以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜実施することができる。
<アリールアミン組成物>
本発明の第一の要旨の電子写真感光体に用いられるアリールアミン組成物(以下、「組成物A」と略記する)は、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を含有し、かつ、各々の化合物の重量含有比率(2)/(1)が、0.01%ないし10%であることを特徴とするアリールアミン組成物である。
[式(1)、(2)中、Ar
a1ないしAr
a3は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリール基を表す。但し、Ar
a1とAr
a2は異なり、かつAr
a1とAr
a3は異なる。]
また、本発明の第二の要旨の電子写真感光体に用いられるアリールアミン組成物(以下、「組成物B」と略記する)は、一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)で表される化合物を含有し、かつ、各々の化合物の重量含有比率(4)/(3)が、0.01%ないし5%であることを特徴とするアリールアミン組成物である。
[式(3)、(4)中、Ar
b1は「炭素数17以下の置換基」を有するアリール基をあらわし、Ar
b4は置換基を有さないアリール基を表し、Ar
b2とAr
b3は何れも、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリール基を表す。]
また、本発明の第三の要旨の電子写真感光体に用いられるアリールアミン組成物(以下、「組成物C」と略記する)は、一般式(5)で表される化合物及び一般式(6)で表される化合物を含有し、かつ、各々の化合物の重量含有比率(6)/(5)が、0.01%ないし5%であることを特徴とするアリールアミン組成物である。
[式(5)、(6)中、Xは2価の連結基を表し、Ar
c1は、「炭素数17以下の置換基」を有するアリール基をあらわし、Ar
c4は、置換基を有さないアリール基を表し、Ar
c2は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリール基を表し、Ar
c3は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリーレン基を表す。]
また、本発明の第四の要旨の電子写真感光体に用いられるアリールアミン組成物(以下、「組成物D」と略記する)は、一般式(7)で表される化合物及び一般式(8)で表される化合物を含有し、かつ、各々の化合物の重量含有比率(8)/(7)が、0.01%ないし5%であることを特徴とするアリールアミン組成物である。
[式(7)、(8)中、Ar
d1は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリーレン基を表し、Ar
d2とAr
d3は何れも、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリール基を表す。R
d2は水素原子を表し、R
d1は有機不飽和基を表す。但し、−Ar
d3と−Ar
d1−R
d2は異なる。]
以下、具体的に、組成物Aないし組成物D、及び上記一般式(1)ないし一般式(8)の化合物について説明する。
該組成物A、B、C、Dは何れも、感光体の電荷輸送材として、そのまま使用されてもよいし、感光体の電荷輸送材の原料として使用されてもよい。組成物Aは、感光体の電荷輸送材の原料として使用されることが好ましく、組成物B、C及びDは、感光体の電荷輸送材として使用されることが好ましい。
一般式(1)ないし一般式(8)において、
Ara1ないしAra3、及び、Arb2ないしArb3、及び、Arc2、及び、Ard2ないしArd3は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリール基を表す。
また、Arb1及びArc1は、「炭素数17以下の置換基」を有するアリール基を表す。 また、Arb4及びArc4は、置換基を有さないアリール基を表す。
また、Xは2価の連結基を表す。
また、Arc3及びArd1は、「炭素数17以下の置換基」を有してもよいアリーレン基を表す。
また、Rd2は水素原子を表し、Rd1は有機不飽和基を表す。
但し、Ara1とAra2は互いに異なり、かつAra1とAra3は互いに異なり、「−Ard3」と「−Ard1−Rd2」は互いに異なる。
Ara1ないしAra3、及び、Arb1ないしArb3、及び、Arc1ないしArc2は、置換基の炭素数も含めた全ての炭素数が大きくなると、化学的に不安定になりやすいので、具体的には、置換基の炭素数も含めた全ての炭素数は16以下が好ましく、14以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、中でも特に好ましくは、フェニル基又はナフチル基である。
Arc3は、置換基の炭素数も含めた全ての炭素数が大きくなり過ぎると化学的に不安定になりやすいので、置換基の炭素数も含めた全ての炭素数として16以下が好ましく、14以下がより好ましく、10以下が特に好ましい。中でも特に好ましくは、フェニレン基又はナフチレン基であり、更に好ましくは、p−フェニレン基又は1,4−ナフチレン基であり、最も好ましくは、p−フェニレン基である。
Ara1ないしAra3、及び、Arb2ないしArb3、及び、Arc2が有してもよい「炭素数17以下の置換基」としては、炭素数17以下のアルキル基、炭素数17以下のアルコキシ基、炭素数17以下のアリール基等が好ましい。特に好ましくは、炭素数10以下のアルキル基若しくはアリール基であり、更に好ましくは、炭素数6以下のアルキル基若しくはアリール基であり、更に好ましくは、炭素数2以下のアルキル基であり、具体的にはメチル基が特に好ましい。置換位置としては特に限定はないが、窒素原子の置換している炭素を1位とすると、偶数位の炭素に置換していることが好ましく、4位の炭素に置換していることがより好ましい。これら置換基は、互いに結合して、芳香環でない環構造を形成していてもよい。
Arb2ないしArb3は、少なくともどちらか1つが有機不飽和基を有することが好ましい。該有機不飽和基としては特に限定はないが、置換基を有してもよいビニル基又はヒドラゾン基が好ましく、下記一般式(9)又は(10)で表される構造が特に好ましい。置換位置としては、窒素原子の置換している炭素を1位とすると、偶数位の炭素に置換していることが好ましく、4位の炭素に置換していることが特に好ましい。
[一般式(9)中、R
1ないしR
5は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数15以下の有機基を表し。n1は0又は1を示す]
一般式(9)中、R1ないしR5は、水素原子又は「置換基を有してもよい炭素数15以下のアルキル基又はアリール基」が好ましく、R4ないしR5は、水素原子又は「炭素数10以下のアルキル基若しくはアリール基」がより好ましく、水素原子又は「炭素数6以下のアルキル基若しくはアリール基」が特に好ましい。ここで、上記炭素数には置換基の炭素数を含む。また、R4又はR5の少なくとも一方は、フェニル基であることが好ましい。ここで、R1ないしR5が有していてもよい置換基としては、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアリール基等が好ましく、炭素数2以下のアルキル基が特に好ましい。n1は0又は1であるが、1である場合は、R5が水素原子であることが好ましい。
[一般式(10)中、R
6ないしR
10は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数15以下の有機基を表し。n1は0又は1を示す]
一般式(10)中、R6ないしR10は、水素原子又は「置換基を有してもよい炭素数15以下のアルキル基又はアリール基」が好ましく、水素原子又は「炭素数10以下のアルキル基若しくはアリール基」がより好ましく、水素原子又は「炭素数6以下のアルキル基若しくはアリール基」が特に好ましい。ここで、上記炭素数には置換基の炭素数を含む。また、R9又はR10の少なくとも一方はフェニル基であることが好ましく、R9とR10の両方がフェニル基であることが特に好ましい。ここで、R1ないしR5が有していてもよい置換基としては、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアリール基等が好ましく、炭素数2以下のアルキル基が特に好ましい。n2は0又は1であるが、0であることが好ましい。
一般式(7)と(8)のRd1についても、一般式(9)及び(10)で上記した有機不飽和基と同様である。
Ara1、Arb4及び、Arc4は、置換基を有さないフェニル基であることが最も好ましく、Ara2、Ara3、Arb1、Arb2、Arc2は、メチル基を有するフェニル基であることが最も好ましく、窒素原子のp位にメチル基を有することが更に好ましい。
一般式(5)及び(6)におけるXは連結基であり2価の有機基である。好ましくは炭素数20以下の連結基であり、炭素数18以下の連結基であることがより好ましく、炭素数10以下の連結基であることが特に好ましい。また、アルキリデン、アルキレン又はアリーレンであることが更に好ましい。アルキリデンとしては、置換基を有してもよいシクロアルキリデン、メチリデン等が好ましく、アルキレンとしては、置換基を有してもよいメチレン、エチレン等が好ましく、アリーレンとしては、置換基を有してもよいフェニレン、ナフチレン等が好ましい。これらに置換していてもよい置換基としては、炭素数10以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基等であり、より好ましくは、炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、アリール基等であり、特に好ましくは、炭素数6以下のアリール基又は炭素数2以下のアルキル基である。また、連結基は、置換基を別にしても、炭素原子のみに限定されず、酸素原子等の炭素原子以外の原子を含んでいてもよい。
組成物Aにおける重量含有比率(2)/(1)の下限は0.01%以上であり、好ましい範囲としては0.05%以上であり、より好ましくは0.10%以上であり、特に好ましくは0.15%以上であり、更に好ましくは0.20%以上である。上限は、10%以下であり、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、4%以下が特に好ましく、2%以下が更に好ましく、1%以下が最も好ましい。重量含有比率(2)/(1)が小さ過ぎると、感光体に使用した際(そのまま利用するにしても、原料として使用するにしても)、耐オゾン性が悪くなる場合があり、大き過ぎると、電気特性を悪化させる場合がある。
「重量含有比率(2)/(1)」は、組成物Aにおいて、「一般式(1)で表わされる化合物の重量」に対する「一般式(2)で表わされる化合物の重量」をいう。また、上記一般式(1)及び(2)におけるAra2とAra3とが等しい場合は、組成物A中の含有量が多い方の化合物を一般式(1)で表される化合物とする。
組成物Bにおける重量含有比率(4)/(3)の下限は0.01%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がより好ましく、0.15%以上が特に好ましく、0.20%以上が更に好ましい。上限は5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。重量含有比率(4)/(3)が小さ過ぎると、感光体に使用した際、耐オゾン性が悪くなる場合があり、大き過ぎると、電気特性を悪化させる場合がある。「重量含有比率(4)/(3)」は、組成物Bにおいて、「一般式(3)で表わされる化合物の重量」に対する「一般式(4)で表わされる化合物の重量」をいう。
組成物Cにおける重量含有比率(6)/(5)の下限は0.01%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がより好ましく、0.15%以上が特に好ましく、0.20%以上が更に好ましい。上限は5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。重量含有比率(6)/(5)が小さ過ぎると、感光体に使用した際、耐オゾン性が悪くなる場合があり、大き過ぎると、電気特性を悪化させる場合がある。「重量含有比率(6)/(5)」は、組成物Cにおいて、「一般式(5)で表わされる化合物の重量」に対する「一般式(6)で表わされる化合物の重量」をいう。
組成物Dの重量含有比率(8)/(7)の下限は0.01%以上であり、0.05%以上が好ましく、0.10%以上がより好ましく、0.15%以上が特に好ましく、0.20%以上が更に好ましい。上限は5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。重量含有比率(8)/(7)が小さ過ぎると、感光体に使用した際、耐オゾン性が悪くなる場合があり、大き過ぎると、電気特性を悪化させる場合がある。「重量含有比率(8)/(7)」は、組成物Aにおいて、「一般式(7)で表わされる化合物の重量」に対する「一般式(8)で表わされる化合物の重量」をいう。
<アリールアミン組成物の製造方法>
本発明におけるアリールアミン組成物を製造するには、既知のアリールアミン合成法を用いることができる。3級アリールアミンの合成法としては、銅触媒を用いて塩基の存在下にハロゲン化アリールとアミン化合物から合成する方法が広く知られており、金属銅やハロゲン化銅が触媒として用いられる。またアミン化合物、リン化合物等の配位子を組み合わせて用いる方法もある。パラジウム触媒を用いて塩基の存在下にハロゲン化アリールとアミン化合物から3級アリールアミンを合成する方法では、パラジウム化合物と3級リン化合物を組み合わせた錯体触媒が用いられる。またフェノール類とアミン類から3級アリールアミンを合成する方法として、金属パラジウムを触媒として用いる方法がある。本発明におけるアリールアミン組成物を製造するためには、この中でもパラジウムを触媒として用いることが好ましい。
塩基の存在下にハロゲン化アリールとアミン化合物から3級アリールアミンを製造するための触媒としては、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム、パラジウムアセチルアセトナート等のパラジウム化合物と、トリフェニルホスフィン、トリo−トリルホスフィン、トリp−トリルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリiso−ブチルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリiso−プロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のリン化合物とを組み合わせたものが使用できる。パラジウム−リン錯体を用いる方法は、製造できるアミン化合物の自由度が高いという点で好ましい。
配位子成分の使用量は、パラジウム原子に対してモル比として、少な過ぎると反応が進行しにくい場合があるため、好ましくは1倍以上、特に好ましくは2倍以上であり、また多過ぎると製造コストが不利となる場合があるため、好ましくは100倍以下、特に好ましくは20倍以下である。
この場合の、触媒の使用量は、原料のアミン類に対してのパラジウムのモル比として、少な過ぎると反応が進行しにくい場合があるため、好ましくは0.0001%以上、特に好ましくは0.001%以上である。また多過ぎると製造コストが不利となる場合があるため、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。
使用する塩基としては、反応系に応じて適当な無機塩基あるいは有機塩基から選択すればよい。無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩や、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等のリン酸塩等が用いられる。有機塩基としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が用いられる。これらのなかでも、アルカリ金属アルコキシドが好ましく、アルカリ金属t−ブトキシドが特に好ましい。
フェノール類とアミン類から3級アリールアミンを製造するための触媒としては、パラジウム黒、ラネーパラジウム、パラジウム−炭素、パラジウム−アルミナ、パラジウム−酸化マグネシウム、パラジウム−炭酸カルシウム、パラジウム−硫酸バリウム等の金属パラジウム触媒を用いることができるが、担体に担持されたパラジウム触媒が好ましく、パラジウム−炭素が特に好ましい。
この場合の、触媒の使用量は原料のアミン類に対してのパラジウムのモル比として、少な過ぎると反応が進行しにくい場合があるため、0.001%以上、好ましくは0.01%以上である。また多過ぎると製造コストが不利となる場合があるため、5%以下、好ましくは1%以下である。
一般にフェノール類はハロゲン化アリール類よりも安価であることが多いので、金属パラジウム触媒を用いる方法は製造コストの面で好ましい。本発明におけるアリールアミン組成物を構成する2種の化合物は、一度に合成してもよいし、別々に合成した化合物を混合してもかまわない。一度に合成する場合は、混合物を用いて合成してもよいし、交換反応を用いて、一般式(1)、(3)、(5)、(7)に対して、それぞれ所定量の一般式(2)、(4)、(6)、(8)で表わされる化合物が生成するように合成してもよい。別々に合成する際は、それぞれの化合物を同じ方法で合成しても、別の方法で合成してもよい。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、本発明に係る一般式(1)及び(2)、一般式(3)及び(4)、一般式(5)及び(6)、一般式(7)及び(8)で表される化合物を、それぞれ、特定の割合で混合せしめた感光層を設けたものであれば、その詳細な構成は特に制限されない。以下、代表的な構成について説明する。
<感光層>
感光層は、導電性支持体上に(後述の下引き層ないし導電層を設けた場合は下引き層上ないし導電層に)形成される。感光層の型式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のもの(以下適宜、「単層型感光層」という)と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造のもの(以下適宜、「積層型感光層」という)とが挙げられるが、何れの形態であってもよい。また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とが挙げられるが、どのような形態を採用することも可能である。
本発明に係る感光層においては、組成物A(重量含有比率(2)/(1)が、0.01%ないし10%である)か、又は、組成物B(重量含有比率(4)/(3)が、0.01%ないし5%である)か、又は、組成物C(重量含有比率(6)/(5)が、0.01%ないし5%である)か、又は、組成物D(重量含有比率(8)/(7)が、0.01%ないし5%である)を含有する。重量含有比率の好ましい範囲としては、アリールアミン組成物の項で説明した範囲と同等である。
本発明におけるアリールアミン組成物は、電荷輸送材として、感光層に含まれることが好ましい。組成物Aが、感光層に含まれる量の特に好ましい範囲としては、そのアリールアミン組成物が含有されている層に含まれるバインダー100重量部に対して、1重量部ないし100重量部用いられることが好ましく、より好ましくは5重量部以上であり、電気特性の観点から、更に好ましくは10重量部以上である。また、多過ぎると、機械特性の悪化を招く可能性があり、100重量部以下が好ましく、より好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下であり、更に好ましくは50重量部以下である。
組成物Bが、感光層に含まれる量の特に好ましい範囲としては、そのアリールアミン組成物が含有されている層に含まれるバインダー100重量部に対して、5重量部ないし100重量部用いられることが好ましく、より好ましくは10重量部以上であり、特に好ましくは30重量部以上であり、電気特性の観点から、更に好ましくは50重量部以上である。また、多過ぎると、機械特性の悪化を招く可能性があり、100重量部以下が好ましく、より好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
組成物Cが、感光層に含まれる量の特に好ましい範囲としては、そのアリールアミン組成物が含有されている層に含まれるバインダー100重量部に対して、5重量部ないし100重量部用いられることが好ましく、より好ましくは10重量部以上であり、特に好ましくは30重量部以上であり、電気特性の観点から、更に好ましくは50重量部以上である。また、多過ぎると、機械特性の悪化を招く場合があり、100重量部以下が好ましく、より好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
組成物Dが、感光層に含まれる量の特に好ましい範囲としては、そのアリールアミン組成物が含有されている層に含まれるバインダー100重量部に対して、5重量部ないし100重量部用いられることが好ましく、より好ましくは10重量部以上であり、特に好ましくは30重量部以上であり、電気特性の観点から、更に好ましくは50重量部以上である。また、多過ぎると、機械特性の悪化を招く可能性があり、100重量部以下が好ましく、より好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
本発明に係る組成物AないしDは、感光層が複数の層により形成されている場合にはそれらの層のうちどの層が含有していても構わず、別の層がそれぞれ別の組成物を含有していても構わないが、通常、組成物AないしDは、電荷を輸送する機能が必要とされる層が含有している。特に好ましい感光体は、組成物AないしDで表される組成物を、積層型感光層の電荷輸送層が含有しているものである。
次に、組成物AないしDで示されるアリールアミン組成物について、その構造の具体例を例示する。例示は本発明の詳細な説明を行うために例示するものであり、本発明の趣旨に反しない限り以下の構造に限定されるものではない。
<導電性支持体>
本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。
ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等がなくなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
<下引き層>
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。特には、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。バインダー樹脂に対する無機粒子の混合比は任意に選べるが、10重量%〜500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から0.1μm〜20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を含んでいてもよい。
また、この下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の、動的光散乱法により測定される、金属酸化物粒子の体積平均粒子径が、0.1μm以下、好ましくは95nm以下、より好ましくは90nm以下であることは好ましい。体積平均粒子径の下限に特に制限はないが、通常20nm以上である。上記範囲を満たすことにより、本発明の電子写真感光体は、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定し、得られる画像に黒点、色点等の画像欠陥が生じることを抑制することができる。
また、同様にして金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒子径が、0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下であることは好ましい。従来の電子写真感光体では、下引き層に、場合により下引き層の表裏を貫通できるほど大きい金属酸化物粒子が含有され、当該大きな金属酸化物粒子によって、画像形成時に欠陥が生じる場合があった。更に、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って導電性基体から感光層に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなるおそれもあった。しかし、累積90%粒子径を小さくすることにより、前記のように欠陥の原因となるような大きな金属酸化物粒子が非常に少なくすることができる。この結果、本発明の電子写真感光体では、欠陥の発生、及び、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能である。
該下引き層中の金属酸化物粒子は、一次粒子として存在するのが望ましい。しかし、通常は、そのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合がほとんどである。したがって、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布が如何にあるべきかは、非常に重要である。下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を直接評価することは非常に困難であるが、下引き層を特定の溶媒中に分散させ、当該分散液を評価することにより、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を知ることができる。
該下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の、金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び小粒径側より累積した累積90%粒子径は、金属酸化物粒子がどのような存在形態であっても、動的光散乱法により測定された値を用いることができる。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。本発明に係る下引き層中における金属酸化物粒子の体積平均粒子径の値は、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子等の粒径を意味していない。実際の測定では、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定にて行なうものとする。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行なう。
・動的光散乱方式粒度分析計の設定
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数 :44
測定時間 :300sec
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20(g/cm3) (*)
分散媒種類 :メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3)
分散媒屈折率 :1.35
(*)密度の値は二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いる。
なお、下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液が濃すぎて、その濃度が測定装置の測定可能範囲外となっている場合には、下引き層形成用塗布液をメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(メタノール/1−プロパノール=7/3(重量比);屈折率=1.35)で希釈し、濃度を測定装置が測定可能な範囲に収めるようにする。例えば、上記のUPAの場合、測定に適したサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒で希釈する。
このように希釈を行なったとしても、下引き層を分散した液中における金属酸化物粒子の粒子径は変化しないものと考えられるため、前記の希釈を行なった結果測定された、体積平均粒子径、及び累積90%粒子径は、本発明に係る、下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液において測定される、体積平均粒子径、及び累積90%粒子径として取り扱うものとする。
下引き層が含有する金属酸化物粒子としては、電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。
金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の具体例を挙げると、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、バンドギャップが2〜4eVの金属酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましい。バンドギャップが小さ過ぎると、導電性支持体からのキャリア注入が起りやすくなり、画像を形成した際の黒点や色点等の欠陥が発生しやすくなり、バンドギャップが大き過ぎると、電子のトラッピングにより電荷の移動が阻害され、電気特性が悪化する場合があるためである。
なお、金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いてもよいし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、金属酸化物粒子は、1種の金属酸化物のみから形成されているものを用いてもよく、2種以上の金属酸化物を任意の組み合わせ及び比率で併用して形成されているものでもよい。
前記の金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタン及び酸化アルミニウムがより好ましく、酸化チタンが特に好ましい。
また、金属酸化物粒子の結晶型は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、金属酸化物として酸化チタンを用いた金属酸化物粒子(すなわち、酸化チタン粒子)の結晶型に制限はなく、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。また、酸化チタン粒子の結晶型は、前記の結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
更に、金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行なってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物等の処理剤による処理を施していてもよい。
特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルジメトキシシラン、ジフェニルジジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、特に、下記式(i)の構造で表されるシラン処理剤で処理することが好ましい。このシラン処理剤は、金属酸化物粒子との反応性も良く良好な処理剤である。
[前記式(i)中、R
u1及びR
u2は、それぞれ独立してアルキル基を表す。]
Ru1及びRu2の炭素数に制限はないが、通常1以上であって、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特には3以下である。これにより、金属酸化物粒子との反応性が好適になるという利点が得られる。炭素数が多くなり過ぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液中での分散安定性が低下したりする場合がある。
Ru1及びRu2のうち、好適なものの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。また、前記式(i)中、Ru3は、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。Ru3の炭素数に制限はないが、通常1以上であって、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特には3以下である。これにより、金属酸化物粒子との反応性が好適になるという利点が得られる。炭素数が多くなり過ぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液中での分散安定性が低下したりする場合がある。
Ru3のうち好適なものの例としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。なお、これらの表面処理された金属酸化物粒子の最表面は、通常、前記のような処理剤で処理されている。この際、上述した表面処理は、1つの表面処理のみを行なってもよく、2つ以上の表面処理を任意の組み合わせで行なってもよい。例えば、前記の式(i)で表わされるシラン処理剤による表面処理のその前に酸化アルミ、酸化珪素又は酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていても構わない。また、異なる表面処理を施された金属酸化物粒子を、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物粒子の平均一次粒子径に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明における金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。
なお、この平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron micloscope:以下適宜「TEM」という)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求める。
また、金属酸化物粒子の屈折率にも制限はなく、電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。金属酸化物粒子の屈折率は、通常1.3以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、通常3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
本発明における下引き層を形成するための塗布液において、金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明における下引き層を形成するための塗布液においては、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子は、通常0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、また、通常4重量部以下、好ましくは3.8重量部以下、より好ましくは3.5重量部以下の範囲で用いる。金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して少な過ぎると、電子写真感光体の電気特性が悪化する場合があり、特に残留電位が上昇する場合がある。また、金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して多過ぎると、当該感光体を用いて形成した画像の黒点、色点等の画像欠陥が増加する場合がある。
下引き層が含有するバインダー樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができ、通常、電子写真感光体に使用可能な如何なるバインダー樹脂も使用することができる。
通常は、有機溶剤等の溶媒に可溶であって、且つ、形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤等の溶媒に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものを用いる。
このようなバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示すため好ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン;N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂等を挙げることができる。これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(ii)で表されるジアミンに対応するジアミン成分(以下適宜、「式(ii)に対応するジアミン成分」という)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
[式(ii)において、R
u4〜R
u7は、水素原子又は有機置換基を表す。a、bはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。なお、置換基が複数ある場合、それらの置換基は互いに同じでもよく、異なっていてもよい。]
Ru4〜Ru7で表される有機置換基として好適なものの例を挙げると、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が挙げられる。この中でも好ましいものとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、又はアルコキシ基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
また、Ru4〜Ru7で表される有機置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、また、通常1以上である。炭素数が大き過ぎると、溶媒に対する溶解性が悪化して塗布液がゲル化したり、一時的に溶解しても時間の経過とともに塗布液が白濁したりゲル化したりする場合がある。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、式(ii)に対応するジアミン成分以外の構成成分(以下適宜、単に「その他のポリアミド構成成分」という)を構成単位として含んでいてもよい。その他のポリアミド構成成分としては、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等が挙げられる。この際、前記の共重合ポリアミド樹脂は、その構成成分を、例えば、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂がその他のポリアミド構成成分を構成単位として含む場合、全構成成分中に占める式(ii)に対応するジアミン成分の割合に制限はないが、通常5mol%以上、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、また、通常40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。式(ii)に対応するジアミン成分が多過ぎると、塗布液の安定性が悪くなる場合があり、少な過ぎると高音高湿度条件での電気特性の変化が大きくなり、電気特性の環境変化に対する安定性が悪くなる場合がある。
前記の共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。但し、具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
前記の共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用される。例えば溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重縮合方法が適宜適用できる。また、重合に際して、例えば、酢酸や安息香酸等の一塩基酸;ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基等を、分子量調節剤として重合系に含有させてもよい。
なお、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、バインダー樹脂の数平均分子量にも制限はない。例えば、バインダー樹脂として共重合ポリアミドを使用する場合、共重合ポリアミドの数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、また、通常50000以下、好ましくは35000以下である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても下引き層の均一性を保つことが難しくなりやすい場合がある。
下引き層は、通常、下引き層形成用の塗布液を塗布形成して得られる。下引き層の各種物性は、下引き層を形成するための塗布液の物性に影響される。塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明における下引き層を形成するための塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上であって、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で用いる。
通常、下引き層を形成するための塗布液は、前記の下引き層を構成する成分を、溶媒に溶解又は分散してなる。本発明における下引き層を形成するための塗布液に用いる溶媒(下引き層用溶媒)としては、本発明に係るバインダー樹脂を溶解させうるものであれば、任意のものを使用することができる。この溶媒としては、通常は有機溶媒を使用する。溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
また、前記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、単独では本発明におけるバインダー樹脂を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒(例えば、上記例示の有機溶媒等)との混合溶媒とすることでバインダー樹脂を溶解可能であれば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
本発明における下引き層を形成するための塗布液において、溶媒と、金属酸化物粒子、バインダー樹脂等の固形分との量比は、下引き層を形成するための塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
また、下引き層を形成するための塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した金属酸化物粒子、バインダー樹脂及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。例えば、下引き層を形成するための塗布液には、その他の成分として添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤等が挙げられる。なお、添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
塗布液の製造方法に特に制限はない。ただし、下引き層を形成するための塗布液は、上述したように金属酸化物粒子を含有するものであり、金属酸化物粒子は下引き層を形成するための塗布液中に分散されて存在する。したがって、本発明における下引き層を形成するための塗布液の製造方法は、通常、金属酸化物粒子を分散させる分散工程を有する。
<電荷発生物質を含有する層>
電荷発生物質:
本発明の電子写真感光体において、電荷発生物質としては、本発明の効果を妨げない限り、公知の何れの化合物も使用可能であり、併用も妨げない。この例としては、例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
使用されるフタロシアニンとしては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる明瞭な回折ピークを有するものは、好ましい。また、該オキシチタニウム二ロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することは、好ましい。
(1)積層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常、電荷発生層である。ただし、積層型感光体において、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生物質が電荷輸送層中に含まれていても構わない。
電荷発生物質の体積平均粒子径に制限はない。ただし、積層型の感光体に使用する場合は、電荷発生物質の体積平均粒子径は、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。なお、電荷発生物質の体積平均粒子径は、本発明において下引き層が含有する金属酸化物粒子の体積平均径を測定するのと同様にして測定することもできるし、公知のレーザー回折散乱法による粒度分析装置や、光透過遠心沈降法による粒度分析装置等により測定することもできる。
また、電荷発生層の膜厚は任意であるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下が好適である。
電荷発生物質を含有する層が電荷発生層である場合、当該電荷発生層中の電荷発生物質の使用比率は、電荷発生層に含まれる感光層用バインダー樹脂100重量部に対して、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下である。電荷発生物質の使用量が少な過ぎると電子写真感光体としての電気特性が十分ではなくなる場合があり、多過ぎると塗布液の安定性を損なう場合がある。
更に、電荷発生層には、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(2)単層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる単層型感光体である場合、後に記載する電荷輸送層と同様の配合割合の感光層用バインダー樹脂と電荷輸送物質とを主成分とするマトリックス中に、前記電荷発生物質が分散される。単層型の感光層に使用する場合には、電荷発生物質の粒子径は十分小さいことが望ましい。このため、単層型の感光層では、電荷発生物質の体積平均粒子径では、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下である。単層型感光層の膜厚は任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
感光層内に分散される電荷発生物質の量は任意であるが、少な過ぎると十分な感度が得られなくなる場合があり、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等が生じる場合がある。このため、単層型感光層中の電荷発生物質の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
また単層型感光体の感光層も、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<電荷輸送物質を含む層>
電荷輸送物質:
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送物質として、組成物AないしDに示されるアリールアミン組成物を含有することが好ましい。ただし、電荷を輸送する物質であれば、本発明の効果を妨げない限り、他の公知の何れの化合物も併用可能である。ただし、組成物AないしDの含有量が、他の電荷輸送物質の含有量より多いことが好ましい。
併用してもよい化合物は、具体的にはたとえば、ジフェノキノン誘導体、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体;オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チオジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体等の含窒素化合物、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体等が挙げられる。また、積層型感光体においては、好ましくは、露光領域に吸収を有さない化合物が好ましい。
具体的に、好ましい例としては、以下の骨格を有する化合物が挙げられる。これら骨格には、炭素数30以下の置換基が一つないし複数置換しても構わない。好ましくは、炭素数20以下の置換基であり、更に好ましくは、炭素数10以下であることが好ましい。置換基としては、置換基を有しても構わないアルキル基、アリール基、アルコキシ基、不飽和基等が好ましい。
特に、ヒドラゾン化合物(ヒドラゾン構造を有する化合物)、ジアミン化合物(ジアミン構造を有する化合物)、ブタジエン化合物(ブタジエン構造を有する化合物)等が好ましい。また、以下構造を有する化合物は、組成物AないしDで表される化合物とのマッチングに優れ、非常に有効である。
以下に組成物AないしDの化合物の化合物と併用するのに好適な電荷輸送物質の例を挙げる。
感光体構成:
積層型感光体の場合、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は単一の層でもよいし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも構わない。また、単層型感光体の感光層では、積層型感光体の電荷輸送層と同様の構成の電荷輸送媒体の中に電荷発生物質が分散される。積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の電荷輸送媒体は、通常これらの電荷輸送物質を、バインダー樹脂により結着することで得られる。
順積層型感光体、及び単層型感光体は、電荷輸送層又は感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能するために、電荷輸送層や電荷輸送媒体は、露光光を遮断しないような露光光透過性の優れたものである必要があり、電荷輸送物質とバインダー樹脂は相溶性が高く、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが好ましい。また、良好な画像を形成するためには、露光光を吸収しないものが好ましく、電荷輸送層や電荷輸送媒体の露光光の透過率が、87%以上のものが好ましく、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上、特には95%以上であることが好ましい。電荷輸送層や電荷輸送媒体の露光光の透過率は、例えば本発明の式(1)に表される化合物を電荷輸送物質として用いる等、電荷輸送物質を選択することにより達成することが可能であるし、電荷輸送層の膜厚を調整することによっても達成可能である。露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば当該層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層において、バインダー樹脂と電荷輸送物質の含有比率は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して全電荷輸送物質が30〜200重量部、好ましくは40〜150重量部の範囲である。積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜45μmである。膜厚が薄くなり過ぎると摩耗により感光体の寿命が短くなり、膜厚が厚くなり過ぎると露光光や電荷の拡散により画像の解像度が悪化する傾向がある。
添加剤:
なお、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤等を含有させてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、(ヒンダード)アミン化合物等が挙げられる。
バインダー樹脂:
積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物或いはこれらを混合しても使用できる。
本発明においては、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂には、一般的に、ジオール成分の部分構造を有する。これらの構造を形成するジオール成分としては、ビスフェノール残基、ビフェノール残基等が挙げられ、その好ましい例としては、下記一般式(11)で表されるものである。
具体的には、例えば、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸ステアリルエステル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等のビスフェノール成分;
また、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェノール成分等が挙げられる。
これらの中で好ましい化合物としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノール成分が挙げられる。
具体的に、好適に用いることのできるジオール成分(ビスフェノール、ビフェノール等)の化学構造を以下に例示する。本例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下構造を示すジオール成分であることは好ましい。
また、ポリアリレート樹脂を使用することは、耐刷性の観点から好ましく、この場合、ジオール成分の他に、酸成分の部分構造を有する。酸成分としては、以下の化学構造を有するものを用いることが好ましい。
[上記構造中、Ar
p1ないしAr
p2は、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Yは連結基を表す、n
a2は、0又は1の整数である。]
上記構造中、Arp1ないしArp2のアリーレン基としては、炭素数10以下のアリーレン基が好ましく、置換基としては、原子数4以下の置換基が好ましい。Yは、一般式(5)ないし(6)中における「2価の連結基(X)」と同様である。ここでは、好ましくは、酸素原子、メチレン基である。
また、これらのジカルボン酸成分、ジオール成分を複数種組み合わせて用いることも可能である。
バインダー樹脂の分子量は、低過ぎると機械的強度が不足し、逆に分子量が高過ぎると感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下するといった不具合が生じるため、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の場合、粘度平均分子量で10,000以上、好ましくは20,000以上で、100,000以下、より好ましくは70,000以下の範囲で用いられる。
<保護層、その他>
感光層の上には電気的、機械的劣化を防止する目的で保護層を設けてもよい。また、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、表面の層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでもよく、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
<層形成方法>
本発明の電子写真用感光体の感光層は、常法に従って、組成物AないしDで表されるアリールアミン組成物を、バインダーと共に適当な溶剤中に溶解又は分散し、必要に応じ、適当な電荷発生物質、増感染料、電子吸引性化合物、他の電荷輸送物質、あるいは、可塑剤、顔料等との周知の添加剤を添加して得られる塗布液を、導電性基体上に塗布、乾燥させることにより製造することができる。
電荷発生層と電荷輸送層の2層からなる感光層の場合は、電荷発生層の上に上記塗布液を塗布するか、上記塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより、製造することができる。
感光体を構成する各層を塗布形成するための塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル、等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して用いられる。
感光層の塗布形成方法としては、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等がある。スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合は、塗布液あるいは分散液の作製において、単層型感光層の場合、及び積層型感光層の電荷輸送層の場合には、全固形分濃度を好ましくは10重量%以上であって50重量%以下、更に好ましくは15重量%以上35重量%以下、粘度を好ましくは50〜700mPa・s、更に好ましくは100〜500mPa・sとし、積層型感光層の電荷発生層の場合には、固形分濃度を好ましくは15重量%以下、更に好ましくは1〜10重量%、粘度を好ましくは0.1〜10mPa・sとする。
塗膜形成後、塗膜を乾燥させるが、必要且つ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度時間を調整するとよい。乾燥温度は、高過ぎると感光層内に気泡が混入する原因となり、低過ぎると乾燥に時間を要し、残留溶媒量が増加して電気特性に悪影響を与える等の問題があるため、通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、更に好ましくは120〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機等を用いることができる。
<トナー>
潜像を現像するための現像剤であるトナーは、特定の円形度を有するトナーが好ましい。このように特定の円形度を有するトナーを用いることにより、本発明の画像形成装置は高画質の画像を形成することができるようになっている。
<トナーの円形度>
本発明における好ましいトナーの形状は、トナーを構成する粒子群に含まれる各粒子の形状が、互いに近いものであって、球形に近いほどトナーの粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあり、画像品質を高める上で好ましいが、トナーの形状が完全な球形に近づき過ぎると、画像形成後のトナーのクリーニング不良により電子写真感光体表面にトナーが残存して形成した画像を汚して欠陥となる場合があり、そのような場合にはクリーニング不良を起こさないように強力なクリーニングを行う必要が生じ、ひいては強力なクリーニングにより電子写真感光体が磨耗しやすくなったり傷が付きやすくなったりして、電子写真感光体の寿命を縮める場合がある。また完全な球状トナーを作ることは製造上困難であり、トナーが高コスト化するため、産業上の利用価値が低い。
したがって、具体的には、フロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が、通常0.940以上、好ましくは0.950以上、より好ましくは0.960以上である。また、前記平均円形度の上限は1.000以下であれば制限はないが、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
なお、前記の平均円形度は、トナーの粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定を行ない、測定された粒子の円形度〔a〕を下式(A)により求めるものとする。
円形度〔a〕=L0/L ・・・・・・(A)
[式(A)中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理したときの粒子像の周囲長を示す。]
前記の円形度は、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
平均円形度の具体的な測定方法としては、以下の通りである。すなわち、予め容器中の不純物を除去した水20mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を加え、更に測定試料(トナー)を0.05g程度加える。この試料を分散した懸濁液に超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μL(マイクロL)として、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
<トナーの種類>
本発明におけるトナーは、上記の平均円形度を有する限り他に制限はない。トナーの種類は、通常はその製造方法に応じて様々なものが得られるが、本発明におけるトナーとしては、何れを用いることも可能である。以下、トナーの製造方法とともに、そのトナーの種類を説明する。
本発明におけるトナーは、従前公知のどのような方法で製造しても構わず、例えば重合法や溶融懸濁法等により製造されるトナーが挙げられ、更には、いわゆる粉砕トナーを熱等の処理により球形化したものも用いることができるが、水系媒体中でトナー粒子を生成する、いわゆる重合法により製造されるトナーが好ましい。
重合法トナーとしては、例えば、懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法トナー等が挙げられる。特に、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤等とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径及び円形度を調整することができるので好ましい。
また、トナーの離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性等を改良するために、トナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、重合体(バインダ樹脂)に対して5重量%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、低軟化点物質を多量(5〜30重量%)に含有させることが可能である。なお、ここでいう重合体は、トナーを構成する材料の一つであり、例えば後述する乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合、重合性単量体が重合して得られるものである。
以下、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、その製造工程としては、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、洗浄・乾燥工程を行なう。すなわち、一般的には乳化重合により重合体一次粒子を得て(重合工程)、その重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤(顔料)、ワックス、帯電制御剤等の分散体を混合し(混合工程)、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし(凝集工程)、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行ない、その後に融合させて粒子を得て(融合工程)、得られた粒子を洗浄、乾燥することにより(洗浄・乾燥工程)、母粒子が得られる。
<重合工程>
重合体の微粒子(重合体一次粒子)としては、特に限定されない。したがって、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、樹脂等の重合体の塊を粉砕することによって得られる微粒子の何れを重合体一次粒子として用いてもよい。ただし、重合法、特に乳化重合法、なかでも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、重合体がワックスを包み込んだ構造の微粒子を重合体一次粒子として製造することができる。この方法によれば、ワックスをトナーの表面に露出させず、トナー内に含有させることができる。このため、ワックスによる装置部材の汚染がなく、また、トナーの帯電性を損なうこともなく、かつ、トナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合を行ない、これにより重合体一次粒子を得る方法について説明する。乳化重合法としては、従来より知られている方法に従って行えばよい。通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合により重合体を与える重合性単量体、すなわち、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、及び、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等を混合、攪拌して重合を行なう。これにより、重合体がワックスを包み込んだ構造を有する重合体の微粒子(すなわち、重合体一次粒子)が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。なお、重合体がワックスを包み込んだ構造としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型等が挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
(i.ワックス)
ワックスとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類又は部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、ワックスの中でも、例えば、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。特に、パラフィンワックスが好ましい。
なお、ワックスは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ワックスを用いる場合、その使用量は任意である。ただし、重合体100重量部に対して、ワックスを通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下とすることが望ましい。ワックスが少な過ぎると定着温度幅が不十分となる場合があり、多過ぎると装置部材を汚染して画質の低下が生じる場合がある。
(ii.乳化剤)
乳化剤に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性の何れの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。更に、カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。なお、乳化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、乳化剤の配合量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性モノマー100重量部に対して、乳化剤を、通常1〜10重量部の割合で用いる。
(iii.液状媒体)
液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、特に好ましくは水を用いる。ただし、液状媒体の質は液状媒体中の粒子の再凝集による粗大化にも関係し、液状媒体の導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、液状媒体として水等の水系媒体を使用する場合、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、液状媒体の使用量に制限はないが、重合性単量体に対して、通常1〜20重量倍程度の量を用いる。この液状媒体に、乳化剤の存在下で前記ワックスを分散させることにより、ワックス微粒子を得る。乳化剤及びワックスを液状媒体に配合する順は任意であるが、通常は、まず乳化剤を液状媒体に配合し、その後、ワックスを混合する。また、乳化剤は連続的に液状媒体に配合してもよい。
(iv.重合開始剤)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体に、重合開始剤を配合する。重合開始剤としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その例を挙げると、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素等の無機過酸化物類等が挙げられる。中でも、無機過酸化物類が好ましい。なお、重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、重合開始剤の他の例としては、過硫酸塩類、有機又は無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等とを併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、重合開始剤の使用量にも制限はなく任意である。ただし、重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で用いられる。
(v.重合性単量体)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤の他に、重合性単量体を配合する。重合性単量体に特に制限はないが、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
更に、酸性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
また、塩基性モノマーとしては、例えば、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
更に、多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらのなかでも、重合性単量体としては、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましい。特に、スチレン類としてはスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類としてはアクリル酸ブチルが好ましく、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてはアクリル酸が好ましい。
なお、重合性単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ワックスをシードとして乳化重合を行なう際には、酸性モノマー又は塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーを併用することにより、重合体一次粒子の分散安定性を向上させることができるからである。
この際、酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量は任意であるが、全重合性単量体100重量部に対する酸性モノマー又は塩基性モノマーの使用量を、通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下となるようにすることが望ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると重合体一次粒子の分散安定性が悪化する場合があり、上限を上回るとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は任意であるが、重合性単量体100重量部に対する多官能性モノマーの配合量は、通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。この際、多官能性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると耐高温オフセット性が劣る場合があり、上限を上回ると低温定着性が劣る場合がある。
液状媒体へ重合性単量体を配合する方法は特に限定されず、例えば、一括添加、連続添加、間欠添加の何れでもよいが、反応制御の点からは連続的に配合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に配合してもよく、また予め混合してから配合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら配合してもよい。
(vi.連鎖移動剤等)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤及び重合性単量体の他に、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等の添加剤を配合する。これらの添加剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。また、連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
更に、保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等が挙げられる。
また、内添剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
(vii.重合体一次粒子)
ワックス微粒子を含む液状媒体に重合開始剤及び重合性単量体、並びに、必要に応じて添加剤を混合し、攪拌し、重合させることにより、重合体一次粒子を得る。この重合体一次粒子は、液状媒体中にエマルションの状態で得ることができる。
重合開始剤、重合性単量体、添加剤等を液状媒体に混合する順番に制限はない。また、混合、攪拌の方法等も制限はなく、任意である。更に、重合(乳化重合反応)の反応温度も反応が進行する限り任意である。但し、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径に特に制限はないが、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。体積平均粒径が小さ過ぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大き過ぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
本発明においては、体積粒度分布は動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下UPA−EXと略す)を用いて、以下の設定にて行なう。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :1g/cm3
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように粒子の分散体を液状媒体で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定する。そして、本発明においては、体積平均粒子径は、上記の体積粒度分布の結果を算術平均値として計測される。
また、重合体一次粒子を構成する重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、また、通常10万以下、好ましくは7万以下、より好ましくは6万以下に存在することが望ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる傾向がある。ここで、前記のピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。ピーク分子量は、後述するトナーの場合と同様に測定することが可能である。
特に、前記の重合体がスチレン系樹脂である場合には、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量は、下限が通常2000以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、また上限は、通常5万以下、好ましくは4万以下、より好ましくは3.5万以下である。更に、重合体の重量平均分子量は、下限が通常2万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、また上限は、通常100万以下、好ましくは50万以下である。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記の範囲に収まるスチレン系樹脂を重合体として用いた場合、えられるトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好となるからである。更に分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、スチレン類が全重合体中の通常50重量%以上、好ましくは65重量%以上を占めるものを指す。
また、重合体の軟化点(以下、「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、好ましくは140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、また、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。ここで重合体の軟化点は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求める。
更に、重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、通常80℃以下、好ましくは70℃以下である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が高過ぎると低エネルギー定着ができなくなる場合がある。また、重合体のガラス転移温度〔Tg〕の下限は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上である。重合体のガラス転移温度〔Tg〕が低過ぎると耐ブロッキング性が低下する場合がある。ここで重合体のガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。重合体の軟化点及びガラス転移温度〔Tg〕は、重合体の種類、モノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
<混合工程及び凝集工程>
前記の重合体一次粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子を混合し、凝集させることにより、重合体、顔料を含む凝集体(凝集粒子)のエマルジョンを得る。この際、顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた顔料粒子分散体を用意し、これを重合体一次粒子のエマルジョンに混合することが好ましい。この際、顔料粒子分散体の液状媒体として通常は水等の水系溶媒を使用し、顔料粒子分散体を水系分散体として用意する。また、その際には、必要に応じてワックス、帯電制御剤、離型剤、内添剤等をエマルジョンに混合してもよい。また、顔料粒子分散体の安定性を保持するために、上述した乳化剤を加えてもよい。
重合体一次粒子としては、乳化重合により得た前記の重合体一次粒子を使用することができる。この際、重合体一次粒子は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、上述した乳化重合とは異なる原料や反応条件で製造した重合体一次粒子(以下適宜、「併用重合体粒子」という)を併用してもよい。
併用重合体粒子としては、例えば、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子等が挙げられる。このような併用重合体粒子の材料としては樹脂を使用できるが、この樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、これらの併用重合体粒子も、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、併用重合体粒子の割合は、重合体一次粒子及び併用重合体粒子の重合体の合計に対して、通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
また、顔料に制限はなく、その用途に応じて任意のものを用いることができる。ただし、顔料は通常は着色剤粒子として粒子状で存在するが、この顔料の粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子との密度差が小さい方が好ましい。前記の密度差が小さいほうが、重合体一時粒子と顔料とを凝集させた場合に均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するからである。なお、重合体一次粒子の密度は、通常は1.1〜1.3g/cm3である。
前記の観点から、JIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度は、通常1.2g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以上、また、通常2.0g/cm3未満、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下である。顔料の真密度が大きい場合は、特に液状媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性等の課題も考慮すると、顔料はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の条件を満たす顔料の例示としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料等が挙げられる。また、黒色顔料としては、カーボンブラック、又は、以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料として使用されるカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料粒子分散体として分散させたときに、再凝集によるカーボンブラック粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が顕著となる傾向を示す。
不純物量の定量的な評価としては、以下の測定方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が、通常0.05以下、好ましくは0.03以下である。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるトナーに使用するカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
なお、カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。すなわち、まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等がある。
また、イエロー顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
更に、マゼンタ顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。
中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、その鮮明な色相や高い耐光性等からマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
また、シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66等が特に好適に利用できる。なお、顔料は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の顔料は、液状媒体に分散させ、顔料粒子分散体としてから重合体一次粒子を含有するエマルションと混合する。この際、顔料粒子分散体中における顔料粒子の使用量は、液状媒体100重量部に対して、通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。着色剤の配合量が前記範囲を上回る場合には顔料濃度が濃いので分散中で顔料粒子が再凝集する確率が高まる場合があり、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって適切な粒度分布を得ることが困難になる場合がある。
また、重合体一次粒子に含まれる重合体に対する顔料の使用量の割合は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。顔料の使用量が少な過ぎると画像濃度が薄くなる場合があり、多過ぎると凝集制御が困難となる場合がある。
更に、顔料粒子分散体には、界面活性剤を含有させてもよい。この界面活性剤に特に制限はないが、例えば、乳化重合法の説明において乳化剤として例示した界面活性剤と同様のものが挙げられる。中でも、非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。また、この際、界面活性剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、顔料粒子分散体に占める顔料の割合は、通常10〜50重量%である。また、顔料粒子分散体の液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、好ましくは水を用いる。この際、重合体一次粒子及び顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合させる際、エマルションにワックスを混合してもよい。ワックスとしては、乳化重合法の説明において述べたものを同様のものを使用することができる。なお、ワックスは、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合する前、混合中、後の何れにおいて混合してもよい。
また、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合させる際、エマルションに帯電制御剤を混合してもよい。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂等が挙げられる。また、負荷電性帯電制御剤としては、例えば、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料;サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩又は金属錯体;カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩又は金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため、無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。なお、帯電制御剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
帯電制御剤の使用量に制限はないが、重合体100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。帯電制御剤の使用量が少なすぎても多すぎても所望の帯電量が得られなくなる場合がある。
帯電制御剤は、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合する前、混合中、後の何れにおいて混合してもよい。
また、帯電制御剤は、前記顔料粒子と同様に、液状媒体(通常は、水系媒体)に乳化した状態として、凝集時に混合することが望ましい。上記の重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合した後、重合体一次粒子と顔料とを凝集させる。なお、上述したとおり、混合の際には、通常、顔料は顔料粒子分散体とした状態で混合させる。
凝集方法に制限はなく任意であるが、例えば、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、電解質を混合する方法が好ましい。電解質を混合して凝集を行なう場合の電解質としては、例えば、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物;Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の硫酸塩等の無機塩;CH3COONa、C6H5SO3Na等の有機塩等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。なお、電解質は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電解質の使用量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。電解質を混合して凝集を行なう場合において、電解質の使用量が少な過ぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の場合があり、また、電解質の使用量が多過ぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる場合がある。
得られた凝集体は、後述する二次凝集体(溶融工程を経た凝集体)と同じく、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は二次凝集体の場合と同様の条件(融合工程の説明において述べるのと同様の条件)で行えばよい。
一方、加熱により凝集を行なう場合、温度条件は凝集が進行する限り任意である。具体的な温度条件を挙げると、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、重合体一次粒子の重合体のガラス転移温度〔Tg〕以下、好ましくは55℃以下の温度条件で凝集を行なう。凝集を行なう時間も任意であるが、通常10分以上、好ましくは60分以上、また、通常300分以下、好ましくは180分以下である。
また、凝集を行なう際には、攪拌を行なうことが好ましい。攪拌に使用する装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。得られた凝集体は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程(カプセル化工程)に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行なった後に、カプセル化工程に進んでもよい。そして、望ましくは、凝集工程の後に、カプセル化工程を行ない、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度で加熱して融合工程を行なうのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化等)を生じないので好ましい。
<カプセル化工程>
凝集体を得た後、当該凝集体には、必要に応じて樹脂被覆層を形成することが好ましい。凝集体に樹脂被覆層を形成させるカプセル化工程とは、凝集体の表面に樹脂被覆層を形成することにより、凝集体を樹脂により被覆する工程である。これにより、製造されるトナーは樹脂被覆層を備えることになる。カプセル化工程では、トナー全体が完全に被覆されない場合もあるが、顔料は、実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得ることができるようになる。この際の樹脂被覆層の厚さに制限はないが、通常は0.01〜0.5μmの範囲である。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法等が挙げられる。上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集体表面に樹脂被覆層を形成することができる。
また、前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集体表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)等の装置が使用できる。
更に、前記in−situ重合法としては、例えば、凝集体を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を混合して、凝集体表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集体表面に樹脂被覆層を形成する方法である。また、前記液中粒子被覆法としては、例えば、内層を形成する凝集体と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面に樹脂被覆層を形成させる方法である。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、凝集体よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子である。この樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はない。ただし、外層の厚みがコントロールできるという観点から、上述した重合体一次粒子、凝集体、又は、前記の凝集体を融合した融合粒子と同様の樹脂微粒子を用いることが好ましい。なお、これらの重合体一次粒子等と同様の樹脂微粒子は、内層に使用する凝集体における重合体一次粒子等と同様に製造することができる。
また、樹脂微粒子の使用量は任意であるが、トナー粒子に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下の範囲で用いることが望ましい。更に、凝集体に対する樹脂微粒子の固着又は融合を効果的に行なうためには、樹脂微粒子の粒径は、通常は、0.04〜1μm程度のものが好ましく用いられる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分(樹脂成分)のガラス転移温度〔Tg〕としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常110℃以下が望ましい。更に、樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕は、重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであることがより好ましい。ガラス転移温度〔Tg〕が低過ぎると、一般環境での保存が困難であり、また高すぎては充分な溶融性が得られない場合がある。
更に、樹脂被覆層中にはポリシロキサンワックスを含有させることが好ましい。これにより、耐高温オフセット性の向上という利点を得ることができる。ポリシロキサンワックスの例を挙げると、アルキル基を有するシリコーンワックス等が挙げられる。
ポリシロキサンワックスの含有量に制限はないが、トナー中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.08重量%以上、また、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下とする。樹脂被覆層中のポリシロキサンワックスの量が少な過ぎると耐高温オフセット性が不十分となる場合があり、多過ぎると耐ブロッキング性が低下する場合がある。
樹脂被覆相中にポリシロキサンワックスを含有させる方法は任意であるが、例えば、ポリシロキサンワックスをシードとして乳化重合を行ない、得られた樹脂微粒子と、内層を形成する凝集体とを、水系媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面にポリシロキサンワックスを含有する樹脂被覆層を形成させることにより含有させることが可能である。
<融合工程>
融合工程では、凝集体を加熱処理することにより、凝集体を構成する重合体の溶融一体化を行なう。また、凝集体に樹脂被覆層を形成してカプセル化樹脂微粒子とした場合には、加熱処理をすることにより、凝集体を構成する重合体及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされることになる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態で得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。また、樹脂被覆層を形成した場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度とする。具体的な温度条件は任意であるが、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも、通常5(℃)以上高温であることが好ましい。その上限に制限はないが、「樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも50(℃)高い温度」以下が好ましい。なお、加熱処理の時間は処理能力、製造量にもよるが、通常0.5〜6時間である。
<洗浄・乾燥工程>
上述した各工程を液状媒体中で行なっていた場合には、融合工程の後、得られたカプセル化樹脂粒子を洗浄し、乾燥して液状媒体を除去することにより、トナーを得ることができる。洗浄及び乾燥の方法に制限はなく任意である。
<トナーの粒径に関する物性値>
本発明におけるトナーの体積平均粒径〔Dv〕に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常4μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは8μm以下である。トナーの体積平均粒径〔Dv〕が小さ過ぎると画質の安定性が低下する場合があり、大き過ぎると解像度が低下する場合がある。
また、本発明におけるトナーは、体積平均粒径〔Dv〕を個数平均粒径〔Dn〕で除した値〔Dv/Dn〕が、通常1.0以上、また、通常1.25以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下であることが望ましい。〔Dv/Dn〕の値は、粒度分布の状態を表わし、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表わす。粒度分布がシャープであるほど、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
更に、本発明におけるトナーは、粒径25μm以上の体積分率が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。この値は小さいほど好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましいのである。なお、粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にしなくとも構わない。
また、本発明におけるトナーは、粒径15μm以上の体積分率が、通常2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下にしなくとも構わない。更に、本発明におけるトナーは、粒径5μm以下の個数分率が、通常15%以下、好ましくは10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので、望ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕、体積分率、個数分率等は、以下のようにして測定することができる。すなわち、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続して使用する。また、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては、前記電解液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料(トナー)を2〜20mg加える。そして、試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。このようにしてトナーの個数及び体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕を求める。
<トナーの分子量に関する物性値>
本発明におけるトナーのTHF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つは、通常1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であり、通常15万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下である。なお、THFはテトラヒドロフランのことを言う。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
更に、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、通常10%以上、好ましくは20%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは50%以下である。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。なお、本発明におけるトナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)を用いて次の条件で測定される。
すなわち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流速で流す。次いで、トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
測定は、試料濃度(樹脂の濃度)を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を測定装置に50〜200μL注入して行なう。試料(トナー中の樹脂成分)の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、PressureChemicalCo.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
更に、前記の測定方法で用いるカラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのがよく、例えば、Waters社製のμ−styragel500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の測定は、以下のようにして行なうことができる。すなわち、試料(トナー)1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出することができる。
<トナーの軟化点及びガラス転移温度>
本発明におけるトナーの軟化点〔Sp〕に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、低エネルギーで定着する観点から、通常150℃以下、好ましくは140℃以下である。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは、軟化点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。
なお、トナーの軟化点〔Sp〕は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求める。
また、本発明におけるトナーのガラス転移温度〔Tg〕に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であると、低エネルギーで定着できるので望ましい。また、ガラス転移温度〔Tg〕は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐ブロッキング性の点で好ましい。
なお、トナーのガラス転移温度〔Tg〕は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、トナーに含まれる重合体の種類や組成比に大きく影響を受ける。このため、トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、前記の重合体の種類及び組成を適宜最適化することにより調整することができる。また、重合体の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類や配合量によっても、調整することが可能である。
<トナー中のワックス>
本発明におけるトナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、また、上限は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。分散粒径が小さ過ぎるとトナーの耐フィルミング性改良の効果が得られない場合があり、また、分散粒径が大き過ぎるとトナーの表面にワックスが露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーの重合体を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法等により確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。ワックスが少な過ぎると定着温度幅が不十分となる場合があり、多過ぎると装置部材を汚染して画質が低下する場合がある。
<外添微粒子>
トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性等を向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法としては、例えば、上述したトナーの製造方法において、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法;二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合又は固着させる方法等が挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子とを混合する場合に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサー等が挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に攪拌、混合することにより混合することが好ましい。
また、乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることのできる圧縮剪断処理装置や、粒子表面を溶融処理することのできる粒子表面溶融処理装置等が挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えば、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
一方、粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子との混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
また、外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用できる。例えば、無機微粒子、有機微粒子等が挙げられる。
無機微粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物;ホウ化ジルコニウム等のホウ化物;シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物;リン酸三カルシウム;リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム等のリン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸;滑石;ベントナイト;導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック;等を用いることができる。更には、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質等を用いてもよい。
一方、有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の微粒子を用いることができる。これら外添微粒子の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。
なお、外添微粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、これらの無機又は有機微粒子の表面は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化等の表面処理が施されていてもよい。なお、処理剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、外添微粒子の数平均粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは1μm以下であり、異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。なお、外添微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
また、トナーに対する外添微粒子の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、トナーと外添微粒子との合計重量に対する外添微粒子の割合として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下が望ましい。外添微粒子が少な過ぎると流動性、帯電安定性が不足する場合があり、多過ぎると定着性が悪化する場合がある。
<トナーその他>
本発明におけるトナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であってもよく、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤等のトナー母粒子構成物の種類、該構成物の組成比、外添微粒子の種類、該外添微粒子の組成比等により調整することができる。
また、本発明におけるトナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、例えば、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質、又は、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。
キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。
また、キャリアの平均粒径は特に制限はないが、10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部の割合で用いるのが好ましい。なお、電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナー、及び必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。本発明においては、前記のように、帯電手段が前記電子写真感光体に接触配置した場合に、その効果が顕著に発揮されるから、この構成が望ましい。そして、例えば、電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、前述したトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーがなくなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜600nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。これらの中でも波長380nm〜600nmの短波長の単色光等で露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙、媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置55が転写材を介して感光体に接触配置される場合に効果的である。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆どない場合には、クリーニング装置6はなくても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。すなわち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例中の化合物の番号は、特に指定しない限り、前記した組成物AないしDの例示化合物の番号を指す。
<実施例1>
300mL四口フラスコに攪拌器、温度計、ディーンスタークを取り付け、p,p’−ジトリルアミン39g、フェノール28g、シクロヘキサノン10g、キシレン10g、パラジウム/活性炭(5%)50%含水品0.6gを仕込んだ。窒素フロー下に190℃に加熱して、発生する水をディーンスタークで除去しながら12時間反応した。80℃に冷却したのちトルエン50mLを加えて希釈し、触媒を濾過によりとり除いた。濾液を5℃のメタノールに徐々に加えて、析出した固体を濾取し、化合物(1−1)の粗体を得た。
この粗体を80mLのメチルエチルケトンに加えて加熱溶解した後、5℃に冷却して結晶を析出させ、更に5℃のメタノール240mLを加えた。固体を濾取し60℃で減圧乾燥することにより化合物(1−1)36gを得た。
こうして得られた化合物(1−1)を、ガスクロマトグラフを用いて分析したところ、副生物として化合物(2−1)を含んでおり、その重量含有比率(2−1)/(1−1)は、0.49%であった。
<実施例2>
100mL四口フラスコに攪拌器、温度計、還流冷却管を取り付け、実施例1で得られた化合物(1−1)と化合物(2−1)の混合物12.3gと酢酸45g、イソブチルアルデヒド4g、メタンスルホン酸0.3gを仕込み、55℃で8時間反応させた。これを室温まで冷却した後濾過により固体を取り出した。室温でメチルエチルケトン30gに懸濁させて1時間攪拌し、濾過により固体を取り出した。更にメチルエチルケトン懸洗を一度繰り返したあと、トルエン50mLに溶解させて活性白土5gとともに室温で1時間攪拌し、濾過により活性白土を分離した後トルエン溶液をメタノール400mLに放出して、析出した固体を濾過により取り出した。
このようにして得た化合物(5−11)を高速液体クロマトグラフにより分析したところ、化合物(6−11)を含んでおり、その重量含有比率(6−11)/(5−11)は0.56%であった。
<実施例3>
実施例1で得られた化合物(1−1)と化合物(2−1)の混合物24gをジメチルホルムアミド50gに溶解し、60℃に加熱してオキシ塩化リン18gをゆっくりと滴下した。そのまま60℃で3時間攪拌したあと、室温に冷却し、トルエン100mL、水100mLを添加した。30分間攪拌した後水層を分液して除き、トルエン溶液を8%水酸化ナトリウム水溶液100mLに放出した。3時間攪拌した後水層を分液し、トルエン層を水で2回洗ったあと減圧濃縮した。これにTHFを50g加え、50℃に加熱してN,N−ジフェニルヒドラジン21gをメタノール70gに溶かした溶液を加えた。そのまま2時間攪拌したのち室温まで冷却し、濾過により固体を得た。この固体をトルエン100mLに溶解させて活性白土10gとともに50℃で1時間攪拌し、濾過により活性白土を分離した後トルエン溶液をメタノール400mLに放出して、析出した固体を濾過により取り出した。
このようにして得た化合物(3−1)を高速液体クロマトグラフにより分析したところ、化合物(4−1)を含んでおり、その重量含有比率(4−1)/(3−1)は0.30%であった。
<実施例4>
200mL四口フラスコに攪拌器、温度計、ディーンスタークを取り付け、p,p’−ジトリルアミン39g、2−ナフトール43g、テトラリン13g、キシレン10g、パラジウム/活性炭(5%)50%含水品3gを仕込んだ。これを窒素フロー下200℃に加熱し、発生する水をディーンスタークで除きながら18時間反応した。室温まで冷却した後にトルエン100mLを加えて希釈し、濾過により触媒を除いた。濾液をメタノール400mLに放出して、析出した固体を濾過により取り出した。これをトルエン150mLに溶解して活性白土10gを加え、50℃で1時間攪拌した。活性白土を濾過により取り除き、濾液をロータリーエバポレーターにより約半量に濃縮したものをメタノール400mLに放出して析出した固体を濾過により取り出した。このようにして化合物(3−12)29gを得た。
このようにして得た化合物(3−12)をガスクロマトグラフにより分析したところ、副生物として化合物(4−12)を含んでおり、その重量含有比率(4−12)/(3−12)は3.2%であった。
<実施例5>
200mLの四口フラスコに、攪拌器、温度計、ディーンスタークを取り付け、p−トルイジン22g、2−ナフトール40g、テトラリン20g、キシレン10g、1質量%NaOH水溶液1g、パラジウム/活性炭(5%)50%含水品3gを仕込んだ。これを窒素フロー下200℃に加熱し、そのまま10時間反応した。60℃まで冷却した後にメタノール200mLを加え、濾過により触媒を除いた。濾液を0℃に冷却し、水20gを加えて析出した固体を濾過により取り出した。これを5℃のメタノール150mLで1時間懸洗し、濾過することで、N−p−トリル−2−ナフチルアミン31gを得た。
次に、300mLの四つ口フラスコに、攪拌器、温度計、ディーンスタークを取り付け、キシレン100mL、N−p−トリル−2−ナフチルアミン23g、p−ブロモトルエン18g、ブロモベンゼン0.8g、ナトリウムt−ブトキシド12gを仕込んだ。窒素フロー下に酢酸パラジウム6mg、トリシクロヘキシルリンを30mg加え、140℃に加熱した。その後3時間140℃に保って反応させた。室温まで冷却したところで濾過により固形物を除き、濾液をシリカゲルカラムに通した後、5℃に冷却したメタノール300mLに放出した。固体を濾取し、60℃で減圧乾燥することにより化合物(3−11)と化合物(4−11)の混合物を得た。この混合物をガスクロマトグラフにより分析したところ、化合物(4−11)の含量は2.9質量%であった。
<比較例1>
300mL四口フラスコに攪拌器、温度計、ディーンスタークを取り付け、キシレン100mL、p,p’−ジトリルアミン24g、ヨードベンゼン28g、ナトリウムt−ブトキシド14g、ヨウ化銅0.3gを仕込んだ。窒素フロー下にトリn−ブチルリンを1.5g加え、140℃に加熱した。その後6時間140℃に保って反応させた。室温まで冷却したところで濾過により固形物を除き、濾液をシリカゲルカラムに通した後、5℃に冷却したメタノール300mLに放出した。固体を濾取し、60℃で減圧乾燥することにより化合物(1−1)24gを得た。
このようにして得られた化合物(1−1)をガスクロマトグラフで分析したところ、化合物(2−1)は検出されなかった。
<比較例2>
p,p’−ジトリルアミン24gの代わりにジフェニルアミン21g、ヨードベンゼン28gの代わりにp−ヨードトルエン30gを用いた以外は比較例1と同じようにして、化合物(2−1)を得た。
このようにして得られた化合物(2−1)をガスクロマトグラフで分析したところ、化合物(1−1)は検出されなかった。
<比較例3>
実施例1で得られた化合物(1−1)と化合物(2−1)の混合物の代わりに、比較例1で得た化合物(1−1)を用いた以外は実施例2と同じようにして化合物(5−11)を合成した。
このようにして得られた化合物(5−11)を高速液体クロマトグラフで分析したところ、化合物(6−11)は検出されなかった。
<比較例4>
比較例2で得られた化合物(2−1)13gをジメチルホルムアミド30gに溶解し、60℃に加熱してオキシ塩化リン11gを滴下した。60℃に保ったまま3時間攪拌した後、トルエン100g、水100gを添加した。水層を分液で除いた後に、有機層を1%アルカリ溶液、次いで水で洗浄し、減圧下溶媒を留去した。これをTHF30mLに溶解し、1mol/Lのイソプロピルマグネシウムブロマイド75mLに氷冷しながら添加した。氷冷下1時間攪拌した後に塩化アンモニウム飽和水溶液を15mL加え、トルエン100mLを加えて2回水洗した。減圧下溶媒を留去した後にシリカゲルカラムクロマトフィーで精製して、N−p−トリル−N−p−(1−ヒドロキシ2−メチルプロピル)フェニルアニリン9gを得た。
比較例1で得られた化合物(1−1)30gと酢酸200g、メタンスルホン酸1.5g、クロロホルム30gを50℃に加熱し、20gのクロロホルムに溶解したN−p−トリルN−p−(1−ヒドロキシ2−メチルプロピル)フェニルアニリン9gをゆっくりと滴下した。そのまま2時間攪拌し、トルエン300mLを加えて200gの水で3回洗浄した。減圧下溶媒を留去した後にシリカゲルカラムクロマトフィーで精製して化合物(6−11)12gを得た。
このようにして得られた化合物(6−11)を高速液体クロマトグラフで分析したところ、化合物(5−11)は検出されなかった。
<比較例5>
実施例1で得られた化合物(1−1)と化合物(2−1)の混合物の代わりに、比較例1で得た化合物(1−1)を用いた以外は製造例3と同じようにして化合物(3−1)を合成した。
このようにして得られた化合物(3−1)を高速液体クロマトグラフで分析したところ、化合物(4−1)は検出されなかった。
<比較例6>
実施例1で得られた化合物(1−1)と化合物(2−1)の混合物の代わりに、比較例2で得られた化合物(2−1)を用いた以外は実施例3と同じようにして化合物(4−1)を合成した。
このようにして得られた化合物(4−1)を高速液体クロマトグラフで分析したところ、化合物(3−1)は検出されなかった。
<ガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフの分析条件>
以上の実施例、比較例において、ガスクロマトグラフ装置には島津製作所製GC−2014を用いた。カラムはキャピラリーカラムDB−5(J&W Scientific) 長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25um、検出器はFIDを用いた。カラム温度は分析対象に合わせて適当に設定したまた高速液体クロマトグラフ装置には島津製作所製ポンプLC10AD、UV検出器SPD−10AV(検出波長254nmに設定)を用いた。カラムはジーエルサイエンス社製イナートシルODS−3V 15cmを用いた。溶媒にはアセトニトリル/水の混合溶媒を用い、混合比は分析対象に合わせて適宜設定した。
<電子写真感光体の作製>
<実施例6>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。すなわち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、前記酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランとをボールミルにて混合してスラリーを得た。得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥し、得られた疎水性処理酸化チタンをメタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させ、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。前記分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒と、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%:75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なった。これにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0重量%の下引き層用分散液を製造した。
次に、電荷発生物質として下記構造を有するY型チタニルフタロシアニン(X線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に最大回折ピークを示す)10重量部を、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 150重量部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行った。
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部及びフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部を混合してバインダー溶液を作製した。先に作製した顔料分散液160重量部に、バインダー溶液100重量部、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形分濃度4.0%の分散液を調製した。この様にして得られた分散液を、上述の下引き層を形成したフィルム上に乾燥後の膜厚が0.3μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
また、別に、電荷輸送物質として、実施例2で得た化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物を50重量部、バインダー樹脂100重量部、及び、レベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部をテトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調整した。なお、バインダー樹脂としては、以下に示す2,2−ビス(4―ヒドロキシ−3―メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位Aを51モル%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位Bを49モル%とからなり、p−tert−ブチルフェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)を用いた。
得られた電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにフィルムアプリケーターにより塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することにより、積層型感光層を有する電子写真感光体(A1)を製造した。
<実施例7>
実施例6の電荷輸送物質を、実施例2で得られた化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物と、比較例4で合成した化合物(6−11)とを混合して重量含有比率(6−11)/(5−11)を3.5%に調整したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(A2)を製造した。
<実施例8>
実施例6の電荷輸送物質を、実施例3で得られた化合物(3−1)と化合物(4−1)の混合物に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(B1)を製造した。
<実施例9>
実施例6の電荷輸送物質を、実施例3で得られた化合物(3−1)と化合物(4−1)の混合物と、比較例6で得られた化合物(4−1)とを混合して、重量含有比率(4−1)/(3−1)を1.3%に調整したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(B2)を製造した。
<実施例10>
実施例6の電荷輸送物質を実施例4で得られた化合物(3−12)と化合物(4−12)の混合物に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(C1)を製造した。
<実施例11>
実施例6の電荷輸送物質を実施例5で得られた化合物(3−11)と化合物(4−11)の混合物に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(C2)を製造した。
<実施例12>
実施例6の電荷輸送物質を化合物(7−1)と化合物(8−1)を混合して重量含有比率(8−1)/(7−1)を0.2%に調整したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(D1)を製造した。
<実施例13>
実施例6の電荷輸送物質を化合物(7−1)と化合物(8−1)を混合して重量含有比率(8−1)/(7−1)を1.5%に調整したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(D2)を製造した。
<比較例7>
実施例6の電荷輸送物質を比較例3で得られた化合物(5−11)に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(A3)を製造した。
<比較例8>
実施例6の電荷輸送物質を比較例3で得られた化合物(5−11)と比較例4で得られた化合物(6−11)を混合して重量含有比率(6−11)/(5−11)を25%に調製したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(A4)を製造した。
<比較例9>
実施例6の電荷輸送物質を比較例5で得られた化合物(3−1)に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(B3)を製造した。
<比較例10>
実施例6の電荷輸送物質を比較例3で得られた化合物(3−1)と比較例4で得られた化合物(4−1)を混合して重量含有比率(4−1)/(3−1)を25%に調製したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(B4)を製造した。
<比較例11>
実施例6の電荷輸送物質を化合物(7−1)に代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(D3)を製造した。
<比較例12>
実施例6の電荷輸送物質を化合物(7−1)と化合物(8−1)を混合して重量含有比率(8−1)/(7−1)を25%に調製したものに代えた以外は実施例6と同じようにして電子写真感光体(D4)を製造した。
<実施例14>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、この上に下記の電荷発生層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
電荷発生層用分散液は、次のようにして製造した。すなわち、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部とを、1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解して、バインダー溶液を調製した。続いて、下記の16種類の化合物の混合物である組成物1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕して微粒化分散処理を行い、それをバインダー溶液に混合した。
そのバインダー溶液に、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンとの9:1の混合液13.5部を更に混合した。
以上の手順により、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層塗布液を調製した。
次に、実施例2で製造した化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物70部と、下記繰り返し構造を持つ粘度平均分子量50000のポリカーボネート樹脂100部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部をテトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒600重量部に溶解させて得た電荷輸送層用塗布液を、アプリケーターで塗布し、室温で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして電子写真感光体(E1)を得た。
<比較例13>
実施例14の電荷輸送物質を、比較例3で得られた化合物(5−11)とした以外は実施例14と同じようにして、電子写真感光体(E2)を得た。
<感光体A1〜A4,B1〜B4、C1〜C2、D1〜D4の電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位(V(−V))を700(−V)とし、露光はハロゲンランプの光を干渉フィルターにより単色光とした780nm、除電はLEDによる660nmの単色光を用いた。780nmの光を1.0μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL(−V))、及び感度を表す指標として、表面電位を350(−V)まで半減させるのに必要な露光量(半減露光量)(E1/2(μJ/cm2))を測定した。VL測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下で行った。感度(半減露光量)及びVLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
表1より、電荷輸送物質として化合物(3−1)と化合物(4−1)を共存させても、両者の重量含有比率(4−1)/(3−1)が25%の場合には(比較例10)、重量含有比率(4−1)/(3−1)が0.01%ないし5%であるものよりも(実施例8、実施例9)、VLの値の絶対値が大きく電気特性が悪化した。
同様に、電荷輸送物質として化合物(7−1)と化合物(8−1)を共存させても、両者の重量含有比率(8−1)/(7−1)が25%の場合には(比較例12)、重量含有比率(8−1)/(7−1)が0.01%ないし5%であるものよりも(実施例12、実施例13)、感度(半減露光量)及びVLの値の絶対値が大きく電気特性が悪化した。
<感光体E1、E2の電気特性の評価>
上記の感光体評価と同じようにして、露光を、ハロゲンランプの光を、干渉フィルターを用いて単色光とした400nmの光で行い、除電を白色光とした。感光体の初期表面電位を−700Vとしたときに露光により表面電位が−350Vとなる露光量(E1/2)[μJ/cm2]と、露光の光量を1.0μJ/cm2とした時の表面電位(VL)[−V]を測定した。結果を表2に示す。
<光疲労特性の評価>
実施例6で作成した感光体A1、実施例7で作成した感光体A2、比較例7で作成した感光体A3、比較例8で作成した感光体A4に、白色蛍光灯(三菱オスラム社製「ネオルミスーパーFL20SS・W/18」)の光を感光体表面での光強度が2000ルクスとなるように調整して10分間照射した後、前期電子写真感光体特性の評価と同様の操作を行い、光暴露後の初期表面電位(V’)及び光暴露後の露光後表面電位(VL’)を測定し、光暴露前後での初期表面電位変化量(V−V’)、光暴露前後での露光後表面電位変化量(VL−VL’)を算出することにより耐光性を評価した。結果を表3に示す。表3より、実施例6、7で作成した感光体の方が比較例7、8のそれと比較して電位変動が少なかった。
<紫外可視吸収スペクトルの測定>
実施例2で作成した化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物をトルエンに溶解して10重量%濃度の溶液とした。これを光路長10mmの石英セルを用いて紫外可視分光光度計により透過率%Tを測定した。また、比較例3で作成した化合物(5−11)を同様にして透過率%Tを測定した。結果を表4に示す。表4より、実施例2で得られた化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物の方が青色露光に用いられる付近の波長域において透過率が高かった。
<耐オゾン性の評価>
耐オゾン特性として、オゾン暴露試験後の帯電保持率と電位回復率を評価した。オゾン暴露試験は静電気帯電試験装置(川口電気社製EPA8200)を使用し、上記の実施例8で得られた感光体B1と実施例9で得られた感光体B2、比較例9で得られた感光体B3、比較例10で得られた感光体B4を、コロトロン帯電器に25μAの電流を印加して帯電させ、その帯電値をV1とした。その後これらの感光体に150〜200ppm濃度のオゾンを1日4時間、2日間暴露し、暴露後に同様に帯電値を測定し、この値をV2とした。オゾン暴露前後の帯電保持率を(V2/V1)X100(%)と定義した。結果を表5に示す。
表5より、電荷輸送物質として化合物(3−1)を単独で用いるよりも(比較例9)、化合物(3−1)と化合物(4−1)を共存させた方が(実施例8、実施例9)、帯電保持率が良い、すなわち、耐オゾン特性が優れていた。
同様に、電荷輸送物質として化合物(7−1)を単独で用いるよりも(比較例11)、化合物(7−1)と化合物(8−1)を共存させた方が(実施例12、実施例13)、帯電保持率が良い、すなわち、耐オゾン特性が優れていた。
表1の前記結果も加えると、何れの場合においても、本発明の電子写真感光体は、電気特性(E1/2、VL)と帯電保持率(耐オゾン特性)とのバランスが良く、何れもが良好になることが分かった。一方、比較例9、11は、電気特性(E1/2、VL)は良いが、帯電保持率(耐オゾン特性)が悪く、比較例10、12は、帯電保持率(耐オゾン特性)は良いが、電気特性(E1/2、VL)が悪かった。
<感光体ドラムの製造>(感光体ドラムF1)
電荷発生物質として、実施例6で用いたものと同じオキシチタニウムフタロシアニン20重量部と、1,2−ジメトキシエタン280重量部を混合し、サンドグラインドミルで2時間分散処理を行い、分散液を作製した。続いてこの分散液と、10重量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)、487重量部の1,2−ジメトキシエタン、85重量部の4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンを混合して電荷発生層用塗布液を作製した。
次に、表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ376mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。このシリンダーを、先に作製した電荷発生層塗布形成用分散液に浸漬塗布して、その乾燥後の膜厚が約0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として実施例3で得られた化合物(3−1)と化合物(4−1)との混合物を50重量部、バインダー樹脂として実施例5で用いたものと同じポリカーボネート樹脂100重量部、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン8重量部、トリベンジルアミン0.1重量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液に先に電荷発生層を形成したシリンダーを浸漬塗布して、乾燥後の膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体F1とする。
製造例1(円形トナーの製造)
<ワックス重合性単量体分散液A1の調製>
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9)27部、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%アニオン性界面活性剤水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A)2.8部、脱塩水67.2部を90℃に加熱してディスパーザーで10分攪拌した。次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約25MPaの加圧条件で乳化を開始し、マイクロトラックUPAで測定しながら体積平均粒径を250nmまで分散してワックス重合性単量体分散液A1を作製した。
<シリコーンワックス分散液B1の調製>
下記構造(12)を有するアルキル変性シリコーンワックス27部、65.8%アニオン性界面活性剤水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンSC)0.46部、脱塩水72.54部を90℃に加熱してディスパーザーで10分攪拌した。次いでこの分散液を100℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約45MPaの加圧条件で乳化を開始し、マイクロトラックUPAで測定しながら体積平均粒径が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液B1を作製した。
[式(12)中、Rはメチル基、mは平均で10、X及びYはそれぞれ異なっていてもよい平均炭素数30のアルキル基を示す。]
<重合体一次粒子分散液A2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス重合性単量体分散液A1 35.6重量部、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加し、下記の開始剤水溶液を重合開始から5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に1時間保持した。乳化剤には第一工業製薬社製の65.8%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液であるネオゲンSCを脱塩水で20%に希釈したものを用いた(以下20%DBS水溶液と略す)。
[モノマー類]
スチレン 76.8部
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A2を得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は200nmであった。
<重合体一次粒子分散液B2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックスシリコーン分散液B1 23.7重量部、20%DBS水溶液1.5重量部、脱塩水326部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を添加した。
その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 92.5部
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B2を得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は260nmであった。
<着色剤分散液Cの調製>
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、カーボンブラック(三菱化学社製、MA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、脱塩水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。この液を湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径は75mmΦ、セパレータとディスクの間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズを用いた。メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/s)として、供給口より前記プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度約50L/hで連続的に供給し、排出口より連続的に排出することにより黒色の着色剤分散液Cを得た。マイクロトラックUPAで測定した体積平均粒子径は150nmであった。
<現像用トナーAの製造>
重合体一次粒子分散液A2 95部 (固形分として)
重合体一次粒子分散液B2 5部 (固形分として)
着色剤微粒子分散液C 6部 (固形分として)
20%DBS水溶液 0.1部 (固形分として)
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
反応器(容積2L、バッフル付きダブルヘリカル翼)に重合体一次粒子分散液A2と20%DBS水溶液を仕込み、均一に混合してから着色剤微粒子分散液Cを添加し、均一に混合した。得られた混合分散液を攪拌しながら第一硫酸鉄の0.5%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部添加し、30分混合後更に硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.29部)。その後攪拌しながら45分かけて52℃に昇温して、その後95分かけて55℃まで昇温した。ここでコールターカウンターにて粒径測定を実施したところ50%体積径が6.8μmであった。その後、重合体一次粒子分散液B2を添加して60分保持し、20%DBS水溶液(固形分として8部)を添加してから30分かけて92℃に昇温して34分保持した。
その後冷却して得られたスラリーを、通気度80cc/分のポリプロピレン製フィルターにより0.2MPaの圧力を加えて加圧濾過し、スラリー100重量部に対して33部のろ液を排出した。その後、0.2MPa下で洗浄水を連続的に1時間加えて洗浄した。得られたスラリー液を再分散したものに対して、上記洗浄操作を繰り返し、合計3回の濾過洗浄工程を行った。これにより得られたトナー粒子を乾燥することによりトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に、外添微粒子として下記シリカ1を2部、シリカ2を0.5部、チタニア1を0.1部、ミキサーにて混合し熱定着用トナーを製造した。
[外添微粒子]
シリカ1:ワッカー社製H50TD
(ジメチルポリシロキサン処理、平均1次粒径約30nm、密度2.4g/cm3)
シリカ2:ワッカー社製H30TD
(ジメチルポリシロキサン処理、平均1次粒径約7nm、密度2.4g/cm3)
チタニア1:テイカ社製SMT−150ID
(アルキルシラン処理、平均1次粒径約15nm、密度4.2g/cm3)
マルチマイザーIIで測定した体積平均粒径は7.05μm、Dv/Dnは1.14、FPIA2000で測定した平均円形度は0.963であった。
<画像評価>
実施例15
先に作製した感光体ドラムF1を(株)沖データ社製カラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−Eのブラックドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様
・4連タンデム
・カラー36ppm、モノクロ40ppm
・1200dpi
・DC接触ローラ帯電
・LEDによる書き込み
・除電光あり
・トナーには製造例1で製造した平均円形度0.963、体積平均粒径7.05μm、Dv/Dn=1.14のトナーを用いた
温度25℃、湿度50%の条件下で画像形成試験を実施したところ良好な画像を得た。
実施例16
<感光体ドラムの製造>(感光体ドラムG1)
平均1次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部とを混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー社製YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用いて、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
この酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒と、特開平4−31870号公報の実施例に記載されたε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合し、ポリアミドペレットを溶解させた。
その後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製マイテックスLC)により濾過した。以上の手順によって、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用分散液を得た。
陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ376mm、肉厚0.75mm)を、下引き層形成用分散液Aに浸漬塗布し、乾燥した膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。この上に、実施例14で使用した電荷発生層塗布液を使用して、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
実施例2で得られた化合物(5−11)と化合物(6−11)の混合物70部、下記構造を有する酸化防止剤8部、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越化学工業(株)社製、KF96)0.05部、及び実施例5で用いたものと同じポリカーボネート樹脂100部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒600部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
上述の電荷発生層上に、電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体ドラムG1を得た。
<画像評価>
沖データ社製カラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−Eの露光部を、小型スポット照射型青色LED(日進電子製、B3MP−8:470nm)が感光体に照射できるように改造した。この改造装置に、感光体ドラムG1を装着し、線を描かせたところ、良好な画像が得られた。また、上記小型スポット照射型青色LEDに、連続点滅するストロボ照明電源LPS−203KSを接続して点を書かせたところ、直径8mmの黒点を8mm間隔で画像形成することができた。