JP5608372B2 - 耐熱性カタラーゼ - Google Patents
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Description
1)ペニシリウム属に属する微生物が産生する耐熱性カタラーゼ、
2)ペニシリウム属に属する微生物が、ペニシリウム・ピノフィラムである、1)に記載の耐熱性カタラーゼ、
3)分子量が約80kDaである、1)又は2)に記載の耐熱性カタラーゼ、
4)フミコーラ・グリゼアが産生する耐熱性カタラーゼ、
5)分子量が約80kDaである、4)に記載の耐熱性カタラーゼ、
6)以下の(i)、(ii)、及び(iii)から選択されるタンパク質:
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列を含んでなるタンパク質;
(ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質;
(iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質、
7)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列からなる耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質、
8)配列番号2に記載のアミノ酸配列の−1〜−42番の配列、又は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の−1〜−42番の配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列をN末端側に有する、6)又は7)に記載のタンパク質、
9)以下の(i)、(ii)、及び(iii)から選択されるタンパク質:
(i)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1〜684番の配列を含んでなるタンパク質;
(ii)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1〜684番の配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質;
(iii)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1〜684番の配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。
10)配列番号4に記載のアミノ酸配列の1〜684番の配列からなる耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質、
11)配列番号4に記載のアミノ酸配列の−1〜−32番の配列、又は、配列番号4に記載のアミノ酸配列の−1〜−32番の配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列をN末端側に有する、9)又は10)に記載のタンパク質、
12)以下の(i)、(ii)、及び(iii)から選択されるDNA:
(i)6)〜8)のいずれか一に記載のタンパク質をコードするDNA;
(ii)配列番号1に記載の塩基配列の1〜2403番の配列を含んでなるDNA;
(iii)配列番号1に記載の塩基配列の1〜2403番の配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、
13)配列番号1に記載の塩基配列の1〜2403番の配列からなるDNA、
14)12)又は13)に記載のDNAから、イントロン配列を除去したDNA、
15)イントロン配列が、配列番号1に記載の塩基配列の322〜372番、599〜651番、1068〜1113番、又は、1279〜1326番の配列から選択される1以上の配列である、14)に記載のDNA、
16)12)〜15)のいずれか一に記載のDNAから、シグナル配列をコードする塩基配列を除去したDNA、
17)シグナル配列をコードする塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列の1〜126番の配列である、16)に記載のDNA、
18)以下の(i)、(ii)、及び(iii)から選択されるDNA:
(i)9)〜11)のいずれか一に記載のタンパク質をコードするDNA;
(ii)配列番号3に記載の塩基配列の1〜2749番の配列を含んでなるDNA;
(iii)配列番号3に記載の塩基配列の1〜2749番の配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、
19)配列番号3に記載の塩基配列の1〜2749番の配列からなるDNA、
20)18)又は19)に記載のDNAから、イントロン配列を除去したDNA、
21)イントロン配列が、配列番号3に記載の283〜463番、667〜747番、771〜846番、1008〜1160番、1218〜1270番、又は1842〜1895番の配列から選択される1以上の配列である、20)に記載のDNA、
22)18)〜21)に記載されるDNAから、シグナル配列をコードする塩基配列を除去したDNA、
23)シグナル配列をコードする塩基配列が、配列番号3に記載の1〜96番の配列である、22)に記載のDNA、
24)12)〜17)のいずれか一に記載のDNAを含んでなる発現ベクター、
25)12)〜17)のいずれか一に記載のDNA又は24)に記載の発現ベクターで形質転換された宿主微生物、
26)宿主微生物が、糸状菌である、25)に記載の宿主微生物、
27)糸状菌が、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フミコーラ属、トリコデルマ属、又はアクレモニウム属に属する糸状菌から選択される糸状菌である、26)に記載の宿主微生物、
28)25)〜27)のいずれか一に記載の宿主微生物を培養し、培養物から耐熱性カタラーゼを採取することを特徴とする、耐熱性カタラーゼの製造方法、
29)18)〜23)のいずれか一に記載のDNAを含んでなる発現ベクター、
30)18)〜23)のいずれか一に記載のDNA又は29)に記載の発現ベクターで形質転換された宿主微生物、
31)宿主微生物が、糸状菌である、30)に記載の宿主微生物、
32)糸状菌が、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フミコーラ属、トリコデルマ属、又はアクレモニウム属に属する糸状菌から選択される糸状菌である、31)に記載の宿主微生物、
33)30)〜32)のいずれか一に記載の宿主微生物を培養し、培養物から耐熱性カタラーゼを採取することを特徴とする、耐熱性カタラーゼの製造方法、
に関する。
本明細書において、「保存的置換」とは、1もしくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
ポテトデキストロース寒天培地で生育させたペニシリウム・ピノフィラムを、シュークロース50g/L、麦芽エキス20g/L、酵母エキス5g/Lより成る培地30mLを入れた200mLの三角フラスコに植菌し、26℃で5日間振とう培養した後、得られた培養液から遠心分離により菌体を除き、培養上清液を得た。得られた培養上清液中のカタラーゼについて、そのカタラーゼ活性(耐熱性)を特許文献6の実施例4に開示された方法で測定した結果、70℃で30分間保存後の活性残存率は50%であった。以上の結果から、ペニシリウム・ピノフィラムは耐熱性のカタラーゼを産生していると判断した。
実施例1に記載の方法で得られたペニシリウム・ピノフィラムの培養上清液に最終濃度1mol/Lになるように硫酸アンモニウムを溶解させた後、本溶液をあらかじめ50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)中1mol/L硫酸アンモニウムで平衡化させた疎水カラムPhenyl Sepharose HP 26/10(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)に通液させることにより吸着させた。次に、本疎水カラムに吸着されたタンパク質を50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)中1mol/L硫酸アンモニウムから50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)への直線勾配溶出法により溶出させ、分画した。分画した溶出液のカタラーゼ活性を実施例1に記載の方法により測定し、活性を示した画分を回収した。回収した活性画分に最終濃度1mol/Lになるように硫酸アンモニアを添加し、上記と同様の方法で疎水カラムにより再クロマトグラフィを実施した。得られた活性画分を限外ろ過することにより濃縮脱塩した後、最終濃度50mmol/Lとなるようにリン酸緩衝液(pH8.0)を添加した。続いて本溶液を、あらかじめ50mmol/Lリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化した陰イオン交換カラムMonoQ(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)に通液し、タンパク質を吸着させた。吸着させたタンパク質を50mmol/Lリン酸緩衝液(pH8.0)から50mmol/Lリン酸緩衝液(pH8.0)中1mol/L NaClへの直線勾配溶出法により溶出させ分画した。分画した溶出液のカタラーゼ活性(耐熱性)を実施例1に記載の方法により測定し、活性を示した画分を回収した。回収した活性画分をSDS−PAGEにて分析したところ、約80kDaの単一なバンドを示したので、本バンドに由来するタンパク質が耐熱性カタラーゼであると判断した。本耐熱性カタラーゼをSDS−PAGEにより分離した後、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜にブロットし、N末端のアミノ酸配列を解析したところ、次の配列が得られた。
DDSNASSETEAFLSEFYLNDNDAYLTTDVGG(配列番号5)
3−1)ゲノムDNAライブラリーの作製
ペニシリウム・ピノフィラムの菌体より、堀内らの方法[H.Horiuchi et. al., J. Bacteriol., 170, 272-278, (1988)]に従ってゲノムDNAを単離・精製した。単離したゲノムDNAを制限酵素Sau3AIにより部分消化した。これをファージベクター・EMBL3クローニングキット(ストラタジーン社製)のBamHIアームに、ライゲーションキットVer.2(タカラバイオ社製)を用いて連結させた。これをエタノール沈澱後、TE緩衝液に溶解した。連結混合物の全量をMaxPlaxλ packerging kit(エピセンターテクノロジー社製)を用い、ファージ粒子を形成させ、大腸菌XL1-blue MRA (P2)株に感染させた。この方法により1.1×104個のファージから成るゲノムDNAライブラリーが得られた。
既知のカタラーゼの保存領域の配列を基に以下のプライマーを作製した。
PカタラーゼF:GAGGCCGGCAACTACCCNGARTGGRA(配列番号6)
PカタラーゼR:CCTGCTCGGTCTCGGCRAARWARTT(配列番号7)
実施例3−1において作製したファージプラークを、ハイボンドN+ナイロントランスファーメンブラン(アマシャム社製)に転写し、アルカリ変性後、5倍濃度SSC(SSC:15mmol/Lクエン酸3ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム)で洗浄し、乾燥させてDNAを固定した。ハイブリダイゼーションは、1時間のプレハイブリダイゼーション(42℃)の後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識プローブを添加し、4時間(42℃)ハイブリダイゼーションを行った。プローブの洗浄は6mol/L尿素、0.4%SDS添加0.5倍濃度SSCで2回、2倍濃度SSCで2回行った。
Harbor Laboratory Press.1989)に従い、宿主大腸菌としてLE392を用いて行った。まず、LE392をLB−MM培地(1%ペプトン、0.5%イーストエキス、0.5%塩化ナトリウム、10mmol/L硫酸マグネシウム、0.2%マルトース)で一晩培養した。これにシングルプラーク由来のファージ溶液を感染させ、LB−MM培地で一晩培養した。これに、塩化ナトリウムを1mol/Lに、そしてクロロホルムを0.8%になるよう加え、大腸菌の溶菌を促進させた。遠心分離により、菌体残渣をのぞき、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱(10%PEG6000)からファージ粒子を回収した。ファージ粒子はSDS存在下、プロティナーゼKで消化し、これをフェノール処理、エタノール沈澱化によりファージDNAを回収した。
以上のように調製したDNAはECLダイレクトシステムを用い、サザンブロット解析を行った。実施例3−2のPCR増幅断片をプローブにハイブリダイゼーションを行った結果、約7kbのPstI断片が染色体DNAと共通のハイブリダイゼーションパターンを示した。
PCNF:ATGCGAGGATTATACTCCCTC(配列番号8)
PCNR:CTACTCATCCACAGCGAATCG(配列番号9)
増幅されたDNAをTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)により、pCR2.1-TOPOプラスミドベクターに挿入し、プラスミドpPCNを得た。得られたプラスミドpPCNにより大腸菌(Escherichia coli)TOP10株(インビトロジェン社)を形質転換することによりEscherichia coli TOP10株/pPCNを得た。
上記の方法によりペニシリウム・ピノフィラムのゲノムDNAより単離された全長の耐熱性カタラーゼ遺伝子PCNは配列番号1に示された2403bpの塩基からなっていた。本塩基配列より推定されるアミノ酸配列と既知のカタラーゼのアミノ酸配列との比較及びイントロンの保存配列を基に、本遺伝子は配列番号1の322〜372番、599〜651番、1068〜1113番、1279〜1326番に示される4つのイントロンが含まれていると推定された。本塩基配列より推定される耐熱性カタラーゼのアミノ酸配列は配列番号2に示される通りであった。また、配列番号2のアミノ酸配列の1番〜31番の配列は、実施例2に示したペニシリウム・ピノフィラムより精製した耐熱性カタラーゼのN末アミノ酸配列と完全に一致したため、配列番号2のアミノ酸配列の−1〜−42番の配列をシグナル配列であると推定し、本アミノ酸配列がコードされる配列番号1の1〜126番の塩基配列をシグナル配列がコードされる塩基配列と推定した。
フミコーラ・グリセアの培養上清液を、実施例1と同様の方法で調製した。得られた培養上清液中のカタラーゼについて、そのカタラーゼ活性(耐熱性)を実施例1の方法で測定した結果、70℃で30分間保存後の活性残存率は、57%であった。以上の結果から、フミコーラ・グリセアは耐熱性カタラーゼを産生していると判断した。
実施例4に記載の方法で得られたフミコーラ・グリセアの培養上清液に最終濃度1mol/Lになるように硫酸アンモニウムを溶解させた後、本溶液をあらかじめ50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)中1mol/L硫酸アンモニウムで平衡化させた疎水カラムPhenyl
Sepharose HP 26/10(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)に通液させることにより吸着させた。次に、本疎水カラムに吸着されたタンパク質を50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)中1mol/L硫酸アンモニウムから50mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)への直線勾配溶出法により溶出させ分画した。分画した溶出液のカタラーゼ活性(耐熱性)を実施例1に記載の方法により測定し、活性を示した画分を回収した。回収した活性画分に最終濃度1mol/Lになるように硫酸アンモニアを添加し、上記と同様の方法で疎水カラムにより再クロマトグラフィを実施した。得られた活性画分を限外ろ過することにより濃縮脱塩した後、最終濃度50mmol/Lとなるように酢酸緩衝液(pH4.0)を添加した。続いて本溶液を、あらかじめ50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)で平衡化した陽イオン交換カラムMonoS(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)に通液した。非吸着画分にカタラーゼ活性が検出されたため、非吸着画分を活性画分として回収した。回収した活性画分をSDS−PAGEにて分析したところ、約80kDaの単一なバンドを示したので、本バンドに由来するタンパク質が耐熱性カタラーゼであると判断した。本耐熱性カタラーゼをSDS−PAGEにより分離した後、PVDF膜にブロットし、N末端のアミノ酸配列を解析したところ、次の配列が得られた。
QDTTSGQSPLAAYEVDDSTG(配列番号10)
6−1)ゲノムDNAライブラリーの作製
実施例3−1に記載の方法で、フミコーラ・グリセアのゲノムDNAライブラリーを調製した。
糸状菌及び酵母由来カタラーゼの保存領域の配列を基に以下のプライマーを作製した。
HカタラーゼF:GTNCGNTTYTCNACTGT(配列番号11)
HカタラーゼR:AARAANACNGGNTTRTTGTT(配列番号12)
[配列番号12中、下線で示す記号「N」(12番)はデオキシイノシンを意味する]
HカタラーゼF及びHカタラーゼRをプライマーとして使用し、ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、Ex Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて実施した。PCRは、98℃で10秒、アニールを55℃で30秒、伸長反応を72℃で15秒間の30サイクル実施するプログラムで実施した。増幅された300bpのDNA断片を、TOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)により、添付のプロトコールに従ってpCR2.1-TOPOプラスミドベクターに挿入し、プラスミドTOPO−Hカタラーゼを得た。
実施例3−3に記載の方法で、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングした結果、1個の陽性クローンを得た。得られた陽性クローンについてサザンブロット解析を行った結果、約7kbのXhoI断片と約4kbのBamHI断片が染色体DNAと共通のハイブリダイゼーションパターンを示した。これらXhoI断片とBamHI断片をpUC118にクローン化し、それぞれプラスミドpUC−HCN−XhoIとpUC−HCN−BamH1を得た。これらのプラスミドの塩基配列を解析した結果、XhoI断片には配列番号3の塩基配列の616番から3’末端までの配列が、BamHI断片には5’末端から配列番号3の塩基配列の1675番の配列が確認され、耐熱性カタラーゼ遺伝子断片が含まれていた。これらの塩基配列を結合させることにより全長の耐熱性カタラーゼ遺伝子の塩基配列を確定させた。フミコーラ・グリセア由来のカタラーゼ遺伝子HCNをサブクローニングするために、フミコーラ・グリセアのゲノムDNAを鋳型にして、以下のプライマーセット(HCNF及びHCNR)によりPCRを実施し、HCN遺伝子を増幅した。
HCNF:ATGAACAGAGTCACGAATCTC(配列番号13)
HCNR:TCAAAAAACAAAGGCACCAAG(配列番号14)
増幅されたDNAをTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社製)により、pCR2.1-TOPOプラスミドベクターに挿入し、プラスミドpHCNを得た。得られたプラスミドpHCNにより大腸菌(Escherichia coli)TOP10株(インビトロジェン社)を形質転換することによりEscherichia coli TOP10株/pHCNを得た。
上記の方法によりフミコーラ・グリセアのゲノムDNAより単離された全長の耐熱性カタラーゼ遺伝子HCNは配列番号3に示された2749bpの塩基からなっていた。本塩基配列より推定されるアミノ酸配列と既知のカタラーゼのアミノ酸配列との比較及びイントロンの保存配列を基に、本遺伝子は配列番号3の塩基配列の283〜463番、667〜747番、771〜846番、1008〜1160番、1218〜1270番、1842〜1895番に示される6つのイントロンが含まれていると推定された。本塩基配列より推定される耐熱性カタラーゼのアミノ酸配列は配列番号4に示される通りであった。また、配列番号4のアミノ酸配列の1〜20番の配列は、実施例5に示したフミコーラ・グリセアより精製した耐熱性カタラーゼのN末アミノ酸配列と完全に一致したため、配列番号4のアミノ酸配列の−1〜−32番のアミノ酸配列をシグナル配列であると推定し、本アミノ酸配列がコードされる配列番号3の塩基配列の1〜96番の配列をシグナル配列がコードされる塩基配列と推定した。
アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラス(Aspergillus niger var. macrosporus)を宿主とした組換えPCNの発現は、アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスにおいて著量発現されているプロクターゼB遺伝子のプロモーターとターミネーターとの間に、PCN遺伝子を挿入した発現ベクターを用いて実施した。本発現ベクターは、以下の手順により調製した。
アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスの菌体より、堀内らの方法[H.Horiuchi et. al., J. Bacteriol., 170, 272-278, (1988)]に従ってゲノムDNAを単離・精製した。単離したゲノムDNAをSau3AIにより部分消化した。これをファージベクターλEMBL3クローニングキット(ストラタジーン社製)のBamHIアームに、ライゲーションキットVer.2(タカラバイオ社製)を用いて連結させた。これをエタノール沈澱後、TE緩衝液に溶解した。連結混合物の全量をMaxPlaxλ packerging kit(エピセンターテクノロジー社製)を用い、ファージ粒子を形成させ、大腸菌XL1-blue MRA(P2)株に感染させた。この方法により1.25×105個のファージから成るゲノムDNAライブラリーが得られた。
アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスのゲノムDNAライブラリーについて、プロクターゼB遺伝子の翻訳領域をプローブとしたサザンブロッティングを実施することにより、プロクターゼB遺伝子のプロモーター及びターミネーター領域を含んだクローンを単離した。プロクターゼB遺伝子の翻訳領域はアスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスのゲノムDNAを鋳型にし、特開平5−68570号公報に記載されたプロクターゼB遺伝子の翻訳領域の5’末端及び3’末端配列を基に設計したプライマー(proctaseB−NとproctaseB−C)を用いて、PCRにより増幅した。
proctaseB−N:ATGGTCGTCTTCAGCAAAACC(配列番号15)
proctaseB−C:CTAAGCCTGAGCGGCGAATCC(配列番号16)
実施例7−1において作製したファージプラークを、ハイボンドN+ナイロントランスファーメンブラン(アマシャム社製)に転写し、アルカリ変性後、5倍濃度SSC(SSC:15mmol/Lクエン酸3ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム)で洗浄し、乾燥させてDNAを固定した。ハイブリダイゼーションは、1時間のプレハイブリダイゼーション(42℃)の後、実施例に7−2に記載の方法で調製したプローブを添加し、20時間(42℃)ハイブリダイゼーションを行った。プローブの洗浄は6mol/L尿素、0.4%SDS添加0.5倍濃度SSCで2回、2倍濃度SSCで2回行った。プローブの洗浄を行ったナイロン膜は、検出溶液に1分間浸したあと、同社製ハイパーフィルムECLに感光させ、8個の陽性クローンを得た。
Harbor Laboratory Press.1989)に従い、宿主大腸菌としてLE392を用いて行った。まず、LE392を、LB−MM培地(1%ペプトン、0.5%イーストエキス、0.5%塩化ナトリウム、10mmol/L硫酸マグネシウム、0.2%マルトース)で一晩培養した。これにシングルプラーク由来のファージ溶液を感染させ、LB−MM培地で一晩培養した。これに、塩化ナトリウムを1mol/Lに、そしてクロロホルムを0.8%になるように加え、大腸菌の溶菌を促進させた。遠心分離により、菌体残渣をのぞき、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱(10%PEG6000)からファージ粒子を回収した。ファージ粒子はSDS存在下、プロティナーゼKで消化し、これをフェノール処理、エタノール沈澱化によりファージDNAを回収した。
実施例7−3に記載した方法で調製したプラスミドpPROB/119E.Xから、プロクターゼB遺伝子の翻訳領域を削除し、本遺伝子のプロモーターの3’末端とターミネーター領域の5’側末端とが、XbaI認識配列で結合したベクターを発現ベクターpPTB−EXとした。pPTB−EXは、pPROB/119E.Xを鋳型として、プロクターゼB遺伝子のプロモーターの3’側末端としたプライマー(proctaseBNxba)、ターミネーターの5’側末端をプライマー(proctaseBCxba)としたインバースPCRにより調製した。
proctaseBNxba:GGTCTAGAATGTCAAGCAAGAGAGT(配列番号17)
proctaseBCxba:GGTCTAGAATCAACCACTGAAGTGGA(配列番号18)
尚、両プライマー5’側末端にはXbaI認識配列を付加した。PCRは、Primestar MAX DNA POLYMERASE(タカラバイオ社製)を用いて、(98℃、10秒間)・(55℃、5秒間)・(72℃、60秒間)の反応を30サイクル行った。その結果、約7kbのDNAが増幅された。PCR反応液はQIAQUICK PCR PURIFICATION KIT(キアゲン社製)を用いてDNAの精製を行い、50μLのTEバッファーに溶出し、得られたDNA断片をXbaIで制限処理した後、ライゲーションキットVer.2(タカラバイオ社製)を用いて再連結し、発現ベクターpPTB−EXとした。得られたプラスミドの塩基配列を解析し、インバースPCRによる変異が入っていないことを確認した。
実施例3に記載の方法で単離したPCN遺伝子を、発現ベクターpPTB−EXのXbaIサイトに挿入し、組換えPCN発現用ベクターpPTPCNを構築した。PCN遺伝子翻訳領域の5’側末端及び3’側末端にXbaI認識配列を付加するために、pPCNを鋳型として、PCN遺伝子の翻訳領域の5’側末端及び3’側末端にXbaI認識配列を付加したプライマーPCN−XbaIPtNとPCN−XbaIPtCを用いてPCRを行った。
PCN−XbaIPtN:GGTCTAGAGGTCAAAATGCGAGGATTATACTCCCT(配列番号19)
PCN−XbaIPtC:GGTCTAGACTACTCATCCACAGCGAATCGG(配列番号20)
PCRは、Primestar MAX DNA POLYMERASE(タカラバイオ社製)、(98℃、10秒間)・(55℃、5秒間)・(72℃、60秒間)の反応を30サイクルで行った。その結果、約2.3kbのDNAが増幅された。PCR反応液はQIAQUICK PCR PURIFICATION KIT(キアゲン社製)を用いてDNAの精製を行い50μLのTEバッファーに溶出し、得られたDNA断片をXbaIで制限処理した後、同じくXbaIで消化した後に脱リン酸化処理したpPTB−EXとライゲーションキットVer.2(タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpPTPCNを得た(配列番号21、図3)。本プラスミドに挿入されたPCNのDNA配列を解析し、PCRにより変異が導入されていないことを確認した。
アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスの胞子をサペック培地−N(0.1%K2HPO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.05%KCl、0.001%FeSO4・2H2O、3%シュークロース、1.5%Purified Agar、pH5.5〜6.0)に0.188%グルタミン酸ナトリウム及び3%KClO3を添加した培地に塗布した。30℃にて5〜7日間培養した後に得られたコロニーを、サペック培地のN源をNO3、NH4もしくはグルタミン酸とする培地にそれぞれレプリカし30℃、5〜7日間培養した。レプリカしたコロニーのうち、NH4及びグルタミン酸をN源とする培地では生育するが、NO3をN源とする培地では生育しない株をniaD欠損株Nia2株として単離した。
アンクルら[Uncle,S.E., Cambell,E.I., Punt,P.J., Hawker,K.L., Contreras,R.,
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Nia−N:ATGGCGACTGTCACTGAGGTG(配列番号22)
Nia−C:TTAGAAGAAATGAAGGTCCGA(配列番号23)
PCRはアスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスのゲノムDNAを鋳型にして、LA PCRTM KIT Ver2.1(タカラバイオ社製)を用いて、94℃1分の後、(94℃、30秒間)・(55℃、30秒間)・(72℃、3分間)のサイクルを30サイクル行い最後に72℃、7分間処理することにより、実施した。その結果、約3kbのDNAが増幅された。増幅された3kbのDNA断片を、ECLダイレクトシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて標識し、プローブとした。
アスペルギルス・ニガー バラエティ マクロスポーラスNia2株をS培地(3.0%グルコース、0.1%ポリペプトン、1%イーストエキス、0.14%硫酸アンモニウム、0.2%リン酸カリウム、0.03%硫酸マグネシウム、pH6.8)で30℃、24時間培養し、遠心分離(3500rpm、10分)によって菌体を回収した。得られた菌体を0.5mol/Lシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(10mg/mL βグルクロニダーゼ、3mg/mLキチナーゼ、3mg/mLザイモラーゼ、0.5mol/Lシュークロース)に懸濁した。30℃、60分間振とうし、菌糸をプロトプラスト化させた。脱脂綿によりこの懸濁液を濾過した後、2500rpm、10分間遠心してプロトプラストを回収し、SUTCバッファー(17.1%シュークロース、10mmol/L Tris−HCl pH7.5、10mmol/L CaCl2)で洗浄した。以上のようにして調製したプロトプラストを100μLのSUTCバッファーで再懸濁した後、pPTPCN7.5μL(1μg/μL)とpPTnia118 2.5μL(1μg/μL)とを添加し、氷上で5分間静置した。次に400μLのPEG溶液(60%PEG4000、10mmol/L Tris−HCl pH7.5、10mmol/L CaCl2)を添加し、氷上に20分静置した後、SUTCバッファーを10mL添加し2500rpm、10分間遠心した。遠心分離したプロトプラストを1mLのSUTCバッファーに懸濁した後、4000rpm、5分間遠心して、最終的に100μLのSUTCバッファーに懸濁した。
以上の処理をしたプロトプラストをサペック再生培地(0.085%NaNO3、0.1%K2HPO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.05%KCl、0.001%FeSO4・2H2O、17.1%シュークロース、1.5%Purified Agar、pH5.5〜6.0)上に軟寒天とともに重層し、30℃、5〜7日間培養し形成したコロニーを形質転換体とした。
得られた形質転換体をP培地(1.0%でんぷん、6.0%脱脂大豆粕、1.0%コーンスティープリカー、0.3%硫酸アンモニウム、1%炭酸カルシウム)にて28℃、6日間培養した。培養後の上清をSDS−PAGEにより解析したところ、組換えPCNに由来する分子量約80kDaのバンドが観測された株(No.16株)を得た。No.16株の培養上清と、Nia2株を同様に培養し得られた培養上清について、実施例1に記載の方法でカタラーゼ活性を測定した。その結果、表1に記載のとおりNo.16は親株の77倍以上の活性を示し、組換えPCNが発現したことが確認された。
実施例8−4で得られた形質転換体No.16株の培養上清をSDS−PAGEに供し、ミリポア社製PVDF膜(Immobilon−PSQ)に転写した。このPVDF膜をクマシーブリリアントブルーで染色し、約80kDaのタンパク質がブロットされた部分を切り取り、Model492アミノ酸シーケンサーに供し、アミノ末端側11残基のアミノ酸配列を解読した。その配列は以下に示されるとおりであった。
DDSNASSETEA(配列番号5の1〜11番)
このアミノ酸配列はペニシリウム・ピノフィラム由来PCNのN末端アミノ酸配列と同一であったことから、約80kDaのタンパク質が組換えPCNであることが確認された。
実施例1に記載のとおり、ペニシリウム・ピノフィラムの産生する天然のPCNの熱安定性は、50%であった。実施例1に記載の方法で、実施例8−4に記載の方法で得た組換えPCNの熱安定性を評価した結果、その安定性は71.3%であった。以上の結果から、組換えPCNの熱安定性は、天然のPCNのそれと比較して顕著に向上することが明らかとなった。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
配列番号21の塩基配列は、プラスミドpPTPCNである。
配列番号6の記号「N」(18番)、配列番号11の記号「N」(3、6、12番)、配列番号12の記号「N」(6、9番)は、それぞれ、任意の塩基を表し、配列番号12の記号「N」(12番)は、デオキシイノシンを表す。
Claims (14)
- 以下の(i)、(ii)、及び(iii)から選択されるタンパク質:
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列を含んでなるタンパク質;(ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質;
(iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなり、かつ耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。 - 配列番号2に記載のアミノ酸配列の1〜692番の配列からなる耐熱性カタラーゼ活性を有するタンパク質。
- 配列番号2に記載のアミノ酸配列の−1〜−42番の配列、又は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の−1〜−42番の配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列をN末端側に有する、請求項1又は2に記載のタンパク質。
- 以下の(i)及び(ii)から選択されるDNA:
(i)請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするDNA;
(ii)配列番号1に記載の塩基配列の1〜2403番の配列を含んでなるDNA。 - 配列番号1に記載の塩基配列の1〜2403番の配列からなるDNA。
- 請求項4又は5に記載のDNAから、イントロン配列を除去したDNA。
- イントロン配列が、配列番号1に記載の塩基配列の322〜372番、599〜651番、1068〜1113番、又は、1279〜1326番の配列から選択される1以上の配列である、請求項6に記載のDNA。
- 請求項4〜7のいずれか一項に記載のDNAから、シグナル配列をコードする塩基配列を除去したDNA。
- シグナル配列をコードする塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列の1〜126番の配列である、請求項8に記載のDNA。
- 請求項4〜9のいずれか一項に記載のDNAを含んでなる発現ベクター。
- 請求項4〜9のいずれか一項に記載のDNA又は請求項10に記載の発現ベクターで形質転換された宿主微生物。
- 宿主微生物が、糸状菌である、請求項11に記載の宿主微生物。
- 糸状菌が、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フミコーラ属、トリコデルマ属、又はアクレモニウム属に属する糸状菌から選択される糸状菌である、請求項12に記載の宿主微生物。
- 請求項11〜13のいずれか一項に記載の宿主微生物を培養し、培養物から耐熱性カタラーゼを採取することを特徴とする、耐熱性カタラーゼの製造方法。
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