JP2011009619A - 薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタ - Google Patents

薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】ポリマー絶縁層及び無機層から構成されるゲート絶縁層を有し、溶液により塗布可能な半導体前駆体材料を用いこれに半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を有することにより、移動度が高く、閾電圧が低く、且つ、On/Off特性が良好な薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】支持体6上にゲート電極5、ゲート絶縁層2、ソース電極3及びドレイン電極4、金属酸化物半導体層1を有する薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁層が、ポリマー絶縁層2a該ポリマー絶縁層上の無機層2bからなり、無機層2bの上に金属酸化物半導体前駆体材料の溶液を用いて金属酸化物半導体前駆体層を形成する工程を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は薄膜トランジスタの製造方法、詳しくは、ポリマー絶縁層及び無機層から構成されるゲート絶縁層を有し、溶液により塗布可能な半導体前駆体材料を用いこれに半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を製造する塗布型の金属酸化物半導体を有する薄膜トランジスタの製造方法及び該製造方法を用いて得られた薄膜トランジスタに関する。
金属塩や有機金属を分解酸化(加熱、分解反応)することで、酸化物半導体を形成する方法が知られている。
また、有機金属を分解酸化(加熱、分解反応)し、酸化物半導体を形成する方法も知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
これらにおいては、前駆体の酸化に、熱酸化または、プラズマ酸化を用いている。しかしながら、前駆体の酸化に熱酸化法を用いる場合、最低400℃以上、実質550℃以上の非常に高い温度域で処理しないと求める性能達成は通常は難しい。従って、エネルギー効率が悪く、比較的長い処理時間を要してしまうことや、処理中の基板温度も処理温度と同じ温度まで上昇するため、軽く、フレキシビリティを有する樹脂基板などへの適用が困難となる。
また、プラズマ酸化の場合には、非常に反応性の高いプラズマ空間で処理を行うために、薄膜トランジスタの製造プロセスにおいては、電極や絶縁膜などを劣化させ、移動度やOff電流(暗電流)が悪化する等の問題を引き起こしてしまう。
また、前駆体として、有機金属や金属塩化物を用い熱酸化等により酸化物半導体を形成することも知られている(例えば、非特許文献1、2及び3参照。)。
例えば、金属アルコキシドを前駆体として用いる場合、高温処理が必要であるほかに残留カーボンによる性能劣化があり、また、前駆体として塩化物を用いる場合には、ハロゲン排出の問題を抱えている。
また、これらの前駆体は、雰囲気から混入した水により加水分解を起こす問題が発生し、また、溶媒として多量の有機溶剤を用いるために製造環境上も好ましくない。
また、これらの金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)は、移動度が低い、On/Off比が小さい、閾値が大きいなどの問題があった。
一方、スパッタ法による金属酸化物半導体の成膜を行い、薄膜トランジスタを製造した例が開示されている(例えば、特許文献3及び非特許文献4参照。)。
スパッタ法などの真空系の成膜装置を用いた製造は、バッチ生産が必要であり、生産効率が低いという問題がある。また、スパッタ法による金属酸化物半導体は、特性のばらつきが大きく、それらを安定化するには、高温の後加熱処理が必要になる問題があった。
一方、低温、且つ、塗布成膜可能なゲート絶縁膜を用いて高性能TFTへの要望があり、例えば、例えば、ゲート絶縁層が有機ポリマーからなる絶縁層とその表面を被覆するバリア層からなる有機TFTが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
また、無機ゲート絶縁膜と有機ゲート絶縁膜の積層構造を有するゲート絶縁膜を有する有機薄膜トランジスタが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかしながら、有機ポリマーからなる絶縁膜は、誘電率の低い材料で静電容量を大きくするには絶縁膜を薄くする必要があるが、ピンホールが発生しやすく、バリア層等が必要となることや、例え、バリア層等を形成した場合でも、層表面の特性が充分でないため、期待した程の絶縁性が得られず、また、溶液プロセスによって半導体層を形成する際の基板適性の悪さから、薄膜トランジスタとした時にOff電流(暗電流)が大きく、高移動度でのOn/Off比が充分とはいえず、更に、特性の向上が必要とされている。
特開2003−179242号公報 特開2005−223231号公報 特開2006−165527号公報 国際公開第2007/099689号パンフレット 特開2006−13468号公報
化学工業2006年12月号「ゾルゲル法による酸化物半導体薄膜の合成と応用」 Electrochemical and Solid−State Letters,10(5)H135−H138 Advanced Materials 2007,19,183−187 IDW’07(International Display Workshop 2007) p1783
本発明の目的は、ポリマー絶縁層及び無機層から構成されるゲート絶縁層を有し、溶液により塗布可能な半導体前駆体材料を用いこれに半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を有することにより、移動度が高く、閾電圧が低く、且つ、On/Off特性が良好な薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを提供することである。
本発明の上記課題は下記の構成により達成された。
1.支持体上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、金属酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタの製造方法において、
該ゲート絶縁層が、ポリマー絶縁層と該ポリマー絶縁層上の無機層からなり、該無機層の上に金属酸化物半導体前駆体材料の溶液を用いて金属酸化物半導体前駆体層を形成する工程を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
2.前記金属酸化物半導体前駆体層が酸化処理を施され、金属酸化物半導体前駆体材料が金属酸化物半導体に変換され、金属酸化物半導体層が形成されることを特徴とする前記1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
3.前記無機層は、ポリシラザン溶液を塗布する工程、次いで、得られた塗布膜を酸化処理により変換する工程を経て形成されたことを特徴とする前記1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
4.前記無機層が、ポリシラザン溶液を塗布する工程、次いで、得られた塗布膜をUV−オゾン処理を用いて酸化処理変換され、形成されたことを特徴とする前記3に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
5.前記無機層の膜厚が5nm〜50nmの範囲であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
6.前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくとも金属塩を含み、該金属塩が金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、且つ、金属酸化物半導体前駆体層が、少なくとも該金属塩を含有する溶液を塗布することにより形成される工程を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
7.前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくともIn、Zn、Snのいずれかの金属塩を含むことを特徴とする前記6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
8.前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくともGa、Alのいずれかの金属塩を含むことを特徴とする前記6または7に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
9.前記金属塩を含有する溶液が水溶液であることを特徴とする前記6〜8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
10.前記金属塩が硝酸塩であることを特徴とする前記6〜9のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
11.前記金属酸化物半導体前駆体材料が酸化処理により金属酸化物半導体へ変換される処理が100℃〜400℃の範囲での熱処理であることを特徴とする前記2〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
12.前記金属酸化物半導体前駆体材料が酸化処理により金属酸化物半導体へ変換される処理がマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)照射を含む処理であることを特徴とする前記2〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法により製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタ素子。
本発明により、ポリマー絶縁層及び無機層から構成されるゲート絶縁層を有し、溶液により塗布可能な半導体前駆体材料を用いこれに半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を製造する塗布型の金属酸化物半導体を有することにより、移動度が高く、閾電圧が低く、且つ、On/Off特性が良好な薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを提供することができた。
本発明の薄膜トランジスタの構成の一例を示す断面図である。 本発明の薄膜トランジスタの製造工程の一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明では、ゲート絶縁層がポリマー絶縁層とその上の無機層(無機層ともういう)からなり、且つ、該無機層には、表面処理剤を用いて表面処理を施し、表面を改質或いは調整して、ゲート絶縁層上に半導体材料溶液または分散液を用いて形成される半導体層との親和性を高めることで、移動度が高く、閾電圧が低く、且つ、On/Off特性が良好な薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを提供することができた。
尚、ゲート絶縁層と半導体層との親和性を高めることにより、フレキシブルな樹脂基板との適性を向上させ、ロールツウロールなどのプロセス適性も併せて可能としたものである。
《薄膜トランジスタ》
以下、本発明の薄膜トランジスタの実施形態について図1を参考にしながら詳細に説明する。
本発明の、薄膜トランジスタ(FET)は、ゲート電圧に印加する電圧によって半導体内のキャリア密度を制御してソース、ドレイン電極間の電流電圧特性を制御する素子である。図1に本発明の薄膜トランジスタの構造を示す一例を断面図にて示す。ここにおいて、1が半導体層、2がゲート絶縁層、3と4がソース及びドレイン電極、5がゲート電極、6が基板である。
(ゲート絶縁層2)
本発明に係るゲート絶縁体層2は少なくともポリマー絶縁層2a及び無機層2b(無機膜2bともいう)の積層体からなる。
ポリマー絶縁層2aは絶縁性を有する有機ポリマー材料からなり、好ましくは塗布法、インクジェット法、また印刷法等の液体プロセスにより形成可能なフレキシブルな材料から構成される。
また、ポリマー絶縁層2a上に無機層2bを形成する際の溶剤や熱に対して耐性を有することが好ましい。尚、無機層2bも塗布液方法により低温形成可能なものが好ましい。
本発明の絶縁膜を用いる事で、フレキシブルな基板(例えば樹脂基板)上に形成した場合にも、曲げなどの基材変形に対してヒビ割れや剥離を起こし難く、かつ半導体との界面も適切に形成されるため移動度が高く、閾電圧が低く、且つ、On/Off特性が良好な薄膜トランジスタを得る事ができる。
このようなポリマー絶縁層2aの形成に用いられる材料としては、ビニル系高分子、スチレン系高分子、アクリル系高分子、エポキシ系高分子、エステル系高分子、フェノール系高分子、イミド系高分子及びシクロアルケン(Cycloalkene)で構成された群から選択される少なくとも一つのポリマー絶縁層(ポリマー絶縁膜ともいう)であることが好ましい。
更に詳細には、ポリマー絶縁層2aとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン(PS)、ポリアクリルレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート系(PC)、ポリテレフタル酸エチレン(PET)、パリレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ベンゾシクロブテン(BCB)及びシクロペンテン(CyPe)、ポリシルセスキオキサンで構成された群から選択される少なくとも一つのポリマー絶縁層(ポリマー絶縁膜)であることが好ましい。
また、ポリマー絶縁層2a(ポリマー絶縁膜2aともいう)の膜厚は300nm〜1μmの範囲であることが好ましい。
これらのポリマー絶縁層の好ましい形成方法としては塗布法(ここで、塗布法とは、塗布、印刷、インクジェット法等、溶液プロセスを用いた広い意味の塗布法をさす)が挙げられる。
例えば、上記ポリビニルフェノール(PVP)とメラミン誘導体の混合物などの有機ポリマー材料を溶剤に溶かして或いは分散して下地となる層に塗布して、適宜乾燥を行った後に適宜硬化する。
ポリマー絶縁層の厚さは300nm〜1μmが好ましいが、層厚が薄すぎると動作中にゲートリークする可能性があり、層厚が厚いと電界効果が小さくなり動作に高電圧が必要となる。
このように形成されるポリマー絶縁層2aの誘電率は2.0〜18の範囲であることが好ましい。
《無機層2b(無機膜2bともいう)》
本発明に係る無機層2bについて説明する。
本発明において、ゲート絶縁層2は前記ポリマー絶縁層2a上に無機層2bを有する。
無機層2bとしては、塗布プロセス、或いは真空プロセスによって形成した無機層を用いることが好ましいが、無機層2bとしては金属酸化物層、窒化物層、或いは酸化窒化物層等が好ましく用いられる。中でも、酸化ケイ素層が特に好ましい。
無機層2bの形成法としては、例えば、蒸着、スパッタ、プラズマCVD等の真空プロセスを挙げることが出来、緻密な無機層を形成することが出来る。
また、ゾル−ゲル法により例えばテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド(或いは金属ハライド)からゾル−ゲル膜を重縮合硬化させ得られた、例えば酸化ケイ素等の金属酸化物層(金属酸化物膜)でもよい。
しかしながら、本発明においては、これらの無機層2bとして、M−O−Si(Mは金属)結合を含むポリメタロキサンまたはSi−N結合を含むポリシラザン等の無機高分子材料の薄膜を塗布法(広い意味の)により形成して、これを加熱処理によって、酸化ケイ素及び/または酸化チタンを主成分として含有する無機層に変換したものが好ましい。
無機高分子材料であるポリメタロキサンの一例としては前記MがSiであるSi−O−Si結合を含むポリシロキサン、また、Ti等を含むポリチタノメタロキサン等が挙げられる。
これらの無機高分子材料、例えば、ポリシラザン(パーハイドロポリシラザン)は、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNP110、NN110等として市場から入手可能である。
加熱処理は酸素、或いは水蒸気の存在下における加熱処理であり、多くは大気圧下で加熱処理することで目的を達成することが出来る。
これら無機高分子材料の加熱処理は100℃〜400℃の範囲が好ましいが、更に好ましくは、100℃〜200℃の範囲で処理することが好ましい。
金属酸化物への変換はESCA等により検知でき、変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
このような塗布プロセスにより、本発明に係る無機層2bの誘電率を2.0からTiOの一般的な誘電率である48までの膜として得ることが出来る。
(UVオゾン処理(UVオゾン法等ともいう))
本発明に係る無機層2bの形成に用いられるUVオゾン処理について説明する。
また、このような無機高分子材料の加熱処理の代わりに、UV処理、またはUV処理とオゾン処理の組み合わせ(UVオゾン処理(UVオゾン法等ともいう))等を用いることもできる。
詳細は明らかではないが、UVオゾン処理を行う事で、加熱処理のみで形成するよりも低温で尚且つ半導体との良質な界面形成が可能な無機膜を形成可能である。特に無機半導体と組み合わせて用いる場合、ゲート絶縁膜と半導体膜との密着性も向上する事が可能である。
また、酸素プラズマ法等も用いることができ、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。
UVオゾン処理においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましく、樹脂基板等の低耐熱性基板の適用の観点から、より好ましくは100℃〜200℃の範囲で加熱することが好ましい。
UVオゾン処理は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nmの範囲であることが好ましく、特に好ましくは、150nm〜300nmの範囲の真空紫外光を照射することが好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。
本発明において、大気圧下とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93kPa〜104kPaである。
上記高周波電界の印加時に用いる高周波電源として0.5kHz〜2.45GHzの範囲が好ましく、また、対向電極間に供給する電力としては、0.1W/cm〜50W/cmの範囲が好ましい。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01体積%〜10体積%含有させることが好ましく、更に好ましくは、0.1体積%〜10体積%の範囲であり、特に好ましくは、0.1体積%〜5体積%である。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている。
無機高分子材料の塗布による形成法としてはスピンコートやディップコート等の塗布法、インクジェット法また印刷法等があり、例えば、前記無機高分子材料をn−ブタノールなどの溶媒に溶解させて塗布する。
本発明においては、前記無機層2bの形成方法としては、ポリシラザンの塗布膜を形成し、次いで、加熱処理、または加熱水蒸気処理、またマイクロ波照射等の簡単な処理によって酸化ケイ素膜(無機層)に変換することが好ましい。
このようにして形成される無機層2bは、アルカリ性、また酸性の溶剤に対しても耐性があり、耐熱性、耐光性を有するため、プロセス中の(有機)ポリマー絶縁層へのダメージを防ぐことも出来る。また、無機層2bが塗布で形成される膜であるため低コストで均質な膜を形成することが出来、また、400℃以下、好ましくは200℃以下での加熱処理等によって形成可能であるため、熱的なダメージを防止することができる。
また、これら無機層2bの形成により、ゲート絶縁層2全体の薄膜、高誘電率化が可能となり、また、薄膜、且つ、表面粗さが低減され、後述の表面処理と相俟って、絶縁性の向上がもたらされ、薄膜トランジスタとした時のOff電流の低減がなされOn/Off比の向上がもたらされる。
また、本発明において形成される前記無機層2bの膜厚としては、ピンホール等の発生を防止し、完全にポリマー絶縁層を被覆する観点及びポリマー絶縁層の特性を有効に生かす、薄膜トランジスタの特性を良好に保つ観点から、5nm〜100nmの範囲が好ましく、更に好ましくは、5nm〜50nmの範囲が好ましい。
本発明においては、上記無機層を表面に有するゲート絶縁層に接して半導体層を、また半導体層に接してソース、ドレイン電極を形成することで、薄膜トランジスタ素子を形成することができる。
《金属酸化物半導体前駆体材料》
本発明に係る金属酸化物半導体前駆体材料(金属酸化物半導体の前駆体ともいう)について説明する。
本発明は、金属酸化物半導体前駆体材料を含有する金属酸化物半導体前駆体層に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体層を形成する薄膜トランジスタの製造方法である。
前記金属酸化物半導体前駆体材料(単に金属塩ともいう)としては、金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、かつ、金属酸化物半導体前駆体層が該金属塩の溶液(水溶液)を塗布することにより形成されることが好ましい。
《金属酸化物半導体(金属酸化物半導体材料ともいう)》
本発明において金属酸化物半導体は金属酸化物であり、金属酸化物半導体の前駆体となる金属酸化物の金属成分を含む金属塩の薄膜(金属酸化物半導体前駆体層である)を設けた後、該薄膜に熱酸化等の半導体変換処理を行って、金属酸化物半導体に変換し金属酸化物半導体層を得るものである。
金属酸化物半導体の前駆体を熱酸化することにより金属酸化物半導体をうることは知られている。金属酸化物半導体の前駆体として用いることのできる金属化合物としては非常に広い範囲の無機塩類や有機金属化合物、また有機金属錯体等が知られている。
特に、有機金属化合物や金属塩化物等が、上記の非特許文献2、3等においても用いられよく知られている。
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体として硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いるものである。
金属塩における金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
本発明において、これらの金属塩においては、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかの塩を1つ以上含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
また、その他の金属として、ガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)のいずれかの塩を含むことが好ましい。
本発明においては、前駆体として、上記金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることによりキャリア移動度の大きい、TFT素子(薄膜トランジスタ素子)とした時、On/Off比の大きい良好な特性を示す金属酸化物半導体を得ることができる。
これらの金属塩は、他の無機塩、また有機金属化合物を用いる場合に比べ、加水分解、脱水反応を含むと予想される酸化反応のエネルギーが小さいこと、酸化物生成過程で発生する分解物が効率よく気化、排出されるために膜に残存しにくく、生成した酸化物中に存在する炭素などの不純物成分が少ないため、良好な半導体特性が得られるものと推定される。また、生成した半導体材料中の不純物低減、半導体特性の向上の観点から、上記金属塩の中でも硝酸塩が最も好ましい。
金属塩、特に硝酸塩で得られる半導体特性向上の効果は、加熱温度が100℃以上、400℃以下の温度範囲で得られる非晶質の金属酸化物半導体において、特に顕著である。
非晶質酸化物の半導体の良好な状態が、金属塩を原料とした半導体薄膜で得られることは従来知られておらず、本発明で得られる顕著な効果といえる。
これらの塩を用いると、半導体変換処理時の低温化、処理短時間化が可能となる。
(金属酸化物半導体前駆体層の成膜方法、パターン化方法)
これらの金属酸化物半導体前駆体である金属塩を含有する層(金属酸化物半導体前駆体層)を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などを用いることができるが、本発明においては、前記硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を適切な溶媒に溶解した溶液を用い基板上に塗設することが好ましく、これにより生産性を大幅に向上させることができる。
金属塩を溶解する溶媒としては、水の他、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限はなく、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、更に、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなど、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を用いることができる。
本発明に係る金属塩溶液に用いる溶媒としては、金属塩が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、金属塩の溶解性、塗布後の乾燥性の観点から水及び低級アルコールが好ましく、低級アルコールの中ではメタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノール及びイソプロパノール)が乾燥性の観点で好ましい。
また、溶媒として低級アルコールを単独で用いてもよいし、水と任意の割合で混合して用いてもよい。溶解性と溶液安定性及び乾燥性の観点から水とこれら低級アルコール類を混合して本発明の「水溶液」を調製することが好ましい。
低級アルコールを混合して水溶液を調製すると、大きな組成の変化を行わず表面張力を下げることができるので、インクジェット塗布等で出射性が向上するので好ましい。
更に、アルコール類添加の効果として、半導体特性の向上の効果が認められる。例えば、薄膜トランジスタの移動度、On/Off比、閾値などの特性の向上が認められる。この効果の原因について明確でないが、加熱による酸化物の生成プロセスに影響しているものと推察される。
また、乾燥性及びインクジェット出射性、薄膜トランジスタの特性などの半導体特性を考慮した場合、溶媒比率で5質量%以上の低級アルコール添加が好ましく、いずれの特性(乾燥、出射性と溶液安定性)も満たすには水/低級アルコール比率が5/5〜95/5であることが好ましい。
本発明に係る水溶液とは溶媒中の水含有率が30質量%以上の混合溶媒及び水(水含有率=100質量%)に溶質(本発明では金属塩とその他必要に応じて添加される添加剤)を溶解した溶液を意味する。金属塩等溶質の溶解性、溶液安定性の観点から好ましくは水含有率は50質量%以上であり、更に好ましくは水含有率が70質量%以上である。
本発明に係る前記の硝酸塩等の金属塩は、金属アルコキシド類のように室温で加水分解することがなく、水を主たる溶媒として用いることができるので、製造工程上、また環境上も好ましい。
例えば、金属塩化物等の金属塩は大気中での劣化、分解と(特にガリウム等の場合)、強い潮解性とが激しいが、本発明に係る硝酸塩等の無機塩については潮解、また劣化等がなく使い易いことも製造環境上好ましい。
本発明に係る金属塩中でも、水に対する劣化、分解、また容易に溶けること、更に、潮解性等の性能においても優れた性質を有する硝酸塩が最も好ましい。
本発明においては、金属塩を含有する溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体を含有する薄膜を形成する。
金属塩を含有する溶液を基材上に適用して、金属酸化物半導体の前駆体薄膜を形成する方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、など、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法などが挙げられる。塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。これらのうち、好ましいのは薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。
例えば、インクジェット法を用いて成膜する場合、金属塩溶液を滴下して、80℃〜100℃程度で溶媒(水)を揮発させることにより金属塩を含有する半導体前駆体層薄膜が形成される。尚、溶液を滴下する際、基板自体を80℃〜150℃程度に加熱しておくと、塗布、乾燥の2プロセスを同時に行え、前駆体膜の造膜性も良好なため好ましい。
(金属の組成比)
本発明の方法により、前述した金属原子から選ばれた単独、または複数の金属原子を含む金属酸化物半導体の薄膜を作製する。金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
形成された金属酸化物半導体に含まれる金属原子は、前駆体の記述に挙げたものと同様に、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかを含むことが好ましく、更に、ガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。
これらの金属を成分として含む前駆体溶液を作製する場合、好ましい金属の組成比としては、In、Snの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属A)と、Ga、Alの金属塩から選ばれる塩に含有される金属(金属B)と、Znの金属塩に含有される金属(金属C=Zn)とのモル比率(金属A:金属B:金属C)が、以下の関係式を満たすことが好ましい。
金属A:金属B:金属C=1:0.2〜1.5:0〜5
である。
金属塩としては、硝酸塩が最も好ましいので、In、Sn(金属A)と、Ga、Al(金属B)と、Zn(金属C)とのモル比率(A:B:C)が、上記の関係式を満たすように、各金属の硝酸塩を、水を主成分とした溶媒に溶解・形成した塗布液を用いて金属無機塩を含む前駆体薄膜を塗布により形成することが好ましい。
また、前駆体となる金属無機塩を含む薄膜の膜厚は1nm〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(非晶質酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質酸化物が好ましい。
本発明において、非晶質酸化物であるとは、X線回折や電子線回折により確認でき、結晶に固有の回折パターンが観測されなければ、非晶質とみなすことができる。
金属酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。
尚、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10nm〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料(金属塩)、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、更には、1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
《金属酸化物半導体前駆体材料の金属酸化物半導体への変換処理》
本発明に係る金属酸化物半導体前駆体材料の金属酸化物半導体への変換処理について説明する。
金属塩(例えば、金属無機塩等)から形成された金属酸化物半導体前駆体材料を金属酸化物半導体に変換する方法としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理が好ましい変換方法として挙げることができるが、また後述するマイクロ波照射も好ましい方法として挙げられる。
本発明において、金属酸化物半導体前駆体材料を加熱する温度は前駆体を含有する金属酸化物半導体前駆体層の表面温度が50℃〜1000℃の範囲で任意に設定することができるが、電子デバイスの、デバイスの特性や生産効率の観点から、100℃〜400℃にすることが好ましい。
前記前駆体層の表面温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、放射温度の測定が可能な放射温度計、ファイバー温度計などにより測定できる。
加熱温度は電磁波の出力、照射時間、更には、照射回数により制御することが可能である。また、前駆体材料を加熱する時間は、任意に設定できるが、電子デバイスの特性や生産効率の観点から、1秒〜60分の範囲が好ましく、更に好ましくは、5分〜30分である。
硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩を用いることで比較的低い温度において半導体変換処理を行うことができる。
また、金属酸化物の形成はESCA(XPS(X線光電子分光法)ともいう)等により検知でき、半導体への変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
また、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93kPa〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、金属塩を含有する前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源として0.5kHz〜2.45GHzの範囲が好ましく、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm〜50W/cmの範囲である。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、さらに好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また、反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている。
また、UVオゾン法は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nm、特に好ましくは150nm〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、または、前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また、金属塩を含有する薄膜を酸化処理したのち、基材を50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は、酸化処理と同時に行ってもよく、酸化による金属酸化物半導体への変換を迅速に行うことができる。
金属酸化物半導体への変換後、形成される金属酸化物半導体層の膜厚は1nm〜200nm、より好ましくは5nm〜100nmが好ましい。
本発明においては、前記半導体変換処理として、マイクロ波(0.3GHz〜50GHz)照射の工程を含むことが好ましい。また、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
《マイクロ波の照射》
本発明では、金属酸化物半導体前駆体材料である金属無機塩材料から形成された薄膜である金属酸化物半導体前駆体層を金属酸化物半導体層に変換する方法として、マイクロ波照射が好ましい態様の一つとして挙げられる。
即ち、これらの金属酸化物半導体前駆体材料である前記金属塩材料を含む金属酸化物半導体前駆体層を形成した後、該前駆体層に対し、電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)を照射することが好ましい。
金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、熱が発生して金属酸化物半導体前駆体層の内部から、均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板には、マイクロ波領域に吸収が殆どないため、基板自体は殆ど発熱せずに金属酸化物半導体前駆体のみを選択的に加熱し熱酸化、金属酸化物半導体へ変換することが可能となる。
マイクロ波加熱においては一般的な様に、マイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、尚且つ非常に短時間で昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に、基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜のみを酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物半導体前駆体材料を金属酸化物に変換することが可能となる。また、加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
一般的に、マイクロ波とは0.3GHz〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8GHz及び1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。また、28GHz、また50GHz等の発振機を市場で入手できる。
オーブンなどを用いた通常の加熱方法に比較し、電磁波(マイクロ波)照射による加熱方法を用いることで、より良好な金属酸化物半導体層を得ることができる。金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するに際し、伝導熱以外の作用、例えば金属酸化物半導体前駆体材料への電磁波の直接的な作用を示唆する効果が得られている。
機構は十分に明らかになっていないが、金属酸化物半導体前駆体材料の加水分解や脱水、分解、酸化等による金属酸化物半導体への転化が電磁波により促進された結果と推定される。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層にマイクロ波照射を行って、半導体変換処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。尚、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板のような耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、更には、照射回数を制御することで前駆体を含有する薄膜の表面温度が100℃以上〜400℃未満になる様に処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、また非接触の表面温度計により測定が可能である。
また、ITOのような強い電磁波吸収体が近傍(例えばゲート電極等)に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
本発明に係る金属塩から形成される金属酸化物半導体薄膜は、トランジスタ、ダイオードなどの各種の半導体素子、また電子回路等に用いることができ、基板上に前駆体材料の溶液を塗布することによって低温プロセスでの金属酸化物半導体材料層の作製が可能であり、樹脂基板を用いる薄膜トランジスタ素子(TFT素子)等、半導体素子の製造に好ましく適用することができる。
本発明の金属酸化物半導体を用いて、ダイオードやフォトセンサに用いることもできる。たとえば、後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで、ショットキーダイオードやフォトダイオードを作製することも可能である。
《電極》
本発明において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ、アンチモン、酸化インジウム・錫(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物が用いられるが、特に白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO及び炭素が好ましい。或いはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いて電極形成する方法がある。また導電性ポリマーの溶液或いは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
本発明では、ソース電極、ドレイン電極は、前記導電性ポリマーの溶液或いは分散液、導電性微粒子分散液等の流動性電極材料から形成されることが好ましく、例えば金属等からなる導電性微粒子を、好ましくは有機材料からなる分散安定剤を用いて、水や有機溶剤またはその混合物である分散媒中に分散させ、ペースト或いはインク等の導電性微粒子分散液とし、これを塗設、パターニングすることで、電極を形成することが好ましい。
導電性微粒子の金属材料(金属微粒子)としては、白金、金、銀、コバルト、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができるが、特に仕事関数が4.5eV以上の白金、金、銀、銅、コバルト、クロム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、モリブデン、タングステンが好ましい。
このような金属微粒子分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法等の物理的生成法や、コロイド法、共沈法等の、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報等に記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子分散物である。
分散される金属微粒子の平均粒径としては、20nm以下であることが本発明の効果の点で好ましい。
また、金属微粒子分散物に導電性ポリマーを含有させることが好ましく、これをパターニングして押圧、加熱等によりソース電極、ドレイン電極を形成すれば、導電性ポリマーにより有機半導体層とのオーミック接触を可能とできる。即ち金属微粒子の表面に、導電性ポリマーを介在させて、半導体への接触抵抗を低減させ、かつ、金属微粒子を加熱融着させることで、更に本発明の効果を高めることができる。
導電性ポリマーとしては、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーを用いることが好ましく、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が好適に用いられる。
金属微粒子の含有量は導電性ポリマーに対する質量比で0.00001〜0.1が好ましい。この量を超えると金属微粒子の融着が阻害されることがある。
これらの金属微粒子分散物で、電極を形成した後、加熱により前記の金属微粒子を熱融着させてソース電極、ドレイン電極を形成する。また電極形成時に、概ね、1Pa〜50000Pa、更に1000Pa〜10000Pa程度の押圧をかけ、融着を促進することも好ましい。
上記金属微粒子分散物を用いて電極様にパターニングする方法としては、例えば、金属微粒子分散物をインクとして用いて印刷法によりパターニング方法がある。また、インクジェット法によりパターニングする方法があり、これは金属微粒子分散物をインクジェットヘッドより吐出し、金属微粒子の分散物をパターニングする方法であり、インクジェットヘッドからの吐出方式としては、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式等のオンデマンド型や静電吸引方式等の連続噴射型のインクジェット法等公知の方法によりパターニングすることができる。
加熱また加圧する方法としては、加熱ラミネータ等に用いられる方法をはじめ、公知の方法を用いることができる。
また、特にソース電極、ドレイン電極において、例えば、図1の構成をとる場合、ソース電極、ドレイン電極は、有機チオール化合物、有機ジスルフィド化合物、チオイソシアニドなどの有機硫黄化合物により処理され、表面修飾されていることが好ましい。特に好ましいのはチオール類であり、オクチルチオール等のアルカンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール等のアリールチオール類が好ましく特にペンタフルオロベンゼンチオールは好ましい。
チオール類は、ソース電極及びドレイン電極を形成する金属と化学的に結合し、半導体層との界面抵抗(障壁)を低下させることが出来、本発明の積層構成のゲート絶縁層を用いた薄膜トランジスタにおいて好ましい効果をもたらす。
《支持体(基板ともいう)について》
支持体(基板)を構成する材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを好ましく用いることができる。
また、本発明に係る支持体としては、樹脂からなるものを用いることも可能であり、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。これにより、薄膜トランジスタ素子の耐久性が向上する。
本発明の薄膜トランジスタ素子においては、支持体がプラスチックフィルムの場合、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層、及びポリマーを含む下引き層を有することが好ましい。下引き層に含有される無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム,チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。また無機窒化物としては窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素である。
本発明において、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層は大気圧プラズマ法等で形成されるのが好ましい。
ポリマーを含む下引き層に用いるポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、エチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《薄膜トランジスタ素子1の作製》
本発明の薄膜トランジスタ素子1の作製を図2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造プロセスを示す概略の断面図を基に説明する。
無アルカリガラス基板7上に、スパッタにより膜厚100nmのITO層8を成膜した無アルカリガラス/ITO基板を純水で超音波洗浄し、水を飛ばした後、低圧水銀灯を用いて大気中でUV光によるドライ洗浄(不図示)を施した(図2(a))。
洗浄した無アルカリガラス/ITO基板のITO層の面上にポリイミド前駆体化合物(京セラケミカル製、CT4112)の1質量%N−メチルピロリドン溶液を大気中、室温でスピンコートにより塗布し、次いで、180℃で30分間加熱することで硬化処理を施し膜厚500nmのポリマー絶縁層9(ポリイミド)を形成した(図2(b))。
ついで、ポリマー絶縁層9上にアクアミカNP110−10(アミン系触媒含有パーヒドロポリシラザン/キシレン10質量%溶液:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をキシレンで希釈して3質量%とした溶液をスピンコート(6000rpm×30sec)にて基板上に塗布、乾燥し絶縁膜前駆体層を形成し、200℃で1時間大気中で加熱処理を行った。絶縁膜前駆体層は熱処理(焼成)を受け、膜厚20nmのシリカガラス層10(無機層)を形成した(図2(c))。
シリカガラス層10(無機層)の表面をUVオゾン処理11(70℃、10分)により表面洗浄し、水/EtOH=9:1の混合溶媒に硝酸インジウム、硝酸ガリウムを金属比率で2:1(モル比)で混合した10質量%溶解した溶液をインク12としてチャネル形成部にインクジェット塗布し、150℃で10分間処理して乾燥し金属酸化物半導体前駆体層12aを形成した(図2(d)及び図2(e))。
次いで、大気圧中において、マイクロ波13(2.45GHz)を、無アルカリガラス/ITO基板の表面温度が200℃になるように出力調整しながら30分照射して焼成(酸化処理)を行い、金属酸化物半導体前駆体層12aを金属酸化物半導体層14へと変換した(図2(f))。
形成した金属酸化物半導体層14上に蒸着により金電極を形成しソース電極15及びドレイン電極16を形成し、本発明の薄膜トランジスタ素子1を得た(図2(g))。
《薄膜トランジスタ素子2の製造》
薄膜トランジスタ素子1の製造において、ポリマー絶縁層9上にアクアミカNP110−10(アミン系触媒含有パーヒドロポリシラザン/キシレン10質量%溶液:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を用いる代わりに、無触媒ポリシラザン:NN110−10(パーヒドロポリシラザン/キシレン10質量%溶液:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をキシレンで希釈して3質量%とした溶液をスピンコート(6000rpm×30sec)にてポリマー上に塗布、乾燥し絶縁膜前駆体層を形成。その後UVオゾン処理(200℃、30分)で酸化処理し、膜厚20nmの無機表面層を形成した以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子2を製造した。
《薄膜トランジスタ素子3の製造》
薄膜トランジスタ素子2の製造において、基板を無アルカリガラス基板からポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンVフィルム)に変更した以外は、同様にして、薄膜トランジスタ素子3を製造した。
《薄膜トランジスタ素子4の製造》
薄膜トランジスタ素子1の製造において、ポリマー絶縁層9上にシリカガラス層10(無機層)を形成しなかった以外は同様にして薄膜トランジスタ素子4を製造した。
《薄膜トランジスタ素子5の製造》
薄膜トランジスタ素子1の製造において、ポリマー絶縁層9上にシリカガラス層10(無機層)の代わりに、ポリシロキサン:メチルシロキサン系SOG(スピン・オン・ガラス)溶液(ハネウェル社製ACCUGLASSシリーズT−11)をスピンコート(7000rpm)にてポリマー上に塗布し、100℃2分で乾燥し無機膜前駆体層を形成し、乾燥後、支持体(基板)を大気中で、250℃で1時間の熱処理を行い、無機膜前駆体層を熱処理(焼成)して、膜厚20nmのシリカガラス膜を無機層として形成した以外は同様にして、薄膜トランジスタ素子5を製造した。
《薄膜トランジスタ素子1〜5の評価》
上記で作製した薄膜トランジスタ素子1〜5については、下記のような薄膜トランジスタ素子の性能測定条件を設けて、素子特性として、移動度、閾電圧及びOn/Off特性について評価を行った。
(薄膜トランジスタ素子の性能測定条件)
(a)ゲートバイアス(Vg):−15V〜+40Vを印加し、ドレイン電流(Id)を測定、
(b)√Idの+40Vに於ける接線の傾きから移動度を算出、
同接線とId=0との交点を閾電圧(Vth)を測定し、
次いで、ゲート電圧印加範囲での最大電流/最低電流比をOn/Off比とした。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2011009619
表1の結果から、比較の素子に比べて、本発明の素子は、移動度、閾電圧及びOn/Off特性ともに良好な素子特性を示すことがわかった。
また、本発明の薄膜トランジスタ素子は、いずれもp型のエンハンスメント動作を示した。
1 半導体層
2 ゲート絶縁層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 基板
7 無アルカリガラス基板
8 ITO層(ITO膜)
9 ポリマー絶縁層
10 シリカガラス層
11 UVオゾン処理
12 インク
12a 金属酸化物半導体前駆体層
13 マイクロ波の照射
14 金属酸化物半導体層の形成
15 ソース電極
16 ドレイン電極

Claims (13)

  1. 支持体上にゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、金属酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタの製造方法において、
    該ゲート絶縁層が、ポリマー絶縁層と該ポリマー絶縁層上の無機層からなり、該無機層の上に金属酸化物半導体前駆体材料の溶液を用いて金属酸化物半導体前駆体層を形成する工程を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
  2. 前記金属酸化物半導体前駆体層が酸化処理を施され、金属酸化物半導体前駆体材料が金属酸化物半導体に変換され、金属酸化物半導体層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  3. 前記無機層は、ポリシラザン溶液を塗布する工程、次いで、得られた塗布膜を酸化処理により変換する工程を経て形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  4. 前記無機層が、ポリシラザン溶液を塗布する工程、次いで、得られた塗布膜をUV−オゾン処理を用いて酸化処理変換され、形成されたことを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  5. 前記無機層の膜厚が5nm〜50nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  6. 前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくとも金属塩を含み、該金属塩が金属の硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩から選ばれる金属塩の1つ以上を含み、且つ、金属酸化物半導体前駆体層が、少なくとも該金属塩を含有する溶液を塗布することにより形成される工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  7. 前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくともIn、Zn、Snのいずれかの金属塩を含むことを特徴とする請求項6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  8. 前記金属酸化物半導体前駆体材料が、少なくともGa、Alのいずれかの金属塩を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  9. 前記金属塩を含有する溶液が水溶液であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  10. 前記金属塩が硝酸塩であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  11. 前記金属酸化物半導体前駆体材料が酸化処理により金属酸化物半導体へ変換される処理が100℃〜400℃の範囲での熱処理であることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  12. 前記金属酸化物半導体前駆体材料が酸化処理により金属酸化物半導体へ変換される処理がマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)照射を含む処理であることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法により製造されたことを特徴とする薄膜トランジスタ素子。
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