JP5672107B2 - 電子写真感光体、電子写真カートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真カートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、耐摩耗性に優れ、且つ持続的に表面滑り性を保つ電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真カートリッジに関するものである。
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られること等から、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されてきている。電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレニウム、ヒ素−セレニウム合金、硫化カドミニウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、最近では、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が開発されている。
有機系感光体は、無機の感光体に比べて材料の選択範囲が広く、効率の高い電荷発生物質、および電荷輸送物質を組合せることによって高感度な感光体を得ることが可能である。しかし従来の技術では有機系の感光体は、感度、帯電性といった電気的特性に於いては十分な性能を持つが感光体表面の物理的強度に於いて不十分であるため実用上限られた耐刷性能に留まっているのが現状である。
これまで機械的強度を高めるために例えばオーバーコート層を設ける、耐摩耗性の高いバインダーポリマーを使用する等が提案されているが、いずれもこれらの効果が十分でない、不十分な品質の画像しか得られない等の問題を含んでいるのが現状である。また、近年の高画質印刷の需要が広まるにつれ、電子写真感光体においても高画質のための性能が要求されるようになってきた。そのひとつに、表面自由エネルギーの低い感光体、すなわち表面滑り性の良好な感光体が挙げられる。電子写真による画像は帯電、露光、現像によって、感光体上に現像されたトナーが被転写体に転写され、更に定着されることによって画像が形成されるが、この転写が効率よく行われないと画像の再現性が悪くなる。転写を効率よく行うためには、感光体とトナーの付着力を下げることが重要である。また、感光体の表面の摩擦係数が大きいと、音鳴り、クリーニングブレードの反転、ジッターによる濃度むらが発生する。こういった観点からも表面滑り性の改善された感光体が望まれる。従来、感光体は初期的には優れた表面性を有するが、繰返し使用することによって表面自由エネルギーが低下し、結果的に画像が劣化することが多かった。
表面の滑り性を改良する為、ポリシロキサンブロック共重合体をバインダーに用いる(例えば、特許文献1参照)、低分子量のポリシロキサン末端化合物を用いる(例えば、特許文献2参照)、ポリシロキサン化合物を用いる(例えば、特許文献3、4参照)、フッ素原子含有ポリカーボネートを用いる(例えば、特許文献5参照)等が提案されている。
特開平2−240655号公報 特開平7−261440号公報 特開2000−171989公報 特開2009−37229号公報 特開平6−282094号公報
しかしながら、いずれも効果が十分でなかったり、電気特性や耐刷性に悪影響を及ぼす等の問題を含んでいるのが現状である。本発明の課題は、電気特性、耐摩耗性、感光体表面の滑り性及び繰り返し特性の全てが良好な電子写真感光体を提供することにある。
本発明は電気特性や画像特性に悪影響を及ぼすことなく、感光体の耐摩耗性を高め、同時に表面自由エネルギーの低い感光体とすることができ、滑り性を改善し、しかもそれらの特性が繰り返し画像形成した後でも効果的に持続する、高性能な電子写真感光体を提供することを目的とするものである。
本発明者は、これらの現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、感光層にポリシロキサン成分を有する樹脂と、ポリアリレート樹脂とを併用し、且つ遊離シリコーンが繰り返し画像形成中に持続的に最表面を覆うことにより、長期の繰り返し使用においても摩耗を少なく抑え、且つ表面の滑り性が著しく高く、クリーニング性、転写性に優れる電子写真感光体を提供することができる本発明に至った。
すなわち本発明の要旨は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層がバインダー樹脂として、ポリシロキサン成分を有する樹脂及びポリアリレート樹脂を含有し、前記ポリシロキサン成分を有する樹脂と前記ポリアリレート樹脂との合計重量に対する前記ポリシロキサン成分を有する樹脂の重量が5質量%以上であ
、且つ遊離シリコーンを該バインダー樹脂に対して0.08質量%以上2質量%以下該感光層内に含有することを特徴とする電子写真感光体に存し(請求項1)、前記ポリアリレートを海とし、該ポリアリレート中に前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が分散する海島構造を有することが好ましく(請求項2)、前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が、ポリシロキサン成分を有するポリカーボネート樹脂であることが好ましく(請求項3)、前記ポリアリレート樹脂が、下記式(1)で表されるジカルボン酸残基を有することが好ましい(請求項4)。
(式(1)中、X〜Xは、各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表し、nは〜5の整
数を表す。)
更に本発明の要旨は、前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が、ポリカーボネート成分とポリシロキサン成分とによるブロック共重合体であることを特徴とする電子写真感光体に存し(請求項5)、より好ましくは前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が、少なくとも1端にポリシロキサン成分を有するブロック共重合体であって(請求項6)、前記ポリカーボネート成分が下記式(2)の構造を有し、且つ前記ポリシロキサン成分が下記式(3)の構造を有することがより好ましい(請求項7)。
(式(2)中、Y〜Yは各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表し、Xは連結基を表す。式(3)中、R13は2価の有機基を表し、Wは2価の連結基を表す。R〜R12は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基を表し、nは1以
上500以下の整数である。)
本発明によれば、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、ポリシロキサン成分を有する樹脂、および、ポリアリレート樹脂を含有し、且つ遊離シリコーンが、前記樹脂が形成する層内に前記樹脂成分に対して0.08質量%以上含有されることにより、良好な電気特性および画像特性を有し、感光体の耐摩耗性が高く、同時に高い滑り性を有し、しかもそれらの特性が繰り返し画像形成した後でも持続する、高性能な電子写真感光体を提供することができる。また、この感光体を使用する、またはこの感光体を用いたプロセスカートリッジを使用することにより、種々の光入力用光源で好適な露光が可能であって、長期間繰り返し使用したとしても良好な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。 本発明の実施例および比較例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すX線回折図である。 実施例3の感光体の感光層内部のSEM写真である。 比較例3の感光体の感光層内部のSEM写真である。 比較例6の感光体の感光層内部のSEM写真である。 カプセル内に潤滑剤が内包された感光層の模式図である。 本発明の感光層の模式図である。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜実施することができる。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有するものであって、該感光層が後述するポリシロキサン成分を有する樹脂及び後述するポリアリレート樹脂を含有し、且つ後述する遊離シリコーンを該バインダー樹脂に対して0.08質量%以上該感光層内に含有することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体において、感光層は後述する遊離シリコーンを感光層内に含有する(以下、「保持」と表現することがある)。該遊離シリコーンを保持しているのは後述するポリシロキサン成分を有する樹脂であり、本発明の効果である、耐摩耗性と良好な滑り性の持続を両立するためには該ポリシロキサン成分を有する樹脂が該遊離シリコーンを保持することが必須である。図6に示したような、従来のカプセル内に潤滑剤を内包させてあるような感光層では、一度カプセルが割れてしまえばカプセル内の潤滑剤は一度に感光体最表面へブリードアウトしてしまい、次のカプセルに到達するまで磨耗しなくては新たに潤滑剤を最表面に補給できず、耐摩耗性を向上させると必然的に良好な滑り持続性は損なわれる傾向にある。しかし、本発明のように、該ポリシロキサン成分を有する樹脂が遊離シリコーンを保持している、すなわち、あたかもスポンジが潤滑剤を含んで感光層中に存在しているような感光体では、図7に示したように、一度に最表面に潤滑剤(遊離シリコーン)がブリードアウトしてしまうことがないため、同じ潤滑剤補給サイト(スポンジ)から繰り返し最表面に潤滑剤が補給される。このため耐磨耗性と著しく良好な滑り持続性を両立することが可能である。
<ポリシロキサン成分を有する樹脂>
本発明で用いられるポリシロキサン成分を有する樹脂は、ポリシロキサン成分を部分構造として有する樹脂ならば如何なる樹脂でも構わない。
ポリシロキサン成分を有する樹脂を構成する樹脂成分としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、およびこれらのうちの複数の樹脂を共重合した樹脂が用いられる。これらの中でも、機械的強度の観点からポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましく、電気特性の観点からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
ポリシロキサン成分を有する樹脂の構成は、公知のポリシロキサンを有する樹脂の構成を用いることができる。例えば、樹脂成分をAとし、ポリシロキサン成分をBとした場合、以下のような構成が挙げられる。
1.A−Bのように、片末端にポリシロキサン成分を有するブロック共重合体
2.B−A−Bのように、両末端にポリシロキサン成分を有するブロック共重合体
3.A−B−Aのように、ポリシロキサン成分の両側に樹脂成分を有するブロック共重合体4.A−A(−B)−Aのように、ポリシロキサン成分が主鎖の樹脂から分岐しているブロック共重合体
更に、これらのうちの1つ、或いは複数の構成を組み合わせた樹脂を用いることが可能である。これらの中でも、感光体の表面自由エネルギーを低くするという観点から、少なくとも1端部にポリシロキサン成分を有する樹脂、すなわち、片末端にポリシロキサン成分を有する樹脂(上記例1)、または両末端にポリシロキサン成分を有する樹脂(上記例2)を用いることが好ましい。
ポリシロキサン成分を有する樹脂を構成する樹脂成分がポリカーボネート樹脂である場合は、該ポリカーボネート樹脂が下記式(2)の構造を有することが好ましく、合成上の観点から、ポリシロキサン成分が下記式(3)の構造を有することがより好ましい。
式(2)中、Y〜Yは各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表す。
アルキル基としては、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1または2のアルキル基が特に好ましく、炭素数1のアルキル基が最も好ましい。
アルキル基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、或いはアルキル基、アリール基アラルキル基、複素環基等の上記アミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基が挙げられる。
これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
有する置換基の数は任意であるが、置換基を有さないアルキル基であることが好ましい。
具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素数20以下のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
アリール基の有してもよい置換基としては、アルキル基の有してもよい置換基と同じものが挙げられ、有する置換基の数は任意である。具体例を挙げると、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基が好ましい。
ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アル
コキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましく用いられる。
以上の中でもY〜Yとしては、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましく用いられる。中でも特に、水素原子、メチル基のみを用いることが好ましい。
Xは連結基を表し、連結基としては2価基または単結合が用いられ、ポリシロキサン成分を有するポリカーボネート樹脂の製造の容易性を勘案すれば、炭素数20以下の連結基が好ましく、炭素数10以下の連結基がさらに好ましく、炭素数3以下の連結基が特に好ましい。より詳しくは、単結合、2価の芳香族基、2価のラクトン基、2価のフルオレン基、または下記に表される2価の基が挙げられる。
上記式において、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表す。
アルキル基としては、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1または2のアルキル基が更に好ましく、特には炭素数1のアルキル基が最も好ましい。
アルキル基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、或いはアルキル基、アリール基アラルキル基、複素環基等の上記アミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基が挙げられる。
これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
有する置換基の数は任意であるが、置換基を有さないアルキル基であることが好ましい。
具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−
ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。
更に、RとRは結合して環を形成してもよく、その場合の2価基はシクロへキシリデン基、シクロペンチリデン基が好ましい。
アリール基としては、炭素数20以下のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
アリール基の有してもよい置換基としては、アルキル基の有してもよい置換基と同じものが挙げられ、有する置換基の数は任意である。具体例を挙げると、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基が好ましい。
ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましく用いられる。
以上の中でもR〜Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましく用いられる。中でも特に、水素原子、メチル基のみを用いることが好ましい。
前記式の中で、lは1以上6以下の整数、mは2以上20以下の整数、aは1以上4以下の整数を示す。
上記の中でも、下記構造式であるものが、電気特性の観点から特に好ましく用いることが出来る。中でも、RとRがいずれもアルキル基からなる場合に、感光体の滑り性が高くなるので好ましい。
Xの具体例を挙げると、単結合、−O−、−CO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシリデン基が挙げられる。中でも電気特性の観点から、炭化水素のみからなる結合基が好ましく、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシリデンがより好ましく、炭素数3以下の炭化水素のみからなる基、例えば−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−が特に好ましい。
式(2)で表される構造は、通常二官能性フェノール化合物から由来する繰り返し単位である。
該二官能性フェノール化合物としては、例えば、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
これらの二官能性フェノール化合物の中で好ましい例としては、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンが挙げられる。
中でも、感光層の機械的物性を良好にするという観点から、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。さらに、これらの中でも感光層の滑り性の観点から、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンが特に好ましい。
本発明において、該ポリシロキサン成分を有する樹脂を構成する樹脂成分がポリカーボネート樹脂である場合は、部分構造として式(2)で表される以外のポリカーボネート樹脂構造を含んでいても構わない。更に、部分構造として、ポリカーボネート樹脂以外の構造を含んでいても構わない。
本発明において、該ポリシロキサン成分を有する樹脂を構成する樹脂成分がポリカーボネート樹脂である場合は、耐磨耗性が向上し、且つ滑り性が持続するという観点から、式(2)で表される構造部分の重量比率は多いほど、好ましい。該ポリシロキサン成分を有する樹脂において、式(2)で表される構造部分とそれ以外の構造部分を足した重量から、式(3)で表される構造部分を除いた樹脂成分の全重量に対して、式(2)で表される構造が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であって、全てが式(2)で表される構造であることが最も好まし
い。
式(3)中、R〜R12は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基を表し、好ましくは炭素数8以下のアルキル基が用いられる。
アルキル基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、或いはアルキル基、アリール基アラルキル基、複素環基等の上記アミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基が挙げられる。
これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
有する置換基の数は任意であるが、置換基を有さないアルキル基であることが好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の無置換のアルキル基が挙げられる。
13は2価の有機基を表すが、好ましくはアルキル基またはアリール基を含む2価の有機残基が用いられる。より好ましくは、アルキル基とアリール基を同時に有する連結基が用いられ、更にはエーテル結合を有する基が好ましい。ここで用いられるアルキル基およびアリール基は、それぞれ独立に置換基を有してもよい。ここで用いられるアルキル基およびアリール基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;アリールカルボニル基が挙げられる。
13としてより好ましくは、以下の構造が用いられる。
上記式において、R14、R15は各々独立に水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基の中でも、炭素数18以下のアルキル基、炭素数3以上10以下のアルケニル基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数6以上20以下のアリール基が好ましい。更に上記式において、Arは置換基を有してもよいアリーレン基で、より好ましくは芳香環を2以上5以下含むものである。また、bは1以上20以下の整数を示す。Arで表されるアリーレン基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;アリールカルボニル基が挙げられる。
13として特に好適な構造としては、下記のものが挙げられるが、本発明に係るR13の構造としては、これらに限定されるものではない。
これらの中でもS5〜S10に例示するような芳香環を2以上含む基が好ましく、更にはS5〜S8に例示されるような置換基を有するフェニレン基を含む基が好ましく、特にはS7,S8に例示されるようなケトン基を有するフェニレン基を含む基が好ましい。
Wは2価の連結基を表すが、2価の連結基としては、単結合、O、CO、COO、NH、NHCO、S、SO、SOが挙げられる。なかでも、酸素原子を有する2価の連結基が好ましく、より好ましくは、O、COOが用いられる。
本発明の電子写真感光体の感光層中に含まれる、シロキサン成分を有する樹脂において、前記式(3)で表される構造のポリシロキサン部位(式(3)で表される構造から、WおよびR13を除いた部分)は、感光層中に含まれる全バインダー樹脂に対し、下限は、通常、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4質量%以上、6質
量%以上が最も好ましい。一方で、上限は、通常、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。0.1質量%未満であると感光体表面の滑り性改良効果が不十分である虞があり、一方で、20質量%を超えると透明性、電気特性に悪影響が生じる虞がある。
nは通常1以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、30以上が最も好ましい。また、nは通常500以下、好ましくは300以下、より好ましくは、100以下、50以下が最も好ましい。nが小さいと滑り性の改良効果が十分に得られず、nが大きすぎると電荷輸送層の光透過率が低下し、電子写真感光体の電気特性のうち特に感度が低下する虞や、当該電子写真感光体を用いて画像形成をする際に光の散乱により画像の解像度が低下する虞がある。
本発明の電子写真感光体に用いるポリシロキサン成分を有する樹脂の分子量に特に制限は無いが、樹脂成分としてポリカーボネート樹脂を用いている場合は、粘度平均分子量が20,000以上、好ましくは25,000以上、より好ましくは30,000以上、特には33,000以上が好ましい。粘度平均分子量が低いと感光層の機械的強度が低下する虞がある。また、ポリシロキサン成分を有する樹脂の樹脂成分としてポリカーボネート樹脂を用いている場合は、分子量が低すぎると感光層を形成したときにブリードアウトしやすく、初期には良好な滑り性を示すが、繰り返し画像形成することにより感光層が磨耗すると、滑り性が極端に低下することがある。また、ポリシロキサン成分を有する樹脂の樹脂成分としてポリカーボネート樹脂を用いている場合は、通常、粘度平均分子量は300,000以下であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは60,000以下である。分子量が高すぎると感光層を形成する際、均一な膜厚に塗布する事が困難となることがある。
本発明で使用するポリシロキサン成分を有する樹脂の、樹脂成分としてポリカーボネート樹脂を用いている場合の、該ポリシロキサン成分を有するポリカーボネート重合体の製造方法としては、公知のポリカーボネート樹脂の製造方法を適用することができる。例えば二官能性ヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させて界面重縮合する、二官能性ヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させたクロロホルメートに二官能性ヒドロキシ化合物を添加して界面重縮合させる、二官能性ヒドロキシ化合物をジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとのエステル交換反応により重合させる方法を用いることができる。
さらにポリカーボネート重合体の重合において、反応に著しく悪影響を及ぼさない範囲でテレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、アジピン酸クロリド、セバシン酸クロリド等の酸ハライドやピペラジン等のジアミンを共存させても良いし、またフロログリシン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、或いはテトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン等の多価フェノールに代表される分岐剤をゲル化しない程度に共存させることもできる。
末端にポリシロキサン成分を有するポリカーボネート重合体の製造方法としては、例えば一官能性フェノール構造を含むポリシロキサンを重合時に共存させる方法を適用することができる。一官能性フェノールはポリシロキサンが結合したものを単独で重合系に共存させても良いし、他の一官能性フェノール例えば、p−tert−ブチルフェノール、フェノール、クミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等と共に用いても良い。或いは他の製造方法として炭素2重結合を末端に有するポリカーボネートへの片末端Si−H構造のポリシロキサンのヒドロシリル化反応によっても製造することができる。
<ポリアリレート樹脂>
本発明に係る電子写真感光体の感光層は、ポリシロキサン成分を有する樹脂と、ポリアリレート樹脂とを含有する。以下に、本発明に用いられるポリアリレート樹脂について説明する。
本発明に用いられるポリアリレート樹脂としては、電子写真感光体の感光層に使用することが知られているポリアリレート樹脂であれば特に制限はなく、公知のポリアリレート樹脂を用いることが可能である。
中でも、前記ポリアリレート樹脂が、下記式(1)で表されるジカルボン酸残基を有することが好ましい。
式(1)中、X〜Xは、各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表す。
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が特に好ましく、炭素数1のアルキル基が最も好ましい。
アルキル基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、或いはアルキル基、アリール基アラルキル基、複素環基等の上記アミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基が挙げられる。
これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。
有する置換基の数は任意であるが、置換基を有さないアルキル基であることが好ましい。
具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好まし
く、炭素数6〜10のアリール基がさらに好ましく、炭素数6のアリール基が特に好ましい。
アリール基の有してもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールアルケニル基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基、或いはアルキル基、アリール基アラルキル基、複素環基等の上記アミノ基の置換基を組み合わせたジ置換アミノ基が挙げられる。
これらの置換基は互いに縮合して、単結合、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、ビニリデン基、エチレニレン基等を介した炭素環基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む複素環基を形成してもよい。有する置換基の数は任意である。具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましく用いられる。この中で特に、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく用いられる。更に、水素原子のみを用いることが耐摩耗性の観点から最も好ましい。
nは0〜5の整数を表す。中でもnが0〜1であることが製造の簡便さの観点から好ましく、nが1であることが耐磨耗性の観点から最も好ましい。
ジカルボン酸残基の具体例としては、以下に例示するジカルボン酸化合物のカルボキシル基からヒドロキシル基を取り除いた構造のジカルボン酸残基が挙げられる。nが0の場合、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエン−2,5−ジカルボン酸、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸が挙げられる。中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
nが1の場合、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸化合物の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が好ましく、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が特に好ましい。
以上で説明したカルボン酸残基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
但し、本発明で使用するポリアリレート樹脂においてnが1以外のジカルボン酸残基の量は、耐摩耗性の観点から、少ないことが好ましい。具体的な比率に制限は無いが、繰り返し単位の数の比率で、ジカルボン酸残基全量に占めるnが1のジカルボン酸残基の比率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは100%である。
本発明で使用するポリアリレート樹脂は、式(1)で表されるジカルボン酸残基と、二官能性フェノール化合物から由来する構造とからなる、繰り返し単位を有する。
当該二官能性フェノール化合物としては、例えば、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
これらの二官能性フェノール化合物の中で好ましい例としては、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンが挙げられる。
中でも、機械的物性の面から、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン
、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。さらに、これらの中でも滑り性の面から1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンが特に好ましい。
本発明で使用するポリアリレート樹脂として好適に用いられる樹脂の繰り返し構造を以下に例示するが、本発明で使用するポリアリレート樹脂はこれらに制限されるものではない。
・nが0の場合の繰り返し構造
・nが1の場合の繰り返し構造
ポリアリレート樹脂は、粘度平均分子量が30,000以上、好ましくは35,000以上、より好ましくは40,000以上である。分子量が低いと感光体の機械的強度が低下し、所望の耐摩耗性が得られない。また、通常、粘度平均分子量は300,000以下であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは60,000以下である。分子量が高すぎると感光層を形成する際、均一な膜厚に塗布する事が困難である。
上記の本発明で使用するポリシロキサン成分を有する樹脂と、ポリアリレート樹脂との使用比率は、本願発明の効果が著しく損なわれない限り特に制限はない。但し、感光体の耐久性の観点から、本発明で使用する上記ポリシロキサン成分を有する樹脂とポリアリレート樹脂との合計重量に対する本発明で使用するポリシロキサン成分を有する樹脂の重量が、80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。滑り性の観点からは、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
本発明の電子写真感光体の感光層中に含まれるポリアリレート樹脂の比率は、感光層中の全バインダー樹脂に対して、通常、20質量%以上、好ましくは50質量%以上、耐摩耗性の観点からより好ましくは70質量%以上である。
また、ポリアリレート樹脂は末端にポリシロキサンを有さないことが、耐摩耗性、電気特性の面から好ましい。
<その他のバインダー樹脂>
上述した本発明で使用するポリシロキサン成分を有する樹脂と、ポリアリレート樹脂は、感光層においてバインダー樹脂として作用するものである。但し、感光層には、本発明で使用する樹脂に加えて他の樹脂を併用してもよい。ここで併用される他の樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のなかでも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
尚、その他の樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、併用する樹脂の使用割合は特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るため
には、本発明で使用するポリアリレート樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましい。さらに、特には、他の樹脂は併用しないことが好ましい。
<遊離シリコーン>
本発明の電子写真感光体の感光層内に保持される遊離シリコーンとは、主に下記一般式(4a)及び(4b)で表される構造単位を共に分子内に有するポリシロキサン化合物を想定している。
本発明の電子写真感光体の感光層内に保持される遊離シリコーンの量は、感光層のバインダー樹脂に対して、下限が0.08質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、滑り性持続の観点から、より好ましくは0.7質量%以上である。一方、上限は特に設けないが、通常、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、仕込んだ遊離シリコーンを効率よく感光層内に保持するという観点から、更に好ましくは1質量%以下である。
一般式(4a)及び(4b)中、RA及びRCは各々独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、RBは炭素数3以上の、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し
、RDは炭素数1〜3の2価の炭化水素基を表し、REは炭素数3以上の、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。上記式(4a)及び(4b)において、a及びaは各々独立して1〜500の整数を表す。
A及びRCは各々独立して置換基を有していてもよい炭化水素基を表すが、炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、炭素数1〜30のアルキル基が更に好ましい。炭素数が30を超えると、バインダーとの相溶性が低下する傾向にある。
Bは炭素数3以上の、置換基を有していてもよい炭化水素基を表すが、炭化水素基と
しては炭素数5〜30のアルキル基が好ましく、炭素数8〜20のアルキル基が更に好ましい。炭素数が上記範囲より大きいと、バインダーとの相溶性が低下する傾向にあり、上記範囲より小さいと、最外層の摩擦低減の効果が不十分となる傾向にある。
また、RDは炭素数1〜3の2価の炭化水素基を表すが、炭素数1〜3の2価のアルキ
レン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロパン−1,3−ジイル基である。なかでも、メチレン基、エチレン基が更に好ましい。
また、REは、炭素数3以上の、置換基を有していてもよい炭化水素基を表すが、炭化
水素基としては、炭素数3〜8のアルキル基が好ましく、中でも、イソプロピルユニットまたはターシャリーブチルユニットを有するアルキル基が好ましい。ここで、イソプロピルユニットとは、アルキル基の一部または全部がイソプロピル[(CH3)2CH]原子団であることを意味する。具体的には例えば、イソプロピル基、イソブチル基、3−メチルブチル基、3−メチル−2−ブチル基等がイソプロピルユニットを有する炭素数3〜8のアルキル基に該当する。
また、同様に、ターシャリーブチルユニットとは、アルキル基の一部または全部がターシャリーブチル[(CH3)3C]原子団であることを意味する。具体的には例えば、ターシャ
リーブチル基、ジメチルプロピル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基等がターシャリーブチルユニットを有する炭素数3〜8のアルキル基に該当する。これらの中でも、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基が特に好ましい。
A、RB、RC及びREで表される炭化水素基の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。但し、無置換のものが好ましい。
特に、REにおいて、イソプロピルユニット[(CH3)2CH]、またはターシャリーブチ
ルユニット[(CH3)3C]を有する場合、バインダーとの親和性、特にバインダー樹脂分子内のベンゼン環との親和性を考慮すると、少なくとも該イソプロピルユニット[(CH3)2
CH]、またはターシャリーブチルユニット[(CH3)3C]は無置換であるのが好ましい。
また、RBとREの炭素数の和は、バインダーとの相溶性と摩擦低減効果の両立を考慮すると、6〜25が好ましく、8〜20が更に好ましく、10〜18が特に好ましい。
本発明に含有されるポリシロキサン化合物において、一般式(4a)及び(4b)で表される構造単位以外の構造単位(以下、他の構造単位という)を含んでいてもよいが、摩擦低減効果を確保する観点から、一般式(4a)で表される構造単位の割合は全構造単位中、好ましくは1個数%以上であり、更に好ましくは3〜90個数%であり、特に好ましくは10〜70個数%である。
また、バインダー樹脂との親和性を確保する観点から、一般式(4b)で表される構造単位の割合は全構造単位中、好ましくは1個数%以上であり、更に好ましくは3〜90個数%であり、特に好ましくは10〜70個数%である。また、構造単位(4a)と構造単位(4b)との比(個数比)は、好ましくは1:9〜9:1であり、1:4〜3:2が更に好ましく、1:3〜1:1が特に好ましい。
また、ポリシロキサン化合物中の炭素原子数(NC)とケイ素原子数(NSi)との比(
C/NSi)は、ポリシロキサン化合物全体として好ましくは4〜20であり、更に好ま
しくは6〜15である。また、酸素原子数(NO)とケイ素原子数(NSi)の比(NO/NSi)は、好ましくは1.1〜2であり、更に好ましくは1.2〜1.8である。本発明に含有されるポリシロキサン化合物において、他の構造単位を含む場合、他の構造単位としては、ジアルキルシリルオキシ構造単位が好ましく、ジメチルシリルオキシ構造単位が更に好ましい。
また、ポリシロキサン化合物の末端は、好ましくはトリアルキルシリル基であり、更に好ましくはトリメチルシリル基である。ポリシロキサン化合物の含有量は、最外層の全固形分中、0.005〜10質量%が好ましく、0.01〜1%が更に好ましい。
上記含有量が上記範囲よりも著しく大きい場合には、層としての必要な硬度が確保されにくくなり、また著しく小さい場合には、摩擦低減効果が十分でなくなる傾向にある。また、これらポリシロキサン化合物は、バインダー樹脂中に分散した状態でも相溶した状態でも用いることができるが、少なくとも一部が相溶した状態で用いることが好ましく、その場合はポリシロキサン化合物との相溶性の高いバインダー樹脂が選択される。ポリシロキサン化合物の分子量は、通常100〜70000、好ましくは5000〜30000、更に好ましくは10000〜20000である。上記範囲より著しく分子量が小さい場合には、ポリシロキサン化合物のレベリング剤としての効果が低下する傾向にあり、上記範囲より著しく分子量が大きい場合には、バインダー樹脂との相溶性が低下する傾向にある。
例として、特許4198729号公報に記載の下記構造式(5a−1)で表されるアルキル変性ポリシロキサンと下記構造式(5a−2)で表されるアルコキシ変性ポリシロキ
サンの混合物や、特開2002−323785に記載されているジメチルシロキサンと脂肪族飽和炭化水素の混合物(German Additives社製 商品名Pro−sur)や、下記構造式(5b)で表されるポリジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、商品名 KF96)などが上げられる。
上記式(5a−1)、(5a−2)及び(5b)においてb〜bは各々独立して1〜500の整数を表す。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、ポリシロキサン成分を有する樹脂と、ポリアリレート樹脂、および遊離シリコーンとを含有する感光層を有するものである。感光層は、通常は導電性支持体上に設けられる。
感光層の具体的な構成としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散または溶解された型(単層型、または、分散型)の感光層;電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散または溶解された電荷発生層、および、電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散または溶解された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造を有する型(積層型、または、機能分離型)の感光層が挙げられる。単層型の感光層を有する感光体は、いわゆる単層型感光体(または、分散型感光体)であり、積層型の感光層を有する感光体は、いわゆる積層型感光体(または、機能分離型感光体)であるが、感光層としては、何れの構成のものを用いてもよい。
さらに、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能である。中でも、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
本発明で使用する樹脂は、上記の感光層に含有されるものである。また、感光層が2以上の層(例えば、電荷発生層および電荷輸送層)から構成されている場合、本発明に係る感光層が、当該複数の感光層を構成する層のうちの少なくとも1層であればよいが、最表面層であることが好ましく、中でも積層型感光層の電荷輸送層であることが特に好ましい。
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム
酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知のバインダー樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが
可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いても良い。
また、複数の下引き層を併用することも可能である。その場合、複数の層に機能を分離することができる。例えば、電荷ブロッキング、接着性、モアレ防止機能を異なる層に分けることが可能である。
<感光層>
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層および電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
<積層型感光層>
・電荷発生層
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダー樹脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、セレンおよびその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダー樹脂で結着した分散層の形で使用する。
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られ、またモノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、または660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光、例えば450nm、400nm近辺の波長を有するレーザーに対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、I
I型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、および粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜、もしくは27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型および28.1゜にもっとも強いピークを有すること、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。これらの中でも、D型(Y型)チタニルフタロシアニンが良好な感度を示し最も好ましい。
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合または混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生物質としてアゾ顔料を使用する場合には、各種ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
電荷発生物質として有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
電荷発生層に用いるバインダー樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
電荷発生層は、具体的に、上述のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調製し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロバノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状または環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状または環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。尚、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
電荷発生層において、バインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が過度に高いと、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある一方、電荷発生物質の比率が過度に低いと、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
また、複数の電荷発生層を併用することも可能である。
・電荷輸送層
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解または分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以
上を任意の組み合わせで併用しても良い。
バインダー樹脂は膜強度確保のために使用される。電荷輸送層のバインダー樹脂は、上述したポリシロキサン成分を有する樹脂及び上述したポリアリレート樹脂を含有する。電荷輸送層に上述したポリシロキサン成分を有する樹脂及び上述したポリアリレート樹脂を用いない場合は、通常用いられる樹脂が使用可能である。例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで用いても良い。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダー樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。また、複数の電荷輸送層を併用することも可能である。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のために上述したポリシロキサン成分を有する樹脂及び上述したポリアリレート樹脂を含有するバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解または分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質およびバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質およびバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部
以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
<感光層の膜厚>
感光層の膜厚は、高品質な画像を得るために、20μm以下が好ましく、16μm以下がより好ましく、13μm以下が更に好ましい。膜厚が小さいほど、細線の再現性が良くなる。
但し、ここでいう感光層とは、積層型感光体の場合、電荷発生層と電荷輸送層を表し、単層型感光層の場合には、単層の感光層をいう。即ち、下引き層は感光層に含めない。但し、保護層は感光層の一部と考えることにする。
<その他の機能層>
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層またはそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。
また、積層型感光体、単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
保護層は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号、特開平10−252377号各公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
保護層の電気抵抗は、通常10Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、またはこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
<各層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコ
ート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒または分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロバノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状または環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状または環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
溶媒または分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、および機能分離型感光体の電荷輸送層層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、また、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止または送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なっても良い。
<トナー>
<トナーの種類>
本発明で使用するトナーは、上記の平均円形度を有する限り他に制限は無い。トナーの種類は、通常はその製造方法に応じて様々なものが得られるが、本発明においては、そのいずれを用いることも可能である。
以下、トナーの製造方法とともに、そのトナーの種類を説明する。
本発明で使用するトナーは、従前公知のどのような方法で製造しても構わず、例えば重合法や溶融懸濁法等が挙げられるが、水系媒体中でトナー粒子を生成する、いわゆる重合法トナーが好ましい。重合法トナーとしては、例えば、懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法トナー等が挙げられる。特に、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤等とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径および円形度を調整することができるので好ましい。
また、トナーの離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性等を改良するために、トナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、重合体(バインダ樹脂)に対して5質量%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、低軟化点物質を多量(5質量%〜30質量%)に含有させることが可能である。尚、ここでいう重合体は、トナーを構成する材料の一つであり、例えば後述する乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合、重合性単量体が重合して得られるものである。
以下、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、その製造工程としては、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、洗浄・乾燥工程を行なう。即ち、一般的には乳化重合により重合体一次粒子を得て(重合工程)、その重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤(顔料)、ワックス、帯電制御剤等の分散体を混合し(混合工程)、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし(凝集工程)、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行ない、その後に融合させて粒子を得て(融合工程)、得られた粒子を洗浄、乾燥することにより(洗浄・乾燥工程)、母粒子が得られる。
1.重合工程
重合体の微粒子(重合体一次粒子)としては、特に限定されない。したがって、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、樹脂等の重合体の塊を粉砕することによって得られる微粒子のいずれを重合体一次粒子として用いてもよい。但し、重合法、特に乳化重合法、なかでも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、重合体がワックスを包み込んだ構造の微粒子を重合体一次粒子として製造することができる。この方法によれば、ワックスをトナーの表面に露出させず、トナー内に含有させることができる。このため、ワックスによる装置部材の汚染がなく、また、トナーの帯電性を損なうこともなく、かつ、トナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合を行ない、これにより重合体一次粒子を得る方法について説明する。
乳化重合法としては、従来より知られている方法に従って行えばよい。通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合により重合体を与える重合性単量体、即ち、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、および、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等を混合、攪拌して重合を行なう。これにより、重合体がワックスを包み込んだ構造を有する重合体の微粒子(即ち、重合体一次粒子)が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。尚、重合体がワックスを包み込んだ構造としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型等が挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
(i.ワックス)
ワックスとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワック
ス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類または部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、ワックスの中でも、例えば、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。特に、パラフィンワックスが好ましい。
尚、ワックスは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
ワックスを用いる場合、その使用量は任意である。但し、重合体100重量部に対して、ワックスを通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下とすることが望ましい。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質の低下が生じる可能性がある。
(ii.乳化剤)
乳化剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
さらに、カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。
これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。
尚、乳化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
さらに、乳化剤の配合量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性モノマー100重量部に対して、乳化剤を、通常1〜10重量部の割合で用いる。
(iii.液状媒体)
液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、特に好ましくは水を用いる。但し、液状媒体の質は液状媒体中の粒子の再凝集による粗大化にも関係し、液状媒体の導電率が高いと
経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、液状媒体として水等の水系媒体を使用する場合、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。尚、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、液状媒体の使用量に制限は無いが、重合性単量体に対して、通常1〜20重量倍程度の量を用いる。
尚、液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
この液状媒体に、乳化剤の存在下で前記ワックスを分散させることにより、ワックス微粒子を得る。乳化剤およびワックスを液状媒体に配合する順は任意であるが、通常は、まず乳化剤を液状媒体に配合し、その後、ワックスを混合する。また、乳化剤は連続的に液状媒体に配合してもよい。
(iv.重合開始剤)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体に、重合開始剤を配合する。重合開始剤としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その例を挙げると、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素等の無機過酸化物類等が挙げられる。中でも、無機過酸化物類が好ましい。尚、重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
さらに、重合開始剤の他の例としては、過硫酸塩類、有機または無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等とを併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
また、重合開始剤の使用量にも制限は無く任意である。但し、重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で用いられる。
(v.重合性単量体)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤の他に、重合性単量体を配合する。重合性単量体に特に制限は無いが、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−
ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
さらに、酸性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
また、塩基性モノマーとしては、例えば、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
尚、酸性モノマーおよび塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
さらに、多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらのなかでも、重合性単量体としては、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましい。特に、スチレン類としてはスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類としてはアクリル酸ブチルが好ましく、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてはアクリル酸が好ましい。
尚、重合性単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
ワックスをシードとして乳化重合を行なう際には、酸性モノマーまたは塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマーまたは塩基性モノマーを併用することにより、重合体一次粒子の分散安定性を向上させることができるからである。
この際、酸性モノマーまたは塩基性モノマーの配合量は任意であるが、全重合性単量体100重量部に対する酸性モノマーまたは塩基性モノマーの使用量を、通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下となるようにすることが望ましい。酸性モノマーまたは塩基性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると重合体一次粒子の分散安定性が悪化する可能性があり、上限を上回るとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は任意であるが、重合性単量体100重量部に対する多官能性モノマーの配合量は、通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。この際、多官能性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると耐高温オフセット性が劣る可能性があり、上限を上回ると低温定着性が劣る可能性がある。
液状媒体へ重合性単量体を配合する方法は特に限定されず、例えば、一括配合、連続配合、間欠配合のいずれでもよいが、反応制御の点からは連続的に配合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に配合してもよく、また予め混合してから配合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら配合してもよい。
(vi.連鎖移動剤等)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤および重合性単量体の他に、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等の添加剤を配合する。これらの添加剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。また、連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
さらに、保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、部分または完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等が挙げられる。
また、内添剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
(vii.重合体一次粒子)
ワックス微粒子を含む液状媒体に重合開始剤および重合性単量体、並びに、必要に応じて添加剤を混合し、攪拌し、重合させることにより、重合体一次粒子を得る。この重合体一次粒子は、液状媒体中にエマルジョンの状態で得ることができる。
重合開始剤、重合性単量体、添加剤等を液状媒体に混合する順番に制限は無い。また、混合、攪拌の方法等も制限は無く、任意である。
さらに、重合(乳化重合反応)の反応温度も反応が進行する限り任意である。但し、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径に特に制限は無いが、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。尚、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
本発明においては、体積粒度分布は動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定
にて行なう。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :1g/cm
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
尚、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように粒子の分散体を液状媒体で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定する。そして、本発明にかかわる体積平均粒子径は、上記の体積粒度分布の結果を算術平均値として計測される。
また、重合体一次粒子を構成する重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、また、通常10万以下、好ましくは7万以下、より好ましくは6万以下に存在することが望ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる傾向がある。ここで、前記のピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。ピーク分子量は、後述するトナーの場合と同様に測定することが可能である。
特に、前記の重合体がスチレン系樹脂である場合には、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量は、下限が通常2,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは3,000以上、また上限は、通常5万以下、好ましくは4万以下、より好ましくは3.5万以下である。さらに、重合体の重量平均分子量は、下限が通常2万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、また上限は、通常100万以下、好ましくは50万以下である。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記の範囲に収まるスチレン系樹脂を重合体として用いた場合、得られるトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好となるからである。さらに分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。尚、スチレン系樹脂とは、スチレン類が全重合体中の通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上を占めるものを指す。
また、重合体の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、好ましくは140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、また、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。ここで重合体の軟化点は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
さらに、重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、通常80℃以下、好ましくは70℃以下である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。また、重合体のガラス転移温度〔Tg〕の下限は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。ここで重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
重合体の軟化点およびガラス転移温度〔Tg〕は、重合体の種類およびモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
2.混合工程および凝集工程
前記の重合体一次粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子を混合し、凝集させることにより、重合体、顔料を含む凝集体(凝集粒子)のエマルジョンを得る。この際、顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた顔料粒子分散体を用意し、これを重合体一次粒子のエマルジョンに混合することが好ましい。この際、顔料粒子分散体の液状媒体として通常は水等の水系溶媒を使用し、顔料粒子分散体を水系分散体として用意する。また、その際には、必要に応じてワックス、帯電制御剤、離型剤、内添剤等をエマルジョンに混合してもよい。また、顔料粒子分散体の安定性を保持するために、上述した乳化剤を加えてもよい。
重合体一次粒子としては、乳化重合により得た前記の重合体一次粒子を使用することができる。この際、重合体一次粒子は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。さらに、上述した乳化重合とは異なる原料や反応条件で製造した重合体一次粒子(以下適宜「併用重合体粒子」という)を併用してもよい。
併用重合体粒子としては、例えば、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子等が挙げられる。このような併用重合体粒子の材料としては樹脂を使用できるが、この樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体または共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。尚、これらの併用重合体粒子も、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。但し、併用重合体粒子の割合は、重合体一次粒子および併用重合体粒子の重合体の合計に対して、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
また、顔料に制限は無く、その用途に応じて任意のものを用いることができる。但し、顔料は通常は着色剤粒子として粒子状で存在するが、この顔料の粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子との密度差が小さい方が好ましい。前記の密度差が小さいほうが、重合体一時粒子と顔料とを凝集させた場合に均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するからである。尚、重合体一次粒子の密度は、通常は1.1〜1.3g/cmである。
前記の観点から、JIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度は、通常1.2g/cm以上、好ましくは1.3g/cm以上、また、通常2.0g/cm未満、好ましくは1.9g/cm以下、より好ましくは1.8g/cm以下である。顔料の真密度が大きい場合は、特に液状媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性等の課題も考慮すると、顔料はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の条件を満たす顔料の例示としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料およびシアン顔料等が挙げられる。また、黒色顔料としては、カーボンブラック、または、以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料として使用されるカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料粒子分散体として分散させたときに、再凝集によるカーボンブラ
ック粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が顕著となる傾向を示す。
不純物量の定量的な評価としては、以下の測定方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が、通常0.05以下、好ましくは0.03以下である。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明で使用するトナーに使用するカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
尚、カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。即ち、まずカーボンブラック3gをトルエン30mlに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等がある。
また、イエロー顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
さらに、マゼンタ顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。
中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、その鮮明な色相や高い耐光性等からマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
また、シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
尚、顔料は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
上記の顔料は、液状媒体に分散させ、顔料粒子分散体としてから重合体一次粒子を含有するエマルジョンと混合する。この際、顔料粒子分散体中における顔料粒子の使用量は、液状媒体100重量部に対して、通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。着色剤の配合量が前記範囲を上回る場合には顔料濃度が濃いので分散中で顔料粒子が再凝集する確率が高まるので好ましくなく、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって適切な粒度分布を得ることが困難なので好ましくない。
また、重合体一次粒子に含まれる重合体に対する顔料の使用量の割合は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、また、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。顔料の使用量が少なすぎると画像濃度が薄くなる可能性があり、多すぎると凝集制御が困難となる可能性がある。
さらに、顔料粒子分散体には、界面活性剤を含有させても良い。この界面活性剤に特に制限は無いが、例えば、乳化重合法の説明において乳化剤として例示した界面活性剤と同様のものが挙げられる。中でも、非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。また、この際、界面活性剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
尚、顔料粒子分散体に占める顔料の割合は、通常10質量%〜50質量%である。
また、顔料粒子分散体の液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、好ましくは水を用いる。この際、重合体一次粒子および顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。尚、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合させる際、エマルジョンにワックスを混合しても良い。ワックスとしては、乳化重合法の説明において述べたものを同様のものを使用することができる。尚、ワックスは、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合する前、混合中、後のいずれにおいて混合しても良い。
また、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合させる際、エマルジョンに帯電制御剤を混合しても良い。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂等が挙げられる。また、負荷電性帯電制御剤としては、例えば、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料;サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩または金属錯体;カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩または金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため、無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。尚、帯電制御剤は1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
帯電制御剤の使用量に制限は無いが、重合体100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。帯電制御剤の使用量が少なすぎても多すぎても所望の帯電量が得られなくなる可能性がある。
帯電制御剤は、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合する前、混合中、混合後のいずれにおいて混合しても良い。
また、帯電制御剤は、前記顔料粒子と同様に、液状媒体(通常は、水系媒体)に乳化し
た状態として、凝集時に混合することが望ましい。
上記の重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合した後、重合体一次粒子と顔料とを凝集させる。尚、上述したとおり、混合の際には、通常、顔料は顔料粒子分散体とした状態で混合させる。
凝集方法に制限は無く任意であるが、例えば、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、電解質を混合する方法が好ましい。
電解質を混合して凝集を行なう場合の電解質としては、例えば、NaCl、KCl、LiCl、MgCl、CaCl等の塩化物;NaSO、KSO、LiSO、MgSO、CaSO、ZnSO、Al(SO、Fe(SO等の硫酸塩等の無機塩;CHCOONa、CSONa等の有機塩等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
尚、電解質は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
電解質の使用量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。電解質を混合して凝集を行なう場合において、電解質の使用量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の可能性があり、また、電解質の使用量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。
得られた凝集体は、後述する二次凝集体(溶融工程を経た凝集体)と同じく、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は二次凝集体の場合と同様の条件(融合工程の説明において述べるのと同様の条件)で行えばよい。
一方、加熱により凝集を行なう場合、温度条件は凝集が進行する限り任意である。具体的な温度条件を挙げると、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、重合体一次粒子の重合体のガラス転移温度〔Tg〕以下、好ましくは55℃以下の温度条件で凝集を行なう。凝集を行なう時間も任意であるが、通常10分以上、好ましくは60分以上、また、通常300分以下、好ましくは180分以下である。
また、凝集を行なう際には、攪拌を行なうことが好ましい。攪拌に使用する装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
得られた凝集体は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程(カプセル化工程)に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行なった後に、カプセル化工程に進んでもよい。そして、望ましくは、凝集工程の後に、カプセル化工程を行ない、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度で加熱して融合工程を行なうのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化等)を生じないので好ましい。
3.カプセル化工程
凝集体を得た後、当該凝集体には、必要に応じて樹脂被覆層を形成することが好ましい。凝集体に樹脂被覆層を形成させるカプセル化工程とは、凝集体の表面に樹脂被覆層を形成することにより、凝集体を樹脂により被覆する工程である。これにより、製造されるトナーは樹脂被覆層を備えることになる。カプセル化工程では、トナー全体が完全に被覆されない場合もあるが、顔料は、実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得ることができるようになる。この際の樹脂被覆層の厚さに制限は無いが、通常は0.01μm〜0.5μmの範囲である。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法等が挙げられる。
上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集体表面に樹脂被覆層を形成することができる。
また、前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集体表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)等の装置が使用できる。
さらに、前記in−situ重合法としては、例えば、凝集体を水中に分散させ、単量体および重合開始剤を混合して、凝集体表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集体表面に樹脂被覆層を形成する方法である。
また、前記液中粒子被覆法としては、例えば、内層を形成する凝集体と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面に樹脂被覆層を形成させる方法である。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、凝集体よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子である。この樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はない。但し、外層の厚みがコントロールできるという観点から、上述した重合体一次粒子、凝集体、または、前記の凝集体を融合した融合粒子と同様の樹脂微粒子を用いることが好ましい。尚、これらの重合体一次粒子等と同様の樹脂微粒子は、内層に使用する凝集体における重合体一次粒子等と同様に製造することができる。
また、樹脂微粒子の使用量は任意であるが、トナー粒子に対して通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは25質量%以下の範囲で用いることが望ましい。
さらに、凝集体に対する樹脂微粒子の固着または融合を効果的に行なうためには、樹脂微粒子の粒径は、通常は、0.04μm〜1μm程度のものが好ましく用いられる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分(樹脂成分)のガラス転移温度〔Tg〕としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常110℃以下が望ましい。さらに、樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕は、重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであることがより好ましい。ガラス転移温度〔Tg〕が低すぎると、一般環境での保存が困難であり、また高すぎては充分な溶融性が得られないので好ましくない。
さらに、樹脂被覆層中にはポリシロキサンワックスを含有させることが好ましい。これにより、耐高温オフセット性の向上という利点を得ることができる。ポリシロキサンワックスの例を挙げると、アルキル基を有するシリコーンワックス等が挙げられる。
ポリシロキサンワックスの含有量に制限は無いが、トナー中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、また、通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とする。樹脂被覆層中のポリシロキサンワックスの量が少なすぎると耐高温オフセット性が不十分となる可能性があり、多すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
樹脂被覆相中にポリシロキサンワックスを含有させる方法は任意であるが、例えば、ポ
リシロキサンワックスをシードとして乳化重合を行ない、得られた樹脂微粒子と、内層を形成する凝集体とを、水系媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面にポリシロキサンワックスを含有する樹脂被覆層を形成させることにより含有させることが可能である。
4.融合工程
融合工程では、凝集体を加熱処理することにより、凝集体を構成する重合体の溶融一体化を行なう。
また、凝集体に樹脂被覆層を形成してカプセル化樹脂微粒子とした場合には、加熱処理をすることにより、凝集体を構成する重合体およびその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされることになる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態で得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。また、樹脂被覆層を形成した場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。具体的な温度条件は任意であるが、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも、通常5(℃)以上高温であることが好ましい。その上限に制限は無いが、「樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも50(℃)高い温度」以下が好ましい。
尚、加熱処理の時間は処理能力、製造量にもよるが、通常0.5時間〜6時間である。5.洗浄・乾燥工程
上述した各工程を液状媒体中で行なっていた場合には、融合工程の後、得られたカプセル化樹脂粒子を洗浄し、乾燥して液状媒体を除去することにより、トナーを得ることができる。洗浄および乾燥の方法に制限は無く任意である。
<トナーの物性>
・トナーの平均円形度
本発明で使用するトナーの形状は、トナーを構成する粒子群に含まれる各粒子の形状が、互いに近いものであって、球形に近いほどトナーの粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあり、画像品質を高める上で好ましい。特に、トナーの形状が完全な球形に近い形状となれば、電子写真感光体との接触面積が小さくなり、トナーの転写率が高まり、トナーの消費量を低減することが可能となる場合がある。一方で、完全な球状トナーを作ることは製造上困難であり、トナーが高コスト化するため、一定以上の条件で球に近ければよく、完全な球である必要は無い。
したがって、具体的には、本発明で使用するトナーは、フロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が、通常0.940以上、好ましくは0.950以上、より好ましくは0.960以上、特に好ましくは0.970以上である。また、前記平均円形度の上限は1.000以下であれば制限は無いが、生産の容易さの観点から、好ましくは0.998以下、より好ま・BR>オくは0.995以下である。
尚、前記の平均円形度は、トナーの粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定を行ない、測定された粒子の円形度〔a〕を下式(A)により求めるものとする。
円形度a=L0/L (A)
(式(A)中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理した時の粒子像の周囲長を示す。)
前記の円形度は、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合
1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
平均円形度の具体的な測定方法としては、以下の通りである。即ち、予め容器中の不純物を除去した水20ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を加え、更に測定試料(トナー)を0.05g程度加える。この試料を分散した懸濁液に超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
・トナーの粒径に関する物性値
本発明で使用するトナーの体積平均粒径〔Dv〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常4μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは8μm以下である。トナーの体積平均粒径〔Dv〕が小さすぎると画質の安定性が低下する可能性があり、大きすぎると解像度が低下する可能性がある。
また、本発明で使用するトナーは、体積平均粒径〔Dv〕を個数平均粒径〔Dn〕で除した値〔Dv/Dn〕が、通常1.0以上、また、通常1.25以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下であることが望ましい。〔Dv/Dn〕の値は、粒度分布の状態を表わし、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表わす。粒度分布がシャープであるほど、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
さらに、本発明で使用するトナーは、粒径25μm以上の体積分率が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。この値は小さいほど好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましいのである。尚、粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にしなくとも構わない。
また、本発明で使用するトナーは、粒径15μm以上の体積分率が、通常2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下にしなくとも構わない。
さらに、本発明で使用するトナーは、粒径5μm以下の個数分率が、通常15%以下、好ましくは10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので、望ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕、体積分率、個数分率等は、以下のようにして測定することができる。即ち、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイスおよび一般的なパーソナルコンピューターを接続して使用する。また、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては、前記電解液100ml〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml〜5ml加え、更に測定試料(トナー)を2mg〜20mg加える。そして、試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。このようにしてトナーの個数および体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕を求める。
・トナーの分子量に関する物性値
本発明で使用するトナーのTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(
以下、GPCと略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つは、通常1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であり、通常15万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下である。尚、THFはテトラヒドロフランのことを言う。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
さらに、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、通常10%以上、好ましくは20%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは50%以下である。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
尚、本発明で使用するトナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)を用いて次の条件で測定される。
即ち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。次いで、トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
測定は、試料濃度(樹脂の濃度)を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を測定装置に50〜200μl注入して行なう。試料(トナー中の樹脂成分)の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
さらに、前記の測定方法で用いるカラムとしては、10〜2×10の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の測定は、以下のようにして行なうことができる。即ち、試料(トナー)1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出することができる。
・トナーの軟化点およびガラス転移温度
本発明で使用するトナーの軟化点〔Sp〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、低エネルギーで定着する観点から、通常150℃以下、好ましくは140℃以下である。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは、軟化点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。
尚、トナーの軟化点〔Sp〕は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
また、本発明で使用するトナーのガラス転移温度〔Tg〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であると、低エネルギーで定着できるので望ましい。また、ガラス転移温度〔Tg〕は、通常40
℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐ブロッキング性の点で好ましい。
尚、トナーのガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
トナーの軟化点〔Sp〕およびガラス転移温度〔Tg〕は、トナーに含まれる重合体の種類および組成比に大きく影響を受ける。このため、トナーの軟化点〔Sp〕およびガラス転移温度〔Tg〕は、前記の重合体の種類および組成を適宜最適化することにより調整することができる。また、重合体の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類および配合量によっても、調整することが可能である。
<トナー中のワックスについて>
本発明で使用するトナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、また、上限は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。分散粒径が小さすぎるとトナーの耐フィルミング性改良の効果が得られない可能性があり、また、分散粒径が大きすぎるとトナーの表面にワックスが露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。
尚、ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーの重合体を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法等により確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質が低下する可能性がある。
<外添微粒子について>
トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性等を向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法としては、例えば、上述したトナーの製造方法において、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法;二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合または固着させる方法等が挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子とを混合する場合に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサー等が挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に攪拌、混合することにより混合することが好ましい。
また、乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る圧縮剪断処理装置や、粒子表面を溶融処理することのできる粒子表面溶融処理装置等が挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力および剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えば、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置
等が挙げられる。
一方、粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子との混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
また、外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用できる。例えば、無機微粒子、有機微粒子等が挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。さらには、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質等を用いてもよい。
一方、有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。
尚、外添微粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
また、これらの無機または有機微粒子の表面は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化等の表面処理が施されていてもよい。尚、処理剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
さらに、外添微粒子の数平均粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは1μm以下であり、異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。尚、外添微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
また、トナーに対する外添微粒子の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。但し、トナーと外添微粒子との合計重量に対する外添微粒子の割合として、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、また
、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下が望ましい。外添微粒子が少なすぎると流動性、帯電安定性が不足する可能性があり、多すぎると定着性が悪化する可能性がある。
<その他のトナーの性質>
本発明で使用するトナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であっても良く、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。尚、トナーの帯電特性は、帯電制御剤等のトナー母粒子構成物の選択および組成比、外添微粒子の選択および組成比等により調整することができる。
また、本発明で使用するトナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。
二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、例えば、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質、または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。
キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。
また、キャリアの平均粒径は特に制限はないが、10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部の割合で用いるのが好ましい。
尚、電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナーおよび必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
[画像形成装置および電子写真カートリッジ]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3および現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6および定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器等が挙げられる。尚、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、および直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。これらの中で380〜500nmの短波長光を用いると解像度が高くなり好ましい。中でも405nmの単色光が好適である。
また、書き込み解像度は、現在は600dpi以上が主流であるが、高性能機種では1200dpiのものも存在する。書き込み解像度により、静電潜像、トナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られるので、1200dpi以上の解像度が好ましい。例えば、600dpi、1200dpiの解像度を持つLEDで書き込んだ場合、最小ドット形成間隔は、それぞれ、42μm、21μmとなる。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。尚、本実施形態では、トナーTとして、上述したトナーを使用することが好ましい。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたト
ナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6については特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、電子写真感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73が備えられている。尚、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部および下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
尚、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず電子写真感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された電子写真感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その電子写真感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは電子写真感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが電子写真感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が電子写真感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに電子写真感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
尚、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体1に露光を行なうことで電子写真感光体1の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
尚、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7のうち1つまたは2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下、適宜、「電子写真カートリッジ」という)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
製造例−1
[ポリカーボネートの製造]
1−(1).ビスフェノールCオリゴマーの製造
・2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(=ビスフェノールC) 100部
・水酸化ナトリウム 78部
・水 922部
・塩化メチレン 412部
上記混合物を撹拌機付き反応機に仕込み、撹拌した。これにホスゲン87部を吹き込み反応を行った。反応終了後ポリカーボネートオリゴマーを含有する塩化メチレン溶液のみを補集した。得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。オリゴマー濃度(注1) 25.2質量%
末端クロロホルメート基濃度(注2)0.56規定
末端フェノール性水酸基濃度(注3)0.33規定
(注1)蒸発乾固させて測定した。
(注2)アニリンと反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.1規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。
(注3)塩化メチレン、四塩化チタン、酢酸溶液に溶解させた時の発色を546nmで比色定量した。
1−(2).ポリカーボネートの重合
・1−(1)で得られたビスフェノールCオリゴマー溶液 268mL
・塩化メチレン 232mL
・2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノール(ポリシロキサンの平均重合度n=37) 17.9g
水167mLに水酸化ナトリウム9.57gを溶解した水溶液、2wt%トリエチルアミン水溶液5.4mLを撹拌機付き2L重合槽に仕込み、20℃にて撹拌し、4時間界面重合を行った。
引続き水830mLおよびメチレンクロライド456mLを加え30分間撹拌後、反応溶液を分液した。ポリカーボネート樹脂を含む塩化メチレン溶液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液、0.1N塩酸水溶液、脱塩水を用いて順次各々2回ずつ洗浄した。洗浄後の塩化メチレン溶液を5倍量(体積)のメタノールに注いで得られた沈殿物を濾過にて取り出し、乾燥して目的の末端ポリシロキサンポリカーボネートを得た。この樹脂を樹脂Xとする。
上記式でAは下記構造である。
この樹脂の粘度平均分子量を以下の年度平均分子量の測定方法に従い測定したところ、粘度平均分子量は33,200であった。更に、H−NMRによる測定で、シロキサン含有量は16.5質量%であった。
(粘度平均分子量の測定方法)
試料を塩化メチレンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製した。溶媒(塩化メチレン)の流下時間tが136.21秒のウベローデ型毛管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定した。以下の式に従って粘度平均分子量Mを算出した。
a=0.438×ηsp+1
b=100×ηsp/C
ηsp=t/t−1
C =6.00(g/L)
η=b/a
=3207×η1.205
製造例−2
2−(1).ビスフェノールPオリゴマーの製造
・1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(=ビスフェノールP) 100部
・水酸化ナトリウム 46部
・水 1,000部
・塩化メチレン 420部
上記混合物を撹拌機付き反応機に仕込み、撹拌した。これにホスゲン87部を吹き込み反応を行った。反応終了後ポリカーボネートオリゴマーを含有する塩化メチレン溶液のみを補集した。得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。オリゴマー濃度 22.6質量%
末端クロロホルメート基濃度 0.322規定
末端フェノール性水酸基濃度 0.016規定
※それぞれ、製造例1の場合と同様にして測定した。
2−(2).ポリカーボネートの重合
・1−(1)で得られたビスフェノールCオリゴマー溶液 127.6mL
・2−(1)で得られたビスフェノールPオリゴマー溶液 156.4mL
・塩化メチレン 216mL
・2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノール(ポリシロキサンの平均重合度n=37) 17.0g
水167mLに水酸化ナトリウム9.06gを溶解した水溶液、2wt%トリエチルアミン水溶液5.4mLを撹拌機付き2L重合槽に仕込み、20℃にて撹拌し、4時間界面重合を行った。
更に製造例1と同様の操作を行い、目的の末端ポリシロキサンポリカーボネートを得た。以下、この樹脂を樹脂Yと呼ぶ。製造例1の場合と同様にして粘度平均分子量およびシロキサン含有量を測定したところ、この樹脂の粘度平均分子量は32,900であり、シロキサン含有量は16.1質量%であった。
上記式でAは下記構造である
<電子写真感光体の製造>
<感光体シートの製造>
[実施例1]
以下の手順に従い、電子写真感光体の1形態である感光体シートを作製した。初めに、
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイヤーバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を作製した。こうして得られた160重量部の顔料分散液をポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5質量%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部に加え、適量の1,2−ジメトキシエタンを加えて、最終的に固形分濃度4.0質量%の電荷発生層形成用塗布液を作製した。
この電荷発生層形成用塗布液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として特開2002−80432号公報中の実施例1に示された、下記式(4)で表わされる構造を主成分とする、幾何異性体の化合物群からなる混合物を50重量部、製造例1で製造した樹脂Xを25重量部、下記繰り返し構造からなるポリアリレート樹脂A(粘度平均分子量41,000)75重量部、遊離シリコーン1重量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートを作製した。
この感光体シートについて後述する感光体中の遊離シリコーン量測定方法によって感光層中の遊離シリコーン量を測定した。また後述する感光体特性試験機(川口電機(株)製モデルEPA8100)によって電気特性の評価を行った。結果を表−1に示した。
[実施例2]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xを50重量部とし、ポリアリレート樹脂Aを50重量部とした以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例3]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Aを75重量部、樹脂Xを6重量部、下記繰り返し構造からなるポリカーボネート樹脂C(粘度平均分子量49,000)を19重量部用いて調製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例4]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Cを44重量部とし、ポリアリレート樹脂Aを50重量部とした以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例5]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.1重量部とした以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例6]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを2重量部とした以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例7]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに、製造例2で製造した樹脂Yを用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例8]
実施例7の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Aを75重量部、樹脂Yを6重量部、下記繰り返し構造からなるポリカーボネート樹脂D(粘度平均分子量49,000)を19重量部用いて調製した電荷輸送層形成用塗布液を用いた以外は、実施例7と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例9]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Aの代わりに、下記繰り返し構造からなるポリアリレート樹脂B(粘度平均分子量32,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[実施例10]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Aの代わりに、樹脂Bを用いた以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例1]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例2]
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.05重量部とした以外は、実施例2と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例3]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.05重量部とした以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例4]
実施例7の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.05重量部とした以外は、実施例7と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例5]
実施例9の電荷輸送層形成用塗布液に用いた遊離シリコーンを0.05重量部とした以外は、実施例9と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例6]
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに、樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例7]
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Xの代わりに、樹脂Cを用いて、加える遊離シリコーンを0.05重量部にした以外は、実施例2と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例8]
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂Aの代わりに、樹脂Cを用いた以外は、実施例2と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
[比較例9]
実施例3の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂A代わりに、樹脂Cを用いた以外は、実施例3と同様にして感光体シートを作製した。この感光体シートを実施例1と同様に評価し、結果を表−1に示した。
<感光体中の遊離シリコーン量の測定>
1.測定サンプルの準備
1)上記の実施例および比較例(実施例1〜10、比較例1〜9)で作成した感光体シート表面をヘキサンで洗浄し、表面に存在する遊離シリコーンを取り除く
2)100cm2程度の塗膜面積になるよう測定寸法を決定し、測定位置からバンドソー、パイプカッターを用いて切り出す
3)適宜押し切りカッターで細切れにして100mLビーカーに入れる
4)LC用THF20mLを加え、CT層が完全に溶解するまで超音波処理を施す
5)20mLメスフラスコに移しLC用THFでメスアップ、攪拌した物を測定試
料とする。
2.標準液の作成
1)20mLメスフラスコにLC用THFを半量程度入れて電子天秤で秤量、風袋値とする。
2)シリコーンオイルをパスツールピペットで数滴(20mg弱)を加えて精秤、LC用THFでメスアップ、攪拌する。
3)LC用THFを半量程度入れた20mLメスフラスコに2)液を1mLホールピペ
ットで加え攪拌した物を測定試料とする。
3.測定
以下の条件にてGCMS測定を行う。
装置 :島津QP−5050A
カラム :ZB1-MS(0.25μmID×0.25μmF×15mL)
キャリア:ヘリウム90cm/min(3.9mL/min、140kPa)
気化室 :260℃
恒温槽 :50℃×1min→(50℃/min)→300℃×20min
モード :スプリットレス(サンプリング1min、スプリット比5)
IF :300℃
MS :SIMモード(m/z=221)
注入量 :1μL
検量 :外部標準法
測定 :n=2以上
4.計算
1)シリコーンオイルのグレードに応じたピーク(10csの場合はRt=4.2〜5.7)
の面積を足し合わせ標準液測定値から一点検量で試料液中のシリコーンオイル濃度を求める。
2)試料液の希釈率、測定対象試料面積や塗膜厚さからCTL中の濃度を導く。
<電気特性評価>
上記の実施例および比較例(実施例1〜10、比較例1〜9)で作製した感光体シートを、感光体特性試験機(川口電機(株)製モデルEPA8100)に装着して、暗所で35μAのコロナ電流により感光体シートを負帯電させたあと、780nmの光を連続的に照射し、表面電位が−700Vから−350Vに減少するのに要した半減露光量(E1/2)および10μJ/cm照射したときの残留電位(Vr)を測定した。その結果を表−1に示す。
<摩耗試験>
上記の実施例と比較例(実施例1〜10、比較例1〜9)の感光体シートを、それぞれ直径10cmの円状に切断し、テーバー摩耗試験機(Taber社製)により摩耗評価を行なった。試験条件は、23℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS−10Fを用いて、荷重なし(摩耗輪の自重)で1000回回転後の摩耗量を試験前後の重量を比較することにより測定した。結果を表−1に示す。
表−1から、ポリシロキサン成分を有する樹脂、且つ遊離シリコーンが、前記樹脂が形成する層内に前記樹脂成分に対して0.08質量%以上保持されている電子写真感光体(実施例1〜10および比較例8,9)では、電気特性を良好に保ったまま、遊離シリコーンが感光層中に保持されていることがわかる。また特に遊離シリコーンの仕込み量が1質量%のものを比較する(実施例1〜4、7〜10、比較例8,9と比較例6)と、シロキサン成分を含有する樹脂が感光層内部に遊離シリコーンをとどめる働きを持つことがわかる。これらの中で、ポリアリレート樹脂を含有していない電子写真感光体(比較例8、9)は耐摩耗性が著しく悪く、実用性がない。本発明により得られる電子写真感光体、すなわち実施例1〜10の感光体では、ポリアリレート樹脂、中でも粘度平均分子量40,000以上のポリアリレート樹脂を含有するときに耐磨耗性が好ましい。
特に、ポリアリレート樹脂が式(1)のn=1のときに、好ましいことが分かる。また、シロキサンユニットを有する樹脂は、式(2)のXが脂肪族炭化水素のみからなるときに特に良好である。
<SEMによる感光層の形態観察>
実施例3、比較例3、比較例6の感光層内部の形態観察を以下の条件により行った。観察結果を図3〜5に示す。
1.測定サンプルの前処理
・エポキシ樹脂包埋
・(断面作製)ウルトラミクロトーム+ダイヤモンドナイフ による切削
・イオンエッチング(チャンバー内圧力 100Pa, 放電電流 5mA × 10min.)
2.SEMの名称
・HITACHI S-4500
3.観察条件
・加速電圧1.5kV
・下方検出器
図3において、エッチングのされやすさが樹脂骨格の影響を受けやすいこと、及び含有樹脂比率を考慮すると樹脂A、樹脂Cおよび樹脂Xが含有されている感光体(比較例3)で
は樹脂Aを海として樹脂Cおよび樹脂Xが分散されている海島構造を有していることがわか
る。比較例3では樹脂Cと樹脂Xが共に同じ島を形成しており、図3における凹みの部分であることが示唆される。
一方、図4において、比較例3の感光層中に遊離シリコーンが含有された感光体(実施例3)では島部分が凸に観察された。樹脂比率を考慮すると、樹脂Aが海であると考えら
れ、樹脂C及び樹脂Xが島を形成していると考えられる。図3と凹凸が変化したことは、樹脂C及び樹脂Xが形成する島に遊離シリコーンが保持され、島表面を遊離シリコーンが被覆したことにより、島部分がエッチングされにくくなったため凸に観察されたと考えられる。図5において、実施例3とは異なりポリシロキサン成分を有する樹脂Xが含まれていな
い、樹脂A、樹脂C及び遊離シリコーン1重量部仕込みの感光体(比較例6)では、感光層内部に遊離シリコーンが保持されていないため、樹脂Cからなる島部分が凹んで観察され
た。
これらの観察結果により、感光層に、ポリシロキサン成分を有する樹脂、且つ遊離シリコーンが、前記樹脂が形成する層内に前記樹脂成分に対して0.08質量%以上1.5質量%以下保持されている電子写真感光体(実施例1〜10及び比較例8,9)では、ポリシロキサン成分を有する樹脂が遊離シリコーンを保持しており、遊離シリコーンが表面に断続的にブリードアウトすることが可能な構造になっていることがわかる。
<表面物性の評価>
前述の電気特性と耐磨耗性が良好な感光体シート(実施例1〜10、比較例1〜7)を幅60mm長さ130mmの大きさに切り出し、摩耗試験機(スガ試験機株式会社製FR−2型)の往復移動テーブル上に粘着テープで固定した。7.8Nの荷重をかけ、3M社製Wetordry Tri−M−ite Paper 2000により電子写真感光体上を300回往復させ研磨した。その後、7.8N重の荷重をかけ株式会社クレシア社製JKワイパー(登録商標)ティシュー150−Sにより電子写真感光体上を300回往復させ研磨した。
これらの表面研磨前後の感光体シートについて、表面性試験機(新東科学株式会社製Heidon−14型)を用い摩擦係数を測定した。このとき、摩擦体として幅10mm、長さ12mmの不織布(ダイニック株式会社製SOFPADS)を用い、荷重2.9Nで
掃引速度100mm/分の条件で測定を行った。この結果を表−2に示す。
表−2に見られるように、本発明における電子写真感光体(実施例1〜10)は、従来の電子写真感光体に比べ、電子写真感光体表面の滑り性を著しく改良することが可能である。特に、実施例1と比較例1および比較例6を比較すると、本発明の電子写真感光体が、ポリシロキサン成分を有する樹脂を含有することにより、電子写真感光体表面が磨耗しても良好な表面性が持続するようになり、加えて前記ポリシロキサン成分を含む樹脂により遊離シリコーンが感光層内部に保持されることによって、さらに滑り持続効果の著しく高い電子写真感光体となることがわかる。
上述したように、表−1および表−2の結果から、本発明における電子写真感光体は電気特性を損なうことなく、耐摩耗性と著しく良好な滑り持続性を兼ね備えることがわかる。
<現像用トナーの製造>
・ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1の調製
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、融点82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A、以下適宜「20%DBS水溶液」と略称する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、日機装社製マイクロトラックUPA(以下適宜「マイクロトラックUPA」と略称する)で測定しながら体積平均粒径を250nmまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液A1(エマルジョン固形分濃度=30.2質量%)を作製した。
・シリコーンワックス分散液A2の調製
アルキル変性シリコーンワックス(融点72℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、マイクロトラックUPAで測定しながら体積平均粒径が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液A2(エマルジョン固形分濃度=27.4質量%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液A1の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1を35.6重量部(712.12g)と、脱塩水259部とを仕込み、回転数103rpmで攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、下記のモノマー類および乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加した。このモノマー類および乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A1を得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は280nmであり、固形分濃度は21.1質量%であった。
・重合体一次粒子分散液A2の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液A2を23.6重量部(472.3g)と、20%DBS水溶液1.5重量部と、脱塩水324部とを仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、103rpmで攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。
その5分後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始(8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した時から5分後)から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 18.9部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A2を得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は290nmであり、固形分濃度は19.0質量%であった。
・着色剤分散液Aの調製
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cmのファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学株式会社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積累積50%径Dv50は約90μmであった。上記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行なった。尚、ステータの内径は75mmφ、セパレータの径が60mmφ、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm)を用いた。ステータの有効内容積は約0.5リットルであり、メデイアの充填容積は0.35リットルとしたので、メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約50リットル/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散体Aを得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は150nmであり、固形分濃度は24.2質量%であった。
・現像用母粒子Aの製造
重合体一次粒子分散液A1 固形分として95部(固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液A2 固形分として5部
着色剤微粒子分散液A 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、および各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12リットル、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃40rpmで5分間均一に混合した。続いて、内温12℃で攪拌回転数を250rpmに上げ第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから着色剤微粒子分散液Aを5分かけて添加し、内温12℃で250rpmのまま均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後250rpmのまま75分かけて内温53℃に昇温して、その後170分かけて56℃まで昇温した。
ここでアパーチャー径を100μmとした精密粒度分布測定装置(マルチサイザーIII:ベックマン・コールター社製;以下適宜「マルチサイザー」と略称する)にて粒径測定を測定したところ50%体積径が6.7μmであった。
その後、250rpmのまま重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持し、回転数を168rpmに落としてすぐに20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加した。更に168rpmのまま内温を30分かけて90℃に昇温して60分保持した(以下、この工程を融合工程と呼ぶことがある)。
その後20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
ここで得られたケーキをステンレス製バッドに高さ20mm程度となるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、現像用母粒子Aを得た。
・現像用トナーAの製造
攪拌機(Z/A羽根)と上部より壁面に対し直角に向いたディフレクターを備えた内容積10L(直径230mm,高さ240mm)のヘンシェルミキサー内に、現像用母粒子A100部(1,000g)を投入し、続いてシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.04μmのシリカ微粒子0.5部と、シリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.012μmのシリカ微粒子2.0部とを添加し、3000rpmで10分間攪拌・混合して150メッシュを通し篩別する事により現像用トナーAを得た。マルチサイザーIIで測定したトナーAの体積平均粒径は7.05μm、Dv/Dnは1.14、FPIA2000で測定した平均円形度は0.963であった。
・現像用トナーBの製造
現像用母粒子Aの製造における融合工程を、90℃に昇温して60分保持することから、96℃に昇温して90分保持することに変更した以外は、現像用母粒子Aと同様の方法で現像用母粒子Bを作製した。現像用トナーAの製造において用いた現像用母粒子Aの代わりに、現像用母粒子Bを用いた以外は現像用トナーAと同様の方法で、現像用トナーBを製造した。マルチサイザーIIで測定したトナーBの体積平均粒径は6.98μm、Dv/Dnは1.14、FPIA2000で測定した平均円形度は0.981であった。
<感光体ドラムの製造>
[実施例11]
以下の手順に従い、電子写真感光体の1形態である感光体ドラムを作製した。初めに、表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ376mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダーの表面に、陽極酸化処理を行ない、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。このシリンダーを、実施例1で作成した電荷発生層形成用塗布液に浸漬塗布して、乾燥後の膜厚が約0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、製造例1で製造した樹脂Xを20重量部、樹脂Aを80重量部、下記構造式(5)で表わされる電荷輸送物質50重量部、下記構造式(6)で表される酸化防止剤を8重量部、遊離シリコーン1重量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液に、先に電荷発生層を形成したシリンダーを浸漬塗布して、乾燥後の膜厚22μmの電荷輸送層を形成し、感光体ドラムを作製した。ここで作製した感光体ドラム、および、上記現像用トナーAをカラープリンター((株)沖データ社製MICROLINE Pro 9800PS−E)のブラックドラムカートリッジ、および、ブラックトナーカートリッジにそれぞれ搭載し、該カートリッジを上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様
4連タンデム
カラー36ppm、モノクロ40ppm
1200dpi
接触ローラ帯電(直流電圧印加)
LED露光
除電光あり
温度25℃、湿度50%の条件下、約5%の印字面積を有するテキスト文書を30,000枚の画像形成を行なった。その時の感光体ドラムの膜減り量の結果を表3に示す。ここで膜減り量は、後述する比較例10の感光体ドラムの膜減り量を1とした相対値で示した。値が低いほど耐摩耗性がよい。また、画像形成初期と30,000枚画像形成した後に印刷したハーフトーン画像を評価した結果も同様に表−3に示した。
また、QEA社製のTestTarget(rev4)を印刷したところ、初期、30,000枚の画像形成後、いずれも良好な階調性の画像が得られた。
[実施例12]
実施例11において用いた樹脂Aを樹脂Bとした以外は実施例11と同様にして感光体ドラムを作製し、同様の方法で評価を行なった。結果は同様に表−3に示した。
また、QEA社製のTestTarget(rev4)を印刷したところ、初期、30,000枚の画像形成後、いずれも良好な階調性の画像が得られた。
[実施例13]
実施例11において用いた現像用トナーAを現像用トナーBとした以外は実施例11と同様の方法で評価を行なった。結果は同様に表−3に示した。
また、QEA社製のTestTarget(rev4)を印刷したところ、初期、30,000枚の画像形成後の階調性の画像は、実施例11のものより良好であった。
[比較例10]
実施例11において用いた遊離シリコーン量を1重量部から0.05重量部に変更した以外は実施例11と同様にして感光体ドラムを作製し、同様の方法で評価を行なった。結果は同様に表−3に示した。
[比較例11]
実施例11において用いた樹脂Xを樹脂Cとした以外は実施例11と同様にして感光体ドラムを作製し、同様の方法で評価を行なった。結果は同様に表−3に示した。
[比較例12]
実施例11において用いた樹脂Aを樹脂Cとした以外は実施例11と同様にして感光体ドラムを作製し、同様の方法で評価を行なった。結果は同様に表−3に示した。
以上のように、本発明の感光体ドラムを用いた場合(実施例11〜13)、ポリアリレートを含んでいない感光体と比較して良好な耐磨耗性を有し、かつ高品質の画像が得られることが分かる。
感光層内部に遊離シリコーンが少ない場合(比較例10)および感光層にポリシロキサン成分を有する樹脂を含んでいない場合(比較例11)は、感光体ドラム回転時のジッターによる濃度むらが見られた。また、ポリアリレートを含有していない感光体(比較例12)は、クリーニング不良に起因する濃度むらが見られた。
本発明は電子写真感光体を使用する任意の分野で使用することが可能であり、特に、プリンターや複写機等の画像形成装置に用いて好適である。
1…電子写真感光体
2…帯電装置(帯電ローラ)
3…露光装置
4…現像装置
5…転写装置
6…クリーニング装置
7…定着装置
41…現像槽
42…アジテータ
43…供給ローラ
44…現像ローラ
45…規制部材
71…上部定着部材(加圧ローラ)
72…下部定着部材(定着ローラ)
73…加熱装置
T…トナー
P…記録紙

Claims (9)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層がバインダー樹脂として、ポリシロキサン成分を有する樹脂及びポリアリレート樹脂を含有し、前記ポリシロキサン成分を有する樹脂と前記ポリアリレート樹脂との合計重量に対する前記ポリシロキサン成分を有する樹脂の重量が5質量%以上であり、且つ遊離シリコーンを該バインダー樹脂に対して0.08質量%以上2質量%以下該感光層内に含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記ポリアリレート樹脂を海とし、該ポリアリレート樹脂中に前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が分散する海島構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ポリシロキサン成分を有する樹脂が、ポリシロキサン成分を有するポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記ポリアリレート樹脂が、下記式(1)で表されるジカルボン酸残基を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の電子写真感光体。
    (式(1)中、X〜Xは、各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表し、nは〜5の整数を表す。)
  5. 前記ポリシロキサン構造を有する樹脂が、ポリカーボネート構造とポリシロキサン構造とによるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の電子写真感光体。
  6. 前記ポリシロキサン構造を有する樹脂が、少なくとも1端にポリシロキサン成分を有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 前記ポリカーボネート構造が下記式(2)の構造を有し、且つ前記ポリシロキサン構造が下記式(3)の構造を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電子写真感光体。
    (式(2)中、Y〜Yは各々独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基を表し、Xは連結基を表す。式(3)中、R13は2価の有機基を表し、Wは2価の連結基を表す。R〜R12は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基を表し、nは1以上500以下の整数である。)
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した当該電子写真感光体に対し像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段、当該静電潜像をトナーで現像しトナー像を形成する現像手段、当該トナー像を前記電子写真感光体から被転写体に転写する転写手段、当該トナー像の転写後に当該電子写真感光体上に残留する電荷を除去する除電手段、当該トナー像を転写した後の当該電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段のうち、少なくとも一つと、を備えることを特徴とする電子写真カートリッジ。
  9. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に対し像露光を行い、静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を前記電子写真感光体から被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
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