以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明の電子写真感光体、画像形成装置、および電子写真カートリッジについてそれぞれ説明する。
A.電子写真感光体
まず、本発明の電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体は、波長380nm〜500nmの単色光により電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する画像形成装置に用いられるものであり、導電性支持体、及び前記導電性支持体上に形成された感光層を有する。また上記感光層に2種類以上のフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする。
本発明によれば、上記感光層中に2種類以上のフタロシアニン化合物を含有することによって、感光層を波長380〜500nmの単色光に対して非常に高感度なものとすることができる。また上記範囲の露光波長の変化に対する依存性が緩和され、露光波長のブレによる感度の変動を少ないものとすることができる。上記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、複数種のフタロシアニン化合物を感光層中に含有することにより、フタロシアニン化合物どうしが相互作用し、通常のフタロシアニン化合物が350nm付近に有するSoret帯と呼ばれる吸収帯が長波長側にシフトすることによると推測される。
ここで、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有するものであれば、層構成は特に限定されるものではなく、従前知られた何れの構成も使用することができる。具体的には、導電性支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とから構成される積層型感光層を有する電子写真感光体の構成や、導電性支持体上に、電荷輸送物質を含有する層中に電荷発生物質を分散させた単層型感光層を有する電子写真感光体の構成等とすることができる。また上記積層型感光層を有する電子写真感光体では、導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した順積層型としてもよく、また導電性支持体上に、電荷輸送層及び電荷発生層をこの順に積層した逆積層型としてもよい。本発明においては、上記の中でも、特にバランスの取れた光導電性を発揮可能であるという点から、順積層型感光層を有する構成が好ましい。なお、本発明の電子写真感光体の構成は上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意の構成とすることができる。
以下、上記電子写真感光体の各部材について以下詳しく説明する。
[感光層]
本発明の電子写真感光体に用いられる感光層は、2種類以上のフタロシアニン化合物を含有するものであれば特に限定されるものではなく、他の化合物を適宜併用することも可能である。またその層構成は、上述したように電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とから構成される積層型感光層であってもよく、また電荷輸送物質を含有する層中に電荷発生物質を分散させた単層型感光層であってもよい。
上記フタロシアニン化合物は、通常、電荷発生物質として用いられ、単層型感光層に用いられる場合でも、積層型感光層に用いられる場合でも、電荷を発生する機能としては同等の性能を示すことが知られている。
以下、上記感光層に用いられるフタロシアニン化合物、フタロシアニン化合物以外の電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、その他の物質、及び感光層の形成方法についてそれぞれ説明する。
(フタロシアニン化合物)
感光層に含有されるフタロシアニン化合物としては、いかなる公知のフタロシアニン化合物を用いることも可能である。フタロシニアン化合物の例としては、無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉛フタロシアニン等の平面分子構造を有するフタロシアニン化合物;オキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ブロモガリウムフタロシアニン、ブロモインジウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、メトキシガリウムフタロシアニン、エトキシガリウムフタロシアニン、メトキシインジウムフタロシアニン等の分子がシャトルコック構造を有するフタロシアニン化合物;ジクロロ錫フタロシアニン、ジクロロ珪素フタロシアニン、ジヒドロキシ錫フタロシアニン、ジヒドロキシ珪素フタロシアニン等の分子がこま型構造を有するフタロシアニン化合物;またはこれらのフタロシアニン化合物が置換基により置換された置換体(以下、適宜「置換体」ということがある);μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体、μ−オキソ−ガリウムチタニウムフタロシアニン二量体等の分子内にフタロシアニン構造を2つ有する化合物等が挙げられる。上記のフタロシアニン化合物から任意の組み合わせで二種類以上のフタロシアニン化合物を選択し、感光層中に含有させることが可能である。
ここで、感光層中に含有されるフタロシアニン化合物同士の相互作用をより強めるために、感光層に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物のうち少なくとも一つは上記置換体、すなわち置換基を有するフタロシアニン化合物であることが好ましい。上記置換基を有するフタロシアニン化合物は、具体的には下記式(1)で表される。
(上記式(1)において、Mはフタロシアニン環と結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す。また、X
1〜X
4はそれぞれ独立に任意の置換基を表す。さらに、a、b、c及びdは該置換基の個数を表すものであって、それぞれ0以上4以下の整数を表し、且つ、a+b+c+d≧1を満たす。)
中心原子Mは1個でもよく、2個以上であっても良い。中心原子が2個以上であるものの具体例としては、無金属フタロシアニンが挙げられる。この無金属フタロシアニンにおいては、窒素に結合した2個の水素がそれぞれ中心原子となる。
また、ここでいう、中心原子団を中心原子と共に構成する他の物質は任意である。したがって、他の物質と結合した中心原子団Mは、例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物等であってもよい。ここで、Mが原子単体である場合の中心原子Mの具体例としては銅、亜鉛、マグネシウム、鉛などが挙げられる。
また、Mが中心原子と他の物質とが結合した原子団である場合の中心原子団Mの具体例としてはクロロアルミニウム、クロロガリウム、クロロインジウム、ジクロロ錫、ジクロロケイ素、ジクロロゲルマニウム等のハロゲン化物類;ヒドロキシアルミニウム、ヒドロキシガリウム、ヒドロキシインジウム、ジヒドロキシ錫、ジヒドロキシケイ素、ジヒドロキシゲルマニウムなどの水酸化物類;オキシチタニウム、オキシバナジウム等の酸化物類;メトキシガリウム、エトキシガリウム等のアルコキシ化物等が挙げられる。
また、上記式(1)において、X1〜X4はそれぞれ独立に任意の置換基を表わす。X1〜X4の式量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以下、好ましくは38以下、より好ましくは20以下である。X1〜X4の例を挙げると、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。中でもハロゲン原子、即ち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子、またはニトロ基等が好ましい。さらにその中でも、式(1)のフタロシアニン化合物を用いた電子写真感光体の特性を考慮すると、置換基X1〜X4のサイズが小さい方が好ましいため、X1〜X4はフッ素原子、塩素原子であることが好ましい。さらには、フッ素原子がより好ましい。
さらに、上記式(1)において、a、b、c及びdは置換基X1〜X4の個数を示し、それぞれ0以上4以下の整数を表し、且つ、a+b+c+d≧1を満たす。a+b+c+dが小さすぎると所望する光導電性を有する電子写真感光体が得られない可能性があることから、a+b+c+dは好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。また、a+b+c+dが大きすぎると得られる電子写真感光体の帯電性が低下する可能性があることから、好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下である。
さらに、フタロシアニン化合物を製造する際の原料の汎用性を考慮すると、a、b、c及びdはそれぞれ2以下であることが好ましく、それぞれ1以下であることがより好ましい。
また、製造の容易さから、a=b=c=dであることが好ましい。式(1)のフタロシアニン化合物を用いた電子写真感光体の特性を考慮すると、a=b=c=d=1がより好ましい。
ここで、電子写真感光体としての特性の面を考慮すると、感光層に用いられるフタロシアニン化合物は、上記の中でもシャトルコック構造、こま型構造を有するフタロシアニン化合物であることが望ましい。また、シャトルコック構造、こま型構造を有するフタロシアニン化合物の中でも、一般的に電子写真感光体としての特性が良好であることから、フタロシアニン化合物分子の中心金属は、酸化物、塩化物、臭化物、水酸化物、アルコキシ化物であることが好ましく、その例としては、オキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ブロモガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ブロモインジウムフタロシアニン、ジクロロ珪素フタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジヒドロキシ珪素フタロシアニン、メトキシガリウムフタロシアニン、エトキシガリウムフタロシアニン、メトキシインジウムフタロシアニン、またはこれらの上記置換体が挙げられる。フタロシアニン化合物の製造の容易さからは、中心金属が酸化物、塩化物であることがより好ましく、中でもオキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、またはこれらの上記置換体がより好ましい。
なお、感光層中には2種類以上のフタロシアニン化合物が含有され、通常、主成分として含有されるフタロシアニン化合物、及び主成分以外として含有されるフタロシアニン化合物とに分けられる。
主成分として含有されるフタロシアニン化合物の種類に特に制限はなく、上述したいずれのフタロシアニン化合物であってもよい。中でも中心金属が酸化物、塩化物であることがより好ましく、特にオキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、またはこれらの上記置換体が製造の容易さ等の面からより好ましい。
また主成分として含有されるフタロシアニン化合物の含有量としては、複数種類のフタロシアニン化合物の総量中、通常50重量%以上、好ましくは55重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。また後述するように、フタロシアニン化合物が混晶とされる場合には、フタロシアニン混晶中に50重量%以上含有されることが好ましく、含有される量が少ないと結晶制御性が低下することから、55重量%以上がより好ましく、分散時の結晶安定性の点からは、60重量%以上が特に好ましい。
また、上述した主成分として含有されるフタロシアニン化合物の中でも、電子写真感光体としての特性を考慮すると、フタロシアニン環に置換基を有さない無置換体であることが好ましい。
また主成分以外として含有されるフタロシアニン化合物に、特に制限はなく、上記いずれのフタロシアニン化合物であってもよいが、フタロシアニン化合物が混晶状態である場合に主成分以外として含有されるフタロシアニン化合物としては、混晶としての結晶安定性の面から、シャトルコック構造を有するフタロシアニン化合物、平面分子構造を有するフタロシアニン化合物が好ましい。中でも、電子写真感光体特性の面からは、シャトルコック構造を有するフタロシアニン化合物としては、オキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、またはこれらの上記置換体が好ましい。また平面構造を有するフタロシアニン化合物としては、無金属フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉛フタロシアニンが好ましく、その中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、またはこれらの置換体が好ましい。
また、上述した主成分以外として含有されるフタロシアニン化合物の中でも、電子写真感光体としての特性を考慮するとフタロシアニン環に置換基を有する置換体であることが好ましい。
上記置換基の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以下、好ましくは38以下、より好ましくは20以下である。置換基の例を挙げると、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられ、中でもハロゲン原子(即ち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)またはニトロ基等が好ましい。さらにその中でも、電子写真感光体の特性を考慮すると、置換基のサイズが小さい方が好ましいため、フッ素原子及び塩素原子であることが好ましく、更にはフッ素原子がより好ましい。
また主成分以外に用いられるフタロシアニン化合物は、何種類でも用いることが可能であるが、通常3種類以下、好ましくは2種類以下、より好ましくは1種類とされる。また後述するように、複数種類のフタロシアニン化合物が混晶状態である場合には、結晶の安定性を考慮すると、主成分以外のフタロシアニン化合物として1種類のみを用いることが好ましい。
主成分以外に用いるフタロシアニン化合物の含有量の総量は通常45重量%以下であるが、主成分を含む2種類以上のフタロシアニン化合物が混晶状態である場合には、結晶の制御性を考慮すると、主成分以外に用いるフタロシアニン化合物の含有量の総量は40重量%以下が好ましい。また主成分以外のフタロシアニン化合物の含有量が少なすぎる場合、含有による効果が得られないため、含有量は通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。
ここで、感光層中に含有される上記2種類以上のフタロシニアン化合物は、いかなる存在状態であってもよい。存在状態の具体例としては、単なる粒子同士の混合体や、分子レベルで混合されて分子配列が規則性を有さない無定形状態、分子レベルで混合されて分子配列が規則性を有する混晶状態等が挙げられる。
通常は、無定形状態、混晶状態であることが好ましい。さらに、一般的に無定形状態は安定性に乏しい部分があるため、混晶状態であることがより好ましい。ここで、フタロシアニン化合物が混晶状態であるとは、複数のフタロシアニン化合物から構成されるフタロシアニン混晶である場合と、フタロシアニン化合物とフタロシアニン化合物以外の化合物から構成される混晶である場合が挙げられるが、結晶安定性の面から複数種のフタロシアニン化合物から構成されるフタロシアニン混晶状態であることが好ましい。
なお、本発明の電子写真感光体に用いられる感光層に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物は、1種の存在状態のみを有していてもよく、2種類以上の存在状態を有していてもよい。
さらに、本発明の電子写真感光体に用いられる感光層に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物が示す粉末X線のスペクトルパターンは任意であり、どのようなスペクトルパターンであってもよい。
粉末X線のスペクトルパターンは、測定装置として、CuKα線を線源とした集中光学系の粉末X線回折計であるPANalytical社製のPW1700を用い、測定条件を、X線出力40kV、30mA、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1.0°、散乱スリット1.0°、受光スリット0.2mmとすることにより測定されるものとすることができる。
ここで、感光層に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物が2種類以上の存在状態を有する場合、その粉末X線のスペクトルパターンは、それらの存在状態に応じたスペクトルパターンが組み合わされたスペクトルパターンをとる。
具体例を挙げると、感光層中に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物の存在状態が粉末同士の混合体である場合、粉末X線のスペクトルパターンとしては、混ぜ合わせる前のフタロシアニン化合物それぞれの粒子が示すスペクトルパターンを足し合わせた形で現れる。また、感光層中に含有される2種類以上のフタロシアニン化合物の存在状態が無定形状態である場合、粉末X線のスペクトルパターンとしては、明確なピークは現れない。さらに、感光層中に含有される2種以上のフタロシアニン化合物の存在状態が混晶状態の場合、通常、フタロシアニン化合物混晶に含有されるフタロシアニン化合物のいずれか1つのフタロシアニン化合物の結晶構造を主として示すが、含有されるフタロシアニン化合物結晶のいずれの結晶型にも属さない新規の結晶型を示すこともある。
ここで、混晶状態のフタロシアニン化合物が示す粉末X線のスペクトルパターンは、いかなる公知の結晶型のスペクトルパターンと同様であってもよい。ただし、公知の無置換フタロシアニン化合物がとりうる結晶型のうちで光導電性に優れたものと同様の結晶型、または、公知の無置換フタロシアニン化合物同士からなるフタロシアニン組成物がとりうる結晶型のうちで光導電性に優れたものと同様の結晶型を有する場合に、混晶状態のフタロシアニン化合物が良好な光導電性を示すことが多い。したがって、感光層に含有される2種以上のフタロシアニン化合物が混晶状態を有する場合、上記の光導電性に優れたものと同様の結晶型となることが好ましい。それら好ましい結晶型が記載されている公知文献の例を以下に挙げる。ただし、本発明の要旨を逸脱しない限り、上記感光層に含有することが可能なフタロシアニン化合物の結晶型は以下の結晶型に限定されるものではない。
A、B、C及びD型のTiOPc(以下、Pcは、適宜フタロシアニンを表す)に関しては、次の文献が挙げられる。
特開昭62−67094号公報
特開昭61−217050号公報
特開昭61−239248号公報
特開平1−207755号公報
特開平4−323270号公報
特開平6−287189号公報
特開平2−008256号公報
特開平2−289658号公報
特開平7−271073号公報
特開平3−128973号公報
I型、II型他のGaClPcに関しては、次の文献が挙げられる。
特開平1−221459号公報
特開平5−98181号公報
特開平11−172142号公報
またV型のGaOHPcに関しては、次の文献が挙げられる。
特開平5−263007号公報
特開平6−279698号公報
特開平10−67946号公報
特開2002−235014号公報
PcGaOGaPcの結晶型に関しては、次の文献が挙げられる。
特開平10−88023号公報
特開2000−219817号公報
X型、τ型の無金属フタロシアニン化合物に関しては、次の文献が挙げられる。
JOURNAL OF IMAGING SCIENCE Volume35,Number 4,235−239ページ(1991)
電子写真学会誌 第24巻 第2号 1985年 102−107ページ
Journal of Imaging Technology 11:7−11(1985)
米国特許第3357989号明細書
フタロシアニン化合物の組成物及び混晶に関しては、次の文献が挙げられる。
特開平4−351673号公報
特開平4−372663号公報
特開平5−45914号公報
特開平5−186702号公報
特開平6−234937号公報
特開平8−41373号公報
特開平6−175382号公報
特開平6−145550号公報
特開平3―9962号公報
特開2000−313819号公報
特開2000−336283号公報
特開2002−244321号公報
また感光層に含有されるフタロシアニン化合物の粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、通常500nm以下であることが好ましく、塗布成膜性の面からは300nm以下であることが好ましく、更に好ましくは、100nm以下である。
(フタロシアニン化合物以外の電荷発生物質)
上記感光層に含有されるフタロシアニン化合物以外の電荷発生物質としては、下記の染顔料や化合物等が挙げられる。但し、上記フタロシアニン化合物以外の電荷発生物質の量が、上記2種以上のフタロシアニン化合物の量の総和を超えない量とすることが好ましい。
上記フタロシアニン化合物と併用可能な電荷発生物質としては、例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、その他のアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等、各種光導電材料が挙げられ、これらを1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも特に有機顔料、中でもペリレン顔料、多環キノン顔料、ポルフィリン顔料、アゾ顔料等がより好ましい。
アゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。下記式において、Cp1ないしCp3は、カップラーを表す。
カップラーCp1ないしCp3としては、好ましくは、以下構造を示す。
また上記アゾ顔料として具体的には、以下化合物が好ましい。
また下記式(2)で表される化合物が特に好ましい。
式(2)中R12は、総炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Zは、
環Xの有していてもよい置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、塩素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などのアルコキシ基等が挙げられる。これらのなかではフッ素原子、塩素原子、メチル基が好ましい。上記式(2)で表される化合物のうち、より好ましい構造としては、Xで示されるベンゼン環に置換基が存在しない、もしくは環Xが置換基としてメチル基を有する場合である。
式(2)において、−OR12基の結合位置は任意であるが、−CONH−基の結合する炭素原子に対して、メタ位に結合するのが好ましい。R12が表すアルキル基としては、アルキル基部分の炭素数が通常20以下、より好ましくは15以下のものである。また通常炭素数は1以上であり、好ましくは3以上である。アルキル基部分はその構造により直鎖、分岐、環状等の構造に分類することが出来るが、電子写真感光体の特性の面から分岐、環状構造を有することが好ましく、アルキル基内にシクロアルキル構造を有することがより好ましい。
また上記フタロシアニン化合物以外の電荷発生物質の粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、10μm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは5μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは、1μm以下である。
(電荷輸送物質)
本発明の電子写真感光体における感光層には、電荷輸送物質として、任意の公知の電荷輸送物質を1種、または2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができるが、イオン化ポテンシャルの下限が4.8eV以上であり、また上限が5.7eV以下である電荷輸送物質を含有することが好ましい。上記イオン化ポテンシャルは、AC−1(商品名(理研計器(株)製))により、大気中で、粉体状または膜状で測定される値とすることができる。
なお上記イオン化ポテンシャルが小さい場合には、オゾン等に弱くなる可能性があるため、4.9eV以上とすることがより好ましく、更に好ましくは、5.0eV以上である。またイオン化ポテンシャルが大きすぎると、電荷発生物質からの電荷の注入効率が悪くなる可能性があるため、5.7eV以下が好ましく、より好ましくは5.6eV以下である。
感光層に用いられる電荷輸送物質として具体的には、下記の式(3)で示される化合物がより好ましく用いられる。下記式(3)で示される化合物は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで選択して用いてもよい。
(式(3)において、Ar
1ないしAr
6は置換基を有しても良い芳香族残基、または、置換基を有しても良い脂肪族残基を表し、Y
aは有機残基を表す。R
1ないしR
4は、有機基を表し、n1ないしn6は、0ないし2の整数を表す。)
上記式(3)において、Ar1ないしAr6は置換基を有しても良い芳香族残基、または、置換基を有しても良い脂肪族残基を表し、Ar1ないしAr6の全てまたは一部が同じ基であってもよく、またそれぞれ異なる基であってもよい。Ar1ないしAr6が置換基を有しても良い芳香族残基である場合、上記芳香族の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族炭化水素;チオフェン、ピロール、カルバゾール、イミダゾール等の芳香族複素環等が挙げられる。またこの際、炭素数は、通常5以上であるが、電気特性の観点から、6以上が好ましい。また通常20以下とされるが、好ましくは16以下、より好ましくは10以下である。
特に上記芳香族残基は芳香族炭化水素残基であることが好ましく、さらにベンゼン残基であることが好ましい。
また、上記Ar1ないしAr6が置換基を有しても良い脂肪族残基である場合、上記脂肪族の炭素数としては、通常1以上であり、不飽和脂肪族の場合は2以上である。また上記炭素数は通常20以下であり、好ましくは16以下、より好ましくは10以下であるが、飽和脂肪族の場合は、炭素数6以下であることが好ましい。飽和脂肪族としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、イソブタン等の分岐、直鎖アルキルが挙げられ、不飽和脂肪族としては、エチレン、ブチレンなどのアルケン類等が挙げられる。
また上記芳香族残基または脂肪族残基に置換していてもよい置換基としては、特に制限はないが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基等が挙げられる。また、これら置換基は、連結基を介して連結していてもよく、また直接結合して環を形成しても良い。
また上記式(3)中、R1ないしR4は有機基であり、R1ないしR4の全てまたは一部が同じ基であってもよく、またそれぞれ異なる基であってもよい。上記R1ないしR4は通常炭素数30以下の有機基であり、好ましくは20以下の有機基、より好ましくは10以下の有機基である。
これらの置換基は、上記芳香族残基または脂肪族残基に導入されることにより、分子内電荷を調節し、電荷移動度を増大させる効果がある一方で、嵩が大きくなりすぎると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは炭素原子数1以上6以下、より好ましくは炭素原子数4以下、特には炭素原子数2以下のものが好ましい。
また、上記芳香族残基または脂肪族残基に複数の置換基を有すると結晶析出を避ける傾向があるため好ましいが、多すぎると分子内の共役面の歪みや分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げる可能性があるため、好ましくは1つの芳香族残基または脂肪族残基につき2個以下である。また、感光層中における安定性を向上させ、電気特性を向上させるため、立体的に嵩高くないものが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基が好ましい。
ここで、特にAr1ないしAr4がベンゼン残基である場合には上記置換基を有することが好ましく、中でも好ましい置換基は、アルキル基であり、特にメチル基が好ましい。また、Ar5ないしAr6が、ベンゼン残基である場合、好ましい置換基は、メチル基、メトキシ基である。
上述した中でも特に、式(3)中、Ar1が、フルオレン構造を有することが好ましい。
また上記式(3)中、n1ないしn4は、0ないし2の整数を表す。n1は、好ましくは、1ないし2であり、n3は、好ましくは、1ないし2であり、n4は、好ましくは、1ないし2である。
上記式(3)中、Yaは有機残基であるが、n5が0の場合、Ar5とAr6とが直接結合されることとなる。またn5が1または2の場合、Yaとしては例えば、置換基を有しても良い、芳香族残基、飽和脂肪族残基、複素環残基、エーテル構造を有する有機残基、またはジビニル構造を有する有機残基等が挙げられる。
本発明においては、上記Ar5とAr6とが直接結合している場合(n=0である場合)、またはYaが炭素数1ないし15の有機残基である場合(n=1または2である場合)が好ましく、中でも上記Ar5とAr6とが直接結合している場合(n=0である場合)、またはYaが芳香族残基または飽和脂肪族残基である場合(n=1または2である場合)がより好ましい。上記Yaが芳香族残基である場合、炭素数は通常6以上、14以下とされることが好ましく、より好ましくは12以下である。また、Yaが飽和脂肪族残基である場合、炭素数は1以上、15以下とされることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
また有機残基Yaは置換基を有していても良く、置換基としては、特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;インドリル基、キノリル基、カルバゾリル基等の複素環基等が挙げられる。また、これら置換基は、連結基を介して連結していてもよく、また直接結合して環を形成しても良い。上記置換基は、通常炭素原子数が1以上、10以下、より好ましくは炭素原子数6以下、特に好ましくは炭素原子数3以下である。より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基等が好ましい。
またYaが複数の置換基を有すると結晶析出を避ける傾向があるため好ましいが、置換基が多すぎると分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を下げるため、好ましくは一つのYaにつき、2個以下である。
またn5及びn6は、0ないし2を表す。上述したように、n5が0の場合はAr5とAr6との直結を表し、n6が0の場合は、n5が0であることが好ましい。またn5及びn6がともに1の場合、Yaは上述した中でもアルキリデン、アリーレン、若しくはエーテル構造を有するものであることが好ましい。アルキリデンとして具体的には、フェニルメチリデン、2−メチルプロピリデン、2−メチルブチリデン、シクロヘキシリデン等が好ましい。また、アリーレンとしては、フェニレン、ナフチレン等が好ましい。また、エーテル構造としては、−O−CH2−O−、−O−CH2CH2−O−等が好ましい。
またn5、n6がともに0である場合は、Ar5は、ベンゼン残基、フルオレン残基であることが好ましい。ベンゼン残基である場合、無置換、若しくはアルキル基またはアルコキシ基を置換基として有することが好ましい。上記置換基を有する場合、さらに好ましい置換基としては、メチル基またはメトキシ基であり、窒素原子のp位に置換することが好ましい。またn6が2の場合は、Yaは、上述した中でもベンゼン残基であることが好ましい。
n1ないしn6の具体的な組合せの一例としては、下記のものが挙げられる。
また上記式(3)の好適な構造の具体例を以下に示す。
(上記式中、Rは同一でも、それぞれ異なっていても構わない。Rは具体的には、水素原子または、置換基を示し、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、nは0ないし2の整数である。)
また、式(3)の化合物と、任意の公知の電荷輸送物質を併用しても構わない。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物;テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物;ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子求引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物;アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの;あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を上記化合物と併用してもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ここで、単層型感光層を有する電子写真感光体、及び上記順積層型の電子写真感光体では、電荷輸送層または単層型感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能するため、電荷輸送層や単層型感光層は、露光光を遮断しないような露光光透過性の優れたものであることが好ましい。したがって、上述した電荷輸送物質と後述するバインダー樹脂との相溶性が高いことが好ましく、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが選択されて用いられること好ましい。また、良好な画像を形成するためには、上記電荷輸送物質や後述するバインダー樹脂が露光光を吸収しないものであることが好ましい。電荷輸送層や単層型感光層の露光光の透過率は、上述した電荷輸送物質の種類を選択したり、電荷輸送層の膜厚を調整することによって調整可能である。電荷輸送層や単層型感光層の露光光の透過率として、具体的には87%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上、特には95%以上であることが好ましい。上記露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば電荷輸送層や単層型感光層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
(バインダー樹脂)
次に、上記感光層に用いられるバインダー樹脂について説明する。上記感光層に用いられるバインダー樹脂の種類としては、積層型感光層の電荷発生層に用いられるバインダー樹脂と、積層型感光層の電荷輸送層及び単層型感光層に用いられるバインダー樹脂とにわけることができる。すなわち、積層型感光層の電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂及び単層型感光層に用いられるバインダー樹脂は同様とすることができる。
以下それぞれについて説明する。
〔積層型感光層の電荷発生層に用いられるバインダー樹脂〕
積層型感光層とする際の、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂;ポリビニルホルマール樹脂;ブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;変性エーテル系ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリアクリルアミド樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルピリジン樹脂;セルロース系樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリビニルピロリドン樹脂;カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂;ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーが挙げられるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで混合して用いてもよい。上記の中でも、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、またはブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂が好ましく、特には、ブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂が好ましい。
積層型感光層の電荷発生層における上記バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質は通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上とされる。また通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下とされる。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する場合がある。また低すぎる場合は電子写真感光体としての感度の低下をまねく場合がある。上記電荷発生物質の量は、上述した2種類以上のフタロシアニン化合物及びその他の電荷発生物質の総量とする。
また上記バインダー樹脂中に上記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際上記電荷発生物質の粒子を通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
〔積層型感光層の電荷輸送層及び単層型感光層に用いられるバインダー樹脂〕
積層型感光層の電荷輸送層及び単層型感光層に用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体またはその共重合体;ブタジエン樹脂;スチレン樹脂;酢酸ビニル樹脂;塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂;メタクリル酸エステル樹脂;ビニルアルコール樹脂;エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体;ポリビニルブチラール樹脂;ポリビニルホルマール樹脂;部分変性ポリビニルアセタール樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;セルロースエステル樹脂;シリコーン−アルキッド樹脂;ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;フェノキシ樹脂;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂;及びこれらの部分的架橋硬化物が挙げられる。また上記樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。またこれらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
また特に、積層型感光層の電荷輸送層または単層型感光層には、バインダー樹脂として、界面重合で得られた1種、または2種類以上のポリマーを含有することが好ましい。界面重合とは、互いに混ざり合わない2つ以上の溶媒(多くは、有機溶媒−水系)の界面で進行される重縮合反応を利用する重合法である。例えば、ジカルボン酸塩化物を有機溶媒に、グリコール成分をアルカリ水等に溶かして、常温で両液を混合させて2相にわけ、その界面で重縮合反応を進ませて、ポリマーを生成させる。他の2成分の例としては、ホスゲンとグリコール水溶液等が挙げられる。また、ポリカーボネートオリゴマーを界面重合で縮合する場合のように、2成分をそれぞれ、2相に分けるのではなく、界面を重合の場として、利用する場合もある。
上記界面重合における反応溶媒としては、有機相と水相との二層を使用するのが好ましく、有機相としてはメチレンクロライドが好ましく、水相としてはアルカリ性水溶液が好ましく用いられる。また上記反応時に、触媒を使用することが好ましく、反応で使用する縮合触媒の量は、例えばグリコールを反応させる場合、ジオールに対して通常0.005mol%以上、好ましくは0.03mol%以上である。また通常0.1mol%以下、好ましくは0.08mol%以下である。上記範囲を超えると、重縮合後の洗浄工程で触媒の抽出除去に多大の労力を要する場合がある。
また上記界面重合における反応温度は、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下であり、下限は通常10℃以上である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができない場合がある。一方、低いと、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなる場合がある。また反応時間は反応温度や目的とする組成物の種類等によっても左右されるが、通常0.5分以上、好ましくは1分以上であり、通常30時間以内、好ましくは15時間以内である。
また、有機相中の反応成分の濃度は、得られる組成物が可溶な範囲であればよく、具体的には、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。また通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下である。有機相の割合は水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。また、重縮合によって得られる有機相中の生成樹脂の濃度が5〜30重量%となるように溶媒の量が調整されることが好ましい。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、界面重縮合法に従い、初期の重縮合を完結させる。この際、重縮合条件を整えるために縮合触媒を含有させることが好ましい。上記重縮合時の有機相と水相との割合は容積比で有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。
上記界面重合により得られるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、特にポリカーボネート樹脂、またはポリアリレート樹脂が好ましい。また特に芳香族ジオールを原料とするポリマーであることが好ましく、好ましい芳香族ジオール化合物としては、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
または単結合を示し、R
1及びR
2は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、またはハロゲン化アルキル基を示し、Zは4〜20の置換または非置換の炭素環を示し、Y
1ないしY
8は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または、ハロゲン化アルキル基を示す。)
またさらに、下記構造式を有するビスフェノール、またはビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が電子写真感光体の感度及び残留電位の点から好ましく、中でも移動度の面からポリカーボネート樹脂がより好ましい。
上記ポリカーボネート樹脂に好適に用いる事の出来るビスフェノール及びビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限り、例示される構造に限定されるものではない。
また特に、本発明の効果をより効果的に発揮するためには、下記構造を示すビスフェノール誘導体を含有するポリカーボネートが好ましい。
また、機械特性向上のためには、ポリエステル、特にポリアリレートを使用することが好ましく、この場合は、ビスフェノール成分として下記構造を有するものを用いることが好ましい。
また酸成分としては、下記構造を有するものを用いることが好ましい。
また、テレフタル酸とイソフタル酸を使用する際は、テレフタル酸のモル比が多い方が好ましく、特に下記構造を有するものを用いることが好ましい。
ここで、積層型感光層の電荷輸送層、及び単層型感光層に使用されるバインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、いずれもバインダー樹脂100重量部に対して通常電荷輸送物質が20重量部以上であり、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以上がより好ましい。一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下、電荷輸送物質とバインダー樹脂との相溶性の観点からは好ましくは120重量部以下、さらに耐刷性の観点からは110重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは100重量部以下がとりわけ好ましい。
なお、単層型感光層の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、さらに上述した電荷発生物質、すなわち2種類以上のフタロシアニン化合物及びその他の電荷発生物質が分散される。その際、電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが好ましく、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。単層型感光層中に分散される電荷発生物質の量が少なすぎると充分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等が生じることがある。そのため、電荷発生物質の量は通常0.1重量%以上、好ましく1重量%であり、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。なお、上記電荷発生物質の量は、上述した2種類以上のフタロシアニン化合物及びその他の電荷発生物質の総量とする。
(その他の物質)
上記単層型感光層及び積層型感光層のいずれの層においても、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子求引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させてもよい。また感光層には必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。本発明では、これらを適宜、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
また電子写真感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、感光層の表面の層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでも良く、これらの樹脂からなる粒子や酸化アルミニウム等の無機化合物の粒子を含有させてもよい。
ここで、本発明においては特に下記の酸化防止剤及び電子求引性化合物が、感光層中のいずれかの層に含有されていることが好ましい。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、本発明の電子写真感光体に含まれる部材の酸化を防止するために用いられる安定剤の一種である。酸化防止剤は積層型感光層の電荷輸送層または単層型感光層に含まれることが好ましいが、その他のいずれの層に存在していても構わない。また複数の層に存在していてもよい。
酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があるものであればよく、具体的には、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等が挙げられる。
この中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等が好ましい。また、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、ヒンダードフェノール、またはトリアルキルアミン誘導体等がより好ましい。
またさらに、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を有するアリール化合物誘導体、及びヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体が特に好ましい。
また、該酸化防止剤の分子量が大きすぎると、酸化防止能が低下する場合があり、通常は分子量1500以下、特には分子量1000以下の化合物が好ましい。また下限は通常100以上、好ましくは150以上であり、更に好ましくは200以上である。
以下、本発明に使用できる酸化防止剤の例を示す。本発明に使用できる酸化防止剤としては、プラスチック、ゴム、石油、油脂類の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤として公知の材料すべてを用いる事ができるが、とりわけ下記の化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できる。本発明においては、このような酸化防止剤を1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のビンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のパラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体及び特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン類。
(4)特開昭57−188956号公報に記載のイオウ化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物及び特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−18355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体及びオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類等。
また、特に好ましくは下記に示す、ヒンダードフェノール類が好ましい。なお、ヒンダードフェノールとは、嵩高い置換基を、ヒドロキシ基近辺に有する、フェノール類を示す。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)、または1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)等が挙げられる。
上記、ヒンダードフェノール類の中でも、特に、ジブチルヒドロキシトルエン、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Octadecyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)、または1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン(1,3,5−trimethyl−2,4,6−tris−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzyl)−benzene)がより好ましい。
これらの化合物はゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
上記酸化防止剤の使用量は、特に制限されないが、電荷輸送層または単層型感光層に使用される場合、電荷輸送層または単層型感光層に含まれるバインダー樹脂100重量部当り通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上である。また良好な電気特性を得るため、通常30重量部以下であるが、酸化防止剤の量が多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性が低下する場合があるので、好ましくは、25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
<電子求引性化合物>
また、本発明の電子写真感光体中には電子求引性の化合物を有することが好ましく、特に電荷輸送層、または単層型感光層に含有することが好ましい。
電子求引性化合物として具体的には、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、ニトロ化合物、芳香族ハロゲン誘導体等が挙げられ、好ましくは、スルホン酸エステル化合物、有機シアノ化合物であり、特に好ましくはスルホン酸エステル化合物である。上記電子求引性化合物は1種のみを単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また電子求引性化合物の電子求引能力は、LUMOの値(以下、適宜LUMOcalとする)で予見することが可能であると解され、本発明においては、上記の中でも特に、PM3パラメーターを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化による(以下これを単に、半経験的分子軌道計算による、と記載する場合がある)LUMOcalの値が−0.5以上−5.0eV以下である化合物が好ましく用いられる。LUMOcalの絶対値が、0.5eVよりも小さくなると、電子求引性の効き目があまり期待できず、3.0eVを超えると、帯電の低下が懸念される。LUMOcalの絶対値は、より好ましくは、1.0eV以上であり、さらに好ましくは、1.1eV以上であり、特に好ましくは、1.2eV以上である。上記絶対値は、4.5eV以下が好ましく、さらに好ましくは、4.0eV以下であり、特に好ましくは、3.5eV以下である。
上記LUMOcalの絶対値が上記範囲内とされる化合物としては、以下の化合物があげられる。なお、Meはメチル基を表す。
本発明における電子写真感光体に用いられる上記電子求引性化合物の量は、特に制限されないが、上記電子求引性化合物が電荷輸送層または単層型感光層に使用される場合、電荷輸送層に含まれるバインダー樹脂100重量部当り通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上である。また良好な電気特性を得るため、通常10重量部以下であるが、電子求引性化合物の量が多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性が低下する場合があるので、好ましくは、8重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
(感光層の形成方法)
次に、感光層の形成方法について説明する。感光層が電荷発生層と電荷輸送層との2層から構成される積層型感光層であり、順積層型である場合には、2種以上のフタロシアニン化合物を含む電荷発生物質、バインダー樹脂、及びその他の物質を溶媒(または分散媒)に溶解(または分散)した塗布液を後述する導電性支持体上(下引き層等の中間層を設ける場合は、これらの中間層上)に塗布して電荷発生層を形成し、その電荷発生層上に上記電荷輸送物質、バインダー樹脂、及びその他の物質を溶媒(または分散媒)に溶解(または分散)した塗布液を塗布すること等により形成することができる。また逆積層型の場合は、上記塗布順序を逆にすることにより形成することができる。なお、上記電荷輸送層は単一の層であってもよく、また構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものであってもよい。
また感光層が上記単層型感光層である場合には、上記電荷輸送物質、バインダー樹脂、及びその他の物質を溶媒(または分散媒)に溶解(または分散)した塗布液中に2種以上のフタロシアニン化合物を含む電荷発生物質を分散させ、導電性支持体上((下引き層等の中間層を設ける場合は、これらの中間層上))に塗布することにより、単層型感光層を形成することができる。
以下、各層の形成に用いられる溶媒、及び塗布方法を説明する。
〔溶媒または分散媒〕
感光層の形成に用いられる溶媒または分散媒について、電荷発生層を形成する際に用いられる溶媒または分散媒と、電荷輸送層及び単層型感光層を形成する際に用いられる溶媒または分散媒とにわけて説明する。
<電荷発生層を形成する際に用いられる溶媒または分散媒>
上記電荷発生層の形成に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐、及び環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油;水等が挙げられ、下引き層等が形成されている場合には、これらの層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用して用いてもよい。
<電荷輸送層及び単層型感光層を形成する際に用いられる溶媒または分散媒>
上記電荷輸送層または単層型感光層の形成に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等があげられる。またこれらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用して用いてもよい。
〔塗布方法〕
感光層を形成するための塗布液の塗布方法としては、上記電荷輸送層、電荷発生層、及び単層型感光層のいずれの層を形成する場合においても下記の方法とすることができる。また積層型感光層を形成する場合、電荷輸送層の形成方法及び電荷発生層の形成方法は同じであってもよく、また異なっていてもよい。
塗布方法としては、例えばスプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等が挙げられる。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーであって、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送する方法が好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた感光層を得ることができる。
またスパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法では、単層型感光層を形成する場合、及び積層型感光層の電荷輸送層を形成する場合には、塗布液あるいは分散液の全固形分濃度を好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上とする。また好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下とする。また粘度を好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上とする。また好ましくは700mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下とする。
一方、積層型感光層の電荷発生層を形成する場合には、塗布液あるいは分散液の全固形分濃度を好ましくは1重量%以上、15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下とする。また粘度を好ましくは0.1〜10mPa・sとする。これにより膜厚の均一性に優れた感光層とすることができる。
上記塗布法により塗布膜を形成した後、塗膜を乾燥させるが、必要且つ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度時間を調整することが好ましい。乾燥温度は、高すぎると感光層内に気泡が混入する原因となり、低すぎると乾燥に時間を要し、残留溶媒量が増加して電気特性に悪影響を与えることがあるため、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。また通常250℃以下、好ましくは170℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
〔膜厚〕
上記方法により形成される感光層の膜厚としては、以下のものとすることができる。例えば積層型感光層の電荷発生層の膜厚としては、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上である。また4μm以下、好ましくは0.6μm以下である。また積層型感光層の電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上、長寿命、画像安定性の観点から好ましくは10μm以上である。また50μm以下、好ましくは45μm以下であり、特に高解像度の観点から30μm以下である。
またさらに単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上である。また100μm以下、好ましくは50μm以下である。膜厚が薄くなり過ぎると摩耗により電子写真感光体の寿命が短くなる可能性があり、膜厚が厚くなりすぎると露光光や電荷の拡散により画像の解像度が悪化する傾向がある。
[導電性支持体]
次に、本発明の導電性感光体に用いられる導電性支持体について説明する。導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を共存させて導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等を主として使用する。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、金属材料に陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより、金属材料表面に陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
陽極酸化被膜を施す場合、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行うことができるが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に上記金属材料を浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に上記金属材料を浸漬させる高温封孔処理を施すことが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選択可能であるが、水溶液濃度を3〜6g/lの範囲とした場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるための処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上である。また通常40℃以下、好ましくは35℃以下である。また、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上であり、通常6.5以下、好ましくは6.0以下で処理することが好ましい。
pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、または界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に共存させておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
また上記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いることが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/lの範囲内が好ましい。この際の処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また通常100℃以下、好ましくは98℃以下である。またさらに、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理することが好ましい。
pH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は通常10分以上、好ましくは15分以上とすることが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。更に、実質上塩類を含まない高温水や高温水蒸気で処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
なお、陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件とすることが好ましい。しかしながら強い封孔条件とすると生産性が低下すると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じる場合がある。したがって、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下とされることが好ましい。
上記導電性支持体の表面は、平滑であっても良く、また特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであっても良い。
なお、上記導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のために、後述する下引き層を設けても良い。
[下引き層]
本発明の電子写真感光体には、上記感光層と導電性支持体との間に下引き層を有していてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。下引き層には、上記1種類の粒子のみを用いても良く、複数の種類の粒子を任意の比率及び組み合わせで混合して用いても良い。
上記金属酸化物粒子の中でも、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。なお酸化チタン粒子は、表面が、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物等によって処理されていてもよい。また酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の粒径としては、特に限定されないが、下引き層の特性、および下引き層を形成するための溶液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上であることが好ましく、また通常100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
ここで、下引き層は上記金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成することが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等が良好な分散性及び塗布性を示すことから好ましい。
上記バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の混合比は任意に選べるが、10重量%から500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。また下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、電子写真感光体の特性、および上記分散液の塗布性から0.1μm以上、20μm以下とすることが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を含んでいても良い。
[その他の層]
また本発明の電子写真感光体は、上述した導電性支持体、感光層、及び下引き層以外に必要に応じて適宜他の層を有していてもよく、例えば感光層上には電気的、機械的劣化を防止する目的で保護層等を設けてもよい。
[電子写真感光体の用途]
本発明の電子写真感光体は、波長380nm〜500nmの単色光により電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する画像形成装置に用いられる。このような露光波長を有する画像装置としては、「B.画像形成装置」で説明するものと同様とすることができる。
B.画像形成装置
次に、本発明における画像形成装置について説明する。本発明における画像形成装置は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に対し波長380nm〜500nmの単色光により像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段と、前記電子写真感光体上に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体上の前記トナー像を被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置である。また前記電子写真感光体が、導電性支持体、及び前記導電性支持体上に形成された感光層を有し、上記感光層は2種類以上のフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする。
従来より、静電潜像を形成する際の露光スポットを均一に小径化することが可能であり、高解像度化が可能であるという観点から、波長380nm〜500nmの単色光を像露光手段に用いた画像形成装置が検討されていたが、既存の電子写真感光体を用いると、上記波長における感度が低い場合や、露光波長依存性や露光波長のブレによる感度の変動が大きい場合があり、安定した画像形成が難しいという課題があった。
一方、本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体は波長380〜500nmの単色光に対して非常に高感度である。また上記範囲の露光波長の変化に対する依存性が緩和され、露光波長のブレによる感度の変動が少ない。したがって、本発明の画像形成装置によれば、高解像度で安定して画像形成が可能となる。
以下、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電手段2、像露光手段3及び現像手段4、及び転写手段5を備え、必要に応じてクリーニング手段6及び定着手段7が設けられる。
本発明の画像形成装置において、次のようにして画像の記録が行なわれる。電子写真感光体1は、所定の軸(図示せず)を中心に、所定の周速度をもって回転駆動する。電子写真感光体1は、その回転過程において、帯電手段2によりその表面(感光層)が正又は負の所定電位の所定の電位(例えば−600V)に帯電される。次いで像露光手段3から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光を受ける。これにより、電子写真感光体1の表面(感光層)に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されることとなる。
形成された静電潜像は、次いで現像手段4内のトナーで正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化される。具体的には、現像手段4が、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。
その後、給紙部Pから電子写真感光体1と転写手段5との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送された被転写体(記録紙)Pに、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が転写手段5により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(図示せず)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
トナー画像の転写を受けた被転写体(記録紙)Pは、電子写真感光体1面から分離されて定着手段7へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段6によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収する構成等とすることもできる。また、上記画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば電子写真感光体の除電を行う(除電工程)ことができる除電手段(図示せず)を有する構成としても良い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下、本発明の画像形成装置の各構成ごとに説明する。
[電子写真感光体]
上記電子写真感光体1は、導電性支持体上に2種類以上のフタロシアニン化合物を含有する感光層を有する電子写真感光体であれば特に制限はなく、上述した「A.電子写真感光体」で説明したものと同様とすることができる。図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電手段2、像露光手段3、現像手段4、転写手段5及びクリーニング手段6がそれぞれ配置されている。
なお、電子写真感光体1及び後述する帯電手段2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、電子写真カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計される。例えば電子写真感光体1や帯電手段2が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるような構成とされる。また例えば電子写真感光体1、帯電手段2、及び後述する転写手段に用いられるトナーが備えられた構成の電子写真カートリッジとすることも可能である。
[帯電手段]
帯電手段2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させることが可能なものであれば特に限定されない。図1では帯電手段2の一例としてローラ型の帯電手段(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電手段、帯電ブラシ等の接触型帯電手段などがよく用いられる。接触型帯電手段の材料としては、導電性を付与した弾性体が一般的である。
また接触帯電手段に印加される電圧としては、直流電圧のみでも良く、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧でも良い。ここで言う振動電圧とは、時間と共に周期的に電圧値が変化する電圧であり、交流電圧は、直流電圧のみ印加時における感光体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有することが好ましい。
[像露光手段]
像露光手段3は、電子写真感光体1に波長380nm〜500nmの単色光により像露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようなものであってよい。露光を行なう際の光は、通常波長380nm以上、500nm以下の短波長の単色光であるが、好ましくは430nm以下の単色光である。
[現像手段]
現像手段4は、上記電子写真感光体1上に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成することが可能なものであれば、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の手段を用いることができる。図1では、現像手段4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。
また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像手段4に付帯させる構成としてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能となるように構成される。
また多くの場合、トナーTはトナーカートリッジ中に蓄えられ、画像形成装置本体から取り外し可能に設計される。使用しているトナーカートリッジ中のトナーTが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるような構成とすることが、トナーTの補給の利便性等の面から好ましい。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロール等から形成される。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
通常、現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。本発明に用いられるトナーについて、以下説明する。
<トナー>
本発明で用いられるトナーは、どのような方法で製造されるものであっても構わないが、水系媒体中で製造されたトナー粒子、いわゆる重合法トナーが好ましい。重合法トナーとしては、懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法トナーが挙げられる。特に、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径および円形度を調整することができるので好ましい。また、離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性などを改良するためにトナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、バインダー樹脂に対して5%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、上述した特許文献1及び2に記載のごとく、低軟化点物質を多量(5〜30%)に含有することを特徴としている。
以下、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、洗浄・乾燥工程を有する。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤、ワックス、帯電制御剤等の分散液を混合し、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行い、その後に融合させて得られた粒子を洗浄、乾燥することにより母粒子が得られる。
バインダー樹脂の微粒子(重合体一次粒子)としては、特に限定されないが、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、バインダー樹脂を粉砕することによって得られる微粒子のいずれでもよいが、重合法、特に乳化重合法、なかでも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、バインダー樹脂がワックスを包み込んだ形状の微粒子を製造することができる。この方法によればワックスをトナーの表面に露出させずに含有させることができるので、ワックス粒子による顔料粒子の付着阻害がなく、またトナーの帯電性を損なうこともなく、かつトナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合して得られたバインダー樹脂の微粒子を用いる方法について説明する。
乳化重合法としては、従来より知られている方法に従って行えばよく、通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合によりバインダー樹脂を与える重合性単量体すなわち重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、及び必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等を共存させて、攪拌して重合を行うことにより、重合体がワックスを包み込んだ形状をもつバインダー樹脂微粒子が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。重合体がワックスを包み込んだ形状としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型などが挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
ワックスとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類または部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50℃以上、100℃以下に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。
ワックスを用いる場合、バインダー樹脂100重量部に対して3重量部以上の割合で用いるのが好ましい。なかでも5重量部以上が好ましい。またその上限は通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
重合性単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
酸性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
塩基性モノマーとしては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらのなかでも、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましく、特にスチレン類としてスチレン、(メタ)アクリル酸エステル類としてアクリル酸ブチル、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてアクリル酸であることが好ましい。
ワックスをシードとして乳化重合を行う際には、酸性モノマーまたは塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマーまたは塩基性モノマーを重合に供する場合には、全重合性単量体100重量部に対して、通常は0.05重量部以上となるように用いる。中でも0.5重量部以上、特に1重量部以上となるように用いるのが好ましい。また、上限は通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。酸性モノマーや塩基性モノマーを併用することにより、バインダー樹脂の分散安定性を向上させることができる。
多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は、重合性単量体100重量部に対して、通常は0.005重量部以上となるようにする。中でも0.1重量部以上、更には0.3重量部以上となるようにするのが好ましい。またその上限は、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類、過酸化水素等の無機過酸化物類等が挙げられる。中でも無機過酸化物類が好ましい。これらは1種でも、2種以上を併用してもよい。これらは、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05重量部以上、2重量部以下の割合で用いられる。
また、過硫酸塩類、有機または無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等を併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種でも、2種以上を併用してもよい。
乳化剤としては、通常、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。
これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。乳化剤は1種でも、2種以上を併用してもよい。乳化剤は、重合性モノマー100重量部に対して、通常1重量部以上、10重量部以下の割合で用いられる。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体的には、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。これらは1種でも、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができ、具体的には、部分または完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等などが挙げられる。
内添剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
液状媒体は、通常は水であり、重合性単量体に対して1重量倍以上、20重量倍以下の量を用いる。乳化重合反応の反応温度は、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。また通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
液状媒体への重合性単量体の混合の方法は特に限定されず、一括混合、連続混合、間欠混合のいずれでもよいが、反応制御の点からは連続的に混合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に混合してもよく、また予め混合した後混合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら混合してもよい。また、乳化剤は液状媒体へ予め混合しておくのが好ましいが、連続的に液状媒体に混合してもよい。
バインダー樹脂の微粒子としては、1種類を用いても、異なる原料や反応条件で製造した2種以上を併用してもよい。
乳化重合によって得られたバインダー樹脂のエマルジョンには、乳化重合以外の方法で得られたバインダー樹脂の微粒子を混合してもよい。乳化重合以外の方法で得られた微粒子としては、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子などが挙げられる。このような樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体または共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などの熱硬化性樹脂等からなる粒子が挙げられ、これらは1種でも、2種以上を併用してもよい。乳化重合以外の重合方法で得られた微粒子のバインダー樹脂の微粒子全体に占める割合は、通常5重量%以下である。
バインダー樹脂の微粒子としては、体積平均粒径が通常0.02μm以上のものを用いる。中でも、体積平均粒径が0.05μm以上、更には0.1μm以上のものを用いるのが好ましい。また、その上限は通常3μm以下であるが、2μm以下、更には1μm以下のものが好ましい。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
バインダー樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、3000以上、10万以下に存在することが好ましい。特には1万以上、さらには3万以上、また、特には7万以下、さらには6万以下に存在するのがより好ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる傾向がある。ここで、前記ピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。
特にバインダー樹脂がスチレン系樹脂である場合には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量は、下限が2000以上であるのが好ましく、中でも2500以上、さらには3000以上であればなお好ましい。また上限は、5万以下であるのが好ましく、4万以下であればなお好ましい。
また、重量平均分子量は、下限が2万以上であるのが好ましく、3万以上であればなお好ましい。また上限は、100万以下であるのが好ましく、50万以下であればなお好ましい。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記範囲のスチレン系樹脂を用いたトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好である。さらに分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、好ましくはスチレン類が50重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上を占めるものを指す。
バインダー樹脂の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、特に140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、通常80℃以上、特に100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。ここでSpは、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行ったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
バインダー樹脂のガラス転移点(以下「Tg」と略記することがある)は、80℃以下、特に70℃以下であるのが好ましい。Tgが高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。またTgの下限は、40℃以上、特に50℃以上であるのが好ましい。Tgが低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。ここでTgは、示差走査熱量計(島津製作所社製DTA−40)において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。バインダー樹脂のSp、Tgは、樹脂の種類およびモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
バインダー樹脂の微粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子の水系分散体を加えて凝集させ、バインダー樹脂、顔料を含む凝集体のエマルジョンを得る。その際には、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、内添剤等を共存させてもよい。顔料粒子分散体の安定性を保持するために、前記した乳化剤を加えてもよい。
また着色剤粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子(樹脂粒子として約1.1〜1.3g/cm3)との密度差が小さい方が均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するので、その真密度はJIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度が2.0g/cm3未満であるのが好ましく、好ましくは1.2g/cm3以上、より好ましくは1.3g/cm3以上であり、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下である。真密度が大きい場合は、特に水系媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性等も考慮すると、着色剤はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の顔料の例示としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料が挙げられ、黒色顔料としてカーボンブラックまたは以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料としてカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。本発明者らの検討によると、カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が激しい傾向を示した。そして、不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であるのが好ましく、0.03以下であるのが一層好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
カーボンブラックの紫外線吸光度(λc) は、次の方法で求める。まずカーボンブラック3gをトルエン30mlに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)から、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)などがある。
イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物などに代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、その鮮明な色相や高い耐光性などからマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物であるのが、分散性の上で特に好ましい。
シアン顔料としては、銅フタロシアニン及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
着色剤分散体における以上の着色剤粒子の使用量は、水100重量部に対して、通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、また通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。着色剤の量が前記範囲を超える場合には、着色剤濃度が濃いので分散中に粒子の再凝集の確率が高まることがあり、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって本発明における粒度分布を得ることが困難となる場合がある。
顔料を分散させ、上記した粒子径を得る手法としては、さまざま公知の湿式ミルが提案されており、いずれも好適に使用しうる。この種のものとしては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられるので、適宜条件を選べばよい。各方式の概要は以下の通りである。
・ボールミル:ドラム状容器の中に湿式分散媒、被粉砕物及び10〜30mm程度のメデイアビーズを入れ、ドラムごと回転させてビーズとビーズ、ビーズとドラムの間で被粉砕物を磨り潰す方式。
・アトライター:湿式分散媒、被粉砕物をタンクに入れ、3〜15mm程度のメディアビーズを入れアルミナ製などのアジテータアームで強制的に撹拌して摩砕する方式。
・サンドミルは、湿式分散媒と被粉砕物をプレミックスしたものに1〜5mm程度のメデイアビーズを加えた後、サンドディスクを浸漬して規定速度で回転・機動させる方式。
・ビーズミル(アニュラー型):容器のロータとステータの間に1〜3mm程度のメディアビーズを充填し、ロータを高速回転させることでビーズ間に流動速度差を与えることで発生するずり応力、剪断力、摩擦などによって粉砕分散を行う方式。
本発明においては、顔料分散体中の顔料粒子の体積粒度分布は動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。これら顔料粒子の体積粒子径の値は、水系中に着色剤粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての顔料、ウエットケーキの粒径を意味していない。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定にて行うことができる。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度(g/cm3):1
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように着色剤分散体を純水で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定したものである。
なお、ワックス分散液、重合体分散液についても上記と同様の方法で粒度分布を測定することができる。
また、バインダー樹脂に対する顔料の量の割合は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた着色剤分散液を調製し、これをバインダー樹脂微粒子のエマルジョンに混合するが好ましい。着色剤分散液の調製に用いられる界面活性剤としては、上述のものが用いられ、特に非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。着色剤分散液に占める着色剤の割合は、通常10重量%以上、50重量%以下である
なお、バインダー樹脂粒子及び顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向があるので、その導電率を好ましくは10μS/cm以下に、より好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行う。
本発明におけるエマルジョンの凝集方法としては、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、電解質を混合する方法が好ましい。
電解質を混合して凝集を行う場合の電解質としては、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の硫酸塩などの無機塩、CH3COONa、C6H5SO3Na等の有機塩が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
電解質の混合量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。電解質を混合して凝集を行う場合において、電解質の混合量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない可能性があり、また、電解質の混合量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。得られた凝集体は、前述の二次凝集体と同じく、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は二次凝集体の場合と同様の条件で行えばよい。
加熱により凝集を行う場合は、通常15℃以上、好ましくは20℃以上であり、通常バインダー樹脂のTg以下、好ましくは55℃以下である。また、通常10分以上、好ましくは60分以上であり、また300分以内、好ましくは180分以内攪拌を行う。攪拌装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤としては、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが挙げられる。負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩または金属錯体、カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩または金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等などが挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。帯電制御剤は1種でも2種以上を併用してもよい。
帯電制御剤の割合は、バインダー樹脂100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、また10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
本発明における乳化重合凝集法においては、前記顔料粒子と異ならず、帯電制御剤も水系媒体に乳化した状態として、凝集時に加える。
得られた凝集粒子は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行った後に、カプセル化工程に進んでもよい。そして、望ましくは、凝集工程の後に、カプセル化工程を行い、その後凝集一次粒子とカプセル化樹脂微粒子を合わせて、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移点以上の温度で加熱して融合工程を行うのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化など)を生じないので好ましい。
凝集粒子に樹脂被覆層を形成させる工程とは、トナー粒子の表面を樹脂により被覆層を形成させ、着色剤が実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得るための工程であり、この際の被覆層の厚さは0.01μm以上、0.5μm以下あるのが好ましい。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法等が挙げられる。上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集粒子と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集粒子表面に樹脂被覆層を形成することができる。前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集粒子と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子を気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集粒子表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)などの装置が使用できる。
上記in−situ重合法としては、例えば、凝集粒子を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を共存させ、凝集粒子表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集粒子表面に樹脂被覆層を形成することができる。
上記液中粒子被覆法としては、内層を形成する凝集粒子と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集粒子の表面に樹脂被覆層を形成することができる。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はないが、外層の厚みがコントロールできるという観点から、重合体一次粒子、凝集粒子もしくは凝集粒子の融合粒子であることが好ましい。上記外層を構成する重合体一次粒子、凝集粒子及び融合粒子は、内層に使用する凝集粒子における重合体一次粒子、凝集粒子及び融合粒子と同様の重合体を使用し、同様の製造方法で製造することができる。樹脂微粒子は、トナー粒子に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下の割合で用いるが好ましい。樹脂微粒子とは、トナー粒子よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子を意味し、固着または融合を効果的に行うために、粒径0.04μm以上、1μm以下のものが好ましく用いられる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移点(Tg)としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上であり、また通常、上限は110℃である。重合体一次粒子より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであるのがより好ましい。Tgが低すぎると、一般環境での保存が困難であり、また高すぎては充分な溶融性が得られない可能性がある。
樹脂被覆層形成の後の融合工程では、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移点以上の温度で加熱処理することにより、凝集体を構成するバインダー樹脂及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされる、球形に近いトナー粒子を得ることができる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態が得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移点以上の温度(当然、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移点の温度以上)であり、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度+5(℃)以上が好ましい。その上限は、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度+50(℃)以下が好ましい。加熱処理の時間は、処理能力、製造量にもよるが通常0.5〜6時間である。
本発明に用いられるトナー粒子において、水性媒体中で凝集粒子の表面に樹脂被覆層を形成させて製造する場合には、該カプセル化トナー粒子の水性分散液を脱水し、乾燥して粉体状の樹脂被覆トナー粒子を得、本発明に用いられるトナーとすることができる。
このようにして得られるトナー粒子の体積平均粒径Dvは、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上であり、また好ましくは10μm以下、より好ましくは8μmである。また、トナーは、体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)が、1.0以上であることが好ましい。また通常1.25以下、好ましくは1.20以下、特に1.15以下であれば更に好ましい。Dv/Dnの値は、粒度分布の状態を表し、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表し、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
トナーは、粒径25μm以上の体積分率が通常1%以下、特に0.5%以下であるのが好ましい、この値は小さいほど好ましく、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましい。粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にする必要はない。
さらに、粒径15μm以上の体積分率が通常2%以下、特に1%以下、更に0.1%以下であることが好ましい。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下とする必要はない。
また、粒径5μm以下の個数分率が通常15%以下、特に好ましくは10%以下であり、上記値以下であると、画像カブリの改善に効果があるので好ましい。
ここで、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続し、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。トナーの個数・体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、個数平均径、体積平均径を求める。
また、本発明に用いられるトナー、特に乳化重合凝集法で製造されるトナーの形状は球形に近いものが好ましく、平均円形度が、好ましくは0.940以上、より好ましくは0.950以上、更に好ましくは0.960以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあるが、クリーニング不良が起こり易く、また完全な球状トナーを作ることは製造上困難であるので、前記平均円形度は、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度を下式(1)により求める。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理した時の粒子像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水20ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加え、更に測定試料を0.05g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
トナーの軟化点(Sp)は、低エネルギーで定着する観点から150℃以下、特に140℃以下が好ましい。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは軟化点が80℃以上、特に100℃以上であるものが好ましい。
また、トナーのガラス転移点(Tg)は、通常80℃以下であり、特に70℃以下であると低エネルギーで定着できるので好ましい。また、ガラス転移点は、通常40℃以上であり、特に50℃以上であるものが耐ブロッキング性の点で好ましい。
トナーの軟化点、ガラス転移点の測定は、前記したバインダー樹脂の測定方法に準ずる。
トナーの軟化点、ガラス転移点は、バインダー樹脂の種類および組成比に大きく影響を受けるため、これらを適宜最適化することにより調整することができる。また、バインダー樹脂の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類および配合量によっても調整することが出来る。
トナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として通常0.1μm以上、特に0.3μm以上であるのが好ましく、上限は通常3μm以下、特に1μm以下であるのが好ましい。分散粒径が小さすぎると、トナーの耐フィルミング性改良の効果得られない可能性があり、また分散粒径が大きすぎると、トナーの表面に露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーのバインダー樹脂を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法などにより確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
また、トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性などを向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法としては、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法、二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合または固着させる方法などが挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子を混合する場合に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサーなどが挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に攪拌、混合することによりなされることが好ましい。
乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る装置や、粒子表面を溶融処理することのできる装置などが挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えばホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子の混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用でき、具体的には、無機微粒子、有機微粒子などが挙げられる。
無機微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。さらには、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質を用いてもよい。
有機微粒子としては、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。外添微粒子は1種でも、2種以上を併用してもよい。
また、これらの無機または有機微粒子の表面は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化などの表面処理が施されていてもよい。処理剤は1種でも、2種以上を併用してもよい。
外添微粒子の数平均粒径は、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。外添微粒子の平均粒径は電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
トナーに占める外添微粒子の割合は、0.1重量%以上が好ましい。より好ましくは0.3重量%以上であり、更には0.5重量%以上であれば特に好ましい。また上限は、10重量%以下であるのが好ましく、6重量%以下がより好ましく、更には4重量%以下であればなお好ましい。
トナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であっても良く、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤などのトナー母粒子構成物の選択および組成比、外添微粒子の選択および組成比等により調整することができる。
トナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。
二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10μm以上、200μm以下の平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5重量部以上、100重量部以下の割合で用いるのが好ましい。
電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナーおよび必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
[転写手段]
転写手段5は、上記電子写真感光体1上に形成されたトナー像を被転写体に転写することが可能なものであれば、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた手段とすることができる。例えば転写手段5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとすることができる。この転写手段5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を被転写体(記録紙)Pに転写する。
[クリーニング手段]
クリーニング手段6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。その種類に特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング手段を用いることができる。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング手段6は無くても構わない。
[定着手段]
定着手段7は、例えば上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成されるもの等とすることができ、通常、定着部材71または72の内部には加熱装置73が通常備えられる。図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
被転写体(記録紙)P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて被転写体(記録紙)P上にトナーが定着される。
なお、定着手段についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着手段を設けることができる。
[除電手段]
除電手段としては、上記電子写真感光体の除電を行うことが可能な手段であれば特に限定されるものではない。除電方法としては、通常、蛍光灯、LED等を用いて電子写真感光体にエネルギーを照射する方法が挙げられる。なお上記除電工程で用いる光は、強度としては像露光の際の露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
C.電子写真カートリッジ
次に、本発明における電子写真カートリッジについて説明する。本発明における電子写真カートリッジは、導電性支持体、及び前記導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した前記電子写真感光体に対し像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段、前記電子写真感光体上に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段、前記電子写真感光体上の前記トナー像を被転写体に転写する転写手段、前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留する電荷を除去する除電手段、及び前記トナー像の転写後に前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段のうちの少なくとも一つとを備え、前記感光層は2種類以上のフタロシアニン化合物を含有することを特徴とするものである。
本発明の電子写真カートリッジは、上記電子写真感光体と、帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、除電手段、及びクリーニング手段から選ばれる一つ、または二つ以上の手段とを有するものであれば、その構成は特に限定されるものではない。上記電子写真カートリッジに用いられる電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、除電手段、及びクリーニング手段は、それぞれ上述した「B.画像形成装置」で説明したものと同様とすることができる。
この電子写真感光体カートリッジは、通常、複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成とすることができる。この場合、例えば電子写真感光体やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
本発明の電子写真カートリッジにおいては、上記電子写真感光体における感光層中に2種類以上のフタロシアニン化合物が含有されていることから、波長380〜500nmの単色光に対して非常に高感度なものとすることができる。また本発明の電子写真カートリッジは、上記範囲の露光波長の変化に対する依存性が少なく、露光波長のブレによる感度の変動も少ない。したがって、本発明の電子写真カートリッジは、「B.画像形成装置」で説明したような、波長380nm〜500nmの単色光を像露光手段に用いる画像形成装置に好適に用いることが可能であり、このような画像形成装置において、高解像度で安定して画像形成が可能である。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは「重量部」を表す。また、電荷輸送層に用いた樹脂の粘度平均分子量は、以下のようにして算出した。樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量を算出した。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t0−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
[実施例1]
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを導電性支持体として用い、この上に下記の電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布して乾燥し、電荷発生層を形成した。この電荷発生層の上に、下記の電荷輸送層塗布液をアプリケーターで塗布し、室温で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を有する電子写真感光体Aを製造した。この際に用いた電荷輸送層塗布液を、石英ガラス上に乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布、乾燥して得られたサンプルを、同等の石英ガラスをバックグラウンドとして、株式会社島津製作所製分光光度計UV1650PCを用いて427nmの光に対する透過率を測定したところ、99.9%であった。
・電荷発生層塗布液
CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図2に示すような回折ピークを有する下記式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと下記式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1重量比)20部に、1,2−ジメトキシエタン280部を加え、サンドグラインドミルで4時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。さらに、分散処理後に1,2−ジメトキシエタン226部混合することにより得られた微粒化分散処理液を希釈した。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)5部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)5部を1,2−ジメトキシエタン156部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン77部の混合溶液に溶解したバインダー溶液と混合することにより、固形分濃度3.9重量%の電荷発生層塗布液を調製した。
・電荷輸送層塗布液
下記式(5)で示される化合物70部を電荷輸送物質として用い、また、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位51モル%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位49モル%とからなり、p−t−ブチルフェノールに由来する末端構造式を有する下記式(6)のポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)100重量部をバインダー樹脂として用い、その他に、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール8重量部、シリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。
[実施例2]
実施例1において、式(5)に表される化合物の使用量を90部とした電荷輸送層塗布液を使用した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体Bを製造した。この際に用いた電荷輸送層塗布液を用いて、実施例1と同様にして427nmの光に対する膜の透過率を測定したところ、99.9%であった。
[実施例3]
実施例1において、式(5)に表される化合物の使用量を50部とした電荷輸送層塗布液を使用した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体Cを製造した。この際に用いた電荷輸送層塗布液を用いて、実施例1と同様にして427nmの光に対する膜の透過率を測定したところ、99.9%であった。
[実施例4]
実施例1において、式(5)に表される化合物の代わりに、下記式(7)の化合物を使用した以外は、すべて実施例1と同様にして、電子写真感光体Dを製造した。この際に用いた電荷輸送層塗布液を用いて、実施例1と同様にして427nmの光に対する電荷輸送層の透過率を測定したところ、99.9%であった。
[参考例5]
実施例1で用いたオキシチタニウムフタロシアニンとフルオロオキシチタニウムフタロシアニンの混晶をCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図3に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと下記式(C)で示されるフルオロクロロガリウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロクロロガリウムフタロシアニン=3:1 重量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Eを得た。
[参考例6]
実施例1で用いたオキシチタニウムフタロシアニンとフルオロオキシチタニウムフタロシアニンの混晶をCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図4に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと下記式(D)で示されるフルオロクロロインジウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロクロロインジウムフタロシアニン=3:1 重量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Fを得た。
[参考例7]
実施例1で用いたオキシチタニウムフタロシアニンとフルオロオキシチタニウムフタロシアニンの混晶をCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図5に示すような回折ピークを有する式(E)で示されるクロロガリウムフタロシアニンと上記式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(クロロガリウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1 重量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Gを得た。
[参考例8]
実施例1で用いたオキシチタニウムフタロシアニンとフルオロオキシチタニウムフタロシアニンの混晶をCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図6に示すような回折ピークを有する式(E)で示されるクロロガリウムフタロシアニンと上記式(D)で示されるフルオロクロロインジウムフタロシアニンからなる混晶(クロロガリウムフタロシアニン:フルオロクロロインジウムフタロシアニン=3:1 重量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Hを得た。
[比較例1]
実施例1におけるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図1に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1 重量比)を図7に示すCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)7.6°、22.5°、24.2°、25.3°、28.6°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンに変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Iを得た。
[比較例2]
実施例1におけるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図1に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1 重量比)を図8に示すCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンに変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Jを得た。
[比較例3]
実施例1におけるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図1に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1 重量比)を図9に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するX線回折チャートを有するクロロガリウムフタロシアニンに変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、電子写真感光体Kを得た。
<電気特性評価1>
得られた各電子写真感光体A〜Kを、ジョバン・イボン社製のモノクロメーターを搭載した感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光および電位測定による電気特性の評価を行った。
各電子写真感光体を、−700V以上の任意の表面電位に帯電させ、帯電した電子写真感光体に対してハロゲンランプの集光をモノクロメーターで分光した任意の単色光を10秒間露光しながら表面電位を測定し、表面電位が−700Vから−350Vとなるまでの露光量(μJ/cm2以下、感度ということがある)を求めた。
それぞれの感光体について露光波長395nm、405nm、415nmで測定を行い感度を算出した。
得られた各波長の感度を下記式で計算することにより露光波長405nm対する感度の変動率を算出した。
上記式で得られる値は、405nmの波長で露光した時を標準感度とし、そこからそれぞれ±10nm露光波長を変更したときに、どの程度感度が変動したかを示す値である。よってこの値が100%に近い値を示すほど露光波長が変化した際に感度の露光波長依存性の少ないということを示す。
表1にオキシチタニウムフタロシアニンを少なくとも含有する電子写真感光体についての感度、表2にオキシチタニウムフタロシアニンを少なくとも含有する電子写真感光体についての感度の変動率、また表3にクロロガリウムフタロシアニンを少なくとも含有する電子写真感光体についての感度、表4にクロロガリウムフタロシアニンを少なくとも含有する電子写真感光体についての感度の変動率を示す。
表2及び表4を見て明らかな通りに、オキシチタニウムフタロシアニン、又はクロロガリウムフタロシアニンそのものだけを含む電子写真感光体(比較例)と比較して、その他のフタロシアニンを含む感光体は露光波長が405nmから395nm、又は415nmに振れた場合でも感度の変動が少なくなっているのが分かる。
以上の結果から感光層中に少なくとも2種以上のフタロシアニンを含む電子写真感光体は380〜500nmの露光波長において、露光波長に対して高い感度を示し、かつ露光波長の変化に対する感度の依存性が少なく、非常に安定性の高い電子写真感光体であることが明らかとなった。
[実施例9]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(a)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(b)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(c)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(d)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(e)で表わされる化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用分散液Aを得た。
この下引き層形成用分散液Aを、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ351mm、厚さ1.0mm)に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
次に、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が図2に示すような回折ピークを有する式(A)で示されるオキシチタニウムフタロシアニンと式(B)で示されるフルオロオキシチタニウムフタロシアニンからなる混晶(オキシチタニウムフタロシアニン:フルオロオキシチタニウムフタロシアニン=3:1 重量比)20部に、1,2−ジメトキシエタン280部加え、サンドグラインドミルで4時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。さらに、分散処理後に1,2−ジメトキシエタン226部混合することにより得られた微粒化分散処理液を希釈した。希釈した後に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)5部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)5部を1,2−ジメトキシエタン156部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン77部の混合溶液に溶解したバインダー溶液と混合することにより、固形分濃度3.9重量%の電荷発生層塗布液を調製した。
この電荷発生層塗布液を使用して、前記下引き層の上に、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
次に、下記式(CT−1)で表される化合物35部と、下記(CT−2)で表される化合物35部と、下記式(AO1)を有する酸化防止剤4部、および、下記式(A−1:LUMOcal=−1.36eV)を有する電子受容性化合物0.5部、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部、式(9T)で表されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50,000)100部を、テトラヒドロフラン480部およびトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製し、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する電子写真感光体Lを得た。
[実施例10]
実施例9において用いた、式(9T)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂の代わりに、下記式(10T)で表される粘度平均分子量39,200のポリカーボネート樹脂を使用した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体Mを得た。
[実施例11]
実施例9において用いた、式(9T)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂の代わりに、下記式(11T)で表される粘度平均分子量28,800のポリカーボネート樹脂を使用した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体Nを得た。
[実施例12]
実施例9において用いた、式(9T)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂の代わりに、下記式(12T)で表される粘度平均分子量39,000のポリカーボネート樹脂を使用した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体Oを得た。
[実施例13]
実施例9において用いた、式(9T)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂の代わりに、下記式(13T)で表される粘度平均分子量41,000のポリアリレート樹脂を使用した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体Pを得た。
[実施例14]
実施例9において用いた、式(9T)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂の代わりに、下記式(14T)で表される粘度平均分子量30,000のポリカーボネート樹脂を使用した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体Qを得た。
<電気特性評価2>
上記で得られた電子写真感光体を、電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
各電子写真感光体を外径80mmのアルミニウム製ドラムに巻き付け、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム蒸着層を電気的に導通させ、回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、露光はハロゲンランプの光を干渉フィルターで波長405nmの単色光としたものを用いて、表面電位が−350Vとなる露光量(以下、感度E1/2ということがある)と光量1.0μJ/cm2で露光した時の表面電位(以下、VLとい
う)を求めた。露光から電位測定までの時間は、389ミリ秒とした。除電光には75ルックスの白色光を用いて、露光幅は5mmとした。除電光照射後の残留電位(以下、Vrという)を測定した。
感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、VLは露光後の電位であり、Vrは除電光照射後の電位であり、いずれもより値の小さい方が電気特性として優れる。
結果を下記表5に示す。
以上の結果から、本発明の電子写真感光体は種々のバインダーにおいても、良好な電気特性を示していることがわかる。
[トナーの製造]
<現像用トナーの製造1>
・ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1の調製
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、融点82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A、以下適宜「20%DBS水溶液」と略称する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径を250nmまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液T1(エマルション固形分濃度=30.2重量%)を作製した。
・シリコーンワックス分散液T2の調製
アルキル変性シリコーンワックス(融点72℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液T2(エマルション固形分濃度=27.4重量%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液T1の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1を35.6重量部(712.12g)と、脱塩水259部とを仕込み、回転数103rpmで攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、下記のモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて混合した。このモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて混合し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて混合し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T1を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は280nmであり、固形分濃度は21.1重量%であった。
・重合体一次粒子分散液T2の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液T2を23.6重量部(472.3g)と、20%DBS水溶液1.5重量部と、脱塩水324部とを仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、103rpmで攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括混合した。
その5分後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始(8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括混合した時から5分後)から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて混合し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 18.9部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T2を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
・着色剤分散液Tの調製
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積累積50%径Dv50は約90μmであった。上記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行なった。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は約0.5リットルであり、メデイアの充填容積は0.35リットルとしたので、メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約50リットル/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散体Tを得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は150nmであり、固形分濃度は24.2重量%であった。
・現像用母粒子Tの製造
重合体一次粒子分散液T1 固形分として95部 (固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液T2 固形分として5部
着色剤微粒子分散液T 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12リットル、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液T1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃40rpmで5分間均一に混合した。続いて、内温12℃で攪拌回転数を250rpmに上げ第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて混合してから着色剤微粒子分散液Tを5分かけて混合し、内温12℃で250rpmのまま均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後250rpmのまま75分かけて内温53℃に昇温して、その後170分かけて56℃まで昇温した。
ここでアパーチャー径を100μmとした精密粒度分布測定装置(マルチサイザーIII :ベックマン・コールター社製;以下適宜「マルチサイザー」と略称する)にて粒径測定を測定したところ50%体積径が6.7μmであった。
その後、250rpmのまま重合体一次粒子分散液T2を3分かけて混合してそのまま60分保持し、回転数を168rpmに落としてすぐに20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて混合してから30分かけて168rpmのまま90℃に昇温して60分保持した。
その後20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10L(リットル)のステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
ここで得られたケーキをステンレス製バッドに高さ20mm程度となるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、現像用母粒子Tを得た。
・現像用トナーTの製造
攪拌機(Z/A0羽根)と上部より壁面に対し直角に向いたディフレクターを備えた内容積10L(直径230mm高さ240mm)のヘンシェルミキサー内に、現像用母粒子T100部(1000g)を投入し、続いてシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.04μmのシリカ微粒子0.5部と、シリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.012μmのシリカ微粒子2.0部とを混合し、3000rpmで10分間攪拌・混合して150メッシュを通し篩別する事により現像用トナーTAを得た。マルチサイザーIIで測定したトナーTAの体積平均粒径は7.05μm、Dv/Dnは1.14、FPIA2000で測定した平均円形度は0.963であった。
<現像用トナーの製造2>
前記<現像用トナーの製造1>において、現像用母粒子Tの製造の中で、DBS水溶液を混合した後の“90℃に昇温して60分保持した”ところを、“90℃に昇温して180分保持した”以外は、現像用トナーの製造1と同様にして、現像用トナーTBを得た。FPIA2000で測定した平均円形度は0.981であった。
<画像評価>
A3印刷対応であるMICROLINE Pro 9800PS−E(沖データ社製)の露光部を改造し、日進電子製、小型スポット照射型青色LED(B3MP−8:発光波長470nm)が感光体に照射できるようにした。また、トナーには「現像用トナーの製造1」で製造した平均円形度0.963、体積平均粒径7.05μm、Dv/Dn=1.14のトナー、又は「現像用トナーの製造2」で製造した平均円形度0.981のトナーを用いた。この改造装置に、感光体ドラムL〜Pを装着し、線を描かせたところ、良好な画像が得られた。
また、上記小型スポット照射型青色LEDに、ストロボ照明電源LPS−203KSを接続し、点を書かせたところ、直径8mmの点画像を得ることが出来た。
以上の結果から、本発明の電子写真感光体は、いずれの感光体も波長380〜500nmの露光光に対する感度が高く、かつ露光波長に対する依存性の少ない高性能な電子写真感光体であることが分かる。また、本発明の電子写真感光体を用いることにより波長380〜500nmの露光で良好な画像が得られるプロセスカートリッジ、画像形成装置が提供可能であることが明らかとなった。