JP2017067871A - 樹脂成形体 - Google Patents

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祐輝 福島
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Abstract

【課題】オキソカーボン系化合物を含む樹脂組成物から形成された、高い選択的透過性を有する樹脂成形体を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂成形体は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成された樹脂成形体であって、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成された樹脂成形体、並びに、該樹脂成形体を支持体上に備えた積層体及び該積層体を含む撮像素子に関する。
近年、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野においては、多機能化を図るため、ガラス等からなる支持体上に様々な層を形成した積層構造の部材・材料(積層体又は積層物とも称す)が広く用いられるようになっている。支持体上に形成する層としては、例えば、タッチパネル等に用いられるITO(インジウム・スズ複合酸化物)透明導電層、撮像素子における光学ノイズを低減させる赤外線(IR)カット層、基板表面での光の反射を低減させる反射防止(AR)層等が挙げられる。
撮像素子は、固体撮像素子又はイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号に変換し、電気信号として出力する電子部品であり、例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に使用されている。このような撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを備えた構成からなるが、多機能化及び高性能化を図るため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズの低減への要求が高まっている。
撮像素子における光学ノイズの低減は、従来、光学ノイズを低減させる光吸収機能又は反射機能を有する成分をガラスに練りこんだ吸収ガラスや、同機能を樹脂成分にもたせた樹脂フィルター等を備えることで行われてきた。しかし、吸収ガラスは耐熱性に非常に優れるものの、クラック(割れ)やチッピング(欠け)が生じやすく、加工性が充分ではない。他方、樹脂フィルターはクラックやチッピングの発生を抑制できるうえ、加工性にも優れるが、その一方で、ガラスに比べると耐熱性は充分ではなく、線膨張による反りの発生も否めない。そこで近年では、ガラス等の支持体上に光吸収機能や反射機能を有する層を形成した、積層構造の光学フィルターの開発が進められている。
光吸収機能や反射機能を有する層を形成する樹脂組成物には、可視・近赤外領域に吸収を有する色素として、従来より、スクアリリウム骨格やクロコニウム骨格を化合物中に有するオキソカーボン系化合物が用いられている。例えば、特許文献1や特許文献2には、スクアリリウム系化合物が含有された樹脂層がガラス基板上に形成された光学フィルターが記載されている。
特開2014−63144号公報 特開2014−126642号公報
上述したように、近年では、支持体上にIRカット層等を形成した積層体の開発が進んでおり、それを得るための積層用材料の検討がなされている。
ところで、支持体上にIRカット層等の層を形成する際は、緻密な層を形成する観点から、高温で蒸着する方法が望まれている。そのため、支持体上に形成する層の材料(積層用材料)には、高い耐熱性が求められている。
また、例えば、デジタルカメラモジュール等の撮像素子は、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の表面に形成する層の材料には、その硬化物(成形体)がリフロー工程に耐え得る耐熱性を有することが求められる。
上述のように、特許文献1や特許文献2では、スクアリリウム系化合物が含有された樹脂層がガラス基板上に形成された光学フィルターが提案されている。しかしながら、これらの光学フィルターを用いても、赤色波長(特に波長700nm近傍)の光を十分に吸収しつつ、かつ、可視光領域(特に波長500nm近傍)における光の透過率を十分に高くすることはできず、すなわち、高い選択的透過性を有しているとは言い難い。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高い選択的透過性を有する樹脂成形体、及び、該樹脂成形体からなる層を支持体上に形成して得られる積層体を提供することを目的とする。本発明はまた、このような積層体を用いた撮像素子を提供することも目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物を所定の温度で加熱することによって、赤色波長の光を十分に吸収しつつ、可視光領域における光の透過率を十分に高くできることを見出した。
すなわち、本発明に係る樹脂成形体は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成されており、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%以下であることを特徴とする。
本発明に係る樹脂成形体は、波長500nmにおける分光光線の透過率が89%以上であることが好ましく、波長700nmにおける分光光線の透過率が25%以下であることが好ましい。
前記樹脂組成物にはさらにオキシラン環含有樹脂が含まれていることが好ましい。また、前記硬化触媒はカチオン硬化触媒を含むことが好ましく、前記樹脂組成物にはさらにシロキサン系界面活性剤が含まれていることが好ましい。
また、本発明は、前記樹脂成形体であることを特徴とする樹脂フィルムも包含する。
さらに、本発明は、支持体と、前記支持体の片面又は両面に設けられた樹脂層とを備えた積層体であって、前記樹脂層は、前記樹脂成形体からなる層又は前記樹脂フィルムである積層体をも包含する。また、本発明は、前記支持体と前記樹脂層との間に下地層を備えた積層体をも包含する。前記下地層を形成する組成物にはシランカップリング剤が含まれていることが好ましい。本発明は、前記積層体を含む撮像素子も包含する。
加えて、本発明は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物を160〜230℃の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする樹脂成形体の製造方法、並びに、支持体の上方に樹脂層を備える積層体の製造方法であって、前記樹脂層は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成されており、前記樹脂組成物を前記支持体に他の層を介して又は介さずに塗布する塗布工程と、前記樹脂組成物を160〜230℃の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法をも包含する。
前記加熱工程における酸素濃度が10体積%以下であることが好ましく、前記加熱工程における加熱時間は5分以上180分以下であることが好ましい。
本発明によれば、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物を所定の温度で加熱することによって、可視光領域(特に波長500nm近傍)における光の透過率を高くすることができ、かつ、所望の赤色波長(特に波長700nm近傍)の光を選択的に吸収することができる樹脂成形体を得ることができる。従って、本発明の樹脂成形体は、高い選択的透過性を有するため、本発明の樹脂成形体を備えた積層体は、光学用途において好適に使用できる。
本発明で用いられる樹脂組成物は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含むことを特徴とする。さらに本発明で用いられる樹脂組成物には、必要に応じて、表面調整剤、硫黄含有化合物、溶媒、各種添加剤等を含有させることができる。この樹脂組成物から形成された樹脂成形体は、オキソカーボン系化合物の光吸収特性が優れているため、可視光領域(特に波長500nm近傍)の透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、選択透過性が優れる。
<オキソカーボン系化合物>
前記オキソカーボン系化合物は、スクアリリウム系化合物及びクロコニウム系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
スクアリリウム系化合物としては、特に構造は限定されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
(式(1)中、Ra1及びRa2の少なくとも1つは、置換基を有していてもよい複素環または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。)
クロコニウム系化合物としては、特に構造は限定されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
(式(2)中、Ra3及びRa4の少なくとも1つは、置換基を有していてもよい複素環または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。)
複素環としては、芳香族複素環、脂環式複素環が挙げられる。
芳香族複素環としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環等が挙げられ、より具体的にはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、プリン環、カルバゾール環等が挙げられる。
また、脂環式複素環としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環等が挙げられ、より具体的にはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環等が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜14のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
複素環または芳香族炭化水素環の置換基としては、同一または異なって1〜5個の置換基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基、アルキル基、アラルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、−R’=R”−Ar(R’およびR”は同一であって、NまたはCHを表し、Arは、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン基で置換されていてもよいアルキル基、シアノ基およびハロゲン原子からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基を表す)等が挙げられる。アルキル基またはアルコキシ基の置換基としては、同一または異なって1〜3個の置換基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
中でも、置換基を有していてもよい5員あるいは6員の複素環または置換基を有していてもよい5員あるいは6員の芳香族炭化水素環が好ましい。
前記オキソカーボン系化合物は、上記式(1)の構造を有するスクアリリウム系化合物及び上記式(2)の構造を有するクロコニウム系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましく、上記式(1)の構造を有するスクアリリウム系化合物を含むことがより好ましく、上記式(1)の構造を有するスクアリリウム系化合物からなることがさらに好ましい。
<スクアリリウム系化合物(スクアリリウム系色素)>
スクアリリウム系化合物としては、上記式(1)中のRa1、Ra2はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される特定の構造単位であることが特に好ましい。
(式(3)中、環Aは4〜9員の不飽和炭化水素環である。
X及びYはそれぞれ独立して有機基又は極性官能基である。
nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同じであってもよいし異なっていてもよい。
環Bは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。
なお*は式(1)中の4員環との結合部位を表す。)
式(3)中、*は式(1)で示されるスクアリリウム骨格との結合部位を表しており、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(上記式(3)中、矢印で示す炭素原子)が炭化水素環(環A)を形成している点に特徴を有する。
式(3)中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環である。環Aは、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(上記式(3)中、矢印で示す炭素原子)とピロール環を構成する炭素原子との間に少なくとも1個の二重結合を有する不飽和炭化水素環であればよく、当該二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有するものであってよいが、好ましくは環Aが有する二重結合は1個である。環Aは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
式(3)中、nは、0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)である。nは、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数である。nが1以上である場合、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子はYで置換されることになる。
式(3)中、X及びYは有機基又は極性官能基である。X及びYの例である有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、ベンゾチアゾール基、ハロゲノアルキル基、シアノ基等が挙げられる。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
Xの例である有機基又は極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基又はアリール基である。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。具体的には、Xの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
Yの例である有機基又は極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、より好ましくはアルキル基又は水酸基である。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。具体的には、Yの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、水酸基等が好ましく挙げられる。
前記nが2以上であり、Yが複数存在する場合には、各Yは同じであってもよいし異なっていてもよい。また前記nが2以上である場合、複数のYは各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個のYが1個の炭素原子に結合していてもよい。
式(3)中、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。環Bとしては、例えば、下記式(A−1)〜(A−14)の構造を有する環、及びこれら環の水素原子の1つ以上が任意の置換基で置換された環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環(A−1)、ナフタレン環(A−2、A−3)、キノリン環(A−8、A−13、A−14)又はこれらに上記置換基が置換した環が好ましい。ここで置換基としては、X及びYの例である有機基又は極性官能基として上述した基が挙げられるが、それらの中でも特に、アルキル基(特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(特に好ましくは炭素数1〜2)、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、芳香族複素環基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基などの電子供与性基、ハロゲノ基(特に好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましく、特に電子吸引性基が好ましく、ハロゲノ基が最も好ましい。環Bの置換基の数は1つでもよいし2つ以上(例えば、2又は3)でもよい。また置換基を有さなくてもよい。置換基を有する場合、その数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
なお、上記式(A−1)〜(A−14)は、環Bをピロール環の一部を含んで表したものであり、例えば式(A−1)は、下図中aの矢印で示されるピロール環のβ位の炭素原子と、下図中bの矢印で示されるピロール環のα位の炭素原子とを含んで表記されている。
なお、スクアリリウム骨格を有する化合物(1)中の特定の構造単位であるRa1とRa2は、同一構造であっても異なっていてもよい。製造が容易なことから、Ra1とRa2は、同一構造であることが好ましい。
特に好ましいスクアリリウム系化合物は、式(1)のスクアリリウム骨格を有すると共に、前記式(3)の構造単位において、環Aがシクロヘキセン、シクロヘプテン、又はシクロオクテンであり、Xが炭素数1〜4のアルキル基であり、環Bがベンゼン環(A−1)又はナフタレン環(A−2、A−3)である化合物である。この特に好ましいスクアリリウム系化合物において、環Bが置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、トリハロゲノメチル基、フェニル基、アルコキシ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲノ基が好ましい。
<クロコニウム系化合物(クロコニウム系色素)>
クロコニウム系化合物としては、上記式(2)中、Ra3、Ra4はそれぞれ独立して下記式(3)で示される構造単位であることがより好ましい。Ra3及びRa4は同じであってもよいし異なっていてもよい。なお、式(3)中、環A、環B、X、Y及びnの詳細な説明については、スクアリリウム系化合物と同じであるため省略する。
(式(3)中、
環Aは4〜9員の不飽和炭化水素環である。
X及びYはそれぞれ独立して有機基又は極性官能基である。
nは0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)であり、nが2以上である場合、複数のYは同じであってもよいし異なっていてもよい。
環Bは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。
なお*は式(2)中の5員環との結合部位を表す。)
<オキソカーボン系化合物の互変異体、含有量など>
以上のような式(3)で示される特定の構造単位が、式(1)で示されるスクアリリウム骨格又は式(2)で示されるクロコニウム骨格に結合してなる本発明のオキソカーボン系化合物は、互変異体が存在する。詳しくは、式(1)で示されるスクアリリウム骨格に結合した場合には、下記(1)で示される化合物のほか、(1a)又は(1b)で示される互変異体が存在する。一方、式(2)で示されるクロコニウム骨格に結合した場合には、下記(2)で示される化合物のほか、(2a)、(2b)又は(2c)で示される互変異体が存在する。本発明のオキソカーボン系化合物は、(1)又は(2)で示される化合物のみならず、それぞれに対応する互変異体をも包含するものとする。
上記オキソカーボン系化合物は色素として機能するものであるが、本発明で用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のオキソカーボン系化合物とともに公知の他の色素を含有させることができる。本発明で用いられる樹脂組成物に含まれていてもよい色素としては、例えば、本発明のオキソカーボン系化合物以外のスクアリリウム系色素やクロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、本発明の効果を損なわないよう、400〜1100nmの波長域に吸収極大波長を有していることが望ましい。これら他の色素は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明で用いられる樹脂組成物が他の色素をも含有する場合、他の色素の含有量は、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%中、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは、他の色素を実質的に含まないことである。
樹脂組成物中に占めるオキソカーボン系化合物の含有量は、上記他の色素との合計量(全色素量)が所定の範囲になるようにすることが好ましい。具体的には、本発明のオキソカーボン系化合物と他の色素との合計量が、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また本発明で用いられるオキソカーボン系化合物と他の色素との合計量の上限は、均一な成膜を容易にする上で、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
<オキソカーボン系化合物の製造方法>
本発明に係るオキソカーボン系化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(4):
(式(4)中、環A、環B、X、Y及びnは式(3)に同じ)で表されるピロール環含有化合物を中間原料とし、これをスクアリン酸又はクロコン酸と反応させることにより製造することができる。
中間原料として用いるピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
SAJJADIFAR ET AL: 'New 3H-Indole Synthesis by Fischer’s Method. Part I.' Molecules 2010, no. 15, April 2010, pages 2491-2498
また、スクアリリウム系化合物は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
Serguei Miltsov ET AL; 'New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines ', Tetrahedron Letters, Volume 40, Issue 21, May 1999, pages 4067-4068
得られたスクアリリウム系化合物は、必要に応じて、濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。
上記クロコニウム系化合物の合成方法は、特に限定されないが、ピロール環含有化合物とクロコン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法で合成することができる。
[樹脂]
本発明で用いられる樹脂組成物は、樹脂を含む。樹脂としては、硬化性の官能基を有する有機化合物を1種又は2種以上含むことが好ましい。上記硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(すなわち樹脂組成物を硬化反応させる基を意味する)をいい、例えば、オキシラン基(オキシラン環)、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。したがって、上記樹脂としては、カチオン硬化性基を有する樹脂及び/又はラジカル硬化性基を有する樹脂を含むことが好ましい。これにより、硬化までの時間が短時間となって生産性がより高まり、得られる硬化物も耐熱性(耐熱分解性、耐熱着色性)により優れたものとなる。中でも、硬化収縮率が低いために金型等での形状付与がし易くなるという点で、カチオン硬化性基を有する樹脂を含むことがより好適である。なお、本明細書では、支持体上に上記樹脂組成物を用いて形成された樹脂層、並びに、樹脂組成物から形成される樹脂成形体及び単層の樹脂フィルムのことをまとめて硬化物という。カチオン硬化性基を有する樹脂の含有量は、樹脂の総量100質量%中50質量%以上であることが好適である。より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
カチオン硬化性基を有する化合物の中でも、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン環含有樹脂(以下、オキシラン化合物とも称す)を含むことが好ましい。オキシラン化合物の含有量は、樹脂の総量100質量%中50質量%以上であることが好適である。より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
上記オキシラン化合物は、オキシラン環というカチオン硬化性基を有し、熱又は光によって硬化(重合)する化合物(カチオン硬化性化合物)である。上記樹脂組成物がオキシラン化合物を含むことにより、硬化物の収縮量を充分に低減することができるうえ、硬化までの時間が短時間となって生産性が高まり、得られる硬化物も、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)や耐薬品性に優れたものとなる。
本明細書中、熱又は光によって硬化(重合)する化合物を総称して「硬化性化合物」又は「樹脂成分」といい、そのうちカチオン硬化性基を有する硬化性化合物を総称して「カチオン硬化性化合物」という。
また、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」と称す。「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル結合又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
オキシラン化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらのオキシラン化合物を用いた場合、硬化時にオキシラン化合物自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらのオキシラン化合物を含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる硬化物及び積層体を高生産性で得ることができる。より好ましくは脂環式エポキシ化合物である。
脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ化合物としては、エポキシ化合物のエポキシ環をアルコールで開環重合させたものが好ましい。その具体例としては、アルコールのビニルシクロヘキセンジエポキシド付加物、アルコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル付加物、アルコールのアジピン酸ビス3,4−エポキシシクロヘキシルメチル付加物、アルコールのジシクロペンタジエンジエポキシド付加物、アルコールのε−カプロラクトン変性ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸付加物、アルコールのε−カプロラクトン変性テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタン−テトラカルボン酸付加物、アルコールのジペンテンジオキシド付加物、アルコールの1,4−シクロオクタジエンジエポキシド付加物、アルコールのビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル付加物などが挙げられ、これらは、1種又は2種類以上併せて用いることができる。脂環式エポキシ化合物の中でも、アルコールのビニルシクロヘキセンジエポキシドの付加物が好ましく、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールのビニルシクロヘキセンジエポキシド付加物がより好ましく、特に好ましくは下記式(5)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2− エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物である。

(上記式中、p1、p2、p3は同一又は異なって、1〜30の整数である。)
脂環式エポキシ化合物は、公知の方法により製造することができ、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、セロキサイド(登録商標)2021P、セロキサイド(登録商標)2081、EHPE3150(以上、ダイセル社製)等が挙げられ、中でも2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物であるEHPE3150(重量平均分子量:2400)が好ましい。
上記オキシラン化合物は、脂環式エポキシ化合物の含有量が、オキシラン化合物の総量100質量%中50質量%以上であることが好適である。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より低吸水率、高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物とも称す)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。中でも、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキシラン化合物はまた、重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物を含むことが好ましい。重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物の含有量は、樹脂組成物に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%中、10〜100質量%であることが好ましい。これにより、上記樹脂組成物は、支持体上に樹脂層を形成する際の成膜性により優れたものとなる。このように上記オキシラン化合物が、オキシラン化合物全体100質量%中、重量平均分子量が2000以上の化合物を10〜100質量%含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。
上記重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物において、重量平均分子量は、2200以上であることが好ましい。より好ましくは2400以上である。また、成膜性の観点や、硬化物のガラス転移温度を高く保つという観点から、上記重量平均分子量が100万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは1万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−LとTSK−GEL G5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
[硬化触媒]
上記樹脂組成物は、更に硬化触媒を含む。硬化触媒は1種又は2種以上併せて用いることができる。
硬化触媒は、硬化反応や硬化性化合物(硬化性樹脂)の種類等に応じて適宜選択すればよい。硬化触媒としては、通常使用されるものでよく、例えば、熱硬化を行う場合は、熱潜在性カチオン硬化触媒、熱潜在性ラジカル硬化触媒、酸無水物系触媒、フェノール系触媒、アミン系触媒等を挙げることができる。中でも、生産性の面で硬化速度が速い熱潜在性カチオン硬化触媒又は熱潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好ましく、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることがより好ましい。また、活性エネルギー線照射による硬化を行う場合は、硬化触媒として光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、光潜在性カチオン硬化触媒、光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好ましく、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に光潜在性カチオン硬化触媒を用いることがより好ましい。
このように上記硬化触媒として特に好ましくは、カチオン硬化触媒である。なお、本明細書では、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等の、カチオン硬化反応を促進する触媒を「カチオン硬化触媒」とも称す。カチオン硬化触媒は、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒を少なくとも用いることが好適である。上記硬化触媒のうち熱潜在性カチオン硬化触媒は、硬化触媒として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂類等とは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことなく、また熱潜在性カチオン硬化触媒の作用として、硬化反応を充分に促進して優れた効果を発揮することができ、ハンドリング性により優れた一液性樹脂組成物を提供することができる。
また熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることによって、得られる樹脂組成物から形成される硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途により好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン硬化触媒を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制されることになる。耐湿性が向上することで、樹脂組成物中への吸湿が抑制され、紫外線照射又は熱線暴露の相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、硬化物の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮できる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、下記式(6):
(R1 a2 b3 c4 dZ)+m(AXn-m (6)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計は、Zの価数に等しい。カチオン(R1 a2 b3 c4 dZ)+mは、オニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
上記式(6)の陰イオン(AXn-mの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4 -)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6 -)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6 -)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6 -)等が挙げられる。一般式AX(OH)-で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4 -)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 -)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 -)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
上記光潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
上記光潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;アシルホスフィンオキサイド類;などを挙げることができる。
硬化触媒としてカチオン硬化触媒又はラジカル硬化触媒を使用する場合、その配合量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。後述する一般式(7)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を使用する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量である。)として、それぞれカチオン硬化性化合物の総量とラジカル硬化性化合物の総量との合計100質量部中、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記樹脂組成物を用いて得られる硬化物や積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化触媒としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸などを挙げることができる。
上記カチオン硬化触媒は、ホウ素化合物を含むことが好ましく、芳香族フッ素化合物を含むことがより好ましい。上記カチオン硬化触媒として特に好ましくは、下記一般式(7):
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる形態である。
これにより、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性により優れたものとなる。また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、硬化時、成膜時、製品使用時における熱の影響による樹脂組成物の着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。
なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
上記一般式(7)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であってもよい。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(7)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(「TPB」と称す)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、「TPB系触媒」とも称す。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を含む化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子又は硫黄原子が有する非共有電子対を、上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、上記ルイス塩基は、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
ここで、後述するように、本発明では120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物を含むことが好ましいため、上記ルイス塩基として120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物を用いることも好適である。すなわち120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物は、上記カチオン硬化触媒を形成する一部として、樹脂組成物中に含有されることも好適である。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)765、TINUVIN(登録商標)144、TINUVIN(登録商標)123、TINUVIN(登録商標)744、CHIMASSORB(登録商標)2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブ(登録商標)LA52、アデカスタブ(登録商標)LA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)765、アデカスタブ(登録商標)LA52、アデカスタブ(登録商標)LA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン;等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記一般式(7)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒において、ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。具体的には、当該カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。ここで、カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
上記カチオン硬化触媒において、これを含む樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が充分ではなくなる場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは0.99以上である。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
上記比n(b)/n(a)としてはまた、ルイス塩基が、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)である場合には、カチオン硬化特性の観点から、酸解離定数が高く、立体障害が大きいことから、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。例えばヒンダードアミンのような構造では、当該範囲が好ましい。
またルイス塩基が、120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物(特にアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミン)である場合、中でも特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
上記一般式(7)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒として具体的には、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH3錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH3錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。上記一般式(7)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を使用する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量である)として、樹脂組成物中に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100質量部中、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記樹脂組成物を用いて得られる積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
[硫黄含有化合物]
本発明で用いられる樹脂組成物には、硫黄含有化合物が含まれていてもよい。オキソカーボン系化合物と硬化触媒とを組み合わせた樹脂組成物に硫黄含有化合物を含有することで、接着性(特にガラス基板への密着性)を向上させることができる。
硫黄含有化合物は、大きく分けて、硫黄含有無機化合物又は硫黄含有有機化合物に分類される。
硫黄含有無機化合物としては、例えば、硫黄、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物、チオ炭酸塩、硫酸およびその塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化ホウ素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化砒素、金属硫化物、金属水硫化物等があげられる。
硫黄含有有機化合物としては、例えば、メルカプト基含有化合物、ベンゾチアゾール基含有化合物、スルフェンアミド基含有化合物、チオカルバモイル基含有化合物などが挙げられる。
硫黄含有化合物は、硫黄含有有機化合物であることが好ましい。
メルカプト基含有化合物としては、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
HS−R−Si(OR’)n(R”)3-n
Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基である。R’は、アルキル基、アセチル基、又はメトキシアルキル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。R”はアルキル基であり、好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。nは1以上3以下であり、好ましくは3である。
メルカプト基含有化合物についての詳細は後述する。
ベンゾチアゾール基含有化合物としては、例えば、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
スルフェンアミド基含有化合物としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
チオカルバモイル基含有化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のモノスルフィドやジスルフィドが挙げられる。
上記硫黄含有化合物は、メルカプト基含有化合物を含むことが好ましく、メルカプト基含有シランカップリング剤を含むことがより好ましい。メルカプト基含有シランカップリング剤を樹脂組成物に含有させることで、ガラス基板との密着性を向上させる効果や撥水作用により樹脂組成物中への水分の浸入を抑制する効果があり、その結果、耐熱性や耐湿熱性に優れる近赤外線カットフィルターを得ることができる。具体的には、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能となる。
また、オキソカーボン系化合物と硬化触媒とを含む樹脂組成物を用いた場合、可視光を吸収してしまうことがあるが、さらにメルカプト基を有するシランカップリング剤を含有することによって、可視光の吸収を妨げることができる。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、メルカプト基および有機基がケイ素原子に直結したもの、およびその部分加水分解縮合物が一般的に用いられる。上記シランカップリング剤を用いることにより、耐湿熱性をより一層向上することが可能になる。
すなわち、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、アルコキシ基を有するメルカプト基含有シランカップリング剤が好ましい。メルカプト基含有シランカップリング剤としては、メトキシ基を有するメルカプト基含有シランカップリング剤がさらに好ましい。また、メルカプト基含有シランカップリング剤は、鎖状(好ましくは環構造を有しない直鎖状)であることが好ましい。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができ、この中でも3−メルカプトプロピルトリメトキシシランは、入手し易く、樹脂組成物中での相溶性が高く、ガラス基板に対して高い接着性を発現するため好ましい。市販品としては、例えば、信越シリコーン社製KBM−802(3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン)、信越シリコーン社製KBM−803(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、東レ・ダウコーニング社製Z−6062(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、エボニックデグサ社製DYNASYLAN(登録商標)MTMO(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。メルカプト基含有シランカップリング剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、シランカップリング剤としては、メルカプト基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤を用いてもよい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、γ−(2,3−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
なお、シランカップリング剤の総量100質量%に占めるメルカプト基含有シランカップリング剤の含有量は、50〜100質量%であることが好適である。より好ましくは70〜100質量%であり、さらに好ましくは90〜100質量%であり、特に好ましくは100質量%である。
上記メルカプト基含有シランカップリング剤の配合割合としては、オキシラン環含有化合物100質量部に対して、0.1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以上20質量部以下であり、特に好ましくは7質量部以上18質量部以下であり、最も好ましくは10質量部以上15質量部以下である。メルカプト基含有シランカップリング剤の配合割合を上記範囲内とすることで耐熱性、密着性、及び光選択透過フィルター性能を高めることができる。
樹脂組成物におけるメルカプト基含有シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物(固形分)100質量%中、0.00001〜20質量%が好ましく、0.00001〜10質量%がより好ましく、0.00005〜5質量%が特に好ましい。
[表面調整剤]
本発明で用いられる樹脂組成物には、表面調整剤が含まれていてもよい。上記樹脂組成物に表面調整剤を含むことによって、硬化物製造後にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じることを抑制することができる。表面調整剤としては、特に限定されず、シロキサン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系レベリング剤などが挙げられるが、シロキサン系界面活性剤又はアクリル系レベリング剤であることが好ましく、シロキサン系界面活性剤であることがより好ましい。
シロキサン系界面活性剤とは、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する界面活性剤のことであり、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられるが、樹脂組成物中におけるオキソカーボン系化合物の分散性の観点から、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが含まれていることが好ましい。また、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンは、アルキレンオキサイド(より好ましくはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド)で構成されるポリエーテル鎖を含むことが好ましい。
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしては、下記式(8)で表されるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
(式中、R4は水素原子またはメチル基である。R5は炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。mは1〜30の整数、nは1〜30の整数である。Xは1〜50の整数である。Yは1〜50の整数である。)
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしては、公知の方法により製造することができ、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−330、BYK−331、BYK−337、BYK−344(以上、ビックケミー社製)、KF−618、KF−351、KF−352、KF−353、KF−6011、KF−6015(以上、信越化学工業社製)などが挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられる。
アクリル系レベリング剤としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、nーブチルアクリレート、nーブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタリレート等を単独で重合した重合体、または、2種類以上を共重合した共重合体を挙げることができる。また、アクリル系レベリング剤は、(メタ)アクリル酸及びアルコールから形成されたエステルのみを構成モノマーとする重合体であるのが好ましい。樹脂組成物にアクリル系レベリング剤を含むことによって、上記樹脂組成物を用いて得られる硬化物や積層体のレベリング性を向上させることができる。
アクリル系レベリング剤としては、公知の方法により製造することができ、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−381、BYK−392(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
[各種添加剤]
本発明で用いられる樹脂組成物には、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤以外の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
上記樹脂組成物が無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニアを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。上記樹脂組成物においては、樹脂組成物1cm3あたりに含まれる粒子径10μm以上の異物が1000個以下であることが好ましく、より好ましくは100個以下であり、更に好ましくは10個以下である。なお、上記樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
[溶媒]
本発明で用いられる樹脂組成物には、塗工操作を簡便に実施する観点から、溶媒を含有させることができる。
使用できる溶媒としては、樹脂成分の種類等に応じて適宜選択すればよいが、本発明では、溶媒として双極子モーメントが4D(Debye)以下の溶媒が好ましい。双極子モーメントが4D以下の溶媒をオキソカーボン系化合物と併用することにより、光や熱によるオキソカーボン系化合物の物性低下が充分に抑制され、安定に保存又は使用することができる。溶媒の双極子モーメントは、好ましくは3.5D以下、より好ましくは3D以下であり、特に好ましくは1.5D以下であり、最も好ましくは1D以下である。双極子モーメントの下限は特に限定されず、0D以上であることが好ましい。
上記双極子モーメントが4D以下の溶媒としては、例えば、以下の化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
メチルエチルケトン(2−ブタノンとも称す)(双極子モーメント:2.76D)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノンとも称す)(双極子モーメント:2.56D)、シクロペンタノン(双極子モーメント:3.3D)、シクロヘキサノン(双極子モーメント:3.01D)等のケトン類;
PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとも称す)(双極子モーメント:1.8D)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(双極子モーメント:2.08D)、エチレングリコールモノエチルエーテル(双極子モーメント:2.08D)、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(例えば、エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);
テトラヒドロフラン(双極子モーメント:1.70D)、ジオキサン(双極子モーメント:3.0D)、ジエチルエーテル(双極子モーメント:1.12D)、ジブチルエーテル(双極子モーメント:1.22D)等のエーテル類;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;
メチルセロソルブ(2−メトキシエタノールとも称す)(双極子モーメント:2.1D)等のアルコール類;
N,N−ジメチルアセトアミド(双極子モーメント:3.72D)等のアミド類;
トルエン(双極子モーメント:0.37D)、キシレン(双極子モーメント:1D以下)等の芳香族炭化水素類;
シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン(双極子モーメント:0D)、ヘプタン(双極子モーメント:0.0D)、リモネン(双極子モーメント:1D以下)等の脂肪族炭化水素類;
クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン(双極子モーメント:2.27D)等の含ハロゲン芳香族炭化水素類;等。
これらの中でも、環構造を含むケトン類(環状ケトンと称す);環構造を含むエーテル類(環状エーテルとも称す);鎖状構造のアルコール類(鎖状アルコールとも称す);グリコール誘導体のうち、鎖状構造のアセテート類(鎖状アセテートとも称す);芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;が好ましい。このように上記溶媒が、環状ケトン、環状エーテル、鎖状アルコール、鎖状アセテート、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、溶媒としては、芳香族炭化水素類を用いることが好ましく、トルエン(沸点110.6℃)を用いることがさらに好ましい。
上記双極子モーメントが4D以下の溶媒はまた、沸点が90℃以上であることが好ましい。例えば、上記組成物が更に樹脂を含む場合、上記沸点の溶媒を少なくとも含むことで、コーティング時等に揮発することが充分に抑制され、ムラ等の発生も抑制することができる。沸点は、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは110℃以上である。また、上限は特に限定されないが、例えば、250℃以下であることが好ましい。
本発明では、双極子モーメントが4D以下の溶媒の他、その他の溶媒を1種又は2種以上含んでもよいが、本発明の効果をより一層高める観点では、溶媒の総量(双極子モーメントが4D以下の溶媒とその他の溶媒との合計量)100質量%中、双極子モーメントが4D以下の溶媒を50質量%以上用いることが好ましい。より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
その他の溶媒は特に限定されないが、本発明で使用する溶媒総量100質量%中の水分含有量は、3質量%以下であることが好ましい。
上記組成物中、溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、樹脂総量(固形分)100質量部に対し、溶媒の総量(双極子モーメントが4D以下の溶媒とその他の溶媒との合計量)を10〜4000質量部とすることが好ましい。より好ましくは300〜3000質量部であり、更に好ましくは500〜2000質量部である。
特に、溶媒としてアミド類を単独又は他の溶媒と併用して用いる場合には、アミド類が上記オキソカーボン系化合物を分解する虞があるため、アミド類の使用量は少ない方が好ましく、特に好ましいのはアミド類を含まないことである。具体的には、アミド類の使用量は、樹脂組成物(溶媒を含む全量)100質量%中、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である(すなわち、アミド類を含まない)。
[樹脂成形体]
前記樹脂組成物は、成形体、成形部品のコーティング、樹脂フィルム、もしくは板状に成形された面状成形体といった樹脂成形体を製造するのに有用である。この成形体は、本発明で用いられる樹脂組成物を射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形、溶媒キャスト法などの公知の方法で所定の形状に成形することにより得られる。樹脂成形体を製造する製造方法としては、樹脂組成物を160〜230℃(好ましくは180〜220℃)の温度で加熱する加熱工程を含むことが好ましい。上記温度の範囲内で樹脂組成物を加熱することにより、可視光領域の光の透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、高い選択的透過性を有する樹脂成形体とすることができる。なお、前記「面状成形体」には、支持体上に形成された膜状の本発明の樹脂組成物成形物(樹脂成形体、樹脂フィルムなど)と支持体とが一体となったもの(以下、積層体という)も包含される。
本発明の樹脂成形体の波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%以下(好ましくは1.7%以下、より好ましくは1.6%以下、さらに好ましくは1.4%以下、最も好ましくは1.2%以下)である必要がある。波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度に比べて小さくなればなるほど、可視光領域の光の透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、高い選択的透過性を有するといえる。一方、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%を上回ると、選択的透過性が十分に発揮されないおそれがある。下限については特に限定されるものではなく、好ましくは0%以上であるが、例えば、0.1%以上であってもよく、0.3%以上であってもよく、0.6%以上であってもよい。
本発明の樹脂成形体の波長500nmにおける分光光線の透過率が、89%以上(好ましくは89.5%以上、より好ましくは90%以上)であることが好ましい。上限については特に限定されるものではなく、好ましくは100%以下であるが、例えば、92%以下であってもよく、91%以下であってもよく、90.6%以下であってもよい。波長500nmにおける分光光線の透過率が89%未満であると、青系の光の透過が不十分であり、樹脂成形体を透過した光の色味が変わってしまうおそれがある。
本発明の樹脂成形体の波長700nmにおける分光光線の透過率は、例えば、25%以下(好ましくは21%以下、より好ましくは15%以下)であることが好ましい。波長700nmにおける分光光線の透過率が25%を超えると十分に赤色波長を吸収できておらず、選択的透過性が十分に発揮されないおそれがある。下限については特に限定されるものではなく、好ましくは0%以上であるが、例えば、1%以上であってもよく、5%以上であってもよく、10.5%以上であってもよい。
透過率が50%となる波長は620nm〜680nmであることが好ましく、630nm〜670nmであることがより好ましい。透過率が50%となる波長が620nm未満であると、可視光の透過が不十分であるおそれがあり、680nmを超えると十分に赤色波長を吸収できておらず、選択的透過性が十分に発揮されないおそれがある。なお、本明細書における「透過率が50%となる波長」とは、波長が500nm以上800nm以下で透過率が50%となる波長である。透過率の測定方法及び吸光度の計算方法については後述する。
特に好ましい樹脂成形体は、面状成形体であり、より好ましくは積層体である。本発明の積層体は、本発明で用いられる樹脂組成物から形成された樹脂層または樹脂フィルムを有することが好ましい。この積層体は、好ましくは、支持体と、前記支持体の片面又は両面に設けられた樹脂層とを備えた積層体であって、前記樹脂層は、前記樹脂成形体からなる層又は前記樹脂フィルムである。この様な積層体は、例えば、塗料化した樹脂組成物を支持体上にスピンコート法や溶媒キャスト法により塗布し、乾燥又は硬化させることにより形成する方法や、支持体に対して樹脂組成物から形成された樹脂フィルムを熱圧着することにより形成する方法のほか、練込法等により製造できる。積層体を製造する製造方法としては、樹脂組成物を前記支持体に他の層を介して又は介さずに塗布する塗布工程と、樹脂組成物を160〜230℃(好ましくは180〜220℃)の温度で加熱する加熱工程を含むことが好ましい。一般的に色素を含む樹脂組成物を高温で加熱すると、色素の変色、劣化が生じてしまい、可視光の透過が不十分であったり、赤色波長を十分に吸収できなくなってしまう。しかし、本発明に用いられる樹脂組成物を上記温度の範囲内で加熱すると、色素の変色、劣化を抑制することができ、その結果、可視光領域の光の透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、高い選択的透過性を有する積層体とすることができる。樹脂組成物により形成される樹脂層の膜厚は特に限定されないが、例えば0.5μm以上、15μm以下であることが好適であり、より好ましくは1μm以上、10μm以下である。支持体としては、樹脂板、フィルム、ガラス基板といった基板等を用いることができるが、好ましくはガラス基板又はフィルムであり、より好ましくはガラス基板である。支持体フィルムは、例えば、好適な樹脂成分として上述した樹脂で形成されたものが好ましい。また、上記以外の形態として、本発明で用いられる樹脂組成物から形成される単層の樹脂フィルム(すなわち、単層の樹脂フィルムが本発明の樹脂成形体である)も好ましい形態である。樹脂組成物により形成される単層の樹脂フィルム(面状成形体)の膜厚は特に限定されないが、例えば30μm以上、200μm以下であることが好適であり、より好ましくは50μm以上、150μm以下である。このような積層体は、光学フィルターとして用いることができ、例えば、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で好ましく使用できる。また、上記積層体を1又は2以上含む撮像素子として用いてもよい。
前記光学フィルターは、特定のオキソカーボン系化合物を含んでいるため、赤色波長(波長700nm近傍)での光吸収特性が高いことに加えて、可視光領域(特に波長500nm近傍)の透過率が高いことがその特徴として挙げられる。光学フィルターとして十分な性能を発揮するためには、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%以下(好ましくは1.7%以下、より好ましくは1.6%以下、さらに好ましくは1.4%以下、最も好ましくは1.2%以下)であることが好ましい。波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度に比べて小さくなればなるほど、可視光領域の光の透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、高い選択的透過性を有するといえる。一方、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%を上回ると、選択的透過性が十分に発揮されないおそれがある。下限については特に限定されるものではなく、好ましくは0%以上であるが、例えば、0.1%以上であってもよく、0.3%以上であってもよく、0.6%以上であってもよい。
光学フィルターの波長500nmにおける分光光線の透過率が、89%以上(好ましくは89.5%以上、より好ましくは90%以上)であることが好ましい。上限については特に限定されるものではなく、好ましくは100%以下であるが、例えば、92%以下であってもよく、91%以下であってもよく、90.6%以下であってもよい。波長500nmにおける分光光線の透過率が89%未満であると、青系の光の透過が不十分であり、フィルターを透過した光の色味が変わってしまうおそれがある。
また、光学フィルターの波長700nmにおける分光光線の透過率は、例えば、25%以下(好ましくは21%以下、より好ましくは15%以下)であることが好ましい。下限については特に限定されるものではなく、好ましくは0%以上であるが、例えば、1%以上であってもよく、5%以上であってもよく、10.5%以上であってもよい。
透過率が50%となる波長は620nm〜680nmであることが好ましく、630nm〜670nmであることがより好ましい。透過率が50%となる波長が620nm未満であると、青系の光の透過が不十分であるおそれがあり、680nmを超えると十分に赤色波長を吸収できておらず、選択的透過性が十分に発揮されないおそれがある。
さらに、本発明の積層体は、透過光や反射光の角度依存性を低減することができるため、明るさや色合いの変化が少ない視感度補正用途に適した近赤外線カットフィルターを得ることができる。
樹脂成形体や積層体の製造方法を上述したが、本発明で用いられる樹脂組成物は、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥時・熱硬化時に酸素が存在すると、オキソカーボン系化合物の構造変化、分解物の発生による吸光特性の変化、可視光透過率の低下などの理由により、樹脂組成物の耐久性が低下するおそれがある。そのため、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥工程・熱硬化工程時には酸素濃度が低い方が好ましく、具体的には、10体積%以下が好ましい。通常の空気中の酸素濃度は約20体積%であるが、10体積%以下の雰囲気下で保存又は使用することで、光や熱によるオキソカーボン系化合物の物性低下がより一層抑制され得る。特に上記加熱工程における酸素濃度は10体積%以下であることが好ましい。酸素濃度は、より好ましくは3体積%以下、さらに好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。なお、酸素濃度は、酸素濃度計(例えば、新コスモス電機社製コスモテクター(登録商標)XPO−318)にて測定することができる。また、上記加熱工程における加熱時間は5分以上180分以下であることが好ましく、より好ましくは30分以上90分以下である。
酸素濃度を上述した範囲にする手段は特に限定されないが、例えば、系中の酸素を不活性ガスと置換して、不活性ガス雰囲気下にて硬化を行うことが好適である。不活性ガスは特に限定されず、例えば、窒素の他、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスが挙げられる。中でも、アルゴン、窒素が好ましく、特に窒素が好ましい。また、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの雰囲気下でもよい。
[その他]
本発明のフィルターの一例には、支持体と、該支持体の片面または両面に設けられた樹脂層とを備えているが、支持体と樹脂層との間に下地層が設けられていてもよい。下地層は、支持体の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、下地層は、単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
下地層は、シランカップリング剤を含有する組成物から形成されたものであることが好ましい。シランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、及びメルカプト基含有シランカップリング剤よりなる群から選択される1種以上であることが好ましく、より好ましくはエポキシ基含有シランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤を、下地層用組成物に含有させることで、支持体との密着性を向上させる効果や撥水作用により下地層中への水分の浸入を抑制する効果があり、その結果、耐熱性や耐湿熱性に優れるフィルターを得ることができる。具体的には、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能となる。シランカップリング剤は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤は、公知の方法により製造することができ、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製KBM−303(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、KBM−402(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−402(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)などが挙げられる。
下地層用組成物の調製方法は特に限定されず、シランカップリング剤に液媒体及び触媒を加えて、通常の方法で混合することにより得ることができる。液媒体は、水、アルコール等であればよく、1種又は2種以上を使用することができる。また、触媒は、有機酸または無機酸のいずれであってもよい。
下地層の形成方法としては、公知の方法を用いることができるが、下地層用組成物(アンダーコート液)を支持体上に塗布して加熱乾燥することにより形成する方法が好適である。
支持体がガラス基板である場合、接着性向上の観点から、下地層は、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、及びメルカプト基含有シランカップリング剤よりなる群から選択される1種以上を含有する下地層用組成物から形成されたものであることが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する組成物から形成されたものである場合、第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。第一級アミノ基を有するシランカップリング剤を含む下地層用組成物を用いると、ガラス基板との接着性が第一級アミノ基以外のアミノ基を有するシランカップリング剤を含む場合に比べ非常に良好となる。また、液媒体は、水、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。液媒体を加えることによって、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基含有シランカップリング剤においてアルコキシ基が加水分解してシラノール基が生成し、このシラノール基がガラス基板表面にある水酸基との水素結合を介してガラス基板表面に移行する。そして、シラノール基の脱水縮合反応を経てガラス基板表面と強固な共有結合を生成することによって、ガラス基板と下地層との密着性が向上する。また、触媒は、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基含有シランカップリング剤の加水分解反応時に触媒として作用するものであればよく、有機酸または無機酸のいずれであってもよいが、ギ酸を用いるのが好ましい。
本発明の光学フィルターは、本発明で用いられる樹脂組成物を用いて形成された樹脂層または樹脂フィルムの他に、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性及び/又は防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、上記以外の機能を有する層を積層してもよく、透明基板、ガラス基板、フィルター等を積層してもよい。
本発明の光学フィルターは、紫外線を反射する紫外線反射膜及び/又は近赤外線を反射する近赤外線反射膜(以下、まとめて「不可視光反射膜」という)を備えることが好ましい。このような不可視光反射膜としては、アルミニウム蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜等を用いることができる。不可視光反射膜は、樹脂層または支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい紫外線カットフィルターや近赤外線カットフィルターを得ることができる。また、近赤外線反射膜を積層した場合には、より確実に近赤外線をカットすることのできる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
不可視光反射膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を用いるのが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
本発明の光学フィルターは、反射防止膜を備えることが好ましい。反射防止膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を用いるのが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
前記不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜は、空気層(外気側)から樹脂層へと酸素が透過しない(酸素を遮断できる)積層膜であることが好ましい。前述したように酸素濃度が低くなるほど、オキソカーボン系化合物の耐久性が向上するため、酸素遮断能が高い不可視光反射膜や反射防止膜を積層することが好ましい。酸素遮断能を高くするには、積層膜の少なくとも1層を緻密な膜とする(より好ましくは全ての層を緻密な膜とする)ことが好ましく、積層膜の少なくとも1層の厚みを厚くする(より好ましくは全ての層の厚みを厚くする)ことが好ましく、両者を併用することも好ましい。緻密な膜を作製する方法としては、公知の技術を用いればよく、例えば、蒸着時の真空度を高真空にする、蒸着温度を高くする、イオンアシスト法(IAD)による蒸着を行う等が挙げられるが、上記以外の方法を用いて緻密な膜を作製してもよい。具体的には、真空度は5×10-2Pa以下の数値で蒸着することが好ましく、蒸着温度は80℃以上300℃以下が好ましい。また、IAD法による蒸着では、アシスト加速電圧が500V以上1200V以下、アシスト加速電流が500mA以上1200mA以下であることが好ましい。蒸着温度が高すぎると樹脂層の温度が樹脂層で用いられる樹脂のTg以上となるため、蒸着することによって樹脂層が劣化してしまう恐れがあり、蒸着温度が低すぎると蒸着膜(不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜)が緻密な膜にならないおそれがある。また、IAD法による蒸着を行う場合、蒸着温度と同様、弱すぎるアシスト電圧・アシスト電流だと、蒸着膜(不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜)が緻密な膜(充填密度が高い膜)にならないおそれが有り、強すぎるアシスト電圧・アシスト電流だと、樹脂層を劣化させてしまうおそれが有る。各種条件を最適化することで酸素遮断能が高い緻密な膜を作製し、且つ樹脂層を劣化させない、あるいは劣化を小さくすることが好ましい。
本発明の光学フィルターに、酸素遮断能が高い不可視光反射膜、反射防止膜、又はその他の層を積層することで、本発明のオキソカーボン系化合物の耐久性を飛躍的に向上させ、耐久性、光学特性に優れた光学フィルター、近赤外線カットフィルターを得ることができる。
本発明の光学フィルターに、不可視光反射膜、反射防止膜、又はその他の層を必要に応じて積層させることで、可視光カットフィルター、赤外線カットフィルター、近赤外線カットフィルター、セキュリティーフィルター、熱線遮断・熱線吸収フィルター、バンドパスフィルター、(デイ&ナイト)監視カメラ用フィルター、暗視カメラ用フィルター、デュアルバンドフィルター、可視光イメージセンサ・赤外線センサ用フィルター、ネオン光・蛍光等のセンサに不具合をきたす光のカットフィルターとして好適に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下では、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を示すものとする。
(化学構造の解析方法)
得られた化合物約1mgをガラス棒に塗布して付着させ、直接イオン化ユニット(DART)(島津製作所社製「DART−OS」、ヒーター温度500℃)にてイオン化し、質量分析計(島津製作所社製「LCMS−2020」、M/Z=50−2000、ポジティブ,ネガティブ同時スキャン)により、得られた化合物のMSスペクトルを測定した。
(透過率の測定方法)
分光光度計(島津製作所社製UV−1800)を用いて、樹脂層積層基板の吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定ピッチ1nmで測定し、波長500nm、及び波長700nmにおける光の透過率を求めた。また、波長500nm以上で、透過率が50%となる波長を求めた。
(吸光度の測定)
波長500nmにおける吸光度及び波長700nmにおける吸光度をそれぞれ以下の式を用いて求めた。なお、ガラス基板を透過する光の透過率をP、ガラス基板に樹脂層が積層された樹脂層積層基板を透過する光の透過率をQとし、実施例で用いるガラス基板を透過する波長500nmの光の透過率を92%(0.92)とし、実施例で用いるガラス基板を透過する波長700nmの光の透過率を92%(0.92)とした。
吸光度=−log10(Q/P)
波長500nmにおける吸光度(A500)、波長700nmにおける吸光度(A700)、及び波長700nmにおける吸光度(A700)に対する波長500nmにおける吸光度(A500)の比(A500/A700)を求めた。
[スクアリリウム化合物Aの作製方法]
実施例において使用したスクアリリウム化合物Aの構造式を以下に示す。以下に記載のスクアリリウム化合物は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法、すなわち明細書中に挙げた論文に記載された合成方法によって作製したものである。なお、以下に記載のスクアリリウム化合物Aについては上記方法で分析し、以下に示す構造を有することを確認した。
[カチオン硬化触媒Cの作製方法]
調製例1(TPB含有粉末Bの合成)
国際公開第1997/031924号公報に記載された合成法にしたがって、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%の安藤パラケミー社製アイソパー(登録商標)E溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末B)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMRの測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl3)ppm(標準物質:CFCl3 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
調製例2(カチオン硬化触媒Cの調製)
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、トルエンを1.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.6g添加し、室温で60分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Cとした。
(製造例1)
樹脂としてダイセル社製EHPE3150(脂環式エポキシ樹脂)100部、溶媒として和光純薬工業社製のトルエン250部、オキソカーボン系化合物として上記スクアリリウム化合物A(吸収最大波長730nm)6部、及び表面調整剤としてビックケミー社製BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)0.3部を80℃にて均一に混合した。その後、40℃に降温し、硬化触媒として上記カチオン硬化触媒C2.5部を均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過して樹脂層用組成物溶液を得た。
この樹脂層用組成物溶液を5cm角のガラス基板上に1cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)を用い、0.5秒間かけて1000回転にし、20秒間その回転数で保持し、その後3秒間かけて0回転(rpm)になるようにして樹脂層を成膜した。樹脂層を成膜したガラス基板を、イナートオーブン(ヤマト科学社製DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で150℃に昇温し、150℃で60分間乾燥(窒素雰囲気下)し、樹脂層を備えたガラス基板(以下、樹脂層積層基板という)を得た。上記乾燥中(加熱工程)における酸素濃度は0.01体積%であった。また、乾燥後の樹脂層の膜厚は2μmであった。なお、乾燥後の樹脂層の膜厚は、樹脂層積層基板の厚さ及びガラス基板の厚さをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差を乾燥後の樹脂層の膜厚とした。樹脂層積層基板の構成、波長500nmの透過率、波長700nmの透過率、透過率が50%となる波長、吸光度A500、A700、及びA500/A700を以下の表1にまとめた。
(製造例2〜6)
昇温温度を表1に記載の温度へと変更し、乾燥時間を表1に記載の時間へと変更したこと以外、製造例1と同様にして、樹脂層積層基板を作製した。樹脂層積層基板の構成、波長500nmの透過率、波長700nmの透過率、透過率が50%となる波長、吸光度A500、A700、及びA500/A700の結果を以下の表1にまとめた。
(参考例)
製造例1と同様にガラス基板上に樹脂層を成膜した。ただし、製造例1とは異なり、窒素置換や昇温などの成膜より後の工程については一切行わず、ガラス基板上に樹脂層を成膜したものをそのまま樹脂層積層基板とした。樹脂層積層基板の構成、波長500nmの透過率、波長700nmの透過率、透過率が50%となる波長、吸光度A500、A700、及びA500/A700を以下の表1にまとめた。

Claims (17)

  1. オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成された樹脂成形体であって、波長500nmにおける吸光度が波長700nmにおける吸光度の1.8%以下であることを特徴とする樹脂成形体。
  2. 波長500nmにおける分光光線の透過率が89%以上である請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 波長700nmにおける分光光線の透過率が25%以下である請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記樹脂組成物にはさらにオキシラン環含有樹脂が含まれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  5. 前記硬化触媒はカチオン硬化触媒を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  6. 前記樹脂組成物にはさらにシロキサン系界面活性剤が含まれている請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂成形体であることを特徴とする樹脂フィルム。
  8. 支持体と、前記支持体の片面又は両面に設けられた樹脂層とを備えた積層体であって、前記樹脂層は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂成形体からなる層又は請求項7に記載の樹脂フィルムであることを特徴とする積層体。
  9. 前記支持体と前記樹脂層との間に下地層を備えた請求項8に記載の積層体。
  10. 前記下地層を形成する組成物にはシランカップリング剤が含まれている請求項9に記載の積層体。
  11. 請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層体を含むことを特徴とする撮像素子。
  12. オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物を160〜230℃の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
  13. 前記加熱工程における酸素濃度が10体積%以下である請求項12に記載の樹脂成形体の製造方法。
  14. 前記加熱工程における加熱時間は5分以上180分以下である請求項12又は13に記載の樹脂成形体の製造方法。
  15. 支持体の上方に樹脂層を備える積層体の製造方法であって、
    前記樹脂層は、オキソカーボン系化合物、硬化触媒、及び樹脂を含む樹脂組成物から形成されており、
    前記樹脂組成物を前記支持体に他の層を介して又は介さずに塗布する塗布工程と、
    前記樹脂組成物を160〜230℃の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  16. 前記加熱工程における酸素濃度が10体積%以下である請求項15に記載の積層体の製造方法。
  17. 前記加熱工程における加熱時間は5分以上180分以下である請求項15又は16に記載の積層体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019031638A (ja) * 2017-08-09 2019-02-28 株式会社日本触媒 樹脂組成物
TWI774846B (zh) * 2017-09-28 2022-08-21 日商富士軟片股份有限公司 組成物、膜、濾光器、固體攝像元件及紅外線感測器

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