JPH10257883A - カタラーゼ及びその製造方法 - Google Patents

カタラーゼ及びその製造方法

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JPH10257883A
JPH10257883A JP9064593A JP6459397A JPH10257883A JP H10257883 A JPH10257883 A JP H10257883A JP 9064593 A JP9064593 A JP 9064593A JP 6459397 A JP6459397 A JP 6459397A JP H10257883 A JPH10257883 A JP H10257883A
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JP
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catalase
thermomyces
culture
genus
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JP9064593A
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English (en)
Inventor
Saikei Kou
再慶 黄
Yasunori Tagoyama
保典 田子山
Takuo Yamazumi
卓夫 山住
Hiroshi Yamamoto
綽 山本
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Shin Nihon Kagaku Kogyo KK
Original Assignee
Shin Nihon Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カタラーゼ生産量がより高い生産菌を用い
て、工業的に効率良くカタラーゼを製造する方法の提
供、及びそのような製造方法によって有利に生産され
る、新規な特性を有するカタラーゼの提供。 【解決手段】 カタラーゼ産生能を有する微生物とし
て、サーモマイセス属の好熱性糸状菌を用い、これを培
養することにより、カタラーゼを菌体外に生産させる工
程と、かかる培養工程で得られた培養物よりカタラーゼ
を分離する工程とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、カタラーゼ及びその製造方法に
係り、特に、カタラーゼ産生能を有する微生物を用いた
カタラーゼの効果的な製造方法と、そのような製造方法
によって有利に得られる、有用な理化学的性質を有する
新規な耐熱性のカタラーゼに関するものである。
【0002】
【背景技術】カタラーゼは、過酸化水素等の過酸化物の
分解を触媒する酵素であって、従来から、食品加工等の
分野において、殺菌剤や漂白料として使用される過酸化
水素の分解除去に用いられてきている。また、最近で
は、繊維関係、排水関係、電子機器部品の洗浄等の分野
においても、塩素系漂白剤に代わり、過酸化水素の使用
が主流となってきているところから、そのような分野で
の過酸化水素の分解除去にも、カタラーゼは、工業的に
大量消費されている酵素となっている。
【0003】そして、そのようなカタラーゼを得る場合
において、工業的な生産の見地からは、カタラーゼ産生
能を有する微生物を培養して得るのが最も好ましいもの
であるところから、従来より、微生物由来のカタラーゼ
として、細菌に関しては、サーマス属(特開昭55−1
35588号公報)、バチルス属(特開平7−2460
92号公報)に由来するものが、また酵母にあっては、
サッカロミセス属(特開昭60−83579号公報)、
ハンセヌラ属(特開昭63−3788号公報)に由来す
るものが、更に糸状菌に関しては、アスペルギルス属
(特開平2−76579号公報)、アスペルギルス属、
アクレモニウム属、サーモアスカス属(特開平5−15
3975号公報)、及びアスペルギルス属、サーモアス
カス属(特開平7−163342号公報)に由来するも
のが、種々提案されてきているが、これまでに、サーモ
マイセス属の好熱性糸状菌によって生産されるカタラー
ゼについては、全く知られていない。
【0004】また、かかる従来のカタラーゼの殆どは、
菌体内酵素であって、そのために所定の微生物の培養に
よって生産された酵素を採取するには、菌体破砕等の煩
雑な操作が必要とされているのであり、更に、培地中に
カタラーゼを生成、蓄積させることによってカタラーゼ
を製造しようとする方法(特開平7−163342号公
報)においても、液体培養によるカタラーゼの工業的な
生産量としては、充分とは言えないものであった。
【0005】
【解決課題】かかる状況下、本発明者らは、カタラーゼ
を工業的に効率良く製造する方法の開発を目的として、
その供給源を微生物に求め、鋭意研究した結果、サーモ
マイセス属に属する好熱性糸状菌が、固体培養或いは液
体培養の何れの方法によっても、カタラーゼを菌体外に
生産し、特に液体培養においては、固体培養に比較し
て、培地固形物当たりの生産量を著しく増大させ得ると
の知見を得たのであり、また、そのようにして生産され
たカタラーゼが、従来の微生物由来のカタラーゼとは異
なる物性を備えた、耐熱性を有する新規なものであるこ
とを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】従って、本発明の課題とするところは、カ
タラーゼ生産量がより高い生産菌を用い、それによって
工業的に効率良くカタラーゼを製造する方法を提供する
ことにあり、また、他の課題とするところは、そのよう
な製造方法によって有利に生産される、高分子量且つ低
等電点の新規な特性を有する耐熱性のカタラーゼを提供
することにある。
【0007】
【解決手段】そして、本発明にあっては、かかる課題を
解決するために、カタラーゼ産生能を有する微生物とし
て、サーモマイセス属の好熱性糸状菌を用い、これを培
養することにより、カタラーゼを菌体外に生産させる工
程と、かかる培養工程で得られた培養物よりカタラーゼ
を分離する工程とを含むことを特徴とするカタラーゼの
製造方法を、その要旨とするものである。
【0008】なお、このようなカタラーゼの製造方法に
おいて、サーモマイセス属の好熱性糸状菌としては、有
利には、サーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces
lanuginosus) ATCC22083またはATCC22
070が用いられ、また、そのようなサーモマイセス属
菌の培養は、有利には、液体培養によって行なわれ、そ
してそれによって、カタラーゼの生産量を更に効果的に
増大せしめることが出来るのである。
【0009】また、本発明は、次の如き理化学的性質を
有するカタラーゼをも、その要旨とするものである。 a)作用:過酸化水素に作用し、過酸化水素を水と酸素
に分解する、 b)至適作用pH:作用pH範囲が3〜12で、至適p
Hが5〜10である、 c)pH安定性:30℃、60分間処理で、pH6〜1
0の範囲で極めて安定であり、pH3の酸性側及びpH
12のアルカリ側においても50%以上の残存活性を示
す、 d)至適作用温度:pH7において20〜80℃の範囲
で活性を示し、至適温度が50℃である、 e)熱安定性:pH7、30分間の加熱において60℃
まで極めて安定で、80℃でも65%以上の残存活性を
示す、 f)分子量:470000〜480000、 g)等電点:3.9〜4.0、 h)紫外部及び可視部の吸収スペクトル:280nm及
び410nmに極大吸収を有する。
【0010】特に、このような本発明に従うカタラーゼ
は、サーモマイセス属の好熱性糸状菌由来のものであ
り、更に望ましくはサーモマイセス・ラヌギノーサスA
TCC22083またはATCC22070由来のもの
である。
【0011】
【発明の実施の形態】ところで、かかる本発明において
用いられるカタラーゼ生産菌は、サーモマイセス属に属
する好熱性糸状菌であって、例えば、アメリカン・タイ
プ・カルチャー・コレクション(ATCC)に保存され
ており、容易に入手が可能であるサーモマイセス・ラヌ
ギノーサス(Thermomyces lanuginosus) があり、また、
その菌種としては、サーモマイセス・ラヌギノーサス(T
hermomyces lanuginosus) ATCC22083やATC
C22070等が挙げられる。そして、このカタラーゼ
生産菌は、また、よく知られているように、フミコーラ
・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa) とも称されてい
るものである。なお、このような属に属する微生物であ
って、紫外線、X線、γ線等の物理的処理、或いはニト
ロソグアニジン等の薬剤による化学的処理からなる突然
変異誘導法によって得られるカタラーゼ高生産性突然変
異株も使用することが出来る。そして、このようなサー
モマイセス属に属する好熱性糸状菌を用いて培養するこ
とにより、目的とするカタラーゼが、菌体外に、有利に
生産され得ることとなるのである。
【0012】また、かくの如き微生物の培養方法として
は、好気的培養法であれば、特に制約はなく、固体培養
及び液体培養の何れの方法であっても、採用可能である
が、本発明にあっては、培養管理と共に、かかる微生物
のカタラーゼ生産性の面等から、液体培養が有利に採用
されることとなる。
【0013】そして、本発明において、カタラーゼを生
産する培地としては、前記した微生物が良好に成育し得
るものであれば、特に制限はなく、採用される培養方法
に応じた公知の固体培地乃至は液体培地が、適宜に採用
されることとなるが、通常、固体培養では、小麦ふすま
が培地として用いられることとなる。また、この小麦ふ
すまにアンモニウム塩等の無機窒素化合物を添加してな
る培地は、本発明に従うカタラーゼ生産により優れた効
果を与える。
【0014】一方、液体培養の場合には、炭素源とし
て、澱粉等の多糖類、グルコース、フルクトース、シュ
クロース等の少糖類を用いることが出来る。なお、窒素
源としては、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープ
リカー、肉エキス、尿素等の有機窒素、及び塩化アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアン
モニウム塩、更には他の無機窒素化合物を用いることが
出来る。また、無機塩としては、リン酸塩、カリウム
塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることが出
来る。更に、補助添加物として、小麦ふすま等の天然固
体原料を用い、それを液体培地に添加することも、本発
明に従うカタラーゼ生産に有効である。
【0015】なお、本発明に従う微生物の培養に際し
て、その培養期間中の培養温度としては、一般に、35
〜50℃程度、好ましくは37〜45℃程度の範囲の温
度とされ、また培地pHにあっては、一般に、5.0〜
7.0程度、好ましくは5.5〜6.5程度の範囲内に
維持されることとなる。更に、培養期間としては、通
常、2日間〜6日間程度である。
【0016】このようにして、前記した微生物が培養さ
れることによって、カタラーゼは、その殆どが菌体外に
生産され、そして、その生産されたカタラーゼは、固体
培養の場合においては、その培養物を、常法に従って、
水またはカタラーゼが安定な範囲のpH緩衝液により抽
出して、粗酵素液として得られる。一方、液体培養の場
合には、その培養液を常法に従って濾過または遠心分離
することにより、粗酵素液が得られる。
【0017】そして、以上のようにして得られた粗酵素
液の精製は、公知の方法に従って行なうことが出来るの
である。例えば、硫酸アンモニウム等による塩析、有機
溶媒等による沈殿法、カラムクロマトグラフィ、ゲル濾
過、電気泳動等を、適宜組み合わせて精製することによ
り、目的とする精製カタラーゼを得ることが可能であ
る。また、この精製されたカタラーゼは、必要ならば脱
水或いは乾燥を施すことにより、酵素粉末として採取す
ることが出来、また場合によっては、限外濾過膜により
濃縮した粗酵素液を、そのままカタラーゼ標品として使
用することも、可能である。
【0018】かくの如くして製造された、本発明に従う
カタラーゼは、以下の性質を有しているのである。
【0019】(1)作用:従来のカタラーゼと同様に、
過酸化水素に作用して、それを水と酸素に分解するもの
である。
【0020】(2)至適作用pH:リン酸緩衝液を用い
て調製された、過酸化水素を含む各種pHの緩衝液を用
いて、25℃で活性を測定すると、本カタラーゼは、作
用pH範囲が3〜12で、至適pH範囲が5〜10の、
広範囲の至適領域を有している。
【0021】(3)pH安定性:リン酸緩衝液を用いて
調製されたpH3〜12の溶液中に、400IU/ml
となるように酵素を溶解し、30℃で60分間処理した
後、残存活性を測定することにより、本カタラーゼは、
pH6〜10の範囲で極めて安定であり、pH3の酸性
側及びpH12のアルカリ側においても、50%以上の
残存活性を示すものである。
【0022】(4)至適作用温度:pH7のリン酸緩衝
液で調製された0.04%の過酸化水素水溶液に対す
る、各温度下での酵素の活性測定にて、本カタラーゼ
は、20〜80℃の範囲で活性を示し、至適温度は50
℃である。
【0023】(5)熱安定性:pH7のリン酸緩衝液に
溶解してなる400IU/mlの酵素溶液を、各温度で
30分保持した後、急冷し、25℃において残存活性を
測定すると、本カタラーゼは、60℃まで極めて安定
で、80℃でも65%以上の残存活性を示す。
【0024】(6)分子量:シリカゲルを基材とするT
SK−Gel−G3000SW(東洋曹達株式会社製)
を担体として用いて、高速液体クロマトグラフィ装置
(株式会社日立製作所製655A型)により、溶出時間
を測定することからなるゲル濾過法にて測定すると、本
カタラーゼの分子量は470000〜480000であ
る。また、ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−ゲ
ルスラブ電気泳動法による測定にて、本カタラーゼは、
分子量が78000〜80000のサブユニットからな
る6量体であることが確認される。
【0025】(7)等電点:アガロースゲルを用いた等
電点電気泳動装置により測定すると、本カタラーゼの等
電点は、3.9〜4.0である。
【0026】(8)紫外部及び可視部の吸収スペクト
ル:酵素をpH7のリン酸緩衝液に溶かし、分光光度計
にて測定すると、本カタラーゼは、紫外部領域では28
0nmに、また可視部領域では410nmに極大吸収を
有していることが認められる。
【0027】(9)金属イオンの影響:本カタラーゼ
は、硫酸銅により略失活し、また塩化鉄、塩化第二鉄、
及び塩化第二水銀により、70〜80%の阻害を受け
る。
【0028】(10)阻害剤の影響:本カタラーゼは、
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)により、70〜8
0%の阻害を受ける。
【0029】そして、このような本発明に従う耐熱性の
あるカタラーゼにあっては、上記の理化学的性質の中で
も、特に、分子量及び等電点において、従来のカタラー
ゼとは大きな差異を有しているのである。けだし、従来
のカタラーゼの分子量は、高々、360000〜370
000程度(特開平5−153975号公報、特開平2
−76579号公報等参照)であり、また等電点にあっ
ても、約4.8程度(特開平7−246092号公報等
参照)に過ぎないものであるからである。
【0030】なお、本発明において、カタラーゼ活性
は、次のようにして測定した結果から算出されたもので
ある。即ち、30%濃度の過酸化水素水の0.12ml
をpH7のリン酸緩衝液で100mlとした溶液を、基
質溶液として用い、この基質溶液の3mlを反応試験管
に入れて、25℃の温度で約5分間予熱し、次いで、こ
れに400UI/mlに希釈した酵素溶液の0.03m
lを加え、同温度で反応を開始すると同時に、過酸化水
素の240nmの吸光値が0.45から0.40へ低下
するに要した時間を計測する。そして、このような条件
下において、1分間に、1μmolの過酸化水素を分解
する酵素量を1単位として、カタラーゼ活性が、以下の
式によって求められるのである。 カタラーゼ活性(IU/ml)=(A×B/V/t)×
n 但し、IU:International Units A:Bergmeyer units 定数(=17) B:Bergmeyer units からIUへの変換係数(=13) V:希釈酵素溶液の採取量(=0.03ml) t:吸光値が0.45から0.40へ低下するに要した
時間(秒) n:酵素の希釈倍率
【0031】
【実施例】以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更
に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、その
ような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるも
のでないことは、言うまでもないところである。また、
本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した発
明の実施の形態における記述以外にも、本発明の趣旨を
逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々
なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、
理解されるべきである。
【0032】実施例 1 サーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces lanugin
osus) ATCC22083を用いて、固体培養及び液体
培養をそれぞれ行なった。先ず、固体培養の場合は、小
麦ふすま:10g、塩化アンモニウム:0.012g
を、500ml容三角フラスコに入れ、オートクレーブ
で120℃×30分間加熱滅菌することにより、調製し
た培地に対して、サーモマイセス・ラヌギノーサスAT
CC22083の胞子を接種し、初発水分を54%に調
節して、37℃で静置培養した。そして、この得られた
培養物を200mlの水に入れ、37℃で1時間浸漬処
理した後、濾過して、その抽出液のカタラーゼ活性を測
定した。固体培養でのカタラーゼ活性は、培養5日目が
最も高く、2040IU/g−原料であった。
【0033】また、液体培養の場合にあっては、小麦ふ
すま:2%、コーンスターチ:5.6%、ペプトン:
1.8%、塩化カリウム:0.05%、硫酸マグネシウ
ム・7水塩:0.15%、塩化カルシウム・2水塩:
0.2%、リン酸一カリウム:0.1%からなり、且つ
pH6に調整されてなる液体培地を用い、そのような培
地の30mlを300ml容三角フラスコに分注し、オ
ートクレーブで120℃×30分間加熱滅菌した後、サ
ーモマイセス・ラヌギノーサスATCC22083の胞
子を接種し、そしてロータリー式振盪培養機(200r
pm)を用いて、45℃の温度で振盪培養した。この培
養の終了後、得られた培養液を、8000rpm×10
分間の遠心分離操作に付し、更にその得られた培養上澄
み液について、そのカタラーゼ活性を測定した。かかる
液体培養でのカタラーゼ活性は、培養48時間目が最も
高く、3680IU/ml−培養液であった。この活性
を培地固形物当たりの生産量に換算すると、37170
IU/g−固形物となり、固体培養の場合に比較して、
約18倍も生産量が高くなることが明らかとなった。
【0034】実施例 2 サーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces lanugin
osus) ATCC22070を用い、実施例1の場合と同
様にして、固体培養及び液体培養を行なった。固体培養
(37℃、5日)によるカタラーゼ活性は、1800I
U/g−原料であった。また、液体培養(45℃、48
時間)によるカタラーゼ活性は、3550IU/ml−
培養液であった。この液体培養でのカタラーゼ活性を、
培地固形物当たりの生産量に換算すると、35860I
U/g−固形物となり、固体培養の場合に比較して、約
20倍も生産量の高いものであった。
【0035】実施例 3 実施例1と同一組成からなる液体培地を用い、その3L
を5Lジャーファメンターに仕込み、オートクレーブで
120℃×30分間の加熱滅菌を行なった後、サーモマ
イセス・ラヌギノーサスATCC22083の前培養液
を250ml接種し、攪拌速度:400〜600rp
m、通気量:1vvm、温度:40℃で、70時間培養
した。かくして得られた培養液上澄みのカタラーゼ活性
を測定したところ、5800IU/ml−培養液であっ
た。
【0036】実施例 4 実施例1と同一組成からなる液体培地を用い、その15
Lを30Lジャーファメンターに仕込み、120℃×3
0分間、加熱蒸気滅菌した後、サーモマイセス・ラヌギ
ノーサスATCC22070の前培養液を1L接種し、
攪拌速度:400rpm、通気量:1vvm、温度:4
0℃で、52時間培養した。この得られた培養液を遠心
分離して、菌体を除去した後、更に菌体は水洗して、酵
素を回収した。この菌体除去後の培養液と菌体を水洗し
て酵素を回収した液とを合わせ、その合わせ液に対し
て、濾過助剤を用いて、濾過を施すことにより、18L
の清澄液を得た。次いで、この得られた清澄液のカタラ
ーゼ活性を調べたところ、6000IU/mlであっ
た。また、この清澄液を、限外膜濾過装置(独国:ザル
トリウス社製)により濃縮し、粗酵素液2.5Lを得
た。この粗酵素液のカタラーゼ活性は、37300IU
/ml(回収率86%)であった。
【0037】実施例 5 実施例4において得られた粗酵素液を用い、そのエタノ
ール沈殿を行ない、エタノール濃度:40〜50%画分
を、遠心分離によって集めた後、沈殿物は、50mMリ
ン酸緩衝液(pH7)の700mlに溶解した(カタラ
ーゼ活性:116000IU/ml、回収率:75
%)。次いで、かかる操作を再度繰り返して、400m
lの酵素液を得た(カタラーゼ活性:182000IU
/ml、回収率:67%)。そして、このようにして得
られた酵素液を透析チューブに入れて、50mMリン酸
緩衝液(pH7)を外液として、5℃で24時間透析し
た。この透析中に生じた沈殿は、遠心分離によって除い
た後、シールクリーンフィルタカートリッジ(ポアサイ
ズ:0.45μm、日本ポール株式会社製)を用いて、
無菌濾過して、470mlの酵素液を得た(カタラーゼ
活性:150000IU/ml、回収率:65%)。そ
の後、この得られた酵素液を凍結乾燥して、酵素粉末:
25gを得た。この得られた精製酵素のカタラーゼ活性
は、2680IU/mg(回収率62%)であって、電
気泳動的に単一なバンドを示した。
【0038】このようにして得られた酵素粉末を用い
て、その至適作用pH、pH安定性、至適作用温度、熱
安定性、分子量、等電点、紫外部及び可視部の吸収スペ
クトル、金属イオン及び阻害剤の影響について調べた。
【0039】(1)至適作用pHについて 0.04%の過酸化水素を含む、50mMの各pHの緩
衝液(pH3〜4:HCl−リン酸緩衝液、pH6〜
7:リン酸緩衝液、pH8〜12:NaOH−リン酸緩
衝液)に、12IU/mlになるように、酵素溶液を添
加して、25℃の温度でカタラーゼ活性を測定した。そ
の結果を下記表1及び図1に示すが、それらより明らか
なように、得られた酵素(カタラーゼ)は、作用pH範
囲が3〜12で、至適pHは5〜10の広範囲と認めら
れる。
【0040】
【表1】
【0041】(2)pH安定性について 50mMの各pHのリン酸緩衝液中に、400IU/m
lとなるように酵素をそれぞれ溶解して、30℃の温度
で60分間処理した後、残存活性を測定し、その結果
を、下記表2及び図2に示した。それらの結果から明ら
かな如く、本発明に従って得られた酵素(カタラーゼ)
は、pH6〜10の範囲で極めて安定であり、pH3の
酸性側及びpH12のアルカリ側においても、50%以
上の残存活性を示した。
【0042】
【表2】
【0043】(3)至適作用温度について 50mMリン酸緩衝液(pH7)で調製した0.04%
の過酸化水素溶液を、各温度に5分間保持した後、酵素
溶液を添加せしめ、各温度における活性を測定して、そ
の結果を、下記表3及び図3に示した。それらの結果か
ら、本発明に従って得られるカタラーゼは、20〜80
℃の範囲で活性を示し、至適温度は50℃であることが
認められた。
【0044】
【表3】
【0045】(4)熱安定性について 50mMリン酸緩衝液(pH7)に溶解した400IU
/mlの酵素溶液を、各温度で30分保持した後、急冷
し、25℃において残存活性を測定した。その結果を、
下記表4及び図4に示すが、それらの結果から明らかな
ように、本発明に従って得られたカタラーゼは、60℃
まで極めて安定であり、80℃でも65%以上の残存活
性を示した。
【0046】
【表4】
【0047】(5)分子量について ゲル濾過法及びSDS−ゲル電気泳動法によって調べ
た。ゲル濾過法では、シリカゲルを基材とするTSK−
Gel−G3000SW(東洋曹達株式会社製)を担体
として用い、高速液体クロマトグラフィ装置(655A
型、株式会社日立製作所製)により、本発明に従って得
られた酵素(カタラーゼ)の溶出時間を測定した。標準
蛋白として、アルドラーゼ(Aldolase;分子量=158
000)、カタラーゼ(Catalase;分子量=23200
0)、フェリチン(Ferritin;分子量=44000
0)、チログロブリン(Thyroglobulin ;分子量=66
9000)を用い、これら標準蛋白の溶出時間をプロッ
トして得られた検量線から、本発明に従って得られたカ
タラーゼの分子量が470000〜480000である
ことを認めた。
【0048】他方、ポリアクリルアミドゲルを用いたS
DS−ゲルスラブ電気泳動法による測定の場合、本発明
に従って得られたカタラーゼは、単一のバンドとして泳
動され、標準蛋白として用いたミオグロビン(Myoglobi
n ;分子量=17200)、カルボニック・アンハイド
ラーゼ(Carbonic anhydrase;分子量=30000)、
アルドラーゼ(Aldolase;分子量=42400)、ボビ
ン・セラム・アルブミン(Bovine serum albumin;分子
量=66200)、β−ガラクトシダーゼ(β-Galacto
sidase;分子量=116000)、ミオシン(Myosin;
分子量=200000)の泳動距離から推定した分子量
は78000〜80000に相当した。この結果から、
本発明に従って得られたカタラーゼは、78000〜8
0000のサブユニットからなる6量体であることが確
認された。
【0049】(6)等電点について アガロースゲルを用いて等電点電気泳動装置(AE−3
230型、アトー社製)により測定した。その結果、標
準蛋白〔ソイビーン・トリプシン・インヒビタ(Soybean
trypsin inhibitor) :pI−4.55、グルコース・
オキシダーゼ(Glucose oxidase) :pI−4.15、ア
ミログルコシダーゼ(Amyloglucosidase):pI−3.5
0、ペプシノーゲン(Pepsinogen):pI−2.80〕の
プロットより得られた直線から、本発明に従って得られ
たカタラーゼの等電点は3.9〜4.0であることを認
めた。
【0050】(7)紫外部及び可視部の吸収スペクトル
について 酵素を50mMのリン酸緩衝液(pH7)に溶かし、紫
外部及び可視部吸収スペクトルを分光光度計(U−20
01型、株式会社日立製作所製)により測定した。その
結果を、下記表5及び表6並びに図5及び図6に示す
が、それらから明らかな如く、本発明に従って得られた
カタラーゼは、紫外部領域では280nmに、また可視
部領域では410nmに極大吸収を有しているのであ
る。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】(8)金属イオン及び阻害剤の影響につい
て 酵素溶液(400IU/ml)に、各種金属塩及び阻害
剤を、10mM濃度になるように添加し、30℃で30
分間処理した後、残存活性を測定した。その結果、本発
明に従って得られたカタラーゼは、硫酸銅により略失活
し、塩化鉄、塩化第二鉄、塩化第二水銀及びEDTA
(エチレンジアミン四酢酸)により、70〜80%の阻
害を受けることを認めた。
【0054】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従うサーモマイセス属の好熱性糸状菌を用いたカタラ
ーゼの製造方法によれば、カタラーゼが菌体外に大量生
産されることとなるのであり、そのため、遠心分離して
菌体を除去する等の簡単な方法によって、容易に且つ効
率良く、カタラーゼを得ることが出来るのである。それ
故に、本発明によれば、従来に比べて、菌体破砕等の煩
雑な操作をする必要がなく、また精製も容易であるとこ
ろに、大きな利点があり、そこに、本発明の工業的意義
が存するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼの至適作用pHの測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼのpH安定性の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼの至適作用温度の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼの熱安定性の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼの紫外部領域における吸収スペクトルの測定結果
を示すグラフである。
【図6】実施例5において得られた、本発明に従うカタ
ラーゼの可視部領域における吸収スペクトルの測定結果
を示すグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カタラーゼ産生能を有する微生物とし
    て、サーモマイセス属の好熱性糸状菌を用い、これを培
    養することにより、カタラーゼを菌体外に生産させる工
    程と、かかる培養工程で得られた培養物よりカタラーゼ
    を分離する工程とを含むことを特徴とするカタラーゼの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 前記サーモマイセス属の好熱性糸状菌
    が、サーモマイセス・ラヌギノーサスATCC2208
    3またはATCC22070である請求項1記載のカタ
    ラーゼの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記サーモマイセス属菌の培養が、液体
    培養によって行なわれる請求項1または請求項2記載の
    カタラーゼの製造方法。
  4. 【請求項4】 次の理化学的性質を有するカタラーゼ; a)作用:過酸化水素に作用し、過酸化水素を水と酸素
    に分解する、 b)至適作用pH:作用pH範囲が3〜12で、至適p
    Hが5〜10である、 c)pH安定性:30℃、60分間処理で、pH6〜1
    0の範囲で極めて安定であり、pH3の酸性側及びpH
    12のアルカリ側においても50%以上の残存活性を示
    す、 d)至適作用温度:pH7において20〜80℃の範囲
    で活性を示し、至適温度が50℃である、 e)熱安定性:pH7、30分間の加熱において60℃
    まで極めて安定で、80℃でも65%以上の残存活性を
    示す、 f)分子量:470000〜480000、 g)等電点:3.9〜4.0、 h)紫外部及び可視部の吸収スペクトル:280nm及
    び410nmに極大吸収を有する。
  5. 【請求項5】 サーモマイセス属の好熱性糸状菌の培養
    によって得られた請求項4記載のカタラーゼ。
  6. 【請求項6】 前記サーモマイセス属の菌が、サーモマ
    イセス・ラヌギノーサスATCC22083またはAT
    CC22070である請求項5記載のカタラーゼ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009104622A1 (ja) 2008-02-18 2009-08-27 明治製菓株式会社 耐熱性カタラーゼ
JP2019194162A (ja) * 2018-05-01 2019-11-07 ツァ ギャリー 肌の酸素供給による美白及び加熱機能を備えた通気性材料

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