以下、本発明について実施形態や例示物などを用いて説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。
本発明の画像形成装置は、感光層を備えた電子写真感光体(即ち、感光体)とトナーとを備えて構成される。また、本発明の画像形成装置において、感光体は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とに、それぞれ少なくとも一つの回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下適宜「特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン」という)を感光層中に含有し、また、トナーは、フロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が0.940以上0.965以下の範囲に収まるものである。
[1.特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン]
特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とに、それぞれ少なくとも一つの回折ピークを有する。通常、これらのブラッグ角(2θ±0.2°)に現れる回折ピークは、主たる回折ピークとして現れる。
また、前記のブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°〜9.8°の範囲に有する回折ピークは、結晶の安定性の面から、ブラッグ角(2θ±0.2°)の値として、通常9.4°以上に現われることが好ましく、また、通常9.8°以下、中でも9.7°以下に現われることが好ましい。
なお、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは、前記のブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とにおいて、それぞれ独立に、2本以上の回折ピークを有していてもよい。
前記の回折ピークを有する限り、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは、前記のブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°、27.2°、及び9.3°〜9.8°の範囲の回折ピーク以外にも回折ピーク(以下適宜、「その他の回折ピーク」という)を有していても良い。その他の回折ピークのブラッグ角(2θ±0.2°)としては、例えば、14.3°、14.8°、18.0°、23.8°、24.2°等が挙げられる。中でも、感光体の特性の面から、前記の例示したブラッグ角(2θ±0.2°)に現れるその他の回折ピークのうち、少なくとも1つの回折ピークを有することが好ましくは、中でも2つ以上の回折ピークを有することがより好ましく、特には3つ以上の回折ピークを有することが更に好ましい。
なお、前記の回折ピークは、オキシチタニウムフタロシアニンについてCuKα特性X線(波長1.541Å)により回折パターンを測定することで確認できる。この際、当該回折パターンを測定するには、当該オキシチタニウムフタロシアニンを含む分散液を用いてガラス面上に層を形成し、当該層について測定すればよい。具体的には、次のようにして測定できる。
〔CuKα特性X線による回折パターンの測定方法〕
まず、無反射カバーガラスに1μm以上の膜厚となるよう、オキシチタニウムフタロシアニンを含む分散液を塗布し、乾燥して、サンプルを作製する。そして、このサンプルを用い、人工多層膜ミラーにて単色並行化したCuKα特性X線(波長1.541Å)を線源とした薄膜試料用の回折計(リガクRINT1500)を測定装置として用いて、回折パターンの測定を行なう。測定条件は、X線出力50kV,250mA、固定入射角(θ)1.0°、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、入射ソーラースリット5.0°、入射スリット0.1mm、受光ソーラースリット0.1°とする。
また、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンの粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、体積平均粒径として、通常0.5μm以下、中でも0.3μm以下、特には0.15μm以下が好ましい。体積平均粒径があまりに大きいと感光層を形成する際に塗布液を用いた場合、この塗布液におけるオキシチタニウムフタロシアニンの分散安定性が低下する可能性がある。なお、体積平均粒径の下限に制限はないが、通常0.01μm以上である。
なお、前記の体積平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置等の公知の測定方法により測定できる。
前記のように、本発明の画像形成装置において、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは、感光体の感光層中に含有される。
特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを感光層に含有させる方法に制限はないが、例えば、以下の方法により含有させることができる。
即ち、例えば、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンの前駆体(例えば、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニン、アモルファス性オキシチタニウムフタロシアニンなど)を、有機溶媒等に接触させて結晶変換することにより、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを得る。そして、その得られた特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いて感光層を形成する。これにより、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを感光層中に含有する感光体を得ることができる。
また、別の方法としては、例えば、特定結晶型とは異なるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下適宜、「所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニン」という)を用い、感光層を形成するための塗布液調製時等の感光体を作製する過程において、前記の所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニンを特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンへと変換させる。これによっても、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを感光層中に含有する感光体を得ることができる。
上記特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを感光層に含有させる方法のうち、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンへの結晶型変換の難度・生産効率の面から、特定結晶型とは異なるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを用い、感光層を形成するための塗布液作成時等の感光体を作製する過程において特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンへと変換させることにより、感光層中に特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電子写真感光体を得る方法が好ましい。
前記の所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを有する限り如何なる公知のオキシチタニウムフタロシアニンでも可能である。ただし、中でも、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。
前述した所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニンから特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンへの変換方法としては、いかなる公知の方法でも可能である。中でも、好適な方法としては、有機溶媒等の媒体中で機械的・物理的な力を与えて変換する方法、所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニンが分散された溶液同士を衝突させることにより変換させる方法などが挙げられる。
ここで、機械的・物理的に力を与える方法の例としては、遊星ミル、振動ボールミル、CFミル、ローラミル、サンドミル、ニーダー、ペイントシェーカー等の装置を用いる方法が挙げられる。また、これら装置を用いる際は、例えば、ガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ等の公知のメディア等を併用して用いてもよい。なお、前記のメディアは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[2.電子写真感光体]
本発明の画像形成装置の感光体は、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層を備えるものである。また、感光層は、通常は導電性支持体上に設けられる。更に、導電性支持体上には下引き層を形成することもでき、下引き層を形成した場合には、感光層は下引き層上に形成される。
[2−1.導電性支持体]
導電性支持体の構成に特に制限はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。なお、導電性支持体の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、導電性支持体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものも用いることができる。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いることが好ましい。陽極酸化被膜を施した場合、更に、公知の方法により封孔処理を施すことが望ましい。
陽極酸化被膜は、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成される。中でも、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与えるため、好ましい。硫酸中での陽極酸化の場合、その条件は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されることが好ましい。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対しては、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、通常の方法で行なえばよいが、例えば、封孔剤を含んだ封孔液中に導電性支持体を浸漬すればよい。好適な方法の具体例としては、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは、主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されることが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、中でも30℃以上が好ましく、通常40℃以下、中でも35℃以下が好ましい。更に、同様の観点から、フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5以上、中でも5.5以上で処理することが好ましく、通常6.5以下、中でも6.0以下の範囲で処理することが好ましい。この際、pH調整剤を用いてpHを調製することも可能である。pH調整剤としては、例えば、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。また、処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1分〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するために、例えばフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させておいても良い。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
一方、前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いることが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用することが好ましい。処理温度は、通常80℃以上、中でも90℃以上が好ましく、通常100℃以下、中でも98℃以下が好ましい。また、酢酸ニッケル水溶液のpHは、5.0〜6.0の範囲で処理することが好ましい。ここで、pH調節剤としては、例えば、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は、通常10分以上、中でも20分以上処理することが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために、例えば、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させても良い。次いで、水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件が求められることがある。この場合、生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなることがある。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、中でも7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であっても良いし、例えば特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていても良い。また、例えば、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであっても良い。また、例えば、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な基体が得られるので好ましい。
[2−2.下引き層]
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、例えば、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの、などが用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素含む金属酸化物粒子;などが挙げられる。なお、前記の粒子は、1種の粒子のみを用いても良いし、2種以上の粒子を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらの粒子の中でも、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物;ステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物;による処理を施されていても良い。なお、処理に用いる化合物は、1種のみでもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。さらに、複数の結晶状態のものが含有されていても良い。
下引き層に含まれる粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径としては、通常10nm以上が好ましく、通常100nm以下、中でも50nm以下が好ましい。
下引き層は、前記金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した形で形成することが好ましい。下引き層に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダ樹脂などを用いることができる。なお、バインダ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、バインダ樹脂は、単独で用いてもよく、硬化剤とともに硬化した形で用いてもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示し、好ましい。
バインダ樹脂に対する前記粒子の混合比は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である任意であるが、10重量%以上500重量%以下の範囲で使用することが、分散液の安定性及び塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、感光体特性及び塗布性から、通常0.01μm以上、中でも0.1μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下が好ましい。
また、下引き層には、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いてもよい。
[2−3.感光層]
本発明に係る感光層は、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを含んで形成される。この感光層の具体的な構成としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散又は溶解された型(単層型、又は、分散型)の感光層;電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散又は溶解された電荷発生層、及び、電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散又は溶解された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造を有する型(積層型、又は、機能分離型)の感光層が挙げられる。単層型の感光層を有する感光体は、いわゆる単層型感光体(又は、分散型感光体)であり、積層型の感光層を有する感光体は、いわゆる積層型感光体(又は、機能分離型感光体)である。感光層としては、何れの構成のものを用いてもよいが、中でも、用いる材料の選択性、感光体の特性の面から、積層構造を有する積層型感光層が好ましい。積層型感光層においては、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンは電荷発生層に含有されることになる。
〔電荷発生層〕
電荷発生層は、電荷発生物質と、バインダ樹脂とを含んで形成される層である。また、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生層は、その他の成分を含んでいても良い。ただし、電荷発生層において、電荷発生物質としては、上述した特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いる。
また、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、電荷発生物質として、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン以外のものを併用することも可能である。しかし、その場合でも電荷発生物質としては特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを多く使用することが好ましく、電荷発生物質として特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンのみを使用することが特に好ましい。
電荷発生層に用いられるバインダ樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例を挙げると、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。なお、前記のバインダ樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電荷発生層において、前記バインダ樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、バインダ樹脂100重量部に対する電荷発生物質の配合比は、通常10重量部以上、中でも30重量部以上が好ましく、通常1000重量部以下、中でも500重量部以下が好ましい。電荷発生物質の比率が低すぎる場合は感光体としての感度の低下を招く可能性があり、一方、高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する可能性がある。
また、電荷発生層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加剤を含有させても良い。なお、これらの添加剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電荷発生層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1μm以上、中でも0.15μm以上が好ましく、通常10μm以下、中でも1μm以下が好ましい。電荷発生層が薄すぎると感度が低くなる可能性があり、厚すぎると帯電性が悪くなる可能性がある。
電荷発生層の製造方法に制限はないが、通常は、バインダ樹脂を溶媒に溶解した溶液に電荷発生物質を分散又は溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上または下引き層上に塗布し、乾燥させて、電荷発生物質の微粒子と各種バインダ樹脂とを結着することにより製造できる。なお、塗布液を調製する際、予め特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを用意しておき塗布液に分散させても良いが、[1.特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン]の項で説明したように、前駆体である所定結晶のオキシチタニウムフタロシアニンを塗布液に混合し、塗布液を調製する過程においてその結晶構造を変換して、その塗布液に特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを分散させるようにしても良い。
電荷発生層用の塗布液に用いる溶媒の例を挙げると、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油;水などが挙げられる。また、下引き層上に電荷発生層を形成する場合には、中でも下引き層を溶解しない溶媒を使用することが好ましい。なお、溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電荷発生層用の塗布液の固形分濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、中でも1重量%以上が好ましく、通常15重量%以下、中でも10重量%以下が好ましい。前記の固形分濃度が高すぎても低すぎても塗布性が低下する可能性がある。
電荷発生層用の塗布液の粘度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01mPa・s以上、中でも0.1mPa・s以上が好ましく、通常20mPa・s以下、中でも10mPa・s以下が好ましい。粘度が高すぎても低すぎても塗布性が低下する可能性がある。
塗布液に分散させる電荷発生物質の粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、[1.特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニン]の欄で説明した特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンの粒径と同様である。
また、電荷発生物質を分散させる方法に制限はないが、例えば、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることができる。
塗布液の塗布方法に制限はなく、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥方法に制限はないが、中でも、室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に変更させながら行なっても良い。
〔電荷輸送層〕
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、バインダ樹脂とを含んで形成される層である。バインダ樹脂は、膜強度確保のために用いられるものである。また、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷輸送層は、その他の成分を含んでいても良い。
電荷輸送物質としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質などを用いることもできる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。なお、電荷輸送物質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電荷輸送層に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられる。なお、これら樹脂は珪素試薬などで修飾されていてもよい。また、これらは適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。さらに、バインダ樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
バインダ樹脂のうちでも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の中でも、下記構造式を有するビスフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が、感度、残留電位の点から好ましい。
また、現像後に感光体表面に残存するトナーをクリーニングする際のクリーニング特性からは、下記ビスフェノール、ビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂がより好ましい。
更に感光層の摩耗量の観点からは、下記ビスフェノール成分が含有されるポリアリレート樹脂がより好ましい。
電荷輸送層に用いられるバインダ樹脂の粘度平均分子量〔Mv〕は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5000以上、中でも10000以上、特には15000以上が好ましく、また、通常500000以下、中でも300000以下、特には150000以下が好ましい。粘度平均分子量〔Mv〕が小さすぎると耐摩耗性が低下する可能性があり、大きすぎると塗布性が低下する可能性がある。
なお、粘度平均分子量〔Mv〕は、ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t0:136.16秒)を用いて、20.0℃において、バインダ樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を測定し、以下の式に基づき算出できる。
ηsp=(t/t0)−1
a=0.438×ηsp+1
b=100×(ηsp/C)
C=6.00[g/L]
η=b/a
Mv=3207×η1.205
電荷輸送層において、前記バインダ樹脂と電荷輸送物質との割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、バインダ樹脂100重量部に対して電荷輸送物質は、通常20重量部以上、中でも残留電位低減の観点から30重量部以上、更には繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から40重量部以上が好ましい。また、一方で、感光層の熱安定性の観点から通常は150重量部以下、中でも電荷輸送物質とバインダ樹脂との相溶性の観点から120重量部以下、更には耐刷性の観点から100重量部以下、特には耐傷性の観点からは90重量部以下が好ましい。
また、電荷輸送層には、電荷発生層と同様に、添加剤を含有させても良い。
電荷輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、中でも長寿命、画像安定性の観点から10μm以上が好ましく、また、通常50μm以下、中でも長寿命、画像安定性の観点から45μm以下、特には高解像度の観点から30μm以下が好ましい。
電荷輸送層の製造方法に制限はないが、通常、電荷輸送物質とバインダ樹脂とを溶媒に溶解又は分散して得られる塗布液を、塗布、乾燥して製造できる。この際、塗布液の調製に用いる溶媒に制限はないが、例えば、電荷発生層用の塗布液に用いたものと同様の溶媒が使用できる。
電荷輸送層用の塗布液の固形分濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5重量%以上、中でも10重量%以上が好ましく、通常40重量%以下、中でも35重量%以下が好ましい。前記の固形分濃度が高すぎても低すぎても塗布性が低下する可能性がある。
電荷輸送層用の塗布液の粘度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10mPa・s以上、中でも50mPa・s以上が好ましく、通常500mPa・s以下、中でも400mPa・s以下が好ましい。粘度が高すぎても低すぎても塗布性が低下する可能性がある。
なお、電荷輸送層を形成する際の塗布液の塗布方法及び塗布液の乾燥方法に制限はないが、電荷発生層を形成する際の塗布方法及び乾燥方法と同様の方法を用いることができる。
また、前記の塗布液には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、適宜、上述したもの以外の成分を含有させても良い。
例えば、前記の塗布液には、公知の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は、感光層の成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性、機械的強度等を向上させるために用いられるものである。添加剤の例を挙げると、可撓剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料などが挙げられる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。また、染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられる。また、残留電位を抑制するための残留電位抑制剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤(例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル等)、界面活性剤などを添加剤として用いることもできる。
なお、添加剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔単層型感光層〕
単層型感光層は、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、バインダ樹脂とを含んで構成される層である。また、本発明の効果を著しく損なわない限り、単層型感光層は、その他の成分を含んでいても良い。
通常、単層型感光層は、上述した電荷輸送層中に、更に電荷発生物質が分散された層として構成される。したがって、電荷輸送物質及びバインダ樹脂の種類、バインダ樹脂と電荷輸送物質との割合、添加剤などは、上述した電荷輸送層と同様である。
また、単層型感光層に含有される電荷発生物質としては、上述した電荷発生層と同様のものを用いる。即ち、単層型感光層においても、電荷発生物質として、少なくとも特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンを用いるものである。
ただし、単層型感光体においては、特定結晶型を有するオキシチタニウムフタロシアニンの体積平均粒径は充分小さいことが好ましい。具体的には、通常1μm以下、中でも0.5μm以下が好ましい。感光層を塗布形成するための塗布液における分散安定性を良好にするためである。
また、単層型感光層中の電荷発生物質の量は、少なすぎると充分な感度が得られない可能性があり、多すぎると帯電性の低下及び感度の低下を招く可能性がある。このため、単層型感光層においては、バインダ樹脂100重量部に対して、電荷発生物質を、通常0.1重量部以上、中でも1重量部以上、また、通常50重量部以下、中でも20重量部以下の範囲で使用することが好ましい。
さらに、単層型感光層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、中でも10μm以上が好ましく、また、通常100μm以下、中でも50μm以下が好ましい。膜厚が薄すぎると感度が低下する可能性があり、厚すぎると塗布性が低下する可能性がある。
単層型感光層の製造方法に制限はないが、通常、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダ樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を、塗布、乾燥して得ることができる。具体的には、前記の電荷発生物質を所定の量だけ含有する以外は電荷輸送層用の塗布液と同様に調製した塗布液を用意し、この塗布液を、電荷輸送層用の塗布液と同様に塗布、乾燥して製造すればよい。
なお、前記の電荷発生層、電荷輸送層及び単層型感光層に添加物等を含有させる場合には、例えば、それぞれの層の製造に用いる塗布液に当該添加物を含有させておけばよい。
[2−4.その他の層]
感光体には、必要に応じて、上述した下引き層及び感光層の他にも層を形成しても良い。例えば、感光体の最表層に、感光層の損耗を防止したり、帯電手段等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で、保護層を設けても良い。保護層は、例えば、導電性材料を適当なバインダ樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、例えば、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。なお、前記の導電性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
保護層に用いるバインダ樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、例えば、特開平9−190004号公報に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体とを用いることもできる。なお、保護層のバインダ樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、保護層は、電気抵抗が109Ω・cm以上1014Ω・cm以下となるように構成することが好ましい。電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となる可能性があり、一方、電気抵抗が109Ω・cmより低くなると画像のボケ、解像度の低下が生じる可能性がある。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体に形成できる他の層の例としては、感光体表面の摩擦抵抗及び摩耗を低減したり、トナーの感光体から転写ベルト又は紙への転写効率を高めたりするなどの目的で、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等を含む表面層を形成しても良い。また、表面層は、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
なお、上述した保護層及び表面層などのその他の層の形成方法に制限はないが、通常は、各層の材料を含む塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成できる。
[3.トナー]
本発明に係る潜像を現像するための現像剤であるトナーは、特定の円形度を有するトナーであれば他に制限はない。このように特定の円形度を有するトナーを用いることにより、本発明の画像形成装置は高画質の画像を形成することができる。
[3−1.トナーの円形度]
(トナーの円形度)
本発明に係るトナーの形状は、トナーを構成する粒子群に含まれる各粒子の形状が、互いに近いものであって球形に近いほど、トナーの粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあり、画像品質を高める上で好ましい。このため、フロー式粒子像分析装置によって測定される本発明に係るトナーの平均円形度は、通常0.940以上、好ましくは0.942以上、より好ましくは0.945以上である。また、前記平均円形度の上限は0.965以下であれば特に制限は無い。トナーの形状が完全な球形に近づきすぎると、画像形成後のトナーのクリーニング不良により電子写真感光体表面にトナーが残存して、形成した画像を汚して欠陥となる可能性がある。そのような場合には、クリーニング不良を起こさないように強力なクリーニングを行なう必要が生じ、ひいては強力なクリーニングにより電子写真感光体が磨耗しやすくなったり傷が付きやすくなったりして、電子写真感光体の寿命を縮める傾向がある。また完全な球状トナーを作ることは製造上困難であり、トナーが高コスト化するため、産業上の利用価値が低くなる可能性がある。
(円形度の測定方法)
なお、前記の平均円形度は、トナーの粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明では、トナーの粒子の円形度〔a〕を求めるに際し、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定された値を下式(A)に代入して求めるものとする。
円形度〔a〕=L0/L (A)
(式(A)中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは画像処理したときの粒子像の周囲長を示す。)
前記の円形度は、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
平均円形度の具体的な測定方法は以下の通りである。即ち、予め容器中の不純物を除去した水20mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を加え、更に測定試料(トナー)を0.05g程度加える。この試料を分散した懸濁液に超音波を30秒照射し、分散液濃度を3.0〜8.0千個/μL(マイクロリットル)として、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上160μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
[3−2.トナーの種類]
本発明に係るトナーは、上記の平均円形度を有する限り他に制限は無い。トナーの種類は、通常はその製造方法に応じて様々なものが得られるが、本発明に係るトナーとしては、いずれを用いることも可能である。
以下、トナーの製造方法とともに、そのトナーの種類を説明する。
本発明に係るトナーは、従前公知のどのような方法で製造してもよい。例えば重合法や溶融懸濁法などにより製造できる。また、いわゆる粉砕トナーを熱などの処理により球形化したものも用いることができるが、中でも水系媒体中でトナー粒子を生成する、いわゆる重合法により製造されるトナーが好ましい。
重合法トナーとしては、例えば、懸濁重合法により製造される懸濁重合法トナー、乳化重合凝集法により製造される乳化重合凝集法トナーなどが挙げられる。特に、乳化重合凝集法は、液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤等とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径および円形度を調整することができるので好ましい。
また、トナーの離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性などを改良するために、トナーに低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させる方法が提案されている。例えば、溶融混練粉砕法では、トナーに含まれるワックスの量を増やすのは難しく、重合体(バインダ樹脂)に対して5重量%程度が限界とされている。それに対して、重合トナーでは、特許文献1及び2に記載のごとく、低軟化点物質を多量(5〜30重量%)に含有させることが可能である。なお、ここでいう重合体は、トナーを構成する材料の一つであり、例えば後述する乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合、重合性単量体が重合して得られるものである。
[3−3.乳化重合凝集法によるトナーの製造方法]
以下、トナーのうちでも本発明に係るトナーとして特に好ましいものの一例として、乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
乳化重合凝集法は液状媒体中でポリマー樹脂微粒子と着色剤とを凝集させてトナーを製造する方法であり、凝集条件を制御することによってトナーの粒径および円形度を調整することができる。また、離型性、低温定着性、高温オフセット性、耐フィルミング性などを改良するために、トナーには低軟化点物質(いわゆるワックス)を含有させることが可能である。
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、その製造工程としては、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、融合工程、及び洗浄・乾燥工程を行なう。即ち、一般的には乳化重合により重合体一次粒子を得て(重合工程)、その重合体一次粒子を含む分散液に、必要に応じ、着色剤(顔料等)、ワックス、帯電制御剤等の分散体を混合し(混合工程)、この分散液中に凝集剤を加えて一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし(凝集工程)、必要に応じて微粒子等を付着する操作を行ない、その後に融合させて粒子を得て(融合工程)、得られた粒子を洗浄、乾燥することにより(洗浄・乾燥工程)、母粒子が得られる。
[3−3−1.重合工程]
重合体の微粒子(重合体一次粒子)には特に制限はない。したがって、液状媒体中で重合性単量体を、懸濁重合法、乳化重合法等により重合させて得られる微粒子、樹脂等の重合体の塊を粉砕することによって得られる微粒子のいずれを重合体一次粒子として用いてもよい。ただし、重合法により得られた重合体一次粒子が好ましく、特に乳化重合法により得られたものがより好ましく、中でも乳化重合におけるシードとしてワックスを用いたものがさらに好ましい。乳化重合におけるシードとしてワックスを用いると、重合体がワックスを包み込んだ構造の微粒子を重合体一次粒子として製造することができる。この方法によれば、ワックスをトナーの表面に露出させず、トナー内に含有させることができる。このため、ワックスによる装置部材の汚染がなく、また、トナーの帯電性を損なうこともなく、かつ、トナーの低温定着性や高温オフセット性、耐フィルミング性、離型性等を向上させることができる。
以下、ワックスをシードとして乳化重合を行ない、これにより重合体一次粒子を得る方法について説明する。
乳化重合法としては、公知のいずれの方法に従って行なってもよい。通常は、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、これに重合開始剤、重合により重合体を与える重合性単量体(即ち、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物)、及び、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤等の添加剤を混合、攪拌して重合を行なう。これにより、重合体がワックスを包み込んだ構造を有する重合体の微粒子(即ち、重合体一次粒子)が液状媒体に分散した、エマルジョンが得られる。なお、重合体がワックスを包み込んだ構造としては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型などが挙げられるが、コアシェル型が好ましい。
(i.ワックス)
ワックスとしては、トナーに用い得ることが知られている任意のものを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;アルキル基を有するシリコーンワックス;低分子量ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン類;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸より得られるエステル類または部分エステル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステルなどが挙げられる。なかでも、示差熱分析(DSC)による吸熱ピークを50〜100℃に少なくとも1つ有するものが好ましい。50℃以上100℃以下に吸熱ピークを有さず、吸熱ピークが50℃未満である場合、使用中にトナーが団粒化しやすくなり、また、吸熱ピークが100℃より高い場合、定着に要する温度が高くなり高速での画像形成が困難になる場合があるからである。
また、ワックスの中でも、例えば、エステル系ワックス、パラフィンワックス、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、シリコーンワックス等は、少量で離型性の効果が得られるので好ましい。特に、パラフィンワックスが好ましい。
なお、ワックスは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ワックスを用いる場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、重合体100重量部に対して、ワックスを通常3重量部以上、好ましくは5重量部以上、また、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下とする。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる傾向があり、多すぎると装置部材を汚染して画質の低下が生じる傾向がある。
(ii.乳化剤)
乳化剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類などが挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン類などが挙げられる。
これらの中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましい。
なお、乳化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、乳化剤の配合量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性単量体100重量部に対して、乳化剤を、通常1重量部以上、好ましくは2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは8重量部の割合で用いる。乳化剤が多すぎると粒子径が小さくなりすぎるという可能性があり、また少なすぎると粒子径が大きくなりすぎるという可能性がある。
(iii.液状媒体)
液状媒体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意のものを使用することができる。例えば、水等の水系媒体を用いることができ、中でも特に水が好ましい。ただし、液状媒体の質は液状媒体中の粒子の再凝集による粗大化にも関係し、液状媒体の導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、液状媒体として水等の水系媒体を使用する場合、導電率を通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて25℃下で測定を行なう。
また、液状媒体の使用量に制限は無いが、重合性単量体に対して、通常1重量倍以上、好ましくは1.5重量倍以上、また、通常20重量倍以下、好ましくは10重量倍以下の量を用いる。液状媒体が多すぎると生産性が低下するという可能性があり、また少なすぎると乳化できなくなるという可能性があるためである。
この液状媒体に、乳化剤の存在下で前記ワックスを分散させることにより、ワックス微粒子を得る。乳化剤及びワックスを液状媒体に配合する順は任意であるが、通常は、まず乳化剤を液状媒体に配合し、その後、ワックスを混合する。また、乳化剤は連続的に液状媒体に配合してもよい。
(iv.重合開始剤)
通常は上記のワックス微粒子を調製した後で、液状媒体に、重合開始剤を配合する。重合開始剤としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素等の無機過酸化物類などが挙げられる。中でも、無機過酸化物類が好ましい。なお、重合開始剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、重合開始剤の他の例としては、過硫酸塩類、有機又は無機過酸化物類と、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸等の還元性有機化合物類、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物類等とを併用して、レドックス系開始剤とすることもできる。この場合、還元性無機化合物類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、重合開始剤の使用量にも制限は無く任意である。ただし、重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.07重量部以上、また、通常2重量以下、好ましくは1.06重量部以下の割合で用いられる。重合開始剤が多すぎると分子量がコントロールできないという可能性があり、また少なすぎると重合性単量体が残存するという可能性があるためである。
(v.重合性単量体)
通常は上記のワックス微粒子を調製した後で、液状媒体に、前記の重合開始剤の他に、重合性単量体を配合する。本発明の効果を著しく損なわない限り重合性単量体に制限は無いが、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド類、ブレンステッド酸性基を有する単量体(以下、単に「酸性モノマー」と略記することがある)、ブレンステッド塩基性基を有する単量体(以下、単に「塩基性モノマー」と略記することがある)等の単官能性モノマーが主として用いられる。また、単官能性のモノマーに多官能性のモノマーを併用することもできる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。
酸性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマーなどが挙げられる。
塩基性モノマーの具体例としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素複素環含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
酸性モノマー及び塩基性モノマーは、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
多官能性モノマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の反応性基を有するモノマーを用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマー、特に、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
これらの中でも、重合性単量体としては、少なくともスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を有する酸性モノマーから構成されるのが好ましい。特に、スチレン類としてはスチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類としてはアクリル酸ブチルが好ましく、カルボキシル基を有する酸性モノマーとしてはアクリル酸が好ましい。
なお、重合性単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ワックスをシードとして乳化重合を行なう際には、重合性単量体として、酸性モノマー又は塩基性モノマーと、これら以外のモノマーとを併用するのが好ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーを併用することにより、重合体一次粒子の分散安定性を向上させることができるからである。
この際、酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量は任意であるが、全重合性単量体100重量部に対する酸性モノマー又は塩基性モノマーの使用量を、通常0.05重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下となるようにすることが望ましい。酸性モノマー又は塩基性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると重合体一次粒子の分散安定性が低下する傾向があり、上限を上回るとトナーの帯電性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、単官能性モノマーと多官能性モノマーを併用する場合、その配合量は任意であるが、重合性単量体100重量部に対する多官能性モノマーの配合量は、通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。多官能性モノマーを使用することにより、トナーの定着性を向上させることができる。この際、多官能性モノマーの配合量が上記範囲を下回ると耐高温オフセット性が低下する傾向があり、上限を上回ると低温定着性が低下する傾向がある。
液状媒体へ重合性単量体を配合する方法は特に限定されない。例えば、一括して配合してもよく、連続して配合してもよく、間欠的に配合してもよいが、反応制御の点からは連続的に配合するのが好ましい。また、複数の重合性単量体を併用する場合、各重合性単量体は、別々に配合してもよく、また予め混合してから配合してもよい。更には、単量体混合物の組成を変化させながら配合してもよい。
(vi.添加剤)
上記のワックス微粒子を調製した後、液状媒体には、前記の重合開始剤及び重合性単量体の他に、必要に応じて、連鎖移動剤、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤、保護コロイド、内添剤などの添加剤を配合する。これらの添加剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。また、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
連鎖移動剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものが使用できる。具体例を挙げると、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。なお、連鎖移動剤は、1種のみで用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、連鎖移動剤の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、重合性単量体100重量部に対して、通常5重量部以下の割合で用いられる。
保護コロイドとしては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。具体例としては、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等などが挙げられる。なお、保護コロイドも、1種のみで用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
内添剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものが用いられる。例えば、シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系オイル等のトナーの粘着性、凝集性、流動性、帯電性、表面抵抗等を改質するためのものが挙げられる。なお、内添剤も、1種のみで用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(vii.反応条件等)
重合工程において重合体一次粒子を製造するには、上述したように、ワックスを乳化剤の存在下で液状媒体に分散してワックス微粒子とし、当該ワックス微粒子を液状媒体中に含むワックス分散液を用意する。そして、このワックス分散液と、重合開始剤、重合性単量体、及び、必要に応じて用いられる添加剤とを混合し、撹拌して乳化重合反応を進行させる。
さらに、ワックス分散液、重合開始剤、重合性単量体及び添加剤を混合する順番に制限はない。
また、混合の方法に制限はなく、一括して混合してもよく、連続的に混合してもよく、間欠的に混合しても良い。ただし、反応制御の点からは、連続的に混合することが好ましい。
さらに、撹拌の方法にも制限はなく、任意の手法を用いることができる。
反応時の温度条件は、乳化重合反応が進行する限り任意であるが、通常50℃以上、中でも60℃以上、特には70℃以上が好ましく、また、通常120℃以下、中でも100℃以下、特には90℃以下が好ましい。温度が低すぎても高すぎても乳化重合反応の進行を制御できなくなる可能性がある。
前記の乳化重合反応により、重合性単量体が重合した重合体であるバインダ樹脂がワックスを包み込んだ構造を有する重合体一次粒子が液状媒体中に生成し、当該重合一次粒子が液状媒体に分散したエマルジョンが得られる。重合一次粒子は液状媒体から取り出して次の工程に供しても良いが、通常は、エマルジョンのまま次の工程に供される。
(viii.重合体一次粒子)
重合体一次粒子の体積平均粒径に特に制限は無いが、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。体積平均粒径が小さすぎると、凝集速度の制御が困難となる場合があり、また、体積平均粒径が大きすぎると、凝集して得られるトナーの粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。なお、体積平均粒径は、後述する動的光散乱法を用いた粒度分析計で測定することができる。
以下、動的光散乱法による粒度の測定について説明する。
液中の粒子の体積粒度分布は、動的光散乱法により測定される。この方式は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。これら粒子の体積粒径の値は、液中に粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての粒径を意味していない。実際の測定では、上記の体積粒径については、動的光散乱方式を用いた超微粒子粒度分布測定装置(日機装社製、UPA−EX150、以下UPA−EXと略す)を用いて、以下の設定にて行なうことができる。
測定上限 :6.54μm
測定下限 :0.0008μm
チャンネル数:52
測定時間 :100sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度(g/cm3) :1
分散媒種類 :WATER
分散媒屈折率:1.333
なお、測定時は、サンプル濃度指数が0.01〜0.1の範囲になるように粒子の分散液を純水で希釈し、超音波洗浄器で分散処理した試料で測定したものである。そして、体積平均粒径は、上記の体積粒度分布の結果を算術平均値として計測される。
また、重合体一次粒子を構成する重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、通常3000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、また、通常10万以下、好ましくは7万以下、より好ましくは6万以下である。ピーク分子量が前記範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、定着性が良好となる。ここで、ピーク分子量とは、ポリスチレン換算した値を用いるものとし、測定に際しては溶媒に不溶の成分を除くものとする。ピーク分子量は、後述するトナーの場合と同様に測定することが可能である。
特に、前記の重合体がスチレン系樹脂である場合には、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける数平均分子量が、通常2000以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、また、通常5万以下、好ましくは4万以下、より好ましくは3.5万以下である。スチレン系樹脂の数平均分子量は、小さすぎるとガラス点移転が低下しすぎて凝集しやすくなる他、トナーの耐オフセット性が低下する可能性があり、大きすぎるとトナーが定着しにくくなる可能性がある。
さらに、スチレン系樹脂の重量平均分子量は、通常2万以上、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下である。数平均分子量、重量平均分子量の少なくとも一方、好ましくは双方が前記の範囲に収まるスチレン系樹脂を重合体として用いた場合、得られるトナーは、耐久性、保存性、定着性が良好となる。さらに分子量分布において、メインピークが2つあるものでもよい。なお、スチレン系樹脂とは、スチレン類が全重合体中の通常50重量%以上、好ましくは65重量%以上を占めるものを指す。
また、重合体の軟化点(以下「Sp」と略記することがある)に制限はないが、通常150℃以下、好ましくは140℃以下であることが、低エネルギー定着の点から好ましく、また、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であることが耐高温オフセット性、耐久性の点で好ましい。
ここで重合体の軟化点は、フローテスターにおいて、試料1.0gをノズル1mm×10mm、荷重30kg、予熱時間50℃で5分、昇温速度3℃/分の条件下で測定を行なったときの、フロー開始から終了までのストランドの中間点での温度として求めることができる。
さらに、重合体のガラス転移温度(以下「Tg」と略記することがある)に制限はないが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下である。重合体のガラス転移温度が高すぎると低エネルギー定着ができなくなる可能性がある。また、重合体のガラス転移温度の下限は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上である。重合体のガラス転移温度が低すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
ここで重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計(島津製作所社製DTA−40)において、昇温速度10℃/分の条件で測定した曲線の転移(変曲)開始部に接線を引き、2つの接線の交点の温度として求めることができる。
重合体の軟化点及びガラス転移温度は、重合体の種類およびモノマー組成比、分子量等を調整することによって前記範囲とすることができる。
[3−3−2.混合工程]
次に、必要に応じて、前記の重合工程で得られた重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、ワックス、帯電制御剤等を混合する。
重合体一次粒子としては、乳化重合により得た前記の重合体一次粒子を使用することができる。この際、重合体一次粒子は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。したがって、別々の重合工程で得られた重合体一次粒子を併用してもよく、また、上述した乳化重合とは異なる原料や反応条件で製造した重合体一次粒子(以下適宜「併用重合体粒子」という)を併用してもよい。
併用重合体粒子としては、例えば、懸濁重合や粉砕で得られた微粒子などが挙げられる。このような併用重合体粒子の材料としては樹脂を使用できるが、この樹脂としては、上述の乳化重合に供する単量体の(共)重合体の他に、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、ビニルピロリドン等のビニル系単量体の単独重合体または共重合体、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
なお、これらの併用重合体粒子も、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。ただし、併用重合体粒子の割合は、重合体一次粒子及び併用重合体粒子の重合体の合計に対して、通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
重合体一次粒子を含む分散液としては、通常、前記の重合工程で得られたエマルジョンを用いる。そして、このエマルジョンに、必要に応じ、例えば、着色剤、ワックス、帯電制御剤等を混合する。また、この際、例えば、離型剤、内添剤等を混合しても良い。また、着色剤粒子分散液の安定性を保持するために、前記の乳化剤を混合してもよい。
〔着色剤〕
着色剤に制限は無く、その用途に応じて任意のものを用いることができる。ただし、着色剤は通常は着色剤粒子として粒子状で存在するが、この着色剤粒子の粒子は、乳化重合凝集法における重合体一次粒子との密度差が小さい方が好ましい。密度差が小さいほうが、重合体一次粒子と着色剤とを凝集させた場合に均一な凝集状態が得られ、従って得られるトナーの性能が向上するためである。なお、重合体一次粒子の密度は、通常は1.1〜1.3g/cm3である。
前記の観点から、JIS K 5101−11−1:2004に規定されるピクノメーター法で測定される着色剤粒子の真密度は、通常1.2g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以上、また、通常2.0g/cm3未満、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下である。着色剤粒子の真密度が大きい場合は、特に液状媒体中での沈降性が悪化する傾向にある。加えて、保存性、昇華性などの課題も考慮すると、着色剤はカーボンブラックあるいは有機顔料であるのが好ましい。
以上の条件を満たす着色剤の具体例としては、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料などが挙げられる。また、黒色顔料としては、カーボンブラック、又は、以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料として使用されるカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、着色体粒子分散液として分散させたときに、再凝集によるカーボンブラック粒子の粗大化が発生しやすい。本発明者らの検討によると、カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が顕著となる傾向を示す。
不純物量の定量的な評価としては、以下の測定方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度によって評価され、通常0.05以下、好ましくは0.03以下である。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明に係るトナーに使用するカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
なお、カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は次の方法で測定される。即ち、まずカーボンブラック3gをトルエン30mLに充分に分散、混合させて、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計を用いて波長336nmの吸光度を測定した値(λs)と、同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度を測定した値(λo)とから、紫外線吸光度はλc=λs−λoで求める。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)などがある。
イエロー顔料の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物などに代表される化合物が用いられる。具体例としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180、185等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが用いられる。具体例としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。その中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。このキナクリドン系顔料は、鮮明な色相や高い耐光性等からマゼンタ顔料として好適である。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
なお、顔料は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の着色剤は前記の重合体一次粒子を含む分散液に混合されるのであるが、この際、着色剤は、予め液状媒体に分散させた着色剤粒子分散液を調製し、この着色剤粒子分散液を重合体一次粒子を含む分散液に混合することが好ましい。また、着色剤粒子分散液の調製時には、界面活性剤を用いて均一に分散させることがより好ましい。
着色剤粒子分散液の調製に用いられる界面活性剤としては、乳化剤として上述したものと同様のものを用いることができる。中でも、非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類等のアニオン系活性剤、ポリマー系界面活性剤等が好ましく用いられる。また、この際、界面活性剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、着色剤粒子分散液中における着色剤粒子の量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、水100重量部に対して、通常3重量部以上、中でも5重量部以上が好ましく、また、通常50重量部以下、中でも40重量部以下が好ましい。着色剤の量が前記範囲を超える場合には、着色剤濃度が濃すぎて分散中に粒子の再凝集の確率が高まることがあり、前記範囲未満の場合には分散が過剰となって所望の粒度分布を得ることが困難となることがある。
また、重合体一次粒子に含まれる重合体に対する着色剤の使用量の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。着色剤の使用量が少なすぎると画像濃度が薄くなる可能性があり、多すぎると凝集制御が困難となる可能性がある。
また、着色剤粒子分散液の液状媒体としては、通常は水系媒体を用い、好ましくは水を用いる。この際、重合体一次粒子及び着色剤粒子分散液の水質は各粒子の再凝集による粗大化にも関係し、導電率が高いと経時の分散安定性が悪化する傾向がある。したがって、導電率を、通常10μS/cm以下、好ましくは5μS/cm以下となるように脱塩処理されたイオン交換水あるいは蒸留水を用いることが好ましい。なお、導電率の測定は、重合工程の液状媒体の誘電率と同様にして測定できる。
着色剤を液状媒体に分散させ、所望の粒径を得る手法に制限はない。例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられるので、適宜条件を選べばよい。各方式の概要は以下の通りである。
・ボールミル:ドラム状容器の中に湿式分散媒、被粉砕物及び10〜30mm程度のメデイアビーズを入れ、ドラムごと回転させてビーズとビーズ、ビーズとドラムの間で被粉砕物を磨り潰す方式。
・アトライター:湿式分散媒、被粉砕物をタンクに入れ、3〜15mm程度のメディアビーズを入れアルミナ製などのアジテータアームで強制的に撹拌して摩砕する方式。
・サンドミル:湿式分散媒と被粉砕物をプレミックスしたものに1〜5mm程度のメデイアビーズを加えた後、サンドディスクを浸漬して規定速度で回転・機動させる方式。
・ビーズミル(アニュラー型):容器のロータとステータの間に1〜3mm程度のメディアビーズを充填し、ロータを高速回転させることでビーズ間に流動速度差を与えることで発生するずり応力、剪断力、摩擦などによって粉砕分散を行う方式。
〔ワックス〕
混合工程においては、重合体一次粒子を含む分散液にワックスを混合しても良い。ワックスとしては、重合工程の説明において述べたものを同様のものを使用することができる。ただし、ワックスの混合に際しては、当該ワックスを重合工程で行なったのと同様にワックス分散液としてから混合することが好ましい。また、ワックスは、重合体一次粒子を含む分散液に着色剤を混合する前、混合中、混合した後のいずれにおいて混合しても良い。
混合工程において混合するワックスの量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は先に説明したとおりである。
〔帯電制御剤〕
混合工程においては、重合体一次粒子を含む分散液に、帯電制御剤を混合しても良い。
帯電制御剤としては、この用途に用いられ得ることが知られている任意のものを使用することができる。正荷電性帯電制御剤の具体例としては、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが挙げられる。また、負荷電性帯電制御剤としては、例えば、Cr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアゾ錯化合物染料;サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩又は金属錯体;カーリックスアレン化合物、ベンジル酸の金属塩又は金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物などが挙げられる。中でも、トナーとしての色調障害を回避するため、無色ないしは淡色のものを選択することが好ましく、特に正荷電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物が好ましく、負荷電性帯電制御剤としてはCr、Co、Al、Fe、B等の原子を含有するアルキルサリチル酸錯化合物、カーリックスアレン化合物が好ましい。
帯電制御剤は1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、帯電制御剤の使用量に制限は無いが、重合体100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。帯電制御剤の使用量が少なすぎても多すぎても所望の帯電量が得られなくなる可能性がある。
帯電制御剤は、重合体一次粒子を含む分散液に着色剤を混合する前、混合中、後のいずれにおいて混合しても良い。
上記の帯電性御剤は前記の重合体一次粒子を含む分散液に混合されるのであるが、この際、着色剤と同様に、予め液状媒体に分散させた帯電制御剤分散液を調製し、この帯電制御剤分散液を重合体一次粒子を含む分散液に混合することが好ましい。また、帯電制御剤分散液の調製時には、界面活性剤を用いて均一に分散させることがより好ましい点も、着色剤と同様である。
[3−3−3.凝集工程]
前記の混合工程の後、分散液中の重合体一次粒子を凝集させ、粒子凝集体を得る。また、前記の混合工程を行なっていない場合には、重合工程後の分散液中の重合体一次粒子を凝集させればよい。
凝集方法に制限は無く任意であるが、例えば、加熱、凝集剤の混合、pHの調整等が挙げられる。なかでも、凝集剤を混合する方法が好ましい。
凝集剤としては、例えば、電解質を用いることができる。その例を挙げると、NaCl、KCl、LiCl、MgCl2、CaCl2等の塩化物;Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3等の硫酸塩などの無機塩;CH3COONa、C6H5SO3Na等の有機塩などが挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。なお、凝集剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
凝集剤の使用量は、凝集剤の種類によって異なるが、液中の固形成分100重量部に対して、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。凝集剤を混合して凝集を行なう場合において、凝集剤の使用量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られる凝集体の体積平均粒径が目的の範囲に達しない傾向があり、また、凝集剤の使用量が多すぎると、凝集反応が急速に起こるため粒径の制御が困難となり、得られる凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれる可能性がある。
凝集剤を用いて得られた凝集体は、引き続き液状媒体中で加熱して球形化するのが好ましい。加熱は融合工程の説明において述べるのと同様の条件で行なえばよい。
一方、加熱により凝集を行なう場合、温度条件は凝集が進行する限り任意である。具体的な温度条件を挙げると、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、重合体一次粒子の重合体のガラス転移温度以下、好ましくは55℃以下の温度条件で凝集を行なう。凝集を行なう時間も任意であるが、通常10分以上、好ましくは60分以上、また、通常300分以下、好ましくは180分以下である。また、凝集を行なう際には、攪拌を行なうことが好ましい。攪拌に使用する装置は特に限定されないが、ダブルヘリカル翼を有するものが好ましい。
上述した凝集剤の混合又は加熱等により、凝集が進み、重合体及び顔料を含む凝集体のエマルジョンが得られる。得られた凝集体は、そのまま次工程の樹脂被覆層を形成する工程(カプセル化工程)に進んでもよいし、引き続き液状媒体中で加熱による融合処理を行なった後に、カプセル化工程に進んでもよい。中でも、凝集工程の後にカプセル化工程を行ない、カプセル化樹脂微粒子のガラス転移温度〔Tg〕以上の温度で加熱して融合工程を行なうのが、工程を簡略化でき、トナーの性能劣化(熱劣化など)を生じないので好ましい。
[3−3−3.カプセル化工程]
凝集体を得た後、当該凝集体には、必要に応じて樹脂被覆層を形成することが好ましい。凝集体に樹脂被覆層を形成させるカプセル化工程とは、凝集体の表面に樹脂被覆層を形成することにより、凝集体を樹脂により被覆する工程である。これにより、製造されるトナーは樹脂被覆層を備えることになる。
カプセル化工程では、トナー全体が完全に被覆されない場合もあるが、着色剤が実質的にトナー粒子の表面に露出していないトナーを得ることができるようになる。この際の樹脂被覆層の厚さに制限は無いが、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、また、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲である。樹脂被覆層が薄すぎると着色剤がトナー粒子の表面に露出する可能性があり、厚すぎると定着性が悪くなる可能性がある。
前記樹脂被覆層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、スプレードライ法、機械式粒子複合法、in−situ重合法、液中粒子被覆法などが挙げられる。
上記スプレードライ法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを水系媒体中に分散して分散液を作製し、分散液をスプレー噴出し、乾燥することによって、凝集体表面に樹脂被覆層を形成することができる。
前記機械式粒子複合法により樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、内層を形成する凝集体と樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子とを気相中に分散させ、狭い間隙で機械的な力を加えて凝集体表面に樹脂微粒子を成膜化する方法を用いることができる。その際には、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)などの装置が使用できる。
前記in−situ重合法としては、例えば、凝集体を水中に分散させ、単量体及び重合開始剤を混合して、凝集体表面に吸着させ、加熱して、単量体を重合させて、内層である凝集体表面に樹脂被覆層を形成する方法を用いることができる。
前記液中粒子被覆法としては、例えば、内層を形成する凝集体と外層を形成する樹脂微粒子とを、水媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面に樹脂被覆層を形成させる方法を用いることができる。
外層を形成させる場合に用いる樹脂微粒子は、重合体で構成された粒子であれば特に制限はない。ただし、外層の厚みがコントロールできるという観点から、重合体一次粒子、凝集体もしくは凝集体の融合粒子であることが好ましい。この上記外層を構成する重合体一次粒子、凝集体若しくは融合粒子と同様の樹脂微粒子は、内層に使用する凝集体における重合体一次粒子、凝集体及び融合粒子と同様の材料を使用し、同様の製造方法で製造することができる。
樹脂微粒子の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、凝集体に対して、通常1重量%以上、中でも5重量%以上が好ましく、また、通常50重量%以下、中でも25重量%以下が好ましい。
さらに、凝集体に対する樹脂微粒子の固着又は融合を効果的に行なうためには、樹脂微粒子の体積平均粒径は、通常0.04μm以上、好ましくは0.08μm以上、また、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下である。なお、樹脂微粒子の粒径は、UPA−EXを用いて上述した動的光散乱法により測定できる。
樹脂被覆層に用いられる重合体成分(樹脂成分)のガラス転移温度〔Tg〕としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常60℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常110℃以下が望ましい。さらに、樹脂被覆層に用いられる重合体成分のガラス転移温度は、重合体一次粒子のガラス転移温度より5℃以上高いものであることが好ましく、10℃以上高いものであることがより好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、一般環境での保存が困難となる場合があり、また高すぎては充分な溶融性が得られない場合がある。
さらに、樹脂被覆層中にはポリシロキサンワックスを含有させることが好ましい。これにより、耐高温オフセット性の向上という利点を得ることができる。ポリシロキサンワックスの例を挙げると、アルキル基を有するシリコーンワックスなどが挙げられる。なお、ポリシロキサンワックスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ポリシロキサンワックスの含有量に制限は無いが、トナー中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.08重量%以上、また、通常2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下とする。樹脂被覆層中のポリシロキサンワックスの量が少なすぎると耐高温オフセット性が不十分となる可能性があり、多すぎると耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
樹脂被覆相中にポリシロキサンワックスを含有させる方法は任意であるが、例えば、ポリシロキサンワックスをシードとして乳化重合を行ない、得られた樹脂微粒子と、内層を形成する凝集体とを、水系媒体中で反応あるいは結合させ、内層を形成する凝集体の表面にポリシロキサンワックスを含有する樹脂被覆層を形成させることにより含有させることが可能である。
[3−3−4.融合工程]
融合工程では、凝集体を加熱処理することにより、凝集体を構成する重合体の溶融一体化を行なう。
また、凝集体に樹脂被覆層を形成してカプセル化樹脂微粒子とした場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移点(Tg)以上の温度で加熱処理をすることにより、凝集体を構成する重合体及びその表面の樹脂被覆層の融合一体化がなされ、球形に近いトナー粒子を得ることができる。また、これにより、着色剤粒子は実質的に表面に露出しない形態で得られる。
融合工程の加熱処理の温度は、凝集体を構成する重合体一次粒子のガラス転移温度以上の温度とする。また、樹脂被覆層を形成した場合には、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度以上の温度とする。具体的な温度条件は任意であるが、樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度よりも、通常5℃以上高温であることが好ましい。その上限に制限は無いが、「樹脂被覆層を形成する重合体成分のガラス転移温度〔Tg〕よりも50℃高い温度」以下が好ましい。
なお、加熱処理の時間は処理能力、製造量にもよるが、通常0.5〜6時間である。
[3−3−5.洗浄・乾燥工程]
上述した各工程を液状媒体中で行なっていた場合には、融合工程の後、得られたカプセル化樹脂粒子を洗浄し、乾燥して液状媒体を除去することにより、トナーを得ることができる。洗浄及び乾燥の方法に制限は無く任意である。
なお、乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、所望のトナーが得られる限り、上述した工程以外の工程を、任意の時点において行なってもよい。
[3−4.トナーの粒径に関する物性値]
本発明に係るトナーは、上述した円形度を有していれば他に制限はないが、以下に説明する物性を有することが好ましい。
[3−4−1.体積平均粒径]
本発明に係るトナーの体積平均粒径〔Dv〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常4μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは8μm以下である。トナーの体積平均粒径〔Dv〕が小さすぎると画質の安定性が低下する傾向があり、大きすぎると解像度が低下する傾向がある。
[3−4−2.体積平均粒径/個数平均粒径]
本発明に係るトナーは、体積平均粒径〔Dv〕を個数平均粒径〔Dn〕で除した値〔Dv/Dn〕が、通常1.0以上、また、通常1.25以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下であることが望ましい。〔Dv/Dn〕の値は粒度分布の状態を表わし、この値が1.0に近い方ほど粒度分布がシャープであることを表わす。粒度分布がシャープであるほど、トナーの帯電性が均一となるので望ましい。
[3−4−3.体積分率]
本発明に係るトナーは、粒径25μm以上の体積分率が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。この値は小さいほど好ましい。これは、トナーに含まれる粗粉の割合が少ないことを意味しており、粗粉が少ないと、連続現像の際のトナーの消費量が少なく、画質が安定するので好ましいのである。なお、粒径25μm以上の粗粉は全く存在しないことが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.005%以下にしなくとも構わない。
また、本発明に係るトナーは、粒径15μm以上の体積分率が、通常2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下である。粒径15μm以上の粗粉も全く存在しないのが特に好ましいが、実際の製造上は困難であり、通常は0.01%以下にしなくとも構わない。
さらに、本発明に係るトナーは、粒径5μm以下の個数分率が、通常15%以下、好ましくは10%以下であることが、画像カブリの改善に効果があるので、望ましい。
ここで、トナーの体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕、体積分率、個数分率などは、以下のようにして測定することができる。即ち、トナーの粒子径の測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布・体積分布を出力するインターフェイス及び一般的なパーソナルコンピューターを接続して使用する。また、電解液はアイソトンIIを用いる。測定法としては、前記電解液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料(トナー)を2〜20mg加える。そして、試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型あるいはIII型により、100μmアパーチャーを用いて測定する。このようにしてトナーの個数及び体積を測定して、それぞれ個数分布、体積分布を算出し、それぞれ、体積平均粒径〔Dv〕、個数平均粒径〔Dn〕を求める。
[3−5.トナーの分子量に関する物性値]
本発明に係るトナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す場合がある)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つは、通常1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であり、通常15万以下、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下である。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
さらに、トナーのTHF不溶分は後述するセライト濾過による重量法で測定した場合、通常10%以上、好ましくは20%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは50%以下である。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
なお、本発明に係るトナーのピーク分子量は、測定装置:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)を用いて次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mL(ミリリットル)の流速で流す。次いで、トナーをTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
測定は、試料濃度(樹脂の濃度)を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を測定装置に50〜200μL注入して行なう。試料(トナー中の樹脂成分)の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、PressureChemicalCo.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適切である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
さらに、前記の測定方法で用いるカラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodexKA801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の測定は、以下のようにして行なうことができる。即ち、試料(トナー)1gをTHF100gに加え25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を留去してTHF可溶分を定量し、1gから差し引いてTHF不溶分を算出することができる。
[3−6.トナーの軟化点及びガラス転移温度]
本発明に係るトナーの軟化点〔Sp〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、低エネルギーで定着する観点から、通常150℃以下、好ましくは140℃以下である。また、耐高温オフセット性、耐久性の点からは、軟化点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上である。
また、本発明に係るトナーのガラス転移温度〔Tg〕に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常80℃以下、好ましくは70℃以下であると、低エネルギーで定着できるので望ましい。また、ガラス転移温度〔Tg〕は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であると、耐ブロッキング性の点で好ましい。
なお、本発明に係るトナーの軟化点〔Sg〕及びガラス転移点〔Tg〕の測定は、前記の重合体の測定方法と同様にして行なうことができる。
トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、トナーに含まれる重合体の種類および組成比に大きく影響を受ける。このため、トナーの軟化点〔Sp〕及びガラス転移温度〔Tg〕は、前記の重合体の種類及び組成を適宜最適化することにより調整することができる。また、重合体の分子量、ゲル分、ワックス等の低融点成分の種類および配合量によっても、調整することが可能である。
[3−7.トナー中のワックス]
本発明に係るトナーがワックスを含有する場合、トナー粒子中のワックスの分散粒径は、平均粒径として、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であり、また、上限は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。分散粒径が小さすぎるとトナーの耐フィルミング性改良の効果が得られない可能性があり、また、分散粒径が大きすぎるとトナーの表面にワックスが露出しやすくなり帯電性や耐熱性が低下する可能性がある。
なお、ワックスの分散粒径は、トナーを薄片化して電子顕微鏡観察する方法の他、ワックスが溶解しない有機溶剤等でトナーの重合体を溶出した後にフィルターで濾過し、フィルター上に残ったワックス粒子を顕微鏡により計測する方法などにより確認することができる。
また、トナーに占めるワックスの割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。ワックスが少なすぎると定着温度幅が不十分となる可能性があり、多すぎると装置部材を汚染して画質が低下する可能性がある。
[3−8.外添微粒子]
トナーの流動性、帯電安定性、高温下での耐ブロッキング性などを向上させるために、トナー粒子表面に外添微粒子を添着させてもよい。
外添微粒子をトナー粒子表面に添着させる方法に制限はないが、例えば、液状媒体中で二次凝集体と外添微粒子とを混合した後、加熱してトナー粒子上に外添微粒子を固着させる方法;二次凝集体を液状媒体から分離、洗浄、乾燥させて得られたトナー粒子に乾式で外添微粒子を混合又は固着させる方法などが挙げられる。
乾式でトナー粒子と外添微粒子とを混合する場合に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、V型ミキサー、レディゲミキサー、ダブルコーンミキサー、ドラム型ミキサーなどが挙げられる。中でもヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌型の混合機を用い、羽根形状、回転数、時間、駆動−停止の回数等を適宜設定して均一に攪拌、混合することにより混合することが好ましい。
また、乾式でトナー粒子と外添微粒子とを固着させる場合に用いられる装置としては、例えば、圧縮剪断応力を加えることの出来る圧縮剪断処理装置や、粒子表面を溶融処理することのできる粒子表面溶融処理装置などが挙げられる。
圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。このような圧縮剪断処理装置としては、例えば、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
一方、粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、母体微粒子と外添微粒子との混合物を母体微粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。このような粒子表面溶融処理装置としては、例えば、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。
また、外添微粒子としては、この用途に用い得ることが知られている公知のものが使用できる。例えば、無機微粒子、有機微粒子などが挙げられる。
無機微粒子の具体例としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化珪素等の窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の各種チタン酸化合物、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸イオンの一部が陰イオンによって置換された置換リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、滑石、ベントナイト、導電性カーボンブラックをはじめとする種々のカーボンブラック等を用いることができる。さらには、マグネタイト、マグへマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間体等の磁性物質などを用いてもよい。
有機微粒子の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルなどの微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カーボンブラック等が好適に使用される。
なお、外添微粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、これらの無機または有機微粒子の表面は、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化などの表面処理が施されていてもよい。なお、処理剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、外添微粒子の数平均粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001μm以上、好ましくは0.005μm以上、また、通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。また、異なる平均粒径を示す外添微粒子の群を適宜複数配合して、結果として前記範囲の数平均粒径としてもよい。なお、外添微粒子の数平均粒径は、電子顕微鏡観察やBET比表面積の値からの換算等により求めることができる。
また、トナーに対する外添微粒子の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、トナーと外添微粒子との合計重量に対する外添微粒子の割合として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下が望ましい。外添微粒子が少なすぎると流動性、帯電安定性が不足する可能性があり、多すぎると定着性が悪化する可能性がある。
[3−9.トナーその他]
本発明に係るトナーの帯電特性は、負帯電性であっても、正帯電性であっても良く、用いる画像形成装置の方式に応じて設定することができる。なお、トナーの帯電特性は、帯電制御剤などのトナー母粒子構成物の選択および組成比、外添微粒子の選択および組成比等により調整することができる。
また、本発明に係るトナーは、一成分現像剤として用いることも、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることも可能である。
二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、例えば、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質、または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。
キャリアの被覆樹脂としては、例えば、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。なお、キャリアの被覆樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、キャリアの平均粒径は特に制限はないが、10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5〜100重量部の割合で用いるのが好ましい。
なお、電子写真方式によるフルカラー画像の形成は、マゼンタ、シアン、イエローの各カラートナーおよび必要に応じてブラックトナーを用いて常法により実施することができる。
[4.画像形成装置]
以下、本発明の一実施形態としての画像形成装置について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、本発明の画像形成装置は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電手段としての帯電装置2、露光手段としての露光装置3、及び、内部にトナーTを有する現像手段としての現像装置4を備えて構成されている。また、本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて備える転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6、及び、定着手段としての定着装置7を備えている。
感光体1は、上述した本発明に係る感光体を用いる。即ち、特定の結晶構造を有するチタニウムフタロシアニンを感光層に有する感光体を使用する。具体的な感光体1の構成は前記の要件を満たせば他に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、感光体1を帯電させるもので、感光体1の表面を所定電位に均一帯電させるようになっている。帯電装置2としては、例えば、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された帯電部材を感光体に接触させて感光体表面を帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。帯電部材の例としては、例えば、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。ただし、本実施形態の画像形成装置においては、帯電装置2として、感光体に接触して当該感光体表面を帯電させる帯電部材を備える直接帯電装置を用いることが好ましい。印加する電圧を下げることが可能となり、ひいては消費電力を小さくしたり、画像形成装置を小型化したり、帯電時のオゾン発生量を低減したりすることが可能となるためである。なお、直接帯電装置として、気中放電を伴う接触帯電手段、気中放電を伴わない注入帯電手段の何れも適用可能である。また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
図1では、帯電装置2の一例として、帯電部材としてローラを備えたローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているものとして説明する。
露光装置3は、感光体1に対し露光(像露光)を行なって感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。これらの中でも波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は、形成された前記の静電潜像をトナーにより現像するものである。その種類に特に制限はなく、例えば、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、感光体1と供給ローラ43との間に配置され、感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、例えば、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTとしては、上述した本発明に係るトナーを用いる。即ち、上述したように、所定範囲の高い円形度を有するトナーを使用する。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、例えば、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、感光体1に形成されたトナー像を転写材(被転写体,用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、例えば、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。さらに、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着されるようになっている。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、例えば、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そして、このトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
また、本発明の画像形成装置では、メモリ現象の発生を抑制しながら、高画質な画像を高速で形成できる。このようにメモリ現象の抑制、及び、高画質の画像の高速形成という優れた利点を共に発揮できる理由は定かではないが、上述したように、高い円形度を有するトナーと、特定の結晶構造を有するチタニウムフタロシアニンを有する感光体とを組み合わせて使用したことにより、前記のような従来には得られていない顕著な作用、効果を奏するものと推察される。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程である。この状電工程を行なう除電装置(除電手段)としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
ただし、本発明の画像装置においては、上述したようにメモリ現象の発生を抑制できる。したがって、除電装置を用いなくても、メモリ現象の発生を抑制して高品質の画像を形成することが可能である。このように除電装置を有さない構成とした場合、画像形成装置の省スペース化、低コスト化を実現することが可能である。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
さらに、感光体1は、他の部材と組み合わせて電子写真感光体カートリッジ(以下適宜、「感光体カートリッジ」という)として構成することも可能である。例えば、感光体1及び帯電装置2は、この両方を備えた感光体カートリッジとして、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計することも可能である。この場合、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができる。また、トナーTについても、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計し、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようにしてもよい。
ただし、感光体カートリッジは、少なくとも、感光体1とトナーTとを備えるように構成することが好ましい。これにより、本発明に係る感光体とトナーとの組み合わせによる上記の効果を発揮することが可能となる。また、この感光体カートリッジにおいて、感光体1、帯電装置2、トナーTが全て備えられた感光体カートリッジとして構成することも可能である。
また、感光体カートリッジは、感光体1と、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型の感光体カートリッジとして構成し、この感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、上記の感光体カートリッジと同様に、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、実施例に基づき本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例および参考例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。さらに、「Me」はメチル基を表わす。
[CuKα特性X線による回折パターンの測定方法]
オキシチタニウムフタロシアニンの回折パターンは、以下のようにして測定した。
[1.サンプル作製]
無反射カバーガラスに1μm以上の膜厚となるよう、電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥した。
[2.測定装置及び測定条件]
測定装置は人工多層膜ミラーにて単色並行化したCuKα特性X線(波長1.541Å)を線源とした薄膜試料用の回折計(リガクRINT1500)を用いた。測定条件は、X線出力50kV,250mA、固定入射角(θ)1.0°、走査範囲(2θ)3〜40°、スキャンステップ幅0.05°、入射ソーラースリット5.0°、入射スリット0.1mm、受光ソーラースリット0.1°で回折パターンを測定した。
[粘度平均分子量の測定]
後述する[感光体ドラムの製造]の項に記載した電荷輸送層中に用いたバインダ樹脂(ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂)の粘度平均分子量(Mv)については、以下の測定方法により測定した。
即ち、ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t0:136.16秒)を用いて、20.0℃において、バインダ樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を測定し、以下の式に基づき、バインダ樹脂の粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp=(t/t0)−1
a=0.438×ηsp+1
b=100×(ηsp/C)
C=6.00[g/L]
η=b/a
Mv=3207×η1.205
[感光体ドラムの製造]
[感光体1]
α型オキシチタニウムフタロシアニン60gを濃硫酸1.5Kg中に5℃以下でゆっくりと投入し、溶解させることによりオキシチタニウムフタロシアニンの濃硫酸溶液を調製した。この得られたオキシチタニウムフタロシアニンの濃硫酸溶液を15Kgの氷水中に5℃以下で放出し、オキシチタニウムフタロシアニンを析出させ、析出したオキシチタニウムフタロシアニンを濾別した。
濾過後、オキシチタニウムフタロシアニンを濾液のpHが中性になるまで十分に水洗いしてオキシチタニウムフタロシアニンの水ペーストを得た。なお、この水ペーストの固形分は12重量%であった。この水ペーストにn−オクタン1Kgを加え、φ1mmのガラスビーズと共に20℃で10時間ミリング処理をし、結晶型変換を行うことにより電荷発生物質として用いるオキシチタニウムフタロシアニン結晶を得た。
電荷発生物質として、前記手法で得られたオキシチタニウムフタロシアニン20重量部と、1,2−ジメトキシエタン280重量部とを、φ1mmのガラスビーズ800重量部と共に、半径10cm、高さ15cmのステンレス製円筒状容器中で混合し、半径8.5cmの円盤状のステンレス製撹拌翼3枚を装着し、回転数1000rpmで回転させ分散処理を1時間行ない、オキシチタニウムフタロシアニン分散液を作製した。
続いて、このオキシチタニウムフタロシアニン分散液と、10重量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)と、487重量部の1,2−ジメトキシエタンと、85重量部の4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンとを混合して電荷発生層用塗布液を作製した。
次に、表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ375.8mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダーの表面に、陽極酸化処理を行ない、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。このシリンダーを導電性支持体として用い、先に作製した電荷発生層塗布形成用分散液に浸漬塗布して、その乾燥後の膜厚が約0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、下記構造式[1]で表わされる電荷輸送物質60重量部、下記構造式[2]で表わされる電荷輸送物質30重量部、下記構造式[3]で表わされるポリカーボネート樹脂100重量部、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン8重量部、及び、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフランとトルエンとの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液に、先に電荷発生層を形成したシリンダーを浸漬塗布して、乾燥後の膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体1とする。
得られた感光体1の一部分を3cm×3cmのサイズに切断した。切断した感光体1を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中に5分間浸漬させた。その後、感光体1を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中から引き上げ、電荷輸送層を剥離した。続いて、電荷輸送層を剥離した感光体1をメタノール中に浸漬させ、その後、メタノール中から引き上げ、電荷発生層を剥離し、この剥離した電荷発生層を無反射カバーガラス上に均等に置いた。この操作を6回繰り返し、無反射カバーガラス上に剥離した電荷発生層を均等に並べ、完全に乾燥させて感光体1から電荷発生層のみを分離した。
分離した電荷発生層を、前記[CuKα特性X線による回折パターンの測定方法]の項の[2.測定装置及び測定条件]の欄で説明した方法に従って測定したところ、図2に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とに、それぞれ少なくとも一つの回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電荷発生層であることが分かった。この測定結果は先ほど調製した電荷発生層用塗布液のCuKα特性X線による回折パターンの測定結果と同じであり、感光体から分離した電荷発生層と電荷発生層用塗布液に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンに相違が無いことが確認できた。
[感光体2]
感光体1中の電荷輸送層用塗布液の調製で用いた、構造式[1]で表わされる電荷輸送物質の使用量を80部とし、構造式[2]で表わされる電荷輸送物質の使用量を10部とし、バインダ樹脂として、構造式[3]で表わされるポリカーボネート樹脂の代わりに下記構造式[4]で表わされるポリアリレート樹脂を用いて電荷輸送層用塗布液を調製した以外は、感光体1と同様の操作を行なうことにより、感光体2を得た。
[感光体3]
感光体1中の電荷輸送層用塗布液の調製で用いた電荷輸送物質を、下記構造式[5]で表わされる電荷輸送物質80部に変更し、バインダ樹脂として、下記構造式[3]で表わされるポリカーボネート樹脂の代わりに下記構造式[6]で表わされるポリカーボネート樹脂を用いて電荷輸送層用塗布液を調製した以外は、感光体1と同様の操作を行なうことにより、感光体3を得た。
[感光体4]
感光体1中の電荷輸送層用塗布液の調製で用いた電荷輸送物質を、下記構造式[7]で表わされる電荷輸送物質50部に変更し、バインダ樹脂として、構造式[3]で表わされるポリカーボネート樹脂の代わりに下記構造式[8]で表わされるポリカーボネート樹脂を用いて電荷輸送層用塗布液を調製した以外は、感光体1と同様の操作を行なうことにより、感光体4を得た。
[感光体5]
感光体1中で得られた電荷発生物質として用いるオキシチタニウムフタロシアニン5重量部と、φ1mmのガラスビーズ200重量部と、1,2−ジメトキシエタン192重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン21重量部と、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)2.5重量部とを一緒に、容量500mLのポリエチレン製広口瓶[アズワン(株)製]に充填した。このポリエチレン製広口瓶をペイントシェーカー[(株)東洋精機製作所製]を用いて1時間分散することにより、電荷発生層用塗布液を調製した。
この得られた電荷発生層用塗布液を用いる以外は感光体1と同様の操作を行なうことにより、アルミニウム製シリンダー及び電荷輸送層用塗布液を用いて、感光体5を作製した。
得られた感光体5の一部分を3cm×3cmのサイズに切断した。切断した感光体5を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中に5分間浸漬させた。その後、感光体5を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中から引き上げ、電荷輸送層を剥離した。続いて、電荷輸送層を剥離した感光体1をメタノール中に浸漬させ、その後、メタノール中から引き上げ、電荷発生層を剥離し、この剥離した電荷発生層を無反射カバーガラス上に均等に置いた。この操作を6回繰り返し、無反射カバーガラス上に剥離した電荷発生層を均等に並べ、完全に乾燥させて感光体5から電荷発生層のみを分離した。
分離した電荷発生層を、前記[CuKα特性X線による回折パターンの測定方法]の項の[2.測定装置及び測定条件]の欄で説明した方法に従って測定したところ、図3に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とに、それぞれ少なくとも一つの回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電荷発生層であることが分かった。この測定結果は先ほど調製した電荷発生層用塗布液のCuKα特性X線による回折パターンの測定結果と同じであり、感光体から分離した電荷発生層と電荷発生層用塗布液に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンに相違が無いことが確認できた。
[比較感光体1]
感光体1中の電荷発生層用塗布液の調製で用いたオキシチタニウムフタロシアニンを、図4に示すCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角9.6°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンに変更して電荷発生層用塗布液を調製した以外は、感光体1と同様の操作を行なうことにより、比較感光体1を得た。
また、得られた比較感光体1の一部分を3cm×3cmのサイズに切断した。切断した比較感光体1を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中に5分間浸漬させた。その後、比較感光体1を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中から引き上げ、電荷輸送層を剥離した。続いて、電荷輸送層を剥離した比較感光体1をメタノール中に浸漬させ、その後、メタノール中から引き上げ、電荷発生層を剥離し、この剥離した電荷発生層を無反射カバーガラス上に均等に置いた。この操作を6回繰り返し、無反射カバーガラス上に剥離した電荷発生層を均等に並べ、完全に乾燥させて比較感光体1から電荷発生層のみを分離した。
分離した電荷発生層を、前記[CuKα特性X線による回折パターンの測定方法]の項の[2.測定装置及び測定条件]の欄で説明した方法に従って測定したところ、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.6°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電荷発生層であることが分かった。この測定結果は先ほど調製した電荷発生層用塗布液のCuKα特性X線による回折パターンの測定結果と同じであり、感光体から分離した電荷発生層と電荷発生層用塗布液に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンに相違が無いことが確認できた。
[比較感光体2]
感光体1中の電荷発生層用塗布液の調製で用いたオキシチタニウムフタロシアニンを、図5に示すCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンに変更して電荷発生層用塗布液を調製した以外は、感光体1と同様の操作を行なうことにより比較感光体2を得た。
また、得られた比較感光体1の一部分を3cm×3cmのサイズに切断した。切断した比較感光体2を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中に5分間浸漬させた。その後、比較感光体2を4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン中から引き上げ、電荷輸送層を剥離した。続いて、電荷輸送層を剥離した感光体1をメタノール中に浸漬させ、その後、メタノール中から引き上げ、電荷発生層を剥離し、この剥離した電荷発生層を無反射カバーガラス上に均等に置いた。この操作を6回繰り返し、無反射カバーガラス上に剥離した電荷発生層を均等に並べ、完全に乾燥させて比較感光体2から電荷発生層のみを分離した。
分離した電荷発生層を、前記[CuKα特性X線による回折パターンの測定方法]の項の[2.測定装置及び測定条件]の欄で説明した方法に従って測定したところ、図6に示すようなCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電荷発生層であることが分かった。この測定結果は先ほど調製した電荷発生層用塗布液のCuKα特性X線による回折パターンの測定結果と同じであり、感光体から分離した電荷発生層と電荷発生層用塗布液に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンに相違が無いことが確認できた。
[比較感光体3]
電荷発生層用塗布液として比較感光体1中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体2中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体3を得た。
[比較感光体4]
電荷発生層用塗布液として比較感光体1中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体3中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体4を得た。
[比較感光体5]
電荷発生層用塗布液として比較感光体1中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体4中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体5を得た。
[比較感光体6]
電荷発生層用塗布液として比較感光体2中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体2中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体6を得た。
[比較感光体7]
電荷発生層用塗布液として比較感光体2中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体3中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体7を得た。
[比較感光体8]
電荷発生層用塗布液として比較感光体2中で用いた塗布液を用い、電荷輸送層用塗布液として、感光体4中で用いた塗布液を用いること以外は、感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体8を得た。
[比較感光体9]
感光体1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ351mm、肉厚1.0mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを比較感光体9とする。
[比較感光体10]
比較感光体1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ351mm、肉厚1.0mmのものを用い、比較感光体1と同様の操作を行うことにより比較感光体10を得た。
[トナーの製造]
[現像用トナーの製造例1]
・ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1の調製
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、融点82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20A、以下適宜「20%DBS水溶液」と略称する)1.9部、及び、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径を250nmまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液T1(エマルジョン固形分濃度=30.2重量%)を作製した。
・シリコーンワックス分散液T2の調製
アルキル変性シリコーンワックス(融点72℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、及び、脱塩水71.1部を3Lのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で8000rpmの回転数で10分間攪拌した。
次いで、この分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて約45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、体積平均粒径をUPA−EXで測定しながら体積平均粒径が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液T2(エマルジョン固形分濃度=27.4重量%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液T1の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、ワックス・長鎖重合性単量体分散液T1を35.6重量部(712.12g)と、脱塩水259部とを仕込み、回転数103rpmで攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、下記のモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加した。このモノマー類及び乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T1を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒径は280nmであり、固形分濃度は21.1重量%であった。
・重合体一次粒子分散液T2の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液T2を23.6重量部(472.3g)と、20%DBS水溶液1.5重量部と、脱塩水324部とを仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、103rpmで攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。
その5分後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始(8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した時から5分後)から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、更に回転数103rpm、内温90℃のまま1時間保持した。
[モノマー類]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 18.9部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液T2を得た。UPA−EXで測定した体積平均粒径は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
・着色剤分散液Tの調製
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300Lの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積累積50%径Dv50は約90μmであった。上記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行なった。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は約0.5リットルであり、メデイアの充填容積は0.35リットルとしたので、メディア充填率は70%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約50リットル/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤粒子分散液Tを得た。UPA−EXで測定した体積平均粒径は150nmであり、固形分濃度は24.2重量%であった。
・現像用母粒子Tの製造
重合体一次粒子分散液T1 固形分として95部 (固形分として998.2g)
重合体一次粒子分散液T2 固形分として5部
着色剤微粒子分散液T 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12リットル、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液T1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃40rpmで5分間均一に混合した。続いて、内温12℃で攪拌回転数を250rpmに上げ第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO4・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから着色剤微粒子分散液Tを5分かけて添加し、内温12℃で250rpmのまま均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後、250rpmのまま75分かけて内温53℃に昇温して、その後、170分かけて56℃まで昇温した。
ここでアパーチャー径を100μmとした精密粒度分布測定装置(マルチサイザーIII:ベックマン・コールター社製;以下適宜「マルチサイザー」と略称する)にて粒径測定を測定したところ、50%体積径が6.7μmであった。
その後、250rpmのまま重合体一次粒子分散液T2を3分かけて添加してそのまま60分保持し、回転数を168rpmに落としてすぐに20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加してから30分かけて168rpmのまま90℃に昇温して60分保持した。
その後、20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10L(リットル)のステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10Lの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。導電率の測定は、導電率計(横河電機社製のパーソナルSCメータモデルSC72と検出器SC72SN−11)を用いて行なった。
ここで得られたケーキをステンレス製バッドに高さ20mm程度となるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、現像用母粒子Tを得た。
・現像用トナーTAの製造
攪拌機(Z/A0羽根)と上部より壁面に対し直角に向いたディフレクターを備えた内容積10L(直径230mm高さ240mm)のヘンシェルミキサー内に、現像用母粒子T100部(1000g)を投入し、続いてシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.04μmのシリカ微粒子0.5部と、シリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径0.012μmのシリカ微粒子2.0部とを添加し、3000rpmで10分間攪拌・混合して150メッシュを通し篩別する事により現像用トナーTAを得た。マルチサイザーIIで測定したトナーTAの体積平均粒径は7.05μm、Dv/Dnは1.14、FPIA−2000で測定した平均円形度は0.963であった。
[現像用トナーの製造例2]
前記[現像用トナーの製造例1]において、現像用母粒子TAの製造の中で、DBS水溶液を添加した後の“90℃に昇温して60分保持した”ところを、“90℃に昇温して180分保持した”以外は、現像用トナーの製造1と同様にして、現像用トナーTBを得た。FPIA−2000で測定した平均円形度は0.981であった。
[現像用トナーの製造例3]
・ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1の調製
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、表面張力23.5mN/m、熱特性:融点ピーク温度82℃、融解熱量220J/g、融解ピーク半値幅8.2℃、結晶化温度66℃、結晶化ピーク半値幅13.0℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱して、ホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。
次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒径を測定し体積平均径(Mv)が250nmになるまで分散して、ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1(エマルション固形分濃度=30.2質量%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液H1の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、前記ワックス・長鎖重合性単量体分散液H1 35.6部(712.12g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、前記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の重合性モノマー類等と乳化剤水溶液との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時点を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部 (1535.0g)
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 15.5部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は265nmであり、固形分濃度は22.3質量%であった。
・シリコーンワックス分散液H2の調製
アルキル変性シリコーンワックス(熱特性:融点ピーク温度77℃、融解熱量97J/g、融解ピーク半値幅10.9℃、結晶化温度61℃、結晶化ピーク半値幅17.0℃)27部(540g)、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部を3リットルのステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)で10分間攪拌した。次いでこの分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで測定しながら体積平均径(Mv)が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液H2(エマルション固形分濃度=27.3%)を作製した。
・重合体一次粒子分散液H2の調製
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(内容積21リットル、内径250mm、高さ420mm)に、シリコーンワックス分散液H2を23.3部(466g)、20%DBS水溶液1.0部、脱塩水324部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。これらを一括添加した時から5分後の時点を「重合開始」とする。
下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を、重合開始から5時間かけて、また、下記の「開始剤水溶液」を重合開始から6時間かけて添加し、その後、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 92.5部 (1850.0g)
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.0部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 18.9部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液H2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は290nmであり、固形分濃度は19.0質量%であった。
・着色剤分散液Hの調製
攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積300リットルの容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部(40kg)、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散して顔料プレミックス液を得た。ナノトラックで測定した顔料プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積平均径(Mv)は90μmであった。
前記顔料プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行なった。なお、ステータの内径は75mmφ、セパレータの径が60mmφ、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は0.5リットルであり、メデイアの充填容積は0.35リットルとしたので、メディア充填率は70質量%である。ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が11m/秒)として、供給口より前記顔料プレミックス液を無脈動定量ポンプにより供給速度50リットル/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出する事により黒色の着色剤分散液Hを得た。着色剤分散液Hをナノトラックで測定した体積平均径(Mv)は150nmであり、固形分濃度は24.2質量%であった。
・現像用母粒子Iの製造
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程(コア材凝集工程、シェル被覆工程)、円形化工程、洗浄工程及び乾燥工程を実施することにより現像用母粒子Iを製造した。
重合体一次粒子分散液H1 固形分として90部 (固形分として958.9g)
重合体一次粒子分散液H2 固形分として10部
着色剤分散液H 着色剤固形分として4.4部
20%DBS水溶液 コア材凝集工程では、固形分として0.15部
20%DBS水溶液 円形化工程では、固形分として6部
・コア材凝集工程
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12リットル、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液H1と20%DBS水溶液とを仕込み、内温10℃で5分間均一に混合した。続いて内温10℃で、280rpmで攪拌させて硫酸カリウムの5質量%水溶液0.12部を1分かけて連続添加してから、着色剤分散液Hを5分かけて連続添加し、内温10℃で均一に混合した。その後、脱塩水100部を26分かけて連続添加してから、回転数280rpmのまま内温を52.0℃に64分かけて昇温し(0.5℃/分)した。次いで30分かけて1℃昇温した後(0.03℃/分)、110分間保持し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し5.93μmまで成長させた。この時の攪拌条件は以下の通りとした。
(イ)攪拌容器の直径(所謂一般的な円筒形として):208mm
(ロ)攪拌容器の高さ:355mm
(ハ)攪拌羽根先端の周速:280rpm、すなわち2.78m/秒。
(ニ)攪拌羽根の形状:ダブルヘリカル翼
(直径190mm、高さ270mm、幅20mm)
(ホ)攪拌容器内の羽根の位置: 容器の底から5mm上に配置。
・シェル被覆工程
その後、内温53.0℃、回転数280rpmのまま、重合体一次粒子分散液H2を6分かけて連続添加してそのまま90分保持した。このとき、粒子のDv50は6.23μmであった。
・円形化工程
続いて、20%DBS水溶液(固形分として6部)と水0.04部との混合水溶液を30分かけて添加しながら85℃に昇温し、その後、130分かけて92℃まで昇温して、平均円形度が0.943になるまで、この条件で加熱及び攪拌を続けた。その後、10分かけて20℃まで冷却し、スラリーを得た。このとき、粒子のDv50は6.17μm、平均円形度0.945であった。
・洗浄工程
得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えた内容積10リットルのステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgを加え50rpmで攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を、攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水8kgの入った内容積10リットルの容器に移し、50rpmで攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
・乾燥工程
ここで得られた固形物をステンレス製バットに高さ20mmとなるように敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、現像用母粒子Iを得た
・外添工程
得られた現像用母粒子I500gに、外添剤としてクラリアント社製H30TDシリカ7.5gを混ぜて、9Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で3000rpmで30分間混合した後、丸尾カルシウム株式会社製HAP−05NPリン酸カルシウム1.2gを混ぜて、3000rpmで10分間混合し、200メッシュで篩別して現像用トナーIを得た。
・分析工程
ここで得られた現像用トナーIのマルチサイザーを用いて測定した「体積中位径(Dv50)」は6.16μmであり、平均円形度は0.946であった。
[実施例1]
先に作製した感光体1を(株)沖データ社製カラープリンターMICROLINE Pro 9800PS−E(改造機)のブラックドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。なお、MICROLINE Pro 9800PS−E(改造機)の仕様は、次のとおりである。また、下記の仕様の説明で「ppm」とは1分当たりの印刷枚数を表わす。
印刷方式:4連タンデム
印刷枚数:カラー36ppm、モノクロ40ppm
画素数 :1200dpi
帯電方式:DC接触ローラ帯電
露光方式:LEDによる書き込み
除電光 :無
トナーには「現像用トナーの製造1」で製造した平均円形度0.963、体積平均粒径7.05μm、Dv/Dn=1.14のトナー、又は「現像用トナーの製造2」で製造した平均円形度0.981のトナーを用いた。
印刷の入力として、用紙サイズA3の画像であって、画像領域の上半分に白地に線太の文字を持ち、中央部から下部にかけてはハーフトーン部を持ったパターンをパソコンからプリンターに送り、その結果得られる出力画像を目視評価した。
また、試験したプリンターでは光除電プロセスを使用していないため、感光体の性能によっては、上部の文字パターンが感光体にメモリとして記憶され、次回転の画像形成に影響を及ぼす、つまり、ハーフトーン部にメモリ画像として顕れるケースがありえる(メモリ現象)。そこで、本来まったく均一でなければならない部分に、メモリ画像が見えている程度を5ランクで評価した。この際、ランク1がもっとも良好(即ち、メモリ現象の程度が小さい)ことを表わし、ランク5に近づくほどメモリ現象の程度が大きくなることを表わす。
さらに、本試験を、通常環境(25℃/50%RH)と低温低湿環境(5℃/10%RH)の両方の環境で実施した。
また、以下の手順でカブリ値を測定した。
カブリ値は、測色色差計(日本電色工業(株)ND−1001DP型)を使用し、標準白板の白度が94.4となるように調整し、この測色色差計を用いて印刷前の紙(A4サイズ)の白度を測定した。印刷前の紙の白度を測定後、その同じ紙に対して、通常環境(温度25°/50%RH)の条件下、ベタ画像を100枚印刷した後に、全面白色となるような信号を前記レーザープリンターに入力して印刷を行ない、その印刷後の紙の白度を測定し、下記式(1)に基づき計算することにより求めた。
カブリ値 = 印刷前の紙の白度−印刷後の紙の白度 (1)
これらの結果を表1に示す。
[実施例2〜5、比較実施例1〜14]
実施例1において用いた感光体とトナーとを、下記表1に示した感光体とトナーに代えた他は同様の方法で評価を行った。結果は同様に表1に示した。
[比較実施例15]
先に作製した比較感光体9を(株)沖データ社製カラープリンターMICROLINE 3050c(改造機)のブラックドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。なお、MICROLINE 3050c(改造機)の仕様は、次のとおりである。
印刷方式:4連タンデム
印刷枚数:カラー21ppm、モノクロ26ppm
画素数 :1200dpi
帯電方式:DC接触ローラ帯電
露光方式:LEDによる書き込み
除電光 :無
トナーには上記プリンター用の市販のトナーを使用した。本トナーは溶融混練粉砕法により製造されたものであり、平均円形度は0.935であった。
メモリ画像評価については実施例1と同様の操作を行うことにより評価した。評価の結果を表1に示す。
[比較実施例16]
比較実施例15において用いた感光体を比較感光体10とした他は同様の方法で評価を行った。結果は同様に表1に示した。
[実施例6〜10、及び比較実施例17及び18]
実施例1において用いた感光体及びトナーを、下記表1に示した感光体及びトナーに代えた他は同様の方法で評価を行った。結果は同様に表1に示した。
[まとめ]
以上の結果から、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°と、27.2°と、9.3°〜9.8°の範囲とに、それぞれ少なくとも一つの回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを感光層に含有する感光体と、フロー式粒子像分析装置によって測定される平均円形度が0.940以上0.965以下であるトナーとを組み合わせて用いた画像形成装置場合に限って、画像形成装置の使用環境に依らずメモリの発現しづらく、かつカブリの発生し難い画像形成装置・電子写真感光体カートリッジを得ることができることがわかる。