JP5727660B1 - セルロースナノファイバー水分散体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の経時的な外観の変化、ゲル性の変化を抑制し、かつ部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体含有品の増粘性、ゲル化性、保形性、乳化安定性、分散安定性の経時変化を抑制しうる部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法を提供することである。【解決手段】(i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化してカルボキシメチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、(ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、(v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、を有する部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、部分酸型カルボキシメチルセルロース(CMC)塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法、並びに該製造方法によって得られる食品および化粧料に関する。
従来、有限な資源である石油由来の高分子材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を使った材料が注目されている。例えば、セルロース繊維を使った材料として、ナノサイズの繊維径をもったセルロース繊維(セルロースナノファイバー)に関する技術が注目されている。特許文献1には、アニオン変性されたセルロースが高圧ホモジナイザーで処理されることを特徴とするカルボキシメチル置換度の低いセルロースナノファイバーの製造方法が開示されている。
また、部分酸型カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロース塩(以下、CMC塩という)のアルカリ塩の部分を部分的に酸型に変換したものである。従来技術によれば、CMC塩はアルカリ塩では水溶性であるのに対し、酸型では水に不溶となるので、酸型の置換基数の増大により、水への膨潤度を小さくすることができるため、この特徴が注目されている。特許文献2には、部分酸型CMCの製造方法が開示されている。
特開2013−185122号公報 特開2008−19344号公報
近年の要求性能の向上に伴い、セルロースナノファイバー水分散体外観の変化、ゲル性の変化の経時安定性が求められるようになった。また、セルロースナノファイバーを使用した増粘剤等についても、増粘性等の経時変化が小さいことが求められるようになった。
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものであり、本発明によれば、部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の経時的な外観の変化、ゲル性の変化を抑制し、かつ部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体含有品の増粘性、ゲル化性、保形性、乳化安定性、分散安定性の経時変化を抑制しうる部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法を提供することを課題とする。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、特許文献1記載の方法では、置換度が0.30より大きくなると一部成分が溶解して、増粘剤やゲル化剤として機能が大きく損なわれるといった問題があることが分かった。また、当該技術では、酸性条件下、例えば、pH5.0を下回る条件下で使用をする際、いわゆるpHショックによってセルロースナノファイバーの沈降、凝集物の発生、粘度の急激な低下、ゲルの崩壊などの現象が見られ、耐酸性に問題があることが分かった。セルロースナノファイバー水分散体は、前記の如く、幅広い用途分野での応用が期待されているが、その本来の機能を保持しながら好適に使用できるpH領域が狭いという課題を抱えており、特に、酸性領域では増粘、ゲル化、保形性、乳化安定化、分散安定化などの機能が著しく低下する問題があった。例えば、人の皮膚表面のpHは通常4.5〜6.0の弱酸性であり、スキンケア製品や化粧品、トイレタリー製品などでは弱酸性の商品設計となっているものが多い。また、食品や飲料、調味液類、等において、その成分である、醗酵乳のpHは通常pH3.0〜4.5の範囲にあり、果汁としては、 レモン果汁でpH3.3〜4.0、リンゴ果汁でpH3.9〜4.5、グレープフルーツ果汁でpH3程度、トマト果汁でpH4程度であり、クエン酸やリンゴ酸、酢酸などの有機酸も同様のpH値を示し、味噌でpH4.5〜5.0、醤油でpH4.0〜5.0である。これら成分からなる、乳酸菌飲料やヨーグルト、酸性乳飲料、スポーツドリンク(pH3.0〜3.6)、乳幼児用イオン飲料(pH3.6〜3.9)、機能型ドリンク、ゼリー飲料、カロリー摂取型ドリンク、デザートドリンク、ベビーフード、更に、ジャム、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ウスターソース、バーベキューソース、焼肉ソース、各種食用タレ、つゆ、ジュレ状調味料、等は概ねpH3.0〜6.5の範囲にあり、これら用途で添加剤として使用される増粘剤、ゲル化剤、保形剤、乳化安定化剤、分散安定化剤、等は、弱酸性領域でpHショックを生じることなく、性能が保持され、その性能の経時変化が小さいものが好ましい。一方、特許文献2に記載の方法は、水に不溶性の部分酸型CMC塩を平均粒子径10〜100μm程度の粉末状、或いは、粉末を水に一部膨潤させた状態で使用するものであり、ナノファイバー由来の性能が得られるものではない。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、セルロースナノファイバー水分散体を調製する原料として、部分的にアニオン変性されたセルロース、即ち、カルボキシメチル置換度を特に限定した低置換度カルボキシメチルセルロース塩(低置換度CMC塩)から、更に、そのアルカリ金属塩である低置換度CMC塩の一部を酸型に変換して得た部分酸型CMC塩を用いることで、より広いpH領域、特に、弱酸性領域でpHショックを生じることなく、増粘剤、ゲル化剤、保形剤、乳化安定化剤、分散安定化剤、等としての性能を発揮し、その性能の経時変化が小さいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記に掲げる発明に関する。
(1)(i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化してカルボキシメチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、
(ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、
(v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、
を有する部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法であって、
前記、部分酸型CMCがCMC塩のアルカリ塩の部分を部分的に酸型に変換したものであり、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02〜0.80であり、かつ、酸型置換基が全置換基の1.0〜80.0%である部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法。
(2)(i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化してカルボキシメチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、
(ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、
(iii)前記部分酸型CMCを洗浄する工程、
(iv)洗浄した部分酸型CMCと、所定量のアルカリを反応させる工程、
(v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、
を有する部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法であって、
前記、部分酸型CMC塩がCMC塩のアルカリ塩の部分を部分的に酸型に変換したものであり、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02〜0.80であり、かつ、酸型置換基が全置換基の1.0〜80.0%である部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法。
)(1)または(2)記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の溶媒を除去する工程、を有する部分酸型CMC塩ナノファイバーの製造方法。
)(1)または(2)記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体。
)(1)または(2)記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体を含有する食品。
)20℃におけるpHが3.0〜5.5である、()記載の食品。
)(1)または(2)記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体を含有する、20℃におけるpHが3.0〜5.5である化粧料。
本発明によれば、部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の経時的な外観の変化、ゲル性の変化を抑制し、かつ部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体含有品の増粘性、ゲル化性、保形性、乳化安定性、分散安定性の経時変化を抑制しうる部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法を提供することができる。
本発明の部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法は、(i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化(以下、エーテル化と記する場合がある)してカルボキシメチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、(ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、(v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、を有する。
本発明において、部分酸型CMCとは、CMC塩を酸によって部分的に遊離酸に変換したCMCをいう。
本発明におけるセルロースナノファイバーは、数平均繊維径が2nm以上200nm以下の状態まで解繊されていることが好ましい。
<工程(i)>
工程(i)で使用する原料パルプとしては、特に限定されないが、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプなどが挙げられる。これらのうち、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。上記原料パルプは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記原料パルプとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
工程(i)において、アルカリセルロース化に用いるアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属水酸化物が使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、等の1 価の金属の水酸化物などが挙げられる。これらの中で、価格および得られるCMC塩の特性の点から水酸化ナトリウムが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
工程(i)において、前記アルカリの使用量は、原料パルプ中のセルロースのグルコース単位量に対して、モル比で0.2〜6.0倍が好ましく、0.4〜4.0倍がより好ましい。これらの範囲であれば、アルカリセルロースを効率良く得ることができエーテル化が充分となる、また、アルカリの使用量が効率的であり粘度の観点からも好ましい。
前記アルカリセルロース化を行うときの反応温度は、20〜60℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。アルカリセルロース化の反応温度がこれらの範囲であれば、アルカリセルロースを充分に生成させることができ、粘度の観点からも好ましい。また、前記アルカリセルロース化を行うときの反応時間は、30〜90分間が好ましく、40〜80分間がより好ましい。反応時間がこれらの範囲であれば、アルカリセルロースを充分に生成させることができ、粘度の観点からも好ましい。
工程(i)において、アルカリセルロース化に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、含水有機溶媒を使用することができる。含水有機溶媒は、アルカリとの相溶性の観点から好ましい。含水有機溶媒の水と有機溶媒の質量比は、特に限定されないが、水:有機溶媒が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜20:80がより好ましい。これらの範囲であれば、反応系中のアルカリ濃度を充分に高濃度に保つことができる。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール( 以下、I PA という) 、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルコール類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。入手の容易さ、低価格、取り扱いやすさの点で、I PA 、エタノール、メタノールが好ましい。また、エタノール−トルエン混合溶媒など、アルコール系溶剤と芳香族系溶媒の混合溶媒も使用可能である。
前記含水有機溶媒の配合量は、原料パルプに対して、重量比で2.0〜10倍が好ましく、2.5〜8倍がより好ましい。これらの範囲であれば、含水有機溶媒と原料パルプ中のセルロースとが充分に撹拌混合されるため、撹拌時の反応機に対する負荷が大きくならず、また均一反応の観点からも好ましい。さらに原料経費の観点からも好ましい。
工程(i)においては、次に得られたアルカリセルロースにエーテル化剤を反応させてエーテル化を行なう。エーテル化は、アルカリ過剰下で進行させることが好ましい。エーテル化剤としては、特に限定されないが、例えば、モノクロル酢酸、モノクロル酢酸ナトリウム、モノクロル酢酸メチル、モノクロル酢酸エチルなどが挙げられる。これらのうち、モノクロル酢酸が好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
前記エーテル化剤の使用量は、目的のエーテル化度によって決定されるため、特に制限はないが、原料パルプ中のグルコース単位量に対して、モル比で0.5〜6倍が好ましく、2〜4倍がより好ましい。エーテル化剤の配合量が、0.5倍以上であれば、CMC塩のエーテル化度が十分であり、目的とするエーテル化度が得られやすい。一方、エーテル化剤の配合量が6倍以下であると、高価なエーテル化剤を無駄に使用することがなく、好ましい。
前記エーテル化における反応温度は特に限定されないが、75〜100℃が好ましく、80〜90℃がより好ましい。反応温度が75℃以上であれば、エーテル化が充分である。一方、反応温度が100℃以下であれば、反応溶媒の沸点を超えず、溶媒が揮発しないことから作業性の観点から好ましい。また、反応時間は特に限定されないが、50〜120分間が好ましく、50〜90分間がより好ましい。反応時間が50分間以上であればエーテル化が充分である。一方、反応時間が90分間以下であれば、作業性が良好であり、得られるCMC塩の粘度の観点からも好ましい。
前記エーテル化反応終了後、反応溶媒として用いた有機溶媒を一部除去する。有機溶媒を一部除去したCMC塩の固形分濃度は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましく、50〜60重量%がさらに好ましい。CMC塩の固形分濃度が30重量%より以上であれば、CMC塩はスラリー状態とならず、以降の撹拌効率の観点から好ましい。一方、CMC塩の固形分濃度が80重量%以下であれば、CMC塩固形分が高くならず、撹拌時の負荷が大きくならないため、作業性が良好である。
<工程(ii)>
工程(i)で得られたCMC塩は、酸を添加することにより、部分酸型CMCに変換する工程である。酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、モノクロル酢酸などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
これらの中で、酸型CMCに変換する効率が高い点で、硫酸、塩酸が好ましい。
前記酸の添加量は、理論エーテル化度に対して、モル比で0.2〜3.0倍が好ましく、0.3〜2.5倍がより好ましい。これらの範囲であれば、酸置換度が好適となる。
前記酸を添加後の反応温度は、特に限定されないが、50〜110℃が好ましく、65〜105℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。反応温度が、これらの範囲であれば、酸置換が充分となり、酸置換の反応時間が好適となることから酸置換の均一性の観点から好ましい。また、撹拌時間は、特に限定されないが、20〜80分間が好ましく、40〜60分間がより好ましい。撹拌時間が、これらの範囲であれば、酸置換が充分であり、作業性の観点からも好ましい。
<工程(v)>
工程(ii)、または後述する工程(iv)で得られた部分酸型CMCを、解繊分散処理することで、部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体を得る工程である。
工程(v)においては、特に限定されないが、例えば、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置が好適に使用される。これらを使用することによりナノ粒子状に微細化することが可能となり、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。これらのうち、高圧ホモジナイザーは、コンタミネーションが少ない、処理時間が短い、連続処理が可能、粒度分布がシャープで目的物の歩留まりが向上する、装置内の原料残留量が少なく回収率が向上するといった理由から、高圧ホモジナイザーが好適に使用される。本発明において、高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体に加圧(高圧)し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化・分散・解細・粉砕・超微細化を行う装置をいう。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等を用いても差し支えない。
本発明におけるホモジナイザーによる処理条件としては、特に限定されるものではないが、圧力条件としては、例えば70MPa以上、好ましくは90MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、アニオン変性セルロースに予備処理を施すことも可能である。
処理前の液の20℃におけるpHは特に限定されないが、約3〜7の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(20℃)で行うことも可能であり、温度制御を行なわないことも可能である。
本発明の部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー水分散体の製造方法では、前記工程(ii)の後、前記工程(v)の前に、(iii)前記部分酸型CMCを洗浄する工程、(iv)洗浄した部分酸型CMCと、所定量のアルカリを反応させる工程、を有することも好ましい態様である。
<工程(iii)>
工程(ii)で得られた部分酸型CMCを洗浄する工程である。洗浄溶媒としては、特に限定されないが、例えば、含水有機溶媒を使用することができる。含水有機溶媒の水と有機溶媒の質量比は、特に限定されないが、水:有機溶媒が10:90〜30:70が好ましく、15:85〜25:75がより好ましい。これらの範囲であれば、作業性の観点から好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、IPA、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルコール類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。これらの中で、メタノールが入手の容易さ、低価格、蒸留・再生の操作の容易さの観点から好ましい。
工程(iii)において、洗浄溶媒を分離する方法としては、公知の方法であれば、特に限定されない。例えば、遠心分離法が挙げられる。洗浄工程は1回または複数回行なうことができ、3〜5回繰り返すことが好ましい。分離された洗浄液中の遊離酸量は、特に限定されないが、0.05重量%以下が好ましく、検出限界以下であることがより好ましい。
洗浄液の添加量は、工程(ii)で得られた部分酸型CMCの固形分に対して重量比で10〜30倍が好ましく、15〜25倍がより好ましい。洗浄液の添加量が、これらの範囲であれば、副生塩溶出量の点から、高純度化が可能となり、原材料使用量の点から、生産効率も良好となる。
洗浄する際の温度は、10〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。洗浄する際の温度がこれらの範囲であれば、副生塩溶出量の点から、高純度化が可能となり、溶媒気化量の点から、作業環境上も好ましい。また、撹拌時間は、30〜60分間が好ましい。撹拌時間がこれらの範囲であれば、副生塩の溶出量が好適であり、作業性も良好である。
工程(c)で洗浄した後の酸型CMCの固形分濃度は、30〜70重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。固形分濃度がこれらの範囲であれば、酸置換度が充分かつ均一となることから好ましい。
<工程(iv)>
工程(iii)で得られた洗浄した部分酸型CMCと、所定量のアルカリを反応させる工程である。特に限定されないが、例えば、アルカリを含む含水有機溶媒に添加してスラリー状にし、適宜攪拌操作を行いながら、部分酸型CMCとアルカリを反応させる方法が挙げられる。
工程(iv)において使用するアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、前記工程(i)のアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。これらの中で、価格および得られるCMC塩の特性の点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。アルカリの添加量としては、質量比で理論酸型置換度にするために必要な量の5〜10倍が好ましく、6〜8倍がより好ましい。
工程(iv)において使用する含水有機溶媒の水と有機溶媒の重量比としては、特に限定されないが、水:有機溶媒が5:95〜20:80が好ましく、10:90〜15:85がより好ましい。これらの範囲であれば、反応系中のアルカリ濃度を充分に高濃度に保つことができる。工程(iv)において使用する有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、前記工程(i)の有機溶媒を用いることができる。入手の容易さ、低価格、取り扱いやすさの点で、I PA 、エタノール、メタノールが好ましい。
工程(iv)における温度は、10〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。反応温度がこれらの範囲であれば、反応が充分かつ均一となることから好ましい。また、反応時間は、30〜70分間が好ましく、40〜60分間がより好ましい。反応時間がこれらの範囲であれば、反応が充分かつ作業効率も良好となる。
本発明におけるセルロースナノファイバーの製造方法は、前記工程(v)で得られたセルロースナノファイバー水分散体の溶媒を除去する工程を有する。溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、濾別、濃縮操作などが挙げられる。溶媒除去には、特に限定されないが、例えば、有機溶剤、或いは、水と有機溶剤の混合溶媒を用いることができる。
本発明におけるセルロースナノファイバー水分散体の製造方法、セルロースナノファイバーの製造方法としては前記(i)〜(iv)の各工程において、その工程終了後に、必要に応じて、精製の目的で反応粗製物を水、或いは、有機溶剤、或いは、水と有機溶剤の混合溶媒を用いて洗浄し、遠心分離、減圧蒸留などの手法を用いて、溶媒除去し、セルロースナノファイバーの濾別、或いは、濃縮操作を伴ってもよい。また、必要に応じて他の処理を行っても良い。
前記工程(i)〜(v)によって得られる部分酸型CMC塩の全置換度(エーテル化度)は、0.02〜0.80であることが好ましく、0.1〜0.75がより好ましい。これらの範囲であれば、水への膨潤あるいは溶解を抑制することができる。なお、CMC塩の全置換度(エーテル化度)は、実施例に記載の方法で算出することができる。
前記工程(i)〜(v)によって得られる部分酸型CMC塩の酸型置換度は全置換度(エーテル化度)の1.0〜80.0%が好ましく、10.0〜65.0%がより好ましい。酸型置換度が1.0%以上であれば、酸型置換基の効果を得ることができ、一方、酸型置換度が80.0%以下であれば、セルロースナノファイバーの解繊が容易になる。
また、解繊工程中において、或いは、水分散体として保管する場合において、水中のpHが低下して品質を劣化させる懸念も抑制される。この観点からは、得られる部分酸型CMC塩セルロースナノファイバー、及び、その水分散体の20℃におけるpHは、pH6.0以上とするのが好ましい。なお、CMC塩の酸型置換度は、実施例に記載の方法で算出することができる。pHショック抑制の効果の観点からは、20℃におけるpHを、pH3.0〜6.0とすることも好ましい態様である。
部分酸型CMCにおける残余カルボキシメチル基は、前記の工程(i)で用いられたアルカリ金属の水酸化物により得られるアルカリ塩があげられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩およびセシウム塩等があげられる。これらの中で、ナトリウム塩、カリウム塩が、一般的に好ましく用いられる。
本発明のセルロースナノファイバー、およびその水分散体は、増粘剤、ゲル化剤、保形剤、乳化安定化剤、分散安定化剤などに利用できる。具体的には、食品、化粧品、医薬品、医療、農薬、トイレタリー用品、スプレー剤、塗料、等の用途で幅広く使用することができる。また、弱酸性領域でpHショックを生じることがないことから、特に、20℃におけるpHが3.0〜5.5の領域において好ましく使用できる。具体的には、乳酸菌飲料やヨーグルト、酸性乳飲料、スポーツドリンク、乳幼児用イオン飲料、機能型ドリンク、ゼリー飲料、カロリー摂取型ドリンク、デザートドリンク、ベビーフード、ジャム、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ウスターソース、バーベキューソース、焼肉ソース、各種食用タレ、つゆ、ジュレ状調味料等に好適に使用できる。また、セルロースナノファイバー水分散体を中間原料として更に化学修飾や加工して利用することもできる。
本発明のセルロースナノファイバー、およびその水分散体を含有する前記用途(食品、化粧料等)においては、任意成分として、pH調整のためのpH調整剤、或いは、pH緩衝剤、防腐剤を含有してもよい。また、乳化、分散、食感改良、テキスチャー改良、粘性改良、油脂改質など目的で、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤や水溶性高分子などを含有してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明について詳細に説明するが、本発明はもちろんこれらに限定されるものではない。
カルボキシメチル化の全置換度(エーテル化度)、塩型置換度および酸型置換度は以下の方法により測定した。
<(1)工程(i)で得られたCMCの全置換度(エーテル化度) ※Na塩の場合>
試料1g(純分換算)を磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10のHSO100mlを添加して中和した。次に、過剰のHSOをN/10のNaOHでフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴下量A(ml)から下記式にて全置換度(エーテル化度)を求めた。なお、このとき、f=N/10のHSOの力価、f=N/10のNaOHの力価である。
Figure 0005727660
<(2)工程(iv)で得られた部分酸型CMCの塩型置換度および酸型置換度>
試料1g(純分換算)を純水200mlとN/10のNaOH100mlが入っているフラスコ中に入れて溶解した。次に、過剰のN/10のNaOHをN/10のHSOでフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴下量B(ml)を得た。次に、別の試料1g(純分換算)を磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10のHSO100mlを添加して中和した。次に、過剰のHSOをN/10のNaOHでフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴下量C(ml)を得た。次に、次式によって塩型置換度および酸型置換度を求めた。なお、このとき、f=N/10のHSOの力価、f=N/10のNaOHの力価である。
Figure 0005727660
Figure 0005727660
<実施例1>
工程(i)
2軸の撹拌翼と溶剤の揮散を抑えるためのコンデンサーを備えた容量3リットルのニーダー型反応機に、表1記載の原料パルプを選択し、更に家庭用ミキサーで粉砕したパルプ100g(乾燥重量)を仕込み、IPA:水=280g:120gで調製した混合溶媒400gに、表1記載の所定量の水酸化ナトリウムを溶解させて40℃に調整した溶液を反応機内に仕込み、60分間撹拌してアルカリセルロースを調製した。そののち、表1記載の所定量のモノクロル酢酸を等重量のIPAに溶解させた溶液を、反応熱を抑えながら30〜50℃で60分間かけて仕込んだ。次いで、30分間かけて85℃に昇温し、75〜90℃でカルボキシルメチル化反応を60分間行った。次いで、スラリー状の中和物を反応機より取り出し、遠心分離操作にてIPA−水混合溶媒を除去して固形分濃度50重量%のCMC-Na塩粗製物(表1−1の実施例(A)〜(D))を得た。
工程(ii)〜(iii)
前記工程により得られたCMC-Na塩粗製物に対して、表1に示す20%硫酸を添加し、30分間撹拌後、更に、70℃で50分間攪拌して部分酸型CMC粗製物を得た。得られた部分酸型CMCに対して、重量比で20倍となるように80%メタノール水溶液を添加し、30℃で50分間撹拌した。撹拌後、遠心分離機でメタノール水溶液を遠心分離により除去し、この80%メタノール水溶液による洗浄と溶媒除去の操作を4回繰り返し、遠心分離回収液の遊離液から遊離酸が検出されないことを確認して、固形分濃度50重量%の部分酸型CMCを得た(表1−1の実施例(A)〜(D))。
工程(iv)
表1記載の通り、前記工程により得られた部分酸型CMCを秤取し、更に、所定の水酸化ナトリウムを含む80%メタノール水溶液を添加し、スラリー状の溶液を30℃で50分間撹拌させて部分酸型CMC粗製物を得た。その後、遠心分離機で溶媒除去を行い、更に、80%メタノール水溶液による洗浄と溶媒除去の操作を2回繰り返し、固形分濃度50重量%にて部分酸型CMCを取り出した。得られた部分酸型CMCの全置換度(エーテル化度)、塩型置換度および酸型置換度を測定し、その測定結果を表1に示した。
工程(v)
前記工程により得られた部分酸型CMCに対して、固形分濃度3%となるよう水を添加し、更に、高圧ホモジナイザー処理の前に処理液のpHを水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸を用いてpH5.0±0.3の範囲内となるよう調整した後、高圧ホモジナイザーにより、液温20℃から冷却操作を伴いながら140MPaの圧力で5回処理して目的のセルロースナノファイバー水分散液を調製した(表1−1の実施例(A)〜(D))。
<実施例2>
実施例1、及び、表1−1に記載の実施例(D)において、工程(iv)で使用する中和剤を水酸化ナトリウムから水酸化カリウムに変更し、工程(iv)で使用するpH調整剤を水酸化ナトリウムから水酸化カリウムに、酢酸ナトリウムから酢酸カリウムに、変更した以外は前記操作と同様にしてセルロースナノファイバー水分散液(表1の実施例(E))を得た。
<実施例3>
実施例1、及び、表1−1に記載の実施例(A)において、工程(i)で使用するパルプ種を広葉樹パルプから針葉樹パルプに変更し、更に、工程(i)終了後、IPA−水混合溶媒による洗浄と溶媒除去の操作を2回繰り返し、その後、工程(ii)として、硫酸を用いてpH5となるよう攪拌しながら注意深く酸を添加し、必要に応じて、工程中で水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムと酢酸を用いてpH調整しながらが、70℃で50分間攪拌した以外は前記操作と同様にしてセルロースナノファイバー水分散液(表1−1の実施例(F))を得た。
<比較例1>
実施例1、及び、表1−1に記載の工程(i)〜(v)において、各成分の仕込み量を表1−1の比較例(X)、及び、比較例(Y)のように変更した以外は、前記操作と同様にしてセルロースナノファイバー水分散液(表1−1の比較例(X)、(Y))を調製した。しかしながら、比較例(Y)については、高圧ホモジナイザー処理中に処理液回収タンク内不均一の発生と高圧ホモジナイザーの詰まりが生じ、やむを得ず、工程(v)をした中断した。
<比較例2>
実施例1、及び、表1−1に記載の実施例(A)において、工程(i)の操作に従ってカルボキシメチル化を行った後、IPA−水混合溶媒による洗浄と溶媒除去の操作を2回繰り返し、工程(ii)〜(iv)を省略して、続いて、前記工程(v)の操作に従って高圧ホモジナイザー処理を行い、不均一状粘稠液体(表1−1の比較例(Z))を得た。比較例(Z)については、酸型置換未実施の為、工程(v)にてpH未調整(pH7.4)とした。
Figure 0005727660
※1: 固形分換算、 ※2: 対全置換度、 ※3: 工程中断の為、測定未実施、 ※4: pH未調整
実施例1〜3、及び、比較例1、2にて得られたセルロースナノファイバー水分散体、実施例(A)〜(F)、比較例(X)、(Z)について、その性状(透明性、ゲル化の有無、曳糸性の有無)について調べた結果を表2に示す。なお、測定前に必要に応じて前記操作に準じて、pH5±0.3の範囲内となるようpH調整後、各種評価を実施した。また、比較例(Z*)は、比較例(Z)(pH7.4)について以下評価を実施するに当り、pH5.0±0.3に調整したものであり、供試した比較例(Z*)のpHはpH5.0であった。
<透明性>
一定光源下、固形分濃度0.5%のセルロースナノファイバー水分散体を30mmの光路長を持つ透明ガラスセルに入れ、白色上質紙に印字された12ポイントの文字(ゴシック体)をセルの向こう側に接するように配置し、その文字を判別できたものを「○」、判別できなかったものを「×」、部分的な不均一状態が認められるものを「△」と評価した。これら結果を表1−2に示した。なお、表中の「1D」は1日後、「1W」は7日後を表す。
<ゲル化性>
固形分濃度3.0%で調製された実施例(A)〜(F)、比較例(X)、(Z)を所定の固形分濃度になるよう水を添加して、ディスパー型ミキサーを用いて回転数8,000rpmで10分間微細化処理を行って、200mlねじ口付きガラス製サンプル瓶に流し込み、評価用の試料を得た。各試料について、所定日数経過後のゲルの状態を目視で観察し、ゲル状態のものを「○」、液状(流動性あり)のものを「×」、ゲルから離水が見られたものを「△」と評価した。これら結果を表1−2に示した。なお、表中の「1D」は1日後、「1W」は7日後を表す。
<曳糸性>
固形分濃度3.0%で調製された実施例(A)〜(F)、比較例(X)、(Z)を所定の固形分濃度になるよう水を添加して、ディスパー型ミキサーを用いて回転数8,000rpmで10分間微細化処理を行って、200mlねじ口付きガラス製サンプル瓶に流し込み、評価用の試料を得た。各試料について、所定日数経過後に外径10mmの表面平滑なガラス棒をサンプル瓶中央に垂直に立て、その状態からガラス棒を約1秒間で引き抜き、その際のガラス棒先端における曳糸状態を目視で観察し、曳糸性が認められないものを「○」、曳糸性が認められないものを「×」、僅かな曳糸性、或いは、ガラス棒へのゲル付着などが認められるものを「△」と評価した。これら結果を表1−2に示した。なお、表中の「1D」は1日後、「1W」は7日後を表す。
Figure 0005727660
※5: 評価時のpH、pH5±0.3の範囲外の場合にはpH調整実施。
※6: 比較例(Z)(pH7.4)を評価直前にpH5±0.3に調整実施。
《製造例:酸性乳飲料、及び、乳酸菌飲料》
弱酸性領域での分散安定性が必要とされる酸性飲料、乳酸菌飲料組成物の製造処方について、本発明の前記実施例、及び、比較例で示したセルロースナノファイバー水分散体を用いて、下記処方に従って飲料組成物を調製し、以下記載の評価方法に従って評価を行った。
<製造例1:酸性乳飲料>
表3記載の処方に従い、2Lサイズの円形ステンレス製取手付容器に固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体200g(固形分換算6g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、液温を30℃とし、ついで、脱脂粉乳40gを水500gとともに少しずつ投入して、攪拌、混合して均一分散させ、続いて、30℃の温度で、10分間かけて30℃に調整した3%クエン酸水溶液100gを徐々に滴下して脱脂粉乳混合液を得た。次に、調整水を用いてホモジナイザー通液の準備を行い、その後、脱脂粉乳混合液を15MPaにてホモジナイザーに1回通液し、更に、その脱脂粉乳混合液を90℃まで昇温して加熱殺菌を行い、その後、水浴中で10℃まで冷却して目的の酸性乳飲料組成物を得た。このとき、得られた酸性乳飲料組成物は、無脂乳固形分は4.0%、セルロースナノファイバー(固形分換算)0.6%を含み、20℃におけるpHは4.6〜4.9であった。
Figure 0005727660
<製造例2:乳酸菌飲料>
表4記載の処方に従い、2Lサイズの円形ステンレス製取手付容器に固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体200g(固形分換算6g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、液温を20℃とし、別に調製した水400g、グラニュー糖15g、70%異性化液糖95gを溶解させた糖混合液を徐々に加え、攪拌を継続しながら、80℃まで昇温して10分間加熱殺菌を行い、その後、水浴中で20℃まで冷却して、醗酵乳(カード)30gを少量ずつ投入して、攪拌、混合して均一分散させて醗酵乳混合液を得た。次に、調整水の一部を用いてホモジナイザー通液の準備を行い、残りの調整水は醗酵乳混合液に加え、その後、醗酵乳混合液を15MPaにてホモジナイザーに1回通液し、更に、その醗酵乳混合液を90℃まで昇温して加熱殺菌を行い、その後、水浴中で20℃まで冷却して目的の乳酸菌飲料組成物を得た。このとき、得られた乳酸菌飲料組成物は、醗酵乳固形分は3.0%、セルロースナノファイバー(固形分換算)0.6%を含み、20℃におけるpHは3.7〜4.0であった。
Figure 0005727660
製造例1、2において得られた酸性乳飲料、及び、乳酸菌飲料について、以下の方法によって、乳蛋白沈澱量、及び、乳蛋白再分散性評価からセルロースナノファイバーの分散安定性を評価した。
<乳蛋白沈澱量>
得られた酸性乳飲料、及び、乳酸菌飲料を、長さ250mm、100ml容のガラス製円筒管に充填し、密栓して5℃にて2週間静置した。2週間後、円筒管を静かに取り出し、円筒管底部の乳蛋白沈澱量を計測した。なお、当該評価において、乳蛋白沈澱量はその数値が小さいほど乳蛋白に対する分散安定性に優れていることを示す。これら結果を表5に示した。
<乳蛋白再分散性>
上記乳蛋白沈澱量測定の後、密栓された円筒管を一旦静かに180°回転させて逆さにし、その後、乳蛋白の沈澱再分散性を記録しながら、円筒管を静かに360°回転させる操作を準じ行い、円筒管底部に付着している沈澱が再分散するまでの円筒管の回転回数を計測した。なお、当該評価において、この円筒管の回転回数が少ないほど、乳蛋白の分散性に優れていることを示す。これら結果を表5に示した。
Figure 0005727660
※1: 従来技術の一例として、CMC‐Na塩を利用した場合の対照実験を合わせて行った。CMC‐Na塩としては、汎用されている第一工業製薬(株)製のセロゲンF−SB(2%水溶液粘度:150〜250mPa・s、エーテル化度: 0.85〜0.95)を用いた。
本発明のセルロースナノファイバーは、表5に示す通り、供試した実施例(A)、(C)、(D)、(F)は、比較例(X)、(Z)、対照例(CMC‐Na塩)に比較して、酸性乳飲料、及び、乳酸菌飲料における2週間後の乳蛋白沈殿量を大きく低減している点において分散安定性に大きな差異があることが分かる。また、実施例(A)、(C)、(D)、(F)は、一旦沈降した乳蛋白を容易に再分散性できる点で実用上極めて重要な性能を有している。本発明の実施例(A)、(C)、(D)、(F)は、従来技術である低置換CMC-Na塩からのセルロースナノファイバーと異なり、Na塩の一部が酸型に変換されており、弱酸性条件下での使用に際してpHショックを生じ難く、そのpH適用範囲が広く、上記実施例の結果の如く、本発明の技術の根幹となるセルロースナノファイバーからなる増粘、分散安定化作用が保持される結果となった。一方、比較例(X)、(Z)は弱酸性条件下でpHショックを生じ、水中におけるセルロースナノファイバー自体の分散安定性が低下し、その結果として乳蛋白の分散安定性の悪化を招き、更に乳蛋白の再分散性を大きく低下させる結果となった。
《製造例:食用タレ、ゲル状(ジュレ状)調味料、ディップソース》
弱酸性領域での増粘性、並びにゲル形成能、更に、調味液組成物のチクソトロピー性が必要とされる食用タレ、ゲル状(ジュレ状)調味料、ディップソースの製造処方において、本発明の前記実施例、及び、比較例で示したセルロースナノファイバー水分散体を用いて、下記処方に従って調味液組成物を調製し、以下記載の評価方法に従って評価を行った。
<製造例3:食用タレ>
表6記載の処方に従い、2Lサイズの円形ステンレス製取手付容器に固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体400g(固形分換算12g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、液温を40℃とし、ここに別途調製した砂糖180g、粉末醤油60g、みりん200g、化学調味料20gの混合溶液を調製水とともに徐々に加え、攪拌しながら、80℃まで昇温して、更に30分間攪拌を継続した。その後、水浴中で20℃まで冷却して、目的の食用タレを得た。このとき、得られた食用タレ組成物は、セルロースナノファイバー(固形分換算)1.2%を含み、20℃におけるpHは4.8〜5.1であった。
Figure 0005727660
<製造例4:ゲル状(ジュレ状)調味料>
表7記載の処方に従い、2Lサイズの円形ステンレス製取手付容器に固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体300g(固形分換算9g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、液温を20℃とし、ここに別途調製した砂糖50g、ソルビトール90gと調整水の一部からなる混合溶液を、徐々に加え、更に、攪拌しながら、醤油130g、食酢100g、みりん30g、ゆず果汁30g、残りの調整水を徐々に加え、80℃まで昇温して、10分間攪拌を継続し、その後、60℃まで冷却して、蓋付きポリエチレン製パック包材に充填し、水流中に30分間投入して目的のゲル状(ジュレ状)調味料を得た。このとき、得られたゲル状(ジュレ状)調味料組成物は、セルロースナノファイバー(固形分換算)0.9%を含み、20℃におけるpHは4.4〜4.6であった。
Figure 0005727660
<製造例5:ディップソース>
表8記載の処方に従い、2Lサイズの円形ステンレス製取手付容器に固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体300g(固形分換算9g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、液温を40℃とし、ここに別途調製したレモン粉末果汁10g、食塩8g、全粉乳4g、調味配合物8gと調製水からなる混合溶液を、徐々に加え、40℃を維持しながら、更に30分間攪拌を継続した。更に、ボディ剤30gを徐々に加えて、強攪拌下で5分間攪拌した後、攪拌を低速とし、水浴中で20℃まで冷却して、目的のディップソースを得た。このとき、得られたディップソース組成物は、セルロースナノファイバー(固形分換算)0.9%を含み、20℃におけるpHは4.3〜4.6であった。
Figure 0005727660
※肉エキス、酸味料、アミノ酸類、粉末香料からなる調味配合物
製造例3、4、5において得られた食用タレ、ゲル状(ジュレ状)調味料、ディップソース、等、調味液組成物について、以下の方法によって、調味液組成物の光沢、透明性、粘度、付着量、液だれの有無、スプレー塗布可否、等から、セルロースナノファイバーの弱酸性領域における増粘性、ゲル形成能、更に、調味液組成物のチクソトロピー性を評価した。
<調味液組成物の光沢、透明性>
得られた調味液組成物の光沢、透明性、均一性を目視にて評価した。これら結果を表9に示した。なお、各試料について、調味液組成物の光沢、透明性、滑らかさがよいものを「○」、やや劣るものを「△」、劣るものを「×」と評価した。
<調味液組成物の粘度>
得られた調味液組成物の20℃における粘度をBH型粘度計、回転数20rpmにて測定し、これら結果を表9に示した。
<調味液組成物の付着量>
得られた調味液組成物の付着量、液垂れの有無について、「食用タレ」の場合は、串刺しの三連単団子を対象食品として、タレに三連単団子を定速(上下各1秒目処)で浸漬、引き上げする操作を2回行った後、15秒後の調味液付着量(g)を操作前後の重量差から求め、その結果を表9に示した。
また、「ゲル状(ジュレ状)調味料」の場合は、水切りした刺身用の白髭大根の「けん」を対象食品として、ステンレス製の小型のざるを透明容器の上に置き、そのざるに「けん」を盛り、その上に20gのゲル状(ジュレ状)調味料をかけ、30秒後にざるから滴り落ちる調味液の有無を目視で確認した。各試料について、ざるの下に置かれた透明容器に調味液が見られない場合を「○」、わずかに調味液が見られる場合を「△」、多量の調味液が見られる場合を「×」と評価し、その結果を表9に示した。
また、「ディップソース」の場合は、市販のプレーンクラッカー(4.5cm×4.5cm)を対象食品として、ディップソースにクラッカーの下部2.5cmを定速(上下各1秒目処)で浸漬、引き上げを行い、15秒後の調味液付着量(g)を操作前後の重量差から求めた。この操作を3枚のクラッカーで3回行い、3回の調味料付着量の合計値を表9に示した。
<調味液組成物のスプレー塗布可否、液垂れの有無>
得られた調味液組成物を市販のトリガー式スプレーボトルに入れ、遠心から半径1cm、4cm、8cmの3つの円を記した白色光沢紙をスプレーノズルから15cm離れた場所に垂直に置き、その遠心に向って調味液組成物を噴霧し、その後、直ちに白色光沢紙上の着滴形状と大きさからスプレー塗布の適合性を評価した。 なお、各試料について、着滴形状が概ね円状で半径8cmの円を超えて着滴がある場合を「○」、着滴が概ね円状で半径4cmの円を超えて、8cmの円を超えていない場合を「△」、着滴が半径4cmの円の内側にある場合を「×」と評価し、その結果を表9に示した。
また、液垂れの有無については、噴霧操作後、直ちに前記白色光沢紙を45°の傾斜をつけた板の上に置き、1分経過後に着敵からの液垂れの状態を評価した。なお、各試料について、液垂れが見られない場合を「○」、前記半径8cmの円内において、着滴から僅かに液垂れが認められる場合を「△」、前記半径8cmの円内において、多くの着滴からの液垂れが見られる場合を「×」と評価し、その結果を表9に示した。
Figure 0005727660
※1: 従来技術の一例として、CMC‐Na塩を利用した場合(対照例)の評価を合わせて行った。CMC‐Na塩としては、汎用されている第一工業製薬(株)製のセロゲンF−SH(1%水溶液粘度: 350〜500、エーテル化度: 0.60〜0.70)を用いた。
本発明のセルロースナノファイバーは、表9に示す通り、供試した実施例(A)、(B)、(D)、(F)は、比較例(X)、(Z)、対照例(CMC‐Na塩)に比較して、食用タレ、ゲル状(ジュレ状)調味料、ディップソース、等、様々な様態の酸性〜弱酸性の調味液組成物において、実用上所望される好適な増粘性、ゲル形成能を示し、更には組成物のレオロジー特性を改良し得る点で、産業上の利用価値は大きい。例えば、本発明技術の食用タレにおける利用において、食品産業において特に重要視される外観上の優位性から商品価値を高め得るばかりか、本発明のセルロースナノファイバーの高い増粘効果から、食品への食用タレの付着量を比較例、対照例に対して2倍以上高めるとともに、食用タレのスプレー噴霧を可能とせしめ、更に、調味液でしばしば問題となる液垂れの改善、調味液の歩留りの大幅改善を可能とせしめる点において、本発明は食品の生産効率向上に寄与できる点で極めて有用な技術である。
ゲル状(ジュレ状)調味料は、近年、市場要求の高い調味液の様態であって、調味液の付加価値向上の観点から、差別化製品として注目をあびている。本発明技術のゲル状(ジュレ状)調味料における利用において、比較例、並びに、対照例に比較して、外観上で目新しい商品様態の構築(商品差別化)に寄与するのみならず、食品に対する調味液の付着量を増大させ、本質的な要求である調味効率(調味液の有効利用率)を大きく増大せしめた点で産業上の利用価値は大きい。
ディップソースも前記ゲル状(ジュレ状)調味料同様に、消費者ニーズの多様化から、利用が広がっている調味液の利用形態の一つである。本利用形態においても、本発明技術は、外観上の商品差別化、調味効率(調味液の有効利用率)に関する評価項目において、比較例、並びに、対照例を上回る好適な結果を示し、本発明技術の有用性を明示している。
<製造例6:弱酸性ゲル状化粧水>
弱酸性領域での増粘性、並びにゲル形成能、チクソトロピー性が必要とされる弱酸性ゲル状化粧水のモデル処方において、本発明の前記実施例、及び、比較例で示したセルロースナノファイバー水分散体を用いて、下記処方に従って化粧水組成物を調製し、以下記載の評価方法に従って評価を行った。
表10記載の処方に従い、200mlのビーカーに固形分濃度3%で調製された本発明のセルロースナノファイバー水分散体20g(固形分換算0.6g)を仕込み、幅広翼を装着した攪拌装置で攪拌しながら、室温でグリセリン20.0g、エタノール5gを徐々に加え、更に、攪拌しながら、別にクエン酸0.6g、クエン酸三ナトリウム0.6gを調整水50gに溶解させたクエン酸‐クエン酸三ナトリウム水溶液を徐々に滴下して仕込んだ。次いで、低速で撹拌しながら、残りの調整水とローズマリーエキス0.3gを加えて、撹拌を10分間継続した後、市販のトリガー式スプレーボトルに組成液を充填して、目的の弱酸性ゲル状化粧水を得た。このとき、得られた各弱酸性ゲル状化粧水は、セルロースナノファイバー(固形分換算)0.6%を含み、20℃におけるpHは4.4〜4.7であった。
Figure 0005727660
製造例6において得られた弱酸性ゲル状化粧水について、以下の方法によって、化粧水組成物のゲル性、使用感(べたつきの有無、さっぱり感)を評価した。
<化粧水組成物のゲル性>
得られた化粧水組成物が充填されたトリガー式スプレーボトルを横に倒し(90°転回)、更に逆さま(180°転回)とし、ゲル形成の有無を目視で評価した。これら結果を表4−2に示した。なお、各試料について、ボトル内充填物が室温で透明、且つ、ゲル状であるものを「○」、ゲルの一部に不均一箇所がある、或いは、僅かに離水があるものを「△」、ボトル内充填物に流動性がある、或いは、全体的に不均一であるものを「×」と評価した。
<化粧水組成物の使用感>
得られた化粧水組成物が充填されたトリガー式スプレーボトルから手の甲に1〜2回スプレーした後、化粧水をもう一方の手の指先で軽く円を描くように伸ばした際の使用感を社内パネラー3人(20代女性、30代女性、40代女性)で評価した。これら結果を表4−2に示した。なお、各試料について、化粧水組成物の使用感はべたつきがなく、さっぱり感を感じたものを3点、僅かにべたつきがある、或いは僅かに滑らかさに劣るもの、或いは、を2点、べたつきがあり、重い感触があるもの、或いは、滑らかさに欠けるものを1点として採点し、社内パネラー3人の平均点が2.6を上回れば「○」、平均点が2.0〜2.6であれば「△」、平均点が2,0を下回れば「×」と評価した。
Figure 0005727660
本発明のセルロースナノファイバーは、表11に示す通り、供試した実施例(A)、(D)、(E)は、弱酸性ゲル状化粧水の調製に有用で、且つ、その使用感も良好であり、比較例(X)、(Z)に比較してその効果は明白である。また、本発明技術は弱酸性領域において、より高い増粘性、ゲル形成能を示す一方で、化粧水組成物のレオロジー特性を改良して、ゲル状でありながらスプレー噴霧を可能とせしめ、また更に、化粧水の使用感としてしばしば問題となるべたつきを抑え、さっぱり感を発現し得る点で、化粧料向けの増粘剤、ゲル化剤、レオロジー改良剤としての産業上の利用価値は大きい。
本発明のセルロースナノファイバー、およびその水分散体は、増粘剤、ゲル化剤、保形剤として用いることができ、食品、化粧品、医薬品、医療、農薬、トイレタリー用品、スプレー剤、塗料、等の用途で幅広く使用することができる。加えて、前記用途分野で乳化安定性や分散安定性を所望する各種製品において乳化安定化剤や分散安定化剤として利用できる。
本発明のセルロースナノファイバー、およびその水分散体は、より広いpH領域で使用可能であり、特に、弱酸性領域でpHショックを生じることなく、増粘剤、ゲル化剤、保形剤、乳化安定化剤、分散安定化剤、等としての性能を発揮し、その性能の経時変化が小さい特徴を有する。本発明のセルロースナノファイバー、およびその水分散体は、弱酸性の食品や飲料、調味液類、具体的には、乳酸菌飲料やヨーグルト、酸性乳飲料、スポーツドリンク、乳幼児用イオン飲料、機能型ドリンク、ゼリー飲料、カロリー摂取型ドリンク、デザートドリンク、ベビーフード、ジャム、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ウスターソース、バーベキューソース、焼肉ソース、各種食用タレ、つゆ、ジュレ状調味料、等で増粘剤、ゲル化剤、保形剤、乳化安定化剤、分散安定化剤、として好適に使用できる。また、セルロースナノファイバー水分散体を中間原料として更に化学修飾や加工して利用することもできる。

Claims (7)

  1. (i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化してカルボキシ
    メチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、
    (ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、
    (v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、
    を有する部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法であって、
    前記、部分酸型CMCがCMC塩のアルカリ塩の部分を部分的に酸型に変換したものであり、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02〜0.80であり、かつ、酸型置換基が全置換基の1.0〜80.0%である部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法。
  2. (i)原料パルプをアルカリセルロース化し、更に、カルボキシメチル化してカルボキシ
    メチルセルロース(CMC)塩を製造する工程、
    (ii)前記CMC塩を部分酸型CMCに変換する工程、
    (iii)前記部分酸型CMCを洗浄する工程、
    (iv)洗浄した部分酸型CMCと、所定量のアルカリを反応させる工程、
    (v)得られた部分酸型CMC塩を解繊分散処理する工程、
    を有する部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法であって、
    前記、部分酸型CMC塩がCMC塩のアルカリ塩の部分を部分的に酸型に変換したものであり、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02〜0.80であり、かつ、酸型置換基が全置換基の1.0〜80.0%である部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体の溶媒を除去する工程、を有する部分酸型CMC塩ナノファイバーの製造方法。
  4. 請求項1または2記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体。
  5. 請求項1または2記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体を含有する食品。
  6. 20℃におけるpHが3.0〜5.5である、請求項記載の食品。
  7. 請求項1または2記載の製造方法によって得られた部分酸型CMC塩ナノファイバー水分散体を含有する、20℃におけるpHが3.0〜5.5である化粧料。
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