本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について説明する。
図1には、画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(矢印V方向)の下側から上側へ向けて、記録媒体の一例としての記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録用紙Pに画像形成を行う本体部14と、本体部14の上に設けられ読取原稿Gを読み取る原稿読取部16と、本体部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御手段の一例としての制御部20と、を含んで構成されている。なお、以後の説明では、画像形成装置10の装置本体10Aの上下方向をV方向、水平方向をH方向と記載する。
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙Pが収容される第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26が設けられている。第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26には、収容された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路28に送り出す送り出しロール32が設けられており、搬送路28における送り出しロール32よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送手段の一例としての搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙Pを一旦停止させるとともに、決められたタイミングで後述する二次転写位置QB(図2参照)へ送り出す搬送手段の一例としての位置合せロール38が設けられている。
搬送路28の上流側部分は、画像形成装置10の正面視において、V方向に向けて用紙収容部12の左側下部から本体部14の左側下部まで直線状に設けられている。また、搬送路28の下流側部分は、本体部14の左側下部から本体部14の右側面に設けられた排紙部15まで設けられている。さらに、搬送路28には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路136が接続されている。加えて、本体部14の左側面には、折り畳み式の手差給紙部46が設けられており、手差給紙部46から送り込まれる記録用紙Pの搬送路47が、搬送路28の位置合せロール38の手前側に接続されている。なお、記録用紙Pの各搬送路の切り換えの詳細については後述する。
原稿読取部16は、読取原稿Gを1枚ずつ自動で搬送する原稿搬送装置52と、原稿搬送装置52の下側に配置され1枚の読取原稿Gが載せられるプラテンガラス54と、原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿G又はプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取る原稿読取装置56とが設けられている。
原稿搬送装置52は、一対の搬送ロール53が複数配置された自動搬送路55を有しており、自動搬送路55の一部は読取原稿Gがプラテンガラス54上を通るように配置されている。また、原稿読取装置56は、プラテンガラス54の左端部に静止した状態で原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿Gを読み取り、又はH方向に移動しながらプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取るようになっている。
一方、本体部14は、記録用紙P上にトナー画像(現像剤像)を形成する画像形成手段の一例としての画像形成ユニット50を有している。画像形成ユニット50は、後述する感光体62、帯電部材64、露光装置66、現像装置70、中間転写ベルト68、及びクリーニング装置73を含んで構成されている。
本体部14における装置本体10Aの中央には、像保持体である円筒状の感光体62が設けられている。感光体62は、駆動手段(図示省略)によって矢印+R方向(図示の時計回り方向)に回転すると共に、光照射によって形成される静電潜像を外周面に保持するようになっている。また、感光体62の上側で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、感光体62の表面を帯電するコロトロン方式の帯電部材64が設けられている。
感光体62の回転方向における帯電部材64よりも下流側で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、露光装置66が設けられている。露光装置66は、図示しない半導体レーザ、f−θレンズ、ポリゴンミラー、結像レンズ、及び複数のミラーを有しており、画像信号に基づき半導体レーザから出射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、帯電部材64により帯電された感光体62の外周面に照射(露光)して、静電潜像を形成するようになっている。なお、露光装置66は、レーザ光をポリゴンミラーで偏向走査する方式に限らず、LED(Light Emitting Diode)方式であってもよい。
感光体62の回転方向で露光装置66の露光光が照射される部位よりも下流側には、感光体62の外周面に形成された静電潜像を決められた色のトナーで現像して可視化させる回転切り替え式の現像装置70が設けられている。また、原稿読取装置56の下側で現像装置70よりも上側には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナーを収容するトナーカートリッジ78Y、78M、78C、78K、78E、78FがH方向に並んで交換可能に設けられている。第1特別色E及び第2特別色Fは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から選択され、または、選択されないようになっている。
図2に示すように、現像装置70は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナー色にそれぞれ対応する現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが、周方向に(図示の反時計回り方向にこの順番で)並んで配置されており、モータ(図示省略)によって中心角で60°ずつ回転することで、現像処理を行う現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが切り替えられ、感光体62の外周面と対向するようになっている。
なお、現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fは同様の構成となっているため、ここでは現像器72Yについて説明し、他の現像器72M、72C、72K、72E、72Fについては説明を省略する。また、Y、M、C、Kの4色の画像形成を行う場合は、現像器72E、72Fを使用しないため、現像器72Kから現像器72Yへの回転角度が180°となる。
現像器72Yは、本体となるケース部材76を有しており、ケース部材76内には、トナーカートリッジ78Y(図1参照)からトナー供給路(図示省略)を経由して供給されるトナー及びキャリアから成る現像剤(図示省略)が充填されている。また、ケース部材76には、感光体62の外周面と対向して矩形状の開口部76Aが形成されており、開口部76Aには、外周面が感光体62の外周面と対向する現像ロール74が設けられている。さらに、ケース部材76内で開口部76Aに近い部位には、現像剤の層厚を規制するための板状の規制部材79が、開口部76Aの長手方向に沿って設けられている。
現像ロール74は、回転可能に設けられた円筒状の現像スリーブ74Aと、現像スリーブ74Aの内側に固定された複数の磁極から成る磁性部材74Bとで構成されており、現像スリーブ74Aが回転することで現像剤(キャリア)の磁気ブラシが形成されると共に、規制部材79で層厚が規制されることで、現像スリーブ74Aの外周面に現像剤層を形成するようになっている。そして、現像スリーブ74Aの外周面の現像剤層は、現像スリーブ74Aの回転により感光体62に対向する位置に搬送され、感光体62の外周面に形成された潜像(静電潜像)に応じたトナーを付着させて現像を行う。
また、ケース部材76内には、螺旋状に形成された搬送ロール77が2本回転可能に並列配置されており、この2本の搬送ロール77が回転することで、ケース部材76内に充填された現像剤が、現像ロール74の軸方向(現像器72Yの長手方向)に循環搬送されるようになっている。なお、各現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fに設けられた6本の現像ロール74は、隣の現像ロール74との間隔が中心角60°となるように周方向に配置されており、現像器72の切り替えにより、次の現像ロール74が感光体62の外周面と対向するようになっている。
図1に示すように、感光体62の回転方向で現像装置70よりも下流側であり且つ感光体62の下側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト68が設けられている。中間転写ベルト68は、無端状であり、制御部20により回転駆動される駆動ロール61、中間転写ベルト68に張力を付与するための張力付与ロール65、中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する複数の搬送ロール63、及び後述する二次転写位置QB(図2参照)において中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する補助ロール69に巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト68は、駆動ロール61が回転することにより、矢印−R方向(図示の反時計回り方向)に周回移動するようになっている。
また、中間転写ベルト68を挟んで感光体62の反対側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写させる一次転写ロール67が設けられている。一次転写ロール67は、感光体62と中間転写ベルト68とが接触する位置(これを一次転写位置QA(図2参照)とする)で、中間転写ベルト68の裏面に接触している。そして、一次転写ロール67は、電源(図示省略)から通電されることにより、接地されている感光体62との電位差で感光体62の外周面に保持されているトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写するようになっている。
さらに、中間転写ベルト68を挟んで補助ロール69の反対側には、中間転写ベルト68上に一次転写されたトナー画像を記録用紙Pに二次転写させる二次転写ロール71が設けられており、二次転写ロール71と補助ロール69との間が記録用紙Pへトナー画像を転写する二次転写位置QB(図2参照)とされている。二次転写ロール71は、接地されると共に中間転写ベルト68の表面(外周面)に接触しており、電源(図示省略)から通電された補助ロール69と二次転写ロール71との電位差で、中間転写ベルト68のトナー画像を記録用紙Pに二次転写するようになっている。
また、中間転写ベルト68を挟んで駆動ロール61の反対側には、中間転写ベルト68の二次転写後の残留トナーを回収するクリーニングブレード59が設けられている。クリーニングブレード59は、開口部が形成された筐体(図示省略)に取り付けられており、クリーニングブレード59の先端部で掻き取られたトナーが、筐体内に回収されるようになっている。
中間転写ベルト68の周囲で搬送ロール63と対向する位置には、中間転写ベルト68の表面に付されたマーク(図示省略)を検知することで中間転写ベルト68上の予め定めた基準位置を検知し、画像形成処理の開始タイミングの基準となる位置検知信号を出力する位置検知センサ83が設けられている。位置検知センサ83は、中間転写ベルト68に向けて光を照射すると共にマークの表面で反射された光を受光することで、中間転写ベルト68の移動位置を検知するようになっている。
一方、感光体62の回転方向で一次転写ロール67よりも下流側には、中間転写ベルト68に一次転写されずに感光体62の表面に残留した残留トナー等を清掃するクリーニング装置73が設けられている。クリーニング装置73は、感光体62の外周面に接触するクリーニングブレード及びブラシロールにより、残留トナー等を回収する構成となっている。
また、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の上流側(一次転写ロール67よりも下流側)には、感光体62の外周面に一次転写後に残留したトナーの除電を行うコロトロン81が設けられている。さらに、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の下流側(帯電部材64よりも上流側)には、クリーニング後の感光体62の外周面に光を照射して除電を行う除電装置75が設けられている。
そして、二次転写ロール71によるトナー画像の二次転写位置QB(図2参照)は、前述の搬送路28の途中に設定されており、搬送路28の上方で位置合せロール38と二次転写位置QBとの間には、位置合せロール38に近い側に、記録用紙Pの先端位置(下流側端部)又は後端位置(上流側端部)を検知する第1用紙センサ39が設けられている。第1用紙センサ39は、一例として、記録用紙Pに光を照射すると共に記録用紙Pで反射された光を受光する反射式の光学センサである。また、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向(図示の矢印A方向)で二次転写ロール71よりも下流側には、二次転写ロール71によってトナー画像が転写された記録用紙Pにトナー画像を定着させる定着手段の一例としての定着装置100が設けられている。
図3に示すように、定着装置100は、記録用紙Pが進入する開口部106Aと、記録用紙Pが排出される開口部106Bとが形成された筐体106を有している。筐体106内には、主要部として、加熱により定着を行う一対の定着ロール102及び定着ロール102へ向けて記録用紙Pを加圧する加圧ロール104が設けられている。なお、定着装置100には、定着ロール102を加熱する外部加熱ロール、定着ロール102、加圧ロール104の温度を検知する温度センサ等が設けられているが、これらの図示を省略している。
定着ロール102は、記録用紙Pの搬送経路(搬送路28)上でトナー画像面側(上側)に配置されている。そして、定着ロール102の回転軸は、記録用紙Pの搬送方向と直交するように配置されている。一例として、定着ロール102は、円筒状のアルミニウムからなる芯金(図示省略)の外周にシリコンゴムからなる弾性部材が被覆された構成となっており、弾性部材の外周面にはフッ素系樹脂からなる離型層が形成されている。
定着ロール102の芯金の内側には、芯金の内周面とは非接触状態で、熱源となるハロゲンヒータ108が設けられている。ハロゲンヒータ108は、電源(図示省略)からの通電により発熱し芯金を加熱することで、定着ロール102全体を加熱するようになっている。また、定着ロール102の芯金の端部には、ギヤ(図示省略)を介して定着ロール102の周速度を変更可能な第1モータ110が接続されている。第1モータ110は、制御部20から送られた指示信号に基づいて駆動され、定着ロール102の回転駆動を行う。
一方、加圧ロール104は、記録用紙Pの搬送経路上で定着ロール102の下側に配置されており、図示しないバネ等の付勢力によって定着ロール102の外周面に接触すると共に加圧し、定着ロール102との接触領域(ニップ部N)を形成している。一例として、加圧ロール104は、円筒状のアルミニウムからなる芯金の外周にシリコンゴムからなる弾性部材が被覆された構成となっており、弾性部材の外周面にはフッ素系樹脂からなる離型層が形成されている。また、加圧ロール104は、定着ロール102の回転によって従動で回転するようになっている。なお、芯金の内側に熱源となるハロゲンヒータを設けて、加圧ロール104を加熱してもよい。
また、定着装置100の内部で搬送路28の上方には、記録用紙Pの搬送方向における先端位置又は後端位置を検知する第2用紙センサ112が設けられている。第2用紙センサ112は、一例として、記録用紙Pに光を照射すると共に記録用紙Pで反射された光を受光する反射式の光学センサである。また、第2用紙センサ112は、記録用紙Pの搬送方向(矢印A方向)におけるニップ部Nよりも下流側で且つ開口部106Bよりも上流側の位置に取り付けられている。
次に、搬送路28及び両面搬送路136の詳細について説明する。
図3に示すように、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で定着装置100よりも下流側には、定着装置100による定着後の記録用紙Pの反りを反対側に矯正するデカールユニット120が設けられている。なお、デカールユニット120による記録用紙Pの反りの矯正は、記録用紙Pの搬送経路の切り換えに関わらず行われる。
デカールユニット120は、記録用紙Pの搬送方向で上流側に配置された搬送手段の一例としての第1デカール部122と、下流側に配置された搬送手段の一例としての第2デカール部124とを有している。第1デカール部122は、搬送路28の上側に配置されたスポンジロールであるデカールロール126Aと、搬送路28の下側に配置されデカールロール126Aの外周面に接触する金属ロール127Aと、金属ロール127Aの外周面でデカールロール126Aとは反対側に接触し金属ロール127Aの撓みを抑えるベアリング128Aとを有している。なお、デカールロール126Aの外径は、金属ロール127Aの外径よりも大きくなっている。
第2デカール部124は、搬送路28の下側に配置されたスポンジロールであるデカールロール126Bと、搬送路28の上側に配置されデカールロール126Bの外周面に接触する金属ロール127Bと、金属ロール127Bの外周面でデカールロール126Bとは反対側に接触し金属ロール127Bの撓みを抑えるベアリング128Bとを有している。なお、デカールロール126Bの外径は、金属ロール127Bの外径よりも大きくなっている。
デカールロール126Aとデカールロール126B、金属ロール127Aと金属ロール127B、ベアリング128Aとベアリング128Bは、それぞれ同じ材質、形状で構成されている。また、デカールロール126A、デカールロール126B、金属ロール127A、金属ロール127B、ベアリング128A、ベアリング128Bのそれぞれの回転軸方向は、記録用紙Pの搬送方向と直交する方向となっている。
さらに、デカールロール126A、126Bの芯金(図示省略)の端部には、複数のギヤ(図示省略)を介して1つの第2モータ129が接続されている。第2モータ129は、制御部20から送られた指示信号に基づいて駆動され、デカールロール126A、126Bの回転駆動を行う。なお、デカールロール126Aは図示の反時計回り方向、デカールロール126Bは図示の時計回り方向に回転するようになっている。
記録用紙Pの搬送方向でデカールユニット120よりも下流側には、搬送路28で搬送されてきた記録用紙Pの搬送方向を切り換える切換部130が設けられている。ここで、切換部130において、搬送路28の終端は、下方側へ向けて湾曲した湾曲部142を有する搬送路の一例としての反転用搬送路132と、排紙部15(図1参照)へ向かう直線状に近い搬送路の一例としての第1排出路134と、に分岐されている。
また、反転用搬送路132の途中は、記録用紙Pの裏面に画像形成するために搬送ロール36(図1参照)へ向けて延設された搬送路の一例としての両面搬送路136と、排紙部15へ向かう第2排出路138とに分岐されている。なお、反転用搬送路132には、湾曲部142を形成する湾曲面を有するガイド部材143が設けられている。一方、第1排出路134には、第1排出路134の上壁を形成するガイド部材135Aと、ガイド部材135Aと対向配置され底壁を形成するガイド部材135Bとが設けられている。ガイド部材135A、135Bは、記録用紙Pの搬送経路における空間の無駄を減らすため、間隔を狭めて配置されると共に、直線状の搬送経路を形成している。
図1に示すように、反転用搬送路132は、本体部14の右側下部から用紙収容部12の右側下部まで矢印V方向(図示の下向きが−V、上向きが+V)に直線状に設けられており、記録用紙Pを搬送する一対の搬送手段の一例としての搬送ロール162が複数箇所に設けられている。また、両面搬送路136は、反転用搬送路132の途中(後述する第3切換部材148の部位)から搬送ロール36へH方向に設けられており、記録用紙Pを搬送する一対の搬送手段の一例としての搬送ロール164が複数箇所に設けられている。そして、反転用搬送路132に進入した記録用紙Pは、後述する第3切換部材148によって後端の進入路が両面搬送路136に切り換えられることで、両面搬送路136上を矢印B方向(図示の左方向)に搬送されるようになっている。なお、両面搬送路136の終端は搬送路28の搬送ロール36の手前側に接続されている。
図3に示すように、切換部130は、記録用紙Pの搬送経路を搬送路28から反転用搬送路132又は第1排出路134に切り換える第1切換部材144と、反転用搬送路132と第2排出路138を切り換える第2切換部材146と、両面搬送路136と第2排出路138を切り換える第3切換部材148とを有している。第1切換部材144、第2切換部材146、及び第3切換部材148は、いずれも三角柱状の部材であり、駆動手段(図示省略)によって先端部がいずれか一方の搬送路に移動されることで、記録用紙Pの搬送経路を他方の搬送路に切り換えるようになっている。
反転用搬送路132において、第1切換部材144と第2切換部材146との間には、記録用紙Pを搬送する搬送手段の一例としての反転搬送部150が設けられている。反転搬送部150は、一対の第1搬送ロール152と、制御部20(図1参照)によって回転動作が制御され、第1搬送ロール152を回転駆動する第3モータ166とを含んで構成されている。
一方、第3切換部材148よりも下流側(図示の下側)には、記録用紙Pを搬送する一対の第2搬送ロール154が設けられている。第2搬送ロール154は、制御部20によって回転動作が制御される第5モータ172により回転するようになっている。また、第2排出路138には、記録用紙Pを搬送する一対の第3搬送ロール156が設けられている。なお、第3搬送ロール156についてもモータ(図示省略)によって駆動されるが、説明を省略する。
さらに、第1排出路134の終端部には、記録用紙Pを排紙部15(図1参照)へ排出する一対の排出ロール153が設けられている。排出ロール153は、制御部20によって回転動作が制御される第4モータ168により回転するようになっている。
また、反転用搬送路132の外側で第1切換部材144と第1搬送ロール152との間には、反転用搬送路132において搬送されている記録用紙Pの先端位置又は後端位置を検知する第3用紙センサ158が設けられている。第3用紙センサ158は、一例として、記録用紙Pに光を照射すると共に記録用紙Pで反射された光を受光する反射式の光学センサである。
ここで、搬送路28及び反転用搬送路132における定着ロール102から第1搬送ロール152までの距離は、記録用紙Pの搬送方向の全長よりも短く設定されており、定着ロール102と第1搬送ロール152の両方で記録用紙Pを挟むタイミングが生じるようになっている。また、定着ロール102から排出ロール153までの距離は、記録用紙Pの搬送方向の全長よりも短く設定されており、定着ロール102と排出ロール153の両方で記録用紙Pを挟むタイミングが生じるようになっている。
次に、切換部130における記録用紙Pの搬送経路の主な切り換え動作と記録用紙Pの搬送経路について説明する。
図3に示す画像形成装置10において、記録用紙Pの表面(図示の上側の面)へのトナー画像の転写(画像形成含む)及び定着が終了し、続いて、記録用紙Pの裏面(図示の下側の面)への転写(画像形成含む)及び定着が行われる両面の画像形成の場合、切換部130では、第1切換部材144が移動して第1排出路134を塞ぐと共に反転用搬送路132を開放し、第2切換部材146が移動して第2排出路138を塞ぐと共に反転用搬送路132を開放する。さらに、第3切換部材148が移動して両面搬送路136を塞ぐと共に反転用搬送路132を開放する。これにより、搬送路28を搬送されてきた記録用紙Pは、デカールユニット120を通った後、反転用搬送路132に進入する。
続いて、反転用搬送路132に進入した記録用紙Pの後端が第2搬送ロール154を通過したとき、第3切換部材148が第2排出路138を塞ぐと共に両面搬送路136を開放し、第2搬送ロール154が逆回転する。これにより、記録用紙Pの後端が先端に切り換えられ、記録用紙Pは両面搬送路136を搬送されて再度、搬送路28に進入し、裏面の画像形成が行われる。
また、画像形成装置10において、記録用紙Pの表面のみに画像形成し且つ表裏を反転して排出する場合は、記録用紙Pが反転用搬送路132に進入すると共に、進入した記録用紙Pの後端が第2搬送ロール154を通過したとき、第2切換部材146が移動して第2排出路138を開放する。そして、第2搬送ロール154が逆回転することにより、記録用紙Pの後端が先端に切り換えられ、記録用紙Pは第2排出路138を搬送されて排出される。なお、記録用紙Pの表面に画像形成して定着を行い、デカールユニット120を通過した後にそのまま記録用紙Pを排出する場合は、第1切換部材144を移動させて反転用搬送路132を塞ぐと共に第1排出路134を開放する。
次に、搬送路で記録用紙Pが詰まったときの用紙詰まり解消動作について説明する。
図4には、画像形成装置10の搬送路28、反転用搬送路132、及び両面搬送路136の途中で記録用紙P(太い実線で表示)が詰まった状態が、記録用紙P1、P2、P3、P4で示されている。なお、記録用紙P1、P2、P3、P4の詰まり状態は、同時に生じたものではなく、各搬送路における記録用紙Pの詰まり状態を分かり易くするためにまとめて示してある。また、制御部20における記録用紙P1、P2、P3、P4の詰まり位置の検知は、各搬送路に設けられた用紙検知センサ(図示省略)によって行われる。
図4に示すように、画像形成装置10は、二点鎖線で示した範囲が前面側(各ロールの回転軸方向の手前側)に引き出し可能な引出ユニット170で構成されている。引出ユニット170は、本体部14の搬送路28における一番下の搬送ロール36の下側と、搬送路47の途中と、補助ロール69と二次転写ロール71との間と、第1排出路134及び第2排出路138の途中と、本体部14の反転用搬送路132における第2搬送ロール154(図3参照)の下側と、で分割されるユニットであり、ガイドレール(図示省略)に沿って、装置本体10Aから手前側に引き出されるようになっている。
記録用紙P1は、搬送路28において、用紙収容部12と本体部14とにまたがり、複数の搬送ロール36で挟まれた状態で詰まっている。記録用紙P2は、搬送路47において、先端側が位置合せロール38で挟まれた状態で詰まっている。記録用紙P3は、反転用搬送路132において、先端側が搬送ロール162に挟まれ、後端側がデカールロール126Bに挟まれた状態で詰まっている。記録用紙P4は、反転用搬送路132と両面搬送路136とにまたがり、搬送ロール162で挟まれた状態で詰まっている。そして、記録用紙P1、P2、P3、P4は、いずれも装置本体10Aと引出ユニット170との分割線(二点鎖線)を跨いでいる。
ここで、記録用紙P1、P2、P3、P4を取り除くための詰まり解消動作の一例として、記録用紙P1、P2、P4については、制御部20(図1参照)が搬送ロール36、位置合せロール38、搬送ロール162、164を回転させて、記録用紙P1、P2、P4を引出ユニット170内(二点鎖線の枠内)に強制的に搬送する。そして、引出ユニット170を手前側に引き出すことにより、記録用紙P1、P2、P4が取り出される。
一方、記録用紙P3については、制御部20が複数の搬送ロール162を回転させて、記録用紙P3を用紙収容部12の反転用搬送路132へ強制的に搬送する。そして、装置本体10Aの側面に設けられた開閉式のカバー部材(図示省略)を開けることで、記録用紙P3が取り出される(矢印E)。このように、搬送経路における記録用紙Pの詰まりの解消動作では、複数のロールを複数のモータで回転させて記録用紙Pを移動させることになるため、記録用紙Pの詰まりの解消動作に要する電力は、画像形成装置10の消費電力の中では、比較的大きい消費電力となる。
次に、制御部20に設定された画像形成装置10の各部の動作と消費電力について説明する。
図1において、制御部20には、一例として、定着装置100の準備動作に要する電力Pw1、記録用紙Pの詰まり解消動作(以後、記録用紙Pの強制搬送動作と記載する)に要する電力Pw2、画像形成装置10全体での消費電力の規定値Pwとしたときに、Pw<Pw1+Pw2、且つPw1>Pw2として、記録用紙Pの強制搬送動作が、定着装置100の準備動作の開始前又は終了後に行われるように設定されている。なお、以後の説明では、記録用紙Pの強制搬送動作に要する電力と定着装置100の準備動作に要する電力について、図5を用いて説明し、その他の動作に要する電力については図6を用いて説明する。
ここで、定着装置100の準備動作とは、ハロゲンヒータ108(図3参照)に通電して定着ロール102の温度を増加させる昇温動作、定着ロール102の外周面に加圧ロール104を接触させる動作、定着ロール102の外周面における周方向の温度差を低減するための回転動作、外部加熱ロール(図示省略)を定着ロール102の外周面に接触させる動作等を含んだ、定着装置100を使用可能状態とする一連の準備動作である。
また、定着装置100の準備動作、記録用紙Pの強制搬送動作が行われるのは、記録用紙Pに画像形成及び定着が行われた後の一時的な待機状態から復帰するときではなく、例えば、画像形成装置10において、記録用紙Pの搬送途中に使用者が誤操作(カバーを開ける、電源を強制的にOFFにしてしまう)をした後で、再度、定着装置を動作させるときである。
図5(A)には、定着装置100(図1参照)の準備動作(J1)と記録用紙Pの強制搬送動作(J2)について、制御部20(図1参照)に設定された各動作の順序と、各動作に要する電力の第1例が示されている。第1例では、定着装置100の準備動作J1の終了後に、記録用紙Pの強制搬送動作J2が設定されている。
図5(A)には、定着装置100の準備動作J1の開始時点がt1、終了時点がt4で示されており、開始時点t1から終了時点t4までの動作時間がΔt1、開始時点t1から終了時点t4までの各時点で要する電力がPw1となっている。なお、終了時点t4は、温度センサ(図示省略)で検知された定着ロール102(図1参照)の温度が、規定の温度に到達した時点である。そして、記録用紙Pの強制搬送動作J2の開始時点がt4、終了時点がt5、動作時間がΔt2、開始時点t4から終了時点t5までの各時点で要する電力がPw2となっている。また、図5(A)には、画像形成装置10(図1参照)として予め設定されている消費電力の規定値(上限値)がPw(図の一点鎖線)で示されており、本実施形態では、Pw≒Pw1(但しPw<Pw1を除く)となっている。
図5(B)には、定着装置100(図1参照)の準備動作J1と記録用紙Pの強制搬送動作J2について、制御部20(図1参照)に設定された各動作の順序と、各動作に要する電力の第2例が示されている。第2例では、定着装置100の準備動作J1の開始前に、記録用紙Pの強制搬送動作J2が設定されている。なお、定着装置100の準備動作J1の開始時点t1、終了時点t4はそのままで、記録用紙Pの強制搬送動作J2の開始時点がt0、終了時点がt1となっている。
ここで、図5(A)、(B)に示すように、制御部20(図1参照)は、図4に示す画像形成装置10の各搬送路における記録用紙Pの搬送が停止された場所(詰まった場所)に応じて、記録用紙Pの強制搬送動作J2を定着装置100の準備動作J1の終了後又は開始前に選択して設定するようになっている。
例えば、図4において、記録用紙Pが記録用紙P1、P2の位置で詰まっていることが検知された場合は、記録用紙Pにトナー画像が無いので、図5(A)に示すように、先に定着装置100の準備動作J1を行い、その後、記録用紙Pの強制搬送動作J2を行う。一方、記録用紙Pが記録用紙P3、P4の位置で詰まっていることが検知された場合は、定着後のトナー画像が付着しているため早めの除去が望ましく、図5(B)に示すように、記録用紙Pの強制搬送動作J2を定着装置100の準備動作J1よりも先に行う。
また、図6(A)、(B)には、図5(A)の第1例、図5(B)の第2例において、記録用紙Pの強制搬送動作J2と、動作J3又は動作J4と、を並列処理する設定が示されている。ここで、動作J3、J4とは、消費電力の規定値Pwと定着装置100の準備動作に要する電力Pw1との差分(Pw−Pw1)を超える電力ΔPwを要する動作であり、動作J3が、定着装置100の準備動作よりも先に行う動作、動作J4が、定着装置100の準備動作よりも後に行う動作である。
動作J3の例としては、現像装置70(図2参照)のホームポジションへの回転動作、トナーカートリッジ78(図1参照)等の使用者が交換するユニットに設けられたメモリ内の情報の読み込み、中間転写ベルト68のホームポジションへの移動、二次転写ロール71のリトラクト動作(中間転写ベルト68に対する接触動作又は退避動作)等がある。
また、動作J4の例としては、画像形成装置10の装置本体10A(図1参照)に設けられた排気ファン(図示省略)の排気動作、中間転写ベルト68にテスト画像を転写して行う転写状態の確認動作、現像器72、クリーニング装置73等における廃トナー(不要トナー)の排出動作等がある。
次に、比較例における画像形成装置10の動作設定及び作用について説明する。
図7(A)に示すように、時点t1から時点t4までの間で設定される時点t2から時点t3の間において、定着装置100(図1参照)の準備動作J1と記録用紙Pの強制搬送動作J2とを並列処理しようとしても、これらの電力の合計Pw3(=Pw1+Pw2)がPwを超えてしまうため、並列処理は行えない。
ここで、図7(B)に示すように、比較例として、時点t2から時点t3までの間において、ハロゲンヒータ108(図3参照)への通電量を低減させる設定にし、あるいは、定着ロール102の外周面に加圧ロール104を接触させる動作を時点t3よりも後に行う設定にして、時点t2から時点t3までの間における定着装置100の準備動作J1に用いる電力を低下させ、この低下させた電力分で記録用紙Pの強制搬送動作J2を並列して処理したとする。
このとき、ハロゲンヒータ108に与えられる電力が、時点t2から時点t3の間でPw1からPw4(=Pw1−Pw2)に減少するため、定着ロール102の単位時間当たりの温度上昇率が低下する。これにより、定着装置100(図1参照)の準備動作J1で必要となる時間は、時点t1から時点t4までの時間Δt1よりも長くなり、時点t1から時点t6までの時間Δt3が必要となってしまう。即ち、定着装置100の準備動作J1の時間を短くすることができなくなる。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の画像形成装置10では、図5(A)、(B)に示すように、定着装置100の準備動作J1の終了後又は開始前に記録用紙Pの強制搬送動作J2を設定したので、定着装置100のハロゲンヒータ108(図3参照)に供給する電力を低下させる必要がなくなる。これにより、定着ロール102の単位時間当たりの温度上昇率が維持され、消費電力の規定値Pwを超えずに、定着装置100の準備動作J1の時間が比較例に比べて短くなる。なお、定着装置100の準備動作J1では、定着ロール102の加熱動作が律速となっている。このため、画像形成装置10全体での準備時間においても、定着装置100の準備動作J1の時間が短くなる本実施形態の方が、比較例よりも短くなる。
また、本実施形態の画像形成装置10では、図6(A)、(B)に示すように、記録用紙Pの強制搬送動作J2を行う時間において、消費電力の規定値Pwと電力Pw1との差分を超える消費電力を要する動作J3、J4を行うので、定着装置100の準備動作J1と記録用紙Pの強制搬送動作J2を含む画像形成装置10全体の準備時間が、動作J3、J4を他の時点で行う場合の準備時間に比べて短くなる。
さらに、本実施形態の画像形成装置10では、図4において、記録用紙P1、P2、P3、P4の停止場所に合わせて、記録用紙Pの強制搬送動作J2を定着装置100の準備動作J1の開始前又は終了後に選択して行うので、記録用紙Pの強制搬送動作J2を定着装置100の準備動作J1の開始前及び終了後の両方で行う場合に比べて、画像形成装置10全体の準備時間が短くなる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
定着ロール102は、電磁誘導方式により加熱される定着ベルトであってもよい。また、引出ユニット170が設けられていない構成であってもよい。例えば、引出ユニット170が無い構成で、記録用紙Pが用紙収容部12と本体部14とに跨って停止している状態を解消する構成であってもよい。
さらに、記録用紙Pの強制搬送動作は、定着装置100の準備動作の開始前、終了後で選択せず、いずれかに固定してもよい。即ち、定着装置100の準備動作の終了後に記録用紙Pの強制搬送動作を行う構成であってもよい。また、定着装置100の準備動作の開始前に各搬送路に記録用紙Pが残っているかを用紙センサで検知して、残っている場合に、記録用紙Pの強制搬送動作を実施した後、定着装置100の準備動作を開始する構成であってもよい。