JP4925315B2 - リン酸カルシウム含有複合多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はセラミック材料からなる、人工骨材、細胞の足場材、歯科用インプラント材等に用いる多孔質の複合構造体に関し、特に圧縮強度が高く、骨置換性及び組織侵入性を備えた複合構造体及びその製造方法に関する。
アパタイトのようなリン酸カルシウムを含む人工骨は自家骨に対して親和性を有し、自家骨に直接結合することができる。そのためその有用性が評価されており、整形外科、脳神経外科、形成外科、口腔外科等を中心に臨床応用されている。しかしアパタイトのようなセラミックス系の人工骨の機械的特性及び生理的性質は、自家骨と全く同じ訳ではない。例えばアパタイトのみからなるいわゆるセラミックス系人工骨は、自家骨より硬くて脆い。そのため移植部位に合わせた成形が困難であり、移植部位から脱落しやすいという問題がある。また自家骨は吸収と再生という代謝を繰り返すのに対し、アパタイトからなる人工骨は生体内でほとんど溶解しないため、生体内に半永久的に残存する。このため残存した人工骨が自家骨との界面で自家骨を破壊し、骨折の原因となるおそれもある。
近年、アパタイト人工骨より自家骨の組成に近く、生体内で分解する人工骨が研究されている。例えば特許第3048289号(特許文献1)及び特表平11-513590号(特許文献2)は、ヒドロキシアパタイトにコラーゲン及び必要に応じてその他のバインダーが結合したネットワークを有する多孔体を開示している。この様な自家骨に近い性質を有するアパタイト多孔体を生体インプラント材として使用すると、骨欠損部に移植された人工骨内に骨形成に関与する細胞が誘引され、自家骨が成長するとともに、移植された人工骨は宿主により分解吸収され、成長した骨組織により置換され、宿主により拒絶される危険性が少なく、骨形成能が高いため治癒期間も短いと記載している。しかし、これらの多孔体は柔軟性を有しているため圧縮強度が低く、テンションのかかる部位での使用が困難である。また気孔構造が連通性を有していないため組織の侵入性が低く、血液及び細胞の進入速度が異なるといった問題がある。
特開2003-190271号(特許文献3)は、平均繊維長が60μm以上のハイドロキシアパタイトとコラーゲンを含む複合体で構成され、ハイドロキシアパタイトのC軸がコラーゲン繊維に沿うように配向した微小多孔質構造を有する有機無機複合生体材料を開示しており、人工骨材に適した機械的強度と生体内分解性が得られると記載している。しかし特開2003-190271(特許文献3)に記載の有機無機複合生体材料は機械的強度が低いという問題がある。
特開2004-275202号(特許文献4)は、直径が10〜500μmで、一方向に配向して貫通している気孔を有する焼結体からなることを特徴とするリン酸カルシウムを含む多孔質セラミックスインプラント材料及びその製造方法を開示しており、高い生体親和性を有し、かつ機械的特性にも優れるインプラント材料が得られると記載している。また特開2005-1943号(特許文献5)は、一辺の長さが0.1〜100μmで、アスペクト比が2〜20の範囲にある六角柱状の結晶粒子を含有し、その気孔率が、20〜90%であることを特徴とする多孔質セラミックス材料及びその製造方法を開示しており、機械的特性に優れるインプラント材料が得られると記載している。しかし特開2004-275202号(特許文献4)及び特開2005-1943号(特許文献5)に記載のインプラント材料は骨置換性及び組織侵入性に劣るとともに、一方向に配向して貫通している気孔を有するため、気孔と垂直な方向から力が加わったときの強度が特に低いといった問題がある。
特許第3048289号公報 特表平11-513590号公報 特開2003-190271号公報 特開2004-275202号公報 特開2005-1943号公報
従って本発明の目的は、機械的特性、骨置換性及び組織侵入性に優れた人工骨材、細胞の足場材等に用いる多孔質の複合構造体及びその製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料、及び気孔径、気孔率又は気孔構造が異なるもう1種のセラミック材料からなる複合多孔体を形成することにより、優れた骨置換性及び組織侵入性、及び高い機械的強度を併せ持つ人工骨材、細胞の足場材等が得られることを見いだし本発明に想到した。
従って、本発明のリン酸カルシウム含有複合多孔体は、気孔径、気孔率、気孔方向又は気孔構造が異なる二種以上のセラミック材料からなる複合多孔体であって、前記セラミック材料の少なくとも一種が一方向に配向する気孔構造を有することを特徴とする。
前記一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料は、配向方向に気孔が貫通しているのが好ましい。
前記一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料はアパタイト/コラーゲン複合体からなるのが好ましい。前記アパタイト/コラーゲン複合体中のアパタイトがヒドロキシアパタイトであるのが好ましい。
本発明のリン酸カルシウム含有複合多孔体は、第一のセラミック材料からなる中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる周囲部からなる二重構造を有するのが好ましい。前記中心部が柱状であり、前記周囲部が筒状であるのが好ましい。
前記第一のセラミック材料は筒状の周囲部の軸方向に配向する気孔構造を有し、前記第二のセラミック材料は等方性の気孔構造を有するのが好ましい。
前記第一のセラミック材料は筒状の周囲部の軸方向に配向する気孔構造を有し、前記第二のセラミック材料は筒状の周囲部の軸方向と直交する方向に配向する気孔構造を有するのが好ましい。
前記第一のセラミック材料は等方性の気孔構造を有し、前記第二のセラミック材料は筒状の周囲部の軸方向と直交する方向に配向する気孔構造を有するのが好ましい。
前記第一のセラミック材料は等方性の気孔構造を有し、前記第二のセラミック材料は筒状の周囲部の軸方向に配向する気孔構造を有するのが好ましい。
本発明の複合多孔体は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、前記第一のセラミック材料及び前記第二のセラミック材料はともに90%以上100%未満の気孔率を有するのが好ましい。
本発明の複合多孔体は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料は90%以上100%未満の気孔率を有し、第二のセラミック材料は0%以上90%未満の気孔率を有するのが好ましい。
本発明の複合多孔体は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料は0%以上90%未満の気孔率を有し、第二のセラミック材料は90%以上100%未満の気孔率を有するのが好ましい。
本発明の複合多孔体のは、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料はともに0%以上90%未満の気孔率を有するのが好ましい。
リン酸カルシウム含有複合多孔体を製造する本発明の方法は、リン酸カルシウムを含有し、気孔径、気孔率、気孔方向又は気孔構造が異なる二種以上のセラミック材料からなり、前記セラミック材料の少なくとも一種が一方向に配向する気孔構造を有するリン酸カルシウム含有複合多孔体を製造する方法であって、一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料は、セラミックス原料を水に分散させてなるスラリーを一方向から冷却することにより凍結し、乾燥することにより形成することを特徴とする。前記一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料は、配向方向に気孔が貫通しているのが好ましい。
本発明のリン酸カルシウム含有複合多孔体は、一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料、及びそれとは気孔径、気孔率、気孔方向又は気孔構造が異なるセラミック材料からなるため、組織侵入性に優れており、少なくとも一種のセラミック材料の強度を高く設定することにより機械的特性の調節が可能である。このため骨形成能が高く、かつ破断強さ等の機械的強度が大きい。また本発明の複合多孔体は、アパタイト/コラーゲン複合体を含むことにより優れた生体親和性を有し、さらに骨伝導能を有するため、人工骨、人工関節等の生体材料として好適である。
[1] リン酸カルシウム含有複合多孔体
(1) 構造
本発明の複合多孔体は、リン酸カルシウム系セラミックス材料からなる気孔径、気孔率、気孔方向又は気孔構造が異なる少なくとも二種類の多孔体により形成され、セラミックス材料の少なくとも一種が一方向に配向する気孔構造(一軸構造とも言う)を有する。この一方向に配向する気孔は貫通しているのが好ましい。一軸構造を有するセラミックス材料以外のセラミックス材料は、一軸構造、等方性の気孔構造(ランダム構造ともいう)又は緻密構造のいかなる気孔構造であっても良い。複合多孔体の構造及び形状は、生体内の移植部位に応じて適宜選択することができ、例えば図1に示すような形状をとることができる。これらの図に示す構造は、いずれも二重構造の場合であるが、本発明の複合多孔体は二重構造に限らない。
一方向に配向する気孔構造とは、図2に示すように、配向方向と垂直な面で切断したときの断面が網目状であり、配向方向と平行な面で切断したときの断面がストライプ状である構造である。等方性の気孔構造とは、図3に示すように、スポンジ状の構造である。
本発明の複合多孔体の好ましい態様は、第一のセラミック材料からなる中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる周囲部からなる二重構造を有するものである。周囲部のセラミック材料は中心部のセラミック材料を被覆するように接しており、中心部と周囲部は密着しているのが好ましい。中心部のセラミック材料は、周囲部のセラミック材料によって、全ての表面が覆われている必要はなく、一部が露出していてもよい。中心部のセラミック材料の全表面積の50〜90%が覆われているのが好ましく、60〜80%覆われているのがより好ましい。
特に図4に示すように、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部2、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部3からなる二重構造を有し、全体として四角柱状の複合多孔体1が好ましい。柱状の中心部の側面と筒状の周囲部の内面とは密着しているのが好ましい。図4では全体の形状が四角柱状の例を示したが、円柱状、六角柱状、三角柱状等の形状でも良く、軸方向の長さは限定されない。また中心部材及び周囲部材はともにテーパ状であっても良く、錐状であっても良い。又はこれらの形状を組み合わせた形状であっても良い。
第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料の気孔構造の組み合わせは、少なくとも一種が一方向に配向する気孔構造を有していれば特に制限はなく、他の多孔質の気孔構造が一軸構造、等方性の気孔構造(ランダム構造ともいう)又は緻密構造であっても良い。特に表1に示す組み合わせが好ましい。表1においてa軸方向とは図4に示すように、筒状の周囲部3の軸方向を示し、側面と垂直な方向とはa軸方向と直交する方向であり、筒状の周囲部3を形成する第二のセラミック材料の4つの側面3a〜3dにそれぞれ垂直な方向を示す。表1に示したタイプ1〜5の気孔構造を図5に模式的に示す。
これらの中心部と周囲部の気孔構造の組み合わせは、表1及び図5に示した組み合わせに限らず、複合多孔体の適用部位によって適宜選択が可能である。これらの気孔構造及び気孔率を選択することにより、組織侵入性を向上させた材料又は圧縮強度を高めた材料を提供することができる。
中心部と周囲部の比率は使用目的に応じて適宜決定されるが、複合多孔体全体の強度を確保するため、周囲部に圧縮強度に優れたセラミック材料を使用する場合、周囲部は圧縮強度が確保できるだけの厚みがあれば良く、複合多孔体全体に対して5〜50質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。
(a)第一の形態
本発明の複合多孔体の好ましい第一の形態は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料がともに90%以上100%未満の気孔率を有する。気孔構造の組み合わせとしては、表1に示すタイプ1〜4が好ましい。特にタイプ1及び2の構造が好ましい。これらの構造をとることによって、人工骨材として使用した場合、周囲からの組織侵入性が著しく高く、早期の骨形成が起こる。また、周囲部の気孔率を中心部よりも低く設定することにより、組織侵入性及び圧縮強度の向上を両立させることができる。
(b)第二の形態
本発明の複合多孔体の好ましい第二の形態は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料は90%以上100%未満の気孔率を有し、第二のセラミック材料は0%超90%未満の気孔率を有する。気孔構造の組み合わせとしては、表1に示すタイプ1及び5が好ましい。これらの気孔構造を有することにより、第一のセラミック材料が高い組織侵入性を有し、第二のセラミック材料が高い圧縮強度を有するため、十分な組織侵入性を損なわずに、圧縮強度に優れた材料を提供できる。特に強度の必要な部位への使用が好ましい。特にタイプ5の組み合わせの複合多孔体は、第二のセラミック材料が緻密構造を有するため、より高い圧縮強度を有する。
(c)第三の形態
本発明の複合多孔体の好ましい第三の形態は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料は0%以上90%未満の気孔率を有し、第二のセラミック材料は90%以上100%未満の気孔率を有する。気孔構造の組み合わせとしては、表1に示すタイプ3及び4が好ましい。これらの気孔構造を有する複合多孔体は、第一のセラミック材料により高い圧縮強度が得られるとともに、第二のセラミック材料が高い組織侵入性を有するため、周囲からの組織侵入性が高く、使用部位における周囲の骨との癒合性に優れている。
(d)第四の形態
本発明の複合多孔体の好ましい第四の形態は、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有し、第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料はともに0%以上90%未満の気孔率を有する。これらの気孔構造を有することにより高い圧縮強度が得られるため、特に強いテンションがかかる部位に用いるのが好適である。
本発明の複合多孔体としては、第一の形態及び第二の形態が特に好ましい。
(2) 組成
本発明の複合多孔体において、気孔径、気孔率、気孔方向又は気孔構造が異なる少なくとも二種類の多孔体はリン酸カルシウム系セラミックス材料からなる。複合多孔体はリン酸カルシウム系セラミックス単独で構成されていてもよいが、柔軟性、弾力性及び成形性の観点から有機高分子化合物を含有するのが好ましい。またリン酸カルシウム系セラミックスと有機高分子化合物を含有するリン酸カルシウム系セラミックスを組み合わせて複合多孔体を形成しても良い。有機高分子化合物を含有するリン酸カルシウム系セラミックスは、単にリン酸カルシウム系セラミックスと有機高分子化合物を混合した物を用いても良いが、生体適合性及び骨形成性を向上させるために、リン酸カルシウム系セラミックスと有機高分子化合物が化学的に結合したリン酸カルシウム系セラミックス/有機高分子化合物複合体を用いるのが好ましい。特に一方向に配向する気孔構造を有するセラミック材料は有機高分子化合物を含有するものが好ましい。有機高分子化合物としては生分解性ポリマー等の生体内で分解吸収されるものが好ましい。
リン酸カルシウム系セラミックスとしては、リン酸水素カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸三カルシウム、アパタイト(ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト等)、リン酸四カルシウム等が挙げられる。生体適合性の観点から、アパタイトが好ましく、特にヒドロキシアパタイトが好ましい。
生分解性ポリマーとしては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、デキストロース、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、フィコール、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性ポリアクリレート、水溶性ポリメタクリレート等が挙げられる。コラーゲンは柔軟性及び成形性に優れ、かつ生体内で分解吸収されるため、特に好ましい。
コラーゲンとしては動物等から抽出したものを使用できるが、由来する動物の種、組織部位、年齢等は特に限定されない。一般に哺乳動物(例えばウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ネズミ等)や鳥類(例えばニワトリ等)の皮膚、骨、軟骨、腱、臓器等から得られるコラーゲンを使用できる。また魚類(例えばタラ、ヒラメ、カレイ、サケ、マス、マグロ、サバ、タイ、イワシ、サメ等)の皮、骨、軟骨、ひれ、うろこ、臓器等から得られるコラーゲン様蛋白を使用してもよい。コラーゲンの抽出方法は特に限定されず、一般的な抽出方法を使用することができる。また動物組織からの抽出ではなく、遺伝子組み替え技術により得られたコラーゲンを使用してもよい。特に好ましいコラーゲンは、免疫原性を有する分子末端のテロペプタイドを酵素処理により除去したアテロコラーゲンである。
一軸構造を有する多孔体はリン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体からなるのが好ましい。特に第一の形態の場合には、第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料はともにアパタイトとコラーゲンの複合体からなるのが好ましい。また第二の形態の場合には、第一のセラミック材料は一軸構造を有するアパタイトとコラーゲンの複合体からなり、第二のセラミック材料は緻密構造又は多孔質のリン酸カルシウム系セラミックスからなるのが好ましい。リン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体としては、アパタイト/コラーゲン複合体が最も好ましい。
[2] リン酸カルシウム含有複合多孔体の製造方法
(1) 複合構造の製造方法
第一のセラミック材料からなる中心部と第二のセラミック材料からなる周囲部とにより形成される複合多孔体の構造は、中心部のセラミック材料と周囲部のセラミック材料を別々に作製し、それらを組み合わせることにより製造する。例えば図6に示すように、2個のL字状の部材61a,61bを組み合わせて中心がくりぬかれた四角柱状の周囲部材61を形成し、ほぼ立方体の形状を有する中心部材62をさらに組み合わせることにより、複合多孔体63を製造することができる。
リン酸カルシウムを含有するセラミック材料がリン酸カルシウム系セラミックスのみからなる場合、セラミック原料粉末を水に分散させてなるスラリーを成形型に入れ、凍結及び乾燥した後に、焼結することにより形成する。リン酸カルシウム系セラミックスがコラーゲン等の有機高分子化合物を含有するセラミック材料の場合には、セラミック原料粉末と有機高分子化合物の混合物、又はリン酸カルシウム系セラミックス/有機高分子化合物の複合体を水に分散させてなるスラリーを成形型に入れ、凍結及び乾燥した後に、架橋することにより形成する。形成した後に、中心部に使用する材料又は周囲部に使用する材料に対して、それぞれ所望の形状に切断して使用することができる。
これらのリン酸カルシウム含有セラミックスは、セラミック原料の分散物を凍結するときの冷却条件によって、一方向に配向する気孔構造又は等方性の多孔質構造を得ることができる。また気孔径も、冷却条件により制御することができる。
(2) リン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体を用いたセラミック材料の製造
以下にリン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体の製造方法及び、それを用いたセラミック材料の製造方法を詳細に説明する。
(a) リン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体の製造
リン酸カルシウム系セラミックスとコラーゲンは単に混合してもよいが、生体適合性及び骨形成性を向上させるために、リン酸カルシウム系セラミックスとコラーゲンが化学的に結合したリン酸カルシウム系セラミックス/コラーゲン複合体として用いるのが好ましい。この複合体の好ましい例は、アパタイトのC軸がコラーゲン繊維に沿って配向した自己組織化した構造(生体骨と類似の構造)を有するアパタイト/コラーゲン複合体である。アパタイトとしては、ヒドロキシアパタイトが特に好ましい。以下アパタイト/コラーゲン複合体を中心にして説明するが、その説明は特に断りがない限り他の複合体にも適用可能である。
(i) アパタイト/コラーゲン複合体の原料の調製
アパタイト/コラーゲン複合体は、例えばコラーゲンを含む溶液中にリン酸又はその塩[以下単に「リン酸(塩)」という]の水溶液及びカルシウム塩の水溶液又は懸濁液を加えることにより製造する。リン酸(塩)としては、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。カルシウム塩としては、例えば炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
アパタイト原料[リン酸(塩)及びカルシウム塩]とコラーゲンとの混合比によりアパタイト/コラーゲン複合体の繊維長を制御できるので、アパタイト原料とコラーゲンとの混合比は、アパタイト/コラーゲン複合体の目標繊維長に応じて適宜決定する。本発明に使用するアパタイト/コラーゲン複合体中のアパタイト/コラーゲンの混合比は9/1〜6/4(質量比)が好ましく、8.5/1.5〜7/3(質量比)がより好ましく、約8/2(質量比)が最も好ましい。
(ii) 溶液(懸濁液)の調製
コラーゲン/リン酸(塩)水溶液、及びカルシウム塩水溶液(又は懸濁液)を調製する。コラーゲン/リン酸(塩)水溶液はコラーゲンとリン酸(塩)を溶解した水溶液で、コラーゲンの濃度は0.1〜1.5質量%が好ましく、約0.85質量%が特に好ましい。またリン酸(塩)の濃度は15〜240 mMが好ましく、約120 mMが特に好ましい。カルシウム塩水溶液(又は懸濁液)の濃度は50〜800 mMが好ましく、約400 mMが特に好ましい。
(iii) アパタイト/コラーゲン複合体の製造
添加するカルシウム塩水溶液又は懸濁液の量とほぼ同量の水に、約40℃でコラーゲンを含有するリン酸(塩)水溶液、及びカルシウム塩水溶液又は懸濁液を同時に滴下することにより、アパタイト/コラーゲン複合体が生成する。滴下条件を制御することにより、アパタイト/コラーゲン複合体の繊維長を制御できる。滴下速度は1〜60 mL/分が好ましく、約30 mL/分がより好ましい。攪拌速度は1〜400 rpmが好ましく、約200 rpmがより好ましい。リン酸(塩)及びカルシウム塩の混合比率は、1:1〜2:5が好ましく、3:5がより好ましい。またコラーゲンとアパタイト(リン酸塩とカルシウム塩の総量)の混合比率は、1:9〜4:6が好ましく、1.5:8.5〜3:7がより好ましい。
反応液中のカルシウムイオン濃度を3.75 mM以下、リン酸イオン濃度を2.25 mM以下に維持することにより、反応液のpHは8.9〜9.1に保つのが好ましい。カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンの濃度が上記範囲を超えると、複合体の自己組織化が妨げられる。上記の滴下条件により、自己組織化したアパタイト/コラーゲン複合体の繊維長は、アパタイト/コラーゲン架橋多孔体の原料として好適な2 mm以下となる。
得られたアパタイト/コラーゲン複合体と水とのスラリー状混合物は乾燥するのが好ましい。乾燥は、凍結乾燥、水をエタノール等の溶媒に置換して風乾等の方法で行うことができるが、凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥は、−10℃以下に凍結した状態で真空引きして行う。
(b) アパタイト/コラーゲン複合体を含有する分散物の製造
アパタイト/コラーゲン複合体の繊維に水、リン酸水溶液等を加えて撹拌し、ペースト状の分散物(スラリー)を調製する。水溶液等の添加量は、アパタイト/コラーゲン複合体の80〜99体積%であるのが好ましく、90〜97体積%であるのがより好ましい。多孔体の気孔率P(%)は分散物中のアパタイト/コラーゲン複合体と水溶液等との体積比に依存し、下記式(1):
P = B/(A+B)×100・・・(1)
(ただし、Aは分散物中のアパタイト/コラーゲン複合体の体積を示し、Bは分散物中の液体の体積を示す。)により表される。このため加える液体の量を制御することにより多孔体の気孔率Pを制御することができる。液体を加えた後で分散物を撹拌すると、アパタイト/コラーゲン複合体の繊維の一部が切断され繊維の長さの分布が大きくなる。撹拌条件を調節することにより、得られる多孔体の強度を向上させることができる。
安定した形状の複合体を得るため、分散物にさらにバインダーを添加するのが好ましい。バインダーとしては、可溶性コラーゲン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、カルボキシメチルセルロース、セルロースエステル、デキストロース、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、フィコール、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性ポリアクリレート、水溶性ポリメタクリレート等が挙げられ、特に可溶性コラーゲンが好ましい。バインダーの添加量は、アパタイト/コラーゲン複合体100質量%に対して、1〜10質量%が好ましく、3〜6質量%がより好ましい。
アパタイト/コラーゲン複合体を製造する場合と同様に、バインダーはリン酸水溶液の状態で加えるのが好ましい。添加するバインダー溶液の濃度等は特に限定されないが、実用的にはバインダーの濃度が約0.85質量%、リン酸の濃度が20 mM程度が好ましい。
バインダーのリン酸(塩)水溶液の添加後、水酸化ナトリウム水溶液で分散物のpHを7程度に調製する。分散物のpHは後述するゲル化処理時にコラーゲンがゼラチンに変性するのを防止するため6.8〜7.6が好ましく、7.0〜7.4がより好ましい。
バインダーとして加えたコラーゲンの繊維化を促進させるため、分散物にリン酸バッファー生理食塩水(PBS)の濃縮液(10倍程度)を添加し、イオン強度を0.2〜1に調整する。より好ましいイオン強度は、PBSと同程度の約0.8である。
本発明の目的を損なわない範囲内で、分散物にさら抗生物質(テトラサイクリン等)、抗癌剤(シスプラチン等)、骨髄細胞、細胞増殖因子(BMP、FGF、TGF-β、IGF、PDGF、VEGF等)、生理活性因子(ホルモン、サイトカイン等)等の添加剤を添加することができる。
(c) ゲル化
分散物を成形型に入れた後、分散物の温度を35〜45℃に保持することにより、バインダーとして加えたコラーゲンが繊維化し、分散物がゲル状となる。ゲル化により、アパタイト/コラーゲン複合体が分散物中で沈降するのを防ぎ、均一な多孔体が得られる。より好ましい保持温度は35〜40℃である。保持時間は0.5〜3.5時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。
(d) 凍結乾燥
ゲル化した分散物は凍結工程と乾燥工程からなる凍結乾燥を行う。凍結の方法により、一軸構造又はランダム構造の多孔体を形成することができる。具体的には、ゲル化した分散物を一方向から冷却し凍結した場合に、一軸構造の多孔体を形成することができ、均一に冷却し凍結した場合に、ランダム構造の多孔体を形成することができる。それぞれの場合について、以下に詳細に説明する。
(i) 凍結
一軸構造の多孔体を形成する場合
ゲル化した分散物を一方向から冷却し凍結するには、例えば図7(a)に示すような凍結装置71を用いて行うことができる。凍結装置71は、保温容器72に冷却加熱板73と、冷却加熱板73の上に設置された金属板74を具備する[図7(b)に斜視図を示す。]。冷却加熱板73は保温容器72の外部の冷却加熱装置75に熱的に接続されており、冷却加熱装置75により精度良く冷却又は加熱を行うことができる。上記のように一方向から冷却するには、例えば市販の棚式の凍結装置を用いて行うことができる。
成形型11に充填したゲル化した分散物10は、予め4℃程度に冷蔵した後、所定の温度に冷却した金属板74上に載置することにより、金属板74との接触面からのみ冷却される。保温容器72内の温度は、ゲル化した分散物10が成形型又は上端から凍結しない程度の温度(4℃程度)に保たれている。この様な方法で冷却することにより、金属板74との接触面から凍結が始まり、金属板74に垂直な方向[図7(a)で上方向]に水の結晶が成長することにより、図7(a)で上下方向に配向する気孔構造が形成される。金属板74からのみの冷却を効率よく行うため、成形型11は熱伝導率の低い素材を用いるのが好ましい。金属板74の冷却温度を変えることにより、一軸構造の気孔径を調節することができる。冷却温度が比較的高い場合、気孔径は大きくなり、冷却温度が低い場合、気孔径は小さくなる。冷却温度は、-80〜-10℃が好ましく、−80〜−20℃がより好ましい。
ランダム構造の多孔体を形成する場合
通常の冷凍庫により、均一に冷却し凍結する。凍結温度は−80〜−10℃が好ましく、−80〜−20℃がより好ましい。凍結速度により、多孔体中の気孔の径及び形状を制御することができる。例えば凍結速度が大きいと、生成する多孔体の気孔径は小さくなる。
成形型の熱伝導率により冷却速度が異なるので、成形型の材質を選択することにより所望の平均気孔径の多孔体が得られる。一般に平均気孔径が著しく小さい緻密層を形成する場合、アルミニウム、ステンレススチール、特殊鋼等の金属からなる成形型を用いるのが好ましい。比較的大きな平均気孔径を有する多孔体を形成する場合、熱伝導率の低い成型型を用いるのが好ましい。
(ii) 乾燥
凍結乾燥機を用いて、分散物を−10℃以下に凍結した状態で真空引きして乾燥する。分散物が十分に乾燥する限り、凍結乾燥時間は特に制限されないが、一般的には1〜3日程度とするのが好ましい。凍結乾燥によりアパタイト/コラーゲン多孔体が得られる。
(e) 架橋
機械的強度を高めるとともに、体内に挿入された人工骨等の形状を所望の期間保持し得るようにするため、凍結乾燥したアパタイト/コラーゲン複合体はコラーゲンを架橋するのが好ましい。コラーゲンの架橋は、γ線、紫外線、電子線、熱脱水等を用いた物理的架橋、架橋剤や縮合剤を用いた化学的架橋等の方法を用いて行うことができる。化学的架橋は、例えば凍結乾燥後の多孔体を架橋剤の溶液に浸漬する方法、凍結乾燥後の多孔体に架橋剤を含有する蒸気を作用させる方法、又はアパタイト/コラーゲン複合体を製造する際に水溶液又は懸濁液中に架橋剤を添加する方法により行うことができる。
架橋剤としては、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド、エチレングリコールジエチルエーテル等のエポキシ化合物、トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。これらの架橋剤のうち、架橋度の制御の容易さや、得られるアパタイト/コラーゲン架橋多孔体の生体適合性の観点から、グルタールアルデヒドが特に好ましい。
多孔体をグルタールアルデヒド溶液に浸漬して架橋する場合、グルタールアルデヒド溶液の濃度は0.005〜0.015質量%が好ましく、0.005〜0.01質量%がより好ましい。グルタールアルデヒドの溶媒としてエタノール等のアルコールを使用すると、架橋と同時に脱水もされるため、アパタイト/コラーゲン複合体が収縮した状態で架橋が起こり、生成するアパタイト/コラーゲン架橋多孔体の弾性が向上する。
架橋処理後、未反応のグルタールアルデヒドを除去するため2質量%程度のグリシン水溶液にアパタイト/コラーゲン架橋多孔体を浸漬し水洗する。さらにエタノールに浸漬し脱水した後、室温で乾燥させる。
(f) 加工
得られたアパタイト/コラーゲン架橋多孔体は、旋盤等で切削することにより成形する。例えば本発明の第一の形態においては、第一のセラミック材料からなる中心部と第二のセラミック材料からなる周囲部とをそれぞれ図6で示すように成形し、組み立てることにより複合多孔体を得る。また図5に示すタイプ2及び3の複合多孔体において、各側面に垂直な方向の一軸構造を有している周囲部は、中心部の多孔体の4つの側面に、一軸構造を有する4つの板状多孔体を貼り合わせることにより形成できる。ここでは周囲部の材料を組み合わせて作製する例を示したが、柱状の周囲部材の中心部をくり抜いて筒状に成形しても良い。得られた複合多孔体は紫外線、γ線、電子線、乾燥加熱等により滅菌処理してもよい。
(3) リン酸カルシウム系セラミックス材料
多孔質構造を有するリン酸カルシウム系セラミックスは、特許第3058174号、特開平8-48583号等に記載の方法により製造することができる。特許第3058174号に記載の多孔質セラミックスの製造方法は、リン酸カルシウム粉体とセルロース誘導体、多糖類及び合成重合体等の高分子物質とを含むスラリー又は流動性ゲルを攪拌により発泡させ、気泡を含むスラリー又は流動性ゲルを注型し、加熱によりスラリー又は流動性ゲルを増粘又はゲル化して気泡を固定し、得られた発泡成形体を必要に応じて焼成することからなる。また特開平8-48583号に記載の多孔質セラミックスの製造方法は、リン酸カルシウム粉体と多糖類粒子との混合物を加圧成形し、得られた圧粉体を焼成することからなる。
また緻密構造を有するリン酸カルシウム系セラミックス材料は、例えば特開2004-75423号に記載されているように、ハイドロキシアパタイト粉体を、1ton/cm2以上の圧力で加圧して圧粉体を得る工程と、大気の酸素分圧より高い酸素分圧の酸素含有雰囲気中で、前記圧粉体を925〜1300℃の温度で焼成して焼結体を得る工程とを有する方法で製造することができる。
これらの他に、リン酸カルシウム系セラミックスは、例えばペンタックス株式会社製アパセラム又はAPACERAM-AX(「アパセラム」及び「APACERAM-AX」はペンタックス株式会社の登録商標)を使用することができる。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
図5のタイプ1に示す二層構造で、気孔率50%のランダム構造のヒドロキシアパタイトからなる周囲部、及び気孔率95%の一軸構造のアパタイト/コラーゲン複合体からなる中心部からなるリン酸カルシウム含有複合多孔体の製造を行った。
(1)中心部のセラミック材料
(a) アパタイト/コラーゲン複合体の合成
50 mlの水と410 g のコラーゲン/リン酸水溶液(コラーゲン:0.6質量%、リン酸:120 mM)を混合し溶液Aを調製した。230 mlの水に6 gの水酸化カルシウムを加え撹拌分散し分散液Bを調製した。200 mlの水を入れた容器に、pHコントローラでpHが9になるように速度を調整しながら溶液A及び溶液Bを同時に滴下し、ヒドロキシアパタイトとコラーゲンの複合体繊維の分散液を調製した。この分散液を凍結し減圧下で7日かけて凍結乾燥し、約1〜2mmの平均長を有する繊維状ヒドロキシアパタイト/コラーゲン複合体を得た。
(b) アパタイト/コラーゲン複合体を含む多孔体の作製
乾燥した1gの繊維状ヒドロキシアパタイト/コラーゲン複合体に5.5 mLの水を加えて撹拌し、ペースト状の分散物を得た。さらに2 gのコラーゲン/リン酸水溶液(コラーゲン:0.6質量%、リン酸:20 mM)を加えて撹拌した後、1NのNaOHでpHを7に調節した。
得られた分散物を成形型に入れ、37℃で2時間保持して分散物をゲル化させた。4℃に冷却したゲル状の成形体を、図7に示す凍結装置71の金属板74の上に密着させて載置し一方向から凍結した。金属板74は-20℃で保持し、保温容器72内は1気圧で4℃に保持した。成形体全体が凍結した後、真空に引いて乾燥させた。凍結乾燥後の成形体は、エタノール(濃度99.5%)を溶媒として調製した0.01%のグルタールアルデヒド溶液に浸して架橋処理し、一方向に配向する気孔構造を有する多孔体を得た。この多孔体を水洗した後、2%のグリシン水溶液に浸して未反応のグルタールアルデヒドを除去し、再度水洗した。さらにエタノール(濃度99.5%)に浸して脱水した後、室温で乾燥した。得られた多孔体は切断し図8(a)に示すように立方体(10 mm×10 mm×10 mm)に成形し、中心部のセラミック材料を作製した。
(2) 周囲部のセラミック材料
ペンタックス株式会社製APACERAM-AX(気孔率50%のヒドロキシアパタイト多孔体)を、図8(b)に示すように10 mm×10 mm×10 mmの空洞部及び2 mmの壁厚を有する14 mm×14 mm×10 mmの正方形の筒状に加工し、周囲部のセラミック材料を作製した。
(3) リン酸カルシウム含有複合多孔体
筒状に加工した周囲部のセラミック材料に、立方体に成形した中心部のセラミック材料を挿入し、図8(c)に示すリン酸カルシウム含有複合多孔体を作製した。
実施例2
周囲部のセラミック材料として、ペンタックス株式会社製 APACERAM-AX(気孔率85%のヒドロキシアパタイト多孔体)を使用した以外は実施例1と同様にして、気孔率85%のランダム構造のヒドロキシアパタイトからなる周囲部、及び気孔率95%の一軸構造のアパタイト/コラーゲン複合体からなる中心部からなるリン酸カルシウム含有複合多孔体を作製した。
実施例3
実施例1で作製したアパタイト/コラーゲン複合体を用いて、図7に示す凍結装置71を使用しないで通常の冷凍庫(-60℃)で等方的に凍結した以外は実施例1と同様にして、ランダム構造の気孔を有する多孔体を得た。この多孔体を周囲部のセラミック材料として使用した以外は実施例1と同様にして、気孔率95%のランダム構造のアパタイト/コラーゲン複合体からなる周囲部、及び気孔率95%の一軸構造のアパタイト/コラーゲン複合体からなる中心部からなるリン酸カルシウム含有複合多孔体を作製した。
実施例1〜3で得られた複合多孔体の、全体の形状、並びに中心部のセラミック材料の気孔構造(筒状の周囲部の軸と平行な断面及び直行する断面)、及び周囲部のセラミック材料の気孔構造を図9〜11に示す。得られた複合多孔体は周囲部のセラミック材料と同等の圧縮強度を有し、かつ気孔が一軸に配向しているため、複合体内部への体液の流通性が良好であった。このため、複合体の外表面のみでなく、内部からの骨形成にも優れた性能を示すと考えられる。
本発明のリン酸カルシウム含有複合多孔体の形状例を示す模式図である。 一方向に配向する気孔構造を有する多孔体を示す模式図とSEM写真である。 等方性の気孔構造を有する多孔体のSEM写真である。 本発明の複合多孔体の一例を示す模式図である。 中心部と周囲部とからなる本発明の複合多孔体の気孔構造を示す模式図である。 本発明の複合多孔体を作製する方法の一例を説明するための模式図である。 ゲル化した分散物を一方向から冷却し凍結するための治具を備えた凍結装置を示す模式図である。 実施例1で作製した、(a) 中心部のセラミック材料、 (b) 周囲部のセラミック材料、及び(c)完成した複合多孔体を示す模式図である。 実施例1の複合多孔体の、全体形状を示す写真、並びに図3に示すa軸と(a)直行する断面及び(b)平行な断面における中心部のセラミック材料の気孔構造、及び(c)周囲部のセラミック材料の気孔構造を示すSEM写真である。 実施例2の複合多孔体の、全体形状を示す写真、並びに図3に示すa軸と(a)直行する断面及び(b)平行な断面における中心部のセラミック材料の気孔構造、及び(c)周囲部のセラミック材料の気孔構造を示すSEM写真である。 実施例3の複合多孔体の、全体形状を示す写真、並びに図3に示すa軸と(a)直行する断面及び(b)平行な断面における中心部のセラミック材料の気孔構造、及び(c)周囲部のセラミック材料の気孔構造を示すSEM写真である。
符号の説明
1・・・複合多孔体
2・・・中心部
3・・・周囲部
3a、3b、3c、3d・・・側面
10・・・分散物
11・・・成形型
61・・・周囲部材
61a,61b・・・L字状の部材
62・・・中心部材
63・・・複合多孔体
71・・・凍結装置
72・・・保温容器
73・・・冷却加熱板
74・・・金属板
75・・・冷却加熱装置

Claims (5)

  1. リン酸カルシウムを含有し、第一のセラミック材料からなる柱状の中心部、及び前記中心部に接し第二のセラミック材料からなる筒状の周囲部からなる二重構造を有する複合多孔体であって、前記第一のセラミック材料が、前記筒状の周囲部の軸方向に配向する気孔構造を有し、前記第二のセラミック材料が、前記軸方向と直交し、筒状の周囲部の側面と垂直な方向に配向する気孔構造を有することを特徴とするリン酸カルシウム含有複合多孔体。
  2. 請求項1に記載のリン酸カルシウム含有複合多孔体において、前記第一のセラミック材料は、前記配向方向に気孔が貫通していることを特徴とするリン酸カルシウム含有複合多孔体。
  3. 請求項1又は2に記載のリン酸カルシウム含有複合多孔体において、前記第一のセラミック材料がアパタイト/コラーゲン複合体からなることを特徴とするリン酸カルシウム含有複合多孔体。
  4. 請求項3に記載のリン酸カルシウム含有複合多孔体において、前記アパタイト/コラーゲン複合体中のアパタイトがヒドロキシアパタイトであることを特徴とするリン酸カルシウム含有複合多孔体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸カルシウム含有複合多孔体において、第一のセラミック材料及び第二のセラミック材料はともに90%以上100%未満の気孔率を有することを特徴とするリン酸カルシウム含有複合多孔体。
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