JP5616037B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Description

本発明はゴルフクラブヘッドに関し、特に、打音の改善技術に関するものである。

ドライバ用のヘッドに代表される中空のゴルフクラブヘッドにおいては、中空体の構造により、打感、打音、飛距離性能等を改善することが提案されている（例えば、特許文献１乃至１０）。特に、特許文献１及び２には、中空体の肉厚により打感や打音を改善したものが開示されている。

特開平１１−１５５９８２号公報 特開２００７−１５１７５８号公報 特開２００７−８３０１１号公報 特開２００７−５４１９５号公報 特開２００７−５４１９８号公報 特開２００７−５４１９９号公報 特開２００７−５４２００号公報 特開２００４−２２９８２０号公報 特開２００４−２２２７９２号公報 特開２００４−６５６６０号公報

中空のゴルフクラブヘッドでは、年々そのヘッド体積の増加が進んでおり、クラウン部やソール部が薄肉化されると共に面積も増大している。このため、ゴルフボールの打撃時の打音が低音となる傾向にあり、高打音を好むゴルファーからは、より高打音を発するゴルフクラブヘッドが望まれている。

本発明の目的は、ヘッド体積を増大しても、より高打音を発するゴルフクラブヘッドを提供することにある。

本発明によれば、フェース部、クラウン部及びソール部を備えた中空のゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部が、前記ソール部と前記フェース部との境界部分から開始された第１領域と、前記境界部分からバック側に離間し、前記第１領域に隣接した第２領域と、を有し、前記第２領域は、前記第１領域、及び、前記第２領域のバック側に隣接する第３領域よりも薄肉であり、前記第２領域が、打撃時における前記ソール部の一次振動モードの腹の位置を含み、前記腹の位置は、前記第１領域と前記第２領域との境界線から離間した位置であり、前記境界部分から前記第２領域までの距離が２５ｍｍ以上４１ｍｍ以下であり、前記第２領域のフェース−バック方向の長さが５０ｍｍ以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッドが提供される。

本発明によれば、ヘッド体積を増大しても、より高打音を発するゴルフクラブヘッドを提供することができる。

本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド１０をソール部１３側から見た図。 図１の線Ｘ−Ｘに沿う断面図。 （Ａ）はゴルフクラブヘッド１０をフェース部１１側から見た正面図、（Ｂ）はゴルフクラブヘッド１０の側面図。 （Ａ）及び（Ｂ）は領域ＲＧ２の他の範囲の例を示す図。 （Ａ）はゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の仕様を示す図、（Ｂ）は距離Ｗ１と固有振動数との関係を示す図。 ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の説明図。

図１は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド１０をソール部１３側から見た図、図２は図１の線Ｘ−Ｘに沿う断面図である。ゴルフクラブヘッド１０は、中空体をなしており、その周壁が、フェース面（打撃面）を形成するフェース部１１と、ゴルフクラブヘッド１０の上部を形成するクラウン部１２と、ゴルフクラブヘッド１０の底部を形成するソール部１３と、ゴルフクラブヘッド１０の側部を形成するサイド部１４と、を構成している。サイド部１４は、トウ側の部分１４ａ、ヒール側の部分１４ｂ及びバック側の部分１４ｃを含む。また、ゴルフクラブヘッド１０はシャフトが取付けられるホゼル部１５と、を備える。

ゴルフクラブヘッド１０はドライバ用のゴルフクラブヘッドであるが、本発明はドライバ以外のフェアウエイウッド等も含むウッド型のゴルフクラブヘッド、ユーティリティ型（ハイブリッド型）のゴルフクラブヘッド、その他の中空のゴルフクラブヘッドに適用可能である。ゴルフクラブヘッド１０は、金属材料から作成することができ、そのような金属材料としては、チタン系金属（例えば、６Ａｌ−４Ｖ−Ｔｉのチタン合金等）、ステンレス、ベリリウムカッパー等の銅合金が挙げられる。

ゴルフクラブヘッド１０は、複数のパーツを接合して組み立てることができる。例えば、クラウン部１２、ソール部１３、サイド部１４及びフェース部１１の周縁部分を構成し、フェース部１１に相当する部分の一部に開口部が形成された本体部材と、該本体部材の該開口部に接合されるフェース部材と、から構成できる。

ソール部１３には、厚みの異なる領域ＲＧ１と領域ＲＧ２とが形成されている。領域ＲＧ１は、ソール部１３とフェース部１１との境界部分ＢＤから開始されてバック側に延設された領域である。領域ＲＧ２は、図１において破線で囲む領域であって、境界部分ＢＤから距離Ｗ１だけバック側に離間し、領域ＲＧ１に隣接した領域である。図１及び図２の例の場合、領域ＲＧ２は領域ＲＧ１のバック側端部から開始されている。

また、ソール部１３のバック側周縁からサイド部１４のバック側の部分１４ｃにかけては、破線で囲む領域ＲＧ３が形成されている。領域ＲＧ１乃至ＲＧ３の厚みの関係は、領域ＲＧ１＞領域ＲＧ２、領域ＲＧ３＞領域ＲＧ２である。すなわち、領域ＲＧ２の厚みが最も薄い。また、領域ＲＧ２は、打撃時におけるソール部１３の一次振動モードの腹の位置ＡＮを含む。

このように、本実施形態では、フェース側からバック側に、順に、厚肉の領域（ＲＧ１）、薄肉の領域（ＲＧ２）、厚肉の領域（ＲＧ３）が形成されているため、ゴルフボールの打撃時に、ソール部１３が高周波数で振動し易くなる。特に、薄肉の領域（ＲＧ２）がソール部１３の一次振動モードの腹の位置ＡＮを含むことから、厚肉の領域（ＲＧ１、ＲＧ３）で振動しにくく、薄肉の領域（ＲＧ２）で振動し易くなることから、ソール部１３が高周波数で振動し易くなる。

こうして本実施形態では、ヘッド体積を増大しても、より高打音を発することができる。ヘッド体積としては、例えば、３５０ｃｃ以上５００ｃｃ以下である。一般に、ヘッド体積が大型化すると、肉厚を薄くする必要があることからヘッド全体の固有値が低下し、ソール部の一次振動モードの固有値も低下する。このため、ゴルフボールの打撃時の打音が低音となる傾向にあり、本実施形態の構造を採用することで打音の改良を行うことができる。なお、ソール部１３の一次振動モードの腹の位置ＡＮは、コンピュータによるモーダル解析やＦＥＭでの固有値解析を行うことで求めることができる。

次に、距離Ｗ１、Ｗ２、Ｗ３について説明する。そのため、まず、フェースセンタについて図３（Ａ）及び（Ｂ）を参照して説明する。図３（Ａ）において、角度θ１はライ角であり、ホゼル部１５に取り付けられるシャフトの軸線Ｌ２と、接地面とがなす角度である。図３（Ｂ）において、角度θ２はロフト角であり、フェース部１１と、接地面とがなす角度である。図３（Ａ）において、線Ｌ１はゴルフクラブヘッド１０を、その規定ライ角、規定ロフト角で接地面に接地させたときに、図３（Ａ）に示すように接地部分のトウーヒール方向の中心線を通る線である。この線Ｌ１と交わるフェース部１１の上端、下端をそれぞれ位置Ｐ１、Ｐ２とし、位置Ｐ１、Ｐ２間の高低差Ｈの１／２の位置をフェースセンタＦＣとする。

次に、図１及び図３を参照して、仮想面Ｓ１は、ゴルフクラブヘッド１０をその規定ライ角、規定ロフト角で接地面に接地させたときに図３の点Ｐ２を含む鉛直面であって、飛球線方向と直交する鉛直面である。ここで、飛球線方向は、フェースセンタＦＣにおけるフェース部１１の法線を含む鉛直面に含まれる水平方向とする。フェース−バック方向は飛球線方向と平行な方向とし、トウ−ヒール方向はフェースバック方向と直交する方向とする。

図１において、距離Ｗ１は、仮想面Ｓ１と、領域ＲＧ２の最もフェース側の点を含み、かつ、仮想面Ｓ１と平行な面との間の距離とする。距離Ｗ２は、領域ＲＧ２の最もフェース側の点を含み、かつ、仮想面Ｓ１と平行な面と、領域ＲＧ２の最もバック側の点を含み、かつ、仮想面Ｓ１の平行な面Ｓ２との間の距離であり、これを領域ＲＧ２のフェース−バック方向の長さとする。距離Ｗ３は、仮想面Ｓ１から腹の位置ＡＮへの垂線の長さである。

図１の例では、領域ＲＧ２は、ソール部１３のうち、仮想面Ｓ１から距離Ｗ１の位置から開始されて、該位置からバック側において、ソール部１３のトウ側及びヒール側の略全域に渡って形成されている。つまり、領域ＲＧ２はソール部１３のバック側の略半分の領域に形成されている。

領域ＲＧ１、領域ＲＧ２及び領域ＲＧ３は、それぞれ、均一の厚さであってもよいし、厚さが異なる部分を含んでいてもよい。厚さが異なる部分を含む場合、領域ＲＧ２の各部分の厚さは、領域ＲＧ１及び領域ＲＧ３の各部分の厚さよりも薄いことが好ましく、少なくとも、領域ＲＧ２の各部分の厚さは、これら各部分に隣接する領域ＲＧ１及び領域ＲＧ３の各部分の厚さよりも薄くする。

サイド部１４のうち、トウ側の部分１４ａ及びヒール側の部分１４ｂの厚さは、少なくとも領域ＲＧ２に隣接する部分については、領域ＲＧ２の厚さ以上とすることが好ましい。

領域ＲＧ１と領域ＲＧ２との厚さの比率は、例えば、１：０．６〜２．１が好ましく、領域ＲＧ３と領域ＲＧ２との厚さの比率は、例えば、１：０．８〜１．２が好ましい。

領域ＲＧ２の範囲は、図１の範囲に限らず、種々の範囲を選択できる。図４（Ａ）及び（Ｂ）は領域ＲＧ２の他の範囲の例を示す図である。図４（Ａ）の例では、領域ＲＧ２は楕円形状をなしている。この例ではソール部１３における領域ＲＧ３の範囲が図１の例よりも増している。図４（Ｂ）の例では、領域ＲＧ２と領域ＲＧ１との境界線が、仮想面Ｓ１から等距離でない例を示している。

距離Ｗ１を変えた複数のゴルフクラブヘッド＃１〜＃７のモデルをコンピュータ上で設計し、コンピュータ上で各モデルの振動解析を行った。図５（Ａ）はゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の仕様を示す図、図５（Ｂ）は距離Ｗ１と固有振動数（一次振動モード）との関係を示す図である。図６はゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の説明図である。

図６は、ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７をそのソール部１３側から見た図である。ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７は、いずれもヘッド容積が４５３ｃｃのドライバヘッドであり、材料はチタニウム合金（Ｔｉ−６Ａｌ−４Ｖ）である。ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７は、互いに距離Ｗ１が異なり、その結果、距離Ｗ２及びＷ３も異なっている。ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７は、図１に示した領域ＲＧ１、ＲＧ２がトウ側の領域ＲＧ１Ｔ、ＲＧ２Ｔと、ヒール側の領域ＲＧ１Ｈ、ＲＧ２Ｈと、に分かれている。また、サイド部１４のトウ側の部分１４ａはフェース側の領域ＲＧ４Ｆと、バック側の領域ＲＧ４Ｂとに分かれている。更に、サイド部１４のヒール側の部分１４ｂはフェース側の領域ＲＧ５Ｆと、バック側の領域ＲＧ５Ｂとに分かれている。

なお、領域ＲＧ４Ｆと領域ＲＧ４Ｂとの境界、領域ＲＧ５Ｆと領域ＲＧ５Ｂとの境界は、それぞれ、領域ＲＧ１と領域ＲＧ２との境界と連続しており、距離Ｗ１の変化によりこれらの境界の位置も変化する。

各領域、部分の厚みは以下の通りである。
領域ＲＧ１Ｔ：１．４ｍｍ
領域ＲＧ１Ｈ：１．４ｍｍ
領域ＲＧ２Ｔ：０．６ｍｍ
領域ＲＧ２Ｈ：０．７ｍｍ
領域ＲＧ３：１．３ｍｍ
領域ＲＧ４Ｆ：１．３ｍｍ
領域ＲＧ４Ｂ：０．７ｍｍ
領域ＲＧ５Ｆ：１．１ｍｍ
領域ＲＧ５Ｂ：１．１ｍｍ
フェース部：３．０ｍｍ
クラウン部：０．７ｍｍ

図５（Ａ）は、ゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の距離Ｗ１乃至Ｗ３を示している。距離Ｗ１はゴルフクラブヘッド＃１で最も長く、ゴルフクラブヘッド＃７で最も短い。従って、ゴルフクラブヘッド＃１は、相対的に領域ＲＧ１、ＲＧ４Ｆ及びＲＧ５Ｆの面積が大きくて領域ＲＧ２、ＲＧ４Ｂ及びＲＧ５Ｂの面積が小さく、ゴルフクラブヘッド＃７は、相対的に領域ＲＧ１、ＲＧ４Ｆ及びＲＧ５Ｆの面積が小さくて領域ＲＧ２、ＲＧ４Ｂ及びＲＧ５Ｂの面積が大きい。

図５（Ａ）は、解析結果としてゴルフクラブヘッド＃１〜＃７の一次振動モードの固有振動数も示しており、図５（Ｂ）は距離Ｗ１を横軸に、固有振動数（一次振動モード）を縦軸にとったグラフである。なお、振動解析はＦＥＭを用いて計算した。

図５（Ｂ）を参照すると、距離Ｗ１が長くなるにつれて固有振動数が大きくなり、その後、減少することが分かる。これは、距離Ｗ１が短すぎると（距離Ｗ２が長すぎると）、領域ＲＧ２の面積が大きくなって振動しやすい面積が広いことから高周波振動を得られなかったと考えられる。距離Ｗ１が長すぎると一次振動モードの腹の位置が厚肉の領域ＲＧ１に含まれることから、厚肉の領域ＲＧ１の重量による影響（薄肉の領域ＲＧ２よりも単位面積あたりの重量が重い）で高周波振動しにくくなると考えられる。打音として３０００Ｈｚ程度が高打音に属するとすると、距離Ｗ１は２５ｍｍ以上４０ｍｍ以下であることが好ましいといえる。また、この場合の距離Ｗ２に着目すると、距離Ｗ２は５０ｍｍ以下であることが好ましいといえる。

Claims (2)

1. フェース部、クラウン部及びソール部を備えた中空のゴルフクラブヘッドにおいて、
   前記ソール部が、
   前記ソール部と前記フェース部との境界部分から開始された第１領域と、
   前記境界部分からバック側に離間し、前記第１領域に隣接した第２領域と、を有し、
   前記第２領域は、前記第１領域、及び、前記第２領域のバック側に隣接する第３領域よりも薄肉であり、
   前記第２領域が、打撃時における前記ソール部の一次振動モードの腹の位置を含み、
   前記腹の位置は、前記第１領域と前記第２領域との境界線から離間した位置であり、
   前記境界部分から前記第２領域までの距離が２５ｍｍ以上４１ｍｍ以下であり、
   前記第２領域のフェース−バック方向の長さが５０ｍｍ以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
2. 前記ゴルフクラブヘッドがサイド部を備え、
   前記第３領域が、前記サイド部のバック側の部分であり、
   前記境界線は前記ソール部をトウ−ヒール方向に横断し、
   前記サイド部のトウ側の部分が前記境界線と連続する境界線によって、前記フェース部側の第４領域と、前記第３領域側で前記第３領域及び前記第４領域よりも薄肉の第５領域と、に区分けされることを特徴とする請求項１に記載のゴルフクラブヘッド。

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