JP5328077B2 - 低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法 - Google Patents

低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、魚介類由来のコラーゲンから得られるゼラチンのエンドトキシン含有量を低減し、かつゼラチン自体の変質を防止することを特徴とする低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
ゼラチンは生体適合性に優れるため、食品、化粧品、生体材料、医療用材料等として古くから利用されている。しかし、ゼラチン中に含まれるエンドトキシンが、場合によっては敗血症、敗血症性ショック、多臓器不全等の障害を引き起こすという報告がされており、特に注射剤、人工血管、人工心臓弁等の体内で使用される用途においては、ゼラチン中のエンドトキシン含有量を低減することが重要である。
ゼラチン中のエンドトキシンを除去する方法としては、たとえば250℃以上で30分以上の加熱を行なう乾熱法や、酸、アルカリによる加水分解等の方法が提案されている。
特許文献1には、医療用または生化学用の無菌でしかもエンドトキシンを実質的に含まないゼラチンを容易に製造する方法を提供することを目的とし、動物の組織を水酸化カルシウム液に浸漬して処理した後、当該処理液を除き、容器を変えずに引き続き無菌的に中和してpHを調整し、注射用水で洗い、さらに注射用水を加えてゼラチンを加熱抽出することを特徴とするゼラチンの製造方法が提案されている。
特許文献2には、エンドトキシンを十分に分解処理できるとともに、コラーゲンタンパク質自体の変性や分解は抑えることができることができ、しかも分解処理後のエンドトキシンが除去されたコラーゲンタンパク質を容易に分離回収できる方法として、塩基性のアルコールおよび/またはアセトン溶液中で、エンドトキシンを含むコラーゲンタンパク質を繊維化分散させた状態でエンドトキシンの分解処理を行なった後、分解処理後のコラーゲンタンパク質を分離回収することを特徴とする、コラーゲンタンパク質からのエンドトキシン除去方法が提案されている。
特許文献3には、被検試料中のエンドトキシンを選択的にかつ簡便に不活性化する方法として、被検試料を60〜140℃で少なくとも60分間加熱処理することにより行なうことを特徴とする、被検試料中のエンドトキシンの不活化方法が提案されている。
しかし、たとえば特許文献1〜3のような方法でエンドトキシンの不活性化を行なう場合、塩基性条件での処理や加熱処理を伴うため、処理中の加水分解によるコラーゲンタンパク質またはゼラチンの一次構造および/または二次構造の破壊を所望の程度避けることは困難である。すなわち、低エンドトキシン化工程においてゼラチンの分子構造を大きく破壊することなく、体内で使用可能な程度にエンドトキシン含有量が低減された低エンドトキシン化ゼラチンを得ることは未だ困難であるのが現状である。
特開2005−289841号公報 特開2004−300077号公報 特開昭63−296952号公報
本発明は上記の課題を解決し、エンドトキシン不活性化工程においてゼラチンの分子構造を大きく変化させることなく、体内で使用可能な程度にエンドトキシン含有量が低減された低エンドトキシン化ゼラチンを得るための製造方法の提供を目的とする。
本発明は、魚介類由来のコラーゲンから得られる低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法であって、コラーゲンを加熱してゼラチンに変性させるゼラチン化工程と、該ゼラチンを、pH5.0〜9.0の範囲内の環境下で加熱してゼラチン中のエンドトキシンを不活性化し、低エンドトキシン化ゼラチンを得るエンドトキシン不活性化工程とを含む、低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記のエンドトキシン不活性化工程における加熱が50〜100℃の範囲内で行なわれる低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記のコラーゲン中のエンドトキシンの含有量が0.05EU/mg以下である低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記の低エンドトキシン化ゼラチン中のエンドトキシンの含有量が0.03EU/mg以下である低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記のゼラチン化工程の前にアテロ化工程をさらに含む、低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記の低エンドトキシン化ゼラチンが、上記のコラーゲンの変性温度以下でゲル状態を示す低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記のエンドトキシン不活性化工程の後に、低エンドトキシン化ゼラチンをゲル粒子とする粒状化工程がさらに設けられる低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法に関する。
本発明の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法によれば、エンドトキシン不活性化工程においてゼラチンの分子構造を大きく変化させることなく、体内で使用可能な程度にエンドトキシン含有量が低減された低エンドトキシン化ゼラチンを得ることが可能となる。
本発明の製造方法は、コラーゲンを加熱してゼラチンに変性させるゼラチン化工程と、該ゼラチンを、pH5.0〜9.0の範囲内の環境下で加熱してゼラチン中のエンドトキシンを不活性化し、低エンドトキシン化ゼラチンを得るエンドトキシン不活性化工程とを含む。
本発明において低エンドトキシン化ゼラチンを得るための原料となるコラーゲンとしては、魚介類由来のコラーゲンを用いる。魚介類由来のコラーゲンはたとえば水産加工工程において発生する廃棄物から安価に得られる点でも好ましい。魚介類由来のコラーゲンの具体例としては、魚類、貝類、軟体水産動物、節足水産動物等におけるコラーゲン含有部位から抽出されるコラーゲンが挙げられる。このうち特に好ましいコラーゲンとしては、ヒラメ、タラ、マグロ、サメ、サケ等から得られるものが例示できる。
上記のような魚介類からは従来公知の方法で粗コラーゲンを抽出することができる。たとえばヒラメ、タラ、マグロ、サメ、サケ等の魚介類のコラーゲン含有部位をエタノール等の溶媒で洗浄した後、たとえばサラシ粉水溶液等の消毒液に浸漬した後水洗して、殺菌、洗浄を行ない、コラーゲンゲルを抽出する。このコラーゲンゲルにたとえば塩化ナトリウム等を加えて塩析を行ない、エタノール等の有機溶媒等で塩析物を洗浄して脂質の抽出除去を行なった後、ろ過回収、乾燥を行なって粗コラーゲンを得ることができる。
得られた粗コラーゲンは、たとえばクエン酸水溶液等の酸水溶液に溶解した後ゼラチン化工程に供されることができるが、該粗コラーゲンをゼラチン化の前にアテロ化することにより抗原部位を除去して精製することも好ましい。アテロ化はプロテアーゼ等を用いた反応により従来公知の方法で適宜行なうことができる。アテロ化工程を経ることによってより安全な低エンドトキシン化ゼラチンを得ることが可能である。
本発明においてゼラチン化されるコラーゲン中のエンドトキシンの含有量は、0.05EU/mg以下であることが好ましい。魚介類由来のコラーゲン中のエンドトキシンの含有量は比較的低いが、特に該含有量が0.05EU/mg以下である場合、本発明の製造方法により得られる低エンドトキシン化ゼラチン中のエンドトキシン含有量がより低減されるため好ましい。なお上記のコラーゲン中のエンドトキシンの含有量とは、ゼラチン化工程直前におけるコラーゲン、すなわちアテロ化等の精製工程を含む場合は精製後のコラーゲンの固形分におけるエンドトキシン含有量を意味する。なお、コラーゲンまたはゼラチンに含まれるエンドトキシンの含有量は、たとえば比濁時間分析法により測定することができる。
上記のような方法で抽出されたコラーゲンは、次にゼラチン化工程において加熱され、ゼラチンに変性される。加熱時のコラーゲンの状態は通常溶液状態とされ、溶媒としては、水、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸等の有機酸あるいは塩酸、リン酸等の無機酸が例示できる。また、pHの安定な緩衝液は溶媒として好ましく、具体的には、リン酸−リン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液等が例示できる。典型的には、水、塩酸、クエン酸を溶媒として溶液状態で加熱されることが好ましい。ゼラチン化工程における加熱条件は特に限定されるものではないが、たとえば40〜80℃で30〜360分間の加熱条件が採用され得る。
本発明において魚介類由来のコラーゲンからゼラチンを得る際には、上記のように、魚介類からコラーゲンを抽出し、該コラーゲンをさらにゼラチン化する方法の他、たとえば魚の皮を煮出して魚の体内のコラーゲンを直接ゼラチンして抽出する方法等、魚介類からゼラチンの状態で抽出する方法も採用され得る。しかし、着色、魚臭等の少ない高純度のゼラチンを得られるという点で、魚介類から抽出したコラーゲンをゼラチン化する方法が好ましく採用される。
なおゼラチン化工程により得られたゼラチンは、微生物の繁殖を防止する目的で直ちに冷却されることが好ましい。得られたゼラチンからは、たとえばフィルターろ過する方法により不純物を適宜除去する。
本発明においては、ゼラチン化工程により得られたゼラチンのうち分子量が5万以下である低分子量成分を除去する精製工程をさらに設けることが好ましい。低分子量成分を除去する方法としては、たとえば限外ろ過、塩析精製、透析、ゲルろ過クロマトグラフィー等が採用され得るが、典型的には限外ろ過が好ましく採用され得る。精製工程において分子量が5万以下である成分が除去されることにより、本発明により得られる低エンドトキシン化ゼラチンの物理的、化学的な均一性が良好になる他、比較的高分子量の成分により形成されることによる形態保持性の向上効果も得られる。
次に、上記で得られたゼラチンを、pH5.0〜9.0の範囲内の環境下で加熱してゼラチン中のエンドトキシンを不活性化し、低エンドトキシン化ゼラチンを得る(エンドトキシン不活性化工程)。すなわち本発明においては、エンドトキシンの不活性化を中性領域であるpH5.0〜9.0の範囲内で行なうことにより、ゼラチンの酸加水分解またはアルカリ加水分解による低分子量化を防止し、ゼラチン分子の劣化が抑制された低エンドトキシン化ゼラチンを得ることができる。加熱時のpHは、6.0以上、さらに6.5以上がより好ましく、また8.0以下、さらに7.5以下がより好ましい。
エンドトキシン不活性化工程は、たとえばpH5.0〜9.0の範囲内に調製した溶媒にゼラチンを浸漬した状態で加熱する方法等により行なわれる。典型的には、上記のゼラチン化工程で使用した溶媒を乾燥させずにそのまま使用することができるが、ゼラチン化工程の後で一度溶媒を除去した後エンドトキシン不活性化工程で再度溶媒に溶解させても構わない。
エンドトキシン不活性化工程における加熱温度および加熱時間は、原料であるコラーゲンの種類等に応じ、低エンドトキシン化ゼラチンの用途においてエンドトキシン濃度が十分に低減されるように設定されるが、典型的には、20℃以上で行なわれることが好ましく、特に50〜100℃の範囲内で行われることが好ましい。加熱温度が20℃以上、特に50℃以上である場合、エンドトキシンの不活性化が良好に進行してエンドトキシン含有量の低減効果が良好である。加熱温度はさらに好ましくは55℃以上に設定され得る。加熱温度が高く設定される場合には微生物の繁殖を防止する効果も得られる。一方加熱温度が100℃以下である場合、ゼラチン分子が熱劣化により低分子量化することで生じる形態保持性の低下や、分子量分布の増大による品質の不均一化を抑制し、均一性および形態保持性がより良好な低エンドトキシン化ゼラチンが得られる。加熱温度が80℃以下、さらに70℃以下とされる場合、得られる低エンドトキシン化ゼラチンをゲルとして使用する場合にゲル強度がより良好である点でより好ましい。またエンドトキシン不活性化工程における加熱時間はたとえば10分〜10時間の範囲内に設定されることができる。加熱時間は0.5時間以上であることがより好ましく、また2時間以下であることがより好ましい。加熱時間が10分以上、さらに0.5時間以上である場合エンドトキシン含有量の低減効果が良好に得られ、10時間以下、さらに2時間以下である場合、ゼラチン分子への加熱ダメージによるゼラチンの分子構造の変化や加熱時の水分の蒸発による濃度変化を良好に抑制できる。エンドトキシン不活性化工程を経て得られたゼラチンは凍結乾燥処理により分離回収される。
上記のような方法により、低エンドトキシン化ゼラチンが得られる。本発明の製造方法で得られた低エンドトキシン化ゼラチンは、溶液やゲルに調製されて使用されることができ、またたとえば凍結乾燥等を経て保存され、使用時には凍結乾燥物に溶媒を添加することによって適宜ゲルや溶液等の形態とすることもできる。
また本発明においては、エンドトキシン不活性化工程の後に、低エンドトキシン化ゼラチンをゲル粒子とする粒状化工程がさらに設けられることによって、低エンドトキシン化ゼラチンをゲル粒子として回収することもできる。該ゲル粒子は、たとえば生理活性成分を該ゲル粒子の内部に包含した徐放性の医療用材料等に対して好適に使用され得る。ゲル粒子の平均粒径は、好ましくは30〜150μmの範囲内、さらに80〜120μmの範囲内とすることができる。
本発明の製造方法により得られる低エンドトキシン化ゼラチンにおいては、エンドトキシン含有量がたとえば0.03EU/mg以下であることが好ましい。該エンドトキシン含有量が0.03EU/mg以下である場合、細胞内毒素であるエンドトキシンがほぼ完全に無害化され、該低エンドトキシン化ゼラチンを食品、化粧品、生体材料、医療用材料等の種々の用途に対して安全に使用することができる。
また、本発明において得られる低エンドトキシン化ゼラチンが、原料である魚介類由来のコラーゲンの変性温度以下でゲル状態を示す場合、該低エンドトキシン化ゼラチンが比較的密な3次元網目構造を有し、たとえば食品、化粧品、生体材料、医療用材料等に対して用いられた場合の形態保持性が特に良好であるため好ましい。なおゲル状態とは、低エンドトキシン化ゼラチンの3次元構造の内部に水等の液体成分を保持したまま固体状態を有している状態を意味する。本発明においては、エンドトキシン不活性化工程において特にゼラチンのランダムコイル構造が大きく破壊されずに良好に保持されている場合、原料のコラーゲンの変性温度以下でゲル状態を示すことができるため好ましい。最適なゲル化挙動は、目的とする低エンドトキシン化ゼラチンの用途によって異なるが、温度10℃以下でゲル状態を示すもの、さらに温度20℃以下でゲル状態を示すもの、さらに温度30℃以下でゲル状態を示すものは、たとえば食品、化粧品、生体材料、医療用材料等において好適に用いられる。たとえば、寒流魚類由来のコラーゲンの変性温度は10〜25℃程度であり、暖流魚由来のコラーゲンの変性温度は25〜40℃程度である。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜10)
<エンドトキシン含有量の測定>
実施例に係る製造工程におけるエンドトキシン含有量の測定は、和光純薬工業社製測定機トキシノメーターET2000/J(比濁時間測定法)」を使用して行なった。測定試薬は、リムルスESIIシングルテストを使用した。
<低エンドトキシン化ゼラチンの調製>
魚介類由来コラーゲンとして、サケ由来のコラーゲンを用いた。サケ皮をエタノールで洗浄し、クエン酸処理を行なった後、生成したゲル状物を回収し、これを塩析により精製した。さらにこれをエタノールで脱脂、精製後、真空乾燥して粗コラーゲンを得た。得られた粗コラーゲンの固形分中のエンドトキシン含有量を求めたところ0.05EU/mgであった。
得られた粗コラーゲン20.04gに、クエン酸3.2g、水1670gを加え、粗コラーゲンをクエン酸水溶液に溶解させた。これにタンパク質分解酵素0.2gを加え4℃にて48時間撹拌しながらアテロ化を行ない、アテロ化コラーゲンを得た。
上記で得られたアテロ化コラーゲンに水酸化ナトリウム5N水溶液を加え、pH=7.0まで中和した後、70℃で30分間加熱してゼラチン化を行ない(ゼラチン化工程)、アスピレータにて0.8μmのフィルターろ過を行なった。得られたろ液につき、限外ろ過膜にて精製を行なって分子量が5万以下の低分子量成分を除去した(精製工程)。得られたゼラチン溶液中のゼラチン濃度を窒素定量法によって求めたところ、0.83質量%であった。また、比濁時間分析法により、上述と同様の条件でゼラチン溶液中のエンドトキシン濃度を測定し、これをゼラチン固形分に換算したエンドトキシン濃度は0.04EU/mgであった。
上記で得たゼラチン溶液を表1に示す加温条件にて密封状態で加熱してエンドトキシンを不活性化させ(エンドトキシン不活性化工程)、低エンドトキシン化ゼラチンを得た。
各実施例の低エンドトキシン化工程における、加熱前、および、各加熱温度における0.5時間加熱後、1時間加熱後、2時間加熱後のエンドトキシン濃度を測定した結果を表1に示す。図1は、実施例1〜10のエンドトキシン不活性化工程における加熱時間とエンドトキシン含有量との関係について示す図である。
<電気泳動の評価>
実施例1,5〜8,10の低エンドトキシン化工程における分子量低下の程度を、バイオ・ラット社製の電気泳動装置「ミニプロティアンII」を用い、5〜10%ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動させた後、タンパク質のバンドをクマシーブリリアントブルーで染色し、可視化して評価した。実施例1の2時間加熱後、実施例5〜8の0.5時間、
1時間、2時間加熱後、実施例10の2時間加熱後のゼラチン、さらに、エンドトキシン不活性化工程の加熱前のゼラチンのそれぞれについてゲル電気泳動の目視評価を行なったところ、分子量90〜250kDa程度に相当する高分子量成分のバンドは上記のゼラチンのいずれにおいても残存していた。そこで、該バンドよりも低分子量成分側に、エンドトキシン不活性化工程の加熱前のゼラチンでは見られなかったバンドが観察されたものを低分子量成分の生成有り、このようなバンドが観察されなかったものを低分子量成分の生成無しと評価した。結果を表1に示す。図2は、実施例5〜8のエンドトキシン不活性化工程における0.5時間加熱後のゼラチンの電気泳動を示す図であり、図3は、実施例5〜8のエンドトキシン不活性化工程における1時間加熱後および2時間加熱後のそれぞれのゼラチンの電気泳動を示す図である。なお図2,3において示される数字は各実施例における加熱温度であり、エンドトキシン不活性化工程における加熱前のゼラチンの電気泳動は図3において加熱前として示されている。
<低エンドトキシン化ゼラチンの目視外観評価>
実施例1,5〜8,10において得られた低エンドトキシン化ゼラチンの0.8質量%水溶液をそれぞれ5gずつ、容量15ccの遠沈管に入れて閉栓し、栓を上側にして4℃で24時間冷却した後、栓を下側に反転させた時の低エンドトキシン化ゼラチンの流動挙動を目視で観察して、4℃における低エンドトキシン化ゼラチンについての1回目の外観評価を行なった。また、1回目の外観評価でゲル状態を示したものについては、遠沈管内の低エンドトキシン化ゼラチンをボルテックスミキサーで撹拌し、栓を上側にして再度4℃で24時間冷却した後、栓を下側に反転させて、4℃における低エンドトキシン化ゼラチンについての2回目の外観評価を行なった。なお外観の評価結果は以下の基準で表した。
3:1回目および2回目の外観評価においてゲル状態を示した。
2:1回目の外観評価ではゲル状態を示したが、2回目の外観評価ではゾル状態を示した。
1:1回目の外観評価においてゾル状態を示した。
結果を表1に示す。
表1および図1に示すように、加熱温度が21℃〜95℃の範囲内である実施例1〜10のいずれにおいても、2時間加熱後のエンドトキシン含有量が加熱前よりも低減されており、2時間加熱後のゼラチン固形分中のエンドトキシン含有量が、最も高い実施例1および2でも0.0361EU/mg、最も低い実施例10では0.0013EU/mg以下まで低減した。すなわち実施例1〜10のいずれにおいても体内で使用可能な程度にエンドトキシン含有量が低減されていることが分かる。
また、加熱温度が80℃以下である実施例1,5〜7においては、2時間加熱後の低エンドトキシン化ゼラチンが4℃でゲル状態を示し、さらに加熱温度が75℃以下である実施例1,5,6においては、2時間加熱後の低エンドトキシン化ゼラチンが繰返しのゾル−ゲル転移を示した。一方加熱温度が85℃の実施例8、95℃の実施例10においては、2時間加熱処理後の低エンドトキシン化ゼラチンに4℃でのゲル化挙動は見られなかった。
表1、および実施例5〜8については図2,3にも示すように、加熱温度が85℃の実施例8、および加熱温度が95℃の実施例10においては、2時間加熱後の低エンドトキシン化ゼラチンにおいて若干低分子量成分の生成が認められたが、加熱温度が21℃の実施例1、70℃の実施例5、75℃の実施例6、80℃の実施例7においては、2時間加熱後の低エンドトキシン化ゼラチンにおいても低分子量成分の生成は認められなかった。また、高分子量成分のバンドはいずれの加熱処理後においても同様の位置に見られていることから、実施例1,5〜8,10における低エンドトキシン化ゼラチンに大きな分子量低下は生じていないことが分かる。
以上の結果より、本発明の製造方法においてはいずれも良好なエンドトキシン含有量の低減効果が得られるとともに低エンドトキシン化ゼラチンの分子量の大きな低下が防止できていることが分かる。特にエンドトキシン不活性化工程における加熱温度が80℃以下、さらに75℃以下とされる場合には、低分子量成分の生成が良好に抑制されるとともに、得られる低エンドトキシン化ゼラチンのゼラチン強度、すなわち形態保持性が良好であることが分かる。すなわち本発明の製造方法においては、エンドトキシン不活性化工程においてゼラチンの一次構造や二次構造へのダメージによるゼラチン分子の大きな劣化を生じさせること無く、エンドトキシン含有量の低減効果を良好に得ることが可能であることが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法によれば、エンドトキシン不活性化工程においてゼラチンの分子構造を大きく変化させることなく、体内で使用可能な程度にエンドトキシン含有量が低減された低エンドトキシン化ゼラチンを得ることが可能となる。本発明の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法は、たとえば食品、化粧品、生体材料、医療用材料等に対して用いられる低エンドトキシン化ゼラチンの製造に対して好適に適用され得る。
実施例1〜10のエンドトキシン不活性化工程における加温時間とエンドトキシン含有量との関係について示す図である。 実施例5〜8のエンドトキシン不活性化工程における0.5時間加熱後のゼラチンの電気泳動を示す図である。 実施例5〜8のエンドトキシン不活性化工程における1時間加熱後および2時間加熱後のそれぞれのゼラチンの電気泳動を示す図である。

Claims (9)

  1. 魚介類由来のコラーゲンから得られる低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法であって、
    前記コラーゲンを加熱してゼラチンに変性させるゼラチン化工程と、
    前記ゼラチンを、pH6.0〜8.0の範囲内の環境下で加熱して前記ゼラチン中のエンドトキシンを不活性化し、低エンドトキシン化ゼラチンを得るエンドトキシン不活性化工程と、
    を含む、低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  2. 前記エンドトキシン不活性化工程における前記加熱が50〜100℃の範囲内で行なわれる、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  3. 前記エンドトキシン不活性化工程における前記加熱が55〜70℃の範囲内で行なわれる、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  4. 前記コラーゲン中のエンドトキシンの含有量が0.05EU/mg以下である、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  5. 前記低エンドトキシン化ゼラチン中のエンドトキシンの含有量が0.03EU/mg以下である、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  6. 前記ゼラチン化工程の前にアテロ化工程をさらに含む、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  7. 前記低エンドトキシン化ゼラチンが、前記コラーゲンの変性温度以下でゲル状態を示す、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  8. 前記エンドトキシン不活性化工程の後に、前記低エンドトキシン化ゼラチンをゲル粒子とする粒状化工程がさらに設けられる、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
  9. 前記エンドトキシン不活性化工程における前記加熱がpH6.5〜7.5の範囲内の環境下で行われる、請求項1に記載の低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法。
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