JP3153942B2 - 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法 - Google Patents

海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法

Info

Publication number
JP3153942B2
JP3153942B2 JP26606592A JP26606592A JP3153942B2 JP 3153942 B2 JP3153942 B2 JP 3153942B2 JP 26606592 A JP26606592 A JP 26606592A JP 26606592 A JP26606592 A JP 26606592A JP 3153942 B2 JP3153942 B2 JP 3153942B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substance
porous fiber
polyamide
solution
spinning
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP26606592A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06116810A (ja
Inventor
良一 古川
克彦 井上
Original Assignee
株式会社トーメン
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社トーメン filed Critical 株式会社トーメン
Priority to JP26606592A priority Critical patent/JP3153942B2/ja
Publication of JPH06116810A publication Critical patent/JPH06116810A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3153942B2 publication Critical patent/JP3153942B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湿式紡糸法による、海
綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来よ
り、多孔質繊維の製造に関する研究が盛んに行なわれて
いる。その中でも、繊維形成樹脂を適当な溶剤を用いて
溶解し、溶解液に物質Bを混合し、紡糸工程後に前記物
質Bを溶出(洗い出)して多数の細孔を形成させるとい
った方法が知られている。
【0003】しかしこの方法は、前述したように、物質
Bを溶出させる必要があるために、湿式紡糸法(溶液紡
糸法)に頼らざるを得ない。したがって、従来より湿式
紡糸法により製造されているアクリル系繊維、レーヨン
繊維にあっては、既に多孔質化が報告されているものの
(特開昭57−89612号、特開昭57−82514
号公報参照)、湿式紡糸法とは根本的に異なる溶融紡糸
法により専ら製造されているポリアミド樹脂からなる繊
維にあっては、物質Bの洗い出しによる多孔質化は不可
能とされていた。
【0004】本発明者らは、従来より専ら溶融紡糸法に
より製造されているポリアミド樹脂繊維にあっても多孔
質化できないものかと鋭意検討を重ねた結果、前記物質
Bとしてタンパク質、あるいはこれの加水分解物などの
特定の溶出性物質を用いるとともに繊維樹脂の溶剤とし
て極性溶液を用い、また前記物質Bを溶解し得る溶液か
らなる凝固浴を用いることで可能となることを見い出
し、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用】本発明の海綿構造
を持つ多孔質繊維の製造方法は、タンパク質、タンパク
質の加水分解物、アミノ酸および水溶性ビニル系ポリマ
ーからなる群より選ばれた溶出性物質の少なくとも1種
とポリアミド樹脂とを極性溶剤により溶解せしめた溶解
液を紡糸原液となし、前記溶出性物質を溶解し得る溶液
を含む凝固浴を用いて紡糸することを特徴とする方法で
ある。
【0006】本発明に使用し得るポリアミド樹脂として
は特に限定はなく、例えば、ポリアミド6−6(ポリヘ
キサメチレンアジパミド)、ポリアミド6(ポリカプロ
ラクタム)、ポリアミド11(ポリウンデカナミド)、
ポリアミド12(ポリラウロラクタム)、その他のポリ
アミド樹脂が挙げられる。
【0007】本発明で使用し得る極性溶剤としては、使
用するポリアミド樹脂を溶かし得ると同時に、前記溶出
性物質をも溶かし得るものであれば特に限定はなく、例
えばギ酸、酢酸、硝酸、ジメチルホルムアルデヒド(D
MF)等を、水あるいは適当な有機溶媒に溶かした溶液
が挙げられる。また、その溶液の濃度は、90%以上で
あることが好ましく、95%以上であることがさらに好
ましい。濃度90%未満のものを使用すれば、樹脂を溶
解するに要する処理時間が長くなるという問題が生じ
る。なお、前記樹脂を溶解する際にあっては、高温下で
行なうことが、処理時間の短縮につながるが、樹脂の結
晶化度が高くなり繊維としての物性が低下してしまうお
それがあるので、溶解時の温度は、むやみに上げない方
がよい。溶解時の温度の好ましい範囲としては、45〜
95℃である。
【0008】ポリアミド樹脂を溶解するに際し、溶剤を
どの程度使用するかは、前記ポリアミド樹脂の分子量に
よっても異なるので一概には言えないが、およそのとこ
ろポリアミド樹脂100重量部(以下、単に「部」とい
う)に対して200〜2,000部である。溶剤を多く
使用しすぎると、溶解液の粘度が高くなり過ぎて、繊維
状とならない場合があり、また少なすぎると、溶解液の
粘度が低くなり、後工程で行なう繊維化が困難になる。
【0009】一般的に、L−α−アミノ酸のカルボキシ
ル基とアミノ基との間で脱水することにより重縮合して
形成するポリペプチド鎖から構成されている分子のうち
で、その分子量が5、000以上のものをタンパク質と
呼んでいる(東京化学同人(株)発行の化学大辞典、第
1382頁参照)。ここでいうタンパク質の概念もこれ
に従うことにする。したがって、非常に大きな分子量を
持つタンパク質を加水分解して得た分解物であっても、
その分子量が5,000以上の場合、本発明ではタンパ
ク質と呼ぶすることにする。
【0010】本発明で使用し得るタンパク質の具体例と
しては、前記ポリアミド樹脂を溶解せしめる溶剤に可溶
なものであるという以外特に限定はなく、ゼラチン、ケ
ラチン、シルクフィブロイン、卵白、大豆タンパクなど
が挙げられる。
【0011】また、溶出性物質として前記タンパク質の
加水分解物(分子量5,000未満)の使用も本発明を
妨げるものではない。ここでいう加水分解物とは、ペプ
チド等の部分加水分解物のみならず、アミノ酸単体程度
まで完全に加水分解したものも含まれる。この場合、数
種のアミノ酸が含まれたアミノ酸混合物を使用すること
になる。また、公知の方法により製造された1種類のア
ミノ酸を溶出性物質として使用することもできる。前記
アミノ酸としては、グリシン、ロイシン、バリン、リジ
ン、アルギニン、グルタミン酸等が挙げられるが、これ
によって限定されるものではない。
【0012】水溶性ビニル系ポリマーを溶出性物質とし
て使用することもできる。水溶性ビニル系ポリマーとし
ては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリアリルアミンなどが挙げられる。
【0013】前記ポリアミド樹脂と前記溶出性物質との
配合割合については、前記ポリアミド樹脂の100部に
対して、1〜90部であることが好ましく、20〜80
部であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂100
部に対する重量が1部未満であれば、細孔を形成させる
という点に関しては特に問題はないが、その総容積が少
ないものとなり、多孔質繊維としての機能性に乏しくな
る。また90部を超えると、繊維としての強度、延伸性
を有する多孔質繊維の製造が困難となる。
【0014】本発明における、ポリアミド樹脂の分子量
と前記溶出性物質の分子量との比率、すなわち、(ポリ
アミド樹脂の分子量):(溶出性物質の分子量)が1,
000:1〜0.1:1であることが好ましい。溶出性
物質の分子量1に対してポリアミド樹脂の分子量が0.
1未満の場合、溶出性物質の自己会合性質に支障をきた
し、多孔質繊維の製造が困難となる。また、溶出性物質
の分子量1に対してポリアミド樹脂の分子量が1,00
0を超える場合、細孔を形成させるという点に関しては
特に問題はないが、このような、分子量に大きな開きの
ある原料の入手が困難であり、また経済的不利を招くと
いうこともさることながら、極性溶剤に対する溶解性に
問題が生じる。
【0015】また、水溶性ビニル系ポリマーを使用する
場合の該ポリマーの分子量と配合量としては、1,00
0〜10,000(分子量)であることが好ましく(ポ
リアミド樹脂の分子量との程度の差が大きいほど多孔質
化が容易となる)、ポリアミド樹脂100部に対して前
記水溶性ビニル系ポリマーを1〜90部配合することが
好ましく、10〜50部配合することがさらに好まし
い。前記配合量が10部未満であると、配合したことの
効果が充分に得られない場合があり、50部を超える
と、ポリアミド樹脂中に残存する可能性が高くなり、多
孔質繊維の形成が困難になる場合がある。
【0016】ポリアミド樹脂が溶解してなる溶解液にタ
ンパク質などの溶出性物質を添加し、あるいはポリアミ
ド樹脂と溶出性物質とを一緒に溶解して、該溶出性物質
を均一に分散溶解させて紡糸原液を得るわけであるが、
このときの分散溶解手段としては、超音波分散機、ホモ
ジナイザー、ローラーミルなど、従来公知の分散装置を
用いればよい。
【0017】凝固槽内に入れておく、溶出性物質を溶出
させるための溶液としては特に限定はないが、その具体
例の好適なものの一つとしてアルカリ水溶液が挙げられ
る。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウムなどの0.01N〜0.5Nの水溶液が挙げ
られる。
【0018】ポリアミド樹脂および溶出性物質を酸性溶
剤で溶解せしめた場合、上記したように溶出性物質を溶
解させる溶液としてアルカリ水溶液を用いれば、凝固浴
中で前記酸性溶剤を中和することができるので、後工程
であえて中和処理する必要がなくなり好ましい。
【0019】凝固浴槽内では、20℃〜60℃の範囲で
ほぼ一定の温度に保たれていることが好ましい。20℃
未満では、再生、すなわち紡糸原液が凝固浴槽内で凝固
せず、繊維化が困難となる。60℃を超えると、繊維の
結晶化度が高くなり、糸むらが起こるという問題があ
る。この温度のさらに好ましい範囲としては、30〜4
5℃である。
【0020】前記した紡糸原液を紡糸口金の細孔を介
し、例えばアルカリ水溶液を含む凝固浴中に押し出す
と、紡糸原液に含まれるポリアミド樹脂が凝固して繊維
となる。同時に、前記紡糸原液に含まれる溶出性物質
が、前記凝固浴に含まれる水溶液中に溶出される。な
お、湿式紡糸を行なうに際して用いる装置(紡糸口金、
凝固浴などを備えた紡糸装置)は、従来より用いられて
いるものを使用することができる。なお、前記紡糸口金
の細孔の孔径としては特に限定はない。
【0021】次いで、得られた繊維状のものを、常法に
従って、水、温水あるいは熱水中で洗浄し、延伸処理、
乾燥処理を行なう。なお、延伸は、2段階以上で行なう
ことが好ましい。
【0022】本発明において、ポリアミド樹脂と、溶出
性物質(例えばゼラチンあるいはその部分加水分解物)
とを同一の溶剤(例えばギ酸)にて均一に溶解させたの
で、溶解液中にてポリアミド樹脂と溶出性物質とが海島
構造を形成している。この構造を保持した状態で、凝固
浴槽で繊維化するため、海島構造を有した繊維が形成さ
れ、同時に成分の一つである溶出性物質が凝固浴槽内に
溶出されるので、容易に海綿状の多孔質繊維が製造でき
る。
【0023】特に、溶出性物質としてタンパク質、タン
パク質の加水分解物、アミノ酸を使用した場合、天然繊
維が持つ独特の風合い、吸放湿性、保温性、軽量さ、を
兼ねそろえた合成繊維の製造が可能となる。これは、前
記した溶出性物質が極めて高い溶出性を有しているとい
う性質、言い換えれば繊維中に残存する溶出性物質が極
めて少なくなるということに一部係わっているものと推
測される。
【0024】本発明の製造方法により、孔径0.05〜
20μmの細孔が形成した海綿構造を有する多孔質繊維
が得られる。また、得られた多孔質繊維を、例えば吸着
性素材(フィルター素材)、機能性素材、吸放湿性編織
物素材、保温性編織物素材として使用することができ
る。
【0025】なお、紡糸口金(20)の形状を変えること
により、海綿構造を持つフィルム状、シート状の多孔質
体を得ることもできる。
【0026】また、溶出性物質として上記以外に、特定
の無機物も使用可能である。前記無機物の具体例として
は、リン酸ナトリウム、塩化リチウム、硫酸アンモニウ
ム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。すなわち、本
発明を実施するに当たり、例えばタンパク質を使用する
代わりに、前記した無機物を用いても多孔質繊維の製造
が可能となる。
【0027】さらに、繊維形成樹脂として、ポリアミド
樹脂以外に、ポリエステル、ポリプロピレンも使用し得
る。すなわち、本発明を実施するに当たり、ポリアミド
樹脂を用いる代わりに、ポリエステル、あるいはポリプ
ロピレンを用いれば、ポリエステルからなる、あるいは
ポリプロピレンからなる多孔質繊維の製造が可能とな
る。
【0028】
【実施例】以下、本発明の一実施例を示すが、本発明は
これによって限定されるものではない。
【0029】まず、本発明を実施するに際して使用する
湿性紡糸用装置を、図1〜図3について説明する。
【0030】図1は、湿式紡糸用装置(10)の全体を示
すものである。この湿式紡糸用装置(10)は、大きく分
けて、紡糸部(12)と、凝固部(14)と、巻取り部(1
6)とからなっている。
【0031】前記紡糸部(12)は、図2に示すように、
内部に充填した液を一定の温度に保つように構成されて
なる定温容器(18)と、該定温容器(18)の下端部に取
り付けられる紡糸口金(20)を備えている。前記紡糸口
金(20)には、外側にゆくに従って先細形状をなす貫通
小孔(22)が設けられている。なお、符号(24)はリン
グ状のゴムパッキングであり、符号(26)は前記ゴムパ
ッキング(24)と紡糸口金(20)とを、前記定温容器
(18)と一体的に連結するためのビス止式連結部材であ
る。
【0032】符号(30)は、前記凝固部(14)を構成す
る細長の凝固槽であり、一本のチューブ(32)が槽中を
通っている。このチューブ(32)の中に一定の温度の媒
液を流し通すことにより、前記凝固槽(30)に充填され
る水溶液の温度を一定の温度に保つことができる。
【0033】前記巻取り部(16)は、図3に示すよう
に、駆動源となるモーター(34)を備えてなり、その出
力軸(36)が前記凝固槽(30)の長手方向に対して直交
する方向に延びるように配置されている。符号(38)
は、前記出力軸(36)に嵌め合わされてなる円柱状の回
転体であり、前記紡糸口金(20)から出た紡糸工程後の
繊維は、この回転体(38)に巻き取られることになる。
【0034】実施例1(タンパク質を溶出性物質として使用した例) 三角フラスコに入れた濃度99%のギ酸(和光純薬工業
(株)製)溶液18ccに、ポリアミド6−6(ユニチ
カ(株)製、ナイロン6−6(分子量41,000)、
A153 P−0118、lotNo.008−41
9)4gを投入し、90℃で60分撹拌しながらポリア
ミド6−6の全量を溶解させた。
【0035】この溶解液に、溶出性物質として高分子ゼ
ラチン(ニッピゼラチン(株)製、S−692、分子量
75,000)0.8gを添加し、60℃で2〜3分撹
拌しながらゼラチンを溶解させた。この溶液を含むフラ
スコを、超音波洗浄器(BRANSON(株)製、22
00)に入れて、溶液の均一分散を行なった(液温40
〜45℃、3〜5分間)。
【0036】このようにして調整した紡糸原液を、前記
湿式紡糸用装置(10)における定温容器(18)内に入れ
るとともに、この紡糸原液の温度を40℃に保った。
【0037】一方、凝固槽(30)(長さ1m、幅12c
m、深さ5cm)内に0.05Nの水酸化ナトリウム水
溶液を入れ、恒温装置(島津製作所(株)、WATER
BATH CONTROLLER SBAC−70)
を用いて、前記水酸化ナトリウム水溶液の温度を35℃
に保った。
【0038】紡糸原液が充填されてなる定温容器(18)
を、該定温容器(18)の下端部に取り付けられている紡
糸口金(20)が前記凝固槽(30)内の水溶液中に完全に
沈み込むように配し、その後、定温容器(18)内に窒素
を封入しながら、湿式紡糸を行なった。
【0039】前記紡糸口金(20)の貫通小孔(22)から
押し出されてきた繊維状物の先端をピンセットでつま
み、直径6cmの回転体(38)の周面に取り付けた。こ
の状態でモーター(34)を回し続け、押し出されてくる
繊維状物の巻き取りを連続的に行なった(回転体(38)
の回転数;22rpm)。
【0040】前記繊維状物は、凝固槽(30)内のアルカ
リ溶液により、再生、凝固がなされ、ポリアミド6−6
を溶解させるために加えたギ酸の中和、及びゼラチンの
溶出が行なわれる。
【0041】紡糸工程終了後、常法に従って、水洗処
理、乾燥処理を行なって、ポリアミドからなる多孔質繊
維(未延伸)を得た。得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真を図4に示す。
【0042】図4から明らかなように、得られたポリア
ミド繊維に多数の細孔が形成していた。この多孔質繊維
において形成した細孔の孔径は2〜8μmであった。
【0043】なお、紡糸原液は、凝固槽(30)に紡出さ
れた後に延伸処理されるわけであるが、前記回転体(3
8)に巻き取ったあとに行なってもよいし、前記凝固槽
(30)を通過後において、第2次延伸工程を行なうよう
にしてもよい。
【0044】実施例2(タンパク質の部分加水分解物を
溶出性物質として使用した例1) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
て高分子ゼラチンの部分加水分解物(ニッピゼラチン
(株)製、PA−10(分子量1,000))を1g使
用した、という以外は実施例1と同様にしてポリアミド
繊維の製造を行なった。その結果、海綿構造を持つポリ
アミドからなる多孔質繊維が得られたことが電子顕微鏡
により確認できた(図5参照)。この多孔質繊維におい
て形成した細孔の孔径は0.2〜1.2μmであった。
【0045】実施例3(タンパク質の部分加水分解物を
溶出性物質として使用した例2) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てシルクフィブロインの部分加水分解物(サンオリエン
ト化学(株)製、SPS、分子量500)1gを使用し
た、という以外は実施例1と同様にして繊維の製造を行
った。その結果、海綿構造を持つポリアミドからなる多
孔質繊維が得られたことが電子顕微鏡により確認できた
(図6参照)。この多孔質繊維において形成した細孔の
孔径は1.3〜9μmであった。
【0046】実施例4(タンパク質の加水分解物を溶出
性物質として使用した例) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てケラチンをアミノ酸単体程度にまで分解した加水分解
物(サンオリエント化学(株)製、HP、分子量250
〜300)を添加した、という以外は、実施例1と同様
にして繊維の製造を行った。その結果、海綿構造を持つ
ポリアミドからなる多孔質繊維が得られたことが電子顕
微鏡により確認できた(図7参照)。この多孔質繊維に
おいて形成した細孔の孔径は0.5〜2.5μmであっ
た。
【0047】実施例5〜8(タンパク質の部分加水分解
物を溶出性物質として使用した例3〜6) 樹脂原料としてポリアミド6−6を用いる代わりに、ポ
リアミド6(ユニチカ(株)製、ナイロン6(分子量1
6,000)、A1030BRL)を用い、実施例2で
使用した溶出性物質の配合割合を下記[表1]に示す割
合にした、という以外は実施例1と同様に操作し、多孔
質ポリアミド繊維の製造を行なった。
【0048】紡糸後に水洗(水の温度25℃、処理時間
18分)、あるいは熱水処理(湯の温度60℃、処理時
間12分)を行ない、のち乾燥させた。
【0049】乾燥後の繊維を電子顕微鏡で確認すれば、
海綿構造を持つ多孔質繊維となっていることが分かった
(図8〜11参照)。
【0050】
【表1】
【0051】実施例9(水溶性ビニル系ポリマーを溶出
性物質として使用した例1) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てポリビニルアルコール(分子量2,200)を添加し
た、という以外は、実施例1と同様にして繊維の製造を
行った。その結果、海綿構造を持つポリアミドからなる
多孔質繊維が得られたことが電子顕微鏡により確認でき
た(図12参照)。この多孔質繊維において形成した細
孔の孔径は1.3〜4μmであった。
【0052】実施例10(水溶性ビニル系ポリマーを溶
出性物質として使用した例2) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てポリエチレングリコール(分子量3,000)を添加
した、という以外は、実施例1と同様にして繊維の製造
を行った。その結果、海綿構造を持つポリアミドからな
る多孔質繊維が得られたことが電子顕微鏡により確認で
きた(図13参照)。この多孔質繊維において形成した
細孔の孔径は0.2〜1.7μmであった。
【0053】実施例11(アミノ酸を溶出性物質として
使用した例1) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てグリシン(分子量75)1gを添加した、という以外
は、実施例1と同様にして繊維の製造を行った。その結
果、海綿構造を持つポリアミドからなる多孔質繊維が得
られたことが電子顕微鏡により確認できた(図14参
照)。この多孔質繊維において形成した細孔の孔径は
1.3〜2.5μmであった。
【0054】実施例12(アミノ酸を溶出性物質として
使用した例2) ポリアミド6−6の配合量を2gとし、溶出性物質とし
てグルタミン酸(分子量147)1gを添加した、とい
う以外は、実施例1と同様にして繊維の製造を行った。
その結果、海綿構造を持つポリアミドからなる多孔質繊
維が得られたことが電子顕微鏡により確認できた(図1
5参照)。この多孔質繊維において形成した細孔の孔径
は0.4〜2.5μmであった。
【0055】
【発明の効果】本発明により、従来より専ら溶融紡糸法
で製造されているポリアミド繊維を、湿式紡糸法を用い
ることにより多数の細孔を有する海綿状構造を持つ繊維
とすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに際し用いた湿式紡糸装置の
一例を示す斜視図である。
【図2】湿式紡糸装置の一部(紡糸部)を示す断面図で
ある。
【図3】湿式紡糸装置の一部(巻取り部)を示す斜視図
である。
【図4】実施例1で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率380)である(端部をカットして断面形状を
みた)。図面下部における白線1本の長さは100μm
である。
【図5】実施例2で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率580)である(端部をカットして断面形状を
みた)。図面下部における白線1本の長さは100μm
である。
【図6】実施例3で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率750)である(端部をカットして断面形状を
みた)。図面下部における白線1本の長さは10μmで
ある。
【図7】実施例4で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率750)である(端部をカットして断面形状を
みた)。図面下部における白線1本の長さは10μmで
ある。
【図8】実施例5で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率270)である。図面下部における白線1本の
長さは100μmである。
【図9】実施例6で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡写
真(倍率580)である。
【図10】実施例7で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率580)である。図面下部における白線1本
の長さは100μmである。
【図11】実施例8で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率380)である。図面下部における白線1本
の長さは100μmである。
【図12】実施例9で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率750)である(端部をカットして断面形状
をみた)。図面下部における白線1本の長さは10μm
である。
【図13】実施例10で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率580)である(端部をカットして断面形状
をみた)。図面下部における白線1本の長さは100μ
mである。
【図14】実施例11で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率750)である(端部をカットして断面形状
をみた)。図面下部における白線1本の長さは10μm
である。
【図15】実施例12で得られた多孔質繊維の電子顕微鏡
写真(倍率750)である(端部をカットして断面形状
をみた)。図面下部における白線1本の長さは10μm
である。
【符号の説明】
10……湿式紡糸装置 12……紡糸部 14……凝固部 16……巻取り部 18……定温容器 20……紡糸口金 30……凝固槽 38……回転体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−89612(JP,A) 特開 昭57−82514(JP,A) 特開 昭57−121618(JP,A) 特開 昭51−26320(JP,A) 特開 昭49−35617(JP,A) 特開 平2−175965(JP,A) 特公 昭37−6723(JP,B1) 特公 昭40−17082(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/60 321 D01F 6/90 301 D01F 6/90 311

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】タンパク質、タンパク質の加水分解物、ア
    ミノ酸および水溶性ビニル系ポリマーからなる群より選
    ばれた溶出性物質の少なくとも1種とポリアミド樹脂と
    を極性溶剤により溶解せしめた溶解液を紡糸原液とな
    し、前記溶出性物質を溶解し得る溶液を含む凝固浴を用
    いて紡糸することを特徴とする海綿構造を持つ多孔質繊
    維の製造方法。
  2. 【請求項2】前記極性溶剤が濃度90%以上の溶液であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の海綿構造を持つ多
    孔質繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】前記ポリアミド樹脂100重量部に対し
    て、前記溶出性物質を1〜90重量部用いることを特徴
    とする請求項1または2に記載の海綿構造を持つ多孔質
    繊維の製造方法。
JP26606592A 1992-10-05 1992-10-05 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法 Expired - Fee Related JP3153942B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP26606592A JP3153942B2 (ja) 1992-10-05 1992-10-05 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP26606592A JP3153942B2 (ja) 1992-10-05 1992-10-05 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06116810A JPH06116810A (ja) 1994-04-26
JP3153942B2 true JP3153942B2 (ja) 2001-04-09

Family

ID=17425885

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP26606592A Expired - Fee Related JP3153942B2 (ja) 1992-10-05 1992-10-05 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3153942B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010116994A1 (ja) 2009-04-06 2010-10-14 日立化成工業株式会社 シルクフィブロイン多孔質体の製造方法
JP7295943B2 (ja) * 2019-04-08 2023-06-21 旭化成メディカル株式会社 タンパク質含有溶液精製用ポリアミド媒体及びその製造方法
CN112063002B (zh) * 2020-09-07 2021-06-15 华南农业大学 一种米糠蛋白多孔材料及其应用

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06116810A (ja) 1994-04-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3027608B2 (ja) カイコフィブロインの繊維紡糸可能な溶液
JP4776297B2 (ja) セルロース/ゼラチン複合ビスコースレーヨンフィラメントの製造方法
EP0946798B1 (en) Dispersion spinning process for poly(tetrafluoroethylene) and related polymers
WO2010010817A1 (ja) 人工毛髪用繊維及びこれを使用した人工毛髪製品
AU2018351873B2 (en) Single alpha chain collagens
EP1896650A2 (en) Process for the production of high quality fibers from wheat proteins and products made from wheat protein fibers
JPH04310223A (ja) ポリフッ化ビニリデン樹脂膜及びその製造方法
JP2010024586A (ja) 再生コラーゲン系人工毛髪用繊維
JP3153942B2 (ja) 海綿構造を持つ多孔質繊維の製造方法
CN114182381A (zh) 一种胶原纤维的制备方法、胶原纤维、应用
JP2015093857A (ja) 水不溶性シルクタンパク質
JP6408409B2 (ja) コラーゲン繊維の製造方法及び高濃度コラーゲン溶液の製造方法
JP3790720B2 (ja) 複合繊維
JP2008308780A (ja) 電気紡糸したキトサンおよびセルロース極細繊維
Ramirez et al. Assessing the influence of silkworm cocoon’s age on the physicochemical properties of silk fibroin-based materials
Sanchez Ramirez et al. Keratin Processing
JP2006183231A (ja) 複合繊維
JPS6256764B2 (ja)
JP3130982B2 (ja) 獣毛蛋白質を結合した重合体繊維
KR100496242B1 (ko) 가교 키토산섬유 및 제조방법.
WO2001045917A1 (en) Tubular films formed from cellulose/protein blends
KR102447380B1 (ko) 견사의 가공 방법 및 이를 이용하여 개질된 견사
JP2002167401A (ja) ケラチンセルロース複合再生物の製造方法およびケラチン含有繊維製品の再生方法
JP2671226B2 (ja) 保存安定性に優れた絹フィブロイン水溶液及びその製造法
CN112280058A (zh) 一种原纤化丝素壳聚糖复合材料的制备方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees