JP5727657B1 - セルロースナノファイバー分散体の製造方法。 - Google Patents
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(1)アニオン変性セルロースを分散媒の存在下で処理する解繊分散処理工程と、
解繊分散処理されたアニオン変性セルロースを昇温速度5.910×10 6 ℃/秒以上、1.0×10 9 ℃/秒以下で処理する
殺菌工程を有する、セルロースナノファイバー分散体の製造方法。
(2)好ましい実施形態においては、前記解繊分散処理工程および殺菌工程を、高圧ホモジナイザーを用いて行なう。
(3)好ましい実施形態においては、前記殺菌工程を、40℃以上で開始する。
(4)好ましい実施形態においては、前記アニオン変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50である。
(5)好ましい実施形態においては、前記アニオン変性セルロースが、N−オキシル化合物の存在下で共酸化剤を用いて酸化させることによって得られたものである。
(6)解繊分散処理されたアニオン変性セルロース水分散体を昇温速度5.910×10 6 ℃/秒以上、1.0×10 9 ℃/秒以下で処理するセルロースナノファイバー分散体の殺菌方法。
高圧ホモジナイザーは、処理液が微細流路を高速で通過し、その際、動力から変換された圧力エネルギーが運動エネルギーを通じて熱エネルギーに変化され、微細流路の出口にて均質圧力が開放される瞬間に液体温度が瞬時に上昇する。本発明ではこの瞬時の液体温度上昇を殺菌に利用するものである。
高圧ホモジナイザーの能力に係る本質的な因子としては、モーター容量(kW)、処理量(L/hr)、均質圧力(MPa)、ノズル内直径(mm)、ノズル流路長(m)、その他、ノズル形状やノズル構成、チェンバー形状、等がある。高速で管長L(m)の管路内を流れる流体の管路壁面での摩擦による管路1m当りの圧力損失△p/L(MPa/m)は、Fanningの式から数1で表される。なお、以下、fは管摩擦係数であり、Blasiusの式にて管摩擦係数fは、乱流域(Re≦105)においてレイノルズ数Reとの間でf=0.0791Re−0.25の実験式が提案されている。高圧ホモジナイザーにおいて、処理液が高速で微細流路を通過する際の流動状態は十分に乱流域にあり、数1では管摩擦係数fの算出において便宜上Re=1×105とし、管摩擦係数f=0.004を得た。また、以下、流体の密度をρ(kg/m3)、流体の平均速度をua(m/sec.)、均質バルブの間隙、或いは、ノズルの内直径をd(mm)と表記する。
このとき、包括的ノズル流路長LX(m)は、前記1m当りの圧力損失△p/L、均質圧力(処理圧)Phから、数2にて導くことができる。
針葉樹パルプ乾燥重量200gに、水15L、臭化ナトリウム25g、TEMPOを2.5gを加え、充分撹拌して分散させた後、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、次亜塩素酸ナトリウムとして6.5mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを7.0に調整し、ろ過と水洗を繰り返して精製し、カルボキシル基量 1.83mmol/gである繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。
カルボキシル基量 [mmol/g]=V[ml]×〔0.05/セルロース重量〕
また、セルロースナノファイバーの最大繊維径、数平均繊維径は、下記の方法で算出した。
解繊工程において、分散媒の20質量%がエタノールとなるよう調整した以外は、上記実施例1と同様の操作にてセルロースナノファイバー水分散液を得た。また、この時、殺菌工程における超高圧ホモジナイザー入口及び出口における液温はそれぞれ50℃、71℃、前記計算式によって算出される昇温速度は5.910×106℃/秒であった。カルボキシル基量 1.88mmol/g、最大繊維径 10nm、数平均繊維径 5nmである繊維表面が酸化されたセルロースナノファイバーを得た。
上記実施例1において、殺菌工程を省略して所定の工程を終了し、その後、直ちに液温を40℃以下まで冷却した以外は、上記実施例1と同様の操作にて固形分1質量%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、解繊工程の最終処理終了時の超高圧ホモジナイザー出口における液温は55℃であった。
撹拌機に広葉樹パルプを乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを88g加え、パルプ固形濃度が15%になるようにイオン交換水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを117g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.05のアニオン変性されたセルロースを得た。その後、アニオン変性したパルプを固形濃度1%とし、超高圧ホモジナイザーにより、液温20℃から冷却操作を伴いながら190MPaの圧力で5回処理し、処理液の均一性(微白濁)を目視確認した後、セルロースナノファイバーの解繊工程を終了とした。この時、本解繊工程中は冷却水により除熱しながら処理を行い、最終処理後の回収液の液温は45℃であった。次いで、殺菌工程として、更に超高圧ホモジナイザーを用いて190MP、時間当たりの処理量を250L/hrとして1回処理した後、直ちに液温を40℃以下まで冷却して固形分1重量%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、殺菌処理前後の超高圧ホモジナイザー入口及び出口における液温はそれぞれ45℃、78℃、前記計算式によって算出される昇温速度は5.910×106℃/秒であった。
なお、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、実施例1に記載の方法でカルボキシル基量を測定し、更に下式を用いて算出した。ここで言う置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値を示す。
カルボキシメチル置換度=(162×C)/(1−58×C)
C:カルボキシル基量 [mol/g]
水酸化ナトリウムを264g、モノクロロ酢酸ナトリウムを351g(有効成分換算)に変更した以外、実施例3と同様にしてセルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、得られたセルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.15であった。また、この時、殺菌工程における超高圧ホモジナイザー入口及び出口における液温はそれぞれ58℃、78℃、前記計算式によって算出される昇温速度は5.910×106℃/秒であった。
水酸化ナトリウムを440g、モノクロロ酢酸ナトリウムを585g(有効成分換算)に変更し、超高圧ホモジナイザーの処理圧を140MPaに変更して解繊工程を行い、ガラスフィルターを用いてろ過して得たセルロースナノファイバーを容積比 2−プロパノール(IPA):イオン交換水=50:50の含水溶媒で洗浄、ろ過を3回繰り返し、次いで減圧乾燥することによって精製されたセルロースナノファイバー(カルボキシメチル置換度 0.25)を得た。次に、固形分1重量%となるようイオン交換水に上記セルロースナノファイバー乾燥物を加え、ホモミキサーを用いて8000rpmで10分間撹拌して、セルロースナノファイバー水分散体を得て、次いで、セルロースナノファイバー水分散体を45℃とした後、殺菌工程として、超高圧ホモジナイザーを用いて190MP、時間当たりの処理量を250L/hrとして1回処理し、直ちに液温を40℃以下まで冷却して固形分1重量%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、殺菌処理前後の超高圧ホモジナイザー入口及び出口における液温はそれぞれ45℃、73℃、前記計算式によって算出される昇温速度は5.910×106℃/秒であった。
上記実施例3において、殺菌工程を省略して所定の工程を終了し、その後、直ちに液温を40℃以下まで冷却した以外は、上記実施例3と同様の操作にて固形分1重量%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。
上記実施例3において、殺菌工程の超高圧ホモジナイザーの処理圧を70MPaとし、時間当たりの処理量を50L/hrとした以外は、上記実施例3と同様の操作にて固形分1重量%のセルロースナノファイバー水分散液を得た。この時、殺菌工程における超高圧ホモジナイザー出口における液温は41℃、前記計算式によって算出される昇温速度は4.728×104℃/秒であった。
固形分率で0.05〜0.1重量%のセルロースナノファイバー分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM−1400)の観察用試料とした。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行った。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節した。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取った。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取った(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得た)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出した。
実施例、並びに比較例で得られた調製直後のセルロースナノファイバー水分散体(固形分1重量%)を200mのマヨネーズ瓶に移し、脱気後、25℃で24時間静置したサンプルについて、BH型粘度計(80000mPa・s未満:ローターNo.4、回転数2.5rpm、3分、25℃、80000mPa・s以上:ローターNo.5、回転数2.5rpm、3分、25℃)を用いて粘度を測定した。
一般細菌数については以下の方法に従って測定した。
1.一般細菌用寒天培地(標準寒天培地)を下記手順により調製した。
(1)1000mLビーカーに標準寒天培地23.5gを取り純水1000mLを加え撹拌溶解し、更に、ビーカーを熱湯に漬け加熱撹拌溶解した。
(2)500mL三角フラスコ2個に分取した後、フラスコにシリコン栓で栓をし、更にアルミホイルで包み込み、滅菌用カゴに入れオートクレーブで121℃×20分間滅菌した。
(3)オートクレーブ釜内圧が低下後、脱気バルプを開け作業当日まで放置した。
(4)作業当日に脱気バルプを閉め、121℃×5分間滅菌した。
(5)釜内圧が低下後、脱気バルプを開け、フラスコを取り出し、予め用意した50℃湯バスに浸して保温した。
2.生理食塩水を下記手順により調製した。
(1)食塩を8.5g取り、1000gになるように純水を加え撹拌、溶解して0.85重量%の生理食塩水を調整した。
(2)50mLメスシリンダーを用いて、50mLを100mL三角フラスコに取り、シリコン栓で栓をし、アルミホイルで包み込み、オートクレーブで121℃×20分間滅菌した。
(3)オートクレーブ釜内圧が低下後、脱気バルプを開けた。
3.サンプル検体調製は下記手順により行った。
(1)予め無菌ブース内で紫外線殺菌した上皿天秤、分銅を用意した。
(2)滅菌した100mLサンプル瓶に滅菌済みスパチュラで約20gのサンプリングを分注した。
(3)殺菌した100mL三角フラスコと栓、スパチュラ、殺菌済み0.85%生理食塩水(100mLフラスコ)、供試サンプルを無菌ブース内に準備した。
(4)上皿天秤で殺菌済み100mL三角フラスコにサンプル0.5gを滅菌済みスパチュラで秤取した。なお、菌数が多いサンプルの場合には適宜希釈して供試する。
(5)サンプルを含む100mL三角フラスコに滅菌済み0.85%生理食塩水を加え、手で振り、振とう機に1時間かけて供試検体を調製した。
(6)滅菌済みシャーレ3枚に滅菌済み10mLメスピペットで供試検体から各1mLずつ検体を採取した。
4.培養、及び、菌数測定
(1)3枚のシャーレに予め溶解殺菌、保温した標準寒天培地を約20mLずつ素早く流し込み、サンプルと培地とを混合した。
(2)寒天培地が固まるまで静置した。
(3)シャーレを倒置して、37℃のふ卵器で48時間±3時間培養後、コロニーをカウントした。
(4)菌数/gは、(3枚のシャーレに発生した菌数/3)×100にて算出した。
臭気(異臭の有無)については、以下の方法に従って判定を行った。
社内パネラー5人(パネラーA〜E: 30代男性、30代男性、20代男性、40代女性、20代女性)によって、各サンプルについて異臭の有無についてサンプル名を隠したブラインド評価を実施して臭気の判定を行った。
[判定]
3 … 鼻をつく刺激臭あり
2 … 不快臭あり
1 … わずかな異臭或いは不快臭あり
0 … 不快臭を感じない
実施例1、実施例3、実施例5で得られたセルロースナノファイバー水分散体について、外部分析試験機関にて日本薬局方に基づく大腸菌群、真菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌の分析試験を行い、以下の結果を得た。
Claims (6)
- アニオン変性セルロースを分散媒の存在下で処理する解繊分散処理工程と、
解繊分散処理されたアニオン変性セルロースを昇温速度5.910×10 6 ℃/秒以上、1.0×10 9 ℃/秒以下で処理する殺菌工程を有する、
セルロースナノファイバー分散体の製造方法。 - 前記解繊分散処理工程および殺菌工程を、高圧ホモジナイザーを用いて行なう請求項1記載のセルロースナノファイバー分散体の製造方法。
- 前記殺菌工程を、40℃以上で開始することを特徴とする請求項1または2記載のセルロースナノファイバー分散体の製造方法。
- 前記アニオン変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載のセルロースナノファイバー分散体の製造方法。
- 前記アニオン変性セルロースが、N−オキシル化合物の存在下で共酸化剤を用いて酸化させることによって得られたものである請求項1〜3いずれか一項記載のセルロースナノファイバー分散体の製造方法。
- 解繊分散処理されたアニオン変性セルロース水分散体を昇温速度5.910×10 6 ℃/秒以上、1.0×10 9 ℃/秒以下で処理するセルロースナノファイバー分散体の殺菌方法。
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