JP6360408B2 - 乳化剤とその製造方法、及びオーガニック化粧料 - Google Patents

乳化剤とその製造方法、及びオーガニック化粧料 Download PDF

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Description

本発明は、乳化剤とその製造方法、及びオーガニック化粧料に関する。
セルロースは地球上のバイオマスの大部分をしめ、その有効利用が期待されている。しかし、これらの生体高分子は強固な結晶構造を形成しているために微細化が困難であり、その利用が滞っている。そこで、バイオマス由来の複合材料(グリーンコンポジット)や医療分野における生体適合材料の開発を目的として、ナノレベルで均一に微細化(ナノファイバー化)されたセルロースを得るための研究が活発に行われている。
オーガニックは、農薬や化学肥料などの合成化学物質を使用せずに生産され取り扱われた農産物を指す言葉として知られている。オーガニック化粧料において、フランスの国際有機認定機関であるECOCERT、EUのNаTrue等の認定機関から、様々な認定ガイドラインが公表されている。その一例として、ECOCERTのCOSMECO(エコロジーラベル)の基準としては、完成品の95%が自然原料である(水を含む)、完成品の5%は化学原料で良い、完成品の5%はオーガニックでなければならない、植物原料の50%はオーガニックでなければならない、化学香料は使用できない、といった項目が設けられている。
従来、セルロース、キチン、キトサンまたはこれらの誘導体等の多糖類を、ウォータージェットを用いて粉砕分散させる湿式粉砕方法が文献公知となっている(特許文献1)。また、バイオマスの分散流体を100〜245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させることで、バイオナノファイバーを製造する方法が開示されている(特許文献2)。そして、セルロースファイバーと陰イオン性分散剤を含む分散体を高圧噴射処理することで、平均繊維径が10〜100nmのセルロースナノファイバーの分散体とする方法が開示されている(特許文献3)。
特開2005−270891号公報 特開2011−056456号公報(特許第5334055号) 特開2012−051991号公報
しかしながら、特許文献1記載のウォータージェットを用いる方法では、粉砕力が弱いことから微細化が不十分である。また、バイオマスのうち、工業用パルプや工業用キチン・キトサン、再生紙等を原料とした場合、生体適応性の観点から化粧料や食料品には適用し難い。また、特許文献3記載の陰イオン性分散剤は、オーガニックの観点から化粧料や食料品への適用が敬遠される。酸やアルカリ処理を行った場合においても同様に工業製品以外の分野で利用することが敬遠される。別の視点では、セルロースやキチン・キトサン等のバイオマスを産業資源として利用するために、強酸・超臨界法・メカノケミカル法及びイオン液体等を用いた前処理が検討されているが、廃液等による環境高負荷・高コスト・生産効率等の問題で実用化が滞っている。
また、ECOCERTのCOSMECO(エコロジーラベル)の基準の1要件としての、完成品の95%が自然原料であるという条件を満たすために、オーガニック化粧料を乳化させるための乳化剤として、従来は大豆由来のレシチンやラノリンなどを用いることが好ましいとされていたが、大豆由来のレシチンやラノリンなどの乳化剤は、ステアリン酸グリセリルなどの化学合成乳化剤よりも乳化性能が劣るため、現状ではほとんど使用されていない。つまり、オーガニック化粧料に含有されている乳化剤は、自然原料であることよりも性能面が重視されており、ステアリン酸グリセリルなどの化学合成乳化剤が利用されているのが実情である。このため、自然原料を用いて、優れた乳化性能を有する乳化剤の開発が求められている。
そこで、上述の課題に鑑みて、本発明の目的は、自然原料を用いて、優れた乳化性能を有する乳化剤とその製造方法、及びオーガニック化粧料を提供することを目的とする。
本発明の乳化剤は、セルロースの分散流体を100〜245MPaの高圧噴射処理により解繊することで得たセルロースナノファイバーが含有されていることを特徴とする。
本発明によれば、酸やアルカリを使用せずに、100〜245MPaの高圧噴射処理を行って、セルロースナノファイバーを得ているので、生体適応性に優れている。
本発明は、前記セルロースナノファイバーの平均繊維径が10〜50nmであることを特徴とする。
本発明によれば、前記セルロースナノファイバーの繊維同士がほどけて1本の最小単位の繊維となっているので、外観上も好ましい。
本発明は、前記セルロースナノファイバーの重合度が100以上300以下であることを特徴とする。
本発明によれば、水と油が分離しない乳化状態を長期に亘って維持することができる。重合度を100未満とするためには苛性ソーダによるマーセル化処理や希酸による加熱加水分解処理が一般的に必要となるので、好ましい重合度は100以上300以下である。
重合度は、セルロースの最小構成単位である「β−グルコース2分子」の連結数である。本発明において重合度は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法で求められる。
前記セルロースナノファイバーの終濃度は、0.1〜1.0wt%が好ましい。本発明によれば、粘度を抑えつつ、優れた乳化性能を示すこととなる。
前記分散流体の溶媒は、水であることが好ましい。本発明によれば、すべての原料を天然由来のものとすることが容易である。
本発明は、前記分散流体の溶媒が水であり、前記セルロースナノファイバーの終濃度が0.1〜1.0wt%となるように調製されていることを特徴とする。
本発明によれば、0.1〜1.0wt%という一般的な乳化剤よりも低濃度であり、水と油が分離しない乳化状態を長期に亘って維持することができる。そのため、化粧料に余分な添加剤の割合を低くできるという特徴も有している。また、乳化原理としては細かくなった油滴同士が結合し、大きな油滴になるのを前記セルロースナノファイバーの3次元ネットワークが防止していると考えられる。よって、この3次元ネットワークを形成して乳化効果を発現させるには終濃度を0.1wt%以上とすることが好ましい。終濃度は1.0wt%を超えてもよいが材料コストを抑えるためには終濃度を1.0wt%以下とすることが好ましい。
本発明のオーガニック化粧料は、セルロースの分散流体を100〜245MPaの高圧噴射処理により解繊することで得たセルロースナノファイバーと水が含有されていることを特徴とする。
本発明によれば、酸やアルカリを使用せずに、100〜245MPaの高圧噴射処理を行って、セルロースナノファイバーを得ているので、生体適応性にも優れている。それに加えて、前記セルロースナノファイバーは乳化性能に優れており、すべての原料を天然由来のものとすることが容易である。
本発明は、主成分が天然の植物油であることを特徴とする。
本発明によれば、純度の高いオーガニック化粧料となる。
天然の植物油としては、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、菜種油、ひまわり油、綿油、ゴマ油、米ぬか油、トウモロコシ油等がある。
本発明の乳化剤の製造方法は、セルロースの分散流体を100〜245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させ解繊することでセルロースナノファイバーとする微細化工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、酸やアルカリを使用せずに、100〜245MPaの高圧噴射処理を行うので、生体適応性に優れたセルロースナノファイバーが得られる。
本発明は、例えば、前記微細化工程に加えて、さらに撹拌工程を有する。本発明によれば、撹拌させて前記セルロースナノファイバーの3次元構造を広げることによって、安定的な状態を長期に亘って維持することが容易となる。
本発明の乳化剤とその製造方法によれば、酸やアルカリを使用せずに、100〜245MPaの高圧噴射処理を行って、セルロースナノファイバーを得ているので、生体適応性にも優れたものとなる。本発明によれば、前記セルロースナノファイバーの繊維同士がほどけて1本の最小単位の繊維となっているので、外観上も好ましい。本発明によれば、水と油が分離しない状態を長期に亘って維持することができる。本発明によれば、粘度を抑えつつ、優れた乳化性能を示すこととなる。本発明によれば、すべての原料を天然由来のものとすることが容易である。本発明によれば、0.2〜0.5wt%という一般的な乳化剤よりも低濃度でありながら、水と油が分離しない状態を長期に亘って維持することができる。そのため、化粧料に余分な添加剤の割合を低くできるという特徴も有している。
本発明のオーガニック化粧料によれば、酸を使用せずに、100〜245MPaの高圧噴射処理を行って、セルロースナノファイバーを得ているので、生体適応性にも優れている。それに加えて、前記セルロースナノファイバーは保水性が高いので、すべての原料を天然由来のものとすることが容易である。本発明によれば、前記セルロースナノファイバーと水との相乗効果によって、化粧料の効果を長期間維持することができる。本発明によれば、純度の高いオーガニック化粧料となる。
本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水と菜種油を撹拌して得られた乳化物において、セルロースナノファイバーの重合度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図1(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図1(b)は72時間後の乳化物の画像である。 本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、セルロースナノファイバーの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図2(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図2(b)は72時間後の乳化物の画像である。 本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品(または比較例)の乳化物を観察した画像であり、図3(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図3(b)は72時間後の乳化物の画像である。 比較例の化粧料である、レシチンと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、レシチンの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図4(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図4(b)は72時間後の乳化物の画像である。 比較例の化粧料である、ラノリンと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、ラノリンの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図5(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図5(b)は72時間後の乳化物の画像である。 比較例の化粧料である、ステアリン酸グリセリルと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、ステアリン酸グリセリルの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図6(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図6(b)は72時間後の乳化物の画像である。 本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品の乳化物を、高温試験を行って観察した画像であり、図7(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図7(b)は72時間後の乳化物の画像である。 本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品の乳化物を、オートクレーブ試験を行って観察した画像であり、図7(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図7(b)は72時間後の乳化物の画像である。 本発明に係るセルロースナノファイバーをFE−SEM(電解放出形走査電子顕微鏡)にて観察した画像である。 本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物をマイクロスコープにて観察した画像である。 本発明にて使用される高圧噴射装置のチャンバーの概略構成を示す模式図である。
本発明を実施するための形態を以下に説明する。
本発明において、バイオマス原料とは、生物由来の高分子で、水に不溶性の高分子で構成される原料である。本発明に係る高圧噴射装置で原料を高圧噴射処理すると、セルロースは繊維の長さを保ったまま繊維同士の絡まりがほどけて細くなる。そして、前記高圧噴射装置の噴射圧力や処理回数などの処理条件を変えることで、繊維の切断もしくは分子量を低下させることが可能である。
本発明において、ナノファイバーとは、繊維の幅がナノサイズになったものを意味する。セルロースは、本発明の方法の実施により繊維同士がほどけて1本の最小単位の繊維になると、その直径は10〜50nm程度となる。ナノファイバーの直径(幅)は、電子顕微鏡像(写真)に基づいて測定することができる。
本発明におけるセルロースナノファイバーは、その平均繊維径(短径の平均値)が、10〜100nm、好ましくは10〜50nm、より好ましくは10〜40nm、さらに好ましくは15〜25nm、最も好ましくは約20nmである。
本発明におけるセルロースナノファイバーは、その繊維径が100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下、特に40nm以下である。前記高圧噴射装置の処理回数を適宜調節することで透明なゲル状態にすることもできる。
本発明において、分散流体とは、セルロースを水に分散させたものであり、濃度が低い場合には、流動性の分散流体になるが、セルロースが微細化するにしたがって粘性は高くなり、濃度が高くなるとペーストに近い性状となる。セルロースナノファイバーの分散流体の濃度は、高濃度ほど処理効率が高まるため、好ましいが、粘度が高くなりすぎてペースト状になると高圧噴射が困難になることに留意する必要がある。
図11は、本発明にて使用される高圧噴射装置のチャンバー10の概略構成を示す模式図である。図11に基づいて、本発明における乳化剤の製造方法の詳細を以下に説明する。本発明では、出願人である株式会社スギノマシンが開発したウォータージェットを用いた高圧噴射装置を用いて、セルロースを含む分散流体をノズルより高圧噴射することによって、セルロースナノファイバーを生成する。高圧噴射の圧力は、100〜245MPa程度である。噴射速度は、440〜700m/s程度である。
図11に示す例では、高圧噴射処理は、セルロース分散流体加圧部11と、セルロース分散流体加圧部11の下流側に設けられたオリフィスノズル12と、オリフィスノズル12の下流側に設けられた衝撃増強領域14と、衝撃増強領域14の下流側に設けられた衝突用硬質体15と、回収用流路16と、が備わった高圧噴射装置を用いて行われる。
図11に示す例では、前記高圧噴射装置のノズル12から高圧噴射され衝突用硬質体15に衝突したセルロースの分散流体は回収され、再度、前記ノズル12より衝突用硬質体15に向けて高圧噴射される。この操作を必要な回数、例えば1〜50回程度、好ましくは1〜40回程度、より好ましくは1〜30回程度、さらに好ましくは1〜20回程度、特に好ましくは1〜10回程度繰り返す。従来、バイオマスのナノファイバー化には臼(ディスクミル)やエレクトロスピニング法などが用いられているが、生産効率は低く、微細化の均一性にも問題があるが、これらの方法と本発明の方法を組み合わせて使用することは可能であり、これによって少ない回数で処理を行うことが容易となる。
セルロースは、前記衝突用硬質体15に衝突することで、繊維の絡まりが解け、繊維径が縮小し、ナノサイズに微細化していく(図11)。衝突用硬質体15としては、ボール状、平板状等の形状が挙げられる。分散流体を高圧噴射するノズル12孔の直径としては、0.1〜0.8mm程度が挙げられる。
図11に示す例では、セルロース分散流体加圧部11にて100〜245MPaに加圧されたセルロース分散流体が貫通孔13を通って衝撃増強領域14側に噴射される。貫通孔13の直径としては、0.1〜0.8mmが好ましい。図11に示す例では、貫通孔13、衝撃増強領域14及び衝突用硬質体15は、略同一直線状に配置されており、貫通孔13から噴射されたセルロース分散流体が、衝撃増強領域14を通って衝突用硬質体15に衝突する構成である。そして、オリフィスノズル12から噴射された後に吐出流は440〜700m/sの高速噴流となり、高いせん断力が発生する。ここで使用するオリフィスノズル12の厚みは、例えば、0.4mmと極端に薄いため、圧力エネルギーのほぼ100%を噴射の速度エネルギーに変換できる。すなわち、オリフィス内部では、0.1〜0.8mmという隙間と、440〜700m/sの超高速の状態となり、高いせん断力を得るための条件が整う。また、440〜700m/sの高速噴流ではキャビテーション気泡が発生し、このキャビテーション気泡が破裂することで強い衝撃力が発生する。さらに、オリフィスノズル12の下流に衝撃増強領域14を設けることで、キャビテーション気泡を効果的に発生させることができる(図11)。衝撃増強領域14の長さLは、0.01〜200mmの範囲内であり、より好ましくは2〜60mmの範囲内である。衝突用硬質体15の材質としては、セルロース分散流体衝突時の衝撃に耐え得るものであれば特に限定されず、例えば、セラミック等が挙げられる。上記のような高圧噴射装置の好適な実用機としては、例えば、株式会社スギノマシン製の「スターバースト(登録商標)」が挙げられる。
上述の高圧噴射装置(株式会社スギノマシン製スターバースト)を用いた乳化剤の製造方法としては、具体的には、セルロース分散流体を100〜245MPaに加圧し、オリフィスノズル12から噴射して衝突用硬質体15に衝突させる高圧噴射処理を少なくとも1回実施し、好ましくは複数回実施することにより製造する。1回目の高圧噴射処理で衝突用硬質体15に衝突させたセルロース分散流体は、回収用流路16から回収する。高圧噴射処理を2回以上行う場合、回収したセルロース分散流体を再度加圧し、オリフィスノズル12より衝突用硬質体15に向けて高圧噴射する操作を、繊維径の微細化に必要な回数繰り返す(図11)。
本実施形態によれば、セルロースは、前記衝突用硬質体(図11の符号15)に衝突することで、繊維の絡まりが解け、繊維径が縮小し、ナノサイズに微細化していく。
本発明の乳化剤を化粧料として用いると、非常になめらかな感触であって、保湿作用、スキンケア作用、抗菌作用、新陳代謝の促進作用などが期待できる。
本発明に係るセルロースナノファイバーは、可視光は通すが紫外線を通さない性質を有しているため、UVケア化粧品として有用である。本発明におけるセルロースナノファイバーは、保湿作用を有しているため、化粧品に配合するなどして肌に適用することができる。
本発明の乳化剤は、UVケア化粧料や医薬品等、多岐に亘って応用できる。本発明の乳化剤の応用例としては、医薬品としては、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、硬膏剤、エアゾール剤、液剤、エキス剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、創傷被覆剤、懸濁剤等が挙げられ、また、化粧料としては、ファンデーション、口紅、化粧水、乳液、クリーム、マスカラ等が挙げられ、スキンケア、保湿等の用途に好適である。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の乳化剤の製造例
上述の高圧噴射装置(株式会社スギノマシン製スターバースト)を用いて、水にセルロースを混合したスラリー状の流体を100〜245MPaの超高圧に加圧し、図11に示すように、オリフィスノズル12(φ0.1〜0.8mm)から高圧で噴射し、本発明の乳化剤を得た。
オリフィスノズル12からの吐出流は440〜700m/sの高速噴流となるが、その速度までに加速されるオリフィス内では、高い剪断力が発生する。ここで使用するオリフィスノズル12の厚みは0.4mmと極端に薄いため、圧力エネルギーのほぼ100%を噴射の速度エネルギーに変換できる。すなわち、オリフィス内部では、0.1〜0.8mmという狭い隙間と、440〜700m/sの超高速の状態となり、高い剪断力を得るための構成要素が満たされている。
[剪断力]=[スラリーの粘度]×[速度]/[隙間]
スラリーの粘度については、本処理回路の各部を改善したことで、より高濃度すなわち高粘度のスラリーを処理することができるようになり、スラリー自身の剪断力(ずり応力)を高める要因にもなっている。
440〜700m/sの高速噴流(高圧噴射状態)ではキャビテーション気泡が発生し、この気泡が消滅することによって強い衝撃力が発生する。オリフィスノズル12の下流側に衝撃増強領域14を設けることで、キャビテーションを効率的に発生させることができる。
また、構造上の噴流受けとして、ボール状または平板状のセラミック硬質体を備える。結晶化度をより低下させるためには、噴射圧力を高くし、噴流の速度の速い領域を用い、この硬質体への衝突力も粉砕に利用する(図11を参照)。
図9は、本発明に係るセルロースナノファイバーをFE−SEM(電解放出形走査電子顕微鏡)にて観察した画像である。図9に示す例は、セルロースナノファイバーの重合度が200である。ここで、重合度は、セルロースの最小構成単位である「β−グルコース2分子」の連結数である。本発明において重合度は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法で求められる。
本発明の化粧料の製造例1
本発明のセルロースナノファイバーを含有した乳化剤を水と菜種油と撹拌混合し、本発明の化粧料(乳化物)を得た。ここでは、本発明に係るセルロースナノファイバーの重合度を変化させて、各乳化性能を比較した。
実験は、以下の手順で行った。(1)(а)15mLの菜種油、(b)本発明に係るセルロースナノファイバー(重合度100、200、300、600、800、1000の4種類)を終濃度で0.2wt%添加、(c)イオン交換水で30mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。その結果を、次の表1に示す。図1は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水と菜種油を撹拌して得られた乳化物において、セルロースナノファイバーの重合度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図1(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図1(b)は24時間後の乳化物の画像である。
表1と図1(a)、(b)から次のことが判明した。
重合度が低い方が乳化には適しており、重合度100以上300以下のセルロースナノファイバーが最も効果的であり、72時間後にも分離しなかった。その後も経過観察しているが、同様に乳化状態を維持していた。しかし、重合度600以上では、乳化されるものの、混合・撹拌してから30分後にて油層と水層とに分離が見られた。
本実施例によれば、重合度100以上300以下のセルロースナノファイバーが、分離しない状態を長期に亘って維持することができるといえる。
本発明の化粧料の製造例2
本発明のセルロースナノファイバーを含有した乳化剤を水とオリーブ油と撹拌混合し、本発明の化粧料(乳化物)を得た。ここでは、本発明に係るセルロースナノファイバーの濃度を変化させて、各乳化性能を比較した。
実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)本発明に係るセルロースナノファイバー(重合度200、短繊維タイプ)を終濃度で0.005wt%、0.01wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、1.0wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。その結果を、次の表2に示す。図2は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、セルロースナノファイバーの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図2(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図2(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表2と図2(a)、(b)から次のことが判明した。
セルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%以上の濃度であれば乳化状態を維持し、72時間後にも分離しなかった。その後も経過観察しているが、同様に乳化状態を維持していた。閾値は0.05 wt%超過0.1 wt%以下である。好ましい濃度は、0.1〜1.0wt%である。
本実施例によれば、セルロースナノファイバーの濃度が0.1〜1.0wt%であれば、粘度を抑えつつ、優れた乳化性能を長期に亘って維持することができるといえる。
図10は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物を倍率が100倍のマイクロスコープにて観察した画像である。図10に示す例は、セルロースナノファイバーは、重合度が200であり、終濃度が0.5wt%である。油滴サイズは、中央値が6〜10μmである。油滴サイズは、概ね20μm以内となっている。油滴画像を観察した印象としては、本発明の化粧料は、油滴の輪郭がはっきりしている印象がある。
本発明の化粧料と従来例との比較実験1
本発明の化粧料と、従来例の化粧料について、各乳化性能を比較した。
実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)本発明に係るセルロースナノファイバー(重合度200、短繊維タイプ)を終濃度で0.5wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
乳化剤が未添加の場合は、(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)乳化剤が未添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
従来品(または比較例)は、乳化剤がレシチン、ラノリン、カゼインナトリウム、微小繊維状セルロース、ステアリン酸グリセリル、微結晶セルロースであり、(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)従来品(または比較例)の乳化剤を終濃度で0.5wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
その結果を、次の表3に示す。図3は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品(または比較例)の乳化物を観察した画像であり、図3(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図3(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表3と図3(a)、(b)から次のことが判明した。
本発明品のセルロースナノファイバーを添加したものは乳化状態を維持し、72時間後にも分離しなかった。その後も経過観察しているが、同様に乳化状態を維持していた。従来品(または比較例)は、濃度が0.5wt%の場合は、いずれも混合・撹拌してから30分後には油層と水層がほぼ完全に分離した。
本実施例によれば、セルロースナノファイバーは、優れた乳化性能を長期に亘って維持することができるといえる。
化粧料の比較例1
比較実験1として、既知の化粧料に関し、レシチンについて、濃度を変化させて、各乳化性能を比較した。
比較実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)レシチンを終濃度で2wt%、5wt%、10wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mlにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。その結果を、次の表4に示す。図4は、比較例の化粧料である、レシチンと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、レシチンの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図4(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図4(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表4と図4(a)、(b)から次のことが判明した。
レシチンの場合は、乳化力を高めるには、濃度を大きくする必要があるが、レシチンは、濃度を10wt%とした場合においても、混合・撹拌してから180分後には油層と水層がほぼ完全に分離した。よって、レシチンは、乳化性能を24時間維持することはできないと結論付けた。
化粧料の比較例2
比較実験2として、既知の乳化剤に関し、ラノリンについて、濃度を変化させて、各乳化性能を比較した。
比較実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)ラノリンを終濃度で2wt%、5wt%、10wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。その結果を、次の表5に示す。図5は、比較例の化粧料である、ラノリンと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、ラノリンの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図5(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図5(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表5と図5(a)、(b)から次のことが判明した。
ラノリンの場合は、乳化力を高めるには、濃度を大きくする必要があるが、ラノリンは、濃度を2wt%とした場合には、混合・撹拌してから24時間後には油層と水層がほぼ完全に分離した。よって、ラノリンは、乳化性能を24時間維持するためには、濃度を5〜10wt%にする必要がある。
化粧料の比較例3
比較実験3として、既知の乳化剤である、ステアリン酸グリセリルについて、濃度を変化させて、各乳化性能を比較した。
比較実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)ステアリン酸グリセリルを終濃度で2wt%、5wt%、10wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。その結果を、次の表6に示す。図6は、比較例の化粧料である、ステアリン酸グリセリルと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物において、ステアリン酸グリセリルの濃度を変化させた場合の乳化物を観察した画像であり、図6(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図6(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表6と図6(a)、(b)から次のことが判明した。
ステアリン酸グリセリルの場合は、乳化力を高めるには、濃度を大きくする必要があるが、ステアリン酸グリセリルは、濃度を10 wt%とした場合においても、混合・撹拌してから24時間後には油層と水層がほぼ完全に分離した。よって、ステアリン酸グリセリルは、乳化性能を24時間維持することはできないと結論付けた。
本発明の化粧料と従来例との比較実験2
本発明の化粧料と、従来例の化粧料について、高温試験を実施して、各乳化性能を比較した。高温試験は、80℃で60分間加熱した。
実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)本発明に係るセルロースナノファイバー(重合度200、短繊維タイプ)を終濃度で0.5wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)80℃で60分間加熱した後、経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
従来品は、乳化剤がレシチン、ラノリン、ステアリン酸グリセリルであり、(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)従来品の乳化剤を終濃度で10wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)80℃で60分間加熱した後、経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
その結果を、次の表7に示す。図7は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品の乳化物を、高温試験を行って観察した画像であり、図7(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図7(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表7と図7(a)、(b)から次のことが判明した。
本発明品のセルロースナノファイバーを添加したものは乳化状態を維持し、72時間後にも分離しなかった。その後も経過観察しているが、同様に乳化状態を維持していた。従来品は、いずれも混合・撹拌してから24時間後には油層と水層がほぼ完全に分離した。レシチンとラノリンは黄色味を帯びた物質であり、その乳化物は薄い黄色味を帯びているが、加熱により黄褐色に変色した。
本実施例によれば、セルロースナノファイバーは、80℃で60分間加熱した後においても、ほとんど変色せずに優れた乳化性能を長期に亘って維持することができるといえる。したがって、本実施例のセルロースナノファイバーを用いることで、高温殺菌が必要な食品や化粧料への適用が容易となる。また例えば、化粧料に適用した場合に、その温度管理範囲の幅が広くなり、温度管理が容易となる等の効果が得られる。
本発明の化粧料と従来例との比較実験3
本発明の化粧料と、従来例の化粧料について、オートクレーブ試験を実施して、各乳化性能を比較した。オートクレーブ試験は、オートクレーブ試験装置にて121℃の高圧飽和水蒸気下で30分間加熱した。
実験は、以下の手順で行った。(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)本発明に係るセルロースナノファイバー(重合度200、短繊維タイプ)を終濃度で0.5wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)オートクレーブ試験装置にて121℃の高圧飽和水蒸気下で30分間加熱した後、容器を数回上下に振って混合し、経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
従来品は、乳化剤がレシチン、ラノリン、ステアリン酸グリセリルであり、(1)(а)30mLのオリーブ油、(b)従来品の乳化剤を終濃度で10 wt%となるように添加、(c)イオン交換水で100mLにメスアップし、配合した。次に、(2)ミキサー(8,400rpm、1min、WARINGブレンダー7012S)を用いて撹拌した。(3)撹拌後に、メスシリンダーに入れた。そして、(4)オートクレーブ試験装置にて121℃の高圧飽和水蒸気下で30分間加熱した後、容器を数回上下に振って混合し、経時的に乳化分離度を測定した。乳化分離度は、全量に対する分離水層の割合を%表示で示している。
その結果を、次の表8に示す。図8は、本発明の化粧料である、セルロースナノファイバーと水とオリーブ油を撹拌して得られた乳化物と、従来品の乳化物を、オートクレーブ試験を行って観察した画像であり、図8(a)は混合・撹拌直後の乳化物の画像であり、図8(b)は72時間後の乳化物の画像である。
表8と図8(a)、(b)から次のことが判明した。
本発明品のセルロースナノファイバーを添加したものは乳化状態を維持し、72時間後にも分離しなかった。その後も経過観察しているが、同様に乳化状態を維持していた。ラノリンとステアリン酸グリセリルは、いずれも混合・撹拌してから2時間後には油層と水層がほぼ完全に分離した。レシチンでは分離が確認されなかったが、加熱により全体が黄褐色に変色した。また、ラノリンでは分離が見られ、さらに加熱により黄褐色に変色した。
本実施例によれば、セルロースナノファイバーは、オートクレーブ試験装置にて121℃の高圧飽和水蒸気下で30分間加熱した後においても、ほとんど変色せずに優れた乳化性能を長期に亘って維持することができるといえる。したがって、本実施例のセルロースナノファイバーを用いることで、オートクレーブ滅菌処理が必要なレトルト食品や医療薬品や化粧料への適用が容易となり、また例えば、化粧料に適用した場合に、オートクレーブ滅菌処理の効果を享受できるうえ、その温度管理範囲の幅が広くなり、温度管理が容易となる等の効果が得られる。
上述の比較実験において、オリーブ油を使用したが、菜種油やその他の植物油を使用した場合においても同様の結果が得られると考えられる。天然の植物油としては、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、菜種油、ひまわり油、綿油、ゴマ油、米ぬか油、トウモロコシ油などがある。
また、本発明の乳化剤に、水溶性の有効成分や添加剤を加えたものを希釈して、化粧水や美容液等の化粧料として利用することもできる。添加剤の例としては、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸等の水溶性ビタミン類;オウバクエキス、カンゾウエキス、アロエエキス、スギナエキス、茶エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、海藻エキス、マロニエエキス、ユズエキス、ユーカリエキス、アスナロ抽出液等の動・植物抽出液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等の塩類;クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩等のpH調整剤;カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸ナトリウム等の増粘剤等が挙げられる。
なお、上記有効成分や添加剤はあくまで一例であり、オーガニック化粧料においては、ECOCERTのCOSMECO(エコロジーラベル)の基準等を満たす必要があるため、酸や化学処理等は行わないことが望ましいことは言うまでもない。

Claims (10)

  1. β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子のバイオマスセルロースであり、かつ化学処理が行われていない前記セルロースを分散流体とし、前記セルロースの分散流体を100〜245MPaの高圧噴射処理により衝突用硬質体に衝突させ解繊することでセルロースナノファイバーとする微細化工程を有し、前記セルロースナノファイバーの重合度を100以上300以下とすることを特徴とする乳化剤の製造方法。
  2. 前記セルロースナノファイバーの平均繊維径が10〜50nmであることを特徴とする請求項1記載の乳化剤の製造方法
  3. 前記分散流体の溶媒が水であり、前記セルロースナノファイバーの終濃度が0.1〜1.0wt%となるように調製されていることを特徴とする請求項1または2記載の乳化剤の製造方法
  4. β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子のバイオマスセルロースであり、かつ化学処理が行われていない前記セルロースを分散流体とし、前記セルロースの分散流体を100〜245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させ解繊することでセルロースナノファイバーとする微細化工程を有し、前記セルロースナノファイバーの重合度を100以上300以下として、前記セルロースナノファイバーをその乳化状態を維持し変色を抑制させながら高温殺菌やオートクレーブ滅菌処理可能な状態とすることを特徴とする乳化剤の製造方法。
  5. 前記セルロースナノファイバーの平均繊維径を10〜50nmに微細化し、前記オートクレーブ滅菌処理を121℃以上の高圧飽和水蒸気下で30分間以上加熱することで行うことを特徴とする請求項記載の乳化剤の製造方法。
  6. 前記高温殺菌を80℃以上で60分間以上加熱することで行うことを特徴とする請求項4または5記載の乳化剤の製造方法。
  7. 前記分散流体の溶媒が水であり、前記セルロースナノファイバーの終濃度が0.1〜1.0wt%となるように調製することを特徴とすることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乳化剤の製造方法。
  8. β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子のバイオマスセルロースであり、かつ化学処理が行われていない前記セルロースを分散流体とし、前記セルロースの分散流体を151〜245MPaの高圧噴射処理により解繊することでセルロースナノファイバーとする微細化工程を有し、前記セルロースナノファイバーの重合度を100以上300以下とし、前記セルロースナノファイバー含有させることを特徴とするオーガニック化粧料の製造方法
  9. 主成分が天然の植物油であることを特徴とする請求項記載のオーガニック化粧料の製造方法
  10. 前記植物油がオリーブ油であることを特徴とする請求項9記載のオーガニック化粧料の製造方法
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