JP4630078B2 - アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物 - Google Patents

アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP4630078B2
JP4630078B2 JP2005021556A JP2005021556A JP4630078B2 JP 4630078 B2 JP4630078 B2 JP 4630078B2 JP 2005021556 A JP2005021556 A JP 2005021556A JP 2005021556 A JP2005021556 A JP 2005021556A JP 4630078 B2 JP4630078 B2 JP 4630078B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
tris
borane
pentafluorophenyl
substituted
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005021556A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006206511A (ja
JP2006206511A5 (ja
Inventor
育代 池野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2005021556A priority Critical patent/JP4630078B2/ja
Priority to PCT/JP2006/301598 priority patent/WO2006080538A1/en
Priority to EP06712741.5A priority patent/EP1817318B1/en
Priority to US11/883,164 priority patent/US20080154065A1/en
Publication of JP2006206511A publication Critical patent/JP2006206511A/ja
Priority to IL183921A priority patent/IL183921A/en
Publication of JP2006206511A5 publication Critical patent/JP2006206511A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4630078B2 publication Critical patent/JP4630078B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07FACYCLIC, CARBOCYCLIC OR HETEROCYCLIC COMPOUNDS CONTAINING ELEMENTS OTHER THAN CARBON, HYDROGEN, HALOGEN, OXYGEN, NITROGEN, SULFUR, SELENIUM OR TELLURIUM
    • C07F5/00Compounds containing elements of Groups 3 or 13 of the Periodic Table
    • C07F5/02Boron compounds
    • C07F5/027Organoboranes and organoborohydrides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)

Description

本発明はアリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物に関する。
アリールホウ素化合物の代表例であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの重合触媒であるメタロセン触媒の助触媒またはエチレンオキシドやプロピレンオキシドの開環重合反応のルイス酸触媒として、あるいは、ペンタフルオロフェニルボロン酸、ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・マグネシウムハライドなどの誘導体を合成するための原料として用いられている。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、例えば、ペンタフルオロベンゼン、クロロペンタフルオロベンゼンまたはブロモペンタフルオロベンゼンからペンタフルオロフェニルマグネシウムハライドを生成させ、これに三フッ化ホウ素のエーテル錯体を反応させる方法(特許文献1、2、非特許文献1を参照)、あるいは、ペンタフルオロベンゼン、クロロペンタフルオロベンゼンまたはブロモペンタフルオロベンゼンからペンタフルオロフェニルリチウムを生成させ、これに三塩化ホウ素を反応させる方法(特許文献3、4、非特許文献2を参照)によって製造されている。いずれの方法を用いても、反応終了後は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと、副生するフッ化塩化マグネシウム、フッ化臭化マグネシウムや塩化リチウムがエーテル系溶媒を含む溶媒に溶解または懸濁した形態で得られる。
しかし、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを触媒として用いる場合には、上記のような副生塩やエーテル系溶媒が存在すると、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの触媒活性が低下する。そこで、例えば、特許文献1の[0024]段落および特許文献3の[0021]段落に記載されているように、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの触媒としての能力を完全に引き出すには、配位したエーテル系溶媒を除去する必要がある。また、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを原料として誘導体を製造する場合には、誘導体を生成させた後に副生塩を除去する工程が煩雑となり、しかも、特に副生塩がフッ化塩化マグネシウムやフッ化臭化マグネシウムである場合、これを除去するために酸処理を行うと装置の腐食の原因となるフッ化水素が発生するという問題もある。そこで、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの誘導体を安全に効率よく製造するには、副生塩を除去しておく必要がある。
通常は、エーテル系溶媒より沸点が高い炭化水素系溶媒を加えて、蒸留によりエーテル系溶媒を炭化水素系溶媒に置換し、析出した副生塩(例えば、フッ化臭化マグネシウム)を濾過することにより、炭化水素系溶媒中にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液として得ている。この溶液は、そのまま用いるか、あるいはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単離して用いている。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、製造後、直ちに用いればよいが、使用時まで保存しておくことが必要な場合もある。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを保存する場合は、例えば、特許文献4の[0031]段落に記載されているように、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは空気中で不安定であるので、炭化水素系溶媒に溶解した溶液またはスラリーとして保存される。
特開平6−247978号公報 特開平8−253485号公報 特開平6−247979号公報 特開2000−1492号公報 特開平11−29576号公報 ポールマン,ジェイ・エル・ダブリュー(J. L. W. Pohlmann)、外1名,「第IIIA族誘導体の調製および特性付け(Preparation and Characterization of Group IIIA Derivatives)」,ツァイトシュリフト・フュア・ナテュアフォルシュンク(Zeitschrift fur Naturforschung),(独国),1965年,第20巻b,p.5−11 マッセイ,エイ・ジー(Massey, A. G.)、外2名,「トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン(Tris(pentafluorophenyl)boron)」,プロシーディングズ・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ(Proceedings of the Chemical Society),(英国),1963年7月,p.212
ところが、本発明者らは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを炭化水素系溶媒に溶解した溶液の形態で密閉容器に入れて保存していても、溶媒中に含まれるごくわずかな水分によってトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが徐々に分解され、製造直後の純度が約97〜98%であるのに対し、数ヶ月から数年後には純度が5〜10%程度も低下することに気づいた。高価な試薬であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを原料として誘導体を製造する場合、少しでも純度の低いものを用いると、かかる製造により得られる生成物の純度および収率が低下して、ひいては製造コストが上昇することから、本発明者らはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの分解をできる限り抑制する必要があると考えた。
そこで、本発明者らは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどの(フッ化アリール)ホウ素化合物を安定的に保存する方法として、炭化水素系溶媒中に(フッ化アリール)ホウ素化合物を含む溶液にフッ素原子を有する無機金属塩を配合する安定化方法を開発し、すでに特許出願している(特許文献5を参照)。
しかし、この方法により得られる安定化組成物は、安定化剤である無機金属塩が炭化水素系溶媒に加熱をしても実質的に溶解しないので、不均一系を形成しており、取り扱いが不便である、使用時に無機金属塩を濾過などにより除去する必要があるなどの問題点がある。また、安定化剤を添加すると、添加しない時に比べて(フッ化アリール)ホウ素化合物の分解は抑制できるものの、一部は分解するという問題点があった。
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、溶液の場合は実質的に均一系を形成しているので、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成するので、取り扱いが簡便であり、使用時に不溶物を除去する必要がなく、また、アリールホウ素化合物を高純度のままで長期間にわたって安定的に保存することを可能にする安定化方法および安定化組成物を提供することにある。
本発明者らは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに代表されるアリールホウ素化合物の保存安定性を向上すべく、鋭意検討した結果、本来ならアリールホウ素化合物の触媒活性を阻害することから、その炭化水素系溶媒中の溶液に添加することは考えられないエーテル系化合物を配合すると、溶液の場合は実質的に均一系を形成する形態で、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成する形態で、アリールホウ素化合物を高純度のままで長期間にわたって安定的に保存することができることを見出した。さらに、アリールホウ素化合物、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、次式に示すように、
Figure 0004630078
水分子が配位した錯体を経て、ジアリールボリン酸であるビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸とアリール化合物であるペンタフルオロベンゼンに分解されることが判明したので、アリールホウ素化合物を保存するにあたっては、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物、例えば、エーテル系化合物を配位させれば、水分に対する保存安定性を確保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によるアリールホウ素化合物の安定化方法は、炭化水素系溶媒中に式(1):
Figure 0004630078
[式中、Ar1、Ar2およびAr3は、互いに独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表す;ここで、アリール基が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
で示されるアリールホウ素化合物を含む溶液に、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を配合することを特徴とする。
本発明によるアリールホウ素化合物の安定化組成物は、炭化水素系溶媒中に、
式(1):
Figure 0004630078
[式中、Ar1、Ar2およびAr3は、互いに独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表す;ここで、アリール基が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
で示されるアリールホウ素化合物と、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を含むことを特徴とする。
前記アリールホウ素化合物は、好ましくは、式(1):
Figure 0004630078
[式中、Ar1、Ar2およびAr3はフッ素原子で置換されたアリール基を表す]
で示されるアリールホウ素化合物である。
前記安定化剤としては、好ましくは、式(2):
Figure 0004630078
[式中、R1およびR2は、互いに独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表すか、あるいは、互いに結合して、隣接する酸素原子と共に、置換もしくは無置換の含酸素複素環を形成していてもよい;ここで、アリール基が置換されている場合、および/または、含酸素複素環が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
で示されるエーテル系化合物が用いられる。
本発明の安定化方法によれば、溶液の場合は実質的に均一系を形成する形態で、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成する形態で、アリールホウ素化合物を高純度のままで長期にわたって安定的に保存することが可能になる。本発明の安定化組成物によれば、溶液の場合は実質的に均一系を形成しているので、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成するので、取り扱いが簡便であり、使用時に不溶物を除去する必要がない。また、長期間にわたって保存した後でも、アリールホウ素化合物の純度が実質的に低下しないので、例えば、反応触媒または助触媒として用いる際には、高い触媒活性を発揮し、あるいは誘導体を製造するための原料として用いる際には、かかる製造により得られる生成物の純度および収率を向上させることができる。
本発明によるアリールホウ素化合物の安定化方法は、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーに、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を配合することにより、前記アリールホウ素化合物を安定化させている。上で述べたように、アリールホウ素化合物は、水分子が配位した錯体を経て、ジアリールボリン酸とアリール化合物に分解されるので、アリールホウ素化合物を保存するにあたっては、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を配位させれば、アリールホウ素化合物が水分と反応することを抑制して、水分に対するアリールホウ素化合物の保存安定性を向上できると考えられる。
本発明の安定化方法において、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーに安定化剤を配合するとは、前記溶液またはスラリー中に前記安定化剤が存在する状態に至らしめることを意味し、その方法は特に限定されるものではない。例えば、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーに安定化剤を添加する方法や、予め安定化剤を添加しておいた炭化水素系溶媒にアリールホウ素化合物を溶解または懸濁させる方法、炭化水素系溶媒にアリールホウ素化合物と安定化剤を同時に添加する方法、予めアリールホウ素化合物を安定化剤で処理してから炭化水素系溶媒に溶解または懸濁させる方法など、必要に応じて適宜選択すればよい。
炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーは、例えば、アリールホウ素化合物を製造した後、エーテル系溶媒を炭化水素系溶媒に交換する、いわゆる溶媒交換を行い、さらに析出した無機物を濾過により除去することにより、容易に得ることができる。あるいは、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーは、単離したまたは他者から入手したアリールホウ素化合物を炭化水素系溶媒に溶解または懸濁させるか、あるいは、いったん他の溶媒、例えば、エーテル系溶媒に溶解または懸濁させてから、エーテル系溶媒を炭化水素系溶媒に交換する、いわゆる溶媒交換を行うことにより得ることができる。
本発明の方法により安定化されるアリールホウ素化合物は、式(1):
Figure 0004630078
[式中、Ar1、Ar2およびAr3は、互いに独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表す;ここで、アリール基が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
で示される。その製造法は特に限定されるものではなく、従来公知のいかなる方法により製造してもよい。アリールホウ素化合物は、例えば、対応するアリールマグネシウム誘導体またはアリールリチウム誘導体とハロゲン化ホウ素とを、例えば、エーテル系溶媒中で反応させることにより得ることができる。あるいは、アリールホウ素化合物は、自ら製造することなく、市販品など、他者から供給されるものを用いてもよい。
上記式(1)において、Ar1、Ar2およびAr3は、一部または全部が同一であっても互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。Ar1、Ar2またはAr3で示される置換もしくは無置換のアリール基とは、置換されているアリール基または置換されていないアリール基を意味する。アリール基としては、例えば、炭素数6以上、10以下のアリール基が例示され、具体的には、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インデニル基、インダニル基などが挙げられる。これらのアリール基のうち、特にフェニル基、ナフチル基が好ましい。アリール基が置換されている場合、置換基は、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である。置換基となりうるハロゲン原子としては、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。置換基となりうるアルキル基としては、例えば、炭素数1以上、6以下のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。置換基となりうるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上、6以下のアルコキシ基が例示され、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
アリールホウ素化合物としては、具体的には、例えば、トリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロ−5−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,5−トリフルオロ−6−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,6−トリフルオロ−4−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリフルオロ−3−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジフルオロ−3−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4−ジフルオロ−5−メチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロ−2−メチルフェニル)ボラン、トリス(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−3,5,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,5,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,4,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−4,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−4,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−メトキシ−2,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラクロロ−5−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,5−トリクロロ−6−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,6−トリクロロ−4−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリクロロ−3−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジクロロ−3−メチルフェニル)ボラン、トリス(2,4−ジクロロ−5−メチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジクロロ−2−メチルフェニル)ボラン、トリス(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,4,5,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−3,5,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,5,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,4,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−3,5−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−2,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(3−メトキシ−4,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(2−メトキシ−4,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(4−メトキシ−2,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,5−トリフルオロ−6−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,6−トリフルオロ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリフルオロ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジフルオロ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4−ジフルオロ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロ−2−エチルフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,5,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,6−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−4,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−4,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,6−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラクロロ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラクロロ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,5−トリクロロ−6−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,6−トリクロロ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリクロロ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジクロロ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4−ジクロロ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジクロロ−2−エチルフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,5,6−テトラクロロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,5,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,6−トリクロロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−4,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−4,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,6−ジクロロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラブロモ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラブロモ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,5−トリブロモ−6−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,3,6−トリブロモ−4−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6−トリブロモ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジブロモ−3−エチルフェニル)ボラン、トリス(2,4−ジブロモ−5−エチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジブロモ−2−エチルフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,3,5,6−テトラブロモフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,5,6−テトラブロモフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5,6−トリブロモフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,5,6−トリブロモフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,4,6−トリブロモフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−3,5−ジブロモフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−2,6−ジブロモフェニル)ボラン、トリス(3−エトキシ−4,6−ジブロモフェニル)ボラン、トリス(2−エトキシ−4,6−ジブロモフェニル)ボラン、トリス(4−エトキシ−2,6−ジブロモフェニル)ボランなどが挙げられる。これらのアリールホウ素化合物のうち、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが特に好適である。
本発明の安定化方法に用いられる炭化水素系溶媒は、アリールホウ素化合物を溶解し、かつ、本発明の安定化方法に対して不活性な非水溶媒を主成分とする溶媒であれば、特に限定されるものではなく、炭化水素系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
炭化水素系溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、パラフィン、Isopar−E(商品名;エクソン化学社製、炭素数が10程度のイソパラフィンの混合物)などの直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。その他、主として脂肪族炭化水素からなる混合物または脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の混合物として、沸点30℃〜200℃程度の石油留分、例えば、石油エーテル、リグロイン、石油ベンジン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油ナフサ、工業ガソリンなどを用いることもできる。また、これらの脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素は、本発明の安定化方法に対して不活性な官能基を有していてもよい。これらの炭化水素系溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの炭化水素系溶媒のうち、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、Isopar−E、ノナン、デカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、および、トルエン、混合キシレンなどの芳香族炭化水素が特に好適である。
なお、本発明に用いる炭化水素系溶媒は、通常の溶媒または試薬として用いられる等級のものであれば、特に前処理などを施す必要はないが、場合によっては、水分によるアリールホウ素化合物の分解をさらに充分に抑制する観点から、脱水処理などの前処理を行ってもよい。
アリールホウ素化合物は、アリールホウ素化合物と炭化水素系溶媒との組み合わせや温度などにもよるが、炭化水素系溶媒に数%以上溶解する。炭化水素系溶媒中におけるアリールホウ素化合物の含有量、つまり濃度は、特に限定されるものではないが、保存(貯蔵)、輸送、移送などをより一層効率的に行うことができるように、できる限り高濃度であることが好ましく、溶液の全質量に対して、0.5質量%以上、50質量%以下の範囲内、より好ましくは1質量%以上、30質量%以下の範囲内、さらに好ましくは2質量%以上、10質量%以下の範囲内である。
本発明の安定化方法において、アリールホウ素化合物を安定化させるのは、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物である。ここで、アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高いとは、水に比べてアリールホウ素化合物と結合しやすく、いったん結合した後はアリールホウ素化合物が水分による分解などを受けにくくすることを意味する。
安定化剤として配合される化合物としては、アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物である限り、特に限定されるものではないが、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などのうち、水よりルイス塩基性の高い化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの化合物のうち、含酸素化合物が好ましく、式(2):
Figure 0004630078
[式中、R1およびR2は、互いに独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表すか、あるいは、互いに結合して、隣接する酸素原子と共に、置換もしくは無置換の含酸素複素環を形成していてもよい;ここで、アリール基が置換されている場合、および/または、含酸素複素環が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]で示されるエーテル系化合物が特に好適である。
上記式(2)において、R1およびR2は、同一であっても互いに異なっていてもよい。R1またはR2で示されるアルキル基としては、例えば、炭素数1以上、6以下のアルキル基が例示され、具体的には、Ar1、Ar2またはAr3で示される置換アリール基の置換基として上記したものと同様のアルキル基が挙げられる。R1またはR2で示されるアルコキシアルキル基としては、例えば、炭素数2以上、6以下のアルコキシアルキル基が例示され、具体的には、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、1−メトキシプロピル基、2−メトキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−メチル−2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、1−メトキシブチル基、2−メトキシブチル基、3−メトキシブチル基、4−メトキシブチル基、2−メチル−1−メトキシプロピル基、2−メチル−2−メトキシプロピル基、2−メチル−3−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシプロピル基、1−メチル−2−メトキシプロピル基、1−メチル−3−メトキシプロピル基、1,1−ジメチル−2−メトキシエチル基、1−エトキシプロピル基、2−エトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基、2−エトキシ−1−メチルエチル基、1−プロポキシエチル基、2−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、2−イソプロポキシエチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、1−メトキシペンチル基、2−メトキシペンチル基、3−メトキシペンチル基、4−メトキシペンチル基、5−メトキシペンチル基、3−メチル−1−メトキシブチル基、3−メチル−2−メトキシブチル基、3−メチル−3−メトキシブチル基、3−メチル−4−メトキシブチル基、2,2−ジメチル−1−メトキシプロピル基、2,2−ジメチル−3−メトキシプロピル基、1,1−ジメチル−2−メトキシプロピル基、1,1−ジメチル−3−メトキシプロピル基、1−エトキシブチル基、2−エトキシブチル基、3−エトキシブチル基、4−エトキシブチル基、1−エトキシ−2−メチルプロピル基、2−エトキシ−2−メチルプロピル基、3−エトキシ−2−メチルプロピル基、1−エトキシ−1−メチルプロピル基、2−エトキシ−1−メチルプロピル基、3−エトキシ−1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル−2−エトキシ基、1−プロポキシプロピル基、2−プロポキシプロピル基、3−プロポキシプロピル基、1−メチル−1−プロポキシエチル基、1−メチル−2−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシプロピル基、2−イソプロポキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、1−イソプロポキシ−1−メチルエチル基、2−イソプロポキシ−1−メチルエチル基、1−ブトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、2−イソブトキシエチル基、1−sec−ブトキシエチル基、2−sec−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、2−tert−ブトキシエチル基、ペンチルオキシメチル基、イソペンチルオキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基、tert−ペンチルオキシメチル基などが挙げられる。R1またはR2で示される置換もしくは無置換のアリール基とは、置換されているアリール基または置換されていないアリール基を意味する。アリール基としては、例えば、炭素数6以上、10以下のアリール基が例示され、具体的には、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インデニル基、インダニル基などが挙げられる。これらのアリール基のうち、特にフェニル基、ナフチル基が好ましい。アリール基が置換されている場合、置換基は、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である。置換基となりうるハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基としては、Ar1、Ar2またはAr3で示される置換アリール基の置換基として上記したものと同様のハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。
上記式(2)において、R1およびR2が互いに結合して隣接する酸素原子と共に形成していてもよい置換もしくは無置換の含酸素複素環とは、R1およびR2が結合する酸素原子と一緒になって形成する置換されている含酸素複素環または置換されていない含酸素複素環を意味する。含酸素複素環としては、例えば、1個以上、8個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは2個以下の酸素原子を含む複素環が例示され、具体的には、例えば、フラン環、ジヒドロフラン環、テトラヒドロフラン環などの1個の酸素原子を含む5員環;ピラン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン環などの1個の酸素原子を含む6員環;ジオキソール環、ジオキソラン環などの2個の酸素原子を含む5員環;ジオキシン環、ジオキセン環、ジオキサン環などの2個の酸素原子を含む6員環;モルホリン環などの1個の酸素原子と1個の窒素原子を有する6員環;式(4):
Figure 0004630078
[式中、nは3以上、8以下の整数]
で示される3個以上、8個以下の酸素原子を含むクラウンエーテル環などが挙げられる。複素環が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である。置換基となりうるハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基としては、Ar1、Ar2またはAr3で示される置換アリール基の置換基として上記したものと同様のハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。
エーテル系化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルエーテル、エチル=メチル=エーテル、ジエチルエーテル、メチル=プロピル=エーテル、イソプロピル=メチル=エーテル、エチル=プロピル=エーテル、エチル=イソプロピル=エーテル、tert−ブチル=メチル=エーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチル=エチル=エーテル、エチル=イソブチル=エーテル、tert−ブチル=エチル=エーテル、イソペンチル=メチル=エーテル、エチル=イソペンチル=エーテル、ヘキシル=メチル=エーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどの1個の酸素原子を含む鎖状エーテル;ホルムアルデヒド=ジメチルアセタール、ホルムアルデヒド=ジエチルアセタール、エチレングリコール=ジメチルエーテル、エチレングリコール=ジエチルエーテル、アセトアルデヒド=ジメチルアセタール、アセトアルデヒド=ジエチルアセタールなどの2個の酸素原子を含む鎖状エーテル;ジエチレングリコール=ジメチルエーテル、ジエチレングリコール=ジエチルエーテルなどの3個の酸素原子を含む鎖状エーテル;アニソール、フェネトール、o−クレゾール=メチルエーテル、m−クレゾール=メチルエーテル、p−クレゾール=メチルエーテル、ジフェニルエーテル、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、2−エトキシナフタレンなどのフェノールエーテル;フラン、2−メチルフラン、3−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2,5−ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−4H−ピラン(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン)、テトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、モルホリン、4−メチルモルホリン、9−クラウン−3、12−クラウン−4、18−クラウン−6などの環状エーテルなどが挙げられる。これらのエーテル系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのエーテル系化合物のうち、1個以上、3個以下の酸素原子を含む鎖状エーテル、アニソールおよびジフェニルエーテルが特に好適である。
安定化剤として配合することができる化合物のうち、含窒素化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンなどが挙げられ、含硫黄化合物としては、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チオモルホリンなどが挙げられ、含リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
なお、本発明に用いる安定化剤は、通常の溶媒または試薬として用いられる等級のものであれば、特に前処理などを施す必要はないが、場合によっては、水分によるアリールホウ素化合物の分解をさらに充分に抑制する観点から、脱水処理などの前処理を行ってもよい。また、常温、常圧の下で気体または固体の形態である安定化剤は、必要に応じて、適当な溶媒に溶解させた溶液の形態で用いてもよい。この場合、溶媒として炭化水素系溶媒を用いれば、改めて溶媒を交換する必要がなく、好都合である。
安定化剤の配合量は、アリールホウ素化合物と安定化剤との組み合わせなどに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、アリールホウ素化合物を効果的に安定化させる点で、アリールホウ素化合物に対する安定化剤のモル比が、0.5以上、より好ましくは0.7以上、10.0以下の範囲内、さらに好ましくは1.0以上、5.0以下の範囲内となるようにすればよい。
以上のように、本発明の安定化方法は、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液に、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を存在させる方法である。これにより、アリールホウ素化合物を高純度(例えば、約96〜98%)のままで長期間(例えば、約1〜数年間)にわたって安定化させることができる。すなわち、本発明の保存化方法によれば、例えば、アリールホウ素化合物を実質的に均一な溶液またはスラリーの状態で長期間にわたって保存した場合においても、水分による分解反応を抑制することができ、アリールホウ素化合物を簡単かつ経済的に安定化させることができる。ここで、アリールホウ素化合物を保存するとは、前記化合物の溶液またはスラリーを所定の期間にわたって保存(貯蔵)するだけでなく、前記化合物の溶液またはスラリーを輸送または移送する場合などをも包含するものとする。また、保存の期間は、短期と長期とを問わず、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよい。
このような安定化方法によれば、安定化組成物を得ることができる。すなわち、本発明によるアリールホウ素化合物の安定化組成物は、炭化水素系溶媒中に、アリールホウ素化合物と、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を含むものである。本発明の安定化組成物に用いることができるアリールホウ素化合物の種類や濃度、炭化水素系溶媒の種類、安定化剤の種類や配合量、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液の意味などについては、上で説明したとおりである。
なお、本発明の安定化組成物は、アリールホウ素化合物の保存安定性を向上させ、その有効利用を図るものであるから、安定化剤として配合される、例えば、エーテル系化合物など以外にアリールホウ素化合物の利用を阻害するような化合物(以下、「阻害化合物」という。)、例えば、アリールホウ素化合物を触媒として用いる場合に、その触媒活性を低下させる化合物や、アリールホウ素化合物を原料として誘導体を合成する場合に、炭化水素系溶媒に溶解しないので、濾過などにより除去する操作が必要となる化合物、具体的には、例えば、フッ化臭化マグネシウム、フッ化リチウムなどの無機金属塩を実質的に含まないことが好ましい。ここで、本発明の安定化組成物が阻害化合物を実質的に含まないとは、このような阻害化合物を意図的に配合していないか、あるいは、アリールホウ素化合物を製造する過程で、このような阻害化合物が副生した場合には、これらの阻害化合物を通常の処理工程で可能な限り除去したことを意味する。
本発明の安定化組成物を保存(貯蔵)、輸送または移送する温度は、アリールホウ素化合物や炭化水素系溶媒の種類、炭化水素系溶媒の沸点などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、200℃以下が好ましく、−50℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましく、−20℃以上、100℃以下の範囲内がさらに好ましい。200℃を越える温度で溶液を保存(貯蔵)、輸送または移送するためには、この温度を維持するのに別途、加熱装置ならびに炭化水素系溶媒を還流させる冷却装置などが必要となるので、工業的に不利であり、推奨できない。本発明の安定化組成物を保存(貯蔵)、輸送または移送する圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧のいずれであってもよい。
本発明の安定化組成物を保存(貯蔵)、輸送または移送する容器は、必要に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、SUS製ボトルなどの金属製容器を用いることが好ましい。特許文献5に記載された安定化方法では、その[0074]段落に記載されているように、Isopar−E中にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液を合成樹脂製容器に入れて、安定化剤を加えずに、室温で192時間保存したところ、純度が96.7%から62.4%に34.3%低下したとされている。これに対し、本発明者らの実験によると、下記比較例1に記載したように、メチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液をSUS製ボトルに入れて、安定化剤を加えずに、室温で236日保存したところ、純度は98.2%から92.9%に5.3%低下した。このように、保存する容器の材質が合成樹脂であるか、ステンレスであるかによって、純度が低下する割合が大きく異なるのは、溶媒が違うことを考慮しても意外である。それゆえ、上記したように、水に対して不安定であるアリールホウ素化合物を含む本発明の安定化組成物は、例えば、SUS製ボトルなどの金属製容器で保存(貯蔵)、輸送または移送することが好ましい。
本発明によるアリールホウ素化合物の安定組成物は、アリールホウ素化合物を原料として誘導体を製造する場合には、何ら処理することなくそのまま用いられるが、アリールホウ素化合物を触媒として用いる場合には、安定化剤、つまり前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物、例えば、エーテル系化合物を除去することが好ましい。安定化剤を除去する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいかなる方法を用いてもよい。例えば、溶媒を留去した後、エーテル系化合物が配位したアリールホウ素化合物を減圧下で加熱して昇華させるか、あるいは、炭化水素系溶媒がエーテル系化合物より高い沸点を有するのであれば、そのまま加熱によってエーテル系化合物を留去し、低い沸点を有するのであれば、エーテル系化合物より高い沸点を有する別の炭化水素系溶媒を混合してから、加熱によってエーテル系化合物を留去すればよい。減圧時の圧力、加熱時の温度や時間、試薬の種類や使用量、溶媒の種類や使用量などは、アリールホウ素化合物と安定化剤と炭化水素系溶媒との組み合わせなどに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
本発明の方法によって安定化されるアリールホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの重合触媒であるメタロセン触媒の助触媒またはエチレンオキシドやプロピレンオキシドの開環重合反応のルイス酸触媒として、あるいは、ペンタフルオロフェニルボロン酸、ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・マグネシウムハライドなどの誘導体を合成するための原料として有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、アリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度を求めた方法は、以下のとおりである。
<トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度>
19F−NMRの測定試料は、保存中の溶液の一部を抜き取り、窒素雰囲気下、この溶液にCDCl3を混合することにより調製した。19F−NMRスペクトルは、所定の条件下で測定した。
得られた19F−NMRスペクトルのチャートから、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのペンタフルオロフェニル基のオルト位のフッ素原子が与えるピーク強度の積分値(IT)、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの分解生成物であるビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸のペンタフルオロフェニル基のオルト位のフッ素原子が与えるピーク強度の積分値(IB)、および、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの分解生成物であるペンタフルオロベンゼンのオルト位のフッ素原子が与えるピーク強度の積分値(IP)を求め、次式によってトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。
Figure 0004630078
実施例1
本実施例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤であるジエチルエーテルを配合することにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
一般的な方法(例えば、特開平9−291092号公報に記載の方法)で合成したトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン30.89g、メチルシクロヘキサン456.98g、トルエン73.95gを含む溶液を得た。この溶液にジエチルエーテル10.04gを添加して試験溶液を調製した。この試験溶液は、溶液の全質量に対するトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの濃度が5.4質量%であり、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに対するジエチルエーテルのモル比が2.2であった。
上記試験溶液を製造後、直ちにSUS製ボトル4本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、33日目、91日目、193日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表1および図1(−△−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.2%であった。
Figure 0004630078
実施例2
本実施例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤である1,2−ジメトキシエタンを配合することにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
実施例1において、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン30.89g、メチルシクロヘキサン456.98g、トルエン73.95gに代えて、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン36.81g、メチルシクロヘキサン541.44g、トルエン78.18gを用いて溶液を調製し、この溶液に、ジエチルエーテル10.04gに代えて、1,2−ジメトキシエタン13.08gを添加すること以外は、実施例1と同様にして試験溶液を得た。この試験溶液は、溶液の全質量に対するトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの濃度が5.5質量%であり、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに対する1,2−ジメトキシエタンのモル比が2.0であった。
上記試験溶液を製造後、直ちにSUS製ボトル6本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、31日目、92日目、186日目、205日目、236日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表2および図1(−○−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.2%であった。
Figure 0004630078
実施例3
本実施例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤である1,2−ジメトキシエタンを配合することにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
実施例1において、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン30.89g、メチルシクロヘキサン456.98g、トルエン73.95gに代えて、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5.87g、メチルシクロヘキサン86.31g、トルエン9.79gを用いて溶液を調製し、この溶液に、ジエチルエーテル10.04gに代えて、1,2−ジメトキシエタン1.23gを添加すること以外は、実施例1と同様にして、試験溶液を調製した。この試験溶液は、溶液の全質量に対するトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの濃度が5.7質量%であり、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに対する1,2−ジメトキシエタンのモル比が1.2であった。
上記試験溶液を製造後、直ちにSUS製ボトル2本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、68日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表3および図1(−▲−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.3%であった。
Figure 0004630078
実施例4
本実施例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤である1,2−ジメトキシエタンを配合することにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
実施例1において、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン30.89g、メチルシクロヘキサン456.98g、トルエン73.95gに代えて、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5.77g、メチルシクロヘキサン84.82g、トルエン9.62gを用いて溶液を調製し、この溶液に、ジエチルエーテル10.04gに代えて、1,2−ジメトキシエタン0.53gを添加すること以外は、実施例1と同様にして、試験溶液を調製した。この試験溶液は、溶液の全質量に対するトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの濃度が5.7質量%であり、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに対する1,2−ジメトキシエタンのモル比が0.52であった。
上記試験溶液を製造後、直ちにSUS製ボトル2本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、68日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表4および図1(−■−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.3%であった。
Figure 0004630078
実施例5
本実施例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤であるジイソプロピルエーテルを配合することにより、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
実施例1において、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン30.89g、メチルシクロヘキサン456.98g、トルエン73.95gに代えて、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5.98g、メチルシクロヘキサン87.92g、トルエン9.98gを用いて溶液を調製し、ジエチルエーテル10.04gに代えて、ジイソプロピルエーテル2.29gを添加すること以外は、実施例1と同様にして、試験溶液を調製した。この試験溶液は、溶液の全質量に対するトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの濃度が5.6質量%であり、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに対するジイソプロピルエーテルのモル比が1.9であった。
上記試験溶液を製造後、直ちにSUS製ボトル2本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、68日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表および図1(−*−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.3%であった。
Figure 0004630078
比較例1
本比較例では、炭化水素系溶媒であるメチルシクロヘキサンとトルエンとの混合溶媒中にアリールホウ素化合物であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む溶液に安定化剤を配合することなく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を調べた。
実施例1と同様にして得られたトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン溶液466.54gをそのまま試験溶液とした。この試験溶液を製造後、直ちにそのままSUS製ボトル4本に入れて密閉し、常圧下、室温で保存した。製造直後、つまり保存開始時(0日目)、33日目、91日目、236日目に、試験溶液の一部を取り出して、19F−NMRスペクトルを測定することにより、保存日数ごとのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度(%)を算出した。結果を表6および図1(−−)に示す。なお、製造直後のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度は98.2%であった。
Figure 0004630078
表1〜3および図1から明らかなように、安定化剤としてジエチルエーテルをモル比2.2で配合した実施例1の試験溶液(図1の−△−を参照)は、保存開始から193日目まで、安定化剤として1,2−ジメトキシエタンをモル比2.0で配合した実施例2の試験溶液(図1の−○−を参照)は、保存開始から236日目まで、安定化剤として1,2−ジメトキシエタンをモル比1.2で配合した実施例3の試験溶液(図1の−▲−を参照)は、保存開始から68日目まで、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度が誤差の範囲内で全く変化しなかった。また、表4および図1から明らかなように、安定化剤として1,2−ジメトキシエタンをモル比0.52で配合した実施例4の試験溶液(図1の−■−を参照)は、保存開始から68日目まで、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度がわずか1.5%低下しただけである。さらに、表5および図1から明らかなように、安定化剤としてジイソプロピルエーテルをモル比1.9で配合した実施例5の試験溶液(図1の−*−を参照)は、保存開始から68日目まで、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度がわずか1.9%低下しただけである。
これに対し、表6および図1から明らかなように、安定化剤を配合しなかった比較例1の試験溶液(図1の−●−を参照)は、保存開始からわずか33日目で、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの純度が3.6%低下し、その後も徐々に低下し続け、91日目には4.6%、236日目には5.3%低下した。
これらの結果から、炭化水素系溶媒中にアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーに、安定化剤として、前記アリールホウ素化合物に対して水より親和性の高い化合物を配合することにより、溶液の場合は実質的に均一系を形成する形態で、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成する形態で、前記アリールホウ素化合物を高純度のままで長期間にわたって安定的に保存できることがわかる。
本発明の安定化方法および安定化組成物は、溶液の場合は実質的に均一系を形成する形態で、あるいはスラリーの場合は加熱すると実質的に均一系を形成する形態で、水分に対して不安定なアリールホウ素化合物を高純度のままで長期間にわたって安定的に保存することを可能にする。アリールホウ素化合物が触媒として、あるいは誘導体を合成する原料として有用であることから、本発明は、アリールホウ素化合物を触媒として利用する分野や、アリールホウ素化合物から有用な誘導体を合成する分野などにおいて、多大の貢献をなすものである。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの保存安定性を示すグラフ図である。図中、各グラフの記号のうち、−△−は実施例1(ジエチルエーテルを添加)、−○−は実施例2(1,2−ジメトキシエタンを添加)、−▲−は実施例3(1,2−ジメトキシエタンを添加)、−■−は実施例4(1,2−ジメトキシエタンを添加)、−*−は実施例5(ジイソプロピルエーテルを添加)、−●−は比較例1(無添加)の結果を示す。

Claims (4)

  1. 炭化水素系溶媒中に式(1):
    Figure 0004630078

    [式中、Ar、ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表す;ここで、アリール基が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
    で示されるアリールホウ素化合物を含む溶液またはスラリーに、安定化剤として、式(2):
    Figure 0004630078

    [式中、R およびR は、互いに独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表すか、あるいは、互いに結合して、隣接する酸素原子と共に、置換もしくは無置換の含酸素複素環を形成していてもよい;ここで、アリール基が置換されている場合、および/または、含酸素複素環が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
    で示されるエーテル系化合物を配合することを特徴とするアリールホウ素化合物の安定化方法。
  2. 前記アリールホウ素化合物が、式(1):
    Figure 0004630078

    [式中、Ar、ArおよびArはフッ素原子で置換されたアリール基を表す]
    で示されるアリールホウ素化合物である請求項1記載の安定化方法。
  3. 炭化水素系溶媒中に、式(1):
    Figure 0004630078

    [式中、Ar、ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表す;ここで、アリール基が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
    で示されるアリールホウ素化合物と、安定化剤として、式(2):
    Figure 0004630078

    [式中、R およびR は、互いに独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表すか、あるいは、互いに結合して、隣接する酸素原子と共に、置換もしくは無置換の含酸素複素環を形成していてもよい;ここで、アリール基が置換されている場合、および/または、含酸素複素環が置換されている場合、置換基はハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選択される少なくとも1種である]
    で示されるエーテル系化合物を含むことを特徴とするアリールホウ素化合物の安定化組成物。
  4. 前記アリールホウ素化合物が、式(1):
    Figure 0004630078

    [式中、Ar、ArおよびArはフッ素原子で置換されたアリール基を表す]
    で示されるアリールホウ素化合物である請求項3記載の安定化組成物。
JP2005021556A 2005-01-28 2005-01-28 アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物 Active JP4630078B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005021556A JP4630078B2 (ja) 2005-01-28 2005-01-28 アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物
PCT/JP2006/301598 WO2006080538A1 (en) 2005-01-28 2006-01-25 Stabilizing method and stabilized composition for aryl boron compounds
EP06712741.5A EP1817318B1 (en) 2005-01-28 2006-01-25 Stabilizing method and stabilized composition for aryl boron compounds
US11/883,164 US20080154065A1 (en) 2005-01-28 2006-01-25 Stabilizing Method and Stabilized Composition for Aryl Boron Compounds
IL183921A IL183921A (en) 2005-01-28 2007-06-14 A method for stabilizing aryl boron compounds and stabilized preparations containing them

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005021556A JP4630078B2 (ja) 2005-01-28 2005-01-28 アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2006206511A JP2006206511A (ja) 2006-08-10
JP2006206511A5 JP2006206511A5 (ja) 2007-10-25
JP4630078B2 true JP4630078B2 (ja) 2011-02-09

Family

ID=36740553

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005021556A Active JP4630078B2 (ja) 2005-01-28 2005-01-28 アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20080154065A1 (ja)
EP (1) EP1817318B1 (ja)
JP (1) JP4630078B2 (ja)
IL (1) IL183921A (ja)
WO (1) WO2006080538A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101144544B1 (ko) 2010-07-02 2012-05-11 현대모비스 주식회사 에어백 모듈
JP5819772B2 (ja) * 2012-04-27 2015-11-24 株式会社日本触媒 カチオン硬化触媒の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000143417A (ja) * 1998-11-06 2000-05-23 Yoshitomi Fine Chemical Kk トリフェニルボロン化合物と有機窒素化合物を含有する水中防汚塗料
JP2007055917A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Nippon Shokubai Co Ltd ボラジン化合物の保存方法およびボラジン化合物保存用容器

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3755178A (en) * 1971-07-29 1973-08-28 Monsanto Co Compositions comprising boron compounds and polyphenyl thioethers
US5693261A (en) * 1995-02-21 1997-12-02 Albemarle Corporation Preparation of pentafluorophenyl compounds
JPH09291092A (ja) * 1996-02-28 1997-11-11 Nippon Shokubai Co Ltd (フッ化アリール)ホウ素化合物の製造方法
RU2159246C2 (ru) * 1996-02-28 2000-11-20 Ниппон Сокубаи Ко., Лтд. Способ получения фторарилмагниевого производного и способ получения (фторарил) боранового соединения (варианты)
JPH1129576A (ja) * 1997-07-04 1999-02-02 Nippon Shokubai Co Ltd (フッ化アリール)ホウ素化合物の安定化剤および安定化方法並びに結晶化方法
JPH1192480A (ja) * 1997-09-18 1999-04-06 Nippon Shokubai Co Ltd (フッ化アリール)ホウ素化合物の取り扱い方法並びに炭化水素系溶液の調製方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000143417A (ja) * 1998-11-06 2000-05-23 Yoshitomi Fine Chemical Kk トリフェニルボロン化合物と有機窒素化合物を含有する水中防汚塗料
JP2007055917A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Nippon Shokubai Co Ltd ボラジン化合物の保存方法およびボラジン化合物保存用容器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006206511A (ja) 2006-08-10
EP1817318B1 (en) 2013-08-28
EP1817318A1 (en) 2007-08-15
WO2006080538A1 (en) 2006-08-03
US20080154065A1 (en) 2008-06-26
IL183921A0 (en) 2007-10-31
IL183921A (en) 2012-10-31
EP1817318A4 (en) 2009-10-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Matteson Stereodirected synthesis with organoboranes
Bregadze Dicarba-closo-dodecaboranes C2B10H12 and their derivatives
Samigullin et al. A highly reactive geminal P/B frustrated Lewis pair: expanding the scope to C− X (X= Cl, Br) bond activation
Ducos et al. Chiral Memory in Silylium Ions
JP4630078B2 (ja) アリールホウ素化合物の安定化方法および安定化組成物
Kimura et al. Solvent effects on the aggregation of lithium bis (trimethylsilyl) amide
Straub et al. Chemical vapor deposition of phase‐pure uranium dioxide thin films from uranium (IV) amidate precursors
Marczenko et al. Synthesis of a perfluorinated phenoxyphosphorane and conversion to its hexacoordinate anions
Petersen et al. From Ion‐Like Ethylzinc Aluminates to [EtZn (arene) 2]+[Al (ORF) 4]− Salts
Nishimoto et al. Coupling reaction of enol derivatives with silyl ketene acetals catalyzed by gallium trihalides
Molitor et al. Taming Metal/Fluorine Carbenoids
Drisch et al. Innovative Syntheses of Cyano (fluoro) borates: Catalytic Cyanation, Electrochemical and Electrophilic Fluorination
Pécharman et al. [BO2]− as a Synthon for the Generation of Boron‐Centered Carbamate and Carboxylate Isosteres
Taniguchi Substituent effects of tetracoordinate boron in organic synthesis
US6057480A (en) Process for preparing fluoroaryl magnesium derivative and process for preparing (fluoroaryl) borane compound
RU2162471C2 (ru) Способ получения соединения (фторарил)борана и способ получения производного тетракис (фторарил)бората
Burn et al. A study of the silanolysis of triphenylsilane and p-methoxyphenol catalysed by (PMe3) 4RuH2 and the stoichiometric reactions of (PMe3) 4Ru (H)(OC6H4-pX)(X= Me, OMe) with Ph3SiH
Shmakov et al. New approach to the generation of aryldifluoroboranes–prospective acid catalysts of organic reactions
Wiesemann et al. Tris (pentafluoroethyl) stannane: Tin Hydride Chemistry with an Electron‐Deficient Stannane
Fishwick et al. Reaction of some boron halide compounds with platinum (0) and platinum (II) species
Huynh et al. Synthesis, Structures, and Stability of N‐Donor‐Stabilized N‐Silylphosphoranimine Cations
Sarazin et al. Cationic Brønsted Acids for the Preparation of SnIV Salts: Synthesis and Characterisation of [Ph3Sn (OEt2)][H2N {B (C6F5) 3} 2],[Sn (NMe2) 3 (HNMe2) 2][B (C6F5) 4] and [Me3Sn (HNMe2) 2][B (C6F5) 4]
Wojciechowski et al. Reactions of β‐keto sulfones with t‐butyl aluminum compounds: Reinvestigation of tri‐t‐butyl aluminum synthesis
Habereder et al. Preparation and structural characterization of the first germylaluminate
KR102077880B1 (ko) 테트라키스(f 아릴) 보레이트 염의 제조 방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070905

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070906

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100810

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100902

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101102

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101112

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131119

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4630078

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150