JP2012187102A - 新規なプロテアーゼ遺伝子、組換え体dna及びプロテアーゼの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】醤油及び酵素分解調味料等の原料に存在するタンパク質を分解することができる新規プロテアーゼ、該プロテアーゼをコードする新規遺伝子、該遺伝子を含む組換え体DNA、該組換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体及び該形質転換体又は形質導入体を用いたプロテアーゼの製造法を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ活性を有するタンパク質等、該タンパク質等をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、及び、該形質転換体を培養し、得られる培養物からプロテアーゼを回収することを特徴とする該プロテアーゼの製造方法。
【選択図】図11
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ活性を有するタンパク質等、該タンパク質等をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、及び、該形質転換体を培養し、得られる培養物からプロテアーゼを回収することを特徴とする該プロテアーゼの製造方法。
【選択図】図11
Description
本発明は、新規なプロテアーゼ遺伝子、組換え体DNA、及びプロテアーゼの製造法に関する。
麹カビであるアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)およびアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)は、古くから日本における醸造食品の製造に用いられてきた糸状菌であり、ともに産業上非常に重要な微生物である (非特許文献1)。
このうち、アスペルギルス・オリゼーは醤油、味噌、日本酒の醸造など幅広い用途に用いられている。なかでもアスペルギルス・オリゼーRIB40株については、そのゲノム解析が実施され、2005年に公開されている(非特許文献2)。一方アスペルギルス・ソーヤは、主として醤油醸造に用いられる微生物であり、本菌に関してのゲノム解析は、本願出願の時点において公開されているものはない。
しょうゆ醸造において麹カビの生産する数多くの酵素は、原料分解という重要な役割を担っている。なかでもプロテアーゼは複数の異なった性質の酵素群が協調して働くことで、原料中のタンパク質を分解・可溶化させる働きをしているため、しょうゆ醸造にとって極めて重要である。(非特許文献1、3)麹カビのエンド型プロテアーゼとしては、酸性プロテアーゼ アスペルギロペプシン I(EC3.4.23.18)、中性プロテアーゼ(EC3.4.24.27)、デューテロライシン(中性プロテアーゼII)(EC3.4.24.39)およびアルカリプロテアーゼ(EC3.4.21.63)などが知られている。エキソ型プロテアーゼとしては、酸性カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.5)、ロイシルアミノペプチダーゼ(LAP)のようなアミノペプチダーゼ(3.4.11)やジペプチダーゼなどが知られている(非特許論文3)。しょうゆの生産性と品質の向上をはかるためには、これら既知プロテアーゼの生産量を増やす方法も考えられるが、これまでに知られていない新規プロテアーゼを積極的に活用していくことも、有効な手段と成りうると考えられる。そこで我々は、ゲノム情報が未知であるアスペルギルス・ソーヤのゲノム解析を実施し、目的とするプロテアーゼ遺伝子を見出し、さらにその遺伝子産物の酵素化学的な解析を行うことで、しょうゆ及び酵素分解調味液等の醸造に重要なプロテアーゼ遺伝子を得る事を試み、本発明を完成させるに至った。
醤油の科学と技術、栃倉辰六郎編集
Nature; 438, 1157−1161 (2005)
ものと人間の文化史138 麹(こうじ)、一島 英治 著
本発明は、しょうゆ及び酵素分解調味料等の原料に存在するタンパク質を分解することができる新規プロテアーゼ、該プロテアーゼをコードする新規遺伝子、該遺伝子を含む組換え体DNA、該組換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体及び該形質転換体又は形質導入体を用いたプロテアーゼの製造法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題について種々検討した結果、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)由来のプロテアーゼ遺伝子を単離し、該遺伝子を酵母および麹菌にて発現し、該発現タンパク質のプロテアーゼ活性を確認し、本発明を完成した。
即ち、第1の発明は、以下の(a)又は(b)のタンパク質である。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質
第2の発明は、以下の(a)又は(b)のタンパク質(プロテアーゼ)をコードするプロテアーゼ遺伝子である。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ活性を有するタンパク質
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、プロテアーゼ活性を有するタンパク質
第3の発明は、以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロテアーゼ遺伝子である。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示される塩基配列からなるDNA(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示される塩基配列からなるDNA(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、プロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
第4の発明は、上記プロテアーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする新規な組換え体DNAである。第5の発明は、上記組換え体DNAを含む形質転換体又は形質導入体である。第6の発明は、上記形質転換体又は形質導入体を培地に培養し、培養物からプロテアーゼを採取することを特徴とするプロテアーゼの製造法である。
本発明により、新規プロテアーゼ、プロテアーゼ遺伝子、該遺伝子を含む組換えベクター及び形質転換体を提供することができる。また、本発明によりプロテアーゼの生産方法を提供することができる。その結果、麹菌によるプロテアーゼの効率的な生産が行えるようになる。さらに、上記プロテアーゼのタンパク質工学的な改良が行えるようになるとともに、食品加工用の酵素生産、醸造食品の生産に用いる微生物の改良にも用いることができる。
本発明の新規タンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8で表される各アミノ酸配列からなるタンパク質であり、プロテアーゼ活性を有する。該タンパク質は、例えば、アスペルギルス・ソーヤなどの麹菌の培養液もしくは菌体破砕液より得ることができる。また、該プロテアーゼは、上記麹菌等からクローニングしたプロテアーゼ遺伝子を適当な宿主−ベクター系で発現させることにより得られる。
該タンパク質は、プロテアーゼ活性を有する限り、配列番号2,4,6又は8で表される各アミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されていてもよい。さらに、プロテアーゼ活性を有する限り、上記の各配列番号で表されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその部分断片であってもよい。
2つのアミノ酸配列又は塩基配列における配列同一性を決定するために、配列は比較に最適な状態に前処理される。例えば、一方の配列にギャップを入れることにより、他方の配列とのアラインメントの最適化を行う。その後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩基が比較される。第一の配列における、ある部位に、第二の配列の相当する部位と同じアミノ酸残基又は塩基が存在する場合、それらの配列は、その部位において同一である。2つの配列における配列同一性は、配列間での同一である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基)数に対する百分率で示される。
上記の原理に従い、2つのアミノ酸配列又は塩基配列における配列同一性は、Karlin及びAltshulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268,1990及びProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993)により決定される。このようなアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltshulらによって開発された(J.Mol.Biol.215:403−410,1990)。さらに、Gapped BLASTはBLASTより感度良く配列同一性を決定するプログラムである(Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997)。上記のプログラムは、主に与えられた配列に対し、高い配列同一性を示す配列をデータベース中から検索するために用いられる。これらは、例えば米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
配列間の配列同一性として、Tatiana A. Tatusovaらによって開発されたBLAST 2 Sequencesソフトウェア(FEMS Microbiol Lett.,174:247−250,1999)を用いて決定した値を用いる。このソフトウェアは米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能であり、入手も可能である。用いるプログラム及びパラメーターは以下のとおりである。アミノ酸配列の場合、blastpプログラムを用いパラメーターとしては、Open gap:11 and extension gap:1 penalties,gap x_dropoff:50,expect:10,word size:3,Filter:ONを用いる。塩基配列の場合、blastnプログラムを用いパラメーターとしては、Reward for a match:1,Penalty for amismatch:−2, Strand option:Both strands, Open gap:5 and extension gap:2 penalties,gap x_dropoff:50,expect:10,word size:11,Filter:ONを用いる。いずれのパラメーターも、ウェブサイト上でデフォルト値として用いられているものである。
ただし、上記BLASTソフトウェアで有意な配列同一性を示す配列が見つからない場合には、さらに高感度なFASTAソフトウェア(W.R.Pearson and D.J.Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448,1988)を用いて配列同一性を示す配列をデータベースから検索することもできる。FASTAソフトウェアは、例えば、ゲノムネットのウェブサイトで利用できる。この場合も、パラメーターはデフォルト値を用いる。例えば、塩基配列についての検索を行う場合は、データベースにnr−ntを用い、ktup値は6を用いる。ただし、いずれの場合も、全体の30%以上、50%以上又は70%以上のオーバーラップを示さない場合は、機能的に相関しているとは必ずしも推定されないため、2つの配列間の配列同一性を示す値としては用いない。
本発明の新規プロテアーゼ遺伝子及びタンパク質(プロテアーゼ)は本明細書の開示内容に基づき当業者であれば容易に単離・調製することができる。例えば、アスペルギルス・ソーヤ、さらに具体的には、アスペルギルス・ソーヤNBRC4239株(寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部、寄託番号ID:NBRC4239)が挙げられる。これら菌体を、該プロテアーゼの生産を誘導する条件の培地で培養したものから、常法により全RNAを回収する。培地としては、例えば、小麦フスマを用いることができる。上記培地で適当な時間、例えば、36時間静置培養したのち、菌体を回収し液体窒素を満たした乳鉢中に適量、例えば、0.3gを移し、乳棒を用いて粉砕し、Cathalaらの方法(DNA,2:329−335,1983)で全RNAを調製する。
こうして得られた全RNAを鋳型として、RT−PCRを行う。プライマーとしては、本発明のプロテアーゼ遺伝子を増幅することのできる組み合せであればどのような組み合せのものを用いてもよいが、例えば、後述の配列番号9から配列番号16までの配列のオリゴヌクレオチドプライマーを用いることができる。RT−PCRは、市販のキット、例えば、PrimeScript RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて常法により行うことができる。得られた本発明のプロテアーゼ遺伝子を含むDNAは、例えば、常法によりプラスミドに組み込むことができる。
このようにして得られたDNAの塩基配列は、サンガー法等の方法により、市販の試薬及びDNAシークエンサーを用いて決定することができる。得られる本発明のプロテアーゼ遺伝子を含むDNA及び該DNAによりコードされるプロテアーゼの例をそれぞれ配列番号1から配列番号8に例示する。
プロテアーゼ遺伝子は、プロテアーゼ活性を有する限り、配列番号2,4,6,又は8で表される各アミノ酸配列において1若しくは数個(2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしているものであってもよい。このような遺伝子は、後述するハイブリダイゼーションによる選択のほか、種々の公知の変異導入方法によって得ることもできる。
プロテアーゼ遺伝子は、ハイブリダイゼーションによる選択法を用いて得ることもできる。遺伝子源としては、例えば、アスペルギルス・ソーヤがあげられる。これらの生物から、常法によりRNA又はゲノムDNAを調製し、プラスミド又はファージに組み込み、ライブラリーを調製する。
続いて、プローブとして用いる核酸を検出法に応じた方法で標識する。プローブとして用いる核酸は、十分な特異性を得られる長さであればよく、例えば、配列番号1,3,5又は7に記載の配列の少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、最も好ましくは450塩基以上の部分又は全体を含むものが挙げられる。
次いで、標識したプローブにストリンジェントな条件でハイブリダイズするクローンを上記ライブラリーから選択する。ハイブリダイゼーションは、プラスミドライブラリーならコロニーハイブリダイゼーションによって、ファージライブラリーならプラークハイブリダイゼーションによって行うことができる。
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドのシグナルが非特異的なハイブリッドのシグナルと明確に識別される条件であり、使用するハイブリダイゼーションの系と、プローブの種類、配列及び長さによって異なる。条件は、ハイブリダイゼーションの温度を変えること、洗浄の温度及び塩濃度を変えることにより決定可能である。例えば、非特異的なハイブリッドのシグナルまで強く検出されてしまう場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を上げるとともに、必要に応じて洗浄の塩濃度を下げることにより特異性を上げることができる。
また、特異的なハイブリッドのシグナルも検出されない場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を下げるとともに、必要に応じて洗浄の塩濃度を上げることにより、ハイブリッドを安定化させることができる。このような最適化は、本技術分野の研究者が容易に行いうるものである。
ストリンジェントな条件の具体例としては、例えば、ハイブリダイゼーションは、5×SSC、1.0%(W/V)核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、0.1%(W/V)N−ラウロイルサルコシン、0.02%(W/V)SDSを用い一晩(8〜16時間程度)で行い、洗いは、0.5×SSC、0.1%(W/V)SDS、好ましくは0.1×SSC、0.1%(W/V)SDSを用い、15分間、2回行う。ハイブリダイゼーションと洗いの温度は、52℃以上、好ましくは57℃以上、さらに好ましくは62℃以上、最も好ましくは67℃以上である。
さらに、配列番号1,3,5,又は7に記載の各塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列同一性を示す塩基配列は、本発明のプロテアーゼと実質的に同等の活性を有するタンパク質をコードしていると考えられる。このようなDNAは、上記のハイブリダイゼーションを指標に得ることもできるが、ゲノム塩基配列解析等によって得られた機能未知のDNA群や公共データベースのなかから、例えば、前述のBLASTソフトウェアを用いた検索により発見することも容易である。このような検索は、本技術分野の研究者が通常用いている方法である。
得られたDNAがプロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードしていることは、後述のように、適当な宿主において対象遺伝子を過剰発現させたのち、破砕・部分精製等の処理を行ったのちプロテアーゼ活性を検出することで確認することができる。
本発明の組換えベクターは、プロテアーゼ遺伝子を適当なベクター上に連結することにより得ることができる。ベクターとしては、形質転換する宿主中でプロテアーゼを生産させうるものであればどのようなものでも用いることができ、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、染色体組み込み型、人工染色体などのベクターを用いることができる。
ベクターには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。
マーカー遺伝子としては、例えば、ura3、niaD、およびpyrGのような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子や、アンピシリンやカナマイシン、オリゴマイシンなどの薬剤に対する抵抗遺伝子などが挙げられる。
また、組換えベクターは、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発現することのできるプロモーター又はその他の制御配列、例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等を含むことが望ましい。
プロモーターとしては、例えば、GAL1プロモーター、tef1プロモーター、lacプロモーター等が挙げられる。また、精製のためのタグをつけることもできる。具体的には、プロテアーゼ遺伝子の下流に適宜リンカー配列を接続し、ヒスチジンをコードする塩基配列を6コドン以上接続することにより、ニッケルカラムを用いた精製を可能にすることができる。
本発明の形質転換体は、宿主を、組換えベクターで形質転換することにより得られる。宿主としては、プロテアーゼを生産することができるものであれば特に限定されず、例えば、チゴサッカロミセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)等の酵母、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等の糸状菌、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)等の細菌であってもよい。尚、tef1プロモーターのような構成的プロモーターを使用することにより強制発現株を作製することができ、この強制発現株によって制御対象のタンパク質を強制的に発現させることができる。
形質転換は、宿主に応じて公知の方法で行うことができる。宿主に酵母を用いる場合は、例えば、酢酸リチウムを用いるMethods Mol.Cell.Biol.,5,255−269(1995)に記載の方法が利用できる。糸状菌を用いる場合は、例えば、プロトプラスト化した後ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いるMol.Gen.Genet.,218:99−104,1989に記載の方法が利用できる。細菌を用いる場合は、例えば、エレクトロポレーションによるMethods Enzymol.,194:182−187,1990に記載の方法が利用できる。
本発明のプロテアーゼの製造法は、プロテアーゼ遺伝子を発現させた形質転換体を培養し、常法によって、得られる培養物からプロテアーゼのタンパク質を効率よく回収することからなる。培地及び培養方法は、宿主の種類と組換えベクター中の発現制御配列によって適当なものを選ぶ。宿主がアスペルギルス・ソーヤであり、発現制御配列がamyBプロモーターである場合、例えば、マルトースを炭素源とする液体最少培地で培養することにより、本発明のプロテアーゼを高発現させることがでる。宿主が大腸菌であり、発現制御配列がlacプロモーターである場合、例えば、IPTGを含有する液体培地で培養することにより、該プロテアーゼを生産させることができる。
また、プロテアーゼが菌体内又は菌体表面に生産された場合は、菌体を培地から分離し、その菌体を適当に処理することでプロテアーゼを得ることができる。例えば、チゴサッカロミセス・ルキシーの菌体表面に生産された場合、破砕した後、Triton X−100、Tween−20、あるいはNonidet P−40等の非イオン性の界面活性剤を低濃度で作用させ、遠心分離した上清よりプロテアーゼを回収することができる。培養液中にプロテアーゼが生産された場合は、遠心分離・ろ過等により菌体を除去することによりプロテアーゼを得ることができる。何れの場合も、硫安分画、各種クロマトグラフィー、アルコール沈殿、限外ろ過等を用いた常法により、得られたプロテアーゼをさらに純度の高いものとして得ることもできる。
以下、実施例に即して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの記載によって、なんら制限されるものではない。
[4種プロテアーゼ遺伝子のcDNAクローニングと酵母発現系を用いたプロテアーゼ活性の確認]
[Total RNAの調製]
アスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株の分生子約10,000,000個を5.0g の小麦フスマ (フスマ:水 = 5:4) に植え、30℃にて36時間培養した。培養終了後、約300から400mgの菌体を液体窒素により急速に凍結したのち、冷却しておいた乳鉢と乳棒で破砕した。この破砕菌体100mgを800μLのISOGEN (ニッポンジーン) にて室温で5分間処理し、クロロフォルム処理およびアルコール沈殿を経てTotal RNAを得た。この検体を、RNase Inhibitor(タカラバイオ) の存在下でRNase free のDNase I (タカラバイオ) にて4時間処理することにより、混入しているゲノムDNAを出来うる限り分解した。さらにDNase I処理した Total RNAを、QIAGEN社のRNeasy カラムにて精製し、精製Total RNAを得た。
[Total RNAの調製]
アスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株の分生子約10,000,000個を5.0g の小麦フスマ (フスマ:水 = 5:4) に植え、30℃にて36時間培養した。培養終了後、約300から400mgの菌体を液体窒素により急速に凍結したのち、冷却しておいた乳鉢と乳棒で破砕した。この破砕菌体100mgを800μLのISOGEN (ニッポンジーン) にて室温で5分間処理し、クロロフォルム処理およびアルコール沈殿を経てTotal RNAを得た。この検体を、RNase Inhibitor(タカラバイオ) の存在下でRNase free のDNase I (タカラバイオ) にて4時間処理することにより、混入しているゲノムDNAを出来うる限り分解した。さらにDNase I処理した Total RNAを、QIAGEN社のRNeasy カラムにて精製し、精製Total RNAを得た。
[RT−PCRによる新規プロテアーゼ遺伝子(cDNA)の増幅]
精製Total RNA 100 ngを鋳型とし、タカラバイオ社のPrimeScript RTase を用い全量20μLにて、42℃、60分間の逆転写反応を行った。プライマーはOligo dTプライマーとRandom 6mersを1:1 の割合にて混合したものを反応系に2.0μL添加した。反応終了後、反応液を70℃で15分間処理することにより逆転写酵素を失活させた。次にPCRによる各プロテアーゼ遺伝子のcDNAの増幅を行った。反応には正確性の高いPrimeSTAR Max DNA polymerase (タカラバイオ) を用い、液量は50μLで反応を行った。1.0μLの逆転写反応液を鋳型として添加し、プライマーは終濃度がそれぞれ1.0μMになるよう反応系に添加した。逆転写反応を行わない反応系では、反応系に5.0 ng の精製Total RNAを添加しPCR反応を行った。PCR反応の温度条件は、98℃10秒ののち、98℃10秒、 60℃10秒、72 ℃ 20秒を38サイクルにて実施した。オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせは、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅時は配列番号9と10を、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅時は配列番号11と12を、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅時には配列番号13と14を、そして新規プロテアーゼ4遺伝子の増幅時は配列番号15と16をそれぞれ用いた。
精製Total RNA 100 ngを鋳型とし、タカラバイオ社のPrimeScript RTase を用い全量20μLにて、42℃、60分間の逆転写反応を行った。プライマーはOligo dTプライマーとRandom 6mersを1:1 の割合にて混合したものを反応系に2.0μL添加した。反応終了後、反応液を70℃で15分間処理することにより逆転写酵素を失活させた。次にPCRによる各プロテアーゼ遺伝子のcDNAの増幅を行った。反応には正確性の高いPrimeSTAR Max DNA polymerase (タカラバイオ) を用い、液量は50μLで反応を行った。1.0μLの逆転写反応液を鋳型として添加し、プライマーは終濃度がそれぞれ1.0μMになるよう反応系に添加した。逆転写反応を行わない反応系では、反応系に5.0 ng の精製Total RNAを添加しPCR反応を行った。PCR反応の温度条件は、98℃10秒ののち、98℃10秒、 60℃10秒、72 ℃ 20秒を38サイクルにて実施した。オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせは、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅時は配列番号9と10を、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅時は配列番号11と12を、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅時には配列番号13と14を、そして新規プロテアーゼ4遺伝子の増幅時は配列番号15と16をそれぞれ用いた。
RT−PCRによる4種プロテアーゼ遺伝子の増幅結果を図1に示した。いずれの遺伝子についても逆転写反応を実施した時のみ、特異的な増幅産物を得ることができた。新規プロテアーゼ2遺伝子と、新規プロテアーゼ3遺伝子および新規プロテアーゼ4遺伝子を増幅させた系列では単一の産物だけが増幅され、いずれの産物のサイズもゲノム解析データより予測された各遺伝子のcDNAのサイズとほぼ等しいものであった。また、新規プロテアーゼ1遺伝子を増幅させた系列では複数の産物が増幅されていが、目的とする遺伝子の予測cDNAのサイズとほぼ等しいサイズの産物が、メインバンドのひとつとして検出されていた。そのため新規プロテアーゼ1遺伝子については、ゲノム解析データにて予想されていたサイズと等しい大きさのPCR産物を、ゲル抽出により精製しDNAシーケンス解析を行った。
[pUC118へのサブクローニングとDNAシーケンスの解析]
前記RT−PCRの反応液48μLをアガロースゲルにより電気泳動しバンドを切り出した後、DNAフラグメントをGene Clean II Kit(Q・バイオジーン)を用いて精製した。精製したDNAフラグメントを平滑末端化・リン酸化したのち、HincII 処理後に脱リン酸化してあるpUC118にライゲーションした。平滑末端クローニングにはMighty Cloning Kit Blunt End (タカラバイオ)を用いた。このプラスミドを大腸菌DH5αに導入後、50μg/mLの濃度のアンピシリンを含むLB培地にて一晩培養したのち、QIAprep Mini Prep Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。プラスミドにインサートが導入されているかを制限酵素処理およびPCR法にて確認した。インサートが導入されていたプラスミドについてはインサートのDNAシーケンス解析を行った。その結果、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅産物では配列番号1に、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅産物では配列番号3に、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅産物では配列番号5に、そして新規プロテアーゼ4遺伝子の増幅産物では配列番号7に示す配列をそれぞれ得ることができた。
前記RT−PCRの反応液48μLをアガロースゲルにより電気泳動しバンドを切り出した後、DNAフラグメントをGene Clean II Kit(Q・バイオジーン)を用いて精製した。精製したDNAフラグメントを平滑末端化・リン酸化したのち、HincII 処理後に脱リン酸化してあるpUC118にライゲーションした。平滑末端クローニングにはMighty Cloning Kit Blunt End (タカラバイオ)を用いた。このプラスミドを大腸菌DH5αに導入後、50μg/mLの濃度のアンピシリンを含むLB培地にて一晩培養したのち、QIAprep Mini Prep Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。プラスミドにインサートが導入されているかを制限酵素処理およびPCR法にて確認した。インサートが導入されていたプラスミドについてはインサートのDNAシーケンス解析を行った。その結果、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅産物では配列番号1に、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅産物では配列番号3に、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅産物では配列番号5に、そして新規プロテアーゼ4遺伝子の増幅産物では配列番号7に示す配列をそれぞれ得ることができた。
上記の各配列番号のcDNAの塩基配列についてアスペルギルス・ソーヤのゲノム上の対応する配列と比較することで、ゲノム上に存在する対象遺伝子のエクソン‐イントロン構造を調べた(図2)。その結果、新規プロテアーゼ1遺伝子には2個の、新規プロテアーゼ2遺伝子には4個の、そして新規プロテアーゼ4遺伝子では2個のイントロンが存在することが分かった。また、新規プロテアーゼ3遺伝子についてはイントロンを有していない遺伝子であることがわかった。
[BLASTプログラムを用いた相同性検索]
上記の各配列番号に示す配列についてBLASTプログラムを用いてnrデータベースに対する相同性を調べたところ、70%以上の同一性を示す配列は見出されなかった。また、配列番号1,3,5,及び7に示した塩基配列より推定されたアミノ酸配列を配列番号2,4,6,及び8に記した。これらアミノ酸配列についても塩基配列と同様にBLASTプログラムを用いてntデータベースに対する相同性を調べたところ、70%以上の同一性を示す配列は見出されなかった。以上のことから、本発明により見出された4種の遺伝子とその産物は、いずれも新規のものであることが確認された。
上記の各配列番号に示す配列についてBLASTプログラムを用いてnrデータベースに対する相同性を調べたところ、70%以上の同一性を示す配列は見出されなかった。また、配列番号1,3,5,及び7に示した塩基配列より推定されたアミノ酸配列を配列番号2,4,6,及び8に記した。これらアミノ酸配列についても塩基配列と同様にBLASTプログラムを用いてntデータベースに対する相同性を調べたところ、70%以上の同一性を示す配列は見出されなかった。以上のことから、本発明により見出された4種の遺伝子とその産物は、いずれも新規のものであることが確認された。
[Pfam Scanを用いた各遺伝子産物のモチーフ解析]
各対象遺伝子の予測遺伝子産物のアミノ酸配列を、タンパク質モチーフデータベースの検索方法のひとつであるPfam Scan(Nucleic Acids Res.;Database Issue 36,D281,2008)により解析し、対象とする遺伝子産物が有しているモチーフを調べた。その結果、新規プロテアーゼ1遺伝子および新規プロテアーゼ2遺伝子の産物は酸性プロテアーゼのモチーフを有していた。また、新規プロテアーゼ3遺伝子産物はファミリーS15のセリンプロテアーゼが含まれるα・β−スーパーファミリーのモチーフを有しおり、新規プロテアーゼ4遺伝子産物はファミリーM35の金属プロテアーゼのモチーフを有していた。
各対象遺伝子の予測遺伝子産物のアミノ酸配列を、タンパク質モチーフデータベースの検索方法のひとつであるPfam Scan(Nucleic Acids Res.;Database Issue 36,D281,2008)により解析し、対象とする遺伝子産物が有しているモチーフを調べた。その結果、新規プロテアーゼ1遺伝子および新規プロテアーゼ2遺伝子の産物は酸性プロテアーゼのモチーフを有していた。また、新規プロテアーゼ3遺伝子産物はファミリーS15のセリンプロテアーゼが含まれるα・β−スーパーファミリーのモチーフを有しおり、新規プロテアーゼ4遺伝子産物はファミリーM35の金属プロテアーゼのモチーフを有していた。
[対象遺伝子産物のプロテアーゼ活性確認のための酵母発現系の構築]
本発明の新規プロテアーゼのタンパク質加水分解能を確認するため、対象遺伝子の酵母発現系を構築した。本発現系を用いて生産したプロテアーゼの活性を評価する場合、宿主由来のプロテアーゼが大量に存在している状態では、目的とするタンパク質の活性を評価することが困難であることが予想された。そのためには、目的タンパク質をヒスチジンタグ融合タンパク質として生産させ、アフィニティーカラムによる精製を行うことで宿主由来のプロテアーゼのバックグランドを低減できると考えられた。その際、本発明の目的タンパク質の中には、成熟時に切断されるPro配列を有しているものがあると考えられたため、その位置を予想したうえでヒスチジンタグの付加位置を決定する必要があった。そこで、各プロテアーゼが菌体外分泌シグナルやPro領域がどの位置に存在しているかを、相同性のあるタンパク質と比較し予想した (図3)。新規プロテアーゼ1は酵母の酸性プロテアーゼであるYapsinと相同性がありN末端側に菌体外分泌シグナルと、Pro領域を有すると予想された。新規プロテアーゼ2は、酸性プロテアーゼであるPepsinおよびYapsinと低い相同性があり、N末端側に菌体外分泌シグナルとPro領域が存在すると予想された。新規プロテアーゼ3はDienelactone hydrolaseと相同性があり、ファミリーS15のセリンプロテアーゼとも低い相同性があった。本タンパク質には、Pro領域は存在せずN末端領域に菌体外分泌シグナルだけが存在すると予想された。また、新規プロテアーゼ4は、ファミリーM35に分類される金属プロテアーゼ、デューテロライシンCと相同性を有しており、N末端側に菌体外分泌シグナルとPro領域を有していると予想された。以上のように、いずれのタンパク質もN末端領域に菌体外分泌シグナルおよびPro領域を有していることから、N末端に精製用のヒスチジンタグを付加すると最終的にはタグが切断除去されてしまう危険性があると思われた。そのため、活性の確認に使用する発現系ではヒスチジンタグを各タンパク質のC-末端側に付加することができる、pYES2/CTベクター(インビトロジェン)を用いることにした。
本発明の新規プロテアーゼのタンパク質加水分解能を確認するため、対象遺伝子の酵母発現系を構築した。本発現系を用いて生産したプロテアーゼの活性を評価する場合、宿主由来のプロテアーゼが大量に存在している状態では、目的とするタンパク質の活性を評価することが困難であることが予想された。そのためには、目的タンパク質をヒスチジンタグ融合タンパク質として生産させ、アフィニティーカラムによる精製を行うことで宿主由来のプロテアーゼのバックグランドを低減できると考えられた。その際、本発明の目的タンパク質の中には、成熟時に切断されるPro配列を有しているものがあると考えられたため、その位置を予想したうえでヒスチジンタグの付加位置を決定する必要があった。そこで、各プロテアーゼが菌体外分泌シグナルやPro領域がどの位置に存在しているかを、相同性のあるタンパク質と比較し予想した (図3)。新規プロテアーゼ1は酵母の酸性プロテアーゼであるYapsinと相同性がありN末端側に菌体外分泌シグナルと、Pro領域を有すると予想された。新規プロテアーゼ2は、酸性プロテアーゼであるPepsinおよびYapsinと低い相同性があり、N末端側に菌体外分泌シグナルとPro領域が存在すると予想された。新規プロテアーゼ3はDienelactone hydrolaseと相同性があり、ファミリーS15のセリンプロテアーゼとも低い相同性があった。本タンパク質には、Pro領域は存在せずN末端領域に菌体外分泌シグナルだけが存在すると予想された。また、新規プロテアーゼ4は、ファミリーM35に分類される金属プロテアーゼ、デューテロライシンCと相同性を有しており、N末端側に菌体外分泌シグナルとPro領域を有していると予想された。以上のように、いずれのタンパク質もN末端領域に菌体外分泌シグナルおよびPro領域を有していることから、N末端に精製用のヒスチジンタグを付加すると最終的にはタグが切断除去されてしまう危険性があると思われた。そのため、活性の確認に使用する発現系ではヒスチジンタグを各タンパク質のC-末端側に付加することができる、pYES2/CTベクター(インビトロジェン)を用いることにした。
[各プロテアーゼ遺伝子の酵母発現用ベクターpYES2/CTへの導入]
各プロテアーゼのcDNAが導入されたプラスミドを鋳型とし、PCR 反応を行いcDNAの両端に制限酵素認識部位を導入したDNAフラグメントを増幅した。このときに、目的タンパク質の サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)内での翻訳効率を向上させるための、開始子コドンの上流側への9 塩基のアデニンの付加も同時に行った。反応には正確性の高いPrimeSTAR Max DNA polymerase (タカラバイオ) を用い、液量は50μLで反応を行った。各cDNAをサブクローニングしたプラスミド1ngを鋳型として添加し、プライマーは終濃度がそれぞれ1.0μMになるよう反応系に添加した。オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせは、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅時は配列番号17と18を、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅時は配列番号19と20を、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅時には配列番号21と22を、そして新規プロテアーゼ4増幅時は配列番号23と24をそれぞれ用い、反応を行った。得られたDNAフラグメントを、Gene Clean II Kit(Q・バイオジーン) を用いてゲル抽出し、各DNAフラグメント末端の制限酵素認識部位に対応する酵素にて消化した。これを、各フラグメントの制限酵素サイトに対応するように処理したpYES2/CTベクター (インビトロジェン) にライゲーションした。これらのプラスミドを、実施例1に記したcDNAクローニングの時と同じ方法にて大腸菌への導入し、プラスミドの抽出と選抜を行なった。インサートが導入されていたプラスミドについてはDNAシーケンス解析を行い、ベクター中にインサートが正しく導入されているかを確認した。ベクターに正しくインサートが導入されていた酵母発現用プラスミドをそれぞれ、pASA1−1、pASA1−2、pASABH−1、およびpASM35−1と名づけた。
各プロテアーゼのcDNAが導入されたプラスミドを鋳型とし、PCR 反応を行いcDNAの両端に制限酵素認識部位を導入したDNAフラグメントを増幅した。このときに、目的タンパク質の サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)内での翻訳効率を向上させるための、開始子コドンの上流側への9 塩基のアデニンの付加も同時に行った。反応には正確性の高いPrimeSTAR Max DNA polymerase (タカラバイオ) を用い、液量は50μLで反応を行った。各cDNAをサブクローニングしたプラスミド1ngを鋳型として添加し、プライマーは終濃度がそれぞれ1.0μMになるよう反応系に添加した。オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせは、新規プロテアーゼ1遺伝子の増幅時は配列番号17と18を、新規プロテアーゼ2遺伝子の増幅時は配列番号19と20を、新規プロテアーゼ3遺伝子の増幅時には配列番号21と22を、そして新規プロテアーゼ4増幅時は配列番号23と24をそれぞれ用い、反応を行った。得られたDNAフラグメントを、Gene Clean II Kit(Q・バイオジーン) を用いてゲル抽出し、各DNAフラグメント末端の制限酵素認識部位に対応する酵素にて消化した。これを、各フラグメントの制限酵素サイトに対応するように処理したpYES2/CTベクター (インビトロジェン) にライゲーションした。これらのプラスミドを、実施例1に記したcDNAクローニングの時と同じ方法にて大腸菌への導入し、プラスミドの抽出と選抜を行なった。インサートが導入されていたプラスミドについてはDNAシーケンス解析を行い、ベクター中にインサートが正しく導入されているかを確認した。ベクターに正しくインサートが導入されていた酵母発現用プラスミドをそれぞれ、pASA1−1、pASA1−2、pASABH−1、およびpASM35−1と名づけた。
[発現用ベクターの酵母INVSc1株への導入]
pYES2/CTにアスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ遺伝子を組み込んだ発現用ベクターとpYES2/CT(ネガティブコントロール)を、ウラシル要求性株であるサッカロミセス・セレビシエ INVSc1株(インビトロジェン)に導入した。形質転換用試薬にはインビトロジェン社のS.c. EasyCompTM Transformation Kitを用いた。形質転換体の選抜にはウラシルを含まないSC (SC Ura−)寒天培地を用いた。
pYES2/CTにアスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ遺伝子を組み込んだ発現用ベクターとpYES2/CT(ネガティブコントロール)を、ウラシル要求性株であるサッカロミセス・セレビシエ INVSc1株(インビトロジェン)に導入した。形質転換用試薬にはインビトロジェン社のS.c. EasyCompTM Transformation Kitを用いた。形質転換体の選抜にはウラシルを含まないSC (SC Ura−)寒天培地を用いた。
[新規プロテアーゼ1、新規プロテアーゼ2、および新規プロテアーゼ3の酵母での発現とプロテアーゼ活性の確認]
3種の遺伝子の発現用ベクターおよびpYES2/CTを導入したサッカロミセス・セレビシエの形質転換体をSC Ura−の寒天培地に植え、30℃で3日間培養しシングルコロニーを分離した。このシングルコロニーを、坂口フラスコに入った120 mLの2%ガラクトースと1%ラフィノースを含むSC Ura−に植え、30℃にて30時間、130 rpmで振とう培養した。培養終了後、培養液を2,000 × gで15分間遠心分離し菌体を回収した。得られた菌体1.2gあたりに4mLの5%グリセロールを含む50 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) を加え懸濁させたのち、2 mLのスクリューキャップ付きポリプロピレンチューブに800μLずつ分注した。ここに懸濁液と等量のガラスビーズ(直径0.5mm)を加えたのち、マルチビーズショッカー(安井機器)により菌体を破砕した。菌体破砕後、10,000 × gで15分間遠心分離を行い菌体の残渣を沈殿として除去し、菌体破砕液を得た。本破砕液4mL に4 mLの1.0 M NaClと40 mMイミダゾールを含む200 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)を加え穏やかに混合したのち、0.2μmの滅菌用フィルターによりろ過した。このろ液を、あらかじめ20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)にて平衡化した、1.0 mLのHis−Trap HPカラム (GEヘルスケア) にアプライしたのち、カラムを20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) 20 mLにて洗浄した。洗浄完了後、500mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) をカラムに流すことによりカラムに結合しているヒスチジンタグ融合タンパク質を溶出させた。このとき、1.0 mLずつ10本の溶出画分を回収した。なお本カラム操作では流速は常に1.0 mL/minに保ち実験を行った。溶出完了後、溶出タンパク質が含まれている溶出フラクションを1つにまとめ、ミリポア社のMicrocon YM−30 (分画分子量 30,000) を用い約100μLまで濃縮した。ここに、400μLの20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.4) を加えたのち、再度Microcon YM−30 を用いて約100 μLまで濃縮した。この濃縮液を回収後、各検体の液量を20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.4)により正確に200μLにあわせた。この溶液を次のプロテアーゼ活性の確認に使用した。
3種の遺伝子の発現用ベクターおよびpYES2/CTを導入したサッカロミセス・セレビシエの形質転換体をSC Ura−の寒天培地に植え、30℃で3日間培養しシングルコロニーを分離した。このシングルコロニーを、坂口フラスコに入った120 mLの2%ガラクトースと1%ラフィノースを含むSC Ura−に植え、30℃にて30時間、130 rpmで振とう培養した。培養終了後、培養液を2,000 × gで15分間遠心分離し菌体を回収した。得られた菌体1.2gあたりに4mLの5%グリセロールを含む50 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) を加え懸濁させたのち、2 mLのスクリューキャップ付きポリプロピレンチューブに800μLずつ分注した。ここに懸濁液と等量のガラスビーズ(直径0.5mm)を加えたのち、マルチビーズショッカー(安井機器)により菌体を破砕した。菌体破砕後、10,000 × gで15分間遠心分離を行い菌体の残渣を沈殿として除去し、菌体破砕液を得た。本破砕液4mL に4 mLの1.0 M NaClと40 mMイミダゾールを含む200 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)を加え穏やかに混合したのち、0.2μmの滅菌用フィルターによりろ過した。このろ液を、あらかじめ20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)にて平衡化した、1.0 mLのHis−Trap HPカラム (GEヘルスケア) にアプライしたのち、カラムを20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) 20 mLにて洗浄した。洗浄完了後、500mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) をカラムに流すことによりカラムに結合しているヒスチジンタグ融合タンパク質を溶出させた。このとき、1.0 mLずつ10本の溶出画分を回収した。なお本カラム操作では流速は常に1.0 mL/minに保ち実験を行った。溶出完了後、溶出タンパク質が含まれている溶出フラクションを1つにまとめ、ミリポア社のMicrocon YM−30 (分画分子量 30,000) を用い約100μLまで濃縮した。ここに、400μLの20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.4) を加えたのち、再度Microcon YM−30 を用いて約100 μLまで濃縮した。この濃縮液を回収後、各検体の液量を20 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.4)により正確に200μLにあわせた。この溶液を次のプロテアーゼ活性の確認に使用した。
[酸性プロテアーゼ活性の確認]
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように超純水に溶解した。この2%ヘモグロビン溶液1000μLに、1250μLの100 mMのグリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0)と150 μLの 超純水を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、100 mM グリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0) により5倍希釈した濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラム溶出液を100 μL加えて混合し、パラフィルムにより小試験管の口を閉じたのち、30℃にて72時間インキュベートした。反応終了後、2.5 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、30分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液1.0 mLを別の小試験管に分取した。ここに4.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと1.0 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分以上静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように超純水に溶解した。この2%ヘモグロビン溶液1000μLに、1250μLの100 mMのグリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0)と150 μLの 超純水を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、100 mM グリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0) により5倍希釈した濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラム溶出液を100 μL加えて混合し、パラフィルムにより小試験管の口を閉じたのち、30℃にて72時間インキュベートした。反応終了後、2.5 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、30分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液1.0 mLを別の小試験管に分取した。ここに4.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと1.0 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分以上静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。
各検体の酸性プロテアーゼ活性の測定結果を図4に示した。新規プロテアーゼ1遺伝子を発現させた系ではインサートの無いベクターを導入したネガティブコントロールと比較し6.5倍、倍高い酸性プロテアーゼ活性が見られた。また、新規プロテアーゼ2遺伝子および新規プロテアーゼ3遺伝子を発現させた系においてもコントロールと比較し、1.7倍および2.5倍高い活性が見られた。以上の通り、いずれの検体のアフィニティークロマトグラフィー精製画分においても、ネガティブコントロールと比較し高い酸性プロテアーゼ活性を有していることがわかった。このことから、新規プロテアーゼ1、新規プロテアーゼ2、および新規プロテアーゼ3は、活性の強さには差があるが、いずれも酸性プロテアーゼ活性を有するタンパク質であることが確認された。
[酸性カルボキシペプチダーゼ活性の確認]
酸性カルボキシペプチダーゼ活性の測定には、キッコーマン(株)製の酸性カルボキシペプチダーゼ活性キットを利用した。濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラムの溶出液を100 mM グリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0) にて8倍に希釈した。この希釈液40μLを400μLの基質溶液に加え、40℃で14時間インキュベートした。反応液に800μLの反応停止液を添加することにより酵素反応を停止し、37℃で5分間インキュベートしたのち、40μLの定量用酵素液を加えさらに20分間37℃でインキュベートした。インキュベート終了後、40μLの定量発色液を添加してさらに37℃で10分間インキュベートし、460nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性カルボキシペプチダーゼ活性を求めた。
酸性カルボキシペプチダーゼ活性の測定には、キッコーマン(株)製の酸性カルボキシペプチダーゼ活性キットを利用した。濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラムの溶出液を100 mM グリシン塩酸緩衝液 (pH 3.0) にて8倍に希釈した。この希釈液40μLを400μLの基質溶液に加え、40℃で14時間インキュベートした。反応液に800μLの反応停止液を添加することにより酵素反応を停止し、37℃で5分間インキュベートしたのち、40μLの定量用酵素液を加えさらに20分間37℃でインキュベートした。インキュベート終了後、40μLの定量発色液を添加してさらに37℃で10分間インキュベートし、460nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性カルボキシペプチダーゼ活性を求めた。
[酸性カルボキシペプチダーゼ活性測定結果]
新規プロテアーゼ3の酸性カルボキシペプチダーゼ活性測定結果を図5に示した。新規プロテアーゼ3遺伝子を発現させた系では、コントロールと比較して2.2倍高い活性を示すことがわかった。本結果は、上記遺伝子の産物がタンパク質をC末端側から加水分解する、カルボキシペプチダーゼ活性を有するタンパク質であることを示唆するものである。
新規プロテアーゼ3の酸性カルボキシペプチダーゼ活性測定結果を図5に示した。新規プロテアーゼ3遺伝子を発現させた系では、コントロールと比較して2.2倍高い活性を示すことがわかった。本結果は、上記遺伝子の産物がタンパク質をC末端側から加水分解する、カルボキシペプチダーゼ活性を有するタンパク質であることを示唆するものである。
[新規プロテアーゼ4の酵母での発現とプロテアーゼ活性の確認]
新規プロテアーゼ4発現用ベクターおよびpYES2/CTを導入したサッカロミセス・セレビシエの形質転換体をSC Ura−の寒天培地に植え、30℃で4日間培養しシングルコロニーを分離した。このシングルコロニーを、20 mLの2%ラフィノースを炭素源としたSC Ura−液体培地3本に植え、25℃にて48時間、180 rpmで振とう培養した。この培養液を、坂口フラスコに入った100mLの200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含み2%ガラクトースと1%ラフィノースを炭素源としたSC Ura-液体培地3本に10 mLずつ加え、30℃、130rpmで40時間振とう培養した。培養終了後、培養液を2,000 × gで15分間遠心分離し菌体を回収した。得られた菌体を1gあたり1.2mLの5%グリセロールを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4、検体・コントロールともに約 6 mL) に懸濁させたのち、2 mLのスクリューキャップ付きポリプロピレンチューブに800μLずつ分注した。ここに懸濁液と等量のガラスビーズ(直径0.5mm)を加えたのち、マルチビーズショッカー(安井機器)により菌体を破砕した。菌体破砕後、20,000 × gで30分間遠心分離を行ったのち、上澄みを0.2μmのフィルターに通し固形物を除去した。この破砕液4 mLを、5.0 mLのHis−Trap HPカラム (GEヘルスケア) にアプライしたのち、カラムを20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) 80 mLにて洗浄した。洗浄完了後、500mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)を25mLカラムに流すことにより、カラムに結合しているしているタンパク質を溶出させた。なお本カラム操作では流速は常に4.0 mL/minに保ち実験を行った。得られた25mLの溶出液を、等量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.0)により2倍希釈したのち、PIACE protein concentrater を用いて1500 μLまで濃縮した。ここに13.5 mLの10mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.0)を加えたのち、再度PIACE protein concentrater を用いて1500 μLまで濃縮した。本操作を2回繰り返したのち、PIACE protein concentraterにより検体を1200μL程度まで濃縮したのち、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)にて、1400μLに正確に定容した。この検体を次の酸性プロテアーゼ活性の確認に用いた。
新規プロテアーゼ4発現用ベクターおよびpYES2/CTを導入したサッカロミセス・セレビシエの形質転換体をSC Ura−の寒天培地に植え、30℃で4日間培養しシングルコロニーを分離した。このシングルコロニーを、20 mLの2%ラフィノースを炭素源としたSC Ura−液体培地3本に植え、25℃にて48時間、180 rpmで振とう培養した。この培養液を、坂口フラスコに入った100mLの200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含み2%ガラクトースと1%ラフィノースを炭素源としたSC Ura-液体培地3本に10 mLずつ加え、30℃、130rpmで40時間振とう培養した。培養終了後、培養液を2,000 × gで15分間遠心分離し菌体を回収した。得られた菌体を1gあたり1.2mLの5%グリセロールを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4、検体・コントロールともに約 6 mL) に懸濁させたのち、2 mLのスクリューキャップ付きポリプロピレンチューブに800μLずつ分注した。ここに懸濁液と等量のガラスビーズ(直径0.5mm)を加えたのち、マルチビーズショッカー(安井機器)により菌体を破砕した。菌体破砕後、20,000 × gで30分間遠心分離を行ったのち、上澄みを0.2μmのフィルターに通し固形物を除去した。この破砕液4 mLを、5.0 mLのHis−Trap HPカラム (GEヘルスケア) にアプライしたのち、カラムを20mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4) 80 mLにて洗浄した。洗浄完了後、500mMイミダゾールと500 mM NaClを含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.4)を25mLカラムに流すことにより、カラムに結合しているしているタンパク質を溶出させた。なお本カラム操作では流速は常に4.0 mL/minに保ち実験を行った。得られた25mLの溶出液を、等量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.0)により2倍希釈したのち、PIACE protein concentrater を用いて1500 μLまで濃縮した。ここに13.5 mLの10mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.0)を加えたのち、再度PIACE protein concentrater を用いて1500 μLまで濃縮した。本操作を2回繰り返したのち、PIACE protein concentraterにより検体を1200μL程度まで濃縮したのち、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)にて、1400μLに正確に定容した。この検体を次の酸性プロテアーゼ活性の確認に用いた。
[新規プロテアーゼ4の酸性プロテアーゼ活性の確認]
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように200 mMのグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0)に溶解した。この2%ヘモグロビン溶液800μLに、1000μLの200 mMのグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0)と100 μLの25 mM 硫酸亜鉛溶液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラム溶出液を100 μL加えて混合し、パラフィルムにより小試験管の口を閉じたのち、40℃にて40時間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液1.0 mLを別の小試験管に分取した。ここに4.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと1.0 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分以上静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように200 mMのグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0)に溶解した。この2%ヘモグロビン溶液800μLに、1000μLの200 mMのグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0)と100 μLの25 mM 硫酸亜鉛溶液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、濃縮・脱塩済みのHis−Trap HPカラム溶出液を100 μL加えて混合し、パラフィルムにより小試験管の口を閉じたのち、40℃にて40時間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液1.0 mLを別の小試験管に分取した。ここに4.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと1.0 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分以上静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。
新規プロテアーゼ4遺伝子産物のアフィニティークロマトグラフィー精製画分の酸性プロテアーゼ活性の測定結果を図6に示した。新規プロテアーゼ4遺伝子産物の精製画分はネガティブコントロールと比べ約2.3倍高い酸性プロテアーゼ活性を有していた。
新規プロテアーゼ遺伝子群のアスペルギルス・ソーヤでの強制発現株作製
麹菌のプロテアーゼ生産能増強を目的とし、配列番号1,3,5および7に示す新規プロテアーゼ遺伝子群を麹菌にて強制発現させた菌株を作製した。新規プロテアーゼ遺伝子のプロモーター部分とその構造遺伝子の間にマーカー遺伝子であるpyrGとtef1プロモーターを挿入し、新規プロテアーゼ遺伝子がtef1プロモーターの支配下となり、構成的に発現するようにした。強制発現株の作製方法は下記の通りである。
麹菌のプロテアーゼ生産能増強を目的とし、配列番号1,3,5および7に示す新規プロテアーゼ遺伝子群を麹菌にて強制発現させた菌株を作製した。新規プロテアーゼ遺伝子のプロモーター部分とその構造遺伝子の間にマーカー遺伝子であるpyrGとtef1プロモーターを挿入し、新規プロテアーゼ遺伝子がtef1プロモーターの支配下となり、構成的に発現するようにした。強制発現株の作製方法は下記の通りである。
[アスペルギルス・ソーヤNBRC4239株のゲノムDNAの調製]
ベクター作製時のFusion PCRの鋳型DNAとして使用するために、下記の方法により麹菌アスペルギルス・ソーヤのゲノムDNAを抽出・精製した。本菌株を、150ml容の三角フラスコに入った40mlのデキストリン−ペプトン培地に植え、30℃、150rpmで3日間培養した。培養終了後、ろ過により菌体を回収し、ペーパータオルで挟み、水分を除いた後、液体窒素を用いて急速に凍結させた。次に、液体窒素を注いで冷却してある乳鉢に凍結した菌体を入れ、液体窒素で冷却してある乳棒を用いて念入りに粉砕した。この粉砕から、Genomic DNA extraction Kit(プロメガ社製)を用いて全DNAを抽出したのち、DNase free のRNase I(ニッポンジーン社製)にて検体を処理し、混入していたRNAを分解し以降の実験に用いた。
[Fusion PCRによる強制発現用ベクターの作製と形質転換]
ベクター作製時のFusion PCRの鋳型DNAとして使用するために、下記の方法により麹菌アスペルギルス・ソーヤのゲノムDNAを抽出・精製した。本菌株を、150ml容の三角フラスコに入った40mlのデキストリン−ペプトン培地に植え、30℃、150rpmで3日間培養した。培養終了後、ろ過により菌体を回収し、ペーパータオルで挟み、水分を除いた後、液体窒素を用いて急速に凍結させた。次に、液体窒素を注いで冷却してある乳鉢に凍結した菌体を入れ、液体窒素で冷却してある乳棒を用いて念入りに粉砕した。この粉砕から、Genomic DNA extraction Kit(プロメガ社製)を用いて全DNAを抽出したのち、DNase free のRNase I(ニッポンジーン社製)にて検体を処理し、混入していたRNAを分解し以降の実験に用いた。
[Fusion PCRによる強制発現用ベクターの作製と形質転換]
強制発現系の概要を図7に示した。まず、相同組換え用の左右のアーム部分(フラグメントL及びR)、tef1プロモーター及び形質転換時のマーカー遺伝子であるpyrG遺伝子(フラグメントP)のDNAフラグメントをPCR法により増幅した。PCRには、KOD FX(東洋紡績社製)を使用し、オリゴヌクレオチドプライマーは配列を表3に記したものを使用した。また、各フラグメントを増幅した際のプライマーの組合せを表4に記した。PCR反応の鋳型には150ngのアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株のゲノムDNAを使用し、反応系は全量50μlで実施した。PCR反応は、94℃、2分の後、94℃10秒、68℃5分を30サイクル行った。得られたDNAフラグメントはアガロースゲル電気泳動にて確認したのち、各DNAフラグメントをQIAquick Gel Extraction Kit (キアゲン社製)を用いて精製した。
精製したLフラグメント1.1μl、Rフラグメント1.1μl、tef1プロモーター3.4μl、及びpyrGマーカーのフラグメント3.4μlを混合しフュージョンPCR用の鋳型とした。次に、フュージョンPCRにより4つのフラグメントを結合させた。PCRにはKOD Fx(東洋紡績社製)を使用した。PCR用のプライマーの配列および組合せは表5および表6に示した通りである。PCR反応の鋳型には、前述の9μlのL、R、tef1及びPの混合液を用い、反応系は全量400μlで実施した。PCR反応は、94℃2分の後、98℃10秒、68℃9分の2ステップサイクルを40サイクル行った。増幅産物の一部を0.8%アガロースゲルにより電気泳動し、強制発現用のベクターカセットが増幅されていることを確認した。確認終了後、残っている反応液全量を0.8%アガロースゲルにより電気泳動し、ゲル抽出によりDNAフラグメントを精製した後、アルコール沈殿によりDNAフラグメントを濃縮した。これを新規プロテアーゼ強制発現用ベクターとした。本ベクターを、アスペルギルス・ソーヤのpyrGマーカーおよびku70遺伝子破壊株であるAsXku70::ptrA株(Mol.Genet.Genomics,275:460,2006)に常法であるプロトプラスト−PEG法(Gene,61,385,1987)を用いて導入した。形質転換体の選抜は、ウリジンを含まず1.2Mソルビトールを含むCzapek−Dox最少培地(3.0% glucose,0.05% KCl,0.2 % NaNO3,0.1% KH2PO4,0.05% MgSO4,0.001% FeSO4,pH 6.0)を利用したpyrGポジティブセレクションを実施し形質転換体を得た。
[形質転換体のPCRによる確認]
作製した形質転換体にベクターが正しく導入されているかを、PCR法により確認した。始めに、強制発現株および宿主株より、実施例2に前述の方法を用いてゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを鋳型とし、表6に記した組合せのオリゴヌクレオチドプライマーを使用しPCRを行った。PCR用の酵素には、KOD FX(東洋紡績株式会社製)を用いた。PCR反応は、94℃2分の後、94℃10秒、68℃9分30秒の2ステップサイクルを40サイクル行った(図8)。いずれの新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株においても、強制発現株の作製に使用した宿主株であるAsXku::ptrA由来のゲノムDNAを鋳型とした時と比較して、pyrGマーカーおよびtef1プロモーターが導入された分、約3kb大きいサイズのPCR産物がメインバンドとして確認された。また、これらの形質転換体ではAsXku::ptr8株で観測されたバンドと同じサイズのPCR産物は確認されなかった。以上のことから、これら形質転換体には正しくベクターが導入されており、核も純化されていることがわかった。
作製した形質転換体にベクターが正しく導入されているかを、PCR法により確認した。始めに、強制発現株および宿主株より、実施例2に前述の方法を用いてゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAを鋳型とし、表6に記した組合せのオリゴヌクレオチドプライマーを使用しPCRを行った。PCR用の酵素には、KOD FX(東洋紡績株式会社製)を用いた。PCR反応は、94℃2分の後、94℃10秒、68℃9分30秒の2ステップサイクルを40サイクル行った(図8)。いずれの新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株においても、強制発現株の作製に使用した宿主株であるAsXku::ptrA由来のゲノムDNAを鋳型とした時と比較して、pyrGマーカーおよびtef1プロモーターが導入された分、約3kb大きいサイズのPCR産物がメインバンドとして確認された。また、これらの形質転換体ではAsXku::ptr8株で観測されたバンドと同じサイズのPCR産物は確認されなかった。以上のことから、これら形質転換体には正しくベクターが導入されており、核も純化されていることがわかった。
[宿主pyrG復元株AskuPB02B株の作製]
本実施例において作製した強制発現株は、pyrGポジティブセレクションにより取得したものであるため、全てpyrG+株となっている。そのため、強制発現株のプロテアーゼ生産能を評価するに当たり、pyrG欠失株であるAsXku70::ptr8株(宿主株)をコントロールとして用いることは適切ではないと考えられる。そのため、宿主株のpyrG遺伝子を復元したAskuPG02B株を作製し、新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株を評価する際のコントロールとして使用することとした。その作製方法は下記の通りである。
本実施例において作製した強制発現株は、pyrGポジティブセレクションにより取得したものであるため、全てpyrG+株となっている。そのため、強制発現株のプロテアーゼ生産能を評価するに当たり、pyrG欠失株であるAsXku70::ptr8株(宿主株)をコントロールとして用いることは適切ではないと考えられる。そのため、宿主株のpyrG遺伝子を復元したAskuPG02B株を作製し、新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株を評価する際のコントロールとして使用することとした。その作製方法は下記の通りである。
配列番号59および配列番号60に記したオリゴヌクレオチドプライマーを用い、野生株のpyrG遺伝子の構造遺伝子、プロモーターおよびターミネーターを含む約6.6kbのDNAフラグメントをPCRにより増幅した。
PCR用酵素にはKOD FX(東洋紡績社製)を使用し、鋳型DNAには150ngのアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株由来ゲノムDNAを用いた。反応系は全量400μlで実施した。PCR反応は、94℃2分の後、98℃10秒、68℃9分の2ステップサイクルを30サイクル行った。増幅産物の一部を0.8%アガロースゲルにて電気泳動を行い、約6.6kbのDNAフラグメントが増幅されていることを確認した。PCR反応による増幅の確認後、残っている反応液全量を0.8%アガロースゲルにより電気泳動し、ゲル抽出によりDNAフラグメントを精製した後、アルコール沈殿によりDNAフラグメントを濃縮した。これをpyrG復元用ベクターとした。本ベクターを、前述のAsXku70::ptrA(宿主株)に常法であるプロトプラスト−PEG法(Gene,61:385,1987)を用いて導入した。形質転換体の選抜は、ウリジンを含まず1.2Mソルビトールを含むCzapek−Dox最少培地を利用したpyrGポジティブセレクションを実施し、AskuPG02B株を得た。
[AskuPG02B株のPCR法による確認]
前記の方法により調製した形質転換体のゲノムDNA約150ngを鋳型とし、配列番号59及び60のオリゴヌクレオチドプライマーを用いPCRを行い、形質転換体中のpyrG遺伝子が復元されているかを調べた。対象として、AsXku70::ptrA株およびアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株のゲノムDNAを鋳型とした反応系を用いた。PRC用の酵素にはKOD FX(東洋紡績株式会社製)を使用し、反応液の全量は20μLとした。PCR反応は、94℃2分の後、94℃10秒、68℃9分のシャトルサイクルを35サイクル行った。その結果を図10に示した。いずれの検体もシングルバンドが検出された。また、形質転換体ではAsku70::ptrA株よりも大きいサイズのバンドが確認され、そのサイズはPCRの鋳型として使用したアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株と同じであった。このことから、形質転換体中のpyrG遺伝子は復元されており、さらに核も純化されていることが確認された。
前記の方法により調製した形質転換体のゲノムDNA約150ngを鋳型とし、配列番号59及び60のオリゴヌクレオチドプライマーを用いPCRを行い、形質転換体中のpyrG遺伝子が復元されているかを調べた。対象として、AsXku70::ptrA株およびアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株のゲノムDNAを鋳型とした反応系を用いた。PRC用の酵素にはKOD FX(東洋紡績株式会社製)を使用し、反応液の全量は20μLとした。PCR反応は、94℃2分の後、94℃10秒、68℃9分のシャトルサイクルを35サイクル行った。その結果を図10に示した。いずれの検体もシングルバンドが検出された。また、形質転換体ではAsku70::ptrA株よりも大きいサイズのバンドが確認され、そのサイズはPCRの鋳型として使用したアスペルギルス・ソーヤ NBRC4239株と同じであった。このことから、形質転換体中のpyrG遺伝子は復元されており、さらに核も純化されていることが確認された。
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のサザンハイブリダイゼーションによる確認]
新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株をサザンハイブリダイゼーションにより確認した。形質転換体およびAsXku::ptrA株のゲノムDNA約5.0μgを制限酵素により37℃で一晩消化を行った後、0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行った。制限酵素としては、新規プロテアーゼ1遺伝子強制発現株の確認ではXbaIを、新規プロテアーゼ2遺伝子強制発現株ではBglIIを新規プロテアーゼ3遺伝子強制発現株の確認ではEcoRIを、新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株の確認ではSspIを使用した。泳動した核酸を、ポジティブ電荷を持つナイロン膜であるハイボンドN+(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にブロットした後、ジコキシゲニン(DIG)−ラベルを行ったプローブを用い、フォルムアミドを含まないハイブリダイゼーションバッファーにて68℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。DIG−ラベルプローブの作製には、DIG PCR Labeling Kit(ロシュダイアグノスティクス社製)を使用し、PCR用の酵素にはExTaq(タカラバイオ社製)を、鋳型には150ngのアスペルギルス・ソーヤNBRC4239株のゲノムDNAを用いた。PCR用プライマーはに示すオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、反応系は全量25μLで実施した。オリゴヌクレオチドプライマーは、表8に示したものを使用した。また、新規プロテアーゼ2および3遺伝子強制発現株確認用のプローブを増幅させる際には、反応系に対し終濃度が5.0%になるようにジメチルスルフォキシドを添加した。
新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のサザンハイブリダイゼーションの結果を図9に記した。いずれの新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株においても、AsXku::ptr8では検出されない高分子量側に存在するバンドが確認され、そのサイズは強制発現用カセットがゲノム中に正しく導入されている場合の理論値と等しいものであった。以上の結果より、新規プロテアーゼ遺伝子強制発現用カセットは、AsXku::ptr8株の目的とする領域に挿入されていると判断した。
新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株をサザンハイブリダイゼーションにより確認した。形質転換体およびAsXku::ptrA株のゲノムDNA約5.0μgを制限酵素により37℃で一晩消化を行った後、0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行った。制限酵素としては、新規プロテアーゼ1遺伝子強制発現株の確認ではXbaIを、新規プロテアーゼ2遺伝子強制発現株ではBglIIを新規プロテアーゼ3遺伝子強制発現株の確認ではEcoRIを、新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株の確認ではSspIを使用した。泳動した核酸を、ポジティブ電荷を持つナイロン膜であるハイボンドN+(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にブロットした後、ジコキシゲニン(DIG)−ラベルを行ったプローブを用い、フォルムアミドを含まないハイブリダイゼーションバッファーにて68℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。DIG−ラベルプローブの作製には、DIG PCR Labeling Kit(ロシュダイアグノスティクス社製)を使用し、PCR用の酵素にはExTaq(タカラバイオ社製)を、鋳型には150ngのアスペルギルス・ソーヤNBRC4239株のゲノムDNAを用いた。PCR用プライマーはに示すオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、反応系は全量25μLで実施した。オリゴヌクレオチドプライマーは、表8に示したものを使用した。また、新規プロテアーゼ2および3遺伝子強制発現株確認用のプローブを増幅させる際には、反応系に対し終濃度が5.0%になるようにジメチルスルフォキシドを添加した。
新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のサザンハイブリダイゼーションの結果を図9に記した。いずれの新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株においても、AsXku::ptr8では検出されない高分子量側に存在するバンドが確認され、そのサイズは強制発現用カセットがゲノム中に正しく導入されている場合の理論値と等しいものであった。以上の結果より、新規プロテアーゼ遺伝子強制発現用カセットは、AsXku::ptr8株の目的とする領域に挿入されていると判断した。
[新規プロテアーゼ遺伝子を強制発現させたアスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ生産能の評価]
新規プロテアーゼ遺伝子の強制発現により麹菌アスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ生産能が増強されているかを下記の方法を用いて評価した。
新規プロテアーゼ遺伝子の強制発現により麹菌アスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ生産能が増強されているかを下記の方法を用いて評価した。
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のしょうゆ麹培養と粗酵素溶液の調製]
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、7gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて40時間(新規プロテアーゼ1および3)もしくは72時間培養(新規プロテアーゼ2および4)した。培養終了後、20mLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH7.5)を加え激しく撹拌したのち、懸濁液を4℃にて一晩静置し菌体外酵素を抽出した。この懸濁液をろ紙(No.2、ADVANTEC社製)にてろ過したのち、ろ液を10,000×gで20分間、4℃にて遠心分離し固形物を除去した。本サンプルを粗酵素溶液とし以降の酵素活性測定に用いた。
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、7gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて40時間(新規プロテアーゼ1および3)もしくは72時間培養(新規プロテアーゼ2および4)した。培養終了後、20mLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH7.5)を加え激しく撹拌したのち、懸濁液を4℃にて一晩静置し菌体外酵素を抽出した。この懸濁液をろ紙(No.2、ADVANTEC社製)にてろ過したのち、ろ液を10,000×gで20分間、4℃にて遠心分離し固形物を除去した。本サンプルを粗酵素溶液とし以降の酵素活性測定に用いた。
[酸性プロテアーゼ活性測定法]
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように20mMグリシン-塩酸緩衝液(pH3.0)に溶解させた。この2%ヘモグロビン溶液1000μLに、850μLの緩衝液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.5) により20倍希釈した粗酵素溶液を150 μL加えて混合し、40℃にて30分間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液0.5 mLを別の小試験管に分取した。ここに2.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと0.5 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
プロテアーゼ活性測定用の酸変性ヘモグロビン (シグマアルドリッチ)を、終濃度が2%となるように20mMグリシン-塩酸緩衝液(pH3.0)に溶解させた。この2%ヘモグロビン溶液1000μLに、850μLの緩衝液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.5) により20倍希釈した粗酵素溶液を150 μL加えて混合し、40℃にて30分間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液0.5 mLを別の小試験管に分取した。ここに2.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと0.5 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の酸性プロテアーゼ活性を求めた。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
[中性プロテアーゼ活性測定法]
ミルクカゼインを終濃度が2%となるように20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)に溶解させた。この2%ミルクカゼイン溶液1000μLに、850μLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.5) により10倍希釈した粗酵素溶液を150 μL加えて混合し、40℃にて30分間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液0.5 mLを別の小試験管に分取した。ここに2.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと0.5 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の中性プロテアーゼ活性を求めた。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
ミルクカゼインを終濃度が2%となるように20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)に溶解させた。この2%ミルクカゼイン溶液1000μLに、850μLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液を小試験管に加えボルテックスミキサーにより混合した。ここに、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 7.5) により10倍希釈した粗酵素溶液を150 μL加えて混合し、40℃にて30分間インキュベートした。反応終了後、2.0 mLの400 mM トリクロロ酢酸を加えて混合し、10分間室温で静置した。この酸変性溶液を、ADVANTEC 5Cのろ紙によりろ過したのち、ろ液0.5 mLを別の小試験管に分取した。ここに2.0 mLの400 mM炭酸ナトリウムと0.5 mLの2倍希釈したフォーリン―チオカルト試薬(=フェノール試薬、超純水により希釈)を加え、室温で30分静置したのち、660nmにおける吸光度を測定することで各検体の中性プロテアーゼ活性を求めた。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株をしょうゆ麹にて培養したときのプロテアーゼ活性の評価結果]
新規プロテアーゼ1遺伝子を強制発現させた系では、コントロールであるAskuPB02B株を用いた系と比較し、中性プロテアーゼ活性は13.4%、酸性プロテアーゼ活性は14.4%と顕著に上昇していた(図11)。新規プロテアーゼ2遺伝子を強制発現させた系では、コントロール株と比較し酸性プロテアーゼ活性については有意な変化は見られなかったが、中性プロテアーゼ活性が8.4%上昇した(図12)。また、新規プロテアーゼ3遺伝子を強制発現させた系では、中性プロテアーゼ活性は4.1%の上昇であったが、酸性プロテアーゼ活性については13.9%の上昇が見られた(図13)。また、新規プロテアーゼ遺伝子4を強制発現させた系では、中性プロテアーゼ活性については変化が見られなかったが、酸性プロテアーゼ活性が13.2%上昇した(図14)。以上結果より、新規プロテアーゼ遺伝子を強制発現させた場合、効果が見られるプロテアーゼの種類は対象遺伝子ごとに異なっているが、いずれの新規プロテアーゼ遺伝子についても麹菌アスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ生産能を増強させる働きがあることが確認された。なかでも酸性プロテアーゼをコードする新規プロテアーゼ1遺伝子の強制発現は、麹菌の酸性プロテアーゼ生産能だけでなく中性プロテアーゼ生産能も向上させることができるという有用な働きがある。
新規プロテアーゼ1遺伝子を強制発現させた系では、コントロールであるAskuPB02B株を用いた系と比較し、中性プロテアーゼ活性は13.4%、酸性プロテアーゼ活性は14.4%と顕著に上昇していた(図11)。新規プロテアーゼ2遺伝子を強制発現させた系では、コントロール株と比較し酸性プロテアーゼ活性については有意な変化は見られなかったが、中性プロテアーゼ活性が8.4%上昇した(図12)。また、新規プロテアーゼ3遺伝子を強制発現させた系では、中性プロテアーゼ活性は4.1%の上昇であったが、酸性プロテアーゼ活性については13.9%の上昇が見られた(図13)。また、新規プロテアーゼ遺伝子4を強制発現させた系では、中性プロテアーゼ活性については変化が見られなかったが、酸性プロテアーゼ活性が13.2%上昇した(図14)。以上結果より、新規プロテアーゼ遺伝子を強制発現させた場合、効果が見られるプロテアーゼの種類は対象遺伝子ごとに異なっているが、いずれの新規プロテアーゼ遺伝子についても麹菌アスペルギルス・ソーヤのプロテアーゼ生産能を増強させる働きがあることが確認された。なかでも酸性プロテアーゼをコードする新規プロテアーゼ1遺伝子の強制発現は、麹菌の酸性プロテアーゼ生産能だけでなく中性プロテアーゼ生産能も向上させることができるという有用な働きがある。
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株の大豆タンパク質分解活性の評価]
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のしょうゆ麹での培養と粗酵素抽出液の調製]
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、7gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて72時間培養した。培養終了後、20mLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.5)を加え激しく撹拌したのち、懸濁液を4℃にて一晩静置し菌体外酵素を抽出した。この懸濁液をろ紙(No2、ADVANTEC社製)にてろ過したのち、ろ液を10,000×gで20分間、4℃にて遠心分離し固形物を除去した。次にこの抽出液120μLを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)により平衡化したPD SpinTrap G-25(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により処理することにより、抽出液に含まれるアミノ酸等を除去した。
[新規プロテアーゼ遺伝子強制発現株のしょうゆ麹での培養と粗酵素抽出液の調製]
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、7gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて72時間培養した。培養終了後、20mLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.5)を加え激しく撹拌したのち、懸濁液を4℃にて一晩静置し菌体外酵素を抽出した。この懸濁液をろ紙(No2、ADVANTEC社製)にてろ過したのち、ろ液を10,000×gで20分間、4℃にて遠心分離し固形物を除去した。次にこの抽出液120μLを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)により平衡化したPD SpinTrap G-25(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により処理することにより、抽出液に含まれるアミノ酸等を除去した。
[大豆タンパク質分解反応]
20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に大豆タンパク質を終濃度が1.0%となるように溶解したのち、オートクレーブにより滅菌した。本大豆タンパク質溶液200μLに20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を用いて10倍希釈した希釈したPD SpinTrap G−25溶出液を、100μL加えた。これを30℃、150rpmにて20時間反応させたのち、12,000xgにて20分間遠心分離することで、未反応の大豆タンパク質を沈殿させた。遠心分離後の上清20μLを980μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)により希釈した。これにニンヒドリン試薬−L8500セット(和光純薬工業株式会社製)のニンヒドリン試薬と緩衝液を1:1で混合したものを1mL加え、100℃にて15分間加温し発色させたのち、反応液を15分間水冷した。この発色液を100μL分取後、2,900μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加えたのち、570nmにおける吸光度を測定することで、反応により遊離したアミノ酸量を定量した。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に大豆タンパク質を終濃度が1.0%となるように溶解したのち、オートクレーブにより滅菌した。本大豆タンパク質溶液200μLに20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を用いて10倍希釈した希釈したPD SpinTrap G−25溶出液を、100μL加えた。これを30℃、150rpmにて20時間反応させたのち、12,000xgにて20分間遠心分離することで、未反応の大豆タンパク質を沈殿させた。遠心分離後の上清20μLを980μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)により希釈した。これにニンヒドリン試薬−L8500セット(和光純薬工業株式会社製)のニンヒドリン試薬と緩衝液を1:1で混合したものを1mL加え、100℃にて15分間加温し発色させたのち、反応液を15分間水冷した。この発色液を100μL分取後、2,900μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加えたのち、570nmにおける吸光度を測定することで、反応により遊離したアミノ酸量を定量した。なお本実験は、コントロールならびに形質転換体ともに培養から独立した3連で実施した。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
[大豆タンパク質分解活性測定結果]
大豆タンパク質分解活性測定結果を図15に記した。新規プロテアーゼ遺伝子1および2を強制発現させた系では、コントロールであるAskuPG02B株を用いた系と比較して、大豆タンパク質分解活性がそれぞれ18.2%および13.6%上昇していた。このことから、新規プロテアーゼ1および2遺伝子を強制発現させた麹菌は、原料として大豆タンパク質を利用する各種調味料の生産に有用であると考えられる。一方、新規プロテアーゼ3および4遺伝子を強制発現させた系では、AskuPG02B株を用いた系と比較し、大豆タンパク質分解活性の有意な上昇は見られなかった。
大豆タンパク質分解活性測定結果を図15に記した。新規プロテアーゼ遺伝子1および2を強制発現させた系では、コントロールであるAskuPG02B株を用いた系と比較して、大豆タンパク質分解活性がそれぞれ18.2%および13.6%上昇していた。このことから、新規プロテアーゼ1および2遺伝子を強制発現させた麹菌は、原料として大豆タンパク質を利用する各種調味料の生産に有用であると考えられる。一方、新規プロテアーゼ3および4遺伝子を強制発現させた系では、AskuPG02B株を用いた系と比較し、大豆タンパク質分解活性の有意な上昇は見られなかった。
[新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株をCzapek−Dox最少液体培地にて培養した際の酸性プロテアーゼ活性ならびにプロタミン分解活性の評価]
[新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株およびAskuPG02B株の培養]
各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ30mLのCzapek−Dox液体培地に接種し30℃にて6日間培養した。この培養液をろ紙(No.2,ADVANTEC社製)によりろ過することにより菌体を除き、菌体外酵素が含まれる培地を回収しその酸性プロテアーゼ活性およびプロタミン分解活性を測定した。
各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ30mLのCzapek−Dox液体培地に接種し30℃にて6日間培養した。この培養液をろ紙(No.2,ADVANTEC社製)によりろ過することにより菌体を除き、菌体外酵素が含まれる培地を回収しその酸性プロテアーゼ活性およびプロタミン分解活性を測定した。
[酸性プロテアーゼ活性の測定法]
酸性プロテアーゼ活性の測定方法は、酵素反応の時間を30分間から90分間にし、培養液を希釈せず測定したこと以外は、実施例3にて記した方法を用いて実施した。なお本実施例については、培養から独立した5連で実験を行った。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
酸性プロテアーゼ活性の測定方法は、酵素反応の時間を30分間から90分間にし、培養液を希釈せず測定したこと以外は、実施例3にて記した方法を用いて実施した。なお本実施例については、培養から独立した5連で実験を行った。また、図中のエラーバーは標準誤差を示した。
[プロタミン分解活性の測定法]
培養終了後、ろ過により菌体を除去した培地画分120μLを、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)により平衡化したPD SpinTrap G-25(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により処理することにより、培養液に含まれるアミノ酸等を除去した。この処理済みの溶液を20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)により10倍希釈した。本希釈液100μLに400μLの1.25%プロタミン溶液(サケ由来、pH7.5の20mMリン酸カリウム緩衝液に溶解)を混合したのち、40℃にて16時間反応させた。反応液に500μLの25%トリクロロ酢酸を加え反応を停止したのち、4℃にて14,000Xg、30分間遠心分離することで未反応のプロタミンを沈殿させた。遠心分離後の上清20μLを980μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加え50倍希釈したのち、ニンヒドリン試液−L8500セット(和光純薬工業株式会社製)のニンヒドリン試薬と緩衝液を1:1で混合したものを1mL加え、100℃にて15分間加温し発色させた。加熱終了後、反応液を15分間水冷したたのち、2,000μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加えたうえで570nmの吸光度を測定することで、反応により遊離したアミノ酸量を定量した。
培養終了後、ろ過により菌体を除去した培地画分120μLを、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)により平衡化したPD SpinTrap G-25(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により処理することにより、培養液に含まれるアミノ酸等を除去した。この処理済みの溶液を20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)により10倍希釈した。本希釈液100μLに400μLの1.25%プロタミン溶液(サケ由来、pH7.5の20mMリン酸カリウム緩衝液に溶解)を混合したのち、40℃にて16時間反応させた。反応液に500μLの25%トリクロロ酢酸を加え反応を停止したのち、4℃にて14,000Xg、30分間遠心分離することで未反応のプロタミンを沈殿させた。遠心分離後の上清20μLを980μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加え50倍希釈したのち、ニンヒドリン試液−L8500セット(和光純薬工業株式会社製)のニンヒドリン試薬と緩衝液を1:1で混合したものを1mL加え、100℃にて15分間加温し発色させた。加熱終了後、反応液を15分間水冷したたのち、2,000μLの200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を加えたうえで570nmの吸光度を測定することで、反応により遊離したアミノ酸量を定量した。
[液体培養を行った新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株の酸性プロテアーゼ活性評価結果]
液体培養時における新規プロテアーゼ4強制発現株の酸性プロテアーゼ活性評価結果を図16に示した。新規プロテアーゼ4遺伝子を強制発現させた株の系の酸性プロテアーゼ活性は、コントロールであるAsKuPG02B株を使用した系と比較して、平均で44.2%活性が上昇していた。
液体培養時における新規プロテアーゼ4強制発現株の酸性プロテアーゼ活性評価結果を図16に示した。新規プロテアーゼ4遺伝子を強制発現させた株の系の酸性プロテアーゼ活性は、コントロールであるAsKuPG02B株を使用した系と比較して、平均で44.2%活性が上昇していた。
[液体培養を行った新規プロテアーゼ4遺伝子強制発現株のプロタミン分解活性評価結果]
新規プロテアーゼ4は中性プロテアーゼII(デューテロライシンA)と同じくファミリーM35の金属プロテアーゼのモチーフを有するタンパク質である。中性プロテアーゼIIに関してはこれまでにいくつの解析が行われており、本タンパク質は塩基性タンパク質であるヒストンやプロタミンに対して高い活性を示すことが公知となっている(Agric.Biol.Chem.,40,703−709,1976)。そこで、新規プロテアーゼ4に関しても塩基性タンパク質に対して高い活性を有するか調べるために、本酵素のプロタミン分解活性を調べた。その結果、新規プロテアーゼ4は、コントロール株と比べて約2.1倍高いプロタミン分解活性を有しいた(図17)。このことから、新規プロテアーゼ4はプロタミンなどの各種塩基性タンパク質分解産物の調製に利用できると考えられる。
新規プロテアーゼ4は中性プロテアーゼII(デューテロライシンA)と同じくファミリーM35の金属プロテアーゼのモチーフを有するタンパク質である。中性プロテアーゼIIに関してはこれまでにいくつの解析が行われており、本タンパク質は塩基性タンパク質であるヒストンやプロタミンに対して高い活性を示すことが公知となっている(Agric.Biol.Chem.,40,703−709,1976)。そこで、新規プロテアーゼ4に関しても塩基性タンパク質に対して高い活性を有するか調べるために、本酵素のプロタミン分解活性を調べた。その結果、新規プロテアーゼ4は、コントロール株と比べて約2.1倍高いプロタミン分解活性を有しいた(図17)。このことから、新規プロテアーゼ4はプロタミンなどの各種塩基性タンパク質分解産物の調製に利用できると考えられる。
[醤油麹にて培養した新規プロテアーゼ1および2強制発現株の小麦グルテン分解活性の評価]
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、10gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて72時間培養した。この三角フラスコに、小麦グルテン粉末30gと500μg/mLの濃度でアンピシリンを含む13%塩化ナトリウム水溶液30mLを加えたのち、40℃、150rpmにて6日間分解反応を行った。分解反応終了後、分解産物を5g分取し、No5Aのろ紙(ADVANTEC社製)にてろ過し、ろ紙上の残渣を8%塩化ナトリウム溶液にて洗浄したのち、本洗浄液を8%塩化ナトリウム溶液にて100mLに定容した。この洗浄液中に含まれる可溶性窒素の量をケルダール法(生化学実験講座1、タンパク質の化学II,日本生化学会編、pp.6)により測定した。なお実施例6については、培養から独立した2連で実施し、その平均値にて比較を行った。
脱脂大豆10gに焙煎割砕小麦10gと14mLの水を加えよく混合した。これを、10gずつ150mL容の三角フラスコに分取し、綿栓をしたのち121℃で30分間オートクレーブにより滅菌し、しょうゆ麹を作製した。ここに、各形質転換体もしくはAskuPG02B株(コントロール株)の分生子を10,000,000個ずつ接種し30℃にて72時間培養した。この三角フラスコに、小麦グルテン粉末30gと500μg/mLの濃度でアンピシリンを含む13%塩化ナトリウム水溶液30mLを加えたのち、40℃、150rpmにて6日間分解反応を行った。分解反応終了後、分解産物を5g分取し、No5Aのろ紙(ADVANTEC社製)にてろ過し、ろ紙上の残渣を8%塩化ナトリウム溶液にて洗浄したのち、本洗浄液を8%塩化ナトリウム溶液にて100mLに定容した。この洗浄液中に含まれる可溶性窒素の量をケルダール法(生化学実験講座1、タンパク質の化学II,日本生化学会編、pp.6)により測定した。なお実施例6については、培養から独立した2連で実施し、その平均値にて比較を行った。
本結果を図18に記した。新規プロテアーゼ1を用いた系におけるグルテン分解諸味1gあたりに含まれる可溶性窒素の量(%N)は、コントロールであるAskuPG02B株を用いた系と比較して、約1.3%増加していた。また、新規プロテアーゼ2遺伝子を強制発現させた株を用いた系では約1.8%増加していた。以上のことから、新規プロテアーゼ1および2遺伝子を強制発現させた麹菌は、小麦グルテンを原料として使用する各種調味料生産に有用であると考えられる。
以上のとおり、本発明の新規プロテアーゼ遺伝子はいずれも活性を有するプロテアーゼをコードしていることがわかった。このことから本発明は、麹菌によるプロテアーゼの効率的な生産や、食品加工用の酵素生産、醸造食品の生産に用いる微生物の改良にも用いることができると考えられる。なかでも、新規プロテアーゼ遺伝子1および2は強制発現株については大豆タンパク質を分解する際に、新規プロテアーゼ遺伝子4の強制発現株については塩基性の高いタンパク質を分解する際に有用であると考えられる。
Claims (6)
- 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質。
(a)配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、プロテアーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むタンパク質又はその部分断片であり、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質。 - 以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする遺伝子。
(a)配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質
(c) 配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列と70%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むタンパク質又はその部分断片であり、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質 - 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAから成る遺伝子
(a) 配列番号1,3,5,および7で表される塩基配列を含むDNA
(b) 配列番号1,3,5,および7で表される塩基配列又はその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c) 配列番号2,4,6,および8で表されるアミノ酸配列をコードする核酸又はその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(d) 配列番号1,3,5,および7で表される塩基配列のDNAと70%以上の配列同一性を示し、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA - 請求項2又は3に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項4記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項5記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からプロテアーゼを回収することを特徴とする該プロテアーゼの製造方法。
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