JP5658659B2 - シルクフィブロイン多孔質体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シルクフィブロイン多孔質体の製造方法に関するものである。
タンパク質や糖類などの生物由来物質を利用して作製可能である多孔質体は、創傷被覆材、止血スポンジ、薬剤徐放担体等の医療分野、紙おむつや生理用品等の生活日用品分野、微生物や細菌等の住処になる支持体として活用しうる浄水分野、エステティックサロンや個人での使用による保湿等を目的とした化粧品・エステ分野、組織工学や再生医工学における細胞培養支持体や組織再生支持体など産業上幅広い分野で利用される。
これら多孔質体を構成する生体由来物質としては、セルロースやキチン等の糖類、コラーゲン、ケラチン、シルクフィブロイン等のタンパク質群が知られている。
このうち、タンパク質としては、コラーゲンが一番よく利用されてきたが、BSE問題が発生してから牛由来のコラーゲンを利用することが非常に難しくなってきた。また、ケラチンは、羊毛や羽毛から得ることができるが、原料入手に問題があり、工業的に利用することは難しい。羊毛は、原料価格が非常に高騰しており、羽毛に関しては市場がないため、原料を入手することができない。これらに対して、シルクフィブロインは、原料入手の観点からは、安定に供給されることが期待でき、さらに価格も安定しているので、工業的に利用することが容易である。
シルクフィブロインは、衣類用途以外に、手術用縫合糸として長く使用されてきた実績があり、現在では食品や化粧品の添加物としても利用され、人体に対する安全性にも問題がないことから上記した多孔質体の利用分野に十分利用可能である。
シルクフィブロイン多孔質体を作製する手法に関しては、いくつか報告がある。例えば、シルクフィブロイン水溶液を急速冷凍したのち結晶化溶媒に浸漬し、融解と結晶化を同時進行することによって得る方法がある(特許文献1)。しかしながら、この方法は結晶化溶媒である有機溶媒を大量に使用する必要があり、さらに溶媒の残留の可能性も否定できず、医療分野等の上記した応用分野での使用には問題がある。次に、シルクフィブロイン水溶液のpHを6以下に保持してゲル化させるか又はその水溶液に貧溶媒を添加してゲル化させ、得られたゲルを凍結乾燥して多孔質体を作製する方法がある(特許文献2)。しかしながら、この方法は十分な強度をもった多孔質体を得ることはできない。他に、シルクフィブロイン水溶液を冷凍した後に長時間凍結状態を維持することで多孔質体を作製する手法が報告されている(特許文献3)。しかしながら、発明者らの検討ではこの手法は再現性が乏しく、多孔質体が作製できないことが多い。
上記したシルクフィブロイン多孔質体の作製手法と比較すると、確実で簡便な手法が報告されている(特許文献4;非特許文献1)。シルクフィブロイン水溶液に対して少量の有機溶媒を添加した後に、一定時間冷凍して融解することによってシルクフィブロイン多孔質体が得られる手法である。この手法では、少量使用した有機溶媒も超純水による洗浄工程による除去から残留有機溶媒もほぼなくなり、さらには、得られた含水状態の多孔質体は、それまでに報告されていたものよりも強度が高く形態安定性に優れている。
特開平8−41097号公報 特公平6−94518号公報 特開2006−249115号公報 特許第3412014号公報
Biomacromolecules,6,3100−3106(2005)
多孔質体の使用される分野や使用方法にもよるが、特許文献4による手法により作製された多孔質体でも強度が足りない場合があり、さらなる強度向上が望まれていた。
そこで、本発明は、すぐれた力学的特性を有するシルクフィブロイン多孔質体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加した溶液を凍結させ、次いで融解することによって、強度が高い多孔質体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液を凍結させ、次いで融解することにより、多孔質体を得るシルクフィブロイン多孔質体の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、強度が高いシルクフィブロイン多孔質体を簡便に得ることができる。
実施例1で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例5で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例6で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例7で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例8で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例9で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例3で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例4で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例5で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例6で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例7で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例8で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例9で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例10で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例11で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例12で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例10〜13で作製したシルクフィブロイン多孔質体の25%圧縮硬さを示すグラフである。 実施例10で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例12で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例14〜16で作製したシルクフィブロイン多孔質体の25%圧縮硬さをしめすグラフである。 実施例14で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例15で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例16で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例17〜19で作製したシルクフィブロイン多孔質体の25%圧縮硬さを示すグラフである。 実施例17で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例18で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例19で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例20〜22で作製したシルクフィブロイン多孔質体の力学的特性を示すグラフである。 実施例20で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例21で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例22で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
本発明のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法は、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液を凍結させ、次いで融解することにより多孔質体を得ることを特徴とする。
また、本発明の製造方法においては、融解後に得られた多孔質体を純水中に浸漬して、又は凍結乾燥により前記脂肪族カルボン酸を除去する工程をさらに有することが好ましい。
本発明において用いられるシルクフィブロインは、家蚕、野蚕、天蚕等の蚕から産生されるものであればいずれでもよく、その製造方法も問わない。本発明では、シルクフィブロイン水溶液として用いるが、シルクフィブロインは溶解性が悪く、直接水に溶解することが困難である。シルクフィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、高濃度の臭化リチウム水溶液にシルクフィブロインを溶解後、透析による脱塩、風乾による濃縮を経る手法が簡便である。
本発明のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法において、シルクフィブロインの濃度は、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液中で0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1.0〜12質量%であることがさらに好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を効率的に製造することができる。
本発明において、シルクフィブロイン水溶液に添加する脂肪族カルボン酸としては、特に制限はないが、水溶性のものが好ましく、水への溶解度が高いものがより好ましい。また、本発明において用いられる脂肪族カルボン酸としては、pKaが、5.0以下のものが好ましく、3.0〜5.0のものがより好ましく、3.5〜5.0のものがさらに好ましい。
本発明において用いられる脂肪族カルボン酸としては、たとえば、炭素数1〜6の飽和または不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸を好ましく用いることができ、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸、3−ブテン酸等が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
シルクフィブロイン水溶液に添加する脂肪族カルボン酸の量は、シルクフィブロイン溶液中で0.01〜18.0質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を製造することができる。
本発明の製造方法では、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加した溶液を型あるいは容器に流し込み、低温恒温槽中に入れて凍結させ、次いで融解することによって、シルクフィブロイン多孔質体を製造する。
凍結温度としては、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン水溶液が凍結する温度であれば特に制限されないが、−1〜−40℃程度が好ましく、−5〜−40℃程度がより好ましく、−10〜−30℃がさらに好ましい。
凍結時間としては、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン水溶液が十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、2時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがさらに好ましい。
凍結の方法としては、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン水溶液を一気に凍結温度まで下げて凍結してもよいが、凍結の前に脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン水溶液を一旦、4〜−9℃程度、好ましくは0〜−5℃程度で30分以上保持して反応容器内を均一にしてから、凍結温度まで下げて凍結した方が均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得る上で好ましい。さらに、この保持する温度を−1〜−9℃程度、好ましくは−1℃〜−5℃程度にした場合には、シルクフィブロイン水溶液が、凍結の前に過冷却状態となる温度(過冷却温度)になり、より均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得ることができる。また、この過冷却温度に保持する時間を調整すること、過冷却温度から凍結温度に下げるまでの温度勾配を調整すること等により、さらに均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得ることができるほか、多孔質体の構造や強度をある程度制御することが可能である。
その後に、凍結したシルクフィブロイン溶液を、融解することによってシルクフィブロイン多孔質体を得ることができる。融解の方法としては、特に制限はなく、自然融解や恒温槽での保管等が挙げられる。
得られた多孔質体には脂肪族カルボン酸が含まれるが、用途によっては、脂肪族カルボン酸を除去又はその濃度を調整する必要がある。その場合には、シルクフィブロイン多孔質体製造後に、適当な方法で多孔質体中の脂肪族カルボン酸を除去し、その濃度を調整することができる。具体的には、多孔質体を、純水中に浸漬して透析することが最も簡便な方法として挙げられる。
また、シルクフィブロイン多孔質体製造後に、水分濃度を調整する方法としては、例えば、シルクフィブロイン多孔質体を乾燥して水分を蒸発させる方法が挙げられる。乾燥の方法としては、自然乾燥、凍結乾燥、加熱乾燥などが挙げられるが、乾燥時の収縮が抑えられるという観点からは、凍結乾燥が好ましい。多孔質体を凍結乾燥等により乾燥することによって、脂肪族カルボン酸と水分を同時に除去することが可能である。
なお、本発明の製造方法により得られるシルクフィブロイン多孔質体は、多孔質体作製時の型あるいは容器を適宜選択することにより、フィルム状、ブロック状、管状等、目的に応じた形状とすることができる。
本発明の製造方法により得られるシルクフィブロイン多孔質体は、スポンジ状の多孔質構造を有しており、通常この多孔質体には凍結乾燥等により水除去を行わなければ水が含まれ、含水状態で堅い構造物である。
本発明の製造方法により得られる多孔質体中の細孔の大きさ(細孔直径)は、通常、10〜300μmである。また、多孔質体を凍結乾燥することにより、シルクフィブロイン多孔質体の乾燥品を得ることができる。
本発明の製造方法により得られるシルクフィブロイン多孔質体は、すぐれた力学的特性を有する。すなわち、特許文献4において使用されている有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、グリセロール、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、アセトン、アセトニトリルを用いた多孔質体よりも大きな引張り強度を有し、また、相対的に大きな伸びを有する。
本発明の製造方法により得られるフィブロイン多孔質体は、吸水性が高く、かつ安全性にも問題がないことから、保湿等を目的とした化粧品・エステ分野等に広く適用することができる。具体的には、ピーリングパックや化粧用パフとして好適に使用することができる。また、凍結に用いる容器の形状を変えることで、所望の形状のものを容易に得ることができることから、例えば、顔の形状に合わせたフェイスマスクとして好適に使用することができる。
また、本発明の製造方法により得られるフィブロイン多孔質体は、吸水量を変えることでその重さを制御することができ、かつ安全性にも問題がないことから、例えば、内視鏡観察下で切除された生体組織を牽引するための重りとして、好適に使用し得る。
その他、本発明の製造方法により得られるフィブロイン多孔質体は、強度・吸水性が高く、かつ安全性にも問題がないことから、創傷被覆材や薬剤徐放担体、止血スポンジ等の医療分野、紙おむつや生理用品等の生活日用品分野、組織工学や再生医工学における細胞培養支持体や組織再生支持体、浄水用途・環境分野における微生物や細菌等の住処になる支持体などに好適に使用することができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(シルクフィブロイン溶液の調製)
シルクフィブロイン溶液は、フィブロイン粉末(KBセーレン社製、商品名:「SilkpowderIM」)を9M臭化リチウム水溶液に溶解し、遠心分離で不溶物を除去したのち、超純水に対して透析を繰り返すことによって得た。得られたシルクフィブロイン溶液を透析チューブ中で風乾し濃縮した。この濃縮液に蟻酸水溶液を添加し、シルクフィブロイン濃度が5質量%、蟻酸濃度が2質量%であるシルクフィブロイン溶液を調製した。
(シルクフィブロイン多孔質体の製造)
このシルクフィブロイン溶液をアルミ板で作製した型(内側サイズ;80mm×40mm×4mm)に流し込み、低温恒温槽(EYELA社製NCB−3300)に入れて凍結保存した。
(凍結条件)
凍結は、予め−5℃に冷却しておいた低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後、冷却速度3℃/hで槽内が−20℃になるまで、5時間かけて冷却した後、−20℃で5時間保持した。
凍結した試料を自然解凍で室温に戻した後、型から取り出し、超純水に浸漬し、超純水を1日2回、3日間交換することによって、使用した蟻酸を除去した。
得られたシルクフィブロイン多孔質体の力学的特性を、INSTRON社マイクロテスター5548型を用いて評価した。作製したシルクフィブロイン多孔質体から40mm×4mm×4mmの試験片を切り出し、この試験片を2mm/minの条件で引っ張った際の引っ張り強度(最大破断強度)と最大(破断)ひずみ(伸び)を測定した。また、強度とひずみをグラフ化した時の傾きから弾性率を求めた。その結果を表1に示す。なお、測定結果は、作製した多孔質体から5点の試験片を切り出し、さらに異なる日に作製した多孔質体から5点の試験片を切り出し、それら10点について測定を行った平均値を示している。
また、得られたシルクフィブロイン多孔質体の構造を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。走査型電子顕微鏡は、Philips社製XL30−FEGを使用して、低真空無蒸着モード、加速電圧10kVで測定を行った。なお、シルクフィブロイン多孔質体の構造は、多孔質体の表面ではなく、多孔質体を切断して露出させた内部を観察した。得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
また、得られたシルクフィブロイン多孔質体を超純水中に浸漬して平衡状態まで含水させ、湿重量を測定した(Wa)。この多孔質体を凍結乾燥して充分に乾燥し、多孔質体の乾燥重量を測定した(Wb)。これらの値から多孔質体の含水率を次式に従って算出した。結果は後述する。
含水率(%)=(Wa−Wb)×100/Wa
実施例2
実施例1において、蟻酸に代えて、酢酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例3
実施例1において、蟻酸に代えて、プロピオン酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
実施例4
実施例1において、蟻酸に代えて、酪酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
実施例5
実施例1において、蟻酸に代えて、コハク酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。
実施例6
実施例1において、蟻酸に代えて、乳酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
実施例7
実施例1において、蟻酸に代えて、アクリル酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。
実施例8
実施例1において、蟻酸に代えて、2−ブテン酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。
実施例9
実施例1において、蟻酸に代えて、3−ブテン酸を用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。
比較例1
実施例1において、蟻酸に代えて、メタノールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図10に示す。
比較例2
実施例1において、蟻酸に代えて、エタノールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。
比較例3
実施例1において、蟻酸に代えて、イソプロパノールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図12に示す。
比較例4
実施例1において、蟻酸に代えて、ブタノールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図13に示す。
比較例5
実施例1において、蟻酸に代えて、t−ブタノールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図14に示す。
比較例6
実施例1において、蟻酸に代えて、グリセロールを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図15に示す。
比較例7
実施例1において、蟻酸に代えて、DMSOを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図16に示す。
比較例8
実施例1において、蟻酸に代えて、DMFを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図17に示す。
比較例9
実施例1において、蟻酸に代えて、ピリジンを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図18に示す。
比較例10
実施例1において、蟻酸に代えて、アセトニトリルを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図19に示す。
比較例11
実施例1において、蟻酸に代えて、アセトンを用いたこと以外は同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性の評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図20に示す。
比較例12
特許文献2の実施例8では、シルクフィブロイン水溶液に酢酸溶液を加えてゲル状物を析出させ、得られたゲルを凍結乾燥して多孔質体を得ている。その記載の通りの追試ではゲルを生成しなかったが、下記条件でゲル状物及び多孔質体を得た。
まず、5%シルクフィブロイン水溶液50mLにpH2.65酢酸溶液を130mL加え(この段階でpH3.0)、得られた溶液を5℃で40時間静置したところ、ゲルが生成した。得られたゲルを遠心分離して、上澄み液を除去した後に、−30℃で3時間凍結後、凍結乾燥を50時間行ったところ、多孔質体が得られた。その多孔質体の力学的特性評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図21に示す。
表1に示す結果から、脂肪族カルボン酸を用いた実施例1〜9のシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度は、特許文献4で使用されている有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、グリセロール、DMSO、DMF、ピリジン、アセトニトリル、アセトンを用いた比較例1〜11のいずれのシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度よりも大きいことがわかる。また、実施例1〜9のシルクフィブロイン多孔質体は、最大ひずみ(伸び)も大きい。更に、実施例1〜9で作製した多孔質体は、比較例12と比較した場合には、高い引っ張り強度を示した。
また、図1によると、実施例1で作製したシルクフィブロイン多孔質体は、比較的薄い壁と数十μmの空孔からなる多孔質構造である。実施例2〜9で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面(図2〜9)についても、ほぼ同様の走査型電子顕微鏡写真を得た。
なお、比較例のシルクフィブロイン多孔質体の断面(図10〜20)も同様の多孔質構造を有するものと、層状構造的なものとがあったが、それら構造と力学的特性との相関は認められなかった。また、比較例12では、明確な多孔質構造を確認することはできなかった。
実施例1〜9で作製したシルクフィブロイン多孔質体の含水率は、比較例1〜11で作製した多孔質体の含水率とほぼ同じであり、94%〜96%の範囲にあることが分かった。なお、比較例12で作製した多孔質体は、非常に脆く、含水率を算出することはできなかった。
なお、上記実施例で得られたシルクフィブロイン多孔質体を培養床として用いて、光合成細菌を培養したところ、細菌の増殖が確認された。
実施例10
実施例1において、蟻酸に代えて酢酸を用い、アルミ板で作製した型を内側サイズ80mm×40mm×10mmとし、凍結条件を以下としたこと以外は実施例1と同様にして、フィブロイン多孔質体を得た。なお、得られた多孔質体は、実施例1に記載と同様の方法で酢酸を除去した。
(凍結条件)
凍結は、予め−1℃に冷却しておいた低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して0.5時間保持し、その後冷却速度3℃/hで槽内が−20℃になるまで、6時間20分かけて冷却した後、−20℃で5時間保持した。凍結した試料を自然解凍で室温に戻した後、型から取り出すことによってフィブロイン多孔質体を得た。該フィブロイン多孔質体は、型として用いた容器の形状を保持したものとなった。
該フィブロイン多孔質体について、以下の方法で25%圧縮硬さを測定した。
(圧縮試験による25%圧縮硬さの測定)
得られたフィブロイン多孔質体を純水中に1日静置し完全に吸水させた後、その硬さを圧縮試験機で測定した。圧縮試験機は、(株)島津製作所製EZ Testを、ロードセルは10Nと50Nのものを、ロードプレートは直径8mmのものを使用した。多孔質体を1mm/minの速度で初期厚さの25%圧縮し、その時かかっている荷重を読み取り25%圧縮硬さとした。25%圧縮硬さを図22及び表2に示す。
なお、測定結果は、作製した多孔質体の任意の5箇所、及び異なる日に作成した多孔質体の任意の5箇所、計10箇所について測定を行った平均値(±標準偏差)である。
また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図23に示す。
実施例11
実施例10において、−1℃に維持した時間を0.5時間から5時間に変えたこと以外は実施例10と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図22及び表2に示す。
実施例12
実施例10において、−1℃に維持した時間を0.5時間から10時間に変えたこと以外は実施例10と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図22及び表2に示す。また、該フィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図24に示す。
実施例13
実施例10において、−1℃に維持した時間を0.5時間から50時間に変えたこと以外は実施例10と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図22及び表2に示す。
実施例14
実施例10において、凍結条件を以下としたこと以外は実施例10と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図25及び表3に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図26に示す。
(凍結条件)
凍結は、予め−5℃に冷却しておいた低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後冷却速度0.3℃/hで、槽内が−20℃になるまで、50時間かけて冷却した後、−20℃で5時間保持した。凍結した試料を自然解凍で室温に戻した後、型から取り出すことによってシルクフィブロイン多孔質体を得た。該シルクフィブロイン多孔質体は、型として用いた容器の形状を保持したものとなった。
実施例15
実施例14において、−5℃から−20℃にかけての冷却速度を3℃/hに変えて、その冷却時間を5時間としたこと以外は実施例14と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図25及び表3に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図27に示す。
実施例16
実施例14において、−5℃から−20℃にかけての冷却速度を6℃/hに変えて、その冷却時間を2.5時間としたこと以外は実施例14と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図25及び表3に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図28に示す。
実施例10〜16に示すように、本発明の製造方法において、その凍結条件を制御することにより、得られるシルクフィブロイン多孔質の強度を制御することができる。
実施例17
実施例10において、凍結条件を以下としたこと以外は実施例10と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図29及び表4に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図30に示す。
(凍結条件)
凍結は、予め−1℃に冷却しておいた低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後冷却速度3℃/hで、槽内が−20℃になるまで、6時間20分かけて冷却した後、すぐに8℃/hで昇温、融解させた。
実施例18
実施例17において、槽内温度が−20℃になるまで冷却した後に−20℃で1時間保持した(−20℃に冷却後保持した時間を0時間から1時間に変えた)こと以外は実施例17と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図29及び表4に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図31に示す。
実施例19
実施例17において、槽内温度が−20℃になるまで冷却した後に−20℃で5時間保持した(−20℃に冷却後保持した時間を0時間から5時間に変えた)こと以外は実施例17と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の25%圧縮硬さを図29及び表4に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図32に示す。
実施例17〜19に示すように、本発明の製造方法において、−1℃から−20℃までの冷却時間が6時間20分と、凍結状態を一定時間保持できれば、−20℃での保持時間にはよらず、同等の強度の多孔質体を得ることができる。
実施例20
実施例1において、蟻酸に代えて酢酸を用い、アルミ板で作製した型を内側サイズ80mm×40mm×10mmとし、凍結条件を以下としたこと以外は実施例1と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。なお、得られた多孔質体は、実施例1に記載と同様の方法で酢酸を除去して、力学的特性を評価した。得られた多孔質体の引っ張り強度(最大破断強度)と最大破断ひずみ(伸び)を図33及び表5に示す(左側が最大破断強度、右側が最大破断ひずみ(伸び)を示す)。
なお、測定結果は、作製した多孔質体の任意の5箇所、及び異なる日に作成した多孔質体の任意の5箇所、計10箇所について測定を行った平均値(±標準偏差)である。
また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図34に示す。
(凍結条件)
凍結は、予め−1℃に冷却しておいた低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後冷却速度3℃/hで、槽内が−20℃になるまで、6時間20分かけて冷却した後、−20℃を5時間保持した。
実施例21
実施例20において、低温恒温槽を予め冷却しておく温度を−1℃から−3℃に変えた(−20℃までの冷却時間を5時間40分とした)こと以外は実施例20と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の力学的特性を図33及び表5に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図35に示す。
実施例22
実施例20において、低温恒温槽を予め冷却しておく温度を−1℃から−5℃に変えた(−20℃までの冷却時間を5時間とした)こと以外は実施例20と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体の力学的特性を図33及び表5に示す。また、該シルクフィブロイン多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図36に示す。
実施例20〜22に示すように、本発明の製造方法において、凍結前の冷却温度を−1〜−5℃程度の過冷却状態となる温度(過冷却温度)とすることで、同等の強度の多孔質体を得ることができる。
本発明の製造方法により得られるシルクフィブロイン多孔質体は、安全性が高く、かつ優れた力学的特性を有する。したがって、医療分野や、人体に適用する分野への応用が可能である。具体的には、化粧品・エステ分野等に広く適用することができ、顔の形状に合わせたフェイスマスクとして極めて有用である。
また、創傷被覆材や薬剤徐放担体、止血スポンジ等の医療分野、紙おむつや生理用品等の生活日用品分野、組織工学や再生医工学における細胞培養支持体や組織再生支持体、浄水用途・環境分野における微生物や細菌等の住処になる支持体など種々の産業に適用が可能である。

Claims (7)

  1. シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液をゲル化せずに凍結し、次いで融解することにより、多孔質体を得ることを特徴とするシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  2. 融解後に得られた前記多孔質体を、純水中に浸漬して前記脂肪族カルボン酸を除去する工程又は凍結乾燥して前記脂肪族カルボン酸を除去する工程をさらに含む請求項1に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  3. 前記脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液を凍結前に、過冷却状態となる温度に30分以上保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  4. 前記脂肪族カルボン酸の添加量が、シルクフィブロイン溶液中で0.01〜18.0質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  5. シルクフィブロインの濃度が、前記脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液中で0.1〜40質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  6. 前記脂肪族カルボン酸が、炭素数1〜6の飽和又は不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
  7. 前記脂肪族カルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸及び3−ブテン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項6に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
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