以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に制限されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変更することができる。
[1.電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する。電子写真感光体を構成する感光層構成としては、公知のいずれの構成も使用することができるが、具体的な構成の例としては、電荷発生物質を含んだ層と電荷輸送物質を含んだ層とを積層した積層型感光体と、電荷輸送物質を含む層に電荷発生物質を分散させた単層型感光体が挙げられる。
また、積層型感光体では、電荷発生層、電荷輸送層を支持体側からこの順に積層した順積層型感光体と、逆に積層した逆積層型感光体があり、本発明ではいずれの感光層構成も用いることができるが、特にバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光体が好ましい。
いずれの場合にも、本発明に係る電子写真感光体は、感光層中に本発明に係る式(1)で表される化合物を含有する。通常、式(1)で表される化合物は電荷発生物質として用いられるが、特に限定はされない。また、他の化合物を併用してもかまわない。一般に、電荷発生物質は単層型感光体に用いられる場合でも、積層型感光体に用いられる場合でも、電荷を発生する機能としては同等の機能を示すことが知られている。
[1−1.式(1)で表される化合物]
本発明に係る電子写真感光体は、下記式(1)で表される化合物を含有していれば他に制限はない。
(式(1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリーレン基を表わし、Xは原子数3以上25以下の連結基を表わし、n1は0又は1の整数を表わし、Cp
1は下記式(2)で表されるカップラー残基を表わし、Cp
2は水酸基を有する炭素数50以下の有機基を表わす。また、Ar
1及びAr
2が互いに架橋していてもよい。)
(式(2)中、R
1は炭素数が3〜8の分岐鎖状アルキル基を表わし、Ar
3は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わし、n2は0又は1の整数を表わし、Z
1は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表す。)
<Ar1及びAr2について>
式(1)中の、Ar1及びAr2のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、フェナンスレン基等が挙げられる。中でも、フェニレン基が好ましい。Ar1及びAr2の炭素数は、それぞれ独立に、通常6以上、また通常20以下、好ましくは16以下、更に好ましくは10以下である。Ar1及びAr2の炭素数が大きすぎると式(1)の化合物の安定性が低下する可能性があるからである。
また、Ar1及びAr2は、置換基を有してもよい。ただし、置換基が大きすぎると、電気特性に影響が出る可能性があるため、原子数20以下の置換基が好ましく、原子数10以下が更に好ましい。また、置換基の数は1つでもよいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
具体的に、Ar1及びAr2が有してもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、ハロゲン基等が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基等が挙げられる。ハロゲン基の例としてはクロロ基等が挙げられる。
また、上記の置換基は、例えば、メチル基等のアルキル基、弗素原子等のハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい。
式(1)において、アゾ部位の窒素原子は、Ar1の任意の炭素原子と結合できる。ただし、アゾ部位の窒素原子に結合するAr1上の炭素原子と、X(n1=0の場合は、Ar2)と結合しているAr1上の炭素原子とは、隣の位置でないことが好ましい。このことは、アゾ部位の窒素原子とAr2との結合の位置関係に関しても同様である。即ち、Ar1と同様にして、任意の位置関係で結合できる。更に、好ましい結合の位置関係も同様である。
以上説明したAr1及びAr2のうち、電気特性の観点から、少なくともAr1がp−フェニレン基であることが特に好ましい。
また、Ar1及びAr2は、Xとは別に連結基を介して結合し、互いに架橋して環構造を形成してもよい。n1=0の場合でも、Ar1とAr2を直結する単結合とは別に更に連結基を介して結合し、互いに架橋して環構造を形成してもよい。連結基は、原子数10以下であれば制限はないが、特に好ましくは6以下である。その様な連結基の種類は制限されず、例えば、カルボニル基[2価の−C(=O)−をいう]、スルフィニル基、スルホニル基、スルフィナト基、アルキレン基、アルキリデン基、オキシ基、セレノ基、チオ基等が挙げられ、好ましくはカルボニル基、アルキレン基である。
<Xについて>
式(1)中、Xは連結基を表わす。連結基Xの具体的な例としては、複素環を有する基、芳香族性を持つ環を有する基、縮合多環を有する基、脂肪族炭化水素を有する基、−S(O)2−、−N(CH3)−、−N(O)−、等が挙げられる。これらの連結基は1つの基でも、複数の基を組み合わせてもよい。ただし、連結基Xが大きすぎると、電気特性に影響が出る可能性があるため、連結基Xの原子数は、通常3以上、好ましくは4以上、また通常25以下、好ましくは10以下の範囲である。
連結基Xが複素環を有する基である場合、例えば、窒素、硫黄等の原子を有するものが好ましい。具体的には、ヘテロアリール環を有する2価基が好ましく、例えば、インドール環を有する2価基、オキサゾール環を有する2価基、イソオキサゾール環を有する2価基、オキサジアゾール環を有する2価基、チオフェン環を有する2価基が好ましい。中でもオキサジアゾール環を有する2価基がより好ましい。
連結基Xが芳香族性を持つ環を有する基である場合、例えば、アリーレン基が好ましく、連結基Xがアリーレン基である場合、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が好ましい。中でもフェニレン基、ナフチレン基がより好ましい。
連結基Xが縮合多環を有する基である場合、例えば、テトラリン、アズレン、フルオレン等を有する基が好ましい。中でもテトラリン、フルオレンを有する基がより好ましい。
連結基Xが脂肪族炭化水素を有する基である場合、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アルキリデン基が好ましい。連結基Xがアルキレン基である場合、炭素数9以下のアルキレン基が好ましい。連結基Xがアルケニレン基である場合、炭素数9以下のアルケニレン基が好ましい。連結基Xがアルキニレン基である場合、炭素数9以下のアルキニレン基が好ましい。連結基Xがアルキリデン基である場合、炭素数9以下のアルキリデン基が好ましい。
また、上記の連結基Xは、置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもよいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。置換基の種類は制限されず、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
以上説明したXのうち、電気特性の観点から、下記式(3)に示すオキサジアゾール環が特に好ましい。
<n1について>
式(1)中、n1は、0又は1の整数を表わす。n1が0の場合は、Ar1とAr2とが直結している。また、電気特性の点からは、n1は1であることが好ましい。
<Cp
1について>
Cp
1は下記式(2)で表されるカップラー残基を表わす。
(式(2)中、R
1は炭素数が3〜8の分岐鎖状アルキル基を表わし、Ar
3は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わし、n2は0又は1の整数を表わし、Z
1は環構造を有する炭素数30以下の有機基を表す。)
式(2)中、R
1は、炭素数が3〜8の分岐鎖状アルキル基を示す。具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、イソへキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、3,3−ジメチルブチル基、1−メチルへキシル基、5−メチルへキシル基、1−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、1−メチルへプチル基、5−メチルへプチル基、1−エチルへキシル基、2−エチルへキシル基、1−プロピルペンチル基、等が挙げられる。中でも下記式(4)で表される分岐鎖状アルキル基が好ましい。更に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソへキシル基、2−エチルブチル基、2−エチルへキシル基である。
(式(4)中、aは0〜5の整数を表わし、bとcはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。ただし、a=0の時はb=cである。)
特開2000−105478号公報(特許文献6)には、式(2)におけるR1がn−ペンチル基である化合物が例示されているが、同じ炭素数のもので比較した場合、直鎖状アルキル基よりも本発明に係る分岐鎖状アルキル基の方が、感度が高く優れた電気特性を有する。また、特開2004−078147号公報には、式(2)におけるR1がシクロアルキルアルキル基である化合物が例示されているが、同じ炭素数のもので比較した場合、シクロアルキルアルキル基よりも、本発明のような分岐鎖状アルキル基の方が、優れた電気特性を有する。
式(2)中、Ar3は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わし、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基が好ましい。
Ar3と酸素原子の結合位置については、どの位置でも構わない。Ar3がフェニレン基の場合、好ましくはメタ置換、パラ置換であり、更に好ましくはメタ置換である。
式(2)中、n2は0又は1の整数を表わす。n2が0の場合は、式(2)に明示されたアミド結合(−CONH−)のNと、Ar3とが直結している。また、電気特性の観点から、n2は0であることが好ましい。
式(2)中、Z1は、炭素数30以下の有機基であり、式(2)中のベンゼン骨格と2箇所以上で結合して環構造を形成していれば他に制限はない。ただし、Z1の炭素数は好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。また、Z1は芳香環を有することが好ましい。
以上の好ましいZ
1のうち、以下の式(5)又は(6)で表わされるものが、更に好ましい。
式(5)又は(6)で表わされる有機基は、いずれも任意の場所に任意の置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。その具体例としては、有機基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、式(6)のR2は、本発明の効果を著しく制限しなければ任意であるが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又は置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基若しくはアリール基、等が挙げられる。このとき、R2は式(6)中に1つだけ結合してもよいし、複数のR2が結合してもよい。複数結合する場合には、各々のR2が同じでもよいし、異なっていてもよい。R2の原子数に制限はないが、通常1以上、また通常5以下、好ましくは3以下である。R2がハロゲン原子である場合、例えば、−Cl、−F等が好ましい。
R2がアルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましい。R2がアルコキシ基である場合、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が好ましい。R2がアリール基である場合、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が好ましい。
また、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基は置換されていてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。置換基としては例えば、アリール基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
式(2)中の、CONH基の結合位置についてであるが、OH基が結合しているフェニレン環、あるいはZ
1の環の、どの位置に置換されていてもよい。好ましい置換位置は下記式(7)で表されるOH基の隣の位置であり、またZ
1が前記式(5)の構造を有する場合には下記式(8)で表される置換位置も好ましい。
更に好ましい置換位置は、式(7)で表されるOH基の隣の位置である。
<Cp2について>
式(1)中、Cp2は、水酸基を有する炭素数50以下の有機基であれば他に制限はない。ただし、炭素数は好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、また通常1以上、好ましくは6以上、特に好ましくは10以上である。また、有機基Cp2が有する炭素鎖は、それぞれ独立に、直鎖状でもよいし、分岐鎖を形成していてもよい。環を形成していてもよく、環の数は任意である。更に、鎖状及び環状の基が結合した構造であってもよい。更には、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有していてもよい。
Cp2は、更に置換基を有してもよい。置換基は1つでもよく、2つ以上でもよいが、置換基が大きすぎると、電気特性に影響が出る可能性がある。そのため、置換基の原子数は通常40以下、好ましくは20以下である。
具体的に、Cp2に置換してもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基等が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基等が挙げられる。また、上記の置換基は、例えば、メチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基等によって置換されていてもよい。
中でも好ましいのは、Cp
2が、前記式(2)又は式(9)〜(11)で表わされる構造を有することである。Cp
2が前記式(2)の構造を有するとき、Cp
2はCp
1と同一でも異なっていてもよい。前記式(2)についてはCp
1のところで説明した通りである。
(式(9)、(10)中、Z
2、Z
3は、環構造を有する炭素数30以下の有機基を表わし、式(11)中、Z
4は、少なくとも1つのOH基を備える、環構造を有する炭素数30以下の有機基を表わす。R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水素原子、ニトリル基又は置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表わし、n
3は、0又は1の整数を表わす。)
式(9)中のZ2は、炭素数30以下の有機基であり、式(9)中のベンゼン骨格と2箇所以上で結合して環構造を形成していれば他に制限はなく、n3は0又は1の整数を表わす。式(9)中、Z2及びn3の詳細に関しては、前記式(2)のZ1及びn2の説明と同様であり、−CONH−基の結合位置についても全く同様である。
式(9)中、R3は、本発明の効果を著しく妨げなければ制限はないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。R3の炭素数に制限はないが、通常1以上、好ましくは3以上、また通常10以下、好ましくは7以下である。この中で、好ましくはアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、更に好ましくはフェニル基である。
このR3は置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられ、中でもアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、フッ素原子、塩素原子が好ましく、更には直鎖状アルキル基又は環状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。このときのアルコキシ基の炭素数に制限はないが、通常3以上、好ましくは4以上、また通常11以下、好ましくは8以下である。
式(10)中のZ3は、炭素数30以下の有機基であり、ナフタレン骨格と2箇所以上で結合して環構造を形成していれば他に制限はない。ただし、Z3の炭素数は、好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、また通常1以上、好ましくは3以上である。電気特性を良好なものとするためである。
Z3はヘテロ環を形成していることが好ましい。更に、二重結合を1つ又は2つ以上有することも好ましい。更には、Z3はカルボニル基を介してナフタレン骨格と結合することが好ましい。
以上の好ましいZ
3のうち、式(12)〜(14)で表わされるものが、更に好ましい。
式(12)及び式(13)において、環Yは置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環、若しくは置換基を有していてもよい2価の含窒素複素環を表す。環Yの2価の芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられ、特にベンゼン環が好ましい。含窒素複素環を構成する2価の基の具体例としては、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、ピリミジンジイル基等が挙げられ、特にピリジンジイル基が好ましい。
また、式(12)及び式(13)において、環Yは置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。置換基の種類は制限されず、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、ニトリル基等が挙げられる。アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子として例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては例えば、トリフルオロメチル基等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
式(12)〜(14)で表わされる有機基は、いずれも任意の場所に任意の置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、置換基の種類は制限されず、例えば、有機基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、式(14)のR6は、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表わす。R6の炭素数に制限はないが、通常1以上、好ましくは6以上、また通常15以下、好ましくは10以下である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が好ましい。
また、これらのアルキル基及びアリール基は更に置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
前記式(11)中のZ4は、炭素数30以下の有機基であり、式(11)中の窒素を2つ含む五員環と2箇所で結合して環構造を形成しており、更にOH基を1つ以上有していれば他に制限はない。ただし、Z4の炭素数は、好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。また、OH基の数に制限はないが、2以下が好ましく、特に好ましくは1である。
また、Z4は窒素原子と二重結合を有する複素環であることが好ましく、その環の数は小さいほど好ましい。特に、複素環の数は1であることが好ましい。
以上の好ましいZ
4のうち、式(15)で表わされるものが、更に好ましい。なお式(15)において、OH基の位置は任意の位置に結合される。
式(15)で表わされる有機基は、いずれも任意の場所に任意の置換基を有していてもよい。置換基の数は1つでもいいし、2つ以上の置換基を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。具体例としては、アルキル基等の有機基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、式(11)のR4及びR5は、本発明の効果を著しく妨げなければ制限はないが、例えば、ハロゲン原子、水素原子、ニトリル基、又は、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。このとき、R4及びR5は、式(11)中に各々1つずつ以上結合していてればよい。複数結合する場合には、それぞれ同じ置換基が結合してもよいし、異なった置換基が、任意の組み合わせで結合してもよい。R4及びR5の炭素数に制限はないが、通常1以上、また通常3以下、好ましくは2以下である。
<Cp1及びCp2の結合位置について>
Cp1又はCp2において、アゾ結合の窒素原子と結合する原子は、OH基の置換している原子の隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子であることが好ましい。
この位置関係の具体的な例を式で表現すると、以下の式(16)のようになる。ただし、アゾ結合の窒素原子と結合する原子は、OH基の置換している原子の隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子であればよく、式(16)に限定されるものではない。また、OH基の置換している隣、又は、隣の隣の隣の炭素原子に水素が結合していない場合においては、当該炭素原子ではCp1又はCp2とアゾ基のチッ素とは結合しない。なお、以下の式は、式(1)のうち、Cp1、又はCp2、並びにアゾ部位の窒素原子の一部を抜粋した式である。
<式(1)で表される化合物の好ましい例>
式(1)で表わされる化合物は、電荷発生物質として使用することが好ましい。式(1)で表される化合物は、特開平9−281733号公報中に記載されているが、380nm〜500nmという短波長の光に対して、優れた特性を有することは知られていない。露光光の波長が380nm〜500nmの単色光である場合、良好な画像を形成するためには、電荷輸送層における露光光の波長の透過率が、87%以上であることが好ましい。電荷輸送層の詳細な説明は後述する。このような電荷輸送層を選択した場合、感光層の接着強度に問題があるような場合が見受けられたが、本発明に係る式(1)で表されるアゾ化合物を用いた場合には、感光層の接着強度が良好となった。実際のところは不明であるが、本発明のアゾ化合物を電荷発生物質として使用したときに、電荷発生層バインダー、電荷輸送剤、電荷輸送層バインダー等との絡み合いが増し、接着強度が向上したものと推測される。
以下、表を用いて、式(1)で表される本発明に係るアゾ化合物のうち、好ましい具体例を示す。表1〜表3は、Cp
1、Cp
2、及び表1〜表3は、Cp
1、Cp
2、及び
の好ましい構造について、表わしたものである。本発明に係る式(1)で表わされる化合物は、任意のCp
1、Cp
2、及び
の組み合わせの構造を有していることが好ましい。更には、表1〜表3の各行の組み合わせの構造を有していることが特に好ましい。
なお、表1〜表3のCp
1及びCp
2のアゾ部分のNとの結合位置は、表1〜表3の例に限定されるものではなく、OH基の置換している隣、又は、隣の隣の隣で結合していればよい。
[1−2.式(1)で表される化合物と併用できる電荷発生物質]
本発明に係る電子写真感光体は、少なくとも式(1)で表される化合物(電荷発生物質)を備えていれば他に制限はない。即ち、式(1)で表される化合物に、更に他の構造を有する電荷発生物質を1種類、又は2種類以上併用することもできる。併用する電荷発生剤の量に制限はないが、本発明の効果を充分に得るため、併用する電荷発生物質の感光層中に含まれる重量が、式(1)で表されるアゾ化合物の重量を超えないことが好ましい。
式(1)で表される化合物に、それ以外の構造を有する電荷発生物質を併用する場合、例えば、無機系光導電材料、及び有機系光導電材料を用いることができる。無機系光導電材料の例としては、セレン及びその合金、硫化カドミウム等が挙げられる。有機系光導電材料の例としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、チオピリリウム顔料等が挙げられる。その中でも有機顔料が好ましく、特にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
フタロシアニン顔料の具体的な例としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等を配位したフタロシアニン類の各種結晶型が挙げられる。
中でも感度の高い結晶型である、X型,τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型),B型(別称α型),D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体等が好ましい。更にこれらのフタロシアニンのうち、A型,B型,D型チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
また、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
アゾ顔料の具体的な例としては、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、テトラキス顔料等が挙げられ、好適なアゾ化合物の具体例を以下に記す。
[1−3.電子写真感光体の構成]
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に、前述した本発明に係る式(1)で表される化合物を含有する感光層を設けたものであれば、その詳細な構成は制限されない。以下、代表的な構成について説明する。
<1−3−1.導電性支持体>
導電性支持体としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を含有させて導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用されるが、本発明の効果を著しく制限しない限り、これに限定されるものではない。またこれは1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
陽極酸化被膜は、例えば酸性浴中で陽極酸化処理することによって形成される。このとき用いられる酸性溶液の具体例としては、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられ、中でも硫酸が好ましい。硫酸を用いて陽極酸化処理を施す場合、硫酸の濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、反応温度は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されることが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
陽極酸化被膜の平均膜厚は通常3μm以上、好ましくは5μm以上、また通常20μm以下、好ましくは7μm以下であることが好ましい。陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、後述する封孔処理において、封孔剤の高濃度化、高温の処理温度、及び長時間の処理時間等、強い条件下で処理することとなる。これでは生産性を悪くする可能性や、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる可能性があるためである。
形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことは好ましい。封孔処理は、いずれの公知の方法でも行うことができるが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として例えば酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理によって施されるのが好ましい。
上記の低温封孔処理を施す場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液の濃度は、任意の濃度を用いることができるが、3〜6g/Lの範囲の濃度で用いることが好ましい。また、処理温度は、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また通常40℃以下、好ましくは35℃以下が望ましい。また、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常pH4.5以上、好ましくはpH5.5以上、また通常pH6.5以下、好ましくはpH6.0以下の範囲で処理されることが望ましい。このとき、pH調節剤としては、公知のいずれのpH調節剤も用いることができるが、具体的にはシュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが好ましい。低温封孔処理をスムーズに進行させるためである。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させてもよい。低温封孔処理の後に水洗、乾燥を行う。
上記の高温封孔処理を施す場合、封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等を用いることが好ましく、特に酢酸ニッケルを用いることが好ましい。封孔剤として酢酸ニッケル水溶液を用いる場合、溶液の濃度は5〜20g/Lの範囲の濃度で用いることが好ましい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また通常100℃以下、好ましくは98℃が望ましい。また、酢酸ニッケル水溶液のpHは通常4.0以上、好ましくは5.0以上、また通常8.0以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのが望ましい。このとき、pH調節剤としては公知のいずれのpH調節剤を用いることができるが、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが好ましい。高温封孔処理をスムーズに進行させるためである。高温封孔処理の時間は、通常10分以上、好ましくは20分以上、また通常100分以下、好ましくは60分以下が望ましい。なお、被膜物性を更に改良するために、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。高温処理の後に、更に、実質上塩類を含まない高温水や高温水蒸気で処理することは好ましい。高温封孔処理の後に水洗、乾燥を行う。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化してもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化してもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
<1−3−2.下引き層>
導電性支持体と感光層との間には、接着性、ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。特には、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。
また下引き層は、単一層であっても、複数層を設けてもかまわない。更に、下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から0.1μm以上、20μm以下が好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を含んでいてもよい。
(金属酸化物粒子)
下引き層が含有する金属酸化物粒子としては、本発明の効果を著しく制限しない限り、電子写真感光体に使用可能ないかなる金属酸化物粒子も使用することができる。その具体的な例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられるが、中でも、バンドギャップが2〜4eVの金属酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましい。バンドギャップが小さすぎると、導電性支持体からのキャリア注入が起こりやすくなり、画像を形成した際の黒点や色点等の欠陥が発生しやすくなり、バンドギャップが大きすぎると、電子のトラッピングにより電荷の移動が阻害され、電気特性が悪化する可能性があるためである。またこれらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタン及び酸化アルミニウムがより好ましく、酸化チタンが特に好ましい。
なお、これらの金属酸化物粒子は、一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、金属酸化物粒子は、1種の金属酸化物のみから形成されていてもよく、2種以上の金属酸化物を任意の組み合わせ及び比率で併用して形成されていてもよい。
(金属酸化物粒子の結晶型)
また、金属酸化物粒子の結晶型は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、金属酸化物として酸化チタンを用いた金属酸化物粒子(即ち、酸化チタン粒子)の結晶型に制限は無く、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、酸化チタン粒子の結晶型は、前記の結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
(金属酸化物粒子の表面処理)
更に、金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行なってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、有機ケイ素化合物等の有機物等の処理剤による処理を施していてもよい。
特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合には、有機ケイ素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、特に、下記式(17)の構造で表されるシラン処理剤で処理することが好ましい。このシラン処理剤は、金属酸化物粒子との反応性も良く良好な処理剤である。
前記式(17)中、Ru1及びRu2は、それぞれ独立してアルキル基を表す。Ru1及びRu2の炭素数に制限はないが、通常1以上であって、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特には3以下である。これにより金属酸化物粒子との反応性が好適になる。炭素数が多くなりすぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液中での分散安定性が低下したりする可能性がある。Ru1及びRu2の好適な具体例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
前記式(17)中、Ru3は、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。Ru3の炭素数に制限はないが、通常1以上であり、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下で、特に好ましくは3以下である。これにより金属酸化物粒子との反応性が好適になる。炭素数が多くなりすぎると、金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の塗布液中での分散安定性が低下したりする可能性がある。Ru3の好適な具体例を挙げると、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
なお、前述のような処理剤で処理をした場合、通常その最表面を前記式(17)の構造で表されるシラン処理剤で処理する。このとき、前述した表面処理は、1つの表面処理のみを行なってもよく、2つ以上の表面処理を任意の組み合わせで行なってもよい。例えば、前記式(17)で表わされるシラン処理剤による表面処理の前に酸化アルミニウム、酸化ケイ素又は酸化ジルコニウム等の処理剤等で処理されていてもかまわない。また、異なる表面処理を施された金属酸化物粒子を、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(金属酸化物粒子の体積平均粒子径)
金属酸化物粒子の体積平均粒子径は、通常0.1μm以下、好ましくは95nm以下、より好ましくは90nm以下、また下限に制限はないが、通常20nm以上である。低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定し、得られる画像に黒点、色点等の画像欠陥が生じることを抑制することができるためである。金属酸化物粒子の体積平均粒子径の測定は、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中に金属酸化物粒子を分散させた液に対して、動的光散乱法により測定される。動的光散乱法については後述する。
(金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒子径)
金属酸化物粒子の小粒径側より体積での累積90%粒子径は、通常0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.15μm以下、また下限に制限はないが、通常0.05μm以上である。累積90%粒子径が大きすぎると、黒点や色点等の画像欠陥が生じる可能性があり、また小さすぎると、後述する下引き層形成用の塗布液を、塗布乾燥して下引き層を形成する場合の、塗布液の保存安定性が低下する可能性があるためである。
従来の電子写真感光体では、下引き層に、下引き層の表裏を貫通できるほど大きい金属酸化物粒子が含有される場合があり、当該大きな金属酸化物粒子によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。更に、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って導電性基体から感光層に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、金属酸化物粒子の小粒径側より累積した累積90%粒子径が前述の範囲になることで、大きな金属酸化物粒子が非常に少なくなる。そのため、本発明に係る電子写真感光体は、欠陥の発生、及び、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能になる。
(動的散乱法による金属酸化物粒子の粒度分布の評価)
該下引き層中の金属酸化物粒子は、一次粒子として存在することが望ましい。しかし、通常はそのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合がほとんどである。従って、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を測定することで、金属酸化物粒子の状態を評価することは非常に重要である。下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を直接評価することは非常に困難であるが、下引き層を特定の溶媒中に分散させ、当該分散液を評価することにより、下引き層中の金属酸化物粒子の粒度分布を知ることができる。
具体的には、下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の、金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び小粒径側より体積での累積90%粒子径は、金属酸化物粒子がどのような存在形態であっても、動的光散乱法により測定された値を用いることができる。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。下引き層中における金属酸化物粒子の体積平均粒子径の値は、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子等の粒径を意味していない。実際の測定では、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下、「UPA」と略記する)を用いて、以下の設定にて行なうものとする。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行なう。
動的光散乱方式粒度分析計の設定
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数 :44
測定時間 :300sec
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20(g/cm3)(密度の値は二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いる。)
分散媒種類 :メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3)
分散媒屈折率 :1.35
なお、下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液が濃すぎて、その濃度が測定装置の測定可能範囲外となっている場合には、下引き層形成用塗布液をメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(メタノール/1−プロパノール=7/3(重量比);屈折率=1.35)で希釈し、濃度を測定装置が測定可能な範囲に収めるようにする。例えば、上記のUPAの場合、測定に適したサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒で希釈する。
このように希釈を行なったとしても、下引き層を分散した液中における金属酸化物粒子の粒子径は変化しないものと考えられるため、前記の希釈を行なった結果測定された、体積平均粒子径、及び体積での累積90%粒子径は、下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液において測定される、体積平均粒子径、及び体積での累積90%粒子径として取り扱うものとする。
(金属酸化物粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物粒子の平均一次粒子径に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron micloscope:以下、TEMと略記する)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求められ、その値が通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。
(金属酸化物粒子の屈折率)
金属酸化物粒子の屈折率には制限はなく、電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。金属酸化物粒子の屈折率は、通常1.3以上、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、通常3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
(バインダー樹脂)
下引き層が含有するバインダー樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができ、通常、電子写真感光体に使用可能ないかなるバインダー樹脂も使用することができる。通常は、有機溶剤等の溶媒に可溶であって、且つ、形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤等の溶媒に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものを用いる。
このような下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂及びセルロースエーテル樹脂等のセルロース類、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性及び塗布性を示し好ましい。ただし、本発明の効果を著しく制限しない限り、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン;N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂等を挙げることができる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(18)で表されるジアミンに対応するジアミン成分(以下適宜、「式(18)に対応するジアミン成分」という)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましい。
上記式(18)において、Ru4〜Ru7は、水素原子又は有機置換基を表す。d、eはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。なお、当該有機置換基が複数ある場合、それらの置換基は互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
Ru4〜Ru7で表される有機置換基として好適なものの例を挙げると、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基が挙げられる。この中でも好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、又はアルコキシ基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
また、Ru4〜Ru7で表される有機置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下である。炭素数が大きすぎると、溶媒に対する溶解性が悪化して塗布液がゲル化したり、一時的に溶解しても時間の経過とともに塗布液が白濁したりゲル化したりするおそれがあるため好ましくない場合がある。
前記式(18)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、式(18)に対応するジアミン成分以外の構成成分(以下適宜、単に「その他のポリアミド構成成分」という)を構成単位として含んでいてもよい。その他のポリアミド構成成分としては、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等が挙げられる。この際、前記の共重合ポリアミド樹脂は、その構成成分を、例えば、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。
前記式(18)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂がその他のポリアミド構成成分を構成単位として含む場合、全構成成分中に占める式(18)に対応するジアミン成分の割合に制限はないが、通常5mol%以上、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、また、通常40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。式(18)に対応するジアミン成分が多すぎると、塗布液の安定性が悪くなる可能性があり、少なすぎると高温高湿度条件での電気特性の変化が大きくなり、電気特性の環境変化に対する安定性が悪くなる可能性がある。
前記の共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。ただし、具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
前記の共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用される。例えば溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重縮合方法が適宜適用できる。また、重合に際して、例えば、酢酸や安息香酸等の一塩基酸;ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基等を、分子量調節剤として重合系に含有させてもよい。なお、これらのバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤と共に硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性及び塗布性を示し、好ましい。
(バインダー樹脂の数平均分子量)
バインダー樹脂の数平均分子量にも制限はない。例えば、バインダー樹脂として共重合ポリアミドを使用する場合、共重合ポリアミドの数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、また、通常50000以下、好ましくは35000以下である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても下引き層の均一性を保つことが難しくなりやすい。
(金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率)
下引き層を形成するための塗布液において、金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、下引き層を形成するための塗布液においては、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子を、通常0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、また、通常4重量部以下、好ましくは3.8重量部以下、より好ましくは3.5重量部以下の範囲で用いる。金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して少なすぎると、電子写真感光体の電気特性が悪化するおそれがあり、特に残留電位が上昇する可能性がある。また、金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して多すぎると、当該感光体を用いて形成した画像の黒点、色点等の画像欠陥が増加する可能性がある。
(下引き層形成用の塗布液)
下引き層は、通常、下引き層形成用の塗布液を塗布形成して得られる。下引き層の各種物性は、下引き層を形成するための塗布液の物性に影響される。
塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、下引き層を形成するための塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で用いる。
通常、下引き層を形成するための塗布液は、前記の下引き層を構成する成分を、溶媒に溶解又は分散してなる。下引き層を形成するための塗布液に用いる溶媒(下引き層用溶媒)としては、バインダー樹脂を溶解させうるものであれば、任意のものを使用することができる。この溶媒としては、通常は有機溶媒を使用する。溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
また、前記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、単独ではバインダー樹脂を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒(例えば、上記例示の有機溶媒等)との混合溶媒とすることでバインダー樹脂を溶解可能であれば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
下引き層を形成するための塗布液において、溶媒と、金属酸化物粒子、バインダー樹脂等の固形分との量比は、下引き層を形成するための塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。
下引き層を形成するための塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、前述した金属酸化物粒子、バインダー樹脂及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。例えば、下引き層を形成するための塗布液には、その他の成分として添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤等が挙げられる。なお、添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
塗布液の製造方法に特に制限はない。ただし、下引き層を形成するための塗布液は、上述したように金属酸化物粒子を含有するものであり、金属酸化物粒子は下引き層を形成するための塗布液中に分散されて存在する。従って、下引き層を形成するための塗布液の製造方法は、通常、金属酸化物粒子を分散させる分散工程を有する。
<1−3−3.感光層>
感光層は、上述の導電性支持体上に(前述の下引き層を設けた場合は下引き層の層上に)形成される。感光層の構成としては、公知のいずれの構成も使用することができる。具体的な構成の例としては、電荷発生物質をバインダー樹脂に分散させた電荷発生層と、電荷輸送物質をバインダー樹脂に分散させた電荷輸送層とを含む、二層以上の層からなる積層構造を有する積層型感光層と、電荷輸送物質と電荷発生物質とを共にバインダー樹脂に分散させた単相構造を有する単層型感光層とが挙げられる。また、積層型感光層では、電荷発生層、電荷輸送層を導電性支持体側からこの順に積層した順積層型感光体と、逆の順に積層した逆積層型感光体とがある。
一般に、電荷発生物質は単層型感光体に用いられる場合でも、積層型感光体に用いられる場合でも、電荷を発生する機能としては同等の機能を示すことが知られている。そのため、本発明では、いずれの感光層の構成でも適用することができるが、特にバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光体が好ましい。
(電荷発生物質)
電荷発生物質としては、上述したように、本発明に係る式(1)で表わされる化合物を少なくとも1種類使用する。また、本発明に係る式(1)で表わされる化合物は、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。更に、本発明の効果を著しく妨げない限り、公知の電荷発生物質を任意の組み合わせ及び比率で併用することができる。
(積層型感光層)
本発明に係る電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常、電荷発生層である。ただし、積層型感光体において、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生物質が電荷輸送層中に含まれていてもかまわない。
・電荷発生層:
積層型感光層の電荷発生層は、電荷発生物質を含有して形成される。電荷発生層は上述の電荷発生物質を単独で用いて蒸着膜等に形成してもよいが、通常は電荷発生物質をバインダー樹脂で結着した形で使用する。特に、電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、上記の有機顔料の微粒子をバインダー樹脂で結着した形で使用することが好ましい。このような電荷発生層は、例えば、電荷発生物質及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
積層型感光層の電荷発生層に用いられるバインダー樹脂に制限はなく、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーを挙げることができる。また、例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナールや、セルロースエステル、セルロースエーテル、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリアミド、ケイ素樹脂、等が挙げられるが、本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものではない。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒に制限はなく、任意の溶媒及び分散媒を用いることができる。その具体的な例を挙げると、環状飽和脂肪族、芳香族、ハロゲン化芳香族、アミド、アルコール、脂肪族多価アルコール類、鎖状及び環状ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、鎖状及び環状エーテル、非プロトン性極性物質、含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水、等が挙げられるが、本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものではない。
環状飽和脂肪族の溶媒又は分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、等が挙げられる。芳香族の溶媒又は分散媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、等が挙げられる。ハロゲン化芳香族の溶媒又は分散媒としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、等が挙げられる。アミドの溶媒又は分散媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等が挙げられる。アルコールの溶媒又は分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、等が挙げられる。脂肪族多価アルコール類の溶媒又は分散媒としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、等が挙げられる。鎖状及び環状ケトンの溶媒又は分散媒としては、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、等が挙げられる。エステルの溶媒又は分散媒としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素の溶媒又は分散媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等が挙げられる。鎖状及び環状エーテルの溶媒又は分散媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、等が挙げられる。非プロトン性極性の溶媒又は分散媒としては、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、等が挙げられる。含窒素化合物の溶媒又は分散媒としては、例えば、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、等が挙げられる。
上記の溶媒又は分散媒の中でも、下引き層を溶解しないものが好ましい。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、上記の物質は例示であり、本発明の効果を著しく損なわない限り、これらに限定されるものではない。
積層型感光層の電荷発生層における、バインダー樹脂と電荷発生物質との含有比率(質量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷発生物質が通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下し、一方、低すぎる場合は感光体としての感度の低下を招く可能性があることから、前記範囲で使用することが好ましい。なお、複数種の電荷発生物質を併用する場合には、それらの電荷発生物質の合計が上記範囲内になるようにすることが好ましい。
積層型感光層の電荷発生層の膜厚は任意であるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下である。
電荷発生物質を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散するときは、上記の電荷発生物質をペイントシェーカー磨砕、サンドグラインドミル、ボールミル、超音波処理、撹拌、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法、遊星ミル分散法、ロールミル分散法、超音波分散法等の公知の微細化の方法を任意に用いることができる。なお、分散時には、電荷発生物質の体積平均粒子径を通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の粒子サイズに微細化することが好ましい。
電荷発生物質の体積平均粒子径は、本発明において下引き層が含有する金属酸化物粒子の体積平均径を測定するのと同様にして測定することもできるし、公知のレーザー回折散乱法による粒度分析装置や、光透過遠心沈降法による粒度分析装置等により測定することもできる。
・電荷輸送層:
積層型感光層の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有して形成される層であれば、単一の層でもよいし、構成成分あるいは構成成分の組成比率が異なる複数の層を重ねたものであってもよい。また、積層型感光層の電荷輸送層は、電荷輸送物質をバインダー樹脂で結着した形で使用したものであることが好ましい。このような電荷輸送層は、例えば、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して塗布液を製作し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体状に(下引き層を設ける場合には下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質は、電荷を輸送する物質であれば、本発明の効果を著しく妨げない限り、公知のいずれの化合物も任意の組み合わせ及び比率で併用することができる。ただし、順積層型感光層は、電荷輸送層又は感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能することから、これらの層は露光光を遮断しないような露光光透過性の優れたものであることが好ましい。従って、電荷輸送物質とバインダー樹脂は相溶性が高く、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが好ましい。
また順積層型感光層の電荷輸送層の場合、良好な画像を形成するために、電荷輸送層における露光光の波長の透過率が、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上であることが望ましい。特に、露光光が波長380nm〜500nmの単色光であるときの、電荷輸送層における露光光の透過率が、上述の範囲であることが望ましい。
電荷輸送層や電荷輸送媒体の露光光の透過率は、例えば本発明に係る式(1)に表わされる化合物を電荷発生物質として用い、電荷輸送物質を選択することにより達成することが可能であるし、電荷輸送層の膜厚を調整することによっても達成可能である。
露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば当該層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
この様な電荷輸送物質の具体的な例としては、ジフェノキノン誘導体、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チオジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体等の含窒素化合物、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等が挙げられる。
このうち好ましい電荷輸送物質の具体的な例としては、以下の骨格を有する化合物が挙げられる。これら骨格には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等が置換基として置換しても構わない。
(Aは連結基を表わし、炭素数10以下のアルキリデンが好ましい。)
この中でも、特に以下の構造を有する化合物は、式(1)で表わされる化合物を含む電荷発生層と組み合わせて用いることで、良好な効果を奏し好ましい。
更には、以下の式(19)で表される化合物が、電子写真感光体の電気特性の観点から、特に好ましい。
式(19)中、R7又はR8は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基等を表わす。R9、及びR10は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。ただし、R11〜R14の少なくとも一つは置換基を有するアリール基である。なお、前述の置換基は1つを有していてもよいし、2つ以上有してもよい。2つ以上有する場合は、それぞれ同じ置換基でもよいし、異なった置換基でもよい。また、異なった置換基である場合は、任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
式(19)中、R7はキラル中心を有する基であることが好ましく、中でも、キラル中心が炭素原子であることがより好ましい。R7の有するキラル中心に結合する基は、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等の電気特性を悪化させる置換基でない限り、特に限定されない。R7のキラル中心に結合する基は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基等が好ましい。中でも、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基がより好ましい。更には、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基が特に好ましい。なお、上記のR5のアルキル基は、炭素数が通常1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは4以上、また通常20以下、好ましくは17以下、特に好ましくは5以下である。
また、上記のR
7の置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基が有する置換基の例としては、ヒドロキシル基、更に置換されていてもよいメチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、更に置換されていてもよいフェニル基、及びナフチル基等のアリール基、更に置換されていてもよいフェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。上記の置換基を更に置換する基の例としては、メチル基等のアルキル基、弗素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
このような、キラル中心を少なくとも1つ有する基であるR
7の例としては、下記式(20)で表わされる基が挙げられる。
式(20)中、R15、R16、及びR17は互いに異なる基であって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表わす。中でもR15〜R17のうちの2つが置換基を有していてもよいアルキル基であり、1つが水素原子であるのが特に好ましい。
また、上記のR15〜R17の置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基の有する置換基の例としては、ヒドロキシル基、更に置換されていてもよいメチル基、エチル基、及びプロピル基等のアルキル基、更に置換されていてもよいフェニル基、及びナフチル基等のアリール基、更に置換されていてもよいフェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。
上記の置換基を更に置換する基の例としては、メチル基等のアルキル基、弗素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
式(19)中、R8は、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。中でも水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。
また、上記の置換基を有していてもよいアルキル基、及びアリール基の有する置換基の例としては、前記R15〜R17において挙げた置換基等が挙げられる。
式(19)中、R9、及びR10は、例えば、各々独立して置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。中でも置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であるのが更に好ましく、1,4−フェニレン基であるのが特に好ましい。
また、上記の置換基を有していてもよいアルキレン基、及びアリーレン基の有する置換基の例としては、前記R15〜R17の説明において挙げた置換基等が挙げられる。
式(19)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表わす。ただし、R11〜R14の少なくとも1つの基が、置換基を有するアリール基である。即ち、他の3つの基は、置換基を有していてもよいアルキル基であっても、置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。R11〜R14のうち、2つ以上の基が、置換基を有していてもよいアリール基であるのが好ましい。更に、全ての基が、置換基を有していてもよいアリール基であるのが特に好ましい。
上記のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、その置換基としては、前記R15〜R17において挙げた置換基と同様のものが挙げられるが、中でも、アルキル基が好ましく、窒素原子に結合する炭素原子対して3位又は/及び4位に置換メチル基を有するトリル基、キシリル基が特に好ましい。
積層型感光体の電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物又はこれらの混合物も使用できるが、本発明の効果を著しく制限しない限り、これに限定されるものではない。
その中でも好ましいバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、及びポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂は、一般的に、ジオール成分の部分構造を有する。これらの構造を形成するジオール成分としては、ビスフェノール残基、ビフェノール残基等が挙げられる。
ビスフェノール残基をジオール成分とする化合物の具体例としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸ステアリルエステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等が挙げられる。
また、ビフェノール残基をジオール成分とする化合物の具体例としては、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、等が挙げられる。
これらの中で好ましい化合物は、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノール残基を成分とする化合物が挙げられる。
具体的に、好ましいポリカーボネート樹脂のジオール成分(ビスフェノール、ビフェノール等)を以下に例示するが、以下に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下の構造を示すジオール成分であることが好ましい。
また、機械特性向上のためには、ポリアリレートを使用することは好ましい。この場合は、ジオール成分として以下の構造の化合物を用いるのが好ましい。
更に、酸成分としては、以下の構造の化合物を用いることが好ましい。
これらのジカルボン酸成分、及びジオール成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
積層型感光層の電荷輸送層のバインダー樹脂の分子量は、低すぎると機械的強度が不足する可能性があり、逆に分子量が高すぎると感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下する可能性がある。そのため、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の場合、粘度平均分子量は通常10,000以上、好ましくは20,000以上、また、通常100,000以下、より好ましくは70,000以下が望ましい。
積層型感光体の電荷輸送層におけるバインダー樹脂と電荷輸送物質との含有比率(重量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が通常30重量部以上、好ましくは40重量部以上、また、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下である。電荷輸送物質の比率が高すぎると電荷輸送層の機械的強度が低下する可能性があるためであり、一方、電荷輸送物質の比率が低すぎると電気特性が悪化する可能性があるためである。なお、複数種の電荷発生物質を併用する場合には、それらの電荷発生物質の合計が上記範囲内になるようにすることが好ましい。
積層型感光層の電荷輸送層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、また、通常45μm以下、好ましくは35μm以下である。膜厚が薄くなり過ぎると摩耗により感光体の寿命が短くなり、膜厚が厚くなりすぎると露光光や電荷の拡散により画像の解像度が悪化する傾向があるためである。即ち、電荷輸送層の膜厚を調整することによって、電荷発生物質に到達する露光光の到達度も調整できる。
(単層型感光層)
単層型感光層は、上記の積層型感光体の電荷輸送層と同様の構成の層の中に、上記の電荷発生物質が分散される構成が好ましい。即ち具体的には、単層型感光層は、上記の電荷発生物質、電荷輸送物質、及び積層型感光層では電荷輸送層に用いられたバインダー樹脂を、溶媒又は分散媒に、溶解又は分散して、塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダー樹脂の種類及びこれらの使用比率(重量比率)等は、積層型感光層の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる層中に、更に電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光層の電荷発生層で説明したものと同様のものが使用できる。ただし、単層型感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくすることが好ましい。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。単層型感光層に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると充分な感度が得られない可能性がある一方で、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等を招く可能性がある。従って、単層型感光層全体に対して通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また通常50μm以下、好ましくは45μm以下の範囲である。膜厚が薄くなり過ぎると摩耗により感光体の寿命が短くなり、膜厚が厚くなりすぎると露光光や電荷の拡散により画像の解像度が悪化する傾向があるためである。
単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との含有比率(重量比率)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、また通常10重量部以下、好ましくは8重量部以下である。
単層型感光層は、電荷輸送層又は感光層を通過した光が電荷発生物質に達することにより機能することから、これらの層は露光光を遮断しないような露光光透過性の優れたものであることが好ましい。従って、電荷輸送物質とバインダー樹脂は相溶性が高く、構成物質が析出したり、濁りを生じたりしないものが好ましい。また、単層型感光層の電荷輸送層の場合、良好な画像を形成するために、電荷輸送層の露光光の波長の透過率が、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上であることが望ましい。特に、露光光が波長380nm〜500nmの単色光であるときの、電荷輸送層における露光光の透過率が、上述の範囲であることが望ましい。
電荷輸送層や電荷輸送媒体の露光光の透過率は、例えば前述の電荷輸送物質の好適な具体例に表わされる化合物を電荷輸送物質として用いる等、電荷輸送物質を選択することにより達成することが可能であるし、電荷輸送層の膜厚を調整することによっても達成可能である。
露光光の透過率の測定には、公知のどのような方法も用いることが可能であるが、例えば当該層を測定波長において透明な板(例えば石英ガラス板)上に形成し、市販の分光光度計により測定することができる。
(添加剤)
積層型感光層、及び単層型感光層は、感光層又はそれを構成する各層に、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、例えば、周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を含有させてもよい。
例えば、電荷輸送層に使用される添加剤の例としては、成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために使用される周知の可塑剤や架橋剤、酸化防止剤、安定剤、増感剤、塗布性を改善するための各種レベリング剤、分散補助剤等の添加剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えばフタル酸エステル、りん酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレン等の芳香族化合物等が挙げられる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。レベリング剤としては、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(表面層)
積層型感光層、単層型感光層ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設けて、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗等の機械的劣化や、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の電気的劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けてもよい。保護層は、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、及び、特開平10−252377号公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、例えばTPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
保護層の電気抵抗は、通常109Ω・cm以上、また1014Ω・cm以下の範囲とすることが望ましい。電気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させてもよい。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成してもよい。
(各層の形成方法)
本発明に係る電子写真用感光体の感光層は、上記の含有させる物質を溶媒又は分散媒に、溶解又は分散させて得られた塗布液を、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。この際用いられる溶媒又は分散媒の種類は制限されず、一種類を単独で用いてもよく、また二種類以上を任意の組成比率で用いてもよい。また、各層の目的や選択した溶媒及び分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が、所望の範囲となるように適宜調整することが好ましい。
感光体を構成する各層を塗布形成するための塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、塩素化炭化水素類、含窒素化合物類、非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール、等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、等が挙げられる。エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸エチル、等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、等が挙げられる。塩素化炭化水素類としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、等が挙げられる。含窒素化合物類としては、例えば、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、等が挙げられる。非プロトン性極性溶剤類としては、例えば、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。
これらの溶媒及び分散媒は、単独で用いられてもよく、又は2種以上を任意の比率で併用して用いてもよい。また、上記の溶媒及び分散媒は例であり、本発明の効果を著しく制限するものでなければ、上記に限定されるものではない。
感光層の塗布形成方法としては、例えば、スプレー塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法等を用いることができる。スプレー塗布法は、公知のスプレー法であればいずれの方法を用いることもできる。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等を用いる方法を用いることができる。
中でも、均一な膜厚を得るための微粒化度及び付着効率等を得るために、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、即ち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することが好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法は、公知のスパイラル塗布法であればいずれの方法を用いることもできる。例えば、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機、又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等を用いることができる。
浸漬塗布法は、公知の浸漬塗布法であればいずれの方法を用いることもできる。このとき、単層型感光層、及び、積層型感光層の電荷輸送層の塗布液の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、また、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは35重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を、通常30mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上、また、通常800mPa・s以下、好ましくは700mPa・s以下、更に好ましくは500mPa・s以下の範囲とする。
また、積層型感光層の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲とする。また塗布液の粘度を、好ましくは0.1mPa・s以上、更に好ましくは0.5mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以下の範囲とする。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、及び、遠赤外線乾燥機等を用いることができるが、これに限定されない。塗布膜の乾燥は、室温でもよいし、適宜、乾燥温度を調整してもよい。また、乾燥温度は一定温度でもよいし、乾燥の過程で変動させてもよい。乾燥温度を調整する場合は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは170℃以下、更に好ましくは140℃以下である。乾燥温度は、高すぎると感光層内に気泡が混入する原因となり、低すぎると乾燥に時間を要し、残留溶媒量が増加して電気特性に悪影響を与える等の可能性があるためである。また、乾燥の時間も制限はなく、本発明の効果を著しく制限しない範囲で、任意に設定できる。
[2.トナー]
本発明において、電子写真感光体上の潜像を現像するための現像剤であるトナーは特に限定はないが、特定の平均円形度を有するトナーであることが上記した電子写真感光体との相乗効果を得るために好ましい。。このように特定の円形度を有するトナーを用いることにより、本発明の画像形成装置は、より高画質の画像を形成することができる。
<2−1.トナーの平均円形度>
(トナーの平均円形度)
本発明におけるトナーの形状は、トナーを構成する粒子群に含まれる各粒子の形状が、互いに近いものであって、球形に近いほどトナーの粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあり、画像品質を高める上で好ましいため、具体的には、フロー式粒子像分析装置によって測定されるトナーの平均円形度は、0.940以上が好ましく、0.950以上がより好ましく、0.960以上が特に好ましい。また、前記平均円形度の上限は1.000以下であれば特に制限はない。しかし、トナーの形状が完全な球形に近づきすぎると、画像形成後のトナーのクリーニング不良により電子写真感光体表面にトナーが残存して、形成した画像を汚して欠陥となる可能性がある。そのような場合には、クリーニング不良を起こさないように強力なクリーニングを行う必要が生じ、ひいては強力なクリーニングにより電子写真感光体が磨耗しやすくなったり傷が付きやすくなったりして、電子写真感光体の寿命を縮める傾向がある。また完全な球状トナーを作ることは製造上困難であり、トナーが高コスト化するため、産業上の利用価値が低い。従って、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
(平均円形度の測定方法)
なお、前記の平均円形度は、トナーの粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明では、トナーの粒子の円形度[a]を求めるに際し、シスメックス社(旧東亜医用電子社)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定される下記値を用いる。
円形度[a]=L0/L ・・・・・・(A)
(式(A)中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理したときの粒子像の周囲長を示す。)
平均円形度の具体的な測定方法としては、以下の通りである。即ち、予め容器中の不純物を除去し、トナーを分散媒(アイソトンII、ベックマン・コールター社製)に加え、超音波を30秒照射し、分散液濃度を5720〜7140個/μLの範囲になるようにして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、以下の測定条件で、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。上記式(A)で求めた値が装置に表示されるので、それを平均円形度とする。本発明においては、同様の測定を3回行い、装置に表示された3回の平均円形度の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
前記の円形度[a]は、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーの粒子が完全な球形の場合1を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。そして、全ての又は多くのトナーの粒子が球形に近づくと、平均円形度は1に近づく。
<2−2.トナーの種類>
本発明においては、トナーについて制限はないが、平均円形度0.940以上のものが好ましい。その製造方法に応じて様々なものが得られるが、本発明におけるトナーとしては、いずれを用いることも可能である。
本発明におけるトナーの製造方法は特に限定されるものではない。即ち、粉砕法や水系媒体中で粒子を形成させる方法(以下、「湿式法」と略記する場合がある)等によって製造することができる。湿式法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の水系媒体中でラジカル重合を行う方法(以下、「重合法」と略記し、得られたトナーを「重合トナー」と略記する場合がある)や、溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等が好適に使用できる。
粉砕法でトナーを製造する場合は、一般に微粉が発生し易いので分級工程が必要となる。また、平均円形度が大きいトナーは得難いが、トナーとして粉砕トナーを排除するものではない。一方で、微粉を発生しにくい、分級工程が必須ではない、平均円形度が大きいものが得られる等という観点から、本発明におけるトナーは、水系媒体中で粒子を形成させる湿式法で得られることが好ましい。
水系媒体中で粒子を形成させる湿式法で得られたトナーは、平均円形度が大きいものが得られるため、本発明の前記電子写真感光体と組み合わせることによって、特に相乗的に、高解像度、高階調性等、高品質であってしかもカブリの少ない画像を形成することができる。
本発明におけるトナーを得る方法としては、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の重合法や、溶融懸濁法に代表される化学粉砕法等、何れの製造方法をも使用することができるが、「粉砕法」、「懸濁重合法」や「溶融懸濁法に代表される化学粉砕法」においては、何れも、トナーの粒子径より大きなサイズから小さなサイズへ調整させるため、平均粒子径を小さくしようとすると小粒子側の粒子径割合が増加する傾向にあり、分級工程等において過度の負担が強いられる。これに対して、乳化重合凝集法は、比較的粒子径分布がシャープで、且つトナー母粒子径より小さなサイズから大きなサイズへ調整させるため、分級工程等の工程を介さずとも整った粒子径分布をもつトナーが得られる。従って、以上の理由により、乳化重合凝集法により、本発明におけるトナーを製造することが特に好ましい。また、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤等とを凝集させてトナーを製造するので、凝集条件を制御することによってトナーの粒径及び平均円形度を調整することができるので好ましい。
また、トナーの離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性等を改良するために、トナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させることが好ましい。溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、重合体(バインダー樹脂)に対して5重量%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、低軟化点物質を多量(5〜30重量%)に含有させることが可能である。なお、ここでいう重合体は、トナーを構成する材料の一つであり、例えば後述する乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合、重合性単量体が重合して得られるものである。
<2−3.乳化重合凝集法によるトナーの製造方法>
以下、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて、更に詳細に説明する。乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、その製造工程としては、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、及び洗浄・乾燥工程を行なう。即ち、一般的には乳化重合により重合体一次粒子を得て(重合工程)、その重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じて、着色剤(顔料)、ワックス、帯電制御剤等の分散体を混合し(混合工程)、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし(凝集工程)、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行ない、その後に融合させて粒子を得て(融合工程)、得られた粒子を洗浄、乾燥することにより(洗浄・乾燥工程)、母粒子が得られる。
<2−3−1.重合工程>
重合体の微粒子(重合体一次粒子)には、特に制限はない。従って、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、樹脂等の重合体の塊を粉砕することによって得られる微粒子のいずれを重合体一次粒子として用いてもよい。ただし、重合法、特に乳化重合法、中でも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものが好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、重合体がワックスを包み込んだ構造の微粒子を重合体一次粒子として製造することができる。この方法によれば、ワックスをトナーの表面に露出させず、トナー内に含有させることができる。このため、ワックスによる装置部材の汚染がなく、また、トナーの帯電性を損なうこともなく、且つ、トナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
乳化重合法としては、公知のいずれの方法に従って行ってもよい。通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合により重合体を与える重合性単量体、即ち、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物、及び、必要に応じて連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等を混合、攪拌して重合を行なう。これにより、重合体がワックスを包み込んだ構造を有する重合体の微粒子(即ち、重合体一次粒子)が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。なお、重合体がワックスを包み込んだ構造としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型等が挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
以下、ワックスをシードとして乳化重合を行ない、これにより重合体一次粒子を得る方法について説明する。
(i.ワックス)
ワックスとしては、トナーに用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類又は部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。
また、ワックスの中でも、例えば、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。特に、パラフィンワックスが好ましい。なお、ワックスは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ワックスを用いる場合、その使用量は任意である。ただし、重合体100重量部に対して、ワックスを通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下とすることが望ましい。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質の低下が生じる可能性がある。
パラフィンワックスを含有するトナーは、本発明の前記電子写真感光体と組み合わせることによって、特に相乗的に、高解像度、高階調性等、高品質であってしかもカブリの少ない画像を形成することができる。
(ii.乳化剤)
乳化剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類等が挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類等が挙げられる。これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。
なお、乳化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、乳化剤の配合量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性モノマー100重量部に対して、乳化剤を、通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは8重量部以下の割合で用いる。乳化剤が多すぎると粒子径が小さくなりすぎるという可能性があり、また少なすぎると粒子径が大きくなりすぎるという可能性がある。
(iii.液状媒体)
液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、中でも水が特に好ましい。ただし、液状媒体の質は液状媒体中の粒子の再凝集による粗大化にも関係し、液状媒体の導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。従って、液状媒体として水等の水系媒体を使用する場合、導電率を通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製 パーソナルSCメータモデルSC72、検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、液状媒体の使用量に制限はないが、重合性単量体に対して、通常1重量倍以上、好ましくは1.5重量倍以上、また、通常20重量倍以下、好ましくは10重量倍以下の量を用いる。液状媒体が多すぎると生産性が低下するという可能性があり、また少なすぎると乳化できなくなる可能性があるためである。
この液状媒体に、乳化剤の存在下で前記ワックスを分散させることにより、ワックス微粒子を得る。乳化剤及びワックスを液状媒体に配合する順は任意であるが、通常は、まず乳化剤を液状媒体に配合し、その後、ワックスを混合する。また、乳化剤は連続的に液状媒体に配合してもよい。
(iv.重合開始剤)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体に、重合開始剤を配合する。重合開始剤としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素等の無機過酸化物類等が挙げられる。中でも、無機過酸化物類が好ましい。なお、重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、重合開始剤の他の例としては、過硫酸塩類、有機又は無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等とを併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、重合開始剤の使用量にも制限は無く任意である。ただし、重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.07重量部以上、また、通常2重量部以下、好ましくは1.06重量部以下の割合で用いられる。重合開始剤の量が多すぎると分子量がコントロールできないという可能性があり、また少なすぎるとモノマーが残存するという可能性があるためである。
(v.重合性単量体)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には前記の重合開始剤の他に、重合性単量体を配合する。重合性単量体に特に制限はないが、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
酸性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。塩基性モノマーの具体例としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
多官能性モノマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらのなかでも、重合性単量体としては、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるものが好ましい。特に、スチレン類としてはスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類としてはアクリル酸ブチルが好ましく、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてはアクリル酸が好ましい。なお、重合性単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ワックスをシードとして乳化重合を行なう際には、酸性モノマー又は塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーを併用することにより、重合体一次粒子の分散安定性を向上させることができるからである。
この際、酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量は任意であるが、全重合性単量体100重量部に対する酸性モノマー又は塩基性モノマーの使用量を、通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下となるようにすることが望ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量が上記範囲の下限を下回ると重合体一次粒子の分散安定性が低下する可能性があり、また上限を上回るとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は任意であるが、重合性単量体100重量部に対する多官能性モノマーの配合量は、通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。この際、多官能性モノマーの配合量が上記範囲の下限を下回ると耐高温オフセット性が低下する可能性があり、また上限を上回ると低温定着性が低下する可能性がある。
液状媒体へ重合性単量体を配合する方法は特に限定されない。例えば、一括して配合してもよく、間欠的に配合してもよいが、反応制御の点からは連続的に配合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は別々に配合してもよく、また予め混合してから配合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら配合してもよい。
(vi.連鎖移動剤等)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤及び重合性単量体の他に、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等の添加剤を配合する。これらの添加剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
連鎖移動剤としては、公知の任意のものを使用することができる。具体例を挙げると、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。また、連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
保護コロイドとしては、この用途に用い得ることが知られている任意のものを使用することができる。具体例としては、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等が挙げられる。
内添剤の具体例としては、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。
(vii.重合体一次粒子)
ワックス微粒子を含む液状媒体に重合開始剤及び重合性単量体、並びに、必要に応じて添加剤を混合し、攪拌し、重合させることにより、重合体一次粒子を得る。この重合体一次粒子は、液状媒体中にエマルションの状態で得ることができる。重合開始剤、重合性単量体、添加剤等を液状媒体に混合する順番に制限はない。また、混合、攪拌の方法等も制限は無く、任意である。
更に、重合(乳化重合反応)の反応温度も反応が進行する限り任意である。ただし、重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、また、通常120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径に特に制限はないが、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
本発明における体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定される体積粒度分布の算術平均値として定義される。動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下、UPA−EXと略記することがある)を用いて、以下の設定にて行なう。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec
測定温度 :25℃
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :1g/cm3
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように粒子の分散体を液状媒体で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定する。
また、重合体一次粒子を構成する重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、また、通常10万以下、好ましくは7万以下、より好ましくは6万以下であることが望ましい。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる。ここで、ピーク分子量とはポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。ピーク分子量は、後述するトナーの場合と同様に測定することが可能である。
特に、前記の重合体がスチレン系樹脂である場合には、重合体のGPCにおける数平均分子量が、通常2000以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、また、通常5万以下、好ましくは4万以下、より好ましくは3.5万以下である。更に、重合体の重量平均分子量は、通常2万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下である。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記の範囲に収まるスチレン系樹脂を重合体として用いた場合、得られるトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好となるからである。更に分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、スチレン類が全重合体中の通常50重量%以上、好ましくは65重量%以上を占めるものを指す。
また、重合体の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)は、通常150℃以下、好ましくは140℃以下であることが低エネルギー定着の点から好ましく、また、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。
ここで重合体の軟化点は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
更に、重合体のガラス転移温度[Tg]は、通常80℃以下、好ましくは70℃以下である。重合体のガラス転移温度[Tg]が高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。また、重合体のガラス転移温度[Tg]の下限は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上である。重合体のガラス転移温度[Tg]が低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。ここで重合体のガラス転移温度[Tg]は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。重合体の軟化点及びガラス転移温度[Tg]は、重合体の種類及びモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
<2−3−2.混合工程及び凝集工程>
前記の重合体一次粒子が分散したエマルジョンに、顔料粒子を混合し、凝集させることにより、重合体、顔料を含む凝集体(凝集粒子)のエマルジョンを得る。この際、顔料は、予め液状媒体に界面活性剤等を用いて均一に分散させた顔料粒子分散体を用意し、これを重合体一次粒子のエマルジョンに混合することが好ましい。この際、顔料粒子分散体の液状媒体として通常は水等の水系溶媒を使用し、顔料粒子分散体を水系分散体として用意する。また、その際には、必要に応じてワックス、帯電制御剤、離型剤、内添剤等をエマルジョンに混合してもよい。また、顔料粒子分散体の安定性を保持するために、上述した乳化剤を加えてもよい。
重合体一次粒子としては、乳化重合により得た前記の重合体一次粒子を使用することができる。この際、重合体一次粒子は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、上述した乳化重合とは異なる原料や反応条件で製造した重合体一次粒子(以下、適宜「併用重合体粒子」という)を併用してもよい。
併用重合体粒子としては、例えば、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子等が挙げられる。このような併用重合体粒子の材料としては樹脂を使用できるが、この樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
なお、これらの併用重合体粒子も、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、併用重合体粒子の割合は、重合体一次粒子及び併用重合体粒子の重合体の合計に対して、通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
また、顔料に制限は無く、その用途に応じて任意のものを用いることができる。ただし、顔料は通常は着色剤粒子として粒子状で存在するが、この顔料の粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子との密度差が小さい方が好ましい。密度差が小さいほうが、重合体一時粒子と顔料とを凝集させた場合に均一な凝集状態が得られ、ひいては得られるトナーの性能が向上するためである。なお、重合体一次粒子の密度は、通常は1.1g/cm3以上、1.3g/cm3以下である。
前記の観点から、JIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される顔料粒子の真密度は、通常1.2g/cm3以上、好ましくは1.3 g/cm3以上、また、通常2.0g/cm3未満、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下である。顔料の真密度が大きい場合は、特に液状媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性等の課題も考慮すると、顔料はカーボンブラックあるいは有機顔料であることが好ましい。
以上の条件を満たす顔料の具体例としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料等が挙げられる。また、黒色顔料としては、カーボンブラック、又は、イエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。このうち、黒色顔料として使用されるカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料粒子分散体として分散させたときに、再凝集によるカーボンブラック粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が顕著となる傾向を示す。
不純物量の定量的な評価としては、以下の測定方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度によって評価され、通常0.05以下、好ましくは0.03以下である。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるトナーに使用するカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
なお、カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で測定される。即ち、まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等がある。
イエロー顔料の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体例としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。具体例としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、 184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、鮮明な色相や高い耐光性等からマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66等が特に好適に利用できる。なお、顔料は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の顔料は、液状媒体に分散させ、顔料粒子分散体としてから重合体一次粒子を含有するエマルションと混合する。この際、顔料粒子分散体中における顔料粒子の使用量は、液状媒体100重量部に対して、通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。着色剤の配合量が前記範囲を上回る場合には、顔料濃度が濃いので分散中で顔料粒子が再凝集する確率が高まる傾向がある。また、前記範囲未満の場合には、分散が過剰となって適切な粒度分布を得ることが困難な傾向がある。
また、重合体一次粒子に含まれる重合体に対する顔料の使用量の割合は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。顔料の使用量が少なすぎると画像濃度が薄くなる可能性があり、また多すぎると凝集制御が困難となる可能性がある。
更に、顔料粒子分散体には、界面活性剤を含有させてもよい。この界面活性剤に特に制限はないが、例えば、乳化重合法の説明において乳化剤として例示した界面活性剤と同様のものが挙げられる。中でも、非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。また、この際、界面活性剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、顔料粒子分散体に占める顔料の割合は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
また、顔料粒子分散体の液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、好ましくは水を用いる。この際、重合体一次粒子及び顔料粒子分散体の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。従って、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製 パーソナルSCメータモデルSC72、検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合させる際、エマルジョンにワックスを混合してもよい。ワックスとしては、乳化重合法の説明において述べたものと同様のものを使用することができる。なお、ワックスは、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合する前、混合中、混合した後のいずれにおいて混合してもよい。
また、重合体一次粒子を含有するエマルションに顔料を混合させる際、エマルジョンに帯電制御剤を混合してもよい。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤の具体例としては、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂等が挙げられる。また、負荷電性帯電制御剤の具体例としては、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料;サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩又は金属錯体;カリックスアレーン化合物、ベンジル酸の金属塩又は金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため、無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カリックスアレーン化合物が好ましい。
帯電制御剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。 また、帯電制御剤の使用量に制限はないが、重合体100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。帯電制御剤の使用量が少なすぎても多すぎても所望の帯電量が得られなくなる可能性がある。
帯電制御剤は、重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合する前、混合中、混合した後のいずれにおいて混合してもよい。また、帯電制御剤は、前記顔料粒子と同様に、液状媒体(通常は、水系媒体)に乳化した状態として、凝集時に混合することが望ましい。
上記の重合体一次粒子を含有するエマルジョンに顔料を混合した後、重合体一次粒子と顔料とを凝集させる。なお、上述したとおり、混合の際には、通常、顔料は顔料粒子分散体とした状態で混合させる。凝集方法に制限は無く任意であるが、例えば、加熱、電解質の混合、pHの調整等が挙げられる。中でも、電解質を混合する方法が好ましい。
電解質を混合して凝集を行なう場合の電解質としては、例えば、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物;Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の硫酸塩等の無機塩;CH3COONa、C6H5SO3Na等の有機塩等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。電解質は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電解質の使用量は、電解質の種類によって異なるが、エマルジョン中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。電解質を混合して凝集を行なう場合において、電解質の使用量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しなかったりする等の可能性があり、また、電解質の使用量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。
本発明において好ましい平均円形度が大きいトナーを与えるための、上記凝集によって得られた凝集体(凝集粒子)は、重合体一次粒子の種類、粒径、粒径分布;電解質の種類、量;pH;着色顔料の種類や量;帯電制御剤の種類や量;それぞれの成分量の配合比率;凝集時の温度、凝集時の温度変化;凝集時間;攪拌条件等を調節して得ることができる。
凝集剤を用いて得られた凝集体は、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は融合工程の説明において述べるのと同様の条件で行えばよい。加熱により凝集を行なう場合、温度条件は凝集が進行する限り任意である。具体的な温度条件を挙げると、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、重合体一次粒子の重合体のガラス転移温度[Tg]以下、好ましくは55℃以下の温度条件で凝集を行なう。凝集を行なう時間も任意であるが、通常10分以上、好ましくは60分以上、また、通常300分以下、好ましくは180分以下である。また、凝集を行なう際には、撹拌を行なうことが好ましい。撹拌に使用する装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
得られた凝集体は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程(カプセル化工程)に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行なった後に、カプセル化工程に進んでもよい。中でも、凝集工程の後にカプセル化工程を行ない、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移温度[Tg]以上の温度で加熱して融合工程を行なうのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化等)を生じないので好ましい。
<2−3−3.カプセル化工程>
凝集体を得た後、当該凝集体には、必要に応じて樹脂被覆層を形成することが好ましい。凝集体に樹脂被覆層を形成させるカプセル化工程とは、凝集体の表面に樹脂被覆層を形成することにより、凝集体を樹脂により被覆する工程である。これにより、製造されるトナーは樹脂被覆層を備えることになる。樹脂被覆層を有するトナーは、帯電性能が安定化するため、本発明の前記電子写真感光体と組み合わせることによって、特に相乗的に、高解像度、高階調性等、高品質であってしかもカブリの少ない画像を形成することができる。
カプセル化工程では、トナー全体が完全に被覆されない場合もあるが、顔料は、実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得ることができるようになる。この際の樹脂被覆層の厚さに制限はないが、通常は0.01μm以上、0.5μm以下である。前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法等が挙げられる。上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集体表面に樹脂被覆層を形成することができる。
また、前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集体表面に樹脂微粒子を成膜化する方法であり、例えばハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)等の装置が使用できる。
更に、前記in−situ重合法としては、例えば、凝集体を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を混合して凝集体表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集体表面に樹脂被覆層を形成する方法である。また、前記液中粒子被覆法としては、例えば、内層を形成する凝集体と外層を形成する樹脂微粒子とを水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面に樹脂被覆層を形成させる方法である。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、凝集体よりも粒径が小さく樹脂成分を主体とする粒子である。この樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はない。ただし、外層の厚みがコントロールできるという観点から、上述した重合体一次粒子、凝集体、又は、前記の凝集体を融合した融合粒子と同様の樹脂微粒子を用いることが好ましい。なお、これらの重合体一次粒子等と同様の樹脂微粒子は、内層に使用する凝集体における重合体一次粒子等と同様に製造することができる。
また、樹脂微粒子の使用量は任意であるが、トナー粒子に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下の範囲で用いることが望ましい。
更に、凝集体に対する樹脂微粒子の固着又は融合を効果的に行なうためには、樹脂微粒子の粒径は、通常は0.04μm以上、好ましくは0.08μm以上、また通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下である。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分(樹脂成分)のガラス転移温度[Tg]としては、通常60℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常110℃以下が望ましい。更に、樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移温度[Tg]は、重合体一次粒子のガラス転移温度[Tg]より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであることがより好ましい。ガラス転移温度[Tg]が低すぎると、一般環境での保存が困難となる場合があり、また高すぎては充分な溶融性が得られない場合がある。
更に、樹脂被覆層中にはポリシロキサンワックスを含有させることが好ましい。ポリシロキサンワックスとしては、アルキル基を有するシリコーンワックス等が好ましいものとして挙げられる。これにより、耐高温オフセット性の向上という利点を得ることができる。また、樹脂被覆層中にポリシロキサンワックスを含有させトナーは、帯電量分布幅が狭くなり、帯電特性が安定化するため、本発明の前記電子写真感光体と組み合わせることによって、特に相乗的に、高解像度、高階調性等、高品質であってしかもカブリの少ない画像を形成することができる。
ポリシロキサンワックスの含有量に制限はないが、トナー中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.08重量%以上、また、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下とする。樹脂被覆層中のポリシロキサンワックスの量が少なすぎると耐高温オフセット性が不十分となる可能性があり、また多すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
樹脂被覆相中にポリシロキサンワックスを含有させる方法は任意であるが、例えば、ポリシロキサンワックスをシードとして乳化重合を行ない、得られた樹脂微粒子と、内層を形成する凝集体とを、水系媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面にポリシロキサンワックスを含有する樹脂被覆層を形成させることにより含有させることが可能である。
<2−3−4.融合工程>
融合工程では、凝集体を加熱処理することにより、凝集体を構成する重合体の溶融一体化を行なう。また、凝集体に樹脂被覆層を形成してカプセル化樹脂微粒子とした場合には、加熱処理をすることにより、凝集体を構成する重合体及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされることになる。これにより、顔料粒子は実質的に表面に露出しない形態で得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移温度[Tg]以上の温度とする。また、樹脂被覆層を形成した場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度[Tg]以上の温度とする。具体的な温度条件は任意であるが、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度[Tg]よりも、通常5℃以上高温であることが好ましい。その上限に制限はないが、「樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度[Tg]よりも50℃高い温度」以下が好ましい。なお、加熱処理の時間は処理能力、製造量にもよるが、通常0.5〜6時間である。
本発明において好ましい平均円形度が大きいトナーは、融合工程において、分散液のpH、加熱処理の温度、昇温条件、加熱時間等を調節することによって得られる。
<2−3−5.洗浄・乾燥工程>
上述した各工程を液状媒体中で行なっていた場合には、融合工程の後、得られたカプセル化樹脂粒子を洗浄し、乾燥して液状媒体を除去することにより、トナーを得ることができる。洗浄及び乾燥の方法に制限は無く任意である。
<2−4.トナーの粒径に関する物性値>
本発明におけるトナーの体積平均粒径[Dv]に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常4μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは8μm以下である。トナーの体積平均粒径[Dv]が小さすぎると画質の安定性が低下する傾向があり、大きすぎると解像度が低下する傾向がある。
また、本発明におけるトナーは、体積平均粒径[Dv]を個数平均粒径[Dn]で除した値[Dv/Dn]が、通常1.0以上、また、通常1.25以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下であることが望ましい。[Dv/Dn]の値は、粒度分布の状態を表わし、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表わす。粒度分布がシャープであるほど、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
更に、本発明におけるトナーは、粒径25μm以上の体積分率が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。この値は小さいほど好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましいのである。なお、粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないのが最も好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にしなくとも構わない。
また、本発明におけるトナーは、粒径15μm以上の体積分率が、通常2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが最も好ましい。
更に、本発明におけるトナーは、粒径5μm以下の個数分率が、通常15%以下、好ましくは10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので、望ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径[Dv]、個数平均粒径[Dn]、体積分率、個数分率等は、以下のようにして測定することができる。即ち、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続して使用する。また、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては、前記電解液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料(トナー)を2〜20mg加える。そして、試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。このようにしてトナーの個数及び体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、体積平均粒径[Dv]、個数平均粒径[Dn]を求める。
<2−5.トナーの分子量に関する物性値>
本発明におけるトナーのテトラヒドロフラン(以下、THFと略記する)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記する)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つは、通常1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であり、通常15万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下である。ピーク分子量がいずれも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、またピーク分子量がいずれも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
更に、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、通常10%以上、好ましくは20%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは50%以下である。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
なお、本発明におけるトナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)を用いて次の条件で測定される。即ち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mL(ミリリットル)の流速で流す。次いで、トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
測定は、試料濃度(樹脂の濃度)を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を測定装置に50〜200μL注入して行なう。試料(トナー中の樹脂成分)の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、PressureChemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適切である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
更に、前記の測定方法で用いるカラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのがよく、例えば、Waters社製のμ−styragel500、103、104、105の組み合わせや、昭和電工社製のshodex KA801,802,803,804,805,806,807の組み合わせが好ましい。
また、トナーのTHF不溶分の測定は、以下のようにして行なうことができる。即ち、試料(トナー)1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出することができる。
<2−6.トナーの軟化点及びガラス転移温度[Tg]>
本発明のトナーの軟化点[Sp]に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、低エネルギーで定着する観点から、通常150℃以下、好ましくは140℃以下である。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは、軟化点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。
なお、トナーの軟化点[Sp]は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
また、本発明におけるトナーのガラス転移温度[Tg]に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であると、低エネルギーで定着できるので望ましい。また、ガラス転移温度[Tg]は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐ブロッキング性の点で好ましい。
なお、トナーのガラス転移温度[Tg]は、示差走査熱量計において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
トナーの軟化点[Sp]及びガラス転移温度[Tg]は、トナーに含まれる重合体の種類及び組成比に大きく影響を受ける。このため、トナーの軟化点[Sp]及びガラス転移温度[Tg]は、前記の重合体の種類及び組成を適宜最適化することにより調整することができる。また、重合体の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類及び配合量によっても、調整することが可能である。
<2−7.トナー中のワックス>
本発明におけるトナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、また、上限は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。分散粒径が小さすぎるとトナーの耐フィルミング性改良の効果が得られない可能性があり、また、分散粒径が大きすぎるとトナーの表面にワックスが露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。
なお、ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーの重合体を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法等により確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、また多すぎると装置部材を汚染して画質が低下する可能性がある。
<2−8.外添微粒子>
トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性等を向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法に制限はないが、例えば、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子を混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法;二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合又は固着させる方法等が挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子とを混合する場合に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサー等が挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速撹拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に撹拌、混合することにより混合することが好ましい。
また、乾式でトナー粒子と外添微粒子を固着させる場合に用いられる装置としては、圧縮剪断応力を加えることのできる圧縮剪断処理装置や、粒子表面を溶融処理することのできる粒子表面溶融処理装置等が挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えば、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
一方、粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子との混合物を、母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し、外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
また、外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用できる。例えば、無機微粒子、有機微粒子等が挙げられる。
無機微粒子の具体例としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ケイ素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。更には、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質等を用いてもよい。
有機微粒子の具体例としては、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の微粒子等を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。なお、外添微粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、これらの無機又は有機微粒子の表面は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化等の表面処理が施されていてもよい。なお、処理剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、外添微粒子の数平均粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは1μm以下であり、異なる平均粒径のものを複数配合してもよい。なお、外添微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
また、トナーに対する外添微粒子の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、トナーと外添微粒子との合計重量に対する外添微粒子の割合として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下が望ましい。外添微粒子が少なすぎると流動性、帯電安定性が不足する可能性があり、また多すぎると定着性が悪化する可能性がある。
<2−9.トナーその他>
本発明におけるトナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であってもよく、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤等のトナー母粒子構成物の選択及び組成比、外添微粒子の選択及び組成比等により調整することができる。
また、本発明におけるトナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、例えば、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質、又は、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。
キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。
また、キャリアの平均粒径は特に制限はないが、10μm以上、200μm以下の平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5重量部以上、100重量部以下の割合で用いるのが好ましい。
なお、電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナー及び必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
<3.画像形成装置>
本発明に係る電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電手段としての帯電装置2,像露光手段としての露光装置3,現像手段としての現像装置4(内部にトナーTを備える)及び転写手段としての転写装置5を備えて構成され、更に必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明に係る電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。
帯電装置の具体的な例としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)、等が挙げられる。直接帯電部材(接触帯電器)の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等が挙げられる。
直接帯電装置による直接帯電手段としては、気中放電を伴う接触帯電手段、気中放電を伴わない注入帯電手段があり、本発明においてはいずれの方法も適用できる。
また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。
露光装置3は、帯電した電子写真感光体1に像露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その数や種類及び使用する波長等に制限はない。よって、露光装置は1個でもよく、2個以上でもよい。露光装置3の具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光の波長は任意であるが、通常波長380nm以上、また通常波長500nm以下、好ましくは波長480nm以下、更に好ましくは波長430nm以下の短波長の単色光が望ましい。
現像装置4は、形成された静電潜像をトナーにより現像するものであれば、その種類に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTは、上述した本発明におけるトナーであれば他に制限はない。図1ではその一例として、トナーの収納形態を示しているが、本発明の効果を著しく制限しない限り収納方法や収納場所、及び補充方法等は任意である。
転写装置5は、その種類に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。ただし、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆どない場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、以下の方法で画像の記録が行なわれる。
即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1及びトナーTを組み合わせて一体型のカートリッジ(これを適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。
更に、該電子写真感光体カートリッジに、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上の要素と組み合わせてもよい。この場合、画像形成装置に対して着脱可能に構成されたカートリッジケースを用い、これに上述の要素と組み合わせて収容し支持させることにより、電子写真感光体カートリッジとすることができる。
こうした構成により、例えば電子写真感光体1、又はその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができる。
また、トナーTについても、トナーカートリッジ中からなくなった場合には、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り出し、トナーの充填を容易に行なったり、別の新しいトナーカードリッジを装着したりすることができる。従って、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
<4.本発明の画像形成装置の利点>
本発明の電子写真感光体は、波長380nm〜500nmの単色光に高い分光感度を有し、電気諸特性に優れる電子写真感光体を得ることができる。波長380nm〜500nmの露光光源を用いることにより、電子写真感光体上のビームスポット径を小径化することができ、高解像度の画像を得ることができる。
本発明の画像形成装置は、高解像度、高階調性等に代表される高品質であって、しかも低いカブリであること等の欠陥の少ない画像を形成することができる。
上記の利点が得られる理由は、明確にはわかっていない。しかし発明者の推測によれば、本発明に係る電子写真感光体とトナーとを組み合わせることによって、好適な潜像が得られ、しかも該潜像と適合性の高いトナーで現像することとなり、本発明の効果を得ているものと思料される。
以下、本発明を実施例と比較例により更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜変更を加えて実施することが可能である。なお、以下において「部」とあるのは「重量部」を表わす。
[粘度平均分子量の算出方法]
電荷輸送層に用いた樹脂の粘度平均分子量は、以下のようにして算出した。樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00[g/L]の溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0[s]が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間t[s]を測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出した。
a=0.438×ηsp+1
ηsp=t/t0−1 t0=136.16[s]
b=100×ηsp/C C=6.00[g/L]
η=b/a
Mv=3207×η1.205
[製造例及び比較製造例]
以下、本発明の実施例及び比較例で用いられる電荷発生物質の製造方法について、具体的に説明する。
<参考例1: 3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリドの製造>
m−アミノフェノール250.0gをN,N−ジメチルホルムアミド2.0Lに懸濁し、水酸化ナトリウム183.2gを加えて、室温にて30分間撹拌した。ここに、ヨウ化イソブチル464.0gを30分間で滴下し、80℃にて8時間反応させた。反応液を水10L中に注加しトルエンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮し、減圧乾燥して94.1gのm−イソブトキシアニリンを得た。
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸107.1gをトルエン643mLとN,N−ジメチルホルムアミド2mLに溶解し70℃に昇温した。ここへ塩化チオニル43mLを滴下し、70℃にて90分間撹拌後、室温まで放冷した。
別の反応容器に、上記m−イソブトキシアニリン全量をN,N−ジメチルアセトアミド214.0gに溶解させ、炭酸ナトリウム76.0gを加えた。ここへ上記2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩化物の全量を滴下し、室温にて2時間反応させた。固体を濾別し濾液を減圧濃縮後、水4.8L中に注加し、中和した。析出した結晶を濾別し、エタノールにて2回再結晶をくりかえし、乾燥することにより、3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフタアニリド91.8gを得た。
<製造例1>
3−ヒドロキシナフタル酸無水物10.0gとo−フェニレンジアミン5.1gを、氷酢酸23mLとニトロベンゼン115mLとの混合溶媒中に溶解し、2時間加熱還流下、反応させた。反応後室温まで冷却し、析出した結晶を濾取し、メタノール40mLにて洗浄後、乾燥して12.7gの黄色固体を得た。
得られた黄色固体4.6gと、参考例1で製造した3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.7gをジメチルスルホキシド726mLに溶解し、ここへ室温下、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩3.6gをジメチルスルホキシド47mLに溶解した溶液を滴下した。次いで酢酸ナトリウム4.7gを水14mLに溶解した溶液を滴下し、3時間撹拌した。析出した固体を濾取し、10%酢酸水、THFにより順次洗浄後、乾燥して、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A3)を主生成物とする組成物4.9gを得た。この組成物は下記式(T1)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T1)中、Cp
3及びCp
4は、それぞれ
を表す。)
<製造例2>
製造例1において使用したo−フェニレンジアミンの代わりに、3,4−ジアミノトルエン5.7gを使用して、製造例1と同様にして13.2gの黄色固体を得た。この黄色固体4.8gを用いた以外は製造例1と同様にカップリング反応を行い、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A4)を主生成物とする組成物4.4gを得た。この組成物は下記式(T2)で表される15種類の化合物の混合物である。
(式(T2)中、Cp
5及びCp
6は、それぞれ
を表す。)
<製造例3>
参考例1のヨウ化イソブチルの代わりに1−ブロモ−2−エチルブタン416gを使用した以外は参考例1と同様にして、3’−(2−エチルブチルオキシ)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド94.5gを得た。この2.9gを製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに使用した以外は製造例1と同様にして、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A12)を主生成物とする組成物4.6gを得た。この組成物は下記式(T3)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T3)中、Cp
7及びCp
8は、それぞれ
を表す。)
<製造例4>
製造例2の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、製造例3で得た3’−(2−エチルブチルオキシ)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.9gを使用した以外は製造例2と同様にして、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A13)を主生成物とする組成物4.2gを得た。この組成物は下記式(T4)で表される15種類の化合物の混合物である。
(式(T4)中、Cp
9及びCp
10は
を表す。)
<製造例5>
製造例1の2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩の代わりに、2−(m−アミノフェニル)−5−(p−アミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素塩3.6gを使用した以外は製造例1と同様にして、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A5)を主生成物とする組成物4.6gを得た。この組成物は下記式(T5)で表される9種類の化合物の混合物である。
(式(T5)中、Cp
11,Cp
12は製造例1、式(T1)中のCp
3,Cp
4と同様である。)
<製造例6>
製造例2の2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩の代わりに、2−(m−アミノフェニル)−5−(p−アミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素塩3.6gを使用した以外は製造例2と同様にして、目的物質であるビスアゾ化合物(表1 NO.A6)を主生成物とする組成物4.8gを得た。この組成物は下記式(T6)で表される25種類の化合物の混合物である。
(式(T6)中、Cp
13,Cp
14は製造例2、式(T2)中のCp
5,Cp
6と同様である。)
<製造例7>
1,3ジイミノイソインドリン29gとスルホラン200mLを混合し、チタニウムテトライソプロポキシド17gを加え、窒素雰囲気下に140℃で、2時間反応させた。放冷した後、析出物をろ過し、クロロナフタレンで洗浄、2%の塩酸水溶液、水、メタノールで、洗浄し、乾燥させた。乾燥した固体を、濃硫酸500gに溶解させ、10Lの氷水にあけて析出させて濾別し、ウエットペーストを得た。このペースト2gを、THF30mLに懸濁させ、室温下で2時間撹拌した。分散溶液を濾過し、メタノールで洗浄した後、減圧下乾燥させて、X線回折スペクトルにおいて、ブッラク角9.6°、27.2°にピークを有するチタニアフタロシアニンの結晶を得た。
<比較製造例1>
製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.1gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T7)で表される化合物を主生成物とする組成物4.3gを得た。
(式(T7)中、Z
5は
を表す。)
この組成物は下記式(T8)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T8)中、Cp
15,Cp
16は、それぞれ
を表す。)
<比較製造例2>
製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3’−n−へキシルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.9gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T9)で表される化合物を主生成物とする組成物4.4gを得た。
(式(T9)中、Z
6は
を表す。)
この組成物は下記式(T10)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T10)中、Cp
17及びCp
18は、それぞれ
を表す。)
<比較製造例3>
製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3’−シクロプロパンメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.7gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T11)で表される化合物を主生成物とする組成物4.5gを得た。
(式(T11)中、Z
7は
を表す。)
この組成物は下記式(T12)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T12)中、Cp
19及びCp
20は、それぞれ
を表す。)
<比較製造例4>
製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3’−シクロペンタンメチルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.9gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T13)で表される化合物を主生成物とする組成物4.9gを得た。
(式(T13)中、Z
8は
を表す。)
この組成物は下記式(T14)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T14)中、Cp
21及びCp
22は、それぞれ
を表す。)
<比較製造例5>
製造例1の3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3’−(1−ブチルペンチルオキシ)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド3.2gを使用した以外は製造例1と同様にして、下記式(T15)で表される化合物を主生成物とする組成物4.9gを得た。
(式(T15)中、Z
9は
を表す。)
この組成物は下記式(T16)で表される6種類の化合物の混合物である。
(式(T16)中、Cp
23及びCp
24は、それぞれ
を表す。)
<比較製造例6>
製造例2において、3’−イソブトキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリドの代わりに、3’−n−へキシルオキシ−3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド2.9gを使用し、また、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩の代わりに、2−(m−アミノフェニル)−5−(p−アミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素塩3.6gを使用した以外は製造例2と同様にして、下記式(T17)で表される化合物を主生成物とする組成物4.2gを得た。
(式(T17)中、Z
10は
を表す。)
この組成物は下記式(T18)で表される25種類の化合物の混合物である。
(式(T18)中、Cp
25及びCp
26は、それぞれ
を表す。)
[式(1)の構造を有する化合物及びその類似化合物を含有する電子写真感光体の作製]
以下、実施例1〜14を用いて、本発明に係る式(1)の化合物を電荷発生物質に用いた電子写真感光体に関する実施例について説明する。あわせて、比較実施例1〜6を用いて、類似した構造を有する電荷発生物質を用いた場合と比較する。
<実施例1>
・電荷発生層塗布液の調製
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部とフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部とを、1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解してバインダー溶液を調製した。続いて製造例1で製造した組成物1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕して微粒化分散処理を行い、それをバインダー溶液に混合した。そのバインダー溶液に、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンとの9:1の混合液13.5部を更に混合した。以上の手順により、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液を調製した。
・電荷輸送層塗布液の調製
下記式(T19)で表される化合物35部と、下記式(T20)で表される化合物35部、更に下記式(T21)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部を、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
・順積層型の電子写真感光体の作製
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを支持体として用いた。この上に上記の電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布した。これを風乾し、電荷発生層を形成した。この電荷発生層の上に、上記の電荷輸送層塗布液をアプリケーターで塗布し、室温で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。以上の工程により、感光体E1を得た。
・電荷輸送層の所望の波長の透過率の測定
この際に用いた電荷輸送層塗布液(感光体E1を得るために用いられた電荷輸送層塗布液)を、石英ガラス上にアプリケーターで塗布し、室温で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層のサンプルを形成した。この電荷輸送層のサンプルの、405nmの光に対する透過率を測定するために、同等の石英ガラスをバックグラウンドとして、株式会社島津製作所製 分光光度計UV1650PCを用いて測定した。測定の結果、透過率は99.9%であった。
<実施例2>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例2で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E2を製造した。
<実施例3>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例3で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E3を製造した。
<実施例4>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例4で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E4を製造した。
<実施例5>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例5で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E5を製造した。
<実施例6>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、製造例6で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体E6を製造した。
<比較実施例1>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P1を製造した。
<比較実施例2>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例2で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P2を製造した。
<比較実施例3>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例3で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P3を製造した。
<比較実施例4>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例4で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P4を製造した。
<比較実施例5>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例5で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P5を製造した。
<比較実施例6>
実施例1において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例6で製造された組成物を使用する以外は、実施例1と同様にして、感光体P6を製造した。
<実施例7>
・下引き層の作製
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業(株)製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン(株)製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して表面処理酸化チタンを得た。得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部とを混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(ニッカトー(株)製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用いて、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
この酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒と、特開平4−031870号公報の実施例に記載されたε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレット、とを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた。
その後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックスLC)により濾過した。
以上の手順によって、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用分散液Aを得た。
この下引き層形成用分散液Aを、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、厚さ1.0mm)に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
・電荷発生層の作製
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)0.75部を、1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解してバインダー溶液を調製した。
続いて、製造例1で製造した組成物0.5部、及び製造例7で製造したチタニルフタロシアニン1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕して微粒化分散処理を行ない、それをバインダー液に混合した。更にそのバインダー液に、1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの9:1混合液13.5部を混合した。
以上の手順により、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層塗布液を調製した。この電荷発生層塗布液を使用して、前記下引き層の上に、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
電荷輸送層の作製
前記式(T19)で表される化合物35部、前記式(T20)で表される化合物35部、下記式(T22)で表される酸化防止剤8部、レベリング剤としてシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 KF96)0.05部、前記式(T21)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部を、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体ドラムE7を得た。
<実施例8>
実施例7において、製造例1で製造された組成物の代わりに、製造例2で製造された組成物を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E8を製造した。
<実施例9>
実施例7において、製造例1で製造された組成物の代わりに、製造例3で製造された組成物を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E9を製造した。
<実施例10>
実施例7において、製造例1で製造された組成物の代わりに、製造例4で製造された組成物を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E10を製造した。
<実施例11>
実施例7において、製造例1で製造された組成物の代わりに、製造例5で製造された組成物を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E11を製造した。
<実施例12>
実施例7において、製造例1で製造された組成物の代わりに、製造例6で製造された組成物を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E12を製造した。
<実施例13>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を1.5部使用し、製造例7で製造された組成物を使用しない以外は、実施例7と同様にして、感光体E13を製造した。
<実施例14>
実施例7において使用された電荷輸送層塗布液の代わりに、下記電荷輸送層塗布液を利用する以外は、実施例7と同様にして、感光体E14を製造した。
・電荷輸送層塗布液
下記式(T23)で表される化合物10部と、下記式(T24)で表される化合物60部と、下記式(T25)で表されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)50部と、下記式(T26)で表されるポリアリレート樹脂25部(粘度平均分子量45,000)と、下記式(T27)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=9:1、粘度平均分子量35,000)25部とを、テトラヒドロフラン480部及びトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調製した。
<比較実施例7>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用しない以外は、実施例7と同様にして、感光体P7を製造した。
<比較実施例8>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用するかわりに、比較製造例1で製造された組成物を使用する以外は、実施例7と同様にして、感光体P8を製造した。
<比較実施例9>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用するかわりに、比較製造例2で製造された組成物を使用する以外は、実施例7と同様にして、感光体P9を製造した。
<比較実施例10>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用するかわりに、比較製造例3で製造された組成物を使用する以外は、実施例7と同様にして、感光体P10を製造した。
<比較実施例11>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用するかわりに、比較製造例6で製造された組成物を使用する以外は、実施例7と同様にして、感光体P11を製造した。
<比較実施例12>
実施例14において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された組成物を使用する以外は、実施例14と同様にして、感光体P12を製造した。
<比較実施例13>
実施例7において、製造例1で製造された組成物を使用する代わりに、比較製造例1で製造された組成物を1.5部使用し、製造例7で製造された組成物を使用しない以外は、実施例7と同様にして、感光体P13を製造した。
[作製した電子写真感光体の比較評価]
<電気特性評価1及び接着強度評価>
各実施例及び比較実施例で得られた各感光体(表6参照)を、感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
各感光体を外径80mmのアルミニウム製ドラムに巻き付け、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム蒸着層を電気的に導通させ、これを回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで405nmの単色光としたものを光源に用いて、露光によって表面電位が−350Vとなる時の露光量[μJ/cm2](以下適宜、「感度」という)を求めた。
更に、温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させた後に、同様の光源を、光量1.11μJ/cm2で、389ミリ秒露光させた時の表面電位[V](以下適宜、「VL」という)を求めた。除電光は、露光幅5mmで、75ルックスの白色光を使用して行なった。除電光照射後の残留電位(以下適宜、「Vr」という)を測定した。
これらの測定結果を表6に示す。なお、感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、VL及びVrは露光後の電位であり、より値の小さい方が電気特性として優れる。
また、これらのドラムを、JIS K5400に準拠して1mm角100目の碁盤目試験を実施し、感光層の接着強度を評価した。結果を0(悪い)〜3(良好)の4段階で評価した。得られた結果を表6に示す。
実施例1〜4の感光体は比較実施例1〜5の感光体に比し、更に、実施例1、2の感光体は比較実施例3の感光体に比し、実施例3、4の感光体は実施例2、4の感光体に比し、また、実施例5及び実施例6の感光体は比較実施例6の感光体に比し、それぞれ、感度、VL、Vrがバランスよく良好であり、好適な感光体であった。
また接着強度では実施例1〜6の感光体は比較実施例1〜6の感光体に比し、いずれも良好な接着強度を有した。
いずれも、405nmの単色光に対し、電気特性が良好で、感度が高く残留電位も低く、また、接着強度が高く、感光体膜の破損のおそれがない、実用可能な感光体であり、画像形成装置により適した感光体であった。
<電気特性評価2>
各実施例及び比較実施例で得られた各感光体(表7、表8参照)を、感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
各感光体を、回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで480nm、780nmの単色光としたものを光源として用いて、露光によって表面電位が−350Vとなる時の露光量[μJ/cm2](以下適宜、「感度」という)を求めた。
更に、温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させた後に、同様の光源を、光量1.11μJ/cm2で、389ミリ秒露光させた時の表面電位[V](以下適宜、「VL」という)を求めた。除電光は、露光幅5mmで、75ルックスの白色光を使用して行なった。除電光照射後の残留電位(以下適宜、「Vr」という)を測定した。
これらの測定結果を表7及び表8に示す。なお、感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、VL及びVrは露光後の電位であり、より値の小さい方が電気特性として優れる。
480nm露光をした場合、実施例7〜12の感光体は比較実施例7の感光体に比し、実施例7〜10の感光体は比較実施例8〜10の感光体に比し、実施例11及び12の感光体は比較実施例11の感光体に比し、実施例14の感光体は比較実施例12の感光体に比し、それぞれ、感度、VL、Vrがバランスよく良好であり、好適な感光体であった。特に、480nm露光の画像形成装置に用いるのに、非常に適していた。また、電荷輸送物質の種類を変えた実施例14の感光体も、使用に適した感光体であった。
780nm露光をした場合、実施例7〜12の感光体は、それぞれ、感度、VL、Vrがバランスよく良好であり好適な感光体であった。
[現像用トナーの製造]
<現像用トナーの製造1>
・ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1の調製:
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、融点82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A、以下適宜「20%DBS水溶液」と略称する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次に、この分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径を250nmまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液T1(エマルション固形分濃度=30.2重量%)を作製した。
・シリコーンワックス分散液T2の調製:
アルキル変性シリコーンワックス(融点72℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次に、この分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液T2(エマルション固形分濃度=27.4重量%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液T1の調製:
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1を35.6重量部(712.12g)と、脱塩水259部とを仕込み、回転数103rpmで攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、下記のモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加した。このモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T1を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は280nmであり、固形分濃度は21.1重量%であった。
・重合体一次粒子分散液T2の調製:
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21L、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液T2を23.6重量部(472.3g)と、20%DBS水溶液1.5重量部と、脱塩水324部とを仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、103rpmで攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。
その5分後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始(8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した時から5分後)から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 18.9部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T2を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
・着色剤分散液Tの調製:
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積累積50%径Dv50は約90μmであった。上記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行なった。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は約0.5Lであり、メデイアの充填容積は0.35Lとしたので、メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散体Tを得た。UPA−EXで測定した体積平均粒子径は150nmであり、固形分濃度は24.2重量%であった。
・現像用母粒子Tの製造:
原料用母粒子Tの製造には、以下の成分を用いた。
重合体一次粒子分散液T1 固形分として95部 (固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液T2 固形分として5部
着色剤微粒子分散液T 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
原料用母粒子Tの製造は、以下の手順に従い行なった。
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12L、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液T1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃40rpmで5分間均一に混合した。続いて、内温12℃で攪拌回転数を250rpmに上げ第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから着色剤微粒子分散液Tを5分かけて添加し、内温12℃で250rpmのまま均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後250rpmのまま75分かけて内温53℃に昇温して、その後170分かけて56℃まで昇温した。
ここでアパーチャー径を100μmとした精密粒度分布測定装置(マルチサイザーIII:ベックマン・コールター社製;以下適宜「マルチサイザー」と略称する)にて粒径測定を測定したところ50%体積径が6.7μmであった。その後、250rpmのまま重合体一次粒子分散液T2を3分かけて添加してそのまま60分保持し、回転数を168rpmに落としてすぐに20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加してから30分かけて168rpmのまま90℃に昇温して60分保持した。
その後20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10Lのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
ここで得られたケーキをステンレス製バッドに高さ20mm程度となるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、現像用母粒子Tを得た。
・現像用トナーTAの製造:
攪拌機(Z/A0羽根)と上部より壁面に対し直角に向いたディフレクターを備えた内容積10L(直径230mm高さ240mm)のヘンシェルミキサー内に、現像用母粒子T100部(1000g)を投入し、続いてシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.04μmのシリカ微粒子0.5部と、シリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.012μmのシリカ微粒子2.0部とを添加し、3000rpmで10分間攪拌・混合して150メッシュを通し篩別する事により現像用トナーTAを得た。マルチサイザーIIで測定したトナーTAの体積平均粒径は7.05μm、Dv/Dnは1.14、FPIA2000で測定した平均円形度は0.963であった。
<現像用トナーの製造2>
前記<現像用トナーの製造1>の「・現像用母粒子Tの製造:」において、DBS水溶液を添加した後、90℃に昇温して60分保持する操作を、90℃に昇温して180分保持した以外は、現像用トナーの製造1と同様にして、現像用トナーTBを得た。
得られたTBを、FPIA2000で測定したところ、その平均円形度は0.981であった。
[画像評価]
・画像評価1:
<実施例G1>
実施例7で作製した感光体E7、及び上記現像用トナーTAを、A3印刷対応である市販のタンデム型LEDカラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−E((株)沖データ社製)用のブラックドラムカートリッジ、及び、ブラックトナーカートリッジにそれぞれ搭載し、該カートリッジを上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様:
4連タンデム
カラー36ppm、モノクロ40ppm
1200dpi
接触ローラ帯電(直流電圧印加)
LED露光
除電光あり
この画像形成装置を用いて、グラデーション画像(日本画像学会テストチャート)を1万枚プリントアウトした後に、白地画像及びグラデーション画像(日本画像学会テストチャート)をプリントアウトし、白地画像のカブリ値、及び、グラデーション画像でのドット抜けを評価した。
<実施例G2>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、感光体E8を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<実施例G3>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、感光体E9を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<実施例G4>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、感光体E10を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<実施例G5>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、感光体E11を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<実施例G6>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、感光体E12を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<実施例G7>
実施例G1において、トナーTAを使用する代わりに、トナーTBを使用する以外は、実施例G1と同様の画像評価を行なった。
<比較実施例G1>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、比較実施例7の感光体P7を使用する以外は、実施例G1と同様に画像評価を行なった。
<比較実施例G2>
実施例G1において、感光体E7を使用する代わりに、比較実施例8の感光体P8を使用する以外は、実施例G1と同様の画像評価を行なった。
<比較実施例G3>
感光体E7を、市販のカラープリンターMICROLINE 3050c((株)沖データ社製)のブラックドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。トナーには上記プリンター用の溶融混練粉砕法により製造された市販のトナーを使用した。当該トナーの平均円形度は0.935であった。
以上の装置を用いて、実施例G1と同様の画像評価を行なった。
MICROLINE 3050cの仕様:
4連タンデム
カラー21ppm、モノクロ26ppm
1200dpi
接触ローラ帯電(直流電圧印加)
LED露光
除電光なし
<比較実施例G4>
比較実施例G3において、感光体E7を使用する代わりに、比較実施例7の感光体P7を使用する以外は、比較実施例G3と同様の画像評価を行なった。
<比較実施例G5>
比較実施例G3において、感光体E7を使用する代わりに、比較実施例8の感光体P8を使用する以外は、比較実施例G3と同様の画像評価を行なった。
カブリ値は、標準サンプルの白度が94.4となるように白度計を調節し、この白度計を用いて印刷前の紙の白度を測定し、その同じ紙に対し、全面白色となる信号を上述のレーザープリンタに入力することにより印刷を行ない、その後、この紙の白度を再度測定し、印刷前と印刷後の白度の差を測定することにより求めた。この値が大きいということは、印刷後の紙は、微小黒点が多く黒ずんでいる、即ち画質が悪いということになる。
グラデーション画像については、どの濃度規格までがドット抜けすることなく印字されたかを評価し、その対応濃度の値が小さいほど、より薄い部分まで描画できていて良好ということになる。
実施例G1〜G7及び比較実施例G1〜G5の結果を表9に示す。
比較例G3〜G5に示されるトナーの円形度が低い画像形成装置では、電子写真感光体の種類に依らず、対刷後でのカブリ値が大きかった。また、グラデーション画像の描ききれる対応濃度は十分でなく、解像度が不足していた。
一方、実施例G1〜G6及び比較実施例G1〜G2の、平均円形度が0.940以上のトナーを用いた画像形成装置では、本発明に係る化合物(式(1))を有する電子写真感光体を用いた場合に限り、低いカブリ値と十分なグラデーション画像の描画が可能であった。
しかし、本発明に係る化合物(式(1))を有さない電子写真感光体を用いた比較例G1、G2では、カブリを発生しやすくなっている上に、解像度も上がらなかった。
また、平均円形度が0.940以下のトナーを用いた画像形成装置においては、式(1)に類似した構造を有する化合物を使用している比較実施例G5と、式(1)化合物を使用している比較例G3との差は比較的小さいが、平均円形度が0.940以上のトナーを用いた画像形成装置においては、式(1)類似化合物を使用している比較実施例G2と、式(1)化合物を使用している実施例G1との差は比較的大きかった。
実施例の評価結果から明らかなように、特定の化合物を有する電子写真感光体を使用することで、耐刷後においても、画像な良好な画像形成装置を作製することができることがわかった。
画像評価2:
<実施例G8>
上記トナーTAを利用できるように、正規現像用の複写機(プロセス速度190mm/sec)を反転現像用に改造した。該複写機に、感光体E13と同組成の感光体を装着し、1000枚実写した後、電源を入れたまま1時間放置し、1時間後に黒地部とハーフトーン部をもった原稿をコピーした(反転現像なので原稿の黒地部はコピーでは白地となる)。その結果、ハーフトーン部に一部濃度変化がみられたが、白地部は良好であった。
<比較実施例G6>
実施例G8において、感光体E13と同組成の感光体を使用する代わりに、感光体P13と同組成の感光体を使用する以外は、実施例G8と同様の画像評価を行なった。その結果、白地部は良好であったが、ハーフトーン部には明瞭な濃度変化がみられた。
<比較実施例G7><比較実施例G8>
上記複写機を改造する前に、実施例G8、比較例G6で使用した感光体を装着して、改造前に備えられていた該複写機用の純正品トナーを使用して、実施例G8と同様に画像評価を行なった。その結果、ともに白地部にカブリがみられ、又はフトーン部には明瞭な濃度変化がみられた。
・画像評価3:
<実施例G9>
A3印刷対応であるMICROLINE Pro 9800PS−E(沖データ社製)の露光部を、小型スポット照射型青色LED(日進電子製、B3MP−8:470nm)が感光体に照射できるように改造した。この改造装置に、感光体ドラムE13を装着し、線を描かせたところ、良好な画像が得られた。
また、上記小型スポット照射型青色LEDに、ストロボ照明電源LPS−203KSを接続し、点を書かせたところ、直径8mmの黒点を8mm間隔で画像を得ることができた。