JP2010258057A - 金属酸化物半導体、その製造方法、及びそれを用いた薄膜トランジスタ - Google Patents

金属酸化物半導体、その製造方法、及びそれを用いた薄膜トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】低温化されたプロセス温度で製造でき、かつ、キャリア移動度や電流オン・オフ比の高い薄膜トランジスタを実現することができる金属酸化物半導体とその製造方法を提供し、当該金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】金属酸化物半導体前駆体水溶液を基材上に塗布、乾燥し、金属酸化物半導体前駆体膜を形成し、該金属酸化物半導体前駆体膜を転化することにより金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法であって、前記金属酸化物半導体前駆体膜の形成から、転化行程までのあいだに加熱処理を施すことを特徴とする金属酸化物半導体の製造方法、金属酸化物半導体及び薄膜トランジスタ。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属酸化物半導体、その製造方法、及びそれを用いた薄膜トランジスタに関する。より詳しくは、低温化されたプロセス温度で製造でき、かつ、キャリア移動度や電流オン・オフ比の高い薄膜トランジスタを実現することができる金属酸化物半導体、その製造方法、及び当該金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに関する。
金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、適宜、「TFT」と略す。)については知られている。例えば、金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの技術が開示されて(例えば、特許文献1〜3参照)いる。これら金属酸化物半導体を用いたTFTは高性能を示すが、パルスレーザー蒸着法やスパッタ法等の、真空プロセスを用いる。また、プロセス温度が高く、樹脂基板を用いることができない。さらに、ターゲットの焼結形成等には高い温度を要するなどエネルギー効率も悪い。
また、金属塩や有機金属を分解酸化(加熱、分解反応)することで、非晶質金属酸化物半導体を形成する方法も知られている(例えば、特許文献4及び5参照。)。
これらにおいては、前駆体の酸化に、熱酸化または、プラズマ酸化を用いている。しかしながら、これらの前駆体の熱酸化を用いる場合においても、300℃以上、実質400℃以上の非常に高い温度域で処理しないと、求めるキャリア移動度や電流オン・オフ比のなどのトランジスタ特性の達成は通常は難しい。従って、これらにおいても、エネルギー効率が悪く、比較的長い処理時間を要してしまうことや、また、性能のバラツキも出やすく、さらに、処理中の基板温度も処理温度と同じ温度まで上昇するため、軽くて、フレキシビリティを有する樹脂基板などへの適用が困難となっている。
特開2006−165527号公報 特開2006−165528号公報 特開2007−73705号公報 特開2003−179242号公報 特開2005−223231号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、低温化されたプロセス温度で製造でき、かつ、キャリア移動度や電流オン・オフ比の高い薄膜トランジスタを実現することができる金属酸化物半導体とその製造方法を提供することである。また、当該金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.金属酸化物半導体前駆体水溶液を基材上に塗布、乾燥し、金属酸化物半導体前駆体膜を形成し、該金属酸化物半導体前駆体膜を転化することにより金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法であって、前記金属酸化物半導体前駆体膜の形成から、転化行程までのあいだに加熱処理を施すことを特徴とする金属酸化物半導体の製造方法。
2.前記金属酸化物半導体前駆体膜の水分量が、前記加熱処理を施すことで金属酸化物半導体前駆体膜の1〜200質量%になることを特徴とする前記1に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
3.前記金属酸化物半導体が、In、Zn、Snのいずれかの元素を含むことを特徴とする、前記1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
4.前記金属酸化物半導体が、Ga、Alのいずれかの元素を含むことを特徴とする、前記1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
5.前記金属酸化物半導体が、金属元素としてInおよびGaのみを含むことを特徴とする、前記1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
6.金属酸化物半導体への転化行程が、マイクロ波加熱であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法により作製したことを特徴とする金属酸化物半導体。
8.前記7に記載の金属酸化物半導体を使用したことを特徴とする薄膜トランジスタ。
本発明の上記手段により、低温化されたプロセス温度で製造でき、かつ、キャリア移動度や電流オン・オフ比の高い薄膜トランジスタの実現を可能とする金属酸化物半導体とその製造方法を提供することができる。また、当該金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを提供することができる。
本発明では、金属酸化物半導体の前駆体材料を塗布するため、真空下でなく、常圧下で効率的な生産が可能となり、低温プロセスで良質な金属酸化物半導体膜を形成可能であり、例えば、樹脂基板上に形成された金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタであって、高いトランジスタ特性を有しその性能のバラツキの少ない薄膜トランジスタの提供が可能となる。
薄膜トランジスタ素子の代表的な構成を示す図である。 薄膜トランジスタシートの1例の概略の等価回路図である。 薄膜トランジスタ製造の各工程を示す断面模式図である。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の金属酸化物半導体は、基板上に形成された金属酸化物半導体であって、金属酸化物半導体前駆体膜に加熱処理を施した後で、金属酸化物半導体へ転化することにより作製されたことを特徴とする。
本発明に係る金属酸化物半導体は、金属元素としてIn、Zn、及びSnのいずれかの元素を含むことが好ましい。また、当該金属酸化物半導体が、金属元素としてGa及びAlのいずれかを含む態様であることも好ましい。さらに、金属元素としてIn及びGaのみを含む態様であることも好ましい。
本発明においては、金属酸化物半導体は、半導体前駆体の溶液または分散液の塗布膜から形成される。
塗布、すなわち、ウェットプロセスにより形成されることから、真空設備を必要とせず、均一な膜厚をもつ前駆体薄膜が形成される。更に、熱処理、またはプラズマ酸化等によってこれを金属酸化物半導体に転化し形成されるところから、大規模な真空設備を要しない。また、スパッタ法等のように成膜後に、高温の焼成処理を行うことなく、容易に金属酸化物半導体を形成でき、これを用いた薄膜トランジスタが比較的低温で製造できる。
これまで、例えばIn−Ga−Zn−O系アモルファス金属酸化物半導体膜は、InGaO(ZnO)(m=1〜5)組成で表される多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法で形成される。
これの非晶質薄膜金属酸化物半導体は移動度も高く高性能だが、パルスレーザー蒸着法またはスパッタ法等により形成されることが普通であるため、かなりの高温を必要とし、また、ターゲット自体の製造においては1000℃以上にもなる非常に高い温度を必要とする。従って半導体をプラスチック等の基板上に形成することは難しかった。
ウェットプロセスによる形成は、上記のスパッタ法等に比べると低温化されているとはいえ、金属組成等の構成によっては、充分な低温化が難しく、樹脂基板に適用するためには、更に低温での半導体への転化処理が望ましい。
本発明は、250℃以下の熱処理によっても、半導体前駆体の塗布膜を、金属酸化物半導体に熱転化し、かつ、高い移動度を有する金属酸化物半導体を得る構成を見いだしたものである。
本発明においては、基板上に、半導体前駆体材料の溶液または分散液の塗布膜を配置して、これに熱酸化またプラズマ照射等の変化処理を施して、前駆体材料を金属酸化物半導体に転化する。
(金属酸化物半導体前駆体材料)
金属酸化物半導体前駆体材料とは、熱酸化、プラズマ酸化等の転化処理によって金属酸化物からなる半導体層に転化される材料を意味し、具体的には、例えば、以下の金属原子含有化合物が挙げられる。
金属原子含有化合物としては、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
本発明において、これらの金属塩においてはインジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかの塩を一つ以上含むことが好ましく、それらを併用させてもよい。
また、その他の金属として、ガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)のいずれかの塩を含むことが好ましい。
その中でも、更に好ましくはインジウム(In)とガリウム(Ga)で構成されていることである。
金属塩としては、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、アセチルアセトナート塩等を、ハロゲン化金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物、フッ化物等を好適に用いることができる。
有機金属化合物を用いる場合は、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
一般式(I): R MR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えばアセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシ基として、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。
以上の金属酸化物半導体前駆体のうち、好ましいのは、金属の硝酸塩、金属のアセチルアセトナート塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、インジウム(3価)アセチルアセトナート、ガリウム(3価)アセチルアセトナート、亜鉛(3価アセチルアセトナート)、アルミニウム(3価)アセチルアセトナート、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムなどが挙げられる。
金属塩のなかでは、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸錫等が挙げられる。
特に硝酸塩で得られる半導体特性向上の効果は、加熱温度が100℃以上、400℃以下の温度範囲で得られる非晶質の金属酸化物半導体において、特に顕著である。非晶質酸化物の半導体の良好な状態が、金属塩を原料とした半導体薄膜で得られることは従来知られておらず、本発明で得られる顕著な効果といえる。
(金属酸化物半導体前駆体膜の成膜方法、パターン化方法)
本発明の金属酸化物半導体前駆体膜は前駆体金属化合物を適切な溶媒に溶解した溶液を用い基板上に塗設する。これにより生産性を大幅に向上させることができる。これらの観点からも、金属化合物としては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、金属アルコキシド等を用いること事が溶解性の観点からより好ましい。中でも硝酸塩が好ましい。
金属酸化物半導体前駆体水溶液の溶媒としては、水の他、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、更に、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を好適に用いることができる。特に、金属塩の溶解性、塗布後の乾燥性の観点から水および低級アルコールが好ましく、低級アルコールの中ではメタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノールおよびイソプロパノール)が乾燥性の観点で好ましい。また、溶媒として低級アルコールを単独で用いてもよいし、水と任意の割合で混合して用いてもよい。溶解性と溶液安定性および乾燥性の観点から水とこれら低級アルコール類を混合して本発明に係る水溶液を作製することが好ましい。低級アルコールを混合して水溶液を作製すると、大きな組成の変化を行わず表面張力を下げることができるので、インクジェット塗布等において出射性が向上するので好ましい。
さらにアルコール類添加の効果として、半導体特性の向上の効果が認められる。例えば薄膜トランジスタのキャリア移動度、電流on/off比、閾値などの特性の向上が認められている。この効果の原因について明確でないが、加熱による酸化物の生成プロセスに影響しているものと推察される。
また乾燥性およびインクジェット出射性、薄膜トランジスタの特性など半導体特性を考慮した場合、溶媒比率で5質量%以上の低級アルコール添加が好ましく、いずれの特性(乾燥、出射性と溶液安定性)も満たすには水/低級アルコール比率が5/95〜95/5であることが好ましい。
本発明に係る金属酸化物半導体前駆体水溶液とは、溶媒中の水含有率が30質量%以上の混合溶媒および水(水含有率=100質量%)に溶質(本発明では金属塩とその他必要に応じて添加される添加剤)を溶解した溶液を意味する。金属塩等溶質の溶解性、溶液安定性の観点から好ましくは水含有率は50質量%以上であり、更に好ましくは水含有率が70質量%以上である。
本発明に係る金属塩の中でも、水に対する劣化、分解、また容易に溶けること、さらに潮解性等の性能においても優れた性質を持つ硝酸塩が最も好ましい。
また、溶媒中に金属アルコキシドと種々のアルカノールアミン、α−ヒドロキシケトン、β−ジケトンなどの多座配位子であるキレート配位子を添加すると、金属アルコキシドを安定化したり、カルボン酸塩の溶解度を増加させることができ、悪影響が出ない範囲で添加することが好ましい。
金属塩を含有する溶液を基材上に基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体薄膜を形成する方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミストコート法、エアードクター法など塗布法、また、凸版、凹版、平版、転写、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法などが挙げられる。塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。これらのうち、好ましいのは薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。中でも静電吸引方式のスーパーインクジェット法は微細な描画が可能なことから好ましい。
例えば、インクジェット法を用いて製膜する場合、金属塩溶液を滴下して80℃〜100℃程度で溶媒(水)を揮発させることにより金属塩を含有する半導体前駆体層薄膜が、形成される。なお溶液を滴下する際、基板自体を80℃〜150℃程度に加熱しておくと、塗布、乾燥の2プロセスを同時に行え、前駆体膜の増膜性も良好なため好ましい。
これらの前駆体となる金属を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(加熱処理)
本発明の効果を得るためには、金属酸化物半導体前駆体膜を転化する前に加熱処理を施す必要がある。
加熱は、あらゆる適切な加熱手段により行われるが、各種電気オーブン、ドライ・ヒートブロック、マイクロウェーブ・オーブン、各種ヒータなどが例示される。しかし、これらに限定されるものではない。
加熱温度は50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することができる。
詳細は明らかではないが、金属酸化物半導体転化前の加熱により、金属酸化物半導体前駆体膜と基材との界面が良好に作られ、キャリア移動を抑制する半導体中の深いトラップを形成しにくいため、高い移動度、on/off比が得られるものと推定している。
また加熱により得られた、金属酸化物半導体前駆体膜の水分量について、金属酸化物半導体前駆体膜に対して、1〜200質量%であることが好ましい。水分量を1〜200質量%に納めることで、上記界面形成の効果が十分に得られるものと想定している。
水分量を計測するためには広く水分量の分析に使用されている、カールフィッシャーの電量滴定法を利用することが出来る。
電量滴定法は、滴定セルの主室には陰極液と測定対象の試料が入れられる。陰極液はメタノール、イミダゾール、二酸化硫黄、ヨウ化物イオンからなる。
滴定セルには陰極を陰極液に浸した小室も備えられており、2つの室はイオン透過膜によって仕切られる。
回路より電流が通ぜられると白金陰極上でヨウ素が生じる。全体としての反応は、IによるSOの酸化である。1モルの水分子に対し、1モルのIが消費される。
滴定の終点に達するまでに要したIを発生させるための電流の量から、試料に含まれていた水の量が計算できる。
一般に終点は双極電極法によって検出される。検出器回路として、陰極とは別の一対の白金電極を陰極液に浸し、滴定中、これら検出電極間に一定の電流を通じておく。等電点以前では溶液にはIと少量のIが含まれるが、等電点に達すると過剰のIが発生して突然電圧が下がり、これによって終点が示される。
この方法により水分量を計測することが出来る。
(金属の組成比)
本発明の製造方法においては、前述した金属原子から選ばれた単独、または複数の金属原子を含む金属酸化物半導体の薄膜を作製する。金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
形成された金属酸化物半導体に含まれる金属原子は、前駆体の記述に挙げた物と同様に、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかを含むことが好ましく、さらにガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。
これらの金属を成分として含む前駆体溶液を作製する場合、好ましい金属の組成比としては、In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C=Zn)とのモル比率(金属A:金属B:金属C)が以下の関係式を満たすことが好ましい。
金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:0〜5
である。
金属塩としては硝酸塩が最も好ましいので、In、Sn(金属A)と、Ga、Al(金属B)と、Zn(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、上記の関係式を満たすように、各金属の硝酸塩を、水を主成分とした溶媒に溶解・形成した塗布液を用いて金属無機塩を含む前駆体薄膜を塗布により形成することが好ましい。
また前駆体となる金属無機塩を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(非晶質金属酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質(アモルファス)の薄膜を用いる。非晶質であることは、X線回折や電子線回折により確認でき、結晶に固有の回折パターンが観測されなければ非晶質と見なすことができる。
金属酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質金属酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。なお、本発明に係るアモルファス金属酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度を更に下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、更には1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
前駆体の組成比と、形成される金属酸化物半導体の金属組成比は必ずしも一致しないので、形成される金属酸化物半導体での前記金属比率を達成するため、前駆体の混合比を焼成後の金属酸化物中の比率において、前記の値となるよう、試行により調整し塗布する必要がある。
本発明の転化工程とは、金属酸化物半導体前駆体膜から、金属酸化物半導体を形成する工程であって、前記半導体転化処理を意味する。金属無機塩から形成された前駆体薄膜を金属酸化物半導体に転化する方法としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理が挙げられる。また後述するマイクロ波照射を用いることができる。
本発明において、前駆体材料を加熱する温度は前駆体を含有する薄膜表面の温度が50℃〜1000℃の範囲で任意に設定できることができるが、電子デバイスのデバイス特性や、生産効率の観点から、100℃〜400℃にすることが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、放射温度の測定が可能な放射温度計、ファイバー温度計などにより測定できる。加熱温度は電磁波の出力、照射時間、さらには照射回数により制御することが可能である。また前駆体材料を加熱する時間は、任意に設定できるが、電子デバイスの特性や生産効率の観点から、1秒以上60分以下の時間が好ましい。好ましくは5分〜30分である。
また金属酸化物の形成はESCA等により検知でき、半導体への転化が十分行われる条件を予め選択することができる。
また酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素を含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、金属塩を含有する前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源としては0.5kHz以上、2.45GHz以下、また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm以上、50W/cm以下である。
供給するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号等に記載されている。
またUVオゾン法は酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nm、特に好ましくは150nm〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく100〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、あるいは前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また金属塩を含有する薄膜を酸化処理した後、基材を50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は、酸化と同時に行っても良く、酸化による金属酸化物半導体への転化を迅速に行うことができる。
金属酸化物半導体への転化後、形成される半導体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmが好ましい。
本発明においては、前記半導体転化処理として、マイクロ波(0.3〜50GHz)照射の工程を含むことが好ましい。また酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
(マイクロ波の照射)
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体から形成された薄膜を半導体に転化する方法として、マイクロ波照射を用いることが好ましい。
即ち、これらの金属酸化物半導体の前駆体となる金属酸化物半導体前駆体を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し、電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)を照射する。
金属酸化物半導体の前駆体となる金属酸化物半導体前駆体を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、熱が発生して薄膜が内部から、均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板には、マイクロ波領域に吸収がほとんどないため、基板自体は殆ど発熱せずに薄膜部のみを選択的に加熱し熱酸化、金属酸化物半導体へ転化することが可能となる。
マイクロ波照射による加熱(「マイクロ波加熱」ともいう。)においては、一般的な様にマイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、且つ非常に短時間で昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜のみを酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物前駆体を金属酸化物に転化することが可能となる。また加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
一般に、マイクロ波とは、0.3GHz〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8GHzおよび1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。また、28GHz、また50GHz等の発信器を市場で入手できる。
オーブンなどを用いた通常の加熱方法に比較し、本発明に係る電磁波(マイクロ波)照射による加熱方法を用いることで、より良好な金属酸化物半導体層を得ることができる。金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するに際し、伝導熱以外の作用、例えば金属酸化物半導体前駆体材料への電磁波の直接的な作用を示唆する効果が得られている。機構は十分に明らかになっていないが、金属酸化物半導体前駆体材料の加水分解や脱水、分解、酸化等による金属酸化物半導体への転化が電磁波により促進された結果と推定される。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層にマイクロ波照射を行って、半導体転化処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。尚、酸素の存在下でマイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板のような耐熱性が低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで前駆体を含有する薄膜の表面温度が100℃以上、400℃未満になる様に処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、または非接触の表面温度計により測定が可能である。
また、ITOの様な強い電磁波吸収体が近傍(たとえばゲート電極等)に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することもできる。
本発明の金属酸化物半導体薄膜はトランジスタ、ダイオードなどの各種の半導体素子、また電子回路等に用いることができ、基板上に前駆体材料の溶液を塗布することによって低温プロセスでの金属酸化物半導体層の作製が可能であり、樹脂基板を用いる薄膜トランジスタ素子(TFT素子)等、半導体素子の製造に好ましく適用することができる。
本発明の金属酸化物半導体を用いて、ダイオードやフォトセンサに用いることもできる。例えば後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで、ショットキーダイオードや、フォトダイオードを作製することも可能である。
(素子構成)
図1は、本発明に係わる金属酸化物半導体を用いた、薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。
薄膜トランジスタの構成例を幾つか断面図にて図1(a)〜(f)に示す。図1において、ソース電極102、ドレイン電極103を、金属酸化物半導体からなる半導体層101がチャネルとして連結するよう構成される。
同図(a)は、支持体106上に本発明の方法によりソース電極102、ドレイン電極103を形成して、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層101を形成し、その上にゲート絶縁層105を形成し、さらにその上にゲート電極104を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層101を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体106上に、まず、半導体層101を形成し、その後ソース電極102、ドレイン電極103、そして絶縁層105を形成した後、ゲート電極104を形成したものを表す。本発明においては、半導体層が本発明の方法で形成されていればよい。
同図(d)は、支持体106上にゲート電極104を形成した後、ゲート絶縁層105を形成し、その上にソース電極102およびドレイン電極103を形成し、該電極間に半導体層101を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
図2は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。
薄膜トランジスタシート120はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子124を有する。121は各薄膜トランジスタ素子124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ素子124のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。これら薄膜トランジスタシート120における各トランジスタ素子のソース、ドレイン電極又ゲート電極等、さらにゲートバスライン、ソースバスライン、また回路配線の製造に本発明を用いることができる。
次いで、TFT素子を構成する各要素について説明する。
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
ソース、ドレイン、あるいはゲート電極等の電極、またゲート、あるいはソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号公報にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、窒化ケイ素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
上記基材に表面処理また、下引き層を塗布してもかまわない。表面処理はプラズマ処理、UV処理、オゾン処理、コロナ放電等が利用でき、それらを併用することもできる。下引き層は特に限定は無いが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機層、またはポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等の有機層、およびそれらを併用または積層する事が可能である。またこれら下引き層の膜厚としては2nmから3μm、好ましくは5nm〜1μmである。
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
(ゲート絶縁層)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
ゲート絶縁層(膜)が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
以下、本発明に係る酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの製造方法について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1
(石英基板上での薄膜トランジスタの作製)
本発明の好ましい実施形態における薄膜トランジスタ製造の各工程を図3の断面模式図を用いて説明する。
支持体301として、石英ガラス基板(500μm)を用い、この上に、先ず、50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
(下引き層の形成)
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
更にその層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層(バリア層)310とした(図3(1))。なお、大気圧プラズマ処理装置は特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
次いで、ゲート電極を形成する。スパッタ法により、厚さ300nmのITO膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極302を形成した(図3(1))。
次いで、更にフィルム温度200℃にて、上述した大気圧プラズマ法により厚さ180nmの酸化珪素膜を設けゲート絶縁層303を形成した(図3(2))。
次いで、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、更に、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、ゲート絶縁膜表面全面がOTSと反応し表面処理された。表面処理によりオクチルトリクロロシランによる単分子膜が形成するが図では便宜的に表面処理層308でこの単分子膜を表した(図3(3))。
この表面処理を行ったSiウェハー上に、半導体チャネル領域に対応させた光透過部を有するフォトマスクMを介して、低圧水銀灯から波長254nmの紫外光を照射した(図3(4))。これにより、露光部の表面が分解され、表面処理部が親水化された。エタノールで洗浄し分解物を除去して、チャネル領域に対応する部分のゲート絶縁層303表面を露出させた(図3(5))。
次に、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属モル比で1:1:1となるよう混合し10質量%水溶液(10質量%エタノールを含有)としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェットを用いて半導体層パターン(略ゲート電極パターン)に従ってインクを吐出し、金属酸化物半導体前駆体膜306′を形成した(図3(6))。
なお、インクジェットで吐出する際の基材をホットプレートにより表1に示す温度に加熱し、乾燥温度とした。
続いて、電気オーブンを表1に示す温度に設定し、各サンプル大気中で10分の加熱処理を施した。形成した前駆体材料薄膜306′の平均膜厚は20nmであった。
更に、支持体側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し250℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に転化され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図3(7))。表面温度は熱電対を用いた表面温度計により測定した。
更に、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、更に、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、形成した酸化物半導体層306表面もOTSと反応し単分子膜が形成され表面処理された。同様に、表面処理層308でこの単分子膜を表した(図3(8))。
次いで、半導体層上の保護膜の形成領域以外を覆うマスクを用いて、保護膜形成領域を254nmの紫外光にて照射した(図3(9))。半導体層上の保護膜形成領域の表面処理層308を分解し半導体層を露出させた。なお、保護膜の幅がチャネル長(ソース電極304、ドレイン電極305の距離)を形成するので、保護膜の幅が15μmとなるよう露光領域を調整し半導体層のチャネル領域のみ露出させた(図3(10))。
次に酸化物半導体層306上にパーヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 アクアミカNP110(登録商標))キシレン溶液を前記同様の静電吸引方式のインクジェット装置を用いて酸化物半導体層内の所定の領域に適用した(図3(11))。次いでこれを150℃〜500℃の範囲、ここでは前記同様にマイクロ波を照射してゲート電極の発熱により200℃、で20分程度の熱処理を行って、二酸化ケイ素の薄膜層に転化させ保護層307を形成した(図3(12))。保護層の厚みは200nmであった。
次に、前記と同様の大気圧プラズマ装置を用い下記条件で酸素プラズマ処理し残っている表面処理層308を分解し、ゲート絶縁層303および酸化物半導体層306の表面の一部を露出させた(図3(13))。
(使用ガス)
不活性ガス:窒素ガス 98体積%
反応性ガス:酸素ガス 2体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
次に、銀微粒子分散液(Cabot社製 CCI−300(銀含有率20質量%))を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドから射出し、半導体層の露出領域を含むソース電極、ドレイン電極部分に印刷を施した。次いで200℃で30分間熱処理して、ソース電極304およびドレイン電極305を形成した(図3(14))。それぞれのサイズは、幅40μm、長さ100μm(チャネル幅)厚さ100nmであり、ソース電極304、ドレイン電極305の距離(チャネル長)は20μmとした。
以上の方法により界面活性剤添加量が異なる5種の薄膜トランジスタ1−1〜1−9を作製した。
上記で作製した薄膜トランジスタについて、ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−30Vから+30Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)について観測し、その飽和領域から移動度(cm/Vs)を見積もった。また、ドレイン電流の立ち上がりのゲート電圧Vg(on)、およびドレイン電流の最大値と最小値の比の常用対数の値(on/off比)を評価し、それらの結果について表1に示した。
Figure 2010258057
表1に記載の如く、金属酸化物半導体前駆体膜に加熱処理を施すことで、薄膜トランジスタの移動度が高く、良好に駆動し、n型のエンハンスメント動作を示した。しかしながら、加熱処理を施していないものは移動度が低く満足なトランジスタ性能は得られなかった。
以上のように、金属酸化物半導体前駆体溶液に界面活性剤を添加することで移動度の高い半導体層を形成することがわかる。
実施例2
実施例1において半導体前駆体溶液の硝酸金属比率を硝酸インジウム、硝酸ガリウムで1:0.5(金属モル比)に変更し、基板を石英からポリイミド基板にし、さらにマイクロ波での転化温度〔(図3(7))〕を250℃から200℃に変更した以外は、全く同条件で薄膜トランジスタを2−1〜2−9を作製し、同様にトランジスタ性能を評価した結果を表2に示す。
Figure 2010258057
表2に記載の如く、IGO半導体では、低温での半導体転化にもかかわらず、実施例1同様に本発明の効果が得られており、金属酸化物半導体薄膜トランジスタとして良好に駆動することが分かった。
1 半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
6 支持体
10 薄膜トランジスタシート
11 ゲートバスライン
12 ソースバスライン
14 薄膜トランジスタ素子
15 蓄積コンデンサ
16 出力素子
17 垂直駆動回路
18 水平駆動回路
306′ 前駆体材料薄膜
301 支持体
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁層
304 ソース電極
305 ドレイン電極
306 酸化物半導体層

Claims (8)

  1. 金属酸化物半導体前駆体水溶液を基材上に塗布、乾燥し、金属酸化物半導体前駆体膜を形成し、該金属酸化物半導体前駆体膜を転化することにより金属酸化物半導体を形成する金属酸化物半導体の製造方法であって、前記金属酸化物半導体前駆体膜の形成から、転化行程までのあいだに加熱処理を施すことを特徴とする金属酸化物半導体の製造方法。
  2. 前記金属酸化物半導体前駆体膜の水分量が、前記加熱処理を施すことで金属酸化物半導体前駆体膜の1〜200質量%になることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  3. 前記金属酸化物半導体が、In、Zn、Snのいずれかの元素を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  4. 前記金属酸化物半導体が、Ga、Alのいずれかの元素を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  5. 前記金属酸化物半導体が、金属元素としてInおよびGaのみを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  6. 金属酸化物半導体への転化行程が、マイクロ波加熱であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属酸化物半導体の製造方法により作製したことを特徴とする金属酸化物半導体。
  8. 請求項7に記載の金属酸化物半導体を使用したことを特徴とする薄膜トランジスタ。
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