JP5560585B2 - 電子写真感光体、画像形成装置及びカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、画像形成装置及びカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、画像形成装置及びカートリッジに関する。
従来、電子写真感光体(以下、適宜、単に「感光体」と言う。)の材料として、例えば、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機光導電性物質が広く用いられてきた。一方で、有機光導電性物質は成膜性に優れるため、例えばこれを導電性支持体等に塗工することによって容易に感光体を生産できる。したがって、有機光導電性物質を用いた感光体は生産性に優れるので、有機光導電性物質は安価な感光体の材料として非常に有用である。さらに、有機光導電性物質を用いた感光体は、使用する染料、顔料等の選択により、例えば感色性を自在にコントロ−ルできる等の利点も有する。そこで、有機光導電性物質を用いた感光体(有機感光体)に関して、これまで幅広い検討がなされてきた。
近年、例えば有機光導電性染料、顔料等を含有した電荷発生層と、例えば光導電性ポリマー、低分子化合物等の有機光導電性物質を含有した電荷輸送層とを積層した機能分離型(積層型)感光体が開発されている。機能分離型感光体においては、従来の有機感光体の課題とされていた感度及び耐久性に対して、著しい改善がなされている。中でも、電荷発生層に好適に含有されるアゾ顔料は、例えばハロゲンランプ等の白色光源に対して、優れた光導電性を示す。従って、アミン成分とカプラー成分との組み合わせの種類により、様々な特性を有する有機光導電性物質が容易に得られ、これまで数多くのものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、最近では、出力画像の超高画質化のニーズが高まっている。そのため、青色ないし紫色(具体的には、発光波長が通常380nm以上500nm以下。以下、適宜「青色(紫色)」と言う。)半導体レーザーを露光光源として用いて、感光体上に形成されるビームスポット径を小径化することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この技術においては、青色(紫色)の光源に対して、通常、ある一定以上の感度を有する感光体が要求される。また、感光体が、照射された光を有効に利用するために、通常、上記露光光源の波長域に高い分光感度を有することも要求される。
このような青色(紫色)の光源に対応するアゾ顔料として、アントラキノン系アゾ顔料を用いる技術(例えば、特許文献3参照)、アゾ顔料を用いる技術(例えば、特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)が提案されている。
また、例えば複写機、プリンター等の画像形成装置では、画像欠陥が少ないという画像形成上の安定性に加えて、更なる高解像度、高階調性能等の高画質化が求められている。そこで、これらの画像形成装置では、高画質化のために、平均粒径が3〜8μm程度の粒度分布の狭いトナーが通常用いられる。
従来、トナーは、主としてバインダー樹脂と着色剤とを均一になるまで溶融混練した後粉砕する溶融混練粉砕法により製造されていた。しかしながら、溶融混練粉砕法においては、高画質化に対応できるトナーを効率よく製造することが難しかった。
そこで、例えば、水系媒体中でトナー粒子を生成するような、重合法によりトナーを製造する技術が提案されている。例えば、特許文献3には、懸濁重合法により製造されたトナーが記載されている。また、例えば、特許文献4には、乳化重合凝集法により製造されたトナーが記載されている。中でも、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤とを凝集させてトナーを製造する方法である。この方法においては、凝集条件を制御することによってトナーの粒径及び円形度を調整することができるので、トナーが有する各種性能を最適化しやすいという利点がある。
また、例えば、離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性等を改善するために、トナーに低軟化点物質(ワックス)を含有させる方法が提案されている。従来の溶融混練粉砕法を用いてトナーを製造した場合、トナーに含まれる低軟化点物質の量は、バインダー樹脂に対して通常5重量%程度以下であるとされている。それに対して、重合法を用いて製造されたトナーにおいては、低軟化点物質を多量(具体的には、5重量%〜30重量%以下)に含有することができることが記載されている(例えば、特許文献7及び特許文献8参照)。
特開平3−68953号公報 特開平9−240051号公報 特開平10−239956号公報 特開2002−14482号公報 特開2002−131951号公報 特開2000−105478号公報 特開平5−88409号公報 特開平11−143125号公報
しかし、特許文献3〜6に記載の感光体は、青色(紫色)半導体レーザー等の青色(紫色)の光源に対して、必ずしも十分な感度を有していなかった。
そこで青色(紫色)の光源に対して、十分な感度を確保するために、光量を極度に上げた状態で画像出力することも検討されている。しかし、このような場合、耐久電位変動が大きくなりやすい。このため、安定した超高画質の画像を出力するためには、感光体が十分な耐久性を有することが望まれる。
また、従来の感光体は、光源の出力安定性に対して、信頼性の低下、コストの増大、光源寿命の低下等種々の課題を有していた。さらには、光源のパワーにも限界があり、感光体が必ずしも適正な感度を確保できるとは限らなかった。
また、特許文献7及び8に記載のトナーを用いて画像形成すると、通常は高画質が得られる。しかし、得られた画像のカブリ現象も発現しやすくなるために、従来の技術においては、高解像度、高階調性及び低いカブリを、高いレベルで維持することは困難であった。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、波長380nm以上500nm以下の単色光を発する光源に対し高感度かつ良好な帯電性を有する感光体、並びに高解像度及び高階調性を有する欠陥の少ない画像を達成した高品質の画像を形成することのできる画像形成装置及びカートリッジを提供することを目的とする。
本発明の発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定のアゾ化合物を組み合わせて特定の存在比で含む感光層を有する感光体を用いることにより、380nm以上500nm以下の波長の単色光を発する光源に対し高感度かつ良好な帯電性を有する感光体、並びに、高解像度、高階調性に代表される高品質であって、高解像度な露光に対して忠実に現像された欠陥の少ない画像を形成できる画像形成装置及びカートリッジを提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された感光層とを有し、波長380nm以上500nm以下の単色光により露光されることにより静電潜像を形成する電子写真感光体であって、下記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表される複数種のアゾ化合物を該感光層に含み、高速液体クロマトグラフィーにおいて、下記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(3)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比が30%以下であることを特徴とする電子写真感光体に存する(請求項1)。
(式(1)、(2)及び(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Ar及びArは互いに架橋していてもよい。Xは原子数3以上25以下の連結基を表し、nは0又は1の整数を表し、Cpは下記式(4)で表される基を表し、Cpは下記式(5)で表される基を表す。)
(式(4)中、
Z1は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は含窒素複素環基を表し、
は水素原子又は置換基を表す。)
(式(5)中、Z2は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表し、Rはハロゲン原子;水素原子;ニトリル基;置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
このとき、前記式(1)と式(2)と式(3)とにおいて、Cpが同じであり、Cpが同じであることが好ましい(請求項2)。
また、高速液体クロマトグラフィーにおいて、前記式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、各アゾ化合物のピーク面積の比が、大きい方から順に、前記式(1)で表されるアゾ化合物、前記式(2)で表されるアゾ化合物、及び、前記式(3)で表されるアゾ化合物となっていることが好ましい(請求項3)。
さらに、前記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(1)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比が50%以上であることが好ましい(請求項4)。
本発明の感光体は、該導電性支持体と該感光層との間に金属酸化物粒子を含有する下引き層を有し、該金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒径が0.3μm以下であることが好ましい(請求項5)。
本発明の別の要旨は、少なくとも本発明の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し波長380nm以上500nm以下の単色光により露光を行い、静電潜像を形成する露光手段と、トナーを有し、形成された静電潜像を該トナーで現像する現像手段と、該トナーを被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置に存する(請求項6)。
このとき、該トナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が0.940以上1.000以下であることが好ましい(請求項7)。
また、該トナーが、下記(i)〜(iii)の全てを満足することが好ましい(請求項8)。
(i)体積中位径(Dv50)が4.0μm以上7.0μm以下である。
(ii)平均円形度が0.93以上である。
(iii)該トナーの体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50)を満たす。
さらに、該トナーにおいて、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.110EXP(19.9/Dv50)を満たすことがより好ましく(請求項9)、0.0517EXP(22.4/Dv50)≦Dnsを満たすこともより好ましい(請求項10)。
また、該トナーが水系媒体中で製造されたトナーであることが好ましい(請求項11)。
さらに、該トナーが樹脂被覆層を有することも好ましい(請求項12)。
本発明の更に別の要旨は、本発明の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し波長380nm以上500nm以下の単色光により露光を行ない静電潜像を形成する露光手段、トナーを有し、形成された静電潜像をトナーで現像する現像手段、及び、該トナーを被転写体に転写する転写手段を備える画像形成装置に対して該電子写真感光体を着脱可能に支持するカートリッジケースとを備えたことを特徴とするカートリッジに存する(請求項13)。
このとき、該トナーが、前記(i)〜(iii)の全てを満足することが好ましい(請求項14)。
本発明によれば、波長380nm以上500nm以下の光に高い分光感度を有し、波長380nm以上500nm以下の単色光を用いて画像形成を行う場合に、高感度で、帯電性も良好であり、かつ高解像度な露光に対して忠実に静電潜像を形成することが可能な電子写真感光体、並びに、それを備えた画像形成装置及びカートリッジを実現することができる。
特に、これらの画像形成装置及びカートリッジにおいては、トナーとして特定の要件を満たすものを用いることにより、高解像度、高階調性等に代表される高品質を実現でき、さらに、高解像度な露光に対して忠実に現像された欠陥の少ない画像を形成することが可能である。
本発明に係る電子写真感光体及びトナーを備えた画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。 トナーの実写評価後のクリーニングブレード上のトナーの付着状況を表わす1000倍のSEM写真である。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に制限されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更することができる。
[1.電子写真感光体]
[1−1.式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物]
本発明の感光体は、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表される複数種のアゾ化合物を感光層に含む。以下、これらのアゾ化合物について説明する。
(式(1)、(2)及び(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Ar及びArは互いに架橋していてもよい。Xは原子数3以上25以下の連結基を表し、nは0又は1の整数を表し、Cpは下記式(4)で表される基を表し、Cpは下記式(5)で表される基を表す。)
(式(4)中、
Z1は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は含窒素複素環基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。)
(式(5)中、Z2は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表し、Rはハロゲン原子;水素原子;ニトリル基;置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、nは0又は1の整数を表す。)
〔アリーレンAr及びAr
式(1)、(2)及び(3)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。
Ar及びArが有する炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、それぞれ独立に、通常6以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは10以下である。Ar及びArの炭素数が多すぎる場合、本発明に係るアゾ化合物の安定性が低下する可能性がある。なお、Ar及び/又はArが、後述する置換基で置換される場合、置換基が有する炭素数も含めた全ての炭素数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
また、Ar及びArの分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、それぞれ独立に、通常76以上、また、通常350以下、好ましくは250以下、より好ましくは150以下である。Ar及びArの分子量が大きすぎる場合、本発明に係るアゾ化合物の安定性が低下する可能性がある。なお、Ar及び/又はArが、後述する置換基で置換される場合、置換基の分子量も含めた全体の分子量が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
アリーレン基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることが出来る。例えば、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、フェナンスレン基等が挙げられる。中でも、アリーレン基としてはフェニレン基が好ましく、フェニレン基の中でも、p−フェニレン基であることがより好ましい。
なお、前記アリーレン基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
アリーレン基としてp−フェニレン基を用いる場合、Ar及びArの両方が必ずしもp−フェニレン基である必要は無く、Ar又はArのいずれか片方のみがp−フェニレン基であってもよい。ただし、電気特性が向上するという観点から、少なくともArがp−フェニレン基であることが特に好ましい。
また、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい。ただし、置換基が有する原子数が多すぎる場合、本発明の化合物が有する電気特性に影響がある可能性があるため、置換基の原子数は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
Ar及びArが有していてもよい置換基の具体例としては、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基等が挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
また、Ar及びArがアルキル基を有する場合、そのアルキル基はそれぞれ独立して、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。また、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。さらに、飽和結合のみを有していてもよいし、不飽和結合を有していてもよい。
また、上記の置換基は、例えば、メチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等によって、さらに置換されていてもよい。
なお、置換基は1種が単独で置換してもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで置換してもよい。
上記式(1)、(2)及び(3)において、アゾ部位(−N=N−で表わされる結合部位)を構成する窒素原子は、Arの任意の炭素原子と結合することができる。ただし、アゾ部位を構成する窒素原子に結合するAr上の炭素原子と、後述するX(n=0の場合は、Ar)と結合しているAr上の炭素原子とは、隣の位置でないことが好ましい。隣の位置ではひずみが大きい構造をとることとなり、電気特性に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
また、上記式(1)中の他方のアゾ部位を構成する窒素原子も、Arの任意の炭素原子と結合することができるが、中でも、Arの場合と同様の位置関係で、窒素原子と炭素原子とが結合することが好ましい。
また、Ar及びArは、Xの他に、互いに架橋して環構造を形成してもよい。また、n=0の場合、ArとArとは直接結合するが、当該結合とは別に、互いに架橋して環構造を形成してもよい。
上記式(1)で表わされる結合以外にArとArとが結合し、互いに架橋して環構造を形成する場合、新たに形成される結合は、ArとArとを直接結合させるものであってもよいし、連結基を含むものであってもよい。中でも、新たに形成される結合は、連結基を含むものであることが好ましい。即ち、ArとArとは、連結基を介して結合し、互いに架橋して環構造を形成することが好ましい。
この連結基は、本発明の効果が著しく損なわれない限り任意であるが、中でも原子数が通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下であるものが望ましい。連結基が有する原子数が多すぎる場合、本発明に係るアゾ化合物の安定性が低下する可能性がある。また、連結基が有する炭素数は、通常0以上、好ましくは1以上、また、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。炭素数が多すぎる場合、本発明に係るアゾ化合物の安定性が低下する可能性がある。
連結基の具体例としては、カルボニル基(2価の−C(=O)−を表わす。)、スルフィニル基、スルホニル基、スルフィナト基、アルキレン基、アルキリデン基、オキシ基、セレノ基、チオ基等が挙げられる。中でも好ましくはカルボニル基及びアルキレン基である。なお、連結基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
さらに、連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は、本発明の効果が著しく損なわれない限り任意であるが、例えば、Ar及び/又はArに置換しうる置換基等が挙げられる。
〔連結基X〕
上記式(1)、(2)及び(3)中、XはArとArとを連結する連結基を表わす。
連結基Xの原子数は、通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、また、通常25以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下の範囲である。連結基Xが有する原子数が多すぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、連結基Xが、後述する置換基で置換される場合、置換基の原子数も含めた全体の原子数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
連結基Xの分子量は、通常25以上、好ましくは50以上、より好ましくは65以上、また、通常400以下、好ましくは250以下、より好ましくは150以下の範囲である。連結基Xの分子量が大きすぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、連結基Xが、後述する置換基で置換される場合、置換基の分子量も含めた全体の分子量が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
連結基Xの具体例としては、複素環を有する基、芳香族性を有する環(以下、適宜「芳香環」と言う。)を有する基、縮合多環を有する基、脂肪族炭化水素基を有する基、−S(O)−、−N(CH)−、−N(O)−、等が挙げられる。
連結基Xが複素環を有する基である場合、連結基Xは、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種を有するものが好ましい。この場合の連結基Xとしては、例えば、インドール環を有する2価基、オキサゾール環を有する2価基、イソオキサゾール環を有する2価基、オキサジアゾール環を有する2価基、チオフェン環を有する2価基等のヘテロアリール環を有する2価基等が好ましい。中でも、連結基Xとしては、オキサジアゾール環を有する2価基がより好ましい。
連結基Xが芳香環を有する基である場合、芳香環としては例えばアリーレン基が好ましく、アリーレン基の中でも、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基が好ましい。中でも、芳香環としては、フェニレン基、ナフチレン基がより好ましい。
連結基Xが縮合多環を有する基である場合、縮合多環としては、例えばテトラリン環、アズレン環、フルオレン環が好ましく、テトラリン環、フルオレン環がより好ましい。
連結基Xが脂肪族炭化水素基を有する基である場合、脂肪族炭化水素基としては、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アルキリデン基が好ましい。
連結基Xがアルキレン基である場合、炭素数が、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常9以下、好ましくは6以下であるアルキレン基が望ましい。
連結基Xがアルケニレン基である場合、炭素数が、通常2以上、また、通常9以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であるアルケニレン基が望ましい。
連結基Xがアルキニレン基である場合、炭素数が、通常2以上、また、通常9以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であるアルキニレン基が望ましい。
連結基Xがアルキリデン基である場合、炭素数が、通常2以上、好ましくは3以上、また、通常9以下、好ましくは6以下であるアルキリデン基が望ましい。
また、連結基Xは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。また、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。さらに、飽和結合のみを有していてもよいし、不飽和結合を有していてもよい。
なお、連結基Xは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
連結基Xは、置換基を有していてもよい。この置換基は、1種が単独又は複数で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。置換基の種類は制限されず、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
上記の連結基Xのうち、電気特性の観点から、窒素原子及び酸素原子を含む複素環を有する連結基が好ましく、オキサジアゾール環を有する連結基がより好ましく、下記式(6)で表わされるオキサジアゾール環が特に好ましい。
〔整数n
上記式(1)、(2)及び(3)中、nは、0又は1の整数を表わす。n=0の場合、ArとArとが直接結合していることを表わす。また、本発明に係るアゾ化合物の電気特性の観点からは、nは1であることが好ましい。
〔カップラーCp
上記式(1)及び(2)中、Cpは式(4)で表される基を表す。
式(4)中、Zは、2つのベンゼン環からなるナフタレン骨格(以下、適宜、単に「ナフタレン骨格」と言う。)に結合した、環構造を有する原子団を表わす。具体的には、原子団Zは、以下に記載の構造のいずれかを表す。
(原子団Z1)
式(4)中、Z1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は含窒素複素環基を表し、Z1が有する2つの結合手が別々の窒素原子に結合した環構造を有している。
2価の芳香族炭化水素基が有する炭素数は、通常6以上、また、通常16以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。炭素数が多すぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、2価の芳香族炭化水素基が、後述する置換基で置換される場合、置換基の炭素数も含めた全体の炭素数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
また、2価の芳香族炭化水素基の分子量は、通常76以上、また、通常250以下、好ましくは180以下、より好ましくは150以下である。分子量が大きすぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、2価の芳香族炭化水素基が、後述する置換基で置換される場合、置換基の分子量も含めた全体の分子量が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、特にフェニレン基が好ましい。
2価の含窒素複素環基が有する炭素数は、通常4以上、好ましくは5以上、また、通常12以下、好ましくは9以下である。炭素数が多すぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、2価の含窒素複素環基が、後述する置換基で置換される場合、置換基の炭素数も含めた全体の炭素数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
また、2価の含窒素複素環基の分子量は、通常77以上、また、通常200以下、好ましくは180以下、より好ましくは150以下である。分子量が大きすぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、2価の含窒素複素環基が、後述する置換基で置換される場合、置換基の分子量も含めた全体の分子量が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
2価の含窒素複素環基の具体例としては、ピリジンイル基、キノリンジイル基、ピリミジンジイル基等が挙げられ、特にピリジンイル基が好ましい。
Z1は任意の場所に、任意の置換基を有していてもよい。置換基は、1種が単数又は2個以上で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。また置換基の種類は制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、ニトリル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
これらの置換基はさらに置換されていても良い。さらに置換されうる置換基としては、例えば、Z1に置換しうる置換基と同様のもの等が挙げられる。中でも、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基であり、さらに好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基である。
(置換基R
式(4)中、Rは、式(4)中のナフタレン骨格に置換する水素原子、又は置換基を表わす。
が置換基である場合、その原子数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、また、通常30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下の範囲である。原子数が多すぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、Rが、後述する置換基で置換される場合、置換基の原子数も含めた全体の原子数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
が置換基である場合、Rが有する炭素数は、通常0以上、好ましくは1以上、また、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下の範囲である。炭素数が多すぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、Rが、後述する置換基で置換される場合、置換基の炭素数も含めた全体の炭素数が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
が置換基である場合、Rの分子量は、通常15以上、好ましくは17以上、より好ましくは30以上、また、通常250以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下の範囲である。分子量が大きすぎる場合、電気特性に影響が出る可能性がある。なお、Rが、後述する置換基で置換される場合、置換基の分子量も含めた全体の分子量が、上記の範囲を満たすことが好ましい。
が置換基である場合、本発明の効果を著しく損なわない限り、その種類は任意である。Rとなる置換基の例を挙げると、炭素原子を含む有機基、及び炭素原子を含まない無機基が挙げられる。炭素原子を含む有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えばアルキル基、アルケニル基等)、芳香族炭化水素基(例えばアリール基等)等の炭化水素基;アルコキシ基、アリールオキシ基等の含酸素炭化水素基;ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基等のハロゲン原子を含むハロゲン化炭化水素基;ニトリル基、有機基で置換された1級〜3級のアミノ基等が挙げられる。
また、炭素原子を含まない無機基としては、例えば、無置換のアミノ基、チオール基、ニトロ基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
アルケニル基としては例えば、アリル基、メチルアリル基、クロロアリル基等が挙げられる。
アリール基としては例えば、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては例えばトリフルオロメチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
が置換基である場合、Rはさらに置換基で置換されていても良い。置換基としては例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、これらの置換基は、1種が単数又は2個以上で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
は、好ましくは、水素原子、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは、水素原子、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、アラルキルオキシ基、水酸基であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基である。
(Rと水酸基との結合位置について)
式(4)中のOH基の結合位置は芳香環の3箇所の結合位置が可能であるが、以下の式(7)又は式(8)で表される結合位置が好ましく、式(7)で表した結合位置がさらに好ましい。
また、Rの結合位置は、任意の位置に結合されるが、以下の式(9)で表される結合位置がさらに好ましい。
〔カップラーCp
上記式(1)及び(3)中、Cpは式(5)で表される基を表す。
(原子団Z2)
式(5)中、Z2は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表す。
Z2が有する炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、また、通常30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。Z2は、式(5)が有するベンゼン骨格と2箇所以上で結合した環構造を有するが、中でも、Z2は環構造として芳香環を有することが好ましい。
以上の好ましいZ2のうち、以下の式(10)又は(11)で表わされるものが、さらに好ましい。
式(10)又は(11)で表わされる有機基は、いずれも任意の場所に任意の置換基を有していてもよい。なお、置換基は、1種が単数又は2個以上で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。その具体例としては、有機基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、式(11)のRは、本発明の効果を著しく制限しなければ任意であるが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、並びに、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基等が挙げられる。このとき、Rが水素原子以外の基である場合、Rは式(11)中に1つだけ結合してもよいし、複数のRが結合してもよい。具体的には、Rの数を表すmの値が4以下であることが望ましい。なお、複数結合する場合には、各々のRが同じでもよいし、異なっていてもよい。
の原子数は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はないが、通常1以上、また、通常25以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
がハロゲン原子である場合、例えば、塩素原子、フッ素原子等が好ましい。
がアルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましい。
がアルコキシ基である場合、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が好ましい。
がアリール基である場合、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が好ましい。
また、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基は置換されていてもよい。なお、これらの置換基は、1種が単数又は2個以上で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。置換基としては例えば、アリール基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
(官能基の結合位置)
式(5)中の、下記式(5A)で表される官能基の結合位置は、水酸基が結合しているフェニレン環、あるいはZ2の環の、どの位置に置換されていてもよい。好ましい置換位置は下記式(12)で表される位置(即ち、水酸基の隣の位置)であり、またZ2が、例えば上記式(10)の構造を有する場合には下記式(13)で表される置換位置も好ましい。中でも特に好ましい置換位置は、上記式(12)で表される位置である。
(整数n
式(5)中、nは0又は1の整数を表わす。nが0の場合は、式(5)に明示されたアミド結合(−CONH−)の窒素原子と、Rとが直接結合していることを表す。また、電気特性の観点から、nは0であることが好ましい。
(置換基R
式(5)中、Rは、ハロゲン原子、水素原子、ニトリル基、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。
の炭素数に制限はないが、通常1以上、好ましくは3以上、また、通常10以下、好ましくは7以下である。
この中で、好ましくはアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、さらに好ましくはフェニル基である。
がアルキル基、アリール基又はアルコキシ基である場合、Rは置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられ、中でもアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、フッ素原子、塩素原子が好ましく、さらには分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。このときのアルコキシ基の炭素数に制限はないが、通常3以上、好ましくは4以上、また、通常11以下、好ましくは8以下である。なお、これらの置換基は、1種が単数又は2個以上で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
が置換基で置換されている場合、その置換基の例を挙げると、イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、イソへキシルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、2−エチルへキシルオキシ基、シクロへキシルメチルオキシ基等が挙げられ、さらに好ましくは、イソブチルオキシ基、シクロへキシルメチルオキシ基である。
〔カップラーの結合位置について〕
式(1)、(2)及び(3)中のCp及びCpにおいて、アゾ結合の窒素原子と結合する原子は、OH基の置換している原子の隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子であることが好ましい。
この位置関係の具体的な例を式で表現すると、以下の式(14−1)〜(14−11)のようになる。ただし、アゾ結合の窒素原子と結合する原子は、OH基の置換している原子の隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子であればよく、式(14−1)〜(14−11)に限定されるものではない。また、OH基の置換している隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子に水素が結合していない場合においては、当該炭素原子ではCp又はCpとアゾ基の窒素とは結合しない。なお、以下の式(14−1)〜(14−11)は、式(1)、(2)及び(3)のうち、Cp、又はCp、並びにアゾ部位の窒素原子の一部を抜粋した式である。
〔式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物の存在比について〕
本発明の感光体は、その感光層に、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表される複数種のアゾ化合物を含む。ただし、感光層には、式(1)及び/又は(2)で表されるアゾ化合物を含むとともに、式(3)で表されるアゾ化合物の量は少ないか又はゼロであるようにすることが好ましい。具体的数値で表すと、高速液体クロマトグラフィーにおいて、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(3)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比(ピーク面積比)は、30%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下とする。なお、下限は理想的には0%である。式(3)で表されるアゾ化合物が多すぎると、電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(1)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比(ピーク面積比)は、50%以上が好ましく、53%以上がより好ましく、55%以上が更に好ましく、60%以上が特に好ましく、また、通常99%以下である。式(1)で表されるアゾ化合物の含有量が少なすぎると、電気特性に影響を及ぼす可能性がある。
さらに、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(2)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比(ピーク面積比)は、1%以上が好ましく、23%以上がより好ましく、また、通常48%以下である。式(2)で表されるアゾ化合物の含量が多すぎると、感度が悪くなる可能性がある。また、式(1)で表されるアゾ化合物のピーク面積が100%では帯電性が悪くなる可能性があるため、感光層には、式(1)で表されるアゾ化合物だけではなく、式(2)で表されるアゾ化合物も上記の比率で含有することが好ましい。
上記の事項をまとめると、本発明の感光体は感光層に、少なくとも式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物を含むアゾ化合物組成物を含有することが好ましいが、式(3)で表されるアゾ化合物は含まないか又は含むとしても少ないことが好ましい。中でも式(1)で表されるアゾ化合物を多量に含むことが好ましいのである。
よってこの観点から、高速液体クロマトグラフィーにより測定された感光層中でのピーク面積比が、大きい方から順に、式(1)で表されるアゾ化合物、式(2)で表されるアゾ化合物、及び、式(3)で表されるアゾ化合物となっていることが特に好ましい。
ところで、式(1)で表されるアゾ化合物、式(2)で表されるアゾ化合物、及び、式(3)で表されるアゾ化合物は、いずれも、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。式(1)で表されるアゾ化合物、式(2)で表されるアゾ化合物、及び、式(3)で表されるアゾ化合物をそれぞれ2種以上用いる場合、それら2種以上のアゾ化合物の合計が、上記したピーク面積比となるようにすることが好ましい。
ただし、製造を簡単に行う観点から、感光層に含まれるアゾ化合物では、式(1)と式(2)と式(3)とにおいて、Cpが同じであり、また、Cpが同じであるようにすることが好ましい。
(ピーク面積比の算出方法)
本発明に係る前記の3種類のアゾ化合物のピーク面積比は、高速液体クロマトグラフィーにより測定される各ピーク面積により算出することができる。本発明に係るピーク面積比とは、前記3種類のアゾ化合物のピークに対してベースラインをひき、それぞれのピーク面積値を測定した後、その3種類のアゾ化合物の総ピーク面積値を算出し、これを100%として、各アゾ化合物のピーク面積比を算出したものである。なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件及び測定方法は以下の通りとする。
<測定装置及び測定条件>
カラム:Asahipak GS−310
内径7.6mm×長さ500mm
移動相:フェノール/トリフルオロ酢酸/クロロホルム=25/13/462(体積%)流量:0.6mL/分
検出:VIS 580nm
<試料の調製>
60℃にて溶融したフェノール25mLにクロロホルム25mLを加え、さらにトリフルオロ酢酸50mLを加えて、撹拌し、均一溶液として、これを試料溶媒とする。
試料7mgを50mLメスフラスコに精秤し、上記試料溶媒15mLを加え完全に溶解させた後、上記の移動相溶媒にて50mLにメスアップする。この溶液10mLをさらに移動相溶媒で50mLにメスアップして分析用試料とする。
<試料の分析>
上記、分析用試料を20μL注入してピーク面積データを得る。
上記のように式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物の存在比の数値はピーク面積比を表すのであるが、本発明者らの検討によれば、これらの数値がモル%又は重量%である場合も、同様の本発明の効果が得られるものと考えられる。したがって、上記の式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物のピーク面積比をモル%又は重量%として認識した場合に本発明に係る上記アゾ化合物の存在比の条件を満たすものも、本発明の技術的範囲に属するものとする。
[1−2.好ましいアゾ化合物の具体例]
本発明に係るアゾ化合物は、上記の構造を有する限り、任意の構造を有することができる。中でも、本発明に係るアゾ化合物は、Cp、下記の構造式(A1)、及びCpを、以下の表1〜表6に記載のいずれかの組み合わせで有することが好ましい。
なお、アゾ結合を構成する窒素原子と結合する、Cp及びCp中の原子は、水酸基の置換している原子の隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子であることが好ましいが、表1の例に限定されるものではない。また、Meはメチル基を表わす。
ところで、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の一部は、特開2000−105478号公報中に記載されている。しかし、当該文献には各々のアゾ化合物を単独で用いた場合の特性が示されているに過ぎず、特定の構造を有するアゾ化合物を特定の混合比で組み合わせて感光層に含有させる構成については開示も示唆もない。特開2008−151876号公報には、本発明に係るアゾ化合物が混合物である可能性を示唆する記載があるが、その混合比については言及されていない。また、特開昭63−195657号公報には、本発明に係るアゾ化合物が混合物である可能性を示唆する記載があるが、アゾ化合物の混合比については言及されておらず、また、露光光の波長が380nm以上500nm以下の単色光である場合の特性についても言及されていない。
本発明に係るアゾ化合物を特定の混合比で組み合わせて感光層に含有する感光体は、式(1)又は(2)で表される化合物が、露光光の波長380nm以上500nm以下の波長領域での吸収が大きいため、白色光露光よりも380nm以上500nm以下の単色光での露光のほうが有利であり、感度も高い。また式(3)で表される化合物は380nm以上500nm以下の領域での吸収は大きくなく、感度も低いため、この混合比を30%以下に限定した本発明の感光体は、380nm以上500nm以下の単色光での露光の場合、有利になり、高感度である。
[1−3.本発明に係るアゾ化合物の製造方法]
本発明に係るアゾ化合物は、上記の本発明に係るアゾ化合物が得られる限り、任意の方法で製造することができる。中でも、以下に説明する方法で製造することが好ましい。また、本発明に係るアゾ化合物は、実施例に記載の方法で製造することも好ましい。
まず、本発明に係るアゾ化合物を製造する際には、カップラーを用意する。式(1)及び(2)中のCp(即ち、前記式(4)で表される基)に対応するカップラーは、公知の方法により合成することができる。例えば、下記反応式(a)に示すように、ヒドロキシナフタル酸無水物の誘導体とジアミン類とを酢酸、ニトロベンゼン等の有機溶媒中で加熱し、脱水縮合することにより得ることができる(特公昭61−30263号公報参照)。
上記合成方法により得られるカップラーは反応式(a)に示すように2種類の異性体の混合物として得られるが、いずれの異性体も使用できる。また、異性体を分離することなく、混合物を用いてカップリング反応を行なうことも可能である。
また、前記式(4)でRが水酸基である場合、このカップラーをさらに炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性条件下、ハロゲン化アルキルを作用させることによりアルコキシ基に誘導することが可能である。しかし水酸基が2つ存在するカップラーの1つの水酸基だけ選択的にアルコキシ基に変換することは純度面、収率面から困難である。この場合、保護基を使用することにより、この点を解決することができる。
保護基としては種々のものを用いることができるが、嵩高い保護基を用いて塩基性条件下、1つだけ保護基を導入した後、アルコキシ基に変換し、保護基をはずすようにすることが好ましい。これにより、目的のRがアルコキシ基であるカップラーを高純度、高収率で得ることができる。
保護基の具体例を挙げると、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられ、選択性が高いことより好ましくはp−トルエンスルホニル基である。なお、保護基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
具体的な操作の例を挙げると、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性条件下、Rが水酸基であるカップラーに保護基を導入し、次いで同条件でアルコキシ化を行うことが好ましい。また、脱保護を行なう際は、反応溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶媒で例えば水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等を用い、室温から溶媒の還流温度の範囲で反応させることが好ましい。これにより、目的のアルコキシ置換されたカップラーを得ることができる。
カップラーを用意した後、それを用いて所望のアゾ化合物を製造する。その方法に制限はないが、例えば、特開昭63−195657号公報の記載を参照して実施すればよい。例えば式(1)で表されるアゾ化合物を製造する場合には、一般式(b)で示されるテトラゾニウム塩を、Cp及びCpに対応するカップラーの混合物とカップリング反応させて製造する方法が簡便である。ただし、この製造方法では、通常は式(2)又は(3)で表されるアゾ化合物も副生する。なお、一般式(b)においてWはアニオンを表す。
アゾ化合物の製造時にCp及びCpに対応するカップラーの混合物を使用した場合、それぞれのカップラーの混合比を変えることにより、目的のアゾ化合物の混合物の混合比をコントロールすることができる。高速液体クロマトグラフィーにおける、前記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、前記式(1)、(2)又は(3)で表されるアゾ化合物それぞれのピーク面積の比を上記した範囲に収めるようにするためには、各々のカップラーの反応性を考慮して、カップリング反応の際のカップラーの仕込み比を調整することが特に有効な手段である。通常、Cpに対応するカップラーよりもCpに対応するカップラーのほうが反応性が高いため、Cpに対応するカップラーの仕込比としては、テトラゾニウム塩1モルに対し、通常0.5モル以上、好ましくは0.7モル以上、また、通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下の範囲である。また、Cpに対応するカップラーはCpに対応するカップラーよりさらに過剰に仕込むことが好ましく、具体的には、Cpに対応するカップラーの仕込み量は、テトラゾニウム塩1モルに対し、通常は1.0モル以上、好ましくは1.5モル以上、より好ましくは1.8モル以上であり、通常3.0モル以下、好ましくは2.5モル以下の範囲である。
カップリング反応の反応溶媒としては、通常、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール等の溶媒が用いられ、好ましくは水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンが用いられる。なお、反応溶媒は、1種のみを用いるようにしてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カップリング反応は、通常、弱アルカリ性条件下で行う。この際に用いる塩基性物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、酢酸ナトリウムが好ましい。なお、塩基性物質は、1種のみを用いるようにしてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カップリング反応の反応温度は、通常5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、通常35℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下である。反応温度が高すぎるとテトラゾニウム塩の分解が起こる傾向があり、低すぎると反応の進行が遅くなり完結しない可能性がある。
カップリング反応の反応時間は、通常30分間以上、好ましくは1時間以上であり、通常10時間以下、好ましくは5時間以下である。
このカップリング反応に用いる酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の塩基性物質の量は、テトラゾニウム塩1モルに対し、通常2モル以上、好ましくは2.5モル以上、より好ましくは3モル以上であり、通常20モル以下、好ましくは15モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。塩基性物質の量は、少なすぎても、多すぎても、反応生成物の凝集状態に影響を及ぼし、ひいてはアゾ化合物の混合物の混合比に影響を与える可能性がある。塩基性物質の量が少ないと前記式(3)で表されるアゾ化合物は凝集しやすくなるため、最終的に得られた混合物において、前記式(3)で表されるアゾ化合物のピーク面積比が増加する傾向がある。
また、得られたアゾ化合物の混合物を種々の精製溶媒で精製することにより、前記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の混合比をコントロールすることができる。このときに用いる精製溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルスルホキシト゛、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール等が挙げられる。なお、精製溶媒は、1種のみを用いるようにしてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、このとき溶媒に酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の塩基性物質を混合してもよい。前記式(3)で表されるアゾ化合物は、式(1)又は式(2)で表されるアゾ化合物に比べて、上記の精製溶媒に対する溶解度が高いため、そのピーク面積比を下げることが可能であり、使用溶媒の種類、使用溶媒量、処理温度、処理回数等の精製方法によって、アゾ化合物の混合物のピーク面積比を制御することができる。なお、本明細書において混合とは、特に断らない限り、混合する成分が系内で一様に混ざり合うことを必須とするものでなく、混合する成分が同じ系で組み合わされていることを意味する。
また前記式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物を、それぞれ別に製造し、混合してもよい。式(1)で表される化合物を製造する場合には、例えば、以下の方法により製造できる。即ち、下記一般式(c)で表されるジアミンの一方のアミンを保護基により保護するか、ニトロ基に変え、ジアゾ化反応が不可能な状態にする。その状態で、他方のアミンのみを常法により、ジアゾ化反応、カップリング反応を行い、モノアゾ化合物を合成する。次に、保護基をはずすかニトロ基を還元してアミンの形にする。その後、先ほどと異なるカップラーを用いてカップリング反応を行なうことにより、式(1)で表されるアゾ化合物を得ることができる。
[1−4.感光体の構成]
本発明の電子写真感光体(即ち、感光体)は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された感光層とを有する。感光層の構成としては、公知のいずれの構成も使用することができ、例えば、電荷発生物質を含んだ層(電荷発生層)と電荷輸送物質を含んだ層(電荷輸送層)とを積層した積層型感光体;電荷輸送物質を含む層に電荷発生物質を分散させた単層型感光体等が挙げられる。さらに積層型感光体では、電荷発生層及び電荷輸送層を導電性支持体側からこの順に積層した順積層型感光体と、逆に積層した逆積層型感光体とがあり、本発明ではいずれの感光層構成も用いることができる。中でも、特にバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光体が好ましい。
いずれの場合にも、本発明の感光体は、感光層中に本発明に係る式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表される複数種のアゾ化合物を特定の混合比で含有し、波長380nm以上500nm以下の単色光により露光されて、静電潜像を形成する感光体である。通常、式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物は電荷発生物質として用いられるが、特に限定はされない。一般に電荷発生物質は、単層型感光体に用いられる場合でも、積層型感光体に用いられる場合でも、電荷を発生する機能としては同等の機能を示すことが知られている。
[1−4−1.導電性支持体]
導電性支持体としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を含有させて導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等;が主として使用されるが、本発明の効果を著しく制限しない限り、これに限定されるものではない。中でも、導電性支持体の材料は、常温(通常は25℃)で比抵抗10Ωcm以下のものが好ましい。
なお、導電性支持体は1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
導電性支持体の形状としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。また、導電性支持体としては、任意の金属材料で形成された基材上に、導電性及び表面性等の制御のため、並びに、欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、例えば陽極酸化被膜を施す処理をしてから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すことが望ましい。
陽極酸化被膜は、例えば酸性溶液中で陽極酸化処理することによって形成される。このとき用いられる酸性溶液の具体例としては、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられ、中でも硫酸が好ましい。硫酸を用いて陽極酸化処理を施す場合、硫酸の濃度は通常100g/L以上であり、通常300g/L以下であることが望ましい。また、溶存アルミニウム濃度は、通常2g/L以上であり、通常15g/L以下であることが望ましい。さらに、反応温度は、通常15℃以上であり、通常30℃以下であることが望ましい。さらに、電解電圧は、通常10V以上であり、通常20V以下であることが望ましい。そして、この時、電流密度は、通常0.5A/dm以上であり、通常2A/dm以下であることが望ましい。なお、酸性溶液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
陽極酸化被膜の平均膜厚は通常3μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは7μm以下である。陽極酸化被膜の平均膜厚が厚すぎる場合には、後述する封孔処理において、封孔剤の高濃度化、高温の処理温度、及び長時間の処理時間等、強い条件下で処理することになる場合がある。したがって、感光体の生産性を悪くする可能性があったり、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふき等の表面欠陥を生じやすくなる可能性があったりする。
形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、いずれの公知の方法でも行うことができる。例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に導電性支持体を浸漬させる低温封孔処理、あるいは、主成分として例えば酢酸ニッケル等の封孔剤を含有する水溶液中に導電性支持体を浸漬させる高温封孔処理によって施されるのが好ましい。
上記の低温封孔処理を施す場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、3g/L以上6g/L以下の範囲が好ましい。処理温度は、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下が望ましい。フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常pH4.5以上、好ましくはpH5.5以上、また、通常pH6.5以下、好ましくはpH6.0以下の範囲で処理されることが望ましい。このとき、pH調節剤としては、公知のいずれのpH調節剤も用いることができるが、例えばシュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが好ましい。低温封孔処理をスムーズに進行させるためである。なお、pH調節剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1分以上3分以下の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜の物性を更に改良するために、例えばフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させてもよい。
また、低温封孔処理の後に、通常は水洗、乾燥を行う。
一方、前記の高温封孔処理を施す場合、封孔剤としては、例えば酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等を用いることが好ましく、特に酢酸ニッケルを用いることがより好ましい。封孔剤として酢酸ニッケル水溶液を用いる場合、溶液中の酢酸ニッケルの濃度は任意の濃度を用いることができるが、5g/L以上20g/L以下の範囲の濃度で用いることが好ましい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下が望ましい。酢酸ニッケル水溶液のpHは通常4.0以上、好ましくは5.0以上、また、通常8.0以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのが望ましい。このとき、pH調節剤としては公知のいずれのpH調節剤を用いることができるが、例えばアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが好ましい。高温封孔処理をスムーズに進行させるためである。なお、pH調節剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。高温封孔処理の時間は、通常10分以上、好ましくは20分以上、また通常100分以下、好ましくは60分以下が望ましい。なお、被膜物性をさらに改良するために、例えば酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。
また、高温処理の後に、さらに、塩類を含まない高温水、高温水蒸気等で処理することが好ましい。高温封孔処理の後に、通常は水洗、乾燥を行う。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、任意の切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって導電性支持体の表面が粗面化されていてもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま導電性支持体として使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、上記の処理により、表面に存在した汚れ、異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
導電性支持体の表面粗さRaは、0.01μm以上が好ましく、また、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。表面粗さRaが小さすぎると導電性支持体への感光層等の接着性が悪くなる可能性があり、表面粗さRaが大きすぎると黒ポチ等の画像欠陥が発生しやすい。
導電性支持体の表面粗さを前記範囲に加工する方法としては、例えば、切削工具等で導電性支持体の表面を削り粗面化する方法;微細な粒子を導電性支持体の表面に衝突させることによるサンドブラスト加工の方法;特開平4−204538号公報に記載の氷粒子洗浄装置による加工の方法;特開平9−236937号公報に記載のホーニング加工の方法;陽極酸化法;アルマイト処理法;バフ加工法;特開平4−233546号公報に記載のレーザー溶発法による方法;特開平8−001502号公報に記載の研磨テープによる方法;特開平8−001510号公報に記載のローラバニシング加工の方法等が挙げられる。しかし、導電性支持体の表面を荒らす方法はこれらに限定されるものではない。
(表面粗さの定義と測定法)
表面粗さRaは算術平均粗さを意味し、平均線からの絶対値偏差の平均値を表している。具体的には、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から、測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
表面粗さRaは、例えば、表面粗さ計(東京精密 サーフコム570A)で測定できる。ただし、誤差範囲内で同一の結果を生じる測定器であれば、他の測定器を用いてもよい。
[1−4−2.下引き層]
導電性支持体と感光層との間には、接着性、ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。この下引き層は、単一層であっても、複数層を設けてもかまわない。さらに、下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から通常0.1μm以上であり、また、その上限は、通常20μm以下であることが望ましい。また、下引き層には、例えば酸化防止剤等を含んでいてもよい。なお、下引き層は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
下引き層としては、例えば、樹脂により形成したもの、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。中でも、金属酸化物粒子を樹脂(以下、適宜「バインダー樹脂」という。)に分散して形成したものが好ましい。以下、このタイプの下引き層について説明する。ただし、以下に記載する内容は下引き層の一例であり、下引き層は、以下に記載するものに限定されない。
(金属酸化物粒子)
・金属酸化物粒子の種類:
下引き層が含有する金属酸化物粒子としては、本発明の効果を著しく制限しない限り、感光体に使用可能ないかなる金属酸化物粒子を使用することができる。その具体例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。中でも、バンドギャップが2eV以上4eV以下の金属酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましい。バンドギャップが小さすぎると、導電性支持体からのキャリア注入が起こりやすくなり、画像を形成した際の黒点や色点等の欠陥が発生しやすくなる傾向がある。一方、バンドギャップが大きすぎると、電子のトラッピングにより電荷の移動が阻害され、電気特性が悪化する可能性がある。
また、これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタン及び酸化アルミニウムがより好ましく、酸化チタンが特に好ましい。
なお、金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いても良いし、複数の種類の粒子を任意の比率及び組み合わせで混合して用いてもよい。また、金属酸化物粒子は、1種の金属酸化物のみから形成されていてもよく、2種以上の金属酸化物を任意の比率及び組み合わせで併用して形成されていても良い。
・金属酸化物粒子の結晶型:
金属酸化物粒子の結晶型は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、金属酸化物として酸化チタンを用いた金属酸化物粒子(即ち、酸化チタン粒子)の結晶型に制限は無く、例えばルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファス等のいずれも用いることができる。また、酸化チタン粒子の結晶型は、単一の結晶状態のものであてもよく、複数の結晶状態のものであってもよい。
・金属酸化物粒子の表面処理:
金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を施されていてもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物等の処理剤による処理を施していてもよい。これらの処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、特に、下記式(15)の構造で表されるシラン処理剤(以下、適宜「シラン処理剤(15)」と言う。)で処理されることが好ましい。シラン処理剤(15)は、金属酸化物粒子との反応性が良く、良好な処理剤である。
前記式(15)中、Ru1及びRu2は、それぞれ独立してアルキル基を表す。Ru1及びRu2の炭素数に制限は無いが、通常1以上であって、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特に好ましくは3以下である。炭素数が当該範囲にあると、シラン処理剤(15)と金属酸化物粒子との反応性が好適になる。炭素数が多くなりすぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液(下引き層形成用の塗布液。後述する。)中での分散安定性が低下する可能性がある。Ru1及びRu2の好適な具体例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
前記式(15)中、Ru3は、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。Ru3の炭素数に制限は無いが、通常1以上であり、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特に好ましくは3以下である。炭素数が当該範囲にあると、シラン処理剤(15)と金属酸化物粒子との反応性が好適になる。炭素数が多くなりすぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液中での分散安定性が低下する可能性がある。Ru3の好適な具体例を挙げると、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
なお、上記のような処理剤で処理をした場合、通常、金属酸化物粒子の最表面をシラン処理剤(15)で処理する。このとき、上記の表面処理は、1つの表面処理のみを行なってもよく、2つ以上の表面処理を任意の組み合わせで行なってもよい。例えば、シラン処理剤(15)による表面処理の前に、例えば酸化アルミ、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていてもよい。また、異なる表面処理を施された金属酸化物粒子を、任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
・金属酸化物粒子の体積平均粒径:
金属酸化物粒子の体積平均粒径は、通常0.1μm以下、好ましくは95nm以下、より好ましくは90nm以下、また下限に制限はないが、通常20nm以上である。体積平均粒径が当該範囲にあると、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定し、得られる画像に黒点、色点等の画像欠陥が生じることを抑制することができる。
なお金属酸化物粒子の体積平均粒径の測定は、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に下引き層を分散させることにより、前記溶媒に金属酸化物粒子を分散させた分散液を用意し、この分散液に対して動的光散乱法を行うことにより測定される。動的光散乱法については後述する。
・金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒径:
金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒径は、通常0.05μm以上であり、また、通常0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。累積90%粒径が小さすぎると、後述する下引き層形成用の塗布液を、塗布乾燥して下引き層を形成する場合に塗布液の保存安定性が低下する可能性があり、大きすぎると、黒点、色点等の画像欠陥が生じる可能性がある。
従来の感光体では、下引き層に、下引き層の表裏を貫通できるほど大きい金属酸化物粒子が含有される場合があり、当該大きな金属酸化物粒子によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。さらに、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って導電性支持体から感光層に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒径が上記の範囲になることで、大きな金属酸化物粒子が非常に少なくなる。そのため、本発明の感光体は、欠陥の発生、及び、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能になる。
・動的散乱法による金属酸化物粒子の粒度分布の評価:
下引き層中の金属酸化物粒子は、一次粒子として存在することが望ましい。しかし、通常はそのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合が多い。したがって、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を測定することで、金属酸化物粒子の状態を評価することが好ましい。下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を直接評価することは非常に困難であるが、下引き層を特定の溶媒中に分散させ、当該分散液を評価することにより、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を知ることができる。
具体的には、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒を用意し、この溶媒に下引き層を分散した分散液を調製し、この分散液中の粒径分布を求める。この際、金属酸化物粒子の体積平均粒径及び小粒径側より累積した累積90%粒径は、金属酸化物粒子がどのような存在形態であっても、動的光散乱法により測定された値を用いることができる。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。下引き層中における金属酸化物粒子の体積平均粒径の値は、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子等の粒径を意味していない。実際の測定では、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下、適宜「UPA」と言う。)を用いて、以下の設定にて行なうことが好ましい。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行なうことが好ましい。
・動的光散乱方式粒度分析計の設定
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数 :44
測定時間 :300秒
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20(g/cm) (密度の値は二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、上記取扱説明書に記載の数値を用いることが好ましい。)
分散媒種類 :メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3)
分散媒屈折率 :1.35
なお、下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した分散液が濃すぎて、その濃度が測定装置の測定可能範囲外となっている場合には、その分散液をメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(メタノール/1−プロパノール=7/3(重量比);屈折率:1.35)で希釈し、濃度を測定装置が測定可能な範囲に収めるようにすることが好ましい。例えば、上記のUPAの場合、測定に適したサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が通常0.6以上、0.8以下になるように、メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒で希釈することが好ましい。
このように希釈を行なったとしても、下引き層を分散した液中における金属酸化物粒子の粒径は変化しないものと考えられるため、上記の希釈を行なった結果測定された体積平均粒径及び累積90%粒径は、下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液において測定される体積平均粒径及び累積90%粒径として取り扱うものとする。
・金属酸化物粒子の平均一次粒径:
金属酸化物粒子の平均一次粒径に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、金属酸化物粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope:以下、適宜「TEM」と言う。)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求められ、その値が通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。
・金属酸化物粒子の屈折率:
金属酸化物粒子の屈折率には制限はなく、感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。金属酸化物粒子の屈折率は、通常1.3以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、通常3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
(バインダー樹脂)
・バインダー樹脂の種類:
下引き層が含有するバインダー樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができ、通常、感光体に使用可能ないかなるバインダー樹脂も使用することができる。通常は、有機溶剤等の溶媒に可溶であって、かつ、形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤等の溶媒に不溶であるか、溶解性の低いものを用いる。
このような下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂及びセルロースエーテル樹脂等のセルロース類、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。ただし、本発明の効果を著しく制限しない限り、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン;N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂等を挙げることができる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(16)で表されるジアミンに対応するジアミン成分(以下適宜、「ジアミン成分(16)」という)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましい。
上記式(16)において、Ru4〜Ru7は、それぞれ独立に、水素原子又は有機置換基を表す。a及びbはそれぞれ独立に、通常0以上、また、通常4以下の整数を表す。なお、当該有機置換基が複数ある場合、それらの置換基は互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
u4〜Ru7で表される有機置換基として好適なものの例を挙げると、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基等が挙げられる。この中でも好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、さらに好ましくはアルキル基、又はアルコキシ基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
また、Ru4〜Ru7で表される有機置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下である。炭素数が多すぎると、溶媒に対する溶解性が悪化して塗布液がゲル化したり、一時的に溶解しても時間の経過とともに塗布液が白濁したり、ゲル化したりする可能性がある。
上記のジアミン成分(16)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、ジアミン成分(16)以外の構成成分(以下適宜、単に「その他のポリアミド構成成分」という)を構成単位として含んでいてもよい。その他のポリアミド構成成分としては、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等が挙げられる。この際、上記の共重合ポリアミド樹脂は、その構成成分を、例えば、二元、三元、四元等で共重合させたものが挙げられる。その他のポリアミド構成成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
ジアミン成分(16)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が、その他のポリアミド構成成分を構成単位として含む場合、全構成成分中に占めるジアミン成分(16)の割合に制限は無いが、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、また、通常40モル%以下、好ましくは30モル%以下である。ジアミン成分(16)の量が少なすぎると、高温高湿度条件での電気特性の変化が大きくなり、電気特性の環境変化に対する安定性が悪くなる可能性があり、多すぎると、塗布液の安定性が悪くなる可能性がある。
上記の共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。但し、以下の具体例中、共重合比率は、モノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
上記の共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用される。例えば溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重縮合方法が適宜適用できる。また、重合に際して、例えば、酢酸、安息香酸等の一塩基酸;ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基等を、分子量調節剤として重合系に含有させてもよい。なお、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。また、硬化剤と共に硬化した形状で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性及び塗布性を示すため、好ましい。
・バインダー樹脂の数平均分子量:
バインダー樹脂の数平均分子量にも制限は無い。例えば、バインダー樹脂として共重合ポリアミドを使用する場合、共重合ポリアミドの数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、また、通常50000以下、好ましくは35000以下である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても下引き層の均一性を保つことが難しくなる可能性がある。
・金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率:
金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子を、通常0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、また、通常4重量部以下、好ましくは3.8重量部以下、より好ましくは3.5重量部以下の範囲で用いる。金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して少なすぎると、感光体の電気特性が悪化する可能性があり、特に残留電位が上昇する可能性がある。また、金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して多すぎると、当該感光体を用いて形成した画像の黒点、色点等の画像欠陥が増加する可能性がある。
(下引き層に含まれていてもよい添加剤)
下引き層には、上記した金属酸化物粒子及びバインダー樹脂以外の成分が含まれていてもよい。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤;亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸、ヒンダードフェノール等の熱安定剤;重合添加剤;等の添加剤が挙げられる。
なお、添加剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(下引き層の形成方法)
下引き層は、通常、下引き層形成用の塗布液を塗布することにより得られる。なお、成膜は通常は塗布法により行われ、塗布された塗布液の塗膜が乾燥することにより下引き層が形成される。下引き層の各種物性は、通常、下引き層を形成するための塗布液の物性に依存する。
塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、下引き層形成用の塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で用いる。
通常、下引き層形成用の塗布液は、上記の下引き層を構成する成分を、溶媒に溶解又は分散してなる。下引き層形成用の塗布液に用いる溶媒(下引き層用溶媒)としては、バインダー樹脂を溶解させうるものであれば、任意のものを使用することができる。この溶媒としては、通常は有機溶媒を使用する。溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
上記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。さらに、単独ではバインダー樹脂を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒(例えば、上記例示の有機溶媒等)との混合溶媒とすることでバインダー樹脂を溶解可能であれば、使用することができる。通常、混合溶媒を用いることにより、塗布ムラを少なくすることができる。
下引き層形成用の塗布液において、溶媒と、金属酸化物粒子、バインダー樹脂等の固形分との量比は、下引き層形成用の塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
下引き層形成用の塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記した金属酸化物粒子、バインダー樹脂及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。そのような成分の例を挙げると、下引き層が含んでいてもよい添加剤と同様のものが挙げられる。
塗布液の製造方法に特に制限はない。ただし、下引き層形成用の塗布液は、上記のように金属酸化物粒子を含有するものであり、金属酸化物粒子は下引き層形成用の塗布液中に分散されて存在する。従って、下引き層を形成するための塗布液の製造方法は、通常、金属酸化物粒子を分散させる分散工程を有する。
[1−4−3.感光層]
感光層は、上記の導電性支持体上に(上記の下引き層を設けた場合は下引き層の層上に、即ち、下引き層を介して導電性支持体上に)形成される。感光層の構成としては、公知の何れの構成も使用することができる。具体的な構成の例としては、電荷発生物質をバインダー樹脂に分散させた電荷発生層と、電荷輸送物質をバインダー樹脂に分散させた電荷輸送層とを含む、二層以上の層からなる積層構造を有する積層型感光層;電荷輸送物質と電荷発生物質とを共にバインダー樹脂に分散させた単相構造を有する単層型感光層;が挙げられる。また、積層型感光層では、電荷発生層及び電荷輸送層を導電性支持体側からこの順に積層した順積層型感光体と、逆の順に積層した逆積層型感光体とがある。
通常、電荷発生物質は単層型感光体に用いられる場合でも、積層型感光体に用いられる場合でも、電荷を発生する機能として同等の機能を示す。そのため、本発明の感光体としては、いずれの感光層の構成でも適用することができるが、特にバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光体が好ましい。
(電荷発生物質)
電荷発生物質としては、上記したように、本発明に係るアゾ化合物の混合物を特定の混合比で使用する。本発明の感光体において、本発明に係るアゾ化合物は、通常は電荷発生物質として機能する。
また、本発明の感光体は、少なくとも本発明に係るアゾ化合物を特定の組み合わせ及び特定の混合比で感光層に含んでいれば、本発明に係るアゾ化合物以外に、さらに他の構造を有する電荷発生物質を併用することもできる。なお、併用する電荷発生物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。ただし、併用する電荷発生物質の量に制限はないが、本発明の効果を充分に得るため、前記条件を満たすアゾ化合物の重量を超えないことが好ましい。
併用できる電荷発生物質としては、例えば、無機系光導電材料及び有機系光導電材料が挙げられる。
無機系光導電材料の例としては、セレン及びその合金、硫化カドミウム等が挙げられる。
有機系光導電材料の例としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、チオピリリウム顔料等が挙げられる。その中でも有機顔料が好ましく、特にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料がより好ましい。
フタロシアニン顔料の具体例としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等を配位したフタロシアニン類の各種結晶型等が挙げられる。中でも、感度の高い結晶型である、X型又はτ型無金属フタロシアニン;A型(別称β型)、B型(別称α型)及びD型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン;バナジルフタロシアニン;クロロインジウムフタロシアニン;II型等のクロロガリウムフタロシアニン;V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン;G型及びI型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体;II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体等が好ましい。さらにこれらのフタロシアニンのうち、A型、B型、D型チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
また、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
アゾ顔料の具体的な例としては、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、テトラキス顔料等が挙げられる。好適なアゾ化合物の具体例を以下に記す。
(積層型感光層)
本発明の感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常、電荷発生層である。ただし、積層型感光体において、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生物質が電荷輸送層中に含まれていてもよい。
・電荷発生層:
積層型感光層の電荷発生層は、電荷発生物質を含有して形成される。電荷発生層は上記の電荷発生物質単独で形成された蒸着膜等として構成してもよいが、通常は電荷発生物質をバインダー樹脂で結着した膜として構成する。特に、電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、上記の有機顔料の微粒子をバインダー樹脂で結着した形で使用することが好ましい。このような電荷発生層は、例えば、電荷発生物質及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は、当該下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
積層型感光層の電荷発生層に用いられるバインダー樹脂に制限はなく、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマール、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーを挙げることができる。また、例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、セルロースエステル、セルロースエーテル、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリアミド、ケイ素樹脂、等が挙げられるが、本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものではない。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
また、バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒に制限はなく、任意の溶媒及び分散媒を用いることができる。その具体的な例を挙げると、環状飽和脂肪族、芳香族、ハロゲン化芳香族、アミド、アルコール、脂肪族多価アルコール類、鎖状及び環状ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、鎖状及び環状エーテル、非プロトン性極性物質、含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水、等が挙げられる。
環状飽和脂肪族の溶媒又は分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、等が挙げられる。芳香族の溶媒又は分散媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、等が挙げられる。ハロゲン化芳香族の溶媒又は分散媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、等が挙げられる。アミドの溶媒又は分散媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等が挙げられる。アルコールの溶媒又は分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、等が挙げられる。脂肪族多価アルコール類の溶媒又は分散媒としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、等が挙げられる。鎖状及び環状ケトンの溶媒又は分散媒としては、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、等が挙げられる。エステルの溶媒又は分散媒としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素の溶媒又は分散媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等が挙げられる。鎖状及び環状エーテルの溶媒又は分散媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、等が挙げられる。非プロトン性極性の溶媒又は分散媒としては、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、等が挙げられる。含窒素化合物の溶媒又は分散媒としては、例えば、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、等が挙げられる。
上記の溶媒又は分散媒の中でも、下引き層を溶解しないものが好ましい。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。なお、上記の物質は例示であり、本発明の効果を著しく損なわない限り、これらに限定されるものではない。
積層型感光層の電荷発生層における、バインダー樹脂と電荷発生物質との含有比率(重量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷発生物質が、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下の範囲である。電荷発生物質の比率が低すぎる場合、感光体としての感度の低下を招く可能性があり、高すぎる場合、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する可能性がある。なお、複数種の電荷発生物質を併用する場合には、それらの電荷発生物質の合計が、上記範囲内になるようにすることが好ましい。
積層型感光層の電荷発生層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下である。膜厚が薄すぎても、厚すぎても、電気特性に影響が出る可能性がある。
電荷発生物質を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散するときは、上記の電荷発生物質をペイントシェーカー磨砕、サンドグラインドミル、ボールミル、超音波処理、撹拌、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法、遊星ミル分散法、ロールミル分散法、超音波分散法等の公知の微細化の方法を任意に用いることができる。なお、分散時には、電荷発生物質の体積平均粒径を通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の粒子サイズに微細化することが好ましい。
なお、電荷発生物質の体積平均粒径は、下引き層が含有する金属酸化物粒子の体積平均径を測定する場合と同様にして測定することができる。また、体積平均粒径は、例えば、公知のレーザー回折散乱法による粒度分析装置、光透過遠心沈降法による粒度分析装置等により測定することもできる。
・電荷輸送層:
積層型感光層の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有して形成される層であれば、単一の層でもよいし、構成成分あるいは構成成分の組成比率が異なる複数の層を重ねたものであってもよい。また、積層型感光層の電荷輸送層は、電荷輸送物質をバインダー樹脂で結着した形で使用したものであることが好ましい。このような電荷輸送層は、例えば、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体状に(下引き層を設ける場合には、当該下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質は、電荷を輸送する物質であれば、本発明の効果を著しく妨げない限り、公知の何れの化合物も任意の比率及び組み合わせで併用することができる。
ただし、順積層型感光層は、電荷輸送層又は感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能することから、これらの層は露光光を遮断しないような露光光透過性に優れたものであることが好ましい。したがって、電荷輸送物質とバインダー樹脂は相溶性が高く、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが好ましい。
また順積層型感光層の電荷輸送層の場合、良好な画像を形成するために、電荷輸送層における露光光の波長の透過率が、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上であることが望ましい。特に、露光光が波長380nm以上500nm以下の単色光である時の電荷輸送層における露光光の透過率が、上記の範囲にあることが望ましい。
電荷輸送層の露光光の透過率は、例えば本発明に係るアゾ化合物を電荷発生物質として用い、電荷輸送物質を適宜選択することにより達成することが可能である。また、電荷輸送層の膜厚を調整することによっても、透過率を所望のものにすることができる。
なお、露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば当該層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板等)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
このような電荷輸送物質の具体的な例としては、ジフェノキノン誘導体、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チオジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体等の含窒素化合物、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体等が挙げられる。
このうち、好ましい電荷輸送物質の具体的な例としては、以下の骨格を有する化合物が挙げられる。これら骨格には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が置換基として置換しても構わない。
(上記式中、Aは連結基を表わす。)
上記式中、Aは連結基を表わす。Aは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、炭素数が通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下のアルキリデンであることが望ましい。
この中でも、特に以下の構造を有する化合物は、本発明に係るアゾ化合物を含む電荷発生層と組み合わせて用いることで、良好な効果を奏し好ましい。
さらには、以下の式(17)で表される化合物が、感光体の電気特性の観点から、特に好ましい。
式(17)中、R及びRは、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基等を表わす。R及びR10は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。ただし、R11〜R14の少なくとも一つは置換基を有するアリール基であることが好ましい。なお、上記の置換基は1つを有していてもよいし、2つ以上有してもよい。2つ以上有する場合は、それぞれ同じ置換基でもよいし、異なった置換基でもよい。また、異なった置換基である場合は、任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
式(17)中、Rはキラル中心を有する基であることが好ましく、中でも、キラル中心が炭素原子であることがより好ましい。Rの有するキラル中心に結合する基は、例えばカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等の電気特性を悪化させる基でない限り、特に限定されない。Rのキラル中心に結合する基は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基等が好ましい。中でも、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基がより好ましい。さらには、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基が特に好ましい。なお、上記のRのアルキル基は、炭素数が通常1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは3以上であり、通常20以下、好ましくは15以下、特に好ましくは10以下である。
また、上記のRとして、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基が有しうる置換基の例としては、ヒドロキシル基、さらに置換されていてもよいメチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、さらに置換されていてもよいフェニル基、及びナフチル基等のアリール基、さらに置換されていてもよいフェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。上記の置換基をさらに置換する基の例としては、メチル基等のアルキル基、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
このような、例えばキラル中心を少なくとも1つ有する基であるRの例としては、下記式(18)で表わされる基が挙げられる。
式(18)中、R15、R16、及びR17は互いに異なる基であって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表わす。中でも、R15〜R17のうちの2つが置換基を有していてもよいアルキル基であり、1つが水素原子であるものが特に好ましい。
また、上記のR15〜R17として、アルキル基、アルケニル基の有しうる置換基の例としては、ヒドロキシル基、さらに置換されていてもよいメチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、さらに置換されていてもよいフェニル基、及びナフチル基等のアリール基、さらに置換されていてもよいフェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。
上記の置換基をさらに置換する基の例としては、メチル基等のアルキル基、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
式(17)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基等を表わす。中でも、Rとしては、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、上記のアルキル基、及びアリール基の有しうる置換基の例としては、例えば上記R15〜R17において挙げた置換基等が挙げられる。
式(17)中、R及びR10は、各々独立して置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。中でも、R及びR10として、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがさらに好ましく、1,4−フェニレン基であることが特に好ましい。
また、上記のアルキレン基、及びアリーレン基の有しうる置換基の例としては、例えば上記R15〜R17の説明において挙げた置換基等が挙げられる。
式(17)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。ただし、R11〜R14の少なくとも1つの基が、置換基を有するアリール基である。即ち、他の3つの基は、置換基を有していてもよいアルキル基であっても、置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。中でも、R11〜R14のうち、2つ以上の基が、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。さらに、全ての基が、置換基を有していてもよいアリール基であることが特に好ましい。
上記のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、その置換基としては、例えば上記R15〜R17に置換しうる置換基と同様のものが挙げられるが、中でも、アルキル基が好ましく、窒素原子に結合する炭素原子対して3位及び/又は4位に置換メチル基を有するトリル基、キシリル基が特に好ましい。
以下に好適な電荷輸送物質の例をあげる。
なお、電荷輸送物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
積層型感光体の電荷輸送層、及び後述する単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、これらの部分的架橋硬化物、或いはこれらを混合したもの等が挙げられるが、本発明の効果を著しく制限しない限り、これに限定されるものではない。
その中でも好ましいバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、及びポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂は、通常、ジオール成分の部分構造を有する。これらの構造を形成するジオール成分としては、例えばビスフェノール残基、ビフェノール残基等が挙げられる。
ビスフェノール残基をジオール成分とする化合物の具体例としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸ステアリルエステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等が挙げられる。
また、ビフェノール残基をジオール成分とする化合物の具体例としては、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、等が挙げられる。
これらの中で特に好ましい化合物としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノール残基を成分とする化合物が挙げられる。
具体的に、好ましいポリカーボネート樹脂のジオール成分(例えばビスフェノール、ビフェノール等)を以下に例示するが、以下に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下の構造を示すジオール成分であることが好ましい。
また、機械特性向上のために、ポリアリレートを使用することが好ましい。この場合は、ジオール成分として以下の構造の化合物を用いることが好ましい。
さらに、酸成分としては、以下の構造の化合物を用いることが好ましい。
さらに、中でも、以下の構造を有する酸成分が特に好ましい。
これらのジカルボン酸成分、及びジオール成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
積層型感光層の電荷輸送層のバインダー樹脂の分子量は、小さすぎると機械的強度が不足する可能性があり、逆に分子量が大きすぎると感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下する可能性がある。そのため、例えば、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂及び/又はポリアリレート樹脂を用いる場合、粘度平均分子量は通常10000以上、好ましくは20000以上、また、通常100000以下、より好ましくは70000以下が望ましい。粘度平均分子量の算出方法については、その一例を実施例で後述する。
積層型感光層の電荷輸送層におけるバインダー樹脂と電荷輸送物質との含有比率(重量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が通常30重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下である。電荷輸送物質の比率が高すぎると電荷輸送層の機械的強度が低下する可能性があり、一方、電荷輸送物質の比率が低すぎると電気特性が悪化する可能性がある。なお、複数種の電荷発生物質を併用する場合には、それらの電荷発生物質の合計が上記範囲内になるようにすることが好ましい。
積層型感光層の電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、また、通常45μm以下、好ましくは35μm以下である。膜厚が薄過ぎると摩耗により感光体の寿命が短くなる可能性があり、膜厚が厚くなりすぎると露光光、電荷の拡散等により画像の解像度が悪化する可能性がある。即ち、電荷輸送層の膜厚を適切な厚さに調整することによって、電荷発生物質に到達する露光光の到達度も調整できる。
(単層型感光層)
単層型感光層は、上記の積層型感光体の電荷輸送層と同様の構成の層の中に、上記の電荷発生物質が分散される構成が好ましい。即ち、具体的には、単層型感光層は、上記の電荷発生物質、電荷輸送物質、及び積層型感光層において電荷輸送層に用いられたバインダー樹脂を、溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して、塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は、当該下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダー樹脂の種類及びこれらの使用比率(重量比率)等は、積層型感光層の電荷輸送層について説明したものと同様の範囲にあることが好ましい。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含む層中に、通常、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光層の電荷発生層で説明したものと同様のものが使用できる。ただし、単層型感光層の場合、電荷発生物質の粒径を十分に小さくすることが好ましい。具体的には、電荷発生物質の粒径は、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。粒径は、例えば、レーザー回折散乱法によって測定できる。
単層型感光層に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると十分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等となる可能性がある。したがって、電荷発生物質の量は、単層型感光層全体に対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また通常50μm以下、好ましくは45μm以下の範囲である。膜厚が薄過ぎると摩耗により感光体の寿命が短くなる可能性があり、膜厚が厚くなりすぎると露光光、電荷の拡散等により画像の解像度が悪化する可能性がある。
単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との含有比率(重量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷発生物質が通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、また通常10重量部以下、好ましくは8重量部以下であることが望ましい。
単層型感光層は、感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能することから、これらの層は露光光を遮断しないような露光光透過性の優れたものであることが好ましい。従って、電荷輸送物質とバインダー樹脂とは相溶性が高く、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが好ましい。また、単層型感光層の場合、良好な画像を形成するために、感光層の露光光の波長における透過率が、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上であることが望ましい。特に、露光光が波長380nm以上500nm以下の単色光であるときの、感光層における露光光の透過率が、上記の範囲であることが好ましい。
感光層の露光光の透過率は、例えば上記の電荷輸送物質の好適な具体例に表わされる化合物を電荷輸送物質として用いる等、電荷輸送物質を適宜選択することにより達成することが可能である。また、感光層の膜厚を調整することによっても、透過率を所望のものにすることができる。
なお、露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば当該層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
(添加剤)
積層型感光層及び単層型感光層は、感光層又はそれを構成する各層に、例えば成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、例えば、周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を含有させてもよい。
例えば、電荷輸送層に使用される添加剤の例としては、成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために使用される公知の可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、安定剤、増感剤、塗布性を改善するための各種レベリング剤、分散補助剤等の添加剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステル、リン酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレン等の芳香族化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
(表面層)
積層型感光層及び単層型感光層ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上にさらに別の層を設けて、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗等の機械的劣化、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の電気的劣化等を防止、軽減する目的で、保護層を設けてもよい。保護層は、公知の任意の方法で形成できるが、例えば導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成したり、特開平9−190004号公報等に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いたりすることができる。
保護層に用いることが出来る導電性材料としては、例えばTPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。なお、導電性材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
保護層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。なお、バインダー樹脂も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
保護層の電気抵抗は、通常10Ω・cm以上、また、通常1014Ω・cm以下の範囲とすることが望ましい。電気抵抗が上記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となる可能性があり、上記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じる可能性がある。また、保護層は、像露光の際に照射される光の透過を妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗の低減、摩耗の低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子、及び/又は無機化合物の粒子を、表面層に含有させてもよい。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成してもよい。なお、これらの樹脂及び粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(各層の形成方法)
本発明の感光体の感光層は、通常、上記の含有させる物質を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散させて得られた塗布液を、各層ごとに順次塗布及び乾燥させる工程を繰り返すことにより形成される。この際用いられる溶媒又は分散媒の種類は制限されず、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。また、各層の目的、選択した溶媒及び分散媒の性質等を考慮して、例えば塗布液の固形分濃度、粘度等の物性が、所望の範囲となるように適宜調整することが好ましい。
感光体を構成する各層を塗布形成するための塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒としては、電荷発生層の項で説明したものと同様の溶媒又は分散媒を使用することができる。
これらの溶媒及び分散媒は、1種を単独で用いられてもよく、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用して用いてもよい。なお、上記の溶媒及び分散媒は例であり、本発明の効果を著しく制限するものでなければ、上記に限定されるものではない。
感光層の塗布方法としては、例えば、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等を用いることができる。スプレー塗布法は、公知のスプレー法であれば何れの方法を用いることもできる。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等を用いる方法を用いることができる。なお、塗布方法は、1種を単独で行ってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行ってもよい。
中でも、均一な膜厚を得るための微粒化度及び付着効率等を得るために、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することが好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法は、公知のスパイラル塗布法であれば何れの方法を用いることもできる。例えば、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機、又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等を用いることができる。
浸漬塗布法は、公知の浸漬塗布法であれば何れの方法を用いることもできる。
このとき、単層型感光層、及び、積層型感光層の電荷輸送層を形成する塗布液の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、また、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下の範囲である。また、塗布液の粘度は、通常30mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上、また、通常800mPa・s以下、好ましくは700mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以下の範囲である。
また、積層型感光層の電荷発生層を形成する塗布液の場合には、塗布液中の固形分濃度は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の範囲である。また、塗布液の粘度は、好ましくは0.1mPa・s以上、更に好ましくは0.5mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下の範囲である。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、及び、遠赤外線乾燥機等を用いることができるが、これに限定されない。塗布膜の乾燥は、室温でもよいし、適宜、乾燥温度を調整してもよい。また、乾燥温度は一定温度でもよいし、乾燥の過程で変動させてもよい。乾燥温度を調整する場合は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは170℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。乾燥温度が高すぎると感光層内に気泡が混入する可能性があり、低すぎると乾燥に時間を要し、残留溶媒量が増加して電気特性に悪影響を与える等の可能性がある。また、乾燥の時間も制限はなく、本発明の効果を著しく制限しない範囲で、任意に設定できる。なお、乾燥方法も、1種を単独で行ってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで行ってもよい。
[1−5.本発明の電子写真感光体の利点]
本発明の感光体は、波長380nm以上500nm以下の単色光を発する光源に対し高い感度と良好な帯電性とを有する。また、本発明の感光体を備えた画像形成装置又はカートリッジを用いて画像形成を行えば、高解像度及び高階調性に代表される高品質であって、高解像度な露光に対して忠実に現像された欠陥の少ない画像を形成することができる。
さらに、本発明の感光体は、通常、後述する本発明に係るトナーのように粒径をコントロールしたトナーとマッチングの良い、高感度な感光体でもある。
[2.トナー]
本発明の感光体を用いて画像形成を行う場合には任意のトナーを用いることが可能であるが、特に、以下に説明する第一のトナー及び/又は第二のトナーを用いると特有の効果が得られ、好ましい。なお、これら第一のトナー及び第二のトナーは、静電荷像現像用トナーとして用いて好適である。
[2−1.第一のトナー]
本発明に係る第一のトナーは、この第一のトナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が、0.940以上、好ましくは0.942以上であり、1.000以下である。円形度の高い球形トナーはトナー相互又は種々の部材とのひっかかりが少ないため、帯電ローラーでの機械的シェアが小さく、表面の形状変化が軽微である。また、トナー母体自体の流動性が高いため、外添された無機粉体の量が変化しても流動性が大きく変化しにくい。このように円形度が高いトナーはトナーの劣化が少ない形状因子を有している。更に、円形度が高いトナーは感光体からの離型性に優れるため転写効率が優れており、画像濃度を十分に確保することができ、転写残トナーを少なくすることができる。
しかしながら、平均円形度が高いトナーは、E−SPARTアナライザーで計測した弱帯電トナー率WST[%]が増加する傾向にあり、これは、トナー飛散が悪化する傾向があることを表す。さらに、平均円形度が高いトナーは、転写残トナーをクリーニングブレードでかき取る際に当該クリーニングブレードをすり抜け易く、画像を汚す原因となる傾向がある。また、高速印刷をする場合には、前記の現象はより顕著になる。したがって、本発明に係る第一のトナーの平均円形度は0.99以下が好ましく、より好ましくは0.98以下であり、さらに好ましくは0.97以下である。更に、粒径が小さく、かつ円形度が高いトナーにおいては、クリーニングブレードでのかき取りが困難であり、トナーがクリーニングブレードを抜け易いため、特に円形度に応じて粒径分布を制御することが好ましい。
〔平均円形度の測定方法と定義〕
本発明における「平均円形度」は、以下のように測定し、以下のように定義する。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720個/μL以上7140個/μL以下の範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
なお以下は、前記装置で測定され、前記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000個以上2500個以下を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
[2−2.第二のトナー]
本発明に係る第二のトナーは、以下の(i)〜(iii)の全てを満足する。
(i)体積中位径(Dv50)が4.0μm以上7.0μm以下である。
(ii)平均円形度が0.93以上である。
(iii)該トナーの体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50)を満たす。
(i)について
本発明に係る第二のトナーの体積中位径(Dv50)は、4.0μm以上、7.0μm以下である。この範囲であれば、高画質の画像を十分に提供することができる。中でも、高画質の画像形成を可能とする観点では、好ましくは6.8μm以下、より好ましくは6.5μm以下であると、顕著に効果を発揮する。また、非常に微小なトナー粉末(以下、適宜「微粉」ということがある。)の発生量を低減させるという観点から、好ましくは4.5μm以上、より好ましくは5.0μm以上、特に好ましくは5.3μm以上である。
〔体積中位径(Dv50)の測定方法と定義〕
本発明における「体積中位径(Dv50)」は、以下のように測定し、以下のように定義する。
すなわち、内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、適宜「DBS水溶液」という。)を0.15g添加する。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らないようにビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れる。
次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌する。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らないようにする。
続いて、分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)を30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し、全体を目視で均一な溶液とする。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させる。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み、均一な分散液となるようにする。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を「トナー分散液」とする。
トナーの体積中位径(Dv50)は、ベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm;以下、「マルチサイザー」と略記する)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上記の「トナー分散液」を分散質濃度0.03重量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定する。測定粒径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)とする。
なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定する。
(ii)について
本発明に係る第二のトナーは、平均円形度は0.93以上であり、0.94以上であることが好ましい。更には、第一のトナーと同様の平均円形度を有していることがより好ましい。第一のトナーと同様の理由のためである。
なお、本発明に係る第二のトナーにおいても、平均円形度の定義及び測定方法は、本発明に係る第一のトナーと同様である。
(iii)について
本発明に係る第二のトナーは、該トナーの体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、
Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50)
を満たす。なお、本明細書では、「EXP」は「Exponential」を示す。すなわち自然対数の底であり、その右側は指数である。この式を「要件(iii)の式」という
ことがある。
この要件(iii)の式が意図するところは、第二のトナーの体積中位径(Dv)が小さ
くなるに連れて微粉が多くなることを示しており、体積中位径(Dv)が4.5μm以下の領域になると体積中位径(Dv)の値が粒径2.00μm以上3.56μm以下の領域に近づくためにDnsの値が指数関数的に増加する。かかる2.00μm以上3.56μm以下の領域は、コールターカウンター社製マルチサイザーIIIの規定のチャンネルで表
現される領域である。
そして、粒径2.00μm以上3.56μm以下の範囲に含まれるトナー粒子は、本発明に係る第二のトナーにおいては、トナー粒子の体積中位径(Dv)4.0μm〜7.0μmの領域(要件(i)を参照)において特段除かれるべき粒径域であり、その根拠は実験結果に従う。
粒径分布が前記要件(iii)を満たした本発明に係る第二のトナーは、高画質が得られ
る上、高速印刷機を使用した場合においても、汚れが少なく、残像(ゴースト)やカスレ(ベタ追従性)を抑制し、クリーニング性に優れている。また、粒径分布がシャープであることにより帯電量分布が非常にシャープであるので、帯電量の小さいトナー粒子が画像白地部の汚れを引き起こしたり、飛散して装置内を汚したりせず、また、帯電量の大きいトナー粒子が現像されないまま層規制ブレードやローラー等の部材に付着してスジやカスレ等の画像欠陥を引き起こすことがなく、「選択現像」が起こり難い。なお、「選択現像」とは、トナーの帯電量分布がブロードである場合において、画像形成時に現像に必要な帯電量を有するトナーのみが現像され、消費されていく現象である。
すなわち、前記要件(iii)の式を境にして、微粉量が画像に影響を与える。要件(iii)の式においてDnsの値が右辺を超える場合には、微粉が画像に欠陥を生じさせる傾向がある。例えば、図2に示すように、微粉がクリーニングブレードに堆積して、画像欠陥として残像、カスレ、汚れ等が生じる場合がある。なお、図2は、トナーの実写評価後のクリーニングブレード上のトナーの付着状況の一例を表わす1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
画像形成装置は、通常、特有の帯電量を有するトナー粒子を転写するように設計されている。このために、まず静電現像の際にはかかる特有の帯電量を有するトナー粒子が優先して感光体に転写される。特有の帯電量を超えるトナー粒子に関しては、部材等に付着して汚染したり流動性の悪化を招いたりする可能性がある。一方で、特有の帯電量に満たないトナー粒子に関しては、カートリッジ内に堆積して部材等を汚染する可能性がある。
ここでトナーの帯電量は、トナー組成が同じ場合にはトナーの粒径と相関があり、一般に粒径が小さいほど単位重量当たりの帯電量は高くなり、大きいほど単位重量当たりの帯電量が小さくなる。すなわち、粒径が小さいトナーが多く存在すると帯電量が高くなりすぎるために部材等への付着、トナーの流動性の悪化を招く傾向がある。本発明に係る第二のトナーを用いると、前記した「選択現像」が抑制される。前記の要件(iii)は、このトナーを3.56μm以下のもので規定した。
なお、この3.56μmは測定装置のチャンネルに規定されている値である。また一方で測定装置の測定限界の理由から下限値を2.00μmとした。
即ち、トナーの個数%(Dns)として、粒径2.00μm以上3.56μm以下を規定した理由について、下限値については、本発明に係る第二のトナーの粒径を測定するのに用いた装置の測定限界であり、上限値は実施例に記載の結果より得られた効果の臨界値である。したがって、仮に粒径が3.56μmより大きいところまでのトナーの個数%を採用すると、本発明の効果を奏するトナーと奏さないトナーを式によって明確に分けることが困難となる。
さらに、本発明に係る第二のトナーは、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が下記式(iii−1)を満たすことが、前記効果の点から好ましい。
Dns≦0.110EXP(19.9/Dv50) (iii−1)
一方で、本発明に係る第二のトナーは、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が下記式(iii−2)を満たすことが、歩留まりよく生産するという観点から好ましい。
0.0517EXP(22.4/Dv50)≦Dns (iii−2)
また、本発明に係る第二のトナーは、Dnsが6個数%以下であると、より高画質の画像を提供できたり、画像形成装置を汚染し難かったりする点で好ましい。
さらに、上記した体積中位径(Dv50)及びDnsの好ましい粒径域、例えば、「Dv50が4.5μm以上」及び「Dnsが6個数%以下」なる条件等は、組み合わされて満たされていることが更に好ましい。これにより、生産上の見地から歩留まりを落とすことなく、高画質の画像を提供でき、画像形成装置を汚染し難く、「選択現像」が起こり難いトナーを実現できる。
〔粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)の測定方法と定義〕
本発明における「粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は、以下のように測定し、以下のように定義する。
すなわち、内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20重量%DBS水溶液を0.15g添加する。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らないようにビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れる。
次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌する。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らないようにする。
続いて、分散媒アイソトンIIを30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し、全体を目視で均一な溶液とする。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させる。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み、均一な分散液となるようにする。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を「トナー分散液」とする。
粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)は、マルチサイザー(アパーチャー径100μm)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上記の「トナー分散液」を、分散質濃度0.03重量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定する。下限の粒径2.00μmは本測定装置マルチサイザーの検出限界であり、上限の粒径3.56μmは本測定装置マルチサイザーにおけるチャンネルの規定値である。本発明に係る第二のトナーでは、この粒径2.00μm以上、3.56μm以下の領域を微粉領域と認定する。
測定粒径範囲は、2.00μmから64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの個数基準での統計値をもとに、2.00μmから3.56μmまでの粒径成分の割合を個数基準で算出して「Dns」とする。
なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定する。
〔本発明に係る第二のトナーの利点〕
以下、従来の技術と対比して、本発明に係る第二のトナーの利点について説明する。
近年、電子写真複写機等の画像形成装置の用途は拡大しており、画像品質への市場の要望は一段と高い水準を求めるものになってきている。特に、事務用の書類等においても、入力における写像技術、潜像形成技術の発展に加え、出力時においても、文字の象形の種類はより豊富に、より微細化されてきている。また、プレゼンテーションソフトウェアの普及と発達により、印刷画像に欠陥や不鮮明さの少ない、極めて高画質な静電潜像の再現性が求められている。特に、画像形成装置を構成する感光体上の静電潜像が100μm以下(凡そ300dpi以上)の線画像の場合に用いるトナーとしては、従来の粒径の大きなトナーでは、細線再現性が一般に悪く、線画像の鮮明さがいまだに充分とはいえない。
特に、デジタル画像信号を使用している電子写真プリンターの如き画像形成装置では、静電潜像は一定単位のドット単位が集まって形成されており、ベタ部、ハーフトーン部及びライト部はドット密度を変えることによって表現されている。ところが、ドット単位に忠実にトナーが配置されず、ドット単位の位置と実際に定置されたトナーの位置との不整合が生じると、デジタル潜像の黒部と白部のドット密度の比に対応するトナー画像の階調性が得られない可能性がある。さらに、画質を向上させるためにドットサイズを小さくして解像度を向上させる場合には、微小ドットから形成される静電潜像に忠実に現象することが更に困難になる傾向がある。このため、解像度が高いものの、階調性が悪く、シャープネスに欠けた画像になる傾向が否めない。
そこで、トナーの粒度分布を規制して、微小ドットの再現性を改善し、画質の向上を実現する技術が提案されている。
例えば特開平2−284158号公報では、平均粒径が6〜8μmであるトナーが提案されている。この技術は、粒径を細かくすることで微小ドットの静電潜像を再現性よく形成しようとすることを試みたものであった。
また、例えば特開平5−119530号公報には、重量平均粒径が4〜8μmのトナーであって、更に5μm以下の粒径を有するトナー母粒子が17〜60個数%含有されるトナー母粒子が記載されている。
さらに、例えば特開平1−221755号公報には、5μm以下の粒径を有する磁性トナー母粒子が17〜60個数%含有される磁性トナーが記載されている。
また、例えば特開平6−289648号公報には、トナーの粒度分布において、2.0〜4.0μmの粒径のトナー母粒子の含有率が15〜40個数%であるトナー母粒子が記載されている。
さらに、例えば特開2001−134005号公報には、5μm以下の粒子が約15〜65個数%だけ有するトナーが記載されている。なお、特開平11−174731号公報及び特開平11−362389号公報にも同様のトナーが開示されている。
また、例えば特開平2−000877号公報には、5μm以下の粒径を有するトナー母粒子が17〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有するトナー母粒子が1〜30個数%含有され、16μm以上の粒径を有するトナー母粒子が2.0体積%以下含有され、体積平均粒径が4〜10μmであり、5μm以下のトナーにおいて特定の粒度分布を有するトナーが記載されている。
さらに、特開2004−045948号公報には、50%体積粒径が2〜8μmのトナー粒子において、粒径が「0.7×50%個数粒径」以下のトナー粒子の個数が10個数%以下であることが記載されている。
しかし、これらのトナーは何れも3.56μm以下の粒子の個数%が、本発明の要件(iii)の式における右辺の値を越えて多量に含むものであり、その意味するところは、粒径と微粉との相対的な関係において、所定の粒径を有するトナーに対して微粉の割合が比較的多量に残存するトナーであるということである。このようなトナーでは、依然微粉の割合が多いため、特に非磁性一成分現像法のように摩擦の一瞬で帯電する、帯電立ち上がりの早いトナーが求められる現像方法では、十分に帯電しないトナー粒子が発生するため、現像ローラーからのトナー落ち及びトナー吹き出し、現像ローラー2周目以降に1周目の印字履歴が残留して選択的に画像濃度が上下する残像(ゴースト)、ドラムクリーニング不良、現像ローラー上でのトナーの層形成不良によるプリント画像の汚染等が発生することがあった。
更に近年は、画像品質への市場の要望と供に、トナーに対して高寿命化・高速印刷が求められている。しかし、これら要求特性も従来のトナーでは十分満たされるものではなかった。従来のトナーのように微粉が多いと、連続印字とともに微粉が部材を汚染してトナーへの帯電付与能力等が低下し画像が乱れ、また高速印刷機に導入した場合は、トナー飛散が目立つことがあった。
また、高画像印刷を提供するためには、トナーの粒径分布がシャープであることが望ましい。粗粉(即ち、非常に大きいトナー粒子)が含有されている場合にはトナーの帯電量分布がブロードとなり、「選択現像」が生じるためである。選択現象が生じると画像形成の初期は良好な画像が得られるが、画像形成を続けるうちに徐々に濃度が低下したり、トナーの粒径が大きくなり、がさついた画像となったりすることがある。このような現象を選択現像性に劣ったものであるという。さらに、帯電量の低い粗粉は保証寿命枚数を著しく低下させる傾向にある。特開2003−255567号公報では、個数変動係数が24.2%と粗粉が多いトナーが開示されている。このようなトナーは、高解像度の画像を安定して提供するのに適していない。また、国際公開第2004−088431号パンフレットは、粒度分布がシャープであることを示すものではない。
さらに、高画質の画像形成を実現するためには、トナーの転写特性に注目することが望ましい。転写特性が高いトナーとは、感光体上に現像されたトナー粒子の中間転写ドラム若しくは紙への転写効率、又は、中間転写ドラムから紙への転写効率が高いトナーをいう。しかし、特開平7−098521号公報、特開2006−091175号公報及び特開2006−119616号公報では製造工程からみて、平均円形度が高くない粉砕トナーが記載されており、転写特性が高い高画質印刷を提供するには不十分である。
このように、従来の画像形成装置において使用されているトナーは上記した要件(i)〜(iii)の何れかを満足しないものであった。その理由として、微粉を極力少なくしようとすると(即ち、要件(iii)を満たすようにすると)粗粉の発生を招く傾向があったからである。また、物理的衝撃によりトナーの円形化を図ろうとすると(即ち、要件(ii)を満たすようにすると)微粉の発生を促進させる(即ち、要件(iii)を満たさないよ
うになる)原因となったからである。さらに、熱的融着によりトナーの円形化を図ろうとすると(即ち、要件(ii)を満たすようにすると)トナー粒子同士の融着を招き粗粉の発生を招く傾向があったからである。
これに対し、本発明に係る第二のトナーは、前記(i)〜(iii)の全てを満足するものである。本発明に係る要件(i)、(ii)及び(iii)を全て満たす第二のトナーは、高画質が得られる上、高速印刷機に使用した場合においても、汚れが少なく、残像(ゴースト)及びカスレ(ベタ追従性)を抑制し、クリーニング性に優れている。また、粒径分布がシャープであることにより帯電量分布が非常にシャープであるので、帯電量の小さい粒子が画像白地部の汚れを引き起こしたり、飛散して装置内を汚したりせず、また、帯電量の大きいトナー粒子が現像されないまま層規制ブレードやローラー等の部材に付着してスジやカスレ等の画像欠陥を引き起こすことがない。すなわち、前記した「選択現像」が起こり難い。
特に、本発明に係る第二のトナーは、従来のトナーと比較して帯電量分布が非常にシャープである。帯電量分布はトナーの粒度分布と相関があり、従来のトナーのようなブロードの粒度分布を有する場合、その帯電量分布もブロードになる。帯電量分布がブロードになると、そのトナー用の画像形成装置が有する現像条件で制御できなくなる程の、帯電の低い粒子や帯電の高い粒子の割合が増加して、種々の画像欠陥の原因となる。例えば、帯電量の小さいトナー粒子は、画像白地部の汚れを引き起こしたり、装置内に飛散したりして汚れの原因になる。また帯電量の大きいトナー粒子は、現像されないまま現像槽中の層規制ブレードやローラー等の部材に蓄積し、融着によるスジやカスレ等の画像欠陥を引き起こす原因となる。
これは、画像形成装置における現像プロセスの設計において、トナー帯電量の平均値に適合するようにその現像プロセス条件が設定されているため、かかる平均値から帯電量が大きく外れているトナーは、かかる画像形成装置では飛散やスジ・カスレ等の画像欠陥を引き起こす傾向があるからである。したがって、ブロードの粒度分布を有するトナーは画像形成装置とのマッチングが良好ではない。これに対し、本発明に係る第二のトナーのように帯電量分布がシャープであれば、バイアス調整等で現像性のコントロールも可能になり、画像形成装置の部材を汚染することなく、鮮明な画像を与えることができるのである。
本発明に係る第二のトナーの「帯電量分布」を示す数値の1つである「帯電量の標準偏差」は、1.0以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、また、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が特に好ましい。前記上限値を超える場合は、層規制ブレードにトナーが付着して搬送され難くなり、付着したトナーが更に搬送されるトナーを塞き止め、画像形成装置内の部材を汚染する可能性がある。一方、前記下限値を下まわる場合は、工業上の見地から好ましくない場合がある。
前記のとおり、本発明に係る第二のトナーは、帯電量分布がシャープであるため、帯電不良のトナーが原因で起こる画像形成装置内の汚染(トナー飛散)が非常に少ない。これは特に感光体への現像プロセススピードが100mm/秒以上である高速タイプの画像形成装置においてその効果が顕著に発現される。
また、本発明に係る第二のトナーは、帯電量分布がシャープであるため、現像性が非常によく、現像しないで蓄積していくトナー粒子が非常に少ない。これは、特にトナーの消費スピードが速い画像形成装置においてその効果が発揮されるものである。具体的に示すと、下記式(iv)を満足する画像形成装置に用いるトナーであることが、本発明の前記効果を充分に発揮させるために好ましい。
トナーを充填する現像機の保証寿命枚数(枚)×印字率≧400(枚) (iv)
式(iv)において、「印字率」は、画像形成装置の性能である保証寿命枚数を決定するための印刷物において、印字部分面積の総和を印字媒体の全面積で除した値で表され、例えば、「5%」の印字%の「印字率」は「0.05」である。
更に、本発明に係る第二のトナーは粒径の分布が非常にシャープであるため、静電潜像の再現性が非常によい。したがって特に、感光体への解像度が600dpi以上である画像形成装置に用いる時に、本発明に係る第二のトナーの効果が充分に発揮される。また、かかるトナーを用いることで、画像形成装置は、感光体への解像度が600dpi以上である高解像度の画像を提供することができる。なお、「感光体への解像度」は、「装置の解像度」と同意である。
[2−3.本発明に係るトナーのその他の物性等]
本発明に係る第一のトナー及び第二のトナー等、本発明に係るトナーはいずれも、上記した物性のほかに、以下に説明する物性を有していることが好ましい。
本発明に係るトナーの、テトラヒドロフラン(以下適宜、「THF」と略す場合がある)に対する可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す場合がある)におけるピーク分子量のうち、少なくとも1つが、好ましくは3万以上、より好ましくは4万以上、更に好ましくは5万以上であり、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下であることが望ましい。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
また、本発明に係るトナーの帯電性は、正帯電であっても負帯電であってもよいが、負帯電性トナーとして用いることが好ましい。トナーの帯電性の制御は、帯電制御剤の選択及び含有量、外添剤の選択及び配合量等によって調整することができる。
[2−4.本発明に係るトナーの構成]
本発明に係る第一のトナー及び第二のトナー等、本発明に係るトナーはいずれも、結着樹脂、着色剤、ワックス、外添剤等を適宜選択して構成される。
結着樹脂としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係るトナーを構成する着色剤としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。例えば、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料が挙げられ、黒色顔料としてはカーボンブラック又は以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料としてのカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が激しい傾向を示す。そして、不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、カーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で測定する。まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度をλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等がある。
イエロー顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体例を挙げると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、150、155、168、180、194等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。具体例を挙げると、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、17.3、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物であるのが、特に好ましい。
シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体例を挙げると、C.I.ピグメントブルー1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等及び、C.I.ピグメントグリーン7、36等が特に好適に利用できる。
なお、着色剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
本発明に係るトナーには、離型性付与のためワックスを配合することが好ましい。ワックスとしては、離型性を有するものであればいかなるものも使用可能であり、特に限定はされない。具体例を挙げると、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
これらのワックスの中で定着性を改善するためには、ワックスの融点は30℃以上が好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出しべたつきを生じやすく、融点が高すぎると低温での定着性が劣る傾向がある。また更に、ワックスの化合物種としては、脂肪族カルボン酸と一価若しくは多価アルコールとから得られるエステル系ワックスが好ましく、エステル系ワックスの中でも炭素数が20以上100以下のものが好ましい。
前記ワックスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。ワックスの使用量はトナー100重量部に対して、好ましくは4重量部以上、より好ましくは6重量部以上、特に好ましくは8重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは18重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。
また、トナーの体積中位径(Dv50)が7μm以下の場合、すなわち、トナーが小粒径である場合には、ワックスの使用量の増加に伴いワックスのトナー表面への露出が極端に激しくなりトナーの保存安定性が悪くなる傾向がある。本発明に係る第二のトナーは、前記範囲のようにワックスの使用量が多い場合であっても、従来のトナーと比較して前記トナー特性の悪化を招くことがない粒度分布がシャープな小粒径のトナーである。
本発明に係るトナーは、流動性及び現像性を制御する為にトナー母粒子表面に公知の外添剤が配合されたものであってもよい。外添剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物及び水酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩;窒化チタン、窒化珪素等の窒化物;炭化チタン、炭化珪素等の炭化物;アクリル系樹脂、メラミン樹脂等の有機粒子;等が挙げられる。中でも、シリカ、チタニア、アルミナが好ましく、また、例えばシランカップリング剤やシリコーンオイル等で表面処理されたものがより好ましい。なお、外添剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併合してもよい。
外添剤の平均一次粒径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは100nm以下である。また、前記粒径範囲において小粒径のものと大粒径のものとを併用することも好ましい。
外添剤の配合量の総量は、トナー母粒子100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
ところで、本発明に係るトナーは、トナーを磁力により静電潜像部に搬送するためのキャリアを共存させた磁性二成分現像方式用、又は、磁性粉をトナー中に含有させた磁性一成分現像方式用、又は、トナーに磁性粉を用いない非磁性一成分現像方式用の何れに用いてもよいが、本発明の効果を顕著に発現するためには、特に非磁性一成分現像方式用のトナーとして用いるのが好ましい。
前記磁性二成分現像方式用のトナーとして用いる場合には、トナーと混合できるキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質;それらの表面に樹脂コーティングを施したもの;磁性樹脂キャリア等を用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。なお、キャリアは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
キャリアの平均粒径は、特に制限はないが、10μm以上200μm以下の平均粒径を有するものが好ましい。
これらのキャリアは、トナー1重量部に対して、5重量部以上100重量部以下だけ使用する事が好ましい
[2−5.トナーの製造方法]
本発明に係るトナーの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、粉砕法や水系媒体中で粒子を形成させる方法(以下、「湿式法」と略記する場合がある)等によって製造することができる。湿式法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の水系媒体中でラジカル重合を行う方法(以下、「重合法」と略記し、得られたトナーを「重合トナー」と略記する場合がある)や、溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等が好適に使用できる。
また、トナーを本発明に係る特定範囲の粒径にする方法としては特に限定はされない。例えば、重合トナーの製造工程において、懸濁重合法の場合は、重合性モノマー滴が生成される工程で高いせん断力を与えたり、分散安定剤等を増量させたりする方法等が挙げられる。
粉砕法でトナーを製造する場合は、一般に微粉が発生し易いので分級工程を行うことが望ましい。特に、本発明に係るトナーの粒径の要件を満たすためには、粉砕法では過度の分級操作が必要になる場合があり、歩留まりが著しく低下する可能性がある。ただし、本発明の画像形成装置に用いられるトナーとしては粉砕トナーを排除するものではない。一方で、微粉を発生しにくく、分級工程が必須ではないという観点から、本発明に係るトナーは、水系媒体中で粒子を形成させる湿式法で得られることが好ましい。
本発明に係る特定の粒径分布を有するトナーを得る方法としては、粉砕法;懸濁重合法、乳化重合凝集法等の重合法;溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等、何れの製造方法をも使用することができる。しかし、「粉砕法」、「懸濁重合法」、「溶融懸濁法に代表される化学粉砕法」においては、何れも、トナーの粒径をより大きなサイズから小さなサイズへ調整させるため、平均粒径を小さくしようとすると小粒子側の粒子の割合が増加する傾向にあり、分級工程等において過度の負担が強いられる。これに対して、乳化重合凝集法は、比較的粒径分布がシャープで、かつ、トナー母粒子の径より小さなサイズから大きなサイズへ調整させるため、分級工程等の工程を介さずとも整った粒径分布を有するトナーが得られる。したがって、以上の理由により、乳化重合凝集法により、本発明に係るトナーを製造することが特に好ましい。
〔乳化重合凝集法によるトナーの製造方法〕
以下は、水系媒体中で粒子を形成させる方法の中でも、微粉を発生しにくいという観点から、水系媒体中で重合を行うことにより粒子を製造する方法、更には乳化重合凝集法による粒子の製造方法について説明する。乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、熟成工程(円形化工程)、洗浄・乾燥工程を行う。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、帯電制御剤、ワックス等の分散液を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集させて芯粒子とし、必要に応じて樹脂微粒子等を固着又は付着させた後に融着させて得られた粒子を洗浄、乾燥することによりトナー母粒子が得られる。
(重合工程)
本製造方法では、通常、乳化重合により重合体一次粒子を製造する重合工程を行う。通常は、原料重合性モノマーを乳化重合により重合させ、所望のバインダー樹脂を含む重合体一次粒子を製造する。
乳化重合凝集法に用いられる重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂は、乳化重合法により重合可能な1種又は2種以上の重合性モノマーを適宜用い、この重合性モノマーを乳化重合させたものを用いればよい。重合性モノマーとしては、例えば、「酸性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「酸性モノマー」と称すことがある)、「塩基性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「塩基性モノマー」等の「極性基を有する重合性モノマー」(以下、単に「極性モノマー」と称すことがある)と称することがある)と、「酸性基及び塩基性基の何れをも有さない重合性モノマー」(以下、「その他のモノマー」と称することがある)とを原料重合性モノマーとして使用することが好ましい。この際、各重合性モノマーは別々に混合してもよく、予め複数の重合性モノマーを混合しておいてその後それらを同時に混合してもよい。さらに、重合性モノマーの混合途中で重合性モノマーの組成を変化させることも可能である。また、重合性モノマーはそのまま混合してもよいし、予め水や乳化剤等と混合、調製した乳化液として混合することもできる。
「酸性モノマー」としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して、適宜「(メタ)アクリル酸」という)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性モノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー;等が挙げられる。また、「塩基性モノマー」としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性モノマー;等が挙げられる。これら極性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも酸性モノマーを用いるのが好ましく、(メタ)アクリル酸であるのがより好ましい。
重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100重量%中に占める極性モノマーの合計量の割合は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2重量%以下である。前記範囲である場合、得られる重合体一次粒子の分散安定性が向上し、凝集工程において粒子形状や粒径の調整を行いやすくなる。
「その他のモノマー」としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等のアクリル酸アミド類;等が挙げられる。
なお、重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記した重合性モノマー等を組み合わせて用いる中でも、好ましい実施態様として、酸性モノマーとその他のモノマーとを組み合わせて用いるのがよい。より好適には、酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレン類及び(メタ)アクリル酸エステル類の中から選択される重合性モノマーを用いることがよく、更に好適には酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレンと(メタ)アクリル酸エステル類との組み合わせを用いることがよく、特に好適には酸性モノマーとして(メタ)アクリル酸を用い、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸n−ブチルとの組み合わせで用いるのがよい。
更に、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いることも好ましい。その場合、上記の重合性モノマーと共用される架橋剤としては、例えばラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、架橋剤として反応性基をペンダントグループに有する重合性モノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の2官能性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。
これら多官能性モノマー等の架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合は、バインダー樹脂を構成する全重合性モノマー中に占める多官能性モノマー等の架橋剤の配合率は、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
乳化重合に用いる乳化剤としては公知のものが使用できるが、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、通常、重合性モノマー100重量部に対して1重量部以上10重量部以下とされる。また、これらの乳化剤に、例えば、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の1種又は2種以上を、保護コロイドとして併用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;レドックス系開始剤等が用いられる。なお、重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
重合開始剤は、重合性モノマー100重量部に対して通常0.1重量部以上、3重量部以下の量で用いられる。中でも、重合開始剤としては、少なくとも一部又は全部が過酸化水素又は有機過酸化物類であるのが好ましい。
前記重合開始剤は、何れも重合性モノマーの混合前、混合と同時、混合後の何れの時期に重合系に混合してもよく、必要に応じてこれらの混合方法を組み合わせてもよい。
乳化重合に際しては、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。その使用量は、全重合性モノマーに対して通常5重量%以下の範囲で用いられる。
また、反応系には、更に、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
乳化重合は、前記の重合性モノマーを重合開始剤の存在下で重合するが、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
乳化重合により得られた重合体一次粒子の体積平均径(Mv)は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。粒径が前記範囲未満では、凝集速度の制御が困難となる場合があり、前記範囲超過では、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなりやすく、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のDSC法(示差走査熱量計法)によるガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは55℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは65℃以下である。この範囲内であれば、保存性がよく、加えて凝集性も損なわれない。ガラス転移温度が高すぎる場合は、重合体一次粒子の凝集性が悪く、凝集剤を過度に使用したり、凝集温度を過度に高くしたりしなくてはならない傾向があり、その結果微粉が発生しやすくなる場合がある。ここで、バインダー樹脂のガラス転移温度が他の成分に基づく熱量変化、例えばポリラクトンやワックスの融解ピークと重なるために明確に判断できない場合には、このような他の成分を除いた状態でトナーを作製した際のガラス転移温度を意味するものとする。
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂の酸価は、JIS K0070の方法によって測定した値として、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
「重合体一次粒子の分散液」中の重合体一次粒子の固形分濃度は、その下限値は14重量%以上であることが好ましく、21重量%以上であることが更に好ましく、一方、その上限値は30重量%以下が好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。前記範囲内であるとき、凝集工程において経験則的に重合体一次粒子の凝集速度を調整しやすく、結果として芯粒子の粒径、粒子形状、粒径分布を任意の範囲に調整することが容易となる。
(混合工程)
本製造方法においては、重合工程の後で、乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、帯電制御剤、ワックス等を含む分散液を混合する混合工程を行うことが好ましい。これにより、この分散液中の一次粒子を凝集させて芯粒子とし、(好ましくは、樹脂微粒子等を固着又は付着させるシェル被覆工程を経た後に、)融着させ、得られた粒子を洗浄、乾燥することによりトナー母粒子が得ることができる。
着色剤としては、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定はされない。例えば、上記した顔料、ファーネスブラックやランプブラック等のカーボンブラック、磁性着色剤等が挙げられる。前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、トナー中に1重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましく、また、25重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、12重量部以下が特に好ましい。
前記着色剤は磁性を有した磁性着色剤であってもよい。磁性着色剤としては、プリンター、複写機等の使用環境温度である0℃〜60℃付近においてフェリ磁性又はフェロ磁性を示す強磁性物質、具体的には、例えば、マグネタイト(Fe)、マグヘマタイト(γ−Fe)、マグネタイトとマグヘマタイトとの中間物や混合物、MFe3−x、(式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等を表す。)のスピネルフェライト、BaO・6Fe、SrO・6Fe等の6方晶フェライト、YFe12、SmFe12等のガーネット型酸化物、CrO等のルチル型酸化物、及び、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属又はそれらの強磁性合金等のうち0℃〜60℃付近において磁性を示すものが挙げられ、中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、又はマグネタイトとマグヘマタイトとの中間体が好ましい。
なお着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で含有する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、通常0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。また、磁性トナーとして使用する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、通常15重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。磁性粉の含有量が前記範囲未満であると、磁性トナーとして必要な磁力が得られない場合があり、前記範囲超過では、定着性不良の原因となる場合がある。
乳化重合凝集法における着色剤の配合方法としては、通常、重合体一次粒子分散液と着色剤分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中にサンドミル、ビーズミル等の機械的手段により乳化させた状態で用いるのが好ましい。この際、着色剤分散液は、水100重量部に対して、着色剤を10重量部以上30重量部以下、乳化剤を1重量部以上15重量部以下加えるのが好ましい。なお、分散液中の着色剤の粒径を分散途中でモニターしながら配合を行い、最終的にその体積平均径(Mv)を好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、また、好ましくは3μm以下、より好ましくは0.5μm以下の範囲に制御するのがよい。乳化凝集時における着色剤分散液の配合は、通常、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に2重量%以上10重量%以下となるように計算して用いられる。
トナーには、定着性等の改良のためワックスを含有することが好ましい。ワックスは重合体一次粒子に含有させても、樹脂微粒子に含有させてもよい。ただし、通常はワックスの使用量の増加に伴い凝集制御が悪化して粒径分布がブロードになる傾向にある。そのため、乳化重合凝集法におけるワックスの配合方法としては、予め水中に体積平均径(Mv)が通常0.01μm以上であり、通常2.0μm以下、好ましくは0.5μm以下に乳化分散したワックス分散液を乳化重合時に混合するか、又は凝集工程で混合することが好ましい。トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして混合することが好ましい。シードとして混合することにより、ワックスが内包された重合体一次粒子が得られるので、ワックスがトナー表面に多量に存在することがなく、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。重合体一次粒子に占めるワックス含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは7重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
また、樹脂微粒子中にワックスを含有させてもよい。その場合も重合体一次粒子を得る場合と同様に、乳化重合時にワックスをシードとして混合することが好ましい。樹脂微粒子全体中に占めるワックスの含有割合は、重合体一次粒子全体中に占めるワックスの含有量割合よりも小さい方が好ましい。一般に、樹脂微粒子中にワックスを含有せしめる場合は、定着性は向上するが、その反面微粉の発生量が多くなる傾向にある。その理由は、定着性については、熱を受けた際にワックスのトナー表面への移動速度が速くなるため向上するが、ワックスを樹脂微粒子中に含有させることにより樹脂微粒子の粒度分布が広くなるため凝集制御が難しくなり、その結果、微粉の増加を招くためと考えられる。
本発明に係るトナーには、帯電量、帯電安定性付与のため、帯電制御剤を配合してもよい。帯電制御剤としては、通常は従来公知の化合物が使用される。例えば、ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、ナフトール系化合物、ナフトール系化合物の金属化合物、ニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。なお、帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
帯電制御剤の配合量は樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上5重量部以下の範囲が好ましい。
乳化重合凝集法においてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時に重合性モノマー等とともに帯電制御剤を配合するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で配合するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼトナーとして適当な粒径となった後に配合する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を、乳化剤を用いて水中で乳化分散させ、体積平均径(Mv)0.01μm以上3μm以下の乳化分散液として使用することが好ましい。乳化凝集時における帯電制御剤分散液の配合は、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に0.1重量%以上5重量%以下となるように計算して用いられることが好ましい。
前記の分散液中の、重合体一次粒子、樹脂微粒子、着色剤粒子、ワックス粒子、帯電制御剤粒子等の体積平均径(Mv)は、実施例に記載の方法でナノトラックを用いて測定し、その測定値として定義される。
(凝集工程)
混合工程の後には、通常、混合工程で得られた分散液中の一次粒子を凝集させる凝集工程を行う。
乳化重合凝集法における凝集工程においては、上記の、重合体一次粒子、樹脂微粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等の配合成分は、同時に又は逐次に混合するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、樹脂微粒子分散液、着色剤粒子分散液、帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておくことが組成の均一性及び粒径の均一性の観点で好ましい。
また、これら異なる種類の分散液を混合する際、各分散液中に含まれる成分の凝集速度が異なるため、及び凝集を均一に行うために、連続的又は断続的に、ある程度時間をかけて混合することが好ましい。混合に要する好適な時間は、混合する分散液の量や固形濃度等に応じて変化するため、適宜調整して行うことが好ましい。例えば、重合体一次粒子分散液に着色剤粒子分散液を混合する場合には、3分間以上かけて混合することが好ましい。また、芯粒子に対して樹脂微粒子分散液を混合する際も、3分間以上かけて混合することが好ましい。
前記の凝集処理は通常攪拌槽内で、電解質を混合する方法、加熱する方法、系内の乳化剤の濃度を低減する方法、及びこれらを組み合わせる方法等がある。一次粒子を攪拌下に凝集してほぼトナーの大きさに近い粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、前記方法によって凝集力を大きくすることができる。
電解質を混合して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩の何れでもよいが、例えば、NaCl、KCl、LiCl、NaSO、KSO、LiSO等の1価の金属カチオンを有する無機塩;CHCOONa、CSONa等の1価の金属カチオンを有する有機塩;MgCl、CaCl、MgSO、ZnSO等の2価の金属カチオンを有する無機塩;Al(SO、Fe(SO等の3価の金属カチオンを有する無機塩等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩を用いる場合、凝集速度が速くなり生産性の点で好ましいが、一方で芯粒子に取り込まれない重合体一次粒子等の量が増加するため、結果として所望のトナー粒径に至らない微粉が発生しやすくなる。したがって、凝集作用のそれほど強くない1価の金属カチオンを有する無機塩を用いることが、前記微粉の発生量を抑えられる点で好ましい。
なお、電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記電解質の使用量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。使用量が前記範囲未満の場合は、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない場合があり、前記範囲超過の場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた芯粒子中に粗粉や不定形のものが含まれる場合がある。
また、電解質の混合方法は、一度に加えずに、断続的又は連続的にある程度の時間をかけて混合することが好ましい。この混合時間は使用量等に応じて変化するが、0.5分間以上かけて混合することがより好ましい。通常、電解質を混合すると、その途端に急な凝集が始まるため、凝集に取り残される重合体一次粒子、着色剤粒子、又はその凝集物等が多く残存する傾向にある。そしてこれらが微粉の発生元の一つと考えられる。前記操作によれば、急な凝集をせずに均一な凝集を行うことができるため、微粉の発生を防ぐことができる。
また、電解質を混合して凝集を行う場合の凝集工程の最終温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。ここで、凝集工程前の温度を制御することも、トナーの粒径を本発明に係る特定範囲の粒径に制御する方法の一つである。凝集工程に加える着色剤の中には、前記電解質のように凝集を誘発させるものがあり、電解質を加えずとも凝集することがある。この凝集は微粉を発生させる原因となる。そこで、着色剤分散液の混合時に予め、重合体一次粒子分散液の温度を冷やしておくことで、前記凝集を防ぐことができる。本製造方法では、重合体一次粒子を予め、好ましくは0℃以上、より好ましくは2℃以上、また、好ましくは15℃以下、より好ましくは12℃以下、特に好ましくは10℃以下の範囲に冷やしておくのがよい。なお、この方法は電解質を加えて凝集を行う場合にのみに効果があるものではなく、pHの制御やアルコール等の極性有機溶媒を混合して凝集を行う方法等、電解質を混合せずに凝集を行う方法にも用いられ、特に凝集方法に限定されるものではない。
加熱によって凝集を行う場合の凝集工程の最終温度は、重合体一次粒子ガラス転移温度をTgで表した場合、通常(Tg−20℃)以上、好ましくは(Tg−10℃)以上であり、通常Tg以下、好ましくは(Tg−5℃)以下の範囲である。
また、微粉の発生を防ぐために急な凝集を防ぐ方法としては、脱塩水等を混合する方法がある。脱塩水等を混合する方法は、電解質を混合する方法に比べて凝集作用がそれほど強くないため、一般的な製造方法では生産効率上積極的に採用される方法ではなく、寧ろ、その後の濾過工程等で多量の濾液が得られる傾向がある。ところが、本発明のように微妙な凝集制御が求められる場合には、非常に効果的である。また、本発明においては、前記加熱する方法や電解質を混合する方法等と組み合わせて採用することが好ましい。このとき、電解質を混合した後に脱塩水を混合する方法が、凝集を制御しやすいという点で特に好ましい。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー母粒子の粒径を目的とする粒径に到達するためには、凝集工程を終了させる操作時の温度、例えば、乳化剤の混合、pH制御等により芯粒子の成長を止める操作時の温度(以下、「凝集最終温度」と略記する場合がある。)より8℃低い温度から凝集最終温度までの時間を30分以上とすることが好ましく、1時間以上とすることが更に好ましい。前記時間を長くすることで残存する重合体一次粒子、着色剤粒子、又はその凝集物等が取り残されることなく、目的とする芯粒子に取り込まれたり、それら同士が凝集したりして目的の芯粒子になる。
前記(i)〜(iii)の要件を全て満たすトナーを得るには、凝集工程において通常行う操作と比較して凝集の速度が速くない操作を採用することが好ましい。前記凝集の速度が速くない操作としては、例えば、使用する分散液を予め冷やしておく、時間をかけて分散液等を混合する、凝集作用の大きくない電解質等を採用する、電解質を連続的或いは断続的に混合する、昇温する速度を遅くする、凝集する時間を長くする、等の方法がある。
また、熟成工程においては凝集した粒子が再分散し難い操作を採用することが好ましい。前記凝集した粒子が再分散し難い操作としては、例えば、攪拌する回転数を下げる方法、分散安定剤を連続的或いは断続的に混合する方法、分散安定剤と水を予め混ぜておく方法等がある。
また、前記(i)〜(iii)の要件を全て満たすトナーは、最終的に得られたトナー或いはトナー母粒子を、分級等の操作によって、それらの体積中位径(Dv50)以下の粒子を除去する工程を経ずに得られることが好ましい。
(シェル被覆工程)
本製造方法においては、重合体一次粒子を凝集させて芯粒子とし、樹脂微粒子等を固着又は付着させるシェル被覆工程を経た後に融着させて得られた粒子を洗浄、乾燥することによりトナー母粒子を得ることが好ましい。この場合、得られるトナー母粒子は樹脂被覆層を有する(即ち、トナーも樹脂被覆層を有する)ものとなるので、トナーの安定性、長期保存性、耐環境性が良好になるという利点が得られる。
芯粒子全体に対する樹脂微粒子の割合は、芯粒子100重量部に対して、通常0.5重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下である。
樹脂微粒子は、前記重合体一次粒子と同様の方法で製造してもよく、その構成は特に限定されない。ただし、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100重量%中に占める極性モノマーの合計量の割合は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.2重量%以上であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下である。前記範囲である場合、得られる樹脂微粒子の分散安定性が向上し、凝集工程において粒子形状や粒径の調整を行いやすくなる。
また、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100重量%中に占める極性モノマーの合計量の割合が、重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100重量%中に占める極性モノマーの合計量の割合よりも小さい方が、凝集工程において粒子形状や粒径の調整を行いやすくなり、微粉の発生が抑制でき、帯電特性に優れたものとなる点で好ましい。
また、樹脂微粒子としてのバインダー樹脂のガラス転移温度が、重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のガラス転移温度よりも高い方が、保存安定性等の点から好ましい。
本製造方法においては、芯粒子の表面に、必要に応じて樹脂微粒子を被覆(付着又は固着)してトナー母粒子を形成することができる。樹脂微粒子の体積平均径(Mv)は、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。一般に前記樹脂微粒子の使用は所定のトナー粒径に至らない微粉の発生を助長させる傾向がある。したがって、従来の樹脂微粒子で被覆したトナーは所定のトナー粒径に満たない微粉量が多くなる傾向がある。
また、本製造方法において、ワックスの配合量を多くした場合、高温定着性は向上するもののワックスがトナー表面に露出しやすくなるため帯電性や耐熱性が悪化する場合がある。しかし、芯粒子の表面を、ワックスを含有しない樹脂微粒子で被覆することにより性能の悪化を防止できる。
しかしながら、高温定着性を向上させる目的で樹脂微粒子にもワックスを含有させる場合は、一旦芯粒子の表面に付着した樹脂微粒子が剥がれ落ちやすい。この理由は、上記した前記樹脂微粒子の粒径分布が広くなるため、付着力の弱い大粒径の樹脂微粒子が存在するためと推察される。そこで、その剥がれ落ちを少なくするために、樹脂微粒子が表面に付着した粒子が分散している液中に、分散安定剤と水を予め混ぜておいた水溶液を混合しながら昇温することが好ましい。
また、後述するような「乳化剤の混合後に昇温を開始する工程」を採用した場合、すなわち、凝集力を急激に下げた後に熟成工程を行った場合は、その凝集力の急激な低下のため一度付着した樹脂微粒子が離脱しやすくなる場合がある。従って、凝集力をそれほど落とすことなく、かつ、粒子の径成長を抑えつつ、樹脂微粒子を付着後、融着することが好ましい。
(熟成工程)
乳化重合凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、分散安定剤として、乳化剤やpH調整剤を混合して粒子同士の凝集力を低下させトナー母粒子の成長を止めた後に、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。
乳化剤を混合する量は限定されないが、混合分散液の固形成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に乳化剤を混合するか、凝集液のpH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後のトナー中に粗大粒子が生じることを抑制できる。
ここで、本発明に係る第二のトナーにおいて粒度分布がシャープであることを意味する特定範囲の粒径に制御する方法として、例えば、乳化剤やpH調整剤を混合する工程の前に攪拌回転数を低下させる方法、即ち、攪拌による剪断力を下げる方法が挙げられる。この方法は凝集作用が弱い系、例えば乳化剤やpH調整剤を一度に混合して急激に安定(分散)な系へ移行させた場合に採用することが好ましい。上記したように、仮に分散安定剤と水とを予め混ぜておいた水溶液を混合しながら昇温する方法を採用した場合に攪拌回転数を低下させると、系が凝集へ傾き過ぎるため、粒径の肥大を招く場合がある。
一例として前記の方法により本発明の画像形成装置に用いられる特定の粒径分布のトナー、すなわち、前記(i)〜(iii)の要件を全て満たす本発明に係る第二のトナーを得ることができるが、更に述べる。前記の回転数を落とす程度によって、微粉の含有量を調節することができる。例えば、攪拌回転数を250rpmから150rpmに低下させると、公知のトナーより粒度分布がシャープな小粒径のトナーを与えることができ、本発明に係る第二のトナーを得ることができる。ただし、この値は、
(イ)攪拌容器の直径(所謂一般的な円筒形として)と攪拌羽根の最大径(及びその相対的な比)、
(ロ)攪拌容器の高さ、
(ハ)攪拌羽根先端の周速、
(ニ)攪拌羽根の形状、
(ホ)攪拌容器内の羽根の位置、
等の条件によって異なってくる。
特に前記(ハ)については、1.0m/秒以上が好ましく、1.2m/秒以上がより好ましく、1.5m/秒が特に好ましく、また、2.5m/秒以下が好ましく、2.3m/秒以下がより好ましく、2.2m/秒以下が特に好ましい。前記の範囲内であれば、剥がれ落ちもせず、肥大もしない好適な剪断速度を粒子に対して与えるからである。
熟成工程の温度は、重合体一次粒子としてのバインダー樹脂のガラス転移温度Tgとした場合、好ましくはTg以上、より好ましくはTgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくはTgより80℃高い温度以下、より好ましくはTgより50℃高い温度以下である。
また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、重合体一次粒子を構成する重合体のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常5時間以下、好ましくは3時間以下だけ保持することが望ましい。
このような加熱処理により、凝集体における重合体一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー母粒子の形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子の静電的又は物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー母粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。このような熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
(洗浄・乾燥工程)
前記の各工程を経ることにより得た粒子凝集体は、公知の方法に従って固/液分離し、粒子凝集体を回収し、次いで、これを必要に応じて洗浄した後、乾燥することにより目的とするトナー母粒子を得ることができる。
また、前記の乳化重合凝集法により得られた粒子の表面に、例えば、スプレードライ法、in−situ法、又は液中粒子被覆法等の方法によって、更に、重合体を主成分とする樹脂微粒子を外層として、好ましくは0.01μm以上0.5μm以下の厚みで形成させることによって、カプセル化されたトナー母粒子とすることもできる。
(乳化重合凝集法に関するその他の事項)
前記したような製造方法の工夫によって、(i)〜(iii)の要件を全て満たし得るトナー母粒子を製造することができる。このトナー母粒子をそのまま本発明に係るトナーとして用いてもよいが、通常は、後記する外添処理を行うことによって、(i)〜(iii)の要件を全て満たすトナーを得る。
本発明のトナーは、流動性や現像性を制御する為にトナー母粒子表面に公知の外添剤が配合されたものであってもよい(外添処理)。外添剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物、アクリル系樹脂やメラミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。なお、外添剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、シリカ、チタニア、アルミナが好ましく、また、例えばシランカップリング剤やシリコーンオイル等で表面処理されたものがより好ましい。その平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下である。また、前記粒径範囲において小粒径のものと大粒径のものとを併用することも好ましい。外添剤の配合量の総量は、トナー母粒子100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
また、乳化重合凝集法により得られる本発明に係るトナーにおいては、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製)を用いて測定した平均円形度が、好ましくは0.930以上、より好ましくは0.940以上であり、さらに好ましくは0.942以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあると考えられるが、完全な球状トナーを作ることはクリーニング性を悪化させるため前記平均円形度は好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、さらに好ましくは0.97以下である。
〔粉砕法によるトナーの製造方法〕
本発明に係るトナーは、例えば、粉砕法により製造することもできる。粉砕法では、樹脂を粉砕してトナーを製造する。この場合、粉砕法で得られるトナー(以下、適宜「粉砕トナー」という)の粒径分布は所望のものとなっていないことが多いため、通常は、粉砕トナーに対して分級を行う。
粉砕トナーを製造する際に用いる樹脂としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が用いられる。なかでもポリエステル樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ポリエステル樹脂は、通常多価アルコールと多塩基酸とより成り、必要に応じてこれら多価アルコール及び多塩基酸の少なくとも一方が3価以上の多官能成分(架橋成分)を含有する重合性モノマー組成物を重合することにより得られる。
以上において、ポリエステル樹脂の合成に用いられる多価アルコールのうち2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。これらのモノマーのうち、特にビスフェノールAアルキレンオキシド付加物を主成分モノマーとして用いるのが好ましく、中でも1分子当たりのアルキレンオキシド平均付加数が2以上7以下の付加物が好ましい。
また、ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、等を挙げることができる。
なお、多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
一方、多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、等の2価の有機酸を挙げることができる。
また、ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多塩基酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、等を挙げることができる。
なお、多塩基酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらのポリエステル樹脂は、通常の方法にて合成することができる。例えば、反応温度(170℃以上250℃以下)、反応圧力(5mmHg以上常圧(通常は760mmHg)以下)等の条件をモノマーの反応性に応じて決め、所定の物性が得られた時点で反応を終了すればよい。
このポリエステル樹脂の軟化点は、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、また、135℃以下が好ましく、133℃以下がより好ましい。また、ガラス転移温度の範囲は、例えば軟化点が90℃の時は50℃以上65℃以下であり、軟化点が135℃の時は60℃以上75℃以下である。この場合、軟化点が前記範囲より低ければ定着時のオフセット現象が発生し易く、前記範囲より高ければ定着エネルギーが増大し、カラートナーでは光沢性や透明性が悪化する傾向にある。また、ガラス転移温度が前記範囲より低ければトナーの凝集塊や固着を生じ易く、前記範囲より高ければ熱定着時の定着強度が低下する傾向にある。
ポリエステル樹脂の軟化点は主として樹脂の分子量で調節でき、樹脂のテトラヒドロフラン可溶分をGPCにより測定した場合に数平均分子量として、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上とし、好ましくは20000以下、より好ましくは12000以下とするのがよい。また、ガラス転移温度は主として樹脂を構成するモノマー成分を選択することによって調節でき、例えば酸成分として芳香族の多塩基酸を主成分とすることによりガラス転移温度を高めることができる。すなわち、上記した多塩基酸のうち、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸等及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等を主成分として用いるのが望ましい。
ここで、軟化点はJIS K7210及びK6719に記載されるフローテスターを用いて測定した値と定義される。具体的には、フローテスター(CFT−500、島津製作所製)を用いて、約1gの試料を予熱時間50℃5分間、昇温速度3℃/分で加熱しながら、面積1cmのプランジャーにより30kg/cmの荷重を与え、孔径1mm、長さ10mmのダイから押し出す。これにより、プランジャーストローク−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さを「h」とするとき、「h/2」に対応する温度を軟化点と定義する。また、ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC7又はセイコー電子社DSC120)を用いて、常法に従って測定したものとして定義される。
一般にポリエステル樹脂の酸価が高すぎる場合、安定した高帯電量を得ることが難しく、また高温高湿時における帯電安定性も悪化する傾向にある。したがって、ポリエステル樹脂の酸価を、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、特に好ましくは15mgKOH/g以下となるよう調製するのがよい。また、下限は通常3mgKOH/g以上である。
ポリエステル樹脂の酸価を前記範囲内に調節するための方法としては、例えば、樹脂合成時に使用するアルコール系及び酸系のモノマーの配合割合を制御する方法、エステル交換法により酸モノマー成分をあらかじめ低級アルキルエステル化したものを用いて合成する方法、アミノ基含有グリコール等の塩基性成分を組成中に配合することにより残存酸基を中和する方法、等が挙げられる。ただし、これらの方法はあくまで例示であり、これらに限らず公知のあらゆる方法を採用できる。なお、ここでポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070の方法に準じて測定される。ただし、樹脂が溶媒に溶解しにくい場合は、ジオキサン等の良溶媒を用いる。
前記ポリエステル樹脂としては、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(a)〜(d)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものが好ましい。なお、TgとSpの単位は「℃」である。
式(a) Sp=4×Tg−110
式(b) Sp=4×Tg−170
式(c) Sp=90
式(d) Sp=135
前記式(a)〜(d)に表される直線で囲まれる物性を有したポリエステル樹脂を粉砕トナーに用いた場合、前記粉砕法トナーは、機械的なストレスに対する耐性が極めて大きい。しかも連続使用時等において発生する摩擦熱によって、トナーが凝集したり固化したりすることも回避でき、長期に渡って適度な帯電性を保持できる。
粉砕トナーは、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。例えば、着色剤を含んでいてもよい。粉砕法において使用する着色剤は、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定されない。例えば、上記した重合トナーに用いる着色剤を使用することができる。
前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、樹脂100重量部に対して、通常1重量部以上、好ましくは3重量部以上であり、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは12重量部以下である。
粉砕トナーは、例えば帯電制御剤を含んでいてもよい。帯電制御剤としては、公知のものがすべて使用可能である。例えば、正帯電性用の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、アミノ基含有ビニル系コポリマー、四級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂等が挙げられる。また、負帯電性用の帯電制御剤としては、例えばクロム、亜鉛、鉄、コバルト、アルミニウム等の金属を含有する含金属アゾ染料、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の前記した金属との塩、金属錯体等が挙げられる。なお、帯電制御剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
帯電制御剤の使用量としては、樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは25重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。この場合、帯電制御剤は樹脂中に配合してもよく、またトナー母粒子表面に付着させた形で用いてもよい。
これらの帯電制御剤のうち、そのトナーに対する帯電賦与能力やカラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないし淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性用としては、アミノ基含有ビニル系コポリマー及び/又は四級アンモニウム塩化合物が好ましく、負帯電性用としては、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム、ボロン等との金属塩、金属錯体が好ましい。
これらのうちアミノ基含有ビニル系コポリマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノアクリレート類とスチレン、メチルメタクリレート等との共重合樹脂等が挙げられる。また、四級アンモニウム塩化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドとナフトールスルホン酸との造塩化合物等が挙げられる。正帯電性トナー用としては、以上のアミノ基含有ビニル系コポリマーと四級アンモニウム塩化合物とを、単独で配合してもよく、併用してもよい。
また、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩、金属錯体としては、各種公知の物質のうち、特に3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸のクロム、亜鉛あるいはボロン錯体が好ましい。
なお、以上の着色剤及び帯電制御剤は、トナー中での分散性及び相溶性を改良するために、あらかじめ樹脂との前混練等によって予備分散処理、所謂マスターバッチ処理を行ってもよい。
粉砕トナーにおいては、その他の構成成分として、例えば、低分子量のポリアルキレン、パラフィンワックス、エステルワックス等の低融点の離型剤等、公知のいかなる物質をも含有させることが可能である。
本発明に係るトナーを粉砕法により製造する具体的な操作の例としては、以下のものが挙げられる。
1.樹脂、並びに、必要に応じて含まれる帯電制御物質、着色剤及び添加剤を、ヘンシェルミキサー等の分散装置で均一に分散する。
2.得られた分散物を、例えばニーダー、エクストルーダー、ロールミル等の溶融混練装置で溶融混練する。
3.得られた混練物を、例えばハンマーミル、カッターミル等の粗粉砕装置で粗粉砕した後、例えばジェットミル、I式ミル等の微粉砕装置で微粉砕する。
4.得られた微粉砕物を、例えば分散式分級機、ジグザグ分級機等の分級装置で分級する。
5.得られた分級物中に、必要に応じてシリカ等の外添剤をヘンシェルミキサー等で分散する。
特に、前記4の操作において、本発明に係る特定の粒径分布になるまで分級を行うことによって、本発明に係るトナーを粉砕法で製造することができる。
〔懸濁重合法〕
本発明に係るトナーを懸濁重合法で製造する方法としては、特に限定はされないが、例えば、バインダーポリマーの極性基数等の化学構造及び分子量分布、懸濁状態を良好にする添加剤(分散安定剤等)の種類及び量、懸濁重合時の攪拌強度、重合性モノマーの混合方法、重合開始剤及び連鎖移動剤の種類及び量、重合温度、並びに、分級の程度等を調整することによって行う。特に好ましい方法として、重合性モノマー滴が生成される工程で高いせん断力を与えたり、分散安定剤等を増量させたりする方法等が挙げられる。
懸濁重合法により本発明に係るトナーを製造する際に用いる樹脂等の原料としては、乳化重合凝集法の項で記載したものが挙げられる。
〔溶融懸濁法に代表される化学粉砕法〕
溶融懸濁法に代表される化学粉砕法によって本発明に係るトナーを製造する方法としては特に限定はされないが、例えば、バインダーポリマーの種類、化学構造又は分子量分布等;懸濁状態を良好にする水中添加剤の種類と量;ポリマー溶液添加時の攪拌強度、混合方法、温度等;要すれば分級の程度等を調整することによって行う。
溶融懸濁法等の化学粉砕法でトナーを製造する際に用いる樹脂としては、粉砕法の項で記載したもの等が挙げられる。また、その他原料としては、乳化重合凝集法の箇所で記載したものが挙げられる。
[3.画像形成装置]
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1(感光体1)、帯電手段としての帯電装置2、露光手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4(内部にトナーTを備える)及び転写手段としての転写装置5を備えて構成され、更に必要に応じてクリーニング装置(クリーニング手段)6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
電子写真感光体1は、上記の本発明の感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上記した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。
帯電装置の具体的な例としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)、等が挙げられる。直接帯電部材(接触帯電器)の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等が挙げられる。
直接帯電装置による直接帯電手段としては、気中放電を伴う接触帯電手段、気中放電を伴わない注入帯電手段があり、本発明においてはいずれの方法も適用できる。
また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。
露光装置3は、帯電した感光体1に対し露光を行なって感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その数や種類等に制限はない。よって、露光装置は1個でもよく、2個以上でもよい。露光装置3の具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。ただし、本発明の画像形成装置においては、露光を行なう際の光の波長は、通常380nm以上、また通常500nm以下、好ましくは480nm以下、更に好ましくは430nm以下の短波長の単色光を用いるものとする。本発明の感光体は、このような青色(紫色)の単色光と組み合わせることにより、本発明に特有の優れた効果を発揮するものである。
現像装置4は、トナーを有し、形成された静電潜像をトナーにより現像するものであれば、その種類に制限はなく、例えばカスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、例えばシリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTとしては、上記した本発明に係るトナーを用いることが好ましい。図1ではその一例として、トナーの収納形態を示しているが、本発明の効果を著しく制限しない限り収納方法や収納場所、及び補充方法等は任意である。なお、トナーは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
転写装置5はトナーを転写するものであれば、その種類に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体,被転写体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。ただし、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆どない場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、以下の方法で画像の記録が行なわれる。
即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上記した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1及びトナーTを組み合わせて一体型のカートリッジ(これを適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この際、カートリッジは、通常は、少なくとも本発明の感光体と、本発明の感光体を画像形成装置に対して着脱可能に支持するカートリッジケースとを備えたものとして構成される。
更に、該電子写真感光体カートリッジに、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5のうち1つ又は2つ以上の要素と組み合わせてもよい。また、これらの要素に加え、クリーニング装置6、及び定着装置7も備えるように構成してもよい。この場合、画像形成装置に対して着脱可能に構成されたカートリッジケースを用い、これに上記の要素と組み合わせて収容し支持させることにより、電子写真感光体カートリッジとすることができる。
こうした構成により、例えば電子写真感光体1、又はその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができる。
また、トナーTについても、トナーカートリッジ中からなくなった場合には、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り出し、トナーの充填を容易に行なったり、別の新しいトナーカードリッジを装着したりすることができる。従って、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
[4.本発明の画像形成装置の利点]
本発明の電子写真感光体は、波長380nm以上500nm以下の単色光により画像形成を行った場合、感度が高く、電気諸特性に優れる。また、波長380nm以上500nm以下の露光光源を用いることにより、電子写真感光体上のビームスポット径を小径化することができ、高解像度の画像を得ることができる。
さらに、本発明の画像形成装置は、高解像度、高階調性等に代表される高品質であって、しかも高解像度な露光に対して忠実に現像された欠陥の少ない画像を形成することができる。特に、この効果はトナーとして特定の要件を満たす本発明に係るトナーを用いた場合に顕著である。
上記の利点が得られる理由は、明確にはわかっていない。しかし本発明者らの推測によれば、本発明の感光体と短波長の単色光とを組み合わせることによって好適な潜像が得られたためであると思料される。また、該潜像と適合性の高いトナーで現像することとなり、より優れた効果を得ているものと思料される。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜変更を加えて実施することが可能である。なお、以下において「部」とあるのは「重量部」を表わす。
[I.感光体の評価に関する実施例等]
[I−1.測定方法]
[粘度平均分子量の算出方法]
電荷輸送層に含まれる樹脂の粘度平均分子量は、以下のようにして算出した。
樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00[g/L]の溶液を調製した。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t[s]が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間t[s]を測定した。そして、以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出した。
a=0.438×ηsp+1
ηsp=(t/t)−1
=136.16[s]
b=100×ηsp/C
C=6.00[g/L]
η=b/a
Mv=3207×η1.205
[I−2.アゾ化合物の製造]
〔製造例1〕
特開昭63−195657に記載の方法に準じて製造した、2−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オン及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物(以下、適宜、「2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物」という)4.9gと、ナフトールAS 2.2gとを、ジメチルスルホキシド750mLに溶解し、ここへ室温下、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩3.8gをジメチルスルホキシド50mLに溶解した溶液を滴下した。次いで、酢酸ナトリウム5.0gを水15mLに溶解した溶液を滴下し、18℃〜23℃で3時間撹拌して、カップリング反応を行なった。析出した固体を濾取し、10%酢酸水、水、テトラヒドロフラン(THF)により順次洗浄後、乾燥して、下記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物5.1gを得た。この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に65%、28%、7%であった。
(式(T1−1)及び(T1−2)中、Cpは、
を表し、式(T1−1)及び(T1−3)中、Cpは、
を表す。
〔製造例2〕
製造例1において使用した酢酸ナトリウムの量を3.1gに変えた以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物5.4gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に55%、26%、19%であった。
〔製造例3〕
製造例1において使用した2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を3.9gに、ナフトールASの量を1.3gに、それぞれ変えた以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物6.0gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に50%、47%、3%であった。
〔製造例4〕
製造例1と同様にして、カップリング反応を行い、析出した固体を濾取した後、酢酸ナトリウム3.0gを溶解した水溶液9mLをジメチルスルホキシド450mLに混合した懸濁液で洗浄し、その後は製造例1と同様の方法により、上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.6gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に72%、26%、2%であった。
〔製造例5〕
製造例1において使用した2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を5.4gに、ナフトールASの量を1.8gにそれぞれ変えて、製造例1と同様にしてカップリング反応を行った後、製造例4と同様に洗浄を行なって、上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.9gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に60%、38%、2%であった。
〔製造例6〕
製造例1において使用したナフトールASの代わりに、3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド3.5gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T2−1)、(T2−2)又は(T2−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物5.0gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T2−1)、(T2−2)、(T2−3)の順に62%、26%、12%であった。
〔製造例7〕
製造例6において使用した3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの量を2.5gに変えて、2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を5.4gに変えた以外は製造例6と同様にしてカップリング反応を行い、析出した固体をジメチルスルホキシト゛、10重量%酢酸水、水、THFで順次洗浄して、上記式(T2−1)、(T2−2)又は(T2−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.5gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T2−1)、(T2−2)、(T2−3)の順に65%、30%、5%であった。
(式(T2−1)及び(T2−2)中、Cpは式(T1−1)及び(T1−2)中のCpと同様のものを表す。また、式(T2−1)及び(T2−3)中、Cp
を表す。)
〔製造例8〕
製造例1において使用したナフトールASの代わりに、3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.9gを使用して、製造例1と同様の方法によりカップリング反応を行い析出した固体を濾取した後、製造例4と同様の方法で洗浄することにより、下記式(T3−1)、(T3−2)又は(T3−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.2gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T3−1)、(T3−2)、(T3−3)の順に75%、23%、2%であった。
(式(T3−1)及び(T3−2)中、Cpは式(T1−1)及び(T1−2)中のCpと同様のものを表す。また、式(T3−1)及び(T3−3)中、Cp
を表す。)
〔製造例9〕
3,6−ジヒドロキシナフタル酸無水物28.8gとo−フェニレンジアミン14.1gを、氷酢酸86mLとニトロベンゼン430mLとの混合溶媒中に懸濁し、8時間加熱還流下、反応させた。反応後、固体を濾取し、メタノール520mLにて洗浄後、乾燥して36.3gの黄色固体を得た。得られた黄色固体18.2gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)792mLに懸濁させ、炭酸カリウム58.0gと塩化トシル11.4gを加えた。80℃にて2時間撹拌後、炭酸カリウム24.8gとヨウ化ブチル(n)33.4gを加え、さらに2時間撹拌した。反応液を熱時ろ過した後、DMF、水を用いて再結晶し、19.0gの黄色固体を得た。この黄色固体をエタノール666mLに懸濁し、加熱還流させ、1N水酸化カリウム水溶液666mLを滴下した。4.5時間撹拌後、降温し、酢酸にて中和して析出した固体を濾取した。これをメタノールで洗浄して黄色固体11.6gを得た。
製造例1において使用した2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の代わりに、この黄色固体6.3gを使用し、ナフトールASの代わりに3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド3.2g使用した以外は製造例1と同様にしてカップリング反応を行い、下記式(T4−1)、(T4−2)又は(T4−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.5gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T4−1)、(T4−2)、(T4−3)の順に61%、27%、12%であった。
(式(T4−1)及び(T4−2)中、Cpは、
を表わし、式(T4−1)及び(T4−3)中、Cp10は、
を表す。)
〔製造例10〕
製造例9において使用した3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの量を2.5gに変えてカップリング反応を行い、その後は製造例7と同様に洗浄して、上記式(T4−1)、(T4−2)又は(T4−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.0gを得た。
この混合物について前述の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T4−1)、(T4−2)、(T4−3)の順に67%、29%、4%であった。
〔製造例11〕
製造例9において使用したo−フェニレンジアミンの代わりに、3,4−ジアミノトルエン16.0gを使用して、製造例9と同様にして38.4gの黄色固体を得た。この黄色固体19.0gを、DMF817mLに懸濁させ、炭酸カリウム58.0gと塩化トシル11.4gを加えた。80℃にて2時間撹拌後、30℃まで降温し、炭酸カリウム24.8gとヨウ化メチル25.5gを加えて、20℃以上35℃以下にてさらに2時間撹拌した。反応液を80℃まで昇温して80℃で熱時濾過し、濾液をDMF、水を用いて再結晶して20.3gの黄色固体を得た。この黄色固体をエタノール630mLに懸濁し、加熱還流させ、1N水酸化カリウム630mLを滴下した。これ以後は製造例9と同様の処理を行なうことにより、黄色固体12.2gを得た。
製造例1において使用した2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の代わりに、この黄色固体5.6gを使用し、ナフトールASの代わりに3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド3.2g使用した以外は製造例1と同様にしてカップリング反応を行い、下記式(T5−1)、(T5−2)又は(T5−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.6gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T5−1)、(T5−2)、(T5−3)の順に68%、26%、8%であった。
(式(T5−1)及び(T5−2)中、Cp11は、
を表わし、式(T5−1)及び(T5−3)中、Cp12は、
を表す。)
〔製造例12〕
製造例1において使用したナフトールASの代わりに、2−ヒドロキシ−11H−ベンズ(a)カルバゾール−3−カルボキシ−(4’−トリフルオロメチル)アニリド3.6gを使用した以外は製造例1と同様にカップリング反応を行い、析出した固体を濾取して、ジメチルスルホキシド、10重量%酢酸水、水、THFにて順次洗浄することにより、下記式(T6−1)、(T6−2)又は(T6−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物5.0gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T6−1)、(T6−2)、(T6−3)の順に69%、27%、4%であった。
(式(T6−1)及び(T6−2)中、Cp13は、式(T1−1)及び(T1−2)中のCpと同様のものを表し、式(T6−1)及び(T6−3)中、Cp14
を表す。)
〔製造例13〕
製造例1において使用した酢酸ナトリウムの量を1.4gに変えた以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−1)、(T1−2)及び(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物6.6gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に49%、24%、27%であった。
〔製造例14〕
製造例1において使用したナフトールASの量を1.1gに変えた以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.9gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に42%、56%、2%であった。
〔製造例15〕
製造例6において使用した3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの量を1.6gに変えた以外は製造例6と同様にして、上記式(T2−1)、(T2−2)又は(T2−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.8gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T2−1)、(T2−2)、(T2−3)の順に41%、54%、5%であった。
〔比較製造例1〕
製造例1において使用した酢酸ナトリウムの量を0.7gに変えた以外は製造例1と同様にして上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.5gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に45%、23%、32%であった。
〔比較製造例2〕
製造例1において使用した2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を2.4gに、ナフトールASの量を3.3gに変えた以外は製造例1と同様にして上記式(T1−1)、(T1−2)又は(T1−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物3.9gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T1−1)、(T1−2)、(T1−3)の順に48%、16%、36%であった。
〔比較製造例3〕
製造例6において使用した3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの量を5.7gに、2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を2.4gに変えた以外は製造例6と同様にして、上記式(T2−1)、(T2−2)又は(T2−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物4.1gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T2−1)、(T2−2)、(T2−3)の順に36%、12%、52%であった。
〔比較製造例4〕
製造例11において使用した黄色固体の量を2.8gに、3’−シクロヘキシルメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの量を4.8gに変えた以外は製造例11と同様にして、上記式(T5−1)、(T5−2)又は(T5−3)で表されるビスアゾ化合物の混合物3.8gを得た。
この混合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行い、それによりピーク面積比を算出したところ、(T5−1)、(T5−2)、(T5−3)の順に47%、15%、38%であった。
〔比較製造例5〕
ナフトールAS 13.2gをジメチルスルホキシド150mLに溶解し、ここに室温下、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩22.5gをジメチルスルホキシド1050mLに溶解した溶液を滴下し、18〜23℃にて2時間撹拌した。析出した固体を濾取し、ジメチルスルホキシト゛でふりかけ洗浄した後、室温下、ジメチルスルホキシド1050mLに溶解し、不溶物を濾過して除去した。得られた濾液に室温下、2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物7.2gをジメチルスルホキシト゛1050mLに溶解した溶液を滴下し、次いで、酢酸ナトリウム4.5gを水7.5mLに溶解した溶液を滴下した。18〜23℃にて2時間撹拌した後、析出した固体を濾取し、ジメチルスルホキシド、10重量%酢酸水、水、THFで順次洗浄後、乾燥して、上記式(T1−1)で表されるビスアゾ化合物を1.5g得た。
この化合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行なったところ、(T1−1)化合物のピークのみ検出された。
〔比較製造例6〕
製造例1において2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物の量を5.2gに変え、ナフトールASを使用せず、ジメチルスルホキシト゛780mLに溶解した以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−2)で表されるビスアゾ化合物6.1gを得た。
この化合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行なったところ、(T1−2)化合物のピークのみ検出された。
〔比較製造例7〕
製造例1において2−ヒドロキシ及び5−ヒドロキシ−7H−ベンズイミダゾ[2,1−a]ベンゾ[de]イソキノリン−7−オンの混合物を使用せず、ナフトールASの量を4.8gに変え、ジメチルスルホキシト゛600mLに溶解した以外は製造例1と同様にして、上記式(T1−3)で表されるビスアゾ化合物4.2gを得た。
この化合物について上記の方法により高速液体クロマトグラフィーで分析を行なったところ、(T1−3)化合物のピークのみ検出された。
[I−3.本発明に係るアゾ化合物を含有する電子写真感光体の作製]
以下、実施例1〜25及び比較実施例1〜11を用いて、本発明に係るアゾ化合物を特定の混合比で電荷発生物質に用いた電子写真感光体に関する実施例について説明する。
〔実施例1〕
・電荷発生層塗布液の調製
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部とフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)0.75部とを、1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解してバインダー溶液を調製した。
続いて製造例1で製造した混合物1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕して微粒化分散処理を行い、それをバインダー溶液に混合した。
そのバインダー溶液に、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンとの9:1の混合液13.5部をさらに混合した。以上の手順により、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液を調製した。
・電荷輸送層塗布液の調製
下記式(T18)で表される化合物35部と、下記式(T19)で表される化合物35部と、さらに下記式(T20)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部とを、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
・順積層型の電子写真感光体の作製
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを導電性支持体として用いた。この上に上記の電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布した。これを風乾し、電荷発生層を形成した。
この電荷発生層の上に、上記の電荷輸送層塗布液をアプリケーターで塗布し、室温(25℃)で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、感光体E1を得た。
・電荷輸送層の所望の波長の透過率の測定
この際に用いた電荷輸送層塗布液(感光体E1を製造するために用いられた電荷輸送層塗布液)を、石英ガラス上にアプリケーターで塗布し、室温(25℃)で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層のサンプルを形成した。
この電荷輸送層のサンプルの、波長405nmの光に対する透過率を測定するために、同等の石英ガラスをバックグラウンドとして、島津製作所製 分光光度計UV1650PCを用いて測定した。測定の結果、透過率は99.9%であった。
〔実施例2〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例2で製造された混合物を使用する以外は実施例1と同様にして、感光体E2を製造した。
〔実施例3〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例3で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E3を製造した。
〔実施例4〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例4で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E4を製造した。
〔実施例5〕
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例5で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E5を製造した。
〔実施例6〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例6で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E6を製造した。
〔実施例7〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例7で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E7を製造した。
〔実施例8〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例8で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E8を製造した。
〔実施例9〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例9で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E9を製造した。
〔実施例10〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例10で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E10を製造した。
〔実施例11〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例11で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E11を製造した。
〔実施例12〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例12で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E12を製造した。
〔実施例13〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例13で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P1を製造した。
〔実施例14〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例14で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P2を製造した。
〔実施例15〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例15で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P3を製造した。
〔実施例16〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例5で製造された化合物(T1−1)1.425部と、比較製造例6で製造された化合物(T1−2)0.075部と、の混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E13を製造した。
〔比較実施例1〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R1を製造した。
〔比較実施例2〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例2で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R2を製造した。
〔比較実施例3〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例3で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R3を製造した。
〔比較実施例4〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例4で製造された混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R4を製造した。
〔比較実施例5〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例5で製造された化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R5を製造した。
〔比較実施例6〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例6で製造された化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R6を製造した。
〔比較実施例7〕
実施例1において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例7で製造された化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体R7を製造した。
〔実施例17〕
・下引き層の作製
平均一次粒径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して表面処理酸化チタンを得た。得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部とを混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用いて、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
この酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒と、特開平4−31870号公報の実施例に記載されたε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた。
その後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、さらに孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックスLC)により濾過した。
以上の手順によって、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用分散液Aを得た。
この下引き層形成用分散液Aを、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ375.8mm、厚さ0.75mm)に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
・電荷発生層の作製
ポリビニルブチラール(電気化学工業製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解してバインダー溶液を調製した。
続いて、製造例1で製造した混合物1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕して微粒化分散処理を行ない、それをバインダー液に混合した。さらにそのバインダー液に、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンとの9:1(重量比)混合液13.5部を混合した。以上の手順により、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層塗布液を調製した。
この電荷発生層塗布液を使用して、上記下引き層の上に、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m)となるように電荷発生層を作製した。
・電荷輸送層の作製
前記式(T18)で表される化合物35部、前記式(T19)で表される化合物35部、下記式(T21)の構造を有する酸化防止剤8部、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越化学工業製 KF96)0.05部、前記式(T20)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=51:49、粘度平均分子量30,000)100部を、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
上記の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように電荷輸送層塗布液を浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体E14を得た。
〔実施例18〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物の代わりに、製造例4で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体E15を製造した。
〔実施例19〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物の代わりに、製造例6で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体E16を製造した。
〔実施例20〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物の代わりに、製造例8で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体E17を製造した。
〔実施例21〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物の代わりに、製造例9で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体E18を製造した。
〔実施例22〕
実施例17において使用された電荷輸送層塗布液の代わりに下記電荷輸送層塗布液を利用する以外は、実施例17と同様にして、感光体E19を製造した。また、実施例1と同様の方法により、この電荷輸送層塗布液を用いて、電荷輸送層のサンプルを作製し、波長480nmの光に対する透過率を測定したところ、98.0%であった。
・電荷輸送層塗布液
下記式(T22)で表される化合物10部と、下記式(T23)で表される化合物60部と、下記式(T24)で表される繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)50部と、下記式(T25)で表される繰り返し構造を有するポリアリレート樹脂25部(粘度平均分子量45,000)と、下記式(T26)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=9:1、粘度平均分子量35,000)25部とを、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
〔実施例23〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例13で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体P4を製造した。
〔実施例24〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例14で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体P5を製造した。
〔実施例25〕
実施例22において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、製造例13で製造された混合物を使用する以外は、実施例22と同様にして、感光体P6を製造した。
〔比較実施例8〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体R8を製造した。
〔比較実施例9〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例3で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体R9を製造した。
〔比較実施例10〕
実施例17において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例4で製造された混合物を使用する以外は、実施例17と同様にして、感光体R10を製造した。
〔比較実施例11〕
実施例22において、製造例1で製造された混合物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された混合物を使用する以外は、実施例22と同様にして、感光体R11を製造した。
[I−4.製造した電子写真感光体の評価]
〔電気特性評価1−1〕
実施例1〜15及び比較実施例1〜4で得られた各感光体を、感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
各感光体を外径80mmのアルミニウム製ドラムに巻き付け、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム蒸着層とを電気的に導通させ、これを回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで波長405nmの単色光としたものを光源に用いて、露光によって表面電位が−350Vとなる時の露光量[μJ/cm](以下、適宜「感度」という)を測定した。
これらの測定結果を表7−1に示す。なお、感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方が感度が高く、より優れる。
実施例1〜15の感光体は、比較実施例1〜4の感光体と比べ、いずれも波長405nmの単色光に対し、感度が高く、実用可能な感光体であり、画像形成装置に、より適した感光体であった。
〔電気特性評価1−2〕
電気特性評価1−1と同様の方法を用いて、実施例1、4、11、14及び16並びに比較実施例2、4、5、6及び7で得られた感光体について、初期の表面電位が−700Vとなるようにスコロトロン帯電器のグリッドに印加する電圧(グリッド印加電圧)を調整し、その値[−V]を比較した。また〔電気特性評価1−1〕で記載した方法と同様にして感度を比較した。これらの結果を表7−2に示す。グリッド印加電圧の数値が小さい方が、帯電性が良好で、より優れた感光体と言える。
実施例1、4、11、14及び16の感光体は、比較実施例2、4、5及び7の感光体と比べ、いずれもグリッド印加電圧が小さく、帯電性が良好であった。特に比較実施例5及び7の感光体は帯電性に劣る。比較実施例6の感光体は実施例1,4、11、14及び16の感光体と比べ、グリッド印加電圧は若干小さく帯電性は良好であるものの、感度が非常に低く、感光体としてのトータルの電気特性を比較した場合、実施例1、4、11、14及び16の感光体の方が、比較実施例6の感光体よりもバランスが取れており優れている。
〔電気特性評価2〕
実施例17〜25及び比較実施例8〜11で得られた感光体について、光源として、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで波長480nmの単色光としたものを用いたこと以外は、上記の〔電気特性評価1−1〕で記載した方法と同様にして、感度を測定した。
これらの測定結果を表8に示す。なお、感度は、値の小さい方が電気特性としてより優れる。
波長480nmの光で露光をした場合、実施例17〜21、23及び24の感光体は、比較実施例8〜10の感光体と比べ、それぞれ感度が高く良好であり、好適な感光体であり、特に、波長480nm露光の画像形成装置に用いるのに、非常に適していた。また、電荷輸送物質の種類を変えた実施例22及び実施例25の感光体も、比較実施例11の感光体と比べて感度が高く、使用に適した感光体であった。
上記した実施例を検討すると、以下の点が見出された。即ち、アゾ化合物の混合比が本発明に係る特定の範囲内である場合には、感度が良好で、帯電性にも優れた、好適な感光体であった。
従来の感光体は、青色の光を露光光として用いることができなかったため、従来の感光体を用いた画像形成装置においては、高解像度、高階調性を有する画像と、欠陥の少ない画像とを同時に達成した高品質の画像を形成することができなかった。しかし、本発明の感光体は、青色(紫色)の光を露光光として用いても、優れた感度及び帯電性を示した。したがって、本発明の感光体を用いた画像形成装置によると、高解像度、高階調性に代表される高品質を実現でき、さらに高解像度な露光に対して忠実に現像された欠陥の少ない画像を形成することができるという優れた効果が得られる。
[II.画像形成した場合の画質評価に関する実施例等]
[II−1.トナーの用意]
〔体積平均径(Mv)の測定方法と定義〕
1μm未満の体積平均径(Mv)を有する粒子の体積平均径(Mv)は、日機装株式会社製、型式:Microtrac Nanotrac 150(以下、「ナノトラック」と略記する)を用いて、ナノトラックの取り扱い説明書に従い、同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2.−019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水を分散媒に用い、それぞれ、下記の条件で又は下記の条件を入力し、取り扱い説明書に記載された方法で測定した。
ワックス分散液及び重合体一次粒子分散液については、以下の条件を用いた。
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :透過
・形状 :真球形
・密度 :1.04
顔料プレミックス液及び着色剤分散液については、以下の条件を用いた。
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :吸収
・形状 :非球形
・密度 :1.00
〔体積中位径(Dv50)の測定方法と定義〕
外添工程を経て、最終的に得られたトナーの測定前処理として次のようにした。内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20重量%DBS水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20A)を0.15g添加した。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れた。次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌した。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らないようにした。
続いて、分散媒アイソトンII(ベックマンコールター社製)を30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し全体を目視で均一な溶液とした。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させた。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み均一な分散液となるようにした。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を「トナー分散液」とした。
なお、トナー母粒子の製造工程中の粒径の測定については、凝集中のスラリーを63μmのメッシュで濾過したろ液を「スラリー液」とした。
粒子の体積中位径(Dv50)はベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略記する)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上記の「トナー分散液」又は「スラリー液」を、分散質濃度0.03重量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定した。測定粒径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)とした。
〔粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)の測定方法と定義〕
外添工程を経たトナーの測定前処理として次の様にした。内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20重量%DBS水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20A)を0.15g添加した。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れた。次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌した。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にした。
続いて、分散媒アイソトンIIを30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し、全体を目視で均一な溶液とした。次に、長さ31mm直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させた。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み、均一な分散液となるようにした。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液をトナー分散液とした。
粒径2.00μm以上、3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)は、マルチサイザー(アパーチャー径100μm)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上記の「トナー分散液」又は「スラリー液」を、分散質濃度0.03重量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定した。
下限の粒径2.00μmは本測定装置マルチサイザーの検出限界であり、上限の粒径3.56μmは本測定装置マルチサイザーにおけるチャンネルの規定値である。本発明では、この粒径2.00μm以上、3.56μm以下の領域を微粉領域と認定した。
測定粒径範囲は、2.00μmから64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの個数基準での統計値をもとに、2.00μmから3.56μmまでの粒径成分の割合を個数基準で算出して「Dns」とした。なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定した。
〔平均円形度の測定方法と定義〕
「平均円形度」は、以下のように測定し、以下のように定義した。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720個/μL以上7140個/μL以下の範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA2100)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。以下の実施例等では、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定した。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
なお以下は、上記装置で測定され、上記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000個以上2500個以下を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
〔個数変動係数の測定方法と定義〕
本発明における「個数変動係数」は、以下のように定義される。
[個数変動係数]=100×[個数基準の粒子分布の標準偏差]/[個数平均粒径]
個数基準の粒子分布の標準偏差、及び個数平均粒径は、体積中位径(Dv50)を測定する方法に準じて、マルチサイザーIIIを用いて測定した。測定粒子範囲は2.00μmから64.00μmまでとし、この範囲を対数メモリで等間隔となるように256分割に離散化し、それらの個数基準での統計値をもとに、個数基準の粒子分布の標準偏差と個数平均粒径を求め、上記式から個数変動係数を算出した。なお、トナーがトナー母粒子の表面に外添剤を固着又は付着させたものである場合は、それを測定試料として測定した。
〔電気伝導度の測定方法〕
電気伝導度の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて、取扱説明書通り常法に従って行った。
〔融点ピーク温度、融解ピーク半値幅、結晶化温度、結晶化ピーク半値幅の測定方法〕
セイコーインスツルメンツ社製、型式:SSC5200を用い、同社の取り扱い説明書に記載された方法で、10℃から110℃まで、10℃/分の速度で昇温させた際の吸熱曲線より、融点ピーク温度、融解ピーク半値幅を測定し、続いて、110℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた際の発熱曲線より、結晶化温度、結晶化ピーク半値幅を測定した。
〔固形分濃度の測定方法〕
ケット科学研究所社製 固形分濃度測定機INFRARED MOISTURE DETERMINATION BALANCE 型式FD−100を用い、固形分を含んだ試料1.00gを天秤上に精秤し、ヒーター温度300℃、加熱時間90分の条件で固形分濃度を測定した。
〔帯電量分布(帯電量の標準偏差)の測定方法〕
トナー0.8g/キャリア(パウダーテック社製フェライトキャリア:F150)19.2gをガラス製のサンプル瓶に入れ、レシプロシェーカーNR−1(タイテック株式会社製)を用い250rpmで30分間撹拌した。撹拌したトナー/キャリア混合物をE−Spart帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製)を用いて帯電量分布測定を行った。得られたデータから個々の粒子についてその帯電量を粒子直径で除した値(−16.197C/μm〜+16.197C/μmの範囲を0.2551C/μm毎に128分割に離散化)を求め、3000個の粒子測定結果の標準偏差を求めて、帯電量の標準偏差とした。
〔トナー製造例1〕
(ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1の調製)
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、熱特性:融点ピーク温度82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化温度66℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A)(以下、「20%DBS水溶液」と略記する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。
次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒径を測定し体積平均径(Mv)が250nmになるまで分散して、ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1(エマルション固形分濃度=30.2重量%)を作製した。
(重合体一次粒子分散液A1の調製)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、上記ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1 35.6部(712.12g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、上記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時点を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8重量%過酸化水素水溶液 15.5部
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は280nmであり、固形分濃度は21.1重量%であった。
(重合体一次粒子分散液A2の調製)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、20重量%DBS水溶液1.0部、脱塩水312部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8重量%過酸化水素水溶液3.2部、8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。これらを一括添加した時から5分後の時点を「重合開始」とする。
その後、下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を、重合開始から5時間かけて、また、下記の「開始剤水溶液」を重合開始から6時間かけて添加し、その後、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 0.5部
トリクロロブロモメタン 0.5部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.0部
[開始剤水溶液]
8重量%過酸化水素水溶液 18.9部
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
(着色剤分散液Aの調製)
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cmのファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。ナノトラックで測定した顔料プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積平均径(Mv)は90μmであった。
上記顔料プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm)を用いた。ステータの有効内容積は0.5Lであり、メデイアの充填容積は0.35Lとしたので、メディア充填率は70重量%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が11m/秒)として、供給口より前記顔料プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散液Aを得た。着色剤分散液Aをナノトラックで測定した体積平均径(Mv)は150nmであり、固形分濃度は24.2重量%であった。
(トナー母粒子Aの製造)
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程を実施することによりトナー母粒子Aを製造した。
重合体一次粒子分散液A1 固形分として95部 (固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液A2 固形分として5部
着色剤分散液A 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.2部
20%DBS水溶液 円形化工程では、固形分として6部
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃で、250rpmで攪拌を続けながら硫酸第一鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま、0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を54.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.32μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて81℃に昇温して、平均円形度が0.943になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリーを得た。
○洗浄工程
得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を、攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
○乾燥工程
ここで得られた固形物をステンレス製バットに高さ20mmとなる様に敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子Aを得た。
(トナーAの製造)
○外添工程
得られたトナー母粒子A250gに、外添剤としてクラリアント社製H2000シリカ1.55gとテイカ社製SMT150IBチタニア微粉末0.62gを混ぜて、サンプルミル(協立理工社製)で、6000rpmで1分間混合し、150メッシュで篩別してトナーAを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーAのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.54μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は3.83%であり、平均円形度は0.943であり、個数変動係数は18.6%であった。
〔トナー製造例2〕
(トナー母粒子Bの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Bを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら、第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加し、その後、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を55.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.86μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温55.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて84℃に昇温して、平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
〔トナーBの製造〕
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.41gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.56gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーBを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーBのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.97μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.53%であり、平均円形度は0.943であり、個数変動係数は18.4%であった。
〔トナー製造例3〕
(トナー母粒子Cの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Cを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温7℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.72μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を150rpm(攪拌羽根先端の周速1.56m/秒、凝集工程回転数に対して40%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
(トナーCの製造)
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーCを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーCのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.75μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は1.83%であり、平均円形度は0.942であり、個数変動係数は18.7%であった。
〔トナー製造例4〕
(トナー母粒子Dの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Dを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を54.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.34μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて81℃に昇温して、平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後、20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
(トナーDの製造)
その後、トナー製造例1における「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーDを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーDのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.48μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は4.51%であり、平均円形度は0.943であり、個数変動係数は20.4%であった。
〔トナー製造例5〕
(トナー母粒子Eの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Eを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を55.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.86μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温55.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて84℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
(トナーEの製造)
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.41gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.56gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーEを得た。
○分析工程
ここで得られた現像用トナーEのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は5.93μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は3.62%であり、平均円形度は0.942であり、個数変動係数は20.1%であった。
〔トナー製造例6〕
(トナー母粒子Fの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Fを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分かけて添加してから、着色剤分散液Aを5分かけて添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8分かけて滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.76μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分かけて添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を220rpm(攪拌羽根先端の周速2.28m/秒、凝集工程回転数に対して12%減の攪拌速度)に落としてから、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.941になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却しスラリーを得た。
(トナーFの製造)
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーFを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーFのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.77μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.48%であり、平均円形度は0.942であり、個数変動係数は21.1%であった。
〔トナー比較製造例1〕
(トナー母粒子Gの製造)
「トナー母粒子Aの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例1の「トナー母粒子Aの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Gを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温7℃で5分間均一に混合した。続いて内温21℃に保持し、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5重量%水溶液をFeSO・7HOとして0.52部を5分で一括添加してから、着色剤分散液Aを5分で一括添加し、内温7℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5重量%硫酸アルミニウム水溶液を8秒で一括添加した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、回転数250rpmのまま内温を57.0℃に昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.85μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温57.0℃、回転数250rpmのまま、重合体一次粒子分散液A2を3分で一括添加してそのまま60分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を250rpm(攪拌羽根先端の周速2.59m/秒、凝集工程回転数と同じ攪拌速度)のまま、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて87℃に昇温して平均円形度が0.942になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリーを得た。
(トナーGの製造)
その後、外添剤としてH2000シリカの量を1.25gに変更し、SMT150IBチタニア微粉末の量を0.50gに変更した以外は、「トナーAの製造」と同じ外添工程の操作によりトナーGを得た。
○分析工程
ここで得られた現像用トナーGのマルチサイザーを用いて測定した体積中位径(Dv50)は6.79μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は4.52%であり、平均円形度は0.943であり、個数変動係数は24.5%であった。
〔トナー製造例7〕
(ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1の調製)
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、熱特性:融点ピーク温度82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化温度66℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。
次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒径を測定し体積平均径(Mv)が250nmになるまで分散して、ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1(エマルション固形分濃度=30.2重量%)を作製した。
(重合体一次粒子分散液H1の調製)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、上記ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1 35.6部(712.12g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、上記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時点を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8重量%過酸化水素水溶液 15.5部
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は265nmであり、固形分濃度は22.3重量%であった。
(シリコーンワックス分散液H2の調製)
アルキル変性シリコーンワックス(熱特性:融点ピーク温度77℃、融解熱量97J/g、融解ピーク半値幅10.9℃、結晶化温度61℃、結晶化ピーク半値幅17.0℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で10分間攪拌した。次いでこの分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで測定しながら体積平均径(Mv)が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液H2(エマルション固形分濃度=27.3%)を作製した。
(重合体一次粒子分散液H2の調製)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液H2を23.3部(466g)、20%DBS水溶液1.0部、脱塩水324部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。これらを一括添加した時から5分後の時点を「重合開始」とする。
下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を、重合開始から5時間かけて、また、下記の「開始剤水溶液」を重合開始から6時間かけて添加し、その後、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.0部
[開始剤水溶液]
8重量%過酸化水素水溶液 18.9部
8重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
〔着色剤分散液Hの調製〕
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cmのファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。ナノトラックで測定した顔料プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積平均径(Mv)は90μmであった。
上記顔料プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径は75mmφ、セパレータの径が60mmφ、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm)を用いた。ステータの有効内容積は0.5Lであり、メデイアの充填容積は0.35Lとしたので、メディア充填率は70重量%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が11m/秒)として、供給口より前記顔料プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散液Hを得た。着色剤分散液Hをナノトラックで測定した体積平均径(Mv)は150nmであり、固形分濃度は24.2重量%であった。
(トナー母粒子Hの製造)
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程を実施することによりトナー母粒子Hを製造した。
重合体一次粒子分散液H1 固形分として90部 (固形分として958.9g)
重合体一次粒子分散液H2 固形分として10部
着色剤分散液H 着色剤固形分として4.4部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.15部
20%DBS水溶液 円形化工程では、固形分として6部
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液を仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて、硫酸カリウムの5重量%水溶液を、KSOとして0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を48.0℃に67分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで、30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、54.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.15μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は以下の通りである。
(イ)攪拌容器の直径(所謂一般的な円筒形として):208mm
(ロ)攪拌容器の高さ:355mm
(ハ)攪拌羽根先端の周速:280rpm、すなわち2.78m/秒。
(ニ)攪拌羽根の形状:ダブルヘリカル翼(直径190mm、高さ270mm、幅20mm)
(ホ)攪拌容器内の羽根の位置: 容器の底から5mm上に配置。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.34μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部との混合水溶液を30分かけて添加しながら83℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ88℃まで昇温して、3.5時間かけて平均円形度が0.939になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.33μm、平均円形度0.937であった。
○洗浄工程
得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を、攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
○乾燥工程
ここで得られた固形物をステンレス製バットに高さ20mmとなるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子Hを得た。
(トナーHの製造)
○外添工程
得られたトナー母粒子H500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーHを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーHのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.26μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は5.87%であり、平均円形度は0.948であり、個数変動係数は18.0%であった。
〔トナー製造例8〕
(トナー母粒子Iの製造)
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Iを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で5分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5重量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水100部を26分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を52.0℃に64分かけて昇温し(0.5℃/分)した。次いで30分かけて1℃昇温した後(0.03℃/分)、110分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.93μmまで成長させた。この時の攪拌条件はトナー製造例7と同じとした。
○シェル被覆工程
その後、内温53.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま90分保持した。このとき、粒子のDv50は6.23μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部の混合水溶液を30分かけて添加しながら85℃に昇温し、その後、130分かけて92℃まで昇温して、平均円形度が0.943になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は6.17μm、平均円形度0.945であった。洗浄工程及び乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子I500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ7.5gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.2gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーIを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーIのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.16μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は2.79%であり、平均円形度は0.946であり、個数変動係数は19.2%であった。
〔トナー製造例9〕
(トナー母粒子Jの製造)
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Jを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5重量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水0.5部の26分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を52.0℃に64分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで、30分かけて1℃昇温した後(0.03℃/分)、130分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.60μmまで成長させた。この時の攪拌条件はトナー製造例7と同じとした。
○シェル被覆工程
その後、内温53.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が6.93μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部との混合水溶液を30分かけて添加しながら90℃に昇温し、その後、60分かけて97℃まで昇温して、平均円形度が0.945になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は6.93μm、平均円形度0.945であった。洗浄工程及び乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子J500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ6.25gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.0gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーJを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーJのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.97μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は1.85%であり、平均円形度は0.946であり、個数変動係数は19.5%であった。
〔トナー比較製造例2〕
(トナー母粒子Kの製造)
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Kを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5重量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を34.0℃に40分かけて昇温した(0.6℃/分)。次いで20分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し3.81μmまで成長させた。
○シェル被覆工程
その後、内温34.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて添加してそのまま90分保持した。
○円形化工程
続いて、回転数を280rpm(凝集工程回転数と同じ攪拌速度)のまま、20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加し、その後30分かけて76℃に昇温して平均円形度が0.962になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。
〔トナーKの製造〕
その後、トナー製造例7のトナー母粒子Hを100部に、上記トナー母粒子Kを1部混合して、このトナー母粒子混合物K500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーKを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーKのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.31μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は7.22%であり、平均円形度は0.949であり、個数変動係数は19.2%であった。
〔トナー比較製造例3〕
(トナー母粒子Lの製造)
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Lを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、310rpmで攪拌させて、硫酸カリウムの5重量%水溶液をKSOとして0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数310rpmのまま内温を48.0℃に67分かけて昇温(0.5℃/分)した。次いで30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、53.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.08μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は、以下の(ハ)以外はトナー製造例7と同様にして行った。
(ハ)攪拌羽根先端の周速:310rpm、すなわち3.08m/秒。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数310rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.19μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部との混合水溶液を30分かけて添加しながら83℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ90℃まで昇温して、2.5時間かけて平均円形度が0.939になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.18μm、平均円形度0.940であった。洗浄工程及び乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子L500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ8.75gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.4gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーLを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーLのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.18μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は9.94%であり、平均円形度は0.940であり、個数変動係数は20.4%であった。
〔トナー比較製造例4〕
(トナー母粒子Mの製造)
「トナー母粒子Hの製造」の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程において、「コア材凝集工程」、「シェル被覆工程」及び「円形化工程」を下記のように変更したこと以外は全てトナー製造例7の「トナー母粒子Hの製造」と同様の操作によりトナー母粒子Mを得た。
○コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で10分間均一に混合した。続いて内温10℃で、310rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5重量%水溶液をKSOとして0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。
その後、脱塩水100部を30分かけて連続添加してから、回転数310rpmのまま内温を52.0℃に56分かけて昇温(0.8℃/分)した。次いで、30分毎に1℃昇温した後(0.03℃/分)、54.0℃で保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.96μmまで成長させた。
この時の攪拌条件は、以下の(ハ)以外はトナー製造例7と同様にして行った。
(ハ)攪拌羽根先端の周速:310rpm、すなわち3.08m/秒。
○シェル被覆工程
その後、内温54.0℃、回転数310rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま60分保持した。このとき、粒子のDv50が5.94μmであった。
○円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部との混合水溶液を30分かけて添加しながら88℃に昇温し、その後、30分毎に1℃昇温させ90℃まで昇温して、2時間かけて平均円形度が0.940になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は5.88μm、平均円形度0.943であった。洗浄工程及び乾燥工程はトナー製造例7と同様の方法で行った。
○外添工程
得られたトナー母粒子M500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ7.5gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.2gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーMを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーMのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は5.92μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は5.22%であり、平均円形度は0.945であり、個数変動係数は21.2%であった。
〔トナー比較製造例5〕
トナー製造例9のトナー母粒子J100部に、トナー母粒子Kを3部混合して、このトナー母粒子混合物500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ6.25gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で、3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.0gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別してトナーNを得た。
○分析工程
ここで得られたトナーNのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.88μmであり、「粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)」は9.08%であり、平均円形度は0.952であり、個数変動係数は25.6%であった。
[実写評価]
A3印刷対応である市販のタンデム型LEDカラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−E((株)沖データ社製)の露光部を小型スポット照射型青色LED(日進電子製、B3MP−8:470nm)が感光体に照射できるように改造した。この改造したマシンのブラックドラムカートリッジ、及び、ブラックトナーカートリッジに、前記感光体E14〜E19、感光体P4〜P6及び比較感光体R8〜R11に用いたアルミニウムシリンダーの全長を、当該プリンターに適合する全長に変えた以外は、同様にして製造した感光体及びトナーを、それぞれ搭載し、該カートリッジを上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様:
4連タンデム カラー36ppm、モノクロ40ppm
接触ローラー帯電(直流電圧印加)
除電光あり
この画像形成装置の小型スポット照射型青色LEDに、ストロボ照明電源LPS−203Kを接続し、直径8mmの黒点を8mm間隔で点を書かせ画像を形成させた。
この得られた点画像を拡大し、現像された点画像の輪郭の鮮明さと点画像周辺のトナーの飛び散り度合い総合して画質を5段階で評価した。結果を表9−1及び表9−2に示す。
なお、点画像の輪郭の鮮明さと点画像周辺の飛び散り度合いによる画質の総合評価の基準は以下の通りとした。
1:トナーの飛散なく点の輪郭が鮮明で良好な点画像が得られている
2:トナーの飛散なく良好な点画像が得られている。
3:若干トナーの飛散があるが良好な点画像が得られている。
4:トナーの飛散があり、点画像の輪郭の鮮明さが低い。
5:トナーの飛散が多く、点画像の輪郭に凹凸がある。
なお、トナーL、Nについては現像槽よりトナーが噴き出し実写評価が行えなかった。
上記結果から、本発明の感光体とトナーを用い、波長380nm以上500nmの単色光を用いた場合に、特に静電潜像に忠実で高画質な画像が得られることが明らかとなった。
本発明の感光体は、380nm以上500nm以下の波長を有する光源に対し、感度が高く、高画質であるので、それを搭載した画像形成装置と電子写真感光体カートリッジは、電子写真方式が用いられる任意の分野において用いることができ、特に、プリンター、ファクシミリ、複写機等に好適に用いることができる。
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙、媒体)

Claims (14)

  1. 導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された感光層とを有し、波長380nm以上500nm以下の単色光により露光されることにより静電潜像を形成する電子写真感光体であって、
    下記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表される複数種のアゾ化合物を該感光層に含み、
    高速液体クロマトグラフィーにおいて、下記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(3)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比が30%以下である
    ことを特徴とする電子写真感光体。
    (式(1)、(2)及び(3)中、
    Ar及びArは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Ar及びArは互いに架橋していてもよい。
    Xは原子数3以上25以下の連結基を表し、
    は0又は1の整数を表し、
    Cpは下記式(4)で表される基を表し、
    Cpは下記式(5)で表される基を表す。)
    (式(4)中、
    Z1は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は含窒素複素環基を表し、
    は水素原子又は置換基を表す。)
    (式(5)中、
    Z2は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表し、
    はハロゲン原子;水素原子;ニトリル基;置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、
    は0又は1の整数を表す。)
  2. 前記式(1)と式(2)と式(3)とにおいて、Cpが同じであり、Cpが同じである
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 高速液体クロマトグラフィーにおいて、前記式(1)、(2)及び(3)で表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、各アゾ化合物のピーク面積の比が、大きい方から順に、前記式(1)で表されるアゾ化合物、前記式(2)で表されるアゾ化合物、及び、前記式(3)で表されるアゾ化合物となっている
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 高速液体クロマトグラフィーにおいて、前記式(1)、(2)及び(3)のいずれかで表されるアゾ化合物の総ピーク面積に対する、式(1)で表されるアゾ化合物のピーク面積の比が50%以上である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  5. 該導電性支持体と該感光層との間に金属酸化物粒子を含有する下引き層を有し、
    該金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒径が0.3μm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した該電子写真感光体に対し波長380nm以上500nm以下の単色光により露光を行い、静電潜像を形成する露光手段と、
    トナーを有し、形成された静電潜像を該トナーで現像する現像手段と、
    該トナーを被転写体に転写する転写手段とを備える
    ことを特徴とする画像形成装置。
  7. 該トナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が0.940以上1.000以下である
    ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
  8. 該トナーが、下記(i)〜(iii)の全てを満足する
    ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
    (i)体積中位径(Dv50)が4.0μm以上7.0μm以下である。
    (ii)平均円形度が0.93以上である。
    (iii)該トナーの体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50)を満たす。
  9. 該トナーにおいて、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.110EXP(19.9/Dv50)を満たす
    ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 該トナーにおいて、体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、0.0517EXP(22.4/Dv50)≦Dnsを満たす
    ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 該トナーが水系媒体中で製造されたトナーである
    ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  12. 該トナーが樹脂被覆層を有する
    ことを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  13. 少なくとも請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し波長380nm以上500nm以下の単色光により露光を行ない静電潜像を形成する露光手段、トナーを有し、形成された静電潜像をトナーで現像する現像手段、及び、該トナーを被転写体に転写する転写手段を備える画像形成装置に対して該電子写真感光体を着脱可能に支持するカートリッジケースとを備えた
    ことを特徴とするカートリッジ。
  14. 該トナーが、下記(i)〜(iii)の全てを満足する
    ことを特徴とする請求項13記載のカートリッジ。
    (i)体積中位径(Dv50)が4.0μm以上7.0μm以下である。
    (ii)平均円形度が0.93以上である。
    (iii)該トナーの体積中位径(Dv50)と粒径2.00μm以上3.56μm以下のトナーの個数%(Dns)との関係が、Dns≦0.233EXP(17.3/Dv50)を満たす。
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