JP5565629B2 - シルクフィブロイン多孔質体の製造方法 - Google Patents
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Description
これら多孔質体を構成する生体由来物質としては、セルロースやキチンなどの糖類、コラーゲン、ケラチン、シルクフィブロインなどのタンパク質群が知られている。
シルクフィブロインは、衣類用途以外に、手術用縫合糸として長く使用されてきた実績があり、現在では食品や化粧品の添加物としても利用され、人体に対する安全性にも問題がないことから上記した多孔質体の利用分野に十分利用可能である。
上記したシルクフィブロイン多孔質体の作製手法と比較すると、確実で簡便な手法が報告されている(特許文献4;非特許文献1)。シルクフィブロイン水溶液に対して少量の水溶性有機溶媒を添加した後に、一定時間冷凍して融解することによってシルクフィブロイン多孔質体が得られる手法である。この手法では、少量使用した有機溶媒も超純水による洗浄工程による除去から残留有機溶媒もほぼなくなり、さらには、得られた含水状態の多孔質体は、それまでに報告されていたものよりも強度が高く形態安定性に優れている。
そこで、本発明は、多孔質体の細孔直径や細孔の数といった構造や多孔質体の強度を容易に調整し、より小さい細孔直径の構造を有する多孔質体、そしてより高い強度を有する多孔質体を製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明の製造方法においては、融解後に得られた多孔質体を純水中に浸漬して前記脂肪族カルボン酸を除去する工程をさらに有することが好ましい。
本発明において用いられる脂肪族カルボン酸としては、例えば、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数3〜5の飽和または不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸を好ましく用いることができ、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸、3−ブテン酸などの不飽和モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸などのジカルボン酸などが好ましく挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
静置する際の温度は、凝固しない温度であれば特に制限はないが、凝固のしにくさ、溶液のゲル化のしにくさ、あるいはフィブロイン分子の分解の起こりにくさを考慮すると、−5〜50℃であることが好ましく、−3〜20℃がより好ましく、3〜10℃がさらに好ましい。シルクフィブロイン溶液を静置する温度を調節することで、得られるシルクフィブロイン多孔質体の細孔直径や強度を調整することができ、温度を3〜10℃とすることで、特に細孔直径が小さく、強度の高い多孔質体が得られる。
凍結温度は、脂肪族カルボン酸を含有させたシルクフィブロイン溶液が凍結する温度であれば特に制限されないが、−4〜−40℃が好ましく、−10〜−30℃がより好ましく、−10〜−20℃がさらに好ましい。凍結温度を上記範囲内にすると、シルクフィブロイン多孔質体を再現よく得ることができる。
凍結時間は、十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、所定の凍結温度で2時間以上であることが好ましく、4時間以上がより好ましい。
過冷却状態とする方法としては、例えば一旦、5〜−10℃程度、好ましくは0〜−5℃程度で、30分以上保持して容器内を均一にして過冷却状態としてから、凍結温度まで下げて凍結することで、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得ることができる。静置あるいは過冷却状態から凍結温度までにかける時間を調整することで、多孔質体の構造や強度をある程度制御することが可能であり、例えば、0.1〜2℃/h程度でゆっくり温度を下げると、より高い強度のシルクフィブロイン多孔質体が得られる。
該シートとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂からなるシート、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などからなる離型処理されたシートなどが好ましく挙げられる。これらのシートを用いた場合、細孔が少なく平滑なフィルム層を得ることができる。また、フィルム層を設けたくない場合は、ろ紙などといった表面が粗いシートを設けることもできる。これらのシートの採用については、多孔質体の用途に応じて、適宜選択すればよい。
また、シートは、熱伝導を阻害しにくい厚さ1mm以下のものを用いることが好ましい。
空孔率=(湿重量−乾燥重量/1.2)/湿重量×100
このように、本発明の製造方法で得られたシルクフィブロイン多孔質体は極めて大きい空孔率を有するものであり、様々な用途において、優れた性能を示すものである。
(シルクフィブロイン溶液の調製)
シルクフィブロイン水溶液は、シルクフィブロイン粉末(KBセーレン社製、商品名:「フィブロインIM」)を9M臭化リチウム水溶液に溶解し、遠心分離で不溶物を除去したのち、超純水に対して透析を繰り返すことによって得た。得られたシルクフィブロイン水溶液を透析チューブ中で風乾し濃縮した。この濃縮液に添加剤として酢酸水溶液を添加し、シルクフィブロイン濃度が5質量%、酢酸濃度が2質量%であるシルクフィブロイン溶液を調製した。
(多孔質体の製造)
このシルクフィブロイン溶液をアルミ板で作製した型(内側サイズ;80mm×40mm×4mm)に流し込み、低温恒温槽(EYELA社製NCB−3300)に入れて−1℃で10時間静置した。その後、下記条件で凍結した。
(凍結条件)
凍結は、予め低温恒温槽を−1℃に冷却しておいて低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入し、その後3℃/時間の速度で−20℃まで冷却し、そのままの温度で5時間保持した。
凍結した試料を自然解凍で室温に戻してから、型から取り出し、超純水に浸漬し、超純水を1日2回、3日間交換することによって、使用した酢酸を除去した。
得られた多孔質体を純水中に1日静置し完全に吸水させた後、その硬さを圧縮試験機で測定した。圧縮試験機は、(株)島津製作所製EZ Testを、ロードセルは10Nと50Nのものを、ロードプレートは直径8mmのものを使用した。多孔質体を1mm/minの速度で初期厚さの10%まで圧縮し、その時かかっている荷重を読み取り10%圧縮硬さとした。結果を第1表に示す。
なお、10%圧縮硬さは、作製した多孔質体の任意の5箇所、及び異なる日に作成した多孔質体の任意の5箇所、計10箇所について測定を行った際の測定結果の平均値である。
得られた多孔質体を純水中に1日静置し完全に吸水させ、秤量した後(湿重量)、凍結乾燥して多孔質体中の水分を完全に除去し、再度秤量した(乾燥重量)。水の密度を1g/cm3、フィブロインの密度を1.2g/cm3、含水状態のフィブロイン多孔質体の密度を1g/cm3と仮定し、次式に従ってシルクフィブロイン多孔質体の空孔率の測定を行った。
空孔率=(湿重量−乾燥重量/1.2)/湿重量×100
実施例1において、第1表に示される静置温度、静置時間及び添加剤とした以外は実施例1と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を得た。得られた多孔質体について、実施例1と同様にして10%圧縮硬さ、空孔率を測定し、実施例3、5、6及び比較例7については、平均細孔直径を測定した。これらの数値を第1−1〜1−3表に示す。また、実施例3、5、6及び比較例7で得られた多孔質体の断面(多孔質層)を、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した。撮影した走査型電子顕微鏡写真を各々図4、5、6及び7に示す。
また、本発明の製造方法により得られるシルクフィブロイン多孔質体は、吸水量を変えることでその重さを制御することができ、かつ安全性にも問題がないことから、例えば、内視鏡観察下で切除された生体組織を牽引するための重りとして、好適に使用し得る。
その他、癒着防止膜、創傷被覆材や薬剤徐放担体など、止血スポンジなどの医療分野、紙おむつや生理用品などの生活日用品分野、組織工学や再生医工学における細胞培養支持体や組織再生支持体、微生物や細菌などの住処になる支持体などに好適に使用することができる。
Claims (8)
- シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液を該溶液が凝固しない温度で10時間以上静置し、静置後の該シルクフィブロイン溶液を凍結し、次いで融解することを特徴とするシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 前記凝固しない温度が、−5〜50℃の範囲である請求項1に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 前記静置の時間が、10〜300時間の範囲である請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 融解後に得られた前記多孔質体を、純水中に浸漬して前記脂肪族カルボン酸を除去する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 前記脂肪族カルボン酸の添加量が、シルクフィブロイン溶液中で0.01〜18.0質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- シルクフィブロインの濃度が、前記脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液中で0.1〜50.0質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 前記脂肪族カルボン酸が、炭素数1〜6の飽和又は不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜6のいずれかに記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
- 前記脂肪族カルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸及び3−ブテン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載のシルクフィブロイン多孔質体の製造方法。
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