JP5644111B2 - 金属酸化物半導体およびその製造方法、半導体素子、薄膜トランジスタ - Google Patents

金属酸化物半導体およびその製造方法、半導体素子、薄膜トランジスタ Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物半導体の製造方法、中でも、溶液により塗布可能な金属塩を前駆体に用いこれに半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を製造する塗布型の金属酸化物半導体の製造方法に関する。
金属塩や有機金属を分解酸化(加熱、分解反応)することで、酸化物半導体を形成する方法が知られている。
有機金属を分解酸化(加熱、分解反応)し、酸化物半導体を形成する方法として、例えば特許文献1、2に記載された方法がある。
これらにおいては、前駆体の酸化に、熱酸化または、プラズマ酸化を用いている。しかしながら、前駆体の酸化に熱酸化法を用いる場合、最低400℃以上、実質550℃以上の非常に高い温度域で処理しないと求める性能達成は通常は難しい。従って、エネルギー効率が悪く、比較的長い処理時間を要してしまうことや、処理中の基板温度も処理温度と同じ温度まで上昇するため、軽く、フレキシビリティを有する樹脂基板などへの適用が困難となる。
また、プラズマ酸化の場合には、非常に反応性の高いプラズマ空間で処理を行うために、薄膜トランジスタの製造プロセスにおいては、電極や絶縁膜などを劣化させ、移動度やoff電流(暗電流)が悪化する等の問題を引き起こしてしまう。
また、前駆体として、有機金属や金属塩化物を用い熱酸化等により酸化物半導体を形成することも知られている(例えば非特許文献1、2また3参照)。例えば金属アルコキシドを前駆体として用いる場合、高温処理が必要であるほかに残留カーボンによる性能劣化があり、また、前駆体として塩化物を用いる場合には、ハロゲン排出の問題を抱えている。また、これらの前駆体は、雰囲気から混入した水により加水分解を起こす問題が発生し、また、溶媒として多量の有機溶剤を用いるために製造環境上も好ましくない。また、これらの金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)は、移動度が低い、on/off比が小さい、閾値が大きいなどの問題があった。
一方、スパッタ法による金属酸化物半導体の成膜を行い、薄膜トランジスタを製造した例が、特許文献3および非特許文献4に開示されている。スパッタ法などの真空系の成膜装置を用いた製造は、バッチ生産が必要であり、生産効率が低いという問題がある。また、スパッタ法による金属酸化物半導体は、特性のばらつきが大きく、それらを安定化するには、高温の後加熱処理が必要になる問題があった。
特開2003−179242号公報 特開2005−223231号公報 特開2006−165527号公報 化学工業2006年12月号「ゾルゲル法による酸化物半導体薄膜の合成と応用」 Electrochemical and Solid−State Letters,10(5)H135−H138 Advanced Materials 2007,19,183−187 IDW’07(International Display Workshop 2007) p1783
本発明は、金属塩を前駆体に用いて、大気圧下での塗布プロセス(印刷やインクジェット法)による成膜が可能であり、さらには低温での製造が可能な、生産効率の高い、半導体変換処理を行って、金属酸化物半導体層を製造する方法を提供することにあり、またこれを用いたTFT素子を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
1.金属塩を含有する半導体前駆体層に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法において、前記金属塩が、金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、かつ、半導体前駆体層が該金属塩の溶液を塗布することにより形成されることを特徴とする金属酸化物半導体の製造方法。
2.前記金属塩の溶液が水溶液であることを特徴とする前記1に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
3.前記金属塩が少なくともIn、Zn、Snのいずれかの塩を含むことを特徴とする前記1または2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
4.前記金属塩が少なくともGa、Alのいずれかの塩を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
5.前記金属塩が硝酸塩であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
6.In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、以下の関係式を満たすように、各金属の硝酸塩を溶液とした塗布液を用いることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:0〜5
7.前記半導体変換処理が100℃以上400℃以下の熱処理であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
8.前記半導体変換処理がマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)照射を含む処理であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法により製造されたことを特徴とする金属酸化物半導体。
10.前記9に記載の金属酸化物半導体を用いたことを特徴とする半導体素子。
11.前記9に記載の金属酸化物半導体を用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
本発明により、製造環境上好ましい水系塗布により、また従来よりも低い温度を用いて、金属酸化物半導体層の製造が可能な、生産効率の高い金属酸化物半導体の製造方法を得ることができ、またTFT素子を得ることができる。
薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。 薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。 実施例1の薄膜トランジスタの製造プロセスを示す概略の断面図である。 実施例2の薄膜トランジスタの製造プロセスを示す概略の断面図である。 実施例3の薄膜トランジスタ素子の構成を示す断面図である。
符号の説明
1、101 半導体層
2、102 ソース電極
3、103 ドレイン電極
4、104 ゲート電極
5、105 ゲート絶縁層
以下本発明を実施するための最良の形態について説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明は、金属塩を含有する半導体前駆体層に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法であり、前記金属塩が、金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、かつ、半導体前駆体層が該金属塩の溶液を塗布することにより形成されることを特徴とする。
本発明において半導体は金属酸化物であり、本発明は、金属酸化物半導体の前駆体となる金属酸化物の金属成分を含む金属塩の薄膜を設けた後、該薄膜に熱酸化等の半導体変換処理を行って、金属酸化物半導体に変換し半導体の薄膜を得るものである。
金属酸化物半導体の前駆体を熱酸化することにより金属酸化物半導体をうることは知られている。金属酸化物半導体の前駆体として用いることのできる金属化合物としては非常に広い範囲の無機塩類や有機金属化合物、また有機金属錯体等が知られている。特に、有機金属化合物や金属塩化物等が非特許文献2,3等においても用いられよく知られている。
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体として硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いるものである。
金属塩における金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
本発明において、これらの金属塩においては、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかの塩を1つ以上含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
また、その他の金属として、ガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)のいずれかの塩を含むことが好ましい。
本発明においては、前駆体として、上記金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることによりキャリア移動度の大きい、TFT素子としたときon/off比の大きい良好な特性を示す金属酸化物半導体を得ることができる。
これらの金属塩は、他の無機塩、また有機金属化合物を用いる場合に比べ、加水分解、脱水反応を含むと予想される酸化反応のエネルギーが小さいこと、酸化物生成過程で発生する分解物が効率よく気化、排出されるために膜に残存しにくく、生成した酸化物中に存在する炭素などの不純物成分が少ないため、良好な半導体特性が得られるものと推定される。
不純物低減、半導体特性の向上の観点から、上記金属塩の中でも硝酸塩が最も好ましい。
金属塩、特に硝酸塩で得られる半導体特性向上の効果は、加熱温度が100℃以上、400℃以下の温度範囲で得られる非晶質の金属酸化物半導体において、特に顕著である。非晶質酸化物の半導体の良好な状態が、金属塩を原料とした半導体薄膜で得られることは従来知られておらず、本発明で得られる顕著な効果といえる。
これらの塩を用いると、また、半導体変換処理として電磁波(マイクロ波)で実質低温において変換するとき照射時間を短くでき好ましい。
(前駆体薄膜の成膜方法、パターン化方法)
これらの金属酸化物半導体の前駆体である金属塩を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などを用いることができるが、本発明においては、前記硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を適切な溶媒に溶解した溶液を用い基板上に塗設することが好ましく、これにより生産性を大幅に向上させることができる。
金属塩を溶解する溶媒としては、水の他、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではなく、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、更に、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなど、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を用いることができる。
本発明の金属塩溶液に用いる溶媒としては、金属塩が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、金属塩の溶解性、塗布後の乾燥性の観点から水および低級アルコールが好ましく、低級アルコールの中ではメタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノール及びイソプロパノール)が乾燥性の観点で好ましい。また、溶媒として低級アルコールを単独で用いてもよいし、水と任意の割合で混合して用いてもよい。溶解性と溶液安定性および乾燥性の観点から水とこれら低級アルコール類を混合して本発明の「水溶液」を作成することが好ましい。低級アルコールを混合して水溶液を作成すると、大きな組成の変化を行わず表面張力を下げることができるので、インクジェット塗布等において出射性が向上するので好ましい。
さらに、アルコール類添加の効果として、半導体特性の向上の効果が認められる。たとえば薄膜トランジスタの移動度、on/off比、閾値などの特性の向上が認められる。この効果の原因について明確でないが、加熱による酸化物の生成プロセスに影響しているものと推察される。
また、乾燥性およびインクジェット出射性、薄膜トランジスタの特性などの半導体特性を考慮した場合、溶媒比率で5質量%以上の低級アルコール添加が好ましく、いずれの特性(乾燥、出射性と溶液安定性)も満たすには水/低級アルコール比率が5/5〜95/5であることが好ましい。
本発明の水溶液とは溶媒中の水含有率が30質量%以上の混合溶媒および水(水含有率=100質量%)に溶質(本発明では金属塩とその他必要に応じて添加される添加剤)を溶解した溶液を意味する。金属塩等溶質の溶解性、溶液安定性の観点から好ましくは水含有率は50質量%以上であり、さらに好ましくは水含有率が70質量%以上である。
本発明に係る前記の硝酸塩等の金属塩は、金属アルコキシド類のように室温で加水分解することがなく、水を主たる溶媒として用いることができるので、製造工程上、また環境上も好ましい。
例えば、金属塩化物等の金属塩は大気中での劣化、分解と(特にガリウム等の場合)、強い潮解性とが激しいが、本発明に係る硝酸塩等の無機塩については潮解、また劣化等がなく使い易いことも製造環境上好ましい。
本発明に係る金属塩中でも、水に対する劣化、分解、また容易に溶けること、さらに、潮解性等の性能においても優れた性質をもつ硝酸塩が最も好ましい。
本発明においては、金属塩を含有する溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体を含有する薄膜を形成する。
金属塩を含有する溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体薄膜を形成する方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、など、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法などが挙げられる。塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。これらのうち、好ましいのは薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。
例えばインクジェット法を用いて成膜する場合、金属塩溶液を滴下して、80℃〜100℃程度で溶媒(水)を揮発させることにより金属塩を含有する半導体前駆体層薄膜が形成される。尚、溶液を滴下する際、基板自体を80℃〜150℃程度に加熱しておくと、塗布、乾燥の2プロセスを同時に行え、前駆体膜の造膜性も良好なため好ましい。
(金属の組成比)
本発明の方法により、前述した金属原子から選ばれた単独、または複数の金属原子を含む金属酸化物半導体の薄膜を作製する。金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
形成された金属酸化物半導体に含まれる金属原子は、前駆体の記述に挙げたものと同様に、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかを含むことが好ましく、さらにガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。
これらの金属を成分として含む前駆体溶液を作製する場合、好ましい金属の組成比としては、In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C=Zn)とのモル比率(金属A:金属B:金属C)が、以下の関係式を満たすことが好ましい。
金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:0〜5
である。
金属塩としては、硝酸塩が最も好ましいので、In、Sn(金属A)と、Ga、Al(金属B)と、Zn(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、上記の関係式を満たすように、各金属の硝酸塩を、水を主成分とした溶媒に溶解・形成した塗布液を用いて金属無機塩を含む前駆体薄膜を塗布により形成することが好ましい。
また、前駆体となる金属無機塩を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(非晶質酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。非晶質であることは、X線回折や電子線回折により確認でき、結晶に固有の回折パターンが観測されなければ、非晶質とみなすことができる。
金属酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料(金属塩)、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、さらには1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
前記半導体変換処理、即ち金属無機塩から形成された前駆体薄膜を金属酸化物半導体に変換する方法としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理が挙げられる。また後述するマイクロ波照射を用いることができる。
本発明において、前駆体材料を加熱する温度は前駆体を含有する薄膜表面の温度が50℃〜1000℃の範囲で任意に設定することができるが、電子デバイスの、デバイスの特性や生産効率の観点から、100℃〜400℃にすることが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、放射温度の測定が可能な放射温度計、ファイバー温度計などにより測定できる。加熱温度は電磁波の出力、照射時間、さらには照射回数により制御することが可能である。また、前駆体材料を加熱する時間は、任意に設定できるが、電子デバイスの特性や生産効率の観点から、1秒以上60分以下の範囲が好ましい。より好ましくは5分〜30分である。
本発明の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることで比較的低い温度において半導体変換処理を行うことができる。
また、金属酸化物の形成はESCA等により検知でき、半導体への変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
また、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、金属塩を含有する前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源として0.5kHz以上、2.45GHz以下、また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm以上、50W/cm以下である。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、さらに好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また、反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号等に記載されている。
また、UVオゾン法は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nm、特に好ましくは150〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、あるいは前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また、金属塩を含有する薄膜を酸化処理したのち、基材を50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は、酸化処理と同時に行ってもよく、酸化による金属酸化物半導体への変換を迅速に行うことができる。
金属酸化物半導体への変換後、形成される半導体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmが好ましい。
本発明においては、前記半導体変換処理として、マイクロ波(0.3〜50GHz)照射の工程を含むことが好ましい。また、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
(マイクロ波の照射)
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属無機塩材料から形成された薄膜を半導体に変換する方法として、マイクロ波照射を用いることが好ましい。
即ち、これらの金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し、電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)を照射する。
金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、熱が発生して薄膜が内部から、均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板には、マイクロ波領域に吸収が殆どないため、基板自体は殆ど発熱せずに薄膜部のみを選択的に加熱し熱酸化、金属酸化物半導体へ変換することが可能となる。
マイクロ波加熱においては一般的な様に、マイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、尚且つ非常に短時間で昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に、基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜のみを酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変換することが可能となる。また、加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
一般的に、マイクロ波とは0.3GHz〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8GHzおよび1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。また、28GHz、また50GHz等の発振機を市場で入手できる。
オーブンなどを用いた通常の加熱方法に比較し、電磁波(マイクロ波)照射による加熱方法を用いることで、より良好な金属酸化物半導体層を得ることができる。金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するに際し、伝導熱以外の作用、例えば金属酸化物半導体前駆体材料への電磁波の直接的な作用を示唆する効果が得られている。機構は十分に明らかになっていないが、金属酸化物半導体前駆体材料の加水分解や脱水、分解、酸化等による金属酸化物半導体への転化が電磁波により促進された結果と推定される。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層にマイクロ波照射を行って、半導体変換処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。尚、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板のような耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで前駆体を含有する薄膜の表面温度が100℃以上〜400℃未満になる様に処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、また非接触の表面温度計により測定が可能である。
また、ITOのような強い電磁波吸収体が近傍(例えばゲート電極等)に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
本発明に係る金属塩から形成される金属酸化物半導体薄膜は、トランジスタ、ダイオードなどの各種の半導体素子、また電子回路等に用いることができ、基板上に前駆体材料の溶液を塗布することによって低温プロセスでの金属酸化物半導体材料層の作製が可能であり、樹脂基板を用いる薄膜トランジスタ素子(TFT素子)等、半導体素子の製造に好ましく適用することができる。
本発明の金属酸化物半導体を用いて、ダイオードやフォトセンサに用いることもできる。たとえば、後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで、ショットキーダイオードやフォトダイオードを作製することも可能である。
(素子構成)
図1は、本発明に係わる金属酸化物半導体を用いた、薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。
薄膜トランジスタの構成例を幾つか断面図にて図1(a)〜(f)に示す。図1において、ソース電極102、ドレイン電極103を、金属酸化物半導体からなる半導体層101がチャネルとして連結するよう構成される。
同図(a)は、支持体106上に本発明の方法によりソース電極102、ドレイン電極103を形成して、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層101を形成し、その上にゲート絶縁層105を形成し、さらにその上にゲート電極104を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層101を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体106上に、まず、半導体層101を形成し、その後ソース電極102、ドレイン電極103、そして絶縁層105を形成した後、ゲート電極104を形成したものを表す。本発明においては、半導体層が本発明の方法で形成されていればよい。
同図(d)は、支持体106上にゲート電極104を形成した後、ゲート絶縁層105を形成し、その上にソース電極102およびドレイン電極103を形成し、該電極間に半導体層101を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
図2は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。
薄膜トランジスタシート120はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子124を有する。121は各薄膜トランジスタ素子124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ素子124のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。これら薄膜トランジスタシート120における各トランジスタ素子のソース、ドレイン電極又ゲート電極等、さらにゲートバスライン、ソースバスライン、また回路配線の製造に本発明を用いることができる。
次いで、TFT素子を構成する各要素について説明する。
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
ソース、ドレイン、あるいはゲート電極等の電極、またゲート、あるいはソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
(ゲート絶縁層)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
ゲート絶縁層(膜)が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
実施例1
図3に薄膜トランジスタの製造プロセスを概略の断面図で示した。
(薄膜トランジスタ素子1の作製)
支持体6として、無アルカリガラス基板を用いてスパッタにて、厚さ150nmのITO皮膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極4を形成した。
次いで、大気圧プラズマCVD法により、厚さ200nmの酸化珪素からなるゲート絶縁層5を形成した。なお、大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax(表面粗さ)5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
これにより、ゲート電極4、ゲート絶縁層5が支持体6であるガラス基板上に形成された(図3(1))。
次ぎに、半導体層を形成した。
(半導体前駆体薄膜の形成)
硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合して10質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成部にインクジェット塗布し150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体薄膜1′を形成した(図3(2))。
その後、この基板に、大気中、350℃の温度条件で1時間熱処理を行って、熱酸化を行った。これにより金属酸化物半導体の前駆体の薄膜は透明に変化し金属酸化物薄膜に変換され、半導体層1が形成された(厚さ50nm)(図3(3))。
次に、マスクを介して金を蒸着することで、ソース電極2、ドレイン電極3を形成し薄膜トランジスタ素子を作製した。それぞれのサイズは、幅10μm、長さ50μm(チャネル幅)厚さ50nmであり、ソース電極、ドレイン電極の距離(チャネル長)は15μmとなるようにした。
これにより薄膜トランジスタ素子1を得た。
次いで、半導体層の形成のみを、前駆体である金属塩を代えて(また溶媒を変えて)、その他は同様にして行い、薄膜トランジスタ素子2〜7を作製した。
(薄膜トランジスタ素子2)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムに代えて、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸ガリウムを用いた以外は同様に1:1:1で混合し同じモル濃度とした水溶液をインクとして用い、同様に大気中350℃で、1時間熱処理(焼成)後、同様にソース、ドレイン電極を形成して薄膜トランジスタ素子2を作製した。
(薄膜トランジスタ素子3)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムに代えて、それぞれ等モルの燐酸塩(PO塩)を用いたほかは同様にして薄膜トランジスタ素子3を作製した。
(薄膜トランジスタ素子4)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムに代えて、それぞれ等モルの炭酸塩(CO塩)を用いたほかは同様にして薄膜トランジスタ素子4を作製した。
(薄膜トランジスタ素子5)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムに代えて、それぞれ等モルの酢酸塩(CHCO塩)を用いたほかは同様にして薄膜トランジスタ素子5を作製した。
(薄膜トランジスタ素子6)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムに代えて、それぞれ等モルの蓚酸塩を用いたほかは同様にして薄膜トランジスタ素子6を作製した。
(薄膜トランジスタ素子7)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムをそれぞれ塩化物に代え、水溶液をアセトニトリル溶液に代えた。即ち、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化ガリウムを1:1:1(モル比)で混合し同じモル濃度とした溶液を用い、前駆体層の塗布を行ったほかは薄膜トランジスタ素子1と同様にして薄膜トランジスタ素子7を作製した。
(薄膜トランジスタ素子8)
薄膜トランジスタ素子7において、水溶液とし、前駆体層の塗布を行ったほかは薄膜トランジスタ素子7と同様にして薄膜トランジスタ素子8を作製した。
(薄膜トランジスタ素子9〜15)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム水溶液を表1に記載の溶媒を用いた溶液に代え、前駆体層の塗布を行ったほかは薄膜トランジスタ素子1と同様にして薄膜トランジスタ素子9〜14を作製した。
(薄膜トランジスタ素子16)
薄膜トランジスタ素子1において、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム水溶液を表1に記載の水/エタノール=9/1(質量比)に代え、また、350℃の温度条件で1時間熱処理(熱酸化)を行う代わりに、大気雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でジャイロトロン発振管を用いたマイクロ波(28GHz)照射機を用い、マイクロ波を照射した。半導体面側のみ断熱材で保温し、熱電対による表面温度計を用いて、500W出力で300℃まで昇温後、マイクロ波出力をPID制御しながら薄膜の表面温度を300℃に保つように、マイクロ波の照射を行って半導体層1を形成した以外は、同様にして薄膜トランジスタ素子16を作製した。
以上の方法により作製した薄膜トランジスタは、いずれもn型のエンハンスメント動作を示した。ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)が観測された。その飽和領域から見積もられた移動度(cm/Vs)と、on/off比(log値)、そして閾値(Vth)について見積もった。閾値Vthはゲートバイアスに対するドレイン電流値の平方根√Idの関係にて、√Id=0に外挿して得たゲートバイアスの値とした。
また、それぞれの金属塩溶液作成時の溶媒への溶解性、また溶液安定性についても評価を行った。
溶解性:金属塩の混合攪拌時および超音波溶解時に以下の基準で目視評価した。
◎:30分以下の短時間攪拌のみで十分に溶解した。
○:攪拌でほぼ溶解し、30分以下の短時間超音波溶解にて十分に溶解した。
△:30分以上の攪拌で完全には溶解せず、30分以上の超音波溶解により十分に溶解した。
×:30分以上の攪拌および超音波溶解後、不溶解物が確認される。
溶液安定性:溶解後、1週間の室温放置における析出物の有無で評価した。
◎:析出物なし。
○:1〜5日間は析出物ないが、6日目以降で若干の析出物が観測される。
△:1〜2日間は析出物ないが、3日目以降で析出物が観測される。
×:2日間以内で析出物が観測される。
なお、溶液インクジェット塗布時の出射安定性についても評価した。
IJ出射性評価:コニカミノルタ製インクジェット装置512型−4plヘッドを用いて、同じベタ画像を10回出射し、欠やムラの状況を評価した。
○:問題なし
△:全体的に薄いムラがある若しくは5回出射以降にムラがでてくる。
×:欠が多く、ムラが激しい、または殆ど出射できない。
表1の通り、比較である塩化物(Cl塩)をアセトニトリル溶液で用いたものに比べ、本発明の金属塩を水溶液にて用いたものはキャリア移動度が高く、on/off比、閾値についても比較よりも高い。特に硝酸塩を用いたものは、キャリア移動度、on/off比、閾値についても本発明内でも特に良好な結果であった。
実施例2
同じく、概略の断面図が図4で示されるボトムゲート・トップコンタクト構成の薄膜トランジスタ素子を作製した。
支持体6としてポリイミドフィルム(厚み200μm)を用い、この上に、まず、50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
(下引き層の形成)
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
さらにその層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層8とした(図4(1))。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
次いで、ゲート電極を形成する。スパッタ法により、厚さ150nmのITO皮膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極4を形成した(図4(2))。
(ゲート絶縁層形成工程)
ゲート電極4を形成したのち、フィルム温度200℃にて、上述した大気圧プラズマ法により厚さ150nmのゲート絶縁層5を形成した(図4(3))。
次ぎに、半導体層を形成した。
(半導体前駆体薄膜の形成)
硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとして、基板温度を100℃に保ちながらチャネル形成部にインクジェット塗布し150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体薄膜1′を形成した(図4(4))。
その後、この基板に、マルチモードタイプの2.45GHzマイクロ波照射機(四国計測工業(株)製 μ−reactor)を用いて、大気雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。半導体面側のみ断熱材で保温し、熱電対による表面温度計を用いて、500W出力で300℃まで昇温後、マイクロ波出力をPID制御しながら薄膜の表面温度を300℃に保つように、30分間マイクロ波の照射を行った。半導体前駆体材料薄膜1′は半導体層1に変換された。
次いで、実施例1と同様にソース電極、ドレイン電極を金蒸着により形成して薄膜トランジスタ素子17を作製した(図4(5))。
実施例1同様に、薄膜トランジスタ素子17の作製において、半導体前駆体薄膜の形成に用いた硝酸塩を、等モルの硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩にそれぞれ代えて半導体前駆体薄膜を形成した以外は同様にして薄膜トランジスタ素子18〜22を作製した。
また、金属塩を硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを用いる代わりに等モルの塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化ガリウムを用いアセトニトリル溶液とした以外は同様にして、比較の薄膜トランジスタ素子23を作製した。
ソース電極、ドレイン電極それぞれのサイズは、幅10μm、長さ50μm(チャネル幅)厚さ50nmであり、ソース電極、ドレイン電極の距離(チャネル長)は15μmとなるようにした。
実施例1と同様に各薄膜トランジスタ素子の特性を、それぞれ、ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)について観測し、その飽和領域から見積もられた移動度(cm/Vs)と、on/off比、閾値(Vth)について見積もった。
結果を以下に示す。
実施例1と同様に、比較である塩化物(Cl塩)を用いたものに比べ、本発明の方法により作製したものはキャリア移動度が高く、on/off比についても比較同等乃至比較よりも高く、閾値も低い。特に硝酸塩を用いたものは、キャリア移動度、on/off比、閾値とも本発明内でもより優れた効果を示した。
実施例3
半導体前駆体の材料として、硝酸インジウム〔In(NO〕、硝酸亜鉛〔Zn(NO〕、硝酸ガリウム〔Ga(NO〕をその比率を変えて用いて半導体組成の異なる薄膜トランジスタ素子を作製した(図5)。
まず、ゲート電極4としての比抵抗0.02Ω/cmのSiウエハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層5とした。
以下、これを基板と呼ぶ。オゾン雰囲気下70℃で10分間UV光を照射して基板を洗浄した。
次に、前駆体材料である金属塩塗布液を作製した。
In、Ga、Znの各硝酸塩が硝酸塩トータルで10質量%になるように混合して純水に溶解した。室温で10分間攪拌後、超音波にてさらに10分間分散した。
次いでメッシュ径0.2μmのフィルタを通し、脱泡のため超音波で10分間処理さらに減圧で5分間超音波処理した。
調製した塗布液を、基板温度を100℃に保ちながら、ピエゾ式インクジェットにより半導体層チャネル領域に吐出形成して前駆体材料薄膜を形成した。
基板温度を100℃に保ち乾燥の後、さらに150℃に温度を上げ乾燥した。
マイクロ波を次に基板側から照射してSi基板からの間接加熱で前駆体材料薄膜を焼成(300℃)して、半導体層1に転化した(厚さ50nm)。
マイクロ波照射はマルチモードタイプの2.45GHzマイクロ波照射機(四国計測工業(株)製 μ−reactor)を用いて、大気雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を基板側から照射して焼成し前駆体材料薄膜1′を半導体層1に変換した。半導体面側のみ断熱材で保温し、熱電対による表面温度計を用いて、500W出力で300℃まで昇温後、マイクロ波出力をPID制御しながら薄膜の表面温度を300℃に保つように、30分間マイクロ波の照射を行った。
次いで、ソース電極、ドレイン電極を、マスクを用いて金を蒸着することで形成し薄膜トランジスタ素子を作製した。
なお、作製したソースおよびドレイン電極は幅100μm、厚さ100nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmとした。図5に作製した薄膜トランジスタ素子の断面構成図を示した。
In、Ga、Znの各硝酸塩の比率を表3のように変化させて前駆体材料である金属塩塗布液を作製した。各金属の比率モル比は仕込み比率また焼成後酸化物半導体形成後の比率両方を求めた。形成された半導体層の薄膜組成は、ESCAにより金属の組成比を検出し、極表面部と絶縁膜界面極近傍を除いた部分の平均比率として求めた。
作製された薄膜トランジスタ素子24〜34について、実施例1と同様に各薄膜トランジスタ素子の特性を、それぞれ、ソース、ドレイン間電圧を40V、ゲート電圧を−40V〜+40V間で掃引し、移動度(μ)(cm/Vs)、on/off比、閾値(Vth)についてそれぞれ見積もった。
表3に示すように請求の範囲第6項の範囲に塗布液の各金属比率が入るTFT素子については良好な性能を示していることがわかる。
実施例4
図3に薄膜トランジスタの製造プロセスを概略の断面図で示した。
(薄膜トランジスタ素子35の作製)
支持体6として、厚さ0.5mmの石英基板を用い、スパッタにて、厚さ150nmのITO皮膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極4を形成した。
次いで、大気圧プラズマCVD法により、厚さ200nmの酸化珪素からなるゲート絶縁層5を形成した。なお、大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax(表面粗さ)5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
これにより、ゲート電極4、ゲート絶縁層5が支持体6であるガラス基板上に形成された(図3(1))。
次ぎに、半導体層を形成した。
(半導体前駆体薄膜の形成)
硝酸インジウム、硝酸ガリウムを金属比率で1:0.5(モル比)で混合して10質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成部にインクジェット塗布し150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体薄膜1′を形成した(図3(2))。
その後、この基板に、マルチモードタイプの2.45GHzマイクロ波照射機(四国計測工業(株)製 μ−reactor)を用いて、大気雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。半導体面側のみ断熱材で保温し、熱電対による表面温度計を用いて、500W出力で600℃まで昇温後、マイクロ波出力をPID制御しながら薄膜の表面温度を600℃に保つように、20分間マイクロ波の照射を行った。半導体前駆体材料薄膜1′は半導体層1に変換された。
次いで、実施例1と同様にソース電極、ドレイン電極を金蒸着により形成して薄膜トランジスタ素子35を作製した(図4(5))。
実施例4同様に、薄膜トランジスタ素子35の作製において、半導体前駆体薄膜の焼成温度(マイクロ波照射時の表面温度)を、400℃、300℃、200℃、150℃に、それぞれ変えて半導体前駆体薄膜を形成した以外は同様にして薄膜トランジスタ素子36〜39を作製した。
また、半導体前駆体薄膜の焼成を、マイクロ波照射ではなく、電気炉を用い、600℃、300℃でそれぞれ加熱して行った以外は同様に、薄膜トランジスタ素子40、41を作製した。形成された半導体層の薄膜組成を、ESCAにより求めたところ、いずれの薄膜トランジスタ素子も、インジウムとガリウムの比率が約1であった。
ソース電極、ドレイン電極それぞれのサイズは、幅10μm、長さ50μm(チャネル幅)厚さ50nmであり、ソース電極、ドレイン電極の距離(チャネル長)は15μmとなるようにした。
実施例1と同様に各薄膜トランジスタ素子の特性を、それぞれ、ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)について観測し、その飽和領域から見積もられた移動度(cm/Vs)と、on/off比、閾値について見積もった。
またそれぞれの素子について、半導体薄膜のXRD測定を行い、ピークの有無を精査したところ、素子35および40については、2θ=31°に回折ピークが現れたが、他の素子はピークが確認できず、非晶質の薄膜であることが判った。
結果を以下に示す。
比較例
実施例4において、半導体薄膜の成膜をスパッタ法に変えた以外は、全く同様に薄膜トランジスタ素子42を作製した。インジウムとガリウムの比率が1:1である酸化物のターゲットを用いてマグネトロンスパッタ法により成膜し、薄膜組成を、ESCAにより求めたところ、インジウムとガリウムの比率が約1であった。薄膜トランジスタ素子42を作製する条件では、各素子の特性のばらつきが大きく、移動度は0.02〜1.0cm/Vs、on/off比は4〜7桁、閾値は−20V〜+20Vの範囲で、測定値がばらついた。電気炉中で大気中300℃にて20分加熱したところ特性が安定し、移動度は0.3cm/Vs、on/off比は5桁、閾値は15Vであった。

Claims (7)

  1. 金属塩を含有する半導体前駆体層に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法において、前記金属塩が、金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、かつ、前記半導体前駆体層が、In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、以下の関係式を満たすように、各金属の金属塩を溶液とした塗布液を塗布することにより形成され、前記半導体変換処理が、200℃以上400℃以下の熱処理であることを特徴とする金属酸化物半導体の製造方法。
    金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:0〜5
  2. 前記金属塩の溶液が水溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  3. 前記金属塩が硝酸塩であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  4. 前記熱処理をマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)照射することにより、前記半導体前駆体層の表面温度が100℃以上400℃以下となるように行うことを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  5. 請求の範囲第1項〜第項のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法により製造されたことを特徴とする金属酸化物半導体。
  6. 請求の範囲第項に記載の金属酸化物半導体を用いたことを特徴とする半導体素子。
  7. 請求の範囲第項に記載の金属酸化物半導体を用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
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