いものとなると考えられる。ここで、1分子の水は、2分子のルイス酸に配位することができると考えられる。水の量がルイス酸に対して30モル%以上であると、ルイス酸全体の60モル%以上は、水によるルイス塩基の配位阻害の影響を受けないことになり、この程度の割合でルイス塩基の配位阻害の影響を受けないルイス酸を含むことにより、カチオン硬化触媒が触媒活性の高いものとなると考えられる。一方、ルイス酸にルイス塩基が配位した後で水を添加しても、このようなルイス塩基の配位を水が阻害する効果が得られないため、ルイス酸とルイス塩基とを混合した後で水を添加しても、触媒は優れた硬化特性を発揮するものとはならないと考えられる。これに関し、ルイス酸としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)を用いた場合、TPBに対して30モル%以上の量の水が存在しない条件下でTPBをルイス塩基であるアミンと混合すると、19F−NMR測定において、アミン添加前と比べてTPBのF原子のピークの位置が変化することが確認され、アミンの配位によりTPBに構造変化が生じたことが確認される。一方、TPBに対して30モル%以上の量の水の存在下でアミンと混合したものでは、TPBのF原子のピークの位置は変化せず、所定量の水の存在下でアミンを添加すると、アミンを添加してもTPBに構造変化が生じないことが確認される。このNMR測定の結果は、水の存在によりルイス塩基のルイス酸への配位が阻害されていることを支持する結果であるといえる。
また、樹脂組成物の硬化反応(架橋反応)が充分に進行することで組成物が耐熱性にも優れたものとなる。
なお、カチオン硬化触媒としての機能を発揮するためには、ルイス酸に配位したルイス塩基がルイス酸から解離する必要があるが、最初からルイス塩基を含まない、上記一般式(1)で表されるルイス酸のみや、該ルイス酸と水を混合しただけのものを樹脂に配合すると、触媒活性が高すぎるためにすぐに樹脂が硬化してしまい、樹脂組成物の形態で保存することが難しい。一方で、ルイス酸にルイス塩基が充分に配位した構造とすると、触媒としての活性が抑制される。本発明のようにルイス酸と水とを予め接触させたうえでルイス塩基と混合することで、ルイス塩基のルイス酸への配位が水の作用で適度に阻害されることになり、これにより、触媒活性が高すぎて樹脂組成物がすぐに硬化することを抑制しながら、硬化時には優れた触媒活性を発揮することができる触媒となると考えられる。
また、本発明において「水の存在下で、該ルイス酸とルイス塩基とを混合する」とは、前記ルイス酸と少なくとも一部の水を予め混合(接触)させておき、後にルイス塩基を混合する形態を含む。
また、一般式(1)で表されるルイス酸、及び、ルイス塩基は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
好ましくは、ルイス塩基の全てが一般式(1)で表されるルイス酸に対して30モル%以上の量の水の存在下でルイス酸と混合されることであり、そのためには、ルイス酸に対して、水の量が30モル%以上となるように必要に応じて水を添加する工程を行った後に、ルイス酸にルイス塩基を添加してルイス酸とルイス塩基とを混合する工程を行うことが好ましい。
なお、一般式(1)で表されるルイス酸の化合物を合成すると水を含んだ状態で得られる場合があり、どの程度の水を含むかは、当該ルイス酸の合成方法によって異なる。本発明の製造方法において、一般式(1)で表されるルイス酸に対するモル比が30モル%以上となる条件下における水の量は、一般式(1)で表されるルイス酸が含む水も含めた量が一般式(1)で表されるルイス酸に対してモル比で30モル%以上である条件を意味する。
すなわち、一般式(1)で表されるルイス酸の化合物の純分に対する水のモル比が30モル%以上となる条件下でルイス酸とルイス塩基との混合が行われることを意味する。
なお、ルイス塩基を混合する段階における「水」の存在形態は限定されない。たとえば、水分子が、ルイス酸に配位する形態であっても、独立して存在する形態であってもよい。ルイス酸に配位する形態で存在する水分子を含むことが好ましく、ルイス酸の化合物の純分に対する水のモル比で30モル%以上の水分子がルイス酸に配位する形態で存在することが好ましい。
ルイス酸を溶媒に溶解する工程の温度、及び、時間は、ルイス酸が溶媒に溶解するように適宜設定して行うことができる。
また、混合する工程を行う時間は、使用するルイス酸やルイス塩基の量により適宜調整すればよいが、3〜600分行うことが好ましい。より好ましくは、30〜120分である。
また、ルイス酸とルイス塩基とを混合する工程は、途中で温度を変化させて行ってもよく、そのようにして行うことが好ましい。混合の途中で温度を変化させる場合、最初に5〜30℃の温度で混合し、その後に温度を35〜60℃に変化させて混合することが好ましい。このようにすることで、低温工程でルイス酸と水とルイス塩基の熱的に安定構造を形成し、高温工程で不溶分を完全に溶解し、且つ、水の関与が小さいものについてはルイス酸とルイス塩基の混合状態を安定化することができる。最初の混合温度は、より好ましくは、10〜25℃であり、その後の混合温度は、より好ましくは、40〜60℃である。
その場合、最初の温度での混合は1〜300分行い、その後の温度を変化させた後の混合を1〜300分行うことが好ましい。
すなわち、カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。
カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)は算定される。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が低下する場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、比n(b)/n(a)は、20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
更に、カチオン硬化特性の観点では、ルイス塩基が窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)では、酸解離定数が高く、立体障害が大きい事から、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。例えばヒンダードアミンの様な構造では、上記範囲が好ましい。
また、ルイス塩基がアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合は、特にアンモニアである場合は、比n(b)/n(a)が1より大きいことが好ましい。具体的には、好ましくは、1.001以上であり、より好ましくは1.01以上であり、更に好ましくは1.1以上であり、特に好ましくは1.5以上である。
そして、このようなカチオン硬化触媒を本発明の製造方法で製造することで、カチオン硬化触媒を用いた樹脂組成物が硬化特性に優れ、得られる硬化物が耐熱性に更に優れたものとなる。
このような本発明のカチオン硬化触媒の製造方法によって得られるカチオン硬化触媒もまた、本発明の1つである。
また、本発明のカチオン硬化触媒とカチオン硬化性化合物とを含むことを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物も本発明の1つである。
上記のとおり、本発明のカチオン硬化触媒は、触媒が原因となる樹脂組成物の硬化物の着色が抑制されたものであるため、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、光学材料用途に好適に用いることができる。
上記用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無、程度は通常、400nmにおける透過率の変化からも確認できる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無、程度について評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
また、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、最も好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
なお、本願明細書、実施例等において、本発明にかかるカチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものをTPB系触媒と表記することもある。
TPBは、国際公開公報WO1997/031924に記載の方法により合成することができる。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化成形体の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、成形体の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
なお、本明細書における「エポキシ基」とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等を含むものである。
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等のエポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物;2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等のエポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシド等が挙げられる。
また、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物も好適に用いることができる。
離型剤として具体的には、アルコール性OH基及び/又はカルボニル基(カルボキシル基及びエステル基を含む)を有する化合物が好ましく、更にカチオン硬化性樹脂組成物への相溶性、離型効果の高い点から、炭素数が8以上の炭化水素基を有するものが好ましい。より好ましくは、炭素数8〜36のアルコール、炭素数8〜36のカルボン酸、炭素数8〜36のカルボン酸エステル、炭素数8〜36のカルボン酸無水物及び炭素数8〜36のカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物である。このような離型剤を含有することで、短時間で硬化できるとともに、金型を用いて硬化する際に容易に金型を剥がすことができ、硬化物の表面に傷をつけることなく外観を制御し、透明性を発現させることができる。よって、上記樹脂組成物を、電気・電子部品材料用途や光学部材用途等により有用なものとすることができる。
その他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、カチオン硬化触媒以外の硬化触媒・硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)、溶媒等を含有してもよい。
また、各成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、触媒添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cm2で光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
この場合、上記樹脂組成物を硬化剤及び必要に応じて他の成分を含む1液組成物とし、目的とする成形体の形状に合わせた金型内に該1液組成物を充填(射出・塗出等)して硬化させ、その後、硬化物を金型から取り出す方法が好適に用いられる。
上記第2工程における硬化時間は、得られる成形体の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
上記成形体は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用なものである。中でも特に、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に用いることができる。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
国際公開公報WO1997/031924に記載された合成法にしたがって、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(以下、TPBともいう)含有量 7%のアイソパーE(エクソンモービル社製)溶液 189gを調製した。この溶液にγ−ブチロラクトン 2.22gを60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを40℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・γ−ブチロラクトン錯体(TPB含有粉末A)を14.1g得た。この錯体はγ−ブチロラクトン濃度 13.2%(GC分析)、水分量 0.3%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は86.5%であった。1H−NMR、19F−NMR分析、GC分析ではTPB、γ−ブチロラクトン、水以外のピークは検出されなかった。1H−NMR、19F−NMRの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3)ppm (標準物質:TMS 0ppm)
δ=2.44(2H,m)γ−ブチロラクトン
δ=2.83(2H,t)γ−ブチロラクトン
δ=4.46(2H,t)γ−ブチロラクトン
δ=8.74(2H,s)水
19F−NMR(CDCl3)ppm (標準物質:CFCl3 0ppm)
δ=−135.5(6F,m)
δ=−156.9(3F,dd)
δ=−163.9(6F,d)
国際公開公報WO1997/031924に記載された合成法にしたがって、TPB含有量 7%のアイソパーE溶液 255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n‐ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末B)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に、19F−NMR分析、GC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMRの測定結果は以下のとおりであった。
19F−NMR(CDCl3)ppm (標準物質:CFCl3 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
TPB含有粉末A:
TPB 86.5質量%、水 0.3質量%、γ−ブチロラクトン 13.2質量%
TPB含有粉末B:
TPB 90.8質量%、水 9.2質量%
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.33mmol))に対して、水を0.02g(1.11mmol)、γ−ブチロラクトンを2.2g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、γ−ブチロラクトンを2.2gを添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.1g(5.549mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.01g(0.555mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.015g(0.832mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.025g(1.387mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.03g(1.665mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.04g(2.22mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.055g(3.052mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.075g(4.162mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB錯体A 2g((TPB純分:1.73g、3.379mmol)、(水:0.006g、0.333mmol))に対して、水を0.2g(11.099mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末B 2g((TPB純分:1.816g、3.547mmol)、(水:0.184g、10.211mmol))に対して、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.778g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
TPB含有粉末B 2g((TPB純分:1.816g、3.547mmol)、(水:0.184g、10.211mmol))に対し、水を0.0367g(2.037mmol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した後、アデカスタブLA−57を0.778g添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。
水添エポキシ樹脂(YX−8034、三菱化学社製)70g、脂環式エポキシ樹脂(CELL−2021P、ダイセル化学工業社製)30g、ステアリン酸0.5gを80℃で混合した。その後、40℃に冷却し、実施例1のTPB触媒溶液0.5gを混合し、カチオン硬化性樹脂組成物1を調製した。
実施例1のTPB触媒溶液の代わりに、実施例2〜11のTPB触媒溶液を用いた以外は、同様の操作により、カチオン硬化性樹脂組成物2〜11を調製した。
水添エポキシ樹脂(YX−8034)70g、脂環式エポキシ樹脂(CELL−2021P)30g、ステアリン酸0.5gを80℃で混合した。その後、40℃に冷却し、比較例1のTPB触媒溶液0.5gを混合し、比較カチオン硬化性樹脂組成物1を調製した。
水添エポキシ樹脂(YX−8034)70g、脂環式エポキシ樹脂(CELL−2021P)30g、ステアリン酸0.5gを80℃で混合した。その後、40℃に冷却し、比較例1のTPB触媒溶液0.5gと水0.01gを混合し、比較カチオン硬化性樹脂組成物2を調製した。
実施例1のTPB触媒溶液の代わりに、比較例2のTPB触媒溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、比較カチオン硬化性樹脂組成物3を調製した。
<硬化特性>
サンプル瓶(マルエム社製、スクリュー管No.7)に樹脂組成物16g評取し、35℃の乾燥機に30min保管し、35℃に調温する。
試料中心部に温度センサーを設置する。
135℃のオイルバスを準備し、サンプル瓶内の樹脂液面が、オイルバスの液面の10mm下となるようにサンプル瓶をオイルバスにセットする。
樹脂中のセンサーをモニターし、50℃〜180℃に到達する時間(秒)を硬化特性として評価する。
(第1工程)
SUS304(日本テストパネル社製、表面800番仕上げ)の金属板を2枚用いて、1000μm間隔のギャップを形成し、各樹脂組成物の注型成形を行った。表1記載の温度/時間で1次硬化を行った後、脱型した。
(第2工程(キュア))
第1工程での硬化後、N2雰囲気下(特に断りのない限り、0.2〜0.3体積%の酸素濃度で実施した)、以下の条件で硬化の処理を行った。
条件:250℃×1時間(250℃の乾燥機へ直接試料を投入)
<ガラス転移温度(Tg)>
1次硬化体、2次硬化体を切削し、DMAにて評価した。
<硬化物の透過率(着色の有無)>
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、上記第2工程後(2次硬化後)の夫々の時点で、波長400nmにおける硬化物の透過率を測定した。
また比較樹脂組成物2は、触媒調製後に、触媒中のルイス酸に対して30モル%以上となる量の水を添加したものであるが、実施例1〜11のカチオン硬化触媒を用いた樹脂組成物に比べて、硬化特性、耐熱性、硬化物の着色のいずれにおいても劣る結果となった。このことから、ルイス酸とルイス塩基とを混合する工程をルイス酸に対して30モル%以上の量の水の存在下で行うことに意味があることが確認された。
Claims (5)
- 前記ルイス塩基は、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化触媒の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のカチオン硬化触媒の製造方法で製造されたカチオン硬化触媒とカチオン硬化性化合物とを混合する工程を含むことを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物の製造方法。
- 前記カチオン硬化性化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物及び/又はオキセタン基を有するオキセタン化合物であることを特徴とする請求項3に記載のカチオン硬化性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項3又は4に記載のカチオン硬化性樹脂組成物の製造方法で製造されたカチオン硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
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