JP2009118783A - 糸状菌タンパク質分泌生産の改善 - Google Patents

糸状菌タンパク質分泌生産の改善 Download PDF

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Abstract

【課題】糸状菌由来のタンパク質分泌生産を改善するための糸状菌用発現ベクターの提供。
【解決手段】糸状菌で機能するプロモーター配列の制御下に、タンパク質遺伝子であって、(i)その配列の一部を特定の塩基配列で置換された遺伝子、あるいは(ii)その配列に特定の塩基配列を挿入された遺伝子を含む、糸状菌用発現ベクター。該発現ベクターを含む、糸状菌からなる形質転換体。該形質転換体で発現したタンパク質を回収することを含む、タンパク質の生産方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、糸状菌タンパク質分泌生産を改善する発現ベクターおよびそれを用いたタンパク質生産方法に関する。
糸状菌の代表的なものとして麹菌などがよく知られているが、こういった菌には様々なタンパク質(酵素)が含まれている。現在、これらの菌を培養して物質生産を行う方法は、様々な角度から研究されている。
このような菌の培養方法には、液体培養と固体培養がある。通常、実験室で麹菌のような微生物を培養する場合は、フラスコなどに液体培地を入れて培養する。液体培養は、培養条件を整えることが容易で、培養後も速やかに菌体を回収できる。
一方、固体培養とは固体状の基質の上に微生物を生育させて物質生産を行う方法である。固体培養では、基質と菌体を分離することができず、培養条件を一定にすることも困難であるが、糸状菌由来の酵素には、固体培養でしか生産されないものが多く、固体培養は現在でも広く行われている。
これら培養による物質生産の効率を上げるため、これまでにも、糸状菌の物質生産系では、強力なプロモーターを利用したタンパク質生産は報告がある(特許文献1)。このプロモーターを利用してタンパク質生産量を上げる方法の場合、当該タンパク質生産量はプロモーター部分にのみ依存すると考えられていた。そして、プロモーターを利用する以外に確立されている方法はいまだ報告がない。
他方で、産業上利用される酵素としては、高濃度基質存在下で触媒反応を行うことができるようにするため、溶解性が高い酵素が求められている。ここで、酵素の溶解性を上昇させる因子として、酵素のペプチドに付与される糖鎖の存在がある。この糖鎖の含量が上がれば、溶解性も向上する。
しかしながら、糖鎖の付加はペプチド配列上の決まったモチーフにより決定され、発現させるタンパク質の糖鎖含量は発現させるタンパク質のアミノ酸配列に依存しているため、糖鎖含量を増やすためには、そのアミノ酸配列に変異を導入する以外方法はなかった(特許文献2および3、非特許文献1)。
上記の事情を背景に、菌培養によるタンパク質分泌生産を改善する方法、すなわちタンパク質生産量を向上させる技術、および得られるタンパク質の性質(耐熱性や溶解性)を改善する技術等が望まれているのが現状である。
特開2005−52116号公報 特開2005−087172号公報 特開平05−086099号公報 Complementary DNA for a novel human interleukin (BSF-2) that induces B lymphocytes to produce immunoglobulin;Hiranoら、Nature 324,73-76、1986年
本発明の課題は、従来方法よりも優れた、糸状菌由来のタンパク質分泌生産を改善する方法を提供することである。
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、糸状菌由来のゲノム配列から様々な配列を用いて実験を行ってみたところ、特定の配列2種類を利用した発現ベクターおよび当該ベクターを用いたタンパク質の生産方法の提供により、糸状菌のタンパク質生産において、生産量を増加するとともに、得られるタンパク質の糖鎖含量を増やすことを見出した。
以上の知見等に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
項1.糸状菌で機能するプロモーター配列の制御下に、
タンパク質をコードする遺伝子であって、
(i)その配列の一部を配列番号19または21に示す塩基配列に置換された遺伝子、又は
(ii)その配列に配列番号19または21に示す塩基配列を挿入された遺伝子
を含む、糸状菌用発現ベクター。
項2.タンパク質が、セルロース分解酵素、グルコース酸化酵素、デンプン分解酵素またはタンパク質分解酵素から選択される1つである、項1に記載のベクター。
項3.プロモーター配列が、
(A)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列、
(B)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列において、少なくとも1塩基の置換、欠失、または付加を有する塩基配列、および
(C)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列
からなる群より選択される1つの塩基配列またはその断片である、項1または2に記載の発現ベクター。
項4.項1〜3のいずれかに記載の発現ベクターを含む、糸状菌からなる形質転換体。
項5.項4記載の形質転換体を培養し、該形質転換体で発現したタンパク質を回収することを含む、タンパク質の生産方法。
項6.項5に記載の方法によって得られる、糖鎖含量が増加したことを特徴とするタンパク質。
本発明の発現ベクターおよびタンパク質生産方法によれば、タンパク質をコードする遺伝子の配列の一部を特定の配列に置換するか、またはタンパク質をコードする遺伝子の配列に特定の配列を挿入することにより、糸状菌由来のタンパク質生産量が大幅に向上するだけでなく、タンパク質の糖鎖付加のパターンが変わり、当該タンパク質の耐熱性や溶解性が向上する。したがって、本発明の方法により、高濃度基質存在下で触媒反応を行うことのできる、産業利用上極めて有意義な酵素を得ることが可能となる。
発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、糸状菌で機能し得るプロモーター配列の制御下に、タンパク質をコードする遺伝子を含む。
本発明のタンパク質とは分泌タンパク質であり、好ましくは糸状菌由来の分泌タンパク質が挙げられる。ここで、糸状菌としては、麹菌、及び麹菌が属する糸状不完全菌類が挙げられる。中でも望ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)・ムコール属(Mucor)・カンジダ属(Candida)・トリコデルマ属(Trichoderma)・ノイロスポラ属(Neurospora)由来、より望ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)のアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)由来、最も望ましくは麹菌アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来の菌体内に蓄積されるタンパク質及び分泌タンパク質である。
さらに、本願発明の分泌タンパク質には、糸状菌由来の上記タンパク質の他にも、例えば、融合型のヒト・ラクトフェリン(特表平10−509317号公報参照)、またはウイルスタンパク質(Production and product quality assessment of human hepatitis B virus pre-S2 antigen in submerged and solid-state cultures of Aspergillus oryzae. Maruyamaら、J Biosci Bioeng. 2000;90(1):118-20.参照)なども含まれる。
より具体的な好ましい例示としては、グルコース酸化酵素、セルロース分解酵素(セルラーゼ、エンドグルカナーゼなど)、デンプン分解酵素(グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼなど)、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ、ペプチダーゼ)などが挙げられるが、それらに限定はされない。
糸状菌で機能し得るプロモーター配列としては、固体培養の場合は配列番号3(glaBプロモーター)または配列番号6(α-アミラーゼプロモーター)で示される塩基配列、また液体培養の場合は配列番号7(sodMプロモーター)で示される塩基配列などが例示される。これらは、人工的に合成したものでもよく、細菌やファージのDNAに由来するものであってもよい。
これら例示した塩基配列は、プロモーター活性を有する限り、当該塩基配列において少なくとも1個の塩基の欠失、置換、付加等の変異が生じてもよいし、該変異を導入しても良い。ここで、欠失、置換、付加とは、1〜10個の短い欠失、置換、付加のみならず、10〜50塩基、さらには50〜数百塩基の長い欠失、置換、付加も含む。
また、上記プロモーター配列には、配列番号3、配列番号6または配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有する配列も含まれる。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは当業者において周知のハイブリダイゼーションの実験条件である。具体的には、2つの核酸断片が、サムブルックら(Sambrook,J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版に記載されたハイブリダイゼーション条件下で、相互にハイブリダイズすることを意味する。より具体的なストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(standard saline citrate; 1×SSC=0.15M NaCl,0.015M sodium citrate)中60℃一晩の条件下、又はホルムアミドを含む4×SSC中37℃一晩の条件下においてハイブリダイズし、2×SSC中55℃での30分間の洗浄によりそのDNAから脱離しない条件が挙げられる。なお、当業者であれば、SSCの希釈率、ホルムアミド濃度、温度などの諸条件を適宜選択することで、上記の条件と同様のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を実現することができる。
本発明の発現ベクターは、上記プロモーター配列の制御下に、分泌あるいは分泌型に改変されたタンパク質をコードする遺伝子であって、(i)配列の一部を配列番号19または21に示す塩基配列によって置換された遺伝子、または(ii)配列番号19または21に示す塩基配列を挿入された遺伝子、を含む。
ここで、菌体内に蓄積されるタンパク質及び分泌タンパク質をコードする遺伝子の置換される「配列の一部」とは、当該菌体内蓄積タンパク質及び分泌タンパク質をコードする遺伝子配列の一部であれば特に限定はされないが、とりわけ当該遺伝子配列のN末端アミノ酸配列をコードする遺伝子を配列番号19または21に示す塩基配列で置換あるいは挿入するのが好ましい。さらに好ましいのは、遺伝子のシグナル配列に該当する部位を置換することであり、それにより優れた効果が得られる。
また、菌体内に蓄積されるタンパク質及び分泌タンパク質をコードする遺伝子に、配列番号19または21に示す塩基配列を挿入する場合、その挿入箇所は特に限定されないが、好ましくは、開始コドンから60bp以内、更に好ましくは開始コドンの直後あるいは開始コドンの直前である。
上記配列番号19または21に示す塩基配列DNAは、公知の遺伝子工学的手法を用いて合成可能である。なお、菌体内蓄積タンパク質及び分泌タンパク質遺伝子の配列の一部を上記配列に置換する工程については特に限定されず、これも公知の技術を用いて行うことができる。
例えば、合成DNAはシグマ アルドリッチ(株)において委託合成できる。置換工程は、例えば、上記実験書(サムブルックら(Sambrook,J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版)などに従って行える。
本発明のベクターは、その他、通常ベクターが備える形質転換用マーカー遺伝子、制限酵素切断部位、ターミネーターなどを備えていればよい。
本発明の上記プロモーターと組み合わせて用いるターミネーターの種類は特に限定されない。ターミネーターは、DNAの高次構造により転写されたmRNAをDNA鎖から脱離させるものであるから、糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌で機能するターミネーターであれば、制限無く使用することができる。このようなターミネーターとして、例えば、グルコアミラーゼglaBターミネーター(Gene. 207, 127-134,(1998))等が挙げられる。
形質転換用マーカーは糸状菌内、特にアスペルギルス属糸状菌内で発現できるものであればよい。例えば、β−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするAspergillus nidulans由来の遺伝子ANleu2(配列番号1)や、その他、niaD(Biosci.Biotechnol.Biochem.,59,1795-1797(1995))、argB (Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC (Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA (Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG (Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983)), amdS (Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))からなる群より選ばれるマーカー遺伝子、ロイシン要求性相補遺伝子などが挙げられるが、これらに限定されない。また、宿主が栄養要求性変異株の場合には、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。
<形質転換体>
本発明の形質転換体は、本発明のベクターで糸状菌を形質転換したものである。
宿主は糸状菌であればよいが、高いプロモーター活性を発現させるためには、アスペルギルス属の菌株が好ましく、特にアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)等のアスペルギルス属糸状菌が好ましい。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカスなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。
形質転換方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168:111(1979)]、コンピテント法[J.Mol.Biol.,56:209(1971)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
<タンパク質の生産方法>
本発明の目的タンパク質の生産方法は、前述した本発明の糸状菌形質転換体を培養する工程と、培養物から目的タンパク質を回収する工程とを含む方法である。
培養工程は、固体培養または液体培養で行うことができる。培養温度は、15℃〜42℃が好ましく、更に20℃〜37℃が好ましい。上記範囲の温度であれば、糸状菌が十分に生育ないしは増殖するためにタンパク質の発現量が高くなる。また、上記温度での培養は1日間〜1週間程度行えばよい。
固体培地は、糸状菌の培養に使用される公知の固体培地を制限無く使用できる。固体培地とはその固形の支持担体が栄養源を含むか、又は固形の支持担体に栄養源が添加されものであり、そこに糸状菌が生育できる固形培地を指し示す。このような固体培地として主に、フスマ(小麦などの穀物の殻)、デンプン粉末、米・小麦・大豆の生あるいは蒸したもの、更にはメンブレンや多孔質の人工物(例えば園芸に使われるバーミキュライト)等に栄養源を添加したもの等が挙げられる。特にフスマ、蒸した米が好ましい。
また、液体培地は、糸状菌の培養に使用される公知の液体培地を制限無く使用できる。例えば、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。また無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)が挙げられる。これらの炭素源および窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好適にはpH6〜8、通常18〜40℃、好適には20〜35℃で、1〜150時間行われるが、これらは培養条件および培養規模によって適宜変更することができる。
回収工程では、培養上清を回収すればよい。固体培地の場合も適切な緩衝液、例えば10mM燐酸緩衝液pH7.0等を加え、適宜攪拌した後、その上清を固体培地の抽出液として回収すればよい。さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的タンパク質を精製してもよい。
実施例
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、一般的な実験方法は、上記実験書(サムブルックら(Sambrook,J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版)に従った。
(実施例1):麹菌(Aspergillus oryzae)を宿主とした固体培養でのグルコースオキシダーゼ(GOD)の生産
麹菌宿主
遺伝子を形質転換する麹菌(Aspergillus oryzae)宿主としては、麹菌Aspergillus oryzae O-1013(FERM P-16528として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託日:平成9年11月20日))から公知の紫外線照射変異導入法を用いて取得した、ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-20079として寄託している(寄託日:平成16年6月7日))を使用した。
選択マーカープラスミド
選択マーカーとしては、上記ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5のロイシン要求性変異を相補できる、β−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするAspergillus nidulans由来の遺伝子ANleu2(配列番号1)を利用した。ANleu2は、イントロン2つを含む遺伝子であり、370アミノ酸残基からなるβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子である。配列番号1の塩基番号1〜319はプロモーター領域、塩基番号320〜1549はオープンリーディング領域、塩基番号1550〜3560はターミネーター領域である。また配列番号1の320〜1549までのオープンリーディング領域のうち、2つのイントロンは、795〜851、1273〜1332である。アミノ酸配列は配列番号2に示した。ANleu2はアスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)ゲノムDNAを鋳型としてLA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。ANleu2用にプライマーP-1(5’-TGCCAGTTTTACCAGCTTGACC-3’)(配列番号11)及びプライマーP-2(5’-CTTTCATGTCATGTCCCTAGAAG-3’)(配列番号12)を使用した。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、それぞれ適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をフェノール−クロロホルム抽出した後、エタノール沈殿を行った。得られた増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。切り出したANleu2遺伝子断片は、LA-Taqの増幅産物よりその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。
各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。ANleu2がサブクローニングされたプラスミドをpANLAと命名した。
麹菌の形質転換
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた(Mol. Gen. Genet., 218, 99-104, (1989))。プロトプラストは、GPY液体培地(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス)で30℃、1日間培養したAspergillus oryzae leu-5をガラスフィルター11GP250(柴田科学)で集菌し、0.8M NaClを含むプロトプラスト化溶液(5mg/mlヤタラーゼ(宝バイオ)、5mg/mlセルラーゼ(和光純薬)、5mg/ml lysing enzyme(sigma)も含む)中で、30℃で3時間反応させた。ガラスフィルター11GP160(柴田科学)でろ過したろ液をプロトプラスト液として、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。この常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法におけるプラスミドなどの添加段階においては、pANLAなどの選択マーカーを含むプラスミドと、これとは異なる選択マーカーを含まない任意のプラスミドを任意の割合で添加することにより、最小培地で選択した形質転換体の染色体に両プラスミド断片を挿入することが可能である、常法コトランスフォーメーション(Co-transformation)が可能である。形質転換体の選択培地としては、Czapek-Dox最小培地(グルコース3%、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M、0.8M NaCl、1.5%寒天、pH6.3)を用いた。30℃で7日間培養した後、複数の形質転換体が得られた。
発現プラスミドの構築
はじめに、麹菌での固体培養でのグルコースオキシダーゼ(GOD)の生産を行うために、固体培養で発現するglaBプロモーター支配下で発現を試みた。glaBプロモーターの配列は配列番号3、Aspergillus niger由来のGOD遺伝子配列は配列番号4である。発現プラスミドを構築するために、第一段階のPCRとして、glaBプロモーターとglaBターミネーター(配列番号5)を常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP1(5’-TCTCAACCCAAGTAACGATGAAGAATGGCT-3’)とP2(5’-AGGATGTAGTATGTATACTTAGTTTGATTG-3’)を用いて増幅、PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(3分),30サイクル
・72℃(5分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。本PCR産物はその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。glaBのプロモーターからターミネーターを含むプラスミドをpGBとした。
続いて、GOD遺伝子をAspergillus nigerのゲノムDNAを鋳型として、プライマーP3(5’-ATGCAGACTCTCCTTGTGAGCTCGCTTGTG-3’)(配列番号13)とプライマーP4(5’-TCACTGCATGGAAGCATAATCTTCCAAGAT-3’)(配列番号14)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(2分),30サイクル
・72℃(3分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、インサートとした。次にglaBプロモーターの発現カセットであるpGBプラスミドを鋳型として、プライマーP5(5’-GATGGTGGTGACTTCCAAGAAACAAGAAAT-3’)(配列番号15)とプライマーP6(5’-ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT-3’)(配列番号16)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。glaBのプロモーターの下流にGOD遺伝子の開始コドンが接続されているプラスミドをpGODNとした。
さらに、GOD遺伝子のシグナル配列S1(5’-ATGCAGACTCTCCTTGTGAGCTCGCTTGTGGTCTCCCTCGCTGCGGCCCTGCCACACTACATCAGG-3’)(配列番号17)を置換するために、pGODNプラスミドを鋳型として、プライマーP7(5’-AGCAATGGCATTGAAGCCAGCCTCCTGACT-3’)(配列番号18)とプライマーP5を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。シグナルDNA断片の一つはプライマーP8(5’-ATGCGGAACAACCTTCTTTTTTCCCTCAATGCCATTGCTGGCGCTGTCGCGCATCCGTCCTTCCCTATCCATAAGAGG-3’)(配列番号19)とプライマーP9(5’-CCTCTTATGGATAGGGAAGGACGGATGCGCGACAGCGCCAGCAATGGCATTGAGGGAAAAAAGAAGGTTGTTCCGCAT-3’)(配列番号20)をアニーリングさせることにより作成し、シグナル断片B(配列はプライマーP8(配列番号19)と同じ)とした。他方のシグナルDNA断片はプライマーP10(5’-ATGATGGTCGCGTGGTGGTCTCTATTTCTGTACGGCCTTCAGGTCGCGGCACCTGCTTTGGCT-3’)(配列番号21)とプライマーP11(5’-AGCCAAAGCAGGTGCCGCGACCTGAAGGCCGTACAGAAATAGAGACCACCACGCGACCATCAT-3’)(配列番号22)をアニーリングさせることにより作成し、シグナル断片A(配列はプライマーP10(配列番号21)と同じ)とした。このようにして得られたベクターとシグナル断片をそれぞれ平滑末端処理後に脱リン酸化とリン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。glaBのプロモーターの下流にシグナル断片Aの開始コドンが接続されているプラスミドをpGODA、シグナル断片Bの開始コドンが接続されているプラスミドをpGODBとした。
pGODNのプロモーターをα-アミラーゼのプロモーター(配列番号6)に置換するために、プライマーP12(5’-GGGTGGTGGGGTGGGCTACTTAAAAATCGA-3’)(配列番号23)とプライマーP13(5’-AAATGCCTTCTGTGGGGTTTATTGTTCAGA-3’)(配列番号24)を用いて、常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型として増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、インサートとした。さらに、pGODNプラスミドを鋳型として、プライマーP14(5’-AGCCATTCTTCATCGTTACTTGGGTTGAGA -3’)(配列番号25)とプライマーP15(5’-ATGCAGACTCTCCTTGTGAGCTCGCTTGTG-3’)(配列番号26)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。α-アミラーゼプロモーターの下流にGOD遺伝子の開始コドンが接続されているプラスミドをpGODNAとした。
更にpGODNAのGOD遺伝子のシグナル配列S1を置換するために、プライマーP14とプライマーP13を用いて、pGODNAを鋳型として増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。プライマーP10とプライマーP11をアニーリングさせることにより作成したシグナル断片Aをインサートとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。α-アミラーゼプロモーターの下流にシグナル断片Aの開始コドンが接続されているプラスミドをpGODAAとした。
形質転換体の固体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLA単独の形質転換、あるいはpANLAとpGODN、pANLAとpGODB、pANLAとpGODNA 、pANLAとpGODAAの組み合わせでコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(GOD遺伝子1コピー導入体)は、GOD遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認し、pGODN、pGODB、pGODNA、pGODAAがそれぞれ一コピー導入された形質転換体を得ることが出来た。
得られたそれぞれの形質転換体を小麦フスマの固体培養に供した。固体培養に用いるのは、含水率80%の小麦フスマであり、形質転換体の胞子を10の5乗個/ミリリットルになるように接種後、30℃で3日間培養した。培養後の培養物を5倍量の0.5% NaCl溶液で室温、3時間抽出し、グルコース、ペルオキシダーゼ、o-ジアニシジンのカップリング反応(文献:Sowboda, B.E.P and Massay, V: J. Biol. Chem., 240, 2209 (1965))で検出することによりそれぞれの抽出液にGOD活性があることが示された。
固体培養で生産させた各置換型GODのキャラクタリゼーション
上記pGODN及びpGODB形質転換体の小麦フスマ培養物0.1kgを0.5% NaCl溶液500mlで、室温、3時間抽出後、10,000rpmで遠心して上清を回収した。この上清に50%飽和硫安となるように、硫安を添加後、室温で20時間放置した。その後、10,000rpmで遠心し、上清を回収した。この上清に、ブチルトヨパール樹脂(アマシャムファルマシア社)を用いてオープンカラムにてGOD活性画分を回収した。グラジエントの条件は10mM 燐酸バッファー(pH6.0) 50%飽和硫安から10mM 燐酸バッファー(pH6.0) 0%飽和硫安であり、直径1センチ長さ40センチカラムを用いた。活性画分を10mM 燐酸バッファー(pH6.0)で透析後、アミコンウルトラ UFC801008(ミリポア)等で20mg-protein/mLにそれぞれ濃縮した。
硫安溶液で溶解性を調べるために、0Mから4Mまで硫安濃度を変化させ、10mg-protein/mL、10mM 燐酸バッファー(pH6.0)、4℃で2時間静置した後、15,000rpmで遠心して上清を回収し、GODの残存活性を測定した。シグナルを置換していないpGODN導入株が生産したGODは2.5Mの硫安で上清に活性が無くなった(図1A)。他方、シグナル置換したpGODB導入株が生産したGODは飽和に近い4.0Mの硫安でも上清に活性が存在し、溶解性が劇的に向上したことが明らかとなった。
耐熱性を調べるために、10mg-protein/mL、10mM 燐酸バッファー(pH6.0)、各温度で10分間インキュベートした後に、残存GOD活性を測定した。シグナル置換したpGODB導入株が生産したGODは置換してないものと比較して約5℃耐熱性が向上していることが明らかとなった(図1B)。
SDS-PAGEで各サンプルを解析したところ、シグナル置換したものは置換していないものと比べて、シグナル置換したものは分子量がかなり大きくなっていた(図2レーン1と3)。糖鎖切断酵素Endo H(sigma)で処理することにより、分子量が一致したことから、シグナルタンパク質のペプチド分子量の差ではなく、糖鎖付加の差であることが判明した(図2レーン2と4)。
シグナルBに置換することにより、高濃度溶液での酵素活性の維持や耐熱性付与をすることが他のタンパク質でも期待されうる。
固体培養で生産させた各置換型GODの生産量
上記pGODNA及びpGODAA形質転換体及びマーカー遺伝子pANLAのみ導入した形質転換体の小麦フスマ培養物0.1kgを0.5% NaCl溶液500mlで、室温、3時間抽出後、10,000rpmで遠心して上清を回収した。上清50μLを小型微量濃縮遠心機 DNAプチVac(和研薬)で濃縮し、全量をSDS-PAGEで解析を行った。シグナルを置換しないものに比べ(図3レーン2、細い矢印)、置換したものは若干糖鎖含量が多くなり分子量が増え、かつ生産性が向上していた(図3レーン3、太い矢印)。また、タンパク質量を測定した所、置換していないものはGODの生産量が0.05mg/g-フスマに対して、置換したものは0.51mg/g-フスマと約10倍生産性が向上していた。このように、固体培養で強力なα-アミラーゼプロモーターを用いてもほとんど生産できなかったタンパク質を、シグナルを置換することにより劇的な生産性向上が望める事が判明した。
(実施例2):麹菌を宿主とした液体培養でのセルラーゼ(celA)の生産
麹菌宿主、選択マーカープラスミド、麹菌の形質転換
実施例1と同じ手順である。
発現プラスミドの構築
はじめに、麹菌での液体培養でのセルラーゼ(celA)の生産を行うために、液体培養で強力に発現するsodMプロモーター支配下で発現を試みた。sodMプロモーターの配列は配列番号7、麹菌由来のcelA遺伝子配列は配列番号8である。
sodMプロモーターを常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP14’(5’-TTATGTACTCCGTACTCGGTTGAATTATTA-3’)とプライマーP15’(5’-AGAGCTTCATTTTGGGTGGTTTGGTTGGTA-3’)を用いて増幅、同じくcelA遺伝子をプライマーP16(5’-ACCACCCAAAATGAAGCTCTCATTGGCACT-3’)(配列番号27)とプライマーP17(5’-TTAGTTGACACTGGCAGTCCAGTTGGGAAC-3’)(配列番号28)を用いて増幅した。PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分30秒),30サイクル
・72℃(3分),1サイクル
その結果、それぞれ2つの適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られた2つのPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。抽出した2つのサンプルを1つにまとめ、エタノール沈殿を行った。次に、2つのサンプルの混合物を鋳型として、プライマーP14’とP17を用いて、2段階目のPCRを行った。PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),68℃(2分30秒),30サイクル
・72℃(4分),1サイクル
その結果、単一の適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、インサートとした。pGBプラスミドを鋳型として、プライマーP14とプライマーP6を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。celA遺伝子のストップコドンの下流にglaBターミネーターが接続されているプラスミドをpCELNとした。
さらに、celA遺伝子のシグナル配列S2(5’-ATGAAGCTCTCATTGGCACTTGCTACGCTCGTGGCCACAGCATTCAGT-3’)(配列番号29)を置換するために、pCELNプラスミドを鋳型として、プライマーP18(5’-TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA-3’)(配列番号30)とプライマーP19(5’-CAAGAGCTGTGTGCACAGTACGACAGTGCC-3’)(配列番号31)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。シグナルDNA断片はプライマーP8とプライマーP9をアニーリングさせることにより作成し、シグナル断片Bとした。このようにして得られたベクターとシグナル断片をそれぞれ平滑末端処理後に脱リン酸化とリン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。sodMプロモーターの下流にシグナル断片Bの開始コドンが接続されているプラスミドをpCELBとした。
形質転換体の液体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAとpCELN、pANLAとpCELBの組み合わせでコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(celA遺伝子1コピー導入体)は、celA遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認し、pCELN、pCELBが麹菌が元来保有しているcelA遺伝子以外にそれぞれ一コピー導入された形質転換体をそれぞれ得ることが出来た。
各形質転換体を改変型GPY液体培地(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、培養液上清を回収した。培養上清50μLを小型微量濃縮遠心機 DNAプチVac(和研薬)で濃縮し、全量をSDS-PAGEで解析を行った。シグナルを置換しないものに比べ(図4レーン1、細い矢印)、置換したものは若干糖鎖含量が多くなり分子量が増え、かつ生産性が向上していた(図4レーン2、太い矢印)。また、タンパク質量を測定した所、置換していないものはcelAの生産量が0.35mg/mL-brothに対して、置換したものは0.81mg/mL-brothと2倍以上生産性が向上していた。このように、液体培養で強力なsodMプロモーターでも、シグナルを置換することにより更なる生産性向上が望める事が判明した。
(実施例3):麹菌を宿主とした液体培養でのセルラーゼ(celB)の生産
麹菌宿主、選択マーカープラスミド、麹菌の形質転換
実施例1と同じ手順である。
発現プラスミドの構築
はじめに、麹菌での液体培養でのセルラーゼ(celB)の生産を行うために、液体培養で強力に発現するsodMプロモーター支配下で発現を試みた。麹菌由来のcelB遺伝子配列は配列番号9である。celB遺伝子を常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP20(5’-ATGATCTGGACACTCGCTCCCTTTGTGGCA-3’)(配列番号32)とプライマーP21(5’-CTAATGCCTGTAGGTAGATCCAATATCTCC-3’)(配列番号33)を用いて増幅した。PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分20秒),30サイクル
・72℃(3分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、インサートとした。pCELNプラスミドを鋳型として、プライマーP18とプライマーP6を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。sodMプロモーターの下流にcelB遺伝子の開始コドンが接続されているプラスミドをpCELBNとした。
さらに、celB遺伝子のシグナル配列S3(5’-ATGATCTGGACACTCGCTCCCTTTGTGGCACTCCTGCCACTGGTAACTGCC-3’)(配列番号34)を置換するために、pCELBNプラスミドを鋳型として、プライマーP18とプライマーP22(5’-CAGCAGGTGGGAACTACAGCGGACGCCCAT-3’)(配列番号35)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。シグナルDNA断片はプライマーP10とプライマーP11をアニーリングさせることにより作成し、シグナル断片Aとした。このようにして得られたベクターとシグナル断片をそれぞれ平滑末端処理後に脱リン酸化とリン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。sodMプロモーターの下流にシグナル断片Aの開始コドンが接続されているプラスミドをpCELBAとした。
形質転換体の液体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAとpCELBN、pANLAとpCELBAの組み合わせでコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(celB遺伝子1コピー導入体)は、celB遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認し、pCELBN、pCELBAが麹菌が元来保有しているcelB遺伝子以外にそれぞれ一コピー導入された形質転換体をそれぞれ得ることが出来た。
各形質転換体を改変型GPY液体培地(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、培養液上清を回収した。培養上清50μLを小型微量濃縮遠心機 DNAプチVac(和研薬)で濃縮し、全量をSDS-PAGEで解析を行った。シグナルを置換しないものに比べ(図5レーン1、細い矢印)、置換したものは若干糖鎖含量が多くなり分子量が増え、かつ生産性が向上していた(図5レーン2、太い矢印)。また、タンパク質量を測定した所、置換していないものはcelBの生産量が0.80mg/mL-brothに対して、置換したものは1.25mg/mL-brothと1.5倍程度の生産性が向上していた。このように、液体培養で強力なsodMプロモーターで高生産できているタンパク質も、シグナルを置換することにより更なる生産性向上が望める事が判明した。
(実施例4):麹菌を宿主とした液体培養でのエンドグルカナーゼ(eglB)の生産
麹菌宿主、選択マーカープラスミド、麹菌の形質転換
実施例1と同じ手順である。
発現プラスミドの構築
はじめに、麹菌での液体培養でのAspergillus niger由来のエンドグルカナーゼ(eglB)の生産を行うために、液体培養で強力に発現するsodMプロモーター支配下で発現を試みた。Aspergillus niger由来のeglB遺伝子配列は配列番号10である。eglB遺伝子を常法により取得したAspergillus nigerのゲノムDNAを鋳型にプライマーP23(5’-ATGAAGTTTCAGAGCACTTTGCTTCTTGCC-3’)(配列番号36)とプライマーP24(5’-TCAGAGATACGTCTCCAGGATATCCAGCAT-3’)(配列番号37)を用いて増幅した。PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分20秒),30サイクル
・72℃(3分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、インサートとした。pCELNプラスミドを鋳型として、プライマーP18とプライマーP6を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。このようにして得られたインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。sodMプロモーターの下流にeglB遺伝子の開始コドンが接続されているプラスミドをpEGLNとした。
さらに、eglB遺伝子のシグナル配列S4(5’-ATGAAGTTTCAGAGCACTTTGCTTCTTGCCGCCGCGGCTGGTTCCGCGTTGGCT-3’)(配列番号38)を置換するために、pEGLNプラスミドを鋳型として、プライマーP18とプライマーP25(5’-GTGCCTCATGGCTCCGGACATAAGAAGAGG-3’)(配列番号39)を用いて増幅、PCRは、PrimeSTAR HS(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(7分),30サイクル
・72℃(8分),1サイクル
その結果、適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出し、ベクターとした。シグナルDNA断片はプライマーP10とプライマーP11をアニーリングさせることにより作成し、シグナル断片Aとした。このようにして得られたベクターとシグナル断片をそれぞれ平滑末端処理後に脱リン酸化とリン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(宝バイオ)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。sodMプロモーターの下流にシグナル断片Aの開始コドンが接続されているプラスミドをpEGLAとした。
形質転換体の液体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAとpEGLN、pANLAとpEGLAの組み合わせでコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(eglB遺伝子1コピー導入体)は、eglB遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認し、pEGLN、pEGLAがそれぞれ一コピー導入された形質転換体をそれぞれ得ることが出来た。
各形質転換体を改変型GPY液体培地(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、培養液上清を回収した。培養上清50μLを小型微量濃縮遠心機 DNAプチVac(和研薬)で濃縮し、全量をSDS-PAGEで解析を行った。シグナルを置換しないものに比べ(図6レーン1、細い矢印)、置換したものは若干糖鎖含量が少なくなり分子量が減ったが、生産性は向上していた(図6レーン2、太い矢印)。また、タンパク質量を測定した所、置換していないものはeglBの生産量が0.66mg/mL-brothに対して、置換したものは1.89mg/mL-brothと約3倍程度の生産性が向上していた。液体培養で強力なsodMプロモーターで超高生産できていると考えられているタンパク質も、宿主麹菌のプロテアーゼでプロテオリシスを受けていた(図6レーン1、破線矢印)。シグナルを置換することにより、糖鎖の付加パターンが変わり宿主麹菌のプロテアーゼの分解を受けなくなり、更なる生産性向上が望める事が判明した。
A:実施例1における糖鎖付加によるGODの溶解度の向上、B:実施例1における糖鎖付加によるGODの耐熱性の向上、を示す。 実施例1における、固体培養で生産させた各置換型GODのキャラクタリゼーション(SDS−PAGE解析)を示す。 実施例1における、固体培養で生産させた各置換型GODの生産量を示す。 実施例2における、液体培養で生産させたセルラーゼの生産量を示す。 実施例3における、液体培養で生産させたセルラーゼの生産量を示す。 実施例4における、液体培養で生産させたエンドグルカナーゼの生産量を示す。

Claims (6)

  1. 糸状菌で機能するプロモーター配列の制御下に、
    タンパク質をコードする遺伝子であって、
    (i)その配列の一部を配列番号19または21に示す塩基配列に置換された遺伝子、又は
    (ii)その配列に配列番号19または21に示す塩基配列を挿入された遺伝子
    を含む、糸状菌用発現ベクター。
  2. タンパク質が、セルロース分解酵素、グルコース酸化酵素、デンプン分解酵素またはタンパク質分解酵素から選択される1つである、請求項1に記載のベクター。
  3. プロモーター配列が、
    (A)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列、
    (B)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列において、少なくとも1塩基の置換、欠失、または付加を有する塩基配列、および
    (C)配列番号3、配列番号6または配列番号7に示す塩基配列に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列
    からなる群より選択される1つの塩基配列またはその断片である、請求項1または2に記載の発現ベクター。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の発現ベクターを含む、糸状菌からなる形質転換体。
  5. 請求項4記載の形質転換体を培養し、該形質転換体で発現したタンパク質を回収することを含む、タンパク質の生産方法。
  6. 請求項5に記載の方法によって得られる、糖鎖含量が増加したことを特徴とするタンパク質。
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