JP5626828B2 - 化粧品組成物およびそれを用いた乾燥物 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧品組成物およびそれを用いた乾物に関するものである。
各種の粉末のような固体を含有する水系組成物は、化粧品をはじめとして、塗料、農薬等の広い分野で用いられている。水系組成物を用いた水系の化粧品は、油性の化粧品に比べ、油分等のべたつきがなく、みずみずしく伸びの良いサラッとした使用感が特徴であるため、ファンデーション、アイシャドー等のメイクアップ化粧品、サンスクリーン化粧品、乳液、クリーム等の各種化粧料として使用されている。
しかし、上記水系の化粧品は、通常、親水性の乳化剤や親水性の粉体を含有するため、化粧品を塗布してなる化粧膜が耐水性に劣る結果、効果が持続しない、化粧くずれが起こりやすい等の難点があった。
そこで、上記水系の化粧品に、表面が疎水化処理されてなる疎水性固体の粉末を配合し、これによって化粧品の耐水性を向上させる方法が提案されている。しかし、上記疎水性固体の粉末は、表面が疎水化処理されているため、水系の化粧品への分散性が悪く、粉末粒子同士が凝集したり、経時により沈降する等の問題が生じる。化粧品以外の用途、例えば、塗料や農薬等の用途においても、環境に対する配慮や、使用者の安全性から、製品の水系化が進行しており、疎水性固体を用いた耐水性の良い製品が望まれている。
これらの問題を解決するため、例えば、疎水性固体の粉末とともに、ノニオン界面活性剤を添加した水中油型乳化化粧料(特許文献1)が提案されている。また、本出願人は、平均重合度300以下で結晶化度50%以下、かつ、平均粒子径5μm以下のセルロース含有微粒子と、疎水性粉体とを含有する水系分散体(特許文献2)を提案している。
特開2004−91423号公報 国際公開2088/129955号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、疎水性固体の粉末の分散性を改善するために、ノニオン界面活性剤の添加量を増やす必要があり、そのため化粧品使用時の耐水性が低下するという問題がある。逆に、上記ノニオン界面活性剤の添加量を減らすと、化粧品組成物中での疎水性固体粉末の分散性が悪化するという問題が生じる。このように、上記特許文献1に記載のものは、化粧品使用時の耐水性と、化粧品組成物中での疎水性固体粉末の分散性を両立できないという問題があった。
上記特許文献2に記載のものは、界面活性剤に代えて、上記特定のセルロース含有微粒子を分散剤として使用することにより、化粧品使用時の耐水性と、化粧品組成物中での疎水性固体粉末の分散性を両立することが可能であるが、上記セルロース含有微粒子の添加量を増やす必要があり、経済性の点で改良の余地がある。また、上記特定のセルロース含有微粒子は、イオン性物質の影響を受けやすく、第三成分としてイオン性物質を配合した場合、分散性が悪化する傾向があるため、イオン性物質を用いた場合の分散性について改良の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、製造時および保存時の分散安定性に優れ、使用時の耐水性に優れ、経済性にも優れた、化粧品組成物およびそれを用いた乾物の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(C)成分を含有、(A)成分の含有量(固形分重量)が組成物全体の0.1〜1.20重量%であり、(B)成分の含有量が組成物全体の0.01〜50重量%であ化粧品組成物を第1の要旨とする。
(A)数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gの範囲である、セルロース繊維。
(B)金属、金属化合物、粘土鉱物類、高分子化合物、充填剤、顔料、水不溶性固体有機化合物、難燃剤、水不溶性固体生理活性物質および染料からなる群から選ばれた少なくとも一つの固体、または上記固体に撥水化処理を行った固体である、平均粒子径が1mm未満の疎水性固体。
(C)水。
また、本発明は、上記化粧品組成物を乾燥することにより得られる乾燥物を第2の要旨とする。さらに、本発明は、上記乾燥物を含有する化粧品組成物を第の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、製造時および保存時の分散安定性に優れ、使用時の耐水性に優れた、化粧品組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gの範囲である、セルロース繊維を用いると、少量でも分散安定性が向上することを突き止めた。そして、さらに研究を続けた結果、特定少量の上記特定のセルロース繊維と、特定の疎水性固体とを併用してなる化粧品組成物は、疎水性固体の凝集や、経時による沈降が起こりにくく、製造時および保存時において、疎水性固体の分散安定性が向上するとともに、化粧品組成物からなる塗膜は、耐水性に優れることを見いだし、本発明に到達した。
このように、本発明の化粧品組成物は、特定少量の上記特定のセルロース繊維を、特定の疎水性固体と併用しており、製造直後はもとより、組成物保管時においても、疎水性固体が沈降したり、凝集したりすることがなく、分散安定性に優れている。また、分散安定性に優れるため、疎水性固体分散目的のための界面活性剤の添加をゼロにするか、大幅に抑制することが可能となり、その結果、塗布後の皮膜は、耐水性が良好となるという効果も得られる。そして、本発明の化粧品組成物は、化粧品使用後の耐水性が良好であるため、効果が長く持続し、化粧くずれが起こりにくく、化粧もちが良いという効果も得られる。また、上記特定のセルロース繊維は、第三物質であるイオン性物質の影響を受けにくく安定であるため、本発明の化粧品組成物は、イオン性物質を配合した場合でも、分散安定性が良好である。さらに、本発明の化粧品組成物では、上記特定のセルロース繊維が特定少量の配合量で上記分散効果が得られるため、経済的である。
また、上記特定のセルロース繊維(A成分)が、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであることから、共酸化剤の使用量および酸化時間を調整することにより、分散安定性と、耐水性とのバランスがより良好となる。
さらに、上記特定の疎水性固体(B成分)が、金属、金属化合物、粘土鉱物類、高分子化合物、充填剤、顔料、水不溶性固体有機化合物、難燃剤、水不溶性固体生理活性物質および染料からなる群から選ばれた少なくとも一つの固体、または上記固体に撥水化処理を行った固体である、平均粒子径が1mm未満の疎水性固体であることから、これら固体の種類に応じて、様々な化粧品の用途に用いることができるようになる。
そして、上記化粧品組成物を乾燥することにより得られる乾燥物は、耐水性に優れるため、例えば、メイクアップ化粧料等の化粧品用途に用いた場合には、効果が長く持続し、化粧くずれが起こりにくく、化粧もちが良いという効果が得られる。
また、上記乾燥物を含有する化粧品組成物、効果が長く持続し、化粧くずれが起こりにくく、化粧もちが良いため、メイクアップ化粧料等に用いることができる。
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の化粧品組成物は、特定のセルロース繊維(A成分)と、特定の疎水性固体(B成分)と、水(C成分)とを用いて得ることができる。
本発明においては、上記特定のセルロース繊維(A成分)として、数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gの範囲である、微細なセルロース繊維(A成分)を特定少量(固形分重量で、組成物全体の0.1〜1.20重量%)用いるものであり、これが最大の特徴である。この微細なセルロース繊維(A成分)は、I型結晶構造を有する天然物由来のセルロース固体原料を表面酸化し、ナノサイズにまで微細化した繊維である。原料となる、天然物由来のセルロースは、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが多束化して高次構造を取っているため、そのままでは容易にはナノサイズにまで微細化して分散させることができない。本発明に用いる上記特定のセルロース繊維(A成分)は、その水酸基の一部を酸化してアルデヒド基およびカルボキシル基を導入し、ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めて、分散処理し、従来微細化することができなかったセルロース繊維をナノサイズにまで微細化したものである。本発明の化粧品組成物は、このような微細セルロース繊維を用いるため、界面活性剤等を使用しないか、もしくは僅かの試料量(組成物全体の0.3重量%以下)で、疎水性固体が良好な分散状態を呈する。
上記特定のセルロース繊維(A成分)は、数平均繊維径が2〜100nmであり、分散安定性の点から、好ましくは数平均繊維径が3〜80nmである。すなわち、上記A成分の数平均繊維径が2nm未満であると、本質的に分散媒体に溶解してしまい、逆に数平均繊維径が100nmを超えると、セルロース繊維が沈降してしまい、セルロース繊維を配合することによる機能性を発現することができないからである。
上記特定のセルロース繊維(A成分)の数平均繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、セルロース繊維に水を加え希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)等により観察し、得られた画像から、セルロース繊維の数平均繊維径を測定し、算出することができる。
上記特定のセルロース繊維(A成分)を構成するセルロースが、I型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
また、上記特定のセルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量は0.6〜2.2mmol/gであり、分散安定性の点から、0.6〜2.0mmol/gの範囲が好ましい。すなわち、上記セルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量が0.6mmol/g未満であると、セルロース繊維(A成分)の分散安定性に乏しく、セルロース繊維(A成分)の沈澱を生じる場合があり、また疎水性固体(B成分)の分散安定性が低下する。逆に、上記セルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量が2.2mmol/gを超えると、セルロース繊維(A成分)の水溶性が強くなり、化粧品用途での使用感がべたついたものになるからである。
上記特定のセルロース繊維(A成分)のカルボキシル基量の測定は、例えば電位差滴定により行うことができる。すなわち、乾燥させたセルロース繊維を水に分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液を加えて、充分に撹拌してセルロース繊維を分散させる。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、セルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出することができる。
なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより、行うことができる。
上記特定のセルロース繊維(A成分)を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうかは、例えば、13C−NMR分析により確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れることから確認することができる。
つぎに、本発明の化粧品組成物には、上記特定のセルロース繊維(A成分)とともに特定の疎水性固体(B成分)が用いられる。
本発明において、疎水性固体(B成分)とは、固体表面が撥水性を示すか、または固体表面が親油性を示すもののことであり、実質上水不溶性のものをいう。上記疎水性固体(B成分)には、本来は親水性固体であるが、その表面を撥水剤で撥水処理することにより、撥水性を示す撥水化処理固体も含まれる。
上記疎水性固体(B成分)となり得る固体としては、平均粒子径が1mm未満のものが用いられ、いわゆる粉体状が好ましく、煙霧状、微粒子状、顔料級等のものを使用することができる。また、上記粉体の形状は、球状、板状、針状等のいずれでもよく、多孔質等の粒子構造を有していても差し支えない。
上記親水性固体の撥水化処理に使用される処理剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高粘土シリコーン、架橋型シリコーン、アクリル変性シリコーン、シリコーン樹脂等のシリコーン化合物、非イオン界面活性剤、リン脂質等の界面活性剤、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、ポリイソブチレン、イソステアリルセバシン酸等のエステル油、ポリエチレン、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール等の油剤、N−ラウロイルリジン等のN−長鎖アシルアミノ酸、パーフルオロアルキルリン酸およびその塩、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸、ポリビニルピロリドン−ヘキサデセンのコポリマー等のポリビニルピロリドン変性ポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これら処理剤のなかでも、分散安定性、化粧品に使用した場合の使用感、撥水性の点から、シリコーン化合物が好ましい。
撥水化処理を行わずにそのままで、あるいは撥水化処理を行うことにより、上記疎水性固体(B成分)となり得る固体としては、金属、金属化合物、粘土鉱物類、充填剤、顔料、染料、高分子化合物、水不溶性固体有機化合物、難燃剤、水不溶性固体生理活性物質が用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<金属およびその化合物>
金属およびその化合物は、撥水化処理を行わずにそのままで疎水性固体(B成分)となり得る。具体的には、亜鉛末、アトマイズ青銅粉、アトマイズ鉄粉、アルミニウム粉、鋳物粉、インコニッケルパウダー、金属ベリリウム粉末、金粉、銀粉、タングステン粉末、鉱石還元鉄粉、酸化バナジウム、三酸化タングステン、錫粉、炭化タングステン、タンタル還元粉末、チタン粉末、鉄粉、電解銅粉、電解鉄粉、還元銅粉、ニッケルコートグラファイト、ニッケル球状粉末、ニオブ粉砕粉末、ニッケル粉、噴霧ステンレス鋼粉、噴霧銅粉、モリブデン、レニウム、アルミナ単結晶微粒、黄色酸化鉄、オキシイットリウム蛍光体、活性アルミナ、ガンマ酸化第二鉄、ガンマヘマタイト、硫化カドミウム、硫化亜鉛、酸化イットリウム、酸化イットリウム蛍光体、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化マグネシウム、酸化ユーロピウム、バリウムフェライト磁性粉、ジルコン酸カルシウム、水酸化ニッケル、チタン酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、タンタルフレーク粉末、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、鉛粉、二酸化テルル、バリウムフェライト磁粉、バリウムフェライト、マグネシア、マンガンジンクフェライト磁粉、硫化亜鉛蛍光体、硫化亜鉛カドミウム蛍光体、二硫化モリブデン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、目的に応じて、これらに撥水化処理を行ってもよい。
<粘土鉱物類>
粘土鉱物類は、撥水処理を行うことにより疎水性固体(B成分)となり得る。具体的には、アルミナ、ジルコニア、蛙目粘土、カオリナイト、カオリン、カルシウムベントナイト、クロマイトサンド、けい砂、けい砂シリカ、珪酸ジルコニウム、けい石粉、珪藻土、窒化アルミニウム、炭酸バリウム、サポナイト、ダイヤモンド、コレマナイト、酸化ガドリニウム、酸化ランタン、シャモット、焼成珪藻土、シラス、シラスバルーン、シリコンカーバイド、ジルコン砂、ジルコン、ジルコンフラワー、水酸化アルミニウム、ゼオライト、石英ガラス粉、セリウム研磨剤、セリサイト、ソジウムベントナイト、ソジウムモンモリトナイト、炭化ホウ素、窒化珪素、長石粉、陶石、ハロサイト、硼砂、マグネシア、木節粘土、蝋石、パーライト、セメント等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<充填剤、顔料、染料>
充填剤、顔料、染料のなかで、撥水化処理を行うことにより、疎水性固体(B成分)となり得るものとしては、具体的には、亜鉛華、亜酸化銅、一酸化鉛、ウィスカー状炭酸カルシウム、ウォッチングレッド、マイカ、塩素法酸化チタン顔料、オイルファーネスブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、オキシサルファイド蛍光体、カオリンクレー、滑石、石筆石、石鹸石、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、燐酸カルシウム、ガラスビーズ、球状アルミナ、群青、硅灰石、ワラストナイト、蛍光顔料、軽質炭酸カルシウム、合成ハイドロタルサイト、合成マイカ、黒鉛、黒色酸化鉄、極微細炭酸カルシウム、コバルト青、コバルト緑、コバルト紫、胡粉、紺青、サーマルブラック、酸化クロム、酸化チタン(アタナース)、酸化チタン(ルチル)、酸化テルビウム、酸化銅、ジスアゾイエロー、重質炭酸カルシウム、焼成クレー、シルクパウダー、消石灰、赤色酸化鉄、セリナイト、造粒カーボンブラック、炭化ケイ素ウイスカー、炭酸カルシウム、炭素繊維(粉状)、窒化ケイ素ウイスカー、窒化ホウ素、茶色酸化鉄、超微粒アルミナ、超微粒酸化亜鉛、超微粒子状酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、鉄黒、天然黒鉛粉末、天然土状黒鉛、ドロマイト粉末、ナイロン粉体、表面処理硫酸バリウム、フッ化カーボン、ポリエチレンワックス、ベンガラ、ホワイトカーボン、モリブデンレッド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
一方、上記充填剤、顔料、染料のなかで、撥水化処理を行わずにそのまま、疎水性固体(B成分)となり得るものとしては、具体的には、チャンネルブラック、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、バナデート蛍光体、微粒子酸化チタン、微粒子硫酸バリウム、微粒子水酸化アルミニウム、ファストイエロー10G、丸味状アルミナ、有機ベントナイト、溶融シリカ、ロウ石、六方晶窒化ホウ素等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<高分子化合物>
高分子化合物のなかで、撥水化処理を行わずにそのままで、疎水性固体(B成分)となり得るものとしては、具体的には、MBS樹脂、アクリルビーズ、塩化ビニル樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン、低分子量四フッ化エチレン樹脂、ビニリデンフルオライド樹脂、粉末化NBR、ポリエチレン、メタクリル酸メチル重合体粉末、メタクリル酸メチル重合体ビーズ、ポリエステル、ポリアミド、四フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー等があげられる。なお、目的に応じて、これらに撥水化処理を行ってもよい。
一方、上記高分子化合物のなかで、撥水化処理を行うことにより、疎水性固体(B成分)となり得るものとしては、具体的には、ナイロンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、澱粉等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<水不溶性固体有機化合物>
水不溶性固体有機化合物としては、例えば、ステアリン酸、活性炭、アセチレンブラック、N−アシルリジン、フスマ、抹茶、融点が40℃以上の油脂類、融点が40℃以上のワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<難燃剤>
難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、アンチモン系難燃剤、水酸化マグネシウム、芳香族系リン酸エステル難燃剤、脂肪族系リン酸エステル難燃剤、脂肪族含ハロゲンリン酸エステル難燃剤、芳香族含ハロゲンリン酸エステル難燃剤、反応型リン酸エステル難燃剤等があげられる。これらのなかで、親水性の難燃剤については、撥水化処理を行うことにより、疎水性固体(B成分)となり得る。また、疎水性の難燃剤については、撥水化処理を行わずにそのままで、疎水性固体(B成分)となり得るが、目的に応じて撥水化処理を行っても差し支えない。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
<水不溶性固体生理活性物質>
水不溶性固体生理活性物質としては、例えば、第15改正日本薬局方に収載の化合物のうち、日本薬局方溶解試験の水に対する溶解性試験結果が、「やや溶けにくい」、「溶けにくい」、「極めて溶けにくい」、「ほとんど溶けない」に分類される固体化合物等があげられる。また、上記水不溶性固体生理活性物質は、「医薬部外品原料規格 2006年版」(薬事日報社刊行)に記載の化合物のうち、水に対する溶解度が1%未満の固体化合物もあげられる。
本発明の化粧品組成物には、上記特定のセルロース繊維(A成分)および特定の疎水性固体(B成分)に加えて、水(C成分)が用いられる。本発明の化粧品組成物においては、セルロース繊維(A成分)と、疎水性固体(B成分)、下記の任意成分の含有量を除いた残量が、水(C成分)の含有量となる。
任意成分は、つぎの通りである。すなわち、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤類;アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、芳香族類等の水と混和し得る溶剤および水と混和しない溶剤類;ジオール化合物、グリセリンとその誘導体、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ショ糖、ブドウ糖、果糖等のグリコール類や糖類;天然水溶性高分子、合成水溶性高分子、セルロース誘導体、アクリル系ポリマー等の水溶性高分子類;シリコンオイル類、植物油、動物油、合成油等のオイル類;保湿剤、防腐剤・保存安定剤、無機塩類、紫外線遮蔽剤、ラテックス類、エマルジョン類、消泡剤、pH緩衝剤(pH調整剤)、香料類・消臭剤類、アミノ酸類・ビタミン類、生薬類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
本発明の化粧品組成物に使用されるセルロース繊維(A成分)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、木材パルプ等の天然セルロースを、水に分散させてスラリー状としたものに、臭化ナトリウム、N−オキシル化合物(例えば、N−オキシラジカル触媒)を加え、充分撹拌して分散・溶解させる。つぎに、次亜塩素酸水溶液等の共酸化剤を加え、pH10〜11を保持するように、0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpH変化が見られなくなるまで反応を行う。上記反応により得られたスラリーは、未反応原料、触媒等を除去するために、水洗、濾過を行い精製することにより、繊維表面が酸化された特定のセルロース繊維(A成分)の水分散体を得ることができる。なお、化粧品組成物として高い透明性が求められる場合は、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の強力な分散力を有する分散装置を用いて分散処理することで、高い透明性をもつセルロース繊維(A成分)を得ることができる。
上記N−オキシル化合物としては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPOのようなN−オキシラジカル触媒等があげられ、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)である。上記N−オキシル化合物の添加量は、通常、0.1〜4mmol/l、好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲である。
また、上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種類以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
本発明の化粧品組成物は、上記のようにして得られたセルロース繊維(A成分)の水分散体に、特定の疎水性固体(B成分)およびその他の任意成分を適宜に混合し、分散することにより調製することができる。
上記混合・分散処理には、例えば、真空乳化装置、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、湿式粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることができる。なお、上記混合・分散装置の種類や操作条件を選択することにより、粒子径等の疎水性固体(B成分)の物性や、任意の添加剤の物理化学的性質に応じた、所望の性状の化粧品組成物を調製することができる。
本発明の乾燥物は、上記のように調製した化粧品組成物を乾燥し、水を蒸散させることにより得ることができる。なお、乾燥後に必要に応じて粉砕しても差し支えない。
上記乾燥方法としては、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、固定床乾燥、真空式、送風式等があげられる。
なお、本発明の乾燥物は、上記特定の疎水性固体(B成分)を特定のセルロース繊維(A成分)で被覆した乾燥物であっても差し支えない。
上記被覆方法としては、例えば、スプレーコーティング、噴霧乾燥等があげられる。
本発明の化粧品組成物における上記特定のセルロース繊維(A成分)の含有割合(固形分重量)は、化粧品組成物全体の0.1〜1.20重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜1.20重量%の範囲である。そして、本発明の化粧品組成物の粘度を高くしたい場合や、組成物をゲル状やクリーム状に仕上げたい場合には、上記セルロース繊維(A成分)の添加量を多くすることで対応でき、逆に、組成物に流動性をもたせたい場合には、セルロース繊維(A成分)の添加量を減らすことにより対応することができる。
また、本発明の化粧品組成物における上記特定の疎水性固体(B成分)の含有割合は、化粧品組成物全体の0.01〜50重量%の範囲である。本発明の化粧品組成物における、疎水性固体(B成分)の配合量上限は、本発明の組成物が水分散体で提供される場合、組成物製造上の観点からは、疎水性固体(B成分)の粒子径に左右される傾向がある。一方、疎水性固体(B成分)の配合量下限は、組成物製造上での制約はなく、組成物の使用目的により決定される。すなわち、疎水性固体(B成分)が、生理活性物質等の極めて低濃度で効果を発揮する場合には、配合量下限は小さくなる傾向となり、疎水性固体(B成分)が充填剤等である場合には、配合量下限が大きくなる傾向となる。
本発明の化粧品組成物における、特定のセルロース繊維(A成分)と、特定の疎水性固体(B成分)との混合比(重量比)は、A成分(固形分重量)/B成分=1/10000〜1000の範囲が好ましく、特に好ましくは1/100〜100の範囲内である。
本発明の化粧品組成物は、配合する疎水性固体(B成分)の種類に応じて、各種化粧品の用途に用いることができ、特に化粧下地、リップグロス、口紅、マスカラ、ファンデーション、アイカラー、アイライナー、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤等の化粧料のような化粧品の用途が好ましい。
また、本発明の乾燥物は、具体的には、口紅、ファンデーション、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料等の材料に用いることができる。
さらに、上記化粧品組成物もしくは乾燥物を含有する本発明の化粧品組成物は、効果が長く持続し、化粧くずれが起こりにくく、化粧もちが良いため、口紅、ファンデーション、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料等に用いることができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に先立ち、つぎのようにしてセルロース繊維を作製した。
〔セルロース繊維T1(実施例用)の作製〕
針葉樹パルプ2g(乾燥重量)に水150g、臭化ナトリウム 0.025g、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.25gを加え、充分撹拌して分散させた後、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.4mmol/g−セルロースとなるように加え、pHを10〜11に保持するように0.5規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpH変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1規定塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維T1を得た。
〔セルロース繊維T2,T3(実施例用)、セルロース繊維H1,H2(比較例用)の作製〕
添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量および反応時間を、下記の表1に示すように変更する以外は、セルロース繊維T1の作製に準じて、各セルロース繊維を作製した。
Figure 0005626828
このようにして得られたセルロース繊維T1〜T3(実施例用)、セルロース繊維H1,H2(比較例用)を用い、下記の基準に従って各項目の測定を行った。これらの結果を、上記の表1に併せて示した。
<数平均繊維径>
各セルロース繊維に水を加え希釈した試料を、真空乳化装置を用いて、12000rpmで15分間分散させた後、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)により得られた画像(倍率:10000倍または50000倍)から、数平均繊維径を測定し、算出した。
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維表面のカルボキシル基の定量は、電位差滴定により行った。すなわち、乾燥させた各セルロース繊維0.3gを水55mlに分散させ、0.01規定の塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて、充分に撹拌してセルロース繊維を分散させた。つぎに、0.1規定の塩酸溶液をpH2.5〜3.0になるまで加え、0.04規定の水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、このセルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出した。
<アルデヒド基量の測定>
セルロース繊維(試料)表面のアルデヒド基量は、以下のようにして測定した。すなわち、試料を水に分散させ、酢酸酸性下で亜塩素酸ナトリウムを用いてアルデヒド基を全てカルボキシル基まで酸化させた試料のカルボキシル基量を測定し、酸化前のカルボキシル基量の差から、アルデヒド基量を算出した。
<セルロースI型結晶構造の確認>
上記各セルロース繊維がI型結晶構造を有することを、つぎのようにして確認した。すなわち、広角X線回折像測定により得られた回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから、I型結晶構造を有することを確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)およびセルロース繊維H1,H2(比較例用)は、I型結晶構造を有することが確認された。
<アルデヒド基およびカルボキシル基の確認>
各セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうか、つぎのようにして確認した。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認されたグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れたことにより確認した。その結果、上記セルロース繊維T1〜T3(実施例用)およびセルロース繊維H1,H2(比較例用)は、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が酸化されてなるカルボキシル基およびアルデヒド基も有することが確認された。
また、つぎのようにしてセルロース微粒子の分散体を調製した。
〔セルロース微粒子H3(比較例用)の作製〕
国際公開2088/129955号公報の実施例に準じて、セルロース微粒子の分散体を調製した。すなわち、−5℃の65重量%硫酸水溶液に、セルロース(木材パルプから製造したサルファイトパルプ)を、濃度5重量%となるように溶解させ、セルロースドープを得た。続いて、セルロースドープに対して2.5倍重量の5℃に維持された水中に、前記ドープを撹拌しながら添加し、セルロースをフロック状に凝集させた。得られた産物を、85℃で20分間維持し、ついでpH4以上になるまで、上記産物の水洗と脱水を繰り返し、ゲル状物を得た。つぎに、前記ゲル状物に、固形分濃度4重量%となるように水を添加した後、得られた産物を、分散機(プライミクス社製、TKロボミックス)に供して、10000rpmにて10分間処理することにより分散させた。さらに、得られた産物を、超高圧ホモジナイザー(みづほ工業製、マイクロフルイダイザーM−110−E/H、処理圧力は100MPa)に供して超高圧分散処理し、ゲル状のセルロース微粒子の分散体(固形分濃度4重量%)を得た。
このようにして得られたゲル状のセルロース微粒子の分散体を用いて、下記の基準に従い、セルロースの平均重合度、結晶化率および平均粒子径をそれぞれ測定した。
<平均重合度>
上記ゲル状のセルロース微粒子の分散体を、70℃で乾燥させた。つぎに、乾燥物200mg、400mg、600mg、800mg、1000mgをそれぞれカドキセン50mlに溶解して得られた希薄セルロース溶液の25℃における比粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定し、極限粘度数ηを、濃度0に外挿したときの比粘度として算出した。つぎに、得られた極限粘度数ηに基づき、下記の式(1)および式(2)により、セルロース平均重合度を算出した。その結果、上記ゲル状のセルロース微粒子の分散体中のセルロースの平均重合度は、約40であった。
Figure 0005626828
<結晶化率>
上記ゲル状のセルロース微粒子の分散体を、70℃で乾燥させた後、粉砕し、錠剤に成型して、線源CuKα、反射法での広角X線回折法(リガク社製、RINT−ULtima)により得られた回折図において、セルロース型結晶(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0 と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 から下記の式(3)よりセルロース型結晶成分の分率(χI)を求めた。同様に、前記回折図において、セルロース型結晶(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 *と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 *から、下記の式(4)よりセルロース型結晶成分の分率(χII)を求めた。そして、セルロース型結晶成分の分率(χI)と、セルロース型結晶成分の分率(χII)とを用い、下記の式(5)よりセルロースの結晶化率を求めた。その結果、得られたゲル状のセルロース微粒子の分散体中のセルロースの結晶化率は、20%であった。
Figure 0005626828
<平均粒子径>
上記ゲル状のセルロース微粒子の分散体を、1.5%重量濃度となるように水で希釈し、続いて、超高圧ホモジナイザー(みづほ工業製、マイクロフルイダイザー M−110−E/H、処理圧力は100MPa)により超高圧分散処理した。得られた分散液を、粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックUPA)で測定し、体積基準でのメジアン径として平均粒子径を算出した。その結果、上記ゲル状のセルロース微粒子の分散体中のセルロースの平均粒子径は、20nmであった。
つぎに、上記で得たセルロース繊維(T1〜T3、H1,H2)およびセルロース微粒子(H3)を用いて、以下のようにして化粧品組成物を調製した。
〔実施例1〕
疎水性固体(B成分)としてシリコーン処理微粒子酸化チタンを8.00重量部(以下「部」と略す)、上記セルロース繊維T1を固形分換算重量で0.75部、pH緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを0.10部計量し、水を加えて100部とした。つぎに、真空乳化装置を用いて、12000rpmで15分間処理して、化粧品組成物を調製した。
〔実施例2,3、比較例1〜6〕
下記の表2に示すように、各成分の種類および配合量を変更する以外は、実施例1に準じて、化粧品組成物を調製した。
Figure 0005626828
このようにして得られた各組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記の表2に併せて示した。
<分散安定性>
得られた化粧品組成物をガラス製サンプル瓶に充填し、40℃で1ヵ月放置した後、下記の判定基準に従い、組成物の分離状態を目視で判定した。
◎:全く分離が認められない。
○:ほとんど分離が認められない。
△:僅かに分離が認められる。
×:完全に分離している。
<耐水性>
得られた化粧品組成物をガラス板に塗布して乾燥させ、皮膜を形成させた後、40℃の水に浸漬し、皮膜の崩壊状態を、下記の判定基準に従い目視で判定した。
◎:全く皮膜が崩壊しない。
○:ほとんど皮膜が崩壊しない。
△:しばらくして皮膜が崩壊する。
×:ただちに皮膜が崩壊する。
上記表2の結果から明らかなように、実施例1〜3品は、いずれも分散安定性および耐水性が良好であった。なお、実施例1〜3品に含有されるセルロース繊維(T1,T2,T3)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、疎水性固体等の配合前と実質的変化がなかった。また、本発明者らは、上記セルロース繊維T1〜T3に代えて、カルボキシル基量が0.6mmol/g(下限)のセルロース繊維、およびカルボキシル基量が2.2mmol/g(上限)のセルロース繊維を用いた場合にも、セルロース繊維T1〜T3を用いた場合と同様の優れた効果が得られることを実験により確認している。
これに対して、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、セルロース微粒子H3を用いた比較例1品は、イオン物質であるクエン酸ナトリウムの影響を受けやすいため、実施例品に比べて、分散安定性、耐水性が劣っていた。また、比較例2品は、クエン酸ナトリウムを配合しない以外は、比較例1品と略同様であるが、比較例1品に比べて、分散安定性、耐水性が若干向上した。このことから、イオン物質であるクエン酸ナトリウムを用いると、セルロース微粒子H3がイオン物質の影響を受けて、分散安定性、耐水性が劣ることが確認された。
比較例3品,4品は、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、前記特許文献1に準じて、非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=12)を用いているが、分散安定性および耐水性がいずれも劣り、両者の両立ができなかった。すなわち、比較例3品のように、非イオン界面活性剤の配合量を多くすると、分散安定性は若干良くなるが、耐水性は著しく低下する。逆に、比較例4品のように、非イオン界面活性剤の配合量が少なくすると、耐水性は若干向上するが、分散安定性が著しく悪くなる。このように、実施例品のセルロース繊維T1〜T3に代えて、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を用いた場合は、分散安定性および耐水性の両立を図ることができないことが確認された。
比較例5品は、カルボキシル基量が下限未満のセルロース繊維H1を用いているため、セルロース繊維の分散が不良で、得られた組成物中でセルロース繊維が一部沈澱しており、分散安定性が悪く、耐水性も劣っていた。また、比較例6品は、カルボキシル基量が上限を超えるセルロース繊維H2を用いているため、実施例品に比べて、分散安定性および耐水性がいずれも劣り、得られた組成物の触感がベタベタしており、化粧品としての用途には適していない。
〔実施例4〜15〕
下記の表3および表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、真空乳化装置を用いて、12000rpmで15分間処理して、化粧品組成物を調製した。なお、上記表3および表4中の疎水性固体(B成分)としては、撥水処理加工された顔料を用いた。
Figure 0005626828
Figure 0005626828
このようにして得られた各組成物を用い、前記の基準に従って、分散安定性および耐水性の評価を行った。これらの結果を、上記の表3および表4に併せて示した。
上記表3および表4の結果から明らかなように、実施例4〜15品は、いずれも分散安定性および耐水性が良好であった。なお、実施例4〜15品に含有されるセルロース繊維(T1)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、疎水性固体等の配合前と実質的変化がなかった。
〔実施例16〜27〕
上記で得た実施例4〜15品の化粧品組成物を、噴霧乾燥して、セルロース繊維で被覆された撥水処理加工顔料の乾燥粉末を得た。
つぎに、上記実施例16〜27の乾燥粉末を、ファンデーションとして使用した場合の使用感(のびの軽さ、べたつきのなさ)を5名のパネルによる官能評価を行った。その結果、いずれの実施例品も、4名以上が非常に良いとの評価を行った。
〔実施例28〕
メトキシケイヒ酸オクチルを5部、オクタン酸イソセチルを12部、デカメチルシクロペンタシロキサンを5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=16)を0.5部、シリコーン処理微粒子酸化チタンを5部、シリコーン処理微粒子酸化亜鉛を9部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=5)を0.5部、エタノールを6.85部、1,3−ブチレングリコールを6部、メチルパラベンを0.1部、フェノキシエタノールを0.05部、乳酸ナトリウムを0.1部、上記セルロース繊維T3を固形分換算で0.8部、精製水を49.1部配合し、ホモミキサーで混合分散することにより、サンスクリーン剤として使用し得る化粧品組成物を調製した。
つぎに、上記実施例28の組成物をサンスクリーン剤として使用した場合の顔面での使用感(のびの軽さ、べたつきのなさ)を5名のパネルによる官能評価を行った結果、5名が非常に良いとの評価を行った。なお、実施例28品に含有されるセルロース繊維(T3)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、疎水性固体等の配合前と実質的変化がなかった。
〔実施例29〕
スクワランを10部、デカメチルシクロペンタシロキサンを5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=16)を0.5部、1,3−ブチレングリコールを8部、グリセリンを5部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=5)を0.5部、メチルパラベンを0.1部、フェノキシエタノールを0.05部、シリコーン処理酸化チタンを8部、シリコーン処理タルクを4部、シリコーン処理黄酸化鉄を0.5部、シリコーン処理黒酸化鉄を0.06部、シリコーン処理ベンガラを0.5部、エタノールを7.79部、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウムを0.1部、上記セルロース繊維T3を固形分換算で0.7部、精製水を49.2部を配合し、ホモミキサーで混合分散した後、超高圧ホモジナイザーで分散処理することにより、ファンデーションとして使用し得る化粧品組成物を調製した。
つぎに、上記実施例29の組成物をファンデーションとして使用した場合の顔面での使用感(のびの軽さ、べたつきのなさ)を5名のパネルによる官能評価を行った結果、5名が非常に良いとの評価を行った。なお、実施例29品に含有されるセルロース繊維(T3)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、疎水性固体等の配合前と実質的変化がなかった。
〔実施例30〜40、参考例〕
下記の表5および表6に示す各成分を同表に示す割合で配合し、水を所定量加えて100部とした。つぎに、真空乳化装置を用いて、12000rpmで15分間処理して、化粧品組成物を調製した。
Figure 0005626828
Figure 0005626828
なお、上記表5および表6中の疎水性固体(B成分)は、以下の材料である。
<金属およびその化合物>
シリコーン処理アルミニウム粉
二硫化モリブデン
<粘度鉱物類>
有機ベントナイト
<充填剤・顔料・染料>
疎水化処理ホワイトカーボン
カーボンブラック
<高分子化合物>
ポリエチレン粉末
<水不溶性有機化合物>
高融点ワックス粉末
<農薬>
硫黄粉末
<生理活性物質>
安息香酸ベンジル
ベンズブロマロン
<難燃剤>
トリクレジルホスフェート
なお、上記表5および表6中の、セルロース繊維(A成分)および疎水性固体(B成分)以外の材料は、以下の通りである。
<溶剤類>
エタノール
<グリコール類>
プロピレングリコール
<水溶性高分子類>
カルボキシメチルセルロース(CMC)
<界面活性剤類>
ショ糖脂肪酸エステル(HLB=12)
<無機塩類>
食塩
<ラテックス類>
酢酸ビニルエマルジョン
<消泡剤>
シリコーン消泡剤
<香料>
ユーカリ油
<防腐剤>
ソルビン酸ナトリウム
このようにして得られた各組成物を用い、前記の基準に従って、分散安定性の評価を行った。これらの結果を、上記の表5および表6に併せて示した。
上記表5および表6の結果から明らかなように、実施例30〜40品は、いずれも分散安定性が良好であった。なお、実施例30〜40品に含有されるセルロース繊維(T3)の数平均繊維径を、前述の方法で測定し、算出した結果、疎水性固体等の配合前と実質的変化がなかった。
本発明の化粧品組成物は、配合する疎水性固体(B成分)の種類に応じて、各種化粧品の用途に用いることができ、特に化粧下地、リップグロス、口紅、マスカラ、ファンデーション、アイカラー、アイライナー、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤等の化粧料のような化粧品の用途が好ましい。
また、本発明の乾燥物は、具体的には、口紅、ファンデーション、アイブロウ、チークカラー等のメイクアップ化粧料等の材料に用いることができる。

Claims (3)

  1. 下記の(A)〜(C)成分を含有、(A)成分の含有量(固形分重量)が組成物全体の0.1〜1.20重量%であり、(B)成分の含有量が組成物全体の0.01〜50重量%であることを特徴とする化粧品組成物。
    (A)数平均繊維径が2〜100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、I型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、上記カルボキシル基量が0.6〜2.2mmol/gの範囲である、セルロース繊維。
    (B)金属、金属化合物、粘土鉱物類、高分子化合物、充填剤、顔料、水不溶性固体有機化合物、難燃剤、水不溶性固体生理活性物質および染料からなる群から選ばれた少なくとも一つの固体、または上記固体に撥水化処理を行った固体である、平均粒子径が1mm未満の疎水性固体。
    (C)水。
  2. 請求項1記載の化粧品組成物を乾燥することにより得られることを特徴とする乾燥物。
  3. 請求項記載の乾燥物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
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