JP5458317B2 - アパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、人工骨材、細胞の足場材等に好適なアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体(以下、単に「アパタイト/コラーゲン多孔体」ということもある。)を製造する方法に関し、特に均一な気孔径を有するアパタイト/コラーゲン多孔体が得られる製造方法に関する。
外傷や病気により生じた骨欠損部の治療法として、患者自身の骨を採取して用いる自家骨移植、他人から提供された骨を用いる同種骨移植、チタン等の金属や水酸アパタイトセラミックスで作られた人工骨の補填等がある。水酸アパタイトセラミックスは従来の金属、高分子及びアルミナセラミックスにはない骨伝導を有し、骨と直接結合することができるため、口腔外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、整形外科等の幅広い領域で自家骨に代わる骨修復材料として徐々に普及してきた。しかし、水酸アパタイトに代表されるセラミックス人工骨は硬く脆いために術中に取り扱いづらいとの問題点があった。これを改善するためにスポンジ状で弾力性を有するアパタイト/コラーゲン複合体が開発された。
アパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の機械的強度と生体親和性はほぼ反比例の関係にあり、機械的強度を大きくするほど生体親和性は小さくなるという傾向がある。このため、個々の用途に応じて、最適なバランスでこれらの特性を有する多孔体を設計する必要がある。アパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体において、これらの特性は材料組成、気孔率、気孔径等によりある程度調節が可能であり、目的に応じた多孔体の設計ができるようになってきている。
気孔径及び気孔形状はアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の特性に大きな影響を与える因子であり、例えば、平均気孔径が大きいほど生体に埋入したときに気孔内に体液、組織等が入り込み易いので、多孔体は大きな生体親和性を発揮し、球状で均一な大きさの気孔を有する多孔体は機械的強度の変動が小さく、ハンドリング適性に優れており生体内への埋入を容易に行うことができる。気孔径の変動を少なくし、気孔形状を一定に保持したいという要望は、近年一層高まってきている。
特開2005-279078号(特許文献1)には、アパタイト/コラーゲン複合体繊維を有するゲルを凍結乾燥し多孔体を製造する方法において、ゲルを凍結する際の凝固時間を調節することにより多孔体の平均気孔径を制御する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、例えば、得られた多孔体の中心部と端部との気孔径及び気孔形状は大きな違いが生じる場合があり、多孔体全体にわたって気孔径及び気孔形状を一定に保つことが困難であった。
特開2005-279078号公報
従って、本発明の目的は、多孔体全体にわたって気孔径及び気孔形状が均一なアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、アパタイト/コラーゲン複合体ゲルを円形の皿状の容器(シャーレ等)で凍結させた後、乾燥して得られる多孔体は、気孔径及び気孔形状が全体に均一であることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の製造方法は、アパタイト/コラーゲン複合体繊維と、コラーゲンと、水とを含む分散物をゲル化した後、得られたゲル体を凍結及び乾燥することにより多孔質体とし、前記多孔質体中のコラーゲンを架橋することによりアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を製造する方法であって、前記ゲル体の凍結を円柱状容器中で、凍結体の高さと直径との比(高さ/直径)が0.1〜0.5となるように行うことを特徴とする。
本発明のもう一つの製造方法は、アパタイト/コラーゲン複合体繊維と、コラーゲンと、水とを含む分散物をゲル化した後、得られたゲル体を凍結及び乾燥することにより多孔質体とし、前記多孔質体中のコラーゲンを架橋することによりアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を製造する方法において、前記ゲル体の凍結を円形度が0.94〜1の高さ方向断面形状を有する容器中で、凍結体の高さと高さ方向断面の円相当径との比(高さ/円相当径)が0.1〜0.5となるように行うことを特徴とする。
前記凍結体の直径又は円相当径は10〜90 mmであるのが好ましい。前記ゲル体の凍結は−20〜−80℃で行うのが好ましい。
本発明の方法によって得られるアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体は、気孔径及び気孔形状が全体に均一なので、製造の歩留まりが良く、品質の変動がない製品を提供することができる。
本発明の方法で用いる円柱状容器の一例を示す斜視図である。 円柱状容器にゲルを入れた状態の一例を示す(a)斜視図、及び(b)A-A断面図である。 (a)実施例1、(b)実施例2、及び(c)比較例1で用いた円柱状容器を示す斜視図である。 実施例1で作製した多孔体の、(a)中心部、及び(b)側面に近い部分の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で作製した多孔体の、(a)中心部、及び(b)側面に近い部分の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で作製した多孔体の、(a)中心部、及び(b)側面に近い部分の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3で作製した多孔体の分割部分を模式的に示す斜視図である。 実施例3で作製した多孔体の各分割部分の中心部の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2で作製した多孔体の分割部分を模式的に示す斜視図である。 比較例2で作製した多孔体の各分割部分の中心部の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
[1] アパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体
本発明のアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体は、図4及び図5に示すように、アパタイト/コラーゲン複合体繊維がランダムに重なり合うことにより多数の微細な気孔を形成してなる。前記繊維は0.05〜75 mm程度の長さを有するのが好ましい。前記気孔はほぼ球状であり、100〜500μmの大きさを有するのが好ましい。このアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を生体内に埋入したときに、前記ほぼ球状の気孔に血管や比較的大きなタンパク質等が入り込みやすいので、骨形成が促進されると考えられる。
[2] アパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法
(1) アパタイト/コラーゲン複合体繊維
(a) 原料
アパタイト/コラーゲン複合体繊維は、コラーゲン、リン酸又はその塩、及びカルシウム塩を原料とする。コラーゲンとしては特に限定されず、動物等から抽出したものを使用できる。なお由来する動物の種、組織部位、年齢等は特に限定されない。一般的には哺乳動物(例えばウシ、ブタ、ウマ、ウサギ及びネズミ)や鳥類(例えばニワトリ)の皮膚、骨、軟骨、腱、臓器等から得られるコラーゲンが使用できる。また魚類(例えばタラ、ヒラメ、カレイ、サケ、マス、マグロ、サバ、タイ、イワシ及びサメ)の皮、骨、軟骨、ひれ、うろこ、臓器等から得られるコラーゲン様蛋白を使用してもよい。なおコラーゲンの抽出方法も特に限定されず、一般的な抽出方法によることができる。また動物組織から抽出したものではなく、遺伝子組み替え技術によって得られたコラーゲンを使用してもよい。
リン酸又はその塩(以下単に「リン酸(塩)」という)としてはリン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸二水素カリウムが挙げられる。またカルシウム塩としては炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び水酸化カルシウムが挙げられる。リン酸塩及びカルシウム塩はそれぞれ均一な水溶液又は懸濁液の状態で添加するのが好ましい。
使用するアパタイト原料[リン酸(塩)及びカルシウム塩]とコラーゲンとの質量比により、生成物中のアパタイト/コラーゲンの質量比を制御できる。このため使用するアパタイト原料とコラーゲンとの質量比は、目的とするアパタイト/コラーゲン複合体繊維の組成比により適宜決定する。アパタイト/コラーゲン複合体繊維中のアパタイト/コラーゲンの比率は9/1〜6/4(質量比)であるのが好ましく、約8/2(質量比)であるのが特に好ましい。
(b) 溶液の調製
リン酸(塩)水溶液及びカルシウム塩水溶液の濃度は、リン酸(塩)とカルシウム塩とが所望の配合比にあれば特に限定されないが、後述する滴下操作の都合上、リン酸(塩)水溶液の濃度は50〜250 mM程度、カルシウム塩水溶液の濃度は200〜600 mM程度であるのが好ましい。コラーゲンは一般的にはリン酸水溶液の状態で、前述のリン酸(塩)水溶液にあらかじめ加える。コラーゲンのリン酸水溶液は、コラーゲンの濃度が0.5〜1質量%及びリン酸の濃度が10〜30 mMであるのが好ましい。さらに好ましくは、コラーゲンの濃度は0.8〜0.9質量%及びリン酸の濃度は15〜25 mMであり、特に好ましくは、コラーゲンの濃度は約0.85質量%及びリン酸の濃度は約20 mMである。
(c) アパタイト/コラーゲン複合体繊維の製造
添加すべきカルシウム塩水溶液の量とほぼ同量の(好ましくは添加すべきカルシウム塩水溶液の0.5〜2倍、より好ましくは0.8〜1.2倍)の水をあらかじめ反応容器に入れ、40℃程度に加熱する。そこに、コラーゲンを含有するリン酸(塩)水溶液及びカルシウム塩水溶液を同時に滴下する。滴下条件によって、合成するアパタイト/コラーゲン複合体繊維の長さを制御できる。滴下速度は10〜50 ml/min程度であるのが好ましく、反応溶液は50〜300 rpm程度で撹拌するのが好ましい。滴下中、反応溶液中のカルシウムイオン濃度を3.75 mM以下、かつリン酸イオン濃度を2.25 mM以下に維持するのが好ましい。これにより、反応溶液のpHは8.9〜9.1に保たれる。カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンの濃度が上記範囲を超えると、複合体の自己組織化が妨げられる。本明細書中「自己組織化」とは、コラーゲン繊維に沿って、ハイドロキシアパタイト(アパタイト構造を有するリン酸カルシウム)が生体骨特有の配向をしていること、すなわちハイドロキシアパタイトのC軸がコラーゲン繊維に沿うように配向していることを意味する。以上の滴下条件により、アパタイト/コラーゲン複合体繊維は、多孔体の原料として好適な1mm以下の長さで、自己組織化したものとなる。
滴下終了後、スラリー状になったアパタイト/コラーゲン複合体繊維の分散物を凍結乾燥する。凍結乾燥は、−10℃以下に凍結した状態で真空引きし、急速に乾燥させることにより行う。
(2) アパタイト/コラーゲン複合体繊維を含む分散物の調製
アパタイト/コラーゲン複合体繊維に水、リン酸水溶液等を加えて撹拌し、ペースト状の分散物を調製する。この分散物が含有する液体の含有量は、80〜99体積%であるのが好ましく、90〜97体積%であるのがより好ましい。つまり、複合体繊維の含有量は、1〜20体積%であるのが好ましく、3〜10体積%であるのがより好ましい。アパタイト/コラーゲン複合体繊維にはあらかじめ水蒸気を付着させておくのが好ましい。この場合は、アパタイト/コラーゲン複合体繊維に付着させた水蒸気の量を差し引いて、加える水の量を決める必要がある。
製造する多孔体の気孔率P(%)は分散物中のアパタイト/コラーゲン複合体繊維と液体との体積比に依存し、下記式(1):
P = Y /(X+Y)×100 ・・・ (1)
[ただし、Xは分散物中のアパタイト/コラーゲン複合体繊維の体積、Yは分散物中の液体の体積を示す。]により表される。このため加える液体の量によって、多孔体の気孔率Pを制御することができる。液体を加えた後で分散物を撹拌することにより、アパタイト/コラーゲン複合体繊維が切断され繊維長の分布幅が大きくなるため、製造する多孔体の強度が向上する。
複合体繊維の分散物にバインダーとなるコラーゲンを加え、さらに撹拌する。コラーゲンの添加量は、アパタイト/コラーゲン複合体繊維100質量%に対して、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜6質量%であるのがより好ましい。複合体繊維の場合と同様に、コラーゲンはリン酸水溶液の状態で加えるのが好ましい。コラーゲンのリン酸水溶液の濃度等は特に限定されないが、実用的にはコラーゲンの濃度が0.8〜0.9質量%(例えば0.85質量%)、リン酸の濃度が15〜25 mM(例えば20 mM)である。
(3) 分散物のゲル化
コラーゲンのリン酸(塩)水溶液の添加により酸性となっている分散物に、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを約7に調節する。分散物のpHは6.8〜7.6とするのが好ましく、7.0〜7.4とするのがより好ましい。分散物のpHを6.8〜7.6とすることにより、バインダーとして加えたコラーゲンの繊維化を促進することができる。
分散物にリン酸緩衝溶液(PBS)の2.5〜10倍程度の濃縮液を加えて撹拌し、イオン強度を0.2〜0.8に調整する。より好ましいイオン強度は、PBSと同程度のイオン強度(0.2〜0.8程度)である。分散物のイオン強度を大きくすることにより、バインダーとして加えたコラーゲンの繊維化を促進することができる。
分散物は円柱状容器に入れ、保温することによりゲル化させる。円柱状容器1としては、図1に示すような形状の容器を用いるのが好ましく、例えばガラス製、ステンレス製、プラスチック製のいわゆるシャーレを用いることができる。円柱状容器1の高さ方向断面は真円であるのが好ましいが、必ずしも真円である必要はなく実質的に円形であればよい。また円形に近い形状であれば多角形でも良い。高さ方向断面形状が円形から外れた場合は、その断面の円相当径を直径に代用する。具体的には、円形度を4π*S/L2(ただし、S:面積、L:周囲長)としたとき、前記断面の円形度が0.94〜1であるのが好ましく、0.96〜1であるのがさらに好ましい。なおここで円形度は、真円が1、正十角形が0.967、正八角形が0.948、正六角形が0.907、正四角形が0.785である。例えば図2に示すような円柱状容器1を用いて、高さhと直径(又は円相当径)dとの比[高さ/直径(又は円相当径)]が0.1〜0.5となる凍結体が得られるよう に深さhまで分散物を入れてゲル2を形成する。
ゲル化させるための保持温度は、35〜43℃であるのが好ましく、35〜40℃であるのがさらに好ましい。分散物を十分にゲル化させるため、保持する時間は0.5〜3.5時間であるのが好ましく、1〜3時間であるのがより好ましい。分散物の温度を35〜43℃に保持することにより、バインダーとして加えたコラーゲンが繊維化し、分散物がゲル状となる。分散物がゲル化することにより、アパタイト/コラーゲン複合体繊維が分散物中で沈降するのを防ぐことができ、均一な多孔体を製造することが可能となる。
(4) ゲル体の凍結及び乾燥
アパタイト/コラーゲン複合体繊維を含むゲル体を、前記円柱状容器中で凍結させ、高さと直径(又は円相当径)との比[高さ/直径(又は円相当径)]が0.1〜0.5の形状の凍結体を作製する。気孔の大きさや形状は、分散物の凍結時に容器側壁から伝わる熱(冷却熱)の影響を受ける。容器の高さ方向断面を円又は円形度0.94〜1の形状とすることにより、水平面における容器側壁から分散物中心部分までの距離がほぼ一定となり、気孔の大きさや形状にムラが生じ難くなる。高さ/直径(又は円相当径)が0.1を下回る場合、比較的大きな最終生成物(多孔体)が得られ難くなり、高さ/直径(又は円相当径)が0.5を超える場合、容器底面から伝わる熱(冷却熱)の影響により、分散物の底面部分と底面から最も離れる部分(上端部)とで形成される気孔の大きさや形状に差が生じることがある。
目的とするアパタイト/コラーゲン多孔体の平均気孔径は、ゲル体の凍結に要する時間に依存する。凍結する温度は−100〜0℃であるのが好ましく、−100〜−10℃であるのがより好ましく、−80〜−20℃であるのが特に好ましい。−100℃未満では、得られるアパタイト/コラーゲン多孔体の平均気孔径が小さ過ぎる。0℃超では、凍結しないか凍結に長時間を要する上、多孔体の平均気孔径が大き過ぎる。
凍結させたゲル体は、凍結乾燥により乾燥し多孔体とする。つまり、アパタイト/コラーゲン複合体繊維の場合と同様に、−10℃以下に凍結した状態で真空引きし、急速に乾燥させる。凍結乾燥は分散物が十分に乾燥するまで行えばよく時間は特に制限されないが、一般的には24〜72時間程度である。
(5) コラーゲンの架橋
コラーゲンの架橋は物理的架橋(γ線、紫外線、熱脱水、電子線等を用いる方法)、化学的架橋(架橋剤や縮合剤を用いる方法)のいずれを用いてもよい。化学的架橋の場合、架橋剤の溶液に多孔体を浸すことにより行う。架橋剤としては、アルデヒド系架橋剤(グルタールアルデヒド及びホルムアルデヒド等)、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート等)、カルポジド系架橋剤(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等)、ポリエポキシ系架橋剤(エチレングリコールジエチルエーテル等)、トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。これらの架橋剤のうち、架橋度の制御しやすさや、得られる多孔体の生体適合性の面からグルタールアルデヒドが特に好ましい。
グルタールアルデヒドを用いて架橋する場合、グルタールアルデヒド溶液の濃度は、0.005〜0.015質量%であるのが好ましく、0.005〜0.01質量%であるのがより好ましい。グルタールアルデヒド溶液の溶媒としてエタノール等のアルコールを使用すると、コラーゲンの架橋と同時に多孔体の脱水を行うことができる。脱水を架橋と同時に行うことにより、アパタイト/コラーゲン複合体繊維が収縮した状態で架橋反応を起こさせ、生成する多孔体の弾性を向上させることができる。
架橋処理後、未反応のグルタールアルデヒドを除去するため2質量%程度のグリシン水溶液に多孔体を浸漬し、次いで水洗する。さらにエタノールに浸漬することにより多孔体を脱水した後、室温で乾燥させる。
熱脱水架橋は、凍結乾燥後の多孔体を100〜160℃及び0〜100 hPaの真空オーブン中に10〜12時間保持することにより行う。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(A) アパタイト/コラーゲン複合体繊維の合成
120 mMのリン酸水溶液168 mlに、コラーゲンのリン酸水溶液(コラーゲン濃度:0.85質量%、リン酸濃度:20 mM)を235 g加えて撹拌し、希釈コラーゲンリン酸水溶液を調製した。他方、400 mMの水酸化カルシウム懸濁液を200 ml調製した。反応容器に200 mlの純水を入れ、40℃に加熱した。この反応容器に希釈コラーゲンリン酸水溶液と水酸化カルシウム懸濁液とをそれぞれ約30 ml/分の速度で同時に滴下し、得られた反応溶液を200 rpmで撹拌して、アパタイト/コラーゲン複合体繊維を含むスラリーを作製した。滴下中の反応溶液のpHは8.9〜9.1に保持した。生成したアパタイト/コラーゲン複合体の繊維長は概ね1mm以下であった。アパタイト/コラーゲン複合体を含むスラリーは凍結乾燥した。アパタイト/コラーゲン複合体中のアパタイト/コラーゲンの配合比は、質量基準で8/2であった。
(B) アパタイト/コラーゲン多孔体の作製
凍結乾燥したアパタイト/コラーゲン複合体繊維1重量部 に、6.12重量部の生理食塩水及び0.057 重量部の1N NaOH水溶液を加えて撹拌し、ペースト状の分散物とした。このペースト状分散物に1.90 重量部のコラーゲン水溶液(コラーゲン濃度:0.51%)を加えて撹拌し、アパタイト/コラーゲン複合体分散物を得た。分散物の固形分濃度は5体積%であり、アパタイト/コラーゲン複合体とコラーゲンとの配合比は1:0.01(質量比)であった。
得られた分散物を、図3 (a)に示す直径60 mm×高さ10 mmの円柱形の成形型に高さ10 mmまで入れ、37.5℃で2時間保持してゲル化させた。このゲルを−60℃で凍結し、次いで凍結乾燥機を用いて乾燥させた後、140℃で熱脱水架橋することにより、アパタイト/コラーゲン多孔体を得た。凍結体の形状は、直径60 mm、高さ10mmの円柱状(高さ/直径=0.167)であった。
実施例2
アパタイト/コラーゲン複合体の分散物をゲル化させる成形型を、図3(b)に示す直径90 mm×高さ15 mmの円柱形の成形型に変更した以外は実施例1と同様にしてアパタイト/コラーゲン多孔体を得た。なお、凍結体の形状は、直径90 mm、高さ15mmの円柱状(高さ/直径=0.167)であった。
比較例1
アパタイト/コラーゲン複合体の分散物をゲル化させる成形型を、図3(c)に示す縦60 mm×横40 mm×高さ10 mmの直方体の成形型に変更した以外は実施例1と同様にしてアパタイト/コラーゲン多孔体を得た。なお、凍結体の形状は、縦60 mm×横40 mm×高さ10mmの直方体であった。
評価
実施例1、2及び比較例1で得られたアパタイト/コラーゲン多孔体の中心部及び側面に近い部分について、断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより気孔形状を評価した。平均気孔径を表1に、顕微鏡写真を図4〜図6に示す。なお、平均気孔径の測定は、約31mm2の領域を観察することによって行った。
図3(a)及び図3(b)に示す円柱形の成形型を用いて凍結した実施例1及び2の多孔体は、中心部及び側面に近い部分共に均一大きさで球状の気孔を有していた(図4及び図5を参照)。また、直径が大きい成形型を用いた実施例2の多孔体は実施例1に比べて平均気孔径が大きかった。つまり、円柱形の成形型の直径を変えることで、気孔径の大きさを制御することができることが分かった。
立方体の成形型を用いて凍結した比較例1の多孔体は、中心部と側面に近い部分とで気孔径の大きさが異なっており、特に中心部の気孔は細長い形状となった(図6参照)。これは、中心部から側面部までの距離が容器内で一定ではないため、氷の結晶成長に異方性が生じたためであると考えられる。
実施例3
アパタイト/コラーゲン複合体の分散物をゲル化させる成形型を、直径20 mm×高さ10 mmの円柱形の成形型に変更した以外は実施例1と同様にしてアパタイト/コラーゲン多孔体を得た。なお、凍結体の形状は、直径20 mm、高さ10 mmの円柱状(高さ/直径=0.5)であった。
得られた円柱状のアパタイト/コラーゲン多孔体を、図7(a)に示すように高さ方向に3分割(約3.3 mm厚さ)し、部分(1)〜(3)のほぼ中心部について、断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより気孔形状を評価した。平均気孔径を表2に、顕微鏡写真を図7(b)に示す。図7(b)の写真に付した番号は、図7(a)に示す試料の位置と対応する。
比較例2
アパタイト/コラーゲン複合体の分散物をゲル化させる成形型を、直径20 mm×高さ20 mmの円柱形の成形型に変更した以外は実施例1と同様にしてアパタイト/コラーゲン多孔体を得た。なお、凍結体の形状は、直径20 mm、高さ20 mmの円柱状(高さ/直径=1.0)であった。
得られた円柱状のアパタイト/コラーゲン多孔体を、図8(a)に示すように高さ方向に6分割(約3.3 mm厚さ)し、部分(1)〜(6)のほぼ中心部について、断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより気孔形状を評価した。平均気孔径を表2に、顕微鏡写真を図8(b)に示す。図8(b)の写真に付した番号は、図8(a)に示す試料の位置と対応する。
図7(b)及び図8(b)から分かるように、実施例3の多孔体の気孔径及び気孔形状は軸方向でほぼ均一だが、凍結体の高さ/直径が1.0である比較例2の多孔体は気孔径及び気孔形状が部分によって異なっており軸方向で不均一であった。このように容器の高さ/直径が、0.5を超えると均一気孔が得られなくなることが分かった。
1・・・円柱状容器
2・・・ゲル
d・・・直径
h・・・高さ

Claims (5)

  1. アパタイト/コラーゲン複合体繊維と、コラーゲンと、水とを含む分散物をゲル化した後、得られたゲル体を凍結及び乾燥することにより多孔質体とし、前記多孔質体中のコラーゲンを架橋することによりアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を製造する方法において、前記ゲル体の凍結を円柱状容器中で、凍結体の高さと直径との比(高さ/直径)が0.1〜0.5となるように行うことを特徴とするアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法。
  2. アパタイト/コラーゲン複合体繊維と、コラーゲンと、水とを含む分散物をゲル化した後、得られたゲル体を凍結及び乾燥することにより多孔質体とし、前記多孔質体中のコラーゲンを架橋することによりアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体を製造する方法において、前記ゲル体の凍結を円形度が0.94〜1の高さ方向断面形状を有する容器中で、凍結体の高さと高さ方向断面の円相当径との比(高さ/円相当径)が0.1〜0.5となるように行うことを特徴とするアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法。
  3. 請求項1に記載のアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法において、前記凍結体の直径が10 〜90 mmであることを特徴とする方法。
  4. 請求項2に記載のアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法において、前記凍結体の円相当径が10〜90 mmであることを特徴とする方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のアパタイト/コラーゲン複合体からなる多孔体の製造方法において、前記ゲル体の凍結を−20〜−80℃で行うことを特徴とする方法。
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