JP4295387B2 - 分解ペプチド類の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分解ペプチド類の製造法、分解ゼラチンの製造法、分解ゼラチン、分解ゼラチン混合物、ゼラチンカプセル、ゼリー状の食品、医薬品および人工生体組織に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ゼラチン(熱変性コラーゲン)は、ゲル化剤、起泡剤、増粘剤、安定剤等として食品や化粧品等に広く用いられ、また、医薬用途では安定剤、吸着防止剤あるいは、カプセル用基材としても用いられている。
【0003】
従来、酸・アルカリ処理、加熱処理あるいは、様々な酵素によって分解したゼラチン(熱変性コラーゲン)またはコラーゲン(未変性可溶化コラーゲン)は切断個所が多く、低分子から高分子に至るまで様々な分子量の成分で構成されていた。また、従来、酵素などで徹底的に処理されて得られる分解ゼラチンは、ほとんどが分子量1万以下になっていた。このため、元来、ゼラチンの保有している様々な機能を、最大限発揮させたり、新たな特徴や品質を生み出したりすることが困難であった。ゼラチンには、低抗原性、易溶解性、低ゲル化強度、易フィルム形成性、易包接性など用途に応じた性質をもつものが要求されている。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、特有の性質を有する分解ペプチド類の製造法、分解ゼラチンの製造法、分解ゼラチン、分解ゼラチン混合物、ゼラチンカプセル、ゼリー状の食品、医薬品および人工生体組織等を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規のプロテアーゼを産生する菌株(工業技術院生命工学工業技術研究所委託番号微工研菌寄第FERM P-16867号)を発見し、併せて、その菌株より従来のプロテアーゼとは異なる基質特異性を有する酵素が産生する事を発見した(特願平10-277901号)。
【0006】
また、本発明者らは、本プロテアーゼ(限定分解酵素)を用いる際のpH、反応時間、反応温度等の各種「反応条件」や基質に対する各種「特異性」等について鋭意検討したところ、牛皮ゼラチンを原料として本プロテアーゼを至適条件化で作用させると分子量が約6万と約4万の分解ゼラチンが生成され、平均分子量が約1/2となることを見いだした。それぞれの分解ゼラチンのN末端アミノ酸の配列は、「Phe-Gln-Gly」、「Phe-Ala-Gly」、「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」あるいは「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」であること等の特異的な配列を有していた(図1参照)。
【0007】
この新規の分解ゼラチンのN末端アミノ酸から5残基までのアミノ酸配列を決定し、牛のα1コラーゲンのアミノ酸配列と照らし合わせ、切断部位前後のシーケンスナンバーを確認した。その結果、シーケンスナンバーが23〜27のアミノ酸と、635〜639のアミノ酸と一致したことから、新規の分解ゼラチンは2〜4カ所で切断されたものであることが確認された。若干の分子量的な相違はあるが、同様に牛皮・牛骨由来のゼラチン、豚皮・豚骨由来のゼラチンあるいは水産動物由来のゼラチンさらにゼラチンだけでなくコラーゲン等を原料としても同様の分解ゼラチンを調製できることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明に係る分解ペプチド類の製造法は、ペプチド類をそのアミノ酸配列の1〜3箇所で切断し分解する限定分解酵素を用いて分解する分解ペプチド類の製造法であって、切断箇所のN末端アミノ酸配列が特定のアミノ酸配列を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る分解ペプチド類の製造法は、一例として、前記切断箇所のN末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly 」のアミノ酸配列および「Phe-Ala-Gly 」のアミノ酸配列を有し、特に、「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」のアミノ酸配列および「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」のアミノ酸配列を有することが好ましい。この本発明に係る分解ペプチド類の製造法では、代表的に、ゼラチンまたはコラーゲンが製造される。また、本発明に係る分解ペプチド類の製造法は、図2に示すように、他の例として、前記切断箇所のN末端アミノ酸配列が「Leu-Val-Tyr 」のアミノ酸配列を有し、特に、「Leu-Val-Tyr-Pro-Phe 」のアミノ酸配列を有することが好ましい。この本発明に係る分解ペプチド類の製造法では、代表的に、カゼインが製造される。
【0010】
本明細書中で、「ペプチド類」には、タンパク質が含まれる。分解されるペプチド類は、いかなる公知のペプチド類であってもよいが、ゼラチン(熱変性コラーゲン)またはコラーゲン(未変性可溶化コラーゲン)が好ましい。限定分解酵素には、以下のプロテアーゼを用いることが好ましい。
【0011】
従って、他の本発明に係る分解ペプチド類の製造法は、ペプチド類を以下の性質を有するプロテアーゼにより分解することを特徴とする。なお、このプロテアーゼが、前述のプロテアーゼ(限定分解酵素)である。分解されるペプチド類は、ゼラチン(熱変性コラーゲン)またはコラーゲン(未変性可溶化コラーゲン)が好ましい。
【0012】
(1)作用
分子量約10万の熱変性コラーゲンおよび分子量約30万の未変性可溶化コラーゲンを分子量約6万と分子量約4万のペプチドに分解する限定分解活性を示すが、コラゲナーゼ基質であるDNP−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argの合成基質に対してはわずかに分解活性を示し、DNP−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argの合成基質に対しては分解活性を示さない。
(2)至適pH
pH5.5〜7
(3)至適温度
37〜40℃
(4)分子量
23,000±2,000(SDS−PAGEによる)
(5)酵素阻害
o−フェナントリン、L−システインにより活性阻害を受けるが、エチレンジアミン四酢酸、N−エチルマレイミド、フェニルメタンスルホニルフルオリド、ヨードアセトアミドによる活性阻害は少ない。
【0013】
この酵素は、オウレオバクテリウム(Aureobacterium) 属に属するプロテアーゼ生産菌を培養し、その培養物から採取することにより製造することができる。そのプロテアーゼ生産菌としては、前述のプロテアーゼを生産するものである限り特に制限されないが、例えば次の菌学的性質を示すMIM−CG−9535−I株が挙げられる。
【0014】
(1)形態
細胞の大きさ:0.4〜0.6×0.6〜3μm、細胞の形:短桿〜桿菌、細胞の多様性:あり、運動性の有無:なし、べん毛の有無:なし、グラム染色性:陽性
【0015】
(2)各培地における生育状況
肉汁寒天平板培養:(コロニー円形、光沢あり、黄色、半球状)、肉汁寒天斜面培養:(画像状に生育、光沢黄色コロニー)、肉汁液体培地:均一に濁る、肉汁ゼラチン培地:液化、リトマス・ミルク:(ピンクに変色、2層分離)
【0016】
(3)生理学的性質
硝酸塩の還元:−、VPテスト:−、インドールの生成:−、IPA反応:−、硫化水素の生成:−、色素の生成:−、ウレアーゼ:−、(クリステンゼン培地):−、オキシダーゼ:−、生育の範囲:温度;20〜35℃(至適温度28℃),pH;5.5〜10.0(至適pH7.0付近)、酸素に対する態度:好気的、OFテスト:酸化、ガスの生成(クリグラー培地):−、アシルアミダーゼ:−、DNase:+、耐塩性:NaCl 10%未満、運動性:−
【0017】
糖から酸の生成:グルコース;嫌気的 −,好気的 +,マルトース;+,キシロース;−,マンニトール;−、乳糖分解:−、デカルボキシラーゼ反応:リジン;−,オルニチン;+、アルギニン加水分解試験:−、クエン酸の利用:−(生育せず)
【0018】
炭素源の資化:D−グルコース;+,L−アラビノース;−,D−キシロース;−,D−ガラクトース;+,D−フルクトース;+,D−マンニトール;−,D−ソルビトール;−,D−ラムノース;−,D−ソルボース;−,L−アルギニン;−,L−オルニチン;−,L−スレオニン;−,D−バリン;−,酢酸;−,尿素;±,マロン酸;−,コハク酸;+,クエン酸;−,マレイン酸;−,フマール酸;−,グルコン酸;−,イタコン酸;−,グリセリン;+,コール酸;−
【0019】
(4)細胞壁構成成分
D−オルニチン、L−アラニン、グリシンを含む
【0020】
(5)キノン分析
ユビキノンを認めず、MK−9;2.7%、MK−10;8.2%、MK−11;30.5%、MK−12;54.5%含有する。
【0021】
(6)DNAのG+C含量
67.1mol%
【0022】
以上の菌学的性質を、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)の記載に照らして検討すると、本菌株は桿菌、グラム陽性であり、細胞壁構成成分、キノン分析、DNAのG+C含量等の結果より、オウレオバクテリウム・エスピー(Aureobacterium sp.)に属することが確認された。本菌株は公知の菌株とは異なるので、オウレオバクテリウム・エスピー(Aureobacterium sp.)MIM−CG−9535−Iと命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−16867として寄託されている。
【0023】
本菌株を用いて、目的とするプロテアーゼを得るためには、当該菌体を培地に接種し、常法に従って培養し、得られた培養物から該プロテアーゼを採取すればよい。
【0024】
ここで使用される培地は、通常の微生物の培地に用いられ、当該菌体が生育可能なものであれば、特に限定されないが、該培地中には、資化し得る窒素源、炭素源、無機塩類を適当量含有せしめておくことが好ましい。
【0025】
窒素源、炭素源、無機塩類は特に制限されないが、例えば窒素源としては、肉エキス、酵母エキス、ぺプトン、炭素源としては、グルコ−ス、フルクトース、ショ糖、グリセリン、無機塩類としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0026】
培地のpHは6〜7程度が好ましく、培養温度は28〜30℃で、20〜48時間振とう培養することが好ましい。
【0027】
培養物中からの目的物質であるプロテアーゼの採取及び精製は、一般の酵素の採取及び精製手段に準じて行うことができる。すなわち、培養物を遠心、又は濾過などによって菌体を分離し、その培養濾液から通常の分離手段、例えば、硫酸アンモニウム沈澱法、限外濾過膜による濃縮等を用い、カラムクロマトグラフィー等により精製する方法が挙げられる。
【0028】
このようにして得られるMIM−CG−9535−I由来のプロテアーゼは以下に示す酵素学的性質を有する。
(酵素学的性質)
1.基質特異性(表1)
(1−1)分解使用基質として、未変性可溶化コラーゲン(M.W.30万、宮城化学工業株式会社製)、熱変性コラーゲン(M.W.13万、ゼラチン化基質)(宮城化学工業株式会社製)、豚皮ゼラチン(M.W.13万、宮城化学工業株式会社製)、牛骨ゼラチン(M.W.13万、宮城化学工業株式会社製)(但し、前記分子量はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって同定される値である。)を基質とし、各0.1%溶液に1/10量の酵素液を添加し37℃での分解活性を、ポリアクリルアミドゲル(4〜20%ゲル)の電気泳動法により確認した。
【0029】
この結果、ゼラチンに強い限定分解活性(分子量約6万と約4万に分解)を示し、コラーゲンにも同様の限定分解活性を示した。また、乳製カゼインについても、分解が確認された。これらの事から、基質に対する種特異性はない事が確認された。
【0030】
(1−2)アゾコール試薬での活性測定法として、アゾコ−ル試薬{アゾコール試薬(CALBIOCHEM) 4mg/ml、0.05%Brij35、0.2MのNaCl、10mMのCaCl2 、0.02%のNaN3 、50mMのMES pH5.5}を調製し、アゾコール試薬1mlに各希釈酵素液100μl(−H2 Oブランク)を加え、37℃30分反応を行い、(10分毎に転倒混和)、直ちに遠心分離(10,000rpm、20sec)後、上清について波長520nmによる測定を行った(30分で吸光度1.00上昇させる酵素量を1単位とする)。この結果、アゾコ−ル試薬に強い色素可溶化作用を示した。
【0031】
(1−3)合成基質でのコラゲナーゼ活性の測定は、合成基質DNP−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−ArgとDNP−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argの2種を用いて、30℃30分反応を行った。反応後、上清について波長365nmによる吸光度の測定を行った。
【0032】
その結果、合成基質DNP−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−ArgとDNP−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argに対し、Proが入った基質はわずかに分解活性を示し、Proが入っていない基質は分解活性を示さない。
【0033】
【表1】
【0034】
2.反応至適温度
各温度で、アゾコール試薬を用い酵素液と30分反応させ、波長520nmで吸光度の測定を行った。その結果、至適温度は37〜42℃で、40℃で活性最大値を示した。
【0035】
3.温度安定性
各温度で酵素液を1時間放置し、その酵素液について、37℃30分でのアゾコ−ル分解活性を測定した。その結果、−80℃及び氷冷下では安定で、30℃1時間で70%の活性低下、40℃1時間では100%活性低下を示した。
【0036】
4.至適pH
下記の条件で緩衝液を調製し測定を行った。
緩衡液はpH3.0〜5.0で酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0〜9.0はMES−HEPES−ホウ酸緩衝液をpH0.5刻みで用い、各緩衝液にアゾコール試薬を入れた物を調製し、酵素液を37℃30分反応させ、波長520nmの吸光度を測定した。その結果、至適pHはpH5.5〜7.0であった。
【0037】
5.pH安定性
上記各緩衝液に酵素液を入れ、緩やかに撹拌しながら1時間氷冷した。その酵素液を用い、37℃30分反応させアゾコ−ル分解活性を測定した。その結果、pH5.5〜9.0で安定であった。
【0038】
6.酵素阻害
下記条件で、阻害剤を調製し測定を行った。
阻害剤としてエチレンジアミン四酢酸、2−メルカプトエタノ−ル、N‐エチルマレイミド、フェニルメタンスルホニルフルオリド、o−フェナントリン、L−システイン、ヨードアセトアミドの入ったアゾコ−ル試薬を調製し、酵素液を加え、37℃30分反応させアゾコール分解活性を測定した。その結果、o−フェナントリン、L−システインで酵素阻害が見られた(表2)。
【0039】
【表2】
【0040】
7.分子量
分子量は、ポリアクリルアミドゲルを使用した電気泳動で測定を行った。すなわち、ポリアクリルアミドゲル15/25%(第一化学薬品(株))、使用分子量マーカーとして、タンパク質分子量マーカー「第一」III(第一化学薬品(株))を使用し、SDS及び還元剤入りサンプル処理とサンプルを1:1に混合し、90℃5分加熱処理を行ったものを用いた。電気泳動は、電気泳動操作法に準拠し、染色法は銀染色法に準拠した(第一化学薬品(株))。染色後、分子量マーカー及びタンパクの移動度から分子量を23,000±2,000と決定した。
【0041】
8.金属イオンの影響
金属イオンとしてカルシウムイオン(CaCl2 ・2H2 O)、コバルトイオンCo(CH3 COO)2 ・4H2 O、マンガンイオン(MnCl2 ・4H2 O)、マグネシウムイオン(MgCl2 ・6H2 O)をアゾコ−ル試薬に添加し、37℃30分反応させアゾコール分解活性を測定した。その結果、カルシウムイオンと、コバルトイオンに活性促進効果が確認され、マンガンイオンと、マグネシウムイオンに活性阻害効果が確認された(表3)。
【0042】
【表3】
【0043】
本発明に係る分解ゼラチンの製造法は、分子量10万以上のゼラチンまたはコラーゲンをそのアミノ酸配列の2〜4箇所で切断し分解する限定分解酵素を用いて分解することを特徴とする。限定分解酵素には、前述のプロテアーゼを用いることが好ましい。分解するゼラチンまたはコラーゲンは、分子量10万以上のものであり、特に分子量約10万のゼラチンまたは分子量約30万のコラーゲンが好ましい。牛のα1コラーゲンは、計算値の分子量が96,871であるが、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって同定される分子量は約13万であり、本発明に係る分解ゼラチンの製造法では分子量10万以上のゼラチンまたはコラーゲンの範疇に含まれる。なお、本発明において、分子量を「約何万」で表しているが、この値は1万単位で四捨五入した値である。
【0044】
本発明に係る分解ゼラチンは、分子量が約6万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」であることを特徴とする。本発明に係る分解ゼラチンは、計算値の分子量は56,000±2,000であり、一例では55,729である。
【0045】
また、本発明に係る他の分解ゼラチンは、分子量が約4万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」であることを特徴とする。本発明に係る他の分解ゼラチンは、計算値の分子量は37,000±2,000であり、一例では37,329である。
【0046】
本発明に係る分解ゼラチン混合物は、分子量が約6万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」である分解ゼラチンと、分子量が約4万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」である分解ゼラチンとを主成分とすることを特徴とする。本発明に係る分解ゼラチン混合物のアミノ酸配列およびゼラチン切断部位を図3に示す。図3で、全体(I)は牛のα1コラーゲン(分子量が約10万、計算値による分子量が96,871)を分解して成る本発明に係る分解ゼラチン混合物を示し、(II)は分子量が約6万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」である分解ゼラチンを、(III)は分子量が約4万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」である分解ゼラチンを示す。なお、(II)の分解ゼラチンは計算値の分子量が55,729であり、(III)の分解ゼラチンは計算値の分子量が37,329である。本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物は、凍結乾燥されてもよい。
【0047】
本発明に係るゼラチンカプセルは、前述のいずれかの分解ゼラチンを含むことを特徴とする。本発明に係るゼラチンカプセルは、前述の分解ゼラチン混合物から成っていても他の種類のゼラチンを含んでいてもよい。ゼラチンカプセルは、ソフトカプセルであっても、ハードカプセルであってもよく、また、薬剤用であっても、健康食品用であってもよく、用途を問わない。
【0048】
本発明に係るゼリー状の食品は、前述のいずれかの分解ゼラチンを含むことを特徴とする。本発明に係る医薬品もまた、前述のいずれかの分解ゼラチンを含むことを特徴とする。本発明に係るゼリー状の食品および医薬品は、前述の分解ゼラチン混合物から成って、即溶性で、溶解温度が20℃以上30℃以下であることが好ましく、また、他の種類のゼラチンを含んでいてもよい。本発明に係る医薬品は、経口薬であっても、座薬、貼薬等であってもよい。
【0049】
本発明に係る人工生体組織は、前述のいずれかの分解ゼラチンを含むコーティング材により、表面がコーティング処理されていることを特徴とする。本発明に係る人工生体組織で、コーティング材は前述の分解ゼラチン混合物から成っていてもよく、また、他の種類のゼラチンを含んでいてもよい。本発明に係る人工生体組織には、人工心臓、人工腎臓などのほか、人工血管、人工骨、人工皮膚などの人工的組織も含む。コーティング処理される表面は、孔を有するものでは孔の内部の表面も含む。
【0050】
本発明に係る分解ペプチド類の製造法、分解ゼラチンの製造法、分解ゼラチン、分解ゼラチン混合物、ゼラチンカプセル、ゼリー状の食品、医薬品および人工生体組織は、前述のプロテアーゼを用いて容易に実施可能である。
【0051】
本発明に係る分解ゼラチン混合物に対して様々な品質と機能に関する検査を行った結果、従来のゼラチンにはない新たなる特徴が認められることが判明した。その特徴としての第1番目は、この新規の分解ゼラチン混合物を用いて調製したゼリー状のゲルは、高い融解能を有すること、第2番目は、この分解ゼラチン混合物は、凍結乾燥品にすることで、室温下の液体および冷水に対して高い溶解能が得られること(従来のゼラチンは、形状を凍結乾燥したとしても溶解しない。)、第3番目は、もとのゼラチンに比べ抗原性やアレルゲン性が1/3〜1/10に低減化することであった。本発明に係る分解ゼラチンは、本発明に係る分解ゼラチン混合物と同様の性質を有すると考えられる。また、本発明に係る分解ゼラチンおよび分解ゼラチン混合物は、低抗原性、易溶解性のほか、低ゲル化強度、易フィルム形成性、易包接性などの特徴的性質を有する。
【0052】
以上のように、本発明に係る、特定の分子量をもつ分解ゼラチンおよび分解ゼラチン混合物は、従来のゼラチンにはない様々な新しい特徴と品質を有することが見いだされたため、食用、化粧用、医薬用等の分野において新しい付加価値を生み出す製品用の「新素材」を提供することが可能となった。
【0053】
本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物の具体的な製造に関しては、1)通常のゼラチンの製造工程の一部に、本プロテアーゼ(限定分解酵素)による切断あるいは分解工程を適度に組み入れて製造することもできるし、2)前記1)の製造工程で作製されたゼラチンの中間体あるいは最終製品をあらためて溶解してから、本プロテアーゼを作用させても良い。
【0054】
限定分解以外の製造方法に関しては、現在用いているゼラチン用の原料の種類やタイプ、銘柄の製造方法が種々活用されていることから、これらの中より目的に合わせて適宜選択すれば良い。より詳しくは、日本にかわ・ゼラチン工業組合発行の「にかわとゼラチン」に詳細に記載されているのでそちらを参考にして行えば良い。
【0055】
本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物を製造するためのゼラチンあるいはコラーゲン原料は、牛、豚、鶏、魚等の水産物等から由来したものを使用することができる。さらに、それら各種の使用部位についても皮由来、骨由来のゼラチンあるいはコラーゲンでもよく汎用性が広い。
【0056】
本発明において、プロテアーゼによる分解工程の反応条件については、イ)pH、ロ)反応温度、ハ)反応時間、ニ)緩衝剤、ホ)酵素と基質(ゼラチン)の比率等があるが、これらの反応条件を様々に工夫することで、約6万と約4万の分解ゼラチンの「組成比率」や「純度(主成分含量)」を変化させることができ、分解ゼラチンのゼリー強度、粘度等を、目的とするゼラチンの用途に合わせて自在に変化させることができる。
【0057】
このゼラチンの分解の度合の計測または測定する方法としては、現在各方面で用いられている分析方法、例えば純度の検定、分子量分布の解析、および、分子量自身の同定を行う、「ゲル濾過法」「ゲル電気泳動法」等を用いて測定、モニタ−することが可能だが、より簡便な手段として、粘度によるゼラチンの分解のコントロ−ルがあげられる。より具体的には、本発明に至るまでの研究過程において限定分解酵素によってもとのゼラチンから生成される分子量約6万と約4万の成分の含量と粘度との間に一定の相関性が成立することを見いだした。従って、この原理に基づいた指標を利用することで限定分解のコントロ−ルが可能になったことを確認している。
【0058】
酵素反応停止の方法としては、一般的には、1)加熱による酵素の失活、2)pHによる酵素の失活、3)酵素活性阻害剤の添加による酵素の失活等の手段が用いられている。限定分解酵素の反応停止も特別な方法ではなく、反応時間、分解反応に必要な酵素の量、さらに、新規の分解ゼラチン製造のどの工程に組み込む等によって、最適な手段をこれらの停止法から選択することができる。
【0059】
【分解ゼラチンの検査】
限定分解のコントロールが可能となったため、分解度合の異なるゼラチンが製造可能になった。その例として、分解の度合が違う新規のゼラチンを分解反応の緩やかな順にType1,Type2およびType3を挙げておく。それぞれの成分の組成をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により確認した(図4参照)。
【0060】
本発明に係る分解ゼラチン混合物(図7で、「GLD」と示す)について、ゼリー強度、粘度、融点、凝固点、抗原性を測定した。それらの結果を図5〜図7に示す。
【0061】
【各種有用製品への応用例1】
本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物の産業上の有効性は広く、様々な分野における用途が考えられる。本発明者らによる文献(Sakai Y. et al .,Biol.Pharm.Bull.,21.(4),330-334,(1998))に記載されている抗原性の試験方法で検定したところ、本発明に係る分解ゼラチン混合物はもとのゼラチンと比べ、抗原性が1/3〜1/10に低減されていることがわかった。分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物は、アレルギー性の低い医薬用(ハード、ソフト)カプセル用の局方ゼラチン(あるいは局方精製ゼラチン)として適用可能である。使用方法の一例として、後述の実施例2でソフトカプセルの製造法について述べる。
【0062】
【各種有用製品への応用例2】
本発明に係る分解ゼラチン混合物は、従来のゼラチンと異なり、十分なゲル化能を有する一方で約20〜30℃程度の温度でも容易に融解する。従って、本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物は、口腔内速溶製剤あるいは、嚥下障害をもつ患者や高齢者向けの食品等への応用が期待される。そもそもゼラチンは、上質のタンパク質でアミノ酸の腸管吸収に優れた食品であり、また、体内への水分の補給という面においても、とても優れている。このような製品は、直接の飲料はもちろん、適度な粘度で安定しているため簡単にスプーンにのせられ、ベッドから体を起こしにくい患者の口元までの運搬にとても便利であり、液体と異なりこぼしにくい。ゼラチンは、固形製剤服用に適し、錠剤やカプセルなどの異なる錠形のものを数に関係なくスムーズに嚥下できる。さらに、ゼラチンは、散剤服用にも適している。本発明に係るゼラチンカプセルによれば、易融解性で、口中に薬剤等の内容物が付着することなく違和感を感じないため、服用時のむせりが抑えられる。また、直接舌が薬剤等の内容物と接しないため、苦み等の不快な味覚をマスキングできる。高齢者だけでなく嚥下力のない患者にも適応した商品になりうる。
【0063】
【各種有用製品への応用例3】
従来のゼラチンはお湯で溶解していたため、ゲル化させるには冷却のための時間が必要で、「手軽に調理し、すぐに食べる」という感覚には、そぐわないものであった。しかし、この点、本発明に係る分解ゼラチン混合物であって、凍結乾燥されたものは、冷水や室温程度の液体にも容易に溶解し、また冷水にも溶解するため、素早く冷えて固まることを見いだした。
【0064】
このような特徴を応用すると、室温下あるいは冷蔵庫内に保存している市販のジュースで、本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物を溶かし、冷蔵庫で30分程度(冷凍庫では15分程度)冷やすだけでゼリーとして食べられるようにすることができる。従来のゼリーのような手間もなく、時間もかからず、まさに「手軽に調理し、すぐに食べられる」というコンセプトのゼラチン製品がうまれてくる。味が固定された市販のゼリーは自分の要望に合うものが限られてくるが、本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物を利用すれば、自分の好みの飲み物がゼリーとなって触感を変えて楽しめ、また、ブレンド等のほんの少しの手間だけで自分だけのオリジナルゼリーが作れ、消費者の創作意欲をそそることができる。
【0065】
また、本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物において、優れた融解能からうまれるくちどけは、いままでにないゼリーの食感を与える。さらに、本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物では、ゼラチンの溶解に加熱を必要としないことから、アルコールが揮発しにくいため、酒類のゼリーの製造にも適している。
【0066】
【各種有用製品への応用例4】
医療材料におけるゼラチンの利用法は、液状の形態ではあまり使用しない。むしろ、コーティング剤としてゲル化させて用いることが多い。ゼラチンでコーティング加工を医療材料に施すと拒否反応を抑制し、凝固作用の低減等の生体内適合性が増す事が知られている。これは、人工血管や人工臓器などの人工生体組織が体内に埋め込まれた後、生体防御反応により異物として認識されることを防ぐからである。よって、コーティング材料は程良く残り、程良く吸収されるものが必要である。この条件をクリアーできるのは生体由来物質である。そのため、コーティング材料として、ゼラチンやコラーゲンを用いていることが多い。例えば、人工血管の場合、体内に埋め込んだ後のゼラチンの残存期間は1〜3ヶ月にコントロ−ルされている。
【0067】
このように体内に長く留まるこのゼラチンの利用法では、ゼラチンに含まれているエンドトキシンの除去が非常に重要である。一般的なエンドトキシンの除去法としては、吸着剤での除去、限外濾過法による除去等があげられる。また、除去法の他にエンドトキシンは、発熱活性に必要な部位をブロックしたりする多くの化学的処理によって無毒化することもできる。しかしながら、ゼラチンを購入した販売メーカーがこの処理を自らおこなわなければならないのは大変な手間である。この除去処理は、処理コントロールが難しく、さらに費用や時間がかなり必要となる。本発明に係る分解ゼラチンまたは分解ゼラチン混合物は、低エンドトキシンであり、かつ抗原性が低くアレルギー反応が起きにくいので最適なコーティングの材料として、販売メーカー先へ安定して供給できる。従って、本発明に係る人工生体組織は、従来のものに比べて、拒否反応を抑制し、凝固作用の低減等の生体内適合性を増す利点を有する。
【0068】
【発明の効果】
本発明に係る分解ペプチド類の製造法、分解ゼラチンの製造法、分解ゼラチン、分解ゼラチン混合物、ゼラチンカプセル、ゼリー状の食品、医薬品および人工生体組織によれば、調製したゼリー状のゲルの高い融解能、室温下の液体および冷水に対する高い溶解能、抗原性やアレルゲン性の低減化などの特有の性質を生かしたものを提供することができる。
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
【実施例1】
宮城県仙台市の土壌試料0.1〜0.2gを改良スタイナー基礎培地(0.5M Na2 HPO4 −KH2 PO4 緩衝液(pH6.8)80ml/l、Hun
ter無機塩溶液20ml/l、酵母エキス0.1g/l、0.3%ゼラチン及びコラーゲン溶液300ml/l)からなる培地懸濁し、30℃で振盪培養を行った。この培養上清液の電気泳動によりゼラチン及びコラーゲンを限定分解する菌株の存在を確認した土壌試料培養液を、適当な増殖用平板培地に蒔きコロニー形成を行った。再度、このコロニーについてゼラチン及びコラ―ゲン入りの培地で培養を行い、限定分解活性を確認し、本菌株、オウレオバクテリウム・エスピー(Aureobacterium sp.) MIM−CG−9535−Iを分離することができた。
【0071】
本分離菌株オウレオバクテリウム・エスピー(Aureobacterium sp.) MIM−CG−9535−Iを、増殖培地(表4)で好気的に28℃、16〜24時間培養した。培養後遠心分離により菌体を分離した培養液に、硫酸アンモニウムを加えて55%飽和沈澱画分を遠心分離にて集めた。
【0072】
この沈澱を、20mMのTris塩酸(pH7.5)、8mM塩化カルシウム、0.1M硫酸アンモニウム緩衝液に溶解し、同緩衝液0.8M硫酸アンモニウム濃度に調製後遠心分離を行い上清を得た。
【0073】
この溶液をブチルトヨパール(Butyl−TOYOPEARL)「東ソー株式会社」カラムにかけ、硫酸アンモニウム0.8M〜0.lMリニアグラジェントにて溶出を行い、溶出される活性タンパク画分をアゾコール試薬及び電気泳動にて確認を行った。
【0074】
更に、活性画分を硫酸アンモニウム70%飽和で沈澱画分を集め、20mMのTris塩酸(pH7.5)、8mM塩化カルシウム緩衝液で透析を行い、スーパーQトヨパール(Super Q TOYOPEARL)「東ソー株式会社」カラムにかけ、塩化ナトリウム0〜0.3Mリニアグラジェントにて溶出した。活性タンパク画分を、アゾコール及び電気泳動にて確認を行った(表5)。
【0075】
この、得られた活性タンパクを限外濾過膜M.W.1万膜にて濃縮を行い、1mMのMES(pH5.5)、150mM塩化ナトリウム、5mM塩化カルシウム緩衝液で透析を行い精製標品とした。
【0076】
この得られた限定分解酵素は、ポリアクリルアミドゲル(15〜25%ゲル)の電気泳動法で、単一バンドとして確認された。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【分解ゼラチンの製造例1】
材料の豚皮ゼラチン(分子量約10万)を純水にて膨潤させた。その後、70℃の温水にてゼラチンを溶解させた。酵素反応時に10mM Tris,1mM CaCl2 になるように、濃縮Bufferを添加し、良く撹拌した。pHを確認した後、準備したプロテアーゼ(限定分解酵素)を添加し限定分解を開始させ、分解終了時に熱交換機に通して加熱しすばやく酵素を失活させた。この酵素反応停止溶液をイオン交換処理し、0.2 μm孔のメンブランフィルターにて濾過滅菌をした。最後に、スプレードライヤーにて乾燥粉末にして、分解ゼラチン混合物の最終製品とした。また、製造した分解ゼラチン混合物を凍結乾燥品に加工した。
【0080】
【分解ゼラチンの製造例2】
原料としては、主にカルシウム分を除いた牛骨(オセイン)や牛や豚の皮が用いられる。これらの原料について、石灰乳をつかうアルカリ処理法あるいは、無機酸をつかう酸処理法によって前処理(精製)し、その後ゼラチン(分子量約10万)を抽出した。不純物を除くため濾過を行い、この時点で、本プロテアーゼ(限定分解酵素)による分解工程を組み入れ、分解ゼラチン混合物を製造した。乾燥前に、水分の含量を減少させるため、製造した分解ゼラチン溶液を濃縮した後、冷却し乾燥させた。これを適度な大きさに粉砕し、最終製品とした。
【0081】
【分解ゼラチンの製造例3】
原料としては主にカルシウム分を除いた牛骨(オセイン)や牛や豚の皮が用いられる。これらの原料は、石灰乳をつかうアルカリ処理法あるいは、無機酸をつかう酸処理法によって前処理(精製)し、その後ゼラチン(分子量約10万)を抽出した。この時点で、本プロテアーゼ(限定分解酵素)による分解工程を組み入れ、分解ゼラチン混合物を製造した。その後、不純物を除くため濾過を行った。乾燥前に、水分の含量を減少させるため、分解ゼラチン溶液を濃縮した後、冷却し乾燥させた。これを適度な大きさに粉砕し、最終製品とした。
【0082】
【実施例2】
前述の実施例1の製造例1〜3により製造したゼラチン分解物100gに対して、グリセロール30gに蒸留水90gを入れてよく攪拌したものを加え、ゼラチン分解物を膨潤させた。その後、60℃に加熱し溶解させ、一晩脱泡した。翌日、この脱泡した材料をローラーにより適度な厚さに伸ばし、薬剤用のゼラチンカプセル用シートを作成した。このシートを乾燥室にて適度に乾燥させ、カプセル製造器によって内容物を入れて、その後、完全に密閉した。こうして、薬剤入りのゼラチンカプセルを製造した。
【0083】
【実施例3】
各種ミネラルを含んだ水溶液(医薬品の添加物として認められた成分のみを使用している。)に、前述の実施例1の製造例1〜3により製造したゼラチン分解物を3重量%になるように溶かして、嚥下補助ゼリーを製造した。散剤、固形製剤をこの嚥下補助ゼリーで包み込むようにして飲用した。この分解ゼラチン分解物の融解能を従来のゼラチンと比較したところ、従来のゼラチンは20℃の保温下で10分経過後にやや融解し始める様子が見られた程度であったのに対し、製造した嚥下補助ゼリーは同じく20℃の保温下で1分弱で素早く融解した。この優れた融解性は、嚥下を補助する役目だけでなく、薬剤の吸収を助ける水分の補給にも大いに役立つ。
【0084】
【実施例4】
前述の実施例1の製造例1により製造した分解ゼラチン混合物の凍結乾燥品を、10gずつ個別包装した。適当な蓋付き容器に、この凍結乾燥品1袋(10g)を入れ、好みの飲み物を200ml注ぎ、スプーン等を使い、よくかき混ぜて溶解させた。蓋をしめ、冷凍庫にて15分あるいは冷蔵庫にて30分冷やした。こうして、ゼリー状の食品を製造した。その後、ゲル化したゼリー状の食品を好みの皿に盛りつけた。
【0085】
【実施例5】
クリーンルームにて、前述の実施例1の製造例1〜3により製造したゼラチン分解物を水溶液(望ましくは、ゼラチン含有2重量%程度)にして、医療材料(人工血管や人工臓器等)に均一にコーティングし、0〜8℃に設定された低温室へ入れ、ゲル化させた。その後、架橋剤を噴霧して強度をさらにあげた。こうして、コーティング処理した人工生体組織を製造した。
【0086】
【分解カゼインの製造例】
材料のカゼイン(βカゼイン:分子量約3万)を純水にて溶解した。酵素反応時に10mM Tris,1mM CaCl2 になるように、濃縮Bufferを添加し、良く撹拌した。pHを確認した後、準備したプロテアーゼ(限定分解酵素)を添加し限定分解を開始させ、分解終了時に熱交換機に通して加熱しすばやく酵素を失活させた。最後に、スプレードライヤーにて乾燥粉末にして最終製品とした。また、製造した分解カゼイン混合物を凍結乾燥品に加工した。分解カゼイン混合物の主な分解成分は、分子量約2万(2万1千)のものと約1万(9千)のものであった。
【0087】
【加工牛乳の製造例】
材料の牛乳のpHを調整した後、準備したプロテアーゼ(限定分解酵素)を添加し限定分解を開始させた。分解終了時に熱交換機に通して加熱しすばやく酵素を失活させた。その後、分解された牛乳を瓶に詰め、最終製品とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】材料のゼラチンを所定のプロテアーゼにより限定分解して成る分解ゼラチン混合物(新規ゼラチン)をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて解析して示す説明図である。
【図2】材料のβカゼインを所定のプロテアーゼにより限定分解して成る分解カゼイン混合物(新規カゼイン)をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて解析して示す説明図である。
【図3】本発明に係る分解ゼラチン混合物のアミノ酸配列およびゼラチン切断部位を示す説明図である。
【図4】分解度合の異なる分解ゼラチン混合物(新規ゼラチン)をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析したものをモデル化した説明図である。
【図5】分解ゼラチン(新規ゼラチン)の粘度およびゼリー強度を示すグラフである。
【図6】分解ゼラチン(新規ゼラチン)の融点および凝固点を示すグラフである。
【図7】分解ゼラチン(新規ゼラチン)と材料の豚皮ゼラチン、牛皮ゼラチンとの抗原性の違いを示すグラフである。
Claims (7)
- ペプチド類を、オウレオバクテリウム・エスピー(Aureobacterium sp.)MIM−CG−9535−I(FERM P−16867)由来の以下の性質を有するプロテアーゼにより分解することを特徴とする分解ペプチド類の製造法。
(1)作用分子量約10万の熱変性コラーゲンおよび分子量約30万の未変性可溶化コラーゲンを分子量約6万のペプチドと分子量約4万のペプチドとに分解する限定分解活性を示すが、コラゲナーゼ基質であるDNP−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argの合成基質に対しては分解活性を示し、DNP−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln−D−Argの合成基質に対しては分解活性を示さない。
(2)至適pHpH5.5〜7(3)至適温度37〜40℃(4)分子量23,000±2,000(SDS−PAGEによる)
(5)酵素阻害o−フェナントリン、L−システインにより活性阻害を受けるが、エチレンジアミン四酢酸、N−エチルマレイミド、フェニルメタンスルホニルフルオリド、ヨードアセトアミドによる活性阻害はアゾコール活性残存率で77.2%以上である。 - 前記ペプチド類がゼラチンまたはコラーゲンであり、前記分解ペプチド類が、N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly」である分解ゼラチンとN末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly」である分解ゼラチンを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の分解ペプチド類の製造法。
- 前記N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly」である分解ゼラチンのN末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」であり、前記N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly」である分解ゼラチンのN末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」であることを特徴とする請求項2記載の分解ペプチド類の製造法。
- 前記N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly」である分解ゼラチンは、分子量が約6万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Gln-Gly-Pro-Hyp」であり、前記N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly」である分解ゼラチンは、分子量が約4万であって、N末端アミノ酸配列が「Phe-Ala-Gly-Pro-Hyp」であることを特徴とする請求項2記載のペプチド類の製造法。
- 前記ペプチド類がカゼインであり、前記分解ペプチド類が、N末端アミノ酸配列が「Leu-Val-Tyr」である分解カゼインを含むものであることを特徴とする請求項1記載の分解ペプチド類の製造法。
- 前記N末端アミノ酸配列が「Leu-Val-Tyr」である分解カゼインのN末端アミノ酸配列が「Leu-Val-Tyr-Pro-Phe」であることを特徴とする請求項5記載の分解ペプチド類の製造法。
- 前記ペプチド類が牛乳に含まれる前記ペプチド類であり、分解ペプチド類を含有する加工牛乳を得ることを特徴とする請求項1記載の分解ペプチド類の製造法。
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