JP5633931B2 - リン含有エポキシ樹脂及び該樹脂組成物、硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性を有するリン含有エポキシ樹脂及び該リン含有エポキシ樹脂組成物、その硬化物に関するものである。
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから、電気・電子機器の積層板、封止剤、自動車部品、FRP、スポーツ用品など幅広く使用されている。
特に、電気・電子機器に使用される積層板の場合には、火災時の燃焼防止と発煙の制御をするため、難燃性の付与が強く要求されている。積層板用樹脂の難燃化方法として、従来は、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤とリン系難燃剤の単独または組み合わせ、前記難燃剤の単独または組み合わせに無機系難燃助剤を併用する難燃システムが主流であった。しかし、近年環境問題から臭素系難燃剤の使用が敬遠されつつある。また、添加型リン系難燃剤として赤リンを使用した場合は安全性が不十分であり、リン酸系化合物を使用する場合は硬化物表面にブリードアウトする問題があった。また、リン酸エステル類を使用すると、はんだ耐熱性、耐溶剤性が低下してしまう問題があった。
前記問題に対しては、特許文献1,2には10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA−HQ)とエポキシ樹脂類とを所定のモル比で反応させて得られる熱硬化性樹脂及び組成物が開示されている。また、特許文献3に2官能以上のエポキシ基を有する樹脂とジフェニルホスフィニルヒドロキノンとを反応させてなるリン含有エポキシ樹脂が開示されている。ところが、このようなリン化合物とエポキシ樹脂との反応によって得られるリン含有エポキシ樹脂は、リン含有量が高くなるにつれて分子量が大きくなるため、十分な難燃性が得られる樹脂のワニスは粘度が高く、作業性やガラスクロス等の基材への含浸性が悪くなる問題があった。さらに、リン含有エポキシ樹脂の分子量が高くなったことで、硬化物の架橋密度が低下するため、高いガラス転移温度が得られ難かった。
また、特許文献4にはリン含有エポキシ樹脂のみでは十分な難燃性が得られないため、リン化合物をリン含有エポキシ樹脂ワニスに溶解してリン含有量を高める方法が開示されているが、溶媒にN,N−ジメチルホルムアミド等の高沸点溶媒を使用しなければならず、リン化合物が析出しやすいという問題もあった。特許文献5ではHCA−HQを平均粒径10μm、最大粒径40μmの大きさに微粉砕することによって樹脂ワニスに分散させる方法が開示されているが、高沸点溶媒を用いてリン化合物を溶解させた場合よりも粘度が高くなり易く、ワニス粘度を低くすると十分な難燃性が得られない問題があった。
特許−3092009 特開平11−279258 特開平5−214070 特開2002−249540 特開2003−011269
本発明の目的は、反応後に末端にフェノール性水酸基を残して分子量を小さくする事により、ワニス粘度が低く、作業性に優れたリン含有エポキシ樹脂を提供する。また、該リン含有エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、硬化性、難燃性、耐熱性、接着性に優れた硬化物を提供するものである。
すなわち本発明は、
(1)エポキシ樹脂類(a)と、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基と反応する反応性官能基を有する化合物類(b)とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂であって、反応性官能基を有する化合物類(b)は一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物を必須成分とし、かつ得られるリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量が式1で求められる理論エポキシ当量の60%から95%の範囲であることを特徴とするリン含有エポキシ樹脂である。
Figure 0005633931
(式中Aは炭素数6から20のトリイル基を表し、nは0または1を表す。また、式中R1及びR2は炭素数1から6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。)
Figure 0005633931
Figure 0005633931
Figure 0005633931
(式中の反応性官能基とは、水酸基、酸無水物基、活性水素基のいずれか1つ以上であり、一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物由来の水酸基を必須とする。)
(2)式2で示されるエポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対して反応性官能基を有する化合物類(b)の反応性官能基を0.10当量から0.94当量の範囲で反応して得られる請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂である。
(3)前記(1)または前記(2)に記載のリン含有エポキシ樹脂を必須成分として含有するリン含有エポキシ樹脂類(c)のエポキシ基1当量に対してエポキシ樹脂硬化剤の反応性官能基が0.1当量から1.3当量の範囲で配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物である。
(4)前記(3)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなるリン含有エポキシ樹脂硬化物である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基と一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物のフェノール性水酸基を反応させる事によって得られるが、全てのフェノール性水酸基を反応させずに一部残存させており、エポキシ樹脂中にエポキシ基とフェノール性水酸基が共存している。エポキシ基とフェノール性水酸基が共存する事により、全てのフェノール性水酸基が反応した場合よりも得られるエポキシ樹脂の分子量が低くなり、エポキシ樹脂ワニスとした時の粘度も低くなる。これによってガラスクロスへの含浸性が向上する等、作業性が良好なリン含有エポキシ樹脂が得られる。また、本エポキシ樹脂の硬化物物性を評価したところ、フェノール性水酸基を持たずにエポキシ基のみを持つ公知のリン含有エポキシ樹脂に比べて、耐熱性や難燃性等が向上することを見出し本発明を完成したものである。
実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂のGPCチャートである。 実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂のIRチャートである。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を製造するために使用するエポキシ樹脂(a)は、エポトート YD−128、エポトート YD−8125(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF−170、エポトート YDF−8170(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、YSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製 テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エポトート YDC−1312(ヒドロキノン型エポキシ樹脂)、jER YX4000H(三菱化学株式会社製 ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN―638(新日鐵株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN−701(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1201(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、TX−0710(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、エピクロン EXA−1515(大日本化学工業株式会社製 ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1355、エポトート ZX−1711(新日鐵化学株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、エポトート ESN−155(新日鐵化学株式会社製 β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトート ESN−355、エポトート ESN−375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトート ESN475V,エポトート ESN−485(新日鐵化学株式会社製 α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、EPPN−501H(日本化薬株式会社製 トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、スミエポキシ TMH−574(住友化学株式会社製 トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、YSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製 ビスチオエーテル型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1684(新日鐵化学株式会社製 レゾルシノール型エポキシ樹脂)、デナコール EX−201(ナガセケムテックス株式会社製 レゾルシノール型エポキシ樹脂)、エピクロン HP−7200H(DIC株式会社製 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、TX−0929、TX−0934、TX−1032(新日鐵化学株式会社製 アルキレングリコール型エポキシ樹脂)等のアルコール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製 脂肪族環状エポキシ樹脂)、エポトート YH−434、(新日鐵化学株式会社製 ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン)等のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、jER 630(三菱化学株式会社製 アミノフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート FX−289B、エポトート FX−305、TX−0932A(新日鐵化学株式会社製 リン含有エポキシ樹脂)等のエポキシ樹脂をリン含有フェノール化合物等の変性剤と反応して得られるリン含有エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上を併用して使用してもよい。
エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基と反応する反応性官能基の官能基当量は、フェノール化合物の場合は水酸基当量、酸無水物の場合は酸無水物当量、アミン化合物やリン原子に直結した水素を有するリン化合物等の場合は活性水素当量を表す。
反応性官能基を有する化合物類(b)は一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物を必須成分とする。リン含有フェノール化合物の具体例としては、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA−HQ)、10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下HCA−NQと記す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン(北興化学工業株式会社製 商品名PPQ)、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製 商品名CPHO−HQ)、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製 商品名CPHO−HQ)等のリン含有フェノール類を挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。また、これらのリン含有フェノール化合物は2種類以上を併用して使用する事もできる。
Figure 0005633931
(式中Aは炭素数6から20のアリーレン基及び/またはトリイル基を表し、nは0または1を表す。また、式中R及びRは炭素数1から6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。)
また、これらのリン含有フェノール化合物は9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA)やジフェニルホスフィン等のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物と、1,4−ベンゾキノンや1,4−ナフトキノン等のキノン類との反応で得る事ができる。HCA−HQについては特開昭60−126293、HCA−NQについては特開昭61−236787、PPQについてはzh.Obshch.Khim,42(11),第2415−2418頁(1972)に合成方法が示されているが、これに限定されるものではなく、公知慣用の方法を用いる事ができる。
前記リン含有フェノール化合物以外の反応性官能基を有する化合物類(b)として、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等のヒドロキシベンゼン類、ビフェノール類、ビナフトール類、トリスフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ショウノール BRG−555(昭和電工株式会社製 フェノールノボラック樹脂)、クレゾールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、アラルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン環含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、レヂトップ TPM−100(群栄化学工業株式会社製 トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂)、アラルキルナフタレンジオール樹脂等の一分子中に2個以上のフェノール性水酸基と有する化合物類、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA)やジフェニルホスフィン等のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物類、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジド類、イミダゾール化合物類及びその塩類、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノエチルベンゼン等の芳香族アミン類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等の酸無水物類等が挙げられ、これらを2種類以上使用してもよい。これらの化合物の使用量は、使用されるエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して官能基が0.5当量以下となる様に用いるのが好ましく、さらに好ましくは0.2当量以下である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、式1で求められる理論エポキシ当量の60%から95%の範囲であるが、70%から95%の範囲が好ましく、さらには75%から90%の範囲がより好ましい。60%より小さいと難溶性のリン含有フェノール化合物が多く残存してしまい、溶剤溶解性が乏しくなってしまう。95%より大きいと、エポキシ樹脂ワニスとした時の粘度低下効果が低くなってしまう。
また本発明のリン含有エポキシ樹脂は、式2で示されるエポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対して反応性官能基を有する化合物類(b)の反応性官能基を0.10当量から0.94当量の範囲で反応して得られるが、好ましくは0.20当量から0.70当量、より好ましくは0.20当量から0.60当量の範囲である。(b)が0.10当量より少ないと難燃性が不十分となり、0.94当量を超えて反応させると得られるリン含有エポキシ樹脂のワニス粘度が高くなってしまう。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を得る反応の反応温度は100℃から250℃、さらには130℃から180℃が好ましく、100℃以下では反応の進行が著しく遅く、250℃以上では理論エポキシ当量の60%から95%の範囲とするための反応制御が困難である。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂を得る反応では、必要に応じて反応を促進するために反応触媒を使用する事ができる。使用できる触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド等の四級ホスホニウム塩類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩類、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類等、公知慣用の触媒が挙げられ、これらに限定されるものではない。これら触媒の使用量は、フェノール化合物全量に対して0.005%から1%の範囲が好ましい。
エポキシ樹脂とリン含有フェノール化合物の反応は無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが、溶媒中で行う場合は、非プロトン性溶媒中で行うことが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、2−ブトキシエタノール、ジアルキルエーテル、グリコールエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの反応溶媒は単独で、あるいは2種類以上を同時に使用してもよい。これらの反応溶媒の使用量は反応物全重量中の50%以下が好ましい。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂の反応は、触媒量を調整することで該樹脂エポキシ当量を理論エポキシ当量の60%から95%の範囲にする事ができるが、反応温度を調整したり、反応を段階的に行う等、公知慣用の製造方法を用いる事ができ、これらに限定されるものではない。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、前記のリン含有エポキシ樹脂が必須成分であるが、必要に応じて他のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、充填剤等を含んでもよい。
前記リン含有エポキシ樹脂組成物に使用できるエポキシ樹脂として必須成分として含有するが、本発明のリン含有エポキシ樹脂の他に、物性を損なわない範囲で本発明のリン含有エポキシ樹脂の合成に使用するエポキシ樹脂と同様の種類のエポキシ樹脂が使用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は2種類以上を併用して使用してもよい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物に使用できるエポキシ樹脂硬化剤としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等のヒドロキシベンゼン類、ビナフトール類、ビフェノール類、トリスフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、トリスヒドロキシフェニルメタン、トリスヒドロキシフェニルエタン、ショウノール BRG−555(昭和電工株式会社製 フェノールノボラック樹脂)、クレゾールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、アラルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン環含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、レヂトップ TPM−100(群栄化学工業株式会社製 トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂)、アラルキルナフタレンジオール樹脂等の一分子中に2個以上のフェノール性水酸基と有する化合物類、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジド類、イミダゾール化合物類及びその塩類、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノエチルベンゼン等の芳香族アミン類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等の酸無水物類等が挙げられ、公知慣用のエポキシ樹脂硬化剤を1種類以上併用しても構わない。エポキシ樹脂硬化剤の使用量は、本発明のリン含有エポキシ樹脂を必須成分とするリン含有エポキシ樹脂類(c)のエポキシ基1当量に対してエポキシ樹脂硬化剤の官能基が0.1当量から1.3当量の範囲が好ましく、0.2当量から0.9当量がさらに好ましい。
また、流動性や粘度等を調整する場合には、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物の物性を損ねない範囲で反応性稀釈剤を使用することが可能である。希釈剤は反応性希釈剤が好ましいが、非反応性希釈剤でも構わない。反応性希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の単官能、レゾルシノールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の二官能、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類が挙げられる。非反応性希釈剤としては、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル等が挙げられる。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することが可能である。例えば、ホスフィン類、四級ホスホニウム塩類、三級アミン類、四級アンモニウム塩類、イミダゾール化合物類、三フッ化ホウ素錯体類、3−(3,4−ジクロロジフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等が挙げられる。これら硬化促進剤は使用するエポキシ樹脂、併用するエポキシ樹脂硬化剤の種類、成形方法、硬化温度、要求特性によるが、エポキシ樹脂に対して重量比で0.01%から20%の範囲が好ましく、さらには0.1%から10%が好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルホルマール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤、有機充填剤を配合することができる。充填剤の例としては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭素、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これら充填剤は樹脂組成物全体重量中の1%から70%が好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、さらに必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、難燃剤、顔料等の核種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は樹脂組成物全重量中の0.01%から20%の範囲が好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法により成型、硬化して硬化物とすることができる。成型方法、硬化方法は公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明の樹脂組成物固有の方法は不要である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができる。
本発明は、難燃性を有したリン含有エポキシ樹脂であり、ガラスクロス等の基材への含浸性が良好であるため作業性に優れており、尚且つ、リン含有エポキシ樹脂硬化物は難燃性や耐熱性、接着性が良好であり、電気電子部品に用いられる封止材、銅張り積層板、絶縁塗料、難燃塗料、複合材、絶縁難燃接着剤等の材料として有用であることが判った。
次に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表す。また、分析方法、測定方法は以下の通りである。
エポキシ当量:JIS K7236に準じた。
フェノール性水酸基当量:試料に4%のメタノールを含むTHFを加え、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを加えて、紫外可視分光光度計を用いて波長400nmから250nm間の吸光度を測定した。同様の測定方法より求めた検量線より、フェノール性水酸基を水酸基1当量当たりの試料の重量として求めた。
不揮発分:JIS K7235−1986
数平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)を用いて分子量分布を測定し、標準ポリスチレンより求めた検量線より換算した。
リン含有量:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン原子含有量を重量%で表した。積層板のリン含有量は、積層板の樹脂分に対する含有量として表した。
ワニス粘度:コーンプレート型粘度計(トキメック社製)を用い、ローターは標準コーン(1°34′)を使用して25℃の環境下、回転数10rpmで測定した。
赤外吸収スペクトル:フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社パーキンエルマー製 Spectum One)を用い、錠剤法(KBr)により測定した。
ガラス転移温度:示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR6000 DSC6200)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC外挿値の温度で表した。
燃焼性:UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じた。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間を秒で表した。
銅箔剥離強さ及び層間剥離強さ:JIS C6481に準じた。
T−288試験:IPC TM−650に準じて288℃にて試験を行った。
実施例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ実験装置に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名YDF−170、エポキシ当量170g/eq.)687部を入れ、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA−HQ、融点256℃、リン含有量9.6重量%、水酸基当量162g/eq.)314部を仕込んだ。これに触媒としてトリフェニルホスフィン(以下TPPと記す)0.06部を加えて165℃で4時間反応を行った後、メチルエチルケトン(以下MEKと記す)を加えて希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は淡黄色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度510mPa・s、実測エポキシ当量301g/eq.、水酸基当量850g/eq.、リン含有量3.0重量%、数平均分子量587であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.48当量、理論エポキシ当量は474g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は64%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例2
実施例1と同様にYDF−170を687部、HCA−HQを251部、フェノールノボラック型樹脂(昭和電工株式会社製 商品名ショウノール BRG−557、フェノール性水酸基当量105g/eq.)を63部仕込み、触媒としてTPPを0.06部加えて実施例1と同様の方法で反応させた。反応終了後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は淡黄色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度550mPa・s、実測エポキシ当量365g/eq.、水酸基当量1200g/eq.、リン含有量2.4重量%、数平均分子量619であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.53当量、理論エポキシ当量は527g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は69%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例3
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ実験装置に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA、リン含有量14.2重量%)209部及び1,4−ナフトキノン(川崎化成工業株式会社製 水分量3.4重量%)150部、トルエン490部を入れ、75℃で30分間撹拌した後、系内の水分を除きながら110℃で90分間反応させた後、トルエンを除いて10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA−NQ)を得た。これにYDF−170を641部、触媒としてTPP0.09部を加えて実施例1と同様の方法で反応させた。反応終了後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度440mPa・s、実測エポキシ当量409g/eq.、水酸基当量1750g/eq.、リン含有量3.0%、数平均分子量603であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.50当量、理論エポキシ当量は538g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は76%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例4
実施例3と同様にHCAを141部、1,4−ナフトキノンを101部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名YDPN−638、エポキシ当量175g/eq.)758部、触媒としてTPP0.02部を加えて165℃で4.5時間反応を行った後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1300mPa・s、実測エポキシ当量292g/eq.水酸基当量3600g/eq.、リン含有量2.0%、数平均分子量884であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.30当量、理論エポキシ当量は318g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は92%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例5
実施例3と同様にHCAを108部、1,4−ナフトキノンを80部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにトリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 商品名EPPN−501H、エポキシ当量167.2g/eq.)833部、触媒としてTPP0.02部を加えて150℃で6時間反応を行った後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMと記す)/MEK混合溶剤で希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度540mPa・s、実測エポキシ当量239g/eq.、水酸基当量4000g/eq.、リン含有量1.5%、数平均分子量628であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.20当量、理論エポキシ当量は255g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は94%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例6
実施例3と同様にHCAを108部、1,4−ナフトキノンを80部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名ESN−375、エポキシ当量167g/eq.)833部、触媒としてTPP0.02部を加えて150℃で6時間反応を行った後、PGM/MEK混合溶剤で希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度700mPa・s、実測エポキシ当量239g/eq.、水酸基当量4000g/eq.、リン含有量1.5%、数平均分子量716であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.20当量、理論エポキシ当量は254g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は94%であった。表1に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
実施例7
実施例1で得られたリン含有エポキシ樹脂にジシアンジアミド(DICY、活性水素当量21g/eq.)にと硬化促進剤を表3に示す固形分量で配合し、樹脂組成物を得た。これをMEKに溶解して樹脂ワニスとした。得られたエポキシ樹脂ワニスをガラスクロス(WEA 116E106S136 日東紡績株式会社製 厚み0.1mm)に含浸し、150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+170℃×70分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例8
実施例7と同様に、実施例2で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例9
実施例7と同様に、実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例10
実施例7と同様に、実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製 商品名YDCN−704、エポキシ当量209g/eq.)、DICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例11
実施例7と同様に、実施例4で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例12
実施例7と同様に、実施例3で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚と銅箔(3EC−III 三井金属鉱業株式会社製 厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の積層板を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例13
実施例12と同様に、実施例5で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
実施例14
実施例12と同様に、実施例6で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表2に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例1
実施例1と同様にYDF−170を687部、HCA−HQを314部仕込み、触媒としてTPP0.31部を加えて165℃で2時間反応を行った後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は淡黄色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1700mPa・s、実測エポキシ当量493g/eq.、水酸基当量>10000g/eq.、リン含有量3.0%、数平均分子量1260であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.48当量、理論エポキシ当量は474g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は104%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
比較例2
実施例3と同様にHCAを209部、1,4−ナフトキノンを150部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDF−170を641部、触媒としてTPP0.36部を加えて比較例1と同様の方法で反応させた。反応終了後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1500mPa・s、実測エポキシ当量527g/eq.、水酸基当量>10000g/eq.、リン含有量3.0%、数平均分子量1038であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.50当量、理論エポキシ当量は538g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は98%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
比較例3
実施例3と同様にHCAを141部、1,4−ナフトキノンを101部仕込み、実施例3同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDPN−638を758部、触媒としてTPP0.24部を加えて165℃で反応を行ったところ、反応開始1時間でゲル化した。そのため積層板評価は行っていない。
比較例4
実施例3と同様にHCAを154部、1,4−ナフトキノンを77部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにYDF−170を246部、YDPN−638を523部、触媒としてTPP0.23部を加えて165℃で2時間反応を行った後、MEKで希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1500mPa・s、実測エポキシ当量311g/eq.、水酸基当量>10000g/eq.、リン含有量2.2%、数平均分子量822であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.22当量、理論エポキシ当量は302g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は103%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
比較例5
実施例3と同様にHCAを108部、1,4−ナフトキノンを80部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにEPPN−501Hを833部、触媒としてTPP0.19を加えて150℃で3時間反応を行った後、PGM/MEK混合溶剤で希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1000mPa・s、実測エポキシ当量257g/eq.、水酸基当量>10000g/eq.、リン含有量1.5%、数平均分子量796であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.20当量、理論エポキシ当量は255g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は101%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
比較例6
実施例3と同様にHCAを108部、1,4−ナフトキノンを80部仕込み、実施例3と同様の方法で反応させてHCA−NQを得た。これにESN−375を833部、触媒としてTPP0.19部を加えて150℃で6時間反応を行った後、PGM/MEK混合溶剤で希釈した。得られたリン含有エポキシ樹脂溶液は濃褐色透明で、不揮発分70%、ワニス粘度1400mPa・s、実測エポキシ当量253g/eq.、水酸基当量>10000g/eq.、リン含有量1.5%、数平均分子量892であった。また、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対する反応性官能基を有する化合物類(b)の官能基は0.20当量、理論エポキシ当量は254g/eq.、理論エポキシ当量に対する実測エポキシ当量の割合は99%であった。表3に仕込み量と仕込み比率、樹脂の性状等を示す。
比較例7
実施例7と同様に、比較例1で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例8
実施例7と同様に、比較例2で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例9
実施例7と同様に、比較例4で得られたリン含有エポキシ樹脂及びDICYを用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例10
実施例11と同様に、比較例2で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例11
実施例11と同様に、比較例5で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
比較例12
実施例11と同様に、比較例6で得られたリン含有エポキシ樹脂及びBRG−557を用いてエポキシ樹脂硬化物を得た。表4に配合比率と積層板評価結果を示す。
Figure 0005633931
Figure 0005633931
Figure 0005633931
Figure 0005633931
表1の実施例1から実施例6に示す様に、本発明のリン含有エポキシ樹脂は、末端エポキシ基と末端フェノール性水酸基が共存する事により、従来技術の比較例1から比較例6と比較して数平均分子量が低く、エポキシ樹脂ワニスの粘度が低い。そのため、ガラスクロスへの含浸性が良好であり、作業性に優れる。さらに、実施例4で示す様に、比較例3に示す従来技術では合成が困難であった、エポキシ樹脂に多官能エポキシ樹脂のみを用いたリン含有エポキシ樹脂も合成可能であり、その分子量やワニス粘度は従来のリン含有エポキシ樹脂と遜色ない。
表2の実施例7から実施例14に示す様に、本発明のリン含有エポキシ樹脂にエポキシ樹脂硬化剤を配合して硬化したエポキシ樹脂硬化物は、従来のリン含有エポキシ樹脂を用いた場合に比べてガラス転移温度や耐熱信頼性が高いだけでなく、難燃性に優れる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は従来のリン含有エポキシ樹脂よりもエポキシ樹脂ワニスとした時の粘度が低いため、ガラスクロスなどの基材への含浸性が良好であり、作業性に優れる。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂硬化物は従来のリン含有エポキシ樹脂と比べてガラス転移温度が高く、難燃性や接着性にも優れる。

Claims (4)

  1. エポキシ樹脂類(a)と、エポキシ樹脂類(a)のエポキシ基と反応する反応性官能基を有する化合物類(b)とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂であって、反応性官能基を有する化合物類(b)は一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物を必須成分とし、かつ得られるリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量が式1で求められる理論エポキシ当量の60%から95%の範囲であることを特徴とするリン含有エポキシ樹脂。
    Figure 0005633931
    (式中Aは炭素数6から20のトリイル基を表し、nは0または1を表す。また、式中R1及びR2は炭素数1から6の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共に環状になっていてもよい。)
    Figure 0005633931
    Figure 0005633931
    Figure 0005633931
    (式中の反応性官能基とは、水酸基、酸無水物基、活性水素基のいずれか1つ以上であり、一般式(1)で表されるリン含有フェノール化合物由来の水酸基を必須とする。)
  2. 式2で示されるエポキシ樹脂類(a)のエポキシ基1当量に対して反応性官能基を有する化合物類(b)の反応性官能基を0.10当量から0.94当量の範囲で反応して得られる請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリン含有エポキシ樹脂を必須成分として含有するリン含有エポキシ樹脂類(c)のエポキシ基1当量に対してエポキシ樹脂硬化剤の官能基が0.1当量から1.3当量の範囲で配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物。
  4. 請求項3記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなるリン含有エポキシ樹脂硬化物。
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