JP5681045B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Description

本発明はゴルフクラブヘッドに関し、特に、打音の改善技術に関するものである。

ドライバ用のヘッドに代表される中空のゴルフクラブヘッドにおいては、中空体の構造により、打音を改善することが提案されている。例えば、特許文献１及び２には、ソール部の肉厚を部分的に異ならせて打音を改善するものが開示されている。また、特許文献３及び４にはソール部にリブを設けて打音を改善するものが開示されている。

特開平１１−１５５９８２号公報 特開２００３−２７５３４５号公報 特開２００２−１８６６９１号公報 特開２００３−１０２８７７号公報

中空のゴルフクラブヘッドでは、年々そのヘッド体積の増加が進んでおり、クラウン部やソール部が薄肉化されると共に面積も増大している。このため、ゴルフボールの打撃時の打音が低音となる傾向にあり、高打音を好むゴルファーからは、より高打音を発するゴルフクラブヘッドが望まれている。特許文献１及び２に開示されているように、ソール部の肉厚を部分的に異ならせることは打音の高打音化に一定の効果がある。また、特許文献３及び４に開示されているように、ソール部にリブを設けることも打音の高打音化に一定の効果がある。これらはいずれもソール部を拘束する度合いを高くすることで高打音化を図っているが、ソール部を拘束する度合いを高めると打音が小さく、響かなくなり易い。

本発明の目的は、ヘッド体積を増大しても、より高音でより大きな打音を発するゴルフクラブヘッドを提供することにある。

本発明によれば、フェース部と、クラウン部と、ソール部及びサイド部を含むソール・サイド部と、を備えた中空のゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部においてトウ側からヒール側に延設されたリブと、前記ソール部において前記リブよりもバック側に設けられ、前記ソール部の振動の振幅を増大させる錘部と、を備え、前記ソール部の一次振動モードの固有振動数が２５００Ｈｚ以上であり、前記錘部の質量ｍ（ｇ）が、１≦ｍ＜６であり、前記リブは、幅がｂ（ｍｍ）、高さがｈ（ｍｍ）の方形の断面形状を有し、０．２０≦ｂ・ｈ³／ｍ⁴＜８．００、であることを特徴とするゴルフクラブヘッドが提供される。

本発明によれば、ヘッド体積を増大しても、より高音でより大きな打音を発するゴルフクラブヘッドを提供することができる。

本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド１０の斜視図。 （Ａ）は図１の線Ｘ−Ｘに沿う断面図、（Ｂ）はゴルフクラブヘッド１０をソール部１３１側から見た図。 ゴルフクラブヘッド１０をフェース部１１側から見た正面図。 中間領域の説明図。 （Ａ）乃至（Ｃ）は振動解析結果を示す図。

図１は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド１０の斜視図であって、その内部に設けたリブ２０、錘部２１を透視した図、図２（Ａ）は図１の線Ｘ−Ｘに沿う断面図、図２（Ｂ）はゴルフクラブヘッド１０をソール部１３１側から見た図である。

ゴルフクラブヘッド１０は中空体をなしており、その周壁が、フェース面（打撃面）を形成するフェース部１１と、ゴルフクラブヘッド１０の上部を形成するクラウン部１２と、ソール・サイド部１３と、を構成している。ソール・サイド部１３は、ゴルフクラブヘッド１０の底部を形成するソール部１３１と、クラウン部１２とソール部１３１との間のサイド部１３２と、を構成している。サイド部１３２はゴルフクラブヘッド１０の側部を形成し、トウ側のサイド部１３２ａ、ヒール側のサイド部１３２ｂ及びバック側のバックサイド部１３２ｃを含む。また、ゴルフクラブヘッド１０はシャフトが取付けられるホゼル部１５を備える。

ゴルフクラブヘッド１０はドライバ用のゴルフクラブヘッドであるが、本発明はドライバ以外のフェアウエイウッド等も含むウッド型のゴルフクラブヘッド、ユーティリティ型（ハイブリッド型）のゴルフクラブヘッド、その他の中空のゴルフクラブヘッドに適用可能である。ゴルフクラブヘッド１０は、金属材料から作成することができ、そのような金属材料としては、チタン系金属（例えば、Ｔｉ−６Ａｌ−４Ｖのチタン合金等）、ステンレス、ベリリウムカッパー等の銅合金が挙げられる。

ゴルフクラブヘッド１０は、複数のパーツを接合して組み立てることができる。例えば、クラウン部１２、ソール部１３１、サイド部１３２及びフェース部１１の周縁部分を構成し、フェース部１１に相当する部分の一部に開口部が形成された本体部材と、該本体部材の該開口部に接合されるフェース部材と、から構成できる。

図１及び図２（Ａ）及び（Ｂ）を参照して、ソール部１３１の内側上面にはゴルフクラブヘッド１０の固有振動数を調整する長片状のリブ２０と、打撃時のソール部１３１の振動の振幅を増大させる点状の錘部２１と、が形成されている。

本実施形態の場合、リブ２０はソール部１３１をトウ−ヒール方向に横断し、リブ２０の一方端部２０ａはトウ側のサイド部１３２ａに接続され、リブ２０の他方端部２０ｂはヒール側のサイド部１３２ｂに接続されている。本実施形態の場合、リブ２０はソール部１３１、サイド部１３２ａ及び１４ｂと一体成形されているが、別部材としてソール部１３１、サイド部１３２ａ及び１４ｂに固着してもよい。図２（Ａ）に示すように、リブ２０は幅ｂ（ｍｍ）、高さｈ（ｍｍ）の方形の断面形状を有する。高さｈはソール部１３１（薄肉領域Ｓ２）の上面からの高さである。

錘部２１は、その周辺の振動の振幅を増大させ、打音の響きや大きさを調整する。錘部２１はリブ２０よりもバック側に位置している。リブ２０の位置が錘部２１よりもフェース部１１に近い方が、ソール部１３１の一次振動モードの固有値（固有振動数）を高め易い。錘部２１は、ソール部１３１の振動の振幅を増大させる点で、ソール部１３１の振動の腹の位置又はその周辺に配置されることが好ましい。ソール部１３１の振動の腹の位置は、一般には、ゴルフクラブヘッドの底面視でそのトウ−ヒール方向及びフェース−バック方向の中間領域内に位置する。よって、錘部２１は該中間領域に配置することが好ましい。

中間領域は以下のように特定することができる。まず、図３に示すようにゴルフクラブヘッド１０をシャフト軸線Ｌ１と接地面とがなす角度θ１（ライ角）が、ゴルフクラブヘッド１０に規定されている規定ライ角であり、かつ、ロフト角が規定ロフト角となるように接地した場合（以下、規定接地という。）に、ソール部１３１の接地点Ｃを、ゴルフクラブヘッド１０の、トウ−ヒール方向のセンタラインとする。なお、ソール部１３１が面で接地する場合は、その幅方向の中心とする。

次に、図４に示すように、ゴルフクラブヘッド１０を規定接地した状態でゴルフクラブヘッド１０を底面視した場合に、接地点Ｃで規定されるセンタラインのフェースと、フェース部１１との交点ＰＦと、バック端との交点ＰＢとを規定する。そして、交点ＰＦ−ＰＢ間の距離Ｌ１の半分の位置ＣＰを中心点とする。また、ゴルフクラブヘッド１０のトウ−ヒール方向の幅をＬ２とする。

中間領域Ｒは、位置ＣＰを中心としてフェース−バック方向（飛球線方向）の幅Ｗ１と、トウ−ヒール方向の幅Ｗ２とで規定することができ、幅Ｗ１は例えば、０．４×Ｌ１〜０．６Ｌ×１、幅Ｗ２は、例えば、０．４×Ｌ２〜０．６×Ｌ２とすることができる。

錘部２１の形状は、本実施形態の場合円柱形状であるが、他の形状でもよい。本実施形態の場合、錘部２１は、ソール部１３１の厚みを局所的に厚くすることでソール部１３１と一体成形されているが、別部材としてソール部１３１に取り付けるようにしてもよい。別部材とする場合、錘部２１は、ソール部１３１を形成する材料よりも比重の重い部材（例えばビス等）が好ましい。また、別部材とする場合、錘部２１をソール部１３１に着脱自在とし、重さの異なる別の錘部２１に交換可能としてもよい。この構成によれば、ユーザが打音調整をすることができる。

図２（Ｂ）を参照して、本実施形態の場合、ソール・サイド部１３は、フェース部１１側からバック側に向かって順に、フェース部側の厚肉領域Ｓ１、薄肉領域Ｓ２、及び、バック側の厚肉領域Ｓ３を有している。本実施形態の場合、リブ２０と錘部２１とが、薄肉領域Ｓ２に配置されている。複数の線ＢＬは、各領域Ｓ１乃至Ｓ３の境界線を示す。

各領域Ｓ１乃至Ｓ３における周壁の厚さの関係は、Ｓ１＞Ｓ２、Ｓ３＞Ｓ２、である。薄肉領域Ｓ２の厚みは例えば０．８ｍｍ、厚肉領域Ｓ１の厚みは例えば１．４ｍｍ、厚肉領域Ｓ３の厚みは例えば１．３ｍｍである。また、フェース部１１の厚みは例えば３ｍｍ、クラウン部１２の厚みは例えば０．６以上０．７ｍｍ以下である。

薄肉領域Ｓ２は少なくともソール部１３１をトウ側からヒール側に渡って横断するように形成される。本実施形態の場合は、サイド部１３２ａ及び１３２ｂにも薄肉領域Ｓ２が及んでいるが、ソール部１３１のみに形成してもよい。

厚肉領域Ｓ１は薄肉領域Ｓ２のフェース部１１側に薄肉領域Ｓ２に隣接して形成されている。本実施形態では、厚肉領域Ｓ１はソール部１３１とフェース部１１との境界部分ＢＤから開始されて薄肉領域Ｓ２まで延設されている。本実施形態の場合は、サイド部１３２ａ及び１３２ｂにも厚肉領域Ｓ１が及んでいるが、ソール部１３１のみに形成してもよい。この場合、ソール部１３１の一部にのみ形成してもよい。

厚肉領域Ｓ３は薄肉領域Ｓ２のバック側（バックサイド部１３２ｃ側）に薄肉領域Ｓ２に隣接して形成されている。本実施形態の場合は、サイド部１３２ａ及び１３２ｂ並びにバックサイド部１３２ｃにも厚肉領域Ｓ３が及んでいるが、ソール部１３１のみに形成したり、ソール部１３１とバックサイド部１３２ｃとにのみ形成してもよいし、ソール部１３１とサイド部１３２ａ及び１３２ｂとにのみ形成してもよい。

次に、本実施形態における打音の改善原理について説明する。一般に、ヘッド体積が大型化すると、ヘッドの周壁の肉厚を薄くする必要があると共に各部の面積も増大することからヘッド全体の固有値が低下し、ソール部１３１の一次振動モードの固有値（固有振動数）も低下する。このため、ゴルフボールの打撃時の打音が低音となる傾向にある。本実施形態ではリブ２０を設けたことでソール部１３１が拘束され、その一次振動モードの固有値が増大する。その結果、打音をより高音化することができる。

また、本実施形態では、サイド・ソール部１３において、フェース側からバック側に、順に、厚肉領域Ｓ１、薄肉領域Ｓ２、厚肉領域Ｓ３が形成されているため、ゴルフボールの打撃時に、薄肉領域Ｓ２が振動し易い。そして、薄肉領域Ｓ２にリブ２０を設けたことで、薄肉領域Ｓ２がリブ２０で拘束され、打音を更に高音化することができる。しかも、錘部２１を、振動し易い薄肉領域Ｓ２に設けたことで、振動の振幅を更に増大でき、打音の大きさや響きを向上できる。

リブ２０でソール部１３１を拘束する度合いを高めると、打音は高音化できるが、打音が小さく、響きも悪くなる。しかし、本実施形態では、錘部２１を設けたので、打撃時のソール部１３１の振動の振幅が大きくなる。よって、ヘッド体積を増大しても、より高音でより大きな打音を発するようにすることができる。ヘッド体積としては、例えば、４００ｃｃ以上４６０ｃｃ以下である。

錘部２１を設けることで、ソール部１３１の一次振動モードの固有値（固有振動数）が低下する場合があるが、リブ２０によって、或いは、本実施形態のようにリブ２０と厚肉・薄肉領域との併用によって、ソール部１３１の一次振動モードの固有振動数は２５００Ｈｚ以上とする。

次に、上記の通り、リブ２０は打音の高音化に寄与するが打音が小さくなるというデメリットがあり、錘部２１は振幅増大により打音を大きくすることに寄与するが、打音を低音化させるというデメリットがある。よって、リブ２０、錘部２１の個別の調整に加えて、両者のバランスが重要となる。

錘部２１はその質量ｍ（ｇ）を１≦ｍ＜６とする。１ｇ未満であると振幅増大効果が薄く、６ｇ以上であると打音の高音化が困難となる。

リブ２０によるソール部１３１の拘束度合いは、その断面２次モーメント（ｂ・ｈ³／１２）が一つの要因となる。そこで、拘束度合いの指標としてｂ・ｈ³を用いることができる。ソール部１３１の一次振動モードの固有値（固有振動数）を２５００Ｈｚ以上とするためには、５０≦ｂ・ｈ³とすることが好ましい。更に好ましくは１００≦ｂ・ｈ³である。拘束度合いが大きすぎると、錘部２１を設けても打音が大きくならない場合がある。よって、ｂ・ｈ³≦７００が好ましく、更に好ましくはｂ・ｈ³≦６５０である。幅ｂ、高さｈを個別に規定すれば、０．５＜ｂ＜３、２＜ｈ＜７であることが好ましい。

そして、リブ２０と錘部２１とのバランスを評価すべく、ｂ・ｈ³／ｍ⁴をリブ２０と錘部２１とのバランスの指標として用いる。分母は錘部２１の質量に関わるパラメータであり、４乗としているのはｂ・ｈ³と次元数を合わせたものである。分子のｂ・ｈ³は、リブ２０の断面２次モーメントに関わるパラメータである。

ｂ・ｈ³／ｍ⁴の値が相対的に大きい場合は、錘部２１の質量に対して相対的にリブ２０の断面２次モーメントが大きい場合であり、つまり、相対的に、打音が高音であるが小さいことを示し、ｂ・ｈ³／ｍ⁴の値が相対的に小さい場合は、相対的に、打音が低音であるが大きいことを示す。０．２０≦ｂ・ｈ³／ｍ⁴＜８．００であると、打音の高さと大きさとを両立できる。

複数のゴルフクラブヘッドのモデルをコンピュータ上で設計し、コンピュータ上で各モデルの振動解析を行った。各モデルは、いずれもヘッド容積が４６０ｃｃの同形状のドライバヘッドであり、リブ２０と錘部２１の仕様のみが異なる。なお、ゴルフクラブヘッドの材料はチタニウム合金（Ｔｉ−６Ａｌ−４Ｖ）である。

各モデルは、図１及び図２（Ａ）及び（Ｂ）に示したゴルフクラブヘッド１０と同様の構成であり、リブ２０、錘部２１を有すると共に、ソール・サイド部１３は、フェース部１１側からバック側に向かって順に、フェース部側の厚肉領域Ｓ１、薄肉領域Ｓ２、及び、バック側の厚肉領域Ｓ３を有している。薄肉領域Ｓ２のフェース−バック方向の長さは、６５ｍｍであり、厚さは０．６ｍｍである。錘部２１の交点ＰＦからの距離ＬＷは５０ｍｍであり、リブ２０の交点ＰＦからの距離ＬＲは３５ｍｍである。

リブ２０の幅ｂ（ｍｍ）、高さｈ（ｍｍ）は、ｂ・ｈ³の値が、５０〜６５０の範囲内でモデル毎に変化するように設定した。また、錘部２１の質量ｍ（ｇ）は、０（錘部なし）〜８（ｇ）の範囲内でモデル毎に変化するように設定した。

振動解析では、打音の高さ（振動数）、響き（振動時間）、大きさ（振幅）を演算した。

図５（Ａ）は、錘部２１の質量ｍ及びリブ２０のｂ・ｈ³の値と、各モデルの一次振動モードの固有値（固有振動数）の演算結果と、を示した図である。２５００Ｈｚ以上を許容範囲とし、薄塗りとしている。錘部２１の質量ｍが６ｇ以上であると、２５００Ｈｚ以上の固有振動数を達成されない。よって、錘部２１の質量ｍは６ｇ未満とすべきである。ｂ・ｈ³の値は、５０以上であれば２５００Ｈｚ以上の固有振動数を達成可能である。よって、ｂ・ｈ³の値は、５０以上となるように、幅ｂ、高さｈを設定すべきである。

図５（Ｂ）は、錘部２１の質量ｍ及びリブ２０のｂ・ｈ³の値と、各モデルの打音の響き、大きさの評価結果と、を示した図である。響きと大きさは４段階（Ａ〜Ｄ）で評価した。Ａが最もよく、Ａ及びＢが許容範囲（薄塗り部分）とした。質量ｍがより重く、リブ２０のｂ・ｈ³の値がより小さいほど打音の響き、大きさが良く、質量ｍがより軽く、リブ２０のｂ・ｈ³の値がより大きいほど打音の響き、大きさが悪くなる。錘部２１を設けた場合（０以外）、ｂ・ｈ³の値が６５０で評価がＤのモデルが存在し、ｂ・ｈ³の値を上げれば上げる程、評価は悪化する。よって、ｂ・ｈ³≦７００が好ましく、更に好ましくはｂ・ｈ³≦６５０である。

図５（Ｃ）は、錘部２１の質量ｍ及びリブ２０のｂ・ｈ³の値と、各モデルのｂ・ｈ³／ｍ⁴の値と、を示した図である。薄塗り部分は、図５（Ａ)の薄塗り部分と図５（Ｂ)の薄塗り部分とがオーバーラップする部分であり、つまり、一次振動モードの固有値（固有振動数）が２５００Ｈｚ以上で、打音の響き、大きさの評価結果がＡ又はＢのモデルであり、打音が良好なモデルを示す。同図からｂ・ｈ³／ｍ⁴の値が０．２０未満のモデルでは打音が良好なものが無い。よって、ｂ・ｈ³／ｍ⁴の値が０．２０以上であることが必要である。

ｂ・ｈ³／ｍ⁴の上限値について検討すると、打音が良好なモデルの中では錘部２１の質量が２ｇで、リブ２０のｂ・ｈ³の値が５０のモデルの値が３．１３で最大値であるが、錘部２１の質量が２ｇの５つのモデルのｂ・ｈ³／ｍ⁴の推移と、図５（Ａ）の固有振動数及び図５（Ｂ)の打音の響き、大きさの評価結果の推移との関係を見ると、もう少し大きな値でも許容されると推測される。錘部２１の質量が２ｇでリブ２０のｂ・ｈ³の値が２００のモデルでは、ｂ・ｈ³／ｍ⁴の値が１２．５０で、固有振動数は許容範囲であるが、打音の響き、大きさの評価がＣであるモデルである。よって、ｂ・ｈ³／ｍ⁴の値は、３．１３と１２．５０との間をとって、８．００未満であれば打音が良好であると考えられる。

Claims (3)

1. フェース部と、クラウン部と、ソール部及びサイド部を含むソール・サイド部と、を備えた中空のゴルフクラブヘッドにおいて、
   前記ソール部においてトウ側からヒール側に延設されたリブと、
   前記ソール部において前記リブよりもバック側に設けられ、前記ソール部の振動の振幅を増大させる錘部と、を備え、
   前記ソール部の一次振動モードの固有振動数が２５００Ｈｚ以上であり、
   前記錘部の質量ｍ（ｇ）が、１≦ｍ＜６であり、
   前記リブは、幅がｂ（ｍｍ）、高さがｈ（ｍｍ）の方形の断面形状を有し、
   ０．２０≦ｂ・ｈ³／ｍ⁴＜８．００、
   であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
2. 前記ソール・サイド部が、
   前記フェース部側から前記バック側に向かって順に、フェース部側厚肉領域、薄肉領域、及び、バック側厚肉領域を有し、
   前記リブと前記錘部とが、前記薄肉領域に配置されていることを特徴とする請求項１に記載のゴルフクラブヘッド。
3. ヘッド体積が４００ｃｃ以上であることを特徴とする請求項１に記載のゴルフクラブヘッド。

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