JP5910201B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物に係り、詳しくは、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を配合することなく、薄肉厚み(0.58mm)における米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を有し、しかも、外観に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物に関する。
本発明はまた、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
HIPS(高耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂などのスチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性、耐衝撃性、剛性に優れているため、電気機器部品、自動車部品、建材等の構成材料として広く利用されている一方で、近年、その製品に対するコストおよび軽量化の意識が高く、その薄肉化が求められ、薄肉化を図った上での安全性の確保が要望されている。
米国UL規格のうち94HB(水平燃焼試験)では、試験片の厚み3mmを境に以下の燃焼速度が規定されている。
試験片厚みが3.0mmから13mmの場合:試験片の標線間75mmでの燃焼速度が1分当り40mmを超えないこと。
試験片厚みが3.0mmより薄い場合:試験片の標線間75mmでの燃焼速度が1分当り75mmを超えないこと。
以上の事より、3.0mmから13mm厚みの試験片の場合、試験片の標線間75mmを112.5秒以上の燃焼時間が必要で、3.0mm以下の場合は、60秒以上の燃焼時間が必要となり、UL規格94HBの規格からも試験片が薄くなると燃焼時間が速くなることから、厚みが3.0mmより大幅に薄い1mm以下、例えば厚み0.58mmの試験片では、UL規格94HBを満足するのは難しいことが分かる。
従来、薄肉厚みでの難燃効果を得るためには、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を用いているが、これらの成分は、材料加工時や燃焼時に発生する有害な変性物質が人体に悪影響を与えることが懸念される事や各種機械物性や耐熱性が低下するなどの問題がある。
例えば、特許文献1「特表2008−530351号公報」には、ゴム変性スチレン系樹脂にリン酸エステル系難燃剤を配合したゴム変性スチレン系難燃樹脂組成物が提案されているが、難燃剤を必要とし、樹脂本来の性能を阻害する問題がある。また、特許文献2「特開2010−275565号公報」には、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂に、ポリテトラフルオロエチレンを配合した樹脂組成物が提案されているが、ポリカーボネート樹脂を変性して難燃性能を発揮するもので、HIPS、ABS樹脂などのスチレン系樹脂では実現が難しい。
一方、特許文献3「特許第3944253号公報」には、熱可塑性樹脂にフッ素樹脂を配合した熱板融着用樹脂組成物が提案されているが、薄肉厚みでの米国UL規格94HB(水平燃焼試験)については考慮されておらず、本発明の目的を達成できるものではない。
特表2008−530351号公報 特開2010−275565号公報 特許第3944253号公報
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を実質的に配合することなく、薄肉厚み(0.58mm)における米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を示し、しかも、外観に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のグラフト共重合体とビニル共重合体からなる共重合体混合物であって、グラフト共重合体のシアン化ビニル単位の含有量とビニル共重合体のシアン化ビニル単位の含有量の差の絶対値が3.0〜7.0質量%である共重合体混合物に微量のフッ素樹脂を配合することにより、UL規格94HB燃焼時間を長くすることができ、上記課題を解決することができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて達せられたものであり、以下を要旨とする。
[1] ゴム質重合体に、アクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、アクリロニトリルとスチレンとを共重合してなるビニル共重合体(B)とからなる共重合体混合物に、該共重合体混合物100質量部に対して0.1〜0.3質量部のフッ素樹脂(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のアクリロニトリル単位の含有量CB が22.0〜34.0質量%であり、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のアクリロニトリル単位の含有量CB が20.0〜35.0質量%であり、これらの差の絶対値|CB−CB|が3.0〜7.0質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体20〜75質量部に、アクリロニトリル23〜35質量%とスチレン65〜77質量%とを含むビニル単量体混合物25〜80質量部をグラフト重合してなり、かつ、前記ビニル共重合体(B)が、アクリロニトリル20〜35質量%とスチレン65〜80質量%とを含むビニル単量体混合物を共重合してなることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
] 前記共重合体混合物が、グラフト共重合体(A)10〜70質量%とビニル共重合体(B)30〜90質量%を合計で100質量%含むことを特徴とする[1]又は2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
] [1]ないし[]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を配合することなく、薄肉厚み(0.58mm)における米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を示し、しかも、外観に優れた成形品が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体に、シアン化ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物と共重合可能なビニル化合物(以下「共重合性ビニル化合物」と称す場合がある。)とをグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物とを共重合してなるビニル共重合体(B)とからなる共重合体混合物に、該共重合体混合物100質量部に対して0.1〜0.3質量部のフッ素樹脂(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBと、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBの差の絶対値|CB−CB|が3.0〜7.0質量%であることを特徴とする。
<グラフト共重合体(A)>
本発明に係るグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体に、シアン化ビニル化合物および共重合性ビニル化合物をグラフト重合してなるものである。
該ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等の1種または2種以上を用いることができる。なお、EPDMに含有される非共役ジエン成分としては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−エチル−1,11−トリデカジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン、リモネン等のジオレフィンの1種または2種以上が挙げられる。
また、シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
共重合性ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物が挙げられ、このうち、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンを挙げることができる。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート(なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を意味する。)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のα,β−不飽和カルボン酸エステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物類等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係るグラフト共重合体(A)としては、具体的にはABS(ポリブタジエン−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、ASA(アクリルゴム−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、AES(エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム−スチレン−アクリロトリル)樹脂が挙げられる。
本発明に係るグラフト共重合体(A)は、特にゴム質重合体20〜75質量部、好ましくは40〜70質量部に、シアン化ビニル化合物23〜35質量%および共重合性ビニル化合物65〜77質量%を含むビニル単量体混合物25〜80質量部、好ましくは30〜60質量部をグラフト重合したものが好ましい。
グラフト共重合体(A)において、ゴム質重合体の割合が上記下限より少ないと、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣る傾向となり、上記上限を超えると共重合体(B)との相溶性が低下する傾向となるので好ましくない。
また、グラフト共重合体(A)を製造する際に用いるビニル単量体混合物は、ビニル単量体混合物全体を100質量%として、好ましくはシアン化ビニル化合物23〜35質量%、共重合性ビニル化合物65〜77質量%、より好ましくはシアン化ビニル化合物24〜34質量%と共重合性ビニル化合物66〜76質量%、さらに好ましくはシアン化ビニル化合物26〜32質量%と共重合性ビニル化合物68〜74質量%とからなるものである。ビニル単量体混合物中のシアン化ビニル化合物および共重合性ビニル化合物の割合が上記範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、耐衝撃性および耐熱性の少なくともいずれかに劣る傾向となり、物性バランスの優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが難しい。
また、共重合性ビニル化合物としては、前述の如く、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物とが挙げられるが、その使用割合は、共重合性ビニル化合物全体を100質量%として、好ましくは芳香族ビニル化合物58〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜42質量%、より好ましくは芳香族ビニル化合物65〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜35質量%、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物80〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜20質量%である。芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物の使用量が多過ぎると成形加工性が劣る傾向にあり、好ましくない。
本発明におけるグラフト共重合体(A)を製造する際のグラフト重合方法については特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合および乳化重合等の一般的な重合方法をいずれも採用することができる。
上記グラフト重合は、例えば、先ず、乳化重合にて製造されたゴム質重合体を攪拌翼ジャケット付き反応器内に仕込み、次にグラフト重合させるビニル単量体混合物の全量または一部を数回に分けて、一括または連続して滴下し、攪拌しながら40〜70℃にて、5〜60分間放置した後、更に開始剤を添加することにより行うことができる。これにより添加したビニル単量体混合物は、ゴム質重合体に含浸し、ゴム質重合体内にて重合体となって、グラフト共重合体(A)が得られる。
このようなグラフト重合反応時の蒸留水へのシアン化ビニル化合物の溶解や単量体転化率などの影響から、グラフト共重合体(A)の製造に用いたビニル単量体混合物中のシアン化ビニル化合物の含有量に対して、得られるグラフト共重合体(A)のシアン化ビニル単位の含有量は変化する。
本発明におけるグラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBは、22.0〜34.0質量%、特に25.0〜30.0質量%であることが好ましい。このシアン化ビニル単位の含有量CBが上記範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、耐衝撃性および耐熱性の少なくともいずれかに劣る傾向なり、物性バランスの優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが難しい。
なお、本発明において、グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBは、グラフト共重合体(A)をメタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによる求めることができる。
グラフト共重合体(A)は1種を単独で用いてもよく、異なる成分組成のものを2種以上混合して用いてもよい。2種以上のグラフト共重合体を混合して用いる際、これらを混合した状態で、メタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによりCBを求めることができる。または、それぞれを単独の状態で、メタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによる求め、相加平均とした値をCBとして使用することもできる。
<ビニル共重合体(B)>
本発明に係るビニル共重合体(B)は、シアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物とを共重合してなるものである。
本発明において、ビニル共重合体(B)を製造する際に用いるシアン化ビニル化合物、共重合性ビニル化合物としては、各々前述のグラフト共重合体(A)を製造する際に用いることができるシアン化ビニル化合物、共重合性ビニル化合物として例示したものが挙げられ、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このビニル共重合体(B)は、シアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物とを含むビニル単量体混合物を共重合することにより製造されるが、このビニル単量体混合物中のシアン化ビニル化合物と共重合性ビニル化合物との割合は、ビニル単量体混合物全体を100質量%として、好ましくはシアン化ビニル化合物20〜35質量%、共重合性ビニル化合物65〜80質量%、より好ましくはシアン化ビニル化合物24〜34質量%と共重合性ビニル化合物66〜76質量%、さらに好ましくはシアン化ビニル化合物26〜32質量%と共重合性ビニル化合物68〜74質量%とからなる。ビニル単量体混合物中のシアン化ビニル化合物および共重合性ビニル化合物の割合が上記範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、耐衝撃性および耐熱性の少なくともいずれかに劣る傾向となり、物性バランスの優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが難しい。
また、共重合性ビニル化合物としては、前述の如く、芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物とが挙げられるが、その使用割合は、共重合性ビニル化合物全体を100質量%として、好ましくは芳香族ビニル化合物58〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜42質量%、より好ましくは芳香族ビニル化合物65〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜35質量%、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物80〜100質量%、芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物0〜20質量%である。芳香族ビニル化合物以外の窒素元素を含有しないビニル化合物の使用量が多過ぎると成形加工性が劣る傾向にあり、好ましくない。
ビニル共重合体(B)は、このようなビニル単量体混合物から、常法に従って、乳化重合、懸濁重合、塊状重合またはこれらの組み合わせからなる共重合反応によって製造することができる。
このような共重合反応時の蒸留水へのシアン化ビニル化合物の溶解や単量体転化率などの影響から、ビニル共重合体(B)の製造に用いたビニル単量体混合物中のシアン化ビニル化合物の含有量に対して、得られるビニル共重合体(B)のシアン化ビニル単位の含有量は変化する。
本発明におけるビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBは、20.0〜35.0質量%であることが好ましい。このシアン化ビニル単位の含有量CBが上記範囲を外れると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、耐衝撃性および耐熱性の少なくともいずれかに劣る傾向なり、物性バランスの優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが難しい。
なお、本発明において、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBは、ビニル共重合体(B)をメタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによる求めることができる。
なお、ビニル共重合体(B)の質量平均分子量は、GPCを用いて測定したポリスチレン換算値で、50,000〜300,000の範囲が好ましく、さらに好ましくは85,000〜250,000の範囲である。ビニル共重合体(B)の質量平均分子量が上記下限値以上であることにより、得られる成形品の耐衝撃性が良好となり、また、上記上限値以下であることにより、成形加工性が良好となる。
このビニル共重合体(B)についても1種を単独で用いてもよく、異なる組成、分子量のものを2種以上混合して用いてもよい。2種以上のビニル共重合体を混合して用いる際、これらを混合した状態で、メタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによりCBを求めることができる。または、それぞれを単独の状態で、メタノール洗浄後にアセトンに溶解させ、アセトン可溶分を濃縮した後、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取後、この沈殿物を元素分析にかけ、窒素原子換算することによる求め、相加平均とした値をCBとして使用することもできる。
<共重合体混合物>
本発明に係る共重合体混合物は、グラフト共重合体(A)とビニル共重合体(B)とからなるものであるが、これらの合計量100質量部において、各々、次のような割合で含有されることが好ましい。
グラフト共重合体(A):10〜70質量部、特に15〜40質量部
ビニル共重合体(B):30〜90質量部、特に60〜85質量部
さらに、該共重合体混合物中におけるゴム含有量は、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは6〜16質量%、さらに好ましくは8〜14質量%である。ゴム含有量がこの範囲であると、燃焼性に優れる傾向にある。
グラフト共重合体(A)の配合量が上記下限よりも少ないと、得られる樹脂組成物が耐衝撃性に劣る傾向となり、上記上限を超えると、耐熱性に劣る傾向となる。また、ビニル共重合体(B)の配合量が上記下限より少ないと、得られる樹脂組成物が流動性、燃焼性に劣る傾向となり、上記上限を超えると耐衝撃性に劣る傾向となる。
また、本発明に係る共重合体混合物において、この共重合体混合物中のグラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBと、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量CBとの差の絶対値|CB−CB|は3.0〜7.0質量%であり、好ましくはこの値は5.0〜7.0質量%である。
|CB−CB|が上記範囲内であることにより、フッ素樹脂(C)との併用で、米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を得ることが可能となる。
なお、前述の如く、グラフト共重合体(A)、ビニル共重合体(B)はそれぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらを2種以上用いる場合、共重合体混合物中のグラフト共重合体(A)、ビニル共重合体(B)のいずれの組み合わせにおいても、|CB−CB|が上記範囲となるようにする。
<フッ素樹脂(C)>
本発明で用いるフッ素樹脂(C)としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビリニデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等の分子中にフッ素原子を含む樹脂が挙げられる。
これらの中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
なお、フッ素樹脂の市販の製品としては、例えば、旭硝子(株)製の「Fluon(登録商標) PTFE CD1シリーズ」のファインパウダー(粉末状)や「Fluon(登録商標) PTFE ADシリーズ」のディスパージョン(液体状)、ダイキン工業(株)製の「ポリフロン Fシリーズ」の粉末状、「ポリフロン Dシリーズ」の液体状のものを挙げることができる。
フッ素樹脂としては、ファインパウダー粉末状(パウダー)、液体状(ラテックス)のどちらの形態でも使用することができ、この場合、それぞれフッ素樹脂成分として所定量を配合すればよい。
フッ素樹脂の分子量については特に制限は無いが、数平均分子量(Mn)は70万以上、好ましくは100万以上のものが、米国UL規格94HB性能を安定化させることから好適である。なお、分子量は標準比重から算出することができる。
本発明において、フッ素樹脂は、さらに、芳香族ビニル、シアン化ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルなどの一種類や複数の単量体とフッ素樹脂とを共重合もしくは単量体の重合物とを混合させたものを使用しても良い。このうち、共重合の場合、例えば、フッ素樹脂の重合物に、単量体を添加しながら乳化重合する方法がある。また、共重合体とフッ素樹脂との混合物の場合、その混合方法としては、ラテックスとラテックスのブレンド、ラテックスとパウダーのブレンド、ビーズとラテックスのブレンド、ビーズとパウダーのブレンドなどが挙げられるが、より好ましくは、ラテックス同士のブレンドである。
このようなフッ素樹脂の具体例としては、例えば、市販品の三菱レイヨン(株)社製「メタブレンA−3000」、「メタブレンA−3800」などを挙げることができる。
このようなフッ素樹脂とラテックス同士のブレンドされたフッ素樹脂を用いることにより、米国UL規格94HB性能を発揮させつつ、分散性や外観についても良好となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、フッ素樹脂(C)を上記のグラフト共重合体(A)とビニル共重合体(B)との共重合体混合物100質量部に対して0.1〜0.3質量部、好ましくは0.1〜0.2質量部含有する。フッ素樹脂(C)の含有量が上記下限以上であることにより米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を得ることが可能となり、フッ素樹脂(C)の含有量が上記上限以下であることにより良好な成形品外観を得ることができる。
<他の添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、更に上記の諸成分の他に、その物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に用いられる通常の他の添加剤、例えば、滑剤、顔料、染料、耐熱剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤(カーボンブラック、酸化チタン、顔料、染料など)、炭素繊維、ガラス繊維、充填剤(タルクやウォラストナイト、炭酸カルシウム、シリカなど)、抗菌剤、防カビ剤、シリコ−ンオイル、カップリング剤などの1種または2種以上を配合することができる。
また、本発明の目的を損なわない程度に、例えば前記共重合体混合物100質量部に対して10質量部以下の範囲であれば、前記グラフト共重合体(A)、ビニル共重合体(B)およびフッ素樹脂(C)以外の樹脂およびゴムやエラストマー等が含まれていてもよい。
含有し得るその他の樹脂としては、HIPS樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂、その他に、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。また、これらを2種類以上ブレンドしたものでも良く、さらに、相溶化剤や官能基などにより変性された上記樹脂を配合してもよい。
ただし、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を配合することなく薄肉厚み(0.58mm)における米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を示し、しかも、外観に優れた成形品を提供するという本発明の効果を得るために、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を実質的に含有しないことが重要である。ここで「実質的に含有しない」とは、熱可塑性樹脂組成物中の含有量として3000質量ppm以下であることをいう。
<製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常行われている方法および装置を使用して製造することができる。一般的に使用されている方法は、溶融混合法であり、その際に用いる装置の例としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式または連続式のいずれで行ってもよく、また、各成分の混合順序にも特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
[成形品]
本発明の成形品は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法としては、射出成形、シート押出成形、真空成形、圧空成形、異形押出成形、発泡成形、ブロー成形など、熱可塑性樹脂組成物に汎用の成形方法をいずれも適用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途としては特に制限はないが、その優れた安全性と優れた外観により、OA・家電分野、電気・電子分野、自動車分野、建材分野等の各種用途に有用である。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下において、得られた樹脂組成物の各種物性ないし特性の評価方法は次の通りである。
(1)燃焼時間:UL94 HB規格の試験方法に従って、厚み0.58mmで試験を実施し、試験片の標線間(75mm)の燃焼時間(秒)を計測した。
(2)HB判定:UL94 HB規格の試験方法に従って、厚み0.58mmで試験を実施し、UL94HBに適合するか否かを判定し(HB規格では60秒以上必要)、UL94HBに適合するものを○とし、適合しない物を×と表記した。
(3)外観:2mm厚み、100mm×100mm(縦×横)の板状の成形品を成形し、表面外観を目視にて観察し、良好なものを○、劣るものを×として判定した。
<製造例1:グラフト共重合体(A)の製造>
蒸留水170質量部に、ジエン系ゴム(ポリブタジエン、ゲル含有量:95%、平均粒子径:3000Å)50質量部と、スチレン73質量%およびアクリロニトリル27質量%のビニル単量体混合物50質量部と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第1鉄0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部およびクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間半後に乳化グラフト重合を完結させた。
反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(A)を得た。なお、単量体転化率は96%、ゴム含有量は60.5質量%であった。
グラフト共重合体(A)をメタノールで洗浄後、アセトンに溶解させた後、このアセトン可溶分を濃縮し、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取した。この沈殿物を乾燥させた後、元素分析装置として、Yanaco製MT−6を使用して、窒素原子換算によるシアン化ビニル単位の含有量を、グラフト共重合体(A)のシアン化ビニル単位の含有量とした。
このグラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は26.5質量%であった。
<製造例2:ビニル共重合体(B−1)の製造>
蒸留水120質量部に、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003質量部と、スチレン79.0質量%およびアクリロニトリル21.0質量%のビニル単量体混合物100質量部と、t−ドデシルメルカプタン0.35質量部、過酸化ベンゾイル0.15質量部およびリン酸カルシウム0.5質量部とを添加して、110℃で10時間懸濁重合し、ビニル共重合体(B−1)を得た。
このビニル共重合体(B−1)の質量平均分子量Mwは175,000で、単量体転化率は98%であった。
ビニル共重合体(B−1)をメタノールで洗浄後、アセトンに溶解した後、このアセトン可溶分を濃縮し、メタノールで再沈殿させ、濾過により沈殿物を採取した。この沈殿物を乾燥させた後、元素分析装置として、Yanaco製MT−6を使用して、窒素原子換算によるシアン化ビニル単位の含有量を、ビニル共重合体(B−1)のシアン化ビニル単位の含有量とした。
このビニル共重合体(B−1)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は20.0質量%であった。
<製造例3:ビニル共重合体(B−2)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン67.0質量%とアクリロニトリル33.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−2)を得た。
このビニル共重合体(B−2)の質量平均分子量Mwは89,000で、単量体転化率は97%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は32.3質量%であった。
<製造例4:ビニル共重合体(B−3)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン76.5質量%とアクリロニトリル23.5質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.5質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−3)を得た。
このビニル共重合体(B−3)の質量平均分子量Mwは141,000で、単量体転化率は98%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は22.5質量%であった。
<製造例5:ビニル共重合体(B−4)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン69.0質量%とアクリロニトリル31.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−4)を得た。
このビニル共重合体(B−4)の質量平均分子量Mwは215,000で、単量体転化率は97%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は30.1質量%であった。
<製造例6:ビニル共重合体(B−5)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン75.0質量%とアクリロニトリル25.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.5質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−5)を得た。
このビニル共重合体(B−5)の質量平均分子量Mwは88,000で、単量体転化率は97%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は24.1質量%であった。
<製造例7:ビニル共重合体(B−6)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン73.0質量%とアクリロニトリル27.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−6)を得た。
このビニル共重合体(B−6)の質量平均分子量Mwは115,000で、単量体転化率は97%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は25.7質量%であった。
<製造例8:ビニル共重合体(B−7)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン72.0質量%とアクリロニトリル28.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−7)を得た。
このビニル共重合体(B−7)の質量平均分子量Mwは105,000で、単量体転化率は98%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は27.1質量%であった。
<製造例9:ビニル共重合体(B−8)の製造>
ビニル単量体混合物として、スチレン65.0質量%とアクリロニトリル35.0質量%のビニル単量体混合物を用い、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4質量部とした以外は製造例2と同条件で懸濁重合を行い、ビニル共重合体(B−8)を得た。
このビニル共重合体(B−8)の質量平均分子量Mwは81,000で、単量体転化率は98%であり、メタノール洗浄後のアセトン可溶分のシアン化ビニル単位の含有量は34.0質量%であった。
[実施例1〜5、比較例1〜6]
上記各製造例で得られた各重合体とフッ素樹脂と滑剤を表1,2に示す割合で配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、押出機で混練してペレット化した。
得られた樹脂組成物のペレットを用いて、前述の各評価(1)〜(3)を行い、結果を表1,2に示した。
なお、フッ素樹脂としては旭硝子(株)製「Fluon(登録商標)PTFEファインパウダーCD−1」(数平均分子量300万)を用い、滑剤としては日油(株)社製EBS−WAX「アルフローH−50S」を用いた。
Figure 0005910201
Figure 0005910201
<考察>
実施例1〜5のように、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤などの難燃剤やアンチモン化合物のような難燃助剤を配合することなく、薄肉厚み(0.58mm)における米国UL規格94HBに適合する優れた安全性を示し、しかも、外観に優れた熱可塑性樹脂成形品が提供される。
一方、比較例1〜4は、シアン化ビニル単位の含有量差の絶対値|CB−CB|が、3.0〜7.0質量%を外れているので燃焼時間が短く、米国UL規格94HBに適合しない。比較例5は、フッ素樹脂の添加量が本発明の範囲より少ないため、燃焼時間が短く、米国UL規格94HBに適合せず、比較例6は多いために外観が悪い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品は、薄肉化に対応でき、特に、薄肉でのHB性能を十分に発揮することができ、さらに外観にも優れていることから、その用途として、例えば、電気・電子関連の用途では、ノートパソコン、携帯電話、プリンター、テレビ、オーディオなどのOA機器や家電製品の外装材など、市場のニーズに合わせて多彩な用途に使用することができ、その工業的有用性は非常に高い上に、環境負荷の低減にも有効である。

Claims (4)

  1. ゴム質重合体に、アクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)と、アクリロニトリルとスチレンとを共重合してなるビニル共重合体(B)とからなる共重合体混合物に、該共重合体混合物100質量部に対して0.1〜0.3質量部のフッ素樹脂(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
    グラフト共重合体(A)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のアクリロニトリル単位の含有量CB が22.0〜34.0質量%であり、ビニル共重合体(B)のメタノール洗浄後のアセトン可溶分のアクリロニトリル単位の含有量CB が20.0〜35.0質量%であり、これらの差の絶対値|CB−CB|が3.0〜7.0質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体20〜75質量部に、アクリロニトリル23〜35質量%とスチレン65〜77質量%とを含むビニル単量体混合物25〜80質量部をグラフト重合してなり、かつ、前記ビニル共重合体(B)が、アクリロニトリル20〜35質量%とスチレン65〜80質量%とを含むビニル単量体混合物を共重合してなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記共重合体混合物が、グラフト共重合体(A)10〜70質量%とビニル共重合体(B)30〜90質量%を合計で100質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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