JP5640359B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Description
本発明はまた、この難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形してなる成形品に関する。
リン酸エステル等のリン系難燃剤は、燃焼時に炭化層を形成して難燃性を付与することが知られており、材料のリン含有量が多いほど、その難燃性付与効果が高められると考えられている。
しかしながら、リン系難燃剤は樹脂の可塑剤として作用することから、リン系難燃剤の配合で難燃性が高められても、反面各種機械物性や耐熱性が低下するなどの問題がある。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体に、シアン化ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物(以下「共重合性ビニル化合物」と称す場合がある。)とをグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物とを共重合してなる、質量平均分子量90,000〜160,000のビニル共重合体(B)とからなる共重合体混合物に、該共重合体混合物100質量部に対して5〜20質量部のリン系難燃剤(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該共重合体混合物のアセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1が22.0〜32.0質量%であり、アセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB2が22.0〜34.0質量%であり、該アセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1と該アセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB2の差の絶対値|CB1−CB2|が0〜3.0質量%であることを特徴とする。
本発明に係るグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体に、シアン化ビニル化合物および共重合性ビニル化合物をグラフト重合してなるものである。
本発明に係るビニル共重合体(B)は、シアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物とを共重合してなる、質量平均分子量が90,000〜160,000のものである。
本発明に係る共重合体混合物は、グラフト共重合体(A)とビニル共重合体(B)とからなるものであるが、これらの合計量100質量部において、各々、次のような割合で含有されることが好ましい。
グラフト共重合体(A):10〜70質量部、特に15〜40質量部
ビニル共重合体(B):30〜90質量部、特に60〜85質量部
さらに、該共重合体混合物中におけるゴム含有量は、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは6〜16質量%、さらに好ましくは8〜14質量%である。ゴム含有量がこの範囲であると、燃焼性に優れる傾向にある。
G:グラフト共重合体(A)1g中のアセトン可溶分のグラム量
SA:共重合体混合物中のグラフト共重合体(A)の配合量
SB:共重合体混合物中のビニル共重合体(B)の配合量
CBA:グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分の
シアン化ビニル単位の含有量
CBB:ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分の
シアン化ビニル単位の含有量
本発明に係る共重合体混合物中のアセトン可溶分およびアセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量は、製造された難燃性熱可塑性樹脂組成物からも求めることができる。
この場合、まず、難燃性熱可塑性樹脂組成物1gをクロロホルム20mlに溶解し、その後、メタノール400ml中に滴下してポリマー成分を再度析出させ、析出した固形分(ポリマー成分)を濾過などにより取り出す。取り出した固形分が、難燃性熱可塑性樹脂組成物中の共重合体混合物に該当するので、これをアセトン可溶分とアセトン不溶分とに遠心分離により分離する。その後は、前述の共重合体混合物のアセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1の分析の場合と同様に、このアセトン不溶分をオゾン分解した後、得られた成分の元素分析による窒素原子換算から、アセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1を求めることができる。また、アセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB2は、上記と同様にこのアセトン可溶分の元素分析による窒素原子換算により求めることができる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、上述の共重合体混合物100質量部に対し、リン系難燃剤(C)を5〜20質量部、好ましくは6〜12質量部を配合してなるものである。このリン系難燃剤(C)の配合量が上記下限未満では十分な難燃性を得ることができず、上記上限を超えると耐熱性が悪くなる傾向にある。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、更に上記の諸成分の他に、その物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に用いられる通常の他の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤等を配合することができる。
また、本発明の目的を損なわない程度に、例えば前記共重合体混合物100質量部に対して10質量部以下の範囲であれば、前記グラフト共重合体(A)およびビニル共重合体(B)以外の樹脂およびゴムやエラストマー等が含まれていてもよい。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、通常行われている方法および装置を使用して製造することができる。一般的に使用されている方法は、溶融混合法であり、その際に用いる装置の例としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式または連続式のいずれで行ってもよく、また、各成分の混合順序にも特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
本発明の成形品は、上述した本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法としては、射出成形、シート押出成形、真空成形、圧空成形、異形押出成形、発泡成形、ブロー成形など、熱可塑性樹脂組成物に汎用の成形方法をいずれも適用することができる。
<UL94V−2>
接炎を中止した後の各回の有炎燃焼時間(秒):30秒以下
試験片5個への合計10回の接炎による有炎燃焼時間(秒):250秒以下
有炎滴下物による脱脂綿の着火:あり
蒸留水170質量部に、ジエン系ゴム(ポリブタジエン、ゲル含有量:95%、平均粒子径:3000Å)50質量部と、スチレン74質量%およびアクリロニトリル26質量%のビニル単量体混合物50質量部と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第1鉄0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部およびクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間半後に乳化グラフト重合を完結させた。
反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(A−1)を得た。なお、単量体転化率は96%、ゴム含有量は50.9質量%であった。
このグラフト共重合体(A−1)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は24.3質量%であった。
蒸留水170質量部に、製造例1で用いたものと同様のジエン系ゴム65質量部と、スチレン70質量%およびアクリロニトリル30質量%のビニル単量体混合物35質量部と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第1鉄0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.07質量部およびクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間半後に乳化グラフト重合を完結させた。
反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(A−2)を得た。なお、単量体転化率は97%であり、ゴム含有量は66.1質量%であった。また、製造例1と同様にして求めたグラフト共重合体(A−2)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は26.7質量%であった。
蒸留水170質量部に、製造例1で用いたものと同様のジエン系ゴム50質量部と、スチレン67質量%およびアクリロニトリル33質量%のビニル単量体混合物50質量部を用いたこと以外は製造法1と同条件で反応を行い、グラフト共重合体(A−3)を得た。なお、単量体転化率は96%であり、ゴム含有量は51.9質量%であった。また、製造例1と同様にして求めたグラフト共重合体(A−3)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は29.2質量%であった。
蒸留水170質量部に、製造例1に用いたものと同様のジエン系ゴム50質量部と、スチレン78重量%およびアクリロニトリル22重量%のビニル単量体混合物50重量部を用いたこと以外は製造法1と同条件で反応を行い、グラフト共重合体(A−4)を得た。なお、単量体転化率は96%であり、ゴム含有量は52.2質量%であった。また、製造例1と同様にして求めたグラフト共重合体(A−4)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は21.2質量%であった。
蒸留水120質量部に、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003質量部と、スチレン76.0質量%およびアクリロニトリル24.0質量%のビニル単量体混合物100質量部と、t−ドデシルメルカプタン0.35質量部、過酸化ベンゾイル0.15質量部およびリン酸カルシウム0.5質量部とを添加して、110℃で10時間懸濁重合し、ビニル共重合体(B−1)を得た。
このビニル共重合体(B−1)の質量平均分子量Mwは141,000であり、単量体転化率は98%であった。
このビニル共重合体(B−1)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は22.5質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン73.0質量%とアクリロニトリル27.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−2)を得た。
このビニル共重合体(B−2)の質量平均分子量Mwは115,000であり、単量体転化率は97%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は25.7質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン72.0質量%とアクリロニトリル28.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.5質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−3)を得た。
このビニル共重合体(B−3)の質量平均分子量Mwは105,000であり、単量体転化率は98%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は27.0質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン72.0質量%とアクリロニトリル28.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−4)を得た。
このビニル共重合体(B−4)の質量平均分子量Mwは165,000であり、単量体転化率は97%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は27.0質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン70.0質量%とアクリロニトリル30.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.5質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−5)を得た。
このビニル共重合体(B−5)の質量平均分子量Mwは99,000であり、単量体転化率は97%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は29.0質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン70.0質量%とアクリロニトリル30.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−6)を得た。
このビニル共重合体(B−6)の質量平均分子量Mwは123,000であり、単量体転化率は97%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は29.2質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン70.0質量%とアクリロニトリル30.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−7)を得た。
このビニル共重合体(B−7)の質量平均分子量Mwは155,000であり、単量体転化率は98%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は29.3質量%であった。
ビニル単量体混合物として、スチレン69.0質量%とアクリロニトリル31.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例5と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−8)を得た。
このビニル共重合体(B−8)の質量平均分子量Mwは113,000であり、単量体転化率は98%であり、製造例5と同様にして求めたメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は30.0質量%であった。
リン系難燃剤(C)として大八化学社製の下記製品を用いた。
(c−1)PX−200(レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート)
(c−2)CR−741(ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート)
上記各製造例で得られた各重合体とリン系難燃剤とを表1,2に示す割合で配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、押出機で混練してペレット化した。
得られた樹脂組成物のペレット1gをアセトン80ml中に投入して23℃で12時間放置した後、15分間超音波洗浄器にかけ、その後、遠心分離機を用いて12,000rpmで90分間遠心分離を行ってアセトン可溶分(上澄み液)を得た。このアセトン可溶分を濃縮し、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取した。この沈殿物を60℃の真空乾燥機に入れて12時間以上乾燥した後、元素分析にかけ、窒素原子換算によりアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB2とした。
なお、元素分析には、Yanaco製MT−6を使用した。
一方、遠心分離機により、上澄み液を取り除いた後の固形分をアセトン不溶分として採取し、このアセトン不溶分をクロロホルム中に分散させ、オゾン分解した後、アセトン可溶分と同様の手法でアセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1を求めた。
実施例2〜9のように、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物によれば、ハロゲン系難燃剤を使用することなくリン系難燃剤を配合することにより、米国UL規格94V−2に適合する難燃性を有し、さらに、初期滴下時間が短く、炎の延焼をすばやく抑制することができる、より安全性が高い燃焼挙動を有し、しかも、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性の各種物性のバランスが優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
Claims (5)
- ゴム質重合体に、シアン化ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物とをグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物とを共重合してなる、質量平均分子量が90,000〜160,000であるビニル共重合体(B)とからなる共重合体混合物に、該共重合体混合物100質量部に対して5〜20質量部のリン系難燃剤(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
該共重合体混合物のアセトン不溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB1が25.0〜30.0質量%であり、アセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CB2が25.0〜30.0質量%であり、これらの差の絶対値|CB1−CB2|が0.1〜2.5質量%であることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。 - 前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体20〜75質量部に、シアン化ビニル化合物26〜32質量%と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物68〜74質量%とを含むビニル単量体混合物25〜80質量部をグラフト重合してなり、かつ、
前記ビニル共重合体(B)が、シアン化ビニル化合物26〜32質量%と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物68〜74質量%とを含むビニル単量体混合物を共重合してなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。 - グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBAが25.0〜30.0質量%であり、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBBが25.0〜30.0質量%であり、これらの差の絶対値|CBA−CBB|が0〜1.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト共重合体(A)および/またはビニル共重合体(B)におけるシアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物が、芳香族ビニル化合物58〜100質量%と、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜42質量%とを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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