JP2671226B2 - 保存安定性に優れた絹フィブロイン水溶液及びその製造法 - Google Patents
保存安定性に優れた絹フィブロイン水溶液及びその製造法Info
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Description
ブロイン水溶液及びその製造法に係り、特に化粧料基剤
や食品基剤さらに産業資材用基剤に好適な絹フィブロイ
ン水溶液及びその製造法に関する。
湿性、皮膚や毛髪に対する優れた親和性や保護作用等の
特性を有しているために、従来から絹フィブロイン粉末
がメーキャップ化粧料基剤等の用途に使用されてきた。
として、特公昭40-24920号公報、特公昭26-4947号公報
並びに特公昭58-38449号公報には、絹糸をそのまま或い
は化学的処理で脆化させたものを粉砕した繊維状の絹フ
ィブロインパウダー、絹フィブロインを適当な濃厚中性
塩等に溶解透析し得られたコロイド溶液を噴霧乾燥して
製造したゲル状絹フィブロインを粉砕した粒状の絹フィ
ブロインパウダー、並びに絹フィブロインを適当な無機
中性塩或いはアルカリ性水溶液に溶解後透析し或いはし
ないで得られたコロイド溶液から、凝固性塩の添加、空
気吹込み、等電点凝固、超音波処理或いは高ずり変形速
度でこの撹拌等で絹フィブロインを凝固析出せしめ、脱
水、乾燥後粉砕した微粉末状絹フィブロインが開示され
ている。
繊維を塩酸、硫酸、リン酸等の強酸水溶液中で煮沸分解
し、絹繊維の分解で生成する混合アミノ酸を主成分とす
る粉末を得る方法、特公昭42-17030号公報に記載の様
に、絹フィブロインを高濃度リン酸で処理して得られる
溶液にアセトン等の特定の有機溶媒よりなる凝固剤を混
合して部分分解物を析出せしめ、再びこれを水に分散し
た後、蛋白分解酵素を作用させ、次いで前記凝固剤を用
いて沈澱を析出させる方法が知られている。
するものであるため、化粧用基剤として特に有用という
ものではない。又、後者の場合、本質的に固液反応であ
るため分子量分布は広くならざるを得ず、又平均分子量
を低くすればアミノ酸の生成量が必然的に増加し凝固剤
で析出し難くなる等のため品質、コスト両面に問題があ
り、操作も煩雑である。
ミン水溶液、水酸化銅−アンモニア水溶液、水酸化銅−
アルカリ−グリセリン水溶液、臭化リチウム水溶液、カ
ルシウム或いはマグネシウム又は亜鉛の塩酸塩或いは硝
酸塩又はチオシアン酸塩の水溶液、チオシアン酸ナトリ
ウム水溶液よりなる群から選ばれた少なくとも一種の溶
媒に精錬絹原料を溶解後透析することを特徴とする絹フ
ィブロイン水溶液の製造法が提案されている。
ブロインの化粧料用基剤として有用な蛋白質構造を損傷
することが無く、又透析を を満足する多層膜構造物又は中空糸束構造物を使用して
いる為、透明で均一な高品質の水溶液を安定して製造す
ることができる。
の品質安定性はやや不充分であって、種々の問題点や使
用上の制約がある。例えば1カ月間以内の保存で濃褐色
に変色したり、濁りが生じたり、著しい場合はゲル状物
が大量に沈澱する。
保存したり、製造後短期間に消費したり、製品への配合
量を少量に限定したりしているのが実情であって、根本
的な解決策は未だ見出されていない。
質の改良について鋭意研究した結果、本発明を完成した
ものである。本発明の目的は、適度な吸湿性や保湿性等
の蛋白質特有の特性を持ち、しかも長期間の保存安定性
に優れた絹フィブロイン水溶液を提供するにある。他の
目的は、斯る水溶液を工業的容易且つ安価に製造する方
法を提供するにある。
度で0.5〜10%(重量)、防カビ・防腐剤を溶液濃度で
0.02〜1.0%(重量)、さらに必要に応じて高極性有機
溶媒を含有する均一な溶液状態の保存安定性に優れた絹
フィブロイン水溶液に係わるものであり、本発明方法は
水系媒体に溶解して製造した絹フィブロイン水溶液に、
あらかじめ溶解した水溶性異種蛋白質水溶液を溶液濃度
で0.5〜10%(重量)、防カビ・防腐剤を0.02〜1.0%
(重量)、さらに必要に応じて高極性有機溶媒を混合す
ることを特徴とする。
白質の添加効果は顕著であって、水溶液を白濁やゲル状
物の発生することなく1ケ月以上安定に保存することが
できる。
有効であって、特に平均量体数600を上廻る場合に顕著
な効果がある(参考資料、特開昭63-92671号公報)。
糸、まゆ屑、生糸屑、ビス、揚り綿、絹布屑、ブーレッ
ト等を常法に従い必要に応じて活性剤の存在下、温水中
で又は酵素の存在下温水中でセリシンを除去し乾燥した
ものを使用する。
レンジアミン水溶液、水酸化銅−アンモニウア水溶液
(シュワイサー試薬)、水酸化銅−アルカリ−グリセリ
ン水溶液(ローエ試薬)、臭化リチウム水溶液、カルシ
ウム或いはマグネシウム又は亜鉛の塩酸塩或いは硝酸塩
又はチオシアン酸塩の水溶液、チオシアン酸ナトリウム
水溶液が挙げられるが、コスト及び使用上の点からカル
シウム又はマグネシウムの塩酸塩又は硝酸塩が好まし
い。又、これ等の水溶液の濃度は使用する溶媒の種類、
温度等により異なるが、金属塩等の濃度は通常10〜80%
(重量)、好ましくは20〜40%(重量)である。80%
(重量)以上でも溶解するが、生成する絹フィブロイン
水溶液に実質的な差異が無く経済性の点で問題である。
温度60〜115℃、好ましくは70〜110℃でニーダの如き装
置内で均一に溶解するが、液比は通常2〜50、好ましく
は3〜30である。
ロイン水溶液を得るためには、引続いて透析する。透析
はセロファン膜に代表される透析膜や中空繊維を使用し
た透析器を用い、前記の塩類等をほぼ完全に除去する。
この場合目的とする絹フィブロインの分子量分布を極力
狭くするためと、α構造のペプチドの割合を50重量%以
上に調整するためには、透析量と透析膜面積を特定する
必要がある。即ち下記式を満足する多層膜構造物又は中
空糸集束構造物を使用して脱塩を行なう。
の内容積を示す。
いため透析器中での滞留時間が長くなり、得られるフィ
ブロイン水溶液は、既に腐敗が始まっている事が多い。
その場合、フィブロイン蛋白は腐敗による変性で水不溶
(β構造)化し、これを再び冷水易溶性化することは困
難である。
値は30以上が好ましく、50以上が特に好ましい。該条件
を満足させる為には、例えば中空糸集束構造物の場合中
空糸の直径を4mm以下にする必要がある。
0.003〜0.06%(重量)と極めて少なく、特に中空糸の
径が0.2mm程度になると となり透析器中での滞留時間数10分で、これを達成する
ことができ、これより極めて高品質の絹フィブロイン水
溶液を得ることができる。
通常1〜30%(重量)、好ましくは2〜20%(重量)
で、必要に応じて濃縮される。1%(重量)以下では後
工程で濃縮の必要があり不経済であるし、30%(重量)
以上では粘性が高くなって反応や操作に無理がある。
ようとする場合、これを酵素或いは酸又はアルカリを用
いて加水分解を行なう。
存安定性を付与するために、水溶性異種蛋白質の1種又
は混合物を溶液濃度で0.5〜10%(重量)混合する。水
溶性異種蛋白質としては、特に限定されるものでは無い
が、特にアテロコラーゲン、加水分解コラーゲン(例、
プロモイスW−4000、成和化成)、ゼラチン、カゼイン
が効果及び経済性の点で好ましい。
質を混合する場合、該異種蛋白質はあらかじめ水溶液の
形で混合するのが望ましい。異種蛋白質を粉体で混合し
た場合、これ等を絹フィブロイン水溶液に均一に溶解す
るのはかなり困難である。異種蛋白質の混合量は溶液濃
度で0.5〜10%(重量)、好ましくは1.0〜5.0%(重
量)が適当である。0.5%(重量)以下では添加効果が
実質的に認められないし、10%(重量)を越える混合は
粘性が高くなって均一な混合が難しく、効果に有意差が
ない。又、全蛋白質中の絹フィブロイン組成が低くなり
好ましくない。
の防止剤として異種蛋白質の混合が効果的である理由は
明白には解らないが、異種蛋白質の保護コロイド的な作
用及び/又は絹フィブロイン以上に親水性の異種蛋白質
の介在で絹フィブロイン分子の配向が乱されることが推
定される。
付与するために防カビ・防腐剤を添加する。
いが、絹フィブロイン水溶液の用途が化粧品・食品の場
合、食品添加物用の物が好ましい。具体的には安息香
酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸、及びこ
れ等の塩、P−オキシ安息香酸エステル等である。
は日本薬局方及び化粧品原料基準等で規定されるし、他
の用途の場合も効果と経済性の点で溶液濃度で0.02〜1.
0%(重量)が適当である。0.02(重量)以下の場合絹
フィブロイン水溶液に対して防カビ・防腐効果はほとん
ど無い。
有機溶媒例えばポリオールや次に述べる高極性有機溶媒
の溶液にして混合することが好ましい(参照、特願昭63
-265166号)。
マー、さらにはポリビニルアルコールであって、具体的
にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3
−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グ
リセリル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、ポリグリセリンである。これ等ポリオールは
本質的には絹フィブロイン水溶液のゲル化剤である。従
って、これを多量に混合するのは該水溶液の安定性を低
くすることになり本発明の目的に逆行することになる。
従って、ポリオールの混合量は溶液濃度で0.10〜5.0%
(重量)が好ましい。
溶媒、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシ
ドを混合することで、絹フィブロイン水溶液の保存安定
性を顕著に改善することができ、6ケ月以上保存した場
合でも若干褐色に着色するのみで濁りや沈澱が発生する
ことがない。
0.5〜50%(重量)、より好ましくは2〜30%である。
0.5(重量)以下の場合、絹フィブロイン水溶液に対し
ての長期安定化効果はほとんど無いし、一方50%(重
量)以上の場合、むしろ水溶液を不安定化する傾向が認
められる。高極性有機溶媒が絹フィブロインと異種蛋白
質水溶液の保存安定化に効果のある理由は明白には分か
らないが、極性有機溶媒が蛋白質特に絹フィブロイン分
子の配向を阻害している事は考えられる。
液濃度は全て重量%である。
100部をマルセル石けん30部、水3000部の溶液で95〜98
℃において3時間撹拌精錬し、残膠を0.1%以下にまで
減少させ、水洗後80℃で熱風乾燥した。
して38重量%塩化カルシウム水溶液200部を調製して110
℃に加熱した。これに精練ずみの絹紡屑40部をニーダを
用いて5分間で撹拌しながら投入後、さらに30分間撹拌
し完全に溶解させた。
ース系中空糸を2000本束ね、これらの両端を中空穴を閉
塞することなく集束固定(シール)したホローファイバ
ー型の透析装置を用いて、前記溶解液を0.2l/時間の割
合で流入させて脱イオン水を用いて透析し、フィブロイ
ン水溶液を得た。該フィブロイン水溶液のフィブロイン
濃度は12重量%で、残留塩化カルシウムは0.001重量%
であった。
(重量)、1,3−ブタンジオールを1.0%(重量)、P−
オキシ安息香酸メチル、P−オキシ安息香酸ブチルを各
々0.15%(重量)混合した。防カビ・防腐剤は1,3−ブ
タンジオールに溶解して添加した。
にて充分洗浄した。該不溶性コラーゲン100部を水1000
部に懸濁され、これに0.2部のペプシン(耐酸性蛋白質
分解酵素)を混合し、希塩酸にてpH=2〜3に調整し撹
拌を続けた。該酵素反応を72時間続けると不溶性コラー
ゲンは、テロペプタイドとアテロコラーゲンの結合が分
解された水に溶解した。次いで、溶解液を濾過し、未溶
解物を濾別したのち、溶解液を希水酸化ナトリウム液で
pH=7〜8に調整しアテロコラーゲンのみを沈澱させ
た。これを分離し、1000部の水に混合後、希塩酸にてpH
3に調整し撹拌することでアテロコラーゲン水溶液を
得、これを減圧濃縮して20%の該水溶液を製造した。
第1表に示す濃度でアテロコラーゲンを溶解した。
観察した。その結果を第1表に示す。なお、各試料は1
時間/日開封し意識的に菌汚染させた。
は顕著であって、その状態はアテロコラーゲンを添加し
ない場合、絹フィブロイン水溶液は10日間の放置でゲル
化したのに対して、添加した場合1ケ月以上安定した水
溶液の状態を保ことができた。
ート化剤、防腐剤を混合した。一方、牛乳カゼインの温
水懸濁液に5%水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpH8.0
の20%(重量)カゼイン溶液を調製した。絹フィブロイ
ン水溶液を6等分し、これに第2表に示す濃度で上記20
%カゼイン水溶液を撹拌しながら加えた。その結果を第
2表に示す。
顕著であって、その状態は牛乳カゼインを添加しない場
合、絹フィブロイン水溶液は10日間の放置でゲル化した
のに対して、添加した場合1ケ月以上安定した水溶液の
状態を保つことができた。
量)での高極性有機溶媒の添加効果を試験した。高極性
有機溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)を使用
した。その結果を第3表に示す。
果は顕著なものがあり、溶液濃度で0.5%(重量)以上
の混合で絹フィブロイン水溶液の6ケ月後の保存安定性
に有意差が認められる。ただし50%を越える混合は絹フ
ィブロインのゲル化を促進し好ましくない。
を試験した。その結果を第4表に示す。
の混合が、絹フィブロイン水溶液の保存安定化に効果が
認められる(対比:比較例1及び3)。
での種々の高極性有機溶媒の添加効果を試験した。その
結果を第5表に示す。
果は特に顕著なものがあり、絹フィブロイン水溶液を6
ケ月以上安定に保存することができる(対比:本発明例
9)。
試験した。アテロコラーゲン濃度は3%で実施した。そ
の結果を第6表に示す。
の防カビ・防腐剤も適正な濃度での使用で絹フィブロイ
ン水溶液の保存安定化効果があり、絹フィブロイン水溶
液を1ケ月以上安定に保存することができる。
イン水溶液は、その添加された水溶性異種蛋白質、高極
性有機溶媒及び防カビ・防腐剤の効果で、長期間液の腐
敗、着色、濁り或いはゲル状物の発生を抑えた状態で保
存できる。
膜形成能が良く、吸湿性、保湿性が良好であり、さらに
皮膚に対する親和性や保護作用等に優れた特性を持って
おり、化粧料用基剤、医薬品、食品、カプセル剤、分析
用基剤、その他に有用である。
Claims (2)
- 【請求項1】水溶性異種蛋白質の1種又は混合物を溶液
濃度で0.5〜10%(重量)、防カビ・防腐剤を溶液濃度
で0.02〜1.0%(重量)、さらに必要に応じて高極性有
機溶媒を含有する均一な溶液状態の保存安定性に優れた
絹フィブロイン水溶液。 - 【請求項2】水系媒体に溶解して製造した絹フィブロイ
ン水溶液に、あらかじめ溶解した水溶性異種蛋白質水溶
液を溶液濃度で0.5〜10%(重量)、防カビ・防腐剤を
0.02〜1.0%(重量)、さらに必要に応じて高極性有機
溶媒を混合する均一な溶液状態の保存安定性に優れた絹
フィブロイン水溶液の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1102954A JP2671226B2 (ja) | 1989-04-21 | 1989-04-21 | 保存安定性に優れた絹フィブロイン水溶液及びその製造法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP1102954A JP2671226B2 (ja) | 1989-04-21 | 1989-04-21 | 保存安定性に優れた絹フィブロイン水溶液及びその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH02281079A JPH02281079A (ja) | 1990-11-16 |
JP2671226B2 true JP2671226B2 (ja) | 1997-10-29 |
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ID=14341202
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP (1) | JP2671226B2 (ja) |
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---|---|---|---|---|
JPH05186634A (ja) * | 1992-01-17 | 1993-07-27 | Bio Giken:Kk | 防黴性樹脂 |
-
1989
- 1989-04-21 JP JP1102954A patent/JP2671226B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH02281079A (ja) | 1990-11-16 |
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