JP2010258018A - 半導体薄膜およびこれを用いた薄膜トランジスタ - Google Patents

半導体薄膜およびこれを用いた薄膜トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、前駆体から形成される酸化物半導体薄膜の半導体特性の向上と、その安定性の向上であり、高性能な薄膜トランジスタを安定して得ることにある。
【解決手段】前駆体の溶液または分散液の塗布膜に半導体変換処理を行って形成される金属酸化物半導体薄膜であって、窒素元素の含有率が0.01ppm〜4500ppmであることを特徴とする半導体薄膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、前駆体から形成される半導体薄膜またこれを用いた高性能の薄膜トランジスタに関する。
金属塩や有機金属を分解酸化することで、非晶質酸化物半導体を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1〜3などに酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの技術が開示されている。これらの薄膜トランジスタは高性能を示すが、プロセス温度が高く、樹脂基板を用いることができない。
一方で有機金属や、金属塩を前駆体として、これらを分解酸化(加熱、分解反応)し、非晶質酸化物半導体を形成する方法が知られている(例えば非特許文献1,2)。
これらの方法は、前駆体から熱酸化等の半導体変換処理により半導体層を形成するため、前駆体、また熱酸化の条件の選択により、比較的低い温度で、焼成処理が可能であり、また、高性能の半導体薄膜を形成することができ、これによりプロセス温度を低減し、樹脂基板への適用が可能となる。
しかしながら、これら有機金属や、金属塩からなる前駆体から形成される酸化物半導体は、高性能を示す反面、焼成条件等によっては、十分な性能が出ないこともあり、移動度が高くon/off比に優れ閾値も小さい、安定した半導体薄膜を得るための因子の解明が必要となっていた。
特開2006−165527号公報 特開2006−165528号公報 特開2007−73705号公報
Electrochemical and Solid−State Letters,10(5)H135−H138 Advanced Materials 2007,19,183−187
従って本発明の目的は、前駆体から形成される酸化物半導体薄膜の半導体特性の向上と、その安定性の向上であり、高性能な薄膜トランジスタを安定して得ることにある。
本発明は、以下の手段によって達成される。
1.前駆体の溶液または分散液の塗布膜に半導体変換処理を行って形成される金属酸化物半導体薄膜であって、窒素元素の含有率が0.01ppm〜4500ppmであることを特徴とする半導体薄膜。
2.前記前駆体が金属硝酸塩を含むことを特徴とする半導体薄膜。
3.前記1または2に記載の半導体薄膜を活性層に用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
4.金属酸化物半導体薄膜が、前記前駆体の前記塗布膜を加熱して形成されたものであることを特徴とする前記3に記載の薄膜トランジスタ。
5.前記加熱が100℃以上、300℃以下の温度であることを特徴とする前記4に記載の薄膜トランジスタ。
6.前記加熱がマイクロ波照射によることを特徴とする前記4または5に記載の薄膜トランジスタ。
本発明により、低いプロセス温度にて半導体特性が向上した薄膜トランジスタを得ることができ、樹脂基板への適用も可能となる。
本発明に係わる酸化物半導体を用いた、薄膜トランジスタの代表的な素子構成を示す図である。 薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。 本発明による薄膜トランジスタの作成プロセスを説明する図である。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明においては、前駆体として金属塩を含有する半導体前駆体層に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体薄膜を形成する。半導体変換処理としては熱処理、また電磁波の照射等であり、これによって前駆体となる金属塩が熱酸化され酸化物半導体が形成されるのであるが、本発明は、前駆体の溶液または分散液の塗布膜にこのような半導体変換処理を行って形成される酸化物半導体薄膜において、酸化物半導体薄膜中の窒素元素の含有率が0.01ppm〜4500ppmであることを特徴とする。
窒素元素が酸化物半導体中に微少量含まれることによって、この半導体を活性層として用いた薄膜トランジスタは、移動度、on/off比等も高く、閾値の絶対値も小さい良好なトランジスタ特性を示す。理由は明らかではないが、微量の窒素元素が、キャリア移動を抑制する半導体中の深いトラップを何らかの形で形成することで、移動度、on/off比も高く、閾値の絶対値が小さい、良好な特性の半導体膜を形成するものと推定している。
酸化物半導体の前駆体として用いることのできる金属化合物としては非常に広い範囲の無機塩類や有機金属化合物、また有機金属錯体等が知られている。特に、有機金属化合物や金属塩化物等が非特許文献2,3等においても用いられよく知られている。これについては後述する。
本発明において、酸化物半導体膜中に窒素元素を含有させるには、その方法に限定はないが、例えば、前駆体として硝酸塩を用いることで半導体薄膜中に窒素元素を含有させることが出来る。あるいは幾分は焼成雰囲気中の窒素あるいは窒素化合物等の寄与もあるかもしれない。
従って、本発明においては、硝酸塩を含有する前駆体の溶液または分散液の塗布膜に半導体変換処理を行って酸化物半導体薄膜を形成することが好ましい。さらに好ましくは、金属硝酸塩を含有する前駆体の溶液または分散液から形成された塗布膜に、100℃以上、300℃以下の熱処理、またはマイクロ波照射等の半導体変換処理をおこなうことで、得られる酸化物半導体薄膜中の窒素元素の含有率が0.01ppm〜4500ppmである酸化物半導体薄膜を得ることができる。硝酸塩を含む前駆体を用いることで、硝酸塩中の硝酸根に由来する窒素元素が、全て揮散して失われることなく、焼成後の半導体膜中にも、微量残存し(その形態は不明であるが)、半導体特性に影響を与えていると思われる。
従って、本発明においては、酸化物半導体の前駆体として、硝酸塩から選ばれる金属塩を含むことが好ましい。
酸化物半導体を構成する金属元素の全てを金属硝酸塩から構成しても良いし、一部を金属硝酸塩としてもよい。
本発明の酸化物半導体において、窒素元素の含有率が0.01ppmより少ないと、キャリアの抑制が効かず、閾値電圧の絶対値が大きくなりon/off比が低くなる。窒素元素の含有率が4500ppmを超えても、窒素元素による新たな準位の形成が過剰になるためと思われるが、移動度が低下し半導体として駆動出来なくなることもある。上記窒素元素含有率のさらに好ましい範囲は1000〜3500ppmである。
(半導体前駆体材料)
本発明において、熱変換材料である半導体前駆体としては、金属酸化物半導体前駆体、また有機半導体前駆体材料も用いることができる。
金属酸化物半導体前駆体としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物には、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
それらの金属塩のうち、インジウム、錫、亜鉛のいずれかの金属イオンを含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
また、その他の金属として、ガリウムまたはアルミニウムを含むことが好ましい。
金属塩としては、硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
一般式(I) RxMRyR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えばアセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物のなかでは、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。金属塩のなかでは、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
以上の金属酸化物半導体前駆体のうち、好ましいのは、金属の硝酸塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムなどが挙げられる。
本発明においては、これら前駆体材料に、好ましくは、前記金属の硝酸塩を含有させることで、窒素元素を微量含有する半導体薄膜を得ることが出来る。
硝酸塩としては、硝酸アンモニウム等を金属塩とは別に含有させても良いが、酸化物半導体の金属原子を構成する金属の硝酸塩を、所定の比率で用いることが好ましい。全てを硝酸塩としたときでも、焼成(加熱処理)あるいはマイクロ波照射等の半導体変換処理によって、硝酸根中の窒素は殆ど失われる。加熱処理温度が低いと窒素元素が残る傾向にあるようである。焼成条件、あるいは前駆体の種類等によってこの値は変わってくる。もちろん硝酸塩の他の前駆体材料に対する比率を低下させることで、窒素元素の含有率は調整できる。
(酸化物半導体前駆体薄膜の成膜方法、パターン化方法)
これらの金属酸化物半導体の前駆体となる金属を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などを用いることができるが、本発明においては硝酸塩を含む前駆体化合物を適切な溶媒に溶解した溶液を用いて基板上に塗設することで生産性を大幅に向上することができ好ましい。溶解性の観点からは、前駆体化合物としては、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、金属アルコキシド等を用いることが好ましい。
溶媒としては、水のほか、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、さらに、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を好適に用いることができる。
本発明において前駆体の溶液に用いる溶媒としては、金属原子含有化合物が溶解する溶媒であれば特に限定されないが、溶解性、塗布後の乾燥性の観点から水および低級アルコールが好ましく、低級アルコールの中ではメタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノールおよびイソプロパノール)が乾燥性の観点で好ましい。また、溶媒としてアルコールを単独で用いても良いし、水と任意の割合で混合して用いても良い。溶解性と溶液安定性および乾燥性の観点から水とこれらの低級アルコール類を混合して水溶液を作成することが好ましい。低級アルコールを混合して水溶液を作成すると、大きな組成の変化を行わず表面張力を下げることができるので、インクジェット塗布等において出射性が向上するので好ましい。また、乾燥性およびインクジェット出射性を考慮した場合、溶媒比率で5質量%以上の低級アルコール添加が好ましく、いずれの特性(乾燥、出射性と溶液安定性)も満たすには、水/低級アルコール比率が5/5〜95/5であることが好ましい。
本発明において水溶液とは溶媒中の水含有量が30質量%以上の混合溶媒および水(含有量=100質量%)に溶質(本発明では金属塩等とその他必要に応じて添加剤)を溶解した溶液を意味する。金属塩等の溶質の溶解性、溶液安定性の観点から好ましくは水含有量は50質量%以上であり、さらに好ましくは水含有量が70質量%以上である。
半導体前駆体材料を含有する液体を基材上に適用して薄膜を形成する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法など塗布法、また、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法などが挙げられる。また、塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。これらのうち、好ましいのは薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。
成膜する場合、塗布後、50℃〜150℃程度で溶媒を揮発させることにより金属酸化物の前駆体の薄膜が形成される。なお、溶液を滴下する際、基板自体を50℃〜150℃程度に加熱しておくと、塗布、乾燥の2プロセスを同時に行えるため好ましい。
(金属の組成比)
好ましい、金属の組成比としては、金属Aを1としたとき、金属Bの組成比は0.2〜5、好ましくは0.5〜2であり、金属Cは0〜5、好ましくは0〜2である。
金属A;InまたはSn
金属B;GaまたはAl
金属C;Zn
また、前駆体となる金属を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(非晶質酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば、25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まりよく得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
また、本発明においては前述のように、窒素元素を0.01〜4500ppmの範囲で含む。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、さらには1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
本発明において、窒素元素の定量方法としては、X線光電子分光分析法を用いることが好ましい。また、炭素元素についても同様に求めることができる。
窒素元素の元素比率を求めるには、X線光電子分光分析法(XPS/ESCA;XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy/ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いることが好ましい。測定手順の一例を挙げれば、X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定する。測定を行う前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去することも可能である。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、及びKrなどが各々利用できる。
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求める。
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定する。得られたスペクトルは、測定装置、或いは、コンピュータの違いによる含有量算出結果の違いを生じせしめないよう、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM(Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、全元素の定量を行う。定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行う。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いる。Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
この定量操作により窒素元素の含有量を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求める。
半導体膜中に含有される全ての元素の原子量比から、前記窒素の原子数濃度に基づいて窒素元素含有率をppm単位で得ることが出来る。
(半導体変換処理)
前記半導体変換処理、即ち金属無機塩から形成された前駆体薄膜を金属酸化物半導体に変換する方法としては、酸素プラズマ法、熱酸化法、UVオゾン法等の酸化処理が挙げられる。またマイクロ波照射を用いることができる。
本発明において、前駆体材料を加熱する温度は前駆体を含有する薄膜表面の温度が50℃〜1000℃の範囲で任意に設定することができるが、電子デバイスの、デバイスの特性や生産効率の観点から、100℃〜300℃にすることが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、放射温度の測定が可能な放射温度計、ファイバー温度計などにより測定できる。加熱温度は電磁波の出力、照射時間、さらには照射回数により制御することが可能である。また、前駆体材料を加熱する時間は、任意に設定できるが、電子デバイスの特性や生産効率の観点から、1秒以上60分以下の範囲が好ましい。より好ましくは5分〜30分である。
本発明において好ましい、硝酸塩を含有する金属塩を用いることで比較的低い温度において半導体変換処理を行うことができる。
また、金属酸化物の形成はESCA等により検知でき、半導体への変換が充分行われる条件を予め選択することができる。
また、酸素プラズマ法としては大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。また酸素プラズマ法、UVオゾン法においては、基板を50℃〜300℃の範囲で加熱させることが好ましい。
大気圧プラズマ法では、大気圧下で、アルゴンガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素を含むプラズマを発生させ、基体表面をこれに晒すことで酸素プラズマ処理を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
大気圧プラズマ法を用いて、酸素含むガスを反応性ガスとして、酸素プラズマを発生させ、硝酸塩を含有する金属塩からなる前駆体薄膜を、プラズマ空間に晒すことでプラズマ酸化により前駆体薄膜は酸化分解して、金属酸化物からなる層が形成する。
高周波電源として0.5kHz以上、2.45GHz以下、また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm以上、50W/cm以下である。
使用するガスは、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、反応ガス(酸化性ガス)の混合ガスである。反応ガスは好ましくは酸素ガスであり混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、さらに好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
また、反応ガスを放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で構わない。
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号等に記載されている。
また、UVオゾン法は、酸素の存在下で、紫外光を照射し、酸化反応を進行させる方法である。紫外光の波長は、100nm〜450nm、特に好ましくは150〜300nm程度の所謂、真空紫外光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマーランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。
ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
紫外線照射の際の照度は1mW〜10W/cmが好ましい。
また、本発明においては、酸化処理に加えて前記酸化処理の後、あるいは前記酸化処理と同時に加熱処理を施すことが好ましい。これにより酸化分解を促進できる。
また、金属塩を含有する薄膜を酸化処理したのち、基材を50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲で、加熱時間としては1分〜10時間の範囲で加熱することが好ましい。
加熱処理は、酸化処理と同時に行ってもよく、酸化による金属酸化物半導体への変換を迅速に行うことができる。
金属酸化物半導体への変換後、形成される半導体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmが好ましい。
本発明においては、前記半導体変換処理として、マイクロ波(0.3〜50GHz)照射の工程を含むことが好ましい。また、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
(マイクロ波の照射)
本発明においては、金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属無機塩材料から形成された薄膜を半導体に変換する方法として、マイクロ波照射を用いることが好ましい。
即ち、これらの金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し、電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3GHz〜50GHz)を照射する。
金属酸化物半導体の前駆体となる前記金属塩材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、金属酸化物前駆体中の電子が振動し、熱が発生して薄膜が内部から、均一に加熱される。ガラスや樹脂等の基板には、マイクロ波領域に吸収が殆どないため、基板自体は殆ど発熱せずに薄膜部のみを選択的に加熱し熱酸化、金属酸化物半導体へ変換することが可能となる。
マイクロ波加熱においては一般的な様に、マイクロ波吸収は吸収が強い物質に集中し、尚且つ非常に短時間で昇温することが可能なため、本発明にこの方法を用いた場合に、基材自身には殆ど電磁波による加熱の影響を与えず、短時間で前駆体薄膜のみを酸化反応が起きる温度まで昇温でき、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変換することが可能となる。また、加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
一般的に、マイクロ波とは0.3GHz〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8GHzおよび1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHzなどは全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。また、28GHz、また50GHz等の発振機を市場で入手できる。
オーブンなどを用いた通常の加熱方法に比較し、電磁波(マイクロ波)照射による加熱方法を用いることで、より良好な金属酸化物半導体層を得ることができる。金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するに際し、伝導熱以外の作用、例えば金属酸化物半導体前駆体材料への電磁波の直接的な作用を示唆する効果が得られている。機構は十分に明らかになっていないが、金属酸化物半導体前駆体材料の加水分解や脱水、分解、酸化等による金属酸化物半導体への転化が電磁波により促進された結果と推定される。
前記金属塩を含有する半導体前駆体層にマイクロ波照射を行って、半導体変換処理を行う方法は、短時間で選択的に酸化反応を進行させる方法である。尚、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。但し、熱伝導により少なからず基材にも熱が伝わるため、特に樹脂基板のような耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで前駆体を含有する薄膜の表面温度が100℃以上〜300℃以下になる様に処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計、また非接触の表面温度計により測定が可能である。
また、ITOのような強い電磁波吸収体が近傍(例えばゲート電極等)に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
本発明に係る金属塩から形成される酸化物半導体薄膜は、トランジスタ、ダイオードなどの各種の半導体素子、また電子回路等に用いることができ、基板上に前駆体材料の溶液を塗布することによって低温プロセスでの金属酸化物半導体材料層の作製が可能であり、樹脂基板を用いる薄膜トランジスタ素子(TFT素子)等、半導体素子の製造に好ましく適用することができる。
本発明の酸化物半導体を用いて、ダイオードやフォトセンサに用いることもできる。たとえば、後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで、ショットキーダイオードやフォトダイオードを作製することも可能である。
(素子構成)
図1は、本発明に係わる酸化物半導体を用いた、薄膜トランジスタの代表的な素子構成を示す図である。
薄膜トランジスタの構成例を幾つか断面図にて図1(a)〜(f)に示す。図1において、ソース電極102、ドレイン電極103を、金属酸化物半導体からなる半導体層101がチャネルとして連結するよう構成される。
同図(a)は、支持体106上に本発明の方法によりソース電極102、ドレイン電極103を形成して、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層101を形成し、その上にゲート絶縁層105を形成し、さらにその上にゲート電極104を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層101を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体106上に、まず、半導体層101を形成し、その後ソース電極102、ドレイン電極103、そして絶縁層105を形成した後、ゲート電極104を形成したものを表す。本発明においては、半導体層が、窒素元素を前記所定量含む半導体層であればよい。
同図(d)は、支持体106上にゲート電極104を形成した後、ゲート絶縁層105を形成し、その上にソース電極102およびドレイン電極103を形成し、該電極間に半導体層101を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
図2は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの1例を示す概略の等価回路図である。
薄膜トランジスタシート120はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ124を有する。121は各薄膜トランジスタ124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ124のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。これら薄膜トランジスタシート120における各トランジスタのソース、ドレイン電極又ゲート電極等、さらにゲートバスライン、ソースバスライン、また回路配線の製造に本発明を用いることができる。
次いで、薄膜トランジスタを構成する各要素について説明する。
(電極)
本発明において、薄膜トランジスタを構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
ソース、ドレイン、あるいはゲート電極等の電極、またゲート、あるいはソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
(ゲート絶縁層)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
ゲート絶縁層(膜)が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
〈薄膜トランジスタ1−1、1−2、1−3の作成〉
本発明による薄膜トランジスタの作成プロセスを、図3を用いて説明する。
支持体301として、ポリエーテルスルホン樹脂フィルム(200μm)を用い、この上に、先ず、50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
(下引き層の形成)
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
さらにその層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層(バリア層)310とした(図3(1))。なお、大気圧プラズマ処理装置は特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
次いで、ゲート電極を形成する。スパッタ法により、厚さ300nmのITO膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極302を形成した。(図3(1))
次いで、さらにフィルム温度200℃にて、上述した大気圧プラズマ法により厚さ180nmの酸化珪素膜を設けゲート絶縁膜303を形成した。(図3(2))
次いで、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、ゲート絶縁膜表面全面がOTSと反応し表面処理された。表面処理によりオクチルトリクロロシランによる単分子膜が形成するが図では便宜的に表面処理層308でこの単分子膜を表した(図3(3))。
この表面処理を行った基板上に、半導体チャネル領域に対応させた光透過部を有するフォトマスクMを介して、低圧水銀灯から波長254nmの紫外光を照射した(図3(4))。これにより、露光部の表面が分解され、表面処理部が親水化された。エタノールで洗浄し分解物を除去して、チャネル領域に対応する部分のゲート絶縁層303表面を露出させた(図3(5))。
(酸化物半導体薄膜)
次ぎに、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液(内、10%をエタノール)としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット装置にてインクを吐出し、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(6))。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。100℃で熱処理し乾燥し、形成した前駆体材料薄膜306’の平均膜厚は30nmであった。
さらに、大気中、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し、薄膜トランジスタ1−1は350℃、薄膜トランジスタ1−2は300℃、薄膜トランジスタ1−3は250℃で20分間の処理をそれぞれ行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図3(7))。
さらに、酸化物半導体層306が形成された基板を、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させた。酸化物半導体層306表面がOTSと反応し単分子膜が形成され酸化物半導体層が表面処理された。同様に、表面処理層308でこの単分子膜を表した(図3(8))。
次いで、酸化物半導体層上の保護膜の形成領域以外を覆うマスクを用いて、保護膜形成領域を254nmの紫外光にて照射した(図3(9))。半導体層上の保護膜形成領域の表面処理層308を分解し半導体層を露出させた。なお、保護膜の幅がチャネル長(ソース電極304、ドレイン電極305の距離)を形成するので、保護膜の幅が15μmとなるよう露光領域を調整し半導体層のチャネル領域のみ露出させた(図3(10))。
次に酸化物半導体層306上にパーヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 アクアミカNP110(登録商標))キシレン溶液を前記同様のピエゾ方式のインクジェット装置を用いて酸化物半導体層内の所定の領域に適用した(図3(11))。次いでこれを前記同様にマイクロ波を照射してゲート電極の発熱により200℃、で20分の熱処理を行って、二酸化ケイ素の薄膜層に転化させ保護層307を形成した(図3(12))。保護層の厚みは200nmであった。
次に、前記と同様の大気圧プラズマ装置を用い下記条件で酸素プラズマ処理し残っている表面処理層308を分解し、ゲート絶縁層303および酸化物半導体層306の表面の一部を露出させた(図3(13))。
(使用ガス)
不活性ガス:アルゴン 98体積%
反応性ガス:酸素ガス 2体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
次ぎに、銀微粒子分散液(Cabot社製 CCI−300(銀含有量20質量%))を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドから射出し、半導体層の露出領域を含むソース電極、ドレイン電極部分に印刷を施した。次いで200℃で30分間熱処理して、ソース電極304およびドレイン電極305を形成した(図2(14))。それぞれのサイズは、幅40μm、長さ100μm(チャネル幅)厚さ100nmであり、ソース電極304、ドレイン電極305の距離(チャネル長)は20μmとした。
以上のごとく、薄膜トランジスタ1−1、1−2、1−3を作成した。
〈薄膜トランジスタ1−4、1−5、1−6の作成〉
薄膜トランジスタ1−1、1−2、1−3において、酸化物半導体薄膜の作成を以下の方法に変えた以外は同様にして薄膜トランジスタ1−4、1−5、1−6を作成した。
(酸化物半導体薄膜)
次ぎに、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:0.5:1(モル比)で混合した10質量%水溶液(内、10%をエタノール)としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット装置にてインクを吐出し、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(6))。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。100℃で熱処理し乾燥し、形成した前駆体材料薄膜306’の平均膜厚は30nmであった。
さらに、大気中、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し、薄膜トランジスタ1−4は350℃、薄膜トランジスタ1−5は300℃、薄膜トランジスタ1−6は250℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された。以上のように薄膜トランジスタ1−4、1−5、1−6を作成した。
〈薄膜トランジスタ1−7、1−8、1−9の作成〉
薄膜トランジスタ1−4、1−5、1−6において、酸化物半導体薄膜の作成を以下の方法に変えた以外は同様にして薄膜トランジスタ1−7、1−8、1−9を作成した。
(酸化物半導体薄膜)
硝酸インジウム、硝酸ガリウムを金属比率で1:0.5(モル比)で混合した10質量%水溶液(内、10%をエタノール)としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット装置にてインクを吐出し、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(6))。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。100℃で熱処理し乾燥し、形成した前駆体材料薄膜306’の平均膜厚は30nmであった。
さらに、大気中、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し、薄膜トランジスタ1−7は300℃、薄膜トランジスタ1−8は250℃、薄膜トランジスタ1−9は200℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された。
以上において、半導体薄膜を作成したところで、それぞれ、窒素元素の含有率をX線光電子分光分析法を用いて酸化物半導体形成後に測定した。結果を表1に示した。
作製した薄膜トランジスタそれぞれについて、ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引した時のドレイン電流の増加(伝達特性)について観測した。その飽和領域から移動度を見積り、on/off比を見積もった。また、閾値Vg(ON)はゲートバイアスに対するドレイン電流値の平方根√Idの関係にて、√Id=0に外挿して得たゲートバイアスの値とした。
以下に結果を示す。
Figure 2010258018
窒素元素を本発明の範囲内で含有する薄膜トランジスタは移動度が高く,on/offひも良好、また閾値もこの範囲外のものより小さいことが分かる。
半導体層中の窒素元素含有率が0.01ppmを下回るものは、閾値の絶対値も大きく、on/off比も小さく実用的ではない。また4500ppmを超えるものは、本来のn型の駆動を示さず駆動しなかった。
実施例2
〈薄膜トランジスタ2−1の作成〉
実施例1の薄膜トランジスタにおいて、酸化物半導体薄膜の作成を以下の方法に変えた以外は同様にして薄膜トランジスタ2−1を作成した。
(酸化物半導体薄膜)
硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液(内、10%をエタノール)としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット装置にてインクを吐出し、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図3(6))。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。100℃で熱処理し乾燥し、形成した前駆体材料薄膜306’の平均膜厚は30nmであった。
さらに、大気中、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し、250℃で30分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された。
〈薄膜トランジスタ2−2の作成〉
薄膜トランジスタ2−1において、硝酸亜鉛の10(モル)%を塩化亜鉛にし、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−2を作成した。
〈薄膜トランジスタ2−3の作成〉
薄膜トランジスタ2−1において、硝酸亜鉛を塩化亜鉛に変更し、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−3を作成した。
〈薄膜トランジスタ2−4の作成〉
薄膜トランジスタ2−3において、硝酸インジウムを塩化インジウムに変更し、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−4を作成した。
〈薄膜トランジスタ2−5の作成〉
薄膜トランジスタ2−4において、硝酸ガリウムの90%を塩化ガリウムに変更し、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−5を作成した。
〈薄膜トランジスタ2−6の作成〉
薄膜トランジスタ2−4において、硝酸ガリウムの92%を塩化ガリウムに変更し、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−6を作成した。
〈薄膜トランジスタ2−7の作成〉
薄膜トランジスタ2−1において、それぞれの金属塩を硝酸塩から塩化物にし、インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの金属比率を1:1:1にした以外は同様にして薄膜トランジスタ2−7を作成した。
Figure 2010258018
実施例1同様、窒素元素を本発明の範囲内で含有する薄膜トランジスタは移動度が高く、on/off比も良好、また閾値もこの範囲外のものより小さいことが分かる。
1、101 半導体層
2、102 ソース電極
3、103 ドレイン電極
4、104 ゲート電極
5、105 ゲート絶縁層

Claims (6)

  1. 前駆体の溶液または分散液の塗布膜に半導体変換処理を行って形成される金属酸化物半導体薄膜であって、窒素元素の含有率が0.01ppm〜4500ppmであることを特徴とする半導体薄膜。
  2. 前記前駆体が金属硝酸塩を含むことを特徴とする半導体薄膜。
  3. 請求項1または2に記載の半導体薄膜を活性層に用いたことを特徴とする薄膜トランジスタ。
  4. 金属酸化物半導体薄膜が、前記前駆体の前記塗布膜を加熱して形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
  5. 前記加熱が100℃以上、300℃以下の温度であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ。
  6. 前記加熱がマイクロ波照射によることを特徴とする請求項4または5に記載の薄膜トランジスタ。
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