JP5671969B2 - リチウムチタン化合物粒子及びその製造方法、非水電解液二次電池用電極材、ならびに非水電解液二次電池 - Google Patents

リチウムチタン化合物粒子及びその製造方法、非水電解液二次電池用電極材、ならびに非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムチタン化合物粒子及びその製造方法、非水電解液二次電池用電極材、ならびに非水電解液二次電池に関する。
近年多く用いられるようになったリチウム一次電池、リチウム二次電池等の蓄電デバイスにおいては、リチウムイオンが移動することにより充放電が行われる。
現在、リチウム二次電池用の正極活物質としては数多くのものが存在するが、最も一般的に知られているのは、4V(vs.Li/Li)付近で作動するコバルト酸リチウム(LiCoO)や、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、又はスピネル構造を持つマンガン酸リチウム(LiMn)等を基本構成とするリチウム含有遷移金属酸化物である。これらは充放電特性とエネルギー密度に優れることから正極活物質として広く採用されている。
一方、負極活物質としては、ハードカーボン、ソフトカーボン、及び黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。また、電解液にはLiPFを環状及び鎖状カーボネートに溶解したものが用いられている。
しかしながら、今後大きな需要が見込まれるHEV(Hybrid Electric Vehicle;ハイブリッドカー)への搭載を考えた場合、現在の小型リチウムイオン二次電池の仕様ではHEV用途で要求される安全性及び入出力特性を満足することができない。
チタン酸化物系活物質は、対極にリチウム金属を使用した場合、約1〜2V程度の電圧を示すことから、リチウムイオン電池の負極用材料として、様々な結晶構造、或いは粒子形状を有する材料について、電極活物質としての可能性が検討されている。中でもLi4+xTi12(0≦x≦3)で表されるスピネル型チタン酸リチウムは、リチウム基準で1.5Vの電圧を有し、さらに充放電に伴う結晶構造の変化はほとんど見られないことから、安全性、寿命に優れた電極材料として着目されている。
例えば、X線回折パターン結晶子サイズが70〜80nmであり、結晶性の高いチタン酸リチウムLi4+xTi12(0≦x≦3)を用いて作製したリチウムイオン電池は、高い初期放電容量を示すことが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
また、チタン酸リチウムを酸処理して得られるチタン酸水素リチウムHy−xTi(但し、y≧x>0、0.8≦y≦2.7、1.3≦z≦2.2)が、チタン酸リチウムLi4+xTi12(0≦x≦3)の理論容量175mAh/gを超える高い充電容量を示すことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−240498号公報 WO99/03784号パンフレット
チタン酸リチウムLi4+xTi12(0≦x≦3)の理論容量は175mAh/gであり、黒鉛の理論容量372mAh/gと比較して低く、さらに作動電位も黒鉛に対して約1.5V高いため、チタン酸リチウムを負極に用いた電池は、黒鉛を負極に用いた電池よりも、エネルギー密度が低いことが課題であった。また特許文献2に記載のチタン酸リチウムを酸処理して得られるチタン酸水素リチウムは理論容量を超える容量を示すものの、初回充放電サイクルにおける不可逆容量が大きく、初回充放電効率が低い場合があった。
本発明は、非水電解液二次電池の電極を構成した場合に、チタン酸リチウムLi4+xTi12(0≦x≦3)を超える充放電容量を示し、初回充放電効率が高いリチウムチタン化合物粒子およびその製造方法、ならびにそれを用いた非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題を解決する為に鋭意検討を行った結果、特定のリチウム吸蔵容量特性を示すリチウムチタン化合物粒子を電極材として用いることで、初回充放電効率と大きな放電容量を両立できることを見出した。
本発明の第1の態様は、リチウムを吸蔵するリチウムチタン化合物粒子であり、前記リチウムチタン化合物を含む電極を作用極に、金属リチウムを対極に用いた電池としたときに、前記金属リチウムの電位を基準として、1.2V以上1.6V未満の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Bに対する、1.6V以上2.0V以下の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Aの容量比A/Bが、0.25〜1.3となるリチウムチタン化合物粒子である。
前記リチウムチタン化合物粒子は、CuKα線によるX線回折法において、スピネル型チタン酸リチウムに対応するメインピーク強度を100とした場合に、アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピーク強度が1〜100であって、前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークの半価幅が0.25以上であることが好ましい。
また前記リチウムチタン化合物粒子は、平均二次粒子径が1〜30μmであることが好ましい。
本発明の第2の態様は、スピネル型チタン酸リチウム粒子を、酸性化合物と接触させる酸処理工程と、前記酸処理工程後に140℃以上の熱処理する熱処理工程とを含む前記リチウムチタン化合物粒子の製造方法である。
本発明の第3の態様は、リチウムチタン化合物粒子を含む、非水電解液二次電池用電極材である。
本発明の第4の態様は、前記リチウムチタン化合物粒子を含む正極と、金属リチウム、リチウム合金、またはリチウムイオンをドープ・脱ドープし得る物質を含む負極と、非水系電解液とを備える非水電解液二次電池である。
本発明の第5の態様は、前記リチウムチタン化合物粒子を含む負極と、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極と、非水系電解液とを備える非水電解液二次電池である。
本発明によれば、非水電解液二次電池の電極を構成した場合に、チタン酸リチウムLi4+xTi12(0≦x≦3)を超える放電容量を示し、初回充放電効率が高いリチウムチタン化合物粒子およびその製造方法、ならびにそれを用いた非水電解液二次電池を提供することができる。
本発明の実施例1にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明の実施例1にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。 本発明の実施例2にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明の実施例2にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。 本発明の実施例3にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明の実施例3にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。 本発明における比較例1にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明における比較例1にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。 本発明における比較例2にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明における比較例2にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。 本発明における比較例3にかかるリチウムチタン化合物粒子のX線回折パターンの一例である。 本発明における比較例3にかかるリチウムチタン化合物粒子を用いて構成したリチウム電池の初回充放電曲線の一例である。
本発明リチウムチタン化合物粒子は、対極に金属リチウムを有する電池において、前記金属リチウムの電位を基準として、1.2V以上1.6V未満の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Bに対する、1.6V以上2.0V以下の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Aの比率A/Bが、0.25〜1.3となる作用極を構成しうる。
かかる特定のリチウム吸蔵容量特性を示すことで、充放電容量および初回充放電効率に優れる。
また前記リチウムチタン化合物粒子はリチウムイオン電池の正極活物質および負極活物質のいずれにも使用可能である。
前記リチウムチタン化合物粒子は、少なくとも二種以上のリチウム吸蔵サイトを有し、そのリチウム吸蔵容量特性が、対極に金属リチウム、作用極に前記リチウムチタン化合物粒子を含む電極を用いた電池において、対極の金属リチウム基準で、1.6V以上2.0V以下の電位範囲での作用極におけるリチウム吸蔵容量Aと、1.2V以上1.6V未満の電位範囲での作用極におけるリチウム吸蔵容量Bとをそれぞれ算出した場合の容量比A/Bで規定される。
本発明において前記容量比A/Bは、0.25〜1.3であるが、0.3〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.3であることがより好ましい。溶量比A/Bが0.25未満であると、初回充放電効率が低下する場合がある。一方、1.3を超えると充放電容量の増加効果が十分に得られない場合がある。
作用極における前記リチウムチタン化合物粒子のリチウム吸蔵容量は、例えば、正極に前記リチウムチタン化合物粒子を含む電極、負極に金属リチウムを用いた電池を構成し、開回路電圧から1.2Vまで放電した場合の充電容量を、電極に含まれるリチウムチタン化合物粒子の質量当たりに換算することで測定することができる。
本発明においては、電位が2.0Vから1.6Vになるまでの範囲における充電容量と、1.6Vから1.2Vになるまでの範囲における充電容量とをそれぞれ測定することで、1.6V以上2.0V以下の電位範囲におけるリチウム吸蔵容量Aと、1.2V以上1.6V未満の電位範囲におけるリチウム吸蔵容量Bとを評価することができる。
また前記リチウムチタン化合物粒子における前記容量比を前記範囲とする方法としてはチタン酸リチウムを酸処理した後、140℃以上で熱処理する方法等を挙げることができる。
前記リチウムチタン化合物粒子は、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、スピネル型チタン酸リチウムに対応するメインピークのピーク強度を100とした時に、アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークのピーク強度が1以上100以下であって、前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークの半価幅が0.25以上であることが好ましく、前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークのピーク強度が1以上80以下であって、前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークの半価幅が0.30以上1.0以下であることがより好ましい。
前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークのピーク強度が100以下であることで、高電流密度での充電特性及び放電特性、すなわち入出力特性がより向上する傾向にある。また前記半価幅が0.25以上であると、初回充放電効率及び入出力特性が向上する傾向にある。
X線回折スペクトルは、通常用いられるX回折スペクトル測定装置を用いて、CuKα線を線源として常法により測定することができる。X回折スペクトル測定装置としては、例えば、粉末X線回折装置((株)リガク製)等を挙げることができる。
前記リチウムチタン化合物粒子のX線回折スペクトルにおいて、アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークのピーク強度を前記範囲とする方法としては、例えば、酸処理後の熱処理を140℃〜500℃で行う方法等を挙げることができる。
前記リチウムチタン化合物粒子の平均二次粒子径は特に制限されないが、1μm〜30μmであることが好ましく、3μm〜25μmであることがより好ましく、4μm〜15μmであることがさらに好ましい。
1μm以上であることで、電極活物質として使用した際、電極活物質のハンドリング特性が向上する傾向にある。一方、30μm以下であることで電池の出力特性がより向上する傾向にある。
前記リチウムチタン化合物粒子の平均二次粒子径を前記範囲とする方法としては、後述するチタン酸リチウム粒子の平均二次粒子径を所望の範囲とする方法が挙げられる。チタン酸リチウム粒子の平均二次粒子径については後述する。
前記リチウムチタン化合物粒子は、例えば、後述する製造方法で製造されるチタン酸リチウム粒子(好ましくは、スピネル型チタン酸リチウム)を原料として用い、該チタン酸リチウム粒子を酸性化合物と接触させる酸処理工程と、酸処理工程後に140℃以上で熱処理する熱処理工程とを含む製造方法で製造することができる。
チタン酸リチウム粒子を酸性化合物と接触させることで、チタン酸リチウム粒子中のチタン酸リチウムの少なくとも一部をチタン酸水素リチウムに変換することができ、充電容量が増加する。また140℃以上で熱処理することでリチウムの吸蔵特性を所望の特性値に制御することができ、初回充電効率が向上する。
さらに本発明においては、熱処理前に水系溶媒(好ましくは、水)で洗浄することが好ましい。
前記酸性化合物としては特に制限はない。例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸等の有機酸等を用いることができる。これらのなかでも、充放電容量の観点から、酢酸、塩酸、硝酸が好ましい。
チタン酸リチウム粒子と酸性化合物を接触させる方法としては、例えば、チタン酸リチウム粒子を水、アルコール等の溶媒に懸濁させ、ここに酸性化合物を添加する方法を挙げることができる。
添加後の酸性化合物の濃度は、酸性化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、0.1〜50質量%とすることができ、1〜30質量%であることが好ましい。
また前記酸性化合物を接触させる時間は特に制限されない。例えば10分〜24時間とすることができる、
さらに酸性化合物と接触させるときの温度についても特に制限されない。例えば、0℃〜80℃とすることができ、0℃〜50℃であることが好ましい。80℃以下であることで不純物相の生成が抑制され、電池特性がより向上する傾向にある。
本発明においては、チタン酸リチウム粒子と酸性化合物とを接触させた後、加熱処理前に水系媒体(好ましくは、水)で洗浄することが好ましい。
熱処理前に水系溶媒で洗浄を行なう場合、その洗浄条件、洗浄方法については特に制限されない。例えば、洗浄後の洗浄液のpHが5以上となるように洗浄することが好ましく、洗浄後の洗浄液のpHが5以上10以下となるように洗浄することがより好ましい。
また洗浄方法としては例えば、浸漬、掛け洗い等、通常行なわれる方法を適宜選択することができる。
前記熱処理温度は140℃以上であることが好ましいが、140℃〜800℃であることがより好ましく、200〜600℃であることがより好ましく、250〜500℃であることがさらに好ましい。
熱処理の温度が140℃以上であることで、初回充放電効率をより効果的に向上させることができる。一方800℃以下であることで、得られるリチウムチタン化合物粒子に含まれるアナターゼ型酸化チタンの割合が多くなりすぎることを抑制し、入出力特性が効果的に向上する傾向にある。
熱処理の雰囲気としては特に制限はなく、空気中等の酸素が存在する雰囲気、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中のいずれでもよい。
また熱処理時間は、加熱温度に応じて適宜選択できる。例えば0.1〜10時間とすることができ、品質安定の観点から、1〜5時間であることが好ましい。
(チタン酸リチウム粒子)
前記リチウムチタン化合物粒子の原料となるチタン酸リチウムおよびチタン酸リチウム粒子は、以下のようにして製造することができる。
チタン酸リチウムは、例えば、酸化チタン及びリチウム化合物を含む原料を溶媒中で均一に混合して混合物を得る工程、該混合物を乾燥する工程及び熱処理する工程により製造できる。前記溶媒としては水や有機溶媒を用いることができ、取り扱い性の簡便性から水およびアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記リチウム化合物は、塩、酸化物、水酸化物のいずれでもよい。例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酸化リチウム、蓚酸リチウム、酢酸リチウム、フッ化リチウムが挙げられ、これらから選択される1種または2種以上が使用されるが、これらに限定されるものではない。
原料として用いるこれらのリチウム化合物は高純度のものが好ましく、通常純度99.0質量%以上が良い。たとえば、炭酸リチウムを原料に用いる場合には、LiCOが99.0質量%以上、好ましくは99.5質量%以上である。
また、水分については十分除去したものが望ましく、その含有量は1質量%以下にすることが望ましい。さらに平均粒径は特に制限されないが、0.01μm〜100μmが望ましい。100μm以上の大きな平均粒径のリチウム化合物を原料として用いる場合、あらかじめ粉砕してから使用してもよく、また酸化チタンと混合する際に、粉砕処理を同時に行ってもよい。
原料としての前記酸化チタンの結晶相は特に制限されず、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型のいずれであってもよく、また、非晶質であってもよい。製造コストの観点から、アナターゼ型及びルチル型の少なくとも一方を用いることが好ましい。
また酸化チタンの代わりに、オルトチタン酸、メタチタン酸などの含水酸化チタンを用いてもよい。さらに結晶相の異なる酸化チタンや含水酸化チタンを混合して使用しても良い。
チタン酸リチウム化合物の合成に当たっては、上記リチウム化合物と酸化チタンとを、チタン酸リチウムのLi/Ti比(原子比)の目標値、例えば0.68〜0.82の範囲から選択される値に合わせて、両原料を計量して混合する。
混合する方法は均一な混合物が得られる限り特に制限されず、粉体のまま混合する方法であっても、溶媒を用いて混合する方法であってもよいが、溶媒を用いて混合物を得る方法であることが好ましい。
粉体のまま混合する方法には、公知の混合手段が特に制限なく適用できる。また振動ミル、ボールミル等の公知の混合・粉砕手段を適宜使用することもできる。
また別の混合手段として、リチウム化合物および酸化チタンに溶媒を加えてスラリーにして十分撹拌した後、加熱乾燥あるいは噴霧乾燥によって、スラリーを乾燥させて原料混合物を得てもよい。
攪拌手段は特に制限されず、通常用いられる単純な攪拌手段であっても、ボールミル、ビーズミル等を用いた混合・粉砕手段であってもよい。
混合に用いる溶媒としては特に制限はなく、水や有機溶媒を挙げることができるが、取扱い性の簡便性から、水、アルコール類であることが好ましい。またスラリーの濃度は特に限定されず、例えば10〜50質量%とすることができる。
リチウム化合物と酸化チタンを混合して得られる原料混合物は、バルク状のまま、あるいは0.5t/cm程度の圧力で圧縮して得られる成形体として次の工程に供することができる。
上記のようにして得られた原料混合物を、熱処理してチタン酸リチウムを得る。熱処理(焼成)条件は特に制限されないが、600℃以上1200℃以下で1時間以上24時間以下程度行えばよい。好ましくは、700℃以上1000℃以下で5時間以上20時間以下である。
600℃以上で焼成することで、酸化チタンとリチウム化合物の反応が十分に行なわれ、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、LiTiOなどの不純物相が増大することを抑制し、電気容量が減少することを抑制できる。また1200℃以下で焼成することで、スピネル型チタン酸リチウムの酸化チタンなどへ転移を抑制することができる。
また、焼成は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素雰囲気下、及び空気雰囲気下のいずれであってもよい。
このようにして得られたチタン酸リチウムは、焼成炉から取り出し、冷却後、必要に応じて解砕し、さらに必要に応じてもう1回以上焼成してもよい。焼成を2回以上行う場合、それぞれの熱処理条件は同一であっても異なっていてもよい。本発明においては、焼成を少なくとも2回行なうことが好ましく、1回目の焼成温度よりも高い焼成温度で2回目の焼成を行うことがより好ましい。かかる方法で焼成を行なうことにより、不純物相の少ないチタン酸リチウムを合成することが可能となり、より高い充放電容量を示すという効果が得られる。
本発明においては、熱処理によって得られたチタン酸リチウムを粉砕処理して粉砕物を得るが、必要に応じて予め解砕処理を行ってもよい。
粉砕処理することで、所望の平均一次粒子径を有するチタン酸リチウム粒子を得ることができる。
粉砕処理には、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ビーズミル等が採用できる。これらの中でも、ビーズミルを用いて粉砕処理することが好ましく、ビーズミルを用いて湿式粉砕することがより好ましい。ビーズミルで粉砕することで、一次粒子径が小さく、一次粒子径分布が狭いチタン酸リチウムを得ることができる。
粉砕処理に用いる粉砕容器、ビーズ、ボール等の材質は充放電反応への影響の少ない材質を選択することが好ましい。具体的には例えば、アルミナ、部分安定化ジルコニア等を使用することができる。
本発明において湿式粉砕する際に用いる溶媒は特に限定されず、水や有機溶剤を挙げることができる。具体的には例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ベンゼン、ヘキサンなどを挙げることができる。必要に応じてポリオールなどの粉砕助剤(分散剤)等をさらに用いてもよい。
また粉砕処理の処理条件は、所望の平均一次粒子径となるように、粉砕方法に応じて適宜選択することができる。
本発明において、粉砕後のチタン酸リチウムはそのまま使用することもできるが、粉砕処理によって得られた粉砕物を造粒処理して造粒物を得ることが好ましい。造粒処理の方法は特に制限されず、公知の造粒方法を適宜選択することができる。中でも製造効率と体積累積分布の狭いチタン酸リチウムを合成することが可能となる観点から、噴霧乾燥法による造粒処理を行なうことが好ましい。
具体的には、チタン酸リチウム粉砕物と溶媒を含むスラリーを調製し、これを噴霧乾燥して、所望の大粒子、すなわち0.5μm〜100μm程度の二次粒子に造粒することができる。
噴霧乾燥に用いる噴霧乾燥機は特に制限されず、例えば、ディスク式、圧力ノズル式、二流体ノズル式などから、スラリーの性状や処理能力に応じて適宜選択することができる。
二次粒子径の制御は、例えば上記のディスク式ならディスクの回転数を、圧力ノズル式や二流体ノズル式などならば噴霧圧やノズル径を調整して、噴霧される液滴の大きさを制御することにより行うことができる。また用いるスラリーの濃度、粘度等の性状は、噴霧乾燥機の能力に応じて適宜設定できる。
スラリーの粘度が低く造粒し難い場合や、より粒子径を制御し易くするために、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチンなどのバインダーや、カチオン系、ノニオン系、アニオン系、両性などの界面活性剤など各種の添加剤を用いても良い。これら添加剤は有機物系で金属成分を含有しないものであれば、後の熱処理工程で分解、揮散するので望ましい。
乾燥温度としては入り口温度が180℃〜400℃、出口温度が70℃〜120℃が好ましい。また、噴霧圧力としては、例えば0.1MPa〜1.5MPaとすることができ、試料供給速度としては、例えば1.0kg/h〜5.0kg/hとすることができる。
本発明においては、上述のようにして造粒したチタン酸リチウム粒子をそのまま使用することもできるが、さらに熱処理することが好ましい。熱処理条件としては、例えば、250℃以上900℃以下で1分以上10時間以下の焼成を施すことが好ましい。
熱処理温度が250℃以上であることで、結晶子の歪が効果的に緩和され、電池として使用したときに容量が低下することを抑制できる。また900℃以下であることで、粒子が成長して一次粒子径が大きくなることを抑制できる。
また、熱処理は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素雰囲気下、及び空気雰囲気下のいずれであってもよい。
前記チタン酸リチウム粒子は、必要に応じて炭素質物質による被覆、及び炭素質物質と複合化などを行ってもよい。炭素被覆の方法としては、例えば、原料である酸化チタン、リチウム化合物、及び炭素質物質の前駆体を混合後、熱処理することによってチタン酸リチウムと炭素質物質が複合した粒子を得ることができる。上記熱処理を行う際の雰囲気は真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
チタン酸リチウムと炭素質物質の質量比は99.9/0.1〜90/10が好ましく、特に99.5/0.5〜93/7が好ましい。炭素質物質が多いほど電子伝導性が向上する傾向がある。
また、チタン酸リチウム粒子と炭素質物質の前駆体を混合後、熱処理することによってもチタン酸リチウムと炭素質物質が複合した粒子を得ることができる。上記熱処理を行う際の雰囲気は真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
上記熱処理温度は400〜1000℃が好ましく、特に450〜9500℃、さらに好ましくは450〜900℃であることが好ましい。
熱処理温度が400℃以上であることで、炭素質物質の前駆体の炭素化が十分に行なわれ、導電性向上の効果がより効果的に得られる傾向がある。一方、熱処理温度が1000℃以下であることで、チタン酸リチウムの焼結を抑制でき、チタン酸リチウムの結晶サイズ及び一次粒子径が大きくなることを抑制できる。
前記炭素質物質の前躯体としては、例えば、石炭系ピッチ材料、石油系ピッチ材料、合成ピッチ、タール系材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
さらに本発明においては、前記チタン酸リチウムは、リチウム原子、チタン原子、及び酸素原子のいずれかが、別の原子で一部置換されていてもよい。
リチウム原子と置換可能な原子として、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子およびセシウム原子などが挙げられる。
前記リチウム原子の一部が水素原子などで置換されたチタン酸リチウムは、例えば、イオン交換法によって得ることができる。
チタン原子と置換可能な原子としては、例えば、スカンジウム原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、アルミニウム原子、ケイ素原子、ガリウム原子、ゲルマニウム原子、イットリウム原子、ジルコニウム原子、ニオブ原子、モリブデン原子、スズ原子、セリウム原子、ユーロピウム原子、ランタン原子、および、タングステン原子などが挙げられる。置換する方法として、例えば、酸化チタンとリチウム化合物を混合する際に、上記金属、またはその金属塩を同時に混合し、焼成することで、置換する方法を挙げることができる。
酸素原子と置換可能な原子としては、例えば、窒素原子、フッ素原子等が挙げられる。酸素原子の一部がフッ素原子で置換されたチタン酸リチウムは、例えば、酸化チタンとリチウム化合物とフッ化リチウムとを混合し、焼成することにより製造できる。また酸素原子の一部が窒素原子で置換されたチタン酸リチウムは、例えば、酸化チタン及びリチウム化合物の混合物を焼成する際に、アンモニア雰囲気下で焼成することで合成可能である。
<非水電解液二次電池用電極材>
本発明の非水電解液二次電池用電極材は、前記リチウムチタン化合物粒子を含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。その他の成分としては、電極を構成し得る成分であれば特に制限はなく、後述する導電助剤やバインダー等を挙げることができる。
非水電解液二次電池用電極材に含まれる前記リチウムチタン化合物粒子の含有率は特に制限されない。例えば70質量%以上とすることができ、80〜99質量%であることが好ましい
<非水電解液二次電池>
本発明の非水電解液二次電池は、上述したリチウムチタン化合物粒子を電極活物質として含む電極を備えて構成されたものである。
非水電解液二次電池の基本構造は、セパレーターを介して正極および負極を対向配置し、これに非水電解液を含浸させるものであり、本発明においては、この正極または負極に含まれる電極活物質として、上述したリチウムチタン化合物粒子を用いる。
本発明においては、前記非水電解液二次電池が、上述のリチウムチタン化合物粒子を含む正極と、金属リチウム、リチウム合金、またはリチウムイオンをドープ・脱ドープし得る物質を含む負極と、非水系電解液とを備えることが好ましく、さらにリチウムイオン二次電池であることがより好ましい。
また前記非水電解液二次電池が、上述のリチウムチタン化合物粒子を含む負極と、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極と、非水系電解液とを備えることもまた好ましく、さらにリチウムイオン二次電池であることがより好ましい。
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池であって、本発明のリチウムチタン化合物粒子を負極に用いる場合、正極に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5などのリチウムと遷移金属との複合酸化物が挙げられる。
また前記正極にはリチウム遷移金属複合酸化物に加えて、MnO、Vなどの遷移金属酸化物、MoS、TiSなどの遷移金属硫化物、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、ポリ(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)などのジスルフィド化合物などを併用してもよい。
また前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池であって、本発明のリチウムチタン化合物粒子を正極に用いる場合、負極は金属リチウム、リチウム合金、またはリチウムイオンをドープ・脱ドープし得る物質を含んで構成される。
前記リチウム合金としては、例えば、LiSi(0<x≦4.4)、LiSn(0<y≦4.4)等が挙げられる。またリチウムイオンをドープ・脱ドープし得る物質としては、例えば、LiC(6≦z)等が挙げられる。
本発明のリチウムチタン化合物粒子を電極活物質として用いた電池は、電池の残量のモニターが容易である。例えば本発明のリチウムチタン化合物粒子を電極活物質として用いた電池の放電時においては、放電曲線におけるプラトー部が二つ以上ある、もしくは、なだらかに電圧が低下する傾向にある。
電極活物質を用いて電極を作製する際に用いられる導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、不定比酸化チタン、チタンブラック、アルミニウムやニッケル等が用いられる。
これらの中でも、少量の配合で所望の導電性を確保できるアセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましい。
なお、導電助剤は、電極活物質に対して、通常1〜20質量%程度配合されるが、5〜10質量%配合することがより好ましい。
導電助剤と共に用いられるバインダーとしては特に制限されず、公知の各種バインダーを用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、フェノール樹脂などが挙げられる。
なお、バインダーは、電極活物質に対して、通常1〜20質量%程度配合されるが、5〜15質量%配合することがより好ましい。
前記非水系電解液は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、非水系電解液として、有機溶媒に電解質を溶解させた溶液を用いることにより、非水系リチウムイオン二次電池を製造することができる。
電解質としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiClF、LiAsF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiCl、LiIなどの溶媒和しにくいアニオンを生成するリチウム塩を例示することができる。
有機溶媒としては、例えば、カーボネート類(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、鎖状エーテル類(1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなど)、スルホラン類(スルホランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、ポリオキシアルキレングリコール類(ジエチレングリコールなど)などの非プロトン性溶媒を例示することができる。
有機溶媒は、単独で用いてもよく二種以上の混合溶媒として用いてもよい。
電解質濃度は、例えば、電解液1Lに対して、電解質0.3〜5モル、好ましくは0.5〜3モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。
前記セパレーターとしても、公知の各種セパレーターを用いることができる。具体例としては、例えば、紙製、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、ガラス繊維製セパレーターなどが挙げられる。
なお、本発明のリチウムチタン化合物粒子は、正負極の一方を電気二重層キャパシタで用いられる分極性電極とし、もう一方をリチウムイオン電池で用いられるリチウムイオンを挿入・脱離可能な物質を活物質とする電極としたハイブリッド型の蓄電デバイスの活物質材料にも応用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
(リチウムチタン化合物粒子の調製)
BET比表面積11m/g、体積平均粒子径(D50%)0.5μmの酸化チタン(堺化学工業株式会社製、「A120」)100gと38.1gの炭酸リチウム(和光純薬工業(株)製、純度99%以上)とをボールミルに入れ、純水を300g及び10mmのジルコニアボールを200g加え、5時間混合した後、ジルコニアボールを除去して、130℃で乾燥した。これをアルミナ乳鉢で解砕した後、800℃で20時間、空気中で焼成した。このとき昇温は1.7℃/分の速度で行った。焼成後、放冷してから取り出し、ボールミルで同様にして再び混合した後、900℃で20時間焼成した。
このようにして得た焼成物をアルミナ乳鉢で解砕した。次いで、ビーズミルを用いて粉砕した。ビーズミルはアシザワ・ファインテック株式会社製スターミル「LMZ015」を用い、ビーズには0.3mmの安定化ジルコニアビーズを用いた。また水を溶媒として用い、分散剤としてライオン製「ポリティA550」をチタン酸リチウムに対して1%添加して粉砕処理した。
粉砕後のスラリーの粒子径分布を測定したところ、体積平均粒子径(D50%)は0.21μmであった。このスラリーにポリビニルアルコール(クラレ製「ポバール110s」)をチタン酸リチウムに対して0.5%添加した後、大川原化工機株式会社製スプレードライヤー「NL−5」を用いて入口温度200℃,出口温度90℃、噴霧圧力0.2MPa、試料供給速度3.0kg/hとして噴霧乾燥して、造粒粉末を得た。
このようにして得られた造粒粉末を700℃にて5時間、空気中で焼成し、目的のチタン酸リチウム粒子を得た。結晶相の同定を粉末X線回折装置((株)リガク製)を用いて行ったところ、LiTi12の単一相であった。
また、BET比表面積は5.8m/g、体積平均二次粒子径(D50%)は5.7μmであった。尚、BET比表面積はQUANTACHROME INSTRUMENTS社製オートソーブ−1を用いて、−196℃における窒素の吸着等温線から算出した。また体積平均粒子径はレーザー回折式粒度測定器「SALD3000J」((株)島津製作所製)を用いて測定した。さらに平均一次粒子径は0.2μmであった。
このようにして得られたチタン酸リチウム粒子10gを10%酸水溶液300gに浸漬して、25℃で、12時間攪拌した。ついで、この懸濁液をろ過した後、洗浄液のpHが6以上になるまで繰り返し水で洗浄した。
このようにして得られた粉末粒子を120℃にて2時間乾燥した後、300℃にて1時間、空気中で焼成して、目的とするリチウムチタン化合物粒子を得た。
粉末X線回折装置((株)リガク製)を用いて測定した粉末X線回折パターン図を図1に示す。X線回折パターンから、スピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)のメインピークである4.83Å(2θ:18°)のピーク強度を100としたときの、アナターゼ型酸化チタンのメインピークである3.51Å(2θ:25°)の強度を算出した結果、アナターゼ型酸化チタンのメインピークのピーク強度は67であった。また併せて、アナターゼ型酸化チタンの3.51Å(2θ:25°)のピーク半価幅を算出したところ0.40であった。以上の結果を表1に示す。
(チタン酸リチウム電極の作製)
電極活物質として上記で得られたリチウムチタン化合物粒子と、導電助剤としてカーボンブラック(電気化学工業(株)製、商品名:HS−100)と、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)のNMP(N−メチルピロリドン)溶液((株)クレハ製、商品名:KFポリマー#1120、ポリフッ化ビニリデンの含有量:12%)を、活物質:導電助剤:PVDF=85:5:10(質量比)の割合で混合してペースト状にし、電極組成物を調製した。このペースト状の電極組成物を、電解銅箔の光沢面に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、次いで120℃にて1時間、真空乾燥して、リチウムチタン化合物粒子を含む電極合剤層を有する電極を得た。
(リチウム電池の作製)
上記で得られた電極と、対極として金属リチウムと、電解液として1Mの濃度でLiPFを溶解したEC(エチレンカーボネート)/PC(プロピレンカーボネート)/GBL(γ―ブチロラクトン)混合溶媒(1/1/1:体積比)とを用い、2016型コインセル(宝泉株式会社製)を用いてコイン型電池を作製した。
まず初めに25℃にて電池評価した。対極(リチウム極)に対して、0.1Cに相当する電流で1.2Vまで充電した。放電はリチウム極に対して、0.1Cに相当する電流で2.5Vまで行い、初期(初回)放電容量を測定した。この時、容量は用いたリチウムチタン化合物及び導電助剤の総重量当たりに換算した。また、初期放電容量を初期充電容量で割った値を初期充放電効率(%)として算出した。
また、初回充電時において、図2に示すように、金属リチウムの電位を基準として1.6〜2.0Vでのリチウム吸蔵容量Aと、1.2〜1.6Vでのリチウム吸蔵容量Bとを測定したところ、それぞれ85mAh/g、93mAh/gであり、A/B=0.91であった。
次いで、0.1Cに相当する電流で1.2Vまで充電し、放電をリチウム極に対して2Cに相当する電流で2.5Vまで行い、2Cにおける放電容量を測定し、2Cにおける放電容量を0.1Cでの放電容量維持率として算出した。ここでいうxCとは1/x時間で充電または放電が完了する電流値をさす、つまり2Cの放電レートとは1/2時間=30分で放電が完了する電流値を意味する。
<実施例2>
(リチウムチタン化合物粒子の調製)
酸化チタン(堺化学工業株式会社製「A120」)300gと132gの水酸化リチウム(和光純薬工業(株)製、純度99%以上)をボールミルに入れ、純水を568g、10mmのジルコニアボールを200g加え、5時間混合した後、ジルコニアボールを除去した。このスラリーにポリビニルアルコール(クラレ製「ポバール110s」)をチタン酸リチウムに対して0.5%添加した後、大川原化工機株式会社製スプレードライヤー「NL−5」を用い、入口温度200℃,出口温度90℃、噴霧圧力2.0MPa、試料供給速度3.0kg/hとして噴霧乾燥して、造粒粉末を得た。
得られた造粒粉末を800℃にて10時間、空気中で焼成し、目的のチタン酸リチウム粒子を得た。結晶相の同定を粉末X線回折装置((株)リガク製)を用いて行ったところ、LiTi12の単一相であった。
また、BET比表面積は3.8m/g、体積平均二次粒子径(D50%)は11μmであった。
このようにして得られたチタン酸リチウム粒子10gを10%酢酸水溶液300gに浸漬して、25℃で、12時間攪拌した。ついで、この懸濁液をろ過した後、洗浄液のpHが6以上になるまで繰り返し水で洗浄した。
このようにして得た粉末粒子を120℃にて2時間乾燥した後、500℃にて1時間、空気中で焼成して、目的とするリチウムチタン化合物粒子を得た。
得られたリチウムチタン化合物粒子の物性及び、実施例1と同様にして評価した電池特性を表1及び表2に示す。また、X線回折パターンを図3に、さらに初回充放電曲線を図4に示す。
<実施例3>
実施例2において、10%酢酸水溶液の代わりに1M塩酸水溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様にして目的とするリチウムチタン化合物粒子を得た。物性及び電池特性を表1及び表2に示す。また、X線回折パターンを図5に、初回充放電曲線を図6に示す。
<比較例1>
実施例2において、粉末粒子に対する500℃での熱処理を省略したこと以外は、実施例2と同様にしてリチウムチタン化合物粒子を合成した。物性及び電池特性を表1及び表2に示す。また、X線回折パターンを図7に、初回充放電曲線を図8に示す。
<比較例2>
実施例1において、粉末粒子に対する300℃での熱処理を500℃で行ったこと以外は、実施例1と同様にした。物性及び電池特性を表1及び表2に示す。また、X線回折パターンを図9に、初回充放電曲線を図10に示す。
<比較例3>
実施例1において、酢酸との接触以降の工程を省略して得られるチタン酸リチウム粒子を電極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電池を構成した。物性及び電池特性を表1及び表2に示す。また、チタン酸リチウム粒子のX線回折パターンを図11に、初回充放電曲線を図12に示す。
<比較例4>
実施例1において、電極活物質として、比較例1で得られたリチウムチタン化合物粒子とアナターゼ型酸化チタン(堺化学工業製A120)とを50:50の質量比で物理混合した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池を構成した。
表1および表2に示されるように、X線回折パターンにおいてアナターゼ型酸化チタンのピーク強度がチタン酸リチウムのピーク強度よりも低く、かつ、1.6V以上2.0V以下(金属リチウム基準)でのリチウム吸蔵容量を制御した実施例のリチウムチタン化合物粒子を用いたリチウム二次電池は放電容量及び初回充放電効率に優れることが分かる。
一方、比較例1のリチウムチタン化合物は初回充放電効率が低いことが分かる。
また比較例2のリチウムチタン化合物はアナターゼ型酸化チタンの割合が多く、初回充電効率が低く、2Cでの放電容量が著しく低いことが分かる。さらに比較例3の酸処理をしていないチタン酸リチウムは、初回放電容量が低いことが分かる。

Claims (6)

  1. リチウムを吸蔵するリチウムチタン化合物粒子であり、
    前記リチウムチタン化合物を含む電極を作用極に、金属リチウムを対極に用いた電池としたときに、前記金属リチウムの電位を基準として、1.2V以上1.6V未満の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Bに対する、1.6V以上2.0V以下の電位範囲における作用極のリチウム吸蔵容量Aの容量比A/Bが、0.25〜1.3となり、
    CuKα線によるX線回折法において、スピネル型チタン酸リチウムに対応するメインピーク強度を100とした場合に、アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピーク強度が1〜100であって、前記アナターゼ型酸化チタンに対応するメインピークの半価幅が0.25以上であるリチウムチタン化合物粒子。
  2. 平均二次粒子径が1.0〜30.0μmである、請求項1に記載のリチウムチタン化合物粒子。
  3. スピネル型チタン酸リチウム粒子を、酸性化合物と接触させる酸処理工程と、
    前記酸処理工程後に140℃以上で熱処理する熱処理工程と、
    を含む、請求項1又は請求項2に記載のリチウムチタン化合物粒子の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のリチウムチタン化合物粒子を含む、非水電解液二次電池用電極材。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のリチウムチタン化合物粒子を含む正極と、
    金属リチウム、リチウム合金、またはリチウムイオンをドープ・脱ドープし得る物質を含む負極と、
    非水系電解液と、
    を備える非水電解液二次電池。
  6. 請求項1又は請求項2に記載のリチウムチタン化合物粒子を含む負極と、
    リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極と、
    非水系電解液と、
    を備える非水電解液二次電池。
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